Re: Zero Kinsho – Full Game Text

Scenario Tag: scenario_main_p00_c00_01

Scene Name: ダイジェスト01 始まりの終わりと終わりの始まり

“スバル”: ……どうなってんだ?
ナレーター: 菜月昴──ナツキ・スバルは夜のコンビニから出て数歩歩くと いつの間にか異世界に召喚されていた
ナレーター: 訳も分からぬまま辺りをうろついていると、三人組のチンピラに 絡まれてしまう 命の危険を感じるスバルだったが──
???: そこまでよ
“スバル”: !?
ナレーター: そんなスバルの窮地を救ったのは、一人の美しい少女だった
ナレーター: 自分を助けてくれた恩を返すため、スバルは 少女の探し物を手伝うことにする
ナレーター: 途中、自分の探し物そっちのけで迷子の女の子を助け始めてしまう その少女のお人好しぶりに心配と好感を覚えるも
ナレーター: その女の子が街の情報通でもある果物屋の主人の娘だという 幸運にも恵まれ、二人は目的の物があると思われる場所──
ナレーター: 王都ルグニカの外れの貧民街、そこにある盗品蔵へとたどり着く
ナレーター: が、突如としてそこでスバルと少女は 何者かに命を奪われてしまう
ナレーター: スバルが自分の死を自覚し、意識を失った次の瞬間──
“カドモン”: どうしたよ、兄ちゃん 急に呆けた面して
“スバル”: は──?
“カドモン”: だからリンガだよ、リンガ 兄ちゃん、金は持ってんのか?
“スバル”: は──?
ナレーター: スバルは自分がいつの間にか、 見覚えのある果物屋の前に立っていることに気付く
ナレーター: 自分や少女がどうなったのかを調べるスバルは、やがて自分が 何度も死に、そのたびに時間を遡って目を覚ましている事実──
ナレーター: 即ち、自分が『死に戻り』しているということに気付く
ナレーター: それを理解したスバルは何度も『死に戻り』をする中で ふれあった人々を──
ナレーター: 何より、自分を助けてくれたあの少女を救うため 奔走することを決める
ナレーター: そしてついにスバルは盗品蔵で、スバルたちを襲う刺客 『腸狩り』のエルザと激闘を繰り広げ
ナレーター: 偶然出会った騎士『剣聖』ラインハルトの助力もあり なんとか惨劇を回避することに成功する
ナレーター: 安堵する一同 そして、スバルは少女に向けて言った──
“スバル”: 俺の名前はナツキ・スバル! 俺ってば、今まさに君を 凶刃から守り抜いた命の恩人! ここまでオーケー!?
少女: ……おーけー?
“スバル”: よろしいですかの意 ってなわけで…… オー、ケー!?
少女: お、おーけー……
“スバル”: 命の恩人、レスキュー俺 そしてそれに助けられたヒロインが君 そんなら相応の礼があってもいいんじゃないか? ないかな!?
少女: ……わかってるわよ 私にできることなら、って条件つきだけど
“スバル”: なぁらぁ、俺の願いはオンリーワン、一個だけだ そう、俺の願いは──
少女: うん
“スバル”: ──君の名前を教えて欲しい
少女: ……
“スバル”: ……
少女: ふふっ
“エミリア”: エミリア
“スバル”: え……
“エミリア”: 私の名前はエミリア ただのエミリアよ ありがとう、スバル 私を助けてくれて
“スバル”: ────
ナレーター: 何度も命を失い、今回も命を落としかけ、ついにスバルは 少女──エミリアの名を知ることに成功したのだった──

Scenario Tag: scenario_main_p00_c00_02

Scene Name: ダイジェスト02 ナツキ・スバルのリスタート

ナレーター: 盗品蔵でエミリアの名を聞いたスバルが次に目を覚ましたのは 見知らぬ豪華なベッドの上だった
ナレーター: スバルは盗品蔵にてエルザの苦し紛れの一撃を防ぎきれず 深手を負って意識を失ってしまった
ナレーター: その治療のため、スバルはエミリアの庇護者である メイザース領主ロズワールの館へと運ばれていたのだった
ナレーター: そこでスバルは、エミリアが ルグニカ王国の次の王候補であるという事実と
ナレーター: スバル自身が、そんなエミリアの危機を救った 大恩人であるという事実を知らされる
ナレーター: 褒美を与えると言われたスバルは、好意を寄せるエミリアの 助けとなるべく、使用人として雇われることを申し出る
ナレーター: 同じく使用人としてロズワールに仕える双子の少女 ラムとレムに仕事を学びながら充実した日々を過ごすスバル
ナレーター: 自分の手に傷が増えることも一つの勲章のようなものだと 喜ぶスバルだったが、翌朝目を覚ますと──
“スバル”: ……傷が ない
ナレーター: スバルは自分の死を自覚することすらなく、ロズワール邸で 最初に目を覚ました朝まで『死に戻り』していたのだった
ナレーター: 自分の死の真相を突き止めるため スバルは再び使用人となるも、今度は何者かに殺されてしまう
ナレーター: 襲撃者がいることを確信したスバルは、今度は使用人ではなく 食客の身分を求め、襲撃者の情報を集めるために奔走する
ナレーター: そして、屋敷を後にしたスバルの前に現れたのは──
???: ……仕方ありませんね
“スバル”: !!
???: 何も気付かれないまま、終わってもらえるのが一番だったんですが
“スバル”: ……嘘だろ
“スバル”: レム……
ナレーター: スバルの命を狙う刺客は 共に使用人として働いていたレムであった
ナレーター: スバルの素性を怪しんだレムは 自分の意思でスバルを殺そうとしていたのだった
ナレーター: そのまま『死に戻り』したスバルは、ロズワール邸に存在する 禁書庫、その司書であるベアトリスに自分を守るよう懇願する
ナレーター: スバルの願いを聞き入れたベアトリスはスバルを守ると約束 スバルは自身の死を回避することに成功する
ナレーター: が、安堵するも束の間、今度はスバルの代わりになるかのように レムが死んだ状態で発見されてしまう
ナレーター: 『死に戻り』に関する事情を説明出来ないスバルは レムの死の理由を詰問されるも何も言えずその場から逃げ出した
ナレーター: その場から離れることには成功したスバルだったが やがてスバルを妹の仇だと思い込んだラムに追い詰められる
ナレーター: が、スバルはそこで唐突に思いだした 死に怯えて眠るスバルの手を、握ってくれていた存在のことを
ナレーター: そして、スバルは確信する それはラムとレム、その二人だったことを
“ラム”: やっと見つけた もう逃がさない
ナレーター: ラムと対峙する直前に、スバルはその覚悟を決めた もう一度『死に戻り』、悲劇を回避するという覚悟を
“ラム”: やっと観念したってこと?
“スバル”: 観念とは少し違うな 言うなれば……覚悟が決まった、ってとこか
“スバル”: わかんねぇことだらけなのを知っていこうと そう思ったよ
“ラム”: 今さら何を! レムはもう死んでしまったの! あなたにラムとレムの、何がわかるっていうの!?
“スバル”: そうだな 俺は肝心なことは何にもしらないまんまだ だけど お前らだって知らないだろうが
“ラム”: 何を……
“スバル”: 俺が! お前らを! 大好きだってことをだよ!
ナレーター: そう叫んだスバルは、すぐさま崖に向かって駆け出し、 中空にその身を投げた
“スバル”: 俺にしかできないことだ!
“スバル”: 絶対、助けてやる──!
ナレーター: すぐさまスバルは地面へと激突し、その意識はかき消えた──

Scenario Tag: scenario_main_p00_c00_03

Scene Name: ダイジェスト03 鬼がかったやり方

ナレーター: 『死に戻り』に成功したスバルは惨劇を回避するために行動を始め 自分やレムの死に呪術が関係しているであろうことを知る
ナレーター: レムを初めとしたロズワール邸の面々の信用を勝ち取らなければ 殺されてしまうため、スバルは使用人として雇われることを決め
ナレーター: 『死に戻り』する前の経験を活かしながら 使用人の仕事を全力で行っていった
ナレーター: しかし、精神的な重圧を受け スバルの精神は見る見るうちにすり減ってしまう
ナレーター: そんなスバルを見かねたエミリアは スバルを呼びつけ、無理矢理スバルに膝枕をした
ナレーター: 困惑するスバルに対し、エミリアは静かに語りかける──
“エミリア”: 大変、だったね
“スバル”: !!
“スバル”: 大変……だった…… すげぇ辛かった……すげぇ恐かった めちゃくちゃ悲しかった 死ぬかと思うくらい痛かったんだよ……
“エミリア”: うん
“スバル”: 俺頑張ったんだよ 頑張ってたんだよ! 必死だった  必死で色々、全部良くしようって頑張ったんだよ……!
“スバル”: ホントだ ホントのホントに  いままでこんなに頑張った事なんてなかったくらい!
“エミリア”: うん、わかってる
“スバル”: 好きだったからさぁ、この場所が……  大事だと思えてたからさぁ、この場所が……!
ナレーター: 泣きじゃくりながらスバルは感情を吐露し、 エミリアはそれを静かに受け止めた
ナレーター: 元気を取り戻したスバルは、呪術師が屋敷の外部 つまりアーラム村に潜伏していると見抜き
ナレーター: ラムとレムと共にアーラム村へ買い出しへ向かう
ナレーター: 帰宅後、スバルの読み通り、スバルには呪いがかけられていた ベアトリスは驚きながらもスバルの呪いを解くが
ナレーター: その呪いが村の子どもたちが 可愛がっていた犬に関係していることを知る
ナレーター: 子どもたちの身を案じたスバルは、すぐさまレムと共に アーラム村へ駆けつけると、スバルの危惧は的中していた
ナレーター: 子どもたちの姿が消えたと聞き、スバルはレムと共に 魔獣の棲み家である森の中へと向かう
ナレーター: スバルはなんとか子どもたちを助け出すことに成功するが その中でスバルはレムを庇い、魔獣に深手を負わされてしまう
ナレーター: なんとか一命を取り留めたスバルだったが 村に駆けつけたベアトリスから
ナレーター: スバルがベアトリスにも解けない呪いを魔獣から受けたこと それを解くためにレムが単身森へ向かったことを知らされる
ナレーター: レムを救うため、スバルはラムと共に森へ入るも スバルの前に現れたレムは暴走しており、正気を失っていた
ナレーター: スバルにも容赦なく攻撃をするレム スバルは消耗したラムから レムの額の角に強烈な一撃を加えれば正気に戻ると聞き──
“スバル”: 笑えレム! 今日の俺は鬼より
“スバル”: 鬼がかってんぜ!
ナレーター: スバルの捨て身の一撃により、レムは正気に戻った だが、魔獣の数は多く、スバルたちは追い詰められていく
ナレーター: 全滅を避けるため、スバルは自らを囮に ラムとレムを逃がすことを画策
ナレーター: スバルはついに、魔獣ウルガルムの親玉と対峙した──

Scenario Tag: scenario_main_p00_c00_04

Scene Name: ダイジェスト04 レム

ナレーター: これは、スバルがウルガルムを退けた後に気を失い 次に目覚めた場面の話である──
“スバル”: ──ん
“レム”: 起きて、くれましたか……
“レム”: スバルくん、レムは、レムは……
“スバル”: イイってことよ、気にすんな…… それよりみんなは?
“レム”: だいじょうぶです でもまたスバルくんが一番ひどい目に……
“スバル”: みんな無事ならそれで万事OKさ 俺もすぐに元に戻るって
ナレーター: スバルは自分が気を失った後、自分の呪いが解かれたことを知った
“レム”: ごめんなさい、スバル君
“スバル”: おいおい、頭を上げろよ、レム 体の調子、どっこも悪くねぇよ
“スバル”: 落ち着いてるように見えて、レムって実は全然 冷静でも落ち着いてもないよね
“レム”: レムは非力で、非才で、鬼族の落ちこぼれです 
“レム”: だからどうしても姉様に届かない レムは姉様の代替品、出来損ないなんです……
“レム”: どうして、レムの方に角が残ってしまったんですか? どうして、姉様の方の角が残らなかったんですか?
“レム”: どうして、姉様とレムは、双子だったんですか?
“スバル”: ……
“レム”: ご、ごめんなさい おかしなことを言ってしまいました 忘れてください
ナレーター: 思わず口走ってしまったレムの想いを聞き スバルはレムに語りかける
“スバル”: お前がいなきゃ俺は今頃きっと犬にかじられてお陀仏だ お前がいたおかげで助かりました 今もこうして生きてます
“スバル”: 姉様だけじゃなくてお前のおかげだ
“レム”: 本当の姉様ならもっとうまく──
“スバル”: かもしれなかったな でもいてくれたのは、お前だ レムがいてくれてよかったよ ありがとう
“レム”: レムは…… レムは、姉様の代用品だって、ずっと──
“スバル”: そんな寂しい自己定義やめとけよ 角無くした理由は聞かないから わからねぇ わかったような口を利かせてもらうと、だ
“スバル”: 角のないラムの角の代わりを、レムがやればいいんだよ 二人で仲良く『鬼』ってやつをやったらいいじゃん
“レム”: あう……
“スバル”: それになぁ 代替品とか言ってっけど それこそレムの替わりなんていないぜ?
“レム”: ……でも
ナレーター: 戸惑うレムに対し、さらにスバルは微笑みながら語りかけていく
“スバル”: 俺の故郷じゃ、『来年の話をすると鬼が笑う』っつーんだよ だからさ
“スバル”: 笑えよ、レム しけた面してないで 笑え 笑いながら未来の話をしよう
ナレーター: 過去ではなく未来の話をしようと提案するスバルに対し レムはおずおずと切り出す
“レム”: レムは、とっても弱いです ですからきっと、寄りかかってしまいますよ?
“スバル”: いいんじゃん? お互いに寄りかかって進めばいいよ 笑いながら肩組んで、明日って未来の話をしよう
“スバル”: 俺、鬼と笑いながら来年の話をするの、夢だったんだよ
ナレーター: そう言ったスバルに対し、レムは微笑みながら返した
“レム”: 鬼がかってますね
“スバル”: だろ?
ナレーター: そう言って、二人は笑い合った
ナレーター: レムとの、ささやかで、それでいてとても大切な会話は スバルに何日かぶりの安堵を与えた
ナレーター: しかし、それも束の間 やがて部屋に入ってきた ロズワールやベアトリス、さらには精霊のフェネが現れ
ナレーター: スバルは『禁書』をめぐる異変に 巻きこまれていくことになるのだった──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_00

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■プロローグ 『禁書』の精霊

ナレーター: ~時はさかのぼり、ウルガルム戦前日の夕方~
ナレーター: スバルは、広大な館の一室で金髪の巻毛の美しい少女──いや、 幼女といってもよい年頃のベアトリスと向かい合っていた
ナレーター: ロズワール邸で繰り返す『死に戻り』──
ナレーター: 越えられない一夜を越えるために突き止めた、自らの死因 それはスバルが受けた、何者かによる『呪い』であった
ナレーター: その解呪のため スバルは、禁書庫を訪れたのだった
ナレーター: あどけない姿に似合わず、 ベアトリスはここの司書なのだ
ナレーター: スバルと向かい合ったベアトリスの右手が 白く光り始めていた
“ベアトリス”: 今から呪術の術式を破壊するかしら
“ベアトリス”: 呪術師が直接触れた場所が術式の刻まれた場所だから、 参考にするのよ
ナレーター: 白く光る右手でスバルの額に触れ、 ベアトリスは解呪を始める
“スバル”: 布石は打ってあるぜ、ご安心!
“スバル”: 角刈り青年団長と人の尻に触ってくる若返りババア、
“スバル”: 偽村長のむらおさと 容疑者たちに触らせた箇所はバラけさせてある!
ナレーター: 直後、スバルは、自らの身体に訪れた異変に気付く 左手の甲から立ち上る、明らかな違和感に
“スバル”: 黒い……モヤ!?
“ベアトリス”: 忌まわしいったらないかしら
ナレーター: 次の瞬間、ベアトリスは、スバルの手の甲から立ち上るモヤを 握りつぶすようにかき消してしまった
“ベアトリス”: 終わったのよ、これでもうお前は平気かしら
ナレーター: 身体から呪いが消え去った安堵はすぐに消え去り スバルの心には得も言われぬ焦りが去来していた
“スバル”: なぁ、ベア子……
“スバル”: 今のモヤが出てきた場所が…… 呪術師が触った場所でいいんだよな?
ナレーター: スバルをまっすぐ見つめたまま、 ベアトリスはゆっくりとうなずく
“スバル”: (まさかあの子犬が!?)
ナレーター: 村の子供たちに可愛がられていた愛らしい子犬 それこそがスバルの手を噛んで呪いをかけた元凶だった
“スバル”: 村に行かねぇと! どこまでもどこまでも、ふざけやがってぇぇぇぇえ!
ナレーター: 腹の底から湧き上がる激しい怒りにまかせて、 スバルが禁書庫を飛び出そうとした瞬間──
“スバル”: おわぁあああ!!
ナレーター: スバルは『何か』につまずいた
ナレーター: 体勢を崩したスバルは、そのまま三回転がって、 廊下の壁に激突した
“スバル”: ってぇ…… おいベア子、部屋の片付けくらいちゃんと! ……ありゃ?
ナレーター: 情けなく転がったスバルの足元には、一冊の本
“スバル”: なんだこれ…… すげぇ気味悪い絵ばっか載ってんな……悪魔辞典とかか?
“スバル”: ……の割に、イ文字で書いてんだな 俺でもギリ読めるけど……
“スバル”: ここに落ちてるってことは、どう考えても『禁書』だよな……? 明らかに年代物だし……
“スバル”: もしかして、これにつまずいたのか!?
“スバル”: ベア子! 床に本転がしとくなって! いろんな意味で危ないだろ!
ナレーター: 勢いよく開けた扉の向こうは、何の変哲もない客室 禁書庫はすでに扉渡りで、別の場所に移動したあとだった
“スバル”: ってかこれ、禁書庫から出たらマズイ代物じゃね!? 仮にも『禁書』だよな!?
“スバル”: どうすっかなこれ……
“スバル”: ぺらぺらと『禁書』をめくるスバルは、最後のページに たどりつく
“スバル”: 「!?」
ナレーター: 強烈な違和感、あるいはめまい…… 得も言われぬ衝動で、スバルは『禁書』を勢いよく閉じた
“スバル”: ……持っとくか、一応
“スバル”: ここに置いといて誰かに見つかりでもしたら ベア子の奴がハンパなく怒られちまうだろうしな……
“スバル”: 今はとにかく村に急がねぇと 後でこっそり返しとけば大丈夫だろ!
ナレーター: スバルは、懐に忍ばせるには大きすぎる『禁書』を 無理やり上着の内側に入れる
“スバル”: うん、この分厚さ もし俺が銃で撃たれても、これのお陰で助かる展開だな!
“スバル”: ……いや、銃とかあんのかなこの世界 どちらにしてもそれは勘弁願いたい
“スバル”: あとはこれが呪いのアイテムじゃないことを願うのみだな
ナレーター: ~時はすすみ、ウルガルム戦翌日~
“スバル”: ──ん
“レム”: 起きて、くれましたか……
ナレーター: ロズワール邸で目覚めたスバルのそばには 不安そうな顔のレムが座っていた
ナレーター: 昨日魔獣の森に単身乗り込み、スバルのために戦ってくれた少女 そして、その姉のラムとスバルで今度は彼女を救い出したのだ
“レム”: スバルくん、レムは、レムは……
“スバル”: イイってことよ、気にすんな…… それよりみんなは?
“レム”: だいじょうぶです でもまたスバルくんが一番ひどい目に……
“スバル”: みんな無事ならそれで万事OKさ 俺もすぐに元に戻るって
ナレーター: レムとの、ささやかで、それでいてとても大切な会話は スバルに何日かぶりの安堵を与えた
ナレーター: しかし、それも束の間──
“ロズワール”: おやおや、目覚めたようだーぁね
“スバル”: レムの次は、ロズワールかよ…… 一番大事な人がすっ飛ばされてるよね?
ナレーター: 奇妙な道化の化粧をした男ロズワール── その姿にそぐわず、この館の主の大貴族にして宮廷の筆頭魔術師だ
“エミリア”: よかった、スバル…… どこか痛かったりしない? 大丈夫?
“スバル”: エミリアたん!
ナレーター: 彼女はエミリア、透き通るような銀髪の美しいハーフエルフ スバルが王都ルグニカで、何度も命を落としながらも救った少女だ
ナレーター: その美しい顔を曇らせて ベッドに横たわるスバルを紫紺の瞳で見つめている
“スバル”: レムと話してたお陰で眠気も飛んで 頭スッキリ快調だ!
“ロズワール”: それはよかった 何よりだーぁよ
“ロズワール”: そして、実によくやってくれたね、スバルくん
“ロズワール”: エミリア様の護衛だけでなく まさか領地の危機まで救ってくれるとはねーぇ
“ロズワール”: このお礼はたっぷり……と言いたいところなんだけど
“ベアトリス”: とんでもないことをしてくれたのかしら
ナレーター: ロズワールの背後から、ひょっこりと顔を出したのは ベアトリスだった
“スバル”: な、なんだよベア子、いたのかよ…… って、なんで睨んでんだ!?
“ベアトリス”: これを見るのよ
ナレーター: 静かな怒りをたたえたベアトリスは、スバルの目の前に 一冊の本を突き出した
“スバル”: あ、それ!
“ベアトリス”: やっぱりお前が持ち出したのかしら!
“スバル”: ちが……あれは不可抗力だ! お前が部屋を片付けてねぇからだぞ!!
“ベアトリス”: ふざけたことを言ってる場合じゃないのよ
“スバル”: あれ……ページが、なくなってる……?
ナレーター: ベアトリスが広げて見せた『禁書』には、 ページがほとんど残っていない
ナレーター: 表紙── 現代風にいうなら、ほぼハードカバーだけの状態だ
“スバル”: もしかして、ウルガルムが食っちまったとか……?
???: いいえ、あまりに愚かな妄想ですね
“スバル”: お前は……昨日の!!
ナレーター: 巨大ウルガルムの一撃で命を落としそうな刹那、 スバルがなりゆきで力を借りたしゃべる動物が割り込んできた
謎の動物: 昨日、フェネが『禁書』より解き放たれた瞬間に ページは何処かへ散逸してしまいました
“スバル”: 待て待て待て待て! なんか自然に会話に参加してるけど、お前誰だよ!
謎の動物: 共に死線をくぐり抜けた盟友を捕まえてお前誰だよとは なるほどスバル氏には人の心がないのですね
“スバル”: 丁寧だけどめっちゃディスってくんな!? 感謝はしてるけど自己紹介省略したのお前だろ!
“スバル”: ……で、フェネ、って言ったよな それがお前の名前か?
“フェネ”: 左様です 我が名はフェネ
“フェネ”: そちらの『禁書』に封じられていた精霊です 以後お見知りおきを
“ベアトリス”: 呑気に自己紹介してる場合じゃないかしら とにかく事態は最悪なのよ
“ロズワール”: そうだーぁね 聞いた話から判断するならば 昨日の騒動は『禁書』のページのせいみたいだーぁからね
“スバル”: どういうことだ……?
“スバル”: 俺が呪われたのは、『禁書』が外に出る前だ それだと辻褄があわねぇだろ!
“ロズワール”: 元々起きていた問題が、より深刻になった…… そういうことだーぁね
“レム”: 昨日、スバルくんが戦ったのは…… およそウルガルムと呼べるものではありませんでした
“レム”: 姉様の話だと、それ以前に遭遇したウルガルムも 今考えてみると様子が変だったと……
“スバル”: あの変身は、奴の力じゃなくて、 禁書のせいだったっていうのか……!?
“フェネ”: はい 禁書の影響で、ウルガルムが異形の何かに 変質してしまったと推察します
“スバル”: あの『禁書』、そんな代物なのか!?
“フェネ”: 断言はできませんが 状況からそう判断するべきでしょう
“スバル”: ……ん? 断言できないって……
“ベアトリス”: とにかく、一日も早く失われたページを 集める必要があるのかしら
“エミリア”: そうね…… でも、ページってどうやって探したらいいのかしら……
“スバル”: ちょっと待ってエミリアたん なんでエミリアたんが探す流れになってんの!?
“エミリア”: この屋敷で起こった問題だもの、当然でしょう?
“スバル”: いやいや! どう考えても、俺の過失だろ! 俺が咎められるのはわかるけど、それは違うって!
“ベアトリス”: 過失過失って見苦しいのよ
“ベアトリス”: とっととあの『禁書』を持ち出した思惑をしゃべるかしら
“スバル”: だから勘違いだって! 禁書庫から出るときに俺がつまずいたの見たろ!?
“スバル”: そしたらそれが床に転がってて…… すぐに返そうとしたけど、お前はもういなかったんだ
“スバル”: それに、村のことだって一刻を争う状態だった だから俺はあとで返そうと思って……
“ベアトリス”: じゃあ、村で会ったときに返してくれればよかったのよ
“スバル”: あ……
“ベアトリス”: 結局忘れてたかしら 呆れてものも言えないのよ
“スバル”: いや待てって! 忘れてたとかそういうんじゃなくて!
“ベアトリス”: じゃあ何なのかしら
“スバル”: いや……なんでだ? なんで何も覚えてないんだ……
“スバル”: あんな分厚いもん、いくら切羽詰まってたからって 忘れるか普通……
“ベアトリス”: つまり、あの時点ですでに落としていた可能性が高いのよ お前が部屋から持ち出した時点で、もう手遅れだったかしら
“エミリア”: スバルわかった? もうスバルだけの問題じゃないの
“エミリア”: 早くしないと大変なことになっちゃう みんなで力を合わせないと
“スバル”: それはそうかもしれないけど ここは責任取って俺が探さねぇと
“ベアトリス”: 当然なのよ わかってるなら今すぐいくかしら
“レム”: ベアトリス様! スバルくんは、まだ動ける状態じゃありません!
“エミリア”: そうよスバル! スバルは休んでて!
“ベアトリス”: そんなの知らないのよ 自業自得なんだから、ベティーには関係ないかしら
“ロズワール”: はいはい、スバルくんには当然働いてもらうとしてーぇだ 今は休養が必要なのもまた事実
“ロズワール”: とりあえずは、皆、一旦戻ろうじゃーぁないか 今日くらいは、功労者にしっかり休んでもらわないとねーぇ
“ベアトリス”: どうせ期待してないのよ 眠りこけて、そのまま目覚めなければいいかしら
“スバル”: 縁起でもないこと言わないでくれる!?
“エミリア”: ごめんねスバル、明日またゆっくり話しましょう?
“ロズワール”: というわけでスバルくん、しっかり休んでくれたまーぇ フェネくんと言ったね、ちょっといいかーぁな?
“フェネ”: 面を貸せ、という理解でよろしいでしょうか
“ロズワール”: 君、面白い子だーぁね まあ、そういうこと、少し話がしたい
“フェネ”: 承知しました 拳で語らいましょう
“スバル”: それ、面貸せに引っ張られ過ぎだから!?
“エミリア”: じゃあね、スバル ゆっくり休むのよ またあとでね!
“レム”: スバルくん、何かあればすぐに呼んでください それではレムも失礼します
ナレーター: にぎやかな一同が去り、客室に静けさが戻る
“スバル”: ……
“スバル”: 何やってんだ、俺は……
“スバル”: エミリアにまた迷惑かけちまってる……
“スバル”: それに、ベアトリスのあの剣幕…… あれって相当やばいってことなんだよな……?
“スバル”: 明らかに、気、遣わせちまったよな……? それとも、頼りにならねぇ俺には首を突っ込んでほしくないとか?
“スバル”: くそっ……情けねぇ…… あの野郎をぶっ飛ばしたのだって、結局フェネのお陰だしな……
“スバル”: とにかく、早く動けるようになって ページ探しを始めねぇと
“スバル”: エミリアに、これ以上迷惑かけるわけにはいかねぇもんな!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_01

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■序章01 ロズワール家の責任

ナレーター: スバルの休養が一日で済むはずもなく…… あの夜からすでに数日が経過していた
“スバル”: はぁー……
“ラム”: 随分大きなため息ね ラムとの買い出しはそんなに刺激がないのかしら
ナレーター: 彼女はラム、レムの双子の姉で、 レムと一緒に館のメイドを務めている
ナレーター: しかしもっぱら働くのはレムで、この姉様はサポート要員だ なのにレムは絶大な信頼を、このラムに寄せている
“ラム”: バルスに飽きられるなんて心外だわ
“スバル”: そんなこと言ってないよね!? 『禁書』のこと考えてたんだ 気になってんだよ、ずっと
“ラム”: 考えてもムダよ バルスが悩んだところで問題は解決しないわ
“スバル”: んなことはわかってるけども、考えちまうんだ 俺のせいなわけだし
“ラム”: バルスは怪我の治療に専念すること ロズワール様とエミリア様からの命令でしょ
“スバル”: 魔獣と戦うってならまだしも 探し物をするぐらい、別にいいんじゃねぇかな?
“ラム”: ロズワール様が直々に動いてくださっているのよ バルスの出番なんてないわ
“スバル”: わーってるよ どうせ俺は愉快なラジオ体操係ですよ
“ラム”: 誰も頼んではいないみたいだけれど
“スバル”: うるせぇ! 村人のみんなには求められてるんだよ!
“ラム”: そう、なら身体がよくなるまで しっかりラジオ体操係に専念することね
“スバル”: そうはいくか!
“スバル”: 探しものは、人手があったほうがいいだろ?
“ラム”: 確かに一人で探すよりは、いいかもしれないわね
“スバル”: だったら、な? 俺も参加した方がよくない?
“ラム”: それはロズワール様が決めることよ
“ラム”: 『禁書』の問題が、万が一にでも外に漏れたら大変なの その責任は、管理者であるメイザース家のものとなるわ
“スバル”: ……ロズワールが指揮を取るのは当然ってことか
“ラム”: 本当にバルスったらとんでもないことをしてくれたわね
“ラム”: その首がつながっていることを幸運に思いなさい
“スバル”: 穏やかじゃねぇな! って、何も言い返せねぇけど……
“スバル”: ……ん? メイザース家の責任……?
“スバル”: それって、まんまエミリアが 王選で不利になるってことだよな……?
“ラム”: 今頃気付いたの? バルスは本当にマヌケね
“スバル”: なんてことだ…… そんなの最悪じゃねぇか……!
“ラム”: ……
“スバル”: やっぱり俺も探さないとダメだ! 一秒でも早く、『禁書』のページを集めねぇと!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_02

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■序章02 王都の異変

ナレーター: スバルとラムが屋敷に戻ると、玄関でレムが待ち構えていた どうやらロズワールがスバルの帰りを待っていたらしい
“ロズワール”: やあスバルくん 今日のラジオ体操はどうだったかーぁな
“スバル”: 好調快調でノープロブレムだったよ みんなすっかり元気だぜ
“スバル”: で、大事な話ってのは、なんだ
“ロズワール”: 話が早いのは嫌いじゃーぁないよ 単刀直入に言おう
“ロズワール”: ……王都で、何やら問題が起こっているようでね
“スバル”: まさか……『禁書』、なのか?
“ロズワール”: おおかた、そうじゃないかと睨んでいるよ
“エミリア”: すぐに向かわないと 王都に魔獣が出たりしたら大変だわ
“スバル”: ああ、その通りだ! すぐに向かおう!
“エミリア”: スバル……
“スバル”: なんだよ、エミリアたん、その憐れむような目は…… まさかお留守番とか言わないよね!?
“エミリア”: スバルを仲間外れにしたいわけじゃないの
“エミリア”: でもやっぱり今はダメ 身体を治すのに専念しなきゃ
“スバル”: そんなのってねぇよ、エミリアたん……
“スバル”: 絶対無茶はしない! 情報収集とかさ、そういうことだけにするから!
“エミリア”: スバルは、そう言って無茶するもの いい子だから、これ以上心配させないで
“スバル”: エミリアたん! 俺は──
“フェネ”: 痴話喧嘩中、失礼いたします
“スバル”: フェネ? いつからいたんだ?
“フェネ”: なるほど、スバル氏にとってフェネの存在感は皆無だと それとも典型的かつ陰湿なイジメの類でしょうか
“スバル”: そこまで言ってねぇよ!
“フェネ”: スバル氏、今回の件で最大の当事者は 一体誰だと認識されていますか?
“スバル”: え、そりゃもちろん被害を被るロズワールとエミリア、 しでかした俺だろうな
“フェネ”: いいえ フェネです
“フェネ”: ……お忘れですか フェネは、『禁書』の中から馳せ参じたのですよ
“スバル”: 武士みてぇな言い方すんな
“スバル”: ……けど、確かにそうだった 悪い
“スバル”: じゃあお前は、この問題を解決したいと思ってる ってことでいいのか?
“フェネ”: 左様です フェネにとって『禁書』のページを集めることは使命です
“フェネ”: よってエミリア女史 スバル氏の参加は必須条件とさせていただきたく
“エミリア”: なんで? 今の流れでどうしてそういう話になっちゃうの?
“フェネ”: スバル氏は、フェネの契約者に他ならないからです
“スバル”: ……え?
“エミリア”: そうなの!? スバル、いつの間に契約してたの!?
“スバル”: いや! 違うんだエミリアたん、これは決して浮気とかじゃ…… って、いやいや! 契約ってなんだよ!
“フェネ”: 加勢した際に締結しましたが
“スバル”: そんな覚えはねぇぞ! 助けが必要かって言われて、頼んだだけだ
“フェネ”: 契約成立です
“スバル”: ふざけんな! もはや詐欺だろ!
“フェネ”: 契約書の開示は求められませんでしたので
“スバル”: あの状況で言えるかよ! ってか言われなくても出せよそんなの!
“ロズワール”: 契約とあっては仕方がないねーぇ エミリア様、スバルくんの同行について許可を
“エミリア”: ……わかったわ、スバルの同行を許可します そのかわり、絶対絶対、無理しちゃダメなんだからね!
“スバル”: お、おう! あれ? けど、あっさり決まっちまったような……
“エミリア”: あっさりじゃありません スバルは、精霊と契約したことの意味、わかってないの?
“スバル”: どういうことだよエミリアたん…… なんか言い方怖いんだけど!?
“フェネ”: 契約の対価として、スバル氏には 魂が擦り切れるまでフェネのために働いてもらいます
“スバル”: 悪魔かよ!!!
“フェネ”: 失礼な、精霊です
“エミリア”: あはは…… フェネの言ってることは冗談だから安心して
“スバル”: だよな…… 頼むぜフェネ、命に関わることはマズいって
“エミリア”: そんな契約だったら、さすがに私もロズワールも 止めてるわ でも対価が必要なのは本当
“スバル”: そうなの!? お前、不当契約の上に金まで取る気か!?
“フェネ”: どこまでもフェネを貶めたいようですが そこまでは当然求めていません
“エミリア”: フェネはスバルとの契約の対価として 「同行」を求めているのよ
“スバル”: 同行……? どゆこと?
“フェネ”: 我々の利害は“『禁書』のページを集めること”で 一致しています
“フェネ”: ですから、事の元凶であり一番責任のあるスバル氏と 常に帯同することをフェネは求めます
“フェネ”: つつがなくページ集めが進むよう 誠心誠意働いてほしいと訴える権利がフェネにはあるのです
“スバル”: ぐうの音もでねぇ…… わかった、その『対価』は飲むよ
“ロズワール”: さーて、では話がまとまったところぉーで、と
“ロズワール”: レム、いるんだろう 入ってきなさい
“レム”: はい、失礼します
“ロズワール”: レムにもきてもらうよ 道中の護衛を頼む
“レム”: はい、お任せください
“ロズワール”: 話もまとまったところーぉで、早速準備に入ろう 出発は明日 いいね?
“スバル”: おうよ! もちろんオッケーだ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_03

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■序章03 禁書と魔獣

ナレーター: 翌朝早くに、スバル、エミリア、レム、フェネらは 王都へと出発した
“スバル”: ロズワールはもう着いちまってるんだろうな
“エミリア”: ええ、先に行って今頃色々と調べてくれているはずよ
“スバル”: その勢いでぱぱーっと解決してくれたら楽なんだけど、 他力本願ってわけにもいかないよな
“フェネ”: 左様です、スバル氏には一生を棒に振って 贖罪していただかねばなりません
“スバル”: 悪かった! 俺のせいだ! それは認めるけども、さすがに一生は言いすぎだ!
“フェネ”: ほう、この期に及んで自らしでかしたことの 重みを理解していないと申しますか?
“スバル”: そういうわけじゃねぇけど、罪の重さについては 正直想像しきれてないってのが本音だ
“フェネ”: スバル氏が一生フェネの奴隷として生涯を終えても 足りないほどです
“スバル”: そんなに!? それ、わからないのをいいことにぼったりしてない?
“スバル”: まぁ、とにかくだ、こんなことはスカッとバシッとすぐに解決して エミリアたんとの正規ルートに戻らねぇと!
“エミリア”: よくわからないけど、スバルの気合は伝わったわ
“スバル”: 俺のトゥルーエンドはまだまだ先なんだ! こんなとこで足踏みしてる場合じゃねぇ!
“フェネ”: 非攻略対象、という可能性も拭えませんからね
“スバル”: どこに正ヒロインが攻略できないゲームがあんだよ! ってかその前に、なんでお前が話についてこれてるんだ!?
“フェネ”: 話の内容から類推して発言しただけです フェネは察しがよくかつ頭脳明晰なので
“スバル”: え、お前って自画自賛キャラだったの? どこぞの姉様と被るからやめない?
“レム”: みなさん! 止まります、申し訳ありません!!
ナレーター: 御車台のレムが声を張り上げると同時に 軽快に疾走していた竜車が突然停止する
“スバル”: レム! どうした!!
“レム”: みなさん、そこにいてください ……魔獣です
“エミリア”: そんな! この平原で昼間に、 魔獣に遭遇したことなんて一度もなかったのに……
“レム”: ご安心ください レムがすぐに片付けます
“フェネ”: 残念ながらレム女史だけに委任するわけにはまいりません スバル氏、前へ
“スバル”: 俺が!? いや、ここはレムに任せる場面じゃ……
“フェネ”: 『禁書』です
“スバル”: ……!?
“フェネ”: 魔獣からページの反応があります ここに魔獣がいることの証左です
“スバル”: そうとあっちゃあ、出ねぇわけにはいかねぇな! フェネ、行けるか!
“フェネ”: フェネの呼びかけで出撃の必要性を理解したのにも関わらず まるで戦う気満々だったかのような変わり身、さすがです
“スバル”: 嫌味言ってる場合じゃないよね!?
“エミリア”: スバル、急ぎましょう 王都がすごーく心配
“スバル”: そうだな、エミリアたん さくっと片付けちまおう!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_04

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■序章04 膨張する頁

“スバル”: てっきり魔獣がページを食っちまったとか、 そういうことかと思ったけど……
“エミリア”: 身体からは何も出てこなかったわね
“フェネ”: ですが、魔獣がページの影響を受けていることは 確定的です
“スバル”: さっきから当たり前みたいに言ってるけど フェネは『禁書』の反応を察知できるってことでいいのか?
“フェネ”: はい、どうやらそのようです
“スバル”: 煮え切らねぇ返しだな……
“フェネ”: 動物を例に取れば、本能的に、といった感覚でしょうか
“スバル”: とりあえずそれで納得しとく お前がここで嘘つくメリットもねぇしな
“フェネ”: ……
“エミリア”: フェネ、その気配はこっちの方角であってるのよね? 街道から外れちゃったけど……
“フェネ”: 左様です 気配がどんどん、濃厚になってきています
“レム”: ここからは、降りて進んだほうがよさそうです 竜車で進むには、道が狭すぎます
“スバル”: 森の中ってか なんだか誘い込まれた感じがして嫌な感じだな
“エミリア”: でも行くしかない……
“スバル”: ああ、放っておけないな
ナレーター: 一行は、街道外れの小さな森に足を踏み入れた フェネを先頭に、奥へと進んでいく……
“レム”: やけに、静かですね
“エミリア”: 本当ね 虫も動物もいないみたいな……
“スバル”: おい……ありゃ何だ!?
ナレーター: 空中をひらひらと浮かぶように舞う『禁書』のページ だがそれは、スバルたちの思っている姿とは違って……
“スバル”: でかくね!? いや、膨らんでる!?
“レム”: 魔獣を……吸い込んでる……
ナレーター: 遥かにサイズが肥大化した『禁書』のページは 亜空間へ続くかのような渦を生み出している
“スバル”: 吸い込んでる、っていうか…… 食ってる、みてぇだな……
“フェネ”: 構えてください 何かきます!!
“エミリア”: 嘘……渦の向こうから、何か……
異形のモノ: がぁぁぁぁあああああああああ!!!!!
“スバル”: おいおい、俺が森でやりあったのとなんか似てるぞ!?
“フェネ”: ウルガルムが『禁書』の影響を受けていた証左、です
“スバル”: 魔獣を食うわ、なんか生み出すわ…… 頭がおっつかねぇよ!
“レム”: ここはレムが出ます! みなさん、援護をお願いします!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_05

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■エピローグ もりのフェンルー

ナレーター: 鎖が唸るようにしなり、鉄球が異形の存在めがけ 一直線に飛んでいく
“レム”: ──これで終わりです!!!!
異形のモノ: ぐぎゃぁぁぁぁあああああああああ!!!
ナレーター: レムの渾身の一撃をまともに食らい、 異形の存在は砕け散り、その肉体が霧散する
“スバル”: ははは……すげぇ威力…… ないはずの傷口がうずくぜ……
“レム”: スバルくん、エミリア様、お怪我はありませんか?
“スバル”: お陰様で! エミリアたんも大丈夫だよな?
“エミリア”: ええ、レムもご苦労さま
“スバル”: あれ、フェネ?
ナレーター: フェネは虚空を見上げていた つられて視線を向けると、『禁書』のページがひらひら舞っていた
ナレーター: 木の葉のように落ちてきたページを フェネはすかさず掴むとふーっと息を吹きかけた
ナレーター: 真っ白なページは、青白く光りだし──
ナレーター: 霧の如く散った異形の存在だったものは、 その光に吸い込まれた
ナレーター: 次の瞬間、白紙のページに、おどろおどろしい絵と イ文字が浮かび上がる
“スバル”: 俺が見たページ!?
“フェネ”: 静かに、集中力が乱れます
“スバル”: 精霊にも集中とかあるのな……
ナレーター: 思わず口を挟んでしまったスバルを無視して フェネは『禁書』を開く
ナレーター: 光り輝くページは、吸い込まれるように 『禁書』に綴じられた──
ナレーター: フェネが『禁書』を閉じる、パタン、という音で 静寂は終りを迎える
“スバル”: 終わった……んだよな?
“フェネ”: はい、彼の存在は、再び『禁書』へ綴じられました
“エミリア”: つまり…… あれは、『禁書』のページから飛び出した存在だったってこと?
“フェネ”: そう推察されます
“スバル”: あのさ…… ちょっと聞いてもいいか?
“フェネ”: なんでしょう、スバル氏 言いたいことは推考できますが、先をどうぞ
“スバル”: お前が『禁書』から出てきたのは、目撃者がいるから確かだし ページを集めなきゃっていうのも納得いくんだが……
“スバル”: お前、もしかして『禁書』のこと、何も知らないんじゃないか?
“フェネ”: どうして、そう推理するのでしょうか
“スバル”: お前の発言が、推察とか、そう考えられるとか…… そんなんばっかりだからだよ
“エミリア”: それは私も気になっていたの 疑うわけじゃないんだけど、ね?
“フェネ”: ……失礼しました 告白の頃合いを伺っていた、というのは都合のよい方便ですね
“フェネ”: 端的に申し上げますと、フェネは記憶を喪失しています
“スバル”: ──マジで!?
“フェネ”: 真剣と書いて、マジです
“スバル”: なんでお前がそれを!?
“フェネ”: スバル氏の顔に書いてありました
“エミリア”: ええと……それで、どの程度なの? まったく何も、わからない?
“フェネ”: 肝心なことは何も、といったところでしょうか
“スバル”: そりゃ穏やかじゃねぇな…… 逆に、何なら把握してるんだよ?
“フェネ”: 今はっきりと言えるのは……
“フェネ”: フェネは『禁書』ページの反応を感知することができるということ
“フェネ”: 『禁書』のページを、この表紙に再び綴れること
“スバル”: そりゃ、封印って理解でいいか?
“フェネ”: その理解で、問題ありません
“フェネ”: これに関しては、ウルガルムと戦った際に 思い出したことですが
“スバル”: 思い出したりは、するんだな じゃあ今後の記憶の復活にも期待がもてるってことでオッケー?
“フェネ”: おそらく なにかのきっかけが必要だと推察しますが
“スバル”: それは、よくわかった んで、もう一つ……
“スバル”: ページを集めるのは使命、って言ってたよな?
“スバル”: ……あれは、信じてもいいんだよな?
“フェネ”: 勿論です
“フェネ”: 理由も理屈も判然としませんが、その想いに 今のフェネは突き動かされています
“スバル”: どう思う、エミリアたん?
“エミリア”: うん、信じていいと思う それはきっとフェネの精霊としてのあり方のはずだし
“スバル”: うっし! じゃあこの話はこれで終わりだ!
“フェネ”: ……信じて、くれるのですか?
“スバル”: 精霊使いのエミリアたんが言ってるんだ、間違いないだろ
“スバル”: それに俺は、エミリアたんに絶大な信頼を置いてるんでね!
“エミリア”: ありがとうスバル 私もスバルのこと信じたいから、無茶はしないでね?
“スバル”: 信用されてねぇ!?
“レム”: そろそろ戻りましょう 置いてきた竜車も心配です
“スバル”: 確かに 『禁書』についての考察は、王都に向かいながらでもできるな
“スバル”: まずは、情報の整理だ
“エミリア”: ウルガルムと戦ったときの話 もう一度、聞いてもいい?
“スバル”: おお、もちろん!
“スバル”: なんつうか……二回変身した感じ? 子犬から、クソでけぇウルガルムになったあと……
“スバル”: さっき戦ったみたいな、こう、なんとも気味の悪い 別の何かになったって感じだ
“スバル”: あと一回、変身を残してなくて助かったぜ……
“フェネ”: 経験でもありそうな発言ですね
“スバル”: 冒険者を絶望させるセリフランキングに古から載ってるからな 何度も聞いたぜ
“エミリア”: スバルはここにくる前は冒険者だったの?
“スバル”: あーごめん、話の腰を折った 今のは戯言だと思って忘れてくれ!
“スバル”: ええと、話を戻すけど つまりページは魔獣を変質させるってことでいいか?
“フェネ”: まだ凡例が少なく断定は危険ですが 可能性は限りなく高いと言っていいでしょう
“スバル”: 根拠は?
“フェネ”: 優秀なフェネがそう推察するからです
“スバル”: オーケー、お前の勘ってことにしておく
ナレーター: 御車台のレムが、顔を少しスバルの方に向けて声を張る
“レム”: 森の中で、生き物の声が聞こえなかったことも気になります
“スバル”: ビビって逃げた、って可能性は?
“レム”: 明らかに異常でした エミリア様も感じていらっしゃるかと
“スバル”: エミリアたん、そうなの?
“エミリア”: うん、微精霊も全然いなかったの……
“スバル”: おいおい、『禁書』は魔獣だけじゃなくて 周囲にも影響を与えるってことかよ!?
“エミリア”: もしかして、人にも……?
“スバル”: そんな……だとしたら王都は最悪の条件だぞ!
“フェネ”: 焦っても今すぐ到着できるわけではありません 考察の続きを
ナレーター: 興奮して立ち上がりそうになるスバルを フェネが冷静に牽制する
“スバル”: お、おう…… そうだな……
“レム”: 速度をあげます スバルくんはレムに任せて話し合いに集中してください
“スバル”: サンキュ、レム みんなすまん、ちょっと焦っちまった
ナレーター: バツが悪そうに頭をかきむしった後、 スバルは深呼吸をして話に戻る
“スバル”: ……で、さっきのアレだな ページは魔獣を吸収する
“エミリア”: そして、ページの中から、得体のしれないものを呼び出す……
“スバル”: ページの中身にヒントがあったりしねぇのかな イ文字なら俺でもなんとか……
“スバル”: えーと? はらぺこふぇんるーいつでもはらぺこ?
“エミリア”: たべすぎフェンルー おいだされ はらぺこフェンルー もりまでにげて
“エミリア”: たべすぎフェンルー くいつくす
“スバル”: ……これって、もしかして、絵本、なのか?
“エミリア”: そうね 絵がすごく不気味だけど…… そんな感じはするわね
“スバル”: 腹ペコで食べ尽くすって…… まさにさっきのあいつじゃねぇか
“フェネ”: 森というのも共通項と考えられます
“スバル”: じゃあ、ページはお話に似た場所に引きつけられて 書いてるようなことをするってことか?
“フェネ”: 可能性は しかし、その仮説は 捜索にはあまり意味がありません
“スバル”: なんでだよ  話からある程度想像できるじゃねぇか
“フェネ”: その話を把握している者がいないのです なにせページはここにありませんから
“スバル”: ……話、変えようか……
“スバル”: その、魔獣を吸い込んだり、 得体のしれないものを吐き出したりって……
“スバル”: そもそも、どうしたらできるもんなんだ?
“エミリア”: う──ん……
“スバル”: あの『禁書』がなんらかのミーティアとか…… 魔法とか、そういう可能性はないのかな?
“エミリア”: ないとは言い切れないわ ミーティアに関してはまだわかっていないことだらけだし
“エミリア”: でも魔法、ね……
“スバル”: もっかして、何か思い当たる感じ?
ナレーター: エミリアは、うつむきながら頷く
“エミリア”: さっきの森、マナがすごーく少なかったの 誰かがすごい魔法を使ったあと、みたいに……
“スバル”: あそこに魔術師が潜んでた、なんてことは さすがにないよな?
“フェネ”: 『禁書』はあの書庫にずっと保管されていました
“フェネ”: 今回、流出してしまったのもスバル氏が 死罪級の過失を犯したことが原因です
“フェネ”: 外部の存在が関与しているのは考えがたいかと
“スバル”: 定期的に俺の傷口えぐるのやめない!?
“エミリア”: そうなると、やっぱり『禁書』と関係があるのよね……
“スバル”: マナの枯渇、ってのが鍵な気はするなぁ
“レム”: ページが魔獣を食らっていたのは、マナと関係があるのでは?
“スバル”: おお……確かに!
“スバル”: 俺が呪われたみたいに、『禁書』もマナを食らうってことか! 吸い取るんじゃなくて、文字通り食ってたけどな……
“スバル”: さすがレム! ナイスアシスト!
“レム”: スバルくんに助け舟を出すのがレムの役目ですから
“エミリア”: マナはどこにでもあるものよ もし関係があるなら、問題が一気に起こりそうだけど……
“フェネ”: しかし現状、そのような混乱は観測されていない マナとの関係は「あるかもしれない」としか言えませんね
“スバル”: マナを吸えば吸うほど危ないってことはねぇか……?
“フェネ”: ……なるほど、否定はできませんね
“エミリア”: 余裕はあるかもしれないけど、 早めに対処したほうがいいってことよね……
“スバル”: そうだな…… さっきの話になっちまうけど、王都は人が多い
“スバル”: その……仮にもし、人があんなわけわからないモノに 変わっちまったとしたら……
“エミリア”: ……
ナレーター: エミリアの表情が明らかに曇る スバルは慌てて、明るい声を出した
“スバル”: と、いうのは最悪な想定であって、 俺らが間に合っちまえば問題ナシ!
“スバル”: だから早いとこ見つけて、速攻で解決といこうぜ!
“エミリア”: そうよね、ごめんスバル ちょっと不安になっちゃって
“スバル”: 謝らなくていいよ! エミリアたんは俺のやらかしの被害者なんだから!
“スバル”: あんまり背負い込まないでくれ
“フェネ”: 放火犯が焼け出されてしまった子どもを 慰めているような図ですね
“スバル”: そろそろ俺のHPがゼロなんですけど!?
“フェネ”: おや、何かを言い返せる立場ですか?
“スバル”: そんな立場じゃねぇよ! だから削られてんだろ!
“レム”: 大丈夫ですスバルくん スバルくんが投獄されるときはレムも一緒です
“スバル”: 一瞬ときめきそうになったけど さらっと犯罪者扱いしてるよね!?
“エミリア”: スバル、ちゃんと反省してる?
“スバル”: してるしてる! 本当に申し訳ありませんでしたーー!!
ナレーター: かしましい四名(本当にうるさいのは主に一名)を乗せた 竜車は一路王都へと急ぐ──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_00

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_プロローグ_王都の「噂」

ナレーター: 道中ひと悶着あったものの、その後休みなく走り続け
ナレーター: スバルたちを乗せた竜車は、予定よりも一時間ほどの遅れで 王都に到着するのだった
“レム”: ロズワール様とはこちらの宿で合流予定です
“スバル”: ってことはしばらくこの宿に滞在すんだな?
“レム”: その通りです! スバルくんの呑み込みの早さに、レムは感服いたしました!
“スバル”: いやいや、その感服はさすがに受け取れないかな 宿って時点で誰でも想像できると思うし
“スバル”: とにかく、ロズワールと合流次第サクッと解決して 王都見物とでも洒落込もうぜ!
“ロズワール”: うんうん、実に頼もしい 是非、有言実行をお願いしたいところだーぁね
“スバル”: おお、ロズっち!? いつの間にいたんだ!?
“エミリア”: ロズワールごめんなさい、待たせちゃった?
“ロズワール”: いえいえ、ご無事で何よりです それより……
“ロズワール”: 到着が遅れたということは ……道中、何かありましたね?
“スバル”: ……ああ、そのことだけど 中で腰落ち着けて話せると助かる
“ロズワール”: なるほど、『禁書』から生み出された異形のモノと 対峙した、と……
“フェネ”: 我々が屠った存在はこちらです
ナレーター: フェネは『禁書』を開き、 先刻対峙した存在を封じ込めたページを開く
“ロズワール”: このページに記された存在が具現化したわけだーぁね 実に興味深い
“スバル”: ああ、本から出たり入ったり、忙しい連中だぜ
“スバル”: そっちはどうだったんだ 何か掴めたのか
“ロズワール”: 王選関係で、今王都はにわかに騒がしてくてねぇーえ そっちの情報収集に忙しくて、手応えはあんまりだぁーよ
“スバル”: あんたに限って、空振りってこともないんだろ?
“ロズワール”: 嬉しい評価だーぁね ……それらしき噂は聞いたよ
“フェネ”: 必要以上に意味深かつ冗長…… まるで悪の親玉のような語り口ですね
“スバル”: まどろっこしい言い回ししてないで さっさと本題入れって嫌味言われてるぞ
“ロズワール”: いつの間にそんなに仲良くなったんだい? 契約関係は良好みたいだーぁね
“フェネ”: ありがとうございます、余計なお世話です
“スバル”: 今、一言多かったよね!?
“エミリア”: ロズワール、どんな噂なの
“ロズワール”: たいした内容じゃありません ここ数日、王都で異変が起きている、というものですよ
“エミリア”: 異変…… 具体的にはわからないの?
“ロズワール”: ええ だから所詮噂なのです ただ、何やら雰囲気は良くないみたいですねぇーえ
“スバル”: よくないことが起こってそうではあるんだな
“スバル”: フェネ、実際どうなんだ? 『禁書』の気配は感じてるのか?
“フェネ”: 微弱ですが、感じます
“ロズワール”: おや、フェネくんは、『禁書』のページを感知できるのかい?
“スバル”: そっか、ロズっちはその話まだだったな
“スバル”: その通り、フェネはレーダー役 匂いをたどってお宝ゲット、ってなわけだ
“ロズワール”: 『レーダー役』というのはわからないけぇーれど、 どうやらスバルくんとフェネくんには期待していいみたいだね
“フェネ”: 期待に添えない場合は、雇用主であるスバル氏の 全責任になりますので、フェネはお咎めなしでお願いします
“スバル”: 突然突き放された!? 今、一緒に頑張ろうね、の流れだったよね!?
“エミリア”: もたもたしてられないわ、スバル 日が暮れないうちに見つけてしまいましょう
“スバル”: ああ、エミリアたん、早速出かけよう!
“スバル”: ちなみに、話が横道にそれがちなのは謝るけど 大体は慇懃無礼なフェネのせいだからね!
“ロズワール”: 意気込んでいるところ申し訳ないのですが エミリア様は宿にお残りください
“エミリア”: え…… なんで? スバルはまだ本調子じゃないし、一人じゃいかせられないわ
“ロズワール”: 見たところ、まだ魔獣が暴れだすような状況ではありません レムがいれば十分でしょう
“ロズワール”: それよりも、王選に向けて、 集めてきた情報を共有させていただきたい
“エミリア”: そ、そうなの……?
“スバル”: 大丈夫だよエミリアたん ロズワールの言う通り、まだそんなヤバそうじゃない
“スバル”: いざとなったら衛兵呼ぶし、 エミリアたんは大事な王選を優先してくれ
“エミリア”: うん…… わかった その代わり、話が終わったらすぐ追いかけるからね
“スバル”: おう、もちろんそれは大歓迎! でもその前に俺が解決しちゃったりして?
“フェネ”: なるほど、血眼でページを発見しても、 全てスバル氏に手柄を掠め取られるわけですね
“フェネ”: 実にやりがいのない職場です 横暴な上司は死すべし
“スバル”: 都合悪いときの上司扱いと 俺が何もできない無能みたいな言い方止めてくれる?
“フェネ”: ……?
“スバル”: 今の発言、全然理解できません みたいな顔すんなよ!
“ロズワール”: 息がぴったりで頼もしいねぇーえ
“スバル”: どっから見たらそうなるんだよ……
“レム”: スバルくん、フェネさんとじゃれるのはいいですが できればレムも構ってください
“スバル”: 構うよ! 全然構う! もっと積極的に話題に入ってきてカモン!
“レム”: 積極的、ですか…… スバルくんは、そういう子がお好みですか?
“スバル”: うん、なんか勘違いしてるみたいだから 嫌いじゃないよとだけ言っておく!
“エミリア”: スバル、大丈夫? なんだか走ってきたみたいに顔が真っ赤だけど……
“スバル”: ありがとう、エミリアたん でも、このパーティー 俺だけじゃツッコミが足りないかもしれない
“フェネ”: 話がまとまってなによりです それでは出陣といたしましょう
“スバル”: 話はまとまってねぇし フェネに仕切られる覚えもねぇぞ!
“ロズワール”: おっとスバルくん、出かける前に一つ忠告いいかーぁな?
“スバル”: なんだよ、ロズっち? もちろん、無理はしない! それ以外のことなんだよな?
“ロズワール”: その通り、大事なことだ
“ロズワール”: ……スバルくん、行く先々での言動には十分注意するように
“スバル”: ……
“スバル”: つまり、俺は目つきだけじゃなくて態度も悪いって言いたいのか?
“ロズワール”: 気に障ったのなら謝ろう でも、もちろんそういう意味じゃ―あない
“ロズワール”: 王都には、他の王選候補者も滞在している
“スバル”: !?
“ロズワール”: 勘がよくて助かるよ つまりそういうことさ
“ロズワール”: 我々陣営の手の内も事情もできれば晒したくない あんまり目立たないよぉーおにね
“ロズワール”: そして、大きな騒ぎは起こさないでくれたまぁーえ
“スバル”: 目立つな、騒ぎを起こすなって、わかるけど それってどっちもあんまり変わらないよな
“スバル”: 言いたいことがあるならはっきり言ってくれ ……回りくどいぞ
“ロズワール”: 失礼、気をつけるよ
“ロズワール”: つまり騒ぎとメイザース家が結びつくようなことは 絶対に避けてほしい、ということさ
“スバル”: わかってるさ……
“スバル”: 『禁書』とメイザース家の関係が、他の候補者に知れたら 即アウトってことだろ
“エミリア”: ……
ナレーター: 最悪の結果を想像してしまったのか、エミリアの表情が瞬時に曇る
“スバル”: そ、そんな顔すんなってエミリアたん 絶対、そんなヘマはしねぇから
“エミリア”: うん…… お願いね、スバル
“スバル”: ああ! 任された!
“レム”: 仮にですが……
“レム”: 明らかに周りの目がある状況で、騒ぎが起きてしまった場合 どのようにすればよろしいでしょう?
“スバル”: う、そうだな…… そうなる前に解決、じゃ答えになってねぇからな
“エミリア”: そのときは、迷わず対処すること
“スバル”: エミリアたん……?
“エミリア”: 『禁書』と私たちの関係がバレるのはダメだけど、 それで王都の人たちに危害が及んでいいことにはならない
“エミリア”: みんなが危険な目に遭うことだけは絶対に避けないと そうなったら……私のことはいいから、助けてあげて
“エミリア”: たぶん、あとから困ったことになるけど…… それはそれで、なんとかするしかないもの
“エミリア”: うん、きっとなんとかする!
“スバル”: エミリアたん……!
“スバル”: わかった 最悪の場合は、間違いなく王都の人たちを優先するよ
“スバル”: もちろん、そうなる前に解決が一番だ! な、レム!
“レム”: はい 全力を尽くすとレムはお約束します
“スバル”: ロズワールも、いいよな?
“ロズワール”: 私としては、逃げてほしい気持ちもあるけど 君たちの判断に任せるとしよう
“スバル”: よし……! 王都の人たちには迷惑かけずに解決だ!
“フェネ”: なるほど、この流れでフェネへの確認はない、と
“フェネ”: いつフェネの番がきてもいいように 心構えは万端だったのにも関わらず、完全無視とは冷酷非道
“フェネ”: やはりスバル氏とは法廷で相まみえるしかないですね
“スバル”: 今ので訴えるとか過剰すぎない!?
“フェネ”: いじめっ子にはいじめられっ子の理論 『いじめられてると思ったらいじめ成立』を展開します
“スバル”: お前のメンタルでいじめられっ子とかありえねぇから!
“フェネ”: 誰がメンタルおばけですか 崇高なる精霊です
“スバル”: 言ってねぇ!!!!
“レム”: スバルくんの元気が有り余っているみたいなので そろそろ出発しますね
“エミリア”: スバルをお願いね、レム 夕飯までには帰ってくるのよ?
“レム”: はい、スバルくんがもう少し遊びたそうにしていても きちんと門限までに連れて帰ります
“スバル”: 俺を幼稚園児か何かと勘違いしてるよね!?
“フェネ”: いくよ、スバルお兄ちゃん
“スバル”: ちゃっかり妹属性取り入れようとすんな!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_01

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_01_始まりはリンガから

ナレーター: かくしてスバル、フェネ、レムらは 『禁書』のページ探索へと出発したのだったが──
“スバル”: はぁー……
“フェネ”: 随分大きなため息ですね 幸福が尻尾を巻いて敗走しますよ
“スバル”: 独特の言い回しだけど悪意が隠せてねぇぞ
“レム”: 大丈夫ですか? スバルくん 人混みに酔ってしまいましたか?
“スバル”: 大丈夫、ありがとう 人混みが得意じゃねぇのは否定しないがな
“スバル”: レーダーがあるのに、探しものが見つからないことに ちょっとばかし失望を隠しきれなかっただけだよ
“フェネ”: 批判ですね?
“スバル”: 出たな、被害妄想
“スバル”: お前がいてくれんのになかなか簡単じゃねぇなってだけだ 他意はねぇよ
“フェネ”: それは失敬いたしました
“フェネ”: ページの反応があるのは確かです しかし、ここまで人が多いと……
“スバル”: 感知が難しいってか 原理はわからんが、なんとなく理解はできるよ
“レム”: 困りましたね、フェネさんだけが頼りだというのに
“スバル”: そんなことねぇよ? レムも頼りにしてるから
“レム”: そんな、スバルくん…… レムがいないとお出かけもできないなんて、怖がりさんですね
“フェネ”: あとは若い者同士でごゆっくり
“スバル”: 自然な流れで離脱しようとすんな! あとなレム、それだけじゃねぇけど主に戦闘で頼りにしてる!
“レム”: ありがとうございます! スバルくんにつく悪い虫はレムが必ず退治します!
“スバル”: 街中で鉄球出すのはちょっと物騒かな!? 今んとこ、悪い虫もついてないしね!
“スバル”: んで、やっぱ王都っていったら、あそこか? なんか知ってるかもだしな
“スバル”: ってなわけでやってきたぜ、オッチャン! どうよ、元気してたか?
“カドモン”: んだよ馴れ馴れしい兄ちゃんだな 知り合いのフリしてもまけてやんねえぞ!
“スバル”: おいおい、冷たいな…… 可愛い子どもの恩人にその態度はないんじゃねぇの?
“カドモン”: ……娘の恩人? 兄ちゃんがか?
“スバル”: (やべ、それは別の『死に戻り』のときの話だったか……)
“スバル”: いやいや、正確には迷子になってた娘さんを助けた人と 知り合いなんだよ、俺
“スバル”: 誤解を与えるような言い方になっちまってすまねぇ
“スバル”: それにこの前は、無一文で迷惑かけちまったからさ 約束を果たしにきてやったってわけだ
“カドモン”: 無一文? 約束? なんのことだかさっぱり……………… って思い出した、あの目つきが悪い坊主か?
“スバル”: オッチャンが俺の目つきのこと言う!? まぁ、思い出してくれてなによりだけど!
ナレーター: それからスバルは、人数分のリンガを買いながら それとなく会話を切り出す
“スバル”: そういや、今日はなんだか街の雰囲気が違う気がすっけど なんか催しでもあんの? 他国からVIPがくるとか?
“カドモン”: びっぷってのはわからねえが、愉快な話は特にねえよ こうも衛兵が多くちゃ、確かに雰囲気は違うけどな
“スバル”: 衛兵? なんか事件でもあったか?
“カドモン”: どうしてかはわからんねえ だが、数日前から衛兵が多くてな いやーな感じだ、まったく
“スバル”: 数日前から、か なるほど……
“スバル”: サンキュ、オッチャン! またくるよ 奥さんとお子さんによろしくな!
“カドモン”: お? あ、ああ 買ってくれるならいつでも大歓迎だ またな
“レム”: スバルくん……
“スバル”: ああ、衛兵が異変の対処に当たってるんだろうな 余談は許さない状況ってことだ 急ごう!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_02

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_02_アテにならない案内役

ナレーター: 『禁書』のページを探し、王都を駆け巡るスバル、フェネ、レム しかし状況は芳しくなく──
“スバル”: ったはぁーーー!!!
“スバル”: これじゃ、闇雲に探してるのと全然変わんなくねぇか!?
“フェネ”: いえ、痕跡はあります
“スバル”: その痕跡の根拠が薄いんですがー?
“スバル”: こちらです、失敬、違いました ……って何回言ったんだよお前!
“フェネ”: スバル氏は、試行錯誤という言葉をご存知で?
“スバル”: いってみなきゃわかんねぇってどういうことだ? しかも二分の一で間違うレーダーってポンコツすぎだろ!
“フェネ”: なぜ人はにぎやかな場所に住みたがるのですか? 理解できません、人が多すぎです
“スバル”: ところでフェネ氏 フェネ氏は、責任転嫁って言葉をご存知で?
“フェネ”: ……
“スバル”: ……
“スバル”: 案外役に立たねぇな、お前
“フェネ”: ……ほう?
“フェネ”: 部下の精神をいたずらに攻撃し、傷つけ、 仕事効率を低下させ、それに何の疑問も後ろめたさもない
“フェネ”: なるほど、これが極悪非道で無知蒙昧な上司の典型ですか 非常に勉強になりました、死すべし
“スバル”: 人をパワハラモラハラ上司みたいに言うな!
“レム”: スバルくん、そろそろ落ち着いてください フェネさんが怒るのも、もっともではあります
“レム”: フェネさんも、スバルくんに言い過ぎた点があったとしても 命に関わるようなことを言うのはよくありません
“レム”: 今の発言でスバルくんが本当に死んでしまったら レムは悲しみのあまり……
“レム”: フェネさんに当たってしまうかもしれません
“スバル”: 冷静なお説教かと思ったら 冷静さの欠片もない鉄球が登場してるんだけど!?
“フェネ”: 冷静沈着、頭脳明晰がウリのフェネとしたことが 取り乱してしまいました、失敬
“フェネ”: 和解しましょう、クソ上司
“スバル”: 漏れてる漏れてる! 本音が漏れてるから!
“スバル”: ……まぁいい、俺も言い過ぎた、悪い
“スバル”: こんなことしてる場合じゃないよな 人多すぎー、な王都で『禁書』の影響が出たら笑えねぇ
“スバル”: っても、何が起こんのか、まだ検討もつかねぇけど……
“フェネ”: ページのマナ貯蔵量の段階による、としか言えないのですが 仮説として、そうですね……
“フェネ”: 魔獣が攻撃的になったのですから、 人もまた、そうなる可能性は高いかと
“スバル”: 市中で喧嘩……なんてのはありそうな話だな
“スバル”: 誰かが傷つくことに変わりはねぇ そうなる前に、なんとしても見つけ出すぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_03

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_03_詰め所と美丈夫

ナレーター: カドモンから聞いた“衛兵が街に増えている”という情報を 確かめるべく、スバルたちは詰め所へと向かった——
“スバル”: ……確かに、傍目から見ててもなんか慌ただしいな
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: なんだよフェネ、でかい声出すなって……!
“フェネ”: なぜ、路地裏からこっそり様子を伺うのですか これではまるで犯罪者ではないですか
“スバル”: 用もないのに詰め所の前をうろつくのも怪しいだろうが
“レム”: そうですよフェネさん 目つきが悪いからって、スバルくんを犯罪者扱いするなんて
“スバル”: うん、そこじゃないんだけどね、フェネが言ってるのは
“フェネ”: 犯罪者の勘として、あれはどういう状況ですか
“スバル”: お前らは俺を何だと思ってるんだよ!
“スバル”: ……ったく、そうだな ぶっちゃけ、何かが起こってる、ってことしかわかんねぇよ
“スバル”: 衛兵ってのはこの世界じゃ警察みたいなもんだろ? だとしたら、やっぱり揉め事とか、そういう対応なんじゃね?
“スバル”: って、さっきの仮説通りか…… やっぱり人が暴れたりしてるみてぇだな
“フェネ”: 異形の存在の出現については?
“スバル”: それについてはお前の担当だよね!?
“スバル”: でも、万が一、そうなってたとしたら王都中大パニックだ 嫌でもわかるだろうぜ
“スバル”: それに……多分、衛兵の手には負えねぇ 出張ってくるのはもっと上のはず
“スバル”: そうだな、例えば……
???: ──そこで何をしている
“スバル”: どわっ!!!
ナレーター: そこには、紫髪の青年が立っていた 細身だが背はスバルより高く、弱々しい印象はない
ナレーター: 衛兵とは段違いの気品と佇まいを漂わせている青年は なにより、明らかに身分の違う制服を身につけている
紫髪の青年: そこで何をしていると聞いている
“スバル”: あ、えっと、あ、すんません! ……衛兵さんですかね?
紫髪の青年: 似たようなものだが、衛兵に何か用かね
“スバル”: 実はあの、落とし物をしちゃって! 届いてないかなー、なんて!
“スバル”: でもなんか、すげぇ忙しそうなんでまた出直します!
紫髪の青年: おい、ちょっと! 待ちたまえ!!
“スバル”: お勤めご苦労さまでーーす!
紫髪の青年: ……
紫髪の青年: 精霊……か? 一体、何者だ?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_04

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_04_跳ね上がる危機感

“スバル”: 焦ったーー……
“フェネ”: さすが犯罪者、見事な逃げっぷりでした
“スバル”: 逃げたのは認めっけど、それは認めねぇよ!?
“スバル”: いや、一瞬知り合いかと思ったんだけど、別人だった……
“フェネ”: 確定的に高貴な身分のようでしたが、 スバル氏にそのような御学友が? 意外です
“スバル”: 一緒にスクールライフは送ってないけど友人だ ラインハルトって頼れるチート野郎なんだけど
“スバル”: あいつは、たぶんラインハルトと同じ身分のやつだな つまり、騎士様だ
“スバル”: ちなみに詰め所にいったのはそれも理由 運良く会えたら、いろいろ聞けるかなって思ったんだが
“フェネ”: なるほど、騎士殿 罪が知れれば斬首は確実、逃走も頷けます
“スバル”: いい加減、犯罪者扱い止めない? じわじわボディーに効いてきてんですけど
“フェネ”: !!!!!!!
“スバル”: って、フェネ……? どうした、反省顔にしては深刻すぎだぜ……?
“フェネ”: ページの反応です
“スバル”: ……その様子だと、今度こそ釣れたってことか
“フェネ”: はい、残念ながら大物です
ナレーター: フェネの指す方角へ、スバルらは間髪入れずに走り始めた 緊急を要することは、フェネの雰囲気で十分に伝わる
“スバル”: さっきまであやふやだった反応が 強くなったってことでいいのか!?
“フェネ”: 左様です 確信を得られるほど強くなっています
“スバル”: できればそうあってほしくないが…… レム、覚悟しといてくれ
“レム”: はい、いざというときは、お任せください
“スバル”: そういう理解でいいんだよな、フェネ!
“フェネ”: 左様です、スバル氏にもわかるように言うなら ページは既に大量のマナを食らっているかもしれません
“フェネ”: 何かを顕現させてしまう可能性も…… 視野に入れるべきです
“スバル”: ここにきていきなりかよ…… ふざけやがって!!
“スバル”: まさか、人間同士の喧嘩を 望む日がくるとは思ってなかったぜ……
“スバル”: 威勢のいい兄ちゃんたちの小突き合いであってくれ!
“フェネ”: 若人の痴情のもつれの可能性も否めません
“スバル”: それは、刃物がちらつく可能性があるから俺は遠慮したいかな!
“レム”: レムなら刃物は使いませんよ?
“スバル”: 確かにそうだけども、 レムさんの場合は刃物の代わりに鉄球が出るよね!?
“レム”: ……スバルくん スバルくんはレムのことをどう思っていますか?
“スバル”: あれ!? 痴情がもつれだしそうな質問!? この子もしかして『禁書』の影響を受けちゃってない!?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_05

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_05_緑髪の戦乙女

ナレーター: フェネが掴んだ明確な『禁書』のページの反応 駆けつけたスバルたちの目に入ったのは――
“スバル”: おいおい、王都の若者ってのは 随分奇抜な格好するんだな? はやりか?
“レム”: スバルくん、気持ちはわかるのですが現実に戻ってきてください
“レム”: あれは……紛れもなくページから生まれたものです!
“スバル”: だよな…… ハロウィンだってあんな仮装はしねぇ……
“スバル”: 幸いまだ生まれたての子鹿って感じでブルってるし 周りに人もいねぇ、それは助かった!
“スバル”: にしたってフェネ!  いくらなんでも早すぎないか!?
“フェネ”: 人が大勢いる環境下でのページのマナ吸収効率について 我々が前例を把握しているわけではありません
“フェネ”: その状況で、遅速について議論しても無駄かと
“フェネ”: ただ…… 一つ仮説は提唱できます
“スバル”: 聞こうか
“フェネ”: ページに、低量のマナで顕現可能な存在が描かれていた
“スバル”: つまり、ザコのページだったってことか!
“フェネ”: スバル氏の低俗な語彙に当てはめるのであれば、そうなります
“スバル”: 言いたいことは色々あるが、そいつは後だ! よし、サクッと封印しちまおう……って
“スバル”: おいおい、誰かきちまったぞ!
ナレーター: スバルたちが物陰から姿を現すと同時に 異形のモノに対峙する影が一つ
ナレーター: 長い緑髪を後頭部で一本に束ねた麗人 騎士風の戦装束に身を包んだ女性だった
ナレーター: 威嚇するような異音を発する異形の存在に怯むことなく 麗人は、腰に携えた剣を抜いた
“スバル”: ……おい! あれ、加勢しなくて大丈夫か!
“フェネ”: これがロズワール氏の忠告であるところの、 目立たないように、に相当する場面では
“スバル”: 確かに腕は立ちそうだけど…… 何するかわかんねぇだろ、アレ!
“レム”: 心配はいらないみたいですね
“スバル”: え!?
ナレーター: あれこれ気を揉むスバルが視線を戻したときには すでに異形のモノは一刀両断され朽ちていた
“スバル”: すげぇ……!!
緑髪の麗人: そこに誰かいるのだろう、厄災は去った 姿を現すといい
“スバル”: うげっ…… バレてる……!
“レム”: ここは穏便に済ませてしまいましょう……!
ナレーター: レムは物陰から姿を見せ 騎士然としたその人にすかさず礼を告げる
“レム”: ありがとうございます お陰で命を拾いました
緑髪の麗人: 怪我はないか? ……連れの者もいるようだが
“レム”: はい、たいそう怯えて足腰が立たなくなってしまったようで 姿を見せない無礼をお許しください
緑髪の麗人: なるほど……アレを見るのは私も初めてだ、 怯えるのも無理はない、か……
緑髪の麗人: とはいえ、今日何度目かの初めて、ではあるがな
緑髪の麗人: まだ日が高いにもかかわらずこうしてアレに遭遇したのだ また出会わないとも限らない
緑髪の麗人: 日が暮れぬうちに戻ることだ
“レム”: はい、お心遣いありがとうございます 主人が立てるようになったらすぐに
緑髪の麗人: 私は先を急ぐ 連れが落ち着くまで時間を共にできず申し訳ない
緑髪の麗人: では、卿らの健勝を祈る
ナレーター: 麗人は、緑髪とマントを翻し、 あっという間に見えなくなってしまった
“レム”: ……スバルくん、フェネさん、もう大丈夫です
“スバル”: サンキュ、レム! とんでもないアドリブ力、主演女優賞はお前のもんだ!
“レム”: レムがスバルくんの人生の主演女優だなんて、 照れてしまいますが、おそらくレムの演技は見抜かれていたかと
“スバル”: ……見抜かれてた? 主演女優賞バリの演技が?
“レム”: ええ
“スバル”: そっか…… つまりただ者じゃねぇってことだな
“フェネ”: 恐怖に支配され足腰も立たないスバル氏 震えはおさまりましたか?
“スバル”: それはレムの作り話だ 今の話の流れで、どうしてそうなんだよ?
“レム”: 震えるスバルくんを抱きしめるのもレムの務め さあスバルくん、レムの胸に
“スバル”: あれ!? 話の流れがわかってないのは俺だった!?
ナレーター: 思わず天を仰ぐスバルを尻目に、フェネは『禁書』のページを開く
ナレーター: 空高く霧散した異形の塵が、『禁書』に吸い込まれた
“スバル”: 絵は……現れないな
“フェネ”: 先程の存在があるべき先、ページがないからでしょうね
“スバル”: ってことはページはまだどこかで、アレを生産してるってことか
“スバル”: さっきの人、何度か遭遇してるみたいな口ぶりだったし
“レム”: あの方は先を急いでいると言っていました もしかしたら……
“スバル”: アレを狩るために探してるってことだろ にしてもいったい何者なんだ……
“レム”: レムには少し心当たりが もしかしたらあの方は王選候補の関係者かもしれません
“スバル”: ちょっと待て、それって最悪のパターンなんじゃ……?
“スバル”: 王選候補に深入りされるわけにはいかねぇ! ──フェネ、次の反応はっ?
“フェネ”: 微弱ですがあちらです
“スバル”: よし! 急いで向かおう!
“スバル”: フェネ、あっちであってるんだよな? クソっ、人が多くてなかなか進めねぇ……
???: どけどけ、どいてくれー!!
ナレーター: 少し離れたところから少女の声が聞こえる 人混みをかき分けて、誰かがこちらに向かってくる
“スバル”: なんだ? こんな人混みで走るなんて何考えて……
“スバル”: ん、フェルト?
“フェルト”: 邪魔すんな! どいてくれ! ……って、兄ちゃんがなんでいんだよ!?
“スバル”: いてもいいだろ そういうお前こそなに急いでんだ?
“スバル”: せっかく命拾いしたってんのに、 また盗み働いてんじゃねぇだろうな?
“スバル”: あれを機に心を入れ替えてくんなきゃ 助けた俺やエミリア、爺さんが報われねぇよ
“スバル”: いや…ちょっと待て…… お前ってラインハルトに連れてかれたはずじゃ……?
“フェルト”: わーーーーー! 言うなその名前!!
“スバル”: え? 何がマズイんだ?
“フェルト”: 兄ちゃん、悪運だけは強いだろ 何も言わずに手伝ってくれ!
“スバル”: はぁ!? 誰が泥棒の片棒を担ぐか! って……
“スバル”: ちょっ!? おいって!!
ナレーター: スバルの言うことなど一切聞かず フェルトはその手を掴んで走り出す
“スバル”: ちょいちょいちょい! 待て、走るなって! 危ねぇだろ!
“フェルト”: バカ! 全力出さねーと逃げ切れねーんだ! 相手が誰だと思ってんだ!!
“スバル”: バカはどっちだ! 今、衛兵は忙しいんだぞ!? 王都で何が起こってんのか知ってんのか!
“フェルト”: 知らねーよ! 全力出さねーなら引きずってくぞ!
ナレーター: そう言ってフェルトは、更に速度を上げる まるで味方をするように、風がフェルトを包んでいた
“スバル”: はぇぇ!!! 無理!!! 足がとれちゃう!!! って、お前の足どうなってんだよ!?
“フェルト”: 声がでけーんだよ! 兄ちゃんはしゃべんな!!
ナレーター: 一方、フェネとレムは——
“フェネ”: フェネたちに内緒で逢引の約束があったとは スバル氏も隅におけませんね
“レム”: いえ、無理やり連れていかれたに違いありません
“フェネ”: 失礼しました 冗談をいう状況と相手を見誤りました
ナレーター: 突如現れた金髪の少女に連れ去られたスバルを 間髪入れずに追いかけたのだったが——
ナレーター: あまりの人混みと、少女の足の速さのせいで すでに二人を見失っていた
“レム”: 参りました……まさかこんなかたちで 探しものが二つになってしまうなんて
“フェネ”: スバル氏に危険は及ばないような予感もあるのですが どちらを優先しますか?
“レム”: 知人だったと仮定しても、『禁書』のページの影響を受け スバルくんに危害を加えないとも限りません
“フェネ”: なるほど、スバル氏に私怨があっての犯行の場合 その可能性は飛躍的に上がります
“レム”: スバルくんが誰かに恨まれることなんてないと思いますが 一方的な人の感情は測れませんから
“フェネ”: どうしてあの体たらくが レム女史の信頼を勝ち得ているのか甚だ疑問ですが
“フェネ”: レム女史を見込んでそのありえなそうな可能性を支持します
“レム”: ページの反応を探りながら、聞き込みです フェネさん、よろしくお願いします!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_06

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_06_逃走と闘争

ナレーター: 誰かに追われていたフェルトに、無理やり引っ張られ 一緒に逃走することになってしまったスバル
ナレーター: 二人は、息を切らせながら路地裏で身を潜めていた
“フェルト”: ふー、なんとか撒いたか……
“スバル”: おいこら
“フェルト”: ……ってーーー!! 何すんだよ兄ちゃん!
“スバル”: なんとか撒いたか、じゃねぇだろ! いったい何なんだ? 事情を説明してくれ!
“スバル”: だいたいお前のスピードいかれてんだよ!  俺の足ちゃんと付いてるよね?
“フェルト”: まーまーそう興奮すんなって! なんかいいことでもあったか?
“スバル”: ないわ! むしろ災難続きだ!
“スバル”: ……で、改めて説明を乞うぞ 盗みを働いて逃げてたわけじゃねぇんだよな?
“フェルト”: ちげーよ! 断じてちげー! そういうのはもうやってねーんだ
“スバル”: なんだ、やっぱり足は洗ったんだな そりゃよかった、これで爺さんも報われるな
“フェルト”: おい! ロム爺を死んだみたいに言うな! ちゃんと生きてんぞ!
“スバル”: おうおう、爺さんも元気か そりゃご多祥なこって
“スバル”: っと、どうも話がそれてダメだな んで、盗みじゃないなら何から逃げてたんだ?
“スバル”: 説明してもらう権利が俺にはあると思うぞ さんざん連れまわされたんだ、話してくれ
“フェルト”: ……しつこい男から逃げてたんだ
“スバル”: ロリコン野郎か……そりゃ災難だったな
“フェルト”: わけわかんねーこと言って 憐れむような目で見てんじゃねー!
“スバル”: 相手が変質者じゃ無理もねぇけど、 あんなに速く走る必要あったか? マジで足が取れそうだったし
“フェルト”: バカ! あれくらい本気で走らねーと逃げ切れねー奴なんだよ!
“フェルト”: とにかくこの路地を反対側に抜けて——
ナレーター: 次の瞬間、路地の奥から獣のような怒号が響く
“スバル”: ──っ!!
“フェルト”: ちっ、喧嘩か……めんどくせー
“スバル”: 今の人間の声か!?
“フェルト”: 王都に魔獣がいるわけねーだろ 頭がおかしくなったんだ、貧民街じゃ日常茶飯事だぜ
“フェルト”: 衛兵がきたらめんどーだ さっさとずらかろ……って兄ちゃん?
“スバル”: あいつらを止めにいく
“フェルト”: おいおい、何いきなり正義感出してんだ? ほっとけってあんなの
“スバル”: ほっとけねぇんだよ!!
“フェルト”: な、なんだよ血相変えて…… 大丈夫か?
“スバル”: わりぃ、でかい声だしちまった けど、無視できねぇんだ!
“フェルト”: あ、ちょ! 兄ちゃん!? 待てってば!!
“フェルト”: ちっ! ひとりにはしておけねー 世話がかかる兄ちゃんだぜ、まったく

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_07

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_07_赤髪の友人

ナレーター: 路地裏の奥で、我を失い殴り合いの喧嘩をしていたのは スバルが何度も出会ったことのあるチンピラだったが……
“スバル”: 『禁書』のページの影響でわけわかんなくなって 仲間と殴り合いした末に……
“スバル”: 二回もあいつに遭うなんて 俺もよっぽどだけど、お前らもついてないな
ナレーター: 颯爽と現れた人物によって、危機は一瞬にして退けられた チンピラ三人組はあっという間に地面にのびてしまっていた
“スバル”: ここまでくると、こいつらが気の毒だけども、 サンキュー、助かったよ
“スバル”: そして、会いたかったぜ、ラインハルト
ナレーター: 赤い頭髪、異常に整った顔立ちの青年 スバルにとっては命の恩人でもある友人——
“スバル”: もしかしたら会えるんじゃないかって思って さっき詰め所にいったんだけど、空振りだったからさ
“スバル”: それにしても、また路地裏で、しかもトン・チン・カン付きとは ここまでくると運命を感じちまうぜ
“ラインハルト”: その言葉、そっくりそのまま返そう
“ラインハルト”: まさかフェルト様とご一緒してくれてるなんてね
“スバル”: 今、なんて?
“フェルト”: ちっ! 大通りで兄ちゃんと出会っちまったのが、 運の尽きだったみてーだ
“フェルト”: よりにもよって、一番会いたくねー奴のとこに 案内してくれるとはな!
“スバル”: まさか、フェルトの追手がラインハルトだったとはな……
“フェルト”: 兄ちゃん、アタシがあのあとどうなったか聞いてなかったのか?
“フェルト”: 普通なら想像つくだろ、誰から逃げてたかぐらい
“スバル”: さっさと事情を説明しなかったお前が悪い
“フェルト”: 兄ちゃんが関係ねー話ばっかするからだろ!
“スバル”: うっせぇ! 俺はお陰で仲間とはぐれたんだぞ!!
“ラインハルト”: 仲がよろしいようで、僕まで嬉しくなってしまいます いつの間にスバルとお約束をされていたんですか?
“ラインハルト”: 友人との再会を邪魔するほど僕も不粋ではありたくない そう言ってくれればよかったのです
“フェルト”: お前の頭はどーなってんだよ! なんでそうなるんだ!!
“ラインハルト”: 議論は屋敷に戻ってからじっくりしましょう ところでスバル、僕に何か用だったのかな?
“スバル”: あ、そうなんだラインハルト お前に聞くのも、ちょっと違うかもしれないんだが……
“スバル”: 最近、王都がなんか騒がしくないか? やけに衛兵も多いし
“ラインハルト”: ああ、それか それなら……
ナレーター: 常に自分に向けられていたラインハルトの意識が、 スバルに逸れた一瞬をフェルトは見逃さなかった
“ラインハルト”: ──フェルト様!
“フェルト”: お前こそ!  たまにはお友達と王都散策でもしてたらどうだ!!
ナレーター: フェルトの姿は、一瞬で見えなくなってしまう——
“スバル”: ……どうするよ、 お前さえよければお茶くらいなら付き合うぜ?
“ラインハルト”: 魅力的な提案だけれど、また今度でもいいかい? 僕はたった今、大切な人に逃げられてしまったところでね
“スバル”: そいつはご愁傷さま ちなみに、大切は恋愛方向じゃなくて仲間的な意味合いだよな?
“スバル”: んで、大切な人探しに俺もついていく流れっぽいな、これ
“ラインハルト”: ああ、協力を仰ぎたい
“スバル”: 逃亡者の共犯から、今度は追手の助っ人か なんだか裏切ったみたいでスッキリしねぇ
“スバル”: けど、お前と俺の仲だ 協力させてもらうぜ、ラインハルト
ナレーター: 直後、スバルとラインハルトは、 フェルトが消えた方角へ走り出していた

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_08

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_08_不良少女の今

“スバル”: で、ラインハルト、手伝ってる身としちゃ、事情を知っておきたい 聞かせてもらってもいいか?
“ラインハルト”: もちろんだよ、スバル 答えられる範囲で答えさせてもらおう
“スバル”: 貧民街での悶着のあと……俺は気を失ってたわけだけど
“スバル”: フェルトはお前が連れてったってのは本当みたいだな?
“ラインハルト”: その通りだ 今は、アストレア家で預からせていただいている
“スバル”: その言い回しだと、 俺の中でまだ拉致監禁の線が消えないんだが……
“スバル”: 一度はお咎めなしになったフェルトを連れてくってのは どういう風の吹き回しだ?
“スバル”: まさか、非行少女の更生に目覚めたってわけでもないだろ? いや、熱血なお前ならあり得るのか?
“ラインハルト”: さすがスバル、敵わないな どうして僕がフェルト様の教育をしていると思ったんだい?
“スバル”: えぇ!? 当たっちゃった!? 思いがけない正解に、俺、ちょっと動揺しちゃう!?
“ラインハルト”: フェルト様はあのような場所にいるお方ではない きちんと教育を受ける権利も、義務もある
“スバル”: 俺の故郷だとそれは、 子どもにとって当たり前のやつなんだけどな
“スバル”: フェルトに特別な才能でも感じたってやつか? 確かに足はクソはえぇけど……
“ラインハルト”: まぁ、そういったところだ あの方は、特別なんだよ
“スバル”: やけに持ち上げるな……
“スバル”: それとも、将来のある後輩に熱血指導するのが趣味とかか?
“ラインハルト”: ははは、面白いことをいうね、スバル
“ラインハルト”: 生憎そういう趣味はないが フェルト様の成長が今の楽しみなのは事実かな
“スバル”: 期待の大型新人に夢を託すコーチみたいな言い方だな……
“スバル”: とにかく、フェルトはお前んちで 大切にされてるってことでいいか?
“ラインハルト”: その通りだ、スバル 最上級の礼を持って接しさせていただいている
“スバル”: あいつにそんな才能があったとはね…… まぁ、『剣聖』のお前が言うならそうなんだろうな
“スバル”: わかったぜ、ラインハルト
“スバル”: フェルトのことだ、どうせ窮屈だとか言ってゴネてるんだろ やっといい生活が手に入ったんだ、文句言うなってんだ
“スバル”: よし! 手伝うぜ! フェルトの奴をとっ捕まえよう
“ラインハルト”: ありがとうスバル、恩に着るよ
“ラインハルト”: フェルト様は非常に尊いお方 何かあってからでは従者として示しがつかない
“スバル”: 従、者……?
“スバル”: 悪いラインハルト、これだけはいっておくぞ
“スバル”: お前の教育方針に口出す権利はないけど あいつは甘やかすとつけあがるタイプだからな!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_09

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_09_カルステン家の影

ナレーター: ラインハルトの尋常ではない能力のお陰で たった二人のフェルト包囲網は、確実に彼女を追い詰めていた
“フェルト”: ちっくしょ~~! どうなってんだ、アイツ!
“フェルト”: しつこいにも程があんぞ!
“ラインハルト”: 何があっても、あなたに逃げられるわけにはいかないのですよ フェルト様!
“フェルト”: くっそ……こっちもダメか! もうここしか……
“スバル”: って、くると思ったぜフェルト 逃げ足が早いだけじゃ、俺たちからは逃げられねぇ!
“フェルト”: ──に、兄ちゃん!?
“ラインハルト”: フェルト様、もう十分気分転換になったでしょう そろそろ屋敷へお戻りください
“フェルト”: 見損なったぞ兄ちゃん!
“スバル”: うっ…… 地味に刺さる……
“スバル”: でも、まぁ、戻ってやれよ、フェルト
“スバル”: 毎日風呂に入れて、ふかふかのベットで眠れて 働かなくても三度の飯にありつけるんだろ?
“スバル”: しかも、あんなチート野郎が従者だそうじゃねぇか 身の安全だって保障されてる
“スバル”: この上ない好待遇な気がするんだが、何がそんなに不満なんだよ?
“フェルト”: その通りだ、兄ちゃん いい暮らしをしてんのは認める ──だけどな!
“フェルト”: アタシは何にも縛られねー! 窮屈なのは勘弁なんだよ!
“フェルト”: 何のためにあんなこと覚えなきゃなんねーんだ? 礼儀や作法になんてアタシは興味ねーぞ!
“ラインハルト”: それに関しては毎日ご説明しているはずです
“スバル”: もしかして、更生させるだけじゃ飽き足らず 社交界デビューでも飾らせるつもりか?
“スバル”: だとしたらすげぇな、まるでシンデレラだ
“ラインハルト”: シンデレラ…というのはわからないけど、 フェルト様には相応の振る舞いを身に着けていただかねば
“フェルト”: 断る! 絶対にイヤだかんな!
“ラインハルト”: フェルト様なら大丈夫です さあ、屋敷に戻りましょう
“フェルト”: はあ? なんでそーなんだよ! アタシはちゃんと断るって言ったぜ!
“スバル”: よくわかんねぇけど、達者でなフェルト 次に会うときは、きっと立派なお姫様だな
“フェルト”: うっせーよ! この裏切り者! 呪ってやる!
“スバル”: いや、呪いは勘弁してくれ、もう懲り懲りだよ
“ラインハルト”: あ、そうだスバル、先程の問いにまだ答えていなかったね
“ラインハルト”: 察しの通り、王都では今、異変が起こっている 衛兵も騎士団もその対応に追われている状況だ
“ラインハルト”: 市中に知れ渡ると、あらぬ混乱を招く 秘密裏に処理してしまおうというのが我々の考えだ
“ラインハルト”: 友人として君には伝えさせてもらったけど、 あまり触れ回らないでほしい
“スバル”: おう、それについては俺も賛成だ 安心してくれ、触れ回ったりしねぇよ
“ラインハルト”: ありがとう、スバル ただ、すぐに解決するはずだ
“ラインハルト”: 我々だけではなく、善意で協力してくれる方々もいるしね
“スバル”: ああ、そうみてぇだな さっき、それっぽい騎士風の人に会ったよ
“ラインハルト”: さすがスバル、すでに知ってたんだね
“ラインハルト”: おそらく、カルステン公爵の関係者だろう 彼らの協力があれば、問題の解決は容易いはずだ
“スバル”: なるほど、な…… 衛兵と騎士団以外にも動いてる奴らがいる、と……
“ラインハルト”: では、スバル、くれぐれも気を付けて
ナレーター: 恨み言を言うフェルトを抱え、ラインハルトが歩き出す
“スバル”: さて、と……だいぶ回り道しちまったが
“スバル”: フェネとレムを探さねぇとな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_10

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_10_お節介にはご注意

ナレーター: 結局、日が暮れるまで探し回ったがフェネとレムとは合流できず スバルは仕方なく、一度宿に戻ることにした
“レム”: スバルくん!!
“スバル”: ああ、よかった……帰ってきてたんだな フェネも、すまなかった
“フェネ”: てっきり朝帰りかと 多少評価点として加味します
“スバル”: どんな盛大な勘違いだよ……
“フェネ”: よかったですね、この宿に地下室があったなら レム女史から愛ゆえの鎖により縛り上げられていたところでしたよ
“スバル”: レム、ごめんね!? あいつはただの知り合い! ホントにそういう関係じゃねぇから!
“エミリア”: スバル! 大丈夫だった? 急に連れていかれちゃったって聞いて すごーく心配してたんだから
“スバル”: エミリアたん!  ごめん、ちょっと面倒なことに巻き込まれちゃってさ
“エミリア”: 面倒なこと?
“スバル”: ああ、でも大丈夫だよ、エミリアたん! フェルトの奴だ! フェルトとラインハルトの追いかけっこに付き合わされたんだ
“フェネ”: 我々に面倒事を押し付けて遊興していたと?
“スバル”: そんな愉快なもんじゃねぇよ! お陰様で大幅に時間をロスっちまった
“スバル”: その様子じゃ、そっちは空振りだったみたいだな?
“レム”: すみません、スバルくん……
“スバル”: いや、いいって……こっちも、ラインハルトに会えたってのに たいしたことは聞き出せなかったし……でも
“スバル”: カルステン公爵だかの関係者が 調査に乗り出してるって話は聞けたな
“エミリア”: カルステン公爵……
“スバル”: ん? エミリアたんはなんか知ってる感じ?
“ロズワール”: クルシュ・カルステン公爵は 王選の最有力候補といわれる傑物だぁーあよ
“スバル”: ……マジでか?
“レム”: ということは、日中に会ったあの方はやはり……
“スバル”: ほぼ間違いなく、カルステン公爵に関係した騎士だろうよ
“スバル”: 王選のライバル陣営に首突っ込まれるとか 最悪でしかねぇってのに……
“スバル”: この流れでご本人参戦なんてことになったら マジで目も当てられねぇ!
“スバル”: 悪い、俺、夕飯はいいや! いくぞ、フェネ!
“エミリア”: 待ってスバル、私もいくわ
“スバル”: いや、エミリアたんは宿で待っててくれ この時間だとパックは寝ちゃってるだろ?
“スバル”: 今日は全然見てねぇし、たまには残業しろって言いたいけども、 ないものねだりをしても仕方ねぇ
“エミリア”: 確かにパックは頼れないけど……
“エミリア”: このまま何もせずにいるなんてできない だって、私の問題なのよ?
“スバル”: 俺の失態を自分のミスって捉えるエミリアたんのことは マジで尊敬する、一度も俺を責めなかったしさ
“スバル”: でも、カルステン公爵だかの陣営と鉢合わせしたらどうするんだ? すげぇ、面倒なことになるぜ
“エミリア”: それなら、このフードをかぶれば大丈夫 それに、いざとなればスバルの後ろに隠れればいいでしょ?
“スバル”: それは可愛くて魅力的な提案だけど…… わかってくれよ、エミリアたん
“フェネ”: ……今晩の調査は中止にしたほうが懸命かと
“スバル”: おい、今の話聞いてなかったのか!? なんでそうなんだよ!
“フェネ”: 我々が懸念している最たる事象を整理しましょう それは王都の人々に危害が加わること
“フェネ”: この時間帯はすでに人通りが少ない 日中ほど問題が起こる確率は低いと想定できます
“フェネ”: かつ、ページの反応が依然弱い 問題は起きづらい状況とも推察します
“フェネ”: この広い王都を一日探索してみて、微弱な反応を追い 暗闇の中を捜索することがいかに非効率だったかを指摘します
“フェネ”: よって、一晩様子を見る猶予があると判断し、 無駄な行動はせず体力回復に専念することを提唱します
“スバル”: お、おう…… 隙のない正論に返す言葉が見つからねぇ……
“フェネ”: フェネは頭脳明晰かつ冷静沈着ゆえ
“スバル”: ページの反応をうまくキャッチできなかった件については 責任を追求したいところだけどな?
“エミリア”: 確かにフェネの言う通りかも……
ナレーター: そう納得したものの、エミリアの表情は晴れない
“ロズワール”: ここは私が、軽く見回りをしてこようじゃーぁないか それでよいですね、エミリア様
“エミリア”: ありがとう お願いね、ロズワール
“ロズワール”: お任せください
“レム”: それでは、夕食にしましょう 準備はすでにできております
“スバル”: そういや、ロズワールとはどんな話をしてたんだ?
“エミリア”: あのね、もうじき王城で、王選候補のみんなが集まって 大切な話し合いがあるはずだったの
“スバル”: あるはずだった、ってことは…… 中止になったってことでオッケー?
“エミリア”: うん……今は王都が物騒だから、問題が解決してからになりそう
“スバル”: そうか……そんな影響が……
“スバル”: (俺は……エミリアの邪魔をしちまったわけか……)
“エミリア”: スバル、あんまり自分を責めないで 起こっちゃったことは仕方ないもの
“エミリア”: それに、まだ心の準備ができてなかったから 私、ちょっと助かっちゃった
“スバル”: エミリアたん……
“スバル”: それで、どれくらい延びそうなんだ?
“エミリア”: うん、とりあえず一ヶ月だって それぐらいあれば解決されるって予想みたい
“スバル”: そんなに猶予がないって知ってるのは、俺らだけだもんな……
“スバル”: ササッと解決しちまえば、エミリアたんがその話し合いのために 色々準備する時間も増えるってわけだね?
“エミリア”: そうね、そういうことになるかも
“スバル”: よし、じゃあなんとしても明日解決しよう! んで、屋敷に凱旋だ!
“エミリア”: 明日は私もいくからね?
“スバル”: おう、いざとなったら俺の後ろに隠れてくれ!
“エミリア”: うん よろしくね、スバル
“スバル”: と約束したのに、ひとり出発する俺でした……と
“スバル”: ま、早起きしちまったから、先に始めたってだけだ それで怒ったりはしねぇよな、さすがに
“スバル”: まぁ、早起きってより、 眠れなかったってのが正確な表現だけどな……
ナレーター: スバルは宿を発つ前にフェネを探したが、 すでに出発したあとだったらしくフェネの姿は見当たらなかった
“スバル”: ったく、昨日は猶予があるとか言ってたくせに 自分が一番焦ってんじゃん
“スバル”: って、使命って言ってたもんな アイツが焦るのも無理ねぇか……
“スバル”: アイツがいなくても、聞き込みぐらいは俺にもできる いっちょ頑張りますか!
“スバル”: と、気合を入れといてなんだが、こりゃ骨が折れるな……
“スバル”: 最近変なことはありませんでしたか? 昨日は喧嘩を見かけませんでしたか?
“スバル”: そんな質問じゃ、 まともな情報なんて得られるわけねぇ……
“スバル”: ……ん?
“スバル”: お嬢さん、さっきから俺のこと見てるけど、なんか用か?
“スバル”: 目つきが悪いだけで不審者扱いってのはなしだぜ?
ナレーター: 一人の少女—— 帽子をかぶった、髪の長い少女がスバルを見つめている
髪の長い少女: お兄さんは、衛兵さんですか?
“スバル”: それ、俺が私服警察ですかって感じの質問? それとも非番かって?
“スバル”: まぁ、その質問に答えるんなら、 衛兵じゃねぇ、ってことになるんだけど
髪の長い少女: そうなんですね、なんだか聞き込みをしてるみたいだったから てっきり衛兵さんなのかと思いました
髪の長い少女: でもよく見ると、衛兵とは思えないお間抜けな顔ですね 納得しました
“スバル”: 初対面ですげぇディスられた!?
“スバル”: ……それで、俺が衛兵だったら何か都合のいいことでも? それとも後ろめたいことでもあった?
髪の長い少女: 衛兵さんじゃないけど、王都の異変を調べてるんですよね?
“スバル”: ……まぁ、そうだな
髪の長い少女: なんで?
“スバル”: ……友達が、困ってるんだ だから解決してやりてぇ
髪の長い少女: わかりました ではついてきてください
ナレーター: そう言うと少女は、縁石から腰を上げて、歩き始めた
“スバル”: おいおい、ちょっと待て! さすがに説明なしじゃ一緒にはいけねぇかな
“コリーナ”: コリーナっていいます、お兄さんは?
“スバル”: ……スバル、だ それで、なんか知ってるんだよな?
“コリーナ”: はい、スバルさんの調べていることに関係があるかもしれません
“スバル”: なるほど……胡散臭くはあるが、今のところ手詰まりだ 仕方ねぇ、ついてってやるよ
ナレーター: スバルとコリーナは、塀に隠れて、二人の男女を見つめていた
“スバル”: ……あの夫婦が、 昨日の晩、すげぇ声を張り上げて揉めてたんだな?
“コリーナ”: はい お皿が割れる音とか、壁を叩く音とか とてもうるさかったです
“スバル”: 俺が見る限り、ハグしてチュッチュして、 どう見てもバカップルならぬバカ夫婦だけどな
“コリーナ”: 昨日は、びっくりするくらいの喧嘩をしてました
“スバル”: それ痴話喧嘩がエスカレートしただけだろ!? どう見たって、仲直りして今はラブラブじゃねぇか!
“コリーナ”: 激しめに揉めている人がいたら教えてということだったので
“スバル”: それはそうだけども、とにかくアレは違う! 次だ次! 次いってみよー!
ナレーター: ところ変わってスバルとコリーナは、草むらに身を潜めて 犬のような何かを見つめていた
“スバル”: 犬だけど、首から上が変わっちまった何かと遭遇した、 で合ってるかな?
“コリーナ”: はい、夜なのでとても怖かったです
“スバル”: そうか…… それで、今、アレを見てどう思うんだよ?
“コリーナ”: とても微笑ましいです
“スバル”: だよね!? 紙袋かぶって遊んでるだけだもんね!
“コリーナ”: 昨日の夜は怖かったんです 慰めてください
“スバル”: 今はほっこりしてるだろうが! それでチャラだ! 俺の慰めは必要ねぇよ!
“スバル”: 頼むぜ、コリーナ…… お兄さん、遊んでるわけじゃないんだ……
“コリーナ”: 次こそ大丈夫です
“スバル”: 本当だよね? 次こそ頼むぜ、マジで!
“スバル”: ……あやしい紙、でいいのか、これ
“コリーナ”: はい、あんなにたくさん
ナレーター: スバルは、ゆっくりと地面に落ちた紙を拾い上げる
“スバル”: これは……
“スバル”: チラシ、だな……
“コリーナ”: はい、昨日それを持った女性が 狂ったように泣き叫んでいました
“スバル”: それはそうだろうね!? ペットが迷子になった飼い主の手作りチラシだからな!!
“コリーナ”: その似顔絵、見覚えがあると思いませんか?
“スバル”: さっきの袋かぶってた犬だよな、どう見ても! わかってるんならこのマダムに連絡してやれよ!!!
ナレーター: その後も、コリーナが案内する異変は どれもこれも見当外れなものばかりだった
“コリーナ”: 楽しかったです
“スバル”: だろうね!!  俺のリアクション見て笑いこらえてたもんね!?
“スバル”: これ以上は付き合いきれん! 一つくらいはと期待した俺が馬鹿だったよ!
“スバル”: きれいに全滅じゃねぇか!
“コリーナ”: スバルさん、詐欺師には気を付けてください
“スバル”: お前に言われたくねぇよ!
“スバル”: じゃあな、コリーナ あんまり人をからかうもんじゃねぇぞ!
ナレーター: 遠ざかっていくスバルの背中を見つめながら コリーナはポロリとつぶやく
“コリーナ”: スバルさんは…… 心配になるくらい、お人好しですね……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_11

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_11_本格捜査、開始

ナレーター: スバルが宿に戻る頃、日はだいぶ傾いていた
“エミリア”: もう! どこにいってたの? 一緒に調査するって約束忘れちゃった?
“スバル”: エミリアたん、ごめん!
“スバル”: 早く起きすぎちゃって、それで軽く聞き込みでもって 思ったんだけど、情報を持ってるってヤツに会っちまって……
“フェネ”: 空振りだったわけですね
“スバル”: なんでわかったんだ!?
“フェネ”: スバル氏の顔は辞書なので
“スバル”: どういう意味だよ……
“フェネ”: 全部、書いてある
“スバル”: お後がよろしいようで、ってならねぇよ!!
“スバル”: 出遅れたのは、マジで謝る でも、お陰でいっても無駄なエリアはそれなりにわかった
“スバル”: さっそく、本格捜査開始といこうぜ!
“フェネ”: フェネとスバル氏、レム女史にエミリア女史が加わる という理解でよろしいでしょうか
“スバル”: だな ロズワールがくるとさすがに目立ちすぎるし 司令塔的な立ち位置が合ってんだろ?
“ロズワール”: よくわかっているね その布陣でいこうじゃーぁないか
“スバル”: おうとも、必ず吉報を持って帰る 期待して待っててくれ
ナレーター: 一同が宿を出発して、まもなくのことだった
“フェネ”: ……反応です
“スバル”: 顔色が変わったな、つまりそういうことか?
“フェネ”: はい、例えるなら昨日、 異形のモノに遭遇したときのような反応です
“スバル”: 釣れたか…… いくぞ!!
ナレーター: スバルたちは反応にめがけて走りながら昨日の様子を確認し合う
“エミリア”: スバル、昨日は戦う前に騎士風の人がやっつけちゃったのよね?
“スバル”: ああ、文字通り一刀両断! 女とは思えない一撃だったぜ
“エミリア”: 騎士風の女の人……
“レム”: みなさん、構えてください!!
“スバル”: おう……いつ見ても気分が悪くなるデザインだ……
“フェネ”: どうやら他に追手はいない様子
“エミリア”: でも、すぐそこは大通りよ! なるべく騒ぎにならないようにしないと!
“スバル”: フェネ、今のフリじゃない! わかってるよな?
“フェネ”: 承知です、爆発させます みなさんお下がりください
“スバル”: 失格だフェネ、お前の方こそ下がっててくれ! ということでレム、頼んだぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_12

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_12_カララギの商人

“エミリア”: レム! 避けて!
ナレーター: エミリアの鋭い声に合わせ、素早くレムは横に飛ぶ
ナレーター: 次の瞬間、エミリアが放った無数の氷柱は 異形の存在を貫き、霧散させていた
“フェネ”: 綴じます…… ふむ、やはりこれも該当するページがないようです
ナレーター: フェネは砕け散り霧となった異形の存在を『禁書』に封じながら ため息をつく
“スバル”: デザイン的には昨日の奴とおんなじだな 今回のページにはあれがたくさん描かれてたのか?
“フェネ”: 一ページ一体ではないという、悲観的仮説が生まれました
“スバル”: まったくだ 骨が折れそうだぜ……
ナレーター: 路地裏から退散しようと、 大通りの方へ身体を向けたスバルは戦慄する
???: なんや騒がしくて見にきたら、面白そうなメンツやないの
“スバル”: 関西弁……ってか、いつからいたんだ!?
ナレーター: 白いドレスを身にまとった紫髪の少女が、 スバルたちを見つめている
ナレーター: おっとりとした雰囲気だが、どこか超然とした態度…… そして聞き覚えのある訛りにスバルはいいしれぬ焦りを覚えた
“エミリア”: ……!
ナレーター: 同じく、少女に何か危険なものを感じたのか エミリアは身を隠すようにスバルの背後に回っていた
“スバル”: (エミリア……! ここはなんとかごまかさねぇと……)
おっとりとした少女: いつからいたんだなんて、まるでコソコソと 後ろめたいことでもしとったみたいな反応やね
“スバル”: 後ろめたいことなんてしてねぇし、 そもそも君には関係ないんじゃねぇかな?
おっとりとした少女: そんなことあらへんよ ウチは大事な商談中やったんよ それをうるさくされて、関係ないはないんやない?
“スバル”: うぐっ……! も、もしかしてあの騒ぎで大事な商談が……?
おっとりとした少女: あはは、損害賠償でも請求されると思ったん? お得意さんやったから、ええ雑談のネタになったわ
“スバル”: んだよビビらせやがって! だったらむしろ感謝されるべきじゃねぇか!
おっとりとした少女: ……ウチは欲深でな
おっとりとした少女: 興味あることには首を突っ込みたくなるんよ あんなもん見せられたらなおさらや
“スバル”: ──っ!!
“スバル”: 全部、見てやがったのか……?
ナレーター: 少女が浮かべた薄ら笑いにスバルは背筋が凍る思いだった
“スバル”: ……いったい何者だ?
“アナスタシア”: ウチはアナスタシア・ホーシン
“アナスタシア”: カララギではそこそこ名が通ってるつもりやけど 王都ではまだまだやし、知らんのも無理ないわ
“アナスタシア”: せやけど、人に名前を聞くんやったら、 そっちも名乗るのが礼儀なんと違う?
“アナスタシア”: さっきのアレとの関係も気になるところやけど、 まずは名乗ってもらわんとな
“スバル”: (結構力を持った商人らしいし、 この人を味方につけられれば色々役立ちそうだよな……)
“スバル”: 俺の名はナツキ・スバル そして──
“エミリア”: ス、スバル……!
ナレーター: 背後にいるエミリアが何かを訴えようとするが スバルはそれに気付かない
“スバル”: こちらにおわすのはエミリア様だ いずれこの国の王になられるお方だぜ
“アナスタシア”: そんなこと勝手に決めんといてくれる? 王になられるお方やったら別におるんやし
“スバル”: ……はあ? なに言ってんだよ?
“アナスタシア”: せやから、王になられるお方は別におるって言ったんよ
“アナスタシア”: ホンマ奇遇やわ ウチも王選の候補者なんよ
“アナスタシア”: エミリアさんにはごめんやけど、王様になるのはウチや それだけは譲れへんね

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_13

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_13_紫髪の近衛騎士、再び

ナレーター: 王選候補者、アナスタシア・ホーシン 彼女に一部始終を『目撃』されてしまったスバルたち——
“スバル”: (馬鹿野郎……! 一番避けなきゃならない展開を……)
“スバル”: (どうする……どうすればいい……考えろ……!)
???: アナスタシア様!
ナレーター: 重苦しいにらみ合いは、割り込んできた声で突如の終わりを迎える
“スバル”: あいつは、昨日詰め所で会った……!
紫髪の青年: ん? 君は昨日の落とし物の…… こんなところで何をしている
“スバル”: あー……っと、ちょっと夜の散歩中だったんだけど……
“アナスタシア”: なんや騒がしいからきてみたら逢引中やったみたいでな 邪魔してえらいすまんかったなぁ
“スバル”: ……! あ、ああ……
紫髪の青年: 逢引にしては人数が多いような気もするが、まあいい アナスタシア様、何か異変はありませんでしたか?
“アナスタシア”: きたときには全部終わっとったよ
紫髪の青年: ということは……君たちが?
“スバル”: お、おう! 女の子がいっぱいだから、 俺としてもここは男気を見せとかねぇとな!
“フェネ”: 華麗なる手柄の横領、もはや芸術の域ですね
“スバル”: よーし、ちょっと黙ってろよ小狐
紫髪の青年: そうか、つまりアレを討ったということか?
“スバル”: (う……! 墓穴掘っちまった!?)
“アナスタシア”: そろそろ名乗ったほうがええんとちゃう? それが礼儀やとウチは思うで
紫髪の青年: 失礼しました、アナスタシア様 私としたことが、急いてしまいました
“ユリウス”: 申し遅れた、私はユリウス・ユークリウス 近衛騎士団の者だ
“スバル”: おう、やっぱりラインハルトの同僚だったか……
“ユリウス”: ラインハルトを知っているのか? 君の身分を確認したいのだが
“スバル”: 俺はナツキ・スバル ええと……そうだ、ラインハルトの友人だ
“ユリウス”: ふむ、ラインハルトの友人ならばアレを退けたのも 納得はいくが……
“ユリウス”: 君の後ろにおられる方、もしやと思うが 念の為、改めさせてもらってもいいだろうか
ナレーター: ユリウスの言葉にエミリアは自ら前に出る
“エミリア”: ユリウス久しぶり、元気そうね
“ユリウス”: 覚えていていただけて光栄です やはりエミリア様でしたか
“ユリウス”: スバル殿といったな、君はエミリア様の……
“フェネ”: 歓談中失礼いたします!!
ナレーター: フェネの叫び声にビクッとスバルが顔を向けたときには すでにレムの鉄球の一撃で何かが空に舞っていた
“フェネ”: ……新手です
“スバル”: このタイミングでか!?
“ユリウス”: アナスタシア様、エミリア様、後ろへ
“スバル”: おい! エミリアたんは俺の後ろ! 勝手な指示を出すな! んじゃ、フェネ、レム、いくぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_14

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_14_大きな「貸し」

“ユリウス”: お怪我はありませんか? アナスタシア様
“アナスタシア”: おおきに 面白いもの見せてもらったわ
“ユリウス”: 余興でしたらよかったのですが 生憎、あれは市井を騒がせております
“ユリウス”: 私は戻らねばならず、心苦しいのですがお傍にはおれません 今晩は決して宿から出ませんよう、お願いいたします
“アナスタシア”: はいはい、ええ子にしとるよ いざとなったらあの子らがおるしな
“ユリウス”: そうでしたか 彼らがいるのでしたら安心です
“ユリウス”: エミリア様も、ご無事ですね?
“エミリア”: ええ、大丈夫よ ありがとう
“スバル”: やいやい! なんだそのついでみたいな確認はよ!
“ユリウス”: すまない、従者としてはアナスタシア様の 安否が最優先になってしまうものでね
“ユリウス”: それに、エミリア様には君が付いているのだろう?
“スバル”: ……おうよ、その通りだ お前の心配は無用だ
“ユリウス”: それは頼もしい限りと言いたいところだが いたずらにエミリア様を危険に晒すことには反対だ
“ユリウス”: どうやら戦力は侍女の彼女だけのようだ 今晩はおとなしく帰ることをおすすめする
“ユリウス”: 後のことは、我々近衛騎士団に任せてくれ
“スバル”: ……っ!
ナレーター: スバルが言葉を発するより早く、フェネが耳元で囁いた
“フェネ”: スバル氏、連中にはこのまま即刻退場していただきたく 一言言いたい心中は察しますが、ここは忍耐です
“スバル”: ……クソっ
“アナスタシア”: なあ、ユリウス、このままウチを一人で帰さへんよね?
“ユリウス”: もちろんですアナスタシア様、宿までお送りいたします ではエミリア様、お気を付けて
“アナスタシア”: ほな、またな
ナレーター: 大通りへ向かって歩き出すアナスタシアとユリウス だが、アナスタシアはすぐに立ち止まった
“アナスタシア”: この件は貸しやで
ナレーター: それだけを言い残し、今度こそアナスタシアは ユリウスと共に大通りへと消える
“スバル”: ちっ、厄介な奴に借りを作っちまった……
ナレーター: アナスタシアとユリウスの姿が完全に見えなくなるのを待って フェネは『禁書』を開いた
“エミリア”: アナスタシアさんに、『禁書』に封印するところ見られちゃった?
“スバル”: まぁ、そうだろうね 考えたくはねぇけど、そうとしか思えない
“エミリア”: アナスタシアさん、貸しにしておくって……
“スバル”: さっきの話をユリウスに伏せてくれたからな でも、あの人に借りは作りたくなかった……なんかエグそうだし
“スバル”: しかも王選候補者って、なんの冗談だよ…… 俺の日頃の行い、そんなに悪かったか?
“エミリア”: …………
“スバル”: エ、エミリアたん!? その沈黙は色々誤解を生むよ! まるで俺の日頃の行いが……
“スバル”: って、軽く目を閉じただけでもたくさんの心当たりが!? ごめん、これ俺のせいだ!
“エミリア”: うんん、スバル、そうじゃないの でも……
“フェネ”: 帰れと言われた手前、再度彼に遭遇するのは回避したく ここからはより慎重に動く必要があります
“エミリア”: うん、私もそう思う
“スバル”: ああ、そうだな……けど、ページは見つけなきゃなんねぇ とにかく慎重にページ探しを再開しよう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_15

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_15_燃える瞳の令嬢

“スバル”: ……
“フェネ”: 我々と異形の存在を結びつける決定的な傍証は皆無です
“スバル”: フェネ、何が言いたいんだ?
“フェネ”: まだ、如何様にも言い逃れできます
“スバル”: ……んだよ、気遣ってくれたのか
“スバル”: まぁ、確かにその通りだな 悲観ばかりしても仕方ねぇ、気を取り直していこう
ナレーター: それからスバルたちは、 次なるページの反応があった場所へ向かった
“フェネ”: 反応がどんどん濃くなっています
“スバル”: そろそろって感じか?
“エミリア”: あっ……!
ナレーター: 何かを目撃したエミリアが、とっさにスバルの背後へと隠れる
ナレーター: 『禁書』のページに導かれて訪れた場所には またも先客がいたのだ
ナレーター: 血のように赤いドレス姿と それに負けず輝く橙色の髪の少女——
“スバル”: おいおい、見るからにいいとこのお嬢さんが なんでこんな時間に出歩いてんだよ?
“スバル”: けど、放ってはおけねぇ ──レム、フェネ!
ナレーター: すかさず呼ばれた一人と一匹が飛び出す
ナレーター: フェネは少女の前に躍り出ると術式を展開し レムは鉄球を軽々振り回して攻撃をしかけた
ナレーター: あっという間に、異形のモノは砂のごとく砕け散った
“スバル”: 大丈夫か、お嬢さん? 悪いことは言わねぇ、早く屋敷に戻ったほうがいい
橙色の髪の少女: 誰に指図をしておるのじゃ、凡愚
“スバル”: あぁ!?
橙色の髪の少女: 妾は妾の思うように、やりたいように動く 誰の指図も受けん
橙色の髪の少女: そもそも凡愚、何故妾に声をかけているのじゃ? 貴様にそのような許可を出した覚えはないぞ
“スバル”: えぇ!? 話しかけるの許可制!?
橙色の髪の少女: 許可なく話しかけた罪、この場で償わせてやる さあ、死んで詫びよ
“スバル”: 横暴さが異次元すぎだろ!? ここは助けてもらったお礼を言うとこなんじゃ!?
橙色の髪の少女: 礼、だと? 何のことじゃ?
ナレーター: 少女にはまるっきり心当たりがないように見える 一通り思案したのち、少女は睨むようにスバルを見つめた
橙色の髪の少女: まさか、襲われる妾を助けたなどとぬかすのではあるまいな
橙色の髪の少女: いつ妾が助けてほしいと言った? 勘違いも甚だしい 思い上がるのもいい加減にせよ
“スバル”: 助け甲斐がないなんてもんじゃねぇぞ…… なんでここまで言われなきゃなんねぇんだ?
鉄兜の男: おーおーおー、やっと見つけたぜ、姫さん 一人歩きは危険だって言ってんだろ
鉄兜の男: もちろん、巻き込まれる周囲がだけどな んで、さっそく哀れな犠牲者が出ちまったわけだ?
“スバル”: ああ、たった今、死んで詫びるように言われたとこだよ
鉄兜の男: そうか、手遅れだったか……
“フェネ”: 残念です、スバル氏…… スバル氏の遺志はこのフェネが……
“スバル”: 待て待て待て! どうして俺が死んで詫びる流れになってんの!?
“スバル”: 助けたうえに自害させられるんじゃ、 浮かばれないにもほどがあるだろ!
“スバル”: ギブアンドテイクの精神って、結構大切だと思うけどな!
“スバル”: しかも俺が求めたのってありがとうの一言ぐらいなんだぜ?
鉄兜の男: ギブアンドテイク、ね……
ナレーター: スバルの何気ない一言に 鉄仮面をかぶった片腕の男は小さな呟きを返した
鉄兜の男: 姫さん、死なすには惜しいぜ ここは俺の顔に免じて見逃してやってくんねぇかな?
橙色の髪の少女: たわけ、何故妾が貴様の顔に免じる必要がある?
橙色の髪の少女: だが、いいだろう……今回は見逃してやる 命拾いしたな、凡愚
“スバル”: 命拾いって…… これっておっさんに感謝したほうがいい感じか?
鉄兜の男: 感謝の気持ちがあんなら おっさんって呼び方、改めてもらっていいか?
“アル”: 俺のことはアルって呼んでくれよ、兄弟
“アル”: んで、こっちの姫さんが
“プリシラ”: プリシラ・バーリエルじゃ 凡愚、貴様の名を聞いてやろう、申せ
“スバル”: 申せってな……名乗る気満々でも一気に気持ちが萎えちまうよ
“アル”: 兄弟、気持ちはわかるけどよ、ここは名乗ってくんねぇかな? 姫さんが自ら名を聞くなんて、すげぇ稀なことなんだぜ
“アル”: それに兄弟だって、できれば明日を迎えたいだろ?
“スバル”: いちいち命懸けかよ!?
“スバル”: でも、まぁ、もったいぶる必要もねぇか 俺はナツキ・スバル んで、あの青髪の……
ナレーター: スバルはレムを紹介しようとするが、プリシラは首を振る
“プリシラ”: 妾が聞いたのは貴様の名、他の者の紹介は不要じゃ
“プリシラ”: 貴様には他に聞くことがあるでな
ナレーター: プリシラの赤い瞳が、じっとスバルを見据える
“プリシラ”: 貴様、先程のアレとはどのような関係なのじゃ?
“スバル”: ──っ!
“スバル”: (アレってやっぱアレのことだよな……)
“スバル”: (けど、本当のことを言うわけにもいかねぇ……)
“スバル”: どのようなも何も、アレと友達なわけねぇだろ 関係なんて特にねぇよ
“プリシラ”: では、なぜ探していた? アレが目当てでここまできたのであろう
“スバル”: ここにきたのは……偶然だ んで、あんなもん見たら、放ってはおけねぇだろ?
“プリシラ”: 凡愚、貴様は衛兵か? 放っておいても誰も文句など言わぬはずだ
“プリシラ”: 面構えからして、貴様が善人だとは到底思えん
“フェネ”: 確かに、面構えだけなら、スバル氏は相当な悪人です
“スバル”: そ、そこまで!? 確かに目つきは悪いけども…… って、ややこしくなるから茶々を入れんじゃねぇよ、フェネ!
“レム”: 目つきの悪さもスバルくんの魅力だと思います 例え悪人面だとしてもレムのスバルくんへの想いは変わりません
“スバル”: ありがとう、レム けど、悪人面ってところはできれば否定してほしかったな
“プリシラ”: 妾との会話の途中で他の者たちと歓談とは どこまでも躾がなっておらん犬よの
“スバル”: フェネは小狐だ、犬じゃねぇよ
“フェネ”: スバル氏、あの姫君はフェネではなく スバル氏に犬と申しているようです
“スバル”: ……え? 俺が?
“プリシラ”: 犬でもなければ衛兵もなかなか見つけられん臭い獲物に そうそうたどり着けるわけがなかろう
“スバル”: ……だからあれは偶然だって
“プリシラ”: たわけ、妾の目は誤魔化せぬ 知っていることを申せ
“フェネ”: あの貴族、危険です 口を滑らさないように
“スバル”: ああ、わかってる にしても、どこまで知ってやがるんだ……
“アル”: 待て待て、そんなに警戒する必要はねぇよ さっき、なんか面白いもんを見たんだろ?
“アル”: それで色々興味津々ってだけだ
“スバル”: 興味津々なのは結構だが、 俺たちだって何かを知ってるわけじゃねぇんだ
“スバル”: むしろ、知ってることがあるなら こっちこそ教えてほしいってのが本音だよ
“プリシラ”: 凡愚、貴様は誰に命じられ動いておるのじゃ?
“スバル”: お前もしつこいな それに仮にそうだとしても、答える義理なんてねぇだろ?
ナレーター: 背中で小さくなるエミリアを感じながら スバルはプリシラの問いをかわす
“プリシラ”: なるほど、従者に汚れ仕事を押し付け 己は身を隠しているような情けない主の名など言えぬか
“プリシラ”: よほど後ろめたい事情でもあるのだろうな 名誉とは程遠い務め、哀れじゃ
“スバル”: ──おいっ! 今すぐ訂正しろっ!
“スバル”: 俺のことは何と言おうが構わねぇ けどな、今の発言は聞き捨てならねぇぞ!
“スバル”: 彼女は心優しい女の子だ! 俺はその子の優しさに何度も救われたんだよ!
“スバル”: だから俺は、彼女の王様になりたいって夢を 全力で応援するって決めたんだ!
“エミリア”: スバル……
“フェネ”: はぁ…… スバル氏は忍耐が足りませんね
“プリシラ”: ほう……アル
“アル”: へいへい、ただいま
“アル”: こちらにおわすお方こそ、 ルグニカ王国の次期国王、プリシラ・バーリエル様だ
“スバル”: なん、だと……!?
“アル”: まぁ、今は候補者の一人だけどよ、 ルグニカの次期国王はこの姫さんだ
“プリシラ”: 王選など下らぬ 妾が王となることは、すでに決まっておるのじゃ
“スバル”: 悪い、理解が追いつかねぇ…… つまり、エミリアたんと同じ立場ってことでいいのか?
“レム”: 恐らくは、エミリア様と同じ王選候補者の方かと
“プリシラ”: もうよい、だいたい察しはついた アル、いくぞ
“アル”: お、そうだな、これ以上の長居は無用だ 兄弟も混乱しちまってるしな
“アル”: んじゃな、兄弟 今後ともよろしく頼むわ
“スバル”: ……よりにもよって、また王選候補者かよ
ナレーター: 遠ざかるプリシラとアルの背中を見つめながら 思わずスバルはそう呟いてしまう
“フェネ”: 一度ならず二度までも 三度目はありませんよ、スバル氏
“スバル”: 次やらかすとスリーアウトチェンジってか? この世界でスリーアウト制に直面するとは思わなんだ
“スバル”: プリシラとアル…… どうやらあいつらにも注意が必要そうだな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_16

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_16_『異形』

“スバル”: あの、エミリアたん……? ごめん……
“エミリア”: ううん、大丈夫 スバルは私のために怒ってくれたんだから……
“エミリア”: でもねスバル、私のために無理しないで
“エミリア”: スバルがたくさん頑張ってくれても 私には返せるものなんてないもの
“スバル”: それは違うよ、俺は君に救われたんだ だから君のために頑張るのも、すげぇ理にかなってるんだよ
“スバル”: エミリアたんは、そんなことしてあげた覚えはないって 言うかもしれねぇけど、本当なんだ
“スバル”: 別に見返りがほしいわけじゃない 俺は恩返しがしたいだけだ、それだけはわかってくれ
“フェネ”: タダより高いものはないとも言いますが、 それについてはいかがでしょう、スバル氏?
“スバル”: それ、今一番聞いちゃいけないことだよね!?
“スバル”: 見返りは求めないし、無料なのは入会金だけで 翌月からバカ高い月額使用料が発生するなんてこともねぇよ
“スバル”: 本当に本当だ、頼む信じてくれ……って言えば言うほど 胡散臭く聞こえちまうのは、確実にフェネのせいだよな?
“フェネ”: 責任転嫁、悪い上司の典型です
“スバル”: なあ、フェネ ちょくちょく俺のこと上司って言い方するけど……
“スバル”: 俺とお前の契約って、雇用契約じゃないよね? もしかして賃金が発生しちゃってるとか?
“フェネ”: いえ、上司は例えです 賃金も発生しないのでご安心を
“スバル”: なら、いいんだけど…… にしても二連チャンで王選候補に遭遇するとはね……
“レム”: スバルくんは女運が強いのですね レムは少しだけ心配になってしまいます
“スバル”: 女運ってこのケースに当てはまるの!? 確かに女性は女性だったけども!
“エミリア”: やっぱり、私たちと、ええと……アレって……
“スバル”: 話の腰折ってごめんだけど、いい加減、 アレに名前を付けねぇか? 言いづらくてしょうがない
“フェネ”: 異形の存在、略して『異形』でいかがでしょう
“スバル”: まぁ、こだわることでもないからそれでいこう んじゃ、以下『異形』ということで、エミリアたん、続けて
“エミリア”: 私たちと『異形』って、何か関係があるかもって やっぱり思われちゃったかしら?
“スバル”: うーん……無関係っていうのは、ちょっと厳しいかもね……
“フェネ”: いえ、現段階ではまだ、善意で『異形』を討伐していたようにしか 見えていないはずです
“スバル”: お前のその自信、どっからくるんだよ? とはいえ──
“スバル”: そう思うしかねぇし、そう言うしかない状況だ あくまで善意の行動ってことで押し通そう
“レム”: ……!
ナレーター: 警戒のため、先頭を歩いていたレムの足が止まる
“スバル”: レム、何か……
“スバル”: ……! あんたは確か……
緑髪の麗人: ふむ、どこかで会っていたかな? すまない、失念してしまったようだ
“レム”: 昨日は助けていただきありがとうございました
緑髪の麗人: 卿は昨日の…… なるほど、では彼らが?
“フェネ”: 左様です 腰が抜けて動けなかった情けない連れがこちらの悪人面です
“スバル”: 初対面の人に俺の低評価刷り込むの止めてくんない!?
“スバル”: ああ、ええと、昨日はありがとうございました お礼が遅くなってしまってすみません
緑髪の麗人: いや、あのような事態だったのだ、無理もない
緑髪の麗人: ところで、昨日の今日で、この時分に出歩くとは感心せぬな
緑髪の麗人: それとも、別の目的があるのだろうか?
ナレーター: 緑髪の麗人の視線は、鋭くスバルを射貫いていた

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_17

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_17_カルステン家の当主

ナレーター: 緑髪の麗人の鋭い指摘に、スバルは完全に目が泳いでいた
ナレーター: エミリアは例のごとく、スバルの後ろに身を隠している
“スバル”: (なんとか繕わねぇと、怪しまれちまう……)
“スバル”: ……おいフェネ、なんかうまいこと言ってくれ 余計なときはうるさいくせして、肝心なときにはだんまりか?
“フェネ”: 我々はやんごとなき主の命に従い、 王都を脅かす不逞の輩を正すべく闇を駆けております
“スバル”: ……正義の忍者の口上みたいになってるけど
緑髪の麗人: 言葉の意味を理解しかねるところもあるが、概ね了解した 此度の騒ぎを鎮めんとする、それが卿らの目的だな
“スバル”: ……! 気付いてたってことか……?
緑髪の麗人: ただ身の危険を感じて隠れていたわけではなかったのだろう? 先を急いでいた故、追究はしなかったが
“レム”: ……!
緑髪の麗人: 沈黙は皮肉にも雄弁に事実を物語るとは言い得て妙だな
緑髪の麗人: さて、王選候補者エミリアとその従者が、 王都の異変を探り歩いていると聞いたが——
緑髪の麗人: 卿らで間違いないな?
“スバル”: ──っ! いや…それは……
緑髪の麗人: 答えられぬか? ならば卿の背後にいる者に尋ねてもよいぞ
“スバル”: オッケー、降参だ、白状する だからこの子に聞くのは勘弁してくれ
“スバル”: すげぇ恥ずかしがり屋なんだよ 初対面の人とはまともに話せねぇ
緑髪の麗人: ほう……
“スバル”: (もしかしてエミリアだってバレてる……?)
ナレーター: 麗人の琥珀色の双眸は、スバルの嘘を見抜いているように見えるが 今さら訂正できるような雰囲気ではない
“スバル”: こっらの素性は明かしたんだ 今度はそっちの番なんじゃねぇかな?
“スバル”: あんたの身なり、腕前、 ただ者じゃないってことは察しがついてる
“スバル”: 衛兵と近衛騎士団が当たってるはずのこの件に どうして衛兵でも近衛騎士団でもないあんたが関わってるんだ?
緑髪の麗人: なるほど、確かに紹介がまだだったな これは失礼した
“クルシュ”: 私はカルステン公爵家当主、クルシュ・カルステンだ ルグニカ王国王位継承候補者の一翼を担っている
“エミリア”: ……っ!
“スバル”: ……クルシュ・カルステン? 王位継承候補?
“フェネ”: いよいよここまでくると悪運ではなく強運、 否、豪運とでもいいましょうか
“フェネ”: 今なら宝くじでさえ当てられるかもしれません
“スバル”: た、宝くじ!? この世界にもあんの!?
“フェネ”: いえ、それが何かは知りませんが、スバル氏の顔に書いてありました
“スバル”: ったく、宝くじって書いてある顔ってどんな顔だよ……
“スバル”: それでクルシュさん、あんたの素性はわかった けど、俺の質問はもう一つあったはずだぜ?
“クルシュ”: 此度の異変を解決する目的、それは恐らく卿らと同じだ
“スバル”: ……俺たちと同じ? つまり、傷つく王都の人たちを見たくないって感じか?
“クルシュ”: そうだ それ以上の理由など不要であろう
“スバル”: なるほど…… エミリアたんと同じで、心優しい人みたいだな
“スバル”: んで、目的は一緒だが、王選じゃライバル同士…… さてさて、どうしますかね?
ナレーター: スバルの問いにクルシュは不敵な笑みを浮かべる
“クルシュ”: さて、どうしたものかな?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_18

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_18_意外なる提案

ナレーター: 王選候補者、クルシュとスバルらの睨み合いは 思わぬ一言で終わりを告げる
“クルシュ”: エミリアの従者よ、聞いてほしい 私は卿らに共闘を申し入れたい
“スバル”: ……え? 今なんて?
“フェネ”: しっかりしてください、間抜けが露呈していますよ
“スバル”: ……うっせ、不意を突かれたんだよ!
“スバル”: ええと、クルシュさん…… それは本気、なのか?
“クルシュ”: 当然だ 王都にかかる火の粉を払おうとする者同士、なのであろう?
“クルシュ”: 時は一刻を争う 今手勢が少し、王都に欠けていてな
“クルシュ”: 私も優先しなければならない事柄がある 王都の守備に力を割くのが難しいのだ
“クルシュ”: だからこそ、手駒は多いほうがいい 敵の勢力が読めない以上、なおさらだ
“スバル”: まぁ、それはそうかもしれねぇけど…… 俺たちを信じてくれるってことでいいのか?
“クルシュ”: おかしな質問だな 信頼とは一朝一夕で築けるものではない
“クルシュ”: だが、卿が口にした理由に、嘘はないように思えた
“クルシュ”: 傷つく王都の民たちを見たくないのであろう?
“スバル”: ああ、見たくない なんとしても阻止しなくちゃならねぇって思ってるよ
“クルシュ”: 私も同じく、王都に危機が迫っているのであれば 私は全身全霊をかけてそれを排除する
“クルシュ”: 目的を等しくしている そして、それを遂行する強い意思もある
“クルシュ”: 共闘を申し入れるのに、これ以上の理由が必要か?
“スバル”: なるほど、確かにそうだな
“スバル”: 俺としては、共に戦った後に、 クルシュさんとは厚い信頼関係が築けてたらって思うよ
“スバル”: ……ということでいいかな?
ナレーター: スバルは背後のエミリアにそっと確認する
“エミリア”: ……うん、クルシュさんとは ロズワールも仲良くしたいって言ってたもの
“スバル”: わかったクルシュさん、協力しよう
“クルシュ”: ではそろそろ、卿らの名前を聞いてもよいだろうか?
“スバル”: あれ!? もしかして!?
“フェネ”: はい、クルシュ女史に名乗らせておきながら こちらは名乗っていません
“スバル”: うっ……それはさすがに失礼した……
“スバル”: 俺の名はナツキ・スバル! 王選候補者、エミリアたんの頼りになる従者だ!
“レム”: ロズワール・L・メイザース辺境伯が使用人筆頭 並びにスバルくんだけのメイド、レムです
“スバル”: レムさん? それここで言うやつ? 俺も余計な情報入れたけども!
“フェネ”: 無能故に部下を奴隷のように使役する上司 ナツキ・スバルと不当契約を結ばされた精霊フェネです
“スバル”: フェネ! お前のはもはや悪口だよね!? しかも名誉毀損で訴えたら勝てるレベルの!
“クルシュ”: なるほど、実に愉快な面々が揃っているようだな、エミリア
ナレーター: クルシュの言葉に、エミリアはスバルの背後から前に出る
ナレーター: スバルが確認するより早く、エミリアはスバルの背を離れ クルシュの前に歩み出ると、認識阻害のローブを外した
“エミリア”: クルシュさん、隠れててごめんなさい 色々事情があって……
“クルシュ”: 構わないが、私としては卿自身の意思を確認したい 共闘に異がないのであれば、私の手を取ってくれ
ナレーター: 差し出されたクルシュの手をエミリアがしっかりと握る ここに、一時ではあるが共闘の約束が成立した
“フェネ”: スバル氏……
“スバル”: 反応ありってわけか?
“フェネ”: はい、おそらく大トリです
“スバル”: よく知ってんなそんな言葉 また俺の顔に書いてあったか?
“フェネ”: はい、クライマックスというやつです スバル氏の顔いわく
“スバル”: 上等だ……やってやろうじゃねぇか ちょうど戦力が爆上がりしたとこだしな
“スバル”: ということで、いくぞみんな! 初めての共同作業だ、 今後の関係のためにも、是が非でも成功させねぇとな!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_19

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_19_巨大な「穴」

ナレーター: フェネが感知した特大級の反応を辿って訪れた場所には 想像を絶する光景が広がっていた——
“スバル”: なんだ……あれは……!
“エミリア”: 嘘……周囲のマナが全部あの穴に吸い込まれてる!
“フェネ”: 平原で遭遇した、ページが魔獣を丸呑みしていた状態から 更に段階が進行した、といった具合でしょうか
“クルシュ”: 随分と落ち着いているな 卿らは、すでに似たような事態に遭遇したことがあるのだな?
ナレーター: クルシュの額には汗が滲み、 背筋に戦慄が走りぬけるのを感じた
ナレーター: 毅然とした態度こそ崩さないのは、彼女の信念が為せる業だ
“レム”: スバルくん、気を付けてください! あれは、レムたちも飲み込もうと……あっ!
“スバル”: レム! 前に出るな——
ナレーター: 次の瞬間、空間に空いた穴は一段と大きくなり、 いとも簡単にレムを飲み込んでしまった
“スバル”: ──レムーーーっ!!
“フェネ”: スバル氏、残念ながらレム女史を心配している余裕はありません
“エミリア”: スバル! 何かに掴まって! じゃないとスバルも──
“スバル”: エミリア……!!
“スバル”: ちくしょうっ! どうしてこうなったっ? 俺がうまくやってりゃ、レムだってあんなことには……
“クルシュ”: ここで振るうには被害が…… ──しかし、この状況ではやむを得んっ!!
ナレーター: 徒手空拳のクルシュが、まるで剣を握っているように構える
ナレーター: だが、それをあざ笑うかのように、空間の穴はさらに広がり 渦は全てを吸い込まんとその勢いを増す
“スバル”: がっ! だぁーーーーー!!
“エミリア”: ス、スバ——きゃぁああああ!!!
“クルシュ”: おのれ……間に合わん!!!
“スバル”: ……っ……ここは……あの世か?
ナレーター: そう思ったスバルだったが、すぐにそうではないと気付く
“スバル”: 『死に戻り』してねぇ…… どうやら生きてはいるみたいだな……
“スバル”: ──エミリア!
ナレーター: すぐ傍に倒れているエミリアを見つけ、 スバルは慌てて彼女を揺さぶった
“エミリア”: ん……スバル? 私たち……どうなっちゃったの?
“スバル”: わかんねぇ、とりあえず生きてはいる
“エミリア”: そう……それで…みんなは……?
“スバル”: みんな……? 確かに!
ナレーター: エミリアの言葉に、スバルは辺りを見回し レムとクルシュの姿を発見する
“スバル”: レム……! クルシュさんも!
“レム”: ……う、スバルくん、無事ですか……
“スバル”: レム、生きてるんだな! よかった……
“クルシュ”: くっ、どうやらあれに吸い込まれたようだ……
“スバル”: クルシュさん、大丈夫ですか!
“クルシュ”: ああ、吸い込まれた瞬間は生きた心地がしなかったが 見ての通りだ
“フェネ”: 皆様、ご無事でしたら早々に戦闘準備を
“スバル”: フェネも無事だったか! ……って、今なんて?
“フェネ”: 皆様お休みのうちに軽く探索しておりましたが このページの主と遭遇しまして
“スバル”: ……だとしたら叩き起こしてくれねぇかな? 気を失ったまま放置とかありえねぇだろ!
“スバル”: それに……その口ぶりだと……?
“フェネ”: はい、まもなく到着の見込みです
“フェネ”: ページに描かれた最も厄介な存在は マナ不足で顕現できていなかったようですが
“フェネ”: 現在は満腹にして大満足、食後の大運動会といった感じで 我々が食い止めねば、その後の舞台は王都になります
“スバル”: 確かにありゃそんな感じだな……
ナレーター: フェネの後ろには、 禍々しく息を吐く『異形』の存在が屹立していた
“クルシュ”: 事情は後で聞こう アレは、ここから出て王都で暴れ回る気なのだな?
“スバル”: どうやらそのつもりみてぇだけど、 ここは全力でお引き取り願うぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_20

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_エピローグ_風見の加護とスバル

“クルシュ”: はぁぁああああ!!!!
ナレーター: 『異形』の存在の脳天にクルシュが剣を突き立てる
“異形”: ぐごがぁぁぁあああああ!!!!
“スバル”: さすがにありゃひとたまりもないだろ!
“フェネ”: みなさん、構えて! はじき出されます!
“スバル”: ぬわぁ!? うわぁああぁーっ!!
“レム”: ──スバルくん! エミリア様!
ナレーター: レムは鉄球の鎖を二人に伸ばす スバルとエミリアはとっさにそれに捕まった
“レム”: クルシュ様、申し訳ありません! そちらまで届きません!
“クルシュ”: 問題ない! 自分の身は自分で守ろう!
“フェネ”: きます!!!
“スバル”: ……う、戻った、のか……?
ナレーター: 同じタイミングで、エミリアとレムが起き上がり 互いの無事を確認し合う
“スバル”: クルシュさんは……?
“クルシュ”: ……
ナレーター: クルシュはすでに起き上がり、一点を見つめていた
ナレーター: その先には、空白のページを『禁書』に綴じるフェネの姿があった
“クルシュ”: さて、あの精霊についてと、 卿らが何故異変を追っていたのかについて……
“クルシュ”: 話してもらえるのだろうな?
“スバル”: あれを見られちまったら、そうするしかないよな……
ナレーター: スバルはちらりとエミリアの方を見る エミリアは覚悟した表情で小さな頷きを返した
“スバル”: フェネは……あいつが持っている本の守護者みたいなもんだ
“スバル”: あの本に封じられていた存在が、 どういうわけか出てきちまったらしい
“スバル”: 俺らは、近々王城にエミリアが呼ばれる予定だったから 早めに王都にやってきて滞在してたんだけど……
“スバル”: たまたま異変に遭遇して、ついでにフェネとも出会ったんだ
“クルシュ”: ……ふむ
“スバル”: 事情を聞いたエミリアが、王都のみんなが危ないって知って フェネの手伝いをしようって……
“スバル”: それで、今に至るってわけなんだけど……
ナレーター: スバルはクルシュの様子を伺う クルシュは、まっすぐにスバルを見つめていた
“クルシュ”: それが全てか?
“スバル”: ああ、以上だ 悪いけど、俺らもあれについてはあんまり詳しくないって感じで
“スバル”: おまけにフェネも記憶喪失ときたもんだ お手上げ状態なのはあいつも一緒だ
“クルシュ”: ……そうか
“スバル”: よ、よかった、わかってくれたなら——
“クルシュ”: 『エミリア陣営は此度の王都の異変に明らかに関与している  しかし、その事実については隠蔽しようと目論んでいる』
“クルシュ”: ——このような噂が市井に膾炙してもいいというなら、 卿の言い分を承諾しよう
“エミリア”: どうして……!?
“スバル”: い、今の話でなんでそうなるんだよ!?
“クルシュ”: ——卿が事実を隠蔽しようとしているからだ
“スバル”: な、なんで決めつけるんだ?
“クルシュ”: ナツキ・スバル 卿は慎重に言葉を選んでいたようだが、明らかに風が変わった
“フェネ”: ……道理は不明ですが、 見破られていると判断して良さそうです
“エミリア”: クルシュさん、あの……
“スバル”: エミリア、待ってくれ 俺が話す
ナレーター: スバルはクルシュをまっすぐに見つめ返す 全てを見透かすような琥珀色の双眸を睨んだ
“スバル”: ……カマをかけてるってわけじゃ、ないんだよな?
“クルシュ”: それもまた、手段の一つだろうな だが私は確信を持っている
“クルシュ”: 卿が嘘をついている、とな
“スバル”: ふぅーー……
“スバル”: わかった、話す でも最初にこれだけは言っておきたい
“クルシュ”: ——聞こう
“スバル”: これはすべて俺の責任だ
“エミリア”: スバル……!
“クルシュ”: 卿の主は、驚いているようだが?
“スバル”: 俺の主は人が良すぎる 俺に責任があることでも自分の責任にしちまうんだよ
“スバル”: まず俺とフェネの関係について…… 王都で出会ったってのは嘘だ
“スバル”: といっても、そんなに付き合いが長くないのは事実 出会ったのはつい最近だ
“クルシュ”: ……信じよう フェネが『禁書』の守り手ということも
“スバル”: それは手間が省けた ……で、その本だけど、いわゆる『禁書』って奴で
“スバル”: 俺の雇い主のロズワールの屋敷には そういった類の趣味の悪いコレクションがあるんだけど……
“スバル”: 俺が、そこから持ち出した
“クルシュ”: ほう……? 卿が
“レム”: ──スバルくん!
ナレーター: クルシュがその瞳を細め——一瞬放った剣気に反応したレムが とっさにスバルの前に立つ
“スバル”: サンキュ、レム でも今のは俺が悪い
“スバル”: 一連の黒幕が俺みたいな言い方だったもんな クルシュさんが構えるのも無理はねぇ
“クルシュ”: 些か気が急いてしまったようだ 誤解を招いたことを詫びよう、すまない
“クルシュ”: 安心していい、いきなり斬りかかろうなどと そのような卑小な真似はしないと誓う
ナレーター: クルシュはレムをたしなめるように薄く微笑む
ナレーター: それに呼応するかのように、 レムはゆっくりと鉄球をおろして引き下がった
“スバル”: 『禁書』は、俺が持ち出しちまった…… 意図したわけじゃないんだが
“スバル”: 詳しくは恥ずかしすぎるから省かせてくれ……
“スバル”: とにかく、俺の過失ってことで間違いない ここまでは大丈夫か?
“クルシュ”: ああ、その説明で構わない 十分悔いている卿をいたずらに辱める気はないからな
“スバル”: はは、ここでも気を遣われんだな、俺は…… 情けねぇぜ、まったく
“スバル”: んで、その過程で、俺はフェネに見初められた…… 契約関係で、一緒に事態を解決するって約束したんだ
“スバル”: この件に関して、明らかにエミリアとロズワールは被害者だ
“スバル”: 雇った使用人が、とんでもないことをやらかしたせいで バレたら王選に不利に働く爆弾を抱えちまった
“スバル”: それなのに、 俺の首を切ろうとしないで、手伝ってくれてるんだ
“スバル”: 確かに、王選に不利になるからケツを拭くしかねぇって 言ったらそうなのかもしれないけど——
“スバル”: そんなの、俺に全部背負わせて、 切っちまったほうが早いと思わないか?
“クルシュ”: だが、雇い主には監督責任というものがある
“スバル”: 俺は『禁書』を、持ち出した、んだぜ? 悪意ある密偵だったってことにもできたはずだ
“スバル”: それなのに、俺みたいな爆弾を抱えたまんま 問題解決に動こうなんて……
“スバル”: 優しくて、できた主だと思わないか? マジで俺にはもったいねぇ……
“エミリア”: ……スバル? なんの話をしてるの……?
ナレーター: エミリアは、スバルの話の展開に、嫌な予感を覚えたのか 不安そうに見つめている
“レム”: スバルくん、まさかとは思いますが……
“フェネ”: ……
“スバル”: エミリアたん、勝手なこと言ってごめん 今日で、屋敷の仕事、辞めさせてくれないか
“スバル”: 本当なら莫大な損害賠償が発生するような責任問題だ…… 物理的に首をはねられても文句はいえねぇ
“スバル”: それが、こうして命拾いしてる 感謝感激雨あられなのに、また無責任なこといってごめん
“スバル”: やっちまったことの責任は これから、ページ集めて絶対果たすから
“エミリア”: ス、スバル!?
“スバル”: 俺は金輪際、エミリアとその陣営には関わらない これからは、ただのナツキ・スバルだ
“スバル”: つまり、この問題が、王選候補者のエミリアと、 後見人を務めるメイザース辺境伯には関係ないってことだ
“レム”: スバルくん、ダメです! スバルくんが辞めてしまうなんて……そんなことレムは……
“スバル”: わかってくれ、レム 俺なりに考えに考えた結論だ
“クルシュ”: ナツキ・スバル 卿の発言は以上ということでいいか?
“スバル”: ああ、洗いざらい話したぜ これ以上はねぇよ
“スバル”: 見事、無職になっちまったけどな
“クルシュ”: ……無職? 卿の主にはその意思はなさそうだが
“エミリア”: 当たり前です、そんなこと認められません スバルのこと、辞めさせたりしないもの
“エミリア”: だいたい、使用人を辞めて、どうやって食べていくつもりなの?
“スバル”: いきなりシビアな現実!?
“スバル”: いや、でも、ほら、いざとなったらどんなことでもしてさ 俺ひとりぐらい食っていけるんじゃねぇかな?
“エミリア”: どんなことでもって、具体的にはどんなこと?
“スバル”: いや、それはパッとは出てこないけども! 今は出ないってだけ 時間かけて考えれば必ず
“エミリア”: 今ちゃんと出ない子を、放り出したりできません
“スバル”: まいったな…… ここはかっこつけさせてくれねぇかな?
“クルシュ”: ナツキ・スバル、卿のその心意気、良しと評そう 卿の主君を思う気持ちに偽りはない
“スバル”: クルシュさん……!
“クルシュ”: しかし、それで飲み込めるほど、この件は軽くない
“クルシュ”: あと少し対応が遅れれば、王都がどうなっていたか わからないのだからな
“スバル”: ……その通りだ
“クルシュ”: 問題の解決には近衛騎士団も当たっている やはり彼らに報告するのが筋というもの
“クルシュ”: いずれこの国の王となるものとして 事実の隠蔽に加担することを良しとはできない
“スバル”: そう……なるよな 共闘も、ここで終わりってわけだな?
“スバル”: でも、ある意味安心したよ やっぱりクルシュさんはズルい人じゃないんだな
“スバル”: さっきの話をホイホイ飲み込んで、 安心させてから陥れることだってできたんだから
“スバル”: はぁー、やっぱり俺、首はねられんのか? どうせならエミリアたんにはねられたかったぜ……
“クルシュ”: ナツキ・スバル
“スバル”: ……ん?
“クルシュ”: まだ、私の話は終わっていないぞ
“スバル”: え……俺に衛兵を突き出されて、友であるラインハルトが 涙しながら俺の首をはねるって話じゃないのか?
“クルシュ”: ふ、この状況でその冗談が言えるとは やはり卿は妙に肝が据っているな
“クルシュ”: ──私は、ルグニカの王になる 我が大願のため、その座を譲るわけにはいかない
“クルシュ”: しかしそれは、共に競う王戦候補者を 蹴落とすという意味であってはならない
“エミリア”: ……どういう、ことですか?
“クルシュ”: もう一度言おう、ナツキ・スバル
“クルシュ”: 主君を思う卿の心意気は称賛に値する そのような従者を持つ主君が愚かであろうはずがない
“クルシュ”: ならばこそ私は、卿らと正々堂々と王選を戦い 王になりたいと思う
“スバル”: つまり…… それって……!
“クルシュ”: 問題が卿らにあったとて、 現にこうして自ら解決しているのだ
“クルシュ”: 一連の問題は、飲み込ませてもらおう 卿がエミリアの元を離れるか否かにかかわらずな
“クルシュ”: ……無論、今後も我が陣営や、その他に影響がないよう 問題を卿らが抑え込むという前提でだがな
“スバル”: 本当か、クルシュさん? エミリア陣営ごと、飲み込んでくれるんだな?
“クルシュ”: ああ、そもそも卿の話には無理があるぞ
“クルシュ”: 卿がエミリアの元を去ったとて、卿を使役していたときの不祥事だ 無関係とはなるまい
“スバル”: た、確かに!?
“スバル”: まぁ、でも、クルシュさんが 胸の内に秘めといてくれるんなら、よかった
“クルシュ”: ただし、他の王選候補者やその関係者などに知れた場合、 我々が肩を持つ筋合いがないことも付け加えさせてもらう
“スバル”: そ、そりゃそうだな…… クルシュさんたちにまで迷惑かけられねぇ、了解した
“クルシュ”: ナツキ・スバル、卿は誠意を持ち偽りなく話してくれた 私もそれに応え、一つ種明かしをさせてもらおう
“スバル”: 種明かし……?
“クルシュ”: 私に嘘は通用しない
“スバル”: どういう、ことだ……?
“クルシュ”: 『風見の加護』…… 嘘をつくものには嘘の風が吹く、私にはそれが読めるのだ
“スバル”: マジかよ……だからクルシュさんは……
ナレーター: スバルにはいくつかの心当たりが浮かぶ あれらはすべてその加護によるものだったのだ
“クルシュ”: さて、ナツキ・スバル ……いや、卿の主はエミリアだったな
“クルシュ”: エミリア、今後も共に戦うにあたり、一つ条件を出そう
“エミリア”: なにクルシュさん? なんでも言って
“クルシュ”: 問題の対処の進捗について、定期的に報告を受けたい 私にも協力できることがあるはずだ
“スバル”: ……今後も協力してくれるんだな?
“クルシュ”: ああ 我々に不利益がある場合、 指を咥えて見ているわけにもいかないからな
“スバル”: なるほど、あくまでそういうスタンスってことね まぁ、それでもすげぇありがたいけど
“エミリア”: わかりました クルシュさんにちゃんと報告します
“スバル”: あの、これって……口約束でいいヤツ?
“スバル”: 俺のやらかしを胸にしまってくれて、 今後も協力してくれるんだろ?
“フェネ”: 優秀なフェネが一言一句記憶しているので 後ほどエビデンスを発行しましょう
“スバル”: その横文字、ほんとに俺の顔に書いてあった!?
“レム”: エミリア様、スバルくんが言う通り こういうことはしっかり書面にするべきかと
“エミリア”: そうね、後日、書面にしてクルシュさんにもお届けするわ
“クルシュ”: では、そうしてもらおう
“クルシュ”: ……さて、ここに衛兵がこないとも限らない そろそろ解散したほうがよさそうだな
“スバル”: これって、解決したぞ的なことを それとなく知らせたほうがいいんじゃ?
“クルシュ”: いや、下手に動かず 近衛騎士団の判断に任せたほうがいいだろう
“クルシュ”: 我々も引き続き、事態が落ち着くまでは 調査を行っている体を続けさせてもらう
“エミリア”: クルシュさん、ありがとう
“クルシュ”: 知ってしまった以上、私も関与を疑われる立場だ やむを得まい
“スバル”: あれ? もしかして巻き込んじまった……?
“フェネ”: 共犯関係、というヤツでしょうか? フェネたちだけの秘め事……
“スバル”: ああ、そりゃドキドキするな! ──なんてなるかよ!
“スバル”: 少なくとも俺は、あんま冗談とか言える立場じゃねぇ お気軽なフェネと一緒にすんな
“フェネ”: スバル氏、確かにスバル氏が自覚している通り すべての責任はスバル氏にあります
“フェネ”: クルシュ女史まで巻き込まれてしまいました
“フェネ”: ですが、どんな状況でも息抜きは必要です
“スバル”: いやいや、絶対俺に息抜きさせる気ないよね!? お前の言葉が豪速球で俺の心を撃ち抜いていったわ!
“クルシュ”: では、私はいかせてもらう 卿らからの報告、待っているぞ
ナレーター: そう言い残しクルシュが立ち去ると、緊張感は和らいでいた
“スバル”: はぁーーー、緊張したぁーーー……
“エミリア”: スバル?
“スバル”: あ、疲れたよねエミリアたん 早いとこ戻ろっか!
“エミリア”: えっと…… 戻る、でいいんだよね? いなくなったりしない?
“レム”: ……
ナレーター: 逃さない、と言わんばかりに、 レムがスバルの服の裾を掴んでいる
“スバル”: ああ、クルシュさん的にも 大目に見てくれるっぽかったしな
“スバル”: 引き続きお世話になっていいんだよな?
“エミリア”: もちろんよ、スバル そもそも私、スバルを辞めさせたりしません
“レム”: そうです、スバルくん スバルくんが辞めさせられるなら、 レムが代わりにお暇をいただきます
“スバル”: その交換はあんま成立してないかな! レムがいなくて 姉様と二人だなんて、解雇された方が何百倍もマシだし
“スバル”: まぁ、でも、ありがとう、エミリアたん、レム 今後ともよろしく頼むわ
ナレーター: かくして、王都で発生した『禁書異変』は終息した
ナレーター: しかし、『禁書』に綴じられたページは まだ、ほんの数枚に過ぎない──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_00

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_プロローグ_治癒術士と執事 更新日:2021/02/15

ナレーター: スバルたちがクルシュと共に 王都の異変を解決してから二週間後……
“スバル”: クルシュさん、待たせて悪かったな ちゃんと合意内容を書面にしてきたぜ
“クルシュ”: すまない、手間をかけさせたようだ 感謝するぞ、ナツキ・スバル
“スバル”: いやいや、感謝するのは俺のほうだ クルシュさんが協力してくれたおかげで、マジで助かったよ
“クルシュ”: 私は当然のことをしたまでだ 王都の民を危険に晒すわけにはいかないのでな
“スバル”: さすがは王選候補って感じか?
“フェネ”: ええ、腰が抜けて動けなかったスバル氏とは大違いです
“スバル”: まだそのこと持ち出す!?
“スバル”: だいたいあれはレムがとっさについた嘘で、 事実とは違うだろうが
“レム”: はい、スバルくんはクルシュ様に負けず劣らず、 今回も大活躍でした!
“フェネ”: 大活躍と言いますが、元を正せばスバル氏が……
“スバル”: うぐっ! レムの賞賛がなぜか ダメージに変換されて俺の心をえぐってくる!
“レム”: すみませんスバルくん レムはそんなつもりじゃ……
“スバル”: いやいや、レムは悪くないから! 悪いのは──
“フェネ”: まぎれもなくスバル氏です
“スバル”: うん、そうだな! 全部俺が悪い!
“スバル”: それは認める 認めるけども、 今回のケースは、明らかにもう一人悪い奴がいるよね?
“フェネ”: はて?
“スバル”: はて、じゃねぇよ! お前が余計なこと言わなきゃ、レムも俺も傷つかなかったんだ!
“スバル”: だいたいフェネは──
“エミリア”: こら、いつまでもふざけてないの クルシュさんもいるんだから
“クルシュ”: なに、私は構わない 気が済むまで続けてくれ
“スバル”: そう言われると逆に続けづらいというか、なんつーか…… 見苦しいとこお見せして、すんません
“クルシュ”: そうか では、書面に目を通させてもらおう
ナレーター: クルシュはそう言うと、スバルから受け取った書面に目を通す
ナレーター: しばしの静寂がその場を支配し 周囲の空気は一瞬で変わっていた
ナレーター: スバルは明らかに気後れし、レムやエミリアの表情も固い
“クルシュ”: ナツキ・スバル
“スバル”: は、はい!?
ナレーター: 突然、自身の名を呼ばれ、スバルは全身を強張らせた
“クルシュ”: そう構えるな、今さら約束を反故にしようなどとは思っていない ……肩の力を抜いてくれ
“フェネ”: なるほど、蛇に睨まれた蛙とはよく言ったものです
“スバル”: ……返す言葉が見つからねぇよ
ナレーター: フェネが小さく呟くと、思わずスバルは肩をすくめた
“クルシュ”: うむ、書面は確かに受け取った 内容も相違ない さらに言えば、恐ろしいほど正確だった
“フェネ”: ええ、一言一句記憶していると言ったはずです フェネは優秀ですから
“スバル”: 記憶喪失の奴が言っても説得力ねぇけどな
“フェネ”: スバル氏は揚げ足を取らせたら天下一品ですね
“スバル”: 全然嬉しくねぇ!
“クルシュ”: ……卿は記憶がないのか?
“フェネ”: 左様です 長年の封印のためか 『禁書』散逸のせいかは判然としませんが
“フェネ”: ですが心配には及びません 『禁書』を可及的速やかに回収する使命がフェネを突き動かします
“クルシュ”: ふむ、そうか ならばこれ以上は尋ねまい
“クルシュ”: それで進捗はどうだ、聞かせてもらえないか?
“スバル”: んじゃ、俺から 王都周辺の『禁書』のページはだいたい回収できた
“スバル”: まだ王都じゃ、色々な情報が出回ってるみたいだけど 目に見える異変がぐっと減ったってのが、俺の体感だな
“クルシュ”: それについては私も同意する 卿らと共闘して以来、アレとは遭遇していない
“フェネ”: しかし、油断はできません 発見されずにいるページの存在を否定できません故
“クルシュ”: もっともだ 警戒を怠るつもりはない
“フェネ”: しかし、人々は日常に戻りつつあります ただの怪奇現象だったと笑い飛ばしてしまうほどに
“クルシュ”: 市井とは往々にしてそういうものだ 彼らに罪はないだろう
“フェネ”: 左様です……無辜の民にとって王都を騒がせた異変は 流行り風邪のようなもの
“フェネ”: それらは一過性の事象に過ぎず、永遠に続くはずがない 必ず終わりが訪れると無邪気に信じている
“フェネ”: しかしそれは、“終わる”のではない 人が“終わらせる”のです
“フェネ”: 平穏な日常に戻りたいという集団心理がそうさせる 彼らは忘れることで、脅威に終止符を打とうとする
“エミリア”: ……フェネ?
“クルシュ”: ずいぶん自分を棚にあげた発言だとは思わんか? 『禁書』の異変を招いたのは卿であろう?
“フェネ”: いえ、招いたのはスバル氏です
“クルシュ”: しかし、今さら無関係だと言い切れまい それとも……卿は人間に“恨み”でもあるのか?
“フェネ”: フェネは、そのような民草の上に立つクルシュ女史の ご心労やいかにと、ご心配を申し上げた次第です
“クルシュ”: 些かわかりにくいな だが卿が私を労ってくれているということは受け取った
“クルシュ”: 案ずるな 民の営みはよく理解しているつもりだ 必ずや御してみせよう
“フェネ”: 杞憂でした ご無礼を
“フェネ”: ですが、フェネの失態は全てスバル氏の責任 さあ、スバル氏、クルシュ女史に謝罪を
“スバル”: なんで俺が頭を下げるんだよ!? お前が言いたいことを言っただけだろ!
“フェネ”: 部下の責任は上司の責任、上司の責任は上司の責任です、スバル氏
“スバル”: 上司のメリットがまるでねぇ!?
“スバル”: 俺、上司辞めさせてもらうわ これからはお前が上司で、俺が部下な
“フェネ”: わかりました では、スバル氏に上司として命じます フェネに代わってクルシュ女史に謝罪を
“スバル”: 結局そうなるのな!?
“スバル”: やっぱり上司の交代はなしだ! ったく、俺が上司の方がまだマシだぜ
“クルシュ”: ふっ、気兼ねなく言い合えるのは、よい主従関係の証だな
“スバル”: そ、そうか?
“クルシュ”: 私にはそう見えたが、 どうやら本人には自覚がないようだな
“クルシュ”: では、話を戻そう 卿らには全面解決の目途は立っているのか?
“エミリア”: えっと、それは……
“クルシュ”: 確かに王都界隈の異変は急速に減退している これは私も認めるところだ
“クルシュ”: しかし、王選を控えた今……
“クルシュ”: 王都でのこのような騒ぎを、ただの怪奇現象だったと 手放すほど騎士団は悠長に構えてはいない
“クルシュ”: 不可解であればあるほど、 皮肉だが猜疑の眼は強まっていくだろう
“クルシュ”: つまらぬ誤解を受ける可能性もある 少なくとも人為的に発生したのは事実なのだろう?
“フェネ”: ええ、全面的にスバル氏の責任です
“スバル”: くっ……
“エミリア”: スバル、あんまり思いつめないで 誰にだって失敗はあるもの
“レム”: スバルくん…… 不可抗力だったとレムは思っています
“フェネ”: ……いつもの威勢はどうしたのですか これではフェネが嫌味で陰湿ないじめをしているようです
“スバル”: ちょっとは自覚があんだな
“スバル”: けど、この件に関しちゃ何も言い返せねぇよ 持ち出した俺が悪い 間違いなく全て俺の責任だ
“スバル”: (でも、どうして俺はあのとき、 持っていこうなんて、思っちまったんだ……?)
“エミリア”: スバル、フェネ、それくらいにして 今はみんなで協力するべき、そうでしょ?
“フェネ”: エミリア女史には敵いませんね 当然の如くお力添えいただけること、心から感謝申し上げます
“エミリア”: クルシュさん、まだ全て解決できる状態ではありません 私たちにもわからないことがたくさんあって……
“エミリア”: だから、改めてクルシュさんに協力をお願いしたいの
ナレーター: エミリアがそう言い終えた直後、 執務室のドアをコツコツとノックする音が響いた
“クルシュ”: 入れ
???: 失礼しまーす クルシュ様、ただいま戻りましたよ!
“クルシュ”: ご苦労様だったな、フェリス それからヴィルヘルムも
“フェリス”: いえいえー、クルシュ様にそう言っていただけるだけで フェリちゃんの疲れにゃんてどこかにふっ飛んじゃいまーす!
“スバル”: おぉ!? 猫耳!
“フェリス”: はにゃ? 見ない顔だね? えっと……って、エミリア様?
“エミリア”: こんにちは、フェリス
“スバル”: エミリアたん、知り合い?
“エミリア”: ええ フェリスはクルシュさんの騎士なの
“スバル”: え、騎士!? 猫耳で騎士とか斬新だな!
“フェリス”: にゃにさ、フェリちゃんがそんなに気になる?
“スバル”: あ、いや、こっちにきて間もないもんで まだ知らないことだらけっつーか……
“フェリス”: ふうん、君もこの辺りじゃ見ない珍しい格好をしてるよね まさか異変の真犯人だったりして?
“スバル”: ぎくっ!
“フェリス”: ちょっとわかりやすすぎない!? 明らかに怪しいんだけど!
“スバル”: ハ、ハハハ……
“クルシュ”: ナツキ・スバル、フェリスは私が最も信頼している人物のひとりだ ヴィルヘルムもな
“クルシュ”: 全てを話しても差し支えないと思うが、どうだろう?
“スバル”: ──と、ざっくり話すとこんなところだ
“フェリス”: にゃるほど、そういうことだったんだね
“ヴィルヘルム”: 『禁書』の影響ですか……であれば得心がいきますな
“クルシュ”: ヴィルヘルム、なにか心当たりが?
“ヴィルヘルム”: 明らかに常軌を逸していると申しますか…… 正気を失っているように見えましたので
“スバル”: ええと、ヴィルヘルムさんでしたっけ… 一つ聞いても?
“ヴィルヘルム”: 申し遅れました 私はヴィルヘルム・トリアス クルシュ・カルステン公爵様の執事をしております
“ヴィルヘルム”: スバル殿、なんなりとお尋ねください
“スバル”: じゃあ、遠慮なく 遭遇した奴についてだけど、 魔獣ではあったが、いつもとどこか違っていた
“スバル”: そういう認識で合ってるか?
“ヴィルヘルム”: はい、そのような認識で間違いないかと
“スバル”: なるほど…… やっぱ『禁書』の影響は各地に出てるってことか
“スバル”: ちなみに、ヴィルヘルムさんたちはどの辺で?
“ヴィルヘルム”: カララギですな 国境ほど近くではありましたが
“スバル”: (カララギか……アナスタシアさんの拠点だったか、確か)
“フェリス”: あのさ、もしかしてだけど、これも『禁書』だったりするのかな?
ナレーター: フェリスが一枚の紙を取り出す そこには不気味な絵が描かれていた
“フェリス”: クルシュ様から聞いていた異変と似たような現象なら 何度か遭遇しましたよ
“フェリス”: で、これがその近くに落ちてて なにか関係あるかもって持って帰って……にゃ!?
“フェネ”: 気を付けてください! 急激に膨張しています!
“フェリス”: わわ、なになに!?
ナレーター: ぐにゃりと空間が歪むように拡張したページから、 『異形』が飛び出してくる
“ 異形”: ぎゃぉぉぉおおおん!!!
“スバル”: マナ貯めてやがったのか!? こんなにいきなり膨らむかよ!!
“レム”: ──エミリア様、スバルくん、下がってください! ここはレムが!
“スバル”: 室内で鉄球振り回すのはさすがにヤバいだろ!?
“ヴィルヘルム”: 私にお任せを
“スバル”: ヴィ、ヴィルヘルムさん!? 確か執事だったはずじゃ──?
ナレーター: スバルの問いは、鋭い気合にかき消された
“ヴィルヘルム”: はぁぁぁーーっ! ──はっ!
“ 異形”: ぐぎゃあああ……
“スバル”: うっそ……瞬殺
“フェリス”: 道中出会った魔獣も面妖な敵も こうやってヴィル爺がぜーんぶ斬り伏せちゃってくれたわけ
“フェリス”: さすが、『剣鬼』の二つ名は伊達じゃないよネ
“ヴィルヘルム”: ……
“フェネ”: 見惚れているのか、はたまた呆けているのか…… 間抜け面がますます酷い造形になっていますよ
ナレーター: ヴィルヘルムの手際に圧倒されるスバルを尻目に フェネは『禁書』を開く
ナレーター: フェリスが入手したページはきれいに綴じられ 霧散したマナもまた、『禁書』に吸い込まれていく──
“フェリス”: こりゃビックリだにゃ……
“スバル”: 同感だよ、ファンタジーすぎて未だに俺も慣れねぇ
“フェリス”: ファンタジーっていうのはよくわかんにゃいけど これが『禁書』っていうのはよくわかったよ
“フェリス”: あんなページを見つけたら教えてあげるってことでいいかにゃ?
“スバル”: そりゃ、すげぇ助かる けど、見ての通りのシロモンだ 取り扱いには十分注意してくれ
“フェリス”: そうだね、にゃんだか描かれてる絵も 気味悪くて精神的にきそうだし
ナレーター: フェリスはそう言うとヴィルヘルムの治癒を始める
“スバル”: あれは……治療してるのか?
“エミリア”: ええ フェリスはとっても名のしれた治癒術師なの
“スバル”: ヴィルヘルムさん……怪我してるようには思えねぇけど
“フェリス”: わからにゃいじゃない、こんな外敵初めてにゃんだし 精神が汚染されちゃうってことも考えられるでしょ?
“フェリス”: だから、一応確認をね あ、ついでだから君も診てあげちゃおっかな
“スバル”: お、おう、サンキュ
“フェネ”: おや、赤面しているようですが照れるようなことですか? 治療ですよ?
“スバル”: て、照れてねぇし!
“レム”: スバルくん、治療でしたらレムにも心得が
“スバル”: れ、レム、目が怖い!?
“フェリス”: ふーん けど、やっぱここはフェリちゃんでしょ? ルグニカ一の治癒術師に診てもらえるなんて、そうそうないしネ
“フェリス”: ということで~ はむ
“スバル”: おぅわっ!
“フェリス”: もう、暴れないでよ~ 耳を噛んでもらえて、嬉しいのはわかるけどさ
“スバル”: 嬉しくねぇよ! 驚いただけだ!
“エミリア”: スバルったら顔が真っ赤…… やっぱりどこか具合が悪いの?
“スバル”: え、エミリアたん、これは違うんだ!
“スバル”: 本当に驚いただけで…… 決して美少女の大胆な行動にときめいちまったわけじゃ……
“クルシュ”: すまない、ナツキ・スバル 一つ卿の誤りを正そう
“スバル”: ……俺の誤り?
“クルシュ”: フェリスは男だ
“スバル”: ……………………………
“フェネ”: スバル氏?
“スバル”: ……………………………
“フェリス”: 放心状態? スバルきゅんってばおもしろーい
“スバル”: はぁぁぁあああ!? 面白くなんてあるか! 俺のときめきを返せ!
“フェネ”: スバル氏はやはりときめいていたのですね
“フェリス”: あれだけ顔を赤くしたら、バレバレだったけどネ
“フェリス”: でも、スバルきゅん、とっても澱んじゃってるね フェリちゃん、ちょっと心配
“スバル”: 男だとわかりゃ、そりゃ澱むわ! くそー、耳を洗わせろー!
“フェリス”: そういうことでもないんだけど……ま、いっか
“クルシュ”: さて、情報交換と交流も済んだところで お互い行動に移るとしよう
“スバル”: ああ 予断は許さねぇ 俺たちも帰って作戦会議だ けど……
“スバル”: さっきの耳ハムは交流とはいわねぇからな!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_01

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_01_目指すはカララギ 更新日:2021/02/15

ナレーター: 王都から屋敷へ戻ったスバルたちは検討を重ね、 次の目的地をカララギ方面に定めた
ナレーター: その決め手となったのは、クルシュの屋敷で会った ヴィルヘルムやフェリスから得た情報だった
“スバル”: うっし、準備はこれでオッケーっと
“フェネ”: バナナはおやつに含まれませんよ
“スバル”: なんでそれを知ってんだよ お前ほんとにこの世界の精霊か?
“フェネ”: スバル氏の顔に書いてあったのです
“スバル”: バナナはおやつに含まねぇってか? ったく、お前には俺の顔がどう見えてんだよ……
“エミリア”: ねえ、スバル、準備は大丈夫なの?
“スバル”: エミリアたん! もちろんだ 俺はいつでも出発できるぜ
“エミリア”: スバル、偉いわ
“エミリア”: まだできてなかったら、怒らなくっちゃって思ったんだけど、 その必要はないみたい
“スバル”: 当たり前だろ なんせエミリアたんとのお出かけだからね 気合の入り方が違うよ
“スバル”: それに、エミリアたんを待たせるなんてエチケット違反、 俺がするわけないだろ
“エミリア”: ごめんスバル、ちょっと何言ってるのかわかんない
“フェネ”: そうですよ、スバル氏 エチケットと言うのであれば身だしなみはどうなのです?
“フェネ”: 爪は切りましたか? 顔は洗いましたか? 女性とのおでかけ一番重要なエチケットは清潔であることです
“スバル”: か、顔は洗った でも爪は……
“スバル”: って、お前、そんなエチケットまで知ってんだな? それも俺の顔に?
“フェネ”: もちろんです
“スバル”: なんだか仮面で顔を隠したくなってきたよ あんま俺の顔を見んな 向こういってろ、シッシ
“フェネ”: エミリア女史 スバル氏がフェネにあのようなことを
“エミリア”: こーら フェネをいじめないの
“スバル”: フェネ! お前! エミリアたんにチクるなんて反則だ!
“エミリア”: こら、スバル ごめんなさい、フェネ スバルが意地悪なこと言ったら私に教えて 叱ってあげるから
“フェネ”: エミリア女史は優しいですね それに比べて……
“スバル”: EMTなエミリアたんと比べられても、 そりゃそうだろとしか言いようがねぇよ
“フェネ”: はぁ…… そこを華麗につっこまなくてどうするのです? フェネのせっかくのボケが、無意味になってしまいます
“スバル”: ぼ、ボケてたのお前!?
“フェネ”: 左様です 現在スバル氏の“なんでやねん!”待ちとなっています
“スバル”: 待つなそんなもん! そもそも俺は関西出身じゃねぇし、 待たれたところで、そのつっこみはなかなか出てこねぇよ
“フェネ”: そうなのですか…… つっこみといえばこの言葉だと スバル氏の顔には書いてあったのですが……
“スバル”: 確かに王道のつっこみではあるんだけど、 日常的にそれを使う地域は限られてるな
“エミリア”: その“なんでやねん!”って、カララギの人たちみたいな言葉ね
“スバル”: ああ、そうだね アナスタシアさんが話す言葉は、 なんだか関西弁ぽい感じだったしな
“スバル”: これから向かうカララギだと、 もしかしたら使ってるかもしれないね
“レム”: みなさん、お待たせしました 竜車の準備が整いました
“スバル”: レム、こっちも準備万端だ それじゃあ──
“ロズワール”: ちょっといいかーぁな
“スバル”: ろ、ロズっち! いきなりどうした?
“ロズワール”: 重要なものを渡したくてねぇーえ
“ロズワール”: エミリア様、親書が届いております
“エミリア”: ……親書? 誰からなの、ロズワール?
“ロズワール”: 差出人は──“アナスタシア・ホーシン”様です

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_02

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_02_アナスタシアからの親書 更新日:2021/02/15

ナレーター: ロズワールから親書を受け取るエミリア
“スバル”: アナスタシアさんからか…… それで、親書にはなんて?
“エミリア”: うん……
ナレーター: アナスタシアからの手紙を読み進めるエミリアの表情は いつしか曇っていた
“スバル”: やっぱり…その……『禁書』のこと?
“エミリア”: ええ……
“スバル”: アナスタシアさんには、色々と目撃されちまってるしな……
“エミリア”: アナスタシアさんは、私と二人で話し合いがしたいみたい
“スバル”: なんだか危険な香りがするね、それは エミリアたん、俺も同席させてくれ
“フェネ”: スバル氏は時々不思議なことをおっしゃいますね
“スバル”: 俺が不思議なこと…… どういうことだ、フェネ?
“フェネ”: スバル氏に戦闘での活躍は期待できません 仮に危険な状態になったとして、スバル氏が何かの役に立つと?
“スバル”: くっ…… 痛いところを……
“エミリア”: フェネの言う通りだと思う 危険ならなおさら、スバルは同席させられません
“スバル”: 待ってくれ、エミリアたん! 『禁書』が関係あるなら、当事者の俺も──
“ロズワール”: スバルくんの気持ちもわかるが、 ここはアナスタシア様の意向も大切じゃないかーぁな
“ロズワール”: エミリア様、会談の場所の指定は?
“エミリア”: イバダでって書いてあるわ
“ロズワール”: だとしたら、予定を変更しなくてもよさそうだーぁね
“スバル”: ん? どういうこと?
“レム”: 第三都市イバダは、カララギでもルグニカに一番近い都市で、 レムたちも滞在を予定しています
“スバル”: つまり、俺も含めて予定通りイバダへは出発する
“スバル”: んで、アナスタシアさんとの話し合いの場には エミリアたんだけが出席するってことでいいか?
“ロズワール”: そうだね 会談の場にはいられなくても すぐ近くで待機できれば、もしものときは駆けつけることができる
“ロズワール”: それに、アナスタシア様は“二人”でとおっしゃっているんだ つまり、アナスタシア様も一人で出席されるということだーぁよ
“スバル”: ……もしもがある可能性は低い、と?
“ロズワール”: アナスタシア様は弁が立つお方だ 力に訴える必要はない スバルくんが危惧しているようなことにはならないだろおーぉね
“ロズワール”: むしろ──
“スバル”: エミリアたんが言いくるめられて、 余計な約束をしちゃう方が心配?
“スバル”: 確かにエミリアたん、お人好しだもんな……
“エミリア”: ちょっとスバル! 私、余計な約束なんてしません
“エミリア”: それに、 何かあったらちゃんとロズワールに相談するんだから
“ロズワール”: でしたら、私からは何もありません
“スバル”: とにかく、予定通りならオッケーだ 完全に蚊帳の外ってわけでもなさそうだし
“スバル”: にしても…… アナスタシアさんはエミリアたんと いったいどんな話をするつもりだ?
“フェネ”: スバル氏 それについては、ここであれこれ推測しても仕方がないのでは?
“スバル”: 確かにな まずはイバダに向けて出発だ そうしないことにはなんも始まらねぇよな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_03

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_03_会談と『禁書』 更新日:2021/02/15

“スバル”: ところでエミリアたん アナスタシアさんは何か企んでる 本当に一人で大丈夫か?
“フェネ”: スバル氏はまたその話を蒸し返すのですか? 最優先の課題をスバル氏が忘れていないか心配になります
“スバル”: 忘れてねぇよ  そもそもカララギにいく目的がそれだろうが
“フェネ”: エミリア女史とアナスタシア女史の会談のことで 頭がいっぱいのようでしたが?
“スバル”: いや…… それは……
“スバル”: わかった、気持ちを切り替えるよ 俺がイバダに向かうのは、『禁書』の調査だ
“スバル”: フェリスやヴィルヘルムさんからの情報は捨て置けねぇ 大事になる前になんとかしねぇと
“エミリア”: でもスバル ぜーったい無理しないでね 私もレムもいるんだから、何かあればなんでも相談して
“レム”: スバルくん、レムはスバルくんからの相談をいつでも待っています 遠慮なんていりません
“スバル”: ここでこんな風に釘を刺されちまう俺って……
“スバル”: 俺ってそんなに信用ないかな?
“フェネ”: ありません
“スバル”: そ、そんなにきっぱり!?
“フェネ”: そもそもすべてスバル氏のせいなのです スバル氏は失った信用を取り戻さなくてはならない立場のはず
“スバル”: うぐっ…… 色々自業自得って感じか…… しゃあねぇ、まずは信頼回復に努めることにするよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_04

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_04_居残りスバル 更新日:2021/02/15

ナレーター: スバルらを乗せた竜車は、 カララギの第三都市イバダを目指して走り出した
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: どうした、フェネ
“フェネ”: 『禁書』の反応があります
“スバル”: ……なに? この辺りでか?
“フェネ”: 左様です かなり近いかと
“スバル”: おいおい、マジかよ……タイミングとかあるだろ もうちょっと空気読んでくんねぇかな……
“フェネ”: 残念ながら、スバル氏並です
“スバル”: 俺は読めねぇんじゃねぇよ、あえて読んでねぇんだ!
“スバル”: 仕方ねぇな…… レム、竜車を止めてくれ
“レム”: スバルくん、どうされるおつもりですか?
“スバル”: やるしかねぇだろ 『禁書』のページを片付けて後を追わせてもらう
“エミリア”: スバル、本当に大丈夫?
“レム”: そうです、スバルくん レムもスバルくんと一緒に戦いたいです
“スバル”: いや、エミリアたんとレムはイバダに向かってくれ アナスタシアさんとの会談に遅れるわけにはいかねぇだろ?
“スバル”: ここは俺とフェネでどうにかして見せるからさ
“フェネ”: 主にフェネがですが 恐らくお二人のお力を借りなくても問題はないかと
“フェネ”: もしもの場合、ラム女史にも頼ることができます
“スバル”: 戦力にならなくてごめんね!?
“スバル”: ここならラム以外にもベア子もロズワールもいるんだし、 まぁ、なんとかなるさ 言ってて悲しくなるけど!
“エミリア”: 確かに、フェネもラムも頼りになりそうね
“スバル”: え、エミリアたん!?
“レム”: レムはスバルくんをとても頼りにしています スバルくんに応援されると、レムは何倍も力を出せますから
“スバル”: 応援団的な意味だね、それ! 嬉しいけども、なんだか今は複雑……
“エミリア”: アナスタシアさんとの話し合いに 遅れないようにしないと……
“スバル”: そうだ あの人との約束に遅れたりしたら きっと話し合いは不利になっちまう
“スバル”: レム、エミリアたんを頼む レムだけが頼りなんだ
“レム”: スバルくん……
“レム”: わかりました イバダでの滞在先は姉様が把握しているはずです 姉様にイバダまで送ってもらってください
“スバル”: ああ どのみち一人で竜車は無理だし ロズワールに相談して姉様を借りるつもりだ
“エミリア”: それじゃ、スバル
“スバル”: ああ、気を付けて
“エミリア”: スバルこそ、気を付けて ぜーったい無理しちゃダメだからね

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_05

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_05_『変異体』 更新日:2021/02/15

ナレーター: 第三都市イバダに出発早々『禁書』の反応を感知したフェネ エミリアとレムを先にいかせ、スバルはページの回収へ向かった
“スバル”: フェネ、ページの反応はどの辺りなんだ?
“フェネ”: 先ほどはこの辺りで感知したのですが……見当たらないですね
“スバル”: 領内や王都近辺は比較的落ち着いていると思っていたんだけどな
“フェネ”: はい、実際フェネもそう判断していましたが……
“スバル”: 発見されずにいるページの存在は否定できないもんな 今回はそのページの仕業か?
“フェネ”: はっきりとなにかを伝えることはできません、残念ながら
“スバル”: 隠密機能搭載とか勘弁してほしいんだがな 早く回収して俺たちもイバダに急がねぇと
“フェネ”: もう少し探してみましょう、感知はできているので
“スバル”: フェネ、いったいどこにページはあるんだよ!
“フェネ”: スバル氏、冷静に 興奮しては見つかるものも見つかりません
“スバル”: こういうときのド正論って 一番カチンとくるって知ってるか?
“スバル”: あっちこっち連れ回される身にもなってくれよ ってかこんなに外すもんか?
“スバル”: 王都と違って人はいないんだし さくっと発見できないのはなんでだ?
“フェネ”: なるほど、“頑張ってるはいいわけ” “結果でしか判断しない”意識の高い上司特有の傾向ですね
“スバル”: あ、いや、そういうつもりじゃねぇんだけどさ それにしたってさすがに……
“スバル”: ──ということで、とうとう村に着いちまったわけだが?
“フェネ”: おかしいですね……反応が消えてしまいました
“スバル”: はぁ!?
“フェネ”: 小休止を所望します、フェネは疲弊しました 感知はかなりのマナを消耗します
“スバル”: そう言われたら仕方ねぇ にしても、こりゃ長くなりそうだな エミリアたんたちを先にいかせて正解だったわ
ミルド: スバルだ
ダイン: またきたな!
リュカ: なんか変なのいる!
カイン: 遊ぼー!
“フェネ”: お呼びですよ、スバル氏
“スバル”: こんなことしてる場合じゃねぇんだけどな……
“スバル”: ぜぇぜぇ……
“フェネ”: お帰りなさい
“スバル”: くそっ、子どもの相手は本当に疲れるぜ 世のパパさんママさんには尊敬しかねぇな
“フェネ”: さて、捜査を再開しましょう
“スバル”: 待て待て、俺がスタミナ切れだよ 少しだけ休憩させてくれ
“フェネ”: 情けないですね
“スバル”: もうちょっと優しくしてくんない?
“フェネ”: む……!
“スバル”: ど、どうしたよ まさか『禁書』か?
“フェネ”: いえ、知人登場の予感です
ナレーター: フェネが振り向いた先にいたのは──
“ラム”: 耳障りな声が聞こえたかと思ったら、やっぱりバルスだったわね
“フェネ”: なるほど、ラム女史でしたか
“スバル”: なんだ、姉様か
“ラム”: なんだとは何様かしら、まだまだ使用人としてなってないわね 足腰立てなくなるまで訓練が必要かしら
“スバル”: 今はやめてくれ!
“ラム”: ところでバルス、こんなところで何をしているのかしら? バルスはレムたちと出発したものとばかり思っていたわ
“スバル”: そうだ、ラム! ちょうどいい! 実はラムに色々と相談があってさ
“スバル”: 本当だったら真っ先に、 ラムのところにいくべきだったんだけど、フェネの奴が……
“フェネ”: 何を言っているのですか、スバル氏 闇雲にラム女史を連れ回すなど失礼です
“スバル”: その扱いの差はどういうこと!? 俺、さんざん連れ回されたんだけど!
“ラム”: フェネはわかっているようね バルスのことはいくらでも連れ回して構わないわ
“ラム”: それで、ラムに相談したいことというのは?
“スバル”: 実は、『禁書』の反応がある 手を貸してほしい
“ラム”: 今ラムは買い出しの途中よ それが終わってからでも構わないかしら?
“スバル”: いやいや、買い出しより重要だ! 買い出しは後回しに──
“フェネ”: いえ、買い出しの後で構いません ラム女史のお手を煩わせるのも悪いと思います
“フェネ”: むしろスバル氏、 フェネはラム女史の買い出しをお手伝いすることを提案します
“スバル”: フェネ、お前な! 今は買い出しどころじゃねぇだろ?
“フェネ”: 残念がならスバル氏、反応は消えたままです これ以上の捜索は無駄足になってしまうでしょう
“スバル”: まったく、もう陽が傾き始めているじゃねぇか……
“ラム”: バルスには、帰ってからやるべきことが山積みよ
“スバル”: 待て待て! 今日からしばらく姉様がやるはずだったろ! 買い出しの荷物持ちぐらいで勘弁してくれ!
“ラム”: バルス、今日の成果を報告して
“スバル”: ……今日の成果?
“ラム”: バルスはエミリア様やレムとイバダに向かったはずよ その任務はどうなったのかしら?
“スバル”: いや、だからそれは、『禁書』の反応があって……
“ラム”: それで?
“スバル”: ああわかった! 成果ゼロだ! さんざん歩き回ったけど、発見には至っていねぇ!
“ラム”: しかもそんな無能なバルスを ラムはイバダまで送ることになりそうだわ
“スバル”: ごめん! 俺にできることならなんでもやらせてもらう!
“ラム”: 当然ね むしろラムから言われなくても、 自ら進んで言い出すべきだわ
“フェネ”: ──スバル氏、ラム女史
“スバル”: どうしたフェネっ もしかして?
“ラム”: バルス、見なさい
“スバル”: ま、魔獣!
“ラム”: この感覚は…… どうやらお目当てのものが見つかったみたいね
“スバル”: ああ ありゃ、間違いなくページの影響を受けてやがる
“魔獣”: ──ぐがぁぁぁあああああ!!!
“ラム”: 仕方ないわね
“フェネ”: 支援します、ラム女史
ナレーター: フェネは『禁書』をひらき、ラムに向かって手を向けた すると、にわかに『禁書』が光り始める
ナレーター: 光の粒子が、ラムの体に流れ込んでいった
“ラム”: マナが……力がみなぎってくるわ……! これなら!
“魔獣”: ぎゃうぅぅぅぅぅ!!!
“スバル”: うお、跡形もねぇ……
“ラム”: 助かったわ、フェネ 『禁書』にはそんな使い方もあるのね
“フェネ”: 『禁書』に蓄積されたマナは取り出し可能です ラム女史にとっては都合のよい機能かと
“ラム”: ……ええ、そうかもしれないわ
“スバル”: でも、ちょっと待て こいつは『異形』とは、なんか違わねぇか?
“フェネ”: 左様です 『禁書』の影響を受け変異していますが 元々はこの辺りに生息していた魔獣だと思われます
“スバル”: 『禁書』の影響を受けて、突然変異したってことか……
“スバル”: 『異形』とは区別するために、 なんか名前を付けといた方がよさそうだな
“スバル”: あくまで便宜上だけど、まんま『変異体』なんてのはどうだ?
“フェネ”: 特に異論はありません
“ラム”: ラムの口出すとこじゃないわ 好きになさい
“スバル”: よし じゃあ決まりだな んで、その『変異体』についてなんだが……
“スバル”: 『禁書』の影響は魔獣の姿さえ変えちまうってことだよな あらゆる生き物が『変異体』になっちまう可能性を秘めてる
“フェネ”: 断言はできませんが、可能性の話をするのであれば そうなるでしょう
“ラム”: 一種の呪いのようなものかしら?
“スバル”: 呪いか……『禁書』の謎を解き明かす鍵になりそうだな フェネの記憶喪失にも関係しているかもしれない
“ラム”: あくまで感想よ 呪いと決めつけるのは早計だわ
“スバル”: まぁ、そうだな 結論を出すには材料が少なすぎる
“スバル”: にしても、あのおかしな様子…… ヴィルヘルムさんたちの証言とも重なるな
“フェネ”: 恐らく、あの方々が遭遇したのが『変異体』だったのでしょう
“フェネ”: ところでラム女史 本当に送っていただけるのでしょうか? 道中『変異体』や『異形』に襲われる可能性があります
“ラム”: ロズワール様のお手を煩わすわけにはいかないわ 誰かが送らなければいけない以上、やむを得ないわね
“スバル”: ホントごめん……
“ラム”: はんっ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_06

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_06_イバダへ 更新日:2021/02/15

“ロズワール”: ラム、いってきたまえ
“スバル”: さすがロズっち! 助かるぜ!
“スバル”: 一応、俺たちが不在な間は ア―ラム村から助っ人がきてくれることになってる
“スバル”: 本業の俺たちに比べたら、ちと落ちるかもしれねぇけど、 そこは我慢してくれ
“ラム”: あらバルス
“ラム”: まるで誰かさんの仕事の質が村人よりも上みたいな言い草ね
“スバル”: おっと姉様
“スバル”: 仕事の質についちゃ、少しは自信があるつもりだぜ そういう姉様こそどうなんだ?
“スバル”: 臨時でくる村の人より、下ってことはねぇよな?
“ラム”: はんっ どうやらバルスは、自分の立場がわかっていないようね
“ラム”: どうしてラムが、大切なロズワール様を残して 屋敷を空けなくてはならないと思っているの?
“ラム”: ひとりで竜車に乗れないだなんて、恥を知りなさい
“スバル”: うっ…… す、すまねぇ……
“ロズワール”: スバルくん ラムはスバルくんの教育係だからね ときには厳しいことも言うが、それは君のためなんだーぁよ
“スバル”: “ときには”って表現はひっかかるけど、今はそう納得しておく 俺の不甲斐なさが原因なわけだし……
“ロズワール”: それで、いつ出発するつもりだい?
“スバル”: 明日のあさイチで出たい 完全に一日遅れだ 少しでも早くイバダに到着しねぇと
“ロズワール”: それじゃ、ラム、用が済んだら、まっすぐ帰ってくるんだよ くれぐれも道草は食わないように
“ラム”: もちろんです、ロズワール様
“ロズワール”: フェネくんも色々頼む
“フェネ”: ラム女史の件、ありがとうございました
“フェネ”: イバダ界隈の『禁書』は必ず回収してみせます
“ロズワール”: 二言はないだろうね
“フェネ”: あとは背中で語らせていただく所存です
“ロズワール”: そうかい それは期待させてもらおうじゃーあないか
“ロズワール”: ただでさえ、王選の開始は遅れてしまっているからね 新たな騒動で、さらなる遅れが発生するのは避けたい
“ロズワール”: 頼んだよ スバルくん、フェネくん

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_07

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_07_気の合う二人 更新日:2021/02/15

ナレーター: ──翌朝
“スバル”: ラム、もう少し急げねぇか?
“ラム”: 静かにしなさい、地竜の機嫌が悪くなるわ
“スバル”: うぐ、それは失礼
“フェネ”: スバル氏、ラム女史の機嫌はスバル氏にかかっています 言葉の選択には気を付けてください
“スバル”: けど、急がねぇと 一刻も早くイバダに着きたい
“ラム”: バルス、ラムが急いでいないとでも?
“スバル”: いや、もうちょっと速度出せるんじゃねぇかな? ただでさえ、遠いんだろ?
“ラム”: はんっ だからこそよ バルスの弱い頭では、理解できないでしょうけど
“スバル”: まぁ、確かにペース配分ってのは大事かもしれねぇけど それにしたって──
“フェネ”: ラム女史、スバル氏の口を縫っておきしょうか?
“ラム”: あら、それは名案ね ああ言えばこう言う口なら、縫ってしまった方がいいわ
“スバル”: ちょっと急いでほしいって言っただけでそこまで!? なんだかとんでもないタッグが誕生しちまった予感……
“ラム”: タッグというのはよくわからないけれど フェネとは気が合わないことはなさそうだわ
“フェネ”: 同感です、ラム女史
“スバル”: 同感って…… キャラがかぶってる認識はあるのな
“ラム”: 何を言っているのかわからないけれど そこはかとなく不快だわ
“フェネ”: スバル氏、ラム女史に謝罪を ラム女史は唯一無二 キャラかぶりなどありえません
“スバル”: 完全にフェネはラム派なんだな! イバダまでぼっち確定じゃねぇか!
“フェネ”: スバル氏 イバダに早く到着したいのは、 ラム女史も同じだと思います もちろんフェネもです
“フェネ”: ここは黙ってラム女史に任せるべきかと
“スバル”: くっ…… 確かにそうだな わりぃ、少し焦りすぎてた
“スバル”: アナスタシアさんとの会談までに イバダに到着したいって気持ちが強すぎたよ
“スバル”: どうせ同席できねぇんだから、 俺がいたって意味ねぇってのに
“フェネ”: どのような会談で どんな要求を突きつけられるかわからない状況
“フェネ”: 間に合うにこしたことはないでしょうが、今は我慢です

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_08

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_08_第三都市イバダ 更新日:2021/02/15

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車は休息を最小限で進み 通常よりも早くカララギの第三都市イバダに到着した
“スバル”: ふぅー、遠かった…… やっと到着か 体中痛てぇし、寝不足だ
“ラム”: あら、乗っていただけのバルスには いくらでも眠る時間はあったと思うのだけれど
“スバル”: そうもいかねぇだろ!? いつ『異形』や『変異体』に襲われるかわからねぇんだし
“ラム”: 『異形』や『変異体』を感知するのはフェネのはずよ バルスは感知でも戦闘でも役立たず 何か反論はあるかしら?
“フェネ”: 確かにスバル氏が無理をして起きていたことに、 あまり意味はなさそうです
“フェネ”: そもそもスバル氏は何をしにいらしたのでしょう……?
“スバル”: こ、根本的な疑問!? そして、核心を突いてるからやけに胸がいてぇ
“スバル”: 俺がきたのは『禁書』の調査だよ あと、 アナスタシアさんとの会談に臨むエミリアたんの力になりたい
“スバル”: 役に立つのか?立たねぇのか?って問題はあるけど、 少しでも役立てるよう俺なりに頑張るつもりだ
“スバル”: それで、どうなんだ? フェネ、『禁書』の反応はあったりしねぇか?
“フェネ”: ……スバル氏、微弱ながら感じられます
“スバル”: そうか…… となれば──
“ラム”: 待ちなさい、バルス 『禁書』をどうにかしようと思っているなら、あまりにも早計よ
“スバル”: はあ? なんで? そのために俺たちは──
“ラム”: 相手の力も数もわかっていない状況よ ここはまず、一刻も早くエミリア様やレムと合流するべきだわ
“フェネ”: そうです、スバル氏 戦力は多いにこしたことはありません
“スバル”: 確かにイバダを調査するにしたって、人手は多い方がいい
“スバル”: にしても、このイバダってのはかなりの大都市だな……
“フェネ”: ここはカララギ方面でも有名な交易都市と知らされています 多くの流行はイバダから発信されるとの謂れがあるほどです
“スバル”: そりゃすげぇ
“スバル”: 『禁書』の影響で人々が狂暴化するってのは王都で確認済みだ ここではあんなことは起きないようにしねぇと
“スバル”: ただでさえ王選の開始が遅れちまってるみたいだし、 さらなる遅れは避けねぇとな
“スバル”: ということで、まずはエミリアたんとレムにコンタクトだ!
“スバル”: ラム、二人が泊ってる宿まで案内してくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_09

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_09_イバダの『禁書』を探せ 更新日:2021/02/15

ナレーター: ラムの案内でエミリアたちが滞在しているはずの 宿へと向かったスバルたちだったが
ナレーター: 二人はすでにアナスタシアからの使者に呼び出され 会談へと向かった後だった
“スバル”: ちくしょう…… エミリアたんたちとは合流できず、 しかもアナスタシアさんとの会談は始まっちまったみたいだ
“スバル”: なんともついてねぇな……
“ラム”: バルス、落ち込んだところで事態は何も改善しないわ
“スバル”: そりゃ、そうだけども
“スバル”: 出発早々『禁書』の反応でエミリアたんとは離れ離れになるわ
“スバル”: 一日遅れでようやく出発できたと思ったら 道中ラムとフェネにいびられるわ
“スバル”: ほとんど不眠不休でとばしたってのに、 到着してみりゃ時すでに遅しだ
“スバル”: そりゃ、落ち込みたくもなるぜ、まったく
“ラム”: バルスの不眠不休にはあまり意味などなかったけれどね
“スバル”: がっ! 人の傷に塩を塗らないでくれる!?
“ラム”: けれど、あまりいい流れとは言えないわ これで 対峙する『禁書』のページが強敵だったら目も当てられないわ
“スバル”: 待て待て そうやって変なフラグを立てるんじゃねぇよ、姉様
“スバル”: ここには頼りになるラインハルトやクルシュさんもいねぇんだ 強敵だけは勘弁してほしいぜ
“フェネ”: とはいえスバル氏、現時点でやるべきことは一つだけかと
“スバル”: ああ、わかってる 『禁書』の反応がある以上、放ってはおけねぇ
“スバル”: エミリアたんと合流できなかったのはいてぇが、 『禁書』探しに取りかかるとしよう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_10

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_10_『鉄の牙』 更新日:2021/02/15

ナレーター: イバダ到着後に『禁書』の反応を感知したフェネ
ナレーター: 戦力アップのためエミリアやレムとの合流を図ろうと 二人が滞在している宿へ向かったスバルたちだったが
ナレーター: 二人はすでにアナスタシアとの会談へと出発し不在だった
ナレーター: 既存戦力のラムとフェネとともに 『禁書』のページを探すことを決断したスバル
ナレーター: スバルたちはフェネのナビゲートで とある袋小路にたどり着いていた
“フェネ”: いました、『異形』です
“スバル”: チッ 手遅れだったか…… しかも、ひい、ふう、みい……って、複数いやがるじゃねぇか!
“ラム”: つべこべ言ってる暇はないわ
“フェネ”: ラム女史、支援します
“ラム”: いくわよ、はあっ!!
“ 異形”: ぐぎゃぁぁぁあああ!!!
“スバル”: ラム、まだだ! 追撃くるぞ!
“ラム”: 言われるまでもないわ!
“ 異形”: あぎぁぁぁあああ!!!
“フェネ”: ラム女史、素晴らしいです
“スバル”: いいぞ、さすが姉様!
“ラム”: 支援してくれているフェネはまだしも、 何もしないバルスの声は不快以外の何ものでもないわ
“ラム”: 永遠に……いえ少し黙っていてちょうだい もちろん永遠にでも構わないけれど
“スバル”: いやいや永遠には勘弁だ!
“スバル”: けど、邪魔ってんなら少し黙るよ すげぇ不本意だけどな!
“ 異形”: ──ぐぐぐぅぅぅぐっ!!
“ラム”: 消え去りなさい! ──エル・フーラ!
“ 異形”: ──ぎゃあぁぁーーっ!!
“ラム”: はあ、はあ……!
“ 異形”: しゃぁぁぁあああ!
“魔獣”: ぎゃぉぉおおおお!!
“ラム”: しつこいわね……
“スバル”: ラム!
“スバル”: クソっ! さすがに数が多い! フェネ、なんとかならねぇのか!
“フェネ”: フェネは支援型故、前衛はラム女史に頼らざるを得ない状況です
“フェネ”: しかも、フェネの支援も有限…… 長期戦では押し負ける可能性があります
“スバル”: 解説には感謝だが、要はジリ貧ってことじゃねぇか……!
“ラム”: きゃあ!
“スバル”: ラム──!
ナレーター: 反射的にスバルは、ラムの方へ駆け出してしまう
“ 異形”: ぐぅぅぅううう!
“ラム”: バルス、あぶな──!!
“スバル”: ──っ!!
“スバル”: ……あれ?
???: よう、兄ちゃん、間一髪やったな
“ミミ”: ミミたちがきたから大丈夫! おにーさんたちナンジャク! あとはミミとダンチョーに任せてー!
“スバル”: ……あ、あんたらは?
“リカード”: ワイはリカードっちゅうねん まあ、詳しい話は後にしようや
“ミミ”: そうそう! まずはあいつらをやっつけるー!
“ラム”: リカード様、ミミ様、ありがとうございました
“リカード”: おう嬢ちゃん、別にええで そんなことより──
ナレーター: リカードとミミの視線は、『禁書』を開き、 弾けたマナを吸収させているフェネに注がれている
“ミミ”: すごーい! 本がキューシュー!
“リカード”: あれはいったいなんや?
“スバル”: おいフェネ! リカードたちの前でなにやってんだよ!
“フェネ”: 状況的に、会話が長くなることが予想されたので マナが霧散してしまわないうちに対応いたしました
“スバル”: 長くってな…… お前のせいでさらに長くなりそうだよ
“リカード”: あんなもん見せられれば、長くならざるを得んやろうな
“リカード”: どうしてあれと戦ってたん? そもそもどうして、あれがここにおるってわかったんや?
“リカード”: 聞きたいことは山積みやけど、 まずは自己紹介といこうやないか
ナレーター: 獣のような大柄の亜人と小柄な亜人は アナスタシアの私兵団『鉄の牙』のメンバーだった
ナレーター: 大柄でリカードと名乗った亜人が団長で、 小柄なミミが副団長だ
ナレーター: スバルたちもリカードたちに素性を明かす
“リカード”: ──どうやら、お嬢が王都で会ったって言うとったんは、 兄ちゃんたちで間違いなさそうやな
“スバル”: そうだ 俺とフェネはアナスタシアさんに王都で会ってる ユリウスっていうキザな騎士様にもな
“リカード”: そんでもって、さっき見たアレが お嬢が見た不思議な現象ってわけやな
“スバル”: ああ アナスタシアさんには、不本意ながら 王都で『異形』を封印するまでの一部始終を見られちまった
“スバル”: ユリウスには伏せておいてくれたんだが、 あんたらにはすでに共有済みらしいな
“リカード”: まあ、お嬢とワイらは家族みたいなもんや、 悪く思わんといてな
“スバル”: 家族ったって、秘密にすることは秘密にすんだろ
“スバル”: まぁ、誰にも喋らないでいてくれるとは、 まったく思ってなかったけど……
“リカード”: で、兄ちゃん、『異形』ってのはなんや?
“スバル”: さっき見たアレだよ “アレ”だと色々不都合がでてきたんで 『異形』って名付けさせてもらった
“リカード”: もう少し詳しく頼むわ 『異形』ってもんがなんなんか、結局わからんで、それじゃ
“スバル”: 正直、どこまで話していいのか、俺じゃ判断できかねるな
“ラム”: バルス、よく言ったわ まったくその通りよ バルスごときに判断する権限はないわ
“ラム”: リカード様 この者は無駄に態度は大きいですが、 一介の使用人にすぎません
“ラム”: 本当に無駄に態度だけは大きいのですが
“リカード”: はははっ ずいぶんな言われようやな、兄ちゃん
“スバル”: ああ 毎度毎度、こき下ろされて 精神的につれぇ思いをさせられてるよ
“スバル”: 今だって“無駄に態度だけ大きい”って繰り返す必要あったか? そもそもそのワードがなくったって、十分伝わる内容だったよね!
“ラム”: なにを言っているのバルス ラムが伝えた内容の中で一番大切な情報よ
“スバル”: 俺の態度が無駄にデカいってのが!?
“リカード”: そうやな、かなり有益な情報やったで
“ミミ”: ミミにもー! おにーさん、無駄に態度デカイ! 知ってるのと知らないのは大違いー!
“スバル”: うぐっ…… お、お前らな……
“スバル”: ちくしょ! んじゃ、こっちからもお返しに質問だ!
“スバル”: どうしてアナスタシアさんは、エミリアたんを呼び出したんだ? 会談でどんな話をするつもりなんだよ?
“リカード”: おっと! それはなかなかの反撃やな…… お嬢の許可なしに、話すのは難しいで……
“ミミ”: 勝手に言っちゃダメ! お嬢に怒られるー!
“スバル”: ははは! まいったか! 俺たちは仲良く権限がないもの同士だな!
“ラム”: フェネ、言ってやりなさい
“フェネ”: かしこまりました、ラム女史
“フェネ”: スバル氏はかなり歪んだ方だと思っていましたが、 想像通りのゲス野郎ですね
“フェネ”: 返答がわかっている質問をあえてして、 お二人を貶めるとは、ある意味感服いたしました
“スバル”: 結局俺だけが下げられるこのシステム どうにかならねぇのかな!?
“ラム”: 自業自得よ、バルス いい加減に気が付きなさい
“スバル”: 確かに器のちっささが露呈しちまったけど、それにしたって……
“フェネ”: 落ち込んでいるスバル氏はさておき、 どうやらここでこれ以上お話をしていても仕方がないようです
“リカード”: せやな ワイらだけやと話すに話せん状況みたいや
“フェネ”: エミリア女史とアナスタシア女史のところに お連れいただけないでしょうか?
“フェネ”: そろそろお二人の会談も終わりを迎えた頃かと
“リカード”: ま、ええやろ ワイらも色々と手を焼いて 埒が明かんと頭を悩ませてたところや
“スバル”: ……手を焼いて? リカード、お前らも『異形』や『変異体』とやり合ってんのか?
“リカード”: ……『変異体』? またまた知らん単語の登場やな
“リカード”: せやけど、詳しいことはワイらには話せんのやろ?
“スバル”: ああ 現時点じゃお互いの関係性も見えねぇ 詳しい話はなしだ
“リカード”: わかったで、兄ちゃん それじゃいこっか お嬢のところまで案内したる

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_11

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_11_スバルの口はよく滑る 更新日:2021/02/15

“リカード”: お嬢、例の兄ちゃんを連れてきたで!
“ミミ”: きたでー!
“アナスタシア”: おやおや、これはこれは
“スバル”: どうも、アナスタシアさん、王都で会って以来だな
“アナスタシア”: せやね ナツキくん元気にしとった?
“スバル”: ぼちぼちってとこかな アナスタシアさんは?
“アナスタシア”: ウチもぼちぼちやな
“スバル”: で、エミリアたん! 会いたかったよ!
“エミリア”: す、スバル! どうしてスバルがここに?
“スバル”: あの後、なんとか一日遅れで出発して、今日イバダに到着した んで、到着早々色々と大活躍したってわけだよ、エミリアたん
“ラム”: エミリア様 大活躍したのはバルスではありません バルスはただその場にいただけです
“スバル”: いやいや 少しでも早くエミリアたんたちに追いつくために 竜車を飛ばして──
“フェネ”: エミリア女史 ほとんど不眠不休で竜車を走らせたのはラム女史です
“スバル”: イバダに着くや否や『禁書』の反応を感知して現場に──
“ラム”: 無論ですがエミリア様、反応を感知したのはフェネです
“スバル”: 迫りくる『異形』をバッサバッサと──
“リカード”: 頑張ってたのはそこの嬢ちゃんやな それとワイらや
“ミミ”: ミミも頑張ったー! たっくさんやっつけたよー!
“エミリア”: ええっと…… 今のところスバルの出番がないみたいだけど……
“エミリア”: でも、偉いわね、スバル 約束通り、無茶はしなかったみたいだもの
“スバル”: うぐっ…… その褒め方はとっても複雑かな 俺としては目立つ成果を出す気満々だったからね!
“スバル”: にしても、俺ってマジで必要ない感じ? 屋敷に残って使用人業に精を出してた方がよかったのか?
“アナスタシア”: そんなことはないんと違う? ウチはナツキくんを評価しとるで
“アナスタシア”: ナツキくんが欠けただけで、 今言っとったことのすべてがなかったわけやし
“アナスタシア”: それに、エミリアさんとウチの話し合いの結果も まったく別のものになってたかもしれんしねえ
“スバル”: ……話し合いの結果が? それってどういう意味だ
“アナスタシア”: そのまんまの意味やよ
“アナスタシア”: ウチはエミリアさんと二人で話すことで 筋を通したつもりやったんやけど
“アナスタシア”: ナツキくんも招待しておくべきやったわ
“アナスタシア”: ウチが知りたいことは、 エミリアさんよりもナツキくんの方が詳しそうやし
“スバル”: 知りたいこと? 『禁書』の件か?
“アナスタシア”: ふーん、『禁書』っていうんや? あのけったいな本は
“リカード”: お嬢、『異形』や『変異体』って単語も出たで
“アナスタシア”: 『異形』? 『変異体』? あのナツキくんたちが倒しとった魔獣のことやろうか?
“スバル”: ま、待ってくれ、アナスタシアさん なんだか一方的にこっちから情報を提供してる気がするんだが?
“アナスタシア”: そういう意味でも、ナツキくんがきてくれて助かったわ エミリアさんはなんも教えてくれんかったし
“スバル”: ……エミリアたん?
“エミリア”: 私、余計なことは言わないように気を付けたの
“スバル”: そ、そうなんだ……
“ラム”: はんっ どうやらバルスは、屋敷に残っておくべきだったみたいね
“スバル”: いやいや、それを言うんだったら、 フェネだってリカードたちの前で……
“フェネ”: スバル氏 それは違います アナスタシア女史には、すでにすべてを見られています
“スバル”: けど、あのときはまだ、リカードたちが アナスタシアさんの関係者だってことはわかってなかったはずだ
“ラム”: だからどうしたのかしら、バルス?
“スバル”: くっ 結果的にではあるが、リカードたちがアナスタシアさんの 関係者である以上、隠しても意味はなかったよ
“スバル”: じゃあ、アナスタシアさんが俺を評価してるってのは 自分にとって都合がいい奴だからってことか?
“スバル”: 一瞬褒められたと思ったのは、俺の勘違いかよ?
“アナスタシア”: そんなことはないんやけど、 ナツキくんは少し、発言には気を付けた方がええかもしれんねえ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_12

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_12_『禁書』の価値 更新日:2021/02/15

“アナスタシア”: ──実はな、ナツキくん
ナレーター: アナスタシアがそう切り出し、周囲には緊張が走る
“アナスタシア”: 王都からカララギに戻る途中で、 ウチらもアレに何度か遭遇したんよ
“アナスタシア”: “アレ”つまり、 ナツキくんがいう『異形』や『変異体』ってヤツやな
“アナスタシア”: 王選の開始は少なくても一ヶ月は延期になるって話やし、 あのまま王都におっても意味ないやろ?
“スバル”: それで、カララギに戻る途中で化け物退治をさせられたわけだ
“アナスタシア”: せやね、ウチの子らが頑張って退治してくれたわ
“アナスタシア”: それでや、化け物退治のついでになんやけど、 ウチは気色悪い絵が描かれた妙な紙を拾ってもうてな
“スバル”: ……妙な紙? 気色悪い絵?
“アナスタシア”: あれはなんなんやろ?
“アナスタシア”: 同じような紙を拾ったって人らがおって、 最近では高値で取引されるようになったらしいわ
“スバル”: た、高値で取引!? あれはそんなもんじゃ──
“アナスタシア”: やっぱりナツキくんは、色々知ってたみたいやねえ
“アナスタシア”: ウチは商売になるんやったら、 あの絵を集めて売りたいんやけど、ナツキくんはどう思うん?
“スバル”: どうもこうも…… って、待て待て! アナスタシアさんは、『禁書』のページを持ってるのか?
“アナスタシア”: 『禁書』のページ…… やっぱりあれはその『禁書』とかいう本と関係があるんやね?
“スバル”: ああ、おおアリだ そもそも今回の騒動の元凶って言ってもいい
“スバル”: 俺たちはその『禁書』のページを集めて回ってるんだ この厄介事を終わらせるためにな
“アナスタシア”: ……集めて回ってるん? どうしてナツキくんたちがそないなことせなあかんのやろ?
“アナスタシア”: この件ではルグニカの騎士団も動いてるみたいやし、 あちらさんに任せてもええんと違う?
“スバル”: そ、それは……
“ラム”: ──バルス!
“フェネ”: スバル氏は学習能力がないのですか? そちらのアナスタシア女史 からも発言には気を付けるよう言われたばかりのはずです
“スバル”: くっ…… けど…… アナスタシアさんには何か隠し玉がある気がする
“スバル”: わざわざエミリアたんを呼び出して、色々聞き出そうとしてたんだ
“スバル”: 何か狙いがねぇと、絶対にそんなことはしない
“スバル”: んで、その隠し玉を披露させるためには、 きっと洗いざらい話さなきゃダメだ
“スバル”: そもそも交渉事じゃ、 アナスタシアさんの方が一枚も二枚も上手なんだよ
“スバル”: まともにやっても俺たちに勝ち目はねぇ
“スバル”: むしろここはアナスタシアさんを俺たちの味方に……
“エミリア”: ……味方? アナスタシアさんは、私たちと仲良くしてくれるの?
“アナスタシア”: “仲良く”っていうのは可愛い表現やねえ
“アナスタシア”: それにウチは、無駄なことはせえへん 案外ナツキくんは、侮れんのかもしれんねえ
“アナスタシア”: あ、これ、ホンマやから 他意はないから安心してな
“スバル”: 素直には喜べねぇかな! アナスタシアさんて、心にもないことが平気で言えそうだし!
“アナスタシア”: ふふふ それでどないするん? ウチを味方に引き入れるんやろ?
“アナスタシア”: お手並み拝見といかせてもらおうやない

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_13

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_13_交渉開始 更新日:2021/02/15

“アナスタシア”: さあ、ナツキくん 交渉開始や
“アナスタシア”: ナツキくんはどうやってウチを味方にするつもりなんやろ? 興味あるわぁ
“スバル”: そんなたいそうなもんじゃねぇよ さっきも言っただろ、交渉じゃ勝ち目がねぇって
“アナスタシア”: 交渉せえへんのなら、いったいどうするつもりなんやろ?
“アナスタシア”: ウチが一番嫌いな“お願い”なんてことに ならんかったらいいけど……
“アナスタシア”: ナツキくんは、一方的に相手の善意に甘えるなんて真似、 せえへんよね?
“スバル”: 当たり前だ エミリアたんならまだしも 相手がアナスタシアさんな時点で、その選択肢はねぇよ
“アナスタシア”: それはよかったわぁ それでどうなん? 続けてもらってええ?
“スバル”: まず、一番大事な事実を伝える
“スバル”: この『禁書』の件を解決できるのは俺たちだけだ
“リカード”: それはどういう意味や? ワイらは『異形』やら『変異体』には負けへんで
“ミミ”: ダンチョーの言う通り! ミミたち強いー! あいつらやっつけたー!
“スバル”: 確かにリカードやミミはすげぇ強いかもしれない けど、『異形』は倒してもその場しのぎにしかならねぇ
“スバル”: 『禁書』に封じない限り、あいつらはまた復活するんだよ
“スバル”: そして、それができるのは俺たちだけってわけだ つまり、『禁書』を持ってる俺たちにしか根本的な解決はできねぇ
“アナスタシア”: なるほど…… それは確かに大切な事実やね
“スバル”: だろ? んで、次に『禁書』のページのことだけど、 あれはさっきも言ったけど騒動の元凶だ
“スバル”: あそこに描かれてるのはただの絵じゃないんだ 条件が揃うと実体化しちまうんだよ
“アナスタシア”: それが『異形』と『変異体』なん?
“スバル”: いや、『異形』の方だ 『変異体』はまた別物だな
“スバル”: 『変異体』はページから出てくるんじゃなくて、『禁書』の ページが周囲に影響を与えて魔獣なんかを狂暴化させたもんだ
“スバル”: てな感じで『禁書』のページにはすげぇリスクがある あれで商売をしようだなんて考えるべきじゃねぇ
“スバル”: 一刻も早く『禁書』に封じちまうのが一番なんだよ
“アナスタシア”: ナツキくんが伝えたかった一番大切な事実も 『禁書』のページについてもわかったんやけど
“アナスタシア”: ウチを協力させるっていう 当初の目的はどこにいったんやろ?
“アナスタシア”: 今の話を聞いてもウチが協力する理由が見当たらんわ
“アナスタシア”: 確かにナツキくんらがこの件を解決してくれんと 王選は開始できんのかもしれんけど
“アナスタシア”: 王選が開始されなくて困るのはエミリアさんも一緒
“アナスタシア”: ウチが協力してもしなくても、結局ナツキくんらは この件を解決しないといけないんと違う?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_14

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_14_ロズワールの伝言 更新日:2021/02/15

“アナスタシア”: ナツキくん、ウチの協力がほしいんやったら それなりの見返りが必要やよ
“スバル”: 見返り……
“アナスタシア”: 洗いざらい話すなんてゆうといて 結局ナツキくんは、肝心なことを話してないんと違う?
“スバル”: それは……
“アナスタシア”: 自分らにとって都合が悪いことも話してもらわな
“アナスタシア”: ウチはいずれエミリアさんとは王選で競う身
“アナスタシア”: エミリアさんの弱味を知ることは ウチにとって大きな利になるんやから
“アナスタシア”: それにな、ナツキくん
“アナスタシア”: ウチは売りに出てたもんも買わせてもらって それなりの枚数の『禁書』のページを持ってる状態や
“スバル”: そ、それは危険だ! 早く『禁書』に封じねぇと!
“アナスタシア”: その慌てよう、演技には見えんけど、 ナツキくんがした『禁書』の話は本当なんやろうか?
“アナスタシア”: ウチから『禁書』のページを騙し取って 利を得ようとしていない証拠がどこにあるん?
“アナスタシア”: ウチに協力してほしい ウチが持ってる『禁書』のページもほしい
“アナスタシア”: ほしい、ほしいはわかったんやけど
“アナスタシア”: 重要なのは、その代わりに ナツキくんがウチに何を差し出すかやね
“スバル”: ……あれはすげぇ危険なものなんだ 複数枚持ってるなんて状態は一刻も早く解消した方がいい
“スバル”: ──本当に本当だっ! 俺は嘘なんて言ってねぇっ!
“スバル”: だからページを──
“ラム”: バルス 少し頭を冷やしなさい
“ラム”: アナスタシア様、申し訳ありません この者に少し頭を冷やすお時間をいただけないでしょうか?
“アナスタシア”: ウチは構わんけど、ナツキくんはどうなん?
“スバル”: ……すまない、アナスタシアさん 少し時間をくれ 頭に血がのぼっちまった
“エミリア”: だったらレムも呼んでいいかしら 一人で待たせてるのはなんだかかわいそう
“アナスタシア”: わかったわ レムさんなら別室に控えてるはずや ミミ、呼んできてもらってええ?
“ミミ”: わかったー! ミミ呼んでくるー!
“アナスタシア”: それじゃ、ウチらは席をはずさせてもらった方がええね ナツキくんの頭が冷えたら交渉再開やね
ナレーター: アナスタシアたちに代わり入室したレムに、 ラムから手短な情報共有が行われた
“レム”: ──ありがとうございます、姉様 状況はだいたい理解しました
“レム”: レムはスバルくんを信じています スバルくんならきっと、正しい判断を下してくれるはずです
“スバル”: レム……
“ラム”: ラムはロズワール様の言い付け通り バルスの判断を尊重させてもらうわ
“スバル”: ロズワールがそんなことを?
“ラム”: ええ バルスの判断を尊重するようにおっしゃっていたわ
“スバル”: でも…… ラムはそれでいいのか? なんか不服そうだったけど
“ラム”: ラムにとってロズワール様のお言葉は絶対 それは揺るがないわ
“フェネ”: それで、スバル氏はどうされるおつもりですか?
“スバル”: 正直に言えば、どうするも何も選択肢は一つしかねぇ気がしてる
“ラム”: 確かにそうね バルスがほとんど喋ってしまったのだし、 バルスが犯した失態について正直にお伝えするしかないでしょうね
“ラム”: バルス如きが犯した失態が、エミリア様の弱味になってしまう 現実には憤りを覚えずにはいられないけれど
“スバル”: す、すまねぇ……
“スバル”: 確かに俺の失態だ エミリアたんはこれっぽっちも悪くねぇ なのに俺なんかを雇ったせいで……
“スバル”: 本来だったらこの件を解決したら、 一気に名声を高められるはずだったのに
“スバル”: 解決して当たり前みたいな立場にさせちまった……
“ラム”: それだけではないわ 王選が始まった後のことを考えると本当に計り知れない痛手よ
“ラム”: アナスタシア様はこの件を最大限に活用されるでしょうね
“ラム”: 唯一の救いは、この件が片付くまでは 大人しくしていてくれるということぐらいね
“スバル”: アナスタシアさんとしても、この件が片付いて 王選が開始されなきゃ困るもんな
“スバル”: 俺たちを妨害しようとはしないだろう
“ラム”: ええ でも、それもこの件が片付くまでよ その後は一番の強敵になるかもしれないわね
“エミリア”: 私はね、スバルが正直に話したいなら、それでいいと思うの
“エミリア”: 王選が始まった後に大変なことになっちゃうかもしれないけど、 それは仕方ないもの
“エミリア”: 今、アナスタシアさんが『禁書』のページをたくさん持ってて そこから『異形』が出てきちゃったら大変でしょ?
“エミリア”: ロズワールとの約束だし、 余計なことを言わないようにすごーく頑張ったけど
“エミリア”: ロズワールはスバルの判断を尊重するって言ってたのよね?
“ラム”: はい 確かにそうおっしゃっていました
“エミリア”: だったら、それでいいと思う スバル、アナスタシアさんに正直に全部話して

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_15

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_15_スバルとアナスタシア 更新日:2021/02/15

“アナスタシア”: ナツキくん、頭は冷えたんかな?
“スバル”: ああ 入ってくれアナスタシアさん
“アナスタシア”: ふーん ずいぶんとスッキリした顔しとるやない 腹は決まったみたいやね
“スバル”: ああ、おかげさまでね
“アナスタシア”: それで?
“スバル”: 正直に全部話す そう決めたよ
“アナスタシア”: ふーん それはホンマなんやろうか? ウチに正直に話して、後でどうなっても知らんよ
“スバル”: 少なくとも、アナスタシアさんは 今すぐ俺たちの障害にはならないはずだ
“アナスタシア”: それはそうかもしれんねえ ウチやって王選が始まってくれんと困るわぁ
“スバル”: 今の俺たちにとっては、それで十分だ
“スバル”: だから、持ってる分の『禁書』のページを全部渡してほしい
“スバル”: もちろん、買い取りにかかった費用は支払わせてもらう レム、それで大丈夫だよな?
“レム”: はい ロズワール様からそれなりの額を預かっています そちらで買い取らせていただければと
“アナスタシア”: エミリアさんの弱味を教えてくれて、買い取りまでしてくれるん? そこまでする利点が、そちらにはあるんやろか?
“スバル”: この街で起こる惨劇を見なくて済む それが俺たちの得る見返りだよ
“アナスタシア”: つまり、この件を見事鎮めて、 王選での実績にしようって腹積もりってことでええ?
“スバル”: いやいや、それは違うんだ
“スバル”: この件を治めてもエミリアたんの実績にはならない すげぇ、残念だけど
“スバル”: なぜなら……
“アナスタシア”: なぜなら?
“スバル”: そ、それは……
“フェネ”: ──すべてスバル氏が悪いからです
“スバル”: そうそう全部俺が……って、 どうしてお前が途中で入ってくんだよ!
“フェネ”: 情けないことに、 スバル氏がなかなかふんぎりがつかないようでしたので
“ラム”: よくやったわ、フェネ
“ラム”: 言いにくいことを代わり言ってもらえたのだから、 バルスはフェネに謝意を伝えるべきね
“スバル”: いやいや、あとちょっと待ってくれたら ちゃんと自分の口で言ってたわ!
“スバル”: こういうのって苦悩の末に自分の口で言うから 意味あるんじゃねぇの?
“スバル”: 相手に誠意がちゃんと伝わるつーか そういうの大事だと思うぜ、俺は
“アナスタシア”: 誠意なんてもんに、ウチは興味ないわ そんなもん見せられても得するわけやないし
“スバル”: あ、アナスタシアさんまで……
“スバル”: ま、とにかく、全部俺のせいだ 俺が屋敷の禁書庫から 『禁書』なんてもんを出しちまったからこんなことに……
“リカード”: 要は自分でまいた種を自分で拾ってるだけやな そないこと、さすがのお嬢でも実績にはせんやろうな
“アナスタシア”: リカード どうしてそこでウチの名前が出るん? 後でじっくり、話を聞かせてもらってもええ?
“リカード”: お、お嬢!? ち、違うで! ワイはそんなつもりじゃ……
“ミミ”: わーい! ダンチョーお説教ー! ミミ見学するー!
“リカード”: 見学せんでええわ!
“フェネ”: フェネも見学させていただきます
“ラム”: 色々と参考になりそうだわ お許しいただけるのであればラムも
“スバル”: 待て待て! いったいなんの参考にするつもりだ、姉様? それにフェネもだ
“スバル”: お前らコンビにこれ以上パワーアップされても困るんだよ
“アナスタシア”: ふふ なるほど、使用人のナツキくんの犯した罪は、 すなわちエミリアさんの罪と同義ってことやね
“スバル”: 言っとくけど、俺はロズワールに雇われてる エミリアたんは正確には俺の雇い主じゃねぇよ
“アナスタシア”: それは苦しい言い訳やね
“スバル”: やっぱそうなる?
“アナスタシア”: せやね 苦しい言い訳や
“スバル”: とにかくだ、アナスタシアさん 俺は全部話した 約束通り『禁書』のページを──
“アナスタシア”: ……約束? どんな約束やろ? そない約束した覚えはないんやけど
“スバル”: そ、そんな……
“アナスタシア”: ウチは欲深でな
“アナスタシア”: 確かに危険なもんなんかもしれんけど、 ウチが買い取ったときより、今は大きく値を上げてるんよね
“アナスタシア”: メイザース辺境伯に買い取ってもらうにしても、 その辺も考慮してもらわんと
“フェネ”: スバル氏 残念ながらタイムオーバーです
“スバル”: ……タイムオーバー? それも俺の顔に…… って、待て待て、どういうことだ?
“フェネ”: 『禁書』の反応です
“スバル”: クソっ! もしかして、手遅れだったか?
“レム”: す、スバルくん!
“スバル”: どうした、レム!
“レム”: 外が……!
“スバル”: 外?
ナレーター: レムの言葉にスバルは窓へと駆け寄り 信じられない光景を目の当たりにする
“スバル”: な、なんだ、これ!?
ナレーター: イバダに馴染みがあるわけでもないが、ここが いつものイバダでないことはスバルにもすぐに理解できた
“エミリア”: 『禁書』は……ここまで環境を変えてしまうの……?
“アナスタシア”: なんやいったい…… これも『禁書』の影響……?
“スバル”: そう判断するのが妥当だ
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: 今度はなんだ、フェネ?
“フェネ”: 恐らく『変異体』かと
“スバル”: ──なっ! こんなときに……
“スバル”: けど、やるしかねぇ
“フェネ”: スバル氏 『変異体』の反応はこちらです フェネについてきてください!
“スバル”: ──よし、みんな! まずは『変異体』をぶっ倒すぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_16

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_16_変貌するイバダ 更新日:2021/02/15

ナレーター: 『変異体』を倒したスバルたちが会談が行われた部屋へ戻ると、 多くの『異形』が出現し、部屋は混乱の坩堝と化していた
“ミミ”: ダンチョー、大丈夫?
“リカード”: もちろんや! ミミこそどうなんや?
“ミミ”: ミミも大丈夫! たくさんぶっとばしたー!
“スバル”: リカードさん! ミミ!
“リカード”: おお、兄ちゃん、そっちは片付けてくれたようやな?
“スバル”: ああ、なんとかな
“スバル”: それにしてもすげぇ数を相手にしたみてぇだな あとはこっちで引き受けるから、少し休んでてくれて構わねぇぜ?
“リカード”: ほなお言葉に甘えて…… なわけないやろ! ワイらは『鉄の牙』や! 兄ちゃんたちこそ休んでてな!
“リカード”: はぁーーっ!
ナレーター: リカードは、飛びかかってきていた『異形』を一振りで斬り伏せる
“スバル”: にしても、『異形』の数が半端ねぇ……
“フェネ”: おそらくページが複数枚あるせいでしょう
“スバル”: 複数枚…… 確かに、アナスタシアさん、 『禁書』のページを買い取ったみたいなこと言ってたもんな……
“フェネ”: リカード氏、ページはどこに保管されているのですか!
“リカード”: そ、それは……
“ミミ”: お嬢しか知らないー!
“スバル”: ……あれ? そういえばアナスタシアさんはどこだ? いつの間にか姿が見えねぇんだが
“リカード”: ホンマや…… お嬢の姿が見当たらん……
“ミミ”: お嬢ー! お嬢ー!
“スバル”: クソっ! とにかくページを『禁書』に封じねぇと収拾がつかねぇ
“スバル”: そのためにも、まずはアナスタシアさんを探すぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_17

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_17_アナスタシアの『禁書』 更新日:2021/02/15

ナレーター: 隙を見て混乱の現場から抜け出したアナスタシアは、 『禁書』のページが保管してある部屋へと急いでいた
“スバル”: アナスタシアさん! こんなところにいたのか!
“スバル”: 『禁書』のページを渡してくれ! この事態をどうにかするためにも早く!
“スバル”: 元栓閉めないと、水は止まんねぇんだ! あいつらをいくら倒してもキリがねぇんだよ!
“スバル”: ここの建物に隠してあるのはもうわかってる そうだよな?
“フェネ”: 左様です 『禁書』のページの反応をとても近くに感じます この反応を追えば、ページのありかへはたどり着けるかと
“アナスタシア”: やっぱりフェネさんには、場所がわかってまうんやねえ
“スバル”: ああ だから俺たちは『禁書』のページを集められてるんだ
“スバル”: ページを封印するだけじゃなくて、 どの辺にページがあるかもだいたい感知できてる
“アナスタシア”: ページを渡したら、この事態を解決してくれるんやろうか?
“スバル”: もちろんだ 騒動を治めてイバダを元に戻すためにも、ページを渡してくれ
“アナスタシア”: 買い取ってくれる件はどうなんやろう? こんなことになってもうたし、ナシなんやろうか?
“スバル”: いや、ナシじゃねぇよ ちゃんと支払わせてもらう ロズワールにも責任を持って俺がとやかく言わせねぇ
“アナスタシア”: メイザース辺境伯はナツキくんの意見を尊重するみたいやし、 せやったら安心やね
“スバル”: このままだと、 もっとやべぇもんが出てきてもおかしくねぇ状況なんだ
“スバル”: だから、ページを頼む、アナスタシアさん
“アナスタシア”: ……わかったわ こっちやナツキくん、ウチについてきてな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_18

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_18_金庫の奥の絶望 更新日:2021/02/15

ナレーター: 『禁書』のページが保管された部屋へ向かう前に、 スバルは念のためにエミリアやリカードたちと合流した
ナレーター: そして、アナスタシアの案内でとある部屋に通される一同──
“スバル”: こりゃ、いかにもって部屋だな
“アナスタシア”: ページは向こうの金庫の中や
“スバル”: そして、いかにもって雰囲気の金庫…… とにかく、急ぎで頼む
“アナスタシア”: わかった、開けさせてもらうわ
“アナスタシア”: ……なんやこれ、どういうこと?
“フェネ”: スバル氏、急ぎページを!
“スバル”: アナスタシアさん! 早くページをこっちに!
“アナスタシア”: でもこれ……触ってもええの? なんかどっくんどっくん、脈打ってるんやけど……
“スバル”: くそっ!
ナレーター: スバルは金庫に駆け寄り、アナスタシアを押しのける
ナレーター: そこにあったのは、数枚の、胎動するページだった──
“スバル”: ヤベぇ、フェネ! こりゃ間に合わねぇ!!
ナレーター: スバルがページを手に取るより早く 脈打つそれは、一気に膨張した
“アナスタシア”: な、なんやの!?
“エミリア”: アナスタシアさん! 離れて! その状態は危険なの!
“フェネ”: もはや手遅れ……きます!  皆様、衝撃に備えてください! 吸い込まれます!!
“リカード”: はぁ!? 吸い込まれるってどういうこっちゃ! もうちょい詳しく──
ナレーター: 膨張したページはくろぐろと渦巻く大穴となり 部屋もろとも飲み込まんと膨れていく
“ミミ”: ななななななんだーーーー!!
“リカード”: くっ……お嬢! こっちや!
“アナスタシア”: リカード、ダメや! そっちまで届かん……
“スバル”: クソっ! リカード! アナスタシアさんは任せろ!
“スバル”: ラム! レム! エミリアを……ぐあぁ!
“エミリア”: スバル……私は大丈夫! アナスタシアさんを守ってあげて!
“レム”: スバルくん! 気を付けてください!
“ラム”: レム! バルスの心配もいいけど自衛なさい!
“フェネ”: 吸い込まれます!! 各自協力して身を守ってください!!
“スバル”: ぐあぁぁああーーーーーー!!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_19

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_19_リカードの咆哮 更新日:2021/02/15

???: ……くん
“レム”: スバルくん、大丈夫ですか!
“スバル”: ……あ、ああ、なんとかな そっちは?
“ラム”: 平気よ、バルス
“ミミ”: おにーさん、ミミたちもいるよ!
“スバル”: エミリアとアナスタシアさんは!?
ナレーター: 慌てて辺りを見回すスバル すぐに、アナスタシアを治癒するエミリアの姿を発見した
“アナスタシア”: こんなことが起きるんやね……
“アナスタシア”: せやけど、やけに落ち着いてるエミリアさんたちは、 ここから出る方法を知ってるってことでええ?
“スバル”: こんなとこ、二度ときたくねぇって思ってたのに、 残念ながらこれで三度目だ
“アナスタシア”: 『禁書』のページの腹の中なんやろうか? 長居してもいいことなさそやね 早いとこ出てまおう
“スバル”: そのためには、もう一つイベントをこなさねぇとな ま、今回は戦力は十分だし、すぐに決着つけられるだろ
“スバル”: な、リカード! って……ん?
“異形”: ぐがががぁあぁぁーーーっ!!!
ナレーター: 突如、スバルたちの耳をつんざく咆哮が響く
“リカード”: どうやら『異形』の登場やな?
“スバル”: ああ、そうみてぇだ
“ミミ”: あのデッカイのやっつけるの?
“スバル”: そうだ ミミを頼りにして大丈夫か?
“ミミ”: もちろん! ミミにまかせてー!
“フェネ”: フェネも後方から支援します
“レム”: では、スバルくんは下がってください
“ラム”: そうね 戦えないバルスは邪魔でしかないわ
“スバル”: うぐっ…… 自分の無力さに胸が痛むが ここは邪魔しねぇように下がってるのが一番……
ナレーター: そう言ってスバルが後方へ回ろうとしたそのとき──
“異形”: うがががぁあぁぁーーーっ!!!
ナレーター: 咆哮とともに『異形』が光線を放つ
ナレーター: その光線はまっすぐに エミリアと彼女の治療を受けるアナスタシアの元へ……
“スバル”: ──え、エミリア!
“ミミ”: ──お嬢ーー!
“スバル”: ──エミリアーーーっ!!!
“リカード”: お嬢、大丈夫か?
“アナスタシア”: …………リカード?
“エミリア”: た、大変! 今、治癒魔法を!
“リカード”: 大丈夫や あんな攻撃、ワイには効かへん
“スバル”: リカードがエミリアたんとアナスタシアさんを庇って…… 一時はどうなることかと思ったぜ……
“フェネ”: スバル氏 安心するのは早計です リカード氏の様子が──
“リカード”: ぐ…… ぐぅ……おぉぉぉおおお!!!
“ミミ”: ──ダンチョー!
“リカード”: ぐ、ああ……あぁぁあああ!!!
“スバル”: う、嘘だろ……
“フェネ”: 恐らく、精神を汚染する攻撃かと リカード氏は理性を失っています
“スバル”: 『異形』の奴はそんな攻撃まで…… って、理性を失ってるってことは?
“フェネ”: 敵も味方もわからぬ状態かと
“スバル”: クソっ! できればリカードとは戦いたくねぇぞ!
“エミリア”: 私の治癒魔法でなんとかなったりしない?
“フェネ”: わかりません! ですが、相手が大人しくしていられない状態で、 治癒に専念するのは難しいのでは?
“リカード”: ぐわぅぅぅううう!!
ナレーター: うろたえるスバルに、リカードが突進する──
“レム”: ──スバルくん!
“スバル”: レム! 助かった! けど……
“レム”: わかっています 傷つけないように引きつけますので、その間に作戦を!
“ラム”: レム、加勢するわ
“スバル”: わりぃ、リカードを頼んだ! ……フェネ、なんとか助ける方法をひねり出して──
“異形”: うがががぁあぁぁーーーっ!!!
ナレーター: 再び『異形』から放たれる光線──
“ミミ”: ミミには当たらないー!
“スバル”: ナイスだミミ! けど、早いとこリカードをどうにかしねぇと……!
“フェネ”: 遠距離から『異形』、近距離にリカード氏…… 明らかに分が悪いです、スバル氏
“アナスタシア”: 絶体絶命やね、ナツキくん
“スバル”: 悔しいが、打つ手が思い浮かばねぇ……
???: ──どうした、諦めるのか?
“スバル”: いやいや、そうは言ってねぇだろ? 難しい状況ではあるがなんとか……って、お前は!?
???: アナスタシア様、到着が遅れてしまい申し訳ありません

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_20

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_エピローグ_打算と誠意 更新日:2021/02/15

ナレーター: 窮地に陥ったスバルたちの前に現れたのは、 アナスタシアの一の騎士、ユリウスだった
“ユリウス”: ──ミミ、今だ!
“ミミ”: まかせてーーー!
“ミミ”: ぼわぁぁぁあああーーー!!!
“フェネ”: 複雑極まりない表情ですね、スバル氏 我々が優勢だというのに
“スバル”: そうやってお前が話しかけてきてる時点で こっちには余剰戦力があるってことだろ
“スバル”: ここはお前がとどめを刺してこいよ
“フェネ”: 手柄だけ横取りするなど、スバル氏ではあるまいし 善良なフェネにはできません
“フェネ”: それに──
“ユリウス”: これで終わりだ! ──はぁーーーっ!!
“異形”: ぐぎぁぁぁあああーーー!!!
“フェネ”: 見事な一撃で、すでに勝敗は決しました
“スバル”: 見事な一撃、ね……
“ユリウス”: 何か不服かな?
“スバル”: 言っとくけど、ウチのエミリアたんと、 ラムやレムが頑張った結果だかんな
“スバル”: あと、ミミもだ 決してお前だけの力で勝ったわけじゃねぇよ
“ユリウス”: 無論だ 皆が勇敢に戦った結果だ 私は助力したにすぎない
“ユリウス”: だが、君は何をしていたんだ? 他人のことを言う前に、自らの行いを顧みるべきだ
“スバル”: ──な、なんだとっ!
“フェネ”: スバル氏! 言い争いは後です! 間もなくページの外に!
“スバル”: そうだった! みんな衝撃に備えてくれ!!
“フェネ”: ──きます!!!
“スバル”: ……戻ってこれたみたいだな
“スバル”: ──って、みんなは!
“レム”: みなさん無事のようです 安心してください、スバルくん
“スバル”: そっか、ならよかった どうやら街の方も、元に戻ったみたいだな
“アナスタシア”: ホンマやね、ナツキくん 短い悪夢でよかったわぁ
“リカード”: ……いったい何があったんや? ワイはなぜか記憶が飛んでもうて……
“ミミ”: ダンチョーやばかった!
“スバル”: そうそう、こちとら命を取られるとこだったんだぞ! それを記憶が飛んじまったで片付けられてもな……
“スバル”: まぁ、リカードのせいじゃねぇけど
“アナスタシア”: せやね すべては『禁書』のせいや
“アナスタシア”: それじゃナツキくん、改めて『禁書』のページを…… と思ったんやけど、どうやらその必要はなさそうやね
“スバル”: ああ、手癖の悪い小狐がもういただいてるみたいだよ
ナレーター: スバルとアナスタシアが見つめる先で、 フェネはページを『禁書』に綴じ、飛び散ったマナを集めていた
“アナスタシア”: にしても、色々とありがとうな、ナツキくん
“スバル”: いやいや、こちらこそ おかげでいくつかのページが封じられたよ
“アナスタシア”: やったら、ナツキくんがウチに感謝するのはこれからやねえ
“スバル”: はあ? どういうことだよ?
“アナスタシア”: これからは市場にページが出回ることがあったら、 ウチが買い取ってナツキくんに渡すわぁ
“アナスタシア”: ウチがページに興味があって、高値で買い取るっちゅう話は、 きっと噂になって広まってるはずや
“アナスタシア”: 拾ったページを金に換えようと思えば──
“スバル”: まずはアナスタシアさんのとこに相談にいくかな すげぇ有名な商人みたいだし
“スバル”: ……って、それってすごくねぇ!?
“スバル”: 黙っててもページがアナスタシアさんのとこに集まる仕組みが、 もうできあがってるじゃん!
“アナスタシア”: ええ情報があったらそれも教えてあげる どうやろう?
“スバル”: す、すごいぜ、アナスタシアさん!?
“スバル”: けど、いったいどういう風の吹き回しだ? どうしてアナスタシアさんがそこまで……
“アナスタシア”: 何もタダでとは言っとらんやろ 辺境伯の買い取り額に期待や それにナツキくんらにしか、この件は治められんのやろ?
“スバル”: ああ、そうだな 根本的な解決は俺たちにしかできねぇ
“アナスタシア”: この件、『禁書異変』とでも呼んだらええんやろうか? とにかく、この異変はナツキくんらにしかどうにかできん
“アナスタシア”: せやったら、協力した方がええやない
“アナスタシア”: 王選がはじまらんかったら、ウチやって困るし
“アナスタシア”: こんなのにずっと振り回されてたら、 正直ウチも商売あがったりなんやわ
“アナスタシア”: ナツキくんには一刻も早くこの件を片付けてもらわんとな
“フェネ”: アナスタシア女史 本当に今後は集まった『禁書』のページを フェネたちにお譲りいただけるのでしょうか?
“アナスタシア”: ホンマやよ 口約束でも立派な契約やしね
“フェネ”: なるほど…… ですが、 その件に関しては、後ほど契約書を発行させていただきます
“スバル”: おぉ だったら、 ついでに俺との契約も書面ではっきりさせておかない?
“フェネ”: 雇用契約書ならスバル氏が発行するのが筋では
“スバル”: だからお前を雇用した覚えはねぇ!
“ユリウス”: ……アナスタシア様、よろしいでしょうか?
“スバル”: よろしくねぇよ 今、アナスタシアさんは俺と歓談中だ
“ユリウス”: いや、君はフェネ殿と……
“スバル”: フェネとの会話は早急に終わらせて、 アナスタシアさんとの会話に復帰するつもりだったんだよ
“ユリウス”: しかし……
“アナスタシア”: なんやの、ユリウス 大切な話なんやろ? ナツキくんも、ウチのユリウスをいじめんといてあげて
“スバル”: アナスタシアさんがそう言うなら、仕方ねぇ ユリウス、アナスタシアさんと話していいぞ
“ユリウス”: どうして君が許可を…… まあ、いい では、話させてもらおう
“ユリウス”: アナスタシア様 今回の騒ぎは王都であった騒ぎと似ています 彼らの仕業である可能性も……
“ユリウス”: 私は近衛騎士団の一員として、 場合によっては彼らの身柄を拘束しなければなりません
“スバル”: ──なっ!
ナレーター: ユリウスの言葉に、スバルは思わず身構える
“アナスタシア”: ユリウス、それは違うみたいやで ナツキくんやフェネくんは正義の味方
“アナスタシア”: 人心を惑わし、世界を乱す『禁書』を封印する旅人さんや この人らしか『禁書』を封印することはできん
“アナスタシア”: ユリウスは途中参加やったから、色々と見えてないんと違う? ホンマ、ウチもナツキくんらには世話になったんやから
“ユリウス”: なるほど…… あらぬ嫌疑をかけてしまったようだ 申し訳ない
“スバル”: あ、ああ、いや、いいんだ 誤解が解けたんなら、それでいい
“ユリウス”: しかしアナスタシア様 それならば、王城へ招き、我々と連動して一連の問題を……
“アナスタシア”: ユリウス、それなんやけど 王城には報告せんといてもらってええ?
“ユリウス”: それは、どういう……
“アナスタシア”: この件は王選候補者のウチやエミリアさんだけやなく、 クルシュさんまで動いてるって話や
“アナスタシア”: これ以上大事にしたくないんよ、ウチは
“アナスタシア”: それに王城なんて頭が固い人らの集まりやろ?
“アナスタシア”: 決まるもんも決まらんようになって、 進むもんも進まなくなってもうたら一大事や
“スバル”: 俺の故郷に船頭多くして船山に登るってことわざがある
“スバル”: 上の連中が多くなると、色々うまくまとまらないで、 本来の目的とは違う方向に物事が進んじまうって意味なんだけど
“スバル”: アナスタシアさんが言いたいのは、つまりそういうこと?
“アナスタシア”: 確かに船頭さんがぎょうさんおったら、 まともに船は進まんやろうな
“スバル”: 船なのに山を登っちゃうってのはさすがに極端だけど、 それぐらい物事がうまく進まなくなっちまうって例えだ
“アナスタシア”: ユリウスはどう思うん? 近衛騎士団のユリウスやなくて、ウチの騎士のユリウスは?
“ユリウス”: ……わかりました この件は内密にします
“ユリウス”: まずはこの騒動を治めるのが第一 王国の民にとっても、誰が治めるかは二の次かもしれません
“ユリウス”: それに、アナスタシア様にエミリア様、さらにはクルシュ様……
“ユリウス”: これに近衛騎士団まで加わわれば、 物事は思うように進まなくなってしまうでしょう
“ユリウス”: そうと決まれば、スバル殿 私は君への協力を惜しまない 気兼ねなく言ってくれ
“スバル”: お、おう けど、遠慮させてもらう
“ユリウス”: ふっ そうか だが、もしものときは遠慮する必要はない それだけは覚えておいてくれ
“スバル”: あんま自信ねぇな 俺、忘れっぽい方なんでね
“ユリウス”: …………
“アナスタシア”: ふふふ ユリウス、今の顔は傑作やねえ ことごとくナツキくんに断られて、ユリウスも立つ瀬なしや
“アナスタシア”: ずいぶんとナツキくんに嫌われてるみたいやけど、 ユリウスったらなんかしてもうたんやない?
“ユリウス”: そのような心当たりは……
“ユリウス”: エミリア様 スバル殿には断られてしまいましたが、 入用の際はなんなりと私をお頼りください
“エミリア”: ありがとう、ユリウス
“スバル”: あ! あ! ユリウス、俺のエミリアたんに! お前のそういうとこだぞ!
“エミリア”: こら、スバル ユリウスと仲良くしなさい
“エミリア”: ユリウス、ごめんなさい スバルが色々意地悪なこと言って……
“ユリウス”: いえ エミリア様が謝るようなことでは
“スバル”: あん? エミリアたんが謝ることじゃねぇってことは、 暗に俺が謝るべきだって言いてぇのか?
“ユリウス”: そのようなつもりは……
“アナスタシア”: ふふふ ホンマ、おかしいわ ナツキくんと一緒やと、ユリウスはこない面白いんやねえ
“スバル”: どうして俺が、お前の面白さを 引き出してやんなきゃなんねぇんだよ!
“ユリウス”: 完全に言いがかりだと思うのだが……
“ラム”: そうね まったく役に立っていないバルスが どうして『最優の騎士』様にあれやこれや言えるのかしら?
“スバル”: ら、ラム……
“フェネ”: 左様です あの戦いで一番何もしていなかったのはスバル氏です
“スバル”: フェネまで……
“エミリア”: ところでユリウス どうしてユリウスは私たちを助けにこられたの?
“エミリア”: あの場所って、普通は入れなさそう
“ユリウス”: 微精霊のおかげです
“スバル”: ……微精霊のおかげ? なんだそりゃ、わかるように説明してくれ
“ユリウス”: 私はエミリア様には及ばないが、少々微精霊たちと会話ができてね
“ユリウス”: 此度の異変の予兆を感知した微精霊の声を聞いて、 アナスタシア様の身に何かあってはと駆けつけたのだ
“スバル”: じゃあ、あの渦には自ら飛び込んだってのか? 何が起こるかもわからねぇのに
“ユリウス”: 無論だ そこにアナスタシア様がいる確信があったからね
“ユリウス”: アナスタシア様の騎士として、当然のことだ
“スバル”: 騎士として……当然、か……
“リカード”: おかげで助かったわ、ユリウス ワイはなんも覚えとらんけどな! グハハハ
“ミミ”: ミミも助かったー!
“エミリア”: 本当に助かったわ ありがとう、ユリウス
“レム”: レムもです ありがとうございました
“ラム”: さあバルス ラムの分も含めてお礼を言いなさい
“スバル”: ど、どうして俺が姉様の分まで!?
“スバル”: とにかく、今日はそろそろ日も暮れるし、 この辺でお開きにしようぜ
“スバル”: まぁ、今回はなんとかなったからいいけど、 被害はどんどん広がっていくな……
“フェネ”: スバル氏、なんとかしたのは皆様です
“ラム”: バルスは何もしてないわ
“フェネ”: いえ、余計なことをしてます 問題を増やすのがスバル氏の役目ですか?
“レム”: そんなことありません スバルくんは頑張っています
“エミリア”: そうね、うん、スバルは頑張ってるわ
“スバル”: 総合すると、頑張ってるけど なんの結果も残してねぇってことかよ……
“スバル”: マジ情けなくなってくるわ…… けど、だからって落ち込んでなんていられねぇけどな
“スバル”: でだ、フェネ いままでも『禁書』の影響で あたりの雰囲気が変わるってのはあったが……
“スバル”: 実際に形が変わり始めちまうってのは初めてだ あのまま進行したらと思うとゾッとするぜ……
“スバル”: しかもなんか、急展開って感じだったし…… ありゃ一体なんだったんだ?
“フェネ”: 今までは徐々にマナを吸収していって 段階を踏んでいっていると思っていたのですが
“フェネ”: 確かに今回は急激に発達した、という感じですね
“スバル”: なるほど…… 何かそうさせる引き金があったってことか
“フェネ”: そう考えるのが自然でしょう 理由はわかりかねますが……
“フェネ”: ただ、街の形が変わってしまったことについては、 魔獣が『変異体』になるのと同じ原理かと
“スバル”: 『変異体』と同じ原理、ね
“スバル”: わかるようでわかんねぇけど、『変異体』のスケールが でっかくなった版が、イバダの街で起こったって解釈でいいのか?
“フェネ”: 左様です
“スバル”: んで、今回は数ページを回収したわけだけど、 俺らを吸い込んだのってどんな話だったんだ?
ナレーター: おもむろに『禁書』を開くフェネ 隣にいたラムがそれを覗き込む
“ラム”: こそどろゴッソ
“ラム”: ちょっとくらいはばれやしない あいつはあんなにもっている
“ラム”: すこしくらいはいいだろう あいつもしこたまためこんで
“ラム”: そんなにあってもいらないだろう だからおれにもわけてくれ
“ラム”: ちょっとだけちょっとだけ どうせだれもきづきやしない
“スバル”: ……そのページが、富豪のアナスタシアの手元で こっそりマナを吸ってたってわけか
“フェネ”: なんとも示唆的ですね
“スバル”: ああ、なんつーか薄気味悪いな
“スバル”: ……まだ、俺らが気付いてないことがありそうだな 『禁書』のページにはよ
ナレーター: 徐々に広がっていく『禁書』の異変 巻き込まれていく王選候補
ナレーター: しかしページは、まだ数えるほどしか集まっていない──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_00

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_プロローグ 王選のための戦略 更新日:2021/03/30

ナレーター: イバダでの『禁書異変』を収め、カララギを後にしたスバル一行は
ナレーター: ようやく王都にあるロズワール馴染みの宿に到着した
“スバル”: 今日はここで一泊して、明日はいよいよ屋敷に到着だな
“レム”: スバルくん、お疲れ様でした
“スバル”: “お疲れ様”はまだ早いかな 明日無事に屋敷に着いたらようやく“お疲れ様”だ
“スバル”: まだ、何が起こるかわかんねぇし
“フェネ”: 左様です なんせ厄介事を引き寄せるスバル氏がいるのですから
“ラム”: ええ、そうね バルスが一緒にいる以上、 衛兵に守られた王都といえ安心はできないわ
“スバル”: うっ…… せっかくまともなこと言ったのに、これだよ
“スバル”: そもそもそこで俺のことディスる必要ある? “屋敷まで気を引き締めて行動しよう”って言えば済む話だろ
???: それだけ君が人気者ってことだぁーあよ
“スバル”: うわっ!? びっくりした!
“ロズワール”: やあ、スバルくん それに皆も
“エミリア”: ロズワール 王都にきていたのね
“ロズワール”: ええ 実は王選の延期が正式に決まりまして、 それで王都に呼び出されていたというわけです
“ロズワール”: 前回王都を襲った異変 そして、再びイバダでも……
“ロズワール”: 賢人会は王選の無期限延期を決定しました
“スバル”: 無期限延期…… そうなるだろうとは思ってたけど、 いざ正式にそのワードを突き付けられると胸がいてぇよ
“スバル”: 全部俺のせいなわけだし……
“スバル”: 改めて、申し訳ない
“エミリア”: スバル……
“ロズワール”: スバルくん、起こってしまったことは仕方がない
“ロズワール”: それに、必ずしも王選の延期は、 エミリア様にとって悪いこととは限らないよ
“ロズワール”: スバルくんは情勢を正確には知らないかもしれないが、 現時点でエミリア様は圧倒的に不利な状態でねーぇ
“ロズワール”: 形勢を逆転するための時間を稼げたと 前向きに捉えることもできるんだーぁよ
“スバル”: そういや、最初に王選が延期になるかもってなったとき、 エミリアたんもそんな風に言ってくれたな……
“スバル”: 準備する時間ができてよかったって感じで
“ロズワール”: 私もエミリア様も、スバルくんを気遣って そう言ってるわけではないんだ
“ロズワール”: 事実だからそう言っているだけだーぁよ
“ロズワール”: 現時点でエミリア様は大変厳しい状況だ 君には詳しく教えていなかったけどねーぇ
“エミリア”: ごめんなさい、スバル……
“スバル”: 待て待て、エミリアたん謝らないで
“スバル”: なんとなくその理由には心当たりがあるけど、 それってエミリアたんが謝ることじゃないだろ
“スバル”: つまりエミリアたんが──
ナレーター: スバルはそこで言葉を飲み込む
ナレーター: 嫉妬の魔女…… かつてこの世界を恐怖に陥れたその魔女と エミリアの外見が似ていることが原因なのは明らかだ
“ラム”: はんっ 本当にくだらない理由よ
“レム”: はい、とてもくだらないです
“スバル”: 王選じゃクルシュさんが頭一つ抜けてるってのは肌で感じたけど、 エミリアたんはその逆ってわけか……
“ロズワール”: だが、奇しくも時間ができた その時間を有効に使わないとねーぇ
ナレーター: それからロズワールは、王選での地固めのために
ナレーター: エミリアを連れてルグニカの北東にありメイザース領に属する 鉱山都市ガナクスへ向かうつもりだと伝える
“スバル”: 確かに領内の有力者から支持を得るのは大切だと思う
“スバル”: 地元からの支持も得られないようじゃ、 王様になんてなれねぇような気もするし
“スバル”: けど、それって今じゃなきゃダメなのか?
“スバル”: イバダで色々あって、 しかも帰りの道中だってまともに休めてない
“スバル”: 今日は久々にベッドで眠れるけど…… 屋敷に戻って、しばらくゆっくりした後でいいんじゃねぇかな?
“ロズワール”: 我々はね、スバルくん エミリア様をルグニカを治める王にしようとしているんだよ
“ロズワール”: 相手は、すでに盤石な支持を集めているクルシュ様や 大商人のアナスタシア様──
“ロズワール”: エミリア様が勝つためには、 少しの時間も無駄にできないんだあーぁよ
“スバル”: だけど……
“エミリア”: ううん、私は大丈夫
“ラム”: エミリア様が大丈夫と言うのであれば、 バルスの出る幕ではないわ
“スバル”: だけど… だけどさ……
“エミリア”: スバル、本当に大丈夫なの 私、竜車でたくさん眠ったもの
“ロズワール”: それではエミリア様 明日の早朝の出発となります よろしいですね?
“エミリア”: ええ、私は大丈夫よ
“ロズワール”: それとレム ガナクス行きにはレムにも同行してもらう
“レム”: かしこまりました、ロズワール様
“ラム”: レム、ロズワール様のことを頼んだわね できればラムがご一緒したかったのだけれど……
“レム”: 姉様……
“ロズワール”: すまない、ラム 今は平時ではない もしもの場合エミリア様をお守りすることを考えるとレムが適任だ
“ラム”: はい、承知しております ロズワール様、どうかお気を付けください
“スバル”: ええっと、ロズワール 俺はどうすりゃいい?
“スバル”: もちろんエミリアたんと一緒に、 ガナクスとかいう都市にいくつもりなんだけど……?
“ロズワール”: スバルくんには他にやるべきことがあるんじゃないかーぁな
“スバル”: ……他にやるべきこと?
“フェネ”: 正気ですかスバル氏? 『禁書』のページの回収、それがスバル氏が最もやるべきことです
“スバル”: うぐっ…… た、確かに……
“ロズワール”: それじゃ、ラム 私たちが留守の間、屋敷とスバルくんを頼む
“ラム”: ロズワール様 屋敷もバルスの調教もラムにお任せください
“スバル”: 待て待て、そこ“調教”じゃなくてせめて“指導”だよね!
“ラム”: はんっ バルスに“指導”はまだ早いわ
“スバル”: にしても“調教”って…… 完全に動物扱いじゃねぇか
“ラム”: 動物の方がまだ可愛げがあるわ バルスには動物扱いももったいないぐらいよ
“フェネ”: 左様です
“フェネ”: むしろ動物と同程度の扱いをしてくださるラム女史の優しさに スバル氏は感謝するべきかと
“スバル”: “優しさ”ってどういう意味か知ってる!
“スバル”: お、俺、こいつらと一緒に残されるのかよ…… マジ、前途多難だ……
ナレーター: 早朝、ロズワールはエミリアとレムを連れてガナクスへ出発した
“スバル”: ──というわけで俺たちは残されたわけだが
“フェネ”: スバル氏 “残された”という表現は適切ではありません
“フェネ”: 『禁書』のページの回収 その目的を最優先したにすぎません
“スバル”: …………
“フェネ”: 何か言いたげですね、スバル氏 それともフェネの整った顔に、何か付いているとでも?
“スバル”: “整った顔”ってなんだよ 自己評価高すぎだろ
“スバル”: にしても、最近なんだかこの組み合わせだよな
“フェネ”: 確かにイバダへ向かう際も 結果的にスバル氏はラム女史とフェネと一緒でした
“スバル”: 俺はできればエミリアたんと一緒に……
“フェネ”: スバル氏 言っていいことと悪いことがあります
“スバル”: それ、お前が言う!? お前ってどっちかっていうと 言っちゃいけないことのオンパレードだよね!
“フェネ”: それはスバル氏に対してのみです フェネはしっかりと人を選んでいます
“スバル”: その断言って必要かよ? 例えそうでも、わざわざ言わなくていいだろ!
“フェネ”: はぁ…… ピーチクパーチクと先ほどから何なのです? スバル氏、うるさいですよ ラム女史の睡眠の妨げになります
“スバル”: いやいや、さすがに隣の部屋までは聞こえねぇだろ
“スバル”: それに、お前から注意されるのは心外だ どう考えてもお前の余計な一言が原因だよね?
“フェネ”: “心外”というのであれば、フェネこそ心外です
“フェネ”: 最たる当事者であるはずのスバル氏が、 『禁書』のページ探しに身が入らないとは……
“スバル”: その言われようは俺こそ心外だ
“スバル”: 俺の身が入ってねぇって? なんの冗談だよ、そりゃ
“フェネ”: いえ、冗談ではありません 事実、スバル氏はエミリア女史のことで頭がいっぱいに見えます
“スバル”: そりゃ、エミリアは俺にとって特別で……
“スバル”: けど、身が入ってないなってことはねぇよ! 俺はいつも『禁書』のページの回収のことを考えてる!
“スバル”: 第一、俺がどれだけ──
???: いいかげんになさい、バルス
“ラム”: うるさくて眠っていられないわ
“ラム”: 今朝早くにロズワール様をお見送りして、ラムは寝不足なの もう少し寝かせてちょうだい
“フェネ”: 申し訳ありません、ラム女史 フェネはスバル氏にその旨忠告をしたのですが
“スバル”: 待てよ、フェネ! まるで俺が悪いみてぇじゃねぇか!
“フェネ”: 違うのですか? だとしたら失望しました
“スバル”: “失望”ってなんだよ? 元から俺のことなんかなんとも思ってねぇくせしやがって!
“フェネ”: スバル氏……
“ラム”: バルス、フェネに謝りなさい
“スバル”: はあ? どうして俺が?
“フェネ”: いいのです、ラム女史 このクソ上司に何を言っても無駄でしょう
“ラム”: バルス、準備はできたかしら? そろそろ出発よ
“スバル”: ああ、俺の準備は大丈夫だ けど、フェネの奴が見当たらなくて……
“ラム”: フェネならもう出発したわ
“スバル”: はあ?
“ラム”: クソ上司の面を見たら拳が出てしまいそうなので、 早退して自宅で謹慎するそうよ
“スバル”: 早退して自宅謹慎、ね ……やっぱ俺、謝っといた方がよかったかな?
“ラム”: ラムはそう言ったはずよ
“スバル”: けど、あれは……
“スバル”: って、ま、ラムに言っても仕方ねぇか
“ラム”: 賢明な判断ね ラムにとってはいい迷惑だわ
“ラム”: バルス、支度が終わっているなら、とっとと竜車に乗りなさい
“スバル”: へいへい そうさせてもらうよ
???: おやおや、スバルさん 何をされてるんです?
“スバル”: いや、これから竜車に乗って…… って、お前、あんときのガキじゃねぇか!
“コリーナ”: ガキ…… さては名前を忘れていますね?
“スバル”: いや…それは……
“コリーナ”: コリーナです、スバルさん
“スバル”: そうだ! コリーナだ!
“スバル”: けど悪い、今日は急いでるからお前とは遊んでやれねぇんだ
“コリーナ”: 勘違いされているみたいですが、 コリーナは子どもではありませんよ?
“コリーナ”: 世界を股にかける! 冒険者コリーナ! 以後お見知りおきを
“スバル”: なるほど、そういう設定か…… けど、マジでわりぃ、今日は遊んでやれねぇ
“コリーナ”: そういうごっこではありません!
“スバル”: お前が冒険者ってどう見ても無理があんだろ
“コリーナ”: 人を見かけで判断するのはよくないですよ
“コリーナ”: それに、スバルさんと遊んであげたいのは山々ですが、 コリーナはこれから冒険に出発しなければなりません
“スバル”: 立場が逆転してる!? いつ俺がお前と遊びたいって──
???: コリーナさーん! 竜車の準備ができましたよ……
???: って、こちらの方はどなたでしょう?
“コリーナ”: この方はスバルさんです 目つきのわりにはいい人ですよ
“スバル”: そこ、“目つきのわりには”ってワードいる?
“スバル”: とにかく俺はナツキ・スバルだ で、おたくは?
“オットー”: はじめまして、ナツキさん 僕はオットー・スーウェンです しがない行商人をしています
“スバル”: へー、行商人ね…… けど、そのしがない行商人がどうしてコリーナと?
“オットー”: コリーナさんは僕のお客さんでして、 ガナクスまでお連れすることになったんです
“スバル”: ……ガナクス?
“オットー”: はい 運賃はたっぷりいただきましたし、僕もガナクスへ 向かう予定だったので、とてもありがたいお話でした
“スバル”: 運賃をたっぷり、ね とてもそんな感じには見えねぇけど、本当に大丈夫か?
“スバル”: 単なる見間違いで、銀貨だと思って受け取ったもんが、 ただの石っころだったりしてねぇよな?
“スバル”: なんだかオットーっておっちょこちょいっぽいし
“オットー”: おっちょこちょいとは失礼な! 心当たりがないわけじゃないですけど!
“オットー”: それに、お代はちゃんと確認しました いくらおっちょこちょいな僕でも石と銀貨を見間違えたりしません
“スバル”: おっちょこちょいはおっちょこちょいなんだな、やっぱ
“オットー”: 悔しいですが、否定はできません……
“スバル”: ははは なんかいいな、お前 気に入ったぜ、オットー
“オットー”: 今、気に入られるような要素ありました!?
“スバル”: 俺にはありまくりだったぜ、オットー お前とはうまくやってけそうだ
“オットー”: 僕にはナツキさんとの関係に不安しか感じないのですが……
“スバル”: とにかくよろしくな、オットー
“オットー”: は、はい……
“スバル”: それで、お前らの行き先がガナクスってのは本当か?
“コリーナ”: はい、本当です スバルさんもガナクスにご用事が?
“スバル”: 実は──
???: とっとと竜車に乗るように言いつけたはずなのに
“ラム”: バルスは何をしているの この無能
“スバル”: いや、俺は……
“ラム”: “とっとと”というのは“すぐに”という意味よ バルスには難しすぎたようだけれど
“スバル”: それぐらい知ってるわ! すぐに乗るよ、乗りゃいいんだろ
“スバル”: ──てなわけで、じゃあな、オットー あと、コリーナも
“コリーナ”: はい、スバルさん、ではまた
“スバル”: ……“ではまた”?
“ラム”: バルス
“スバル”: へいへい
“スバル”: 乗り込んだぜ、ラム
“ラム”: では、出発するわ
ナレーター: こうしてスバルを乗せた竜車は、フェネが先に帰ったという ロズワールの屋敷に向けて出発するのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_01

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_01話 フリューゲルの大樹 更新日:2021/03/30

ナレーター: 屋敷を目指すスバルたちの竜車は、 リーファウス平原を疾走していた
“スバル”: …………
“ラム”: 謝罪の言葉は思いついたのかしら
“スバル”: まだだよ だいたいどうして俺が……
“ラム”: バルス、またその話を蒸し返すつもり?
“ラム”: やはりフェネに一度拳でわからせてもらった方がいいみたいね
“スバル”: いやいや、暴力反対! それは勘弁だ!
“スバル”: それに、あいつを失望させちまった理由はなんとなくわかってる
“スバル”: 俺は一番大切な目的を軽く扱ってたよ
“スバル”: そんなつもりはなかったんだが、 でもやっぱ、結果的にはそうなっちまってた
“スバル”: 頭ではわかってるんだけど、 気持ちの部分では色々言いたいことがあるって感じだ
“ラム”: はんっ 頭でわかってるのなら、頭を優先なさい
“ラム”: 少しは、まったく興味がない相手から 面白くもない話を聞かされるラムの身になってほしいものね
“スバル”: い、今、“まったく興味がない”って言った?
“スバル”: 少しは俺に興味持とう! 一応同僚なわけだし!
“ラム”: それはバルス次第ね ラムの問題ではないわ
“スバル”: 俺次第って……
“ラム”: このままフェネが協力してくれなければ、 いったいどうなるのかしら?
“スバル”: それは……
“ラム”: バルスの話は聞くだけ無駄よ 時間の浪費でしかないわ
“スバル”: でも、それだと完全にあいつを利用するために 頭を下げるってことになりはしねぇか?
“スバル”: 俺は気持ちも大切にしたいんだよ
“ラム”: ラムの気持ちはどうなるの? 聞きたくもない話を聞かされるラムの気持ちは
“スバル”: ラム……
“スバル”: なるほど…… “聞きたくない”って明言されて、 すげぇショックではあるが
“スバル”: 確かにラムにも気持ちがあるな
“スバル”: それに、聞いてて面白い話ってわけじゃないことも確かだ
“スバル”: 俺が言いたいのは結局フェネへの愚痴や弱音なわけだし
“スバル”: 今回のことも俺があいつの気持ちを ちゃんと考えなかったことが原因……
“スバル”: “俺の気持ち”ってのが、 今は一番どうでもいいことなのかもしれねぇ
“スバル”: “頭でわかってるなら、頭を優先しろ”、か…… 今さらだけど、その言葉が身に染みてきたよ
“ラム”: はんっ バルスはせいぜいフェネへの謝罪の言葉でも考えてなさい
“スバル”: へいへい そうさせてもらうよ
“スバル”: ……にしても、あの木、めちゃくちゃデカいな
“ラム”: フリューゲルの大樹よ
“スバル”: ……フリューゲル? 偉人の名かなんかか?
“ラム”: ええ 『賢者』フリューゲル あの大樹を植えた人物の名よ
“スバル”: ……『賢者』? フリューゲルってどんな人だったんだよ?
“ラム”: 詳しいことはラムにもわからないわ それに──
“ラム”: バルスには今やるべきことがあるはずよ
“ラム”: 余計なことは考えずに、フェネへの謝罪に集中なさい

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_02

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_02話 ペトラの思い 更新日:2021/03/30

ナレーター: 屋敷まであと少しというところで突如止まる竜車
“スバル”: どうしたラム? まだ屋敷じゃねぇぞ
“ラム”: 降りなさい、バルス
“スバル”: はあ?
“ラム”: “降りろ”と言ったのよ そんな言葉も理解できないのかしら
“スバル”: いやいや、理解はしてるよ けど、ここで降りろってのはどういうことだ?
“スバル”: ちょうどア―ラム村の付近だし、 買い出しでもして帰ろうって感じか?
“ラム”: そうね、買い出しをしたければすればいいわ でも、ラムがバルスを降ろすのはそういう理由ではないわ
“スバル”: 頼むラム、説明してくれ 何がなんだか俺にはさっぱりわからねぇよ
“ラム”: 確かにバルスは謝罪の言葉は考えたかもしれない
“ラム”: けれどバルスは、それをどんな顔で伝えればいいのか、 わかっていないように見えるわ
“ラム”: このままお屋敷に到着してもバルスにはうまくやれない ラムはそう判断させてもらったのよ
“スバル”: なるほど……
“ラム”: ここからロズワール様のお屋敷へは歩ける距離よ
“ラム”: ラムは先に戻っているから、 バルスはフェネに謝罪できる状態になったらお屋敷まできなさい
“スバル”: すまねぇ、ラム なんか気を遣わせちまって……
“ラム”: はんっ
“スバル”: うーん、どんな顔して、ね……
“スバル”: そもそも目つきが悪い時点で結構マイナスだよな!
“スバル”: 俺の目つきがもっと穏やかだったら…… なんて考えても仕方ねぇか
???: あ! スバルだ!
“ペトラ”: どうしたの、スバル? なんか元気ない
“スバル”: 俺、元気ねぇかな?
“ペトラ”: うん、いつものスバルじゃない気がする 何か悩んでるなら、わたしが聞いてあげるよ?
“スバル”: いやいや心配無用だ あとちょっとで解決しそうだしな
“ペトラ”: スバル、本当?
“スバル”: ああ本当だ だから俺は大丈夫!
“ペトラ”: それならいいんだけど……
“ペトラ”: でも、もし困ってるなら、わたしに相談して
“ペトラ”: わたしはスバルに助けてもらった だから今度はわたしがスバルの力になる番なの
“ペトラ”: だから、ね、スバル

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_03

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_03話 必要な仲直り 更新日:2021/03/30

“ペトラ”: ねえ、スバル わたしはスバルの力になりたい
“スバル”: ペトラ……
ナレーター: 自分のことをまっすぐと見つめる少女にスバルは言葉を失う
ナレーター: 魔獣ウルガルムの群れがア―ラム村を襲った騒動の際に
ナレーター: スバルが村の子どもたちを助けたことがあり、 ペトラはそのことを今でも感謝してくれているみたいだ
ナレーター: だが、あの件は『禁書』のせいで、 一歩間違えば取り返しがつかないことになっていたかもしれない
ナレーター: そして、『禁書』の影響で巨大化したウルガルムから スバルを救ってくれたのがフェネだったのだ
“スバル”: ペトラ、マジで俺の心配は不要だ
“スバル”: それに俺は、お前からの感謝に値しねぇ奴なんだよ そもそもあの件を解決したのは俺じゃねぇしな
“スバル”: けど、ペトラのおかげで大切なことを思い出せたよ
“ペトラ”: ……スバル?
“スバル”: このまんまだとまた村が危険にさらされちまうかもしれない そんなのペトラだってごめんだよな?
“ペトラ”: え? ……うん、もうあんな思いはしたくないよ
“スバル”: 決して忘れてたわけじゃないんだけど、 気の緩みみたいなもんはあったよな、やっぱ
“スバル”: そういうのが出ちまってて、だからあいつは……
“スバル”: それにあの一言は確かに余計だった
“スバル”: あいつは俺のことをどうでもいいなんて思っちゃいねぇ
“スバル”: 事実、俺はあいつにたくさん助けられて──
“ペトラ”: スバル、なんか変 さっきからひとりごとばっかり
“スバル”: ははは わりぃわりぃ ペトラがいるのに確かにひとりごと多めだったな
“ペトラ”: うん ひとりごと多めだよ、スバル
“ペトラ”: でも、なんだかスバル、いい顔になったね
“スバル”: お、わかっちゃう感じ?
“ペトラ”: うん! いい顔になったよ、スバル
“ペトラ”: さっき見たときは心配になっちゃう感じだったけど、 今のスバルは大丈夫そう
“スバル”: ははは なかなか鋭いなペトラは
“スバル”: んで、ペトラが言った通りだ
“スバル”: さっき言った“大丈夫”は、 子どものお前を心配させないための強がりだった
“スバル”: けど、今度のヤツは本当だ
“スバル”: ペトラ、心配かけてすまなかった でも、俺はもう大丈夫だよ
“ペトラ”: うん なら、よかったー
“ペトラ”: でも、スバルに子ども扱いされて、 わたしとしてはちょっと複雑だけどね……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_04

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_04話 フェネの結論 更新日:2021/03/30

ナレーター: ペトラと別れたスバルは屋敷へ急いでいた
“スバル”: 謝罪の言葉も考えたし、気持ちも整った 今なら誠心誠意謝れる気がするぜ
“スバル”: 待ってろよ、フェネ! 俺の心からの謝罪をお前に見せつけてやる!
ナレーター: スバルが屋敷の前に到着すると、 ちょうどラムが屋敷を出るところだった
“ラム”: 遅かったわね、バルス
“スバル”: わりぃ けど、もう大丈夫だ お前のおかげで、フェネに誠心誠意謝れそうだよ
“スバル”: にしても、俺の気持ちなんてどうでもいいって感じだったのに、 お前は俺の気持ちも大切にしてくれてたんだな
“ラム”: 謝罪には態度も重要よ
“ラム”: どんな謝罪の言葉も、態度次第で相手に届かなくなるわ
“ラム”: 気持ちが入っていないと 不器用なバルスは態度に表れてしまうと思ったまでよ
“ラム”: でも、その判断は誤りだったわ 残念ながら、もう手遅れよ、バルス
“スバル”: ……手遅れ? それはどういうことだ?
“ラム”: フェネが見当たらないわ
“スバル”: ……はあ?
“ラム”: これからお屋敷の外も探そうと思ったのだけれど、 バルスはフェネを見かけなかったのよね?
“スバル”: ああ、見てねぇ ア―ラム村からの道中、人っ子一人見かけてねぇよ
“スバル”: けど、あいつがいないって……
“スバル”: 相手がいないんじゃ、謝りようがないじゃねぇか
“ラム”: ええ だから“手遅れ”と言ったのよ やはりあのとき、ちゃんと謝っておくべきだったわね
“ラム”: 所詮バルスはバルスよ そのことを思い知りなさい
“スバル”: くっ……
“スバル”: とにかく、フェネを探そう
“ラム”: はんっ 無論よ、バルスに言われるまでもないわ
ナレーター: それからスバルは、ラムと手分けをしてフェネを探し始める
ナレーター: だが……
“スバル”: ──フェネ!
“スバル”: ──フェネ!
“スバル”: ──フェネ!
“スバル”: フェネーーっ!
ナレーター: フェネの姿はどこにも見当たらない
ナレーター: そして──
“スバル”: ん? あれは……
ナレーター: フェネの発見を諦めかけ、自室に戻ったスバルは、 机の引き出しが僅かに開いてることに気付く
“スバル”: まさかあんなとこに書置きが残されてるなんてこと……
“スバル”: あるのかよ!
ナレーター: 『クソじょうしのスバルしへ
ナレーター: れいせいにかんがえ、ゆうしゅうなフェネだけで たいしょしたほうがこうりつてきだというけつろんにいたりました
ナレーター: これからフェネはガナクスへむかいます
ナレーター: やっかいごとをひきおこすスバルしがいないので、きっとフェネは じゅんちょうにことをすすめることができるでしょう』
ナレーター: 引き出しに残された書置きには、スバルでも読めるようイ文字で、 そう書かれているのだった……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_05

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_05話 神出鬼没な来訪者 更新日:2021/03/30

“スバル”: ええっと、ラム?
“ラム”: …………
“スバル”: ラムさん?
“ラム”: …………
“スバル”: ラム様?
“ラム”: 何かしら、バルス
“スバル”: うお!? 反応した!? ……なんて驚いてる場合じゃねぇ
“スバル”: これから俺たちで──
“ラム”: 却下よ
“スバル”: はあ? 俺はまだなんにも……
“ラム”: 聞くだけ無駄よ
“ラム”: あの書置きを読んで、 バルスが思い付きそうなことなど一つしかないわ
“スバル”: ああ、そうだ あれを読んでやるべきことは一つだけだ フェネを追って俺たちもガナクスへ向かおう
“スバル”: それに──
“ラム”: “それに”なにかしら?
“スバル”: いや……やっぱやめとく
“ラム”: バルス、言いなさい “それに”なに?
“スバル”: くっ…… 少しエミリアたんのことが頭をよぎった エミリアたんの行き先はガナクスだから、それで……
“ラム”: やれやれね、バルス 愚かしいにもほどがあるわ
“スバル”: 返す言葉もねぇよ
“スバル”: けど、俺にはフェネと仲直りする必要がある あいつを失望させたままってわけにはいかねぇんだよ
“ラム”: それはバルスの問題で、ラムには関係がないわ
“スバル”: 関係ないって…… 『禁書』のページの反応があって それであいつはガナクスへ向かったかもしれねぇんだぞ?
“ラム”: だとしたら、書置きにもあった通り バルスなどいない方が順調に事が運ぶかもしれないわね
“スバル”: ラム! お前な!
“ラム”: ラムはロズワール様からお屋敷を任されたわ
“ラム”: ラムのするべきことが、 ガナクスへ向かうことではないことだけは確かよ
“ラム”: 少しはマシになったと思ったのだけれど、 それはラムの思い違いだったようね
“スバル”: どういう意味だよ、それ
“ラム”: いいえ、なんでもないわ
“ラム”: とにかく、『禁書』のページ探しができない以上、 バルスには明日からお屋敷の大掃除をしてもらうわ
“ラム”: いいわね、バルス
“スバル”: ──クソっ! どうして俺が屋敷の大掃除をしなきゃなんねぇんだ?
“オットー”: いやいや、ナツキさん 結局ナツキさんは大掃除なんてしてないですよね?
“スバル”: 当たり前だ、オットー 俺がやるべきことはガナクスへ向かうことなんだよ
“スバル”: なのにラムのわからず屋め
“オットー”: でも、本当に黙って出てきてしまってよかったんですか? 僕としては不安でしかないのですが……
“スバル”: いいんだよ 屋敷を任されたのはラムだ 大掃除がしたきゃ、自分でやりやがれ
“スバル”: 俺はエミリアたんに会いにガナクスへ向かうんだよ!
“オットー”: いやいや、フェネさんとかいう方に謝りにいくんですよね?
“オットー”: ナツキさんがそんなことを言っているから、 色々こじれたみたいなことをさっき言ってませんでしたっけ?
“スバル”: なんだよ、オットーまでそんなこと言い出すのか?
“スバル”: 確かにそうだけども、色々あってストレスが溜まった俺には、 エミリアたんに会ってエネルギーの補給が必要なんだ
“スバル”: それによく考えたら、ひどくねぇか?
“スバル”: フェネの野郎、書置きをわざわざ人目のつかない 引き出しの中に隠してたんだぜ
“スバル”: おかげであっちこっち探し回って、 ホントすげぇ大変だったんだよ
“スバル”: 書置きなんだから、もっと目立つところに置きやがれ!
“スバル”: あー、ムカムカする
“スバル”: ということで、オットー 俺が抱えたこのイライラを解消してもらっていいか?
“オットー”: ど、どうして僕がナツキさんのイライラを!?
“オットー”: こうやってガナクスへお連れしてるだけでも 十分僕はナツキさんに貢献してますよね?
“スバル”: わりぃ、わりぃ そういやそうだな お前が訪ねてきてくれてすげぇ助かったよ
“オットー”: こっちはコリーナさんに無理言って、 わざわざ訪ねたことを後悔してしまいそうです……
“オットー”: 本当にナツキさんは、 メイザース辺境伯が一目置く超重要人物なんですよね?
“スバル”: それは間違いねぇよ 俺はロズワールに頼られるスーパー使用人だ
“オットー”: し、使用人!?
“スバル”: あれ、言ってなかった?
“オットー”: 言ってないですよ! “辺境伯が一目置く超重要人物”としか聞いてません!
“スバル”: 使用人って聞いて不安になる気持ちもわかるけども、 超重要人物ってのは本当だ
“スバル”: そもそもあの広い屋敷で暮らしてるのは、 ロズワールも含めて五人……いや、ベア子もいるから六人だけで
“スバル”: 使用人的な立場ではあるけど、 わりとロズワールとはコミュニケーションとれてんだよ
“スバル”: 俺がお前との取引を強く推せば、 あいつは無碍になんてしやしねぇよ
“オットー”: その言葉、本当なんでしょうね?
“スバル”: ああ、本当だ だから大船に乗った気でいて大丈夫だぜ
“オットー”: こうやってナツキさんを連れ出してしまった僕としては、 大船であることを願うのみです……
“コリーナ”: そろそろ御者を代わってください、オットーさん コリーナも色々スバルさんとお話がしたいです
“オットー”: あ、すみません、コリーナさん お客さんに御者をしてもらって
“コリーナ”: いえ、冒険者のコリーナは、竜車の操縦は苦ではありません この地竜さんもとても頭がいいですし
“コリーナ”: ですが、なんだかスバルさんとオットーさんが、 とても楽しそうにお話をされているので
“オットー”: た、楽しそうでしたか!?
“オットー”: むしろ御者台で地竜を操ってる方が疲れなかったような……
“スバル”: あん? オットー、なんか言ったか? 俺と色々話せて、すげぇ楽しかったよな?
“オットー”: あ! はい! それはもう!
“オットー”: 今すぐコリーナさんに代わって御者台にいきたいぐらい とても楽しかったですよ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_06

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_06話 工業都市ガナクス 更新日:2021/03/30

ナレーター: ガナクスへとコリーナを運ぶオットーの竜車に同乗した スバルの旅は、そろそろ終わりを迎えようとしていた
“コリーナ”: スバルさん、まもなくガナクスへ到着しそうです
“コリーナ”: スバルさんのおかげで、ガナクスまでの道中が 退屈しないですみました ありがとうございます
“スバル”: いやいや、こちらこそ“ありがとう”だ こうやって竜車に同乗させてもらえて、すげぇ助かったよ
“オットー”: ナツキさん、ガナクスに到着後、 本当にメイザース辺境伯をご紹介いただけるんですよね?
“スバル”: オットー、お前は竜車の操作に集中しろ
“オットー”: いやいや、これぐらいの会話は大丈夫です!
“オットー”: それに、僕にとってはとても重要なことなので、 答えてください、ナツキさん!
“スバル”: ったく、お前は心配性だな そんなに俺が信用できねぇのか?
“オットー”: ここまで旅をご一緒して、 信用できる要素が見当たらなかったのですが!
“オットー”: 僕はあなたじゃなくて、 ラムさんという方に取り入っておくべきだったかもしれません
“オットー”: 僕としては、辺境伯との取引が成立すればいいだけですから
“スバル”: ははは 今さらだけど、その通りだぜ、オットー! 俺なんかよりもあいつの方が発言力あるしな!
“オットー”: ひ、開き直りやがったよ、この人!
“コリーナ”: コリーナはスバルさんが一緒で本当に楽しかったです こうやってオットーさんとスバルさんの楽しい会話も聞けますし
“スバル”: お前の雇い主はこう言ってるぜ?
“オットー”: た、楽しい会話……?
“オットー”: 本人にまったくその自覚がないのですが!
“スバル”: 俺はお前との会話をすげぇ楽しめたよ からかいがいあるもんな、オットーって
“オットー”: はぁ…… なんだかどっと疲れが……
“スバル”: おいおい、もうすぐ到着なんだし、元気出せよ、オットー お前がどんよりしてどうすんだ?
“オットー”: あなたのせいですよ! あなたの!
“スバル”: ──ということでガナクスに到着っと
“スバル”: いやー、それにしても節々がいてぇ
“スバル”: 客として一言言わせてもらうけど、 オットー、もうちょい乗り心地も大事にしろ
“オットー”: ぼ、僕のお客さんはあくまでコリーナさんです! ホント、あなたという人は……
“コリーナ”: 冒険者のコリーナとしては、十分な乗り心地でした あまり快適だと冒険の感じが出ません
“コリーナ”: それに、スバルさん 一番節々にきているのは、長い間御者台にいたオットーさんですよ
“スバル”: おっと、確かに! お勤めご苦労だったぞ、オットー
“オットー”: どういう立場での発言ですか!? ナツキさんが一番謙虚でいるべきですよね!
“スバル”: それは、まぁ、これから次第だろ?
“スバル”: もしかしたらロズワールと すげぇいい取引ができるようになるかもしれねぇんだし
“オットー”: それはそうですけど、それについては期待薄な感が否めません
“オットー”: 僕は完全に取り入る相手を間違えた気が……
ナレーター: オットーがそうため息を漏らしたそのとき──
謎のうめき声: ウウウゥゥ……っ!
ナレーター: 不気味なうめき声が周囲に響く
“コリーナ”: ──っ!
“スバル”: ──オットー! お前の地竜、なんだか様子が変だぞ!
“オットー”: あ!? フルフー! 落ち着いて!
フルフー: ウウ ウウウウゥゥ──!
“オットー”: か、勝手に!? ──ダメだ! 戻ってこい、フルフー!
“オットー”: フルフーーーっ!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_07

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_07話 フェネのいう通り 更新日:2021/03/30

ナレーター: オットーの地竜、フルフーの暴走
ナレーター: その暴走に『禁書』が影響している可能性が高いと スバルは考えていた
ナレーター: 王都では人々が『禁書』の影響を受け、 多くの喧嘩や言い争いが発生して大きな騒動に発展したのだ
ナレーター: 『禁書』は魔獣だけでなく、動物や人間も狂暴化させる
ナレーター: そして、フェネがガナクスへ向かったという事実も、 スバルの考えが正しいことを裏付けているように思えた
“スバル”: オットー、お前はすぐにでもガナクスを離れた方がいい
“スバル”: 幸いお前の地竜は今は落ち着いた状態だ そいつが落ち着いた状態のうちに早く
“オットー”: し、しかし、僕はまだメイザース辺境伯を……
“スバル”: お前を必ずロズワールに紹介してやる お前と取引するように強く推薦もさせてもらう
“スバル”: だから、な わかってくれ、オットー ここにいちゃ危険なんだ
“スバル”: それに俺は、お前の地竜は自分を正気に戻すために、 あんな風に壁に激突したような気がするんだよ
“スバル”: けど、また影響を受けたら、 こんな風に正気に戻れるとは限らねぇ
“オットー”: ……影響を受けたら?
“オットー”: な、ナツキさんはいったい何を言ってるんです? フルフーの暴走に何か心当たりがあるんですか?
“スバル”: いや、ほら、王都でも不可解な騒動があったこと、 お前も知ってるだろ?
“スバル”: あんな風なことがここでも起きたら嫌だなって思ってさ 実際、お前の地竜は原因不明の暴走をしたわけだし
“オットー”: 確かに…… フルフーが暴走するなんて、 余程の事情があったとしか考えられません
“スバル”: とにかく、お前らはガナクスを離れろ わかったな、オットー あと、コリーナもだ
“コリーナ”: …………
ナレーター: スバルの説得に応じオットーは急ぎガナクスを出発した
“スバル”: ふー これで一安心だな
“コリーナ”: はい、一安心です
“スバル”: ……って、おい! お前、オットーと一緒に出発したはずじゃ?
“コリーナ”: どうしてコリーナが?
“コリーナ”: 冒険者のコリーナは、 これから起こることのすべてを見届けるつもりです
“スバル”: いやいやいや お前だって王都であった騒動を経験したはずだ あんなことがここでも起きるかもしれねぇんだよ だから……
“コリーナ”: わくわく
“スバル”: すげぇわくわくしてる!? いやいや、マジだから! マジで危険なんだよ、ここは!
“コリーナ”: だとしたらなおさらですよ、スバルさん 危険は冒険者のコリーナにはご褒美ですから
“スバル”: いやいや、“危険がご褒美”なんて考えは改めよう! お前はまだ若いんだし、今からでも変われるよ、きっと!
“スバル”: それに、エミリアたんが心配だ 俺にはお前に構ってる余裕が──
“コリーナ”: スバルさん、コリーナはスバルさんをあてになんてしていません 何かあれば自分の身は自分で守れます
“コリーナ”: スバルさんこそ大丈夫ですか?
“コリーナ”: 危険が迫っているのであれば、 スバルさんこそ避難した方がいいのではないでしょうか
“スバル”: 馬鹿野郎! 舐めんな! エミリアを置いて俺だけ逃げられるか!
“コリーナ”: 冒険者のコリーナも、これから起こることを見届けずに 逃げるわけにはいきません
“スバル”: クソっ! コリーナのわからず屋!
“スバル”: けど、いつまでもお前の説得に時間をかけてるわけにもいかねぇ
“スバル”: 悪いがコリーナ、俺はエミリア探しを優先させてもらう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_08

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_08話 どちらを探す? 更新日:2021/03/30

男: ──なんだ、テメー!
男: あん? やんのか?
ナレーター: 明らかにスバルの周囲では空気が荒れ始めている
“スバル”: 影響が出始めてる感じだな…… 早くエミリアたんたちを見つけねぇと
“スバル”: って、その前にフェネと合流するって手もあるな
“スバル”: 取り返しがつかなくなる前に、フェネとページを探して 『禁書』に封じる方が優先かもしれねぇ
“コリーナ”: スバルさん、探している人はなかなか見つかりませんね
“スバル”: ああ だから別の選択肢もただいま検討中だ
“コリーナ”: ですが、スバルさんとしては、 まずはエミリアさんという方にお会いしたいのでは?
“スバル”: そりゃ、まあ…… 俺にとっちゃエミリアがすべてだと言っても過言じゃない
“スバル”: けど、フェネって奴と合流できても、 エミリアを助けることにつながるんだよ
“スバル”: 結果的に俺は、エミリアのためになればそれでいいんだ
“スバル”: お前みたいな子どもが、 騒動に巻き込まれるかもしれねぇってのに……
“スバル”: 本当だったら、真剣にお前を説得して
“スバル”: それでもお前が言うことをきかなかったら、 殴ってでも逃がさなきゃならねぇってのに……
“スバル”: 俺にはその時間が惜しい
“スバル”: 何があっても、“危険はご褒美だ”なんて言ってる お前の自業自得だって自分に言い訳しながら
“スバル”: 俺はエミリア探しを優先しちまってるんだよ
“コリーナ”: ですから、コリーナは子どもではないですし 自分の身は自分で守れます
“コリーナ”: むしろ自分の身さえ守れない可能性が高いスバルさんが、 冒険者であるコリーナの心配をしている方がおかしな状況です
“コリーナ”: やはりスバルさんは、とんでもないお人好しですね……
“コリーナ”: ですが、そのお人好しさに免じて、 コリーナも真剣にエミリアさん探しに協力しましょう
“スバル”: ……真剣に協力?
“コリーナ”: はい!
“スバル”: いやいやいや! なんだか嫌な記憶が蘇るぞ、それ!
“スバル”: お前、王都で色々と俺を弄んでくれたよな?
“スバル”: さんざん王都内を連れ回されたうえに、 収穫ゼロだったあの日のことを俺は忘れてねぇよ
“コリーナ”: なんのことでしょう? 記憶にありません
“スバル”: それ、本気で言ってる!? しかもそれ、どこかの国の悪い政治家の常套句だから!
“スバル”: 都合が悪いこと言われると、 大概そう言って切り抜けようとしやがんだ、あいつらは
“コリーナ”: なるほど…… ですが、コリーナはそのような方々とは違います
“スバル”: 当の本人が否定しても、俺の不安は拭えねぇよ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_09

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_09話 コリーナは優秀 更新日:2021/03/30

ナレーター: コリーナとともにエミリアたちを探し始めるスバル
ナレーター: だが、王都での苦い経験から、 スバルはどうしてもコリーナの言動を信じることができない
ナレーター: 王都で『禁書』のページ探しをしていたスバルは
ナレーター: コリーナと行動をともにして、 一日のほとんどを無駄にしてしまったのだ
ナレーター: コリーナが怪しいと連れていった場所は、 『禁書』のページとは関係がないところばかりだった
“コリーナ”: ふむふむ、なるほど
女性: 私の情報、お役に立ちそうですか?
“コリーナ”: はい! ありがとうございました!
“コリーナ”: スバルさん、お待たせしました!
“コリーナ”: コリーナの聞き込みの結果、探す場所が絞られました さあ、あちらに向かいましょう
“スバル”: …………
“コリーナ”: スバルさん?
“スバル”: あ、いや…… よく考えたら、 エミリアたんは王選の地固めにきてるわけだし
“スバル”: 地元の有力者の家を片っ端から当たれば、 詳しい情報が手に入るんじゃねぇかなって思って
“スバル”: うまくいけばエミリアたんたちが訪問している最中で、 本人にも会えるかもしれねぇだろ?
“コリーナ”: その通りです!
“コリーナ”: ですので、コリーナはそういう方の関係者だと 思われる方々を見繕い、声をかけさせていただきました
“コリーナ”: 闇雲に聞き込みをしていたわけではありません
“スバル”: え? そうなの?
“コリーナ”: はい!
“コリーナ”: そして、スバルさんがお探しの三名が、 滞在していると思われる宿がわかったのです
“スバル”: おっと、それはすげぇ! もうほとんど会えたようなもんじゃねぇか!
“スバル”: ……って、待て待て 喜ぶのはまだはえぇぞ、俺
“スバル”: こいつはあのコリーナだ どうせまた、全然関係ねぇ場所に連れていかれるに決まってる
“コリーナ”: そんなことはありません
“スバル”: どうしてそう言い切れる?
“コリーナ”: では、いかないのですか?
“スバル”: うーん……
“コリーナ”: それでは、スバルさんには他にどこかあてがあるのでしょうか?
“スバル”: それを聞かれるとつれぇ…… なんせ初めての町だ 現時点じゃあてなんてねぇよ
“スバル”: あー、わかった! とりあえず、エミリアたんたちが、 泊まってると思しき宿に向かうとしよう
“スバル”: けど、そこが空振りだったら、 今度は俺が主導権を取らせてもらうかんな!
“コリーナ”: スバルさん、あの宿です
“スバル”: おお、んじゃ、さっそく宿に入って──
“スバル”: って、エミリアたん!
“スバル”: レムも!
“スバル”: まぁ、こいつはいてもいなくてもいいけど、 とりあえずロズワールも発見だ、コリーナ
“スバル”: ……って、コリーナ? どこいきやがった?
ナレーター: スバルは周囲を見渡してコリーナを探すが、 彼女の姿はどこにも見当たらなかった
“スバル”: ったく、相変わらず神出鬼没な奴だな
“スバル”: 礼の一つでも言ってやりたかったんだが、 まぁ、いねぇなら仕方ないか……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_10

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_10話 ガナクスを守れ 更新日:2021/03/30

“エミリア”: ──す、スバル!?
“エミリア”: どうしてスバルがここに……
ナレーター: 突然現れたスバルに、エミリアは驚きを隠せない様子だ
“レム”: スバルくんは確か姉様と……
ナレーター: レムも明らかに戸惑っている
ナレーター: だが──
“ロズワール”: やあ、スバルくん
ナレーター: ロズワールには驚きの色は見えない
“スバル”: 驚かせてごめん、エミリアたん、レム あと、ロズワールはもうちょっと驚いてくれる?
“ロズワール”: これは失礼
“ロズワール”: 君のことだから、まあ、こんなこともあるだろうと 思っていたものだからねーぇ
“エミリア”: もう、ロズワール スバルがくるかもしれないなら、そう言ってくれればいいのに
“エミリア”: 私、すごーくびっくりしちゃった
“ロズワール”: エミリア様、申し訳ありません だが──
“ロズワール”: 君がここにいるということは、 つまりそういうことだと思っていいのかーぁな?
“スバル”: ああ、お察しの通りだ、ロズワール 『禁書』のページが恐らくここにはある
“ロズワール”: なるほど…… ところでフェネくんの姿が見えないようだあーぁね
“レム”: 確かに…… フェネさんが見当たりません
“スバル”: いや… それは……
“エミリア”: 『禁書』のページがあるにしても、色々腑に落ちません
“エミリア”: スバル、どうやってここまできたの? お屋敷からすごーく遠いはずでしょ
“エミリア”: それに、フェネの姿が見えないのもなんだか変
“エミリア”: 色々詳しく教えて、スバル 私、怒ったりしないから
“スバル”: 怒ったりしないって…… もはや俺が怒られるようなことをしている前提のような……
“エミリア”: スバル、違うの?
“スバル”: ええっと、どうだろう……
“スバル”: けど、怒らないって言ってくれて、話しやすくなったのは確かだよ
“スバル”: んじゃ、ここまでの経緯を話すけど、 エミリアたん、約束通り絶対に怒らないでね!
ナレーター: それからスバルは、自分がガナクスに至るまでの 経緯を三人に話して聞かせる
“スバル”: ──とまぁ、こんな感じだ
“スバル”: ロズワール、オットーっていう行商人に世話になった 贔屓にしてくれると助かる
“スバル”: なんか放っておけない奴で、あいつとは今後もいい関係でいたい
“ロズワール”: わかったよ、スバルくん 彼とはなんらかの取引をさせてもらうと約束しよう
“スバル”: サンキューだ、ロズワール オットーの奴も泣いて喜ぶぜ
“エミリア”: …………
“スバル”: エミリアたん、どったの? 表情が優れないけど
“スバル”: せっかくの可愛い顔がもったいないぜ
“エミリア”: そんなこと言っても誤魔化されません
“エミリア”: スバル、フェネのこと全然話してないもの
“エミリア”: そのオットーって人の竜車でここまできたのはわかったけど、 フェネはどうしたの?
“エミリア”: ここに『禁書』のページがあるならなおさらでしょ?
“エミリア”: 王都とかイバダのときみたいになったら大変 早くフェネと一緒にページを探さないと
“レム”: フェネさんは、姉様と一緒にお屋敷でお留守番でしょうか?
“スバル”: いや、フェネは……
“スバル”: ええっと… その… 今は別行動してるっつーか……
“スバル”: ほら、さっきも言ったけど、オットーの地竜が、 暴走したりなんかして、ここにページがあるのは確実だからさ
“スバル”: フェネの奴は一足先にページ探しを開始したんだ
“スバル”: んで、俺はエミリアたんたちと合流するために、 フェネとは別れてここにきたってわけ
“ロズワール”: スバルくんはよく我々がいる宿がわかったねーぇ
“スバル”: 王選の地固めでここにきたってのは知ってたからな この辺の有力者をあたれば何かわかるかなって思ったんだよ
“スバル”: そしたらみんなが泊ってる宿の情報が手に入った
“レム”: さすがスバルくんです レムは感服しました
“スバル”: まぁ、実際に情報をゲットしたのは、コリーナって子なんだけど
“エミリア”: そうそう、そのコリーナって子はどこ? ちゃんとお礼を言わなくっちゃ
“スバル”: それが、どこかにいっちまったんだ 俺もあいつには礼が言いたかったんだけど……
“ロズワール”: その子の姿が見えなくなったのはいつだい?
“スバル”: ちょうどエミリアたんたちを見かけたときだよ
“スバル”: 怪しいおっさんがいたから、 関わり合いたくねぇって逃げ出したのかもな
“ロズワール”: “怪しいおっさん”とは、私のことかーぁな?
“レム”: スバルくんも素敵ですが、ロズワール様も素敵ですよ、スバルくん
“レム”: それに ここに姉様がいたら冗談では済まなかった可能性が……
“スバル”: おっと、確かに! ここにラムがいなくて助かったぜ って、ちょっと待て……
“スバル”: 確かに冗談のつもりだったんだが…… でも……
ナレーター: スバルはコリーナが姿を消した場面を思い返す
“スバル”: 確か宿からエミリアたんが出てきて、その後にレム…… 最後に出てきたのがロズワールだったよな……
“スバル”: 俺がエミリアたんを見かけたとき、 あいつは確かにまだいたんだ
“スバル”: レムが出てきたときもまだいた気がする
“スバル”: けど……
“ロズワール”: やはり私のせいみたいだあーぁね
“スバル”: ああ、可能性はあるな
“スバル”: そのメイク、やっぱやめた方がいいんじゃねぇのか? 一応、ルグニカでもそれなりの地位にいるわけだし
“ロズワール”: 一応、ねぇ?
“スバル”: ごめん、失言だったよ!
“スバル”: ここにラムがいたらって想像すると冷や汗が止まらないから、 そういう揚げ足を取るの、やめてもらっていい!
“スバル”: ただでさえラムには……
“エミリア”: ん? スバル、ラムがどうしたの?
“スバル”: いやいや、別にどうもしないよ いやだなー、エミリアたん
“スバル”: そんなことより、『禁書』のページだよ、エミリアたん
“スバル”: 早いとこなんとかしねぇと すでに『禁書』のページの影響は出始めてる
“レム”: はい、スバルくん! 急ぎましょう
“ロズワール”: 確かに急いだ方がよさそうだあーぁね
“スバル”: (はぁ…… なんとかこの場は切り抜けたけど、 早いとこフェネを見つけて口裏を合わせてもらわねぇとな……)

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_11

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_11話 救世主エミリア 更新日:2021/03/30

男: おい! やんのか、テメー!
男: ああ、やってやるよ! ぶっ殺してやる!
ナレーター: エミリアたちと合流し、 フェネの捜索を本格的に開始したスバルだったが
ナレーター: 荒れた空気はガナクス全体に広がりつつあった
ナレーター: そして──
変異体: ウガガガガァァーーーッ!
ナレーター: この世のものとは思えない叫びが、スバルの耳をつんざく
“スバル”: ──っ!!
“エミリア”: スバル!
“レム”: スバルくん!
“ロズワール”: どうやらおでましのようだあーぁね
“スバル”: 招かざる客がきちまったみたいだ 『異形』…… いや、『変異体』か
“レム”: 『変異体』であればレムたちでなんとかできます ですが、『異形』の場合はやはりフェネさんがいないと……
“エミリア”: スバル、フェネはどこなの?
“スバル”: いや… ここいらにいるのは確かだと思うんだけど、 正確な場所まではちょっと……
“スバル”: それに──
変異体: ウガガガガァァーーーッ!
市民: うわぁー!
“スバル”: どうやらフェネを探してる余裕はなさそうだ まずはあいつをなんとかしねぇと
???: どうやらボクの出番みたいだね、リア
“エミリア”: パック! うん、お願い! いいわよね、ロズワール?
“ロズワール”: もちろんです、エミリア様
“スバル”: おいおい、ちょっと待て エミリアたんが危険な目にあったらどうすんだ?
“レム”: エミリア様の手を煩わす必要はありません ここはレムが──
“ロズワール”: いや、せっかくだ ここはエミリア様に思う存分力を発揮していただこう
“スバル”: はあ?
“スバル”: 普段のお前だったら“エミリア様のお手を煩わすわけには” って言いそうな場面に思えるんだが
“パック”: スバル、心配はいらないよ リアにはボクがついてるからね
“スバル”: けど……
“ロズワール”: スバルくん、ここはエミリア様にお任せしよう レムもいいね?
“レム”: はい ロズワール様がそうおっしゃるのでしたら エミリア様、お願いします
“エミリア”: うん、任せて 『変異体』なんてやっつけてやるんだから

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_12

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_12話 『禁書』と地固め 更新日:2021/03/30

“エミリア”: ──えいっ!
変異体: うぎゃぁーーッ!
“エミリア”: ──やあっ!
変異体: うががぁーーッ!
ナレーター: エミリアは襲いくる『変異体』を次々と倒していく
市民: あの方が我々を……
市民: あの方のおかげで私たちの命が守られたんだわ
“スバル”: 数が多い! さすがにエミリアたん一人に任せるのは…… って、ロズワール?
“ロズワール”: ふふふ……
“スバル”: おい! ロズワール!
“ロズワール”: いや、ここはエミリア様お一人にお任せしよう 大丈夫、エミリア様はお強い 君が思っているよりずっとね
“スバル”: いやいや、けど……
“ロズワール”: さーぁあ、皆様! 王選の候補者であられるエミリア様が、 皆様をお守りしてくださいます!
“ロズワール”: 安心して避難を開始してください!
市民: あの方がエミリア様!
市民: 危険を顧みず私たちを助けてくださるなんて……
“ロズワール”: さーぁあ、皆様は避難を! エミリア様が食い止めてくださっているうちに早く!
“ロズワール”: スバルくん、私は善良な市民の皆様を安全な場所へお連れする ここは君に任せよう しっかりやりたまえ
“スバル”: ロズワール! お前、これを狙って……
“ロズワール”: なんのことかーぁな
“スバル”: とぼけんじゃねぇ! エミリアばっか戦わせやがって!
“ロズワール”: では、どうするんだい、スバルくん? 私やレムが解決しても意味はない
“ロズワール”: ここはエミリア様に花を持たせるのが得策だと思わないかい?
“スバル”: そ、それは…… いやいや、やっぱダメだ
“スバル”: 元をただせば、『禁書』の件は俺が原因だ
“スバル”: 結局、そのことがばれれば、 ここでいい格好したって意味なんてねぇよ
“スバル”: そもそも、あのアナスタシアさんがそのことを知ってるんだぞ
“スバル”: この件を解決してエミリアがガナクスで支持を集めたって知れば、 アナスタシアさんは黙ってないんじゃねぇかな?
“ロズワール”: なるほど だが、そのときはそのときだあーぁよ
“スバル”: はあ?
“ロズワール”: だから、そのときはそのときだよ、スバルくん
“ロズワール”: それに私は、君が想像しているような結果には、 ならないと考えている
“スバル”: そりゃ、楽観視しすぎだろ それともその楽観視には何か根拠があるとか?
“ロズワール”: さて、どうだろうねーぇ
“スバル”: んだよ、肝心なとこではぐらかしやがって──
変異体: ウガガガガァァーーーッ!
“ロズワール”: 話は終わりだ、スバルくん 私は皆様を安全な場所へとお連れしなければならない
“スバル”: くっ…… 確かに、込み入った話をしてる場合じゃなさそうだ
“ロズワール”: では、任せたよ、スバルくん エミリア様やレムを頼む
“スバル”: “頼む”って言われてもな…… 三人の中で俺が一番弱いんだけど……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_13

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_13話 代役はパック 更新日:2021/03/30

“エミリア”: ふぅー 『変異体』はみんなやっつけたみたい
“レム”: エミリア様、お疲れ様でした 大精霊様もとても活躍されていました
“パック”: 数が多かったからね ボクもちょっと本気を出しちゃったよ
“スバル”: エミリアたん、お疲れ! にしても、あれで“ちょっと”ってパックの本気が恐ろしいよ
“パック”: まあ、ボクが本気を出したら、 この世界を凍らせることだってできちゃうからね
“スバル”: おいおい! 冗談でもそういうこと言うのやめよう! せっかくの可愛いモフモフが台無しになるから!
“パック”: そこは見た目との落差にぐっとくるところなんじゃない?
“スバル”: いやいやいや、ギャップ萌えのレベルじゃないから、それ!
“スバル”: わりかしギャップにはやられがちな俺だが、 そこまで許容できるほど上級者にはなれてねぇよ
“スバル”: とにかく、なんとか現れた『変異体』は倒すことができた ということで……
“エミリア”: スバル、ページを探さないと
“スバル”: やっぱそうなるよな
“スバル”: フェネと合流できない場合も考えて、 ページのありかは掴んでおきたいところだ
“レム”: スバルくん レムには『禁書』に封じることはできませんが、 現れた『異形』を倒すことはできます
“スバル”: そうすりゃ、被害は最小限…… うまくやればゼロに抑えられるかもしれねぇってことか
“スバル”: 結局、またページにマナが溜まれば、 『異形』が具現化しちまうんだが……
“スバル”: それまでにフェネを見つけて、 『禁書』に封じてもらえばいいだけの話だな
“スバル”: よし、フェネと並行して『禁書』のページも探そう
“スバル”: もし発見したときは、レムに負担をかけちまうことに なるかもしれねぇけど、そんときは頼んだぞ、レム
“レム”: はい! スバルくんのお役に立てるなら、気にしないでください
“パック”: ──え? 本気かい、スバル?
“スバル”: パック頼む! この通りだ!
“パック”: ページのありかなんて、ボクにはわからないよ
“スバル”: 見た感じはフェネと似てるし、 試しにちょっとやってみてくれねぇかな?
“パック”: 試しに、ね じゃ、ちょっとやってみるけど…………
“パック”: うん、やっぱりわからないね
“スバル”: いやいやいや、もうちょっとまじめにやってくれよ
“パック”: そんなこと言われても、試しにやってみてあげただけでも、 感謝してほしいぐらいだよ、ボクは
“スバル”: クソ やっぱパックじゃ無理か……
“エミリア”: もう、スバル パックにすごーく失礼
“パック”: ありがとう、リア おかげで、スバルに失礼なこと言われて、 傷ついたボクの心が癒されたよ
“スバル”: パック、お前! 世界を凍らせるなんて言う奴の心が、 これぐらいで傷つくわけねぇだろ!
“パック”: そんなことないよ ボクの心はとっても繊細だからね
“スバル”: またまた そんなこと言って、 エミリアたんに優しくされたいって魂胆が見え見えなんだよ
“パック”: それはずいぶん穿った見方だね まあ、否定はしないけどさ
“スバル”: 否定しないのかよ!?
“スバル”: って、否定しないんだったら、俺のことチクリと刺す必要あった? “穿った見方”とか言われて、俺の心は傷ついたぞ
“レム”: スバルくん、傷ついてしまったんですね でしたら、レムがスバルくんのことを……
“スバル”: エミリアたんへのキラーパスが、なぜかレムの元に!
“レム”: さあ、スバルくん、傷ついた心を癒してあげます
“スバル”: あ、ありがとう、レム でも、心の傷は浅かったみたいだ もう大丈夫かな
“スバル”: それに、今は一刻の猶予もない状況だ 早くページやフェネを見つけねぇと
“エミリア”: ええとね、スバル 私も微精霊とお話ができるの
“スバル”: ……え?
“エミリア”: ほら、ユリウスが微精霊とお話して……
“スバル”: あ! イバダでのヤツね!
“スバル”: 確かあいつは、微精霊との会話でイバダでの危機を知ったんだよな
“エミリア”: うん、そう だから──
“エミリア”: 微精霊に聞けば、フェネの居場所とか ページのこととかわかるかもしれないって思ったの
“スバル”: おぉ! それは名案だね、エミリアたん!
“スバル”: んじゃ、頼む 微精霊に色々聞いてみてくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_14

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_14話 フェネの不在 更新日:2021/03/30

“エミリア”: ごめんなさい、スバル あまり役に立つ情報が聞けなくて……
“スバル”: いやいや、エミリアたんは悪くないよ 気にしないで
“エミリア”: でも……
“レム”: あの、スバルくん
“スバル”: ん? どうしたレム
“レム”: その…フェネさんと落ち合う場所など スバルくんは決めていなかったのでしょうか?
“レム”: スバルくんなら、はぐれた場合なども想定して、 予め落ち合う場所を決めていてもおかしくないかなと
“スバル”: うぐっ…… レムの過大評価が胸にいてぇけど、 そういうのは決めてねぇんだ
“スバル”: あいつとはそういうのを決める前に 別れざるを得なかったつーか……
“スバル”: とにかく、現時点じゃページを探すのと同じぐらい あいつと合流するのは難しい状態なんだよ
“スバル”: マジですまねぇ……
“レム”: そんな… レムの方こそすみません スバルくんを落ち込ませてしまって……
“レム”: ですが、フェネさんのことです ご自分で解決され、ページを封じられるかもしれません
“エミリア”: 私もフェネはすごーく頼りになると思う
“エミリア”: 色々あったけど、たくさんページを封じられたのは、 フェネのおかげでしょ?
“エミリア”: 今回だって……
“スバル”: いや、今回はこれまでと違うかもしれねぇんだ
“エミリア”: どうしたの、スバル? やっぱりなんだか変 フェネと何かあった?
“スバル”: …………
“スバル”: 悪い エミリアたんもレムも俺に気を遣ってくれてんだよな?
“スバル”: フェネと合流できないのは、俺の責任だ
“スバル”: もっと言えば、そもそも『禁書』の件が起こっちまったのも、 俺の凡ミスが原因……
“スバル”: それなのにみんなは、俺を責めるどころか、 気を遣って励ましてくれてる
“パック”: “みんな”というのは美化しすぎな気がするけどね
“スバル”: 確かに“みんな”じゃないけども! ことあるごとにチクチク言うピンク髪のメイドもいるしな!
“スバル”: けど、ここにいるエミリアたんやレムは、 俺のことを責めたりしないでくれてる
“スバル”: 今だって、フェネが解決してくれるかもって、 希望が持てるようなことを言ってくれて
“スバル”: 俺の罪悪感を少しでも減らそうとしてくれてるんだ
“パック”: 残念だけど、スバル ボクは桃髪の子と同じ立場かな
“スバル”: おっと! ここに敵が!
“パック”: リアの足を引っ張るようなことをして、 しかもリアに気まで遣わせるなら
“パック”: ボクとしてはスバルに味方する理由が見当たらないよ
“スバル”: なるほど…… 確かに“みんな”ってのは都合よく考えすぎだったよ
“スバル”: 結局、俺のそういう甘さが、 色々と問題を引き起こしちまうのかもしれねぇ……
“スバル”: あんがとな、パック 肝に銘じとくよ
“パック”: 味方じゃないって言ってるのに、 お礼を言われるのはなんだか複雑な気持ちだね
“パック”: でも、リアにもしものことがあったら、ボクは君を許さないよ それだけは忘れないでね
“スバル”: ああ そんなことになっちまったら、 俺のことは好きにしてくれて構わないぜ、パック
“スバル”: ──とにかく、今はこの状況をどうにかしねぇとだ
“スバル”: 確かに、これまでなんとかページを回収してこれたのは、 フェネのおかげだ
“スバル”: そして──
“スバル”: これからもそうであるために、俺は最善を尽くさねぇとな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_15

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_15話 信頼を胸に 更新日:2021/03/30

ナレーター: 微精霊からの情報収集を試みたエミリアだったが、 『禁書』のページやフェネの情報を得ることはできなかった
ナレーター: 注意深く辺りを調べながら歩き回っても、 ページやフェネの姿はおろか手掛かりさえ掴むことができない
“スバル”: ここまで進展がねぇと、ちょっと心が揺らいじまうな
“レム”: スバルくん……
“スバル”: 悪い、ちょっと弱音が出ちまったけど、俺は大丈夫だ 心は折れちゃいねぇよ
“スバル”: とにかく探すしかない この街のどこかにページはあるし、フェネもいるはずだ
“スバル”: それに、あっさりフェネの奴が解決してくれるかもしれないしな
“エミリア”: ………!
“エミリア”: スバル、あれ!
“スバル”: ん? って、あれは!
“パック”: さすが、リア あれはきっと目当てのものだよ
“レム”: スバルくん、急ぎましょう! 早くしないと──
ナレーター: レムが駆け出そうとしたそのとき、それは光り始めた
“スバル”: ──くっ! ヤバい!
“エミリア”: スバル! 逃げて!
“スバル”: バカ! 俺のことなんかより──
ナレーター: 辺り一面を白い光が包んだ直後、 エミリアとレムは膨張したページに飲み込まれていた
ナレーター: エミリアにより庇われたスバルだけが、 ページに吸い込まれることなく現実世界に留まっている
“スバル”: ──エミリアっ! レムっ! パックっ!
“スバル”: ちくしょう…… 俺だけ助かっても意味ねぇだろ……
“スバル”: 俺が…フェネに失望されてなきゃ……
“スバル”: 結局、全部俺のせいだ……
“スバル”: 『禁書異変』が起きちまったのも、 フェネが一緒にいてくれねぇのも
“スバル”: 全部が全部、俺のせいなんだよ!
“スバル”: このままでいいのか……? このままでホントに……
ナレーター: スバルはエミリアたちを飲み込んだ 大きく膨張しているページを見つめる
“スバル”: ユリウスの奴は、こいつに飛び込んで無事だったよな……
“スバル”: まぁ、『最優の騎士』って呼ばれるあいつと俺じゃ、 雲泥の差ではあるが──
“スバル”: やってみるしかねぇ
ナレーター: スバルはゆっくりとページへと近づく
ナレーター: そして──
ナレーター: スバルは自らページの中へと身を投じるのだった
“スバル”: ままよ!
“スバル”: …………
“スバル”: なんとか無事みたいだな……
“スバル”: 手は動くし、足も動く 意識もはっきりしていて記憶の混濁もない
“スバル”: とはいうものの……
“スバル”: きて早々、いきなり詰んでるよね、俺!?
“スバル”: バカ! バカ! 俺のバカ! どうしてロズワールに声をかけなかったんだ?
“スバル”: フェネを見つけるのは無理にしても、 ロズワールとなら合流ができたはずだ
“スバル”: にもかかわらず、戦闘力ゼロの俺が、 ぼっちでこんなとこにきてどうすんだよ!
“スバル”: 俺一人じゃ、『異形』どころか なんらかの敵が現れただけで終わりじゃねぇか……
“スバル”: クソっ! あの野郎、マジ許せねぇ!
“スバル”: あいつがページに飛び込むなんて無茶をしてなきゃ、 俺だってもうちょっと慎重に考えられたんだ!
“スバル”: あいつは『最優の騎士』 俺はただの引きこもり 確かに嫌な予感はあったけども
“スバル”: まさかこんな凡ミスを犯しちまうなんて……
“スバル”: ちくしょー! 全部お前のせいだぞ、ユリウス!
???: ずいぶん、荒れてますね、スバルさん
“コリーナ”: でも、人のせいにするのはどうかと思いますよ
“スバル”: こ、コリーナ……?
“コリーナ”: はい、コリーナです さっきぶりですね、スバルさん
“スバル”: あ、ああ…… って、待て待て待て! どうしてコリーナがここに?
“コリーナ”: 街を歩いていたら白い光に包まれて、 気が付いたらここにいました
“コリーナ”: 世界的な冒険者であるコリーナは──
“コリーナ”: きっと冒険者としての力を買われ、 ここに召喚されたのだと思います
“スバル”: なるほど 歩いてる最中にページに吸い込まれたんだな
“コリーナ”: いえ、冒険者として召喚されたのです
“スバル”: わりぃ、コリーナ そう思いたい気持ちはわかるけど、 これは事故にあったみたいなもんなんだ
“スバル”: お前が歩いてた近くで、たまたまページが膨張したんだよ んで、吸い込まれた
“スバル”: って、エミリアを見なかったか? レムやパックは?
“コリーナ”: あいにくコリーナは“ユリウスのせいだ、ちくしょー!”と叫ぶ スバルさんしか見ていません
“コリーナ”: あとスバルさんは“バカ! バカ! 俺のバカ!” とも喚き散らしていました
“スバル”: なるほど、俺の醜態は一部始終見られてたわけだ
“スバル”: ──ときに、コリーナ
“コリーナ”: なんでしょう、スバルさん
“スバル”: お前って、冒険者と自称するからには、 もしかしてすげぇ強かったりしねぇ?
“スバル”: とある格闘技を極めてるとか、超強力な魔法が使えるとか、 有名な剣士の娘で幼いころから剣の修行をしてたとかさ
“スバル”: もちろん、すげぇご都合主義だとは思う
“スバル”: けど俺は、このタイミングでのお前との邂逅に、 救世主の登場を予感せずにはいられないぜ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_16

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_16話 異世界に強い男 更新日:2021/03/30

ナレーター: 実はコリーナには強い戦闘力が備わっているのではないか
ナレーター: そう期待したスバルだったが、儚くもその期待は打ち砕かれた
“スバル”: ええっと、もう一度確認するけど、お前って全然強くねぇの?
“コリーナ”: はい スバルさんよりは強いと思いますが
“スバル”: いやいや、俺より強いぐらいじゃ、むしろ弱い部類だろ
“スバル”: ラインハルトにユリウス クルシュさんに『鉄の牙』 ウチのレムだって俺とはダンチな強さだしな
“スバル”: あの可憐なエミリアたんでさえ、俺よりは全然つえぇよ 言ってて悲しくなるけど
“コリーナ”: 冒険者のコリーナは、 どんな困難も知恵と勇気で乗り切ってきました
“スバル”: 得体の知れねぇ『異形』とやり合うのは、 知恵と勇気だけだと心もとないかな!
“コリーナ”: それは冒険者冥利に尽きますね 危険な状況はコリーナにとってご褒美です
“スバル”: …………
“スバル”: もしかして俺、救世主じゃなくて死神に出会っちゃった? こいつと一緒だと、命がいくつあっても足りなさそうなんだけど!
“スバル”: とにかく時間を戻すことはできねぇんだし、 ああだこうだ嘆いてたって仕方ねぇ
“スバル”: なんとかエミリアたんやレムと合流するために前へ進もう
ナレーター: スバルは戦闘要員としては期待薄なコリーナを連れて、 ページ内の亜空間を移動し始める
ナレーター: だが──
“スバル”: まるでロープレのダンジョンだな! すぐに行き止まりに突き当たって先に進めなくなっちまう
“スバル”: これで何度目の行き止まりだ?
“コリーナ”: 十三回目ですね
“スバル”: 正確なカウントサンキュー…… って、そんなに!?
“スバル”: これじゃ『異形』とかにやられる前に餓死しちまいそうだよ
“コリーナ”: その心配は無用です もしもの場合に備えて冒険家のコリーナは食料を携帯しています
“スバル”: なるほど、戦闘は期待薄だが、 冒険者としての経験やスキルは生きるってわけだ
“スバル”: んじゃ、俺もちっとは役に立たねぇとな 今のところまったくいいところなしだし
“コリーナ”: なんだかスバルさんは、自信ありげな顔をしています
“スバル”: まぁ、色んなゲームをやり込んだしな
“スバル”: ロープレみたいなダンジョンとなりゃ、 それなりに攻略方法を存じてるつもりだよ
“スバル”: 恐らく、ここはどこをどう進んでも行き止まりにたどり着く、 そんな仕様なんだと思う
“スバル”: つまり、“行き止まりだと思いきや実は隠し通路が!” 的なのがパターンなんだよ
“スバル”: 行き止まりには隠し通路なんかがあるって前提で調べれば、 恐らく突破口が見つかるはずだ
“スバル”: 手始めにこの行き止まりで……
“スバル”: って、よく見りゃこんなところにボタンがあるじゃねぇか
“スバル”: ──ということで、ポチっとな
ナレーター: スバルの読み通り、 行き止まりだったはずの場所に輝く渦が姿を現す
“スバル”: な? きっとこの渦は次のエリアにつながってるはずだ
“コリーナ”: これはこれは勉強になります
“スバル”: おうおう 大いに学び、成長しろ
“スバル”: ということで、ダンジョンの攻略は俺に任せてくれ なんとなくコツが掴めたよ
ナレーター: 渦を抜けた先には大きな広間があり、 その中央に大きな石板が置かれていた
ナレーター: その石板に書かれた謎の文章をスバルは解読し、 見事そのエリアも突破して見せる
“スバル”: さてさて次はどんな謎解きが……って 完全に今のところ知恵と勇気で乗り切ってんな
“コリーナ”: 冒険の基本は知恵と勇気です
“スバル”: うーん、冒険じゃなくて、 『異形』狩りをしなくちゃならねぇんだけど……
“スバル”: とはいえ、非戦闘員の俺たちには無理ゲーだし
“スバル”: こんな風に知恵と勇気で乗り切れるなら、 それに越したことはねぇな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_17

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_17話 神引き 更新日:2021/03/30

“スバル”: さてさて、間もなく目的地だ きっとそこにエミリアたんがいる
“コリーナ”: どうしてそのようなことがわかるのでしょう?
“スバル”: まぁ、長年の勘って感じかな このエリアをクリアすればゴールって匂いがぷんぷんしてるんだよ
“コリーナ”: それではもう冒険は終わりなのですね……
“コリーナ”: スバルさん、引き返しましょう!
“スバル”: 待て待て! そんな余裕はねぇよ!
“スバル”: それに、これは遊びじゃねぇんだ
“スバル”: ゲームだったら、失敗したらセーブポイントからやり直せるけど、 現実じゃそうもいかねぇだろ
“スバル”: このまま最後まで突き進むのがベストだ
“スバル”: それに……
“コリーナ”: “それに”なんでしょう?
“スバル”: いや、やっぱやめとくわ 言葉には力があるっていうし、あんま口にしない方がよさそうだ
“コリーナ”: なるほど ここまで順調すぎる だからこの先には大きな危険が待ち受けているに違いない
“コリーナ”: スバルさんはそう言いたいのですね?
“スバル”: ああ、そうだよ! でも、俺がわざわざ飲み込んだ台詞、 そうやって言わないでくれる?
“スバル”: それに俺は“違いない”なんて断定するつもりはなかったよ “かもしれない”ぐらいのニュアンスで言うつもりだったんだ
“コリーナ”: スバルさん
“スバル”: なんだよ?
“コリーナ”: 危険は最高のご褒美です
“スバル”: 違うわ! そんなご褒美、俺は遠慮してぇよ!
“コリーナ”: ですが──
ナレーター: 突然辺りを白い光が包み込み
“異形”: ウガガガガァァーーーッ!
ナレーター: この世のものとは思えない咆哮が周囲の空気を震わす
“コリーナ”: 待ちに待った危険のおでましです
“スバル”: クソっ! とっととここを抜けてりゃこんなことには……
“コリーナ”: 過ぎた時間は戻らない 先程スバルさんはそう言っていました
“スバル”: ああ、言ったよ でも、お前にそう言われるとちょっとカチンとくるかな
“スバル”: そもそもお前が引き返そうなんて言い出したせいで、 時間を浪費しちまったんだし
“コリーナ”: この期に及んで他人のせいにするなんて、 みっともないですよ、スバルさん
“スバル”: そ、そうかな!? 俺、正論を言ってるだけだよね?
“スバル”: とにかく、あいつをかいくぐって向こうへ抜けねぇと……
ナレーター: スバルたちの行く手を阻む『異形』 その『異形』の向こう側に次のエリアにつながる例の渦が見える
“異形”: ウガガガガァァーーーッ!
“スバル”: 俺たちに『異形』が倒せるのか……?
“スバル”: いやいや、俺もコリーナも非戦闘員 力でどうにかするのは無理だ
“スバル”: それじゃ、どうする?
“スバル”: 考えろ、考えるんだ……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_18

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_18話 慢心が招く危機 更新日:2021/03/30

ナレーター: 膨張した『禁書』のページに吸い込まれた エミリアやレムを追って
ナレーター: ページに飛び込んだスバルは、そこでコリーナと再会した
ナレーター: その後、ページ内の亜空間をコリーナとともに進んだスバルは、 突如出現した『異形』に行く手を阻まれ、窮地に立たされてしまう
“異形”: ウグググ……っ
“コリーナ”: スバルさん
“スバル”: どうする…… どうすりゃいい……
“コリーナ”: スバルさん
“スバル”: 確かに…… いや…でも…………
“コリーナ”: あ! あんなところに可愛い猫ちゃんが! モフモフしたら気持ちよさそうですよ!
“スバル”: マジかよ!? どこどこ!?
“スバル”: って、おい! んなわけねぇだろ!
“スバル”: 思わず反応しちまった俺も俺だが、 つくならもうちょいまともな嘘をつけよ、コリーナ
“コリーナ”: コリーナはこの場を和ませたかっただけです スバルさんがとても怖い顔をしていましたので
“コリーナ”: ですが、効果はありませんでした…… スバルさんは未だに怖い顔を……
“スバル”: いやいや、俺の目つきのせいだから!
“スバル”: 心がウキウキ踊ってるときでも、 よく“怒ってるの?”って聞かれちまうんだよ、俺は!
“スバル”: にしても、いい度胸してんな、お前 この状況で場を和ませようとするなんてよ
“コリーナ”: 深刻な雰囲気は性に合いませんので
“コリーナ”: それに、コリーナは名案を思いつきました
“スバル”: ほうほう んで、その“名案”ってのは? コリーナ、聞かせてくれ
“コリーナ”: はい コリーナは囮になろうと思います
“スバル”: はあ?
“コリーナ”: あの『異形』とかいう化け物をコリーナが引き付けますので、 その隙にスバルさんは向こうの渦へ飛び込んで先を急いでください
“スバル”: いやいや、待て待て 女の子にそんな危険なマネさせられるわけねぇだろ
“スバル”: 囮になるなら俺の方だ
“コリーナ”: スバルさんは、 いち早くエミリアさんのところに辿り着きたいのでは?
“スバル”: そりゃ、そうだけども けど、コリーナが犠牲になるのはナシだ
“コリーナ”: コリーナは犠牲になどなりません コリーナが超冒険者だということをお忘れですか?
“スバル”: どうして突然“超”が付いた? そもそも“超”冒険者なんてこと、俺は初耳だ!
“コリーナ”: ということで、コリーナは大丈夫です 安心してください
“スバル”: 全然説明になってねぇ! しかも安心する要素が一個も見当たらねぇんだけど!
“コリーナ”: ……では!
“スバル”: あ! コリーナ! お前──
ナレーター: 突如『異形』に向かって駆け出すコリーナ
“異形”: ウガガガァーーッ!
ナレーター: 『異形』もコリーナの動きに呼応するように、 彼女をめがけて突進を開始するのだった
ナレーター: そして──
“コリーナ”: ついてきてください!
ナレーター: コリーナは反転すると、 先程スバルたちが出てきた方の渦に向かって走り始める
“異形”: ウガガガガガァァーーーッ!
ナレーター: 脇目も振らずコリーナを追う『異形』
“コリーナ”: スバルさんは先を急いでください! コリーナの勇気ある行動を無駄にしてはダメです
“スバル”: おい! バカ! コリーナ!
ナレーター: コリーナは渦に飛び込み、 彼女の目論見通り『異形』もそれに続いた
ナレーター: ……そして、訪れる静寂
“スバル”: 嘘だろ…… コリーナお前……
ナレーター: 水を打ったような静けさの中で、スバルの声だけが響く
“スバル”: 嘘だよな、こんなの…… こんなのって…… なぁ、コリーナ……
“スバル”: ──コリーナーーーッ!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_19

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_19話 相棒 更新日:2021/03/30

ナレーター: コリーナの行動を無駄にしないためにも、 スバルは先を進むことを決断した
“エミリア”: …………
“スバル”: ──エミリアっ!
ナレーター: スバルがたどり着いた先には、意識を失ったエミリアがいた
ナレーター: レムやパックの姿は見えない そして──
“異形”: ウグググ……っ
ナレーター: エミリアのすぐ傍で『異形』が彼女を狙っている
“スバル”: ヤバい…… なんとかエミリアを助けねぇと……
ナレーター: 一歩
ナレーター: 一歩と
ナレーター: エミリアとの距離を詰めるスバル
ナレーター: だが──
“異形”: ウガガガガァァーーーーッ!
ナレーター: 無常にも『異形』がエミリアに喰らいつこうとする
“スバル”: ──エミリアーーーッ!!
ナレーター: 気が付くとスバルは、危険を顧みず駆け出していた
ナレーター: エミリアと『異形』の間に飛び込み、 エミリアを庇うようにスバルは『異形』の前に立ちはだかる
ナレーター: 死を覚悟したスバルには、 すべてのことがスローモーションのように見えた
“スバル”: (くそ…… 思わず体が動いちまったけど、 俺にできることはこうやって命を張るぐらいだ……)
“スバル”: フェネ…… お前がここにいてくれたら……
“スバル”: 俺が余計な一言を言わなきゃ……
“スバル”: もっと真剣に『禁書』のページのことを考えてりゃ、 こんなことにはならなかったのに……
“異形”: ウガガガァーッ!
ナレーター: 『異形』の攻撃がスバルに迫り
ナレーター: スバルは目を閉じて最後の瞬間を待つ
“スバル”: フェネ…… できればちゃんとお前には謝りたかったよ……
“異形”: うぎゃぁーーっ!!
“フェネ”: やれやれですね、スバル氏 最後の言葉がフェネに向けられたものとは
“フェネ”: 後から、やはりエミリア女史にするべきだったと 後悔しても知りませんよ
“スバル”: フェネ! お前! 倒したのか?
“異形”: ──ウグググッ!
“スバル”: って、倒せてねぇ!?
“フェネ”: 当たり前です フェネは攻撃特化型ではありません 怯ませて僅かに時間を稼いだにすぎません
“フェネ”: ですが──
“スバル”: 反撃開始だぜ、相棒!
“フェネ”: スバル氏、フェネが援護します
“スバル”: ああ! あのウルガルム戦みたいな感じで、 やってやりゃいいんだよな?
“フェネ”: 左様です
“フェネ”: では、スバル氏──
“スバル”: くたばれ、このやろーーーっ!!
“異形”: うぎゃぎゃぎゃーーーーっ!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_20

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_エピローグ いちばん大切な存在 更新日:2021/03/30

ナレーター: フェネの登場でなんとか『異形』を倒したスバルは、 ページ内から脱出することができた
ナレーター: 気を失ってはいるもののエミリアも無事に生還し、 ページ内で行方がわからなくなっていたレムとも再会を果たす
ナレーター: だが、コリーナの姿だけはどこにも見当たらなかった
“エミリア”: …………
“スバル”: レム、エミリアたんは眠ってるだけなんだよな?
“レム”: はい 間もなくお目覚めになるはずです
“スバル”: そうか、よかった……
“フェネ”: では、スバル氏 フェネはこれから仕上げを──
“スバル”: ちょっと待ってくれ、フェネ
“フェネ”: ……待てとは? ページを封じねば『異形』の脅威は去りません
“スバル”: それはわかってる わかってるけども、 ページの中にはまだコリーナがいるかもしれねぇんだ
“フェネ”: それは考えられません 主たる『異形』を倒した時点で吐き出されたはず
“フェネ”: コリーナ女史もすでにページを出ていると推測します
“スバル”: けど、どこにも見当たらねぇぜ?
“フェネ”: ただ単に立ち去っただけなのでは?
“スバル”: 確かにあいつはなかなかの素早さだったけど、 挨拶もなしで立ち去ったりするかな?
“スバル”: って、あいつの場合はいつもそうか……
“スバル”: けど… いや… でも……
ナレーター: ひとりぶつぶつと呟くスバルをよそに、 フェネは淡々と仕上げの作業を進めてしまう
“スバル”: やっぱコリーナが心配だ もう一度ページの中に──
“レム”: スバルくん すでにページはフェネさんが……
“スバル”: ホントだ!? まだコリーナが中にいたらどうすんだよ!
“レム”: レムもそのコリーナさんという方はページを出ていると思います
“レム”: その確信がなければ、 フェネさんはページを封じたりしないはずです
“スバル”: 確かに……
“エミリア”: ス…バル……
“スバル”: おわ! エミリアたん!
“エミリア”: 私……
“スバル”: ページに吸い込まれて、気を失ってたんだよ
“スバル”: でも、目覚めてくれてよかった エミリアたんにもしものことがあったら俺……
“エミリア”: 私…ページに入って…それで…… 確か…声が聞こえて…… ええっと……
“スバル”: いいよ、エミリアたん、無理に思い出さなくても
“スバル”: とにかくエミリアたんが無事なら、それで十分だ
“レム”: エミリア様、申し訳ありませんでした
“レム”: ロズワール様からエミリア様をお守りするよう言われていたのに、 レムは……
“エミリア”: ううん レム、私は大丈夫 だから、ね
“レム”: ですが……
“エミリア”: レム、本当に気にしないで 私、なんともないから
“エミリア”: ……でも、私が気を失っていた間に起こったことは色々聞きたいわ スバル、レム、話してもらえる?
“スバル”: ああ、もちろんだ
“スバル”: けど、日が暮れてちょっと冷えてきたし、 詳しい話は宿に戻ってからすることにしていいかな?
“レム”: レムもスバルくんの意見に賛成です
“レム”: ロズワール様とも、 はぐれた場合は宿で落ち合うことになっていますし
“レム”: いったん宿に戻りましょう
“スバル”: ──と宿にきてみたもののロズワールの姿は見当たらねぇな
“レム”: ロズワール様は色々とお忙しくされているのでしょう
“スバル”: ああ、そうだな マジで“色々と”忙しくしてそうだぜ
“スバル”: どんなことで忙しくしてるかはだいたい察しはつくし、 ひとまず詳しい情報共有を始めてもいいかな?
“エミリア”: ええ、お願い 私はほとんど聞く側になっちゃうと思うけど……
“スバル”: それでオーケーだ、エミリアたん
“スバル”: エミリアたんが話を聞いてくれるだけで、 俺にとってはパラダイスなんだから
“エミリア”: ごめん、スバル ちょっとなに言ってるかわからない
“スバル”: ええっと、“パラダイス”ってのは……って、まぁ、いいよ
“スバル”: それに、エミリアたんが申し訳なさそうにしてると──
“レム”: エミリア様、本当にすみませんでした……
“スバル”: レムがこうなっちまうんだよ
“スバル”: だから、な エミリアたんは気にせず俺たちの話を聞いてくれ
“エミリア”: わかった そうさせてもらうわね
“エミリア”: それでね、スバル まずはスバルとフェネのことが聞きたいの スバル、なんだか様子が変だったもの
“スバル”: う、うぐっ!? いきなり俺のハートを打ち抜くとは、 さ、さすがエミリアたんだぜ……
“スバル”: け、けど、その話は後回しにしよう むしろしなくてもいいぐらいかな あは…はは……
“フェネ”: スバル氏、どうやら都合が悪いことは、 何一つお話しされていないようですね さすがクソ上司
“フェネ”: ですが、ここはいったんその話はおいておくことにしましょう
“スバル”: マジでいいのか?
“フェネ”: スバル氏が心から反省していることは先程確認できましたので、 現時点では何も言わないでおきます
“スバル”: “現時点”ではってなに!? それっていつか言う気だよね!
“フェネ”: それはスバル氏次第です 
“スバル”: お前って確か、記憶喪失のくせに、やけに記憶力はよかったよな?
“フェネ”: 左様です フェネが忘れるなどということは期待できません あしからず
“スバル”: わかったよ 色々と改めさせてもらう それでいいだろ?
“フェネ”: ええ スバル氏にその他の選択肢はありません
“フェネ”: ということでスバル氏 さっそくですが──
“フェネ”: スバル氏は、エミリア女史のこととなると 後先見えなくなってしまうあの症状を改善してください
“フェネ”: 先程もフェネが間に合わなければ、 スバル氏は確実に死んでいました
“レム”: ──!
“エミリア”: ……スバル、本当?
“スバル”: フェネ、お前! ここでわざわざ言わなくてもいいだろ!
“フェネ”: いえ、エミリア女史もレム女史もいる場だから、 言う意味があるのです
“フェネ”: そもそも、情報を共有するこの場で言わないでどうするのです?
“エミリア”: フェネの言う通りよ 教えてくれてありがとう、フェネ
“フェネ”: フェネは当然のことをしたまでです
“フェネ”: エミリア女史もレム女史も、 スバル氏のことが気になっていると思いましたので
“レム”: はい、レムもとても気になっていました やはりスバルくんは危険な目に……
“レム”: スバルくん、すみません レムがもっとしっかりしていれば……
“スバル”: いやいや、レムは悪くないから
“スバル”: けど、あのときはああするしかなかったんだ 『異形』が気を失ってるエミリアたんを……
“エミリア”: だとしても、スバルが危険な目にあっても いいということにはなりません
“スバル”: けど、俺の勇気ある行動があったから、 今、エミリアたんは無事なわけで……
“フェネ”: それは違います すべてフェネのおかげです
“フェネ”: スバル氏は後先考えずに、危うく犬死しかけただけです
“フェネ”: にもかかわらず“勇気ある行動”とは、 呆れてフェネには言葉がありません
“フェネ”: 重要なことなので繰り返させていただきますが、 エミリア女史が助かったのはフェネのおかげです
“フェネ”: 手柄の横取りはやめてください クソ上司
“スバル”: “言葉がない”ってわりによく喋るな!?
“スバル”: でも、確かにそうだ フェネのおかげだよ 俺はフェネへの感謝で胸がいっぱいだ
“スバル”: これでいいか?
“フェネ”: あと、無謀な行動に対する反省と 今後についての誓いも必要でしょう
“スバル”: 後先考えず、飛び出したことは反省してる 今後はこのようなことがないよう努める所存だ
“エミリア”: スバル、今後は気を付けてね いい?
“スバル”: ああ、気を付けるよ
“スバル”: けど……
“フェネ”: この期に及んで“けど”とは、 本当にスバル氏は救いようがありませんね
“スバル”: 俺にとって一番大切なのはエミリアたんなんだ やっぱりそこは変わらねぇよ
“エミリア”: ロズワール おかえりなさい
“レム”: おかえりなさいませ ロズワール様
“ロズワール”: やあ、皆無事で何よりだ フェネくんも合流できたようだあーぁね
ナレーター: その後ロズワールは簡単な報告を受けると またすぐに宿をあとにしてしまった
“スバル”: 戻ったと思ったらもういっちまいやがった……
“スバル”: そもそもあいつ、何しに戻ってきたんだ? 俺の話の腰を折っただけじゃねぇか
“フェネ”: むしろフェネには、 スバル氏を救った救世主のように見えましたが
“フェネ”: あのようなことを言われて、エミリア女史が喜ぶとでも?
“スバル”: そ、それは……
“スバル”: けど、俺にはエミリアがすべてだ そこはどうしたって変えられねぇよ
“スバル”: 俺の真ん中にはエミリアがいて、 俺はエミリアのためならなんだってやる
“スバル”: 例え危険なことでも俺は……って、フェネ?
“フェネ”: …………
“スバル”: おい、フェネ、どうした?
“フェネ”: ……いえ、なんでもありません
“スバル”: そんな風には見えなかったけど…… まぁ、深くは聞かないでおいてやるよ
“スバル”: でも、お前も黄昏たりすんだな
“スバル”: もしかして、俺のエミリアたんへの揺るがぬ思いに ぐっときちゃってたりして?
“フェネ”: …………
“スバル”: って、マジかよ!?
“フェネ”: 違います、スバル氏 その逆です 呆れて今度こそ言葉がなかっただけです
“フェネ”: だいたいスバル氏は大きなチャンスを前に、 いったい何をしていたのです?
“フェネ”: エミリア女史は気を失い、『異形』の脅威に晒されていました
“フェネ”: 華麗に解決をしていれば、エミリア女史の スバル氏に対する評価は大きく見直されていたでしょう
“フェネ”: にもかかわらず、スバル氏は最悪の選択をしました
“スバル”: お前がどうしてチャンスって言葉を?ってのはさておき、 確かに、何個か選択を間違えたな
“スバル”: もしやり直せるのであれば、 俺の行動のいくつかは変更したいところだ
“フェネ”: ちなみに、もしやり直せるのであれば、 スバル氏はどの行動を変更するのでしょう?
“スバル”: まず、あのときにお前に謝るかな あと、余計な一言も言わないように気を付けると思う
“スバル”: なんだかんだ、お前のおかげだ、色々と ホント、お前と別れてからそのことを痛感させられたよ
“フェネ”: なるほど それで、他には?
“スバル”: あとは、オットーとコリーナをガナクスの手前で引き返させた
“スバル”: 足がないから、どうしてもあいつらには 同乗させてもらわなきゃなんねぇけど
“スバル”: 必要最小限に留めたと思う
“スバル”: オットーの地竜にはなんだか悪いことしちまったし、 コリーナも巻き込んじまった
“スバル”: お前がガナクスに向かった時点で、 そういう可能性が濃厚だってのに、ちょっと迂闊だったよ
“スバル”: それに、もしページに飛び込む直前からのやり直しだとしたら、 俺はロズワールを探したよ
“スバル”: 俺一人で飛び込んでも、ユリウスみたいにはいかねぇ 戦える誰かと一緒じゃねぇと
“スバル”: もし、あの場にロズワールがいたら、 俺は命を張る必要もなかっただろうよ
“フェネ”: “命を張る”という表現は美化しすぎです スバル氏は犬死をしようとしていただけですので
“スバル”: うぐっ…… あ、明日から剣の稽古でも始めようかな……
“スバル”: ……って、ちょっと待て
“スバル”: エミリアとレムは一緒にページに吸い込まれたはずだ
“スバル”: なのに、レムとエミリアは離れ離れになってた……
“フェネ”: つまり、これまでは同時に吸い込まれた皆様は、 同じ場所に転移していましたが
“フェネ”: それはたまたまだったということでしょう
“スバル”: ──なっ!?
“フェネ”: ページからすると、吸い込んだ相手を 同じ場所に転移しなければならない理由がありません
“スバル”: 同時に吸い込んでもバラバラに転移させることが、 ページには可能ってわけか?
“フェネ”: 現実はそうでした その現実を受け入れるべきです
“スバル”: あのときロズワールと一緒に飛び込んでも、 俺たちはバラバラにされてたかもしれねぇってことか
“フェネ”: 左様です
“スバル”: だとしたら、エミリアたんの評価を 大幅に改めさせるなんてこと不可能だろ
“スバル”: って、フェネ、一個聞いてもいいか?
“フェネ”: なんでしょう、スバル氏
“スバル”: どうしてあのとき、あんな都合よくお前は現れたんだ?
“フェネ”: 都合よく現れたわけではありません フェネはスバル氏のすぐ近くにおりましたので
“フェネ”: スバル氏はフェネの目的をお忘れですか?
“フェネ”: フェネにはページを集め、 『禁書』に封じるという崇高な任務があります
“フェネ”: その目的を遂行するために、あの状況で目指す場所は一つ あの場所にフェネがいてもなんら不思議ではありません
“スバル”: だったら声かけてくれよ!
“スバル”: 確かに俺もエミリアたんに気を取られて、 あんま周囲が見えてなかったけど!
“スバル”: なるほど、一番ライトな変更は、 あの場で注意深く周囲に目を配ればよかったわけだ
“スバル”: だからお前は、あんな質問をしたんだな?
“エミリア”: さっきから、スバルもフェネも二人で何を話してるの?
“レム”: そうです、スバルくん 二人でひそひそ話すのであれば、ぜひレムと一緒に……
“スバル”: いやいや、分かれてた間の情報共有をちょっとしてただけだ
“エミリア”: だったら、なおさら私たちも一緒に聞かないと
“スバル”: 確かにそうなんだけども、 軽く話すつもりが、意図せず込み入った話になっちゃったんだよ
“スバル”: だから、焼きもちを焼く必要はないよ、エミリアたん
“エミリア”: ええっと、どうしてスバルとフェネが二人で話してると、 私が焼きもちを焼くの?
“スバル”: うぐっ……
“レム”: スバルくん、大丈夫ですか? なんだか顔色が悪いです
“スバル”: 予想した返しではあったんだけど、思いのほかダメージが……
“スバル”: 少しぐらい焼きもちを焼いてくれるんじゃって期待が、 俺の心にはあったみたいだよ
“レム”: スバルくん、レムは焼いていますよ フェネさんも女性なので
“スバル”: フェネが女性……
“スバル”: って、さらっと今とんでもワードが飛び出さなかった?
“レム”: “とんでもわーど”というものはわかりませんが、 レムが言った“フェネさんが女性”を指しての言葉であれば
“レム”: フェネさんは女性です
“レム”: スバルくんも知ってて“焼きもちを焼く”という表現を 使ったのだと思ったのですが……
“スバル”: いやいや あれは軽い冗談だ フェネが女の子だなんてちっとも知らなかったよ
“フェネ”: スバル氏 本気でそう言っているのですか?
“スバル”: ああ ってか、みんなは知ってたのか?
“エミリア”: ええ 見ればわかるじゃない
“スバル”: わからないかな!? 俺、一目で精霊の性別がわかるほど、 まだこの世界に馴染んでないし!
“フェネ”: スバル氏 いいえ、クソ上司
“スバル”: どったの、フェネ? 顔が怖いよ?
“フェネ”: フェネの性別を知ってその驚きよう つまりスバル氏はフェネの性別を誤って認識していたのですね?
“スバル”: いや…それは……
“フェネ”: あってはならないことです、スバル氏 よりにもよってフェネを女性と認識していなかったとは──
“フェネ”: フェネはえらく傷つきました もう、実家に帰らせていただきます
“スバル”: いやいや、“実家”ってそもそもお前は記憶喪失だろ? どうやって──
“フェネ”: 最悪です、スバル氏
“フェネ”: フェネを引き留めるチャンスだったにもかかわらず、 よりにもよって揚げ足を取ることを選ぶなんて……
“スバル”: ごめん! 俺が悪かった! 数々の無礼、頼むから許してくれ!
“スバル”: もう、お前と別れるのはこりごりだよ!
“スバル”: だから、な、フェネ! お願いだから、俺を置いていかないでくれ!
ナレーター: 遥々ガナクスへやってきたものの スバルたちが回収できたページは一枚……
ナレーター: この世界にはまだまだ『禁書』のページが残されている──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_00

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_プロローグ_00_姫様の御守(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: 鉱山都市ガナクスでの『禁書異変』を解決したスバルは、 その数週間後エミリアとともにクルシュの元を訪れていた
“クルシュ”: しばらくだったな、エミリア、ナツキ・スバル
“エミリア”: こんにちは、クルシュさん ごめんなさい、色々あってなかなか報告にこられなかったの
“クルシュ”: ほう…… 色々と、か
“スバル”: ああ 一言で言うとエミリアたんが言ったみたいに “色々と”ってことになる
“スバル”: けど、協力関係にあるクルシュさんには、 もちろんその内容を詳しく共有させてもらうよ
“スバル”: 少し長くなるけど、構わないか?
“スバル”: 今日はちょっとってなら、日を改めるぜ しばらく俺たちは王都にいるつもりなんでね
“クルシュ”: いや、長くなっても構わない
“クルシュ”: 卿らの訪問は事前にわかっていたことだ 十分な時間を確保してある
“スバル”: そうか それじゃ、俺から──
“エミリア”: スバル、大丈夫? ちゃんとクルシュさんにお話しできる?
“エミリア”: レムもフェネもいないでしょ スバルが不安なら、私から話してもいいわよ
“スバル”: 大丈夫だよ、エミリアたん ここは俺に任せてくれ
ナレーター: それからスバルは、順を追って丁寧に これまでに起こったことをクルシュに話して聞かせる
ナレーター: 中でもクルシュが興味を持ったのは、 ガナクスでの一件についてだった
“クルシュ”: 報告感謝する、ナツキ・スバル
“クルシュ”: だが、ルグニカの最北といえるガナクスにまで…… これは由々しき事態だな
“クルシュ”: やはり、ページは想像以上に 広範囲に四散していると考えるべきだろう
“スバル”: 確かにな……
“スバル”: お隣のカララギでも実際に発見されてるわけだし、 同じルグニカとはいえ、ガナクスもかなり離れた場所だった
“スバル”: ガナクスでは一枚しか発見できなかったんだけど、 一枚でもありゃ一大事だ
“スバル”: 捜索の網をかなり広げねぇとならないかもな
“クルシュ”: ナツキ・スバル フェネはなんと言っているのだ?
“スバル”: 特には何も言ってなかったかな……
“スバル”: って、すまねぇ 本当だったらフェネも一緒にくるはずだったんだけど
“スバル”: あいつ見当たらなくて 王都まで一緒にきて、宿も一緒に入ったんだけど
“スバル”: 気付いたらいなくなってやがったんだ
“クルシュ”: いや、構わない フェネにはフェネの事情があるのだろう
“スバル”: 王都滞在の準備があるレムならわかっけど、 あいつにどんな事情があるんだか
“スバル”: あいつの記憶力は確かだから、クルシュさんとの約束の時間を 忘れてたとは考えられねぇし マジ、意味不明だ
“スバル”: だいたいあいつは──
“エミリア”: スバル クルシュさんの前よ
“スバル”: おっと、そうだった! フェネの愚痴を聞かせても仕方ねぇな
“クルシュ”: ああ その手の話は、聞いていてあまり心地良いものではないな
“スバル”: だな 以後気を付けます!
“クルシュ”: それで、卿らはしばらく王都に滞在するのだな?
“エミリア”: ええ そのつもりよ
“エミリア”: クルシュさんへの報告もそうだけど、 しばらくちゃんと王都にはこられてなかったから
“スバル”: それに、ロズワールの屋敷だと色々不便なんだよ どこいくにも遠くてさ
“スバル”: ちゃんと調査しようと思ったら、やっぱ拠点は王都の方がいい
“スバル”: 屋敷からだと、クルシュさんに会いにくるのも 往復でほとんど一日かかっちまうしな
“クルシュ”: そうか 卿らが留まってくれるのであれば心強い
“クルシュ”: だが、ページが広範囲に四散しているのであれば、 そう長くは留まっておれんだろうがな
“スバル”: ああ、確かにな カララギについては、 アナスタシアさんがいるから少しは安心できるけど
“スバル”: それ以外の国についてはまったく手が付けられてねぇ
“クルシュ”: 北のグステコ聖王国に南の神聖ヴォラキア帝国か……
“クルシュ”: 彼の国々にもアナスタシア・ホーシンのような 協力者がいると心強くはあるが
“クルシュ”: 卿らの事情を考えると、あまり多くの者に知らせるべきではないな
“スバル”: うぐっ…… そ、そうなんだよ……
“スバル”: 事情を知る人間が増えれば、 それだけエミリアたんのリスクも増えちまう
“クルシュ”: とはいえ、いつまで秘密裏に動けるか、 現状ではなんとも言えん状況だ
“クルシュ”: 『禁書』のページだが、徐々に存在を知られ始めている 道楽で蒐集を試みる者さえ現れたと聞く
“スバル”: ああ アナスタシアさんからもそんなことを言われたよ 結構いい値で買い取ってくれるらしい
“スバル”: リスクしかねぇってのに、 まったく金持ちの考えることは一般人の俺にはわからねぇよ
“スバル”: アナスタシアさんが手を打ってくれてるから、 ページを売ろうと思ったら
“スバル”: まずはホーシン商会にってことになるらしいけど、 予断を許さない状態であることは確かだ
“スバル”: んで、とりあえず、これまでにあったことは 大方伝えられたと思う
“スバル”: 現状手を付けられていない グステコやヴォラキアって国についても
“スバル”: 調査の手を伸ばす必要があるってことは了解した
“クルシュ”: では、これ以上話すことはなさそうだな
“スバル”: ああ また何かあれば報告にくるよ
“スバル”: クルシュさんもクルシュさんで、 何か新しいことがわかったら報告してくれ
“スバル”: しばらく王都にいるんで これまで以上にまめに連絡を取り合えるはずだ
“フェネ”: スバル氏 クルシュ女史への報告はうまくできましたか?
“スバル”: フェネ! お前、どこいってやがった?
“スバル”: なんとか報告は済ませたけど、 お前がいた方がかなり効率的に話せた気がするぜ
“スバル”: クルシュさんも、お前と話がしたそうだったしな
“フェネ”: スバル氏 フェネはフェネなりに気を遣ったのです
“フェネ”: そのおかげでスバル氏は、 エミリア女史と二人きりの時間を過ごせたのでは?
“スバル”: 確かにそうだけども、 なにもクルシュさんへの報告でそうすることねぇだろ
“スバル”: ただでさえ久々の報告で、 話さなきゃならないことが山積みだったってのに
“フェネ”: であればなおさらです
“フェネ”: その状況でスバル氏が華麗な情報共有を見せれば、 エミリア女史のスバル氏への評価も大きく上がるでしょう
“スバル”: いや… それが……
“フェネ”: その様子だと、あまりうまくできなかったようですね
“フェネ”: せっかくの部下の気遣いを無駄にするとは、 ダメでクソな上司そのものですね
“スバル”: そ、そこまで言う!? それに、お前を部下にした覚えはねぇって!
“スバル”: とにかく、余計な気を遣ったんだとしたら、 それは逆効果だったよ
“スバル”: クルシュさんには、伝えるべきことは伝えられたと思うけど、 お前がいればあの場でもう一歩議論を進められたはずだ
“フェネ”: なるほど…… では、次回はフェネも同行することにします
“フェネ”: ところでスバル氏 エミリア女史の姿が見当たらないようですが?
“スバル”: エミリアたんなら、レムの買い出しを手伝いにいったよ
“フェネ”: 使用人であるスバル氏が宿に戻り、 この国の王になられるかもしれないお方が買い出しに出ていると
“フェネ”: スバル氏はそう言っているのですね?
“スバル”: その確認必要!? そうやって詳らかにされるとなんだか傷つくんだけど!
“フェネ”: 正しく状況を理解するために今の状態を明文化しただけです スバル氏を傷つける意図はありません
“スバル”: 言わせてもらうが、俺が宿に戻ったのは、 お前が戻ってるかもしれねぇからだ
“スバル”: フェネさえ行方不明になってなきゃ
“スバル”: 宿に戻ったのはエミリアたんで レムの買い出しを手伝ってたのは俺の方だったんだよ
“フェネ”: スバル氏はそんなにフェネが恋しかったと? さすがは遥々ガナクスまで会いにきただけのことはあります
“フェネ”: ですが、ストーキングは犯罪です 気を付けてください
“スバル”: ストーキングとは人聞き悪い!
“スバル”: いやいや、その前に、こっちの世界のお前が そのワードを発したことを指摘するべきだったか?
“スバル”: いずれにしてもツッコミどころ満載で、 もはや何にツッコめばいいかわからねぇよ
“スバル”: ……けど、まぁ、会えてよかったぜ、フェネ
“スバル”: またどっかいっちまったんじゃねぇかって マジで心配しちまってたしな
“フェネ”: ざまあないですね、クソ上司
“スバル”: お、お前な!
“スバル”: って、やめやめ! 言い争ってる場合じゃねぇ
“スバル”: とにかく、クルシュさんと話した内容を共有すっから、 聞いてもらっていいかな?
“フェネ”: ──なるほど 確かにページはかなり広範囲に 四散したと推測できます
“フェネ”: 他国 グステコ聖王国や神聖ヴォラキア帝国にも 存在していると考えて間違いないでしょう
“フェネ”: カララギ都市国家についても 王国にほど近いイバダを調査したのみ
“フェネ”: さらに西方にページがないとは言い切れません
“スバル”: 時に、フェネ 『禁書』のページっていったい何枚あるんだ?
“フェネ”: なるほど 当然の質問ではありますが、 現時点では知る必要はないと思われます
“フェネ”: 回収したページに比べ、失われているページは圧倒的に多い それが今の状態です
“スバル”: くっ…… あれだけ苦労してまだそんな状態かよ……
“フェネ”: 左様です 精神衛生的にも、 残りの枚数については、知らない方がよいでしょう
“スバル”: わかった とにかく一枚ずつ集めていくしかねぇ
“スバル”: となれば、じっとしてる場合じゃねぇな
“スバル”: まだまだこの王都にもページが眠ってるかも しれねぇわけだし
“フェネ”: 左様です ページのマナ吸収速度には、個体差があると思われます
“フェネ”: かつては発見できなかったページも、 ある程度マナを吸えば感知できる状態になります
“スバル”: つまり、一度調べた場所でも 足繁く通う必要があるってことだな
“スバル”: ということで、調べに出るぞ、フェネ
“スバル”: 少しでも早くページの回収を終わらせるためにも、 時間は有効に使おう
ナレーター: スバルたちは宿の主人にエミリアたちへの伝言を頼み 王都の調査に出発した
ナレーター: だが、スバルの焦る気持ちに反して 一向にページが見つかる気配はない
ナレーター: 気が付くと日は西に傾いていた
“スバル”: ──クソ! これだけ探して収穫なしかよ!
“フェネ”: スバル氏、落ち着いてください 苛立ちは何も解決しません
“スバル”: わかってる わかってるけども、 どんだけ歩き回ったと思ってるんだ?
“スバル”: さすがにイラっとくるだろ
???: ──んだよ、歩き回っていやがったのか? 道理で見つからねぇわけだ
“スバル”: ──っ!
ナレーター: 背後から聞こえた声に、スバルは思わず身を凍らせる
ナレーター: ここは路地裏 しかも夕暮れ時 決して安全とはいえない
“スバル”: ちっ…… しくった…… ページ探しに夢中で 考えなしにこんな場所にきちまってたぜ……
“スバル”: けど、今はフェネと一緒…… チンピラなんか怖くねぇはずだ
???: おいおい、チンピラってオレのことか? こんな上品なおじ様を捕まえて、そりゃねぇだろ、兄弟
“スバル”: ……兄弟?
ナレーター: スバルが振り返ると、 そこには見覚えがある鉄仮面の男が佇んでいる
“スバル”: ……誰が上品なおじ様だって?
“アル”: おいおい、兄弟の目は節穴か? そんなもんオレに決まってんだろ
“スバル”: 節穴はお前の目だ!
“スバル”: ウチのロズワールも中々だけど、お前の奇抜さも負けてねぇよ! ってか、怪しさだけでいったら完全にお前の勝ちだぜ、アル
“スバル”: この王都において、お前のことを上品だなんて 思ってる奴はいねぇ 俺がそう断言してやるよ
“フェネ”: アル氏への批判と見せかけた、ロズワール氏への巧な陰口 当然のことながら、ラム女史にご報告させていただきます
“スバル”: 待て待て、お前の雇い主って俺なんだよね? どうして雇い主が不利になるようなことすんだよ!
“フェネ”: 愛故にです
“スバル”: それ、愛情表現間違えてるから! わかりやすいストレートなヤツで頼むよ!
“フェネ”: 申し訳ありませんが、スバル氏 フェネは普通の愛ではもはや満足できないのです
“フェネ”: 諦めて受け入れてください
“スバル”: お、お前に何があったの!?
“スバル”: とにかく、その愛を受け入れるのは、俺には荷が重いかな
“スバル”: なんせ、普通の愛でさえ、未経験なんでね!
“アル”: おいおい、ねじ曲がった愛、いいじゃねぇか 四の五の言わずに受け入れてやれよ、兄弟
“スバル”: 他人事だと思って、いい加減なこと言ってるんじゃねぇ!
“スバル”: そもそも、俺には心に決めた女の子がいるんだ ねじ曲がった愛なんて受け入れてる場合じゃねぇって
“アル”: ったく、兄弟はわかってねぇぜ
“アル”: 色々おっさんが語ってやっから、一杯付き合ってもらっていいか? ぼちぼち酒場も開く頃だろ
“スバル”: 全力で断らせてもらう!
“スバル”: ダンディーなおじ様ならまだしも、怪しさ全開のおっさんが なに語ったって入ってくるわけねぇしな!
“アル”: ……オレ、ずいぶんな言われようじゃね?
“アル”: よく考えたら、しょっぱなから、 オレに対する失礼な発言のオンパレードじゃねぇか
“スバル”: その原因が自分にあるって、 そろそろちゃんと自覚した方がいいぜ
“スバル”: おっさん、いい年なんだろ?
“アル”: そこ、真面目に受けてどうすんだよ? 明らかに“愛故に”のチャンスだったじゃねぇか
“アル”: 兄弟が“愛故にだ”って言や、 綺麗にオチがついて優勝間違いなしだったのによ
“スバル”: “優勝”ってなんの話!?
“フェネ”: 左様です、アル氏 フェネのフリが完全に殺されてしまいました
“フェネ”: 審査員のため息が聞こえてきそうです
“スバル”: うぐ…… 完全に俺は置いてけぼりだ…… ただでさえ疲れてるのに、さらに疲れが溜まっちまったよ……
“スバル”: で、アル、お前は俺を探してたんだよな?
“アル”: お! そうだったそうだった ウチの姫さんが──
“スバル”: 断る!
“アル”: おいおい、人の話は最後まで聞くもんだぜ それぐらい、学校で習っただろ
“アル”: といわけで、ウチの姫さんが──
“スバル”: さらっと話を続けようとしてんじゃねぇ!
“スバル”: お前はもちろんだけど、 お前の姫様の方にはもっと関わりたくねぇんだ
“スバル”: って、ちょっと待て……
“スバル”: お前、俺を探してたんだよな? どうして俺が王都にいるってわかったんだ?
“スバル”: 色々あって、割と久々の王都だぜ、俺は
“アル”: そんなことが気になっちゃうようじゃ、 ウチの姫さんとはうまくやってけないぜ
“アル”: こちとら兄弟が王都にいることは、 折り込み済みだったんでな
“アル”: こうやって会えることもわかっちゃいたんだが
“アル”: 兄弟が歩き回ってたせいで、 思いのほか苦労させられちまったよ
“スバル”: ……お前、大丈夫か? 外見だけじゃなくて頭の中も……
“スバル”: って、実際、アルは俺に会えてるんだよな……
ナレーター: 思わずスバルは考え込む
ナレーター: 今日こうして王都でこの男と巡り合う可能性は、 限りなくゼロに近いことは確かだ
“アル”: まぁ、小せぇことは気にするなよ、兄弟
“スバル”: 小さくないわ! これがどんだけ奇跡的な状況かわかってんのか?
“スバル”: どうしてそんなことが……
“アル”: 愛故にだ、兄弟
“フェネ”: お見事です、アル氏
“アル”: あったりめぇよ オレが“愛故に”のチャンスを逃すわけねぇだろ
“アル”: っと、綺麗にオチたところで、いくぜ、兄弟 なんせ、ウチの姫さんが兄弟を待ってるんでな
“アル”: それに──
“アル”: 姫さんが持ってる妙な紙切れに、兄弟は興味あんだろ?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_01

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_01_『禁書』の芸術性(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: わざわざ竜車で移動か? 姫様の屋敷ってのはそんなに遠いのかよ?
“アル”: いや、十分歩ける距離だ けど、おっさん疲れちまってよ
“アル”: 兄弟だって、疲れてるんじゃねぇのか? 色々と王都を歩き回ってたみたいだしよ
“スバル”: まぁ、確かに疲れてるな 楽に移動できるのはすげぇ助かるよ
“スバル”: ただ…… できればもうちょいシンプルな竜車がよかったけどな
“スバル”: 車内にいても、外からの冷たい視線を感じるぜ
“スバル”: こんな悪趣味な竜車が通りゃ、 俺だってきっと冷たい視線を向けちまうよ
“アル”: まぁ、気にしねぇことだ いちいち周囲の目を気にしてちゃなんもできなくなっちまう
“スバル”: いやいや、お前やお前の姫様はもうちょい気にしろ! お前らはゴーイングマイウェイ感が半端なさすぎるんだよ!
“スバル”: 俺の心の広さでなんとかコミュニケーション取れてっけど、 普通なら相手にしてもらえねぇかんな
“フェネ”: スバル氏の心が広いとはなんの冗談でしょう?
“フェネ”: スバル氏の心の広さは、 三畳一間に風呂トイレなしほどとフェネは推測します
“スバル”: 誰の心が三畳一間で風呂トイレなしだ! いったいどこの安アパートだよ、そりゃ
“スバル”: って、またまたこっちの世界じゃ出そうもねぇ表現だな それも俺の顔に?
“フェネ”: はい スバル氏の顔に書いてありました
“アル”: あー、確かに書かれてるな しかもかなり滞納してるみてぇだ
“アル”: そんな安アパートでも、 ちゃんと家賃を払わねぇと追い出されちまうぜ、兄弟
“スバル”: もはやなんの話だよ!?
“スバル”: アルも、フェネの発言にいちいち悪乗りしてんじゃねぇ!
“アル”: おいおい、おっさんは、兄弟の心の広さを わざわざ測ってやったんじゃねぇか
“アル”: 結果は残念だったけどな
“フェネ”: やはり、フェネの推測は正しかったと?
“アル”: ああ お前さんの推測通りだったよ ありゃ、確かに三畳一間程度だな
“スバル”: お、お前らな……
“スバル”: にしても、アル お前も俺の顔に 書いてあることが読めたりするのか?
“スバル”: こっちの奴らには通じねぇようなワードを お前はわかってる感じがすっけど?
“アル”: ああ、ちょっとな
“アル”: 今は秘密のベールに包んどくが、 いつかそのときがきたら話してやるよ
“アル”: それまで、乞うご期待だ、兄弟
“スバル”: 別に期待なんかしねぇよ おっさんになんて興味ねぇしな
“スバル”: なんていう軽口はさておき、さっきの話、本当なんだろうな?
“アル”: ああ、本当だ 兄弟の心はかなりせめぇよ
“スバル”: そっちの話じゃねぇ!
“スバル”: プリシラの奴が、 俺が興味を持ちそうな紙切れを持ってるって方だ
“スバル”: 俺が嫌々ながらもお前に付き合って竜車に乗ったのは、 その紙切れに興味があったからだ
“スバル”: もしその話が嘘ってんなら、今すぐにでも竜車を降りさせてもらう
“アル”: 待て待て、本当だから安心しろよ、兄弟
“アル”: しかもその紙切れには相当な価値があるらしい
“アル”: 偶然姫さんが手に入れた紙切れなんだが その紙切れほしさに、数日通い詰める奴まで出た始末だ
“アル”: そいつは結構な金額を提示したんだけどよ、 ウチの姫さん、金じゃ動かねぇからな
“アル”: 今もちゃんと姫さんの手元に残ってるぜ
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: ああ、高値で取引されるってのはやっぱホントみてぇだ……
“スバル”: とにかく、プリシラから回収する方法をなんとか考えねぇとな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_02

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_02_邂逅の理由(仮) 更新日:2021/06/30

“プリシラ”: ──おい、凡愚 貴様何しにきた? 胴と首が繋がっている間にとっとと失せよ
“スバル”: はぁぁぁーーっ!?
“プリシラ”: 聞こえぬか、凡愚 妾は失せろと言ったのだ いつまでそこにおるつもりじゃ?
“スバル”: いやいやいや、待て待て!
“スバル”: ほとんど強引につれてこられたと思ったら、これか? 納得できねぇどころの話じゃねぇぞ!
“スバル”: お前、俺に会いたかったんだよな?
“アル”: わりぃ、兄弟 姫さん、完全に興味なくしてるみたいだわ
“アル”: “鉄は熱いうちに打て”って言うだろ? 兄弟を見つけるのに、ちと時間がかかっちまったからな……
“アル”: まぁ、しゃあねぇよ 土下座でもなんでもして、姫さんの気分を変えてくれ
“スバル”: ど、どうして俺が!?
“スバル”: だいたい、おっさんが俺を連れてきたんだろ? どうにかするのは俺じゃなくて──
“フェネ”: プリシラ女史 ご無礼をお許しください
“フェネ”: この者は後できつく叱っておきますので、 どうか我々にお時間をいただけないでしょうか?
“プリシラ”: ほう…… 貴様は心得ているようじゃな
“プリシラ”: では、あの凡骨の命と引き換えに、貴様には妾の時間をやろう
“フェネ”: ありがたき幸せ とういことでスバル氏、ここは潔く──
“スバル”: 待て待て! この前もそうだったけど、 俺の命が軽く扱われすぎじゃねぇ?
“プリシラ”: 安心せい 妾も骨ぐらいは拾ってやる
“スバル”: そういう心配はしてないかな!?
“スバル”: てか、もしそんなことになったら、 むしろお前にだけは拾ってほしくねぇよ!
“プリシラ”: ほう…… 骨さえも残らぬ、完全な消滅を所望か
“スバル”: 違うわ! そんなオーダー出してねぇだろ!
“スバル”: 話せば話すほど認識のずれが大きくなるって、 どんだけコミュ障なんだよ、お前!
“プリシラ”: アル “こみゅしょう”とはなんじゃ? 説明せい 貴様も知っているのであろう
“アル”: おっと、そうなっちゃう? まぁ、知ってるは知ってるんだけどよ……
“アル”: ったく、兄弟のせいでとんだとばっちりだぜ 難解ワードぶっこむ前に、ちっとは考えろよ
“スバル”: とばっちりは、完全に俺の方だよね!
“スバル”: 会いたいって呼び出された相手から、 今や跡形もなく消滅しろって言われてんだぞ!
“スバル”: だから、関わり合いたくねぇって言ったんだ……
“スバル”: お前も大概だけど、あの姫様は、 俺が知るなかでもナンバーワンだよ
“プリシラ”: おい、凡愚 妾は“ナンバーワン”か?
“スバル”: ああ、ぶっちぎりでな
“プリシラ”: アル
“アル”: ああ、姫さん、“ナンバーワン”ってのは一番すげぇってことだ 兄弟は、姫さんがぶっちぎりで一番すげぇって言ってる
“アル”: ということで姫さん 兄弟に死んでもらうのは、もうちょい後にしてもらっていいか?
“アル”: 兄弟が言う通り、姫さんが呼び出したから 兄弟はここにきたんだ
“アル”: 客人はそれなりにもてなしてやるのが、礼儀ってもんだろ
“プリシラ”: 黙れ 道化の分際で図に乗るでない 貴様に意見など許した覚えはないわ
“プリシラ”: ……だが、気が変わった よかろう この凡愚の首は繋げておいてやる

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_03

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_03_『禁書』と遺作(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: プリシラと会った直後にひと悶着あったものの、 話はようやく本題に入ろうとしていた
“プリシラ”: ──して凡愚、妾に何用じゃ
“スバル”: 呼び出されたのは俺の方なんだよ! てなことを今さら言っても仕方ねぇ空気だな
“フェネ”: 左様です、スバル氏
“フェネ”: こうして命ある状態でプリシラ女史のお話が伺える 今はそのことに感謝するべきかと
“スバル”: お前って、マジであの姫様とうまくやれそうだよな
“スバル”: ラムといい、プリシラといい、俺の難敵が ことごとく得意キャラって、すげぇ神経の持ち主だぜ
“フェネ”: お褒めの言葉と受け取っておきます
“スバル”: いやいや、褒めてはねぇよ むしろ──
“フェネ”: スバル氏 今は無駄口をたたいている場合ではありません プリシラ女史のお気持ちはいつ変わるかわかりませんよ
“アル”: お! その通りだぜ、兄弟 姫さんの気が変わらねぇうちに、 ちゃちゃっと済ませてくれや
“アル”: 兄弟には、姫さんに聞きたいことがあるんだよな?
“スバル”: なぜか完全に立場が逆転しちまってはいるが、 今はそんなこと気にしてる場合じゃねぇ……
“スバル”: ということで、プリシラ お前が持ってるっていう妙な紙切れについて聞きたい
“スバル”: その紙切れは、今どこに保管してあるんだ?
“プリシラ”: ……紙切れ?
“アル”: ほら、なんでもすげぇ価値があるっていう『遺作』のことだよ
“アル”: そもそも、『遺作』のことが知りたくて、 姫さんは兄弟を呼び出したんじゃなかったか?
“スバル”: ……『遺作』、だと?
ナレーター: アルの口から出た聞き覚えがない単語に、 思わずスバルは声を出してしまう
“スバル”: 待ってくれ、アル その『遺作』ってのはなんだ?
“アル”: 兄弟が興味あるっていう妙な紙切れのことだ
“スバル”: 俺が『遺作』ってのに興味があるって? 残念だけど、俺は『遺作』なんてもんは知らねぇ
“アル”: そんなはずはねぇだろ
“アル”: 姫さんが兄弟に聞こうと思ったんだ だとしたら兄弟が知らねぇはずねぇ
“スバル”: どういう理屈だよ、それ!
“スバル”: にしても 危うく存在まで消滅させられかけたってのに、 とんだくたびれ儲けだったよ
“スバル”: 帰るぞ、フェネ 長居したい場所でもねぇし、 すっかり日も暮れちまった
“スバル”: エミリアたんもレムもきっと心配してるはずだ
“プリシラ”: 待て、凡愚 勝手は許さぬ ──アル
“アル”: へいへい というわけで、帰るのはナシだ兄弟
“スバル”: いやいや、きて早々に帰れって言ったのはあいつだよね?
“アル”: まぁ、そんなこともあったな けど、今の姫さんの意向はステイだ
“スバル”: まったく、ころころ意向が変わる姫様だぜ よくあんなのに付き合ってやってるよな、お前も
“アル”: 姫さんの良さは、お子様な兄弟にはまだわからねぇだろうな ああいう女が男を成長させてくれるんだよ
“スバル”: 成長させてもらった結果が、お前か? だったら俺はお子様のままで十分だよ!
“スバル”: とはいえ、強行突破しようにも、 肝心のフェネに、その意思がなさそうなんだよな……
“フェネ”: 当然です、スバル氏 プリシラ女史が“待て”と言えば待てです
“フェネ”: それに、『遺作』というものについて もっと情報を得るべきだとフェネは考えます
“フェネ”: 現時点で何かを判断するのは、早計ですよ、スバル氏

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_04

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_04_絵本の「噂」(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: ──けどな、俺としてはあんま気が進まないっつーか 日も暮れたし帰った方がいいっつーか
ナレーター: フェネからは『遺作』というものについて、 プリシラから詳しく聞くよう進言されたスバルだったが
ナレーター: 傍若無人なプリシラへの苦手意識もあり、 煮え切らない状態が続いていた
“スバル”: 正直言って、こいつらと関わっても、 ロクなことにならねぇ気がすんだよ
“プリシラ”: ならば、件の紙からは描かれた絵が飛び出すと言えばどうじゃ?
“スバル”: ──っ! 絵が……飛び出す?
“プリシラ”: そうじゃ 貴様には何か心当たりがあるのであろう?
“スバル”: い、いや… 俺には……
“アル”: なんだよ、明らかに反応が変わったじゃねぇか
“アル”: やっぱ、姫さんの読み通り、 兄弟はなんか知ってるんじゃねぇのか?
“アル”: って、知ってるの確定って感じでこっちは考えてっけど
“スバル”: 待て待て、“知ってるの確定”ってどういうことだよ? そんな摩訶不思議なアイテム、俺が知ってるわけねぇだろ
“アル”: だったら、兄弟はどうしてオレについてきたんだ? “妙な紙切れ”ってのに、ずいぶんと興味深々の様子だったぜ?
“スバル”: それはお前が無理やり……
“アル”: ちょっち無理があんだろ、その言い訳にはよ
“プリシラ”: 凡愚、申せ 貴様が知っていることを洗いざらい妾に聞かせよ
“スバル”: どうして俺がお前なんかに……
“スバル”: それに、マジで知らねぇんだ 絵が飛び出すなんて紙があんなら、 俺の方が詳しく知りてぇぐらいだよ
“プリシラ”: ──アル
“アル”: へいへい
ナレーター: プリシラの掛け声に頷いたアルが、何かをプリシラに手渡す
ナレーター: プリシラはアルから受け取った直後、それをスバルたちに示した
“プリシラ”: これを知らぬか、凡愚?
“スバル”: そ、それは……
“フェネ”: (スバル氏、あれは紛れもなく)
“スバル”: (ああ ありゃ、『禁書』のページそのものだな)
“プリシラ”: どのようにすれば、これから絵が飛び出すのじゃ?
“スバル”: し、知らねぇな
“プリシラ”: まだ白を切るか
“スバル”: 白を切るって、人聞きわりぃぜ 俺は知らねぇから知らねぇって言ってんだよ
“プリシラ”: ほう…… ならば、破り捨てても構わぬな?
“プリシラ”: 絵が飛び出さぬのであれば、これはただの紙切れ そのようなもの妾には不要じゃ
“アル”: あちゃー ありゃ本気で破り捨てるつもりだぜ、姫さん 売りゃ、高値で買い取ってもらえるってのにもったいねぇ
“プリシラ”: ふん 金になど興味ないわ──
ナレーター: アルの発言を一笑に付し、 勢いよくページを破り捨てようとするプリシラ
ナレーター: そんな彼女を制したのは、 意外にもスバルではなくフェネなのであった
“フェネ”: ──お待ちください、プリシラ女史! すべてお話しさせていただきます!
“フェネ”: ですので、何卒、気をお静めください!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_05

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_05(中編)_100年前の絵本作家(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: ──フェネ、お前勝手に……!
“フェネ”: ですが、スバル氏 あのまま破かれていれば収拾がつかない事態になっていました
“スバル”: そりゃ、そうかもしれねぇけど、 だからって、約束していいことと悪いことがあんだろ
“アル”: いや、兄弟 その狐さんの判断は正しいよ 姫さん、本気で破くつもりだったしな
“スバル”: 破くって正気かよ! どんだけ危険なもんだと思ってるんだ?
“スバル”: 中の絵が外に出るってのは、最悪のケースなんだよ
“スバル”: 絵は絵のまんま、ページの中に収まってくれてるのが一番なんだ それをわざわざ外に出そうなんて…… マジ正気の沙汰じゃねぇ
“スバル”: とにかく、その紙を渡してくれ、プリシラ
“スバル”: それは、“絵が飛び出して、あー楽しい!” なんて愉快なもんじゃねぇんだ
“スバル”: 『禁書』に封じちまうのが一番なんだよ
“プリシラ”: 愚か者 誰にものを言っておるのじゃ
“スバル”: はあ? 愚か者はお前だろ よりによって、絵を外に出そうなんてよ
“スバル”: んで、お前らが持ってるページはその一枚だけか? 他にも持ってんなら、全部渡してくれ
“プリシラ”: 凡愚、貴様は知っていることだけ話せばよい それ以上のことを妾は許しておらぬ
“スバル”: だ・か・ら、すげぇ危険なもんだって言ってるだろ! 今すぐに渡してくれ 『禁書』に封じてやるから
“プリシラ”: 『禁書』とはなんじゃ?
“スバル”: お前が持ってる紙切れが収まるべき場所だ
“スバル”: お前だって、王都やなんやでごたごたがあって 王選が延期になったってことは知ってるだろ?
“スバル”: そのごたごたの原因が、 お前が持ってるその紙切れなんだよ
“スバル”: そいつからは確かに絵は飛び出すんだけど、 出てくるのは『異形』っていう厄介な奴なんだ
“スバル”: とにかく持ってるページを今すぐ全部渡してくれ
“スバル”: もし、買い取る必要があるってんなら、 ちゃんと工面させてもらうからさ
“プリシラ”: たわけ 金になど興味ないわ
“プリシラ”: それに、これが危険とは笑わせる
“プリシラ”: この世界は全て、妾に都合のよいようにできておる これについても例外ではないわ
“スバル”: どんな理屈だよ、それ!
“スバル”: とにかく、それはお前が思ってるようなもんじゃねぇ 今すぐ渡さねぇと、きっと後悔することになるぜ?
“プリシラ”: ……後悔? この妾が、か?
“スバル”: ああ、そうだ 俺にはお前の後悔する姿が見えてんだよ
“プリシラ”: そこまで申すか、道化
“プリシラ”: ならば、妾を後悔させてみよ さすれば、妾が持つ『遺作』はすべて貴様に譲ろう
“スバル”: わかってねぇな! お前が後悔するようなことになりゃ、 時すでに遅しなんだよ!
“スバル”: 『異形』ってのが暴れまわって たくさんの犠牲者が出ちまうかもしれねぇんだ
“スバル”: 罪もない人たちが傷ついて、 下手すりゃ死人だって出るかもしれねぇ
“スバル”: それはそういう危険なもんなんだよ!
“スバル”: だから、な、頼むよ プリシラ、ページを渡してくれ
“プリシラ”: ──くどいわ!
“プリシラ”: 妾が後悔するようなことになれば、そのときはくれてやる 他の条件で貴様に譲ることなどない
“スバル”: だから──
“アル”: 言うだけ無駄だぜ、兄弟 姫さんが譲歩するはずねぇ
“アル”: それに、姫さんがああ言う以上、 姫さんが後悔するようなことにはならないだろうよ
“スバル”: アル、お前まで……
“フェネ”: (スバル氏 話の内容から察するに、 プリシラ女史は複数のページを所持している模様です)
“スバル”: (それは俺も感じたよ 一枚だって厄介だっていうのに……)
“フェネ”: (ものは考えようです、スバル氏)
“フェネ”: (プリシラ女史から複数ページを回収できるのであれば それはスバル氏流に言えばラッキーなのでは?)
“スバル”: (何事もなく回収できればな けど、あいつは厄介事が起こらねぇと渡すつもりはないらしい)
“プリシラ”: ──何をこそこそ話しておる? 妾の御前であることを忘れたか
“フェネ”: 申し訳ありません、プリシラ女史 この期に及んでなお、この者が四の五の言うものですから……
“スバル”: フェネ、お前! お前はどっちの味方なんだよ!
“フェネ”: 無論、プリシラ女史です 比べるまでもありません
“スバル”: ……え? そんなにきっぱり言われると さすがに俺も傷ついちゃうよ!
“アル”: まぁまぁ、兄弟、あの狐さんを見習えって 姫さんに乗って損することはねぇから
“スバル”: ちなみに、その根拠を聞いてもいいか?
“アル”: この世は姫さんの都合がいいようにできてるからな 他に何か必要か?
“スバル”: はぁ…… お前までそんなこと言い出すのかよ
“スバル”: けど、“姫さんに乗る”ってどういうことだ? 現時点では、あいつが後悔するかどうかの結果待ちだろ
“スバル”: あいつに乗るも何も……
“アル”: まぁ、オレぐらいになると、次の展開の察しがついてんだよ ということで──
“プリシラ”: では、凡愚、いくぞ
“アル”: お! やっぱそうなる!
“スバル”: ……い、いくってどこに? すでに夜だし、あんま遠い場所には──
“スバル”: ──アルてめぇーっ! 俺をどこに連れてくつもりだ!
“アル”: だから、バーリエル男爵領だって言ってんだろ
“スバル”: どうして俺がそんな場所にいく必要があるんだ?
“アル”: 姫さんがそう決めたからな 他に理由が必要か?
“スバル”: 必要に決まってんだろ! なんでもかんでもあいつが決めたことに従えるかよ!
“アル”: まぁ、残りの『遺作』…… 兄弟が言う『禁書』のページはそっちに保管してあんだよ
“アル”: これなら兄弟も少しは納得できっだろ
“スバル”: 少しは、な
“スバル”: けど、エミリアたんたちに何も言えてねぇ きっと心配してるはずだ
“アル”: それについちゃ、心配無用だ、兄弟 嬢ちゃんたちには言付けを頼んである
“スバル”: はあ?
“アル”: 嬢ちゃんたちは、 兄弟のとこのピエロさんがよく使う宿にいんだろ?
“アル”: おっさん、察しがいいからよ まぁ、こうなることは予想できたんだよ
“アル”: んで、兄弟を探すついでに、宿に寄って言付けしといたんだわ 兄弟が、ウチの姫さんとしばらく行動するってよ
“アル”: どうよ、おっさんのファインプレー 賞賛してくれて構わないぜ?
“スバル”: こうなるって知ってたんなら、予め言ってもらっていい?
“アル”: オレ的にはそれもファインプレーだな もし言ってたら、兄弟はついてきてねぇだろ?
“スバル”: 当たり前だ! 誘拐確定な状態でのこのこついてく馬鹿がいるかよ!
“アル”: おいおい、“誘拐”ってのは人聞き悪いぜ 兄弟はページってのに用があんだろ?
“スバル”: そりゃそうだけど、全然腑に落ちねぇ まぁ、強敵のプリシラと竜車が別ってのは救いだけどな
“アル”: お! オレと二人っきりの状態を喜んでくれるとは嬉しいね
“スバル”: 喜んでないわ! あいつと二人っきりよりはマシって程度だ!
“スバル”: それに、それも俺たちが逃げ出さないための算段なんだろ? フェネと俺がセットだと、色々リスクあるしな
“アル”: さー、それはどうだろうな
“アル”: まぁ、オレと兄弟、あの狐さんと姫さんって分かれた方が 姫さん的には都合がいいって判断だったんだろうよ
“アル”: 少なくともオレと兄弟は色々語り合えるだろ?
“スバル”: 語り合う、ね おっさんと何を語り合うんだか
“アル”: 『遺作』…… 『禁書』のページについてだ
“アル”: 兄弟は結局、あれについて大したことは言ってねぇ
“スバル”: それはお互い様だろ 『禁書』のページ…… 『遺作』についておっさんらもほとんど語ってくれてねぇよ
“アル”: んで、バーリエル領まではたっぷり時間がある 色々語り合おうぜ、兄弟
“アル”: 兄弟次第じゃ、目から鱗の情報も、教えてやるつもりだぜ、オレは

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_06

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_06_知っていたはずのこと(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: スバルとアルを乗せた竜車と、プリシラとフェネを乗せた竜車は 昼夜走り続け──
ナレーター: プリシラが治めるバーリエル男爵領に到着した
“アル”: ──んじゃ、しばらくこの宿に滞在してくれ、兄弟
ナレーター: そうスバルたちに言い残し、立ち去るアル
ナレーター: こうしてスバルとフェネは久々に二人っきりになるのだった
“スバル”: いててて…… ずっと竜車の中だったから、体中いてぇよ
“スバル”: んで、そっちはどうだったんだ? プリシラの奴から色々聞き出せたか?
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ、どうした? やっぱあいつと二人っきりじゃ、さすがのお前も辛かったか?
“フェネ”: いえ… そういうわけでは……
“フェネ”: スバル氏こそ、どうだったのです? アル氏から貴重な情報は得られましたか?
“スバル”: おお、バッチリだ あいつらがいう『遺作』について色々聞かせてもらったよ
“スバル”: 『禁書』のページと『遺作』はやっぱイコールっぽいな
“スバル”: つーか、俺たちがページを集めてる 『禁書』の別名が『遺作』って感じみてぇだ
“スバル”: とにかく、アルから聞いたことを これから話させてもらうぜ、フェネ
ナレーター: それからスバルは、道中にアルから聞いた内容を フェネに詳しく共有する
ナレーター: プリシラが『禁書』のページを手に入れてから 二週間ほどになるが、
ナレーター: 特に危惧するような異変は起こっていないらしい
ナレーター: その間に、プリシラの元にページがあると聞きつけた とある芸術家が訪れ、その紙切れの価値が明らかになったようだ
ナレーター: スバルたちがページを集めている『禁書』は 百年ほど前に活躍した絵本作家の遺作で
ナレーター: その作家の過去の作品をすべて集めた全集になっているらしい
ナレーター: 中でも晩年に描き下ろしたある作品の絵柄は 常軌を逸したおどろおどろしいもので
ナレーター: 絵本らしからぬその異様な絵柄が 意外にも作者の絵本作家としての評価を高める結果となった
ナレーター: その作家には現在も根強いファンがいて、 原画となれば相当な価値になるのだが
ナレーター: これまでにその作家の原画が世に出たことはなく、 すでに失われていると考えられていたのだが──
“スバル”: 最近になって幻の原画が出回るようになったって話だ
“スバル”: つまり、『禁書』に収められてたのが その作家が描いた絵本の原画ってことだな
“スバル”: それなら、原画が出回らなかったのも納得だ
“スバル”: いつからかは知らねぇけど、長らくロズワールのとこの 禁書庫にあったわけだし
“スバル”: んで、金持ち風情が高値でページをほしがるのも それに見合った価値があるからってわけだ
“スバル”: 俺の故郷でも、有名な漫画家が描いた原画なんかは、 すげぇ高値で取引されるらしい
“スバル”: しかも、その作家が描いた絵は、 “紙から飛び出す”って噂の代物だ
“スバル”: 高騰するのも納得だぜ
“スバル”: まぁ、“紙から飛び出す”って部分についちゃ、 誤解が多いような気はするけど
“スバル”: こっちもエミリアたんが不利になるような情報を あのおっさんに教えなきゃなんなかったけど
“スバル”: 代わりに聞き出せた情報も目から鱗だった…… って、フェネどうした?
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ?
“スバル”: 次々に明らかになる『禁書』の新事実に、 ノーリアクションってどういうことだよ?
“スバル”: もしかして、竜車の中で、今の話、プリシラから聞いてたのか?
“スバル”: いやいや…… あいつが親切に色々教えてくれるとはとても思えねぇ
“スバル”: だとすると……
“スバル”: ──記憶が戻ったのか、お前?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_07

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_07_穏やかなる男爵領(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: フェネ、お前、もしかして記憶が戻ったのか?
ナレーター: 先程スバルが語った『禁書』の真実
ナレーター: だが、フェネはすでにその事実を 知っていたようにスバルには思えたのだ
“フェネ”: 妙なことを言い出しますね、スバル氏
“スバル”: 妙なことってなんだよ? だってお前、 俺が話したことを明らかに知ってる雰囲気だったじゃん
“フェネ”: そのようなことはありません フェネは少々疲れているのです
“スバル”: 疲れてる? なんだよ、さっきは否定したくせに、 やっぱあいつと二人っきりで辛かったんだな
“フェネ”: いえ、フェネの疲れの原因はプリシラ女史ではありません 長旅によるものです
“スバル”: お前も強情だな けど、大人な俺はそういうことにしておいてやるよ
“スバル”: にしても、マジで俺の相手がアルの方でよかったぜ あの姫様と二人っきりじゃ、長旅を乗り切る自信がねぇ
“スバル”: ということで、フェネ、お前は宿でゆっくり休んでくれ 今日の調査は俺が頑張るからさ!
“スバル”: ──と、かっこつけて出てきたものの
“スバル”: どうして、お前がいるんだ? 宿でゆっくりしててくれって言ったよな?
“フェネ”: スバル氏 フェネに“ゆっくり休んでくれ”と言いたいのであれば それに見合った実力を付けてください
“フェネ”: 現状のスバル氏は明らかに力不足 そんなスバル氏を 一人でいかせても、不安でゆっくりなどできません
“フェネ”: つまりあの発言は、 一見フェネへの気遣いから出たように思えますが
“フェネ”: その実、いい格好がしたいだけの独りよがりです、クソ上司
“フェネ”: ガナクスでの異変の際に、しばらくフェネと離れ、フェネの 存在の大きさと己の無力さを痛感したはずだったのですが……
“フェネ”: とても残念です
“スバル”: うっ…… 確かに独りよがりな発言だったかもしれねぇけど、 そこまで言う?
“スバル”: だいたい、そんなこと言うんだったら、 世の中はそんな発言で溢れてる気がすっけど
“フェネ”: 左様です 人々が発する多くの言葉が、 そのような類のものだとフェネは考えています
“スバル”: フェネ…お前……
“フェネ”: スバル氏、無駄話はこれぐらいにして、調査に身を入れましょう
“フェネ”: プリシラ女史がページを複数保有しているのであれば、 何が起きても不思議ではありません
“スバル”: ああ、そうではあるんだけど…… お前って時々、妙に達観したようなこと言うよな
“スバル”: パックにもそういうとこがあっから まぁ、精霊ってのはそういうもんなのかもしれねぇけどさ
“フェネ”: 左様です 長い時を生きれば達観もするでしょう
“スバル”: なるほど…… ああ見えてパックもすげぇ年齢らしいし お前も例外じゃねぇってわけだ
“フェネ”: 残念ながら、記憶にはありませんが、 スバル氏よりも遥かに長い時を生きていることは確かです

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_08

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_08_静寂の理由(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: 『禁書』のページにまつわる異変が起きていないか、 調査を続けるスバルたちだったが
ナレーター: 残念ながらまったく成果を挙げることはできなかった
“スバル”: ──なんだよ! この辺は平和そのものだな!
“フェネ”: 口を謹んでください、クソ上司
“フェネ”: まるで平和であることを悪く言っているように聞こえ、 周囲からの視線が痛いです
“フェネ”: 仲間だと思われたくないので、 フェネから離れてください、スバル氏
“スバル”: おっと、確かに失言だったよ 平和はいいことだ そりゃ間違いない けど……
“スバル”: あのプリシラの領地がこうも平和ってのはどういうことだ?
“スバル”: 『禁書』のページに関係なく、あの暴君が君臨してるんだ もっと荒んだ感じになっててもおかしくないんじゃねぇかな?
“フェネ”: 結論から言えば、プリシラ女史は、 スバル氏が考えるような暴君ではないということでしょう
“スバル”: いやいや、何かにつけて俺の命を奪おうとするあいつが、 暴君じゃないわけねぇだろ
“フェネ”: では、この現状をどう説明するのですか?
“スバル”: それは……
???: 一度、かけてる色眼鏡をはずしてみたらどうだ、兄弟
“アル”: ここにある平和 それは紛れもない現実だぜ
“スバル”: 怪しさ全開のお前に言われてもな
“スバル”: で、どんなからくりがあるんだ? 俺は幻覚かなんかを見せられてるのか?
“アル”: おいおい、ずいぶんと穿っちまってるな 見たまんま、感じたまんまだぜ、兄弟
“アル”: まぁ、『禁書』のページを姫さんから頂戴したい兄弟にとっちゃ、 色々問題が起こってくれた方がありがてぇのかもしれねぇけど
“スバル”: それについちゃ、さっき反省したばっかりだよ 平和が一番だ それは間違いねぇ
“スバル”: たとえそれで『禁書』のページがゲットできなくなったとしてもな ……ってのは、ごめん、かっこうつけすぎた
“スバル”: マジ、どうしよう!? このままじゃページが回収できねぇよ!
“アル”: まぁ、兄弟の事情やなんだは聞かせてもらったが、 色々誤解や勘違いも混じってるんじゃねぇのか?
“アル”: そもそも、その『禁書』のページってのは、 本当に必ず『異形』ってのを出現させるのか?
“アル”: 姫さんがあの紙切れを手に入れてから約二週間、 マジで異変だなんだってのは起きてねぇよ
“アル”: それに、ウチの姫さんがそんなことねぇって言ってるしな
“アル”: てか、その狐さん、記憶を失ってるんだよな?
“スバル”: フェネ、アルの奴はああ言ってるぜ?
“フェネ”: ……もう一つ可能性があります
“スバル”: はあ? もう一つの可能性?
“フェネ”: 左様です プリシラ女史にはページの成長を抑える力が 備わっている そのような可能性です
“アル”: だとしたら、ムキになって、 姫さんからページを回収する必要はないんじゃねぇか?
“アル”: 姫さんの手元にある限り、ページは安全ってことになる
“フェネ”: あくまで可能性のお話しです そうであると断言はできません
“スバル”: 確かにしばらく安全だったからって、 この先ずっと安全とは限らねぇ
“スバル”: やっぱページは『禁書』に封じとくのが一番だ
“スバル”: ということで、アル もう一度プリシラと話がしたい
“スバル”: あいつが首を縦に振ってくれる可能性は低いが…… 俺にリベンジマッチを挑ませてくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_09

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_09_機か、否か(仮) 更新日:2021/06/30

“プリシラ”: ──くどいぞ、凡愚 今すぐ立ち去れ
“スバル”: いやいや、待ってくれ!
“スバル”: だいたい、無理やりこんなとこまで連れてきといて 立ち去れってのはないんじゃねぇのか?
“プリシラ”: ほう…… 妾が貴様を無理やりにか?
“スバル”: ああ、そうだよ ほとんど無理やりだったじゃねぇか
“プリシラ”: ならばなおさらじゃ 貴様になど用はない 今すぐ失せろ 貴様もそれが本望であろう
“スバル”: ああ、俺だってそうしてぇよ けど、そういうわけにはいかねぇ 『禁書』のページを放っておくわけにはいかないんでね
“スバル”: ってか、お前はいったいなんなんだよ?
“スバル”: 俺がいきたくねぇって言えば連れてくるし 帰る気がさらさらないタイミングで立ち去れとか言いやがる
“スバル”: 少しは俺の気持ちも考えてくれねぇかな?
“プリシラ”: 何故、妾が貴様の気持ちなど考慮せねばならぬ? 妾はしたいようにし、貴様はそれに従う ただそれだけであろう
“スバル”: そんなわけねぇだろ! 人間関係ってのは、譲り合う精神が大事なんだよ!
“プリシラ”: はは、何を言い出すかと思えば“譲り合う精神”じゃと?
“プリシラ”: ──ならば貴様に問おう 譲り合うことで貴様は何を得、妾にどのような利があるのじゃ?
“スバル”: 俺が得るもんは『禁書』のページだ んで、お前が得るもんは領地の安全だよ
“スバル”: 言っとくけどな、こっちは善意で言ってんだぞ あの紙切れは危険だ だから俺たちが封じてやる
“スバル”: しかも、それなりの金額を支払って買い取ってやってもいい どうだ? 悪い話じゃねぇだろ
“プリシラ”: 話にならんな、凡愚 貴様の手など借りずとも、妾の領地は安穏じゃ
“スバル”: だから、それはたまたまなんだって すぐに異変が起きて大変なことになっちまう
“プリシラ”: “すぐに”とはいつじゃ?
“スバル”: そ、それは……
“プリシラ”: 凡愚、妾の質問に答えよ “すぐに”とはいつのことじゃ
“アル”: なあ、兄弟 “リベンジマッチだ”なんて意気込むから
“アル”: ちっとは勝算あってのことだと思ったんだが、 どうやらそういうわけではないみてぇだな
“アル”: 現時点じゃ、特に異変が起きそうな気配はねぇよ
“フェネ”: 左様です プリシラ女史が“去れ”と言っているのです ここは大人しく従うべきかと
“スバル”: フェネ、お前まで!? ページを回収せずに、立ち去るなんてナシだろ!
“フェネ”: スバル氏 こちらにきて、『禁書』の影響を感じましたか?
“スバル”: それは…その… まったく感じてねぇけど……
“スバル”: けど、“今は”ってだけだ このまま放っておいたら、 いずれページが膨張して……
“スバル”: って、それはお前が一番わかってることだよな? ページは『禁書』に封じねぇと『異形』が出てきちまう
“フェネ”: 今まではそう思っていました ですが、現実とは真摯に向き合うべきです
“フェネ”: 現時点で異変は起きていませんし、起きる気配もありません
“フェネ”: 仮に異変が起こるまでに相当な時間がかかるのだとしたら ここに留まることより他になすべきことがあるはずです
“フェネ”: 今もどこかで、 ページによる被害が出ていないとも限りません
“スバル”: えっと、そりゃそうなんだけど…… 確かにおっしゃる通りだ けど……
“スバル”: なんか腑に落ちねぇぞ、俺は! フェネ、お前から言われると特にな!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_10

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_10_危険なる余興(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: …………
“プリシラ”: いつまで妾をこのような場所に留まらせるつもりじゃ 貴様が去らぬのであれば、妾が去らせてもらう
“フェネ”: ご無礼、お許しください 外は日差しもあります どうぞお屋敷にお戻りください
“スバル”: フェネ! お前!
“フェネ”: スバル氏、長居は無用とフェネは考えます ここは一旦切り上げるべきかと
“アル”: 悪いな、姫さん 午後のティータイムを邪魔しちまって
“アル”: これは完全に俺の落ち度だ 覚悟はできてっから、 きつめのご褒美……いや、仕置きを頼む
“アル”: マジ、きついヤツを──
“スバル”: 青少年の前で気色わりぃおねだりしてんじゃねぇよ、おっさん!
“スバル”: それに、やっぱ変だろ!
“スバル”: アルもフェネもどうかしてるぜ 一番どうかしてんのはプリシラ、お前だけどな
“スバル”: それとも何か? 変なのは俺か? お前らが正常で、俺が変なのかよ?
“フェネ”: 左様です、スバル氏
“プリシラ”: 無論じゃ
“アル”: まぁ、兄弟は言うまでもなく変だな
“エミリア”: ええ 私もスバルはすごーく変だと思う
“レム”: 確かにスバルくんは変わっていますが、それはいい意味でです
“スバル”: おいおい、全会一致じゃねぇか
“スバル”: って、エミリアたん!? それにレムも!
“アル”: お、なんかメンバーが増えてんな 嬢ちゃんたちはいま着いた感じか?
“エミリア”: ええ スバルがプリシラのところにお邪魔してるって聞いて、 心配になっちゃって……
“エミリア”: スバル、迷惑かけてない?
“スバル”: 俺はかけてないかな!? むしろかけられてる側だと自負してるよ!
“フェネ”: エミリア女史 残念ながらスバル氏は……
“フェネ”: プリシラ女史の寛大なお心遣いで極刑は免れていますが、 今もプリシラ女史にご迷惑をおかけしている真っ最中です
“スバル”: いやいやいや、なに言ってんだ、フェネ!
“エミリア”: ごめんなさい、プリシラ スバルが迷惑をかけてしまって
“スバル”: エミリアたんも謝らなくていいから! 俺はこの地域の安全のために、頑張ってるところなんだよ!
“プリシラ”: 貴様が安全のために? 道化だけあって笑わせおるわ
“スバル”: お前を笑わせるつもりはねぇよ 事実だからそう言ってるだけだ
“スバル”: そもそも『禁書』のページがあるってわかってて、 放置する意味がわからねぇぜ
“エミリア”: ページが……あるのね?
“スバル”: ああ、そうだ しかも何枚もあいつは持ってるらしい
“エミリア”: だったらすぐに『禁書』に──
“プリシラ”: そのようなことは不要じゃ
“スバル”: 万事あんな感じで、ずっと平行線なんだよ
“プリシラ”: 凡愚、まるで妾に非があるような物言いだな
“スバル”: 申し訳ねぇけど、そうとしか思えねぇな
“スバル”: そもそもお前が後悔する結果になったら、 ページを譲るってどういうことだ?
“スバル”: 何度も言ってるけど、そうなってからじゃ手遅れなんだよ そうなる前に対処しとかねぇと
“プリシラ”: 貴様こそ、何度も言わせるでない そのようなことは起こらぬ 妾が言うことに誤りなどないわ
“スバル”: んで、それが間違いだったらどうすんだ?
“プリシラ”: そうなれば、貴様の好きにすればよかろう ページなど貴様にくれてやるわ
“スバル”: だ・か・ら、それじゃ手遅れだって…… って、結局堂々巡りじゃねぇか!
“アル”: 兄弟、それがそうでもないんだわ
“スバル”: はあ? 突然どうしたんだ、おっさん
“アル”: つまり、状況は刻々と変化してるってことだよ
“アル”: 悪いが、ここにあったページとやらは、 粗方オレがそこいらにばら撒いちまったよ
“アル”: 姫さん、どうしてもあの紙切れから、 絵が飛び出すのを見たいんだと
“アル”: なのに、兄弟がその方法を教えてくれねぇから、 仕方なくって感じだ
“アル”: 色んな条件下にページを置いてみりゃ、 どれかから飛び出すかもしれねぇからな
“アル”: てなわけで、日向だとか、日陰だとか、 森の中とか、街の中とか、色々置いて回らせてもらった
“アル”: んで、オレが一仕事終えたタイミングで、 兄弟たちに出会ったってわけだ
“スバル”: ……色んな場所に置いて回った、だと?
“アル”: ああ 絵が飛び出す条件がわからねぇからな、 色んな場所に置いてみるしかねぇだろ
“アル”: 運良く、どれかから飛び出しゃいいんだが
“スバル”: “運良く”ってなんだよ! 絵が飛び出すのは最悪のケースなんだよ!
“スバル”: ──おい、アル! どこにページを置きやがった!
“アル”: 色んな場所だって言っただろ、兄弟
“レム”: スバルくん……!
“スバル”: ああ、こうしちゃいられねぇ とにかく回収して回んねぇと
“アル”: 兄弟、そう熱くなるなよ すぐにどうこうなるわけじゃねぇって
“スバル”: いやいや、お前こそもうちょい慌てろよ、アル
“スバル”: あれについては、こっちに向かう竜車の中で、 色々話して聞かせたよな?
“スバル”: なのにどうして、お前にはそんな真似ができたんだ?
“アル”: 姫さんからの命令だからな
“スバル”: プリシラから命じられりゃ、お前はなんだってするのか? そんなの間違ってるだろ!
“プリシラ”: ──間違ってなどおらぬ 凡愚、貴様も妾に従っておればよいのだ
“スバル”: クソっ! 話にならねぇな……
“スバル”: とにかく、エミリアたん、レム! ページを回収して回ろう 長旅終えたばっかでわりぃんだけど、二人にも手伝って欲しい
“エミリア”: ええ ページを放っておくなんてできないもの
“レム”: 喜んでレムもスバルくんをお手伝いします!
“スバル”: てな感じで、俺たちのページ探しが始まったわけだが……
“スバル”: おい、フェネ どうしてお前がいんだよ?
“フェネ”: どうして、とは?
“スバル”: 自分がいて当然みたいな顔してんじゃねぇ! お前、明らかにプリシラ側だったよな?
“フェネ”: スバル氏は、実にくだらぬことを気にするのですね 昨日の敵は今日の友というではありませんか
“スバル”: やっぱ敵だった自覚はあんのな!
“フェネ”: いえ、“敵”という表現には語弊がありました あの場ではあのように振舞うしかなかったとフェネは考えています
“フェネ”: それに、フェネは何か間違ったことを言いましたか?
“フェネ”: 自分の意にそぐわぬ言動だからといって、 内容を検証せずに断罪の対象にするとは、さすがはクソ上司です
“スバル”: “断罪”って、大げさな
“スバル”: ただ、俺も人間なんでね もろもろノーカンにして、 笑顔でお前と接するのには抵抗があるっつーか
“スバル”: まずはお前の方から、一言あってもいいんじゃねぇかな?
“スバル”: 手のひらを返したみたいに、“プリシラ女史の言う通りです” みたいなことを言ってたわけだし
“フェネ”: それについては、間違ったことは言っていない、 そう考えています
“フェネ”: 恐らく、プリシラ女史やアル氏が言ったように しばらくは何も起きないでしょう
“フェネ”: その証拠に、アル氏が置いて回ったという ページの反応をまったく感知できません
“スバル”: えぇ!? そうなの!? ページ探し、まさかのノーヒント?
“フェネ”: 左様です 自力で探し出すしかない状況です
“フェネ”: といいますか、フェネを邪険にしておいて、 まさかフェネの感知能力をあてにしていたのですか?
“スバル”: あっ……
“スバル”: えっと、そういや、エミリアたんとレムの姿が見当たらねぇな どこいっちまったんだろ、あの二人……
“フェネ”: スバル氏、話を誤魔化そうとしても無駄です
“スバル”: ごめん、悪かったよ! お前の能力はあてにしてたけども、 チクリと言ってやんなきゃ気が済まなかったんだ
“スバル”: 器が小さくてすまねぇ この通り謝るから、ページ探しに協力してくれ、フェネ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_11

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_11_屏風の虎(仮) 更新日:2021/06/30

“プリシラ”: ──して、凡愚 ページ探しとやらは順調か?
“スバル”: くっ……
“アル”: おい、兄弟、黙ってちゃわかんねぇだろ ページ探しの成果を姫さんに報告してやってくれ
“スバル”: どうして報告しなくちゃなんねぇんだよ?
“アル”: おいおい、元々は姫さんのもんなんだぜ? 教えてくれたっていいじゃねぇか
“アル”: 兄弟たちが拾ったもんについちゃ、返せとは言わねぇからよ
“アル”: とか言いつつ、その様子からして、 芳しくなさそうだってのはもろわかりだけどな
“スバル”: だったら聞かなくていいだろ! 趣味が悪いぜ、まったく
“プリシラ”: して、どうじゃ 貴様らの成果を妾に報告せい
“スバル”: あれ、今の話聞いてなかった!? それとも、どうしても俺の口から言わせたいってか?
“スバル”: とにかく、お察しの通り、芳しくねぇよ
“スバル”: この三日間、必死に探し回って、 『禁書』に封じられたのはたった一ページだ
“アル”: マジでか? 一ページって、ほとんど成果ゼロじゃねぇか
“アル”: しかも、兄弟たちが発見できなかったページも、 今んとこ異変を起こす気配はねぇし
“アル”: マジ、時間の無駄なんじゃねぇのか?
“スバル”: アル! お前がページを置いた場所を教えてくれりゃ サクっと解決すんだよ!
“スバル”: 悪いようにはしねぇから、 ページを置いた場所を俺たちに教えてくれ
“アル”: ハハハッ 姫さんじゃなくても、笑っちまうぜ、兄弟
“アル”: “悪いようにはしねぇ”ってのは傑作だな
“アル”: おっさんからアドバイスしてやっけど、 兄弟は自分の立場ってもんをわかった方がいい
“アル”: 売りゃ、結構な額になる代物を 拾った分についちゃくれてやるって言ってんだ
“アル”: それだけでも、感謝されて然るべきだと思うんだがな
“スバル”: くっ…… そりゃそうかもしれねぇけど……
“エミリア”: でも、ページはすごーく危険なものなの
“アル”: お、今度は嬢ちゃんが力説するつもりか?
“エミリア”: 本当にページは危険なの
“エミリア”: ページのせいで王都が大変なことになっちゃって、 イバダでもガナクスでもそうだったんだから
“エミリア”: だから、お願い、プリシラ アルにページを置いた場所を教えるように言って
“プリシラ”: ──妾を失望させるでない
“エミリア”: ……失望?
“プリシラ”: 妾の希望はページとやらから絵が出るのを見ることじゃ それが叶えばページなど興味はないわ
“プリシラ”: まずは妾の希望に沿い、褒美を求めるのはそれからであろう それとも、貴様も妾に乞うだけの存在か?
“スバル”: だから、『異形』が出現してからじゃ遅いって何度も──
“レム”: スバルくん、ここはエミリア様にお任せしましょう
“スバル”: ああ、そうだな…… 俺じゃ埒があかなかったし、エミリアたんに任せてみよう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_12

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_12_強襲する亜空間(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: プリシラが治めるバーリエル男爵領で、 ページ探しをしていたスバルたちは
ナレーター: 進捗の報告をするように言われ、プリシラの屋敷を訪れていた──
“プリシラ”: ページがほしくば、妾の望みを叶えよ それが筋であろう
“エミリア”: 望み…… ページから『異形』が出てくるところを見せればいいのね?
“プリシラ”: そうじゃ ──アル
“アル”: へいへい
ナレーター: プリシラの声に頷いたアルが、何かをエミリアに手渡す
“エミリア”: ……これ、『禁書』のページ?
“プリシラ”: そうじゃ 妾の前で、それから絵を出して見せよ
“エミリア”: ページをもらうんだし、 やっぱり、プリシラのお願いは叶えてあげないと
“スバル”: ストップだ、エミリアたん! 完全に『異形』を出現させる流れになっちゃってるよ!
“エミリア”: でも、そうしないと、ページがもらえないわ
“スバル”: それはそうだけども、 『異形』が出てきちゃったら、色々被害が……
“エミリア”: 『異形』が出てくるところが見られれば、 プリシラは満足だと思うの
“エミリア”: その後は、出てきた『異形』をやっつけて…… ほら、ここにはレムもフェネもいるでしょ?
“レム”: お任せください、エミリア様 レムが『異形』を倒してご覧に入れます
“スバル”: くっ…… あいつの思い通りになって癪だが、 もはやそうするしかねぇのか……
“スバル”: とはいうものの……
“エミリア”: ねえ、スバル ところでどうやってここから出すの?
“スバル”: やっぱそうなるよね!?
“スバル”: てか、そっから『異形』が出てくるってよりも、 俺にとっちゃ吸い込まれるってイメージの方が強いんだよな
ナレーター: スバルは無意識に、これまでのことを思い出していた
ナレーター: 確かに描かれた絵が具現化して、 現実の世界で暴れまわったりはするのだが
ナレーター: スバルに色濃く残っているのは、 ページに吸い込まれたという記憶だ
ナレーター: ページ内の亜空間には、強力な『異形』が待ち構えていて、 そいつを倒さない限り、外に出ることはできない
“プリシラ”: ──凡愚 吸い込まれるとはどういうことじゃ
“スバル”: だから、マナを吸ったページが膨張して……
“アル”: 兄弟、ページが膨張ってのは、あんな感じか?
“スバル”: ああ、そうそう あんな感じで──
“スバル”: なんて言ってる場合じゃねぇ!? ページが膨張し始めちゃってるよ!
“フェネ”: ──皆様きます! 至急準備を!
“プリシラ”: ほう…… 出てくるのではなく、妾が吸い込まれるだと? ふふふ これは愉快じゃ
“アル”: なんだなんだ マジでわくわくすんな
“スバル”: ──バカ! 子どもみたいに目輝かせてねぇで、 お前らも衝撃に備えろ!
“エミリア”: ──スバルっ! 気を付けて! きゃーっ!
“スバル”: ──エミリアーーっ!
“レム”: スバルくん! 離れ離れにならぬよう、レムの手を握ってください!
“スバル”: わかった、レム! よし! エミリアたんを追うぞ!
“レム”: はい! では──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_13

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_13_すべては余興なり(仮) 更新日:2021/06/30

“レム”: スバルくん、大丈夫ですか?
“スバル”: ああ、俺は大丈夫だ それに…… どうやら今回はみんな同じ場所に飛ばされたみたいだな
ナレーター: ガナクスでページに吸い込まれた際、 吸い込まれた皆が別々の場所に飛ばされるという状態が発生した
ナレーター: だが、今回は幸い、皆が同じ場所に転移させられたようだ
“スバル”: エミリアたんやフェネはもちろん、プリシラやアルもいやがる そして、あいつらも含めみんな無事みてぇだ
“エミリア”: スバル、レム、無事みたいでよかった
“スバル”: エミリアたんも無事で何よりだよ
“アル”: お? お?
“スバル”: なんだよ、おっさん、俺になんか用か?
“アル”: 連れねぇな、兄弟 おっさんの無事も喜んでくれていいんだぜ?
“スバル”: 嬉しくもねぇのに喜べるかよ!
“スバル”: お前らはお前らで喜び合ってりゃいいだろ わりぃけど、こっちの輪に入んないでくれる?
“アル”: おいおい、そんなこと言っちゃっていいのか? オレたちゃ運命共同体だろ
“アル”: 力を合わせて、この難局を 乗り切らなきゃならないんじゃねぇのか?
“フェネ”: 左様です、スバル氏 こうなってしまった以上、『異形』との対戦は避けられません
“フェネ”: しかもかなり強力な力を感じます ここに巣くう『異形』は一筋縄ではいかないかと
“フェネ”: アル氏の協力は必ずや必要になるでしょう
“スバル”: うっ…… 背に腹は代えられないってわけだ
“スバル”: そういうことだったら、仕方ねぇ おっさん、無事でよかったな
“スバル”: 最後の最後、『異形』の攻撃から俺たちを庇って くたばってくれたら、なお嬉しいぜ
“アル”: ったく、オレがいなくなったら寂しいくせしやがって、 心にもないこと言ってんじゃねぇよ
“スバル”: 心にもないのは、 どっちかってと“無事でよかったな”の方だよ!
“スバル”: ほとんど無理やり言わされたしな!
“スバル”: とにかく、最悪な事態になった 早いとこボス的な『異形』を退治しねぇと……
“プリシラ”: “最悪な事態”とは笑わせおる
“スバル”: やっぱお前、笑いのツボおかしいだろ! 笑わせる要素なんてどこにもなかったよね?
“プリシラ”: だが、これはどういうことじゃ? 妾は絵を出せと言ったはずじゃ
“スバル”: ワンランク上のおもてなしってヤツだよ
“スバル”: どう考えたって、絵が飛び出すより、 ページに吸い込まれる方がビビるじゃねぇか
“スバル”: これで、アルが置いて回ったページの場所は、 教えてもらえるってことでいいよな?
“プリシラ”: たわけ 話が違うではないか
“スバル”: いやいや、その割には、お前、すげぇ楽しそうだぞ?
“プリシラ”: ふむ 確かにこの状況、愉快極まりないな
“プリシラ”: ふっ よかろう ならば、条件を変えてやろう
“スバル”: 条件を変える?
“プリシラ”: 貴様らがいう『異形』とやらを倒せば、 ここから出られるのであろう?
“スバル”: ああそうだ 逆に、そいつを倒さねぇ限り出られねぇってことになるがな
“プリシラ”: ならば、『異形』とやらを貴様らが先に倒せ それが条件じゃ
“アル”: あちゃー 兄弟と“共闘”かと思ったら、“競争”になっちまったよ
“スバル”: それ、全然うまくねぇから! にしても、競争って……
“アル”: まぁ、『異形』ってのを倒せば、ここから出られるんだ どっちが先に倒してもいいじゃねぇか
“スバル”: そういうわけにもいかねぇだろ 俺らの方が先に倒さねぇと ページのありかを教えてもらえねぇんだし
“アル”: だったら、せいぜい頑張れよ
“プリシラ”: ──ゆくぞ、アル
“アル”: へいへい んじゃな、兄弟

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_14

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_14_共闘か、競争か(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: ページへと吸い込まれたスバルたちだったが、 早々にプリシラとアルはスバルたちの元を去ってしまう
“スバル”: ──ということで、おっさんの無事を喜んだことが、 完全に無駄になっちまったわけだが……
“フェネ”: なんです? フェネに何か言いたげですね、スバル氏
“スバル”: お前が余計なこと言わなきゃ、 あんな奴の無事を喜んでやる必要はなかっただろ
“スバル”: むしろ……
“フェネ”: “むしろ”なんです? まさか、人の不幸を望んでいるわけではありませんよね、クソ上司
“スバル”: うっ…… そうやって指摘されると、なんだか胸がいてぇ……
“エミリア”: スバル、私はプリシラたちと協力するべきだと思う 早く二人を追いかけましょう
“スバル”: けど……
“フェネ”: スバル氏、どうしたのですか? 急いで追えばまだ間に合います 早くお二人を追って、協力をお願いしましょう
“スバル”: いやいや、あの二人と共闘したら、 ページのありかが教えてもらえなくなるだろ
“スバル”: 仲良く『異形』を倒して、 “それじゃページのありかを教えましょう”ってなるか?
“スバル”: いや、あのプリシラがそんな風になるわけねぇ
“スバル”: “『異形』を倒したのは妾たちじゃ”とか言って、 結局ページのありかは教えてくれねぇんだよ
“フェネ”: スバル氏、今回の『異形』は強敵です 恐らく、これまでに経験がない程の強さかと
“フェネ”: プリシラ女史との共闘が不可欠だとフェネは推測します
“スバル”: んなことは、あいつに言ってくれる? 共闘のはずが競争になっちまったのって、あいつのせいだよね?
“フェネ”: 誰のせいとか、そういうくだらないことを 言っている場合ではありません
“スバル”: く、くだらねぇって……
“エミリア”: 私は、もう一度ちゃんとプリシラと話して、 協力してくれるようにお願いするべきだと思う
“スバル”: エミリアたんまで……
“スバル”: だいたい、とっととページを『禁書』に封じてりゃ こんなことにはならなかったんだ
“スバル”: それをあいつが無茶言って、 結局ページに吸い込まれちまったんじゃねぇか
“スバル”: こっちが向こうに折れる要素が見当たらねぇだろ なのにどうして俺たちの方が……
“フェネ”: だとしたら、元を正せばすべてスバル氏の責任なのでは? この災いを招いたのは、クソ上司のスバル氏です
“スバル”: そ、それを言われるとなんも言えねぇ! 言えねぇけど……
“レム”: スバルくん、あのお二人がページに吸い込まれるのは、 今回が初めてです
“レム”: 経験豊富なレムたちと一緒に戦った方が、 あのお二人にも利点が大きいはず
“レム”: ページのありかを教えてもらえないと、 探すのは大変になってしまいますが……
“レム”: それでも、一緒に戦った方がいいとレムも思います
“スバル”: レム……
“スバル”: ああ、わかった 俺が間違ってたよ あの二人を追おう そもそもここから出られねぇと話にならないしな
“レム”: ありがとうございます、スバルくん
“スバル”: いやいや、礼を言うのは俺の方だ サンキューな、レム おかげで目が覚めたよ
“レム”: すぐに非を認められるスバルくんを レムはとても素敵だと思います
“スバル”: レム…… そう言ってもらえると、俺……
“フェネ”: 言わせていただきますが、スバル氏 非を犯さないのが一番です その点、お忘れなきよう
“スバル”: うぐっ! そ、その指摘、今の場面で必要か?
“フェネ”: いえ、スバル氏は色々と棚に上げてしまう傾向があるので、 念のために指摘させていただきました
“スバル”: ああ、そうだよ! 色々と棚に上げてスルーした結果が、今の俺だ!
“スバル”: このままじゃダメだって思うし、 そんな自分を変える努力もしていくつもりだ
“スバル”: ということで、とにかくプリシラたちを追おう
“スバル”: すげぇ癪だけど、一緒に戦ってくれるよう、 プリシラの奴に頭を下げてみるよ、俺

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_15

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_15_プリシラの秘密(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: 急ぎ、プリシラたちの後を追ったスバルたちだったが、 なかなか彼らの背中を捉えることができなかった
ナレーター: そんな中、 スバルはガナクスでのコリーナとの行軍を思い出している
ナレーター: あのときは、コリーナもスバルも戦闘員としての能力が乏しく、 知恵と勇気で乗り切るしかなかったのだが
ナレーター: 今回、フェネはもちろん、エミリアやレムも一緒だ
ナレーター: いわゆる雑魚キャラ的な『異形』に襲われたとしても、 意に介する必要はない
“スバル”: ふふ……
“フェネ”: スバル氏、どうしたのです? 突然笑い出すなど、不謹慎です
“スバル”: いや、あんときに比べりゃ、すげぇ戦力だなって思ってさ
“スバル”: ガナクスでのときは、ほとんど戦えねぇ 俺と、コリーナの二人だったしな
“フェネ”: やっぱりプリシラ女史たちの助力は不要と、 先程の話を蒸し返すつもりではありませんよね?
“スバル”: ああ、それはねぇよ 戦力は多い方がいい けど……
“スバル”: そういや、そもそもあいつらって戦力になるのか?
“スバル”: アルの奴は何気に手練れの雰囲気はあっけど、それだって、 ラインハルトやユリウスに比べたら疑問符が付く感じだよな?
“スバル”: アナスタシアさんとこは、ユリウス以外にも、 リカードとかミミが所属する『鉄の牙』があるし
“スバル”: クルシュさんとこは、クルシュさん自体がすげぇ強いうえ、 剣の達人のヴィルヘルムさんもいる
“スバル”: エミリアたんはエミリアたんで、 ラムやレムに、ロズワールにパックだろ?
“スバル”: まぁ、エミリアたんについては“俺がいる”って、 胸を張れねぇところがかっこ悪くはあるが……
“スバル”: 戦力って意味じゃ、他の陣営にも引けを取らねぇ
“スバル”: けど、プリシラのところはどうだ?
“スバル”: うーん、どう考えても、あそこの戦力は、 他と比べて一枚も二枚も落ちる印象なんだよな……
“スバル”: ってことで、エミリアたん プリシラの陣営について、 なんか知ってたりする?
“エミリア”: ごめんなさい プリシラのことはよくわからなくて……
“レム”: レムもスバルくんのお役に立ちたいですが、 プリシラ様についてはほとんど何も知りません
“レム”: 今わかっている王選の候補者の中で、 プリシラ様の情報が一番少ないのではないでしょうか
“スバル”: やっぱそうなんだな……
“スバル”: 自信満々で『異形』を先に倒してやるって感じだったし、 あいつらは弱くはないんだろうけど
“スバル”: このまま俺たちが追いつく前に、 大ボスの『異形』と戦ってたりしたら、ちょっと心配だな
“エミリア”: 私は早く二人を追うように言いました
“スバル”: ごめん! 遅れを取ったのは、俺が煮え切らなかったせいだね!
“エミリア”: でも、ホントに心配 二人に何かあったら……
“フェネ”: いえ、その心配は必要ないかと
“フェネ”: 無論、初動の遅れを招いたスバル氏は大いに反省するべきですが、 エミリア女史が気に病む必要はありません
“スバル”: ちょくちょく俺に釘刺すなよ! ちゃんと反省してっからさ!
“フェネ”: 反省をしている? スバル氏がですか? 残念ながら、とてもそのような方の目には見えません
“スバル”: こんな目つきでもちゃんと反省してるんだよ!
“スバル”: 俺の故郷には“目は口ほどにものを言う”って言葉があるんだけど 俺、あの言葉嫌い!
“スバル”: その言葉のせいで、どんだけ俺が損してきたことか……
“スバル”: だいたい俺の目って“オラオラお前らぶっ殺すぞ” みたいなことしか言ってねぇし!
“レム”: 確かにスバルくんの目は怖いですが、 その奥にしっかりと優しさを秘めています
“スバル”: ありがとう、レム けど、“奥に”とか“秘めてる”ってのを 汲んでくれる人は少ねぇかな
“エミリア”: “目は口ほどにものを言う”…… スバル、いい言葉ね
“スバル”: おっと! エミリアたんにはその言葉響いちゃった?
“スバル”: けど、その言葉にも例外があるってこと、 エミリアたんは忘れないでね!
“スバル”: んで、盛大に話が脱線しているわけだけど、 話を戻していいか、フェネ?
“フェネ”: 無論です とっとと話を戻してください 時間の無駄です、クソ上司
“スバル”: 俺のせいじゃないよね!? お前が俺の目つきを……って、まぁ、いいよ
“スバル”: とにかく、プリシラたちについてだ
“スバル”: 自信満々にあいつらが『異形』討伐に向かったのが、 俺にはすげぇ気になってる
“スバル”: んで、それについて考えられる可能性は二つだ
“スバル”: 一つは、あいつらにとっちゃ、今回が初めての経験だ そもそも待ち構える『異形』の強さを見誤ってる可能性がある
“スバル”: もう一つは、俺たちの心配は余計な危惧で、 あいつらがめちゃんこつえぇって可能性だ
“スバル”: 後者だった場合は、強力な『異形』も倒せるだろうし、 特に心配はしなくてもいいんだが……
“スバル”: 問題は前者だった場合だな
“フェネ”: いえ、もう一つ可能性があります
“スバル”: はあ? どういうことだよ、フェネ
“フェネ”: この世界がプリシラ女史にとって都合よくできている可能性、 とでも言えばいいのでしょうか?
“スバル”: 確かにあいつはそんなこと言ってるけど、 それは現実的じゃねぇだろ
“フェネ”: ですが、であれば、 アル氏のプリシラ女史への絶対的な信頼も頷けます
“スバル”: アルの信頼、ね 確かにあのおっさんは、プリシラの奴にご執心だよな
“スバル”: けど、仮にそんなことがあるんだとしたら、 いったいどうなるんだよ?
“フェネ”: わかりません
“フェネ”: そもそもそんな大それた可能性があるのかさえ、 スバル氏ではないですが、疑わしくはあります
“スバル”: だったらやっぱ、 その可能性は排除しても構わないんじゃねぇかな?
“スバル”: かつては俺も患っていたんだが
“スバル”: あいつはいわゆる中二病ってヤツで そういうことを言いたいお年頃なんだよ
“フェネ”: スバル氏、よく考えてください
“フェネ”: 我々は当初、王都に拠点を移して、 腰を据えて『禁書』のページを調査するはずでした
“フェネ”: なんとかクルシュ女史への報告はこなせましたが、 結果はどうです?
“フェネ”: 王都に滞在するはずが、初日にアル氏と邂逅し、 今や王都から遥か遠いバーリエル男爵領にいます
“フェネ”: 百万人以上が暮らす王都で、アル氏と再会するなど、 天文学的に低い確率です
“フェネ”: そもそも我々が王都にいること自体が稀なのですから
“フェネ”: そして、ページから絵が出るところを見たいと言っていた プリシラ女史は、我々と一緒にページの中に……
“フェネ”: それもプリシラ女史にとっては、 都合がよい状況ではないでしょうか
“フェネ”: プリシラ女史は望んだように非日常を体験できますが、 スバル氏と交わした約束の条件は満たされていません
“スバル”: 確かに、ページから『異形』が出てくるパターンだったら
“スバル”: 俺たちは約束を守ったことになって、 すんなりページが譲ってもらえたよな……
“スバル”: しかも、ページに吸い込まれるってのは、 最悪ではあるが、非日常って意味じゃ最上級だ
“スバル”: 俺たちは完全にあいつに振り回されてっけど、 逆に言うとあいつの思うがままになってるって感じもするな
“スバル”: けど、この世界があいつに都合よくなんて、 あり得る話じゃねぇだろ
“スバル”: ただ単に、我が強いあいつに、 お人好しな俺たちが振り回されてるだけだよ
“フェネ”: でしたら、いいのですが……
“スバル”: なるほど、フェネは腑に落ちねぇってわけだ
“スバル”: それに…… 確かに俺も嫌な感じは拭えねぇな
“スバル”: とにかく、先を急ごう まずはあいつらと合流しねぇとだ
“スバル”: あいつらが『異形』の強さを見誤ってるんだとしたら、 俺たちの助太刀が必要だし
“スバル”: あいつらがすげぇ強い場合は、 その戦力をこの目に焼き付けておく必要がある
“スバル”: そして──
“スバル”: プリシラに都合がいい世界なんだとしたら、 あいつがどんな結末を望んでいるのか、ぜひとも見届けねぇとな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_16

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_16_高みの見物(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: プリシラとアルを追っていたスバルたちが、 ようやく彼らに追いつくと
ナレーター: アルが『異形』相手に剣を振るっているところだった
“異形”: ウグググ
“アル”: ──くっ あれだけ切ったのに、まだピンピンしてやがる……
“プリシラ”: アル、ぐずぐずするでない そのようなものを切るのに、いつまで時間をかけるつもりじゃ
“アル”: ああ、わかってる、こんな奴すぐに…… って言いたいところだけどよ
“アル”: ダメだ、姫さん こりゃ、なかなかの強敵だぜ すぐにってのは無理だ それに──
“アル”: どうやら兄弟たちが到着したみてぇだ
“エミリア”: スバル!
“スバル”: ああ、すでにおっぱじまってるな……
“エミリア”: アルが大変そう 急いで助けないと
“プリシラ”: ──待て 動くでない 貴様らはそこで黙って見ておれ
“スバル”: はあ? なに言ってんだ、お前! どう見ても劣勢じゃねぇか!
“エミリア”: お願い、プリシラ! 一緒に戦わせて!
“プリシラ”: 断る 貴様らの助太刀など不要じゃ
“スバル”: アル、お前のご主人様は、ああ言ってっけど、 実際のところどうなんだ?
“スバル”: 今だったら、特別キャンペーンで、 お得に助太刀してやってもいいぜ?
“アル”: “特別キャンペーン”、ね
“アル”: メイドの嬢ちゃんと狐さんの姿が見えねぇのも、 そのキャンペーンと関係がありそうだな
“スバル”: お客様、お目が高い!
“スバル”: あの二人の奇襲攻撃に加え、 今ならエミリアたんの魔法攻撃もお付けして
“スバル”: ただいまキャンペーン期間につき、 特別にお持ちの『禁書』のページとの交換が可能です!
“アル”: わりぃ、魅力的なキャンペーンではあるんだが、 その対価の支払いについて、オレには決定権がねぇよ
“スバル”: そんなことねぇだろ ページをあちこちに置いて回ったのは、お前だ
“スバル”: お前がその場所を教えてくれるんなら、商談成立だぜ、アル
ナレーター: スバルがアルとの交渉をさらに進めようとした、 そのとき──
“フェネ”: レム女史、援護します!
“レム”: お願いします、フェネさん!
“レム”: ──はぁーーーっ!
ナレーター: 『異形』の背後から飛び出したレムとフェネが、 連携して攻撃を仕掛ける
“異形”: ウガガガァァーーッ!!
“アル”: お、ラッキー どうやら無料トライアルも実施中みてぇだな
“スバル”: いやいや、そんなもん実施してねぇって 完全にこっちの手違いだよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_17

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_17_興醒めは終わりの合図(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: 正面にはエミリアたんとアル
“スバル”: 背後にはフェネとレムが布陣──
“スバル”: 俺たちは完全に『異形』の挟み撃ちに成功している
“スバル”: このまま一気に片を付けちまおう
“プリシラ”: ならぬ
“スバル”: はあ? “ならぬ”ってのはどういうことだ?
“プリシラ”: 妾はこのようなこと、指示しておらぬ 貴様の勝手に、妾が付き合う道理はなかろう
“プリシラ”: アル、早いとこやってしまえ 貴様らは手出し無用じゃ、黙って見ておれ
“アル”: いやいや、姫さん そいつは無理ゲーだ ここは兄弟の意見に乗ってくれ
“アル”: そもそもページの中にご招待いただいたんだ 姫さんはすでにページになんて興味ねぇだろ?
“アル”: 兄弟たちが言ってた『異形』ってのにも会えたんだしよ
“プリシラ”: ふん 道化、貴様が妾の胸の内を測るなど、百年早いわ
“プリシラ”: ……じゃが、興が醒めた 好きにせい ページとやらもくれてやる
“スバル”: おお! 交渉成立だな!
“スバル”: ということで、お前の姫様からはOKが出た アル、戻ったら、ページを置いた場所を教えてくれよな?
“アル”: ああ、わかったぜ、兄弟 んじゃ、力を合わせて──
“エミリア”: 待って アル、怪我してるわ すごーく痛そう
“アル”: ああ、これか? 確かにいてぇけど、気にするほどの傷じゃねぇよ
“エミリア”: そういうわけにはいきません すぐに治してあげるから、いい子にしててね
“エミリア”: はい、これで大丈夫 もう痛くないはずよ
“アル”: ああ、サンキューな、嬢ちゃん お礼に、今度お茶でも──
“アル”: って、いてててててっ!
“スバル”: どさくさに紛れて、エミリアたんを口説いてるんじゃねぇ!
“アル”: そいつは誤解だぜ、兄弟 おっさん、別に口説いちゃいねぇよ お茶に誘って、その後あわよくばってだけじゃねぇか
“スバル”: “その後あわよくば”って時点で、下心満載だよね! 腹をつねったぐらいじゃ、俺の怒りは収まらねぇよ!
“スバル”: やっぱ、さっきの話はナシだ! お前ひとりで『異形』に特攻して、儚く散ってくれ!
“スバル”: エミリアたんも、次からはこんなおっさんの傷、 治してあげなくていいからね
“スバル”: ぺっぺって唾でも付けときゃ、どうせ治るんだから
“アル”: おいおい、おっさんだって、 たまには人のぬくもりってヤツに触れてぇんだよ
“アル”: それを唾つけときゃ治るだなんて…… いやいや、嬢ちゃんのだったら、それはそれでありか?
“スバル”: アホか! お前に付けんのは、俺のに決まってんだろ! マジでいっぺん死んでこい!
“フェネ”: スバル氏! アル氏! 言い争っている場合ではありません!
“アル”: だとよ、兄弟
“エミリア”: フェネの言う通りだと思う スバル、アルと仲良くして
“スバル”: くっ…… こいつと仲良くすんのは反吐が出っけど、 この状況じゃやむを得ねぇ
“スバル”: おっさんのこと、戦力としてあてにさせてもらって大丈夫だよな?
“アル”: ああ、もちろんだ けど、その前に──
“アル”: 嬢ちゃん、実は腕のここもいてぇんだよ さっきのヤツ頼むわ おっさん、いい子にしてるからよ
“エミリア”: わかったわ、アル 痛いとこ見せて……って、スバル!?
“スバル”: ぺっ、ぺっ、ぺっ!
“アル”: おいおい!? マジで唾飛ばしてんじゃねぇ!
“スバル”: どうだ、もう痛くねぇだろ? ということで、とっととバトルにしゃれ込もうぜ、おっさん
“アル”: やれやれ、毎回兄弟の唾が飛んでくるんじゃ、 おちおち怪我もしてられねぇな、ったく

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_18

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_18_『異形』の鳴き声(仮) 更新日:2021/06/30

“レム”: ──はぁーーーっ!!
“エミリア”: えーいっ!
“アル”: はっ! ほいっ! せやっ!
“異形”: ウガァーーッ!
“スバル”: ──っ! こっちが押してるのは間違いねぇ けど……
ナレーター: エミリア、レム、アルの攻撃は着実に『異形』を捉え、 ダメージを与えているのだが
ナレーター: 一向に『異形』には倒れる様子がない
“スバル”: すげぇ防御力の持ち主なのか、こいつ? それともHPがすげぇ高い感じ?
“スバル”: エミリアたんの魔法攻撃に、レムやアルからの物理攻撃……
“スバル”: どっちを喰らってびくともしねぇってことは、 後者の方が可能性が高そうだな……
“プリシラ”: 何をぶつくさ言っておるのだ 凡愚、貴様も戦え
“プリシラ”: 妾は飽きた 一刻も早くこのくだらぬ戦いを終わらせてこい
“スバル”: 緊迫したこの状況で、“飽きた”ってのはなんの冗談だよ!
“スバル”: ウチんとこのエミリアたんやレムはもちろんだけど、 お前んとこのアルだって頑張ってるじゃねぇか
“スバル”: 飽きてる暇があったら、しっかりみんなを応援してやれ
“プリシラ”: 凡愚、聞こえなかったか 妾は貴様に戦ってこいと言ったのだ
“スバル”: 聞こえてるわ! 聞こえたうえで、意見させてもらったんだよ!
“スバル”: それに、俺に戦闘を求められても困るぜ 俺は戦闘員としちゃ下の下なんでね
“スバル”: 代わりに頭を使って、色々分析してるところなんだよ ご所望通り、早く戦いを終わらせる方法を見つけるためにさ
“プリシラ”: ほう…… 試しに、貴様の分析結果を妾に教えてみよ
“スバル”: はあ? どうして俺がお前なんかに…… って、まぁ、いいよ 別にもったいぶるような話でもねぇしな
“スバル”: まず、あいつは相当高いHPの持ち主と見た だが、攻撃に関しちゃ緩慢だな
“スバル”: いや、むしろ本気でこっちを倒そうとしていないようにさえ見える
“スバル”: もしかしたらあいつは、こっちを疲れさせて、 生け捕りを狙ってるのかもしれねぇ
“プリシラ”: 妾たちを生け捕りにじゃと? 笑わせるでない
“スバル”: 毎度毎度笑わせるつもりはねぇんだが…… マジ、お前の笑いのツボがわからねぇよ
“スバル”: けど、“生け捕り”ってのは可能性の一つだ
“スバル”: とにかく、あいつには、 本気で俺たちを倒すつもりがないように見える
“スバル”: あんだけ攻撃を受けても、びくともしねぇ耐久力があるんだ
“スバル”: 戦い方としちゃ、ダメージを気にせず特攻して、 一人ずつ各個撃破ってのが効果的に思えるんだが
“スバル”: あいつにはそうする気配がねぇ それに──
“異形”: ウググググッ ウガガガガッ
“スバル”: さっきから続くあの妙な鳴き声も気になる まるで俺たちに何かを語りかけてるようだぜ……
ナレーター: スバルは『異形』を見据え、観察を続ける
ナレーター: 『異形』が発する声が、どうしてもスバルには、 自分たちに語りかけてきているように感じるのだ
ナレーター: 目の前の『異形』は、耐久力に特化しているものの
ナレーター: これまで出会った『異形』の中で、 かなり強い部類に分類されるのは間違いない
ナレーター: 『異形』がその耐久力を活かした戦闘スタイルをとれば、 スバルたちは一気に窮地に追い込まれるだろう
ナレーター: だが、『異形』はあえてそうせず、 エミリアやレムやアルからの攻撃を受け続けているように見える
“スバル”: あいつはこれまでの『異形』とは明らかに違う できればやり合いたくねぇ……
“スバル”: とはいえ、倒さないとページからは出れねぇんだよな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_19

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_19_まさかの脱出(仮) 更新日:2021/06/30

“異形”: ウガガガッ ウグググッ
“エミリア”: はぁ…はぁ… やっぱり、あの子の様子は変だと思うの
“レム”: はぁ…はぁ… 確かに反撃がほとんどありません レムたちが疲れるのを待っているようにも感じられます
“アル”: はぁ…はぁ… オレたちを疲れさせて、 いったい何をしやがるつもりなんだ?
“アル”: 嬢ちゃんたちは、アレに詳しいんだろ? 素人のおっさんにもわかるように、説明してくんねぇかな?
“レム”: 申し訳ありません、アル様
“レム”: これまでにこのような経験がなく、 ご説明したくてもできない状況です
“アル”: そりゃ残念だ けど、あんま長引くとウチの姫さんが──
“プリシラ”: 貴様ら、いつまで妾を待たせるつもりじゃ?
“アル”: あちゃー、やっぱ痺れを切らしちまったか……
“プリシラ”: もう、よい 妾が終わらせてやる 貴様らは下がれ
“スバル”: “下がれ”って正気か、プリシラ?
“スバル”: お前の参戦が本気だったとしても、 みんなと力を合わせて戦えばいいだけじゃねぇか
“プリシラ”: 妾がこの者たちと? 凡愚、それはなんの冗談じゃ
“スバル”: 今、冗談の要素あった!? 俺、かなりまっとうなことしか言ってないよね!
“スバル”: ……とはいうものの、三人を一旦下がらせるってのには、 やっぱ俺も賛成かもしれねぇ
“スバル”: あの『異形』は、これまでの奴とは明らかに違う 少し様子が見たい
“スバル”: こっちが攻撃の手を止めれば、 向こうも攻撃をやめるんじゃねぇかって気がするんだよ
“エミリア”: 私もそんな気がするわ この子、ホントは私たちと戦いたくないんじゃないかしら
“プリシラ”: ──貴様らの意見になど興味ないわ 妾はしたいようにする 邪魔立てする者は命ないものと知れ
“スバル”: プリシラ! お前な──
“フェネ”: (スバル氏、冷静になってください)
“スバル”: (フェネ、久しぶりだな お前、ちゃんと戦ってたのか?)
“フェネ”: (華々しく戦う方たちを陰ながら支える それが支援に特化したフェネの役割です)
“フェネ”: (直属の上司でありながら、 陰ながら努力する部下の姿に刮目していないとは──)
“フェネ”: (さすがクソ上司 ほとほと呆れ果てます)
“フェネ”: (本来上司とは、裏方の目立たぬ役目にこそ光を当て、 賞賛するものなのではないでしょうか?)
“スバル”: (ご高説どうも)
“スバル”: (けど、俺はお前の上司じゃねぇ そんな風に 理想の上司論を語られても、戸惑うぐらいしかできねぇよ)
“フェネ”: (この期に及んでスバル氏は……)
“フェネ”: (ですが、今は上司のあるべき姿について、 あれやこれや言っている場合ではありません)
“フェネ”: (簡潔にお尋ねします スバル氏は、 プリシラ女史にあの『異形』が倒せるとお思いですか?)
“スバル”: (そ、それは……)
“フェネ”: (確かにあの『異形』はこれまでとは異なります ですが、倒さなければ我々はここから出られないでしょう)
“スバル”: (そりゃ、様子を見るだけ無駄って意味かよ?)
“フェネ”: (いえ、そうとは言っていません)
“フェネ”: (“様子を見る”という意味では、プリシラ女史についても 当てはまるのではないかと進言しているのです)
“スバル”: (なるほど…… つまりお前は、プリシラの戦闘力を測る、 いい機会だって言いたいんだな?)
“フェネ”: (左様です ここはプリシラ女史にお任せしてみるのも一興かと)
“スバル”: (倒せたら倒せたで、プリシラの戦闘力が推し量れる)
“スバル”: (んで、倒せなかったら倒せなかったで、 そんときは一旦引いて『異形』の様子を見ればいいってわけだ)
“スバル”: (しかも、プリシラの奴は、 俺たちの意見に耳を貸す気がねぇときちゃ)
“スバル”: (そうする以外に方法はなさそうだな)
“スバル”: オーケー、プリシラ、わかったよ ということで、エミリアたんとレムは一旦引いてくれ
ナレーター: フェネの進言により、 スバルがエミリアとレムを下がらせようとしたそのとき──
“異形”: ウガガガァァァーーーッ!!!
ナレーター: 突如『異形』の様子が一変する
“スバル”: どうした突然!?
ナレーター: 瞠目するスバル
ナレーター: そんなスバルをかつてない程の強烈な風が襲った
“スバル”: うっ! だ、ダメ…… うわぁーっ!
“レム”: ──スバルくん! うっ!
“エミリア”: ──スバル! きゃーっ!
“アル”: おいおい、今度は…… って、おわっ!
ナレーター: 強烈な風に次々と吹き飛ばされていく面々……
ナレーター: やがてプリシラやフェネも吹き飛ばされ
ナレーター: その場には、誰もいなくなっているのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_20

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_20_エピローグ_飛散する驚異(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: 突如吹き荒れた強風により吹き飛ばされたスバルたちは──
“スバル”: こ、ここは…… 元の世界……
ナレーター: 気が付くとページに吸い込まれたプリシラの屋敷で倒れていた
“スバル”: みんなも無事に──
“レム”: スバルくん! ページが!
“スバル”: え!
ナレーター: レムの視線を追い、空を見上げるスバルが目にしたのは──
ナレーター: 遥か上空で虚空へと消え去ろうとするページなのであった
“スバル”: ぺ、ページが……
“スバル”: いやいや、その前にどうして俺たちはページを出られたんだ? 俺たちは『異形』を倒してないはず……
“スバル”: それに、あれをそのまま逃がすわけにはいかねぇ エミリアたん! レム! 魔法でどうにか!
“エミリア”: ごめんなさい、スバル 私の魔法はあそこまでは届かないわ
“レム”: 同じく、レムにもどうすることもできません……
“フェネ”: 恐らく、我々を吐き出すために、 あのページは大量のマナを消費したと推測されます
“フェネ”: 当面の間、あのページが悪さをすることはないでしょう
“スバル”: そりゃ、そうなのかもしれねぇけど、 あのまま逃がしちまっていいのか?
“フェネ”: 対処する方法がない以上、他の選択肢はないかと 論じるだけ時間の無駄です
“フェネ”: それにスバル氏は、 あの『異形』が気になっているのではありませんか?
“フェネ”: 取り逃がしたことは残念ですが、 倒さずに済んだと前向きに捉えることも可能です
“スバル”: なるほど、確かにな あいつはこれまでの『異形』とは明らかに違っていた
“スバル”: しかも、俺たちをページから排出までしやがったんだ 嫌でも興味を持っちまうよ
“スバル”: にしても、どうしてこんなことが……
“フェネ”: あの『異形』が対になっている可能性があります
“スバル”: どういうことだ? フェネ、もうちょい説明してくれ
“フェネ”: つまり、あのページの物語には続きがあり
“フェネ”: その物語を統べる『異形』と 合流を図ろうとしているのでは?ということです
“スバル”: 待て待て! だとしたら大変じゃねぇか!
“スバル”: そういう場合、もし合流に成功しちまったら、 大幅にパワーアップしちまうもんなんだよ!
“プリシラ”: 凡愚、貴様は妾をどこまでも楽しませる道化よの
“スバル”: 俺にはお前を楽しませようなんて気持ちはねぇよ 勝手にツボに入れて、お前が一方的に楽しんでるだけだろ
“スバル”: なんて、お前の相手をしてる場合じゃねぇ
“スバル”: 急いであのページを追おう! 重大なことになっちまう前に早く!
“フェネ”: ……追う? どのようにしてですか?
“スバル”: “どのように”って、そういうのお前の専門なんじゃねぇのか? そんなこと、俺に聞かれたってわかるわけねぇだろ
“フェネ”: フェネにもわかりませんよ 他のページと同じく、地道に探すしかないと思われます
“スバル”: そんな……
“アル”: おいおい、落ち込むなよ、兄弟 おっさんが慰めてやるからよ
“スバル”: お前の慰めなんているかよ! お前に慰められるぐらいなら、このまま落ち込んでた方がマシだ!
“アル”: 兄弟は、オレからページを置いた場所、聞かなくていいのか?
“アル”: 一枚は飛んでいっちまって、 一枚は兄弟たちが見つけて『禁書』に封じたみてぇだが
“アル”: あと十枚近くは残ってるぜ
“スバル”: マジかよ! それはすげぇ助かる!
“スバル”: ガナクスじゃ、さんざん苦労して、 封印できたのはたった一ページだったしな
“スバル”: それが十ページもってなりゃ、 さすがの俺もテンション爆上がりだぜ!
“アル”: お、なんか急に元気になりやがった 現金な奴だぜ、まったく
“アル”: んで、上げといてわりぃんだけど、 まぁ、ページ集めは急ぐこったな
“アル”: 行きの竜車の中で話したけど、 お前らと同じように、『禁書』のページを集めてる奴がいる
“スバル”: ああ 高額で『遺作』……つまり『禁書』のページを 買い取りてぇって申し出た例の芸術家のことだろ?
“アル”: そうだ あいつはマジで本気だった
“アル”: ウチの姫さんはびくともしなかったが、 そういうケースはどう考えたって稀だ
“アル”: もしもオレが姫さんの立場だったら、 即行であいつに売っちまってたよ
“スバル”: お前みたいな奴が持ち主じゃなくてよかったよ
“スバル”: まぁ、お前の姫様はあれだが、 お前はもうちょい信念みたいなもんを持った方がいいぜ
“スバル”: 金じゃどうにもならねぇもんの方が、 価値があったりするんだからさ
“プリシラ”: なるほど、道理よの
“スバル”: な、なんだよ、突然?
“スバル”: お前が話に割って入ってくると、 嫌な予感しかしねぇんだけど……
“プリシラ”: 妾にとってページとやらは無価値じゃ
“スバル”: ああ、そうみてぇだな
“スバル”: ページの中を堪能できて、お前は満足できたんだろ? ありがたくちょうだいさせてもらうよ
“プリシラ”: して、凡愚、いくら支払うのじゃ?
“スバル”: はあ? タダじゃねぇのかよ?
“プリシラ”: 無論じゃ 無償で譲る必要はなかろう
“スバル”: いやいや、お前、“くれてやる”って言ったよね? それってつまり“タダ”ってことだろ!
“アル”: あー、兄弟 そういう意味じゃ、グレーな気がすんな 結局あの『異形』とやらは倒せなかったからよ
“スバル”: けど、あんときのプリシラのオーダーは、 早くページから出ることだったじゃねぇかよ
“スバル”: あの『異形』を倒す倒さないに関係なく、 こうしてページからは出られたんだ 条件は満たしてる
“アル”: だから“グレー”って言ったんだ
“アル”: 確かに外には出れたが、“早いとこ『異形』を倒して、 ページを出る”ってのが正確なオーダーだったんじゃねぇか?
“アル”: 少なくともオレはそう受け取ったし、兄弟だってそうだよな?
“スバル”: そ、それは……
“アル”: 柄にもなく兄弟が“価値あるもんは金じゃ買えねぇ”なんて いいこと言うから、姫さん、気が変わっちまったみてぇだぜ
“スバル”: いいこと言って、マイナスに作用するって、 いったいどんなシステムだよ!
“エミリア”: ねえ、スバル やっぱりタダでもらうのは、申し訳ない気がするの だって、すごーく高いものなんでしょ?
“スバル”: え、エミリアたん……
“レム”: スバルくん このような場合に備えて、 ロズワール様からはそれなりの金額を託されています
“スバル”: 教えてくれて、ありがとな、レム
“スバル”: ということで、わかったよ 支払えばいいんだろ、支払えば
“スバル”: ロズワールの奴に借りを作っちまうのは癪だが、 きっちり代金は支払わせてもらうよ!
“スバル”: ふぅ…… とりあえず、ここでのページ集めは完了だな、フェネ
“フェネ”: はい ですが、どこかにページが眠っていないとも限りません 時間を置いて訪れればあるいは……
“スバル”: ああ、心得てるよ アルが置いた以外にも、ページが眠ってる可能性は否定できねぇ
“スバル”: けど、まぁ、まずはひと段落だ
“スバル”: しかも十枚近くページを集められたし、 思惑と違うこと満載だったけど
“スバル”: 王都から遥々出張った甲斐はあったぜ
“スバル”: とはいうものの、どうしてこれまでみてぇに、 ページに変化がなかったかは謎のままだ
“スバル”: プリシラにページの成長を抑える力があるってのも
“スバル”: あのページが最終系まで進化したことを考えると、 ないんじゃないかって気がする
“フェネ”: それについては、ページが吸収するマナの許容量の問題かと
“スバル”: 許容量? つまり、たくさんマナを吸えるページもあれば、 ちょっとしか吸えないページもあるってことであってる?
“フェネ”: その通りです、スバル氏
“フェネ”: フェネはページにはマナの吸収速度が速いものと 遅いものがあるのだと考えていました
“フェネ”: ですが、今回のことで、マナの吸収速度ではなく、 蓄えられる最大量に差があるのだと考えるようになりました
“スバル”: つまり、蓄えられる容量が少ないページは、 すぐに成長してフェネのレーダーに反応するようになるけど
“スバル”: 容量がでかいページは、成長が遅いから、 レーダーに反応するまで、結構な時間がかかっちまうってことか
“スバル”: けど、どうしてそう考えるようになったんだ? 吸収速度の違いで、今のことは十分説明できるぜ?
“フェネ”: 『異形』の耐久力です あの『異形』の耐久力はこれまでの『異形』とは桁違いでした
“フェネ”: そして、蓄えられるマナの量に個体差があるのであれば、 そのことも説明できます
“フェネ”: ここバーリエル男爵領にあるページが 異変を起こさなかった理由についても
“スバル”: つまり、容量が大きくて、全然マナで満たせてねぇから、 ここのページは悪さをしなかったってわけか
“スバル”: 放っておいたら、いつかマナで満たされて、 プリシラの予想に反して悪さをしてたってことだな
“スバル”: しかも大容量タイプだから、被害もこれまでよりでかくなった
“フェネ”: 左様です たまたま許容量が大きいページだったため、 異変が起きなかったと考えるべきでしょう
“スバル”: たまたま、か…… まぁ、そんなことだろうとは思ってたよ
“スバル”: けど、どうしてあのページだけ、急に成長したんだ?
“スバル”: あのページだって、 満たされるのに、かなりのマナが必要だったはずじゃねぇか
“フェネ”: それについては、さらに考察する必要があります
“フェネ”: あのページに限らず、フェネたちを吸い込む特別なページは、 突如爆発的な成長を遂げます
“スバル”: 確かに、あのページに限ったことじゃねぇか、それは……
“スバル”: けど、フェネ ページの成長に個体差があるのが、 許容量の差だって判断は早計なんじゃねぇかな?
“スバル”: 確かにそれもあるかもしれない けど……
“フェネ”: マナの吸収速度にもやはり差があるのではないか? スバル氏はそう言いたいのですね
“スバル”: ああ マナの許容量に差があるのは間違いないと思う
“スバル”: でも、吸収するスピードにだって、差があってもおかしくねぇだろ
“スバル”: 許容量がでかくて、吸収速度も速いなんてページがあったら、 ぞっとしねぇけどさ
“フェネ”: そういうページが存在する可能性は十分にあります
“スバル”: やっぱそうだよな…… マジ、ぞっとしねぇな
“スバル”: って、よく考えたら、これからどんどん 強い『異形』と戦わなきゃいけないってことにならねぇか?
“スバル”: つまり、今後頭角を現すページって、 これまでに倒してきた奴よりも許容量がでかいってことだろ?
“スバル”: もちろん、マナの吸収速度が遅い、 どんくさいページも混ざってるかもしれねぇけど
“フェネ”: 左様です マナの許容量が大きいページの『異形』…… つまりより強力な『異形』ということになります
“スバル”: くっ…… 前途多難だな、マジで……
“スバル”: 飛び去ったページの『異形』が、 続編と合体してより狂暴になる可能性まであるってのに
“スバル”: あんときは、倒すには惜しいって感じたけど、 今となっては逃したことが悔やまれるぜ……
“スバル”: それに、ページを集めて回ってるっていう、 謎の芸術家って奴の存在も気になるしな
“スバル”: 相当な財力がありそうだし、 すでにページを何枚か手に入れちまってるかもしれねぇ
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ? どうした?
“フェネ”: 何がですか、スバル氏?
“スバル”: いや、今、すげぇ難しい表情してたじゃん
“フェネ”: なるほど フェネのニヒルな表情に、 思わずスバル氏は見惚れてしまっていたのですね
“スバル”: 見惚れてねぇよ! ってか、“ニヒル”ってのも、 こっちじゃ使いそうもねぇ表現だな!
“スバル”: 俺にもプライバシーってもんがあるんだから、 あんま勝手に俺の顔を読まないでくれる?
“スバル”: 今後は俺の顔を読む前に、ちゃんと許可取ってくれよな
“フェネ”: 確かに、今はコンプライアンスの厳守が求められる時代 持ち帰って慎重に検討させていただきます
“スバル”: 言ってる傍から“コンプライアンス”って!
“スバル”: しかも“持ち帰って検討”って、 あんま厳守するつもりねぇじゃん!
“フェネ”: ところでスバル氏、今はなんの話をしているところでしょう? スバル氏の話は脱線の連続のため、本題を見失ってしまいました
“スバル”: 確かに脱線しがちなのは認めるが、 それは俺だけが原因じゃないよね?
“スバル”: フェネ、お前だって……
“フェネ”: スバル氏 再び脱線の兆候です
“スバル”: くっ…… なんか一方的に俺が悪いみたいになって、 腑に落ちなくはあるが、ここは本題に戻そう
“スバル”: 今の本題は、これから前途多難だってことだ
“スバル”: 強くなる『異形』 逃げ去った『異形』のこともある それにページを集めてるっていう謎の芸術家の存在
“スバル”: マジ、前途多難にもほどがある感じだ
“フェネ”: ですが、スバル氏が撒いた種です 責任感を持ってしっかりと対処してください
“スバル”: ああ、わかってる どんな困難が待ってたとしても、 俺にはやる以外の選択肢はねぇよ
“スバル”: 『禁書』のページをかき集めて、この『禁書異変』を終わらせる
“スバル”: じゃないと、王選ってヤツも開始できねぇし、 エミリアたんの王様になるって夢も叶わねぇしな
“スバル”: って、そういや、エミリアたんは?
“フェネ”: 先程、レム女史とともにプリシラ女史のところへ赴きました ページの代金を支払うためだと思われます
“スバル”: あ…… だ、代金をね……
“スバル”: けど、俺を置いてくなんて酷くねぇか? 俺にも一声かけてくれてよさそうなもんだろ
“フェネ”: それはレム女史なりの配慮でしょう
“フェネ”: スバル氏のやらかしにより、余計な出費が発生したのです しかも、高額な
“フェネ”: その支払いに立ち会うことで、 スバル氏の小さな良心が痛む可能性があります
“フェネ”: そんなレム女史の気遣いにも気付かぬとは…… さすがクソ上司
“フェネ”: プリシラ女史ではないですが、 胴と首が繋がっていることに、スバル氏は感謝するべきです
“スバル”: ずいぶんな言われよう! 今の数ワードで、いったい俺は何回ディスられたんだ!
“スバル”: それに、お前、あの場にいたよな?
“スバル”: どう考えたって、俺のやらかしってよりは、 プリシラの奴がまともじゃないだけだったじゃねぇかよ!
“フェネ”: 反省するどころか、逆ギレですか? ほとほと呆れます
“スバル”: “反省”ってな、反省の仕方がわからねぇよ
“スバル”: それに“反省”するべき点があるとすれば、 あいつらに関わっちまったってことだ
“スバル”: マジでやることなすこと、あいつとは嚙み合わねぇ プリシラは姉様以上に、俺にとっちゃ強敵だぜ
“フェネ”: なるほど ラム女史のことをスバル氏はそのように…… これは一刻も早くラム女史にご報告せねば
“スバル”: いやいや、待ってくれ、フェネ! 今のはナシだ! ノーカンで頼む!
“スバル”: ついつい、心にもない言葉が出ちまったんだよ
“フェネ”: なるほど、心にもない言葉が、ですか?
“スバル”: ああ、そうだ 心にもない言葉だ
“フェネ”: では、それについてもラム女史にご報告して、 判断を仰ぐことにします
“スバル”: どうして、ラムの判断!? ここは上司である俺の判断に……
“フェネ”: どうしてフェネが、クソ上司であるスバル氏の判断に 従う必要があるのでしょう?
“スバル”: いやいや、上司と部下の関係って、 そういうもんじゃなかったっけ!
“フェネ”: そういえば、スバル氏のやらかしにより、 高額な支払いが発生した件についても
“フェネ”: 余すことなくラム女史にお伝えしなければ
“スバル”: 待て待て、その報告が一番いらねぇだろ!
“スバル”: むしろこの短期間で、一気に十枚近いページを回収したこととか、 成果の方をちゃんと報告してくれ!
ナレーター: バーリエル男爵領にて、 飛び去った一枚を除く九枚のページを回収したスバル
ナレーター: だが、残されたページはあまりにも多い
ナレーター: スバルのページ探しの旅は、まだまだ続くのであった──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_00

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■プロローグ タイトル:次なる目的地 更新日:2021/08/20

ナレーター: バーリエル男爵領でのページの回収を終えたスバル一行は、 一度屋敷に戻りロズワールへの報告を行った後
ナレーター: 本格的な『禁書』のページ回収を再開すべく、 再び王都に拠点を移すのだった
“スバル”: ──ということで、ようやくここを拠点に 活動を行うことになるわけだな
“スバル”: 前回は到着早々、その日の夜にはプリシラたちに拉致られて、 俺は王都を出ちまってたし
“スバル”: 王都での印象がまるでねぇ
“スバル”: 今回こそは、王都でいい思い出を一緒に作ろうね、エミリアたん
“エミリア”: ええとね、スバル 私たちは遊びにきたわけじゃないの わかってるとは思うんだけど……
“スバル”: もちろんわかってるよ けど、最近離れ離れになるケースが多かったからさ
“スバル”: ほら、ガナクスのときもそうだったし、 プリシラの一件でもそうだったじゃん
“スバル”: 俺としては、常にエミリアたんと行動を共にしたいんだけど、 運命の女神様がなかなかその願いを聞いてくれねぇ
“スバル”: ってことで、いわゆる決意表明みたいなもんだよ “いい思い出を作ろう”ってのは、ちょっと冗談がすぎたけども
“フェネ”: 冗談ということで安心いたしました スバル氏には前科がある故、フェネは心配してしまいました
“スバル”: わりぃ、フェネ、“いい思い出を作ろう”ってのは冗談だ だから、俺に失望していなくなったりしないでくれ
“スバル”: とにかく、前回はプリシラたちのせいで、 なんだかあやふやになっちまったけど
“スバル”: ここから仕切り直しだ
“スバル”: 明日はクルシュさんのとこに もろもろ報告にいく予定になってるけど
“スバル”: それまで何もしないなんて選択肢はないと思う
“スバル”: というわけで、さっそく調査に出かけようぜ!
“レム”: スバルくんはやる気に満ちていますね
“レム”: そんなスバルくんを見習って、 レムも精一杯調査を頑張りたいと思います
“スバル”: おお 頼んだぜ、レム すげぇあてにさせてもらう
“レム”: はい! レムにお任せください!
ナレーター: 王都に着いて早々、調査を開始したスバルたち
ナレーター: そして自然と、エミリア、レム、 それにスバルとフェネという三手に分かれて行動してしまっている
“フェネ”: スバル氏 この辺りに『禁書』のページの気配は感じません 他の場所の調査に向かいましょう
“スバル”: ああ、わかった…… って、どうしてフェネが俺と一緒にいるんだ?
“スバル”: 俺はエミリアたんと一緒に行動するつもりだったはずだ
“フェネ”: そのようなこと、フェネに聞かれても困りますね 自然と我々はこのように分かれていました
“フェネ”: スバル氏も何も言わなかったので、 特に異論はないものと思っていたのですが、違うのですか?
“スバル”: クソっ 体に染みついた習慣ってのは怖いな 無意識に俺はお前についてきちまってたよ
“スバル”: 次こそは絶対エミリアたんと行動を共にしてみせるからな!
“フェネ”: スバル氏は部下のやる気を削ぐ天才ですね デリカシーのない発言、フェネはとても不快です
“スバル”: わりぃ、フェネ! 確かにデリカシーがなかったな
“スバル”: って、“デリカシー”ってのも俺の顔に?
“フェネ”: 左様です はっきりと書かれています
“スバル”: ったく、マジで俺の顔って、お前にどう見えてんだ?
“スバル”: アルの野郎にも読める感じだったし、 目つき以外にもそんな欠点があったなんて、マジ凹んじまうよ
“フェネ”: ……“欠点”というのは違うのではないでしょうか
“フェネ”: 事実、フェネはスバル氏の顔に書いてあるものが読めて、 とても重宝しています
“スバル”: お前はそうだろうな!
“スバル”: けど、頭の中を勝手に覗かれたような気分になるし、 お年頃の男の子としてはすげぇ複雑なんだよ
“スバル”: できれば、そんな仕様は遠慮してぇってのが本音だ
???: ……ナツキさん?
“スバル”: おぉ! オットーじゃねぇか 元気してたか?
“オットー”: はい、おかげ様で元気にさせてもらっています
“オットー”: メイザース辺境伯ともお取引させていただけることになりましたし 色々ありましたが、“今は”ナツキさんに感謝してるんです
“オットー”: ナツキさんが不在のときに一度お屋敷にお伺いしたのですが
“オットー”: その際、ナツキさんの口添えがあったということで、 すぐに辺境伯は僕との取引を了承してくれました
“スバル”: そうか ロズワールの奴、ちゃんと覚えててくれたんだな
“スバル”: 俺も色々あって屋敷にいないことが多かったけど、 お前のことは気にしてたんだよ
“スバル”: ロズワールを紹介するって約束したのに、 結局あの後会う機会がなかったから
“スバル”: けど、どうやら約束を果たせてたみたいで何よりだよ
“スバル”: お前とはいい関係をキープしたいから、贔屓にしてやってくれって ロズワールに推薦しておいて、マジよかったぜ
“オットー”: それについては感謝しかありませんよ ありがとうございました
“オットー”: ですが、本当にナツキさんは、 辺境伯にとって重要な方だったんですね
“オットー”: 正直、ダメで元々のつもりで訪問したのですが、 話がすんなり進んで驚きました
“スバル”: おいおい、オットー、ちょっと俺に失礼なんじゃねぇか?
“スバル”: さっきだってわざわざ“今は”って部分を強調してたし
“オットー”: それはそうですよ
“オットー”: ナツキさんにはさんざん酷い扱いを受けましたし、 色々無茶苦茶だったじゃないですか
“スバル”: 待て待て、俺なんてかなりマシな方だろ
“スバル”: 言っとくけどこの世界は、 俺なんかよりもアクが強い連中で溢れてるんだぜ
“オットー”: な、ナツキさんよりもですか!
“オットー”: できればそういう方々とは、関わり合いたくないですね、僕は……
“スバル”: ふふふふ はははは
“オットー”: な、ナツキさん!? その薄気味悪い笑いはなんなんです?
“スバル”: 時すでに遅しだ、オットー というわけで、お前にフェネを紹介してやろう
“スバル”: こいつは可愛い外見をしているが、俺が出会った中でも相当だ 自信を持って俺よりも難敵だって断言できるぜ
“オットー”: え? この可愛らしい精霊様がナツキさんよりもですか?
“フェネ”: オットー氏は、完璧な容姿のフェネと違い、 ずいぶんと幸が薄そうな冴えない顔をしていますね
“フェネ”: スバル氏との会話から、商売をされている方と推測しますが、 とても商売人として成功されているとは思えません
“オットー”: しょ、初対面でそこまで言います!? 確かにその通りですが!
“フェネ”: 申し訳ありません フェネは正直者なので嘘が言えないのです
“オットー”: それ、謝ってないですよね! 傷口に塩を塗られた気分ですよ!
“スバル”: な? なかなかだろ
“オットー”: は、はい……
“スバル”: あと、プリシラって奴がいて、こいつもすげぇんだ
“スバル”: 早くお前をプリシラにも紹介してぇぜ
“スバル”: きっとお前も、会って早々“死んで詫びろ”とか 言われちゃうんじゃねぇかな
“オットー”: どうして僕が、死んで詫びる必要が!? そんな人、絶対に紹介しないでください!
“オットー”: なんだか長話をすることに危険を感じるので、 僕はそろそろいかせてもらいます
“スバル”: 待て待て、もう少しぐらいいいだろ? せっかく久しぶりに会ったんだしよ
“オットー”: いえ ナツキさんを見かけて、思わず声をかけてしまいましたが、 実は、少々急いでいまして
“スバル”: ……急いでる? そりゃ、またなんで
“オットー”: さっき、流れ星が落ちたって情報を聞いたんですよ それで、現場に向かう準備をしていたんです
“オットー”: もし、落ちた隕石を見つけられたら、 一攫千金は間違いなしですから
“オットー”: 急いで準備して向かわないと それでは──
“スバル”: おい! オットー、もうちっと詳しく! ……って、いっちまいやがった
“スバル”: …………
“フェネ”: スバル氏?
“スバル”: いや、ちょっと隕石が気になってさ
“スバル”: けど、俺たちには関係ねぇか……
“スバル”: エミリアたんもレムも頑張ってるんだし、 俺たちも調査を頑張らねぇとな
“フェネ”: 左様です 元を正せばスバル氏が皆様を巻き込んだのです 張本人であるスバル氏は、誰よりも尽力する必要があります
“スバル”: へいへい、わかってるよ ってことで、調査再開だ、フェネ
ナレーター: 昨日、王都に到着早々調査を開始したスバルたちだったが、 残念ながら『禁書』のページの発見には至らなかった
“スバル”: さて、今日の予定だけど、 午後にはクルシュさんのとこに色々と報告にいくことになってる
“スバル”: それまでは昨日に引き続き王都の調査ってことで──
“レム”: すみません、スバルくん 先程、宿屋のご主人からこちらの手紙を預かりました
ナレーター: 珍しくスバルの言葉を遮ったレムが、 一通の封筒をスバルに手渡すのだった
ナレーター: その封筒には、差出人としてアナスタシアの名が記されている
“スバル”: ……アナスタシアさんから?
“スバル”: 俺たちがここに滞在してるって知ってるとは、 さすが耳が早いアナスタシアさんだな
ナレーター: そんな独り言を言いながら、封を切り手紙を取り出すスバル
ナレーター: だが……
“スバル”: わりぃ 俺には読めねぇや テヘ
“フェネ”: 可愛い子ぶっても無駄ですよ、スバル氏 スバル氏の目つきの悪さは致命的です
“スバル”: わかってるよ!
“スバル”: けど、代表して封を切った手前、こうでもして 恥ずかしさを紛らわせねぇとやってられなかったんだ
“レム”: スバルくん、レムにはとても新鮮でしたよ できればもう一度はにかむスバルくんを見たいのですが……
“スバル”: もう一度は難しいかな! キャラじゃないのは自覚してるしね!
“エミリア”: それじゃスバル、その手紙、私が読むわね
“スバル”: ああ、頼むよ、エミリアたん 読んで、内容をみんなに共有してくれ
ナレーター: スバルから手紙を受け取ったエミリアは、 熱心にアナスタシアからの手紙に目を通す
ナレーター: それからスバルたちに、手紙の内容を共有するのだった
“スバル”: 手紙には、アストレア領ってとこで、 『禁書』のページが多数発見されてる、そう書かれてるんだね?
“エミリア”: ええ そう書かれてるわ あくまで噂みたいだけど……
“スバル”: けど、アナスタシアさんがわざわざ知らせてくれたんだ 噂だけど確度は高いってことだろ
“スバル”: となりゃ、そのアストレア領ってとこに向かわないとね
“スバル”: 王都にきたばっかりだってのに、 結局また王都を離れることになりそうだな、こりゃ
“クルシュ”: ──なるほど、バーリエル男爵領での一件については了解した
“クルシュ”: 気になるのはやはり、 アナスタシア・ホーシンからもたらされた情報だな
“スバル”: ああ、その通りだ 俺たちはアストレア領ってとこに向かうつもりだ
“クルシュ”: そうか…… だが、卿らの報告には気になることがもう一つある
“フェネ”: それは行方知れずとなったページのことだとフェネは推測します
“クルシュ”: その通りだ、フェネ
“クルシュ”: 件のページがどこへ消え去ったかはわからぬが、 可能な限り回収を急ぐべきだろうな
“スバル”: それについちゃ俺も異論はねぇよ けど、肝心の行き先がわからねぇ
“スバル”: 回収を急ぎたくても、現時点じゃお手上げの状態だ
“クルシュ”: 一つ、ここで私の推論を話そう
“クルシュ”: 卿らには耳障りの良い話ではないだろうが、 ページとは意思を持って移動するものではないだろうか
“クルシュ”: 卿らもすでに耳にしているかもしれないが
“クルシュ”: 先日フェリスから、 王都の遥か南東に巨大な隕石が飛来したという報告を受けた
“クルシュ”: 王都の遥か南東…… 彼のアストレア領も王都の遥か南東に位置している
“スバル”: ──なっ!
“フェネ”: スバル氏 オットー氏が言っていた隕石というのは……
“スバル”: ああ、恐らくそれのことだろうな
“スバル”: 正直、ちょっと嫌な予感がしたんだよ 無関係じゃないかもしれねぇってな
“クルシュ”: 実は、小規模なものだが、 最近彼の地では隕石の飛来が相次いでいるらしい
“クルシュ”: にもかかわらず、 肝心の隕石は一つも発見されていないそうだ
“スバル”: 代わりに、ページが続々と発見されてるわけか……
“エミリア”: つまり、隕石だってみんなが思っていたものが、 実は『禁書』のページだったってこと?
“スバル”: その可能性が高そうだね
“スバル”: んでもって、先日落ちた巨大な隕石は、 すげぇ強力な『異形』を宿したページって可能性が高い
“レム”: 強力な『異形』…… バーリエル男爵領で取り逃がした『異形』はかなり強力でした
“スバル”: ああ 色々つながってんな、マジで
“スバル”: 実際、俺たちは飛び去るページを目撃したわけだし、 自由気ままにページは移動するって考えて間違いなさそうだな
“スバル”: クソっ! ただでさえ、ある程度マナが溜まんねぇと、 発見できねぇってのに
“スバル”: 色々動き回ってるんじゃ、そりゃ集めるのが大変なわけだぜ
“スバル”: しかも、早いとこ『禁書』に封じねぇと、 『異形』が出てきて大変なことになっちまう
“クルシュ”: ナツキ・スバル そう悲観する必要はない
“クルシュ”: 事態を重く見た騎士団が、 ラインハルト・ヴァン・アストレアを調査に向かわせたと聞く
“クルシュ”: 事が起こっているのが彼の地であれば、当然の人選ではあるがな
“スバル”: ……ラインハルト・ヴァン・アストレア?
“レム”: スバルくん アストレア領を治められているのは、 あのラインハルト様です
“スバル”: なるほど、道理で……
“スバル”: けど、あいつが向かったとなりゃ、確かに安心だ 『異形』が暴れ出してもあいつなら倒せるだろうし
“フェネ”: ですが、『禁書』に綴じなければ、その場凌ぎにすぎません
“フェネ”: ラインハルト氏がいかに強靭でも、 根本的な解決は図れないでしょう
“スバル”: そりゃそうだ 俺たちがアストレア領に向かわないなんて選択肢はねぇよ
“スバル”: ってことで、 明日にはアストレア領に向けて出発したいと思うんだが……
“クルシュ”: ああ 卿らは急ぎ彼の地に向かってくれ 王都については、引き続き私の方で監視の目を光らせておく
“スバル”: 助かるぜ、クルシュさん これで俺たちも安心して王都を発てるよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_01

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■1話 タイトル:フェリスからのエール 更新日:2021/08/20

ナレーター: これまでの報告と今後の話し合いを終え、スバルたちが クルシュと別れる頃には、すでに日は傾いているのだった
???: あっ! スバルきゅんじゃにゃい!
“スバル”: お! フェリス、それにヴィルヘルムさんも
“フェリス”: そうそう、今日はスバルきゅんたちが報告にくる日だったね
“スバル”: ああ 今さっきまでクルシュさんと話してたところだ
“スバル”: 詳しいことはクルシュさんから共有されると思うから、 今は言わねぇけど
“ヴィルヘルム”: 申し訳ありません 可能であれば、同席したいと思っていたのですが……
“スバル”: いえいえ、気にしないでください
“スバル”: その様子から察するに、同席できなかったのは、 ヴィルヘルムさんのせいじゃなさそうだし
“フェリス”: スバルきゅん、ご名答! ヴィル爺には、フェリちゃんの買い物に付き合ってもらってたの
“フェリス”: ほら、誰かさんのせいで、色々と物騒でしょ?
“スバル”: うぐっ…… 誰かさんのせいで、ね……
“スバル”: けど、お前って一応騎士なんじゃねぇのか?
“スバル”: 現時点じゃ王都は比較的安全なんだし、 わざわざヴィルヘルムさんを護衛に連れ出さなくていいだろ
“フェリス”: あれ~ もしかしてスバルきゅんってば、妬いてるとか? ヴィル爺とはそういう関係じゃないから、安心して大丈夫だよ!
“スバル”: 誰が妬くか、誰が! お前の性別を把握してるからなおさらだ!
“スバル”: とにかく、明日の朝は早いから、 俺らはこの辺で失礼させてもらうよ
“フェリス”: へー、 もしかして、アストレア領に向かうのかにゃ?
“スバル”: お、おお その通りだ
“フェリス”: やっぱり、あの隕石は『禁書』に関係があったんだネ
“スバル”: どうやらそうみてぇだな
“スバル”: アナスタシアさんからの報告も考慮すると、 アストレア領にページが集まってるっぽいぜ
“ヴィルヘルム”: アストレア領にですか……
“エミリア”: ええ だから、私たちも向かうことになったの ページをちゃんと『禁書』に封じないと
“フェリス”: ラインハルトが向かったみたいだけど、 確かにページを封じにゃいと意味ないよね
“フェリス”: 色々大変そうだけど、フェネちゃん、頑張ってネ
“フェネ”: ありがとうございます 全力でフェネは、 フェリス女史のご期待にお応えすることをお約束します
“スバル”: 何が“フェリス女史”だ こいつは男なんだぜ?
“スバル”: しかもどうしてフェネだけにエールを? 俺たちみんな頑張る所存だっつーの
“フェリス”: 妬かない妬かない ということで、スバルきゅんも頑張って
“スバル”: 妬いてねぇし、ついでな感じを隠せてねぇ!
“スバル”: とにかく、明日は早いんだ 詳しいことはクルシュさんに聞いてくれ
“スバル”: それじゃ、エミリアたん、レム、フェネ
“レム”: はい、スバルくん
“レム”: それでは、フェリックス様、ヴィルヘルム様、失礼いたします
“フェリス”: うん、レムちゃんも頑張ってネ これ、ついでじゃないよ
“スバル”: ってことは、やっぱ俺のはついでだったんじゃねぇか!
“フェリス”: あはは 顔を真っ赤にしちゃって、 スバルきゅんってばおもしろーい
“スバル”: 面白くないわ! お前マジで──
“エミリア”: スバル、早く帰るんじゃないの? もうすぐ夜になっちゃうわよ
“スバル”: ああ、そうだったね、エミリアたん
“スバル”: 長居しても俺が傷つくだけの結果になりそうだし、 早いとこいくとしよう
“スバル”: それじゃ、フェリス、ヴィルヘルムさん、俺たちはこれで
“フェリス”: まぁ、それなりの大怪我でも、 フェリちゃんがなんとかしてあげるから
“フェリス”: 死なないようにだけ気を付けてね 死んじゃったらさすがのフェリちゃんも打つ手なしだからさ
“スバル”: できれば大怪我もしないように、気を付けたいとこだよ
“スバル”: けど、もしものときは、頼むな、フェリス

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_02

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■2話 タイトル:ロム爺との再会 更新日:2021/08/20

ナレーター: ──情報共有のためスバルがクルシュの屋敷を訪れた翌朝
ナレーター: 思わぬ来訪者がスバルの元を訪れるのだった
“クルシュ”: 早朝にすまない、ナツキ・スバル
“スバル”: いや、別に構わないけど…… 昨日会ったばっかりだし、特にあれから進展はねぇよ?
“クルシュ”: それについては問題ない 進捗の確認にきたわけではないのでな
“スバル”: なるほど…… それじゃ、いったい俺になんの用事だ? 出発の準備もあるし、できれば手短に済ませてもらえると助かる
“クルシュ”: 無論だ 私とて長話をするつもりはない ただ卿に一点確認したいことがあってな
“スバル”: 俺に……確認したいこと?
“クルシュ”: ああ ラインハルト・ヴァン・アストレアが、 ある少女を保護しているという噂を耳にした
“クルシュ”: 彼の者と親しい卿ならば、 何か知っているのではないかと思ってな
“スバル”: ラインハルトが少女…… ああ、フェルトのことか
“スバル”: クルシュさん、それについては間違いねぇよ 確かにあいつはフェルトって女の子を保護してる
“スバル”: 詳しい事情はわからねぇけど、 慈善活動の一環なんじゃねぇかって俺は思ってる
“クルシュ”: そうか、やはり噂は本当だったか だが、詳しい事情について、卿は聞かされていないのだな?
“スバル”: すまない 深くは聞いてねぇよ あんま突っ込んだ話ができるような状況じゃなかったんでね
“クルシュ”: こちらこそ朝早くからすまなかった
“クルシュ”: だが、ナツキ・スバル ラインハルト・ヴァン・アストレアは、 アストレア領に赴く際、その少女も同行させたらしい
“スバル”: ラインハルトがフェルトをか?
“スバル”: そりゃまた、フェルトの奴、 ラインハルトから随分と大切に扱われてるみてぇだな
“クルシュ”: どうやらそのようだ そして恐らく、そうするだけの理由があるはずだ
“スバル”: 確かに、慈善事業の一環ってなら、 自分の出張にまで同行させたりはしねぇか……
“スバル”: あいつの傍が一番安全とはいえ さすがにそれはいきすぎな気がする
“スバル”: わかったぜ、クルシュさん
“スバル”: どうしてそこまでラインハルトがフェルトに肩入れするのか、 それについても調べてくるよ
ナレーター: クルシュの訪問のすぐ後、 スバルは長旅の買い出しのため、カドモンの店を訪れていた
“カドモン”: ──よう、坊主 随分と久しぶりだな
“スバル”: わりぃ、オッチャン 色々立て込んでて、 王都にきても慌ただしく時間が過ぎちまうんだよ
“スバル”: こようこようとは思ってるんだけど、 なかなかこられないのが現状だ
“スバル”: 事実、今日もこの後すぐに王都を発たないとならねぇ
“カドモン”: へえ、そりゃ大変だな
“カドモン”: ……そんな坊主に頼むのは気が引けるんだけどよ ちっと、頼まれてくれねえかな?
“カドモン”: 今日のお代はかなり勉強させてもらう だから、な?
“スバル”: オッチャンが俺に頼み事?
“スバル”: 急いじゃいるが、ちょっとぐらいなら大丈夫だ オッチャンの頼み事もすげぇ気になるしな
“カドモン”: そうか! 頼まれてくれるか!
“カドモン”: 実は坊主に会いたいって奴がいるんだよ ちょっくらそいつに会ってやってくれ
“スバル”: ──と、安請け合いしたはいいが、 ずいぶんとしけたとこで待ち合わせだな
“スバル”: こんなことだったら、 レムかフェネに同行してもらえばよかったぜ
“スバル”: 人通りが多い道しか通らねぇって約束で、 一人で買い出しに出してもらったってのに……
???: 呼び立てして悪かったの
“スバル”: ろ、ロム爺! ご健在みたいで安心したぜ!
“ロム爺”: おかげ様でな お前さんも無事なようで何よりだわい
“スバル”: ああ なんとか俺も無事だ
“スバル”: あんときは、意識不明の危険な状態だったけど、 今は後遺症もなくぴんぴんしてるよ
“スバル”: って、もしかして、オッチャンが言ってた、 俺に会いたがってる奴ってのはロム爺のことか?
“ロム爺”: そうじゃ カドモンの奴がお前さんと馴染みのようなんでな お前さんと会う機会を作るよう頼んでおいたんじゃ
“スバル”: へぇー、俺と会える機会を、ね
“スバル”: で、いったい俺になんの用だ?
“スバル”: 悪いけど、ちょっと急いでるんだよ 前置きなしで本題を頼む
“ロム爺”: 儂の用事といったら、一つしかないわ フェルトのことじゃよ
“ロム爺”: フェルトの奴があれ以来戻っておらんのじゃ お前さん、何か知ってることはないか?
“スバル”: フェルトだったら、ラインハルトの奴が…… って、ロム爺は知らなかったんだな?
“スバル”: とか言いつつ、俺も意識がなかったし、 エミリアたんから聞いて知ったんだけどね
“スバル”: とにかく、詳しい事情はわからねぇけど、 フェルトだったら今、ラインハルトのとこで保護されてるよ
“ロム爺”: ラインハルト……『剣聖』、か?
“スバル”: ああ、その『剣聖』様のとこだ
“スバル”: 実際俺はラインハルトとフェルトが一緒にいるところに 出くわしてるし、間違いねぇよ
“ロム爺”: そうか…… やはりあの噂は本当だったようじゃな……
“スバル”: んで、最新の情報だと、ラインハルトはフェルトを連れて、 自分の領地に戻ってるらしい
“ロム爺”: 己の領地…… つまりフェルトは今、ハクチュリにおるわけじゃな?
“スバル”: ……ハクチュリ?
“ロム爺”: アストレアの本邸がある街の名じゃ 領地に向かったということは、恐らく滞在するのは本邸じゃろう
“スバル”: なるほど…… 確かにそうだな フェルトは今、そのハクチュリって街にいるはずだ
“ロム爺”: じゃが……、何故『剣聖』が己の領地に?
“スバル”: 隕石騒ぎだよ、ロム爺 その騒ぎの調査を騎士団から命じられたらしいぜ
“スバル”: フェルトを連れていく必要性はあんま感じねぇけど、 それだけ大切に扱ってるってことなんだろうな
“スバル”: 最近は物騒だし、ラインハルトの傍にいりゃ安心だろ
“ロム爺”: …………
“スバル”: ロム爺?
“ロム爺”: ……よりにもよってあの『剣聖』がな それに隕石騒ぎときたか
“スバル”: ああ、フェルトはラインハルトのとこで、 アストレア領は現在隕石騒ぎの真っ最中だ
“スバル”: でもって、巷の噂じゃ隕石ってことになってるけど、 実際そこに落ちてるのは隕石じゃねぇときやがる
“ロム爺”: ほう…… して小僧、隕石でなければ、 いったい何が落ちておるというのじゃ?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_03

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■3話 タイトル:とてもとても 更新日:2021/08/20

ナレーター: ロム爺と久々に再会したスバルは、思いのほか話し込んでしまい、 拠点の宿屋へと急いでいた
“スバル”: ヤバい 思いのほか遅くなっちまった みんなを心配させないためにも、急がねぇと──
???: スバルさん
“スバル”: コリーナ! お前、無事だったんだな!
“コリーナ”: 冒険者であるコリーナの心配など不要です スバルさんこそ無事で何よりでした
“スバル”: ああ、俺は無事だ お前のおかげで色々うまくいったよ
“スバル”: というわけで、 今後はあんま危険なことに首を突っ込むんじゃねぇぞ!
“スバル”: それじゃな!
ナレーター: コリーナと再会を果たしたスバルだったが、 先を急ぐため、早々に別れを告げて立ち去ろうとする
ナレーター: だが……
“コリーナ”: 待ってください、スバルさん 重要な話があります
“スバル”: ……重要な話?
“コリーナ”: そうです とてもとても重要で長い話です
“スバル”: “とてもとても”ってのは“重要”の方だけだよね? “長い”の方にもかかってるとちょっと……
“スバル”: てか、“とてもとても”が付かなくても、 今は長い話は遠慮してぇってのが本音だ
“コリーナ”: そうですか……
“スバル”: くっ…… あからさまに落ち込まれると胸がいてぇ……
“スバル”: その長くて重要な話ってのは、歩きながらでも大丈夫か?
“コリーナ”: とてもとても長くて重要な話です
“スバル”: やっぱとてもとても長いのね!
“スバル”: けど……マジでお前には世話になった…… とはいえ……みんなが俺の帰りを……
“コリーナ”: ふふふ やはりスバルさんは、かなりのお人好しですね
“スバル”: ……はあ?
“コリーナ”: 冗談です スバルさんがとても急いでいる様子だったので、 コリーナはからかいたくなってしまったのです
“スバル”: お、お前な! そういうのは時と場合を選んでくれ!
“スバル”: けど、マジですげぇ重要な話ってなら、歩きながらだけど、 話は聞かせてもらう 遠慮はいらねぇから、話してみろよ
“コリーナ”: いえ、大丈夫です コリーナの目的は十分に果たせましたので
“スバル”: ……コリーナの目的?
“コリーナ”: それについてはお話すると、とてもとても長くなりますが、 よろしいですか?
“スバル”: 全然よろしくねぇ!
“スバル”: って、こうしている間にも、刻一刻と時間が……
“スバル”: とにかく、今はすげぇ急いでる
“スバル”: でも、お前とはちゃんと話がしたいし、 この前の礼だってちゃんとしたい
“スバル”: これからアストレア領ってとこに出発するんだが、 色々片付いたらまた王都に戻る予定だ
“スバル”: そんとき、改めてお前とは会いたいんだけど、 住所とか教えてもらえねぇかな?
“コリーナ”: 大丈夫ですよ、スバルさん コリーナとはまた会えますから
“スバル”: はあ?
“コリーナ”: コリーナは、スバルさんに協力すると決めました だから、また会えます では──
“スバル”: あ! 待ってくれ、コリーナ! って、いっちまいやがった……
“スバル”: とはいうものの…… あいつを追ってる場合じゃねぇよな、今は……
???: ──スバル!
“スバル”: え、エミリアたん!?
“エミリア”: よかった…… もう、なかなか戻らないからすごーく心配したんだから

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_04

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■4話 タイトル:五人目の候補者は? 更新日:2021/08/20

ナレーター: 買い出しに出たまま、なかなか戻ることができなかったスバルを エミリアが迎えにきたことで
ナレーター: 図らずもスバルは、エミリアと二人きりになっているのだった
“スバル”: ふふふふ
“エミリア”: もう、スバル、笑ったりしてすごーく不謹慎 私、怒ってるんだから
“スバル”: おっと、ごめんごめん
“スバル”: エミリアたんと二人っきりっていうシチュエーションを ゲットできた幸運に思わず顔が緩んじまってた
“スバル”: って、エミリアたん、怒ってるの?
“エミリア”: 当たり前です みんな、スバルのことすごーく待ってたんだから
“スバル”: それについては申し訳ねぇ 様々な出会いが俺の行く手を阻んだんだよ
“スバル”: しかもどれも貴重な再会で、無碍にはできなかったっつーか
“スバル”: 頭では急いで戻らねぇとって思ってたんだけど、 マジでそうもいかねぇ状況だったんだ
“エミリア”: 言い訳は聞きたくありません 約束の時間に遅れたりするのは、いけない事でしょ?
“スバル”: ホントごめん やむを得なかったとはいえ、 みんなの時間を無駄にしちまった
“スバル”: 戻ったら、まずはレムやフェネにちゃんと謝らねぇとな
“エミリア”: うん ちゃんと謝ってね 二人ともスバルのこと、すごーく心配してたもの
“スバル”: レムについてはそうだろうけど、 フェネについてはちょっと怪しい気がするな
“スバル”: あいつの場合、心配ってより、俺への文句を並び立ててた気がする
“エミリア”: そんなことないわ 真っ先にスバルのことを探しに出たのはフェネよ
“スバル”: え? マジで? ってことは、宿にいるのはレムだけ?
“エミリア”: うん スバルが戻ったとき、誰もいないわけにもいかないから、 レムには宿に残ってもらったの
“スバル”: そうか…… フェネの奴が真っ先に、ね…… そりゃ、あいつにも誠心誠意謝らねぇとな
“スバル”: んで、手始めに、エミリアたんにちゃんと謝らないとだ
“スバル”: 心配かけてホントごめん
“スバル”: あと、エミリアたんが怒ってるのに、 へらへらしちまったことも合わせて謝罪させてもらう
“エミリア”: わかりました 許してあげます
“エミリア”: それじゃ、スバル、急いで戻りましょう レムが首をながーくして待ってるわ
“スバル”: “首を長くして”って、きょうび聞かねぇな……
“エミリア”: スバル?
“スバル”: いやいや、なんでもないよ エミリアたん、急いで戻ろう
ナレーター: それからスバルとエミリアは並んで歩き始める
ナレーター: すでに日はだいぶ高く昇っていた
“スバル”: エミリアたん、あの……
“エミリア”: ん? どうしたの、スバル?
“スバル”: そういやエミリアたんには、もう一個 ちゃんと謝らないといけないことがあったなって思ってさ
“エミリア”: ……そんなことあったかしら?
“スバル”: 俺のせいで王選が無期限の延期になっちゃっただろ ホント申し訳ねぇ
“エミリア”: それについては、何度も謝ってるわよ、スバル
“スバル”: いやいや、何度謝っても、足りねぇっつーか 謝ったぐらいじゃ償えねぇっつーか
“スバル”: ホント、マジで申し訳ない
“スバル”: もし延期にならなきゃ、もうすでに始まってた感じなんだよね?
“エミリア”: ええっと…… たぶん、そうかもしれないわね
“エミリア”: 王選は五人の候補者が揃わないと始められなくて、 最後の一人がなかなか見つからなかったみたいだけど
“エミリア”: その最後の一人が見つかったみたいなの
“スバル”: 五人の候補者……
“スバル”: エミリアたんにクルシュさん、アナスタシアさんにプリシラ 確かに今わかってる候補者は四人だけだね
“スバル”: んで、最後の一人が見つかったってことは、 まさに始まる寸前のタイミングだった感じか
“スバル”: そんなときに俺って奴は……っ
“スバル”: けど、その最後の一人ってのは、いったい誰なんだ? 俺が知ってる人なのかな?
“エミリア”: それは私にもわからないわ
“エミリア”: 見つかったらしいって噂があるって、 ロズワールから聞いただけだもの
“スバル”: なるほど…… その五人目が誰かってことまでは、 噂にはなってなかったってことか
“スバル”: まぁ、ロズワールの奴は知ってて、 あえてエミリアたんには教えなかった可能性もあるけど
“エミリア”: それはないと思う 知っていたらきっと、ロズワールなら教えてくれるはずよ
“スバル”: へー エミリアたんはロズワールのこと、すごく信頼してるんだね
“エミリア”: うん 全部ロズワールのおかげだもの
“エミリア”: ロズワールが私を迎えにきてくれなければ、 私が王選に参加するなんてことなかったわ、きっと
“スバル”: となると、俺がエミリアたんに出会うこともなかったわけか……
“スバル”: あんな感じだけど、ロズワールの奴って、すげぇ重要人物だな
“エミリア”: 当たり前です ロズワールはすごーく偉いんだから
“スバル”: それはそうだね なんせ、宮廷魔術師の筆頭だもんな んでもって、広大な土地を治める領主でもある
“スバル”: 奇抜な外見のせいで、その事実を忘れがちではあるけど
“エミリア”: それはスバルだけです 私はいつも忘れてません ラムやレムだって、とっても尊敬しているように見えるわ
“スバル”: うぐっ…… 言われてみれば確かに俺だけな気が……
“スバル”: あれでも一応俺の雇い主なわけだし、 もうちょい敬意を払うように気を付けてみるよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_05

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■5話(中編) タイトル:現状整理 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──本当に申し訳ありませんでした!
“フェネ”: ……スバル氏、今、何か言いましたか? フェネにはまったく聞こえませんでした
“スバル”: えぇ!? 今のってかなり大きな声だったよね!
“フェネ”: スバル氏は口答えできる立場ですか? スバル氏の身勝手な行動により、どれだけ出発が遅れたことか
“フェネ”: さあ、しっかりとフェネの耳に聞こえるまで、 謝罪の言葉を繰り返してください
“レム”: スバルくん、レムにはしっかりとスバルくんの声が聞こえましたよ
“レム”: それに、スバルくんが徒に時間を無駄にしたとは思えません きっと深い訳があったはずです
“スバル”: そうなんだよ、レム! 奇跡的な再会が続いて、やむにやまれずってのが正直なところだ
“スバル”: もちろん、みんなにはすげぇ申し訳ないとは思ってるけども
“フェネ”: わかりました レム女史に免じて、先程の謝罪を受け入れましょう
“フェネ”: 何度も大声で謝罪を繰り返されても迷惑なだけですし、 これ以上貴重な時間を無駄にはできません
“スバル”: お前、マジでいい性格してんな 何度も繰り返せって言い出した張本人のくせしやがって
“フェネ”: スバル氏、何か言いましたか? なぜかフェネには、スバル氏の声がよく聞こえないようです
“スバル”: どうやら性格だけじゃなくて、耳までいいみたいで何よりだよ
“フェネ”: ありがとうございます フェネはあらゆる面で完璧です いい部下を持つことができ、スバル氏は幸せ者ですね
“スバル”: お、お前な……って、まぁ、いいよ 確かに今の俺は、言い返せるような立場じゃねぇしな
“スバル”: とにかく、遅れを取り戻すためにも、 一刻も早く出発しよう
“レム”: スバルくんの荷物も竜車に積み込ませてもらいました いつでも出発できます
“スバル”: サンキュー、レム! んで、エミリアたんもフェネもすぐに発って大丈夫だよな?
“エミリア”: ええ、私は大丈夫 すぐに出発しましょう
“フェネ”: 無論、フェネもです
“スバル”: よし! それじゃ、アストレア領に向かって出発だ!
“スバル”: ──というわけで、アストレア領までの長旅が スタートしたわけだけども
“スバル”: この時間を使って、色々とこれまでのことを整理したいと思う 構わないか?
“フェネ”: 無論です、スバル氏
“フェネ”: 時間とは明らかに有限 悠久の時を生きるフェネと違い、 限りある皆様にとってはなおのことでしょう
“フェネ”: 可能な限り有効に使うべきかと
“エミリア”: 私も整理しておいた方がいいと思う 色々としっちゃかめっちゃかで、こんがらがっちゃってるもの
“スバル”: “しっちゃかめっちゃか”って、 きょうび聞かねぇよな……
“スバル”: てな話は置いといて、レムはどうかな?
“レム”: はい 御者台からになってしまいますが、 スバルくんたちの話を聞かせてもらいます
“スバル”: よし、それじゃ決まりだな ということで、さっそく始めさせてもらうとするぜ
“スバル”: まず、『禁書』のページについてなんだが、 推測も含めてだけど、わかってることの整理だ
“スバル”: ページがマナを吸収する速度には個体差があって、 蓄えられるマナの量にも個体差があると推測できる
“スバル”: 蓄えられるマナの量が少ないページの『異形』は弱っちくて、 たくさんマナを蓄えられるページの『異形』は強力
“スバル”: つまり、吸収速度が早く、 容量もでかいページの『異形』が最悪の『異形』ってわけだ
“スバル”: でもって、フェネが発見できるのは、 ある程度その容量をマナで満たされた奴だから
“スバル”: 成長しきる前に最悪な『異形』を封じるってのは、 現時点じゃ難しい状況だ
“フェネ”: スバル氏 “難しい”というのは適切な表現ではありません
“フェネ”: ある程度成長したページでないと、 フェネには感知できないという現実を受け入れ
“フェネ”: “不可能だ”と断言することを強く進言します
“スバル”: わりぃ 俺の故郷じゃ、断言することを嫌うんだよ
“スバル”: ついその癖が出ちまったけど、フェネの言う通りだ 成長前に都合よく封じるなんてことはできねぇ
“スバル”: そして俺たちは、 これからどんどん強い『異形』と対峙していくことになる
“スバル”: これも紛れもない現実だ
“スバル”: 実際、俺たちが戦う『異形』はどんどん強くなってるし、 バーリエル男爵領で遭遇した『異形』は倒すことができなかった
“スバル”: 中にはマナの吸収が遅いだけの雑魚も混じってるかもしれねぇけど 相手がそんな奴だったらラッキーってだけだ
“エミリア”: これから向かうアストレア領の『異形』も、すごーく強そう
“スバル”: そうだね、エミリアたん しかも一匹は確実にすげぇ『異形』が混じってるはずだ
“スバル”: アストレア領に落ちた巨大な隕石ってのは、 きっと相当な『異形』を宿したページだろうからな
“エミリア”: でも、どうしてアストレア領に、『異形』は集まってるのかしら?
“スバル”: 確かに、そこ、気になるところだよね
“スバル”: 『禁書』のページが、意思を持って移動するってのは、 実際に目撃もしたし、間違いないと思う
“スバル”: けど、どうしてアストレア領なんだ? それについちゃ皆目見当がつかねぇ
“スバル”: とはいうものの、わからないことの話は、 色々整理がついてからにしよう
“スバル”: まずはしっかりと状況を理解して、 その後にじっくり考察するって感じでどうかな?
“エミリア”: うん、その方が良さそう スバル、状況の整理を続けて
“スバル”: ありがとう、エミリアたん それじゃ、状況の整理の続きなんだが……
“スバル”: 実は、すげぇ気になってることがある
“フェネ”: スバル氏、それはどのようなことでしょう?
“スバル”: 『異形』の登場パターンって言えばいいのかな?
“スバル”: ページに吸い込まれる場合と、 吸い込まれずにページから『異形』が出てくる場合についてだ
“スバル”: これについちゃ、 ページから『異形』が出てくるパターンが王道っぽいけど
“スバル”: 俺たちはページに吸い込まれて、 向こうで『異形』と対決したりしてる
“スバル”: この違いはなんだ?
“スバル”: まぁ、吸い込まれた先にいる『異形』の方が、 明らかに強い印象はあるけど
“フェネ”: それについては、多くのマナを蓄えながらも、 顕現するには足りていない状態だと推測できます
“スバル”: 確かにフェネがそんな風に言ってた記憶はあるけど、 それって本当か?
“スバル”: もしそうだとすると、もっとページに吸い込まれる事例が、 発生しててもおかしくないはずだろ
“スバル”: にもかかわらず、俺たちが経験した以外で、 そういう事態が発生した形跡がねぇ
“スバル”: これまでに結構な数の『異形』が ページから顕現したっていうのにだ
“スバル”: それにもう一個、俺には気になってることがあるんだ
“フェネ”: まだあるのですか? 状況の整理というより、 スバル氏が疑問をぶちまける場になっている気がするのですが
“スバル”: いやいや、大丈夫だ ちゃんと状況の整理につながるはずだから、 ちょっと聞いてくれ
“スバル”: 俺が気になってるってのは、 絵本に書かれたテキストについてなんだよ
“エミリア”: ……てきすと?
“スバル”: 文章って言えばエミリアたんにもわかるかな?
“スバル”: ほら、実際に顕現する絵の方ばっかりに注目しがちだけど、 ページには物語も書かれてるだろ
“フェネ”: スバル氏はページに書かれた物語のようなことが、 実際に起きているのではないかと言いたいようですが
“フェネ”: それについては以前、 ページの捜索にはあまり意味がないとお伝えしたはずです
“フェネ”: 書かれていた内容をフェネは覚えていません ページを手にして初めて、その内容を知るというのが現状です
“スバル”: それについては、そうかもしれない
“スバル”: けど、あのときと違って、 今は実際にいくつもページを集めてるじゃねぇか
“スバル”: これまで集めたページに書かれていた物語の内容と、 実際に起こった出来事の関係性を検証できるんじゃねぇかな?
“スバル”: んでもって、そうすることで、 『禁書異変』の全容が見えてくるかもしれないだろ
“エミリア”: 『禁書異変』の全容…… もしそうなれば、これからのことが色々予測できそう
“スバル”: そうなんだよ、エミリアたん これまでは後追いで 対処するしかないってのが正直なところだったし
“スバル”: 色々と未然に防ごうと思ったら、 あてどなく歩き回ってページを探すしかなかったけど
“スバル”: 『禁書』のページの目的って言えばいいのかな? 全容を把握できれば、もっと効率的に動ける気がするんだよ
“スバル”: クルシュさんやアナスタシアさんが協力してくれてるとはいえ、 リソースは限られてるし、効率アップは絶対に必要だと思う
“エミリア”: ええっと、スバル “りそーす”って“人手”ってことでいいのかしら?
“スバル”: おっと、すまねぇ 確かに説明が必要な言葉だったね
“スバル”: リソースには“人手”ってのも含まれてるけど、 時間とか資金とかそういうの含まれてるんだよ
“スバル”: こうやって各地を転々とするのだって、 人手だけじゃなくて時間もお金もかかってるだろ?
“スバル”: そういうことも含んでくれてる便利な言葉が“リソース”だ
“スバル”: まぁ、ロズワールの場合、 資金について心配する必要はないのかもしれないけど
“エミリア”: ううん、そんなことないわ お金は大切だもの
“エミリア”: それに、ホントにそう すごーくお金も時間もかかってるわ もっと効率良くやらないと
“スバル”: 俺の故郷の物語だと、一話一話で完結しているように見えて、 実は裏側に全体を通した物語が潜んでるケースがある
“スバル”: 一話一話が独立しているようで、 実は大きな物語の一部だって言えばいいのかな?
“スバル”: 『禁書』はある絵本作家の『遺作』で、 その人の過去の作品を全集的にまとめたみたいだけど
“スバル”: そういう可能性もあるんじゃないかって気がしてるんだよ
“フェネ”: つまり、物語の一つ一つは独立していながらも、 それらは密接に関係しているということでしょうか?
“スバル”: そうだ 『禁書』にまとめる物語の選定には、 何かしら作者の意図がある気がしてならねぇ
“スバル”: それに、アストレア領ってとこにページが集まってる理由だって、 そう仮定すると説明できる気がする
“エミリア”: 何かしら関連した内容の物語たちが、 アストレア領には集まってるってこと?
“スバル”: うん 実際、バーリエル男爵領で取り逃がしたページには、 続編があって
“スバル”: その続編と合流するために飛び去ったって話だったよね
“フェネ”: それについては推測をお伝えしたにすぎませんが──
“フェネ”: 実際に『しょうじきなノボン』は前後編に分かれたお話です
“スバル”: ……『しょうじきなノボン』?
“スバル”: それがあの『異形』がいたページに書かれた お話のタイトルなのか?
“フェネ”: 左様です フェネは記憶を失っておりますが、 ノボンの物語については思い出しました
“エミリア”: ……お話の内容を思い出せたのね?
“フェネ”: 左様です 先程偶然にも
“フェネ”: 『禁書』に収められた物語がそれぞれ関係しているという可能性に スバル氏が言及したことが原因かもしれません
“スバル”: なるほど…… あくまで可能性の一つだけど、言ってみた甲斐があったよ
“スバル”: んで、その『しょうじきなノボン』ってのは、 いったいどんなお話なんだ?
“スバル”: お前が思い出した内容ってのを、俺たちにも教えてくれ
“フェネ”: わかりました 『しょうじきなノボン』を簡潔にお伝えすると、 ノボンが“こわいまもの”から町を救おうとするお話になります
“フェネ”: 心優しいノボンは“こわいまもの”がくると町に知らせにいきます
“フェネ”: ですが、ノボンの風貌は醜く、しかも巨大でした
“フェネ”: 人々はノボンを恐れ、ノボンの話に耳を傾けません それどころか……
“エミリア”: それどころか、どうしたの? お話の続きがすごーく気になるわ
“スバル”: 粗方、殺されちまったとか、そういう感じなんじゃないかな 少なくともノボンにとっての明るい未来は想像できねぇ
“エミリア”: そ、そんな…… せっかく知らせにきてくれたのに……
“エミリア”: それで、町はどうなったの? “こわいまもの”は町にきたのかしら?
“フェネ”: それについては後編で語られるのですが……、 フェネが思い出したのは町の人々がノボンに行った蛮行までです
“フェネ”: 無論、ノボンへの狼藉を愚かな人間どもが悔いる内容になることは 容易に想像可能ですが
“スバル”: 愚かな人間ども、ね そういう言い方されると、 お前との距離を感じちまうよ
“フェネ”: 残念ながら人間は時として非常に愚かです 本当に度し難い程に
“スバル”: くっ…… 否定できねぇ…… じゃねぇと、大きな戦争を何度も繰り返したりしねぇもんな……
“スバル”: けど、それはそれとして、だ  バーリエル男爵領で戦ったのがそのノボンだったとして
“スバル”: 本当の強敵は物語の後編で登場するはずの “こわいまもの”の方なんじゃねぇのか?
“スバル”: 確かにあの『異形』は、俺たちに何かを必死に訴えてた
“スバル”: んで、あいつが伝えたかった内容は、 “こわいまもの”がくるってことで間違いないと思う
“スバル”: そして俺たちは物語通り、 ノボンの話に耳を貸さずに戦っちまったわけだ
“スバル”: となれば、この先に待っているのは、 “こわいまもの”に後悔させられる結果ってことになる
“スバル”: ちくしょう! もっと早くフェネが話を思い出してりゃ、 別の結果になってたかもしれねぇのに……
“フェネ”: 呆れて言葉もありませんね、クソ上司
“フェネ”: “こわいまもの”に後悔させられる前に、スバル氏には鉄拳にて フェネへの失言を後悔してもらうことにしましょう
“スバル”: 待て待て! 謝る! 謝るから、鉄拳に訴えるのだけは勘弁してくれ!
“レム”: フェネさん スバルくんへの暴力は容認できません この場にレムがいることをお忘れなく
“フェネ”: ……承知しました
“フェネ”: レム女史に免じて、スバル氏への鉄拳制裁は、 レム女史がいない場でさせていただきます
“スバル”: それ、全然承知してねぇし、免じてもないよね!
“スバル”: 目が届かない場所ならオッケーみたいな意味で、 レムは言ってないと思うし!
“レム”: フェネさんからお守りするために、 レムは片時もスバルくんから離れられなくなってしまいました
“レム”: スバルくん、今後は常にレムの傍にいてください
“スバル”: あれ!? 言葉の解釈を間違えてたのは俺の方だった!
“スバル”: いつもレムが傍でガードしてくれるのは嬉しいけど、 それじゃ根本的な解決にならないし
“スバル”: できればフェネとの和解を成立させたいかな!
“スバル”: ということでフェネ、ホントすまねぇ! 頼むから許してくれ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_06

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■6話 タイトル:物語との関係性 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車はアストレア領を目指し、ひた走る
ナレーター: その車内では、 現状を正確に把握するための話し合いが続けられていた
“スバル”: バーリエル男爵領で遭遇したノボンのお話から察するに、 やっぱ物語の内容は発生する事象と無関係じゃない気がするな
“スバル”: それどころか、すげぇ関係してる気がしてならねぇ
“スバル”: ちなみに、俺たちが最初に王都に向け出発したとき
“スバル”: 森で遭遇した『異形』のページは、腹ぺこなフェンルーが出てくる 『もりのフェンルー』って話だったよな?
“フェネ”: 左様です 異常な食欲を持ったフェンルーが故郷を追われ、 逃げ延びた森で生き物を食い尽くしてしまう物語です
“スバル”: 実際に俺たちはフェンルーと森で遭遇して、 その森には生き物の気配は感じられなかった
“スバル”: 恐らく……、あの森の生き物たちは、 フェンルーに食い尽くされちまってたんだと思う
“スバル”: んで、次は王都でクルシュさんと倒した 俺たちを吸い込んだページの『異形』についてだけど
“スバル”: そういや、どんな物語だったか、ちゃんと聞いてなかった気がする
“エミリア”: 確かにそう
“エミリア”: 初めてページの中に吸い込まれて色々大変だったもの ページに書かれたお話については確認している余裕はなかったわ
“エミリア”: それにガナクスでも…… 私が気を失っちゃってたから……
“スバル”: 確かにガナクスでも回収したページの内容を検めてないね
“スバル”: イバダで回収したページのお話は、 『こそどろゴッソ』だった記憶はあるけど
“スバル”: 王都とガナクスで回収したページについては、 俺たちはその内容を知らない
“スバル”: ってなわけでフェネ、 どんなお話だったか教えてもらえねぇかな?
“フェネ”: わかりました まずは王都で『禁書』に綴じた 『はぐれものハイゴン』についてお話しましょう
“フェネ”: 人嫌いのハイゴンは多くの人々が暮らす町を出て、 一人きりでの生活を始めます
“フェネ”: ですが、一人での生活はあまりにも寂しく、 いつしか訪れるはずもない来訪者を待ちわびるようになるお話です
“スバル”: なるほど だから多くの人々が暮らす王都に出没したってわけか
“フェネ”: そう解釈することは可能でしょう 物語と発生する事象が関係しているのであればですが
“スバル”: イバダで回収した『こそどろゴッソ』だって
“スバル”: 大商人のアナスタシアさんの手元に くるべくしてきた感じのお話だったし
“スバル”: もはやそこは疑う必要はないんじゃねぇかな
“スバル”: ちなみに、ガナクスで回収したページには、 どんなお話が書かれてたんだ?
“スバル”: その内容次第じゃ、推論の見直しが必要になるかもしれねぇ
“フェネ”: それについては、むしろスバル氏の推論を後押しする内容かと
“フェネ”: 『よこどりチャック』は、 人の大切なものを奪わずにはいられないチャックの物語です
“スバル”: 人の大切なもの……
“スバル”: つまり、俺の一番大切なものを、 チャックの奴が奪おうとしたってわけか
“スバル”: 納得も納得だ まさに物語通りの事象が発生してるじゃねぇかよ
“スバル”: やっぱページに書かれてる内容がわかると
“スバル”: そのページがいそうな場所とか 起こり得る出来事とかが推測できそうだな
“スバル”: とはいうもののフェネには肝心の記憶がねぇときてる……
“フェネ”: フェネへの度重なる失言 やはりスバル氏には鉄拳の制裁が必要だとフェネは判断します
“スバル”: ごめん、ごめん! 今の失言だったよ! この通り謝るから、鉄拳制裁は勘弁してくれ!
“エミリア”: ふふふ
“スバル”: どうしたの、エミリアたん? 突然笑い出したりして
“エミリア”: そういえば、スバルったら朝からフェネに謝ってばっかりだな って思ったら面白くなっちゃったの
“エミリア”: もちろん、笑ったりしたらいけないんだけど、 ホント、スバルったら朝から謝ってばっかりだもの
“スバル”: 確かに、朝の大遅刻に始まって、 今日の俺はフェネに謝ってばっかりだね
“スバル”: 遅刻の方は色々事情があるんだけど…… 失言の方は明らかに俺の配慮不足だ
“スバル”: 反省して今後はより一層発言には気を付けるよ
“スバル”: と、色々話すのはこの辺にして、 そろそろ休憩もかねて夕食にしないか?
“スバル”: さすがに腹が減ったし、御者台のレムも休ませてあげたい
“レム”: スバルくん、レムへのお心遣いありがとうございます
“レム”: レムはまだまだ大丈夫ですが、 地竜にはそろそろ休憩が必要です
“エミリア”: わかったわ、レム それじゃ、ここで休憩にしましょう
“レム”: ありがとうございます、エミリア様 それでは、竜車を止めさせていただきます
ナレーター: 竜車を止め、その場でしばし休憩をとるスバルたち
ナレーター: そして、再び竜車が動き出す頃には、 すっかり夜も更けているのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_07

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■7話 タイトル:最初にするべきことは? 更新日:2021/08/20

ナレーター: 必要最低限の休息で先を急ぎ、 アストレア領を目指したスバルたちは
ナレーター: 昨夜遅くにアストレア家の本邸宅があるハクチュリに到着した
ナレーター: そして、宿屋に泊まり、ベッドで久々に休むことができるのだった
“スバル”: ふぁ~ よく寝た~
ナレーター: ベッドを出たスバルが窓から空を仰ぐと、 日はだいぶ高く昇っている
“スバル”: 久々のベッドとはいえ、こりゃさすがに寝すぎたか? 女性陣は今頃……
“フェネ”: ──これはこれはスバル氏、ずいぶんと遅いお目覚めですね
“フェネ”: 道中大した役割を担ったわけでもないのに、 このような時間まで眠っていられる精神を疑ってしまいます
“スバル”: くっ…… 返す言葉がねぇ……
“スバル”: その様子だと、今日の行動については、 色々と打ち合わせ済みみたいだな
“レム”: スバルくんすみません
“レム”: スバルくんを起こそうかとも思ったのですが、 とても気持ち良さそうに眠っていたので……
“スバル”: 確かに気持ち良く眠ってたけども、 起こしてくれて全然構わないよ
“スバル”: 今度からは、遠慮なく叩き起こしてくれ
“フェネ”: わかりました 次回からは遠慮なくフェネがこの拳で──
“スバル”: いやいや、待て待て! 今のはレムに言ったんだ! フェネの場合は身の危険を感じるから、ある程度遠慮してくれ!
“フェネ”: “ある程度”とはどの程度でしょう?
“フェネ”: 骨折はやりすぎだが、打撲程度なら許容範囲というような解釈で、 問題ないでしょうか?
“スバル”: 問題大有りだ! 俺が怪我するような起こし方はNGで頼むよ!
“スバル”: とにかく、寝坊しといて申し訳ねぇけど、 みんなで話し合った内容を俺にも共有してもらっていいかな?
“スバル”: ──なるほど まずは三手に分かれて聞き込みか
“エミリア”: うん 色々と情報を集めないといけないの フェネが感知できるページはまだないみたいだから
“フェネ”: 申し訳ありません、エミリア女史
“フェネ”: 十分にマナで満たされていないのか、 現在のところフェネに感知できるページはありません
“エミリア”: ううん 謝らないで 感知できないなら仕方ないわ
“エミリア”: それに、落っこちた隕石の目撃情報とかが集まれば、 きっとページは見つかると思うの
“レム”: レムもそう思います
“レム”: 住民の方々は隕石だと思っていますが、 それらが『禁書』のページであることは間違いありません
“レム”: 隕石の目撃情報を集めることが、ページ回収の近道になるはずです
“スバル”: エミリアたんやレムの意見はもっともだけど、 俺からはまずはラインハルトに会うことを提案させてもらう
“スバル”: 隕石の目撃情報だって、 きっと領主であるラインハルトのところに集まってるはずだ
“フェネ”: 正気ですか、スバル氏? 我々は可能な限り隠密に動くべきです
“フェネ”: 領主であり騎士団にも属するラインハルト氏に協力を願い出れば、 様々な事情を隠したままとはいかなくなるでしょう
“フェネ”: まずは我々で事態の解決に動き、 ラインハルト氏を頼るのは最終手段とするべきです
“スバル”: お前の言いたいことはわかるよ、フェネ
“スバル”: けど、そういった色んな事情を込んだとしても、 やっぱまずはラインハルトだと思う
“フェネ”: エミリア女史、レム女史、そしてフェネで、 議論に議論を重ね導き出した行動予定です
“フェネ”: 眠っており、打ち合わせにも参加しなかったスバル氏が、 声高に己の提案を推奨することに違和感を覚えます
“スバル”: それについては申し訳ねぇ けど、まずはラインハルトに会うべきなんだよ
“スバル”: 前回俺たちはノボンに歯が立たなかった その事実をちゃんと受け入れるべきだ
“スバル”: もしかしたらここでは、 例の“こわいまもの”に出くわすかもしれねぇんだから
“レム”: 確かにラインハルト様のお力をお借りできれば、 “こわいまもの”も恐れる必要はないかもしれません
“スバル”: だろ? それにラインハルトは、色々打ち明けても大丈夫な相手な気がする
“スバル”: あいつが事実を知ったとしても、 エミリアたんが不利になるようなことにはならねぇ
“スバル”: それどころか、きっと俺たちの力になってくれるはずだ
“エミリア”: ……わかったわ、スバル まずはラインハルトに会いにいきましょう
“スバル”: ありがとう、エミリアたん! レムもそれで問題ないよな?
“レム”: はい
“レム”: スバルくんからの提案で、エミリア様も賛同しています レムが異を唱えるはずがありません
“スバル”: よし、それじゃ決まりだな!
“フェネ”: …………
“エミリア”: フェネ、どうしたの?
“フェネ”: いえ なんでもありません
“フェネ”: エミリア女史が、ラインハルト氏にすべてを打ち明けることを 問題視しないのであれば
“フェネ”: 確かにラインハルト氏に協力を要請することが、 最良の手かもしれません
“フェネ”: ただ、ここにいる全員で ラインハルト氏の元へ出向く必要はないかと
“フェネ”: 少々気になることがあります故、 本日フェネは単独で聞き込みと調査を進めさせていただきます

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_08

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■8話 タイトル:皮肉な結果 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──と、意気揚々と会いにきたはいいが、 まさかラインハルトの奴が不在とはね
“エミリア”: 仕方ないわ、スバル ちゃんと約束していなかったもの
“スバル”: やっぱ領主様だけあって、ラインハルトはご多忙みてぇだな
“スバル”: エミリアたん、レム、すまなかった 完全に俺の提案が裏目に出ちまったよ
“レム”: いえ、ラインハルト様が不在だとわかっただけでも、 十分な成果だとレムは思います
“レム”: もしものときにラインハルト様を頼るのは難しいと わかっているのといないのとでは大違いですから
“スバル”: 確かにラインハルト込みで色々考えるのは、 やめた方がよさそうだな
“スバル”: あいつの力は借りられない前提で俺たちは動こう
“エミリア”: でも、フェルトちゃんのことはどうするの? お屋敷から逃げ出しちゃったんでしょ?
“スバル”: うぐっ……!
ナレーター: エミリアの問いに、スバルは頭を抱える
ナレーター: スバルの目論見がはずれ、ラインハルトが不在だっただけでなく
ナレーター: ラインハルトの不在を狙って、 フェルトが屋敷を抜け出してしまったのだ
ナレーター: ラインハルトの力を借りるつもりで訪れたはずの アストレア家の本邸だったが
ナレーター: 皮肉にも、困り果てた屋敷の使用人たちから、 脱走したフェルト探しの手伝いを頼まれるという
ナレーター: 当初の目論見とは真逆の結果になってしまっているのだった
“スバル”: ホント、マジすまねぇ
“スバル”: けど、あいつを放っておくわけにもいかないし、 探すしかない気がしてる
“エミリア”: そうね 『異形』とか『変異体』とかが現れたら大変だもの まずはフェルトちゃんを探さないと
“スバル”: くっ…… 結果的に、別行動したフェネが正解ってことになっちまったな
“スバル”: あいつの勝ち誇った顔が目に浮かぶよ
“レム”: スバルくん、そんなことありません
“レム”: スバルくんがラインハルト様に会うことを提案しなければ
“レム”: フェルト様が逃げ出しているという事実を レムたちは知ることができませんでした
“レム”: 『異形』や『変異体』の脅威がある状況で、 フェルト様をお一人にしているのは危険です
“レム”: スバルくんは決して、間違った提案をしたわけではありませんよ
“スバル”: レム…… 色々ありがとな けど、確かにその通りだ やっちまったことをあれこれ後悔しても仕方ねぇ
“スバル”: フェルトを一人にはしておけねぇし、 まずはフェルトを全力で探そう
“レム”: すみません…… 広範囲を探すために、 本来であれば竜車を出す場面かもしれませんが
“レム”: 道中かなり無理をさせてしまったので、 今日はゆっくり地竜を休ませる必要があります
“エミリア”: 私は森育ちだし、歩くのは全然平気よ
“スバル”: ああ、俺も平気だ
“スバル”: なんせ今朝はゆっくり休みすぎちまったし、体力は有り余ってるよ だからレム、気にしないでくれ
ナレーター: それからスバルたちは、徒歩でフェルトを探し始める
ナレーター: だが残念ながら、フェルトの姿はどこにも見当たらないのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_09

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■9話 タイトル:オットー再び 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──ダメだ フェルトの足取りがまったく掴めねぇ
“エミリア”: フェルトちゃん、大丈夫かしら? 今頃、寂しい思いをしてなきゃいいけど……
“スバル”: それについては、きっと大丈夫だよ
“スバル”: むしろ息苦しい屋敷から出られて、のびのびしてるんじゃないかな 寂しいだなんて思っちゃいないはずだ
“レム”: ですが、今は平時ではありません
“レム”: 解放感に満たされているフェルト様には申し訳ないですが、 一刻も早く発見して、お屋敷にお戻りいただかないと
“スバル”: ああ、そうだな それに、俺たちの目的はあくまで『禁書』のページ探しだ
“スバル”: やむを得ずフェルトを探すことになっちまったけど、 ページもちゃんと探さねぇと
“スバル”: 現時点じゃ、そっちの方は 完全にフェネに任せっきりになっちまってる
???: な、ナツキさん!?
“オットー”: ナツキさんがどうしてここに……?
“スバル”: いいところに現れたな、オットー! 実は人手がほしいって思ってたとこなんだよ!
“オットー”: ひ、人手がほしいって僕に何をさせるつもりですか!?
“オットー”: ようやく隕石が落ちたらしい場所がわかったんです 僕は急いでそちらに向かわせてもらいます
“スバル”: 待て待て! 友人が困ってるのに、放っておくつもりか? ここは率先して手伝うべきだろ!
“オットー”: そんなこと一方的に言われても困りますよ!
“オットー”: 僕は隕石を取りに遥々きたんです みすみすその機会を逃すわけにはいきません
“スバル”: …………
“オットー”: な、ナツキさん? そんな風に黙られると、なんだか不安になってしまうのですが……
“スバル”: オットー、お前、隕石が落ちた場所がわかったって言ったな?
“オットー”: は、はい ここハクチュリの南 フランダース方面だと聞きました
“スバル”: ……確かに今、フェルトは危険に晒されている
“スバル”: だがそれは、『禁書』のページのせいで 『異形』や『変異体』が出没するかもしれないからだ
“スバル”: 特に強力な『異形』を宿したページの存在はとてつもない脅威 一刻も早くなんとかしないとならねぇ……
“オットー”: 突然何を言い出すんです? 僕には何のことだかさっぱりわからないのですが
“スバル”: お前にはわからなくていいんだよ オットーは俺たちの足になってくれさえすればそれでいい
“オットー”: ホントに酷いですね!
“オットー”: さすがの僕だって、 なんの事情もわからずに、足になったりはしませんよ!
“オットー”: ど、どうして僕が……
“スバル”: ははは あそこで俺たちに会ったのが運の尽きだったな 詳しい事情は話せねぇんだけど、精一杯俺たちに協力してくれ
“オットー”: はぁ…… 詳しい事情も教えられないまま、 協力させられる身にもなってください
“エミリア”: ごめんなさい、オットーくん でも、竜車に乗せてもらえてすごーく助かったわ
“レム”: 感謝します、オットー様 この御恩は必ずお返しいたします
“スバル”: そうだぞ、オットー ちゃんとこの借りは返す だから、今は黙って俺たちに協力してくれ
“スバル”: お前の協力が、一人の女の子に降りかかる火の粉を 未然に防ぐ結果を導くはずだ
“スバル”: それに、俺たちの本来の目的にも直結してるんだよ
“オットー”: ですが、詳しい事情は話してもらえないんですよね?
“スバル”: それについては申し訳ねぇ
“スバル”: お前になら話してもいいような気もするんだが、 もう少し検討する時間をくれ
“スバル”: それに、知らない方が幸せってことだってあり得るだろ?
“オットー”: わかりました それについてはもう聞きません ナツキさんが話したくなったらで大丈夫です
“オットー”: それから、メイザース辺境伯に 僕との取引を拡大するようお願いしてください
“オットー”: ナツキさんのおかげで、 取引させていただけるようにはなりましたが
“オットー”: まだまだ規模は小さいんです
“オットー”: もう少し大きな取引をさせていただけると……
“スバル”: わかった 全然問題ねぇよ、そんなこと そうだよな、レム?
“レム”: はい レムからもロズワール様にお願いさせていただきます
“オットー”: ありがとうございます! 俄然やる気が出てきましたよ、僕は!
“スバル”: やれやれ、現金な奴だな
“スバル”: けど、この先には大きな危険が待ち構えてる可能性がたけぇ もしものときは遠慮なく逃げてくれよ、オットー
“スバル”: 俺たちと違って、お前には命を張る必要なんてねぇんだから
“オットー”: 命を……張る? その表現は大げさに言ってるだけですよね?
“スバル”: だといいんだけど、実際割と命懸けだ 結構な危険が待ち構えているのは間違いねぇ
“オットー”: ええっと…… 僕は隕石を拾いにいくだけのつもりだったのですが……?
“スバル”: 十中八九その隕石が危険の源だよ ただの隕石じゃねぇ可能性が高いんだ
“オットー”: なるほど……
“オットー”: そういう予感はありましたが、やはり一攫千金を狙うためには、 相応の危険が伴うということですね
“スバル”: まぁ、そういうことだ
“スバル”: けど、見事隕石を発見できりゃ、大きな取引だけじゃなくって 報奨金的なものもロズワールからもらえると思う
“スバル”: 危険に見合う成果は期待できるんだが……
“スバル”: 取引も報奨金も命あってこそだ もしものときは無茶しないでくれよ、オットー

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_10

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■10話(中編) タイトル:現場に到着 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちを乗せたオットーの竜車は、 ハクチュリを離れ南へと走り続けている
“スバル”: オットー、俺たちは今、 フランダースってとこに向かってるんだよな?
“オットー”: いえ、正確にはフランダースではありません
“オットー”: アストレア領の南にある有名な都市がフランダースだったので、 名前を出させてもらいました
“レム”: スバルくん、フランダースは地竜発祥の地として有名な場所です 地竜の都と呼ばれています
“スバル”: 地竜の都、ね できれば寄り道して色々見て回りたい気持ちはあるけど……
“エミリア”: スバル、私たちは遊びにきたわけじゃないわよ
“スバル”: エミリアたん、わかってるよ
“スバル”: もしそのフランダースを観光でもしようもんなら、 フェネの奴からなんて言われるかわからねぇ
“スバル”: 確実にあいつは鉄拳制裁とか言い出すだろうな
“エミリア”: ……でも、そういえば、フェネに内緒できちゃったけど、 よかったのかしら?
“エミリア”: ページを見つけてもフェネがいないと『禁書』に封じられないわ
“レム”: それについてはレムも気になっていました スバルくんなりの考えがあると思い黙っていましたが
“スバル”: フェネについては考えたさ、俺も
“スバル”: けど、俺たちの竜車がしばらく使えない以上、渡りに船な オットーの登場を無駄にするわけにはいかねぇって思ったんだ
“スバル”: それに、オットーが隕石が落ちた場所の情報をゲットできた ってことは、フェネだってその情報を得ているかもしれないだろ?
“スバル”: あのままハクチュリで探すより、 現場に向かった方がフェネに会える可能性は高い気がしてるんだよ
“スバル”: 実際ガナクスでもそうだったし
“レム”: なるほど、やはりスバルくんは、色々考えていたんですね 確かにフェネさんは、すでに現場へと向かっているかもしれません
ナレーター: やがてオットーの竜車は、 隕石が落ちたと思われる場所に到着した
“スバル”: これはこれは、いかにもって場所だな
“レム”: はい えぐられた大地が衝撃の強さを物語っています
“オットー”: どうやら、僕が仕入れた情報は間違っていなかったみたいですね
“オットー”: ……とはいうものの、 すでに隕石は誰かが持ち去ってしまった後のようです
“スバル”: まぁ、そう見えるわな 確かに隕石のいの字も見当たらねぇ
“スバル”: けど、それは俺らにとって想定通りなんだよ そもそもここに落ちたのは隕石じゃねぇしな
“オットー”: ナツキさん、それはどういうことでしょう?
“オットー”: みなさんの会話から、なんとなく『禁書』のページというものが、 ここに落ちたのではないかと推測はできますが
“オットー”: それがどういうものなのか、僕にはさっぱり……
“スバル”: おっ! 色々察しがいいな、オットー 確かにここに落ちたのは『禁書』のページだ
“スバル”: だが、お前は悲観する必要はねぇよ
“スバル”: 『禁書』のページには十分な価値があるし、 発見して一攫千金なのは隕石と一緒だ
“オットー”: それで僕は、その『禁書』のページとやらを 探せばいいんですか?
“スバル”: そうだ おどろおどろしい絵が描かれた紙切れを探してくれ
“スバル”: 元々は絵本の一ページなんだが、 とても子どもたちが好むとは思えねぇ絵柄なのが特徴だ
“エミリア”: でも、どうやらページもここにはなさそう…… 紙だし、風に飛ばされちゃったのかしら?
“スバル”: その可能性はあるだろうね
“スバル”: とにかく、ここに落ちたのは間違いねぇ 手分けしてこの辺を探してみよう
ナレーター: スバルがそう提案し、 それぞれにページ探しを開始しようとしたそのとき──
ナレーター: 森の中から一人の少女が姿を現すのだった
“スバル”: フェルト!
“フェルト”: よう、兄ちゃん まさかこんなとこで再会するとはな
“スバル”: お、お前がどうしてここに?
“フェルト”: なんかおもしれーもんが、ここに落っこちたんだろ? ちょっと見学にきてみたんだよ
“フェルト”: ラインハルトの奴が、屋敷を突然出ていったのも、 ここに落ちたもんが関係してるんじゃねーのか?
“スバル”: ラインハルトが……?
“スバル”: いや……けど……確かにそうかもしれねぇ あいつが屋敷にいなかったのも、だとしたら納得だ
“スバル”: すでにこの場所はラインハルトが調査済みで、 ページについてもあいつが回収しちまった可能性がたけぇ
“レム”: 詳細に調査したわけではないので確実なことは言えませんが、 確かにここにはページは落ちていないように見受けられます
“フェルト”: こっちにきてからずっと、あいつは色々と忙しくしてたよ おかげでアタシは逃げ出せて助かったんだけどな
“スバル”: 忙しく? 例えばどんなことでだ?
“フェルト”: 詳しくは知らねーよ けど、ここに落っこちたもんが、 隕石じゃねーってことぐらいはアタシにも察しがついたぜ
“フェルト”: この辺じゃ結構な数の流れ星が目撃されたみてーだけど、 肝心の隕石は一つも発見されてねーしな
“フェルト”: 代わりに妙な絵が描かれた紙切れが、 たくさん見つかってるらしいぜ
“オットー”: 妙な絵……? ナツキさんが言っていた例のページのことでしょうか?
“スバル”: ああ それで間違いねぇ
“スバル”: 実際俺たちがこっちにきたのも、 ある人がその情報を教えてくれたからだ
“オットー”: なるほど、だからナツキさんたちは、 アストレア領にきていたわけですか……
“フェルト”: なあ、兄ちゃん どうしてアタシはこんな竜車に乗せられてんだ?
“スバル”: いいじゃねぇか こんな竜車でも歩かなくて済むんだからさ
“オットー”: “こんな竜車”で悪かったですね! 嫌ならさっさと降りて歩いてください!
“スバル”: 待て待てオットー、子どもの戯言じゃねぇか 真に受けてイラついてんじゃねぇよ
“フェルト”: はぁ? 兄ちゃん、今なんて言った?
“フェルト”: その“子ども”ってのがアタシのことだとしたら、 アタシは兄ちゃんを許さねーぜ
“オットー”: 僕が怒りを覚えたのは、 どちらかというとナツキさんに対してです
“オットー”: さんざん人の竜車に乗っておきながら、 ナツキさん、“こんな竜車”って言いましたよね?
“スバル”: うぐっ…… 色々と立場が危うい感じだな、俺
“エミリア”: スバルの自業自得です “こんな竜車”なんてオットーくんにすごーく失礼
“エミリア”: それに、スバルにはフェルトちゃんのことを 子ども扱いできないと思うの
“エミリア”: スバルの方がよっぽど子どもっぽいところがあるもの
“レム”: そういう子どもっぽいところが、スバルくんの魅力でもあります
“スバル”: はは…… レムも“子どもっぽい”ってのは否定してくれないんだな
“スバル”: とにかく、フェルト、オットー、すまなかった
“スバル”: フェルトにはこのまま同行してほしいし、 オットーには竜車を降りろなんて言わないでほしい
“オットー”: いえ、僕の方こそすみません ちょっと言いすぎました
“オットー”: もちろんこのまま竜車に乗っていてください “こんな竜車”で申し訳ないですが
“スバル”: いやいや、だからあれは……
“スバル”: 心の中ではちゃんといい竜車だって思ってるよ 面と向かって褒めるのが照れくさいから言わないだけでさ
“フェルト”: わかったぜ、兄ちゃん このまま竜車に乗っててやるよ
“フェルト”: 足には自信があるし、 アタシとしちゃ、別に歩いても構わねーんだけどさ
“レム”: その……フェルト様…… お屋敷の方々がフェルト様のことを心配しております
“レム”: できましたらこのまま、 こちらの竜車でお屋敷までお戻りいただきたいのですが
“フェルト”: 勘弁してくれよ、姉ちゃん アタシはあの屋敷には戻らねーぜ
“フェルト”: 兄ちゃんが情けねーツラするから、 しばらく一緒にいてやるってだけだ
“レム”: ですが……
“スバル”: まぁ、しばらくはいいんじゃねぇかな こうして一緒にいれば、何かあっても対処できるだろ?
“スバル”: 無理強いして逃げ出された方が、厄介なことになっちまう
“スバル”: とにかく、フェルト 隕石の代わりに発見されてるっていう 例の紙切れは、すげぇ危険なものなんだ
“スバル”: 屋敷に戻ることを無理強いはしねぇけど、 俺たちが安全だって判断するまでは、勝手な行動は控えてくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_11

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■11話 タイトル:気休めはよしてくれ 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車がアストレア家本邸に到着する頃には、 すっかり日は沈んでしまっているのだった
“フェルト”: ──おいおい待て待て、兄ちゃん! アタシは戻らねーって言ったはずだぜ!
“フェルト”: どうしてこんな場所にアタシは連れてこられてるんだ?
“スバル”: 安心してくれ、フェルト 屋敷に戻れなんて言うつもりはねぇよ けど、お前が行方不明のままってわけにはいかねぇだろ?
“レム”: お屋敷の方々はとてもフェルト様のことを心配されていました
“レム”: お屋敷にお戻りになる、ならないというお話の前に、 フェルト様が無事であることはお伝えするべきだと思います
“エミリア”: 私もその方がいいと思うの
“エミリア”: フェルトちゃんが無事でいて、 私たちと一緒にいるってことはちゃんと伝えておかないと
“フェルト”: わかった けど、アタシの無事を伝えるだけだかんな アタシを騙して、ラインハルトの奴に引き渡すなんてナシだぞ
“スバル”: ああ、わかってる
“スバル”: お前がどう思ってるかは知らねぇけど、 俺としては、お前とは良好な関係を築きたいと思ってる
“スバル”: そのために信用は不可欠だ わざわざ大切な信用を失うような真似はしねぇよ
“フェルト”: アタシとしても、兄ちゃんとはよろしくやりてーよ なんか兄ちゃんのことは放っておけねーんだ
“スバル”: うぐっ…… なんかそれ、立場が逆な気がしてならないんだが 常識的に考えて、俺がお前を心配する側だよね?
“フェルト”: あはは 兄ちゃんがアタシを? そりゃ、いったいなんの冗談だよ
“スバル”: 冗談じゃねぇよ! こちとら大真面目だ!
???: スバル氏が他人の心配とは、 しばらく会わないうちにえらく出世したものですね、クソ上司
“スバル”: “しばらく会わない”ってのは大げさだろ お前と別行動してから一日も経ってねぇよ
“スバル”: って、しれっと会話に加わってるけど、 どうしてお前がここにいるんだ?
“フェネ”: 皆様を宿でお待ちしておりましたが、 なかなかお戻りにならないので、様子を見にきたのです
“エミリア”: ごめんなさい、フェネ 色々あって戻るのが遅れちゃったの
“フェネ”: いえ、エミリア女史が謝罪する必要はありません
“フェネ”: そのようなことになったのは、大方…… いえ、すべてスバル氏の責任だとフェネは推測します
“フェネ”: スバル氏が厄介事の数々を引き起こし、 結果皆様のお戻りが遅れてしまったのでしょう
“スバル”: 待て待て、そういう決めつけはやめてくれ そういうケースが多いのは認めるけど、今回はそうじゃねぇよ
“フェネ”: 本当にそうでしょうか?
“フェネ”: それならばなぜ、 皆様は冴えないオットー氏の竜車に乗っているのです?
“フェネ”: フェルト女史が一緒にいる点も、フェネには腑に落ちません
“オットー”: そこで“冴えない”って言う必要あります!? 確かにできる男の雰囲気がないことは自覚してますけど!
“オットー”: 僕は偶然、街でナツキさんたちに会って、 みなさんを乗せることになったんです
“オットー”: フェルトさんとは隕石が落ちたっていう南の森で会いました
“フェネ”: ……街で偶然? ……南の森?
“フェネ”: 皆様はスバル氏の提案で、 ラインハルト氏に会いに向かわれたという記憶が……
“フェネ”: それがどうしてそのようなことになってしまったのでしょう?
“フェネ”: ラインハルト氏との話し合いが長引いて、 この時間までかかったというのであれば
“フェネ”: 皆様がこの場所にいるのも納得なのですが、 何から何までフェネには理解不能です
“スバル”: フェネ、ややこしくてすまねぇ 今朝ここを訪れたときは、ラインハルトが不在だったんだよ
“スバル”: それどころか、フェルトの奴が逃げ出したってわかって、 俺たちはフェルトを探すことになったんだ
“スバル”: んで、無事に見つかったから、 とりあえずフェルトの無事を伝えにきたってわけだよ
“フェネ”: なるほど…… やはりスバル氏を中心に、色々と厄介な事があったわけですね
“スバル”: 俺を中心にってな、お前は何がなんでも俺のことを──
“レム”: スバルくん! あれを見てください!
ナレーター: 血相を変えたレムが、スバルの発言を制し夜空を指さす
ナレーター: 彼女が指さした方向を見ると、 何枚ものページが空高くに舞い上がっているところだった
“スバル”: あ、あれは『禁書』のページ! このままじゃどこかに飛び去っちまう!
“スバル”: エミリアたん! レム! ページをなんとか!
“エミリア”: ごめんなさい、スバル あの距離だとどうすることもできないわ
“レム”: スバルくん、申し訳ありません レムにもどうすることも……
“スバル”: フェネ! お前なら!
“フェネ”: 無論、フェネにもできかねます とても残念ではありますが、打つ手はありません
“スバル”: いやいや、諦めるのはまだだ! オットー、至急あのページを追いかけてくれ!
“オットー”: 無茶言わないでください! フルフーは 持久力には自信がありますが、足は決して早くないんです
“オットー”: 飛び去るアレを追うなんてとてもできませんよ
“スバル”: クソっ! やっぱこの辺に落ちたページは、 ラインハルトの屋敷に集められてたんだな!
“スバル”: あいつと会えてりゃ、 ああなる前に『禁書』に封じられたかもしれねぇってのに!
“レム”: スバルくん、ページは飛び去ってしまいましたが、 『異形』や『変異体』が暴れ回る事態は回避できました
“スバル”: 確かにそれはそうかもしれねぇけど、 そのリスクが他の場所に移動しただけだ
“スバル”: ここでは被害が出なくても、 他の場所で『異形』や『変異体』が暴れ回るかもしれねぇ
“フェネ”: あのページたちからは、反応を感じ取ることはできませんでした
“フェネ”: ですので、そのような事態が起こるのには、 まだ時間の猶予があると推測できます
“スバル”: 気休めはよしてくれ! だからって放っておくわけにはいかねぇだろ!
“フェネ”: 無論です 放置するという選択肢はありません
“フェネ”: ですが、フェネはフェネなりに気を遣ったのです スバル氏があまりにも取り乱していたので
“フェネ”: それを“気休めはよしてくれ”とは、いやはや……
“フェルト”: アタシには詳しい事情はわからねーけど、 なんか今の兄ちゃんはすげーかっこ悪かったぜ
“フェルト”: 青髪の姉ちゃんも、フェネって精霊も、 明らかに兄ちゃんを気遣ってくれてたじゃねーか
“スバル”: うぐっ…… フェルトに諭されるとか、俺もまだまだだな……
“スバル”: 確かに取り乱しても仕方ねぇ こういうときこそ冷静にだ
“レム”: そうです、スバルくん レムが知ってるスバルくんは、 どんなときでも冷静に光明を見出せる人です
“スバル”: かっこ悪く取り乱した後に、 そんな風に言われるとすげぇこそばゆいけど
“スバル”: レムを幻滅させないように、色々善処するつもりだ
“スバル”: あのページたちが悪さをする前に、 なんとしても『禁書』に封じねぇとな
“レム”: はい スバルくんにならきっとできると思います レムはそう信じています

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_12

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■12話 タイトル:飛び去ったページを追え 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちはアストレア家本邸の使用人に、 フェルトが無事だということだけを伝え
ナレーター: すぐにページたちが飛び去った南へと竜車を走らせるのだった
“フェネ”: よかったのですか? 結局ラインハルト氏には会っていませんが
“スバル”: イレギュラーなことが起きちまったんだ 仕方ねぇだろ 悠長にラインハルトの帰宅を待つわけにはいかねぇ状況だ
“フェネ”: ですが、今朝から不在ということは、 さすがにそろそろ戻られる頃なのでは?
“スバル”: だとしてもだ 今は一秒だって無駄にしたくねぇ
“スバル”: それに、悔しいけど、お前が今朝言った通りな気がする ページの回収は可能な限り秘密裏に行うべきだ
“スバル”: ページがあいつの屋敷に集められてた事実を考えると、 なおさらそうするべきだって気がしてるよ
“スバル”: むしろ今は、あいつの屋敷から飛び去ってくれて、 ラッキーだったとさえ思ってるぐらいだ
“スバル”: ラインハルトが近衛騎士団っていう公的な組織に属してる以上、 あいつの元に集まったページが
“スバル”: すんなりと俺たちの手には、 渡らねぇことだって十分にあり得るからな
“スバル”: ユリウスのときは、アナスタシアさんがうまくやってくれたけど、 ラインハルトの場合はそうもいかねぇ
“スバル”: あいつの立場的には、怪しげなページは王都に持ち帰って、 騎士団に提出するのが筋だろ
“フェネ”: それについても、まさにフェネは今朝指摘させていただきました
“スバル”: ああ、そうだな だから今朝お前が言った通りだって言ったんだ
“スバル”: けど、オットーにも会えたし、家出したフェルトも発見できたし、 結果的には俺の提案が間違ってたわけじゃねぇよ
“スバル”: 少なくともレムはそう言ってくれてる
“レム”: はい スバルくんを気遣っているわけではなく、 レムは心からそう思っています
“レム”: スバルくんの提案を受け入れたことに、 後悔する要素は一つもありません
“スバル”: “一つも”ってのは、ちょっとよく言いすぎな気はするけど、 今朝は二手に分かれて正解だった気がするぜ、俺も
“スバル”: こうやって便利な足も手に入ってるしな
“オットー”: 完全に僕は足扱いですか!?
“オットー”: 十分地竜も休めたと思いますし、 みなさんの竜車だってもう使えますよね!
“スバル”: それについてはそうかもしれねぇけど、 レムは俺らにとって貴重な戦力だ
“スバル”: 運転手兼戦闘員みたいな過重労働は、できれば回避したい
“レム”: スバルくん…… レムを気遣っていただき、ありがとうございます
“オットー”: レムさんへの気遣いの半分でいいですから、 僕のことも気遣ってほしいのですが!
“スバル”: おいおい、どうして俺が、 男のお前を気遣ってやんなきゃなんねぇんだよ?
“オットー”: あ、あなたって人は……
“エミリア”: こら、スバル オットーくんのことも気遣ってあげなきゃダメでしょ
“エミリア”: オットーくんが竜車に乗せてくれて、すごーく助かってるもの
“スバル”: それについては、ロズワールとの取引を拡大するってことで 話がついてた気が……
“スバル”: そうだよな、オットー?
“オットー”: はい、確かにそうでした
“オットー”: メイザース辺境伯との取引拡大に、 ページとやらを発見できた際の報奨金
“オットー”: 僕がみなさんに協力する理由は十分にありましたね
“オットー”: 少なからず関わってしまった以上、 収穫なしなんて結果は僕としても避けたいです
“オットー”: 責任を持って、 ページとやらが飛び去った先にみなさんをお連れしますよ
“スバル”: 頼んだぞ、オットー 口では色々言ってるけど、俺はお前に期待してるんだよ
“スバル”: 協力に見合うだけの報酬を約束するから、 その期待に応えてくれ
“オットー”: ナツキさん…… ナツキさんは僕に期待してくれてたんですね……
“オットー”: 報酬のためじゃないと言えば嘘になりますが、 男としてその期待を裏切るわけにはいきません
“オットー”: 幸いフルフーは長距離の移動に特化してますし、 寝る間を惜しんで竜車を走らせていただきます

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_13

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■13話 タイトル:微弱な反応 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車は、 オットーの頑張りもあって夜通し走り続けた
ナレーター: そして、朝を迎える頃には、地竜の都フランダースのさらに南、 ハイクララ高原へと差し掛かっていた
“フェネ”: ──スバル氏
“スバル”: フェネ、もしかして?
“フェネ”: はい、微弱ですが反応です 飛び去ったページたちは、ここからそう遠くない場所に存在します
“スバル”: そうか…… それは朗報ではあるんだけど、 同時にページがある程度マナを吸っちまった証でもあるんだよな
“フェネ”: 左様です すぐにどうこうなるわけではありませんが、 『異形』が顕現するまであまり猶予はありません
“スバル”: とにかく、一旦竜車を止めよう マジで夜通し走り続けてくれてたみたいだしな
“スバル”: というわけで、竜車を止めてくれ、オットー
ナレーター: オットーが竜車を止め、スバルたちは竜車を下りる
“スバル”: オットー、ご苦労様 お前は少しここで休んでてくれ
“オットー”: わかりました 僕とフルフーはしばらくここで休ませていただきます
“オットー”: それでみなさんは、これからページとやらを探すのでしょうか?
“スバル”: ああ、そうさせてもらう
“スバル”: フェネがページの反応を感知したんだ その反応を追えばページを見つけられるはずだ
“スバル”: 厄介な事になる前に、ページを封じねぇと
“エミリア”: フェネ、ページの反応はどの辺にあるのかしら?
“フェネ”: エミリア女史、 飛び去ったすべてのページを感知できているかはわかりませんが
“フェネ”: 多くのページの存在を感知しています ここは手分けして探すべきかと
“スバル”: いや、その意見には賛成できねぇ
“スバル”: いつ『異形』や『変異体』が姿を現してもおかしくねぇ状況だ 戦力の分散は避けたい
“スバル”: それにガナクスでは、ページの影響で、 フルフーが暴走するってことも起きたんだよ
“スバル”: 幸い正気に戻ってくれたからよかったけど、 休んでるオットーやフルフーを完全に放置するわけにはいかねぇ
“フェネ”: なるほど……
“フェネ”: 確かにすぐに『異形』を顕現させるページはなさそうですが、 ページの影響で『変異体』が出る可能性は否定できません
“フェネ”: スバル氏の提案通り、 あまり戦力は分散しない方が賢明かもしれません
“スバル”: とはいうものの、そうしたらそうしたで、 必然的にページを回収する効率は落ちちまうわけだ
“レム”: フェルト様もいます ここは安全を最優先に考えるべきだとレムは思います
“フェルト”: おいおい、なんだかアタシが足手まといみてーじゃねーか アタシは自分の身ぐらい自分で守るぜ、姉ちゃん
“スバル”: そこいらのチンピラを相手にするのとは、 訳が違うんだよ、フェルト
“スバル”: 今のお前の発言を聞いて、 安全を最優先にするべきだって俺は強く思わされたよ
“フェルト”: はあ? なんだよ、それ そんなにアタシが心配か?
“スバル”: ああ、心配だ お前は『異形』や『変異体』の恐ろしさをわかってねぇ
“フェルト”: そりゃ、そうだろ 詳しいことはなんも話してもらってねーんだ 恐ろしさもへったくれもあるかよ
“オットー”: それについては、僕もフェルトさんと同意見です
“オットー”: 断片的な情報でなんとか理解しようと頑張ってはいますが、 『禁書』とかいうもののページについてはもちろん
“オットー”: その恐ろしいという『異形』とか『変異体』について、 僕もほとんどわかっていません
“オットー”: ガナクスでフルフーが暴走したり、 血相を変えてナツキさんが僕に立ち去るように言ったのには
“オットー”: そういったことが関係していたようですが……
“エミリア”: スバル、話してあげてもいいんじゃないかしら?
“レム”: レムもお二人にはお話していいと思います
“スバル”: エミリアたん、レム……
“スバル”: ああ、わかった
“スバル”: 状況が状況だけに手短にってことにはなっちまうけど、 二人には色々と共有させてもらうよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_14

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■14話 タイトル:五人目の候補者 更新日:2021/08/20

ナレーター: エミリアやレムに背中を押され、 フェルトやオットーに『禁書』の件を話す決心をしたスバルは
ナレーター: 状況が状況なため、手短に要点だけを二人に話して聞かせた
“オットー”: なるほど…… そういうことがあったんですね……
“フェルト”: にしても、兄ちゃんのやらかしが原因とはね 兄ちゃんがアタシらに隠したかった理由も含めて納得だぜ
“フェルト”: そんな状況じゃ、言いたくても言えねーわな
“スバル”: ああ、そうだ 色々詳しく語れねぇのは、 この件がエミリアたんの王選に悪影響を及ぼすからだ
“スバル”: その影響が半端ないだけに、 話す相手はどうしても選ばなきゃならねぇ
“スバル”: フェルトもオットーも、エミリアたんを貶める相手じゃない ことぐらいはわかってるんだけど
“スバル”: なかなか話す踏ん切りが付かなかった
“スバル”: 結果的によくわからない状態のまま、 色々と協力させることになっちまってすまなかったな
“フェルト”: 協力ってな、この行商人の兄ちゃんと違って、 今のところアタシはなんも協力してねーよ
“スバル”: 確かにそうだった! そういやお前に詳しく話す必要あったか?
“フェルト”: 硬いこと言うなよ、兄ちゃん
“フェルト”: それに、『異形』とか『変異体』って奴らの怖さはわかったぜ 今後は舐めた行動はしねーから安心してくれ
“スバル”: そうか なら話した甲斐はあったよ
“フェルト”: けどよ、王選ってのに悪影響が出ることがそんなに問題か?
“フェルト”: アタシだったら全然構わねーけどな むしろその方が好都合なくらいだ
“フェルト”: めんどくせーラインハルトの奴だって、 色々と諦めてくれるかもしれねーしよ
“スバル”: ラインハルトが……諦める?
“スバル”: なあ、フェルト 俺は『禁書』について色々話させてもらった その代わりって言っちゃなんだが、一個聞いてもいいか?
“フェルト”: なんだよ兄ちゃん、改まって 遠慮なく聞いてくれて構わないぜ 話すかどうかはわからねーけど
“スバル”: 話すかどうかが重要なんだよ! 話してくれねぇこと聞いたって意味ねぇだろ!
“スバル”: って、まあいい 実はある人から頼まれてることでもあるし、 ここはダメ元で質問させてもらう
“スバル”: どうしてお前はラインハルトと一緒にいるんだよ?
“スバル”: 最初は慈善活動の一環かなんかだと思ってたんだけど、 今はそうじゃない気がしてならねぇんだ
“スバル”: 第一、アストレア領までお前を同行させる理由がわからねぇ
“スバル”: 保護した女の子にちゃんとした教育を受けさせたいってなら、 わざわざ出張に同行させたりしねぇはずだ
“スバル”: お前とはあんま込み入った話をするタイミングがなかったし、 踏み込んでいいのかどうかもわからなかったから
“スバル”: 今まではあんま気にしないようにしてたんだけど、 色々腑に落ちてねぇってのが正直なところなんだよ
“フェルト”: ははは なんだよ、そんなことか
“フェルト”: 改まった雰囲気出すから、どんなことかと思えば、 ずいぶんと今さらな質問じゃねーか
“スバル”: 今さらで悪かったな!
“スバル”: けど、実際マジで腑に落ちてねぇんだ フェルト、教えてくれ
“フェルト”: なんでもあいつは、アタシを王選ってのに参加させたいんだと 徽章とやらが光るから、アタシには参加する資格があるらしい
“フェルト”: 姉ちゃんから盗んだときに、 光ってやがったから不思議だったんだけど
“フェルト”: どうやら徽章が光るのは、 王選ってのに参加できる奴が持ったときだけみてーだな
“エミリア”: ──っ!?
“スバル”: ──なっ!?
“レム”: ま、まさか……
“オットー”: ええっと…その…あの……
“フェルト”: どうしたんだ? どいつもこいつも血相変えやがって
“スバル”: いやいや、あまりの発言に、頭が追いつかねぇんだ!
“スバル”: お前が王選候補? そりゃまたなんの冗談だよ
“レム”: ですが……、フェルト様が王選の候補者だったとしたら、 ラインハルト様が手厚く保護するのも納得です
“エミリア”: それに、徽章が光るんだったら、間違いないわ 私も光るから王選の候補者になれたんだもの
“スバル”: マジ……なのか? お前が五人目の王選候補者?
“フェルト”: そんなことは望んでねーし、 毎度ラインハルトには断ってるんだけどよ
“フェルト”: ラインハルトの奴は全然諦めてくれねーんだよ
“フェネ”: スバル氏、そのような高貴な方を誘拐してしまって、 本当に問題はないのでしょうか?
“スバル”: ゆ、誘拐!? 俺、誘拐なんてしてないよね?
“スバル”: それに、フェルトが候補者だなんて知らなかったんだ 知ってたらもっと対応が違ってたよ
“スバル”: 少なくとも、危険が伴うページの回収に付き合わせたりしてねぇ
“フェルト”: だとしたら、兄ちゃんが知らなくて幸いだったぜ ラインハルトのとこになんて戻りたくねーしな
“スバル”: 待て待てフェルト、考え直せ お前が戻ってくれねぇと、俺たちは色々困ったことになる
“スバル”: ただでさえ『禁書』の件で色々厄介なのに、 王選候補のお前を誘拐したなんてことになったら……
“フェネ”: やはりスバル氏は、厄介事を引き寄せる天才ですね 『剣聖』と称されるラインハルト氏を敵に回してしまうとは
“スバル”: いやいや、俺にそんなつもりは…… それに、あいつが敵になったって、まだ決まったわけじゃねぇだろ
“レム”: そうです お屋敷の使用人の方々には、 フェルト様と一緒にいる理由をちゃんと説明してあります
“フェネ”: でしたら、フェルト女史の口から 直接事情を説明してもらうべきでしたね
“フェネ”: 誘拐犯が事件の発覚を遅らせるために、 そのような工作をしたと捉えることも可能です
“レム”: そ、それは……
“スバル”: フェルト、どうしてそんな重要なことを、 今まで教えてくれなかったんだ?
“フェルト”: そりゃ、聞かれなかったからな 聞かれもしねーのに、話すことでもねーだろ
“フェルト”: それに、兄ちゃんたちが知らねーって、 アタシは知らなかったんだ
“フェルト”: ラインハルトの奴と親しいみてーだから、 てっきりあいつから聞いてると思ったぜ
“スバル”: くっ…… こっちも色々隠し事してたから、 あいつとは腹割って話せてなかったんだ
“スバル”: 全部を打ち明けようと思ったときには、 あいつが不在で会えなかったし……
“スバル”: んでもって、ページの回収どころじゃない気分なんだが、 そういうわけにはいかねぇときてる
“フェネ”: 左様です フェルト女史の問題は ページの回収とは切り離して考えるべきです
“フェネ”: すでに多くの時間を無駄にしました 急ぎページ探しに取り掛かるべきかと
“スバル”: そうだな、ここは気持ちを切り替えよう
“スバル”: とにかく、フェルトを危険な目に合わせないためにも、 急いでページを回収しよう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_15

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■15話(中編) タイトル:ロム爺再び 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちは、フェネの感知能力を頼りにページの捜索を始め、 すでに何枚ものページを回収し『禁書』に封じていた
“スバル”: オットー、すまねぇ 結局、お前のことを休ませてやれなかったな
“オットー”: いえいえ、気にしないでください
“オットー”: フェルトさんが王選の候補者だとわかった衝撃が大きすぎて、 眠気や疲れは吹っ飛んでしまいました
“オットー”: フェルトさんにもしものことがあったら、 僕の竜車に乗せている手前、他人事ではないですし
“オットー”: 『剣聖』様の怒りを買ったりでもしたらって考えると、 気が気じゃありません
“オットー”: むしろ手伝わせてもらって、感謝したいぐらいです
“スバル”: 手伝わされて感謝って、損な性格してるな、お前
“スバル”: フェルトにもしものことがあっても、 お前に非がないことは明らかだろ
“スバル”: ラインハルトがお前に危害を加えることはねぇよ
“オットー”: だとしたら、ナツキさんだってそうだと思いますよ
“オットー”: お屋敷に戻らないのは明らかにフェルトさんの意思ですし
“オットー”: ナツキさんが保護していなければ、 フェルトさんは本当の意味で行方不明になっていたと思います
“オットー”: 感謝されこそすれ、誘拐犯扱いされるいわれはないですよ
“スバル”: まぁ、そりゃそうかもしれねぇけど、 フェルトを危険な目に合わせたらラインハルトに顔向けできねぇよ
“スバル”: 『禁書』の件は完全に俺の落ち度だし
“スバル”: もし王選の候補者だって知ってたら、 屋敷の前で、もっと真剣に屋敷へ戻るよう説得したしな
“スバル”: 『異形』や『変異体』のことだって、 できれば話したくないって思いがあって
“スバル”: 話すのが遅れちまったけど、 もし知ってたら、説得材料の一つとしてあのとき使ってたはずだ
“スバル”: “感謝される”ってのは、さすがに採点甘すぎだぜ、オットー
“オットー”: ……なるほど ナツキさんも色々と損な性格をしているみたいですね
“オットー”: 『禁書』の件だって、特に悪意があってしたことではありませんし ナツキさんを責める気に僕はなりません
“オットー”: 本につまづいたことが、こんな事態に発展するなんて、 誰にも想像できないですから
“スバル”: 『禁書』につまづいたのは俺の前方不注意だし、 すぐに返さなかったのは俺の怠慢だよ
“フェネ”: 左様です 明らかにスバル氏の落ち度 万死に値する罪をスバル氏は犯したのです
“オットー”: そ、そこまで言います!? フェネさんはナツキさんに厳しすぎる気がするのですが
“フェネ”: オットー氏こそスバル氏に甘すぎるのでは?
“フェネ”: そのような甘さはスバル氏を堕落させるだけです 決して褒められたものではありません
“フェネ”: 自分が犯した罪の重さを思い知らせ 全力で償わせるのが本当の優しさだとフェネは断言します
“オットー”: だ、断言って、もはやフェネさんとは、 議論の余地がない感じですね
“スバル”: ありがとな、オットー お前の気持ちは嬉しいよ
“スバル”: けど、自分の気持ちには嘘はつけねぇ 俺自身がそう思っちまってるんだよ
“スバル”: これは俺の責任で、俺がどうにかしなきゃなんねぇってな
“フェネ”: 本当にスバル氏は笑わせますね
“スバル”: えっ!? 今、笑う要素あった!?
“フェネ”: “俺がどうにか”とはなんの冗談です?
“フェネ”: この件が始まってから、 一度だってスバル氏がどうにかしたことがあったでしょうか?
“スバル”: いやいや、一個ぐらいあるだろ! 俺なりに全力で頑張ってきたしな!
“フェネ”: 残念ながら皆無です むしろスバル氏は足手まといでしかありません
“フェネ”: そのことをしっかりと自覚してください
“スバル”: う、うう…… そこまで言われると、さすがに俺の目にも涙が……
“オットー”: ふぇ、フェネさん、言いすぎです! これ以上言うと本当にナツキさんが泣いちゃいますよ!
“フェネ”: はぁ…… 仕方ないですね 今回はこれぐらいで勘弁してあげましょう
“フェネ”: 本当に泣かれでもしたら、 レム女史の怒りを買ってしまいますし
“フェネ”: とにかく、スバル氏、向こうにページの反応です
“フェネ”: 皆様は先に向かわれました スバル氏もオットー氏も急いでください
ナレーター: フェネに促され、ページの反応があった場所へ向かったスバルは、 そこで思わぬ人物との再会を果たすのだった
“スバル”: ──ろ、ロム爺!
“ロム爺”: おお、小僧 フェルトが世話になったようじゃな
“スバル”: いやいや、世話ってほどじゃ…… むしろ危険なことに付き合わせて、申し訳ねぇって思ってるよ
“フェルト”: おいおい、どうして兄ちゃんがそんな風に思う必要があんだよ? 全部アタシの意思だ 兄ちゃんに付き合わされた覚えはねーよ
“フェルト”: むしろアタシは、兄ちゃんに感謝してるんだ こうやってロム爺に会えたのも兄ちゃんのおかげだしな
“エミリア”: ええっと、お久しぶりです
“ロム爺”: お前さんには世話になったな また会えて光栄じゃよ
“エミリア”: ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいわ
“エミリア”: でも、ラインハルトがきてくれなかったら、 ホントどうなっていたかわからないわ
“スバル”: いやいやエミリアたんは、 ちゃんと“光栄”に値する活躍だったから大丈夫だよ
“スバル”: エミリアたんの頑張りがあったから、 ラインハルトが間に合ったわけだし
“スバル”: ロム爺の命を繋いだのもエミリアたんだろ
“ロム爺”: その節は助かったわい 今こうして儂やフェルトの命があるのはお前さんのおかげじゃよ
“フェルト”: ああ、そうだぜ、姉ちゃん
“フェルト”: ラインハルトの場合は感謝も帳消しだけど、 姉ちゃんには感謝しかねーよ
“エミリア”: フェルトちゃんまで……
“スバル”: てな感じで感動の再会を果たしたわけだけど、 どうしてロム爺がこんな場所にいるんだ?
“スバル”: 偶然会うにしちゃ、 ここは王都から離れすぎてる気がするぜ……
“ロム爺”: お前さんから、フェルトがハクチュリにおると 教えてもらったんでな
“ロム爺”: 昔の馴染みに送ってもらってたんじゃが、 道すがら夜空を飛ぶ光を目にしてな
“スバル”: その光を追ってここまできたってわけか?
“ロム爺”: そうじゃ お前さんの話ぶりから、アレが巷で噂される 『遺作』に纏わるものだと察しは付いておったのでな
“ロム爺”: 何をするにも金は必要じゃ
“ロム爺”: 『剣聖』からフェルトを取り戻すのも、 この先フェルトが暮らしていくのにもな
“フェネ”: ──スバル氏
“スバル”: いやいや、俺は大した情報は教えてねぇよ
“スバル”: ロム爺と久々に再会して、 あんときはちょっと口が軽くなってたかもしれねぇけど
“ロム爺”: 儂にはあの程度の情報で十分じゃ 伊達に長く生きておらんわい
“スバル”: 最初から、アストレア領に向かいつつ、必要資金は 『禁書』のページでどうにかするつもりだったのかよ……
“スバル”: ってことは、すでに何枚か手に入れてたりして?
“ロム爺”: 無論じゃ その辺は抜かりないわ
“スバル”: ロム爺、それ渡してくんねぇかな? ページは危険なものだ 一刻も早く『禁書』に封じないとならねぇ
“スバル”: もちろん、それに見合う代金は払わせてもらう
“ロム爺”: ほう……
“レム”: ロム様、本当です ロズワール様からページ購入に見合う代金を預かっています
“フェルト”: ロム爺 兄ちゃんには世話になった 持ってるページとやらを兄ちゃんに渡してくれ
“フェルト”: 少なくとも今のアタシは自由だ
“フェルト”: ラインハルトの屋敷から、 アタシを連れ出すために金はかからねーだろ?
“フェルト”: それに、ロム爺に恵んでもらった金で、 暮らすつもりなんてアタシにはねーよ
“フェルト”: そんな金があんなら、むしろ自分のために使ってくれ
“ロム爺”: 『剣聖』から逃れるんじゃ 相応の費用が必要なのは明白じゃ
“ロム爺”: 王都へ戻るのは難しいじゃろう 潜伏先としてピックタットを考えておる
“オットー”: ぴ、ピックタット!
“オットー”: 確かにあの都市なら、 お金次第でどうとでもなるかもしれませんが……
“スバル”: どういうことだオットー?
“オットー”: ピックタットはルグニカ一の商業都市です
“オットー”: もちろん多くの商人はまっとうな商売をしていますが…… 金次第でなんでも引き受ける闇商人もいますから
“スバル”: へー、なんだかそのピックタットについて、 色々知ってるみてぇだな
“オットー”: 一応故郷なんで、人よりは知っているつもりです まあ、長いこと帰ってはいませんが……
“スバル”: ……でも、ちょっと待ってくれ
“スバル”: フェルトがそのピックタットって都市に逃げ込んだら、 王選はどうなるんだよ?
“ロム爺”: ……王選?
“フェルト”: ラインハルトの奴が、アタシを参加させようとしてやがるんだ あいつがアタシを手元に置いてるのもそれが理由だぜ
“ロム爺”: なるほど、色々合点がいったわい フェルトを王選に…… そういう事情じゃったか
“スバル”: エミリアたんの夢を叶えるためにも、王選が開かれないのはマズい
“スバル”: フェルトの参加が必須なんだとしたら、 フェルトには是が非でも参加してもらわねぇと
“スバル”: わりぃ、ロム爺…… フェルトをロム爺と一緒に ピックタットへ向かわせるわけにはいかねぇ
“フェルト”: おい、兄ちゃん、アタシは参加するつもりはねーぜ
“フェルト”: 王選とやらに参加しねーで済むなら、 ピックタットだろうがどこだろうがアタシはいくつもりだ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_16

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■16話 タイトル:フェルトとロム爺を追え 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──くそっ! フェルトとロム爺は見つかったか?
“レム”: 申し訳ありません、スバルくん お二人ともどこにも見当たりません
“エミリア”: こっちにも見当たらないわ ホントにどこいっちゃったのかしら……
“オットー”: やはり二人から目を離すべきではなかったんですよ
“オットー”: フェルトさんと二人っきりで話がしたいという ロムさんからの提案は明らかに拒否するべきでした
“スバル”: やいやい、オットーのくせに言ってくれるじゃねぇか!
“スバル”: お前がしっかり見張ってたらよかっただけの話だろ それをまるで俺が悪いみたいに言いやがって
“オットー”: いやいや、二人っきりで話すのを許可したのって、 ナツキさんですよね!
“オットー”: それに、どうして僕が見張ってなきゃならないんです? 僕が一番責任のない立場だと思うのですが!
“スバル”: “一番責任のない立場”ってなんだよ? フェルトを誘拐した張本人だろ、お前
“フェネ”: 確かに、オットー氏の竜車にフェルト女史が乗っていたところは、 多くの方に目撃されていると推測できます
“フェネ”: 今頃オットー氏の竜車は指名手配されているかもしれません
“オットー”: そ、そんな…… どうしてこんなことに……
“オットー”: とにかく、こうしてはいられません! 一刻も早くフェルトさんを見つけ出しましょう!
“スバル”: その意気だぞ、オットー 頑張ってフェルトとロム爺を見つけてくれ
“オットー”: どうしてナツキさんが他人事なんですか! あなたは一番の当事者ですよね!
“スバル”: わりぃ、わりぃ、確かにそうだったな
“スバル”: けど、ロム爺の口ぶりからして、 それなりの枚数のページを持ってる感じだったし
“スバル”: フェネの感知能力で、 二人の居場所を突き止めることはできねぇのか?
“フェネ”: 無論可能です 優秀なフェネはその可能性に気付き、 すでに南西へと遠ざかる複数のページを感知済みです
“オットー”: 南西…… 確かにピックタットの方向ですね、それ
“フェネ”: さらにフェネは、遠ざかるページの速度から、 お二人の移動手段が徒歩であることも割り出しています
“スバル”: でかしたぞ、フェネ! これで光明が見えてきたな!
“スバル”: けど、ロム爺には連れがいるみたいだったし、 そいつに合流されて、竜車でも使われたら厄介だ
“スバル”: てなわけで、フルフーの出発準備を急いでくれ、オットー!
“オットー”: わかりました、ナツキさん 急いでフルフーのところに戻って準備します
“スバル”: なる早で頼むぜ、オットー
“スバル”: ロム爺が持ってるのはただの紙切れじゃねぇ マナさえ溜まれば『異形』を顕現させる危険なページだ
“スバル”: 都合良く紙切れのままでいてくれればいいが…… そんな保証はどこにもねぇ
“スバル”: 一刻も早くあいつらに追いついて、 危険なページはとっとと封じねぇとな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_17

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■17話 タイトル:芳しくない状況 更新日:2021/08/20

ナレーター: オットーの竜車で、逃げたフェルトとロム爺を追うスバルたちは、 確実に二人との距離を詰めているのだった
“スバル”: フェネ、ページの反応はどうだ?
“フェネ”: はい、確実に縮まっています 遠からず追いつけるでしょう
“スバル”: そりゃ、よかった
ナレーター: そう安堵するスバルだったが、フェネの表情は厳しく 竜車内は異様な緊張感に包まれている
“スバル”: もうすぐ追いつくんだよな?
“フェネ”: 左様です
“スバル”: なら、どうしてそんなに厳しい表情なんだ?
“スバル”: お前がそんな表情だと、車内が暗い空気になっちまう もうちょい表情を崩してくれ
“フェネ”: 残念ながらスバル氏、状況は芳しくありません
“フェネ”: 先程回収したページの中に、 幸いにもノボンのページは含まれていました
“エミリア”: ホント? もうノボンとは戦わなくていいのね?
“フェネ”: はい それについてはご安心ください、エミリア女史
“レム”: にもかかわらず、フェネさんの表情が優れないということは、 もしかして……
“フェネ”: 左様です、レム女史 “こわいまもの”のページは回収できておりません
“フェネ”: そして、ロム氏が持つと思しきページからは、 非常に強い気配を感知しております
“スバル”: ──なっ!
“スバル”: それってつまり、 “こわいまもの”のページをロム爺が持ってるってことかよ?
“スバル”: んでもって、顕現のタイミングが近づいてるんだよな?
“フェネ”: 左様です 反応が強く、相応のマナが溜まった状態かと
“フェネ”: ですが、あくまで強力な『異形』を宿したページということで、 その『異形』が“こわいまもの”かどうかまではわかりかねます
“スバル”: ……わかりかねる?
“フェネ”: 左様です 残念ながら、そこまでは感知できません
“フェネ”: ただ、ノボンに苦戦した現実を考慮すると そのページから顕現する『異形』に勝てる見込みは僅かでしょう
“スバル”: その“僅か”って表現は正しいのか? つまり、俺たちには僅かとはいえ勝てる見込みがある?
“フェネ”: フェネとしたことが、失礼いたしました
“フェネ”: ページの気配から推測するに、皆様では勝てる見込みは皆無 顕現した場合、逃げる以外の選択肢はありません
“エミリア”: それは急がないと……
“レム”: はい 急ぐ以外にできることはなさそうです
“スバル”: ということだ、オットー 頼む急いでくれ
“オットー”: わかりました とにかく急がせていただきます
“スバル”: 頼む、間に合ってくれ……
“レム”: 日もだいぶ傾いてしまいました 日が暮れると厄介です
“エミリア”: 確かにそうね 夜だとパックの力は頼れないわ
“スバル”: くっ…… マジで芳しくねぇ……
“フェネ”: スバル氏、表情が厳しいですよ
“フェネ”: スバル氏がそのような表情では、車内の空気が重くなります 表情を崩し、場を和ませてください
“スバル”: いやいや、今はそういうのは難しいかな 軽口を叩けるような心境じゃねぇし
“フェネ”: はぁ…… スバル氏は、先程フェネに言った言葉を もう忘れてしまったのですか?
“フェネ”: さすがはクソ上司 記憶力もクソそのものですね
“スバル”: うぐっ…… 確かに俺、そんなこと言っちまってたな……
“フェネ”: 左様です スバル氏はフェネの気持ちも考えず、 ずけずけと配慮に欠ける発言を行いました
“フェネ”: その責任はしっかりと取っていただく必要があります
“フェネ”: さあ、スバル氏 この重苦しい空気を吹き飛ばしてください さあさあ
“スバル”: わ、わかった、んじゃ、小話でも…… これは俺が──
“フェネ”: スバル氏、もう結構です
“スバル”: はあ? 今、とびっきりの話を思い出したんだよ 爆笑間違いなしだから、黙って聞いてくれ
“フェネ”: 残念ながら、 スバル氏のくだらない話を聞いている場合ではなくなりました
“フェネ”: 反応が近いです フェルト女史とロム氏はすぐ近くにいると推測されます
“スバル”: “くだらない”ってな…… けど、確かに俺の話どころじゃなさそうだな
“フェネ”: 左様です ここからは竜車を降りた方がよろしいかと
“フェネ”: 恐らくお二人は、感知したページの気配により、 フェネたちが正確な位置を特定しているとは思っていないはずです
“フェネ”: 付け入る隙は十分にあるかと
“スバル”: なるほど…… そのアドバンテージを活かすためにも、 確かに竜車は降りた方がよさそうだな
“スバル”: 音やなんやで気付かれでもしたら、目も当てられねぇ
“スバル”: というわけで、オットー、竜車を止めてくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_18

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■18話 タイトル:思いもよらぬ展開 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──よう、フェルト、ロム爺 俺たちを置いていくなんてひでぇじゃねぇか
“フェルト”: 兄ちゃん!
“ロム爺”: 小僧……
“スバル”: おかげですっかり日が暮れちまったよ ただでさえ時間がねぇってのに、とんだハプニングだったぜ
“スバル”: とにかく、お前らの退路はねぇ 大人しくページを渡してくれ
“エミリア”: お願い ページはとっても危険なものなの 早く封じないと大変なことになっちゃうわ
“レム”: フェルト様、ロム様、大人しく従ってください
“オットー”: かなりの寝不足ではありますが、 僕にだってお二人の行く手を阻むことぐらいはできます
“ロム爺”: ほう…… 小僧が言う通り、儂らは完全に囲まれているようじゃな
“フェネ”: 優秀なフェネの感知能力により、 お二人がいらっしゃる場所の特定は可能でした
“フェネ”: ならば当然、 このように抜かりなく包囲させていただくことになります
“フェルト”: くっ…… 相手が悪かったってことかよ……
“フェネ”: 左様です お二人の不運は追手にフェネがいたことです スバル氏だけでしたら、恐らくすんなりと逃げきれていたでしょう
“スバル”: おいおい、自画自賛もその辺にしとけ
“スバル”: “感知能力”っていったって、普段は大して役に立たねぇんだし
“スバル”: 今回はたまたま、ロム爺が持ったページが、 結構なマナを吸ってる状態だったから追えただけだろ
“フェネ”: 部下の活躍を素直に喜べないとは、さすがクソ上司ですね
“フェネ”: フェネのおかげでフェルト女史やロム氏に追いつけたのは、 紛れもない事実
“フェネ”: 失敗には目を向けず、成した成果に賛辞を贈る それができた上司というものではないでしょうか
“スバル”: お前の上司論には興味ねぇよ
“スバル”: それに、大切なのは失敗したときだって俺は思うぜ
“スバル”: 失敗したときこそ成長のチャンス 他人のアドバイスがすんなり入る絶好の機会なんだよ
“スバル”: “失敗は成功の母”って言ってな 失敗をうまく活用して成長させるのが、上司の本来あるべき姿だ
“フェネ”: “興味がない”と切り捨てておきながら、饒舌に語るとは…… フェネの的確な指摘が、スバル氏は余程悔しかったのですね
“スバル”: 違うわ! 褒めるだけの上司は三流だって、 ちゃんと教えたかっただけだよ!
“フェネ”: わかりました 失敗ばかりしているスバル氏の 負け惜しみだと解釈することにします
“スバル”: どうしてそうなるんだよ? 負け惜しみを言ってるのは、むしろお前の方だろ!
“フェネ”: フェネが負け惜しみを? それは甚だ心外です
“スバル”: 毎度毎度ディスられて、俺の方こそ心外だ!
“オットー”: ナツキさん! フェネさん! 今は言い争ってる場合じゃ──
ナレーター: 言い争いをするスバルとフェネに、オットーが声をかけたそのとき
ナレーター: ロム爺の懐からまばゆい光が溢れ、 膨張したページが夜空へと舞い上がるのだった
“フェルト”: ロム爺! ページが!
“ロム爺”: くっ…… 本当に絵が出てくるというのか……
“スバル”: いやいや、吸い込まれるパターンもあるぜ 今回がどっちになるかわからねぇけど
“ロム爺”: ……吸い込まれるじゃと? それは初耳じゃな
“スバル”: あのページについて流れてる噂は、確かに絵が飛び出すってもんだ
“スバル”: だけど、亜空間に吸い込まれる場合もあるんだよ
“スバル”: そっちの方は、なぜかまったく噂になっちゃいねぇが、 実際に俺たちは何度も経験してる
“異形”: ウガガガガーッ!
“スバル”: どうやら今回は、『異形』が出てくるパターンみてぇだな
“スバル”: けど…… それにしたって……
ナレーター: ページから現れた『異形』のあまりの大きさに、 思わずスバルは言葉を失ってしまう
ナレーター: そして──
“フェルト”: ──ロム爺逃げろ!
“ロム爺”: ──なっ!!
“異形”: ウググググ……
“スバル”: あ、あいつ…… ろ、ロム爺を食いやがった……
“フェネ”: ──スバル氏しっかりしてください!
“フェネ”: 茫然としてしまう気持ちはわかりますが、 突っ立ったままではスバル氏が次の餌食になります!
“スバル”: そんな…バカな…… さっきまで…ロム爺はそこで……
“レム”: ──スバルくん下がってください!
“スバル”: そんな…… ロム爺が…そんな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_19

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■19話 タイトル:現実離れ 更新日:2021/08/20

“スバル”: そんな…… ロム爺が…あいつに……
“フェルト”: ──兄ちゃんしっかりしろ!
“スバル”: ……フェルト?
“フェルト”: ロム爺はあんなんでくたばるタマじゃねーだろ!
“フェルト”: あいつをぶっ倒せば、きっと中から助け出せるはずだ!
“スバル”: 確かに、巨大な魚に飲み込まれて、 胃袋の中で生活するなんてお話を読んだことがあるけど……
“スバル”: そんなこと、現実じゃあり得ねぇだろ
“フェネ”: “現実ではあり得ない”とは、笑わせますね、スバル氏
“フェネ”: ページの件で、我々が経験したことの多くは、 現実離れしたものばかりだと記憶しています
“エミリア”: うん、確かにそう 本当にいつもいつも驚いてばっかりだもの
“レム”: はい レムも驚いてばかりです
“レム”: あのような巨大な『異形』が、一枚の紙の中から現れること自体、 とても現実離れしているとレムは思います
“オットー”: 本当にそうですね あんなに大きなものが、 どうやってあの紙切れの中に収まっていたのでしょう?
“スバル”: みんな……
“スバル”: けど、フェネがそう言うってことは、 あいつの腹の中でロム爺が生きてるってことで合ってる?
“フェネ”: 左様です ロム氏は『異形』に飲み込まれましたが、 死んでしまったわけではありません
“フェネ”: 少なくとも今は、そう考えて行動するべきです
“スバル”: 待て待て、急にモヤっとしたぞ ロム爺は生きてるんだよな?
“フェネ”: 申し訳ありません、スバル氏
“フェネ”: 迂闊にも先程、確証もないまま断言してしまいましたが、 あれはあくまで希望的観測になります
“フェネ”: ロム氏が確実に生きていると、断言することはできません
“フェネ”: ですが、フェネはその可能性が高いと感じています それに──
“スバル”: このまま茫然自失でいても、 ロム爺みたいにあいつに食われちまうってわけだ
“フェネ”: 左様です 行動あるのみです、スバル氏
“スバル”: くっ…… まさかお前に励まされるとはな……
“スバル”: けど、確かにフェネの言う通りだ ロム爺を助けるためにも、今は動かねぇと
“スバル”: 待ってろよ、ロム爺! すぐにそいつの中から助け出してやる!
ナレーター: 仲間たちのおかげで、 『異形』に立ち向かう気力を取り戻したスバル
ナレーター: だが……
ナレーター: この後スバルは、 厳しい現実を突き付けられることになってしまうのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_20

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■エピローグ タイトル:フェルトの決断 更新日:2021/08/20

“異形”: ──ウガガガガーーッ!!
“エミリア”: きゃっ!
“レム”: くっ……!
“フェルト”: くそ! 手も足も出ねー!
“オットー”: だいぶ追い詰められています! ナツキさん、何か策を!
“スバル”: 策って言ったって、力の差がでかすぎる…… しかもこっちは頼みのパックが勤務時間外だ……
“フェネ”: やはり皆様では力が足りません 引くことも検討するべきかと
“フェルト”: ざけんな! ロム爺を放って逃げられるかよ!
“フェルト”: けど、兄ちゃんたちまで巻き込むつもりはねーよ これはアタシの問題だ 逃げたきゃ逃げてくれ、兄ちゃん
“スバル”: そんなわけいくか! 俺だってお前を置いては逃げられねぇよ!
“オットー”: ですが、こちらの戦力では歯が立たないのは明らかです とにかく何か策を……
“スバル”: 勝てる見込みは皆無…… けど、ロム爺をあいつの腹の中から救出しなくちゃならねぇ……
“スバル”: こういう場合、あえてあいつの腹の中に入って、 中からぶっ倒すってのがセオリーな気がするんだが……
“スバル”: ロム爺を飲み込んで以降、 あんにゃろうは俺たちを食おうとする素振りも見せねぇ……
“スバル”: 考えたくはねぇけど、あいつがロム爺を飲み込んだのは、 俺たちを逃がさないようにするためだったり?
“スバル”: ロム爺を置いて俺たちは逃げられねぇ だからあいつは最初に、 ロム爺を腹の中にキープしたのかもしれねぇ
“レム”: それはつまり、 この状況はあの『異形』の思う壺ということでしょうか?
“スバル”: ああ ロム爺があいつの腹の中にいなきゃ、 俺たちはとっくに撤退していたはずだ
“スバル”: けど、現状は逃げたくても逃げられねぇ
“スバル”: あの『異形』は外見に似合わず、 知能レベルが相当に高いのかもしれない
“エミリア”: でも、どうして私たちが逃げちゃいけないの? 逃げてもらった方が戦わなくて済むのに
“スバル”: 俺たちがロム爺を助けたいみたいに
“スバル”: あいつが『禁書』に封じられたページを 助けたいって可能性はねぇかな?
“スバル”: 正確にはページじゃなくて、お仲間の『異形』をってことだけど
“スバル”: アストレア領に集まったページは、 あいつに関係した『異形』を宿したページで
“スバル”: 俺たちはそんなページを『禁書』に封じちまった
“スバル”: だからあいつとしては、 俺たちに逃げられるわけにはいかねぇのかもな
“オットー”: ここで僕たちを倒して、『禁書』からページを解放するのが あの『異形』の目的ということですか?
“スバル”: あくまで可能性の一つだけど、 そう考えると色々納得できる気がするんだよ
“スバル”: 『異形』に相当な知能があるってのは、認めたくねぇ事実だけども
“フェネ”: 知性とは人間だけのものではありません 『異形』に知性が備わっていてもなんら不思議ではないかと
“フェネ”: それを外見で侮り、 『異形』には知性がないものと断じていたのなら
“フェネ”: この状況は自業自得、ざまあないですね
“スバル”: ……え? 今なんて?
“フェネ”: 聞こえませんでしたか、スバル氏 “自業自得でざまあない”とフェネは言ったのです
“スバル”: 聞こえてるよ! 聞こえたうえで聞かずにはいられなかったんだ!
“スバル”: どうしてこの場面でそんな風に言う必要がある? 自業自得でざまあない状況だとしてもだ
“フェネ”: すみません、つい本音が漏れてしまいました 気にせず悪あがきを続けてください
“スバル”: “本音”ってな、お前は本心ではそう思ってるってことかよ しかも“悪あがき”って表現も気になっちゃうね
“スバル”: だいたい、お前は俺たちの仲間なんじゃないのか? その発言には、すげぇ距離を感じちまうよ
“フェネ”: 仲間……
“フェネ”: 一つお尋ねしたいのですが、 どうしてロム氏を置いて撤退しないのです?
“フェネ”: ロム氏はフェルト女史を大切に思っていると推測でき、 ロム氏は恐らく皆様のこのような対応を望んではいないでしょう
“フェネ”: フェネが撤退を進言するのも、 このままでは皆様が全滅してしまうからです
“フェネ”: このままここに残り全滅することが、 本当に仲間のための行動なのでしょうか?
“スバル”: そんなの……
“フェネ”: そんなの、なんです?
“スバル”: 気持ち良く明日を迎えるために決まってるだろ
“スバル”: このままロム爺を置いて逃げたら、 気持ち良く明日を迎えられねぇじゃねぇか
“フェネ”: ……それはつまり、己のためということでしょうか?
“フェネ”: ロム氏のためにこの場に残って戦うのではなく、 自らの利のために残り、そして戦うと
“フェルト”: 難しいことはわかんねーけど、アタシはロム爺を見捨てねー
“フェルト”: それがアタシの生き方だ 命が危ねーぐらいで、曲げるつもりはさらさらないね
“フェルト”: それに、“明日を気持ちよく迎えるため”っての、 アタシは好きだぜ、兄ちゃん
“フェルト”: 正義や倫理なんてもんを持ち出して語られるより、 よっぽど腑に落ちたよ
“レム”: レムもスバルくんらしいとてもいい考え方だと思います
“オットー”: いやいや、確かに明日を気持ち良く迎えるのは大切ですが、 このままじゃ僕たちに肝心の明日が訪れませんよ
“スバル”: それをなんとかするのが、お前の役目なんじゃねぇのか?
“スバル”: 目からすげぇ光線を出してあいつをずたずたにするとか
“スバル”: 巨大な隕石を召喚してあいつをぺしゃんこにするとか、 なんとかできねぇのかよ?
“オットー”: しがない行商人に何を言ってるんですか!
“オットー”: しかもずたずたとかぺしゃんこにしたら、 中にいるロムさんも無事じゃ済みませんよ!
“異形”: ──ウグググ!
ナレーター: 最後のときは近いとばかり、 巨大な『異形』がゆっくりと進みスバルたちに迫る
“エミリア”: ──みんな! 『異形』の攻撃に備えて!
“フェネ”: どうやら皆様が歓談をしてる間に、 撤退の機会は完全に失われたようです
“スバル”: 歓談してたつもりはねぇよ それに──
???: スバル! フェルト様!
“スバル”: 遅かったじゃねぇか、ラインハルト
“ラインハルト”: 待たせてすまない だが、僕がきたからにはもう大丈夫だ
“フェルト”: げぇ! ラインハルト!
“ラインハルト”: フェルト様、お迎えに参りました
“フェルト”: ざけんな! お前なんてお呼びじゃねーよ!
“フェネ”: なるほど…… どこかスバル氏に余裕があったのは、 ラインハルト氏の到着を予感していたからですか
“スバル”: まぁ、ロム爺がページの場所に現れた時点で、 ラインハルトの登場を期待してはいたかな
“スバル”: 屋敷には不在だったけど、ページが飛び去ったこととか、 移動した先の情報はラインハルトの耳にも入ってるはずだし
“スバル”: フェルトがいる手前、口には出さなかったけどな
“レム”: スバルくんのことですから、 何か策があるのではと思っていましたが
“レム”: まさかラインハルト様を…… レムは感服しました
“スバル”: いやいや、その感服は受け取れねぇよ
“スバル”: あくまでここにきたのはラインハルトの手柄で、 俺はただ期待してただけだからね
“スバル”: にしても、さすがラインハルトだ
“スバル”: まさにこれ以上ないっていうタイミングで登場しやがったよ 生まれ持ったスター性が半端ねぇぜ
“ラインハルト”: ……スター性?
“スバル”: わりぃ、なんでもねぇ 気にしないでくれ
“スバル”: んなことより、あいつの腹の中には、 フェルトにとって大切なロム爺がいるんだ
“スバル”: その辺を考慮して、あいつの料理を頼んだぜ、ラインハルト
“ラインハルト”: 了解した、スバル 情報感謝する では──
“ラインハルト”: はぁーーーっ!
“異形”: ウガガガガーッ!!
“異形”: ウガァァッ! ウガガガガー……っ
“スバル”: 悪い、ラインハルト ちょっと二人で話せねぇかな?
“ラインハルト”: もちろんだよ、スバル 少し二人で話をしよう
“スバル”: 助かったぜ、ラインハルト 盗品蔵と同じく、今回もお前には助けられちまったな
“ラインハルト”: 皆を守るのは騎士の務め、礼には及ばないさ
“スバル”: だとしてもだよ マジ助かった あいつは俺らではどうにもできなかったよ
“スバル”: けど、ずいぶんと遅い到着だったな? お前ならもうちょい早く駆け付けててもおかしくないと思うんだが
“ラインハルト”: それについては申し訳ない 思いのほか誤った情報が多くてね、 何度か無駄足を踏まされてしまったんだ
“スバル”: 誤った情報、ね
“スバル”: まぁ、大なり小なり人には思い込みってのがあるし、 証言を鵜呑みにするのは危険だよな
“スバル”: ベテラン刑事が新人に“証言を疑え”なんて指導するのも納得だわ
“スバル”: 犯人は女性だって目撃者が言っても、 実際は小柄で長髪なだけだったみたいな感じでさ
“スバル”: 小柄で長髪の男もいるから、女性だって決めつけると 肝心の初動捜査が間違った方向に進んじまう
“ラインハルト”: なるほど、“証言を疑え”か 肝に銘じておくよ
“ラインハルト”: 実際にそうしていたら、領地に戻ってからの無駄足は、 結構防げていただろうね
“スバル”: ……そんなに無駄足を踏まされたのか?
“ラインハルト”: ああ 恥ずかしながら、誤った情報に振り回されてしまった
“ラインハルト”: そもそも領地に落ちた隕石を調査しにきたはずが、 そこにあったのは隕石とはかけ離れたものだったしね
“スバル”: ずっと屋敷にいなかったのも、 そんな情報に振り回されちまってたからか?
“ラインハルト”: すまない 僕を訪ねてくれたらしいね 会うことができず、申し訳なかった
“スバル”: いやいや、仕事だから仕方ねぇよ こっちも約束してたわけじゃないしな
“ラインハルト”: だが、僕がいれば、 フェルト様を危険な目に遭わせることもなかった
“ラインハルト”: さっきスバルは僕にお礼を言ったけれど、 むしろお礼を言わないといけないのは僕の方だ
“ラインハルト”: スバル、ありがとう
“スバル”: …………
“ラインハルト”: どうしたんだいスバル? 僕は何か気に障ることでも言ってしまったのだろうか?
“スバル”: いやいや、お前のまっすぐな瞳が胸に痛かっただけだ お前から礼を言われるような男じゃないんでね、俺は……
“ラインハルト”: ……スバル?
“スバル”: 全部……全部俺のせいなんだ
“スバル”: フェルトが危険な目に遭っちまったのも、 お前の領地での隕石騒動もな
“ラインハルト”: 何か事情がありそうだね よかったら僕に話してくれないかな
“スバル”: 情けねぇことに、元々そのつもりだよ だからこうやって二人で話せねぇかって誘ったんだ
“スバル”: 色々話した結果、お前が協力してくれることを 俺は期待しちまってる
“ラインハルト”: もちろん力になるさ 僕にできることなら、喜んで協力させてもらう
“スバル”: おいおい、話を聞く前にそんなこと言っていいのか?
“スバル”: お前のそういうこと、俺は好きだけど
“スバル”: 間違った情報に振り回されたのだって、 大方お前のそういうところが原因なんだろ
“ラインハルト”: まあ、人を疑うのは性に合わないからね
“ラインハルト”: それに、君は僕の友人だ 友を救うことに、理由なんて必要ないんじゃないかな
ナレーター: それからスバルは、ラインハルトにすべてを話して聞かせた
ナレーター: ラインハルトは真剣にスバルの話に耳を傾け、 スバルを非難するようなことは決して言わなかった
“ラインハルト”: ──なるほど 君の事情は理解したよ、スバル
“スバル”: どうだ? 呆れて協力する気が失せちまったか?
“ラインハルト”: まさか むしろその逆だよ 微力を尽くさせてもらう
“ラインハルト”: クルシュ様やアナスタシア様まで この件に関わっていらっしゃるなら、なおさらだよ
“ラインハルト”: あの妙な紙切れについてもわかったし、 話してくれたことに感謝するよ、スバル
“ラインハルト”: ……それで、スバル 僕からも一つ君にお願いしたいことがあるんだ
“スバル”: ラインハルトが俺にお願い? もちろん力になる 遠慮なく言ってくれ
“ラインハルト”: ありがとうスバル それじゃ──
“フェネ”: ──二人での内緒話は終わりましたか?
“スバル”: ああ、待たせて悪かったな けど、ラインハルトとの話し合いはうまくいったよ
“エミリア”: それじゃラインハルトは……?
“ラインハルト”: エミリア様、微力を尽くさせていただきます スバルから聞いた話も他言しないことをお約束しましょう
“エミリア”: ありがとう、ラインハルト
“エミリア”: ……でもスバル、どうして二人だけで話したの? 私もちゃんとラインハルトにお願いしたかったわ
“スバル”: いや!? それは……
“フェネ”: 恐らくスバル氏は、情けなく頭を下げる姿を エミリア女史に見られたくなかったのでしょう
“フェネ”: スバル氏にはこれといった取柄もなく それに反してラインハルト氏は類まれなる才華をお持ちです
“フェネ”: 一方的に助力を乞う哀れな姿を、スバル氏がエミリア女史に 見せたくないであろうことは容易に推測が可能です
“スバル”: 待て待て、今回は“一方的に”ってわけじゃねぇよ もちろん才華の違いは認めるけども
“フェネ”: それは本当なのでしょうか?
“ラインハルト”: 本当だよ 僕からスバルに大切なお願いをさせてもらった
“レム”: ラインハルト様がスバルくんに? その内容がレムにはとても気になってしまいます
“レム”: スバルくんは無理ばかりするので、 そういった内容でなければいいのですが……
“スバル”: レム、心配無用だ ラインハルトからのお願いに、肉体の酷使は必要はねぇ
“スバル”: むしろ使うのは口だけ……
ナレーター: スバルはそう言って、無事に『異形』の腹から生還した ロム爺を支えるフェルトを見据えるのだった
“フェルト”: なんだよ兄ちゃん アタシになんか用か?
“フェルト”: 言っとくけど、王選ってのに出ろって話なら、 説得するだけ無駄だかんな
“スバル”: まぁ、そう頑なになるなよ、フェルト
“スバル”: 貧民街で暮らしてたお前が王様になるなんて、 とてつもないサクセスストーリーじゃねぇか
“フェルト”: はあ? そのさくせすなんとかってのはなんだよ?
“フェルト”: 訳わからねーこと言って、 アタシを煙に巻こうとしたって無駄だぜ、兄ちゃん
“スバル”: いやいや、そんなつもりはねぇよ
“スバル”: けど、マジで悪い話じゃない気がするのに、 どうしてお前はそんなに固辞すんだよ?
“スバル”: 今の暮らしだって、貧民街の頃に比べりゃ雲泥の差だろ?
“フェルト”: 確かにうまいもん食えて、温かいベッドで眠れてるよ 今の暮らしは貧民街の頃とは比較にならねー
“フェルト”: けどな、そんなことアタシにはどうだっていいんだよ
“フェルト”: アタシはやりたいようにやりてーのに、 ラインハルトのとこにいるとそれができねー
“フェルト”: そんな場所に長くいるわけにはいかねーんだよ
“スバル”: やりたいようにやりてぇんだったら、 王様になるのが一番それができそうだけどな
“スバル”: だって王様だぜ? やりたいようにやりてぇ奴にとっちゃ最高のポジションだろ
“スバル”: 俺がお前の立場だったら、 間違いなくラインハルトの話に乗っかるな
“フェルト”: アタシはアタシだ そんな仮定に意味なんてねーよ、兄ちゃん
“スバル”: そうは言うけどさ……
“スバル”: って、お前の説得の前に、まずはロム爺の治療だな なんとか立っちゃいるが、明らかに治療が必要そうだぜ
“スバル”: まぁ、あんな奴の腹ん中にいたんだから、 今立ててるだけでも奇跡なんだろうけど
“ロム爺”: はぁ……はぁ…… 少し疲れておるだけじゃ この程度、しばらく休めばなんてことないわい
“フェルト”: 強がるなよ、ロム爺 だいぶヤバいのは、見るからに分かるだろ
“レム”: スバルくん、レムがロム様に治癒魔法を
“スバル”: ああ、頼む、レム
“レム”: わかりました それではロム様──
“ロム爺”: 待つのじゃ お前さんたちに借りを作るわけにはいかん
“スバル”: 待て待て、借りとか気にしてる場合じゃねぇだろ
“スバル”: ロム爺にもしものことがあったら、俺も寝覚めがわりぃし、 そんなこと気にせずレムの治療を受けてくれ
“スバル”: マジで借りに感じる必要なんてねぇから
“フェルト”: そうだぜ、ロム爺 今は四の五の言ってる場合じゃねー
“フェルト”: 姉ちゃん、頼む ロム爺を治してやってくれ
“レム”: ──これでロム様はもう大丈夫です
“スバル”: そうか、良かった これで安心してフェルトの説得に時間が割けるよ
“スバル”: ってことで、試合再開だ、フェルト なんとか考えなおしてくれねぇかな?
“フェルト”: さっきと状況が大きく変わったってこと、 兄ちゃんは気付いてねーのか?
“スバル”: はあ? 状況が変わったってどういうこどだよ?
“フェルト”: ったく、まったく打算なしってわけか けど……
“ロム爺”: すまんな、フェルト 小僧は借りではないと言っとったが、そういうわけにもいかんか
“フェルト”: まあな 借りはきっちり返すのがアタシの流儀だ
“フェルト”: ロム爺を化け物の腹の中から助け出したのが、 ラインハルトのヤローで
“フェルト”: ロム爺を治療したのが青髪の姉ちゃんときやがる
“フェルト”: それに、やりてーことやるには、 王様になるのが一番っていう
“フェルト”: 兄ちゃんの意見にも一理ありやがるぜ
“スバル”: え? もしかして、フェルトお前……
“フェルト”: 考えてやってもいいってだけだ まだ王様になるって決めたわけじゃねーよ
“ラインハルト”: ありがとうございます、フェルト様 騎士ラインハルト、全力でフェルト様を支援させていただきます
“フェルト”: だから、決めたわけじゃねーって言ってんだろ あくまで考えてやるだけだ 勘違いすんじゃねー
“スバル”: 王選ってのは、五人揃わねぇと開始されねぇんだ 前向きな検討、マジで頼むぜ、フェルト
“スバル”: ってな感じが、今の精一杯だな すまねぇラインハルト、これ以上は無理っぽい
“ラインハルト”: いや、構わないよ、スバル
“ラインハルト”: 僕では検討さえしてもらえなかったからね 十分な進展だよ、ありがとう
“フェルト”: で、言い忘れてたけど、これからはロム爺も一緒だかんな それだけは譲れねー
“フェルト”: ロム爺に自由に会えねーなんてナシだ もしダメなら検討するって話はなかったことにさせてもらう
“ラインハルト”: フェルト様、承知しました ロム様、ぜひフェルト様のお傍でお過ごしください
“スバル”: よし! これで離れ離れになってたフェルトとロム爺も 一緒になれて、めでたしめでたしだな
“フェルト”: ……ところで兄ちゃん アタシが王選ってのに参加するしねーに関係なく
“フェルト”: 兄ちゃんには、片付けなきゃならねーことが、 色々とあるんじゃねーのか?
“スバル”: うぐっ…… 確かに……
“ラインハルト”: ひとまずスバルたちが『禁書』に封じたというページについては、 騎士団には報告しないでおくよ
“ラインハルト”: それから、ページについて新しい情報が入ったときは、 共有させてもらう
“スバル”: サンキュー、ラインハルト すげぇ助かるよ
“オットー”: あの『剣聖』様を味方に付けてしまうとは…… 僕はとてつもない人と知り合いになってしまった気が……
“スバル”: “知り合い”ってのはよそよそしい表現だな 俺たちは歴とした友達だろ
“スバル”: 足として世界各地に俺を運び、 もしものときは盾として守ってくれよな、オットー
“オットー”: 友達って意味わかってます!? そんなのただ都合良く使われてるだけですよね!
“フェネ”: オットー氏、それではまず 可及的速やかにフェネたちをハクチュリまで運んでください
“フェネ”: 『異形』との戦いでフェネたちはかなり疲労しています
“オットー”: いやいや、僕だって疲労困憊ですよ! みなさんと違って、ほとんど寝てませんし!
“フェネ”: 眠れるときにしっかりと睡眠をとっておかないと、 このように辛い思いをすることになります
“フェネ”: そういったことを身をもって学べば、 同じ失敗を繰り返すことはないでしょう
“フェネ”: つまり、これはフェネの優しさなのです 遠慮せずお受け取りください
“オットー”: や、優しさって……
“オットー”: もう、わかりましたよ! ハクチュリまでお送りします! 竜車を取ってくるので、みなさん少しお待ちください
ナレーター: ラインハルトのおかげで、 なんとか強力な『異形』を倒し帰路につくことができたスバル
ナレーター: だが世界には、まだまだ多くのページが存在している──
ナレーター: ……翌日
使用人: フェルト様! どちらにいらっしゃいますか お稽古のお時間です!
“フェルト”: 礼儀作法の稽古なんかかったりーし、 ちょっくら街に出ようぜ、ロム爺
“ロム爺”: よいのかフェルト?
“フェルト”: 当り前だろ アタシはまだ王様になるって決めたわけじゃねー
“フェルト”: それに、もし王様ってのになるんだったら、 アタシは色々ぶっ壊してやるつもりだ
“フェルト”: かったりー、礼儀や作法なんかも含めてな
“ロム爺”: ほう…… 色々と考えてるようじゃな
“フェルト”: まあな 約束は約束だ ちゃんと考えるつもりだよ
“フェルト”: そのためにも、街を見て回りてーって思ってる
“フェルト”: 遥々ラインハルトの地元まで出張ってきてるんだ こんな機会、無駄にできねーだろ
“ロム爺”: フェルト……
“ロム爺”: そうじゃな 実際に自分の目で見ることは大切じゃ
“ロム爺”: 特に弱い者の声は、屋敷の中にいては聞こえんでな
“ロム爺”: わかったわい 儂も付き合ってやろう
“フェルト”: よし! そうと決まればロム爺──
使用人: お、お待ちくださいフェルト様!
“フェルト”: わりーけど、ちょっと用があるんだ ロム爺も一緒だし、心配すんなってラインハルトには伝えてくれ
“フェルト”: じゃあな──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_00

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■プロローグ タイトル:ロズワールへの報告 更新日:2021/10/28

ナレーター: アストレア領での一件を解決したスバルたちは、 ロズワールへの報告もかねて、屋敷へと戻ってくるのだった
“ラム”: バルス、ロズワール様がお待ちよ
“スバル”: ああ、ラム なんか久しぶりだな 屋敷の仕事を押し付ける感じになっちまってすまねぇ
“ラム”: その話は後 今はロズワール様のところへ急いでちょうだい エミリア様もお願いいたします
“エミリア”: ええ ロズワールを待たせちゃ悪いもの スバル、急ぎましょう
“レム”: レムはしばらくお屋敷を空けていましたので、 使用人としてのお仕事に精を出したいと思います
“ラム”: いえ ロズワール様からは、レムも参加するように言われているわ
“ラム”: バルスと一緒にロズワール様の執務室に向かってちょうだい
“レム”: わかりました それでは、レムも執務室に向かいます
“フェネ”: ……
“エミリア”: フェネ?
“フェネ”: …………
“エミリア”: フェネ、大丈夫? なんだかすごーく体調が悪そう
“フェネ”: 申し訳ありません、エミリア女史 どうやら長旅の疲れが出てしまったようです
“フェネ”: 道中何も考えずに、ぼーっとできるスバル氏と違い、 フェネはページの感知に粉骨砕身で当たらなければならない故
“フェネ”: かなりの疲労がたまってしまっています
“スバル”: おいおい、誰がぼーっとしてたって?
“スバル”: 俺は俺なりに神経を研ぎ澄ませて、 迫りくる危険がないか注意を払ってたつもりだ
“スバル”: それに考えることは盛りだくさんだったし、 全然ぼーっとなんてできてねぇよ
“フェネ”: …………
“スバル”: んだよ、だんまりか? いつもだったら、 ああだこうだ言い返してきそうなやり取りだってのに
“フェネ”: 残念ながらスバル氏 現在のフェネにはスバル氏を気遣う余裕がありません
“スバル”: “気遣う”って、お前の憎まれ口って俺への気遣いだったの!?
“スバル”: って、マジで調子悪そうだな……
“スバル”: ロズワールへの報告は俺たちに任せて、 お前は一足先に部屋へいって休んでろよ
“エミリア”: うん、私もその方がいいと思う フェネ、無理しないで 部屋で休んでていいわよ
“フェネ”: エミリア女史の優しさに感謝します そのお言葉に甘え、そうさせていただきます
“スバル”: 確かにエミリアたんは優しいけども、 俺からの優しさがなかったことになってるのは気のせいか?
“ラム”: ハッ そんな恩着せがましい人間の優しさなど、 なかったことにされて当然ね
“ラム”: バルスは優しさを主張する前に、まずは恥を知るべきだわ
“スバル”: うぐっ…… この感じ久々に味わったけど、 やっぱ精神的ダメージがでけぇ……
“スバル”: ラムとフェネがセットだと、俺の立場は悪くなるし、 発言には気を付けねぇとな
“ラム”: 発言に気を付ける、いい心掛けね
“ラム”: ラムとフェネの前に限定せず、 バルスは常に発言には気を付けなさい
“スバル”: なんだか綺麗にまとまった感じになってすげぇ悔しい! 言い返してもドツボにはまるだけだから、言い返さねぇけど!
“ラム”: それで、フェネは一人で部屋までいけるのかしら? もし難しいようなら、レムを付き添わせるわ
“レム”: はい レムがフェネさんをお部屋までお連れします
“フェネ”: いえ、一人で問題ありません 皆様はロズワール氏のところへお急ぎください
“フェネ”: では──
“スバル”: フェネ、マジで大丈夫か……っていっちまいやがった
“ラム”: 本人が大丈夫というのであれば、ラムたちにできることはないわ
“ラム”: バルス、ロズワール様がお待ちよ 執務室に急いでちょうだい
“ロズワール”: ──よく戻ったねーぇ 無事で何よりだーぁよ
“ロズワール”: それで、私に色々と報告があるんじゃないかーぁな
“スバル”: ああ、たくさんある
“ロズワール”: フェネくんがここにいないことも、 そのうちの一つということでいいのかい?
“スバル”: いや、あいつは体調が悪くなって、 一足先に部屋へいって休んでるよ
“スバル”: ページの感知ってのはすげぇ疲れるらしい その反動が出ちまった感じだ
“ロズワール”: ほう……
“エミリア”: 本当なのロズワール フェネ、すごーく体調が悪そうだったもの
“ロズワール”: なるほど では、やむを得ないですね
“ロズワール”: でもスバルくん、フェネくんがいなくて本当に大丈夫かい? フェネくんの回復を待ってからでも私は構わないよーぉ
“スバル”: いや、大丈夫だ それに時間的余裕があるわけじゃねぇ 済ませられることは先に済ませておきたい
“ロズワール”: 時間的な余裕が……ない?
“スバル”: ああ 時間が大切なものだってのは知ってたけど、 最近は特に痛感させられてるよ
“スバル”: 時間が経てた経つほど、状況は悪化しちまう 色々急ぎてぇってのが本音だ
“ロズワール”: わかった それではスバルくん、始めてくれたまえ
ナレーター: それからスバルは、アストレア領での一件や
ナレーター: 本人は正式に参加を表明していないものの、 王選の五人目の候補者がフェルトになる可能性が高く
ナレーター: その後ろ盾をラインハルトが務めるであろうことなどを ロズワールに話して聞かせた
“ロズワール”: ──そうか ラインハルトくんがフェルト様を……
“スバル”: その様子からすると、五人目の候補者がフェルトに なりそうだって、ロズワールは知らなかったみたいだな
“ロズワール”: もちろんだーぁとも 無論、五人目が見つかり、 間もなく王選が開始されるという噂は耳にしていたけどねーぇ
“ロズワール”: それにしても、 ラインハルトくんが相手になるかもしれないとは……
“ロズワール”: フェルト様が参加されるのであれば、 楽に勝たせてはもらえないかもしれない
“エミリア”: ロズワール、誰が相手でも私はがんばるわ
“ロズワール”: その意気です、エミリア様 我々は一歩ずつ着実に進んでいきましょう
“ロズワール”: それに──
“スバル”: 『禁書』の件が片付かない限り、 王選が開始されることはねぇって言いたいんだろ?
“ロズワール”: その通りだよ、スバルくん この件が片付かない限り、王選は始められないからねーぇ
“ロズワール”: となると、気になるのは力を増す『異形』…… いつまで秘密裏に事を進められるか怪しくなってしまった
“ロズワール”: 幸い、現時点で我々の関与は公になっていないが、 強力化する『異形』を限られた戦力で相手をするのには限界がある
“パック”: その通りだね それに大切なリアが、 これ以上危険な目に遭うのを見過ごすわけにはいかないかな
“スバル”: おっと、パック! ずいぶん久々の登場だな!
“パック”: 日が暮れてからの戦いだと、ボクは出てこられないからね ボクの力を借りたいなら、戦う時間を考えてくれないと
“スバル”: いやいや、こっちは狙って 日が暮れてから戦ったわけじゃねぇって
“スバル”: 色んな事情が重なって、 たまたまクライマックスがあのタイミングになっちまったんだ
“スバル”: むしろ、日が暮れたら勤務時間外みたいな 公務員的な働き方を改善して、少しは残業してくれねぇかな?
“パック”: 酷いな、スバル その言い方だと、 まるでボクが悪いみたいになっちゃうよ?
“スバル”: その言い方だと、今度は俺が悪いみたいじゃねぇ? 俺、まっとうな指摘をしただけだよね
“ラム”: いいえ、バルス 悪いのはバルス 他の誰でもないわ
“パック”: スバル、桃髪の子はこう言ってるけど?
“スバル”: フェネがいないと安心してりゃ、 パックの登場でアウェイ感が半端ねぇ
“スバル”: とにかく、元を正せば、確かに俺のせいだ
“スバル”: けど、それについては重々承知してるから、 あんまりいじめないでくれ
“ラム”: ……重々承知している? ハッ その目を見ているととてもそうは思えないわね
“スバル”: こんな目つきでごめんね!
“スバル”: けど、マジで反省してるし、 みんなにも申し訳ねぇって思ってるよ
“スバル”: こればっかりは信じてもらうしかねぇけど……
“パック”: 信じてもらうしかない、ね そう言われると、逆に怪しく感じちゃうかな
“ラム”: 大精霊様の言う通りよ 信じることを懇願する者ほど信用に値しないわ
“スバル”: 目つきは論外! “信じてくれ”はNG! いったい俺はどうすりゃいいんだ?
“パック”: まあ、結果を出すことだろうね それまでは何を言われても我慢して黙々と努力だよ、スバル
“パック”: それにボクは、本当に今の状況を快く思っていないんだ スバルにもあの子狐にも不満があることは確かだね
“スバル”: フェネに……不満? どっちかってとあいつは俺の被害者で、 フェネに不満を持つのはお門違いなんじゃねぇか?
“パック”: ふーん スバルは子狐を庇うんだね?
“スバル”: いやいや、庇うってほどじゃ……
“スバル”: それにしても、 お前がフェネに不満を持ってるなんてちょっと意外だったよ
“スバル”: 確かにページの感知に関しちゃかなりポンコツだけど、 それだってやむを得ねぇっていえばやむを得ねぇことだしな
“ラム”: 大精霊様と違い、ラムが不満を持っているのはバルスだけよ 安心なさい
“スバル”: それはそれで心穏やかじゃないかな! とても安心できる情報じゃないしね!
“スバル”: とにかく、なんだか話が脱線してる気がするから、 元に戻させてもらう
“スバル”: ロズワールに話さなきゃいけないことが、まだ残ってるんでね
“ロズワール”: ほう…… それは何かな、スバルくん
“スバル”: いや…… “話さなきゃいけないこと”ってよりは、 ロズワールにお願いしたいことってのが正確な表現なんだけど……
“ロズワール”: 構わないよ、スバルくん 話してくれたまえ
“スバル”: サンキュー、ロズワール それじゃ言わせてもらうけど、 お願いしたいことってのはオットーとの取引拡大についてだ
“スバル”: 実はあいつには今回すげぇ世話になった
“レム”: それについては間違いありません
“レム”: レムたちが目的を果たし、こうして無事に戻ってこられたのも、 オットー様のお力添えがあったからに他なりません
“エミリア”: 確かにそう オットーくんがいなかったら、 フェルトちゃんだってどうなっていたかわからないわ
“スバル”: エミリアたん、レム……
“スバル”: この二人もこう言ってくれてる ぜひ、オットーとの取引拡大を前向きに検討してやってくれ
“スバル”: あいつにはホント世話になった あれだけやって見返りがないんじゃ、さすがにオットーが可哀想だ
“ロズワール”: わかったよ、スバルくん オットーくんの件については、良きに計らうと約束しよう
“スバル”: 助かるぜ、ロズワール マジ、オットーのこと、よろしく頼むな
“スバル”: ってなわけで、俺から話すことは以上だ 言うべきことは全部言えた気がする
“ロズワール”: ではスバルくん 私から質問をしてもいいかーぁな
“スバル”: ああ、もちろんだ なんなりと質問してくれ
“ロズワール”: それでは、遠慮なく質問させてもらうとしよう
“ロズワール”: ──スバルくん、君はこれからどうするつもりなんだい?
“ロズワール”: 今後『異形』はより強力になり、 ページの回収が完了する目途も立っていない
“ロズワール”: そもそも、残りのページがどこにあるかさえ、 現状ではわかっていないように思える
“ロズワール”: そんな状況をスバルくんは、 いったいどうやって打開するつもりなのかーぁな
“スバル”: いきなり核心を突いた質問だな……
“スバル”: 正直なところ、その質問に対する答えを 今の俺は持ち合わせちゃいねぇ
“スバル”: 次にどこへ向かうべきかも定かじゃねぇし、 強力化する『異形』に対する具体的な対策がないのも事実だ
“スバル”: ──けど、それは“今は”って話だ
“スバル”: 幸い、俺たちにはクルシュさんっていう心強い味方がいる
“スバル”: まずは王都に向かって、 クルシュさんに相談するべきだって思ってるぜ
“ロズワール”: ほう……
“スバル”: すまない、ロズワール 今の答えは、お前を失望させちまったかな?
“ロズワール”: いや、むしろその逆だよ、スバルくん
“スバル”: ……その逆? そりゃまたなんで?
“ラム”: バルス、くだらない質問をして、 ロズワール様にお手間を取らせるべきではないわ
“ラム”: それとも頭が悪いバルスには、本当にわからないのかしら?
“スバル”: うぐっ…… すまない、ラム 俺の頭が悪いのか、ロズワールからの思わぬ評価が理解できねぇ
“ラム”: ハッ やはりバルスはバルスということね
“ラム”: クルシュ様にご相談する、 それが今ある選択肢の中でもっとも有効
“ラム”: その答えを導き出したバルスを ロズワール様は評価されたということよ
“ラム”: 独断専行で物事を悪化させることしかできなかったバルスが
“ラム”: “まずはクルシュ様にご相談”という結論に至ったこと については、ラムもわずかながら評価しなくもないわ
“ラム”: クルシュ様であれば、ご相談する相手としては適任 あの方は、おいそれと誤った判断はされないでしょうから
“スバル”: つまり、俺の判断は信用できねぇけど、 クルシュさんの判断だったら信用できるってわけね
“スバル”: 褒められてるようで、 実はけなされてるっていういつものパターンじゃねぇか
“ラム”: いえ、そんなことはないわ
“ラム”: 力もないのに、 バルスには自分でなんとかしようとする傾向が強すぎたわ
“ラム”: そんなバルスがクルシュ様にご相談…… 悔しいけれど、まともな判断よ
“ラム”: 本当にバルスの独断専行は、事態を悪化しかさせないから
“スバル”: 褒めるなら、ちゃんと褒めてもらっていいかな! わざわざ俺を下げること言わなくていいだろ!
“スバル”: けど、確かに今までの俺は、 自分でなんとかしようとしすぎてたかもな
“スバル”: そのせいで事態を悪化させちまったことがあることも認める
“スバル”: とはいうものの、『禁書』の件は、 あまりにも事態が大きくなりすぎちまった
“スバル”: もはや俺の力だけじゃどうにかできねぇことは明白だ 頼れるものは頼らざるを得ねぇ
“ロズワール”: そう認められることが、大きな進歩だーぁよ
“ロズワール”: 今のスバルくんになら、安心して任せることができそうだねーぇ
“ロズワール”: というわけでスバルくん 『禁書異変』解決に向けて、引き続き尽力してくれたまえ
“スバル”: ──ってなわけなんだよ、ベア子
“ベアトリス”: お前がしばらく屋敷を留守にするのはわかったのよ とっととここから出ていくかしら
“スバル”: 『禁書異変』の解決が今は最優先
“スバル”: ロズワールはしばらく不在にすることを了承してくれたけど、 やっぱラムには少し申し訳ねぇ
“スバル”: 屋敷のこと、全部ラムに任せることになっちまう
“ベアトリス”: ベティーには興味ないのよ とにかくとっととここから出ていくかしら
“スバル”: “興味ない”ってなんだよ? お前が快適に暮らすためにも、結構重要な話じゃねぇか
“ベアトリス”: ベティーの快適な暮らしを一番邪魔しているのはお前なのよ! それに比べれば些細なことかしら!
“ベアトリス”: それに、姉妹の姉だけで対応が難しい場合は、 村から手伝いがくるのよ
“ベアトリス”: お前の心配など不要 時間の無駄でしかないかしら
“スバル”: とか言いつつ、こういう俺との会話を 実は楽しんでたりするんだよな?
“スバル”: 何かっつーと“出ていけ”とか言いつつ、 俺が禁書庫にきたことを喜んでくれるのがベア子だもんな
“ベアトリス”: な、何を言い出しやがるのよ! ベティーは楽しんでなどないし、嬉しくもないかしら!
“ベアトリス”: これ以上居座るなら──
“スバル”: 待て待て待て! 悪かった! ちょっと調子に乗りすぎたよ!
“スバル”: もう少しだけ、お前と話がしたいから、 強制的に追い出すのはナシにしてくれ!
“スバル”: お前がどうか知らねぇけど、 俺はこうしてお前と会えて嬉しく思ってるんだ
“スバル”: ここにくるのも久しぶりだし、もうちょい話をしようぜ、ベア子
“ベアトリス”: お前がそこまで言うのであれば、 このまま追い出すのは勘弁してやるのよ
“ベアトリス”: それで、お前はベティーにどんな話があるかしら
“スバル”: 具体的にこれだって話があるわけじゃねぇよ
“スバル”: 一番知りたいのは、 『禁書』のページがどこにあるかってことだけど……
“スバル”: さすがのベア子にもそれはわからねぇだろ?
“ベアトリス”: 当然なのよ ページのありかなどベティーは知らないかしら
“スバル”: やっぱそうか……
“スバル”: 話し合いで、まずはクルシュさんに相談するってことで、 俺たちの意見はまとまったんだ
“ベアトリス”: それについては、それをお前が提案したことも含めて、 さっき聞いたのよ
“スバル”: そう、言い出しっぺは俺だ けど、思わぬ高評価に正直戸惑ってる
“スバル”: あのラムまで、評価してくれてる感じだったし
“ベアトリス”: お前は、評価されたことが気にくわないのかしら
“スバル”: いやいや、そんなことはねぇよ でも……
“スバル”: すげぇ考えに考えたけど、 いい案が浮かばなかったってのが本音だ
“スバル”: 結局なんも思い付かなくて、 クルシュさんに相談してみようってなっただけで
“スバル”: 別に評価されるようなことじゃねぇんだ むしろ無能だって罵られても文句が言えない状態だったんだよ
“ベアトリス”: それでお前は何が希望なのよ
“ベアトリス”: ロズワールや姉妹の姉の代わりに、 ベティーに罵ってほしいのかしら
“スバル”: ──っ!
“スバル”: はは もしかしたら、そうなのかもしれねぇ……
“スバル”: 俺は問題をクルシュさんに丸投げしようとしてるだけで、 別に褒められるようなことはなんもしてねぇわけだし
“ベアトリス”: そんなことは、ロズワールも姉妹の姉もきっとわかっているのよ
“ベアトリス”: それでもお前の成長を感じ、評価した ただそれだけのことかしら
“スバル”: ……俺の成長?
“ベアトリス”: お前は優れた剣の使い手でもなければ、 強力な魔法が使えるわけでもないのよ
“ベアトリス”: 多少頭は回るようだけれど、 知性に溢れているとはとても言えないかしら
“スバル”: 待て待て、今、俺の成長の話だよね? ただ単にディスられてるだけな気がするんだけど!
“スバル”: 確かに罵ってほしいみたいな話にはなったけど、 この流れはなんか違う気がする
“ベアトリス”: 人の話は最後まで聞くのよ ベティーはお前を罵ってるわけではないかしら
“ベアトリス”: これまでのお前なら、明らかに自分の手に余る状態でも、 無謀に突っ走り、周囲に迷惑をかけていたのよ
“ベアトリス”: それに、相談しようと思える相手がいることが重要かしら
“ベアトリス”: 良い関係が築けているからこそ、 お前は相談しようと思えたのよ
“スバル”: なるほど…… そういう意味じゃ、確かにクルシュさんとはいい関係が築けてるよ
“スバル”: だからこそクルシュさんに相談してみようって思ったんだ
“スバル”: 誰だってよかったわけじゃねぇ クルシュさんだったから俺は……
“ベアトリス”: お前に信用できる相手ができた そういったことも含めてあの二人はお前を評価したかしら
“スバル”: そういう意味じゃ、クルシュさんだけじゃねぇ
“スバル”: アナスタシアさんともいい関係は築けてるし、 ラインハルトやフェルトとも絆は深まった気がする
“スバル”: 色々込みで考えると、『禁書』の件でやらかした当初から比べると 今は各段にパワーアップしてんな
“スバル”: オットーやコリーナだって、色々協力してくれてる
“スバル”: どんどん強力になる『異形』に戦々恐々としてたけども、 こっちだってどんどん戦力がアップしてるんじゃねぇか
“スバル”: そう考えると、悲観ばっかする必要はなさそうだ むしろ未来が明るく思えてくるよ
“スバル”: ありがとな、ベア子!
“スバル”: お前のおかげで色々腑に落ちたうえに、 なんだか明日への活力が湧いてきたよ!
“スバル”: と、場が温まってきたところで、次の話題といこうじゃねぇか
“スバル”: しばらく会えなくなりそうだし、今日はとことん付き合ってやるよ 朝まで語り合おうぜ、ベア子!
“ベアトリス”: な、な、何を言い出すのよ! お前とこれ以上語り合うつもりはないかしら!
“ベアトリス”: しかもベティーに付き合ってやるという、 上からの態度も気に入らないのよ!
“ベアトリス”: やはりお前にはこうするのが一番 とっとと出ていくかしら──
“スバル”: 待て待て、ベア子! 自分の足で出ていくから、魔法だけは──
“スバル”: ぐり・にっ・じ!?
“スバル”: てててて…… やれやれ、やっぱこうなるのね!

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Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■1話 タイトル:少し二人で 更新日:2021/10/28

“スバル”: ──すまない、クルシュさん すぐにでも報告にきたかったんだが、少し時間が空いちまった
“スバル”: フェネが体調を崩して、 その回復に思いの他時間がかかっちまったんだ
“クルシュ”: 事情はわかった であれば仕方がない フェネ、卿の体調はもう大丈夫か?
“フェネ”: お心遣いありがとうございます フェネの体調は回復済みです クルシュ女史のご心配には及びません
“クルシュ”: そうか、ならばいい
“クルシュ”: それでだ 卿らには申し訳ないのだが、 私からも一つ謝罪せねばならないことがある
“スバル”: クルシュさんが……俺たちに?
“ヴィルヘルム”: それについては、私からお話しましょう
“ヴィルヘルム”: 前回のご報告の席に同席できなかった故、 フェリスは本日の参加を強く希望していたのですが……
“ヴィルヘルム”: 騎士団から急な召集がかかってしまい、 ただいま不在となっております
“ヴィルヘルム”: フェリスが戻るまで、皆様には今しばらくお待ちいただきたく……
“スバル”: なんだ、そんなことか
“スバル”: 改まって“謝罪”とか言い出すから、 すげぇ深刻なことを想像しちまったけど
“スバル”: フェリスを待つぐらいどうってことないよ そうだよね、エミリアたん?
“エミリア”: うん、フェリスを待ちましょう 参加したいって言ってくれてるなら、なおさらだわ
“スバル”: レムやフェネも構わないよな?
“レム”: もちろんです レムは喜んでフェリックス様のお帰りをお待ちいたします
“フェネ”: 無論フェネもです
“フェネ”: フェリス女史が参加したいと言うのであれば、 そこには何か重要な意図があるはず
“フェネ”: お待ちする以外の選択肢はないかと
“クルシュ”: 卿らに感謝を ではヴィルヘルム、エミリアたちを部屋まで
“ヴィルヘルム”: かしこまりました
“ヴィルヘルム”: それでは、皆様を客間までご案内いたします フェリスが戻るまで、どうぞそちらでお寛ぎください
ナレーター: ヴィルヘルムに案内された客間で、 フェリスの帰りを待つことになったスバルたち
ナレーター: だが、ほどなくして、 クルシュが客間へとやってくるのだった
“クルシュ”: ──すまない、ナツキ・スバル 少し二人で話せないか?
“スバル”: クルシュさんが、俺と? 別に構わないけど……
“エミリア”: スバル、いってあげて 私たちはこの部屋で休んでるから
“スバル”: わかった、エミリアたん んじゃ、ちょっくらいってくるよ
“スバル”: ──というわけで、一緒に中庭に出たわけだけど、 二人で話したいことってのは何かな?
“スバル”: まぁ、なんとなく察しはついてるけども
“クルシュ”: そうか やはり卿には察しがついているのだな
“スバル”: ああ この前、クルシュさんは一人で宿を訪ねてきたもんな たぶん、そのことじゃないかって思ってるよ
“クルシュ”: ご名答だ ラインハルト・ヴァン・アストレアが 保護しているという少女について気になっている
“スバル”: やっぱりそうか
“スバル”: それについては約束通りちゃんと調べてきたし、 フェリスが戻ってからする報告でも話させてもらうつもりだよ
“スバル”: “保護してる”なんて表現とは、 かなりかけ離れた状態だったんでね
“クルシュ”: ……かけ離れている?
“スバル”: ああ 結論から言えば、フェルトは王選の候補者だ あいつが手にすると徽章とやらが光るらしい
“スバル”: 現時点では、“候補者の候補者”ってな感じではあるんだけど…… まぁ、たぶん、あいつの正式参加は時間の問題だと思う
“クルシュ”: ──っ! なるほど、そういうことか……
“クルシュ”: そして、その者は今、 ラインハルト・ヴァン・アストレアの元にいるのだな?
“スバル”: そうだ ラインハルトの奴はフェルトを王様にするつもりだ
“スバル”: つまり、エミリアたんにとってもクルシュさんにとっても、 強力な好敵手が出現しちまう可能性が高いってわけだよ
“クルシュ”: それについてはその通りだが
“クルシュ”: 王選へ参加する竜の巫女が五人揃わぬ限り、 そもそも王選は開始されない
“クルシュ”: ラインハルト・ヴァン・アストレアを相手にすることになっても、 フェルトという者には、ぜひ王選に参加してもらいたいものだ
“スバル”: ラインハルトに物怖じしないとは、さすがクルシュさんだな
“スバル”: それに、そもそもで言えば、 『禁書』の件を解決しない限り王選は始まらねぇ
“スバル”: まずは全力でページを集めねぇとだ
“クルシュ”: それについても異論はない
“クルシュ”: 『禁書異変』の解決が最優先 五人目の候補者が見つかったとて、そのことに変更はない
“スバル”: というわけで、今日はその件で色々相談させてもらおうと思ってる よろしく頼むぜ、クルシュさん

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Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■2話 タイトル:成長を思えばこそ? 更新日:2021/10/28

“フェリス”: ──待たせちゃってごめんね、スバルきゅん
“スバル”: おうおう、待った待った いきなり出鼻をくじかれる感じになっちまったよ
“フェリス”: そんなにフェリちゃんの不在が寂しかったの? スバルきゅんてば、意外と可愛いとこがあるじゃにゃい
“スバル”: 寂しくなんかないわ!
“スバル”: 今日は話すことが盛りだくさんなのに、結構な時間待たされたから 皮肉の一つでも言ってやりたくなったんだよ
“フェリス”: “皮肉の一つでも”なんて大人げにゃい フェリちゃんはお仕事でいなかったんだよ?
“フェリス”: そもそも今日の騎士団の集まりだって、 『禁書』のせいで色々騒ぎが起きてるのが原因にゃんだし
“スバル”: うぐっ…… だとすると申し訳ねぇ…… 俺はとやかく言えるような立場じゃねぇな……
“フェリス”: そうそう スバルきゅんには、フェリちゃんのことを 咎める資格なんてないから、そこのところ忘れないでネ
“フェリス”: それに、フェリちゃんが騎士団の集まりに参加したのは、 騎士団の最新の動向を把握するためだよ
“フェリス”: そういう情報が今回の話し合いには不可欠なのに、 スバルきゅんてば──
“クルシュ”: フェリス、その辺にしてやれ ナツキ・スバルも不用意な発言を反省しているはずだ
“フェリス”: スバルきゅん、本当?
“スバル”: ああ、本当だ マジで反省してるよ
“クルシュ”: ナツキ・スバル、悪く思わないでくれ フェリスが厳しく指摘したのは、卿の成長を思えばこそだ
“スバル”: ……俺の成長?
“フェリス”: スバルきゅんが成長してくれないと、 結果的にクルシュ様の足を引っ張ることになるからね
“フェリス”: フェリちゃんとしては、 ビシバシ教育して、スバルきゅんには成長してほしいってわけ
“フェリス”: 本当は憎まれ役なんてしたくにゃいんだけど、 スバルきゅんってば、甘やかすとダメになりそうだから
“スバル”: それについては、心配ないんじゃないかな 俺の周りにいるのは、甘やかさないタイプばっかりだし
“フェネ”: スバル氏の周囲にいる“甘やかさないタイプ”とは、 フェネのことだと推測しますが
“フェネ”: フェネとてスバル氏のことを思えばこそです
“フェネ”: ですので、フェリス女史の想いを引き継ぎ、今度はフェネが──
“スバル”: 待て待て! クルシュさんがその辺にしろって言ってただろ たとえ俺のためでも、別の機会に頼むよ
“スバル”: これ以上厳しめの指摘が続いたら、 さすがに俺の心がもたねぇから
“スバル”: それに、今日はマジで話さなきゃならないことが盛りだくさんだ 早いとこ本題に入ろうぜ
“エミリア”: そうよ、スバル
“エミリア”: フェルトちゃんのこととか、これからのこととか、 話さないといけないことがたくさんあるわ
“レム”: はい 急ぎ本題に入るべきだとレムも思います
“クルシュ”: 私にも異論はない さっそく本題に入るとしよう
“クルシュ”: ナツキ・スバル、一部私がすでに報告を受けた内容もあるが、 フェリスやヴィルヘルムへの共有もかねて一から話してくれ
“スバル”: わかったぜ、クルシュさん、一から話させてもらう
“ヴィルヘルム”: スバル殿、よろしくお願いします
“スバル”: 任せてください、ヴィルヘルムさん それじゃ──

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Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■3話 タイトル:王にふさわしい者 更新日:2021/10/28

ナレーター: 先程二人で話した際、 クルシュへは簡単な共有を行っていたスバルだったが
ナレーター: 話し合いにフェリスとヴィルヘルムが参加したこともあり、 改めてこれまでのことを詳しく話して聞かせるのだった
“スバル”: ──俺からの報告は以上だ
“スバル”: なんとか前回取り逃したノボンがいるページは 『禁書』に封じられたんだけど
“スバル”: “こわいまもの”を宿してると思う ノボンのお話の後編は見つけられていねぇ
“スバル”: あと、フェルトがラインハルトの後ろ盾で、 王選に参加することになるかもってのも話させてもらった通りだ
“フェリス”: ふーん、ラインハルトがね
“フェリス”: でも、それについては、 今日の騎士団の集まりでは特に触れられてなかったかな
“スバル”: そうか…… ラインハルトの奴、まだ言ってねぇのかもな 本人が正式に参加を表明したわけじゃないしさ
“フェリス”: 少なくともラインハルトから上の人たちに、 フェルト様が参加するかもって話はいってると思う
“フェリス”: フェルト様の騎士を務めるなら、 ラインハルトは騎士団を離れなきゃならなくなるわけだし
“フェリス”: それに、そろそろ王選が開始されそう って空気があったことは確かだもん
“フェリス”: そういう空気があったってことは、少なくとも 五人目になりそうな候補者の目星があるってことじゃにゃい
“フェリス”: なのに、近衛騎士団に属するフェリちゃんたちにさえ、 何も知らされていにゃい……
“フェリス”: フェルト様が正式に参加を表明していないこととは、 別の問題な気がしちゃうけどね
“フェリス”: そもそもそのフェルト様って、貧民街の出身なわけでしょ?
“スバル”: それってつまり、 貧民街出身者は王選の候補者として相応しくないってことか?
“スバル”: エントリーを受け付けない可能性があるから、 今はまだ公にしねぇって理解で合ってる?
“フェリス”: えんとりー?っていうのが、なんのことだかわからにゃいけど
“フェリス”: フェルト様の参加を快く思っていない人がいるのは確かだろうね
“フェリス”: もちろん、最終的には徽章が光るっていう事実が 優先されることになるとは思うんだけど
“クルシュ”: 無論だ 竜歴石の予言には『ルグニカの盟約途切れし時、 新たな竜の担い手が国を導く』とある
“クルシュ”: そしてその予言は『新たな国の導き手になり得る五人 その内より一人の巫女を選び、竜との盟約に臨むべし』と続く
“クルシュ”: 竜歴石は、王国の命運を左右する事態に際して文字を刻み、 王国の歴史を動かしてきた
“クルシュ”: 竜歴石の予言に従うのは当然のことだ
“スバル”: なるほど…… 本当にフェルトがその巫女の一人ってなら、 エントリーを受け付けないってことにはならなそうだな
“スバル”: けど、そもそも本当に徽章が光るのか?って確認も含めて、 正式な決定までにはまだまだ時間がかかるって感じか
“スバル”: そもそも肝心のフェルト自身が、 正式な参加表明には至っていねぇわけだし
“スバル”: とはいうものの、 ラインハルトがバックにいても、そんな感じなんだな?
“スバル”: あいつが推すんだったら、 出自やなんだは問題にはならなそうなのに
“レム”: いえ、それだけ出自が大切ということでしょう
“レム”: フェリックス様の推測通り、貧民街出身のフェルト様の参加を 快く思わない方は少なからずいると思います
“スバル”: 俺としては、貧民街出身ってのは、むしろ強力な武器になるかも って思ったんだが、どうやらそうじゃないらしい
“フェリス”: “貧民街出身が武器”って、面白いことを言うね、スバルきゅんは
“スバル”: いやいや、面白いこと言ってる自覚はねぇよ
“スバル”: 俺の故郷じゃ、そういう出自が逆に民衆の支持を集めて 大きな後押しになったりするんだよ
“スバル”: 金も学もねぇ田舎者が、 民衆から絶大な支持を集めて頂点まで上り詰めるみたいな感じでさ
“スバル”: 家柄もいい、学もある、人脈にも恵まれているみたいな人より、 そういう人の方が民衆は応援したくなるもんだろ
“ヴィルヘルム”: もちろん民衆からの支持は大切でしょう ですが、そのことで勝敗が決することはありません
“フェリス”: そうそう それにクルシュ様には、 民衆からの支持もちゃんとあるしネ
“フェリス”: 家柄も、学も、人脈も、民衆からの支持も全部あるクルシュ様が、 一番王様にふさわしいってわけ
“スバル”: いやいや、王様に一番ふさわしいのはエミリアたんだ!
“フェリス”: スバルきゅんってば、 フェリちゃんの前でよくそんなことが言えるね
“フェリス”: それだけはフェリちゃんだって譲れないよ!
“スバル”: 俺だって譲れねぇよ!
“スバル”: クルシュさんが色々含めてすげぇ人だってのは認めるけども、 王様になるのはエミリアたんなんだよ!
“フェリス”: むーーっ!
“スバル”: うぐぐぐっ!
“エミリア”: ──スバル、落ち着いて
“フェネ”: そうです、スバル氏 王選の話など時期尚早 『禁書異変』を解決しない限り開始されないのですから
“クルシュ”: その通りだ フェリスも言を慎め
“フェリス”: すみません、クルシュ様 フェリちゃんとしたことが、 スバルきゅん相手に熱くなってしまいました
“フェリス”: とにかくスバルきゅん、 この話は色々解決した後ってことでいいかにゃ?
“スバル”: ああ、そうだな 今は協力することが大切だ
“スバル”: それに、“家柄もいい、学もある、人脈にも恵まれてる”ってのは 別にクルシュさんに他意があっての発言じゃねぇよ
“スバル”: クルシュさんよりもフェルトの方が民衆からの支持を集める みたいな感じで聞こえちまってたなら謝らせてもらう
“スバル”: ヴィルヘルムさんが否定的な意見を言った時点で、 察しられたらよかったんだけど……
“フェリス”: ホントだよ、スバルきゅん ヴィル爺があんな風に口を挟むなんて珍しいんだからね
“ヴィルヘルム”: 申し訳ありません 恐らくスバル殿に他意はないとは思ったのですが……
“スバル”: いやいや、あの発言だと、 クルシュさんを狙い撃ちしてるって取られても仕方ないです
“スバル”: こちらこそすんませんでした

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Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■4話 タイトル:まずは同盟を 更新日:2021/10/28

“フェリス”: ──スバルきゅん、ページはラインハルトの屋敷から、 逃げ出したんだよね?
“スバル”: いや、逃げ出したかどうかはわからねぇけど、 ラインハルトが滞在してた屋敷から飛び去ったのは確かだよ
“レム”: はい ページたちは一斉に屋敷から飛び去りました スバルくん以外にもレムやエミリア様も目撃しています
“フェリス”: ふーん やっぱりページはラインハルトから逃げたんだね
“スバル”: 逃げた? そりゃまたどうして?
“フェリス”: ラインハルトが近くにいると、 マナの吸収には悪影響が出そうだもん
“フェリス”: ラインハルトって周囲のマナを吸収しちゃったりするから
“スバル”: ……マナを吸収?
“フェリス”: そう だから、兵士たちの治療現場には、 ラインハルトは立ち入り禁止だったりするの
“フェリス”: マナがないと治るものも治らないしね
“スバル”: なるほど…… マナを吸収して成長するページにとって、 あいつの屋敷はあんま居心地が良くなかったわけか
“スバル”: んで、ラインハルトが不在のタイミングを狙って、 まんまとページたちは逃げ出したんだな
“スバル”: あの大移動は謎だったりしたんだけど、そう考えると納得だ
“スバル”: にしても、絶大な戦闘力を誇る『剣聖』様にも、 そんな面があったなんてな……
“スバル”: 何もかも完璧なんて奴は、やっぱこの世にはいないのかもしれねぇ
“フェリス”: まあ、クルシュ様を除いて、そういう人はいにゃいだろうね
“スバル”: そりゃずるいだろ! だったら、ウチのエミリアたんだって完璧だ!
“エミリア”: スバル、私は完璧なんかじゃないわ もっとしっかりしなきゃって思うことばっかりだもの
“クルシュ”: 私もだ、フェリス 完璧であるために、まだまだ精進が必要だと自覚している
“クルシュ”: それに、ページがラインハルト・ヴァン・アストレアの本邸から、 移動した件については合点がいったが
“クルシュ”: 強力な『異形』を宿したと思しき“こわいまもの” のページが野放しになっているという現実は変わらない
“クルシュ”: 我々はいがみ合うのではなく、結束を深めるべきだ
“スバル”: そうだぞ、フェリス しかも、『異形』の奴らはどんどん強力になっていくんだ
“スバル”: 俺たちは心を一つにしなくちゃいけねぇんだから、 いちいち突っかかってくるんじゃねぇ
“フェリス”: いやいや、どう見たって突っかかってきてるのは、 スバルきゅんの方でしょ?
“ヴィルヘルム”: ──フェリス
“フェリス”: って、スバルきゅんには色々言いたいことがあるけど、 ヴィル爺が怖い顔してるからこの辺にしといてあげる
“エミリア”: ──スバル
“スバル”: こっちもエミリアたんからの視線が痛いから、 この辺にしといてやるぜ、フェリス
“スバル”: まずは色々飲み込んで『禁書異変』の解決だ それでいいな?
“フェリス”: うん お互い言い合うのはそれからだね、スバルきゅん
“スバル”: んで、いよいよ話が本題に入るわけだけど、 クルシュさんはどうするべきだと思う?
“スバル”: ぜひ、クルシュさんの意見を聞かせてほしい
“クルシュ”: ……まずアナスタシア・ホーシンとは正式な同盟を結ぶべきだな
“クルシュ”: さらに王選への参加を見越して
“クルシュ”: ラインハルト・ヴァン・アストレアを従える フェルトという者とも同盟を結ぶべきだろう
“クルシュ”: 無論、プリシラ・バーリエルとも同盟を結ぶことが望ましい
“スバル”: 確かに協力関係を明確にするために、アナスタシアさんのとことは 正式な同盟を結んだ方がいいかもしれねぇ
“スバル”: ラインハルトがいるフェルトのところも、 王選への参加は時間の問題なわけだし
“スバル”: 協力関係を明確化するために、同盟を結ぶってのはありだ
“スバル”: けど、プリシラのとこはどうだろう? 協力するのは難しいんじゃないかな
“クルシュ”: 卿はすでに彼の者と協力関係にあるように私には思えるのだが?
“フェネ”: 左様です プリシラ女史の協力により、 我々は何枚ものページを『禁書』に封じることができました
“スバル”: 確かにページは封じられたけど、 あれは“協力により”って感じじゃねぇだろ
“スバル”: プリシラと同盟なんて俺は反対だね
“フェネ”: フェネは、プリシラ女史から 様々な有益な情報を得られたと記憶しています
“スバル”: そういや『禁書』がある絵本作家の遺作で、 ページを集めてる妙な芸術家がいるって話は聞いたな
“スバル”: あいつがページをその芸術家に売らないでいてくれたから、 俺たちがゲットできたことも承知してるつもりだ
“スバル”: けど……
“エミリア”: 一緒にページに入って、『異形』とも戦ってくれたわ
“スバル”: それは善意的に解釈しすぎだよ、エミリアたん!
“スバル”: 確かに一緒にページの中でノボンと戦ったけど、 あれはあいつがページから『異形』を出せって強引に……
“エミリア”: でも、一緒に戦ってくれたのはホントでしょ?
“スバル”: まぁ、結果的にはそうだけども
“フェリス”: なんだか話を聞いてると、 明らかに協力してくれてる感じがするかにゃ
“スバル”: た、確かに…… 結果だけ見れば、そうなっちまってるな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_05

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■5話(中編) タイトル:後悔しない選択 更新日:2021/10/28

“スバル”: ──みんなと同盟を結ぶべきだってのはわかった けど、俺たちは『禁書』のページも回収して回らないといけねぇ
“フェネ”: 無論です ページは刻一刻とマナを蓄え、 『異形』を顕現させる恐れがあります
“レム”: 『異形』だけでなく、ページの影響で魔獣が『変異体』となり、 大きな被害が出てしまうかもしれません
“ヴィルヘルム”: どうやらページの回収はこれまで通り進めつつ、 各陣営と同盟の交渉をする必要がありそうですね
“フェリス”: そうなると、二手に分かれるって感じかにゃ?
“フェリス”: 同盟の交渉を進めるエミリア様の班と、 ページの回収を進めるフェネちゃんの班みたいに
“クルシュ”: 恐らくそうなるな
“クルシュ”: 同盟の交渉は王選候補者であるエミリアが直接行うのが筋 必然的にエミリアは同盟交渉の班に属することになる
“エミリア”: うん、同盟の交渉を他の誰かに任せるつもりはないわ ちゃんと私がやらないと
“フェネ”: ページの感知を行えるのはフェネのみ フェネはページの回収に専念するべきでしょう
“スバル”: 確かにエミリアたんとフェネで分かれるしかなさそうだ 問題は俺とレムをどう分けるかだけど……
“フェネ”: スバル氏とレム女史はフェネの班に属するべきです
“スバル”: いやいや、それだとエミリアたんが一人に……
“エミリア”: スバル、私もフェネの言う通りだと思う
“エミリア”: だって、『異形』はどんどん強くなってるでしょ? レムもページを集めるフェネと一緒の方がいいもの
“スバル”: “レムも”ってことは、 はなから俺がフェネ班所属ってことになってない?
“エミリア”: え? 違うの? スバル、いつもフェネと一緒にいるから……
“エミリア”: それに、戦力が必要なのは、 どう考えても『異形』と戦うフェネの方よ
“エミリア”: 二手に分かれるなら、同盟の交渉は私に任せて
“レム”: エミリア様がそうおっしゃるのであれば、 レムはエミリア様の指示に従います
“クルシュ”: どうやら話はまとまったようだな それでは──
“スバル”: いやいや、待て待て 俺はそのチーム分けには賛成できねぇ
“スバル”: そもそも戦力って意味じゃ、俺は戦闘力ゼロみたいなもんだし、 口にはそれなりに自信があるから、同盟交渉の方が役立てるはずだ
“フェネ”: いえ、戦闘力がないスバル氏でも、 優秀なフェネの支援があれば十分戦力になります
“フェネ”: そのことをスバル氏は身をもって経験しているはずです
“スバル”: くっ…… 確かにそうだけど……
“フェネ”: とはいうものの、エミリア女史という 貴重な戦力を失うことに変わりはありません
“スバル”: そうだよ! 二手に分かれるってことは、 どうしたって戦力の分散は避けられねぇ
“スバル”: “こわいまもの”と対峙する可能性があるのに、 それは避けた方がいいんじゃねぇかな?
“スバル”: 確かに効率はアップするかもしれねぇけど、 『異形』とまともに戦えないんじゃ本末転倒だろ
“クルシュ”: つまり、卿は二手に分かれることには反対だと言うのだな?
“スバル”: ああ、反対させてもらう 同盟交渉に向かうのも、ページの回収に向かうのもみんな一緒にだ
“フェネ”: スバル氏、それだけエミリア女史が大切ということでしょうか?
“スバル”: いや…… そういうわけじゃなくて……
“スバル”: 二手に分かれることには、 メリットだけじゃなくてデメリットもあるっつーか……
“フェネ”: スバル氏、ここは言葉を濁す場面ではありません
“フェネ”: 効率を求め二手に分かれる 安全を重視して戦力の分散を避ける どちらにも一長一短があります
“フェネ”: どちらを選んでも後悔をする結果が待っているかもしれません
“フェネ”: であるなら、より後悔が少ない選択を行うべきです
“フェネ”: スバル氏にとってエミリア女史が大切であるなら、 エミリア女史を一人にするべきではありません
“フェネ”: エミリア女史を失ってする後悔は──
“フェネ”: とてつもなく大きく、 取り返しがつかないものになってしまうでしょう
“スバル”: つまり、正解がわからない以上、 より後悔が少ない選択肢を選べってことか?
“フェネ”: 左様です どちらの選択が正解かはわかりかねますが、 どちらの選択の後悔が少ないかは明白です
“スバル”: フェネ、お前……
“クルシュ”: 待て、本当にそうだろうか? フェネの意見はナツキ・スバルのみに該当するように思える
“クルシュ”: どちらにも一長一短があることは確かだろう
“クルシュ”: だがしかし、ナツキ・スバルがするであろう後悔を基準に、 この件を決定することに私は疑問を感じる
“クルシュ”: どちらの案についても、もっと議論を尽くすべきだ
“フェリス”: フェリちゃんもクルシュ様の言う通りだと思う
“フェリス”: それに、フェネちゃんがそんなこと言うにゃんてちょっと意外 明らかにスバルきゅんのための発言だよね、それ
“フェネ”: クソ上司のモチベーション管理もフェネの役目 上司を思う部下の姿に、ぐっとこない上司はいません
“フェネ”: 皆様であれば的確な指摘をしてくださるだろうと、 少し偏った発言をさせていただきました
“スバル”: え? そうなの? 俺はてっきり……
“スバル”: いやいや、今の発言の方が本心じゃないってパターンもあるか…… フェネって案外ツンデレだしな
“スバル”: とはいうものの……
“スバル”: なんだかんだで、すでに日が暮れ始めちまった
“クルシュ”: 確かに、議論を尽くすにも、日を改めた方が良さそうだな まずは双方持ち帰り、明日の朝決めるというのはどうだろう?
“スバル”: 賛成だ、クルシュさん 急いではいるが、明日の朝なら今決めるのと大差ない気がするよ
“スバル”: それに、今の議論には大切なことが抜けちまってるしな
“クルシュ”: ほう…… “大切なこと”とは?
“スバル”: そもそもページのありかがわからねぇってことだ
“スバル”: ページの回収を優先したくても、 次にどこへ向かうべきかがわからねぇ
“エミリア”: それはそうね…… ページの場所がわからないし、 まずはみんなで同盟のお話を頑張った方がいいかも
“クルシュ”: なるほど…… 協力関係が強固なものになれば、それだけ 各陣営からもたらされる情報の信頼度や量は増すことになる
“クルシュ”: 闇雲にページを探すことを考えると、 まずは同盟交渉を優先した方がいいかもしれんな……
“スバル”: どうぞ
“フェネ”: 失礼します、スバル氏 少しよろしいでしょうか?
“スバル”: ああ 俺もお前と話したいって思ってたとこだよ
“フェネ”: スバル氏がフェネと? 気持ち悪いですよ、クソ上司 セクハラ認定させていただきます
“スバル”: どうしてそうなるんだよ!
“スバル”: だいたい、お前は俺と話がしたくて、 俺の部屋にきたんじゃねぇのか?
“フェネ”: 左様です フェネはスバル氏にお話があります
“フェネ”: ですが、スバル氏とは違いとてもまじめなお話です
“スバル”: それについては俺もだよ! まじめな話だから安心してくれ!
“スバル”: クルシュさんのとこでした、お前の発言が気になってる
“スバル”: 正解はわからねぇが、後悔する選択は明確ってヤツだ
“スバル”: フェリスも言ってたけど、 あれはお前らしくない発言だった気がする
“スバル”: 明らかに俺のためにしてくれた発言だしな
“フェネ”: 部下が上司のことを思うのに、何か問題でも?
“スバル”: そういうわけじゃねぇけど、やっぱすげぇ意外な発言だったよ お前って冷徹な考え方をするイメージだったから
“フェネ”: スバル氏 エミリア女史のことが大切なら、 どんなことがあっても離さないようにするべきです
“フェネ”: 失ってからでは遅いのですよ
“スバル”: そ、それは……
“フェネ”: スバル氏にとって、一番大切なことはなんなのですか?
“フェネ”: 『禁書異変』の解決は無論大切でしょう ですが、それはエミリア女史があってこそなのでは?
“スバル”: 当り前だ 肝心のエミリアがいなくなっちまうんじゃ、 『禁書異変』を解決しても意味なんてねぇよ
“スバル”: って、お前は何がなんでも『禁書』のページを集めろって 立場じゃなかったっけ?
“フェネ”: 左様です 『禁書』のページ集めは最も優先されるべき事項です
“スバル”: お前の情緒は大丈夫か!? 完全に矛盾したこと言ってるよね!
“フェネ”: いえ、立場の違いです
“フェネ”: フェネが最も優先するべきこと、 それは『禁書』のページの回収です
“フェネ”: ですが、スバル氏にとっても、同じなのでしょうか?
“スバル”: ──いや、一緒じゃねぇ
“スバル”: 俺が『禁書異変』を解決してぇのは、完全にエミリアたんのためだ
“スバル”: エミリアたんがいなかったら、 好き好んでいばらの道に足を踏み入れるわけねぇだろ
“スバル”: そもそも俺って人間は……
“フェネ”: スバル氏?
“スバル”: いや、なんでもねぇ
“スバル”: 色々ネガティブ発言をぶちまけそうになっちまったけど、 ここはぐっと我慢だ
“スバル”: 言ったところで、気分が沈むだけで、特にいいことなんてないしな
“スバル”: とにかく、サンキューな、フェネ おかげで大切なことを思い出せたよ
“スバル”: お前からすると“エミリアたんのため”って理由は、 不純で気に入らないかもしれねぇけど
“フェネ”: いえ 大切な目的をそっちのけで、 エミリア女史にうつつを抜かすことを許す気はありませんが
“フェネ”: スバル氏の行動の根底にあるものは理解しているつもりです
“フェネ”: そしてそれは、フェネがとやかく言うことではありません
“フェネ”: フェネとしては、 結果的に『禁書』のページを回収できればいいわけですから
“スバル”: 俺のモチベーションの源は、別になんだっていいってわけか
“スバル”: その源を失って、 俺が廃人になることを危惧してるんだな、お前は
“フェネ”: 左様です エミリア女史を失うことは、 スバル氏の活動停止を意味します
“フェネ”: つまり、フェネの発言は矛盾していませんし、 スバル氏を気遣っているわけでもありません
“スバル”: やっぱりさっきの“サンキュー”はナシな! お前はそういう奴だったよ!
“スバル”: それで、お前の話ってのは? なんか話があって、お前はここにきたんだよな?
“フェネ”: いえ、すでに話すべきことは話せました スバル氏には結論が出たようですので
“スバル”: ああ、確かに俺の結論は出たな エミリアたんやレムの結論はわからねぇけど
“フェネ”: エミリア女史もレム女史も、スバル氏の判断を尊重するはずです
“フェネ”: もっと言えば、クルシュ女史でさえ、恐らくそうするでしょう
“スバル”: クルシュさんが? それはさすがに俺を高く評価しすぎなんじゃ?
“フェネ”: 実際に動くのはフェネたちです クルシュ女史であれば実際に動く我々の意見を尊重されるでしょう
“スバル”: 確かにクルシュさんは王都を離れられねぇ
“スバル”: 王都のどこかにページが眠ってて、 『異形』やら『変異体』が暴れ出す可能性はゼロじゃねぇしな
“スバル”: ってか、クルシュさんが王都を守ってくれるから、 俺たちが安心して動けるんだけど
“スバル”: んで、仲間が増えれば、 そういったことも色々融通が利くようになる
“スバル”: やっぱ、まずやるべきことは──
レムの声: スバルくん、失礼します
“レム”: スバルくん、スバルくんに手紙が届いています
“スバル”: え? 俺に手紙?
“レム”: はい コリーナさんから、スバルくん宛ての手紙が届きました

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_06

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■6話 タイトル:結論はそれから 更新日:2021/10/28

登場キャラと服装

ナレーター: コリーナからの手紙に目を通したスバルは、 皆を自分の部屋に集めるのだった
“スバル”: フェネとも話し合って、結論は出たつもりだったんだけど……
“スバル”: コリーナからの手紙で状況は一変した
“エミリア”: それってどういうこと?
“スバル”: 回収すべきページのありかがわかったんだよ、エミリアたん
“レム”: つまり、次に向かうべき場所がわからないという状況では なくなったということでしょうか?
“スバル”: ああ、その通りだ、レム
“スバル”: 手紙には“スバルさんの探し物はグステコにあります アルビスの氷河亭という酒場でお待ちしています”って書かれてる
“スバル”: つまり、俺たちが向かうべきは、アルビスにある氷河亭ってわけだ
“レム”: アルビス…… グステコ聖王国の氷河都市ですね 向かうのであれば相応の準備が必要です
“スバル”: “氷河都市”ってことはすげぇ寒いってこと? だから準備が必要なのか?
“レム”: そうです グステコ聖王国は極寒の地です
“フェネ”: 確かアルビスはシバレル大氷河に面した都市だったはず それが“氷河都市”と称される由縁だったかと
“フェネ”: ですが、本当に我々は 氷河都市アルビスに向かうべきなのでしょうか?
“フェネ”: そのコリーナ女史という方を信用してよいのかもわかりかねます
“フェネ”: そもそもコリーナ女史は、 『禁書』のページのことを知っているのですか?
“フェネ”: 手紙に書かれたスバル氏の探し物が、 『禁書』のページである保証はどこにもありません
“スバル”: ページについては、詳しく話したわけじゃねぇが、 恐らく知ってると思う
“フェネ”: “恐らく”などという不確かな状態で、 遥々グステコ聖王国の都市に向かうつもりですか?
“スバル”: そうだ あいつにはガナクスでの借りがあるし、 一度振り回された経験はあるが、今は信じてもいいと思ってる
“スバル”: それに、ページのありかについちゃ、 現時点じゃなんも情報がねぇ状態だ
“スバル”: 少しでも可能性があるなら、 アルビスってとこに向かうべきなんじゃねぇかな?
“フェネ”: スバル氏、冷静になってください
“フェネ”: スバル氏は、 まずは皆で同盟締結を急ぐべきだという結論に至ったはず
“フェネ”: その判断は理にかなっています
“スバル”: そうは言うけど、もし本当にページがあったら、どうすんだよ? 『異形』とか『変異体』の被害が出ちまうんだぞ
“エミリア”: 確かにそうだけど、 フェネが言う通り冷静に考えた方がいいわ
“エミリア”: 明日、クルシュさんたちともう一度話すんだし、 結論を出すのは、それからでも遅くないでしょ?
“スバル”: エミリアたん……
“スバル”: わりぃ、確かにその通りだね 俺、ちょっと焦っちまってたよ
“スバル”: ページのありかがわからねぇっていう状況に、 光明が差した気がしたから……
“スバル”: エミリアたんが言う通り、まずはクルシュさんに共有して、 ちゃんとクルシュさんの意見も聞くべきだな
“レム”: レムもその方がいいと思います クルシュ様であれば真剣に考え、的確なご意見をくださるでしょう
“スバル”: ああ、そうだな、レム 明日の朝クルシュさんと話して、結論を出すのはそれからだ
“レム”: すぐに考えを改められる柔軟さ さすがスバルくんです
“スバル”: いやいや、俺の考えが短絡的だっただけだから、 その“さすが”は受け取れないかな
“スバル”: それに“さすが”なのはエミリアたんやレムの方だぜ おかげで早まった判断をしなくて済んだよ
“フェネ”: スバル氏には、直前の記憶がないのでしょうか? 真っ先に指摘したのはフェネだったはず
“スバル”: そうだな、フェネ お前にも感謝してるよ ありがとな
“フェネ”: ……それはそれで調子が狂いますね スバル氏には憎まれ口がお似合いです
“スバル”: それ、お前が言う!? “憎まれ口”って俺よりもお前のイメージだろ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_07

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■7話 タイトル:コリーナは何者? 更新日:2021/10/28

ナレーター: 翌朝 朝食を済ませたスバルたちの元にヴィルヘルムが訪れるのだった
“ヴィルヘルム”: 皆様、おはようございます
“スバル”: ヴィルヘルムさん!? どうしてここに?
“ヴィルヘルム”: お迎えにあがらせていただきました 皆様、外の竜車にお乗りください
“スバル”: 竜車でお迎えとは、 クルシュさんも粋な計らいをしてくれるもんだ
“スバル”: まぁ、それだけ時間を無駄にできないって、 思ってるってことかもしれねぇけど
“レム”: そうですね コリーナさんからの手紙の件もあります 少しでも早く話し合いを始めるに越したことはありません
“エミリア”: うん、ホントにそう みんな、急いで竜車に乗りましょう
“クルシュ”: ──それでは、さっそく昨日の話し合いの続きを始めるとしよう
“クルシュ”: まずは卿らの結論を聞かせてくれ
“スバル”: すまない、クルシュさん それについてなんだけど、昨日とは事情が変わっちまった
“クルシュ”: 事情が……変わった?
“エミリア”: そうなの ページがグステコにあるっていう情報が届いたわ
“クルシュ”: ページがグステコ聖王国にある、だと?
“スバル”: ああ、そうらしい だから、今は次に向かう場所が定かじゃないって状態じゃねぇんだ
“フェネ”: それについては、正確にお伝えする必要があります
“フェネ”: まず、グステコ聖王国にあるものが、 『禁書』のページと断定できているわけではありません
“フェネ”: また、届いた情報の信憑性自体が、とても乏しい状態です
“スバル”: なんだよ、フェネ! コリーナのことが信用できねぇのか!
“フェネ”: 申し訳ありません、スバル氏
“フェネ”: コリーナ女史が信用に足る人物かどうか、 フェネには判断できかねます
“フェリス”: そのコリーナちゃんっていったい何者にゃの? そこからちゃんと話してくれにゃいかな
“フェリス”: そうじゃないと、フェリちゃんたちにはなんにもわからないよ
“フェリス”: どうしてフェネちゃんは“信憑性が乏しい”なんて言って、 それに対してスバルきゅんはそんなにムキになってるわけ?
“スバル”: わりぃわりぃ、確かにまずはコリーナの説明だな
“スバル”: ええっと、コリーナってのは……
“スバル”: すまないフェリス、うまく説明できねぇ けど、信用できる奴なんだよ
“フェリス”: ちゃんと説明できないのに“信用できる奴”なんて言われてもね
“フェリス”: どうやらフェネちゃんが言う通りみたいだね
“フェリス”: 『禁書』のページがグステコにあるって情報をもたらしたのは、 そのコリーナちゃんなんでしょ?
“フェリス”: だとしたら、その情報を信じるのはどうかと思うにゃ
“フェリス”: そもそもエミリア様やレムちゃんは、 そのコリーナちゃんのことを知ってるのかな?
“エミリア”: ううん スバルから聞いただけで、直接は会ったことはないわ
“レム”: レムもです コリーナさんには会ったことがありません
“フェネ”: 無論、フェネもです そもそもスバル氏の妄想の可能性さえあるぐらいです
“スバル”: さすがにそれはないわ! 少なくともオットーは会ったことあるしな
“スバル”: オットーの竜車に乗って、 俺とコリーナはガナクスまで旅したんだよ
“スバル”: ガナクスでの一件を解決できたのは、 マジでコリーナのおかげなんだ
“スバル”: あいつは命を張って『異形』の囮になってくれて、 だから俺はエミリアたんのところに……
“クルシュ”: ナツキ・スバル 卿がそのコリーナを信頼していることは、 紛れもない事実だろう
“クルシュ”: 鉱山都市ガナクスでコリーナが命を賭して卿に協力したこともな
“クルシュ”: しかし、そのコリーナという者が、 卿以外の者にとって得体の知れぬ人物であることもまた事実
“クルシュ”: 信用に足る相手とはとても言い難い
“スバル”: なんでもコリーナは有名な冒険家らしい “超冒険者”って言われてピンときたりしないかな?
“ヴィルヘルム”: 冒険を生業(なりわい)とする者はいるでしょうが、 残念ながらコリーナという名に心当たりはありません
“ヴィルヘルム”: 無論、その“超冒険者”という二つ名にも、 私は聞き覚えはありませんな
“クルシュ”: 同じく私もだ コリーナという名に心当たりはない
“スバル”: やっぱりそうか そんな気はしてたけど……
“エミリア”: でも、私が助かったのはその子のおかげなのよね?
“スバル”: そうだよ、エミリアたん 神出鬼没で怪しさ満載ではあるんだけど
“スバル”: コリーナは俺たちに協力してくれるって言ったし、 実際に命を張って協力してくれたんだ
“スバル”: んで、そいつが今、グステコのアルビスで俺のことを待ってる
“スバル”: 俺としては会いにいきたいって思う
“スバル”: そこに『禁書』のページがあるかもしれないってなら、 なおさらそう思うよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_08

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■8話 タイトル:できれば会ってちゃんとお礼を 更新日:2021/10/28

ナレーター: 昨日の話し合いの続きをするために、 クルシュの元を訪れたスバルたち
ナレーター: スバルとしては、コリーナが待っていると手紙で伝えてきた グステコ聖王国の氷河都市アルビスへ向かいたいところなのだが
ナレーター: 情報源のコリーナが信用できる人物なのかという そもそもの話になってしまい
ナレーター: スバルのアルビスいきには暗雲が立ち込めていた
“エミリア”: ──私はアルビスに向かってもいいと思う
“エミリア”: ほら、アルビスにいったら、 そのコリーナって子にも会えるでしょ?
“エミリア”: 私、ちゃんとお礼を言わなくっちゃ
“エミリア”: それに、『禁書』のページがどこにあるのか、 なんにも情報がない状態よ
“エミリア”: スバルが言う通り、少しでも可能性があるなら、 アルビスに向かってもいいんじゃないかしら
“スバル”: エミリアたん……
“レム”: レムは、スバルくんがコリーナさんのことを 信用できると言うのであれば
“レム”: 全面的にその言葉を信じたいと思います
“レム”: なので、次にレムたちが向かう場所が、 コリーナさんが待つ氷河都市アルビスになっても
“レム”: 特に異論はありません
“スバル”: レム……
“フェリス”: フェリちゃんはどうかと思うにゃ スバルきゅんってば、コロっと騙されちゃいそうだし
“フェリス”: 相手が可愛い女の子なんてことになれば、 なおさらスバルきゅんの目は信じられないかにゃ
“フェネ”: スバル氏 コリーナ女史の容姿はいかがなのでしょう?
“スバル”: えっと……その…… まぁ、可愛いかな……
“スバル”: だって、ここは美少女率が半端ねぇ異世界だぞ!
“スバル”: エミリアたんやレムはもちろんだけど
“スバル”: 男のはずの猫耳だってこのクオリティなんだから、 コリーナだって可愛いに決まってるだろ!
“エミリア”: す、スバル、突然大声出してどうしたの?
“スバル”: ごめん、ごめん 思わず声を張り上げちゃったけど、 これといった意味はないから気にしないで、エミリアたん
“スバル”: とにかく、確かにコリーナは可愛いが
“スバル”: 俺の周囲にいるのは容姿端麗な女の子ばっかだから、 そんなことに惑わされたりしねぇよ
“スバル”: それに、こちらの結論は、今の話の通りだ
“スバル”: アルビスに向かってコリーナに会うべきだと思ってる
“クルシュ”: ナツキ・スバル 卿らの意向は理解した 戦力分散を避ける結論に至ったことも含めてな
“クルシュ”: 私としても、氷河都市アルビスに向かうというのは、 悪くない選択肢のような気がしている
“クルシュ”: 氷河都市アルビスは、アナスタシア・ホーシンが拠点としている カララギ都市国家とグステコ聖王国との国境に位置している
“クルシュ”: つまり、氷河都市アルビスへの訪問が無駄足になったとしても、 すぐにカララギ都市国家に入ることができるだろう
“スバル”: なるほど アナスタシアさんとの同盟交渉に向かう経路を アルビス経由にするって考えれば
“スバル”: コリーナの情報が有益なものじゃなくても、 被害は最小限で済むってわけか
“スバル”: 必然的に同盟交渉の最初の相手が、 アナスタシアさんってことにはなっちまうけど
“ヴィルヘルム”: それについては問題ないでしょう むしろ最初の交渉相手はあの方を置いて他にはいらっしゃらない
“フェリス”: 確かにそうだね
“フェリス”: ラインハルトも候補になるとは思うけど、最近忙しそうなんだよね あんまり王都にはいにゃいみたいだし
“スバル”: 自分の領地で色々あったからな まぁ、ラインハルトが忙しい身なのは納得だ
“スバル”: んで、俺たちの次の行き先はアルビスってこと、 クルシュさんたちも了承したって解釈していいかな?
“クルシュ”: ああ 実際に行動をするのは卿らだ 卿らが出した結論を尊重させてもらう
“フェリス”: フェリちゃんもクルシュ様がいいなら、問題ないよ
“フェリス”: でも、コリーナちゃんに会ってみて、 『禁書』のページとは関係なさそうな感じだったら
“フェリス”: すぐにカララギに向かってアナスタシア様と会ってね 時間ってすごく貴重なものだし
“スバル”: ああ、もちろんだ コリーナに会ってみて、 『禁書』の件と関係ない話になるようだったら
“スバル”: すぐにカララギに向かわせてもらう
“クルシュ”: アナスタシア・ホーシンには、 卿らが面会に向かう旨、私から一報を入れておこう
“スバル”: そりゃ、助かるぜ、クルシュさん!
“クルシュ”: また、グステコ聖王国は極寒の地 防寒着など必要なものは我がカルステン家から貸し出させてもらう
“クルシュ”: 卿らは準備に費やす時間も惜しいだろうからな
“エミリア”: ありがとう、クルシュさん、とっても助かるわ
“エミリア”: 私は寒さなんてへっちゃらだけど、 スバルはそうもいかないでしょ?
“スバル”: “へっちゃら”ってきょうび聞かねぇな…… なんて話は置いといて
“スバル”: 確かに現代っ子の俺は、 極端な暑さや寒さは遠慮したいってのが本音だよ
“スバル”: 長らくエアコンの効いた快適な部屋に引きこもってた身なんでね
“エミリア”: ごめん、スバル ちょっと何言ってるのかわかんない
“エミリア”: でも、クルシュさんから防寒着が借りられるなら安心 よかったわね、スバル
“スバル”: ああ、安心だ さすがに長旅になりそうだから、 こっちでなんも準備しなくていいとはならないかもしれないけど
“スバル”: 明日には出発できそうな気がするよ
“レム”: はい、スバルくん 恐らく明日の朝には出発できると思います
“スバル”: ってな感じで色々決まったけど、 フェネ、お前もそれでいいよな?
“フェネ”: 無論です
“フェネ”: 空気が読めないスバル氏と違い、フェネには空気が読めます故 一連の流れに水を差すようなことはいたしません
“スバル”: 空気が読めなくて悪かったな!
“スバル”: にしても、お前はコリーナに会いにいくことを反対してたのに、 案外あっさりOKを出すんだな
“スバル”: もっと揉めるかと思ったぜ
“フェネ”: フェネは単に懸念される事柄を指摘したまでです 反対をしていたわけではありません
“フェネ”: スバル氏の顔にも、 “物事にはメリットとデメリットがある”と書かれています
“フェネ”: メリットとデメリットを考慮したうえで、 出された結論であるなら、フェネに反対する理由はありません

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_09

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■9話 タイトル:国境封鎖の可能性 更新日:2021/10/28

ナレーター: クルシュたちとの話し合いを終え宿に戻ったスバルたちは、 氷河都市アルビスへの出発準備に追われていた
“スバル”: どうぞ
“レム”: 失礼します
“レム”: スバルくん、準備の方は大丈夫ですか? もしまだ終わっていないようでしたら、レムがお手伝いを──
“スバル”: いやいや、俺の準備はだいたい終わったから大丈夫だよ
“スバル”: むしろ、手伝うことはないか、レム? 俺にできることであれば、なんだってやらせてもらう
“スバル”: 防寒着なんかはクルシュさんが貸してくれたけど、 長旅に向けた買い出しなんかも必要だよな?
“レム”: はい 食料品などの買い出しが必要です もしよければ、スバルくんもレムと一緒に……
“スバル”: ああ、もちろん同行させてもらう
“スバル”: ちょうど、立ち寄りたい店もあるし、 俺のことは荷物持ちとして活用してくれ
“スバル”: ──ってなわけで、きてやったぜ、オッチャン
“カドモン”: おう、坊主 これまたずいぶん久しぶりだな 相変わらず忙しくやってるのか?
“スバル”: まあな、ご多忙の真っ最中だよ 明日にはグステコのアルビスに向けて出発しねぇとって感じだ
“カドモン”: グステコのアルビス、だと? そりゃまた大変だな
“スバル”: そうなんだよ、オッチャン んで、しばらく会えなくなるから、 こうやってきてやったってわけだ
“スバル”: オッチャン、しばらく会わねぇと、俺のこと忘れちまうだろ?
“カドモン”: なんだよ、まだ根に持ってるのか?
“カドモン”: あんときは忘れちまってたけど、もう大丈夫だよ 二度と忘れねえから、安心してくれ
“カドモン”: って、まさか、本当にそんなことのために、 きたわけじゃねえよな?
“レム”: こちらの果物はとてもおいしいということなので、 長旅に持参するためお寄りさせていただきました
“カドモン”: おうおう、味は保証するぜ 長旅ってことは、日持ちしそうなもんを見繕った方がいいよな?
“レム”: はい ぜひお願いします
“カドモン”: 任せてくれ、嬢ちゃん ウチのは新鮮だからな、日持ちにも自信ありだ
“カドモン”: これと、あれと、あとそれなんかもおすすめだな──
“スバル”: 商売っ気出してるとこわりぃんだけど、オッチャン ちょっと話せねぇかな?
“カドモン”: なんだよ坊主、買い物にきただけじゃねえのか?
“スバル”: まぁ、そういうことだ といっても、厄介事に巻き込むような話じゃないから安心してくれ
“スバル”: 話したいことってのはロム爺のことだからさ
“スバル”: ロム爺はラインハルトのとこで世話になってる オッチャンには伝えとこうと思ってな
“カドモン”: ラインハルト……『剣聖』様か?
“スバル”: ああ、その『剣聖』様だ
“スバル”: いずれ本人から話があるかもしれねぇけど、 姿を見せなくても、行方不明とかじゃねぇから安心してくれ
“カドモン”: わかった、伝えてくれてありがとな 詳しいことは本人が訪ねてきたときにでも聞かせてもらうよ
“スバル”: ああ、そうしてくれ んで、そんときは 俺が長旅に出てることも伝えてもらえると助かる
“スバル”: ロム爺たちとは、仲良くやっていきたいと思ってるんでね よろしく頼むわ、オッチャン
ナレーター: ──そして、翌朝
“スバル”: いよいよグステコのアルビスに向かって出発って感じだな! ってことで、さっそく竜車に乗り込もうぜ!
“スバル”: しばらくこの景色が見られなくなると思うと寂しくはあるが…… 今は立ち止まってる場合じゃねぇ
“フェリス”: うんうん、そうだね、スバルきゅん!
“フェリス”: グステコがルグニカとの国境を封鎖するって噂があるから、 できるだけ急いだ方がよさそうだよ
“スバル”: うわぁ!? ビックリした!
“スバル”: どうして呼んでもねぇお前がここにいんだよ! そして、不吉な情報をさらっとぶっこむんじゃねぇ!
“フェリス”: スバルきゅんってばヒドい!
“フェリス”: 騎士団にグステコが国境を封鎖するかもって情報が入ったから、 教えにきてあげたんじゃにゃい
“フェリス”: それをそんな風に言うなんてどういうこと?
“スバル”: いやいや、だってすげぇ突然だったし、 “国境封鎖”なんて不吉なこと言い出すから……
“スバル”: って、マジなのか? 国境が封鎖されちまうんだな?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_10

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■10話(中編) タイトル:新たな同行者 更新日:2021/10/28

タイトル:新たな同行者

ナレーター: グステコ聖王国の氷河都市アルビスへ向けて 出発しようとしていたスバルは
ナレーター: フェリスの突然の訪問に驚いたが
ナレーター: フェリスは、グステコがルグニカとの国境を 封鎖しようとしているという情報を持ってきてくれたのだった
“スバル”: って、マジなのか? 国境が封鎖されちまうんだな?
“フェリス”: あくまで噂ではあるんだけど、封鎖されちゃう可能性が高そうだね
“フェリス”: 王選の開始が近いのは周知の事実だから、 それに関係した動きなんじゃにゃいかな
“スバル”: つまり、他国の厄介事に巻き込まれたくないから
“スバル”: 王様が決まって落ち着くまで、 ルグニカとは距離を置こうって感じか?
“スバル”: 五人の候補者で玉座を争うなんてことになったら、 確かに厄介なことは色々起きそうだけど
“スバル”: お隣の国にしちゃ、態度が冷たすぎだろ
“スバル”: 王様不在のごたごたに乗じて、 攻め込んでくるよりかは遥かにマシではあるけど
“フェリス”: あの国は特殊だからね 国境が封鎖されても特に驚きはないかにゃ
“フェリス”: でも、スバルきゅんたちは、 そういうわけにもいかないでしょ?
“エミリア”: ええ、国境が封鎖されたりしたら、 とっても困ったことになるわ
“フェネ”: 左様です グステコ聖王国にページがあった場合、 回収が困難になることは明白
“フェネ”: 由々しき事態であることは間違いありません
“レム”: フェリックス様がおっしゃる通り、 これは急いだ方がよさそうですね
“スバル”: だな 可能な限り急いでグステコに入ろう 国境が封鎖されちまったら目も当てられねぇ
“スバル”: ……とはいうものの、やっぱアルビスを目指すって判断は、 正しかったみたいだな
“スバル”: あいつにはそんな意図はなかったかもしれねぇけど、 コリーナに会ったら、礼の一つでも言ってやるとしよう
“スバル”: ……それでなんだが、フェリス
“フェリス”: 何かにゃ、スバルきゅん?
謎の地竜: ────
“スバル”: あの地竜がずっとこっちを見てるような気がするんだけど、 お前、何か知ってる?
“フェリス”: もちろんだよ、スバルきゅん
“フェリス”: それに“気がする”んじゃにゃくて、 明らかにあの子はスバルきゅんを見てるネ
“フェリス”: あの子、スバルきゅんのこと、気に入ったのかも 良かったネ、スバルきゅん♪
“スバル”: 良かったね、って何がだ! 頼むからもうちょい詳しく──
“スバル”: って、うわぁ!? あの地竜が俺の方にやってくるぞ!
謎の地竜: ────
“スバル”: なんだ? なんだ? 顔ちけぇから!?
“エミリア”: スバル、その子、スバルに挨拶してるみたい
“フェネ”: スバル氏 挨拶をしている相手にその態度は、さすがに失礼ですよ スバル氏もちゃんと挨拶を返してください
“スバル”: そう言われたって、俺、 地竜への挨拶の仕方なんて知らねぇんだけど!
“スバル”: ……とはいうものの、 気に入ってくれた相手に、確かにこの態度は失礼だな
“スバル”: 良く見たら綺麗な目をしてるし……怖くない、怖くないぞ、俺!
“スバル”: ってことで、俺の名前はナツキ・スバルだ! これからもよろしく頼むぜ、相棒!
“スバル”: ってな感じで合ってる? 地竜への挨拶
“フェリス”: きゃははは スバルきゅんってば、ホントおもしろーい いきなり“相棒”だなんて、初対面で距離詰めすぎでしょ~
“スバル”: いやいや、先に距離詰めてきたのってこいつだよね! さっきからずっと顔ちけぇし!
“フェリス”: けど、“これからもよろしく頼む”は合ってるかにゃ その子、スバルきゅんたちの旅に同行させるつもりだから
“スバル”: ……はあ?
“エミリア”: フェリス、どういうこと?
“フェリス”: エミリア様たちはこれから長旅に出発されます 恐らく、クルシュ様への報告もしばらくできなくなるでしょう
“エミリア”: うん、それはそうね
“フェリス”: でも、それでは困りますよね?
“エミリア”: あっ! だからこの子が?
“フェリス”: はい、そういうことです
“レム”: なるほど……
“フェネ”: 事情は理解しました では、急ぎ出発を──
“スバル”: 待て待て! なんだか話がまとまったみたいだけど、 俺には話がまったく見えてないんだけど!
“フェネ”: スバル氏、本当に話が見えませんか?
“スバル”: ああ 長旅に出るから、しばらくクルシュさんに 報告できねぇってのは、その通りだけど
“スバル”: どうしてこの地竜が俺たちと一緒にくることになるんだ?
“スバル”: それじゃまるで、この地竜が一緒にきたら、 クルシュさんと色々連絡が取れるみてぇじゃねぇか
“レム”: さすがスバルくん スバルくんはもう答えを言っていますよ
“スバル”: え? マジで? こいつがクルシュさんのとことの橋渡しをしてくれるってこと?
“スバル”: つまり……伝令的な役割を担ってくれるって理解で合ってる?
“フェネ”: 左様です それ以外フェネには思いつきません
“フェリス”: その子ってすごく優秀にゃの
“フェリス”: だから、スバルくんたちに進捗があったら、 クルシュ様のところへ報告の手紙を運んでくれるってわけ
“フェリス”: それで、こっちからも進捗を書いた手紙を持たせれば、 スバルきゅんたちにもこちらの状況が伝わるでしょ?
“フェリス”: その子は足だって速いし、普通に手紙を送るよりも何倍も早く 情報の共有ができちゃうんだにゃ
“スバル”: おおっ! それはすげぇ!
“フェリス”: アナスタシア様との面会の調整は、クルシュ様の方でするから、 その情報をスバルきゅんたちに連絡しないといけにゃいしね
“スバル”: アルビスに到着して一区切りついたら
“スバル”: こっちの近況やなんやを書いた手紙を持たせて、 クルシュさんのとこへ向かわせればいいんだな?
“フェリス”: そうそう、そうゆうことだネ
“スバル”: にしても……そんなことができちゃう優秀な地竜を 俺たちの専属にしちゃっていいのか?
“フェリス”: それについては問題にゃいかな その子、 優秀だけど扱いが難しくて決まった乗り手がいにゃいんだよね
“フェリス”: だからむしろ、活躍の場を与えてあげられて、 こっちとしても嬉しいかにゃ
“スバル”: へぇー 扱いが難しい、ね すげぇ人懐っこいし、そんな感じには見えねぇけどな
優秀な地竜: ────ッ!
“スバル”: ほ、ほら! こんなに──
“スバル”: うーん、モフモフとは違う感触……! でも、これはこれでありかもしんねぇ!
“スバル”: 最初、怖がったりしてごめんな! 今の俺には、お前がすげぇ可愛く見えるよ!
“フェリス”: スバルきゅんてば、ホント不思議 その子、本当に扱いは難しいんだよ?
“フェリス”: そんな風に人に懐くなんて、これまでなかったんだけどにゃ
“スバル”: ──さてさて、思わぬ同行者ができたわけだけど、 フェリスとも別れて竜車に乗り込んだし
“スバル”: いよいよ出発って感じで大丈夫だよな?
“レム”: はい、スバルくん、いつでも出発できます
“スバル”: エミリアたんやフェネもオッケー?
“エミリア”: 大丈夫よ、スバル
“フェネ”: 無論フェネもです
“スバル”: ええっと……パトラッシュも大丈夫だよな?
“パトラッシュ”: ────ッ!!
“エミリア”: す、スバル? パトラッシュって誰?
“スバル”: えっと、外の子
“スバル”: これから一緒に旅立つんだし、名前を付けてあげようって思ったら ビビビってきちゃったんだよね
“スバル”: パトラッシュ…… うん、あの子の名前はそれ以外には考えられねぇ!
“フェネ”: スバル氏 あれはクルシュ女史所有の地竜です 勝手に名付けるのはいかがなものかと
“スバル”: けど、本人は気に入ってるみたいだぜ?
“パトラッシュ”: ────ッ!
“スバル”: ほらな
“エミリア”: ホント すごーく嬉しそう
“レム”: はい スバルくんに名付けてもらって、 あの子はとっても嬉しそうです
“フェネ”: なるほど…… 確かにそれは否定できませんね
“スバル”: ってことで、あの子の名前はパトラッシュで決まりだ!
“スバル”: そして、国境が封鎖される可能性がある今、 時間は一秒だって無駄にはできねぇ
“スバル”: レム、アルビスに向けて出発してくれ!
“レム”: はい、スバルくん! それでは──
“パトラッシュ”: ────ッ!
ナレーター: こうして新たな同行者が加わったスバルたちは、 急ぎ、グステコのアルビスに向けて出発するのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_11

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■11話 タイトル:氷河都市アルビス 更新日:2021/10/28

ナレーター: フェリスから国境封鎖の可能性があることを 知らされたスバルたちと一匹は
ナレーター: 休憩もそこそこに、日夜竜車を走らせ、 四日ほどでグステコ聖王国の氷河都市アルビスに到着していた
“スバル”: ──ということで、アルビスに到着したわけだけど、 やっぱさみぃな!
“スバル”: クルシュさんに防寒着を借りてたから、 なんとか生存できてっけど
“スバル”: そうじゃなかったら、 竜車を降りた途端に凍え死んでた自信があるよ
“エミリア”: スバルったらおおげさよ いくらなんでもそこまでの寒さじゃないわ
“レム”: アルビスはグステコでは比較的温かい都市だと聞きます 珍しく凍っていない河もありますから
“スバル”: たとえそうだとしても“温かい”って表現はなんか違うかな! それに河が凍ってないのって普通だよね!
“スバル”: それが珍しいって、どんだけ寒いんだよ、グステコはさ!
“スバル”: とはいえ、到着まで結構かかっちまったな……
“フェネ”: 竜車を引きながらの雪道では仕方ないでしょう……
“フェネ”: パトラッシュ女史はさすがの走行でしたが……
“フェネ”: ロズワール氏所有の優秀な地竜とはいえ……、 今回の速度が限界だったと思われます……
“レム”: はい あの子たちはよく頑張ってくれたと思います
“スバル”: それを言うんだったら、レムもすげぇ頑張ってくれたよな?
“レム”: 国境が封鎖されてしまうかもしれませんでしたし、 スバルくんも乗っていましたから、レムは最善を尽くしました
“スバル”: すごく助かったぜ、レム ありがとな
“レム”: はい! スバルくんにそう言ってもらえて、 レムの疲れはどこかに吹き飛んでしまいました!
“スバル”: そ、そうか? そう言ってもらえると嬉しいけど、 なんかこそばゆいな
“スバル”: とにかく、ちょっと時間はかかっちまったけど、 無事にアルビスに到着できたことを喜ぶことにするよ
“スバル”: これでフェネが『禁書』のページの反応を キャッチでもしてくれたら、幸先いいんだけど?
“フェネ”: …………
“エミリア”: フェネ、大丈夫? なんだか体調が悪そうに見えるわ
“スバル”: おっと、確かに…… さっき話してたときも、 声小さかったし、元気がない感じだったな
“スバル”: また、疲労で体調を崩しちまったか、フェネ?
“フェネ”: 疲労…… それもあるかもしれませんが、今回はこの寒さ故です フェネにこの寒さは堪えます
“スバル”: ……寒さ? そんだけモフモフしてても、やっぱさみぃもんはさみぃんだな
“スバル”: 俺たちはクルシュさんに防寒着を用意してもらったけど、 フェネの分も用意してもらえばよかったぜ
“フェネ”: 過ぎたことを言っても仕方ありません…… できれば、早めに宿に……
“スバル”: ああ、そうだな それには俺も賛成だ
“エミリア”: うん、そうしましょう レム、頼める?
“レム”: はい、もちろんです
“エミリア”: それじゃ、私は向こうを探すから、 レムはあっちを探してもらっていい?
“エミリア”: スバルはフェネと一緒に、竜車の中で待ってて
“スバル”: 俺もエミリアたんと一緒に、宿を探したいとこだが……
“フェネ”: …………
“スバル”: 辛そうなフェネを一人にはできねぇよな
“スバル”: よし、竜車に戻るぞ、フェネ エミリアたんとレムは、急いで泊まれそうな宿を探してくれ
“スバル”: ──エミリアたん、どんな感じ?
“エミリア”: 今は眠っているわ でも、フェネ、すごく辛そう なんだか心配ね
“レム”: はい…… とても心配です……
“スバル”: アストレア領ってとこから戻ったときも、 あいつ、体調を崩してたよな……
“スバル”: ページの感知ってかなりのマナが必要みたいだし、 あの小さな体にはすげぇ負担になってるのかもしれねぇ
“スバル”: そもそもなんか重たい病気を患ってて、 実は余命が幾ばくかって可能性もあるけど……
“スバル”: 俺たちを心配させたくないから、フェネが言ってないだけでさ
“エミリア”: そ、そんな……
“スバル”: いやいや、あくまで最悪の場合の話だよ だから、そんな顔しないで、エミリアたん
“スバル”: 温かくして眠ったら、きっと元気になるって
“レム”: だといいのですが……
“スバル”: レムまでどうしたんだ? さっき疲れが吹っ飛んで元気になったって言ってただろ
“レム”: 確かにあのときはそうだったのですが…… やはりフェネさんが心配です……
“スバル”: ごめん…… すべては俺が余計なことを言ったせいだ……
“スバル”: 普段は憎まれ口ばっか叩いてるけど、 あいつってムードメーカーだよな
“スバル”: もしフェネがこの場にいたら、 俺から華麗なツッコミを引き出して、場を和ませてくれるもんな
???: ──やれやれ スバル氏、暗いですよ
“フェネ”: 極悪非道のクソ上司、スバル氏のことですから
“フェネ”: フェネが寝込んだのをいいことに、 好き放題言っていると思ったのですが
“フェネ”: あまりのギャップにフェネは困惑を隠せません
“スバル”: 誰が極悪非道だ! 誰が!
“スバル”: それに“ギャップ”ってな…… それも俺の顔に書いてあったのか?
“フェネ”: 左様です 極悪非道なクソ上司、スバル氏の顔に書いてありました
“スバル”: “クソ上司”だけでもお腹一杯だから、 “極悪非道”まで付けるのはやめてくれ!
“スバル”: 俺の目つきと相まって、その表現は洒落にならねぇんだよ 俺の内面を知らない人が聞いたら、本気で信じちまう
“スバル”: 事実──
子ども: お母さん、あの人、極悪非道なんだって
母親: こら、見るんじゃありません あの目つき…… 目が合っただけで殺されてしまうわ……
“スバル”: どうしてくれるんだよ、この空気? せっかく見つけた宿からも追い出されかねねぇだろ
“レム”: スバルくんを誹謗中傷するなど、このレムが許しませんっ
“スバル”: れ、レムさん!? 許してあげて! このままじゃ本気で宿から叩き出されちゃうよ!
“レム”: スバルくんがそう言うのであれば…… でも、スバルくんのその目、レムはとても素敵だと思います
“エミリア”: ねえ、スバル、フェネのおかげで場が和んだみたい 良かったわね
“スバル”: いやいやいや! これ、“和んだ”ってのとは違くない!? 暗くてどんよりした空気は、どこかに吹っ飛んだけどさ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_12

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■12話 タイトル:スバルの杞憂 更新日:2021/10/28

“フェネ”: わざわざ送っていただかなくても、 部屋へ戻るぐらいフェネ一人でできます
“スバル”: いやいや、なんだかロビーが変な空気になっちゃってたから、 あのままあそこに居続けるのは難しかったかな
“スバル”: 部屋で仕切り直しって感じだ お前も体調が戻ったみたいだしな
“フェネ”: スバル氏、残念ながらフェネの体調は戻っていません
“スバル”: え? そうなの?
“フェネ”: 左様です できればすぐに横になり眠りたいところですね
“スバル”: そうか……
“エミリア”: スバル、いきましょう フェネを眠らせてあげないと それに、コリーナちゃんにも会わないといけないでしょ?
“スバル”: それはそうだけど…… でも……
“レム”: スバルくんは優しいから、 フェネさんを放っておけないという気持ちになるのはわかります
“レム”: でも、今は温かくして 一人でお休みになった方がいいとレムも思います
“フェネ”: 左様です むしろスバル氏がやることを行わないことの方が、 フェネには大きな心の負担です
“フェネ”: フェネのことを思うのであれば、 しっかり働いてください、クソ上司
“スバル”: やれやれ、俺はダメな上司だな 部下にこんなこと言われちまうなんて
“フェネ”: ようやく気付きましたか 今さらですよ
“スバル”: うるせぇー、ほっとけ!
“スバル”: とにかくわかった コリーナに会う、それが最優先だ
“スバル”: けど、フェネ、二つだけ聞かせてくれ それさえ聞ければ、すぐ出ていくからさ
“フェネ”: わかりました それで、その二つというのは?
“スバル”: 一つは、ページの反応についてだ この近くに『禁書』のページの反応はないってことで大丈夫か?
“フェネ”: 今のフェネの体調では、正確なことは言えませんが…… 現時点でフェネは反応を感知していません
“スバル”: そうか 少なくともすぐにどうこうなることはなさそうだな
“フェネ”: それではスバル氏 二つ目の質問をお願いします
“スバル”: 二つ目は……ええっと……その……
“フェネ”: スバル氏?
“スバル”: いやいや……、その……、あの……、お前…… もしかして重たい病気とかじゃねぇよな?
“スバル”: 最近体調を崩しがちだから、なんか心配で……
“フェネ”: 心配無用です、スバル氏 フェネの体調不良は、心労と寒さによるものと断言できます
“フェネ”: 特に心労の方は……詳しい説明が必要ですか、心労元のスバル氏?
“スバル”: “心労元”ってはっきり言われてる時点で、 詳しい説明は遠慮させてもらうよ
“スバル”: 今度は俺の方が、体調を崩して寝込むことになっちまいそうだ
“スバル”: とにかく、俺の杞憂ならそれでいいんだ
“スバル”: ってなわけで、フェネから聞きたいことは聞けた エミリアたん、レム、コリーナ探しに出発しよう!
ナレーター: フェネを部屋に残して宿を出たスバルたちは
ナレーター: コリーナが手紙で待ち合わせ場所として指定していた 氷河亭という酒場を探し始めるのだった
ナレーター: そして──
“レム”: スバルくん、エミリア様、 氷河亭という酒場の場所がわかりました!
ナレーター: レムからもたらされる吉報
“エミリア”: ありがとう、レム すごーく助かったわ
“スバル”: でかしたぞ、レム! それじゃ、さっそく案内してくれ!
“レム”: はい、こちらです スバルくん、エミリア様、レムについてきてください

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_13

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■13話 タイトル:約束の酒場で 更新日:2021/10/28

“スバル”: ここが氷河亭か……
“エミリア”: コリーナちゃん、どこかしら? それらしい子は見当たらないわね
“レム”: そうですね ここは酒場なので、 それらしい方がいればすぐにわかると思うのですが……
“スバル”: コリーナも一日中この酒場に張り付いてる ってわけじゃねぇだろうし
“スバル”: 待ってればそのうち現れるんじゃねぇかな
“スバル”: ひとまず、伝言とか預かってるかもしれねぇから、 酒場のマスターに話を聞いてみようぜ
“エミリア”: ……ますたー?
“スバル”: えっと、“店主さん”って感じかな こういう店の長のことを俺の故郷じゃそう呼ぶんだよ
“スバル”: “ヘイ、店主!”って呼ぶより、 “ヘイ、マスター!”って呼んだ方がかっこいいだろ?
“エミリア”: ごめん、ちょっと何言ってるのかわかんない
“レム”: なるほど とっても勉強になります
“コリーナ”: ふむふむ まったく違った反応ですね スバルさん、これはどちらの反応が正しいのでしょう?
“スバル”: どっちも極端だから……中間ぐらいの反応が正しいんじゃないか
“スバル”: エミリアたんには、 もうちょい興味を持って話題を膨らませてほしいし
“スバル”: レムの反応だとさすがに恐れ入る
“コリーナ”: では、この勝負は引き分けですね 勝敗は次の勝負で──
“スバル”: 待て待て! いきなりの登場でただでさえ絶句もんなのに、 さらに場を荒らそうとすんじゃねぇ!
“スバル”: お前の神出鬼没ぶりに俺は慣れてるけど、 この二人は初めてなんだぜ!
“エミリア”: …………
“スバル”: ほら見ろ、エミリアたんなんて、 完全に言葉を失っちまってるじゃねぇか
“エミリア”: ええっと……その格好で寒くないの? ほら、アルビスってすごーく寒いでしょ?
“スバル”: 絶句の原因って、それ!? 言われてみれば確かにそうだけども!
“レム”: スバルくん、この方が探していたコリーナさんですか?
“スバル”: ああ、そうだ、レム こいつがコリーナだよ
“コリーナ”: はじめまして、エミリアさん、レムさん 冒険家のコリーナです
“エミリア”: コリーナちゃん、いつもスバルがお世話になっています あと、ガナクスでは私もお世話になりました
“エミリア”: スバルから、コリーナちゃんのおかげで、 私は助かったって聞いてるわ
“レム”: コリーナさん、レムからもお礼を言わせてください お力添え、感謝いたします
“コリーナ”: いえいえ、あんなに泣きながらお願いされたら、 断ることなんてできません
“コリーナ”: お礼なら、スバルさんに言ってあげてください
“エミリア”: スバルがそんなにめそめそしながら……
“スバル”: し、してないよ、エミリアたん!?
“レム”: スバルくんが泣きながら……
“レム”: スバルくん、次に涙を流すときは、レムの腕の中でお願いします
“スバル”: そのお願いに応えるのは難しいかな! 泣いてる姿なんて、できれば誰にも見せたくないしね!
“スバル”: って、完全に俺が泣きながら 懇願したことになってるじゃねぇか……
“スバル”: しかも、なんだかすでに コリーナはエミリアたんやレムと馴染んでる気がする
“コリーナ”: それで、皆さんが遥々アルビスまでいらっしゃったのは……
“コリーナ”: 何故コリーナが、 このような格好でも寒くないかを知るためですね?
“エミリア”: うん、すごーく気になる 私も寒さには強いと思うんだけど、 コリーナちゃんほどじゃないもの
“スバル”: え、エミリアたん そこが気になっちゃうエミリアたんは、 とってもプリティだけど
“スバル”: まずは『禁書』のページについて聞いとかないと
“スバル”: コリーナは、登場も唐突だけど、去り際も突然なんだよ
“スバル”: 寒さに強い理由を話した途端にお役御免になって、 いなくなっちまわないとも限らねぇ
“スバル”: ってことで、俺たちが遥々こんな寒い場所まできたのは、 お前の手紙に俺の探し物がグステコにあるって書いてあったからだ
ナレーター: それからスバルは、 『禁書』のページに関する簡単な情報共有をコリーナに行い
ナレーター: コリーナが手紙に書いた“スバルさんの探しもの”が、 そのページであるかを確認する
“コリーナ”: ──間違いありません
“コリーナ”: コリーナもガナクスでその紙切れを目にして、 不思議に思っていました
“コリーナ”: そして、スバルさんがあの紙切れを集めていることも、 なんとなく察しています
“スバル”: やっぱそうか……
“スバル”: なんとなくそんな気がしてたよ お前って、何気に優秀な冒険家としての片鱗を覗かせるしな
“コリーナ”: ほうほう スバルさん、 そこのところ、もう少し詳しくお願いします
“コリーナ”: 優秀な冒険家としての片鱗、コリーナはとても気になります
“スバル”: 少なくとも俺は、お前がパニクってるところを見たことがねぇ
“スバル”: どんなことにも動じず、 いつも心のどこかに余裕があるように感じるよ
“スバル”: 冷静に周囲を見てるし、 決断力も行動力もここぞというときの度胸も備わってる
“スバル”: 冒険家って職業についちゃ胡散臭さが拭えねぇけど…… お前がただ者じゃないってことは、間違いないと思ってるぜ、俺は

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_14

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■14話 タイトル:ページを集める芸術家 更新日:2021/10/28

“スバル”: ──それでコリーナ、本題なんだが、 ページがグステコにあるってどうしてわかったんだ?
“コリーナ”: ある酒場で偶然耳にしました
“コリーナ”: ページと思われるものを追って、グステコのアルビスに向かう、 そうおっしゃっていた方がいたのです
“スバル”: ……ページらしきものを追って? そいつはどんな奴だったんだ?
“コリーナ”: 芸術家風……と言えばいいのでしょうか? 少し奇抜な格好をしていました
“コリーナ”: それに、スバルさんたちが探しているページというものに対する、 執念のようなものを感じましたね
“コリーナ”: コリーナが直接お話したわけではないのですが……
“コリーナ”: 少し離れた席からでも、 その方の熱を帯びた声は聞き取ることができましたから
“スバル”: 芸術家……
“レム”: スバルくん
“スバル”: ああ、恐らくプリシラんとこにページを買いにきた、 例の奴で間違いねぇと思う
“スバル”: どういう情報網を持ってるのか知らねぇけど、 あんにゃろ、ページの匂いには敏感そうだしな
“エミリア”: その人もアルビスにきているのかしら?
“コリーナ”: 恐らくは 急ぎアルビスへ向かうというようなことを言っていたので
“スバル”: 国境が封鎖されるかもしれねぇんだし
“スバル”: ページがあるかもしれねぇんだったら、 そりゃ真っ先にここに向かうだろうな
“スバル”: だから、この町のどこかにいる可能性が、俺は高いと思う
“スバル”: ってなわけで、 芸術家風の変な野郎に会うのが一番って状況なんだけど……
“スバル”: コリーナ、そいつがいそうな場所に、心当たりはねぇのか?
“スバル”: 体調不良でフェネは寝込んでるし、まずはやっぱその芸術家に……
“スバル”: って、あれ!? コリーナは!?
“エミリア”: コリーナちゃん、どこかへいっちゃったみたい
“レム”: はい 残念ながら、コリーナさんの姿は見当たりません
“スバル”: おいおい、またかよ! 肝心なところで姿をくらましやがって……!
“スバル”: とはいえ、例の芸術家がこの町にいる可能性が高い
“レム”: コリーナさんが言うことを信じるのであれば、その通りですね
“エミリア”: やっぱりアルビスにきて正解だったわ
“エミリア”: その芸術家みたいな人がページを集めてるんだったら、 たくさんページを持ってるかもしれないでしょ?
“スバル”: その可能性はあるけど、だとするとぞっとしないね
“スバル”: フェネがページを感知してないから、 すぐにページがどうこうなることはないのかもしれないけど
“スバル”: ページを持っていること自体がリスクだ
“スバル”: しかもページ集めに執念を燃やしてるみたいだし
“スバル”: ページを渡すようにお願いしても、 大人しく渡してはくれねぇ気がする
“スバル”: ひと悶着あることを覚悟しておいた方がよさそうだね
“スバル”: とはいえ……その芸術家って奴の情報が少なすぎる
“スバル”: こりゃ、見つけ出すまでに、ちょっと時間がかかりそうだな
“スバル”: ──パトラッシュ、頼む もろもろ進展があったんで、クルシュさんにこの手紙を届けてくれ
“パトラッシュ”: ──っ!
“エミリア”: 偉いわね この子、届けてくれるみたい
“レム”: はい、とても助かります
“レム”: 無事にアルビスに到着したこと、 フェネさんが寝込んでしまったこと
“レム”: コリーナさんとは会え、これから芸術家の方を探すことなど、 現時点で書ける内容はしたためさせていただきました
“スバル”: 本当は“ページ発見”って連絡ができればよかったんだけど…… ルグニカまでの距離を考えると
“スバル”: このタイミングでパトラッシュには、 クルシュさんのとこに向かってもらった方がよさそうだ
“スバル”: 王都の方でも色々進展があるかもしれないし、 アナスタシアさんとの面会の件も気になってる
“エミリア”: 私もそれでいいと思う クルシュさん、 私たちが無事にアルビスに到着できたか心配してると思うもの
“レム”: フェネさんの体調回復や芸術家という方の発見には、 数日かかるかもしれません
“レム”: うまくすれば、 それまでにクルシュ様からのご返事を受け取れるでしょう
“スバル”: しばらくお前に会えなくなるのは寂しくなるが…… 頼んだぞ、パトラッシュ!
“パトラッシュ”: ──っ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_15

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■15話(中編) タイトル:美の頂点 更新日:2021/10/28

ナレーター: スバルたちが氷河都市アルビスに到着した翌日──
“スバル”: エミリアたん、フェネの様子はどうだった?
“エミリア”: ううん まだ調子が悪いみたい…… 今日も寝ていたいって……
“レム”: 今はフェネさんの力を頼るわけにはいきませんね……
“スバル”: だな ってことで、今日こそページを集める芸術家って奴を見つけ出そう
“スバル”: そしたら、ページの件は色々と解決するかもしれねぇ
“レム”: そうですね そのためにレムは全力で芸術家の方を探します
“エミリア”: 私も頑張るわ、スバル
“スバル”: もちろん俺も頑張るぜ! って言いたいところだけども……
“エミリア”: スバルは一人だと心配 レム、スバルのこと、お願いできる?
“レム”: はい、エミリア様! スバルくんのことはレムにお任せください!
“スバル”: ここで“是が非でもエミリアたんと一緒にいきたい”なんて言えば レムをものすごく傷つけることになる……
“スバル”: そもそもエミリアたんが言い出したことだし……
“スバル”: エミリアたんと一緒にいきたいって言っても、 きっと却下されるんだろうな……
“エミリア”: スバル、何か言った?
“レム”: スバルくん、何か言いましたか?
“スバル”: いやいや、こっちの話だよ エミリアたんもレムも気にしないでくれ
“スバル”: とにかくわかったよ、エミリアたん レムと一緒に芸術家探しを頑張らせてもらう
“スバル”: ってことで、よろしくな、レム
“レム”: はい エミリア様ではなく、レムがお相手で申し訳ないですが…… スバルくん、よろしくお願いします!
“スバル”: うぐ…… レムにはしっかり聞こえてたのね……
ナレーター: 昨日に引き続き、『禁書』のページを集めているらしい 芸術家を探すスバルたちだったが
ナレーター: 目当ての人物にはなかなか巡り合うことができなかった
“スバル”: ──あ! エミリアたん!
“エミリア”: スバル、レム! 芸術家の人は見つかった?
“レム”: いえ…… 残念ながら……
“スバル”: その様子だと、エミリアたんの方も……?
“エミリア”: うん、見つからないわ
“スバル”: ……あのさ、エミリアたん、レム ちょっとコリーナと会った酒場にいってみないか?
“スバル”: コリーナがその芸術家を見かけたのって、酒場だったし、 氷河亭にいけば、何かわかるんじゃねぇかな?
“スバル”: もちろん、コリーナが芸術家を見かけたのは、 アルビスにある氷河亭じゃないんだけど……
“スバル”: 芸術家の奴が、 どこの街でも酒場に入り浸ってる可能性はあるだろ?
“レム”: 確かに、闇雲に探し回るより、 その方が立ち寄りそうな場所で待ってみた方がいいかもしれません
“エミリア”: うん、わかったわ、スバル 氷河亭にいってみましょう
“スバル”: ──というわけで、あの角を曲がれば氷河亭だね
“レム”: はい あの角の先にコリーナさんと会った酒場、氷河亭があります
“エミリア”: そこに芸術家の人がいればいいんだけど……
???: おお、なんとお美しい!
“エミリア”: ……え?
“レム”: ……え?
???: 今の表情もとても素敵です 是非ともこの出会いを祝し、わたくしと一杯──
“スバル”: 待て待て! いきなり出てきて エミリアたんをナンパとはいい度胸じゃねぇか!
“スバル”: エミリアたんには、俺という心に決めた人が──
“エミリア”: ごめんなさい、スバル ちょっと何言ってるかわかんない
???: 麗しの姫君はこうおっしゃっておいでですが?
“スバル”: うるせぇー! こう返されると思ったけど、 どさくさに紛れて言ってみたかったんだ!
“スバル”: こう返されるとは思ってたけども!
???: それはそれはお気の毒に……
“スバル”: その憐れむような目はやめてくれ!
“スバル”: それに、確かに俺は玉砕したけども、 だからってお前のナンパが成功したわけじゃねぇだろ!
“スバル”: エミリアたんが、お前なんかの誘いに乗るわけねぇ! もちろんレムもな!
“エミリア”: ええっとね、スバル……
“レム”: あの…… スバルくん……
“スバル”: え? え? う、嘘だろ、二人とも!?
???: どうやら美しいお二人は、わたくしとご一緒したいご様子ですな
???: 貴殿も同席したいのであれば、それに相応しい美しさを……
???: いえ、失敬 残念ながらその目つき、もはや手の施しようがありません
“スバル”: 初対面でなーに言っちゃってくれてんだよ!
“スバル”: マジ、向こういってくんない? 早くしねぇと、俺、手が出ちゃいそうだよ!
???: わたくしが向こうへ? 本当にそれでよろしいのでしょうか? 皆様はわたくしを探しているご様子でしたが
“スバル”: ──えぇ!? ってことはまさか……?
“エミリア”: うん、たぶんそうだと思う
“レム”: はい レムもそう思います
“スバル”: な、なるほどね だからエミリアたんとレムは……
“スバル”: ふぅ…… 二人がこんな野郎のナンパに ひっかかったわけじゃなくて良かったぜ
“スバル”: んで、お前は気に入らねぇだろうが、 俺もぜってぇ同席させてもらう! これだけは譲れねぇかんな!
???: ──それでは、我々の美しい出会いに、乾杯いたしましょう
???: 一部美しくない出会いもありましたが、 それについては目をつぶることにいたします
???: わたくしの美学には反してしまいますが、 エミリア嬢とレム嬢からの頼みであれば致し方ありません
???: ですが、向こうの席が空いているようですな 貴殿はあちらに座られては?
“スバル”: アホか! どうして俺が、 あんな遠くの席に座んなきゃなんねぇんだよ!
“スバル”: って、その前に、ちゃんとした自己紹介も済んでねぇのに、 俺のエミリアたんの名前を気安く呼ぶんじゃねぇ!
“スバル”: もちろんレムのもな!
“エミリア”: ええっとね、スバル さっきも言ったけど──
“スバル”: おっとそうだったね! あわよくばって思っただけだから、気にしないで!
???: スバル殿、貴殿には学習能力というものがないのですか?
“スバル”: うるせぇー! 学習能力のなさを痛感させられてるとこだよ! って、俺の名前まで気安く呼びやがったな!
“スバル”: そろそろ、お前も名乗ってもらっていい? いつまでも無名のままってわけにはいかねぇだろ!
???: これは失敬 確かにわたくしは皆様に名乗っておりませんでしたな
“ガーディー”: わたくしの名はガーディー 美を知る芸術家でございます
“ガーディー”: 美とは、すべてに優先される判断基準 美とは、この世でもっとも尊き存在──
“ガーディー”: その最たるものが、 絵本作家エドガー殿が残した『遺作』なのです!
“スバル”: 絵本作家エドガー……? 『遺作』……?
“レム”: スバルくん
“スバル”: ああ…… やっぱ、このガーディーって奴が、 例の芸術家ってことで間違いなさそうだ
“スバル”: んでもって、『禁書』の作者はエドガーって名前みたいだな
“スバル”: あのおどろおどろしい絵本が、 美の頂点って意見には賛同しかねるけども
“ガーディー”: ……賛同しかねる、ですと?
“スバル”: ああ、しかねるね あんな気色悪いもんが、美の最たるもののわけねぇだろ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_16

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■16話 タイトル:ガーディーからの交換条件 更新日:2021/10/28

ナレーター: グステコ聖王国の氷河都市アルビスにて
ナレーター: ついにスバルたちは『禁書』のページを収集している芸術家、 ガーディーとの邂逅を果たすのだった
“ガーディー”: ──スバル殿は、あの素晴らしい絵本の価値が、 おわかりになっていないようですな
“スバル”: いやいや、あの紙切れの価値がわかってねぇのは、 お前の方だぜ、ガーディー
“スバル”: あれはマジで危険なもんなんだ
“スバル”: あんなもんは『禁書』に封じて、ベア子が見張ってる禁書庫に 永遠に閉じ込めておくべきなんだよ
“ガーディー”: な、何を言い出すかと思えば…… スバル殿が正気だとはとても思えませんな
“エミリア”: ううん スバルが言う通りよ 『禁書』のページはとっても危険なものなの
“エミリア”: 今までページのせいで、色々大変なことが起こっちゃったし、 早く『禁書』に封じて、禁書庫に戻さないと
“ガーディー”: エミリア嬢までそのようなことを……
“ガーディー”: 美とは何より優先される事項 危険などというものとは比較になりませんな
“スバル”: 待て待て、お前こそどうかしてるぜ、ガーディー
“スバル”: 俺の故郷には“美人は三日で飽きる”って有名な言葉があってな お前が言ってるようなことは愚の骨頂的扱いなんだよ
“スバル”: 美が何よりも優先? はんっ、馬鹿馬鹿しい!
“ガーディー”: 己を偽るべきではありません、スバル殿 貴殿はわたくしと同じはずだ
“ガーディー”: たとえばエミリア嬢の美貌、貴殿は三日で飽きましたかな?
“スバル”: ぬぐぐ…… 出会って三日は余裕ですぎてるけど、 今んとこ飽きる気配がねぇ……
“スバル”: エミリアたんの美貌は、何十年経っても飽きない自信があるよ……
“ガーディー”: スバル殿、目を覚ますのです ──貴殿はこちら側の人間のはずだ
“スバル”: うぐぐ…… お、俺は……
“レム”: スバルくん、しっかりしてください!
“レム”: エミリア様は確かにお美しいですが、 それはエミリア様の内面あってのこと
“レム”: エミリア様がただ美しいだけであれば、 恐らくスバルくんの故郷に伝わる言葉通りになるはずです
“スバル”: ……その通りだな、レム
“スバル”: エミリアたんがエミリアたんだから、 俺はエミリアたんの美貌に飽きたりしねぇんだよ
“スバル”: それに、愛しのエミリアたんと、 あの気色わりぃ『禁書』のページをイコールで語ってるんじゃねぇ
“スバル”: とにかく、見た目の美しさなんてもんは、 三日で飽きる程度の優先度なんだよ
“スバル”: 事実、今のエミリアたんは美しいけども、 仮にそうでなくなったとしても、俺の気持ちは変わったりしねぇ
“スバル”: お前みたいな奴と同類にされるのは、マジ迷惑だぜ、ガーディー
“ガーディー”: ほう…… エミリア嬢が美貌を失っても、変わらずに…… スバル殿はどうかしておいでですな
“スバル”: どうかしてるのは、お前の方だ、ガーディー! それをちゃんと自覚した方がいいぞ!
“スバル”: ってな感じでエミリアたん 恥ずかしいことを色々言っちゃったけど、俺は君が──
酒場店主: そろそろご注文はお決まりになりましたか……?
“エミリア”: うーん、うーん たくさんあって、迷っちゃうわ 店主さんのおすすめを聞いてもいいかしら?
“スバル”: メニュー選びに夢中で、全然聞いてなかったのね! そんなことだろうとは思ってたけど!
“エミリア”: ん? スバル、どうかした?
“スバル”: ううん、なんでもないよ、エミリアたん 聞いてたとしても困っただけだろうし、むしろそれでオーケーだ
“スバル”: とにかく、ガーディー、あのページは、たとえ美しい って思っても、手元に置いとくようなもんじゃねぇんだ
“スバル”: もし所有してるもんがあるなら、 悪いことは言わねぇ 俺たちに渡してくれ
“ガーディー”: ……残念ながら、わたくしは所有しておりません
“ガーディー”: プリシラ嬢に買い取りを申し出ましたが、お断りされてしまい
“ガーディー”: 出回っているという噂は耳にするものの、ホーシン商会が 動いているらしく、わたくしの元には巡ってきておりませんので
“ガーディー”: シバレル大氷河にて一枚発見してはいるのですが…… そちらも回収には至っていない状態です
“スバル”: ……シバレル大氷河で、一枚発見してるんだな?
“ガーディー”: はい あれぞ希代の天才絵本作家エドガーの傑作! 一目でわたくしは心を奪われてしましました!
“スバル”: エドガーとかいう絵本作家に陶酔してるとこ、マジ悪いんだが
“スバル”: そのページのありかを教えてくれって言ったら、 お前は教えてくれたりするのか?
“ガーディー”: わたくしからの条件をお呑みいただけるのであれば、喜んで
“スバル”: ……条件? それはどんなんだ?
“ガーディー”: 貴殿らは多くの『遺作』を収集しているご様子 一目でいいので、見せていただくわけにはいきませんかな?
“ガーディー”: 無論、買い取らせていただけるのであれば、 それに越したことはありませんが……
“ガーディー”: 貴殿らが『遺作』を手放すとは思えません
“ガーディー”: ですので、一目だけでも! 是非ともわたくしに!
“ガーディー”: この通りです、スバル殿! 是非是非是非! 天才絵本作家エドガー殿の傑作の数々を拝見させてください!

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Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■17話 タイトル:いざ、シバレル大氷河へ 更新日:2021/10/28

“レム”: スバルくん
“スバル”: おお、レムか 入ってくれ
“スバル”: レム、フェネの様子はどうだ?
“レム”: エミリア様が看病されていますが…… 体調が回復したとは言えない状態です
“スバル”: そうか…… やっぱガーディーを頼るしかねぇ感じか……
“レム”: レムはガーディー様を信用するべきではないと思います
“スバル”: そうだな あいつはなんだか危険な感じがする
“スバル”: とはいうものの……背に腹は代えられねぇ
“スバル”: ページのありかをあいつが知ってる以上、 そうも言ってられねぇだろ
“レム”: それは……そうですね……
“スバル”: にしても、あいつ、マジでヤバい奴だったな……
“スバル”: あいつからページの買い取りを提案されて、 却下できたプリシラはやっぱすげぇよ
“スバル”: あいつって言ってることは無茶苦茶なんだけど、 こっちを飲み込む雰囲気を持ってるつーか
“スバル”: レムが正気に戻してくれなかったら、 俺は完全にあいつのペースに嵌まってたよ
“スバル”: ページを見せる件だって、保留にするのが精一杯だった あれ以上あの場にいたら、俺、首を縦に振ってたかもしれねぇ
“レム”: スバルくんはうまくできたと思います
“レム”: 少なくとも、ガーディー様にページをお見せするのは、 すべてが片付いた後になるはずですから
ナレーター: アルビス近くの氷河、シバレル大氷河にあるというページ
ナレーター: そのありかを教える代わりに、スバルたちが集めた『禁書』の ページを見せろというのがガーディーが出した条件だった
ナレーター: だがスバルは、それはガーディーからの情報が本当で、無事に シバレル大氷河にあるページを回収できてからだと突っぱねたのだ
ナレーター: そして、ガーディーもそのことを了承した
ナレーター: さらにスバルは、フェネが回復したことにより、 自力でページ探しが行える可能性も考慮して
ナレーター: その場で判断することを避け、結論を翌日まで保留したのだった
ナレーター: もしガーディーの手を借りる場合は、 明日の正午までに氷河亭を訪ねることになっている
“レム”: それこそ、レムやエミリア様にはできない交渉でした さすがスバルくんです
“スバル”: それについては、俺もちょっとそう思うかな
“スバル”: もちろんレムやエミリアたんがいてくれたからだけど、 あの状況でベストは尽くしたと思う
“スバル”: 明日、フェネが回復してくれてたら、 ガーディーの力を借りなくてもどうにかできるかもしれねぇ
“スバル”: 少なくとも、ページがシバレル大氷河ってとこにあるのは、 確かだと思うし
“スバル”: とはいうものの、フェネの回復の可能性は低そうだな…… 癪だが、あいつの手を借りることになりそうだよ
“スバル”: ──フェネ、お前、体調は大丈夫なのか?
“フェネ”: 残念ですが、スバル氏 フェネの体調は完璧ではありません
“フェネ”: ページの感知を行うことはできないと思われますが、 ページを『禁書』に封じることは可能です
“スバル”: ページを封じる…… 確かに感知だけじゃなくて、それもお前の大切な役目だったな
“フェネ”: 左様です 『禁書』に封じない限り、ページの危機は去りません
“スバル”: けど、感知はできねぇか……
“スバル”: つまり、ガーディーに、ページのありかを聞く必要があるわけだ?
“エミリア”: スバル、フェネはページをガーディーさんに見せても、 いいって言ってるわ
“フェネ”: ページの危機を放置するわけにはいきません
“フェネ”: やむを得ませんが、 ガーディー氏にページをお見せすることに同意します
“フェネ”: さらに言えば、早急にページを回収し、 この極寒の地を離れたいとフェネは考えています
“レム”: フェネさんの体調の回復には、 グステコを離れるのが一番だとレムも思います
“スバル”: フェネの体調不良の原因がこの寒さなら、 確かにそうするのが一番だな
“スバル”: よし、わかった ガーディーに会いに、氷河亭へ向かうとしよう
“スバル”: ──ってわけで、無事にページが回収できた暁には、 俺たちが集めた『遺作』をお前に見せてやる
“スバル”: だから、約束通りページのありかを教えてくれ
“ガーディー”: 『遺作』の場所を口頭でお伝えするのは難しいですな わたくしも皆様に同行いたします
“スバル”: 待て待て! すげぇ危険なんだよ! マジで命の危険があるかもしれねぇ
“エミリア”: ホントにそう
“エミリア”: ページから『異形』が出てきたり、 ページに吸い込まれちゃうことだってあるんだから
“レム”: はい、スバルくんやエミリア様の言う通りです ガーディー様にはアルビスでお待ちいただくのが良いかと
“ガーディー”: はぁ……はぁ…… 『遺作』から出現する特別な魔物! 『遺作』の中への誘(いざな)い!
“ガーディー”: な、なんと美しい! わたくしの命の危険など比べるまでもありません!
“スバル”: ダメだ…… こいつは完全にどうかしてやがる……
“フェネ”: スバル氏、致し方ないでしょう それにガーディー氏のおっしゃることも一理あります
“フェネ”: 氷河都市アルビスを一歩出れば、そこに広がるのは白銀の世界 正確な場所を伝えるのは困難かと
“スバル”: つまり……こんな奴でも同行させるしかねぇってわけだ?
“フェネ”: 左様です いち早くページを回収するためにもやむを得ません
“スバル”: わかった、ガーディー…… 一緒にいこう 急ぎ、外の竜車に乗ってくれ
ナレーター: こうしてガーディーと共に、『禁書』のページがあるという シバレル大氷河に向けて出発したスバルたち
ナレーター: そんなスバルたちを乗せた竜車の外には、 どこまでも続く白い世界が広がっているのだった──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_18

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■18話 タイトル:徒歩移動、そして…… 更新日:2021/10/28

“レム”: 申し訳ありません、スバルくん