Re: Zero Kinsho – Full Game Text

Scenario Tag: scenario_main_p00_c00_01

Scene Name: ダイジェスト01 始まりの終わりと終わりの始まり

“スバル”: ……どうなってんだ?
ナレーター: 菜月昴──ナツキ・スバルは夜のコンビニから出て数歩歩くと いつの間にか異世界に召喚されていた
ナレーター: 訳も分からぬまま辺りをうろついていると、三人組のチンピラに 絡まれてしまう 命の危険を感じるスバルだったが──
???: そこまでよ
“スバル”: !?
ナレーター: そんなスバルの窮地を救ったのは、一人の美しい少女だった
ナレーター: 自分を助けてくれた恩を返すため、スバルは 少女の探し物を手伝うことにする
ナレーター: 途中、自分の探し物そっちのけで迷子の女の子を助け始めてしまう その少女のお人好しぶりに心配と好感を覚えるも
ナレーター: その女の子が街の情報通でもある果物屋の主人の娘だという 幸運にも恵まれ、二人は目的の物があると思われる場所──
ナレーター: 王都ルグニカの外れの貧民街、そこにある盗品蔵へとたどり着く
ナレーター: が、突如としてそこでスバルと少女は 何者かに命を奪われてしまう
ナレーター: スバルが自分の死を自覚し、意識を失った次の瞬間──
“カドモン”: どうしたよ、兄ちゃん 急に呆けた面して
“スバル”: は──?
“カドモン”: だからリンガだよ、リンガ 兄ちゃん、金は持ってんのか?
“スバル”: は──?
ナレーター: スバルは自分がいつの間にか、 見覚えのある果物屋の前に立っていることに気付く
ナレーター: 自分や少女がどうなったのかを調べるスバルは、やがて自分が 何度も死に、そのたびに時間を遡って目を覚ましている事実──
ナレーター: 即ち、自分が『死に戻り』しているということに気付く
ナレーター: それを理解したスバルは何度も『死に戻り』をする中で ふれあった人々を──
ナレーター: 何より、自分を助けてくれたあの少女を救うため 奔走することを決める
ナレーター: そしてついにスバルは盗品蔵で、スバルたちを襲う刺客 『腸狩り』のエルザと激闘を繰り広げ
ナレーター: 偶然出会った騎士『剣聖』ラインハルトの助力もあり なんとか惨劇を回避することに成功する
ナレーター: 安堵する一同 そして、スバルは少女に向けて言った──
“スバル”: 俺の名前はナツキ・スバル! 俺ってば、今まさに君を 凶刃から守り抜いた命の恩人! ここまでオーケー!?
少女: ……おーけー?
“スバル”: よろしいですかの意 ってなわけで…… オー、ケー!?
少女: お、おーけー……
“スバル”: 命の恩人、レスキュー俺 そしてそれに助けられたヒロインが君 そんなら相応の礼があってもいいんじゃないか? ないかな!?
少女: ……わかってるわよ 私にできることなら、って条件つきだけど
“スバル”: なぁらぁ、俺の願いはオンリーワン、一個だけだ そう、俺の願いは──
少女: うん
“スバル”: ──君の名前を教えて欲しい
少女: ……
“スバル”: ……
少女: ふふっ
“エミリア”: エミリア
“スバル”: え……
“エミリア”: 私の名前はエミリア ただのエミリアよ ありがとう、スバル 私を助けてくれて
“スバル”: ────
ナレーター: 何度も命を失い、今回も命を落としかけ、ついにスバルは 少女──エミリアの名を知ることに成功したのだった──

Scenario Tag: scenario_main_p00_c00_02

Scene Name: ダイジェスト02 ナツキ・スバルのリスタート

ナレーター: 盗品蔵でエミリアの名を聞いたスバルが次に目を覚ましたのは 見知らぬ豪華なベッドの上だった
ナレーター: スバルは盗品蔵にてエルザの苦し紛れの一撃を防ぎきれず 深手を負って意識を失ってしまった
ナレーター: その治療のため、スバルはエミリアの庇護者である メイザース領主ロズワールの館へと運ばれていたのだった
ナレーター: そこでスバルは、エミリアが ルグニカ王国の次の王候補であるという事実と
ナレーター: スバル自身が、そんなエミリアの危機を救った 大恩人であるという事実を知らされる
ナレーター: 褒美を与えると言われたスバルは、好意を寄せるエミリアの 助けとなるべく、使用人として雇われることを申し出る
ナレーター: 同じく使用人としてロズワールに仕える双子の少女 ラムとレムに仕事を学びながら充実した日々を過ごすスバル
ナレーター: 自分の手に傷が増えることも一つの勲章のようなものだと 喜ぶスバルだったが、翌朝目を覚ますと──
“スバル”: ……傷が ない
ナレーター: スバルは自分の死を自覚することすらなく、ロズワール邸で 最初に目を覚ました朝まで『死に戻り』していたのだった
ナレーター: 自分の死の真相を突き止めるため スバルは再び使用人となるも、今度は何者かに殺されてしまう
ナレーター: 襲撃者がいることを確信したスバルは、今度は使用人ではなく 食客の身分を求め、襲撃者の情報を集めるために奔走する
ナレーター: そして、屋敷を後にしたスバルの前に現れたのは──
???: ……仕方ありませんね
“スバル”: !!
???: 何も気付かれないまま、終わってもらえるのが一番だったんですが
“スバル”: ……嘘だろ
“スバル”: レム……
ナレーター: スバルの命を狙う刺客は 共に使用人として働いていたレムであった
ナレーター: スバルの素性を怪しんだレムは 自分の意思でスバルを殺そうとしていたのだった
ナレーター: そのまま『死に戻り』したスバルは、ロズワール邸に存在する 禁書庫、その司書であるベアトリスに自分を守るよう懇願する
ナレーター: スバルの願いを聞き入れたベアトリスはスバルを守ると約束 スバルは自身の死を回避することに成功する
ナレーター: が、安堵するも束の間、今度はスバルの代わりになるかのように レムが死んだ状態で発見されてしまう
ナレーター: 『死に戻り』に関する事情を説明出来ないスバルは レムの死の理由を詰問されるも何も言えずその場から逃げ出した
ナレーター: その場から離れることには成功したスバルだったが やがてスバルを妹の仇だと思い込んだラムに追い詰められる
ナレーター: が、スバルはそこで唐突に思いだした 死に怯えて眠るスバルの手を、握ってくれていた存在のことを
ナレーター: そして、スバルは確信する それはラムとレム、その二人だったことを
“ラム”: やっと見つけた もう逃がさない
ナレーター: ラムと対峙する直前に、スバルはその覚悟を決めた もう一度『死に戻り』、悲劇を回避するという覚悟を
“ラム”: やっと観念したってこと?
“スバル”: 観念とは少し違うな 言うなれば……覚悟が決まった、ってとこか
“スバル”: わかんねぇことだらけなのを知っていこうと そう思ったよ
“ラム”: 今さら何を! レムはもう死んでしまったの! あなたにラムとレムの、何がわかるっていうの!?
“スバル”: そうだな 俺は肝心なことは何にもしらないまんまだ だけど お前らだって知らないだろうが
“ラム”: 何を……
“スバル”: 俺が! お前らを! 大好きだってことをだよ!
ナレーター: そう叫んだスバルは、すぐさま崖に向かって駆け出し、 中空にその身を投げた
“スバル”: 俺にしかできないことだ!
“スバル”: 絶対、助けてやる──!
ナレーター: すぐさまスバルは地面へと激突し、その意識はかき消えた──

Scenario Tag: scenario_main_p00_c00_03

Scene Name: ダイジェスト03 鬼がかったやり方

ナレーター: 『死に戻り』に成功したスバルは惨劇を回避するために行動を始め 自分やレムの死に呪術が関係しているであろうことを知る
ナレーター: レムを初めとしたロズワール邸の面々の信用を勝ち取らなければ 殺されてしまうため、スバルは使用人として雇われることを決め
ナレーター: 『死に戻り』する前の経験を活かしながら 使用人の仕事を全力で行っていった
ナレーター: しかし、精神的な重圧を受け スバルの精神は見る見るうちにすり減ってしまう
ナレーター: そんなスバルを見かねたエミリアは スバルを呼びつけ、無理矢理スバルに膝枕をした
ナレーター: 困惑するスバルに対し、エミリアは静かに語りかける──
“エミリア”: 大変、だったね
“スバル”: !!
“スバル”: 大変……だった…… すげぇ辛かった……すげぇ恐かった めちゃくちゃ悲しかった 死ぬかと思うくらい痛かったんだよ……
“エミリア”: うん
“スバル”: 俺頑張ったんだよ 頑張ってたんだよ! 必死だった  必死で色々、全部良くしようって頑張ったんだよ……!
“スバル”: ホントだ ホントのホントに  いままでこんなに頑張った事なんてなかったくらい!
“エミリア”: うん、わかってる
“スバル”: 好きだったからさぁ、この場所が……  大事だと思えてたからさぁ、この場所が……!
ナレーター: 泣きじゃくりながらスバルは感情を吐露し、 エミリアはそれを静かに受け止めた
ナレーター: 元気を取り戻したスバルは、呪術師が屋敷の外部 つまりアーラム村に潜伏していると見抜き
ナレーター: ラムとレムと共にアーラム村へ買い出しへ向かう
ナレーター: 帰宅後、スバルの読み通り、スバルには呪いがかけられていた ベアトリスは驚きながらもスバルの呪いを解くが
ナレーター: その呪いが村の子どもたちが 可愛がっていた犬に関係していることを知る
ナレーター: 子どもたちの身を案じたスバルは、すぐさまレムと共に アーラム村へ駆けつけると、スバルの危惧は的中していた
ナレーター: 子どもたちの姿が消えたと聞き、スバルはレムと共に 魔獣の棲み家である森の中へと向かう
ナレーター: スバルはなんとか子どもたちを助け出すことに成功するが その中でスバルはレムを庇い、魔獣に深手を負わされてしまう
ナレーター: なんとか一命を取り留めたスバルだったが 村に駆けつけたベアトリスから
ナレーター: スバルがベアトリスにも解けない呪いを魔獣から受けたこと それを解くためにレムが単身森へ向かったことを知らされる
ナレーター: レムを救うため、スバルはラムと共に森へ入るも スバルの前に現れたレムは暴走しており、正気を失っていた
ナレーター: スバルにも容赦なく攻撃をするレム スバルは消耗したラムから レムの額の角に強烈な一撃を加えれば正気に戻ると聞き──
“スバル”: 笑えレム! 今日の俺は鬼より
“スバル”: 鬼がかってんぜ!
ナレーター: スバルの捨て身の一撃により、レムは正気に戻った だが、魔獣の数は多く、スバルたちは追い詰められていく
ナレーター: 全滅を避けるため、スバルは自らを囮に ラムとレムを逃がすことを画策
ナレーター: スバルはついに、魔獣ウルガルムの親玉と対峙した──

Scenario Tag: scenario_main_p00_c00_04

Scene Name: ダイジェスト04 レム

ナレーター: これは、スバルがウルガルムを退けた後に気を失い 次に目覚めた場面の話である──
“スバル”: ──ん
“レム”: 起きて、くれましたか……
“レム”: スバルくん、レムは、レムは……
“スバル”: イイってことよ、気にすんな…… それよりみんなは?
“レム”: だいじょうぶです でもまたスバルくんが一番ひどい目に……
“スバル”: みんな無事ならそれで万事OKさ 俺もすぐに元に戻るって
ナレーター: スバルは自分が気を失った後、自分の呪いが解かれたことを知った
“レム”: ごめんなさい、スバル君
“スバル”: おいおい、頭を上げろよ、レム 体の調子、どっこも悪くねぇよ
“スバル”: 落ち着いてるように見えて、レムって実は全然 冷静でも落ち着いてもないよね
“レム”: レムは非力で、非才で、鬼族の落ちこぼれです 
“レム”: だからどうしても姉様に届かない レムは姉様の代替品、出来損ないなんです……
“レム”: どうして、レムの方に角が残ってしまったんですか? どうして、姉様の方の角が残らなかったんですか?
“レム”: どうして、姉様とレムは、双子だったんですか?
“スバル”: ……
“レム”: ご、ごめんなさい おかしなことを言ってしまいました 忘れてください
ナレーター: 思わず口走ってしまったレムの想いを聞き スバルはレムに語りかける
“スバル”: お前がいなきゃ俺は今頃きっと犬にかじられてお陀仏だ お前がいたおかげで助かりました 今もこうして生きてます
“スバル”: 姉様だけじゃなくてお前のおかげだ
“レム”: 本当の姉様ならもっとうまく──
“スバル”: かもしれなかったな でもいてくれたのは、お前だ レムがいてくれてよかったよ ありがとう
“レム”: レムは…… レムは、姉様の代用品だって、ずっと──
“スバル”: そんな寂しい自己定義やめとけよ 角無くした理由は聞かないから わからねぇ わかったような口を利かせてもらうと、だ
“スバル”: 角のないラムの角の代わりを、レムがやればいいんだよ 二人で仲良く『鬼』ってやつをやったらいいじゃん
“レム”: あう……
“スバル”: それになぁ 代替品とか言ってっけど それこそレムの替わりなんていないぜ?
“レム”: ……でも
ナレーター: 戸惑うレムに対し、さらにスバルは微笑みながら語りかけていく
“スバル”: 俺の故郷じゃ、『来年の話をすると鬼が笑う』っつーんだよ だからさ
“スバル”: 笑えよ、レム しけた面してないで 笑え 笑いながら未来の話をしよう
ナレーター: 過去ではなく未来の話をしようと提案するスバルに対し レムはおずおずと切り出す
“レム”: レムは、とっても弱いです ですからきっと、寄りかかってしまいますよ?
“スバル”: いいんじゃん? お互いに寄りかかって進めばいいよ 笑いながら肩組んで、明日って未来の話をしよう
“スバル”: 俺、鬼と笑いながら来年の話をするの、夢だったんだよ
ナレーター: そう言ったスバルに対し、レムは微笑みながら返した
“レム”: 鬼がかってますね
“スバル”: だろ?
ナレーター: そう言って、二人は笑い合った
ナレーター: レムとの、ささやかで、それでいてとても大切な会話は スバルに何日かぶりの安堵を与えた
ナレーター: しかし、それも束の間 やがて部屋に入ってきた ロズワールやベアトリス、さらには精霊のフェネが現れ
ナレーター: スバルは『禁書』をめぐる異変に 巻きこまれていくことになるのだった──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_00

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■プロローグ 『禁書』の精霊

ナレーター: ~時はさかのぼり、ウルガルム戦前日の夕方~
ナレーター: スバルは、広大な館の一室で金髪の巻毛の美しい少女──いや、 幼女といってもよい年頃のベアトリスと向かい合っていた
ナレーター: ロズワール邸で繰り返す『死に戻り』──
ナレーター: 越えられない一夜を越えるために突き止めた、自らの死因 それはスバルが受けた、何者かによる『呪い』であった
ナレーター: その解呪のため スバルは、禁書庫を訪れたのだった
ナレーター: あどけない姿に似合わず、 ベアトリスはここの司書なのだ
ナレーター: スバルと向かい合ったベアトリスの右手が 白く光り始めていた
“ベアトリス”: 今から呪術の術式を破壊するかしら
“ベアトリス”: 呪術師が直接触れた場所が術式の刻まれた場所だから、 参考にするのよ
ナレーター: 白く光る右手でスバルの額に触れ、 ベアトリスは解呪を始める
“スバル”: 布石は打ってあるぜ、ご安心!
“スバル”: 角刈り青年団長と人の尻に触ってくる若返りババア、
“スバル”: 偽村長のむらおさと 容疑者たちに触らせた箇所はバラけさせてある!
ナレーター: 直後、スバルは、自らの身体に訪れた異変に気付く 左手の甲から立ち上る、明らかな違和感に
“スバル”: 黒い……モヤ!?
“ベアトリス”: 忌まわしいったらないかしら
ナレーター: 次の瞬間、ベアトリスは、スバルの手の甲から立ち上るモヤを 握りつぶすようにかき消してしまった
“ベアトリス”: 終わったのよ、これでもうお前は平気かしら
ナレーター: 身体から呪いが消え去った安堵はすぐに消え去り スバルの心には得も言われぬ焦りが去来していた
“スバル”: なぁ、ベア子……
“スバル”: 今のモヤが出てきた場所が…… 呪術師が触った場所でいいんだよな?
ナレーター: スバルをまっすぐ見つめたまま、 ベアトリスはゆっくりとうなずく
“スバル”: (まさかあの子犬が!?)
ナレーター: 村の子供たちに可愛がられていた愛らしい子犬 それこそがスバルの手を噛んで呪いをかけた元凶だった
“スバル”: 村に行かねぇと! どこまでもどこまでも、ふざけやがってぇぇぇぇえ!
ナレーター: 腹の底から湧き上がる激しい怒りにまかせて、 スバルが禁書庫を飛び出そうとした瞬間──
“スバル”: おわぁあああ!!
ナレーター: スバルは『何か』につまずいた
ナレーター: 体勢を崩したスバルは、そのまま三回転がって、 廊下の壁に激突した
“スバル”: ってぇ…… おいベア子、部屋の片付けくらいちゃんと! ……ありゃ?
ナレーター: 情けなく転がったスバルの足元には、一冊の本
“スバル”: なんだこれ…… すげぇ気味悪い絵ばっか載ってんな……悪魔辞典とかか?
“スバル”: ……の割に、イ文字で書いてんだな 俺でもギリ読めるけど……
“スバル”: ここに落ちてるってことは、どう考えても『禁書』だよな……? 明らかに年代物だし……
“スバル”: もしかして、これにつまずいたのか!?
“スバル”: ベア子! 床に本転がしとくなって! いろんな意味で危ないだろ!
ナレーター: 勢いよく開けた扉の向こうは、何の変哲もない客室 禁書庫はすでに扉渡りで、別の場所に移動したあとだった
“スバル”: ってかこれ、禁書庫から出たらマズイ代物じゃね!? 仮にも『禁書』だよな!?
“スバル”: どうすっかなこれ……
“スバル”: ぺらぺらと『禁書』をめくるスバルは、最後のページに たどりつく
“スバル”: 「!?」
ナレーター: 強烈な違和感、あるいはめまい…… 得も言われぬ衝動で、スバルは『禁書』を勢いよく閉じた
“スバル”: ……持っとくか、一応
“スバル”: ここに置いといて誰かに見つかりでもしたら ベア子の奴がハンパなく怒られちまうだろうしな……
“スバル”: 今はとにかく村に急がねぇと 後でこっそり返しとけば大丈夫だろ!
ナレーター: スバルは、懐に忍ばせるには大きすぎる『禁書』を 無理やり上着の内側に入れる
“スバル”: うん、この分厚さ もし俺が銃で撃たれても、これのお陰で助かる展開だな!
“スバル”: ……いや、銃とかあんのかなこの世界 どちらにしてもそれは勘弁願いたい
“スバル”: あとはこれが呪いのアイテムじゃないことを願うのみだな
ナレーター: ~時はすすみ、ウルガルム戦翌日~
“スバル”: ──ん
“レム”: 起きて、くれましたか……
ナレーター: ロズワール邸で目覚めたスバルのそばには 不安そうな顔のレムが座っていた
ナレーター: 昨日魔獣の森に単身乗り込み、スバルのために戦ってくれた少女 そして、その姉のラムとスバルで今度は彼女を救い出したのだ
“レム”: スバルくん、レムは、レムは……
“スバル”: イイってことよ、気にすんな…… それよりみんなは?
“レム”: だいじょうぶです でもまたスバルくんが一番ひどい目に……
“スバル”: みんな無事ならそれで万事OKさ 俺もすぐに元に戻るって
ナレーター: レムとの、ささやかで、それでいてとても大切な会話は スバルに何日かぶりの安堵を与えた
ナレーター: しかし、それも束の間──
“ロズワール”: おやおや、目覚めたようだーぁね
“スバル”: レムの次は、ロズワールかよ…… 一番大事な人がすっ飛ばされてるよね?
ナレーター: 奇妙な道化の化粧をした男ロズワール── その姿にそぐわず、この館の主の大貴族にして宮廷の筆頭魔術師だ
“エミリア”: よかった、スバル…… どこか痛かったりしない? 大丈夫?
“スバル”: エミリアたん!
ナレーター: 彼女はエミリア、透き通るような銀髪の美しいハーフエルフ スバルが王都ルグニカで、何度も命を落としながらも救った少女だ
ナレーター: その美しい顔を曇らせて ベッドに横たわるスバルを紫紺の瞳で見つめている
“スバル”: レムと話してたお陰で眠気も飛んで 頭スッキリ快調だ!
“ロズワール”: それはよかった 何よりだーぁよ
“ロズワール”: そして、実によくやってくれたね、スバルくん
“ロズワール”: エミリア様の護衛だけでなく まさか領地の危機まで救ってくれるとはねーぇ
“ロズワール”: このお礼はたっぷり……と言いたいところなんだけど
“ベアトリス”: とんでもないことをしてくれたのかしら
ナレーター: ロズワールの背後から、ひょっこりと顔を出したのは ベアトリスだった
“スバル”: な、なんだよベア子、いたのかよ…… って、なんで睨んでんだ!?
“ベアトリス”: これを見るのよ
ナレーター: 静かな怒りをたたえたベアトリスは、スバルの目の前に 一冊の本を突き出した
“スバル”: あ、それ!
“ベアトリス”: やっぱりお前が持ち出したのかしら!
“スバル”: ちが……あれは不可抗力だ! お前が部屋を片付けてねぇからだぞ!!
“ベアトリス”: ふざけたことを言ってる場合じゃないのよ
“スバル”: あれ……ページが、なくなってる……?
ナレーター: ベアトリスが広げて見せた『禁書』には、 ページがほとんど残っていない
ナレーター: 表紙── 現代風にいうなら、ほぼハードカバーだけの状態だ
“スバル”: もしかして、ウルガルムが食っちまったとか……?
???: いいえ、あまりに愚かな妄想ですね
“スバル”: お前は……昨日の!!
ナレーター: 巨大ウルガルムの一撃で命を落としそうな刹那、 スバルがなりゆきで力を借りたしゃべる動物が割り込んできた
謎の動物: 昨日、フェネが『禁書』より解き放たれた瞬間に ページは何処かへ散逸してしまいました
“スバル”: 待て待て待て待て! なんか自然に会話に参加してるけど、お前誰だよ!
謎の動物: 共に死線をくぐり抜けた盟友を捕まえてお前誰だよとは なるほどスバル氏には人の心がないのですね
“スバル”: 丁寧だけどめっちゃディスってくんな!? 感謝はしてるけど自己紹介省略したのお前だろ!
“スバル”: ……で、フェネ、って言ったよな それがお前の名前か?
“フェネ”: 左様です 我が名はフェネ
“フェネ”: そちらの『禁書』に封じられていた精霊です 以後お見知りおきを
“ベアトリス”: 呑気に自己紹介してる場合じゃないかしら とにかく事態は最悪なのよ
“ロズワール”: そうだーぁね 聞いた話から判断するならば 昨日の騒動は『禁書』のページのせいみたいだーぁからね
“スバル”: どういうことだ……?
“スバル”: 俺が呪われたのは、『禁書』が外に出る前だ それだと辻褄があわねぇだろ!
“ロズワール”: 元々起きていた問題が、より深刻になった…… そういうことだーぁね
“レム”: 昨日、スバルくんが戦ったのは…… およそウルガルムと呼べるものではありませんでした
“レム”: 姉様の話だと、それ以前に遭遇したウルガルムも 今考えてみると様子が変だったと……
“スバル”: あの変身は、奴の力じゃなくて、 禁書のせいだったっていうのか……!?
“フェネ”: はい 禁書の影響で、ウルガルムが異形の何かに 変質してしまったと推察します
“スバル”: あの『禁書』、そんな代物なのか!?
“フェネ”: 断言はできませんが 状況からそう判断するべきでしょう
“スバル”: ……ん? 断言できないって……
“ベアトリス”: とにかく、一日も早く失われたページを 集める必要があるのかしら
“エミリア”: そうね…… でも、ページってどうやって探したらいいのかしら……
“スバル”: ちょっと待ってエミリアたん なんでエミリアたんが探す流れになってんの!?
“エミリア”: この屋敷で起こった問題だもの、当然でしょう?
“スバル”: いやいや! どう考えても、俺の過失だろ! 俺が咎められるのはわかるけど、それは違うって!
“ベアトリス”: 過失過失って見苦しいのよ
“ベアトリス”: とっととあの『禁書』を持ち出した思惑をしゃべるかしら
“スバル”: だから勘違いだって! 禁書庫から出るときに俺がつまずいたの見たろ!?
“スバル”: そしたらそれが床に転がってて…… すぐに返そうとしたけど、お前はもういなかったんだ
“スバル”: それに、村のことだって一刻を争う状態だった だから俺はあとで返そうと思って……
“ベアトリス”: じゃあ、村で会ったときに返してくれればよかったのよ
“スバル”: あ……
“ベアトリス”: 結局忘れてたかしら 呆れてものも言えないのよ
“スバル”: いや待てって! 忘れてたとかそういうんじゃなくて!
“ベアトリス”: じゃあ何なのかしら
“スバル”: いや……なんでだ? なんで何も覚えてないんだ……
“スバル”: あんな分厚いもん、いくら切羽詰まってたからって 忘れるか普通……
“ベアトリス”: つまり、あの時点ですでに落としていた可能性が高いのよ お前が部屋から持ち出した時点で、もう手遅れだったかしら
“エミリア”: スバルわかった? もうスバルだけの問題じゃないの
“エミリア”: 早くしないと大変なことになっちゃう みんなで力を合わせないと
“スバル”: それはそうかもしれないけど ここは責任取って俺が探さねぇと
“ベアトリス”: 当然なのよ わかってるなら今すぐいくかしら
“レム”: ベアトリス様! スバルくんは、まだ動ける状態じゃありません!
“エミリア”: そうよスバル! スバルは休んでて!
“ベアトリス”: そんなの知らないのよ 自業自得なんだから、ベティーには関係ないかしら
“ロズワール”: はいはい、スバルくんには当然働いてもらうとしてーぇだ 今は休養が必要なのもまた事実
“ロズワール”: とりあえずは、皆、一旦戻ろうじゃーぁないか 今日くらいは、功労者にしっかり休んでもらわないとねーぇ
“ベアトリス”: どうせ期待してないのよ 眠りこけて、そのまま目覚めなければいいかしら
“スバル”: 縁起でもないこと言わないでくれる!?
“エミリア”: ごめんねスバル、明日またゆっくり話しましょう?
“ロズワール”: というわけでスバルくん、しっかり休んでくれたまーぇ フェネくんと言ったね、ちょっといいかーぁな?
“フェネ”: 面を貸せ、という理解でよろしいでしょうか
“ロズワール”: 君、面白い子だーぁね まあ、そういうこと、少し話がしたい
“フェネ”: 承知しました 拳で語らいましょう
“スバル”: それ、面貸せに引っ張られ過ぎだから!?
“エミリア”: じゃあね、スバル ゆっくり休むのよ またあとでね!
“レム”: スバルくん、何かあればすぐに呼んでください それではレムも失礼します
ナレーター: にぎやかな一同が去り、客室に静けさが戻る
“スバル”: ……
“スバル”: 何やってんだ、俺は……
“スバル”: エミリアにまた迷惑かけちまってる……
“スバル”: それに、ベアトリスのあの剣幕…… あれって相当やばいってことなんだよな……?
“スバル”: 明らかに、気、遣わせちまったよな……? それとも、頼りにならねぇ俺には首を突っ込んでほしくないとか?
“スバル”: くそっ……情けねぇ…… あの野郎をぶっ飛ばしたのだって、結局フェネのお陰だしな……
“スバル”: とにかく、早く動けるようになって ページ探しを始めねぇと
“スバル”: エミリアに、これ以上迷惑かけるわけにはいかねぇもんな!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_01

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■序章01 ロズワール家の責任

ナレーター: スバルの休養が一日で済むはずもなく…… あの夜からすでに数日が経過していた
“スバル”: はぁー……
“ラム”: 随分大きなため息ね ラムとの買い出しはそんなに刺激がないのかしら
ナレーター: 彼女はラム、レムの双子の姉で、 レムと一緒に館のメイドを務めている
ナレーター: しかしもっぱら働くのはレムで、この姉様はサポート要員だ なのにレムは絶大な信頼を、このラムに寄せている
“ラム”: バルスに飽きられるなんて心外だわ
“スバル”: そんなこと言ってないよね!? 『禁書』のこと考えてたんだ 気になってんだよ、ずっと
“ラム”: 考えてもムダよ バルスが悩んだところで問題は解決しないわ
“スバル”: んなことはわかってるけども、考えちまうんだ 俺のせいなわけだし
“ラム”: バルスは怪我の治療に専念すること ロズワール様とエミリア様からの命令でしょ
“スバル”: 魔獣と戦うってならまだしも 探し物をするぐらい、別にいいんじゃねぇかな?
“ラム”: ロズワール様が直々に動いてくださっているのよ バルスの出番なんてないわ
“スバル”: わーってるよ どうせ俺は愉快なラジオ体操係ですよ
“ラム”: 誰も頼んではいないみたいだけれど
“スバル”: うるせぇ! 村人のみんなには求められてるんだよ!
“ラム”: そう、なら身体がよくなるまで しっかりラジオ体操係に専念することね
“スバル”: そうはいくか!
“スバル”: 探しものは、人手があったほうがいいだろ?
“ラム”: 確かに一人で探すよりは、いいかもしれないわね
“スバル”: だったら、な? 俺も参加した方がよくない?
“ラム”: それはロズワール様が決めることよ
“ラム”: 『禁書』の問題が、万が一にでも外に漏れたら大変なの その責任は、管理者であるメイザース家のものとなるわ
“スバル”: ……ロズワールが指揮を取るのは当然ってことか
“ラム”: 本当にバルスったらとんでもないことをしてくれたわね
“ラム”: その首がつながっていることを幸運に思いなさい
“スバル”: 穏やかじゃねぇな! って、何も言い返せねぇけど……
“スバル”: ……ん? メイザース家の責任……?
“スバル”: それって、まんまエミリアが 王選で不利になるってことだよな……?
“ラム”: 今頃気付いたの? バルスは本当にマヌケね
“スバル”: なんてことだ…… そんなの最悪じゃねぇか……!
“ラム”: ……
“スバル”: やっぱり俺も探さないとダメだ! 一秒でも早く、『禁書』のページを集めねぇと!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_02

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■序章02 王都の異変

ナレーター: スバルとラムが屋敷に戻ると、玄関でレムが待ち構えていた どうやらロズワールがスバルの帰りを待っていたらしい
“ロズワール”: やあスバルくん 今日のラジオ体操はどうだったかーぁな
“スバル”: 好調快調でノープロブレムだったよ みんなすっかり元気だぜ
“スバル”: で、大事な話ってのは、なんだ
“ロズワール”: 話が早いのは嫌いじゃーぁないよ 単刀直入に言おう
“ロズワール”: ……王都で、何やら問題が起こっているようでね
“スバル”: まさか……『禁書』、なのか?
“ロズワール”: おおかた、そうじゃないかと睨んでいるよ
“エミリア”: すぐに向かわないと 王都に魔獣が出たりしたら大変だわ
“スバル”: ああ、その通りだ! すぐに向かおう!
“エミリア”: スバル……
“スバル”: なんだよ、エミリアたん、その憐れむような目は…… まさかお留守番とか言わないよね!?
“エミリア”: スバルを仲間外れにしたいわけじゃないの
“エミリア”: でもやっぱり今はダメ 身体を治すのに専念しなきゃ
“スバル”: そんなのってねぇよ、エミリアたん……
“スバル”: 絶対無茶はしない! 情報収集とかさ、そういうことだけにするから!
“エミリア”: スバルは、そう言って無茶するもの いい子だから、これ以上心配させないで
“スバル”: エミリアたん! 俺は──
“フェネ”: 痴話喧嘩中、失礼いたします
“スバル”: フェネ? いつからいたんだ?
“フェネ”: なるほど、スバル氏にとってフェネの存在感は皆無だと それとも典型的かつ陰湿なイジメの類でしょうか
“スバル”: そこまで言ってねぇよ!
“フェネ”: スバル氏、今回の件で最大の当事者は 一体誰だと認識されていますか?
“スバル”: え、そりゃもちろん被害を被るロズワールとエミリア、 しでかした俺だろうな
“フェネ”: いいえ フェネです
“フェネ”: ……お忘れですか フェネは、『禁書』の中から馳せ参じたのですよ
“スバル”: 武士みてぇな言い方すんな
“スバル”: ……けど、確かにそうだった 悪い
“スバル”: じゃあお前は、この問題を解決したいと思ってる ってことでいいのか?
“フェネ”: 左様です フェネにとって『禁書』のページを集めることは使命です
“フェネ”: よってエミリア女史 スバル氏の参加は必須条件とさせていただきたく
“エミリア”: なんで? 今の流れでどうしてそういう話になっちゃうの?
“フェネ”: スバル氏は、フェネの契約者に他ならないからです
“スバル”: ……え?
“エミリア”: そうなの!? スバル、いつの間に契約してたの!?
“スバル”: いや! 違うんだエミリアたん、これは決して浮気とかじゃ…… って、いやいや! 契約ってなんだよ!
“フェネ”: 加勢した際に締結しましたが
“スバル”: そんな覚えはねぇぞ! 助けが必要かって言われて、頼んだだけだ
“フェネ”: 契約成立です
“スバル”: ふざけんな! もはや詐欺だろ!
“フェネ”: 契約書の開示は求められませんでしたので
“スバル”: あの状況で言えるかよ! ってか言われなくても出せよそんなの!
“ロズワール”: 契約とあっては仕方がないねーぇ エミリア様、スバルくんの同行について許可を
“エミリア”: ……わかったわ、スバルの同行を許可します そのかわり、絶対絶対、無理しちゃダメなんだからね!
“スバル”: お、おう! あれ? けど、あっさり決まっちまったような……
“エミリア”: あっさりじゃありません スバルは、精霊と契約したことの意味、わかってないの?
“スバル”: どういうことだよエミリアたん…… なんか言い方怖いんだけど!?
“フェネ”: 契約の対価として、スバル氏には 魂が擦り切れるまでフェネのために働いてもらいます
“スバル”: 悪魔かよ!!!
“フェネ”: 失礼な、精霊です
“エミリア”: あはは…… フェネの言ってることは冗談だから安心して
“スバル”: だよな…… 頼むぜフェネ、命に関わることはマズいって
“エミリア”: そんな契約だったら、さすがに私もロズワールも 止めてるわ でも対価が必要なのは本当
“スバル”: そうなの!? お前、不当契約の上に金まで取る気か!?
“フェネ”: どこまでもフェネを貶めたいようですが そこまでは当然求めていません
“エミリア”: フェネはスバルとの契約の対価として 「同行」を求めているのよ
“スバル”: 同行……? どゆこと?
“フェネ”: 我々の利害は“『禁書』のページを集めること”で 一致しています
“フェネ”: ですから、事の元凶であり一番責任のあるスバル氏と 常に帯同することをフェネは求めます
“フェネ”: つつがなくページ集めが進むよう 誠心誠意働いてほしいと訴える権利がフェネにはあるのです
“スバル”: ぐうの音もでねぇ…… わかった、その『対価』は飲むよ
“ロズワール”: さーて、では話がまとまったところぉーで、と
“ロズワール”: レム、いるんだろう 入ってきなさい
“レム”: はい、失礼します
“ロズワール”: レムにもきてもらうよ 道中の護衛を頼む
“レム”: はい、お任せください
“ロズワール”: 話もまとまったところーぉで、早速準備に入ろう 出発は明日 いいね?
“スバル”: おうよ! もちろんオッケーだ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_03

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■序章03 禁書と魔獣

ナレーター: 翌朝早くに、スバル、エミリア、レム、フェネらは 王都へと出発した
“スバル”: ロズワールはもう着いちまってるんだろうな
“エミリア”: ええ、先に行って今頃色々と調べてくれているはずよ
“スバル”: その勢いでぱぱーっと解決してくれたら楽なんだけど、 他力本願ってわけにもいかないよな
“フェネ”: 左様です、スバル氏には一生を棒に振って 贖罪していただかねばなりません
“スバル”: 悪かった! 俺のせいだ! それは認めるけども、さすがに一生は言いすぎだ!
“フェネ”: ほう、この期に及んで自らしでかしたことの 重みを理解していないと申しますか?
“スバル”: そういうわけじゃねぇけど、罪の重さについては 正直想像しきれてないってのが本音だ
“フェネ”: スバル氏が一生フェネの奴隷として生涯を終えても 足りないほどです
“スバル”: そんなに!? それ、わからないのをいいことにぼったりしてない?
“スバル”: まぁ、とにかくだ、こんなことはスカッとバシッとすぐに解決して エミリアたんとの正規ルートに戻らねぇと!
“エミリア”: よくわからないけど、スバルの気合は伝わったわ
“スバル”: 俺のトゥルーエンドはまだまだ先なんだ! こんなとこで足踏みしてる場合じゃねぇ!
“フェネ”: 非攻略対象、という可能性も拭えませんからね
“スバル”: どこに正ヒロインが攻略できないゲームがあんだよ! ってかその前に、なんでお前が話についてこれてるんだ!?
“フェネ”: 話の内容から類推して発言しただけです フェネは察しがよくかつ頭脳明晰なので
“スバル”: え、お前って自画自賛キャラだったの? どこぞの姉様と被るからやめない?
“レム”: みなさん! 止まります、申し訳ありません!!
ナレーター: 御車台のレムが声を張り上げると同時に 軽快に疾走していた竜車が突然停止する
“スバル”: レム! どうした!!
“レム”: みなさん、そこにいてください ……魔獣です
“エミリア”: そんな! この平原で昼間に、 魔獣に遭遇したことなんて一度もなかったのに……
“レム”: ご安心ください レムがすぐに片付けます
“フェネ”: 残念ながらレム女史だけに委任するわけにはまいりません スバル氏、前へ
“スバル”: 俺が!? いや、ここはレムに任せる場面じゃ……
“フェネ”: 『禁書』です
“スバル”: ……!?
“フェネ”: 魔獣からページの反応があります ここに魔獣がいることの証左です
“スバル”: そうとあっちゃあ、出ねぇわけにはいかねぇな! フェネ、行けるか!
“フェネ”: フェネの呼びかけで出撃の必要性を理解したのにも関わらず まるで戦う気満々だったかのような変わり身、さすがです
“スバル”: 嫌味言ってる場合じゃないよね!?
“エミリア”: スバル、急ぎましょう 王都がすごーく心配
“スバル”: そうだな、エミリアたん さくっと片付けちまおう!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_04

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■序章04 膨張する頁

“スバル”: てっきり魔獣がページを食っちまったとか、 そういうことかと思ったけど……
“エミリア”: 身体からは何も出てこなかったわね
“フェネ”: ですが、魔獣がページの影響を受けていることは 確定的です
“スバル”: さっきから当たり前みたいに言ってるけど フェネは『禁書』の反応を察知できるってことでいいのか?
“フェネ”: はい、どうやらそのようです
“スバル”: 煮え切らねぇ返しだな……
“フェネ”: 動物を例に取れば、本能的に、といった感覚でしょうか
“スバル”: とりあえずそれで納得しとく お前がここで嘘つくメリットもねぇしな
“フェネ”: ……
“エミリア”: フェネ、その気配はこっちの方角であってるのよね? 街道から外れちゃったけど……
“フェネ”: 左様です 気配がどんどん、濃厚になってきています
“レム”: ここからは、降りて進んだほうがよさそうです 竜車で進むには、道が狭すぎます
“スバル”: 森の中ってか なんだか誘い込まれた感じがして嫌な感じだな
“エミリア”: でも行くしかない……
“スバル”: ああ、放っておけないな
ナレーター: 一行は、街道外れの小さな森に足を踏み入れた フェネを先頭に、奥へと進んでいく……
“レム”: やけに、静かですね
“エミリア”: 本当ね 虫も動物もいないみたいな……
“スバル”: おい……ありゃ何だ!?
ナレーター: 空中をひらひらと浮かぶように舞う『禁書』のページ だがそれは、スバルたちの思っている姿とは違って……
“スバル”: でかくね!? いや、膨らんでる!?
“レム”: 魔獣を……吸い込んでる……
ナレーター: 遥かにサイズが肥大化した『禁書』のページは 亜空間へ続くかのような渦を生み出している
“スバル”: 吸い込んでる、っていうか…… 食ってる、みてぇだな……
“フェネ”: 構えてください 何かきます!!
“エミリア”: 嘘……渦の向こうから、何か……
異形のモノ: がぁぁぁぁあああああああああ!!!!!
“スバル”: おいおい、俺が森でやりあったのとなんか似てるぞ!?
“フェネ”: ウルガルムが『禁書』の影響を受けていた証左、です
“スバル”: 魔獣を食うわ、なんか生み出すわ…… 頭がおっつかねぇよ!
“レム”: ここはレムが出ます! みなさん、援護をお願いします!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c00_05

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX ■エピローグ もりのフェンルー

ナレーター: 鎖が唸るようにしなり、鉄球が異形の存在めがけ 一直線に飛んでいく
“レム”: ──これで終わりです!!!!
異形のモノ: ぐぎゃぁぁぁぁあああああああああ!!!
ナレーター: レムの渾身の一撃をまともに食らい、 異形の存在は砕け散り、その肉体が霧散する
“スバル”: ははは……すげぇ威力…… ないはずの傷口がうずくぜ……
“レム”: スバルくん、エミリア様、お怪我はありませんか?
“スバル”: お陰様で! エミリアたんも大丈夫だよな?
“エミリア”: ええ、レムもご苦労さま
“スバル”: あれ、フェネ?
ナレーター: フェネは虚空を見上げていた つられて視線を向けると、『禁書』のページがひらひら舞っていた
ナレーター: 木の葉のように落ちてきたページを フェネはすかさず掴むとふーっと息を吹きかけた
ナレーター: 真っ白なページは、青白く光りだし──
ナレーター: 霧の如く散った異形の存在だったものは、 その光に吸い込まれた
ナレーター: 次の瞬間、白紙のページに、おどろおどろしい絵と イ文字が浮かび上がる
“スバル”: 俺が見たページ!?
“フェネ”: 静かに、集中力が乱れます
“スバル”: 精霊にも集中とかあるのな……
ナレーター: 思わず口を挟んでしまったスバルを無視して フェネは『禁書』を開く
ナレーター: 光り輝くページは、吸い込まれるように 『禁書』に綴じられた──
ナレーター: フェネが『禁書』を閉じる、パタン、という音で 静寂は終りを迎える
“スバル”: 終わった……んだよな?
“フェネ”: はい、彼の存在は、再び『禁書』へ綴じられました
“エミリア”: つまり…… あれは、『禁書』のページから飛び出した存在だったってこと?
“フェネ”: そう推察されます
“スバル”: あのさ…… ちょっと聞いてもいいか?
“フェネ”: なんでしょう、スバル氏 言いたいことは推考できますが、先をどうぞ
“スバル”: お前が『禁書』から出てきたのは、目撃者がいるから確かだし ページを集めなきゃっていうのも納得いくんだが……
“スバル”: お前、もしかして『禁書』のこと、何も知らないんじゃないか?
“フェネ”: どうして、そう推理するのでしょうか
“スバル”: お前の発言が、推察とか、そう考えられるとか…… そんなんばっかりだからだよ
“エミリア”: それは私も気になっていたの 疑うわけじゃないんだけど、ね?
“フェネ”: ……失礼しました 告白の頃合いを伺っていた、というのは都合のよい方便ですね
“フェネ”: 端的に申し上げますと、フェネは記憶を喪失しています
“スバル”: ──マジで!?
“フェネ”: 真剣と書いて、マジです
“スバル”: なんでお前がそれを!?
“フェネ”: スバル氏の顔に書いてありました
“エミリア”: ええと……それで、どの程度なの? まったく何も、わからない?
“フェネ”: 肝心なことは何も、といったところでしょうか
“スバル”: そりゃ穏やかじゃねぇな…… 逆に、何なら把握してるんだよ?
“フェネ”: 今はっきりと言えるのは……
“フェネ”: フェネは『禁書』ページの反応を感知することができるということ
“フェネ”: 『禁書』のページを、この表紙に再び綴れること
“スバル”: そりゃ、封印って理解でいいか?
“フェネ”: その理解で、問題ありません
“フェネ”: これに関しては、ウルガルムと戦った際に 思い出したことですが
“スバル”: 思い出したりは、するんだな じゃあ今後の記憶の復活にも期待がもてるってことでオッケー?
“フェネ”: おそらく なにかのきっかけが必要だと推察しますが
“スバル”: それは、よくわかった んで、もう一つ……
“スバル”: ページを集めるのは使命、って言ってたよな?
“スバル”: ……あれは、信じてもいいんだよな?
“フェネ”: 勿論です
“フェネ”: 理由も理屈も判然としませんが、その想いに 今のフェネは突き動かされています
“スバル”: どう思う、エミリアたん?
“エミリア”: うん、信じていいと思う それはきっとフェネの精霊としてのあり方のはずだし
“スバル”: うっし! じゃあこの話はこれで終わりだ!
“フェネ”: ……信じて、くれるのですか?
“スバル”: 精霊使いのエミリアたんが言ってるんだ、間違いないだろ
“スバル”: それに俺は、エミリアたんに絶大な信頼を置いてるんでね!
“エミリア”: ありがとうスバル 私もスバルのこと信じたいから、無茶はしないでね?
“スバル”: 信用されてねぇ!?
“レム”: そろそろ戻りましょう 置いてきた竜車も心配です
“スバル”: 確かに 『禁書』についての考察は、王都に向かいながらでもできるな
“スバル”: まずは、情報の整理だ
“エミリア”: ウルガルムと戦ったときの話 もう一度、聞いてもいい?
“スバル”: おお、もちろん!
“スバル”: なんつうか……二回変身した感じ? 子犬から、クソでけぇウルガルムになったあと……
“スバル”: さっき戦ったみたいな、こう、なんとも気味の悪い 別の何かになったって感じだ
“スバル”: あと一回、変身を残してなくて助かったぜ……
“フェネ”: 経験でもありそうな発言ですね
“スバル”: 冒険者を絶望させるセリフランキングに古から載ってるからな 何度も聞いたぜ
“エミリア”: スバルはここにくる前は冒険者だったの?
“スバル”: あーごめん、話の腰を折った 今のは戯言だと思って忘れてくれ!
“スバル”: ええと、話を戻すけど つまりページは魔獣を変質させるってことでいいか?
“フェネ”: まだ凡例が少なく断定は危険ですが 可能性は限りなく高いと言っていいでしょう
“スバル”: 根拠は?
“フェネ”: 優秀なフェネがそう推察するからです
“スバル”: オーケー、お前の勘ってことにしておく
ナレーター: 御車台のレムが、顔を少しスバルの方に向けて声を張る
“レム”: 森の中で、生き物の声が聞こえなかったことも気になります
“スバル”: ビビって逃げた、って可能性は?
“レム”: 明らかに異常でした エミリア様も感じていらっしゃるかと
“スバル”: エミリアたん、そうなの?
“エミリア”: うん、微精霊も全然いなかったの……
“スバル”: おいおい、『禁書』は魔獣だけじゃなくて 周囲にも影響を与えるってことかよ!?
“エミリア”: もしかして、人にも……?
“スバル”: そんな……だとしたら王都は最悪の条件だぞ!
“フェネ”: 焦っても今すぐ到着できるわけではありません 考察の続きを
ナレーター: 興奮して立ち上がりそうになるスバルを フェネが冷静に牽制する
“スバル”: お、おう…… そうだな……
“レム”: 速度をあげます スバルくんはレムに任せて話し合いに集中してください
“スバル”: サンキュ、レム みんなすまん、ちょっと焦っちまった
ナレーター: バツが悪そうに頭をかきむしった後、 スバルは深呼吸をして話に戻る
“スバル”: ……で、さっきのアレだな ページは魔獣を吸収する
“エミリア”: そして、ページの中から、得体のしれないものを呼び出す……
“スバル”: ページの中身にヒントがあったりしねぇのかな イ文字なら俺でもなんとか……
“スバル”: えーと? はらぺこふぇんるーいつでもはらぺこ?
“エミリア”: たべすぎフェンルー おいだされ はらぺこフェンルー もりまでにげて
“エミリア”: たべすぎフェンルー くいつくす
“スバル”: ……これって、もしかして、絵本、なのか?
“エミリア”: そうね 絵がすごく不気味だけど…… そんな感じはするわね
“スバル”: 腹ペコで食べ尽くすって…… まさにさっきのあいつじゃねぇか
“フェネ”: 森というのも共通項と考えられます
“スバル”: じゃあ、ページはお話に似た場所に引きつけられて 書いてるようなことをするってことか?
“フェネ”: 可能性は しかし、その仮説は 捜索にはあまり意味がありません
“スバル”: なんでだよ  話からある程度想像できるじゃねぇか
“フェネ”: その話を把握している者がいないのです なにせページはここにありませんから
“スバル”: ……話、変えようか……
“スバル”: その、魔獣を吸い込んだり、 得体のしれないものを吐き出したりって……
“スバル”: そもそも、どうしたらできるもんなんだ?
“エミリア”: う──ん……
“スバル”: あの『禁書』がなんらかのミーティアとか…… 魔法とか、そういう可能性はないのかな?
“エミリア”: ないとは言い切れないわ ミーティアに関してはまだわかっていないことだらけだし
“エミリア”: でも魔法、ね……
“スバル”: もっかして、何か思い当たる感じ?
ナレーター: エミリアは、うつむきながら頷く
“エミリア”: さっきの森、マナがすごーく少なかったの 誰かがすごい魔法を使ったあと、みたいに……
“スバル”: あそこに魔術師が潜んでた、なんてことは さすがにないよな?
“フェネ”: 『禁書』はあの書庫にずっと保管されていました
“フェネ”: 今回、流出してしまったのもスバル氏が 死罪級の過失を犯したことが原因です
“フェネ”: 外部の存在が関与しているのは考えがたいかと
“スバル”: 定期的に俺の傷口えぐるのやめない!?
“エミリア”: そうなると、やっぱり『禁書』と関係があるのよね……
“スバル”: マナの枯渇、ってのが鍵な気はするなぁ
“レム”: ページが魔獣を食らっていたのは、マナと関係があるのでは?
“スバル”: おお……確かに!
“スバル”: 俺が呪われたみたいに、『禁書』もマナを食らうってことか! 吸い取るんじゃなくて、文字通り食ってたけどな……
“スバル”: さすがレム! ナイスアシスト!
“レム”: スバルくんに助け舟を出すのがレムの役目ですから
“エミリア”: マナはどこにでもあるものよ もし関係があるなら、問題が一気に起こりそうだけど……
“フェネ”: しかし現状、そのような混乱は観測されていない マナとの関係は「あるかもしれない」としか言えませんね
“スバル”: マナを吸えば吸うほど危ないってことはねぇか……?
“フェネ”: ……なるほど、否定はできませんね
“エミリア”: 余裕はあるかもしれないけど、 早めに対処したほうがいいってことよね……
“スバル”: そうだな…… さっきの話になっちまうけど、王都は人が多い
“スバル”: その……仮にもし、人があんなわけわからないモノに 変わっちまったとしたら……
“エミリア”: ……
ナレーター: エミリアの表情が明らかに曇る スバルは慌てて、明るい声を出した
“スバル”: と、いうのは最悪な想定であって、 俺らが間に合っちまえば問題ナシ!
“スバル”: だから早いとこ見つけて、速攻で解決といこうぜ!
“エミリア”: そうよね、ごめんスバル ちょっと不安になっちゃって
“スバル”: 謝らなくていいよ! エミリアたんは俺のやらかしの被害者なんだから!
“スバル”: あんまり背負い込まないでくれ
“フェネ”: 放火犯が焼け出されてしまった子どもを 慰めているような図ですね
“スバル”: そろそろ俺のHPがゼロなんですけど!?
“フェネ”: おや、何かを言い返せる立場ですか?
“スバル”: そんな立場じゃねぇよ! だから削られてんだろ!
“レム”: 大丈夫ですスバルくん スバルくんが投獄されるときはレムも一緒です
“スバル”: 一瞬ときめきそうになったけど さらっと犯罪者扱いしてるよね!?
“エミリア”: スバル、ちゃんと反省してる?
“スバル”: してるしてる! 本当に申し訳ありませんでしたーー!!
ナレーター: かしましい四名(本当にうるさいのは主に一名)を乗せた 竜車は一路王都へと急ぐ──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_00

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_プロローグ_王都の「噂」

ナレーター: 道中ひと悶着あったものの、その後休みなく走り続け
ナレーター: スバルたちを乗せた竜車は、予定よりも一時間ほどの遅れで 王都に到着するのだった
“レム”: ロズワール様とはこちらの宿で合流予定です
“スバル”: ってことはしばらくこの宿に滞在すんだな?
“レム”: その通りです! スバルくんの呑み込みの早さに、レムは感服いたしました!
“スバル”: いやいや、その感服はさすがに受け取れないかな 宿って時点で誰でも想像できると思うし
“スバル”: とにかく、ロズワールと合流次第サクッと解決して 王都見物とでも洒落込もうぜ!
“ロズワール”: うんうん、実に頼もしい 是非、有言実行をお願いしたいところだーぁね
“スバル”: おお、ロズっち!? いつの間にいたんだ!?
“エミリア”: ロズワールごめんなさい、待たせちゃった?
“ロズワール”: いえいえ、ご無事で何よりです それより……
“ロズワール”: 到着が遅れたということは ……道中、何かありましたね?
“スバル”: ……ああ、そのことだけど 中で腰落ち着けて話せると助かる
“ロズワール”: なるほど、『禁書』から生み出された異形のモノと 対峙した、と……
“フェネ”: 我々が屠った存在はこちらです
ナレーター: フェネは『禁書』を開き、 先刻対峙した存在を封じ込めたページを開く
“ロズワール”: このページに記された存在が具現化したわけだーぁね 実に興味深い
“スバル”: ああ、本から出たり入ったり、忙しい連中だぜ
“スバル”: そっちはどうだったんだ 何か掴めたのか
“ロズワール”: 王選関係で、今王都はにわかに騒がしてくてねぇーえ そっちの情報収集に忙しくて、手応えはあんまりだぁーよ
“スバル”: あんたに限って、空振りってこともないんだろ?
“ロズワール”: 嬉しい評価だーぁね ……それらしき噂は聞いたよ
“フェネ”: 必要以上に意味深かつ冗長…… まるで悪の親玉のような語り口ですね
“スバル”: まどろっこしい言い回ししてないで さっさと本題入れって嫌味言われてるぞ
“ロズワール”: いつの間にそんなに仲良くなったんだい? 契約関係は良好みたいだーぁね
“フェネ”: ありがとうございます、余計なお世話です
“スバル”: 今、一言多かったよね!?
“エミリア”: ロズワール、どんな噂なの
“ロズワール”: たいした内容じゃありません ここ数日、王都で異変が起きている、というものですよ
“エミリア”: 異変…… 具体的にはわからないの?
“ロズワール”: ええ だから所詮噂なのです ただ、何やら雰囲気は良くないみたいですねぇーえ
“スバル”: よくないことが起こってそうではあるんだな
“スバル”: フェネ、実際どうなんだ? 『禁書』の気配は感じてるのか?
“フェネ”: 微弱ですが、感じます
“ロズワール”: おや、フェネくんは、『禁書』のページを感知できるのかい?
“スバル”: そっか、ロズっちはその話まだだったな
“スバル”: その通り、フェネはレーダー役 匂いをたどってお宝ゲット、ってなわけだ
“ロズワール”: 『レーダー役』というのはわからないけぇーれど、 どうやらスバルくんとフェネくんには期待していいみたいだね
“フェネ”: 期待に添えない場合は、雇用主であるスバル氏の 全責任になりますので、フェネはお咎めなしでお願いします
“スバル”: 突然突き放された!? 今、一緒に頑張ろうね、の流れだったよね!?
“エミリア”: もたもたしてられないわ、スバル 日が暮れないうちに見つけてしまいましょう
“スバル”: ああ、エミリアたん、早速出かけよう!
“スバル”: ちなみに、話が横道にそれがちなのは謝るけど 大体は慇懃無礼なフェネのせいだからね!
“ロズワール”: 意気込んでいるところ申し訳ないのですが エミリア様は宿にお残りください
“エミリア”: え…… なんで? スバルはまだ本調子じゃないし、一人じゃいかせられないわ
“ロズワール”: 見たところ、まだ魔獣が暴れだすような状況ではありません レムがいれば十分でしょう
“ロズワール”: それよりも、王選に向けて、 集めてきた情報を共有させていただきたい
“エミリア”: そ、そうなの……?
“スバル”: 大丈夫だよエミリアたん ロズワールの言う通り、まだそんなヤバそうじゃない
“スバル”: いざとなったら衛兵呼ぶし、 エミリアたんは大事な王選を優先してくれ
“エミリア”: うん…… わかった その代わり、話が終わったらすぐ追いかけるからね
“スバル”: おう、もちろんそれは大歓迎! でもその前に俺が解決しちゃったりして?
“フェネ”: なるほど、血眼でページを発見しても、 全てスバル氏に手柄を掠め取られるわけですね
“フェネ”: 実にやりがいのない職場です 横暴な上司は死すべし
“スバル”: 都合悪いときの上司扱いと 俺が何もできない無能みたいな言い方止めてくれる?
“フェネ”: ……?
“スバル”: 今の発言、全然理解できません みたいな顔すんなよ!
“ロズワール”: 息がぴったりで頼もしいねぇーえ
“スバル”: どっから見たらそうなるんだよ……
“レム”: スバルくん、フェネさんとじゃれるのはいいですが できればレムも構ってください
“スバル”: 構うよ! 全然構う! もっと積極的に話題に入ってきてカモン!
“レム”: 積極的、ですか…… スバルくんは、そういう子がお好みですか?
“スバル”: うん、なんか勘違いしてるみたいだから 嫌いじゃないよとだけ言っておく!
“エミリア”: スバル、大丈夫? なんだか走ってきたみたいに顔が真っ赤だけど……
“スバル”: ありがとう、エミリアたん でも、このパーティー 俺だけじゃツッコミが足りないかもしれない
“フェネ”: 話がまとまってなによりです それでは出陣といたしましょう
“スバル”: 話はまとまってねぇし フェネに仕切られる覚えもねぇぞ!
“ロズワール”: おっとスバルくん、出かける前に一つ忠告いいかーぁな?
“スバル”: なんだよ、ロズっち? もちろん、無理はしない! それ以外のことなんだよな?
“ロズワール”: その通り、大事なことだ
“ロズワール”: ……スバルくん、行く先々での言動には十分注意するように
“スバル”: ……
“スバル”: つまり、俺は目つきだけじゃなくて態度も悪いって言いたいのか?
“ロズワール”: 気に障ったのなら謝ろう でも、もちろんそういう意味じゃ―あない
“ロズワール”: 王都には、他の王選候補者も滞在している
“スバル”: !?
“ロズワール”: 勘がよくて助かるよ つまりそういうことさ
“ロズワール”: 我々陣営の手の内も事情もできれば晒したくない あんまり目立たないよぉーおにね
“ロズワール”: そして、大きな騒ぎは起こさないでくれたまぁーえ
“スバル”: 目立つな、騒ぎを起こすなって、わかるけど それってどっちもあんまり変わらないよな
“スバル”: 言いたいことがあるならはっきり言ってくれ ……回りくどいぞ
“ロズワール”: 失礼、気をつけるよ
“ロズワール”: つまり騒ぎとメイザース家が結びつくようなことは 絶対に避けてほしい、ということさ
“スバル”: わかってるさ……
“スバル”: 『禁書』とメイザース家の関係が、他の候補者に知れたら 即アウトってことだろ
“エミリア”: ……
ナレーター: 最悪の結果を想像してしまったのか、エミリアの表情が瞬時に曇る
“スバル”: そ、そんな顔すんなってエミリアたん 絶対、そんなヘマはしねぇから
“エミリア”: うん…… お願いね、スバル
“スバル”: ああ! 任された!
“レム”: 仮にですが……
“レム”: 明らかに周りの目がある状況で、騒ぎが起きてしまった場合 どのようにすればよろしいでしょう?
“スバル”: う、そうだな…… そうなる前に解決、じゃ答えになってねぇからな
“エミリア”: そのときは、迷わず対処すること
“スバル”: エミリアたん……?
“エミリア”: 『禁書』と私たちの関係がバレるのはダメだけど、 それで王都の人たちに危害が及んでいいことにはならない
“エミリア”: みんなが危険な目に遭うことだけは絶対に避けないと そうなったら……私のことはいいから、助けてあげて
“エミリア”: たぶん、あとから困ったことになるけど…… それはそれで、なんとかするしかないもの
“エミリア”: うん、きっとなんとかする!
“スバル”: エミリアたん……!
“スバル”: わかった 最悪の場合は、間違いなく王都の人たちを優先するよ
“スバル”: もちろん、そうなる前に解決が一番だ! な、レム!
“レム”: はい 全力を尽くすとレムはお約束します
“スバル”: ロズワールも、いいよな?
“ロズワール”: 私としては、逃げてほしい気持ちもあるけど 君たちの判断に任せるとしよう
“スバル”: よし……! 王都の人たちには迷惑かけずに解決だ!
“フェネ”: なるほど、この流れでフェネへの確認はない、と
“フェネ”: いつフェネの番がきてもいいように 心構えは万端だったのにも関わらず、完全無視とは冷酷非道
“フェネ”: やはりスバル氏とは法廷で相まみえるしかないですね
“スバル”: 今ので訴えるとか過剰すぎない!?
“フェネ”: いじめっ子にはいじめられっ子の理論 『いじめられてると思ったらいじめ成立』を展開します
“スバル”: お前のメンタルでいじめられっ子とかありえねぇから!
“フェネ”: 誰がメンタルおばけですか 崇高なる精霊です
“スバル”: 言ってねぇ!!!!
“レム”: スバルくんの元気が有り余っているみたいなので そろそろ出発しますね
“エミリア”: スバルをお願いね、レム 夕飯までには帰ってくるのよ?
“レム”: はい、スバルくんがもう少し遊びたそうにしていても きちんと門限までに連れて帰ります
“スバル”: 俺を幼稚園児か何かと勘違いしてるよね!?
“フェネ”: いくよ、スバルお兄ちゃん
“スバル”: ちゃっかり妹属性取り入れようとすんな!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_01

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_01_始まりはリンガから

ナレーター: かくしてスバル、フェネ、レムらは 『禁書』のページ探索へと出発したのだったが──
“スバル”: はぁー……
“フェネ”: 随分大きなため息ですね 幸福が尻尾を巻いて敗走しますよ
“スバル”: 独特の言い回しだけど悪意が隠せてねぇぞ
“レム”: 大丈夫ですか? スバルくん 人混みに酔ってしまいましたか?
“スバル”: 大丈夫、ありがとう 人混みが得意じゃねぇのは否定しないがな
“スバル”: レーダーがあるのに、探しものが見つからないことに ちょっとばかし失望を隠しきれなかっただけだよ
“フェネ”: 批判ですね?
“スバル”: 出たな、被害妄想
“スバル”: お前がいてくれんのになかなか簡単じゃねぇなってだけだ 他意はねぇよ
“フェネ”: それは失敬いたしました
“フェネ”: ページの反応があるのは確かです しかし、ここまで人が多いと……
“スバル”: 感知が難しいってか 原理はわからんが、なんとなく理解はできるよ
“レム”: 困りましたね、フェネさんだけが頼りだというのに
“スバル”: そんなことねぇよ? レムも頼りにしてるから
“レム”: そんな、スバルくん…… レムがいないとお出かけもできないなんて、怖がりさんですね
“フェネ”: あとは若い者同士でごゆっくり
“スバル”: 自然な流れで離脱しようとすんな! あとなレム、それだけじゃねぇけど主に戦闘で頼りにしてる!
“レム”: ありがとうございます! スバルくんにつく悪い虫はレムが必ず退治します!
“スバル”: 街中で鉄球出すのはちょっと物騒かな!? 今んとこ、悪い虫もついてないしね!
“スバル”: んで、やっぱ王都っていったら、あそこか? なんか知ってるかもだしな
“スバル”: ってなわけでやってきたぜ、オッチャン! どうよ、元気してたか?
“カドモン”: んだよ馴れ馴れしい兄ちゃんだな 知り合いのフリしてもまけてやんねえぞ!
“スバル”: おいおい、冷たいな…… 可愛い子どもの恩人にその態度はないんじゃねぇの?
“カドモン”: ……娘の恩人? 兄ちゃんがか?
“スバル”: (やべ、それは別の『死に戻り』のときの話だったか……)
“スバル”: いやいや、正確には迷子になってた娘さんを助けた人と 知り合いなんだよ、俺
“スバル”: 誤解を与えるような言い方になっちまってすまねぇ
“スバル”: それにこの前は、無一文で迷惑かけちまったからさ 約束を果たしにきてやったってわけだ
“カドモン”: 無一文? 約束? なんのことだかさっぱり……………… って思い出した、あの目つきが悪い坊主か?
“スバル”: オッチャンが俺の目つきのこと言う!? まぁ、思い出してくれてなによりだけど!
ナレーター: それからスバルは、人数分のリンガを買いながら それとなく会話を切り出す
“スバル”: そういや、今日はなんだか街の雰囲気が違う気がすっけど なんか催しでもあんの? 他国からVIPがくるとか?
“カドモン”: びっぷってのはわからねえが、愉快な話は特にねえよ こうも衛兵が多くちゃ、確かに雰囲気は違うけどな
“スバル”: 衛兵? なんか事件でもあったか?
“カドモン”: どうしてかはわからんねえ だが、数日前から衛兵が多くてな いやーな感じだ、まったく
“スバル”: 数日前から、か なるほど……
“スバル”: サンキュ、オッチャン! またくるよ 奥さんとお子さんによろしくな!
“カドモン”: お? あ、ああ 買ってくれるならいつでも大歓迎だ またな
“レム”: スバルくん……
“スバル”: ああ、衛兵が異変の対処に当たってるんだろうな 余談は許さない状況ってことだ 急ごう!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_02

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_02_アテにならない案内役

ナレーター: 『禁書』のページを探し、王都を駆け巡るスバル、フェネ、レム しかし状況は芳しくなく──
“スバル”: ったはぁーーー!!!
“スバル”: これじゃ、闇雲に探してるのと全然変わんなくねぇか!?
“フェネ”: いえ、痕跡はあります
“スバル”: その痕跡の根拠が薄いんですがー?
“スバル”: こちらです、失敬、違いました ……って何回言ったんだよお前!
“フェネ”: スバル氏は、試行錯誤という言葉をご存知で?
“スバル”: いってみなきゃわかんねぇってどういうことだ? しかも二分の一で間違うレーダーってポンコツすぎだろ!
“フェネ”: なぜ人はにぎやかな場所に住みたがるのですか? 理解できません、人が多すぎです
“スバル”: ところでフェネ氏 フェネ氏は、責任転嫁って言葉をご存知で?
“フェネ”: ……
“スバル”: ……
“スバル”: 案外役に立たねぇな、お前
“フェネ”: ……ほう?
“フェネ”: 部下の精神をいたずらに攻撃し、傷つけ、 仕事効率を低下させ、それに何の疑問も後ろめたさもない
“フェネ”: なるほど、これが極悪非道で無知蒙昧な上司の典型ですか 非常に勉強になりました、死すべし
“スバル”: 人をパワハラモラハラ上司みたいに言うな!
“レム”: スバルくん、そろそろ落ち着いてください フェネさんが怒るのも、もっともではあります
“レム”: フェネさんも、スバルくんに言い過ぎた点があったとしても 命に関わるようなことを言うのはよくありません
“レム”: 今の発言でスバルくんが本当に死んでしまったら レムは悲しみのあまり……
“レム”: フェネさんに当たってしまうかもしれません
“スバル”: 冷静なお説教かと思ったら 冷静さの欠片もない鉄球が登場してるんだけど!?
“フェネ”: 冷静沈着、頭脳明晰がウリのフェネとしたことが 取り乱してしまいました、失敬
“フェネ”: 和解しましょう、クソ上司
“スバル”: 漏れてる漏れてる! 本音が漏れてるから!
“スバル”: ……まぁいい、俺も言い過ぎた、悪い
“スバル”: こんなことしてる場合じゃないよな 人多すぎー、な王都で『禁書』の影響が出たら笑えねぇ
“スバル”: っても、何が起こんのか、まだ検討もつかねぇけど……
“フェネ”: ページのマナ貯蔵量の段階による、としか言えないのですが 仮説として、そうですね……
“フェネ”: 魔獣が攻撃的になったのですから、 人もまた、そうなる可能性は高いかと
“スバル”: 市中で喧嘩……なんてのはありそうな話だな
“スバル”: 誰かが傷つくことに変わりはねぇ そうなる前に、なんとしても見つけ出すぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_03

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_03_詰め所と美丈夫

ナレーター: カドモンから聞いた“衛兵が街に増えている”という情報を 確かめるべく、スバルたちは詰め所へと向かった——
“スバル”: ……確かに、傍目から見ててもなんか慌ただしいな
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: なんだよフェネ、でかい声出すなって……!
“フェネ”: なぜ、路地裏からこっそり様子を伺うのですか これではまるで犯罪者ではないですか
“スバル”: 用もないのに詰め所の前をうろつくのも怪しいだろうが
“レム”: そうですよフェネさん 目つきが悪いからって、スバルくんを犯罪者扱いするなんて
“スバル”: うん、そこじゃないんだけどね、フェネが言ってるのは
“フェネ”: 犯罪者の勘として、あれはどういう状況ですか
“スバル”: お前らは俺を何だと思ってるんだよ!
“スバル”: ……ったく、そうだな ぶっちゃけ、何かが起こってる、ってことしかわかんねぇよ
“スバル”: 衛兵ってのはこの世界じゃ警察みたいなもんだろ? だとしたら、やっぱり揉め事とか、そういう対応なんじゃね?
“スバル”: って、さっきの仮説通りか…… やっぱり人が暴れたりしてるみてぇだな
“フェネ”: 異形の存在の出現については?
“スバル”: それについてはお前の担当だよね!?
“スバル”: でも、万が一、そうなってたとしたら王都中大パニックだ 嫌でもわかるだろうぜ
“スバル”: それに……多分、衛兵の手には負えねぇ 出張ってくるのはもっと上のはず
“スバル”: そうだな、例えば……
???: ──そこで何をしている
“スバル”: どわっ!!!
ナレーター: そこには、紫髪の青年が立っていた 細身だが背はスバルより高く、弱々しい印象はない
ナレーター: 衛兵とは段違いの気品と佇まいを漂わせている青年は なにより、明らかに身分の違う制服を身につけている
紫髪の青年: そこで何をしていると聞いている
“スバル”: あ、えっと、あ、すんません! ……衛兵さんですかね?
紫髪の青年: 似たようなものだが、衛兵に何か用かね
“スバル”: 実はあの、落とし物をしちゃって! 届いてないかなー、なんて!
“スバル”: でもなんか、すげぇ忙しそうなんでまた出直します!
紫髪の青年: おい、ちょっと! 待ちたまえ!!
“スバル”: お勤めご苦労さまでーーす!
紫髪の青年: ……
紫髪の青年: 精霊……か? 一体、何者だ?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_04

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_04_跳ね上がる危機感

“スバル”: 焦ったーー……
“フェネ”: さすが犯罪者、見事な逃げっぷりでした
“スバル”: 逃げたのは認めっけど、それは認めねぇよ!?
“スバル”: いや、一瞬知り合いかと思ったんだけど、別人だった……
“フェネ”: 確定的に高貴な身分のようでしたが、 スバル氏にそのような御学友が? 意外です
“スバル”: 一緒にスクールライフは送ってないけど友人だ ラインハルトって頼れるチート野郎なんだけど
“スバル”: あいつは、たぶんラインハルトと同じ身分のやつだな つまり、騎士様だ
“スバル”: ちなみに詰め所にいったのはそれも理由 運良く会えたら、いろいろ聞けるかなって思ったんだが
“フェネ”: なるほど、騎士殿 罪が知れれば斬首は確実、逃走も頷けます
“スバル”: いい加減、犯罪者扱い止めない? じわじわボディーに効いてきてんですけど
“フェネ”: !!!!!!!
“スバル”: って、フェネ……? どうした、反省顔にしては深刻すぎだぜ……?
“フェネ”: ページの反応です
“スバル”: ……その様子だと、今度こそ釣れたってことか
“フェネ”: はい、残念ながら大物です
ナレーター: フェネの指す方角へ、スバルらは間髪入れずに走り始めた 緊急を要することは、フェネの雰囲気で十分に伝わる
“スバル”: さっきまであやふやだった反応が 強くなったってことでいいのか!?
“フェネ”: 左様です 確信を得られるほど強くなっています
“スバル”: できればそうあってほしくないが…… レム、覚悟しといてくれ
“レム”: はい、いざというときは、お任せください
“スバル”: そういう理解でいいんだよな、フェネ!
“フェネ”: 左様です、スバル氏にもわかるように言うなら ページは既に大量のマナを食らっているかもしれません
“フェネ”: 何かを顕現させてしまう可能性も…… 視野に入れるべきです
“スバル”: ここにきていきなりかよ…… ふざけやがって!!
“スバル”: まさか、人間同士の喧嘩を 望む日がくるとは思ってなかったぜ……
“スバル”: 威勢のいい兄ちゃんたちの小突き合いであってくれ!
“フェネ”: 若人の痴情のもつれの可能性も否めません
“スバル”: それは、刃物がちらつく可能性があるから俺は遠慮したいかな!
“レム”: レムなら刃物は使いませんよ?
“スバル”: 確かにそうだけども、 レムさんの場合は刃物の代わりに鉄球が出るよね!?
“レム”: ……スバルくん スバルくんはレムのことをどう思っていますか?
“スバル”: あれ!? 痴情がもつれだしそうな質問!? この子もしかして『禁書』の影響を受けちゃってない!?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_05

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_05_緑髪の戦乙女

ナレーター: フェネが掴んだ明確な『禁書』のページの反応 駆けつけたスバルたちの目に入ったのは――
“スバル”: おいおい、王都の若者ってのは 随分奇抜な格好するんだな? はやりか?
“レム”: スバルくん、気持ちはわかるのですが現実に戻ってきてください
“レム”: あれは……紛れもなくページから生まれたものです!
“スバル”: だよな…… ハロウィンだってあんな仮装はしねぇ……
“スバル”: 幸いまだ生まれたての子鹿って感じでブルってるし 周りに人もいねぇ、それは助かった!
“スバル”: にしたってフェネ!  いくらなんでも早すぎないか!?
“フェネ”: 人が大勢いる環境下でのページのマナ吸収効率について 我々が前例を把握しているわけではありません
“フェネ”: その状況で、遅速について議論しても無駄かと
“フェネ”: ただ…… 一つ仮説は提唱できます
“スバル”: 聞こうか
“フェネ”: ページに、低量のマナで顕現可能な存在が描かれていた
“スバル”: つまり、ザコのページだったってことか!
“フェネ”: スバル氏の低俗な語彙に当てはめるのであれば、そうなります
“スバル”: 言いたいことは色々あるが、そいつは後だ! よし、サクッと封印しちまおう……って
“スバル”: おいおい、誰かきちまったぞ!
ナレーター: スバルたちが物陰から姿を現すと同時に 異形のモノに対峙する影が一つ
ナレーター: 長い緑髪を後頭部で一本に束ねた麗人 騎士風の戦装束に身を包んだ女性だった
ナレーター: 威嚇するような異音を発する異形の存在に怯むことなく 麗人は、腰に携えた剣を抜いた
“スバル”: ……おい! あれ、加勢しなくて大丈夫か!
“フェネ”: これがロズワール氏の忠告であるところの、 目立たないように、に相当する場面では
“スバル”: 確かに腕は立ちそうだけど…… 何するかわかんねぇだろ、アレ!
“レム”: 心配はいらないみたいですね
“スバル”: え!?
ナレーター: あれこれ気を揉むスバルが視線を戻したときには すでに異形のモノは一刀両断され朽ちていた
“スバル”: すげぇ……!!
緑髪の麗人: そこに誰かいるのだろう、厄災は去った 姿を現すといい
“スバル”: うげっ…… バレてる……!
“レム”: ここは穏便に済ませてしまいましょう……!
ナレーター: レムは物陰から姿を見せ 騎士然としたその人にすかさず礼を告げる
“レム”: ありがとうございます お陰で命を拾いました
緑髪の麗人: 怪我はないか? ……連れの者もいるようだが
“レム”: はい、たいそう怯えて足腰が立たなくなってしまったようで 姿を見せない無礼をお許しください
緑髪の麗人: なるほど……アレを見るのは私も初めてだ、 怯えるのも無理はない、か……
緑髪の麗人: とはいえ、今日何度目かの初めて、ではあるがな
緑髪の麗人: まだ日が高いにもかかわらずこうしてアレに遭遇したのだ また出会わないとも限らない
緑髪の麗人: 日が暮れぬうちに戻ることだ
“レム”: はい、お心遣いありがとうございます 主人が立てるようになったらすぐに
緑髪の麗人: 私は先を急ぐ 連れが落ち着くまで時間を共にできず申し訳ない
緑髪の麗人: では、卿らの健勝を祈る
ナレーター: 麗人は、緑髪とマントを翻し、 あっという間に見えなくなってしまった
“レム”: ……スバルくん、フェネさん、もう大丈夫です
“スバル”: サンキュ、レム! とんでもないアドリブ力、主演女優賞はお前のもんだ!
“レム”: レムがスバルくんの人生の主演女優だなんて、 照れてしまいますが、おそらくレムの演技は見抜かれていたかと
“スバル”: ……見抜かれてた? 主演女優賞バリの演技が?
“レム”: ええ
“スバル”: そっか…… つまりただ者じゃねぇってことだな
“フェネ”: 恐怖に支配され足腰も立たないスバル氏 震えはおさまりましたか?
“スバル”: それはレムの作り話だ 今の話の流れで、どうしてそうなんだよ?
“レム”: 震えるスバルくんを抱きしめるのもレムの務め さあスバルくん、レムの胸に
“スバル”: あれ!? 話の流れがわかってないのは俺だった!?
ナレーター: 思わず天を仰ぐスバルを尻目に、フェネは『禁書』のページを開く
ナレーター: 空高く霧散した異形の塵が、『禁書』に吸い込まれた
“スバル”: 絵は……現れないな
“フェネ”: 先程の存在があるべき先、ページがないからでしょうね
“スバル”: ってことはページはまだどこかで、アレを生産してるってことか
“スバル”: さっきの人、何度か遭遇してるみたいな口ぶりだったし
“レム”: あの方は先を急いでいると言っていました もしかしたら……
“スバル”: アレを狩るために探してるってことだろ にしてもいったい何者なんだ……
“レム”: レムには少し心当たりが もしかしたらあの方は王選候補の関係者かもしれません
“スバル”: ちょっと待て、それって最悪のパターンなんじゃ……?
“スバル”: 王選候補に深入りされるわけにはいかねぇ! ──フェネ、次の反応はっ?
“フェネ”: 微弱ですがあちらです
“スバル”: よし! 急いで向かおう!
“スバル”: フェネ、あっちであってるんだよな? クソっ、人が多くてなかなか進めねぇ……
???: どけどけ、どいてくれー!!
ナレーター: 少し離れたところから少女の声が聞こえる 人混みをかき分けて、誰かがこちらに向かってくる
“スバル”: なんだ? こんな人混みで走るなんて何考えて……
“スバル”: ん、フェルト?
“フェルト”: 邪魔すんな! どいてくれ! ……って、兄ちゃんがなんでいんだよ!?
“スバル”: いてもいいだろ そういうお前こそなに急いでんだ?
“スバル”: せっかく命拾いしたってんのに、 また盗み働いてんじゃねぇだろうな?
“スバル”: あれを機に心を入れ替えてくんなきゃ 助けた俺やエミリア、爺さんが報われねぇよ
“スバル”: いや…ちょっと待て…… お前ってラインハルトに連れてかれたはずじゃ……?
“フェルト”: わーーーーー! 言うなその名前!!
“スバル”: え? 何がマズイんだ?
“フェルト”: 兄ちゃん、悪運だけは強いだろ 何も言わずに手伝ってくれ!
“スバル”: はぁ!? 誰が泥棒の片棒を担ぐか! って……
“スバル”: ちょっ!? おいって!!
ナレーター: スバルの言うことなど一切聞かず フェルトはその手を掴んで走り出す
“スバル”: ちょいちょいちょい! 待て、走るなって! 危ねぇだろ!
“フェルト”: バカ! 全力出さねーと逃げ切れねーんだ! 相手が誰だと思ってんだ!!
“スバル”: バカはどっちだ! 今、衛兵は忙しいんだぞ!? 王都で何が起こってんのか知ってんのか!
“フェルト”: 知らねーよ! 全力出さねーなら引きずってくぞ!
ナレーター: そう言ってフェルトは、更に速度を上げる まるで味方をするように、風がフェルトを包んでいた
“スバル”: はぇぇ!!! 無理!!! 足がとれちゃう!!! って、お前の足どうなってんだよ!?
“フェルト”: 声がでけーんだよ! 兄ちゃんはしゃべんな!!
ナレーター: 一方、フェネとレムは——
“フェネ”: フェネたちに内緒で逢引の約束があったとは スバル氏も隅におけませんね
“レム”: いえ、無理やり連れていかれたに違いありません
“フェネ”: 失礼しました 冗談をいう状況と相手を見誤りました
ナレーター: 突如現れた金髪の少女に連れ去られたスバルを 間髪入れずに追いかけたのだったが——
ナレーター: あまりの人混みと、少女の足の速さのせいで すでに二人を見失っていた
“レム”: 参りました……まさかこんなかたちで 探しものが二つになってしまうなんて
“フェネ”: スバル氏に危険は及ばないような予感もあるのですが どちらを優先しますか?
“レム”: 知人だったと仮定しても、『禁書』のページの影響を受け スバルくんに危害を加えないとも限りません
“フェネ”: なるほど、スバル氏に私怨があっての犯行の場合 その可能性は飛躍的に上がります
“レム”: スバルくんが誰かに恨まれることなんてないと思いますが 一方的な人の感情は測れませんから
“フェネ”: どうしてあの体たらくが レム女史の信頼を勝ち得ているのか甚だ疑問ですが
“フェネ”: レム女史を見込んでそのありえなそうな可能性を支持します
“レム”: ページの反応を探りながら、聞き込みです フェネさん、よろしくお願いします!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_06

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_06_逃走と闘争

ナレーター: 誰かに追われていたフェルトに、無理やり引っ張られ 一緒に逃走することになってしまったスバル
ナレーター: 二人は、息を切らせながら路地裏で身を潜めていた
“フェルト”: ふー、なんとか撒いたか……
“スバル”: おいこら
“フェルト”: ……ってーーー!! 何すんだよ兄ちゃん!
“スバル”: なんとか撒いたか、じゃねぇだろ! いったい何なんだ? 事情を説明してくれ!
“スバル”: だいたいお前のスピードいかれてんだよ!  俺の足ちゃんと付いてるよね?
“フェルト”: まーまーそう興奮すんなって! なんかいいことでもあったか?
“スバル”: ないわ! むしろ災難続きだ!
“スバル”: ……で、改めて説明を乞うぞ 盗みを働いて逃げてたわけじゃねぇんだよな?
“フェルト”: ちげーよ! 断じてちげー! そういうのはもうやってねーんだ
“スバル”: なんだ、やっぱり足は洗ったんだな そりゃよかった、これで爺さんも報われるな
“フェルト”: おい! ロム爺を死んだみたいに言うな! ちゃんと生きてんぞ!
“スバル”: おうおう、爺さんも元気か そりゃご多祥なこって
“スバル”: っと、どうも話がそれてダメだな んで、盗みじゃないなら何から逃げてたんだ?
“スバル”: 説明してもらう権利が俺にはあると思うぞ さんざん連れまわされたんだ、話してくれ
“フェルト”: ……しつこい男から逃げてたんだ
“スバル”: ロリコン野郎か……そりゃ災難だったな
“フェルト”: わけわかんねーこと言って 憐れむような目で見てんじゃねー!
“スバル”: 相手が変質者じゃ無理もねぇけど、 あんなに速く走る必要あったか? マジで足が取れそうだったし
“フェルト”: バカ! あれくらい本気で走らねーと逃げ切れねー奴なんだよ!
“フェルト”: とにかくこの路地を反対側に抜けて——
ナレーター: 次の瞬間、路地の奥から獣のような怒号が響く
“スバル”: ──っ!!
“フェルト”: ちっ、喧嘩か……めんどくせー
“スバル”: 今の人間の声か!?
“フェルト”: 王都に魔獣がいるわけねーだろ 頭がおかしくなったんだ、貧民街じゃ日常茶飯事だぜ
“フェルト”: 衛兵がきたらめんどーだ さっさとずらかろ……って兄ちゃん?
“スバル”: あいつらを止めにいく
“フェルト”: おいおい、何いきなり正義感出してんだ? ほっとけってあんなの
“スバル”: ほっとけねぇんだよ!!
“フェルト”: な、なんだよ血相変えて…… 大丈夫か?
“スバル”: わりぃ、でかい声だしちまった けど、無視できねぇんだ!
“フェルト”: あ、ちょ! 兄ちゃん!? 待てってば!!
“フェルト”: ちっ! ひとりにはしておけねー 世話がかかる兄ちゃんだぜ、まったく

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_07

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_07_赤髪の友人

ナレーター: 路地裏の奥で、我を失い殴り合いの喧嘩をしていたのは スバルが何度も出会ったことのあるチンピラだったが……
“スバル”: 『禁書』のページの影響でわけわかんなくなって 仲間と殴り合いした末に……
“スバル”: 二回もあいつに遭うなんて 俺もよっぽどだけど、お前らもついてないな
ナレーター: 颯爽と現れた人物によって、危機は一瞬にして退けられた チンピラ三人組はあっという間に地面にのびてしまっていた
“スバル”: ここまでくると、こいつらが気の毒だけども、 サンキュー、助かったよ
“スバル”: そして、会いたかったぜ、ラインハルト
ナレーター: 赤い頭髪、異常に整った顔立ちの青年 スバルにとっては命の恩人でもある友人——
“スバル”: もしかしたら会えるんじゃないかって思って さっき詰め所にいったんだけど、空振りだったからさ
“スバル”: それにしても、また路地裏で、しかもトン・チン・カン付きとは ここまでくると運命を感じちまうぜ
“ラインハルト”: その言葉、そっくりそのまま返そう
“ラインハルト”: まさかフェルト様とご一緒してくれてるなんてね
“スバル”: 今、なんて?
“フェルト”: ちっ! 大通りで兄ちゃんと出会っちまったのが、 運の尽きだったみてーだ
“フェルト”: よりにもよって、一番会いたくねー奴のとこに 案内してくれるとはな!
“スバル”: まさか、フェルトの追手がラインハルトだったとはな……
“フェルト”: 兄ちゃん、アタシがあのあとどうなったか聞いてなかったのか?
“フェルト”: 普通なら想像つくだろ、誰から逃げてたかぐらい
“スバル”: さっさと事情を説明しなかったお前が悪い
“フェルト”: 兄ちゃんが関係ねー話ばっかするからだろ!
“スバル”: うっせぇ! 俺はお陰で仲間とはぐれたんだぞ!!
“ラインハルト”: 仲がよろしいようで、僕まで嬉しくなってしまいます いつの間にスバルとお約束をされていたんですか?
“ラインハルト”: 友人との再会を邪魔するほど僕も不粋ではありたくない そう言ってくれればよかったのです
“フェルト”: お前の頭はどーなってんだよ! なんでそうなるんだ!!
“ラインハルト”: 議論は屋敷に戻ってからじっくりしましょう ところでスバル、僕に何か用だったのかな?
“スバル”: あ、そうなんだラインハルト お前に聞くのも、ちょっと違うかもしれないんだが……
“スバル”: 最近、王都がなんか騒がしくないか? やけに衛兵も多いし
“ラインハルト”: ああ、それか それなら……
ナレーター: 常に自分に向けられていたラインハルトの意識が、 スバルに逸れた一瞬をフェルトは見逃さなかった
“ラインハルト”: ──フェルト様!
“フェルト”: お前こそ!  たまにはお友達と王都散策でもしてたらどうだ!!
ナレーター: フェルトの姿は、一瞬で見えなくなってしまう——
“スバル”: ……どうするよ、 お前さえよければお茶くらいなら付き合うぜ?
“ラインハルト”: 魅力的な提案だけれど、また今度でもいいかい? 僕はたった今、大切な人に逃げられてしまったところでね
“スバル”: そいつはご愁傷さま ちなみに、大切は恋愛方向じゃなくて仲間的な意味合いだよな?
“スバル”: んで、大切な人探しに俺もついていく流れっぽいな、これ
“ラインハルト”: ああ、協力を仰ぎたい
“スバル”: 逃亡者の共犯から、今度は追手の助っ人か なんだか裏切ったみたいでスッキリしねぇ
“スバル”: けど、お前と俺の仲だ 協力させてもらうぜ、ラインハルト
ナレーター: 直後、スバルとラインハルトは、 フェルトが消えた方角へ走り出していた

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_08

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_08_不良少女の今

“スバル”: で、ラインハルト、手伝ってる身としちゃ、事情を知っておきたい 聞かせてもらってもいいか?
“ラインハルト”: もちろんだよ、スバル 答えられる範囲で答えさせてもらおう
“スバル”: 貧民街での悶着のあと……俺は気を失ってたわけだけど
“スバル”: フェルトはお前が連れてったってのは本当みたいだな?
“ラインハルト”: その通りだ 今は、アストレア家で預からせていただいている
“スバル”: その言い回しだと、 俺の中でまだ拉致監禁の線が消えないんだが……
“スバル”: 一度はお咎めなしになったフェルトを連れてくってのは どういう風の吹き回しだ?
“スバル”: まさか、非行少女の更生に目覚めたってわけでもないだろ? いや、熱血なお前ならあり得るのか?
“ラインハルト”: さすがスバル、敵わないな どうして僕がフェルト様の教育をしていると思ったんだい?
“スバル”: えぇ!? 当たっちゃった!? 思いがけない正解に、俺、ちょっと動揺しちゃう!?
“ラインハルト”: フェルト様はあのような場所にいるお方ではない きちんと教育を受ける権利も、義務もある
“スバル”: 俺の故郷だとそれは、 子どもにとって当たり前のやつなんだけどな
“スバル”: フェルトに特別な才能でも感じたってやつか? 確かに足はクソはえぇけど……
“ラインハルト”: まぁ、そういったところだ あの方は、特別なんだよ
“スバル”: やけに持ち上げるな……
“スバル”: それとも、将来のある後輩に熱血指導するのが趣味とかか?
“ラインハルト”: ははは、面白いことをいうね、スバル
“ラインハルト”: 生憎そういう趣味はないが フェルト様の成長が今の楽しみなのは事実かな
“スバル”: 期待の大型新人に夢を託すコーチみたいな言い方だな……
“スバル”: とにかく、フェルトはお前んちで 大切にされてるってことでいいか?
“ラインハルト”: その通りだ、スバル 最上級の礼を持って接しさせていただいている
“スバル”: あいつにそんな才能があったとはね…… まぁ、『剣聖』のお前が言うならそうなんだろうな
“スバル”: わかったぜ、ラインハルト
“スバル”: フェルトのことだ、どうせ窮屈だとか言ってゴネてるんだろ やっといい生活が手に入ったんだ、文句言うなってんだ
“スバル”: よし! 手伝うぜ! フェルトの奴をとっ捕まえよう
“ラインハルト”: ありがとうスバル、恩に着るよ
“ラインハルト”: フェルト様は非常に尊いお方 何かあってからでは従者として示しがつかない
“スバル”: 従、者……?
“スバル”: 悪いラインハルト、これだけはいっておくぞ
“スバル”: お前の教育方針に口出す権利はないけど あいつは甘やかすとつけあがるタイプだからな!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_09

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_09_カルステン家の影

ナレーター: ラインハルトの尋常ではない能力のお陰で たった二人のフェルト包囲網は、確実に彼女を追い詰めていた
“フェルト”: ちっくしょ~~! どうなってんだ、アイツ!
“フェルト”: しつこいにも程があんぞ!
“ラインハルト”: 何があっても、あなたに逃げられるわけにはいかないのですよ フェルト様!
“フェルト”: くっそ……こっちもダメか! もうここしか……
“スバル”: って、くると思ったぜフェルト 逃げ足が早いだけじゃ、俺たちからは逃げられねぇ!
“フェルト”: ──に、兄ちゃん!?
“ラインハルト”: フェルト様、もう十分気分転換になったでしょう そろそろ屋敷へお戻りください
“フェルト”: 見損なったぞ兄ちゃん!
“スバル”: うっ…… 地味に刺さる……
“スバル”: でも、まぁ、戻ってやれよ、フェルト
“スバル”: 毎日風呂に入れて、ふかふかのベットで眠れて 働かなくても三度の飯にありつけるんだろ?
“スバル”: しかも、あんなチート野郎が従者だそうじゃねぇか 身の安全だって保障されてる
“スバル”: この上ない好待遇な気がするんだが、何がそんなに不満なんだよ?
“フェルト”: その通りだ、兄ちゃん いい暮らしをしてんのは認める ──だけどな!
“フェルト”: アタシは何にも縛られねー! 窮屈なのは勘弁なんだよ!
“フェルト”: 何のためにあんなこと覚えなきゃなんねーんだ? 礼儀や作法になんてアタシは興味ねーぞ!
“ラインハルト”: それに関しては毎日ご説明しているはずです
“スバル”: もしかして、更生させるだけじゃ飽き足らず 社交界デビューでも飾らせるつもりか?
“スバル”: だとしたらすげぇな、まるでシンデレラだ
“ラインハルト”: シンデレラ…というのはわからないけど、 フェルト様には相応の振る舞いを身に着けていただかねば
“フェルト”: 断る! 絶対にイヤだかんな!
“ラインハルト”: フェルト様なら大丈夫です さあ、屋敷に戻りましょう
“フェルト”: はあ? なんでそーなんだよ! アタシはちゃんと断るって言ったぜ!
“スバル”: よくわかんねぇけど、達者でなフェルト 次に会うときは、きっと立派なお姫様だな
“フェルト”: うっせーよ! この裏切り者! 呪ってやる!
“スバル”: いや、呪いは勘弁してくれ、もう懲り懲りだよ
“ラインハルト”: あ、そうだスバル、先程の問いにまだ答えていなかったね
“ラインハルト”: 察しの通り、王都では今、異変が起こっている 衛兵も騎士団もその対応に追われている状況だ
“ラインハルト”: 市中に知れ渡ると、あらぬ混乱を招く 秘密裏に処理してしまおうというのが我々の考えだ
“ラインハルト”: 友人として君には伝えさせてもらったけど、 あまり触れ回らないでほしい
“スバル”: おう、それについては俺も賛成だ 安心してくれ、触れ回ったりしねぇよ
“ラインハルト”: ありがとう、スバル ただ、すぐに解決するはずだ
“ラインハルト”: 我々だけではなく、善意で協力してくれる方々もいるしね
“スバル”: ああ、そうみてぇだな さっき、それっぽい騎士風の人に会ったよ
“ラインハルト”: さすがスバル、すでに知ってたんだね
“ラインハルト”: おそらく、カルステン公爵の関係者だろう 彼らの協力があれば、問題の解決は容易いはずだ
“スバル”: なるほど、な…… 衛兵と騎士団以外にも動いてる奴らがいる、と……
“ラインハルト”: では、スバル、くれぐれも気を付けて
ナレーター: 恨み言を言うフェルトを抱え、ラインハルトが歩き出す
“スバル”: さて、と……だいぶ回り道しちまったが
“スバル”: フェネとレムを探さねぇとな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_10

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_10_お節介にはご注意

ナレーター: 結局、日が暮れるまで探し回ったがフェネとレムとは合流できず スバルは仕方なく、一度宿に戻ることにした
“レム”: スバルくん!!
“スバル”: ああ、よかった……帰ってきてたんだな フェネも、すまなかった
“フェネ”: てっきり朝帰りかと 多少評価点として加味します
“スバル”: どんな盛大な勘違いだよ……
“フェネ”: よかったですね、この宿に地下室があったなら レム女史から愛ゆえの鎖により縛り上げられていたところでしたよ
“スバル”: レム、ごめんね!? あいつはただの知り合い! ホントにそういう関係じゃねぇから!
“エミリア”: スバル! 大丈夫だった? 急に連れていかれちゃったって聞いて すごーく心配してたんだから
“スバル”: エミリアたん!  ごめん、ちょっと面倒なことに巻き込まれちゃってさ
“エミリア”: 面倒なこと?
“スバル”: ああ、でも大丈夫だよ、エミリアたん! フェルトの奴だ! フェルトとラインハルトの追いかけっこに付き合わされたんだ
“フェネ”: 我々に面倒事を押し付けて遊興していたと?
“スバル”: そんな愉快なもんじゃねぇよ! お陰様で大幅に時間をロスっちまった
“スバル”: その様子じゃ、そっちは空振りだったみたいだな?
“レム”: すみません、スバルくん……
“スバル”: いや、いいって……こっちも、ラインハルトに会えたってのに たいしたことは聞き出せなかったし……でも
“スバル”: カルステン公爵だかの関係者が 調査に乗り出してるって話は聞けたな
“エミリア”: カルステン公爵……
“スバル”: ん? エミリアたんはなんか知ってる感じ?
“ロズワール”: クルシュ・カルステン公爵は 王選の最有力候補といわれる傑物だぁーあよ
“スバル”: ……マジでか?
“レム”: ということは、日中に会ったあの方はやはり……
“スバル”: ほぼ間違いなく、カルステン公爵に関係した騎士だろうよ
“スバル”: 王選のライバル陣営に首突っ込まれるとか 最悪でしかねぇってのに……
“スバル”: この流れでご本人参戦なんてことになったら マジで目も当てられねぇ!
“スバル”: 悪い、俺、夕飯はいいや! いくぞ、フェネ!
“エミリア”: 待ってスバル、私もいくわ
“スバル”: いや、エミリアたんは宿で待っててくれ この時間だとパックは寝ちゃってるだろ?
“スバル”: 今日は全然見てねぇし、たまには残業しろって言いたいけども、 ないものねだりをしても仕方ねぇ
“エミリア”: 確かにパックは頼れないけど……
“エミリア”: このまま何もせずにいるなんてできない だって、私の問題なのよ?
“スバル”: 俺の失態を自分のミスって捉えるエミリアたんのことは マジで尊敬する、一度も俺を責めなかったしさ
“スバル”: でも、カルステン公爵だかの陣営と鉢合わせしたらどうするんだ? すげぇ、面倒なことになるぜ
“エミリア”: それなら、このフードをかぶれば大丈夫 それに、いざとなればスバルの後ろに隠れればいいでしょ?
“スバル”: それは可愛くて魅力的な提案だけど…… わかってくれよ、エミリアたん
“フェネ”: ……今晩の調査は中止にしたほうが懸命かと
“スバル”: おい、今の話聞いてなかったのか!? なんでそうなんだよ!
“フェネ”: 我々が懸念している最たる事象を整理しましょう それは王都の人々に危害が加わること
“フェネ”: この時間帯はすでに人通りが少ない 日中ほど問題が起こる確率は低いと想定できます
“フェネ”: かつ、ページの反応が依然弱い 問題は起きづらい状況とも推察します
“フェネ”: この広い王都を一日探索してみて、微弱な反応を追い 暗闇の中を捜索することがいかに非効率だったかを指摘します
“フェネ”: よって、一晩様子を見る猶予があると判断し、 無駄な行動はせず体力回復に専念することを提唱します
“スバル”: お、おう…… 隙のない正論に返す言葉が見つからねぇ……
“フェネ”: フェネは頭脳明晰かつ冷静沈着ゆえ
“スバル”: ページの反応をうまくキャッチできなかった件については 責任を追求したいところだけどな?
“エミリア”: 確かにフェネの言う通りかも……
ナレーター: そう納得したものの、エミリアの表情は晴れない
“ロズワール”: ここは私が、軽く見回りをしてこようじゃーぁないか それでよいですね、エミリア様
“エミリア”: ありがとう お願いね、ロズワール
“ロズワール”: お任せください
“レム”: それでは、夕食にしましょう 準備はすでにできております
“スバル”: そういや、ロズワールとはどんな話をしてたんだ?
“エミリア”: あのね、もうじき王城で、王選候補のみんなが集まって 大切な話し合いがあるはずだったの
“スバル”: あるはずだった、ってことは…… 中止になったってことでオッケー?
“エミリア”: うん……今は王都が物騒だから、問題が解決してからになりそう
“スバル”: そうか……そんな影響が……
“スバル”: (俺は……エミリアの邪魔をしちまったわけか……)
“エミリア”: スバル、あんまり自分を責めないで 起こっちゃったことは仕方ないもの
“エミリア”: それに、まだ心の準備ができてなかったから 私、ちょっと助かっちゃった
“スバル”: エミリアたん……
“スバル”: それで、どれくらい延びそうなんだ?
“エミリア”: うん、とりあえず一ヶ月だって それぐらいあれば解決されるって予想みたい
“スバル”: そんなに猶予がないって知ってるのは、俺らだけだもんな……
“スバル”: ササッと解決しちまえば、エミリアたんがその話し合いのために 色々準備する時間も増えるってわけだね?
“エミリア”: そうね、そういうことになるかも
“スバル”: よし、じゃあなんとしても明日解決しよう! んで、屋敷に凱旋だ!
“エミリア”: 明日は私もいくからね?
“スバル”: おう、いざとなったら俺の後ろに隠れてくれ!
“エミリア”: うん よろしくね、スバル
“スバル”: と約束したのに、ひとり出発する俺でした……と
“スバル”: ま、早起きしちまったから、先に始めたってだけだ それで怒ったりはしねぇよな、さすがに
“スバル”: まぁ、早起きってより、 眠れなかったってのが正確な表現だけどな……
ナレーター: スバルは宿を発つ前にフェネを探したが、 すでに出発したあとだったらしくフェネの姿は見当たらなかった
“スバル”: ったく、昨日は猶予があるとか言ってたくせに 自分が一番焦ってんじゃん
“スバル”: って、使命って言ってたもんな アイツが焦るのも無理ねぇか……
“スバル”: アイツがいなくても、聞き込みぐらいは俺にもできる いっちょ頑張りますか!
“スバル”: と、気合を入れといてなんだが、こりゃ骨が折れるな……
“スバル”: 最近変なことはありませんでしたか? 昨日は喧嘩を見かけませんでしたか?
“スバル”: そんな質問じゃ、 まともな情報なんて得られるわけねぇ……
“スバル”: ……ん?
“スバル”: お嬢さん、さっきから俺のこと見てるけど、なんか用か?
“スバル”: 目つきが悪いだけで不審者扱いってのはなしだぜ?
ナレーター: 一人の少女—— 帽子をかぶった、髪の長い少女がスバルを見つめている
髪の長い少女: お兄さんは、衛兵さんですか?
“スバル”: それ、俺が私服警察ですかって感じの質問? それとも非番かって?
“スバル”: まぁ、その質問に答えるんなら、 衛兵じゃねぇ、ってことになるんだけど
髪の長い少女: そうなんですね、なんだか聞き込みをしてるみたいだったから てっきり衛兵さんなのかと思いました
髪の長い少女: でもよく見ると、衛兵とは思えないお間抜けな顔ですね 納得しました
“スバル”: 初対面ですげぇディスられた!?
“スバル”: ……それで、俺が衛兵だったら何か都合のいいことでも? それとも後ろめたいことでもあった?
髪の長い少女: 衛兵さんじゃないけど、王都の異変を調べてるんですよね?
“スバル”: ……まぁ、そうだな
髪の長い少女: なんで?
“スバル”: ……友達が、困ってるんだ だから解決してやりてぇ
髪の長い少女: わかりました ではついてきてください
ナレーター: そう言うと少女は、縁石から腰を上げて、歩き始めた
“スバル”: おいおい、ちょっと待て! さすがに説明なしじゃ一緒にはいけねぇかな
“コリーナ”: コリーナっていいます、お兄さんは?
“スバル”: ……スバル、だ それで、なんか知ってるんだよな?
“コリーナ”: はい、スバルさんの調べていることに関係があるかもしれません
“スバル”: なるほど……胡散臭くはあるが、今のところ手詰まりだ 仕方ねぇ、ついてってやるよ
ナレーター: スバルとコリーナは、塀に隠れて、二人の男女を見つめていた
“スバル”: ……あの夫婦が、 昨日の晩、すげぇ声を張り上げて揉めてたんだな?
“コリーナ”: はい お皿が割れる音とか、壁を叩く音とか とてもうるさかったです
“スバル”: 俺が見る限り、ハグしてチュッチュして、 どう見てもバカップルならぬバカ夫婦だけどな
“コリーナ”: 昨日は、びっくりするくらいの喧嘩をしてました
“スバル”: それ痴話喧嘩がエスカレートしただけだろ!? どう見たって、仲直りして今はラブラブじゃねぇか!
“コリーナ”: 激しめに揉めている人がいたら教えてということだったので
“スバル”: それはそうだけども、とにかくアレは違う! 次だ次! 次いってみよー!
ナレーター: ところ変わってスバルとコリーナは、草むらに身を潜めて 犬のような何かを見つめていた
“スバル”: 犬だけど、首から上が変わっちまった何かと遭遇した、 で合ってるかな?
“コリーナ”: はい、夜なのでとても怖かったです
“スバル”: そうか…… それで、今、アレを見てどう思うんだよ?
“コリーナ”: とても微笑ましいです
“スバル”: だよね!? 紙袋かぶって遊んでるだけだもんね!
“コリーナ”: 昨日の夜は怖かったんです 慰めてください
“スバル”: 今はほっこりしてるだろうが! それでチャラだ! 俺の慰めは必要ねぇよ!
“スバル”: 頼むぜ、コリーナ…… お兄さん、遊んでるわけじゃないんだ……
“コリーナ”: 次こそ大丈夫です
“スバル”: 本当だよね? 次こそ頼むぜ、マジで!
“スバル”: ……あやしい紙、でいいのか、これ
“コリーナ”: はい、あんなにたくさん
ナレーター: スバルは、ゆっくりと地面に落ちた紙を拾い上げる
“スバル”: これは……
“スバル”: チラシ、だな……
“コリーナ”: はい、昨日それを持った女性が 狂ったように泣き叫んでいました
“スバル”: それはそうだろうね!? ペットが迷子になった飼い主の手作りチラシだからな!!
“コリーナ”: その似顔絵、見覚えがあると思いませんか?
“スバル”: さっきの袋かぶってた犬だよな、どう見ても! わかってるんならこのマダムに連絡してやれよ!!!
ナレーター: その後も、コリーナが案内する異変は どれもこれも見当外れなものばかりだった
“コリーナ”: 楽しかったです
“スバル”: だろうね!!  俺のリアクション見て笑いこらえてたもんね!?
“スバル”: これ以上は付き合いきれん! 一つくらいはと期待した俺が馬鹿だったよ!
“スバル”: きれいに全滅じゃねぇか!
“コリーナ”: スバルさん、詐欺師には気を付けてください
“スバル”: お前に言われたくねぇよ!
“スバル”: じゃあな、コリーナ あんまり人をからかうもんじゃねぇぞ!
ナレーター: 遠ざかっていくスバルの背中を見つめながら コリーナはポロリとつぶやく
“コリーナ”: スバルさんは…… 心配になるくらい、お人好しですね……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_11

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_11_本格捜査、開始

ナレーター: スバルが宿に戻る頃、日はだいぶ傾いていた
“エミリア”: もう! どこにいってたの? 一緒に調査するって約束忘れちゃった?
“スバル”: エミリアたん、ごめん!
“スバル”: 早く起きすぎちゃって、それで軽く聞き込みでもって 思ったんだけど、情報を持ってるってヤツに会っちまって……
“フェネ”: 空振りだったわけですね
“スバル”: なんでわかったんだ!?
“フェネ”: スバル氏の顔は辞書なので
“スバル”: どういう意味だよ……
“フェネ”: 全部、書いてある
“スバル”: お後がよろしいようで、ってならねぇよ!!
“スバル”: 出遅れたのは、マジで謝る でも、お陰でいっても無駄なエリアはそれなりにわかった
“スバル”: さっそく、本格捜査開始といこうぜ!
“フェネ”: フェネとスバル氏、レム女史にエミリア女史が加わる という理解でよろしいでしょうか
“スバル”: だな ロズワールがくるとさすがに目立ちすぎるし 司令塔的な立ち位置が合ってんだろ?
“ロズワール”: よくわかっているね その布陣でいこうじゃーぁないか
“スバル”: おうとも、必ず吉報を持って帰る 期待して待っててくれ
ナレーター: 一同が宿を出発して、まもなくのことだった
“フェネ”: ……反応です
“スバル”: 顔色が変わったな、つまりそういうことか?
“フェネ”: はい、例えるなら昨日、 異形のモノに遭遇したときのような反応です
“スバル”: 釣れたか…… いくぞ!!
ナレーター: スバルたちは反応にめがけて走りながら昨日の様子を確認し合う
“エミリア”: スバル、昨日は戦う前に騎士風の人がやっつけちゃったのよね?
“スバル”: ああ、文字通り一刀両断! 女とは思えない一撃だったぜ
“エミリア”: 騎士風の女の人……
“レム”: みなさん、構えてください!!
“スバル”: おう……いつ見ても気分が悪くなるデザインだ……
“フェネ”: どうやら他に追手はいない様子
“エミリア”: でも、すぐそこは大通りよ! なるべく騒ぎにならないようにしないと!
“スバル”: フェネ、今のフリじゃない! わかってるよな?
“フェネ”: 承知です、爆発させます みなさんお下がりください
“スバル”: 失格だフェネ、お前の方こそ下がっててくれ! ということでレム、頼んだぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_12

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_12_カララギの商人

“エミリア”: レム! 避けて!
ナレーター: エミリアの鋭い声に合わせ、素早くレムは横に飛ぶ
ナレーター: 次の瞬間、エミリアが放った無数の氷柱は 異形の存在を貫き、霧散させていた
“フェネ”: 綴じます…… ふむ、やはりこれも該当するページがないようです
ナレーター: フェネは砕け散り霧となった異形の存在を『禁書』に封じながら ため息をつく
“スバル”: デザイン的には昨日の奴とおんなじだな 今回のページにはあれがたくさん描かれてたのか?
“フェネ”: 一ページ一体ではないという、悲観的仮説が生まれました
“スバル”: まったくだ 骨が折れそうだぜ……
ナレーター: 路地裏から退散しようと、 大通りの方へ身体を向けたスバルは戦慄する
???: なんや騒がしくて見にきたら、面白そうなメンツやないの
“スバル”: 関西弁……ってか、いつからいたんだ!?
ナレーター: 白いドレスを身にまとった紫髪の少女が、 スバルたちを見つめている
ナレーター: おっとりとした雰囲気だが、どこか超然とした態度…… そして聞き覚えのある訛りにスバルはいいしれぬ焦りを覚えた
“エミリア”: ……!
ナレーター: 同じく、少女に何か危険なものを感じたのか エミリアは身を隠すようにスバルの背後に回っていた
“スバル”: (エミリア……! ここはなんとかごまかさねぇと……)
おっとりとした少女: いつからいたんだなんて、まるでコソコソと 後ろめたいことでもしとったみたいな反応やね
“スバル”: 後ろめたいことなんてしてねぇし、 そもそも君には関係ないんじゃねぇかな?
おっとりとした少女: そんなことあらへんよ ウチは大事な商談中やったんよ それをうるさくされて、関係ないはないんやない?
“スバル”: うぐっ……! も、もしかしてあの騒ぎで大事な商談が……?
おっとりとした少女: あはは、損害賠償でも請求されると思ったん? お得意さんやったから、ええ雑談のネタになったわ
“スバル”: んだよビビらせやがって! だったらむしろ感謝されるべきじゃねぇか!
おっとりとした少女: ……ウチは欲深でな
おっとりとした少女: 興味あることには首を突っ込みたくなるんよ あんなもん見せられたらなおさらや
“スバル”: ──っ!!
“スバル”: 全部、見てやがったのか……?
ナレーター: 少女が浮かべた薄ら笑いにスバルは背筋が凍る思いだった
“スバル”: ……いったい何者だ?
“アナスタシア”: ウチはアナスタシア・ホーシン
“アナスタシア”: カララギではそこそこ名が通ってるつもりやけど 王都ではまだまだやし、知らんのも無理ないわ
“アナスタシア”: せやけど、人に名前を聞くんやったら、 そっちも名乗るのが礼儀なんと違う?
“アナスタシア”: さっきのアレとの関係も気になるところやけど、 まずは名乗ってもらわんとな
“スバル”: (結構力を持った商人らしいし、 この人を味方につけられれば色々役立ちそうだよな……)
“スバル”: 俺の名はナツキ・スバル そして──
“エミリア”: ス、スバル……!
ナレーター: 背後にいるエミリアが何かを訴えようとするが スバルはそれに気付かない
“スバル”: こちらにおわすのはエミリア様だ いずれこの国の王になられるお方だぜ
“アナスタシア”: そんなこと勝手に決めんといてくれる? 王になられるお方やったら別におるんやし
“スバル”: ……はあ? なに言ってんだよ?
“アナスタシア”: せやから、王になられるお方は別におるって言ったんよ
“アナスタシア”: ホンマ奇遇やわ ウチも王選の候補者なんよ
“アナスタシア”: エミリアさんにはごめんやけど、王様になるのはウチや それだけは譲れへんね

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_13

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_13_紫髪の近衛騎士、再び

ナレーター: 王選候補者、アナスタシア・ホーシン 彼女に一部始終を『目撃』されてしまったスバルたち——
“スバル”: (馬鹿野郎……! 一番避けなきゃならない展開を……)
“スバル”: (どうする……どうすればいい……考えろ……!)
???: アナスタシア様!
ナレーター: 重苦しいにらみ合いは、割り込んできた声で突如の終わりを迎える
“スバル”: あいつは、昨日詰め所で会った……!
紫髪の青年: ん? 君は昨日の落とし物の…… こんなところで何をしている
“スバル”: あー……っと、ちょっと夜の散歩中だったんだけど……
“アナスタシア”: なんや騒がしいからきてみたら逢引中やったみたいでな 邪魔してえらいすまんかったなぁ
“スバル”: ……! あ、ああ……
紫髪の青年: 逢引にしては人数が多いような気もするが、まあいい アナスタシア様、何か異変はありませんでしたか?
“アナスタシア”: きたときには全部終わっとったよ
紫髪の青年: ということは……君たちが?
“スバル”: お、おう! 女の子がいっぱいだから、 俺としてもここは男気を見せとかねぇとな!
“フェネ”: 華麗なる手柄の横領、もはや芸術の域ですね
“スバル”: よーし、ちょっと黙ってろよ小狐
紫髪の青年: そうか、つまりアレを討ったということか?
“スバル”: (う……! 墓穴掘っちまった!?)
“アナスタシア”: そろそろ名乗ったほうがええんとちゃう? それが礼儀やとウチは思うで
紫髪の青年: 失礼しました、アナスタシア様 私としたことが、急いてしまいました
“ユリウス”: 申し遅れた、私はユリウス・ユークリウス 近衛騎士団の者だ
“スバル”: おう、やっぱりラインハルトの同僚だったか……
“ユリウス”: ラインハルトを知っているのか? 君の身分を確認したいのだが
“スバル”: 俺はナツキ・スバル ええと……そうだ、ラインハルトの友人だ
“ユリウス”: ふむ、ラインハルトの友人ならばアレを退けたのも 納得はいくが……
“ユリウス”: 君の後ろにおられる方、もしやと思うが 念の為、改めさせてもらってもいいだろうか
ナレーター: ユリウスの言葉にエミリアは自ら前に出る
“エミリア”: ユリウス久しぶり、元気そうね
“ユリウス”: 覚えていていただけて光栄です やはりエミリア様でしたか
“ユリウス”: スバル殿といったな、君はエミリア様の……
“フェネ”: 歓談中失礼いたします!!
ナレーター: フェネの叫び声にビクッとスバルが顔を向けたときには すでにレムの鉄球の一撃で何かが空に舞っていた
“フェネ”: ……新手です
“スバル”: このタイミングでか!?
“ユリウス”: アナスタシア様、エミリア様、後ろへ
“スバル”: おい! エミリアたんは俺の後ろ! 勝手な指示を出すな! んじゃ、フェネ、レム、いくぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_14

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_14_大きな「貸し」

“ユリウス”: お怪我はありませんか? アナスタシア様
“アナスタシア”: おおきに 面白いもの見せてもらったわ
“ユリウス”: 余興でしたらよかったのですが 生憎、あれは市井を騒がせております
“ユリウス”: 私は戻らねばならず、心苦しいのですがお傍にはおれません 今晩は決して宿から出ませんよう、お願いいたします
“アナスタシア”: はいはい、ええ子にしとるよ いざとなったらあの子らがおるしな
“ユリウス”: そうでしたか 彼らがいるのでしたら安心です
“ユリウス”: エミリア様も、ご無事ですね?
“エミリア”: ええ、大丈夫よ ありがとう
“スバル”: やいやい! なんだそのついでみたいな確認はよ!
“ユリウス”: すまない、従者としてはアナスタシア様の 安否が最優先になってしまうものでね
“ユリウス”: それに、エミリア様には君が付いているのだろう?
“スバル”: ……おうよ、その通りだ お前の心配は無用だ
“ユリウス”: それは頼もしい限りと言いたいところだが いたずらにエミリア様を危険に晒すことには反対だ
“ユリウス”: どうやら戦力は侍女の彼女だけのようだ 今晩はおとなしく帰ることをおすすめする
“ユリウス”: 後のことは、我々近衛騎士団に任せてくれ
“スバル”: ……っ!
ナレーター: スバルが言葉を発するより早く、フェネが耳元で囁いた
“フェネ”: スバル氏、連中にはこのまま即刻退場していただきたく 一言言いたい心中は察しますが、ここは忍耐です
“スバル”: ……クソっ
“アナスタシア”: なあ、ユリウス、このままウチを一人で帰さへんよね?
“ユリウス”: もちろんですアナスタシア様、宿までお送りいたします ではエミリア様、お気を付けて
“アナスタシア”: ほな、またな
ナレーター: 大通りへ向かって歩き出すアナスタシアとユリウス だが、アナスタシアはすぐに立ち止まった
“アナスタシア”: この件は貸しやで
ナレーター: それだけを言い残し、今度こそアナスタシアは ユリウスと共に大通りへと消える
“スバル”: ちっ、厄介な奴に借りを作っちまった……
ナレーター: アナスタシアとユリウスの姿が完全に見えなくなるのを待って フェネは『禁書』を開いた
“エミリア”: アナスタシアさんに、『禁書』に封印するところ見られちゃった?
“スバル”: まぁ、そうだろうね 考えたくはねぇけど、そうとしか思えない
“エミリア”: アナスタシアさん、貸しにしておくって……
“スバル”: さっきの話をユリウスに伏せてくれたからな でも、あの人に借りは作りたくなかった……なんかエグそうだし
“スバル”: しかも王選候補者って、なんの冗談だよ…… 俺の日頃の行い、そんなに悪かったか?
“エミリア”: …………
“スバル”: エ、エミリアたん!? その沈黙は色々誤解を生むよ! まるで俺の日頃の行いが……
“スバル”: って、軽く目を閉じただけでもたくさんの心当たりが!? ごめん、これ俺のせいだ!
“エミリア”: うんん、スバル、そうじゃないの でも……
“フェネ”: 帰れと言われた手前、再度彼に遭遇するのは回避したく ここからはより慎重に動く必要があります
“エミリア”: うん、私もそう思う
“スバル”: ああ、そうだな……けど、ページは見つけなきゃなんねぇ とにかく慎重にページ探しを再開しよう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_15

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_15_燃える瞳の令嬢

“スバル”: ……
“フェネ”: 我々と異形の存在を結びつける決定的な傍証は皆無です
“スバル”: フェネ、何が言いたいんだ?
“フェネ”: まだ、如何様にも言い逃れできます
“スバル”: ……んだよ、気遣ってくれたのか
“スバル”: まぁ、確かにその通りだな 悲観ばかりしても仕方ねぇ、気を取り直していこう
ナレーター: それからスバルたちは、 次なるページの反応があった場所へ向かった
“フェネ”: 反応がどんどん濃くなっています
“スバル”: そろそろって感じか?
“エミリア”: あっ……!
ナレーター: 何かを目撃したエミリアが、とっさにスバルの背後へと隠れる
ナレーター: 『禁書』のページに導かれて訪れた場所には またも先客がいたのだ
ナレーター: 血のように赤いドレス姿と それに負けず輝く橙色の髪の少女——
“スバル”: おいおい、見るからにいいとこのお嬢さんが なんでこんな時間に出歩いてんだよ?
“スバル”: けど、放ってはおけねぇ ──レム、フェネ!
ナレーター: すかさず呼ばれた一人と一匹が飛び出す
ナレーター: フェネは少女の前に躍り出ると術式を展開し レムは鉄球を軽々振り回して攻撃をしかけた
ナレーター: あっという間に、異形のモノは砂のごとく砕け散った
“スバル”: 大丈夫か、お嬢さん? 悪いことは言わねぇ、早く屋敷に戻ったほうがいい
橙色の髪の少女: 誰に指図をしておるのじゃ、凡愚
“スバル”: あぁ!?
橙色の髪の少女: 妾は妾の思うように、やりたいように動く 誰の指図も受けん
橙色の髪の少女: そもそも凡愚、何故妾に声をかけているのじゃ? 貴様にそのような許可を出した覚えはないぞ
“スバル”: えぇ!? 話しかけるの許可制!?
橙色の髪の少女: 許可なく話しかけた罪、この場で償わせてやる さあ、死んで詫びよ
“スバル”: 横暴さが異次元すぎだろ!? ここは助けてもらったお礼を言うとこなんじゃ!?
橙色の髪の少女: 礼、だと? 何のことじゃ?
ナレーター: 少女にはまるっきり心当たりがないように見える 一通り思案したのち、少女は睨むようにスバルを見つめた
橙色の髪の少女: まさか、襲われる妾を助けたなどとぬかすのではあるまいな
橙色の髪の少女: いつ妾が助けてほしいと言った? 勘違いも甚だしい 思い上がるのもいい加減にせよ
“スバル”: 助け甲斐がないなんてもんじゃねぇぞ…… なんでここまで言われなきゃなんねぇんだ?
鉄兜の男: おーおーおー、やっと見つけたぜ、姫さん 一人歩きは危険だって言ってんだろ
鉄兜の男: もちろん、巻き込まれる周囲がだけどな んで、さっそく哀れな犠牲者が出ちまったわけだ?
“スバル”: ああ、たった今、死んで詫びるように言われたとこだよ
鉄兜の男: そうか、手遅れだったか……
“フェネ”: 残念です、スバル氏…… スバル氏の遺志はこのフェネが……
“スバル”: 待て待て待て! どうして俺が死んで詫びる流れになってんの!?
“スバル”: 助けたうえに自害させられるんじゃ、 浮かばれないにもほどがあるだろ!
“スバル”: ギブアンドテイクの精神って、結構大切だと思うけどな!
“スバル”: しかも俺が求めたのってありがとうの一言ぐらいなんだぜ?
鉄兜の男: ギブアンドテイク、ね……
ナレーター: スバルの何気ない一言に 鉄仮面をかぶった片腕の男は小さな呟きを返した
鉄兜の男: 姫さん、死なすには惜しいぜ ここは俺の顔に免じて見逃してやってくんねぇかな?
橙色の髪の少女: たわけ、何故妾が貴様の顔に免じる必要がある?
橙色の髪の少女: だが、いいだろう……今回は見逃してやる 命拾いしたな、凡愚
“スバル”: 命拾いって…… これっておっさんに感謝したほうがいい感じか?
鉄兜の男: 感謝の気持ちがあんなら おっさんって呼び方、改めてもらっていいか?
“アル”: 俺のことはアルって呼んでくれよ、兄弟
“アル”: んで、こっちの姫さんが
“プリシラ”: プリシラ・バーリエルじゃ 凡愚、貴様の名を聞いてやろう、申せ
“スバル”: 申せってな……名乗る気満々でも一気に気持ちが萎えちまうよ
“アル”: 兄弟、気持ちはわかるけどよ、ここは名乗ってくんねぇかな? 姫さんが自ら名を聞くなんて、すげぇ稀なことなんだぜ
“アル”: それに兄弟だって、できれば明日を迎えたいだろ?
“スバル”: いちいち命懸けかよ!?
“スバル”: でも、まぁ、もったいぶる必要もねぇか 俺はナツキ・スバル んで、あの青髪の……
ナレーター: スバルはレムを紹介しようとするが、プリシラは首を振る
“プリシラ”: 妾が聞いたのは貴様の名、他の者の紹介は不要じゃ
“プリシラ”: 貴様には他に聞くことがあるでな
ナレーター: プリシラの赤い瞳が、じっとスバルを見据える
“プリシラ”: 貴様、先程のアレとはどのような関係なのじゃ?
“スバル”: ──っ!
“スバル”: (アレってやっぱアレのことだよな……)
“スバル”: (けど、本当のことを言うわけにもいかねぇ……)
“スバル”: どのようなも何も、アレと友達なわけねぇだろ 関係なんて特にねぇよ
“プリシラ”: では、なぜ探していた? アレが目当てでここまできたのであろう
“スバル”: ここにきたのは……偶然だ んで、あんなもん見たら、放ってはおけねぇだろ?
“プリシラ”: 凡愚、貴様は衛兵か? 放っておいても誰も文句など言わぬはずだ
“プリシラ”: 面構えからして、貴様が善人だとは到底思えん
“フェネ”: 確かに、面構えだけなら、スバル氏は相当な悪人です
“スバル”: そ、そこまで!? 確かに目つきは悪いけども…… って、ややこしくなるから茶々を入れんじゃねぇよ、フェネ!
“レム”: 目つきの悪さもスバルくんの魅力だと思います 例え悪人面だとしてもレムのスバルくんへの想いは変わりません
“スバル”: ありがとう、レム けど、悪人面ってところはできれば否定してほしかったな
“プリシラ”: 妾との会話の途中で他の者たちと歓談とは どこまでも躾がなっておらん犬よの
“スバル”: フェネは小狐だ、犬じゃねぇよ
“フェネ”: スバル氏、あの姫君はフェネではなく スバル氏に犬と申しているようです
“スバル”: ……え? 俺が?
“プリシラ”: 犬でもなければ衛兵もなかなか見つけられん臭い獲物に そうそうたどり着けるわけがなかろう
“スバル”: ……だからあれは偶然だって
“プリシラ”: たわけ、妾の目は誤魔化せぬ 知っていることを申せ
“フェネ”: あの貴族、危険です 口を滑らさないように
“スバル”: ああ、わかってる にしても、どこまで知ってやがるんだ……
“アル”: 待て待て、そんなに警戒する必要はねぇよ さっき、なんか面白いもんを見たんだろ?
“アル”: それで色々興味津々ってだけだ
“スバル”: 興味津々なのは結構だが、 俺たちだって何かを知ってるわけじゃねぇんだ
“スバル”: むしろ、知ってることがあるなら こっちこそ教えてほしいってのが本音だよ
“プリシラ”: 凡愚、貴様は誰に命じられ動いておるのじゃ?
“スバル”: お前もしつこいな それに仮にそうだとしても、答える義理なんてねぇだろ?
ナレーター: 背中で小さくなるエミリアを感じながら スバルはプリシラの問いをかわす
“プリシラ”: なるほど、従者に汚れ仕事を押し付け 己は身を隠しているような情けない主の名など言えぬか
“プリシラ”: よほど後ろめたい事情でもあるのだろうな 名誉とは程遠い務め、哀れじゃ
“スバル”: ──おいっ! 今すぐ訂正しろっ!
“スバル”: 俺のことは何と言おうが構わねぇ けどな、今の発言は聞き捨てならねぇぞ!
“スバル”: 彼女は心優しい女の子だ! 俺はその子の優しさに何度も救われたんだよ!
“スバル”: だから俺は、彼女の王様になりたいって夢を 全力で応援するって決めたんだ!
“エミリア”: スバル……
“フェネ”: はぁ…… スバル氏は忍耐が足りませんね
“プリシラ”: ほう……アル
“アル”: へいへい、ただいま
“アル”: こちらにおわすお方こそ、 ルグニカ王国の次期国王、プリシラ・バーリエル様だ
“スバル”: なん、だと……!?
“アル”: まぁ、今は候補者の一人だけどよ、 ルグニカの次期国王はこの姫さんだ
“プリシラ”: 王選など下らぬ 妾が王となることは、すでに決まっておるのじゃ
“スバル”: 悪い、理解が追いつかねぇ…… つまり、エミリアたんと同じ立場ってことでいいのか?
“レム”: 恐らくは、エミリア様と同じ王選候補者の方かと
“プリシラ”: もうよい、だいたい察しはついた アル、いくぞ
“アル”: お、そうだな、これ以上の長居は無用だ 兄弟も混乱しちまってるしな
“アル”: んじゃな、兄弟 今後ともよろしく頼むわ
“スバル”: ……よりにもよって、また王選候補者かよ
ナレーター: 遠ざかるプリシラとアルの背中を見つめながら 思わずスバルはそう呟いてしまう
“フェネ”: 一度ならず二度までも 三度目はありませんよ、スバル氏
“スバル”: 次やらかすとスリーアウトチェンジってか? この世界でスリーアウト制に直面するとは思わなんだ
“スバル”: プリシラとアル…… どうやらあいつらにも注意が必要そうだな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_16

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_16_『異形』

“スバル”: あの、エミリアたん……? ごめん……
“エミリア”: ううん、大丈夫 スバルは私のために怒ってくれたんだから……
“エミリア”: でもねスバル、私のために無理しないで
“エミリア”: スバルがたくさん頑張ってくれても 私には返せるものなんてないもの
“スバル”: それは違うよ、俺は君に救われたんだ だから君のために頑張るのも、すげぇ理にかなってるんだよ
“スバル”: エミリアたんは、そんなことしてあげた覚えはないって 言うかもしれねぇけど、本当なんだ
“スバル”: 別に見返りがほしいわけじゃない 俺は恩返しがしたいだけだ、それだけはわかってくれ
“フェネ”: タダより高いものはないとも言いますが、 それについてはいかがでしょう、スバル氏?
“スバル”: それ、今一番聞いちゃいけないことだよね!?
“スバル”: 見返りは求めないし、無料なのは入会金だけで 翌月からバカ高い月額使用料が発生するなんてこともねぇよ
“スバル”: 本当に本当だ、頼む信じてくれ……って言えば言うほど 胡散臭く聞こえちまうのは、確実にフェネのせいだよな?
“フェネ”: 責任転嫁、悪い上司の典型です
“スバル”: なあ、フェネ ちょくちょく俺のこと上司って言い方するけど……
“スバル”: 俺とお前の契約って、雇用契約じゃないよね? もしかして賃金が発生しちゃってるとか?
“フェネ”: いえ、上司は例えです 賃金も発生しないのでご安心を
“スバル”: なら、いいんだけど…… にしても二連チャンで王選候補に遭遇するとはね……
“レム”: スバルくんは女運が強いのですね レムは少しだけ心配になってしまいます
“スバル”: 女運ってこのケースに当てはまるの!? 確かに女性は女性だったけども!
“エミリア”: やっぱり、私たちと、ええと……アレって……
“スバル”: 話の腰折ってごめんだけど、いい加減、 アレに名前を付けねぇか? 言いづらくてしょうがない
“フェネ”: 異形の存在、略して『異形』でいかがでしょう
“スバル”: まぁ、こだわることでもないからそれでいこう んじゃ、以下『異形』ということで、エミリアたん、続けて
“エミリア”: 私たちと『異形』って、何か関係があるかもって やっぱり思われちゃったかしら?
“スバル”: うーん……無関係っていうのは、ちょっと厳しいかもね……
“フェネ”: いえ、現段階ではまだ、善意で『異形』を討伐していたようにしか 見えていないはずです
“スバル”: お前のその自信、どっからくるんだよ? とはいえ──
“スバル”: そう思うしかねぇし、そう言うしかない状況だ あくまで善意の行動ってことで押し通そう
“レム”: ……!
ナレーター: 警戒のため、先頭を歩いていたレムの足が止まる
“スバル”: レム、何か……
“スバル”: ……! あんたは確か……
緑髪の麗人: ふむ、どこかで会っていたかな? すまない、失念してしまったようだ
“レム”: 昨日は助けていただきありがとうございました
緑髪の麗人: 卿は昨日の…… なるほど、では彼らが?
“フェネ”: 左様です 腰が抜けて動けなかった情けない連れがこちらの悪人面です
“スバル”: 初対面の人に俺の低評価刷り込むの止めてくんない!?
“スバル”: ああ、ええと、昨日はありがとうございました お礼が遅くなってしまってすみません
緑髪の麗人: いや、あのような事態だったのだ、無理もない
緑髪の麗人: ところで、昨日の今日で、この時分に出歩くとは感心せぬな
緑髪の麗人: それとも、別の目的があるのだろうか?
ナレーター: 緑髪の麗人の視線は、鋭くスバルを射貫いていた

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_17

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_17_カルステン家の当主

ナレーター: 緑髪の麗人の鋭い指摘に、スバルは完全に目が泳いでいた
ナレーター: エミリアは例のごとく、スバルの後ろに身を隠している
“スバル”: (なんとか繕わねぇと、怪しまれちまう……)
“スバル”: ……おいフェネ、なんかうまいこと言ってくれ 余計なときはうるさいくせして、肝心なときにはだんまりか?
“フェネ”: 我々はやんごとなき主の命に従い、 王都を脅かす不逞の輩を正すべく闇を駆けております
“スバル”: ……正義の忍者の口上みたいになってるけど
緑髪の麗人: 言葉の意味を理解しかねるところもあるが、概ね了解した 此度の騒ぎを鎮めんとする、それが卿らの目的だな
“スバル”: ……! 気付いてたってことか……?
緑髪の麗人: ただ身の危険を感じて隠れていたわけではなかったのだろう? 先を急いでいた故、追究はしなかったが
“レム”: ……!
緑髪の麗人: 沈黙は皮肉にも雄弁に事実を物語るとは言い得て妙だな
緑髪の麗人: さて、王選候補者エミリアとその従者が、 王都の異変を探り歩いていると聞いたが——
緑髪の麗人: 卿らで間違いないな?
“スバル”: ──っ! いや…それは……
緑髪の麗人: 答えられぬか? ならば卿の背後にいる者に尋ねてもよいぞ
“スバル”: オッケー、降参だ、白状する だからこの子に聞くのは勘弁してくれ
“スバル”: すげぇ恥ずかしがり屋なんだよ 初対面の人とはまともに話せねぇ
緑髪の麗人: ほう……
“スバル”: (もしかしてエミリアだってバレてる……?)
ナレーター: 麗人の琥珀色の双眸は、スバルの嘘を見抜いているように見えるが 今さら訂正できるような雰囲気ではない
“スバル”: こっらの素性は明かしたんだ 今度はそっちの番なんじゃねぇかな?
“スバル”: あんたの身なり、腕前、 ただ者じゃないってことは察しがついてる
“スバル”: 衛兵と近衛騎士団が当たってるはずのこの件に どうして衛兵でも近衛騎士団でもないあんたが関わってるんだ?
緑髪の麗人: なるほど、確かに紹介がまだだったな これは失礼した
“クルシュ”: 私はカルステン公爵家当主、クルシュ・カルステンだ ルグニカ王国王位継承候補者の一翼を担っている
“エミリア”: ……っ!
“スバル”: ……クルシュ・カルステン? 王位継承候補?
“フェネ”: いよいよここまでくると悪運ではなく強運、 否、豪運とでもいいましょうか
“フェネ”: 今なら宝くじでさえ当てられるかもしれません
“スバル”: た、宝くじ!? この世界にもあんの!?
“フェネ”: いえ、それが何かは知りませんが、スバル氏の顔に書いてありました
“スバル”: ったく、宝くじって書いてある顔ってどんな顔だよ……
“スバル”: それでクルシュさん、あんたの素性はわかった けど、俺の質問はもう一つあったはずだぜ?
“クルシュ”: 此度の異変を解決する目的、それは恐らく卿らと同じだ
“スバル”: ……俺たちと同じ? つまり、傷つく王都の人たちを見たくないって感じか?
“クルシュ”: そうだ それ以上の理由など不要であろう
“スバル”: なるほど…… エミリアたんと同じで、心優しい人みたいだな
“スバル”: んで、目的は一緒だが、王選じゃライバル同士…… さてさて、どうしますかね?
ナレーター: スバルの問いにクルシュは不敵な笑みを浮かべる
“クルシュ”: さて、どうしたものかな?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_18

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_18_意外なる提案

ナレーター: 王選候補者、クルシュとスバルらの睨み合いは 思わぬ一言で終わりを告げる
“クルシュ”: エミリアの従者よ、聞いてほしい 私は卿らに共闘を申し入れたい
“スバル”: ……え? 今なんて?
“フェネ”: しっかりしてください、間抜けが露呈していますよ
“スバル”: ……うっせ、不意を突かれたんだよ!
“スバル”: ええと、クルシュさん…… それは本気、なのか?
“クルシュ”: 当然だ 王都にかかる火の粉を払おうとする者同士、なのであろう?
“クルシュ”: 時は一刻を争う 今手勢が少し、王都に欠けていてな
“クルシュ”: 私も優先しなければならない事柄がある 王都の守備に力を割くのが難しいのだ
“クルシュ”: だからこそ、手駒は多いほうがいい 敵の勢力が読めない以上、なおさらだ
“スバル”: まぁ、それはそうかもしれねぇけど…… 俺たちを信じてくれるってことでいいのか?
“クルシュ”: おかしな質問だな 信頼とは一朝一夕で築けるものではない
“クルシュ”: だが、卿が口にした理由に、嘘はないように思えた
“クルシュ”: 傷つく王都の民たちを見たくないのであろう?
“スバル”: ああ、見たくない なんとしても阻止しなくちゃならねぇって思ってるよ
“クルシュ”: 私も同じく、王都に危機が迫っているのであれば 私は全身全霊をかけてそれを排除する
“クルシュ”: 目的を等しくしている そして、それを遂行する強い意思もある
“クルシュ”: 共闘を申し入れるのに、これ以上の理由が必要か?
“スバル”: なるほど、確かにそうだな
“スバル”: 俺としては、共に戦った後に、 クルシュさんとは厚い信頼関係が築けてたらって思うよ
“スバル”: ……ということでいいかな?
ナレーター: スバルは背後のエミリアにそっと確認する
“エミリア”: ……うん、クルシュさんとは ロズワールも仲良くしたいって言ってたもの
“スバル”: わかったクルシュさん、協力しよう
“クルシュ”: ではそろそろ、卿らの名前を聞いてもよいだろうか?
“スバル”: あれ!? もしかして!?
“フェネ”: はい、クルシュ女史に名乗らせておきながら こちらは名乗っていません
“スバル”: うっ……それはさすがに失礼した……
“スバル”: 俺の名はナツキ・スバル! 王選候補者、エミリアたんの頼りになる従者だ!
“レム”: ロズワール・L・メイザース辺境伯が使用人筆頭 並びにスバルくんだけのメイド、レムです
“スバル”: レムさん? それここで言うやつ? 俺も余計な情報入れたけども!
“フェネ”: 無能故に部下を奴隷のように使役する上司 ナツキ・スバルと不当契約を結ばされた精霊フェネです
“スバル”: フェネ! お前のはもはや悪口だよね!? しかも名誉毀損で訴えたら勝てるレベルの!
“クルシュ”: なるほど、実に愉快な面々が揃っているようだな、エミリア
ナレーター: クルシュの言葉に、エミリアはスバルの背後から前に出る
ナレーター: スバルが確認するより早く、エミリアはスバルの背を離れ クルシュの前に歩み出ると、認識阻害のローブを外した
“エミリア”: クルシュさん、隠れててごめんなさい 色々事情があって……
“クルシュ”: 構わないが、私としては卿自身の意思を確認したい 共闘に異がないのであれば、私の手を取ってくれ
ナレーター: 差し出されたクルシュの手をエミリアがしっかりと握る ここに、一時ではあるが共闘の約束が成立した
“フェネ”: スバル氏……
“スバル”: 反応ありってわけか?
“フェネ”: はい、おそらく大トリです
“スバル”: よく知ってんなそんな言葉 また俺の顔に書いてあったか?
“フェネ”: はい、クライマックスというやつです スバル氏の顔いわく
“スバル”: 上等だ……やってやろうじゃねぇか ちょうど戦力が爆上がりしたとこだしな
“スバル”: ということで、いくぞみんな! 初めての共同作業だ、 今後の関係のためにも、是が非でも成功させねぇとな!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_19

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_19_巨大な「穴」

ナレーター: フェネが感知した特大級の反応を辿って訪れた場所には 想像を絶する光景が広がっていた——
“スバル”: なんだ……あれは……!
“エミリア”: 嘘……周囲のマナが全部あの穴に吸い込まれてる!
“フェネ”: 平原で遭遇した、ページが魔獣を丸呑みしていた状態から 更に段階が進行した、といった具合でしょうか
“クルシュ”: 随分と落ち着いているな 卿らは、すでに似たような事態に遭遇したことがあるのだな?
ナレーター: クルシュの額には汗が滲み、 背筋に戦慄が走りぬけるのを感じた
ナレーター: 毅然とした態度こそ崩さないのは、彼女の信念が為せる業だ
“レム”: スバルくん、気を付けてください! あれは、レムたちも飲み込もうと……あっ!
“スバル”: レム! 前に出るな——
ナレーター: 次の瞬間、空間に空いた穴は一段と大きくなり、 いとも簡単にレムを飲み込んでしまった
“スバル”: ──レムーーーっ!!
“フェネ”: スバル氏、残念ながらレム女史を心配している余裕はありません
“エミリア”: スバル! 何かに掴まって! じゃないとスバルも──
“スバル”: エミリア……!!
“スバル”: ちくしょうっ! どうしてこうなったっ? 俺がうまくやってりゃ、レムだってあんなことには……
“クルシュ”: ここで振るうには被害が…… ──しかし、この状況ではやむを得んっ!!
ナレーター: 徒手空拳のクルシュが、まるで剣を握っているように構える
ナレーター: だが、それをあざ笑うかのように、空間の穴はさらに広がり 渦は全てを吸い込まんとその勢いを増す
“スバル”: がっ! だぁーーーーー!!
“エミリア”: ス、スバ——きゃぁああああ!!!
“クルシュ”: おのれ……間に合わん!!!
“スバル”: ……っ……ここは……あの世か?
ナレーター: そう思ったスバルだったが、すぐにそうではないと気付く
“スバル”: 『死に戻り』してねぇ…… どうやら生きてはいるみたいだな……
“スバル”: ──エミリア!
ナレーター: すぐ傍に倒れているエミリアを見つけ、 スバルは慌てて彼女を揺さぶった
“エミリア”: ん……スバル? 私たち……どうなっちゃったの?
“スバル”: わかんねぇ、とりあえず生きてはいる
“エミリア”: そう……それで…みんなは……?
“スバル”: みんな……? 確かに!
ナレーター: エミリアの言葉に、スバルは辺りを見回し レムとクルシュの姿を発見する
“スバル”: レム……! クルシュさんも!
“レム”: ……う、スバルくん、無事ですか……
“スバル”: レム、生きてるんだな! よかった……
“クルシュ”: くっ、どうやらあれに吸い込まれたようだ……
“スバル”: クルシュさん、大丈夫ですか!
“クルシュ”: ああ、吸い込まれた瞬間は生きた心地がしなかったが 見ての通りだ
“フェネ”: 皆様、ご無事でしたら早々に戦闘準備を
“スバル”: フェネも無事だったか! ……って、今なんて?
“フェネ”: 皆様お休みのうちに軽く探索しておりましたが このページの主と遭遇しまして
“スバル”: ……だとしたら叩き起こしてくれねぇかな? 気を失ったまま放置とかありえねぇだろ!
“スバル”: それに……その口ぶりだと……?
“フェネ”: はい、まもなく到着の見込みです
“フェネ”: ページに描かれた最も厄介な存在は マナ不足で顕現できていなかったようですが
“フェネ”: 現在は満腹にして大満足、食後の大運動会といった感じで 我々が食い止めねば、その後の舞台は王都になります
“スバル”: 確かにありゃそんな感じだな……
ナレーター: フェネの後ろには、 禍々しく息を吐く『異形』の存在が屹立していた
“クルシュ”: 事情は後で聞こう アレは、ここから出て王都で暴れ回る気なのだな?
“スバル”: どうやらそのつもりみてぇだけど、 ここは全力でお引き取り願うぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c01_20

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_1章FIX_■1章_エピローグ_風見の加護とスバル

“クルシュ”: はぁぁああああ!!!!
ナレーター: 『異形』の存在の脳天にクルシュが剣を突き立てる
“異形”: ぐごがぁぁぁあああああ!!!!
“スバル”: さすがにありゃひとたまりもないだろ!
“フェネ”: みなさん、構えて! はじき出されます!
“スバル”: ぬわぁ!? うわぁああぁーっ!!
“レム”: ──スバルくん! エミリア様!
ナレーター: レムは鉄球の鎖を二人に伸ばす スバルとエミリアはとっさにそれに捕まった
“レム”: クルシュ様、申し訳ありません! そちらまで届きません!
“クルシュ”: 問題ない! 自分の身は自分で守ろう!
“フェネ”: きます!!!
“スバル”: ……う、戻った、のか……?
ナレーター: 同じタイミングで、エミリアとレムが起き上がり 互いの無事を確認し合う
“スバル”: クルシュさんは……?
“クルシュ”: ……
ナレーター: クルシュはすでに起き上がり、一点を見つめていた
ナレーター: その先には、空白のページを『禁書』に綴じるフェネの姿があった
“クルシュ”: さて、あの精霊についてと、 卿らが何故異変を追っていたのかについて……
“クルシュ”: 話してもらえるのだろうな?
“スバル”: あれを見られちまったら、そうするしかないよな……
ナレーター: スバルはちらりとエミリアの方を見る エミリアは覚悟した表情で小さな頷きを返した
“スバル”: フェネは……あいつが持っている本の守護者みたいなもんだ
“スバル”: あの本に封じられていた存在が、 どういうわけか出てきちまったらしい
“スバル”: 俺らは、近々王城にエミリアが呼ばれる予定だったから 早めに王都にやってきて滞在してたんだけど……
“スバル”: たまたま異変に遭遇して、ついでにフェネとも出会ったんだ
“クルシュ”: ……ふむ
“スバル”: 事情を聞いたエミリアが、王都のみんなが危ないって知って フェネの手伝いをしようって……
“スバル”: それで、今に至るってわけなんだけど……
ナレーター: スバルはクルシュの様子を伺う クルシュは、まっすぐにスバルを見つめていた
“クルシュ”: それが全てか?
“スバル”: ああ、以上だ 悪いけど、俺らもあれについてはあんまり詳しくないって感じで
“スバル”: おまけにフェネも記憶喪失ときたもんだ お手上げ状態なのはあいつも一緒だ
“クルシュ”: ……そうか
“スバル”: よ、よかった、わかってくれたなら——
“クルシュ”: 『エミリア陣営は此度の王都の異変に明らかに関与している  しかし、その事実については隠蔽しようと目論んでいる』
“クルシュ”: ——このような噂が市井に膾炙してもいいというなら、 卿の言い分を承諾しよう
“エミリア”: どうして……!?
“スバル”: い、今の話でなんでそうなるんだよ!?
“クルシュ”: ——卿が事実を隠蔽しようとしているからだ
“スバル”: な、なんで決めつけるんだ?
“クルシュ”: ナツキ・スバル 卿は慎重に言葉を選んでいたようだが、明らかに風が変わった
“フェネ”: ……道理は不明ですが、 見破られていると判断して良さそうです
“エミリア”: クルシュさん、あの……
“スバル”: エミリア、待ってくれ 俺が話す
ナレーター: スバルはクルシュをまっすぐに見つめ返す 全てを見透かすような琥珀色の双眸を睨んだ
“スバル”: ……カマをかけてるってわけじゃ、ないんだよな?
“クルシュ”: それもまた、手段の一つだろうな だが私は確信を持っている
“クルシュ”: 卿が嘘をついている、とな
“スバル”: ふぅーー……
“スバル”: わかった、話す でも最初にこれだけは言っておきたい
“クルシュ”: ——聞こう
“スバル”: これはすべて俺の責任だ
“エミリア”: スバル……!
“クルシュ”: 卿の主は、驚いているようだが?
“スバル”: 俺の主は人が良すぎる 俺に責任があることでも自分の責任にしちまうんだよ
“スバル”: まず俺とフェネの関係について…… 王都で出会ったってのは嘘だ
“スバル”: といっても、そんなに付き合いが長くないのは事実 出会ったのはつい最近だ
“クルシュ”: ……信じよう フェネが『禁書』の守り手ということも
“スバル”: それは手間が省けた ……で、その本だけど、いわゆる『禁書』って奴で
“スバル”: 俺の雇い主のロズワールの屋敷には そういった類の趣味の悪いコレクションがあるんだけど……
“スバル”: 俺が、そこから持ち出した
“クルシュ”: ほう……? 卿が
“レム”: ──スバルくん!
ナレーター: クルシュがその瞳を細め——一瞬放った剣気に反応したレムが とっさにスバルの前に立つ
“スバル”: サンキュ、レム でも今のは俺が悪い
“スバル”: 一連の黒幕が俺みたいな言い方だったもんな クルシュさんが構えるのも無理はねぇ
“クルシュ”: 些か気が急いてしまったようだ 誤解を招いたことを詫びよう、すまない
“クルシュ”: 安心していい、いきなり斬りかかろうなどと そのような卑小な真似はしないと誓う
ナレーター: クルシュはレムをたしなめるように薄く微笑む
ナレーター: それに呼応するかのように、 レムはゆっくりと鉄球をおろして引き下がった
“スバル”: 『禁書』は、俺が持ち出しちまった…… 意図したわけじゃないんだが
“スバル”: 詳しくは恥ずかしすぎるから省かせてくれ……
“スバル”: とにかく、俺の過失ってことで間違いない ここまでは大丈夫か?
“クルシュ”: ああ、その説明で構わない 十分悔いている卿をいたずらに辱める気はないからな
“スバル”: はは、ここでも気を遣われんだな、俺は…… 情けねぇぜ、まったく
“スバル”: んで、その過程で、俺はフェネに見初められた…… 契約関係で、一緒に事態を解決するって約束したんだ
“スバル”: この件に関して、明らかにエミリアとロズワールは被害者だ
“スバル”: 雇った使用人が、とんでもないことをやらかしたせいで バレたら王選に不利に働く爆弾を抱えちまった
“スバル”: それなのに、 俺の首を切ろうとしないで、手伝ってくれてるんだ
“スバル”: 確かに、王選に不利になるからケツを拭くしかねぇって 言ったらそうなのかもしれないけど——
“スバル”: そんなの、俺に全部背負わせて、 切っちまったほうが早いと思わないか?
“クルシュ”: だが、雇い主には監督責任というものがある
“スバル”: 俺は『禁書』を、持ち出した、んだぜ? 悪意ある密偵だったってことにもできたはずだ
“スバル”: それなのに、俺みたいな爆弾を抱えたまんま 問題解決に動こうなんて……
“スバル”: 優しくて、できた主だと思わないか? マジで俺にはもったいねぇ……
“エミリア”: ……スバル? なんの話をしてるの……?
ナレーター: エミリアは、スバルの話の展開に、嫌な予感を覚えたのか 不安そうに見つめている
“レム”: スバルくん、まさかとは思いますが……
“フェネ”: ……
“スバル”: エミリアたん、勝手なこと言ってごめん 今日で、屋敷の仕事、辞めさせてくれないか
“スバル”: 本当なら莫大な損害賠償が発生するような責任問題だ…… 物理的に首をはねられても文句はいえねぇ
“スバル”: それが、こうして命拾いしてる 感謝感激雨あられなのに、また無責任なこといってごめん
“スバル”: やっちまったことの責任は これから、ページ集めて絶対果たすから
“エミリア”: ス、スバル!?
“スバル”: 俺は金輪際、エミリアとその陣営には関わらない これからは、ただのナツキ・スバルだ
“スバル”: つまり、この問題が、王選候補者のエミリアと、 後見人を務めるメイザース辺境伯には関係ないってことだ
“レム”: スバルくん、ダメです! スバルくんが辞めてしまうなんて……そんなことレムは……
“スバル”: わかってくれ、レム 俺なりに考えに考えた結論だ
“クルシュ”: ナツキ・スバル 卿の発言は以上ということでいいか?
“スバル”: ああ、洗いざらい話したぜ これ以上はねぇよ
“スバル”: 見事、無職になっちまったけどな
“クルシュ”: ……無職? 卿の主にはその意思はなさそうだが
“エミリア”: 当たり前です、そんなこと認められません スバルのこと、辞めさせたりしないもの
“エミリア”: だいたい、使用人を辞めて、どうやって食べていくつもりなの?
“スバル”: いきなりシビアな現実!?
“スバル”: いや、でも、ほら、いざとなったらどんなことでもしてさ 俺ひとりぐらい食っていけるんじゃねぇかな?
“エミリア”: どんなことでもって、具体的にはどんなこと?
“スバル”: いや、それはパッとは出てこないけども! 今は出ないってだけ 時間かけて考えれば必ず
“エミリア”: 今ちゃんと出ない子を、放り出したりできません
“スバル”: まいったな…… ここはかっこつけさせてくれねぇかな?
“クルシュ”: ナツキ・スバル、卿のその心意気、良しと評そう 卿の主君を思う気持ちに偽りはない
“スバル”: クルシュさん……!
“クルシュ”: しかし、それで飲み込めるほど、この件は軽くない
“クルシュ”: あと少し対応が遅れれば、王都がどうなっていたか わからないのだからな
“スバル”: ……その通りだ
“クルシュ”: 問題の解決には近衛騎士団も当たっている やはり彼らに報告するのが筋というもの
“クルシュ”: いずれこの国の王となるものとして 事実の隠蔽に加担することを良しとはできない
“スバル”: そう……なるよな 共闘も、ここで終わりってわけだな?
“スバル”: でも、ある意味安心したよ やっぱりクルシュさんはズルい人じゃないんだな
“スバル”: さっきの話をホイホイ飲み込んで、 安心させてから陥れることだってできたんだから
“スバル”: はぁー、やっぱり俺、首はねられんのか? どうせならエミリアたんにはねられたかったぜ……
“クルシュ”: ナツキ・スバル
“スバル”: ……ん?
“クルシュ”: まだ、私の話は終わっていないぞ
“スバル”: え……俺に衛兵を突き出されて、友であるラインハルトが 涙しながら俺の首をはねるって話じゃないのか?
“クルシュ”: ふ、この状況でその冗談が言えるとは やはり卿は妙に肝が据っているな
“クルシュ”: ──私は、ルグニカの王になる 我が大願のため、その座を譲るわけにはいかない
“クルシュ”: しかしそれは、共に競う王戦候補者を 蹴落とすという意味であってはならない
“エミリア”: ……どういう、ことですか?
“クルシュ”: もう一度言おう、ナツキ・スバル
“クルシュ”: 主君を思う卿の心意気は称賛に値する そのような従者を持つ主君が愚かであろうはずがない
“クルシュ”: ならばこそ私は、卿らと正々堂々と王選を戦い 王になりたいと思う
“スバル”: つまり…… それって……!
“クルシュ”: 問題が卿らにあったとて、 現にこうして自ら解決しているのだ
“クルシュ”: 一連の問題は、飲み込ませてもらおう 卿がエミリアの元を離れるか否かにかかわらずな
“クルシュ”: ……無論、今後も我が陣営や、その他に影響がないよう 問題を卿らが抑え込むという前提でだがな
“スバル”: 本当か、クルシュさん? エミリア陣営ごと、飲み込んでくれるんだな?
“クルシュ”: ああ、そもそも卿の話には無理があるぞ
“クルシュ”: 卿がエミリアの元を去ったとて、卿を使役していたときの不祥事だ 無関係とはなるまい
“スバル”: た、確かに!?
“スバル”: まぁ、でも、クルシュさんが 胸の内に秘めといてくれるんなら、よかった
“クルシュ”: ただし、他の王選候補者やその関係者などに知れた場合、 我々が肩を持つ筋合いがないことも付け加えさせてもらう
“スバル”: そ、そりゃそうだな…… クルシュさんたちにまで迷惑かけられねぇ、了解した
“クルシュ”: ナツキ・スバル、卿は誠意を持ち偽りなく話してくれた 私もそれに応え、一つ種明かしをさせてもらおう
“スバル”: 種明かし……?
“クルシュ”: 私に嘘は通用しない
“スバル”: どういう、ことだ……?
“クルシュ”: 『風見の加護』…… 嘘をつくものには嘘の風が吹く、私にはそれが読めるのだ
“スバル”: マジかよ……だからクルシュさんは……
ナレーター: スバルにはいくつかの心当たりが浮かぶ あれらはすべてその加護によるものだったのだ
“クルシュ”: さて、ナツキ・スバル ……いや、卿の主はエミリアだったな
“クルシュ”: エミリア、今後も共に戦うにあたり、一つ条件を出そう
“エミリア”: なにクルシュさん? なんでも言って
“クルシュ”: 問題の対処の進捗について、定期的に報告を受けたい 私にも協力できることがあるはずだ
“スバル”: ……今後も協力してくれるんだな?
“クルシュ”: ああ 我々に不利益がある場合、 指を咥えて見ているわけにもいかないからな
“スバル”: なるほど、あくまでそういうスタンスってことね まぁ、それでもすげぇありがたいけど
“エミリア”: わかりました クルシュさんにちゃんと報告します
“スバル”: あの、これって……口約束でいいヤツ?
“スバル”: 俺のやらかしを胸にしまってくれて、 今後も協力してくれるんだろ?
“フェネ”: 優秀なフェネが一言一句記憶しているので 後ほどエビデンスを発行しましょう
“スバル”: その横文字、ほんとに俺の顔に書いてあった!?
“レム”: エミリア様、スバルくんが言う通り こういうことはしっかり書面にするべきかと
“エミリア”: そうね、後日、書面にしてクルシュさんにもお届けするわ
“クルシュ”: では、そうしてもらおう
“クルシュ”: ……さて、ここに衛兵がこないとも限らない そろそろ解散したほうがよさそうだな
“スバル”: これって、解決したぞ的なことを それとなく知らせたほうがいいんじゃ?
“クルシュ”: いや、下手に動かず 近衛騎士団の判断に任せたほうがいいだろう
“クルシュ”: 我々も引き続き、事態が落ち着くまでは 調査を行っている体を続けさせてもらう
“エミリア”: クルシュさん、ありがとう
“クルシュ”: 知ってしまった以上、私も関与を疑われる立場だ やむを得まい
“スバル”: あれ? もしかして巻き込んじまった……?
“フェネ”: 共犯関係、というヤツでしょうか? フェネたちだけの秘め事……
“スバル”: ああ、そりゃドキドキするな! ──なんてなるかよ!
“スバル”: 少なくとも俺は、あんま冗談とか言える立場じゃねぇ お気軽なフェネと一緒にすんな
“フェネ”: スバル氏、確かにスバル氏が自覚している通り すべての責任はスバル氏にあります
“フェネ”: クルシュ女史まで巻き込まれてしまいました
“フェネ”: ですが、どんな状況でも息抜きは必要です
“スバル”: いやいや、絶対俺に息抜きさせる気ないよね!? お前の言葉が豪速球で俺の心を撃ち抜いていったわ!
“クルシュ”: では、私はいかせてもらう 卿らからの報告、待っているぞ
ナレーター: そう言い残しクルシュが立ち去ると、緊張感は和らいでいた
“スバル”: はぁーーー、緊張したぁーーー……
“エミリア”: スバル?
“スバル”: あ、疲れたよねエミリアたん 早いとこ戻ろっか!
“エミリア”: えっと…… 戻る、でいいんだよね? いなくなったりしない?
“レム”: ……
ナレーター: 逃さない、と言わんばかりに、 レムがスバルの服の裾を掴んでいる
“スバル”: ああ、クルシュさん的にも 大目に見てくれるっぽかったしな
“スバル”: 引き続きお世話になっていいんだよな?
“エミリア”: もちろんよ、スバル そもそも私、スバルを辞めさせたりしません
“レム”: そうです、スバルくん スバルくんが辞めさせられるなら、 レムが代わりにお暇をいただきます
“スバル”: その交換はあんま成立してないかな! レムがいなくて 姉様と二人だなんて、解雇された方が何百倍もマシだし
“スバル”: まぁ、でも、ありがとう、エミリアたん、レム 今後ともよろしく頼むわ
ナレーター: かくして、王都で発生した『禁書異変』は終息した
ナレーター: しかし、『禁書』に綴じられたページは まだ、ほんの数枚に過ぎない──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_00

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_プロローグ_治癒術士と執事 更新日:2021/02/15

ナレーター: スバルたちがクルシュと共に 王都の異変を解決してから二週間後……
“スバル”: クルシュさん、待たせて悪かったな ちゃんと合意内容を書面にしてきたぜ
“クルシュ”: すまない、手間をかけさせたようだ 感謝するぞ、ナツキ・スバル
“スバル”: いやいや、感謝するのは俺のほうだ クルシュさんが協力してくれたおかげで、マジで助かったよ
“クルシュ”: 私は当然のことをしたまでだ 王都の民を危険に晒すわけにはいかないのでな
“スバル”: さすがは王選候補って感じか?
“フェネ”: ええ、腰が抜けて動けなかったスバル氏とは大違いです
“スバル”: まだそのこと持ち出す!?
“スバル”: だいたいあれはレムがとっさについた嘘で、 事実とは違うだろうが
“レム”: はい、スバルくんはクルシュ様に負けず劣らず、 今回も大活躍でした!
“フェネ”: 大活躍と言いますが、元を正せばスバル氏が……
“スバル”: うぐっ! レムの賞賛がなぜか ダメージに変換されて俺の心をえぐってくる!
“レム”: すみませんスバルくん レムはそんなつもりじゃ……
“スバル”: いやいや、レムは悪くないから! 悪いのは──
“フェネ”: まぎれもなくスバル氏です
“スバル”: うん、そうだな! 全部俺が悪い!
“スバル”: それは認める 認めるけども、 今回のケースは、明らかにもう一人悪い奴がいるよね?
“フェネ”: はて?
“スバル”: はて、じゃねぇよ! お前が余計なこと言わなきゃ、レムも俺も傷つかなかったんだ!
“スバル”: だいたいフェネは──
“エミリア”: こら、いつまでもふざけてないの クルシュさんもいるんだから
“クルシュ”: なに、私は構わない 気が済むまで続けてくれ
“スバル”: そう言われると逆に続けづらいというか、なんつーか…… 見苦しいとこお見せして、すんません
“クルシュ”: そうか では、書面に目を通させてもらおう
ナレーター: クルシュはそう言うと、スバルから受け取った書面に目を通す
ナレーター: しばしの静寂がその場を支配し 周囲の空気は一瞬で変わっていた
ナレーター: スバルは明らかに気後れし、レムやエミリアの表情も固い
“クルシュ”: ナツキ・スバル
“スバル”: は、はい!?
ナレーター: 突然、自身の名を呼ばれ、スバルは全身を強張らせた
“クルシュ”: そう構えるな、今さら約束を反故にしようなどとは思っていない ……肩の力を抜いてくれ
“フェネ”: なるほど、蛇に睨まれた蛙とはよく言ったものです
“スバル”: ……返す言葉が見つからねぇよ
ナレーター: フェネが小さく呟くと、思わずスバルは肩をすくめた
“クルシュ”: うむ、書面は確かに受け取った 内容も相違ない さらに言えば、恐ろしいほど正確だった
“フェネ”: ええ、一言一句記憶していると言ったはずです フェネは優秀ですから
“スバル”: 記憶喪失の奴が言っても説得力ねぇけどな
“フェネ”: スバル氏は揚げ足を取らせたら天下一品ですね
“スバル”: 全然嬉しくねぇ!
“クルシュ”: ……卿は記憶がないのか?
“フェネ”: 左様です 長年の封印のためか 『禁書』散逸のせいかは判然としませんが
“フェネ”: ですが心配には及びません 『禁書』を可及的速やかに回収する使命がフェネを突き動かします
“クルシュ”: ふむ、そうか ならばこれ以上は尋ねまい
“クルシュ”: それで進捗はどうだ、聞かせてもらえないか?
“スバル”: んじゃ、俺から 王都周辺の『禁書』のページはだいたい回収できた
“スバル”: まだ王都じゃ、色々な情報が出回ってるみたいだけど 目に見える異変がぐっと減ったってのが、俺の体感だな
“クルシュ”: それについては私も同意する 卿らと共闘して以来、アレとは遭遇していない
“フェネ”: しかし、油断はできません 発見されずにいるページの存在を否定できません故
“クルシュ”: もっともだ 警戒を怠るつもりはない
“フェネ”: しかし、人々は日常に戻りつつあります ただの怪奇現象だったと笑い飛ばしてしまうほどに
“クルシュ”: 市井とは往々にしてそういうものだ 彼らに罪はないだろう
“フェネ”: 左様です……無辜の民にとって王都を騒がせた異変は 流行り風邪のようなもの
“フェネ”: それらは一過性の事象に過ぎず、永遠に続くはずがない 必ず終わりが訪れると無邪気に信じている
“フェネ”: しかしそれは、“終わる”のではない 人が“終わらせる”のです
“フェネ”: 平穏な日常に戻りたいという集団心理がそうさせる 彼らは忘れることで、脅威に終止符を打とうとする
“エミリア”: ……フェネ?
“クルシュ”: ずいぶん自分を棚にあげた発言だとは思わんか? 『禁書』の異変を招いたのは卿であろう?
“フェネ”: いえ、招いたのはスバル氏です
“クルシュ”: しかし、今さら無関係だと言い切れまい それとも……卿は人間に“恨み”でもあるのか?
“フェネ”: フェネは、そのような民草の上に立つクルシュ女史の ご心労やいかにと、ご心配を申し上げた次第です
“クルシュ”: 些かわかりにくいな だが卿が私を労ってくれているということは受け取った
“クルシュ”: 案ずるな 民の営みはよく理解しているつもりだ 必ずや御してみせよう
“フェネ”: 杞憂でした ご無礼を
“フェネ”: ですが、フェネの失態は全てスバル氏の責任 さあ、スバル氏、クルシュ女史に謝罪を
“スバル”: なんで俺が頭を下げるんだよ!? お前が言いたいことを言っただけだろ!
“フェネ”: 部下の責任は上司の責任、上司の責任は上司の責任です、スバル氏
“スバル”: 上司のメリットがまるでねぇ!?
“スバル”: 俺、上司辞めさせてもらうわ これからはお前が上司で、俺が部下な
“フェネ”: わかりました では、スバル氏に上司として命じます フェネに代わってクルシュ女史に謝罪を
“スバル”: 結局そうなるのな!?
“スバル”: やっぱり上司の交代はなしだ! ったく、俺が上司の方がまだマシだぜ
“クルシュ”: ふっ、気兼ねなく言い合えるのは、よい主従関係の証だな
“スバル”: そ、そうか?
“クルシュ”: 私にはそう見えたが、 どうやら本人には自覚がないようだな
“クルシュ”: では、話を戻そう 卿らには全面解決の目途は立っているのか?
“エミリア”: えっと、それは……
“クルシュ”: 確かに王都界隈の異変は急速に減退している これは私も認めるところだ
“クルシュ”: しかし、王選を控えた今……
“クルシュ”: 王都でのこのような騒ぎを、ただの怪奇現象だったと 手放すほど騎士団は悠長に構えてはいない
“クルシュ”: 不可解であればあるほど、 皮肉だが猜疑の眼は強まっていくだろう
“クルシュ”: つまらぬ誤解を受ける可能性もある 少なくとも人為的に発生したのは事実なのだろう?
“フェネ”: ええ、全面的にスバル氏の責任です
“スバル”: くっ……
“エミリア”: スバル、あんまり思いつめないで 誰にだって失敗はあるもの
“レム”: スバルくん…… 不可抗力だったとレムは思っています
“フェネ”: ……いつもの威勢はどうしたのですか これではフェネが嫌味で陰湿ないじめをしているようです
“スバル”: ちょっとは自覚があんだな
“スバル”: けど、この件に関しちゃ何も言い返せねぇよ 持ち出した俺が悪い 間違いなく全て俺の責任だ
“スバル”: (でも、どうして俺はあのとき、 持っていこうなんて、思っちまったんだ……?)
“エミリア”: スバル、フェネ、それくらいにして 今はみんなで協力するべき、そうでしょ?
“フェネ”: エミリア女史には敵いませんね 当然の如くお力添えいただけること、心から感謝申し上げます
“エミリア”: クルシュさん、まだ全て解決できる状態ではありません 私たちにもわからないことがたくさんあって……
“エミリア”: だから、改めてクルシュさんに協力をお願いしたいの
ナレーター: エミリアがそう言い終えた直後、 執務室のドアをコツコツとノックする音が響いた
“クルシュ”: 入れ
???: 失礼しまーす クルシュ様、ただいま戻りましたよ!
“クルシュ”: ご苦労様だったな、フェリス それからヴィルヘルムも
“フェリス”: いえいえー、クルシュ様にそう言っていただけるだけで フェリちゃんの疲れにゃんてどこかにふっ飛んじゃいまーす!
“スバル”: おぉ!? 猫耳!
“フェリス”: はにゃ? 見ない顔だね? えっと……って、エミリア様?
“エミリア”: こんにちは、フェリス
“スバル”: エミリアたん、知り合い?
“エミリア”: ええ フェリスはクルシュさんの騎士なの
“スバル”: え、騎士!? 猫耳で騎士とか斬新だな!
“フェリス”: にゃにさ、フェリちゃんがそんなに気になる?
“スバル”: あ、いや、こっちにきて間もないもんで まだ知らないことだらけっつーか……
“フェリス”: ふうん、君もこの辺りじゃ見ない珍しい格好をしてるよね まさか異変の真犯人だったりして?
“スバル”: ぎくっ!
“フェリス”: ちょっとわかりやすすぎない!? 明らかに怪しいんだけど!
“スバル”: ハ、ハハハ……
“クルシュ”: ナツキ・スバル、フェリスは私が最も信頼している人物のひとりだ ヴィルヘルムもな
“クルシュ”: 全てを話しても差し支えないと思うが、どうだろう?
“スバル”: ──と、ざっくり話すとこんなところだ
“フェリス”: にゃるほど、そういうことだったんだね
“ヴィルヘルム”: 『禁書』の影響ですか……であれば得心がいきますな
“クルシュ”: ヴィルヘルム、なにか心当たりが?
“ヴィルヘルム”: 明らかに常軌を逸していると申しますか…… 正気を失っているように見えましたので
“スバル”: ええと、ヴィルヘルムさんでしたっけ… 一つ聞いても?
“ヴィルヘルム”: 申し遅れました 私はヴィルヘルム・トリアス クルシュ・カルステン公爵様の執事をしております
“ヴィルヘルム”: スバル殿、なんなりとお尋ねください
“スバル”: じゃあ、遠慮なく 遭遇した奴についてだけど、 魔獣ではあったが、いつもとどこか違っていた
“スバル”: そういう認識で合ってるか?
“ヴィルヘルム”: はい、そのような認識で間違いないかと
“スバル”: なるほど…… やっぱ『禁書』の影響は各地に出てるってことか
“スバル”: ちなみに、ヴィルヘルムさんたちはどの辺で?
“ヴィルヘルム”: カララギですな 国境ほど近くではありましたが
“スバル”: (カララギか……アナスタシアさんの拠点だったか、確か)
“フェリス”: あのさ、もしかしてだけど、これも『禁書』だったりするのかな?
ナレーター: フェリスが一枚の紙を取り出す そこには不気味な絵が描かれていた
“フェリス”: クルシュ様から聞いていた異変と似たような現象なら 何度か遭遇しましたよ
“フェリス”: で、これがその近くに落ちてて なにか関係あるかもって持って帰って……にゃ!?
“フェネ”: 気を付けてください! 急激に膨張しています!
“フェリス”: わわ、なになに!?
ナレーター: ぐにゃりと空間が歪むように拡張したページから、 『異形』が飛び出してくる
“ 異形”: ぎゃぉぉぉおおおん!!!
“スバル”: マナ貯めてやがったのか!? こんなにいきなり膨らむかよ!!
“レム”: ──エミリア様、スバルくん、下がってください! ここはレムが!
“スバル”: 室内で鉄球振り回すのはさすがにヤバいだろ!?
“ヴィルヘルム”: 私にお任せを
“スバル”: ヴィ、ヴィルヘルムさん!? 確か執事だったはずじゃ──?
ナレーター: スバルの問いは、鋭い気合にかき消された
“ヴィルヘルム”: はぁぁぁーーっ! ──はっ!
“ 異形”: ぐぎゃあああ……
“スバル”: うっそ……瞬殺
“フェリス”: 道中出会った魔獣も面妖な敵も こうやってヴィル爺がぜーんぶ斬り伏せちゃってくれたわけ
“フェリス”: さすが、『剣鬼』の二つ名は伊達じゃないよネ
“ヴィルヘルム”: ……
“フェネ”: 見惚れているのか、はたまた呆けているのか…… 間抜け面がますます酷い造形になっていますよ
ナレーター: ヴィルヘルムの手際に圧倒されるスバルを尻目に フェネは『禁書』を開く
ナレーター: フェリスが入手したページはきれいに綴じられ 霧散したマナもまた、『禁書』に吸い込まれていく──
“フェリス”: こりゃビックリだにゃ……
“スバル”: 同感だよ、ファンタジーすぎて未だに俺も慣れねぇ
“フェリス”: ファンタジーっていうのはよくわかんにゃいけど これが『禁書』っていうのはよくわかったよ
“フェリス”: あんなページを見つけたら教えてあげるってことでいいかにゃ?
“スバル”: そりゃ、すげぇ助かる けど、見ての通りのシロモンだ 取り扱いには十分注意してくれ
“フェリス”: そうだね、にゃんだか描かれてる絵も 気味悪くて精神的にきそうだし
ナレーター: フェリスはそう言うとヴィルヘルムの治癒を始める
“スバル”: あれは……治療してるのか?
“エミリア”: ええ フェリスはとっても名のしれた治癒術師なの
“スバル”: ヴィルヘルムさん……怪我してるようには思えねぇけど
“フェリス”: わからにゃいじゃない、こんな外敵初めてにゃんだし 精神が汚染されちゃうってことも考えられるでしょ?
“フェリス”: だから、一応確認をね あ、ついでだから君も診てあげちゃおっかな
“スバル”: お、おう、サンキュ
“フェネ”: おや、赤面しているようですが照れるようなことですか? 治療ですよ?
“スバル”: て、照れてねぇし!
“レム”: スバルくん、治療でしたらレムにも心得が
“スバル”: れ、レム、目が怖い!?
“フェリス”: ふーん けど、やっぱここはフェリちゃんでしょ? ルグニカ一の治癒術師に診てもらえるなんて、そうそうないしネ
“フェリス”: ということで~ はむ
“スバル”: おぅわっ!
“フェリス”: もう、暴れないでよ~ 耳を噛んでもらえて、嬉しいのはわかるけどさ
“スバル”: 嬉しくねぇよ! 驚いただけだ!
“エミリア”: スバルったら顔が真っ赤…… やっぱりどこか具合が悪いの?
“スバル”: え、エミリアたん、これは違うんだ!
“スバル”: 本当に驚いただけで…… 決して美少女の大胆な行動にときめいちまったわけじゃ……
“クルシュ”: すまない、ナツキ・スバル 一つ卿の誤りを正そう
“スバル”: ……俺の誤り?
“クルシュ”: フェリスは男だ
“スバル”: ……………………………
“フェネ”: スバル氏?
“スバル”: ……………………………
“フェリス”: 放心状態? スバルきゅんってばおもしろーい
“スバル”: はぁぁぁあああ!? 面白くなんてあるか! 俺のときめきを返せ!
“フェネ”: スバル氏はやはりときめいていたのですね
“フェリス”: あれだけ顔を赤くしたら、バレバレだったけどネ
“フェリス”: でも、スバルきゅん、とっても澱んじゃってるね フェリちゃん、ちょっと心配
“スバル”: 男だとわかりゃ、そりゃ澱むわ! くそー、耳を洗わせろー!
“フェリス”: そういうことでもないんだけど……ま、いっか
“クルシュ”: さて、情報交換と交流も済んだところで お互い行動に移るとしよう
“スバル”: ああ 予断は許さねぇ 俺たちも帰って作戦会議だ けど……
“スバル”: さっきの耳ハムは交流とはいわねぇからな!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_01

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_01_目指すはカララギ 更新日:2021/02/15

ナレーター: 王都から屋敷へ戻ったスバルたちは検討を重ね、 次の目的地をカララギ方面に定めた
ナレーター: その決め手となったのは、クルシュの屋敷で会った ヴィルヘルムやフェリスから得た情報だった
“スバル”: うっし、準備はこれでオッケーっと
“フェネ”: バナナはおやつに含まれませんよ
“スバル”: なんでそれを知ってんだよ お前ほんとにこの世界の精霊か?
“フェネ”: スバル氏の顔に書いてあったのです
“スバル”: バナナはおやつに含まねぇってか? ったく、お前には俺の顔がどう見えてんだよ……
“エミリア”: ねえ、スバル、準備は大丈夫なの?
“スバル”: エミリアたん! もちろんだ 俺はいつでも出発できるぜ
“エミリア”: スバル、偉いわ
“エミリア”: まだできてなかったら、怒らなくっちゃって思ったんだけど、 その必要はないみたい
“スバル”: 当たり前だろ なんせエミリアたんとのお出かけだからね 気合の入り方が違うよ
“スバル”: それに、エミリアたんを待たせるなんてエチケット違反、 俺がするわけないだろ
“エミリア”: ごめんスバル、ちょっと何言ってるのかわかんない
“フェネ”: そうですよ、スバル氏 エチケットと言うのであれば身だしなみはどうなのです?
“フェネ”: 爪は切りましたか? 顔は洗いましたか? 女性とのおでかけ一番重要なエチケットは清潔であることです
“スバル”: か、顔は洗った でも爪は……
“スバル”: って、お前、そんなエチケットまで知ってんだな? それも俺の顔に?
“フェネ”: もちろんです
“スバル”: なんだか仮面で顔を隠したくなってきたよ あんま俺の顔を見んな 向こういってろ、シッシ
“フェネ”: エミリア女史 スバル氏がフェネにあのようなことを
“エミリア”: こーら フェネをいじめないの
“スバル”: フェネ! お前! エミリアたんにチクるなんて反則だ!
“エミリア”: こら、スバル ごめんなさい、フェネ スバルが意地悪なこと言ったら私に教えて 叱ってあげるから
“フェネ”: エミリア女史は優しいですね それに比べて……
“スバル”: EMTなエミリアたんと比べられても、 そりゃそうだろとしか言いようがねぇよ
“フェネ”: はぁ…… そこを華麗につっこまなくてどうするのです? フェネのせっかくのボケが、無意味になってしまいます
“スバル”: ぼ、ボケてたのお前!?
“フェネ”: 左様です 現在スバル氏の“なんでやねん!”待ちとなっています
“スバル”: 待つなそんなもん! そもそも俺は関西出身じゃねぇし、 待たれたところで、そのつっこみはなかなか出てこねぇよ
“フェネ”: そうなのですか…… つっこみといえばこの言葉だと スバル氏の顔には書いてあったのですが……
“スバル”: 確かに王道のつっこみではあるんだけど、 日常的にそれを使う地域は限られてるな
“エミリア”: その“なんでやねん!”って、カララギの人たちみたいな言葉ね
“スバル”: ああ、そうだね アナスタシアさんが話す言葉は、 なんだか関西弁ぽい感じだったしな
“スバル”: これから向かうカララギだと、 もしかしたら使ってるかもしれないね
“レム”: みなさん、お待たせしました 竜車の準備が整いました
“スバル”: レム、こっちも準備万端だ それじゃあ──
“ロズワール”: ちょっといいかーぁな
“スバル”: ろ、ロズっち! いきなりどうした?
“ロズワール”: 重要なものを渡したくてねぇーえ
“ロズワール”: エミリア様、親書が届いております
“エミリア”: ……親書? 誰からなの、ロズワール?
“ロズワール”: 差出人は──“アナスタシア・ホーシン”様です

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_02

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_02_アナスタシアからの親書 更新日:2021/02/15

ナレーター: ロズワールから親書を受け取るエミリア
“スバル”: アナスタシアさんからか…… それで、親書にはなんて?
“エミリア”: うん……
ナレーター: アナスタシアからの手紙を読み進めるエミリアの表情は いつしか曇っていた
“スバル”: やっぱり…その……『禁書』のこと?
“エミリア”: ええ……
“スバル”: アナスタシアさんには、色々と目撃されちまってるしな……
“エミリア”: アナスタシアさんは、私と二人で話し合いがしたいみたい
“スバル”: なんだか危険な香りがするね、それは エミリアたん、俺も同席させてくれ
“フェネ”: スバル氏は時々不思議なことをおっしゃいますね
“スバル”: 俺が不思議なこと…… どういうことだ、フェネ?
“フェネ”: スバル氏に戦闘での活躍は期待できません 仮に危険な状態になったとして、スバル氏が何かの役に立つと?
“スバル”: くっ…… 痛いところを……
“エミリア”: フェネの言う通りだと思う 危険ならなおさら、スバルは同席させられません
“スバル”: 待ってくれ、エミリアたん! 『禁書』が関係あるなら、当事者の俺も──
“ロズワール”: スバルくんの気持ちもわかるが、 ここはアナスタシア様の意向も大切じゃないかーぁな
“ロズワール”: エミリア様、会談の場所の指定は?
“エミリア”: イバダでって書いてあるわ
“ロズワール”: だとしたら、予定を変更しなくてもよさそうだーぁね
“スバル”: ん? どういうこと?
“レム”: 第三都市イバダは、カララギでもルグニカに一番近い都市で、 レムたちも滞在を予定しています
“スバル”: つまり、俺も含めて予定通りイバダへは出発する
“スバル”: んで、アナスタシアさんとの話し合いの場には エミリアたんだけが出席するってことでいいか?
“ロズワール”: そうだね 会談の場にはいられなくても すぐ近くで待機できれば、もしものときは駆けつけることができる
“ロズワール”: それに、アナスタシア様は“二人”でとおっしゃっているんだ つまり、アナスタシア様も一人で出席されるということだーぁよ
“スバル”: ……もしもがある可能性は低い、と?
“ロズワール”: アナスタシア様は弁が立つお方だ 力に訴える必要はない スバルくんが危惧しているようなことにはならないだろおーぉね
“ロズワール”: むしろ──
“スバル”: エミリアたんが言いくるめられて、 余計な約束をしちゃう方が心配?
“スバル”: 確かにエミリアたん、お人好しだもんな……
“エミリア”: ちょっとスバル! 私、余計な約束なんてしません
“エミリア”: それに、 何かあったらちゃんとロズワールに相談するんだから
“ロズワール”: でしたら、私からは何もありません
“スバル”: とにかく、予定通りならオッケーだ 完全に蚊帳の外ってわけでもなさそうだし
“スバル”: にしても…… アナスタシアさんはエミリアたんと いったいどんな話をするつもりだ?
“フェネ”: スバル氏 それについては、ここであれこれ推測しても仕方がないのでは?
“スバル”: 確かにな まずはイバダに向けて出発だ そうしないことにはなんも始まらねぇよな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_03

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_03_会談と『禁書』 更新日:2021/02/15

“スバル”: ところでエミリアたん アナスタシアさんは何か企んでる 本当に一人で大丈夫か?
“フェネ”: スバル氏はまたその話を蒸し返すのですか? 最優先の課題をスバル氏が忘れていないか心配になります
“スバル”: 忘れてねぇよ  そもそもカララギにいく目的がそれだろうが
“フェネ”: エミリア女史とアナスタシア女史の会談のことで 頭がいっぱいのようでしたが?
“スバル”: いや…… それは……
“スバル”: わかった、気持ちを切り替えるよ 俺がイバダに向かうのは、『禁書』の調査だ
“スバル”: フェリスやヴィルヘルムさんからの情報は捨て置けねぇ 大事になる前になんとかしねぇと
“エミリア”: でもスバル ぜーったい無理しないでね 私もレムもいるんだから、何かあればなんでも相談して
“レム”: スバルくん、レムはスバルくんからの相談をいつでも待っています 遠慮なんていりません
“スバル”: ここでこんな風に釘を刺されちまう俺って……
“スバル”: 俺ってそんなに信用ないかな?
“フェネ”: ありません
“スバル”: そ、そんなにきっぱり!?
“フェネ”: そもそもすべてスバル氏のせいなのです スバル氏は失った信用を取り戻さなくてはならない立場のはず
“スバル”: うぐっ…… 色々自業自得って感じか…… しゃあねぇ、まずは信頼回復に努めることにするよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_04

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_04_居残りスバル 更新日:2021/02/15

ナレーター: スバルらを乗せた竜車は、 カララギの第三都市イバダを目指して走り出した
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: どうした、フェネ
“フェネ”: 『禁書』の反応があります
“スバル”: ……なに? この辺りでか?
“フェネ”: 左様です かなり近いかと
“スバル”: おいおい、マジかよ……タイミングとかあるだろ もうちょっと空気読んでくんねぇかな……
“フェネ”: 残念ながら、スバル氏並です
“スバル”: 俺は読めねぇんじゃねぇよ、あえて読んでねぇんだ!
“スバル”: 仕方ねぇな…… レム、竜車を止めてくれ
“レム”: スバルくん、どうされるおつもりですか?
“スバル”: やるしかねぇだろ 『禁書』のページを片付けて後を追わせてもらう
“エミリア”: スバル、本当に大丈夫?
“レム”: そうです、スバルくん レムもスバルくんと一緒に戦いたいです
“スバル”: いや、エミリアたんとレムはイバダに向かってくれ アナスタシアさんとの会談に遅れるわけにはいかねぇだろ?
“スバル”: ここは俺とフェネでどうにかして見せるからさ
“フェネ”: 主にフェネがですが 恐らくお二人のお力を借りなくても問題はないかと
“フェネ”: もしもの場合、ラム女史にも頼ることができます
“スバル”: 戦力にならなくてごめんね!?
“スバル”: ここならラム以外にもベア子もロズワールもいるんだし、 まぁ、なんとかなるさ 言ってて悲しくなるけど!
“エミリア”: 確かに、フェネもラムも頼りになりそうね
“スバル”: え、エミリアたん!?
“レム”: レムはスバルくんをとても頼りにしています スバルくんに応援されると、レムは何倍も力を出せますから
“スバル”: 応援団的な意味だね、それ! 嬉しいけども、なんだか今は複雑……
“エミリア”: アナスタシアさんとの話し合いに 遅れないようにしないと……
“スバル”: そうだ あの人との約束に遅れたりしたら きっと話し合いは不利になっちまう
“スバル”: レム、エミリアたんを頼む レムだけが頼りなんだ
“レム”: スバルくん……
“レム”: わかりました イバダでの滞在先は姉様が把握しているはずです 姉様にイバダまで送ってもらってください
“スバル”: ああ どのみち一人で竜車は無理だし ロズワールに相談して姉様を借りるつもりだ
“エミリア”: それじゃ、スバル
“スバル”: ああ、気を付けて
“エミリア”: スバルこそ、気を付けて ぜーったい無理しちゃダメだからね

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_05

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_05_『変異体』 更新日:2021/02/15

ナレーター: 第三都市イバダに出発早々『禁書』の反応を感知したフェネ エミリアとレムを先にいかせ、スバルはページの回収へ向かった
“スバル”: フェネ、ページの反応はどの辺りなんだ?
“フェネ”: 先ほどはこの辺りで感知したのですが……見当たらないですね
“スバル”: 領内や王都近辺は比較的落ち着いていると思っていたんだけどな
“フェネ”: はい、実際フェネもそう判断していましたが……
“スバル”: 発見されずにいるページの存在は否定できないもんな 今回はそのページの仕業か?
“フェネ”: はっきりとなにかを伝えることはできません、残念ながら
“スバル”: 隠密機能搭載とか勘弁してほしいんだがな 早く回収して俺たちもイバダに急がねぇと
“フェネ”: もう少し探してみましょう、感知はできているので
“スバル”: フェネ、いったいどこにページはあるんだよ!
“フェネ”: スバル氏、冷静に 興奮しては見つかるものも見つかりません
“スバル”: こういうときのド正論って 一番カチンとくるって知ってるか?
“スバル”: あっちこっち連れ回される身にもなってくれよ ってかこんなに外すもんか?
“スバル”: 王都と違って人はいないんだし さくっと発見できないのはなんでだ?
“フェネ”: なるほど、“頑張ってるはいいわけ” “結果でしか判断しない”意識の高い上司特有の傾向ですね
“スバル”: あ、いや、そういうつもりじゃねぇんだけどさ それにしたってさすがに……
“スバル”: ──ということで、とうとう村に着いちまったわけだが?
“フェネ”: おかしいですね……反応が消えてしまいました
“スバル”: はぁ!?
“フェネ”: 小休止を所望します、フェネは疲弊しました 感知はかなりのマナを消耗します
“スバル”: そう言われたら仕方ねぇ にしても、こりゃ長くなりそうだな エミリアたんたちを先にいかせて正解だったわ
ミルド: スバルだ
ダイン: またきたな!
リュカ: なんか変なのいる!
カイン: 遊ぼー!
“フェネ”: お呼びですよ、スバル氏
“スバル”: こんなことしてる場合じゃねぇんだけどな……
“スバル”: ぜぇぜぇ……
“フェネ”: お帰りなさい
“スバル”: くそっ、子どもの相手は本当に疲れるぜ 世のパパさんママさんには尊敬しかねぇな
“フェネ”: さて、捜査を再開しましょう
“スバル”: 待て待て、俺がスタミナ切れだよ 少しだけ休憩させてくれ
“フェネ”: 情けないですね
“スバル”: もうちょっと優しくしてくんない?
“フェネ”: む……!
“スバル”: ど、どうしたよ まさか『禁書』か?
“フェネ”: いえ、知人登場の予感です
ナレーター: フェネが振り向いた先にいたのは──
“ラム”: 耳障りな声が聞こえたかと思ったら、やっぱりバルスだったわね
“フェネ”: なるほど、ラム女史でしたか
“スバル”: なんだ、姉様か
“ラム”: なんだとは何様かしら、まだまだ使用人としてなってないわね 足腰立てなくなるまで訓練が必要かしら
“スバル”: 今はやめてくれ!
“ラム”: ところでバルス、こんなところで何をしているのかしら? バルスはレムたちと出発したものとばかり思っていたわ
“スバル”: そうだ、ラム! ちょうどいい! 実はラムに色々と相談があってさ
“スバル”: 本当だったら真っ先に、 ラムのところにいくべきだったんだけど、フェネの奴が……
“フェネ”: 何を言っているのですか、スバル氏 闇雲にラム女史を連れ回すなど失礼です
“スバル”: その扱いの差はどういうこと!? 俺、さんざん連れ回されたんだけど!
“ラム”: フェネはわかっているようね バルスのことはいくらでも連れ回して構わないわ
“ラム”: それで、ラムに相談したいことというのは?
“スバル”: 実は、『禁書』の反応がある 手を貸してほしい
“ラム”: 今ラムは買い出しの途中よ それが終わってからでも構わないかしら?
“スバル”: いやいや、買い出しより重要だ! 買い出しは後回しに──
“フェネ”: いえ、買い出しの後で構いません ラム女史のお手を煩わせるのも悪いと思います
“フェネ”: むしろスバル氏、 フェネはラム女史の買い出しをお手伝いすることを提案します
“スバル”: フェネ、お前な! 今は買い出しどころじゃねぇだろ?
“フェネ”: 残念がならスバル氏、反応は消えたままです これ以上の捜索は無駄足になってしまうでしょう
“スバル”: まったく、もう陽が傾き始めているじゃねぇか……
“ラム”: バルスには、帰ってからやるべきことが山積みよ
“スバル”: 待て待て! 今日からしばらく姉様がやるはずだったろ! 買い出しの荷物持ちぐらいで勘弁してくれ!
“ラム”: バルス、今日の成果を報告して
“スバル”: ……今日の成果?
“ラム”: バルスはエミリア様やレムとイバダに向かったはずよ その任務はどうなったのかしら?
“スバル”: いや、だからそれは、『禁書』の反応があって……
“ラム”: それで?
“スバル”: ああわかった! 成果ゼロだ! さんざん歩き回ったけど、発見には至っていねぇ!
“ラム”: しかもそんな無能なバルスを ラムはイバダまで送ることになりそうだわ
“スバル”: ごめん! 俺にできることならなんでもやらせてもらう!
“ラム”: 当然ね むしろラムから言われなくても、 自ら進んで言い出すべきだわ
“フェネ”: ──スバル氏、ラム女史
“スバル”: どうしたフェネっ もしかして?
“ラム”: バルス、見なさい
“スバル”: ま、魔獣!
“ラム”: この感覚は…… どうやらお目当てのものが見つかったみたいね
“スバル”: ああ ありゃ、間違いなくページの影響を受けてやがる
“魔獣”: ──ぐがぁぁぁあああああ!!!
“ラム”: 仕方ないわね
“フェネ”: 支援します、ラム女史
ナレーター: フェネは『禁書』をひらき、ラムに向かって手を向けた すると、にわかに『禁書』が光り始める
ナレーター: 光の粒子が、ラムの体に流れ込んでいった
“ラム”: マナが……力がみなぎってくるわ……! これなら!
“魔獣”: ぎゃうぅぅぅぅぅ!!!
“スバル”: うお、跡形もねぇ……
“ラム”: 助かったわ、フェネ 『禁書』にはそんな使い方もあるのね
“フェネ”: 『禁書』に蓄積されたマナは取り出し可能です ラム女史にとっては都合のよい機能かと
“ラム”: ……ええ、そうかもしれないわ
“スバル”: でも、ちょっと待て こいつは『異形』とは、なんか違わねぇか?
“フェネ”: 左様です 『禁書』の影響を受け変異していますが 元々はこの辺りに生息していた魔獣だと思われます
“スバル”: 『禁書』の影響を受けて、突然変異したってことか……
“スバル”: 『異形』とは区別するために、 なんか名前を付けといた方がよさそうだな
“スバル”: あくまで便宜上だけど、まんま『変異体』なんてのはどうだ?
“フェネ”: 特に異論はありません
“ラム”: ラムの口出すとこじゃないわ 好きになさい
“スバル”: よし じゃあ決まりだな んで、その『変異体』についてなんだが……
“スバル”: 『禁書』の影響は魔獣の姿さえ変えちまうってことだよな あらゆる生き物が『変異体』になっちまう可能性を秘めてる
“フェネ”: 断言はできませんが、可能性の話をするのであれば そうなるでしょう
“ラム”: 一種の呪いのようなものかしら?
“スバル”: 呪いか……『禁書』の謎を解き明かす鍵になりそうだな フェネの記憶喪失にも関係しているかもしれない
“ラム”: あくまで感想よ 呪いと決めつけるのは早計だわ
“スバル”: まぁ、そうだな 結論を出すには材料が少なすぎる
“スバル”: にしても、あのおかしな様子…… ヴィルヘルムさんたちの証言とも重なるな
“フェネ”: 恐らく、あの方々が遭遇したのが『変異体』だったのでしょう
“フェネ”: ところでラム女史 本当に送っていただけるのでしょうか? 道中『変異体』や『異形』に襲われる可能性があります
“ラム”: ロズワール様のお手を煩わすわけにはいかないわ 誰かが送らなければいけない以上、やむを得ないわね
“スバル”: ホントごめん……
“ラム”: はんっ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_06

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_06_イバダへ 更新日:2021/02/15

“ロズワール”: ラム、いってきたまえ
“スバル”: さすがロズっち! 助かるぜ!
“スバル”: 一応、俺たちが不在な間は ア―ラム村から助っ人がきてくれることになってる
“スバル”: 本業の俺たちに比べたら、ちと落ちるかもしれねぇけど、 そこは我慢してくれ
“ラム”: あらバルス
“ラム”: まるで誰かさんの仕事の質が村人よりも上みたいな言い草ね
“スバル”: おっと姉様
“スバル”: 仕事の質についちゃ、少しは自信があるつもりだぜ そういう姉様こそどうなんだ?
“スバル”: 臨時でくる村の人より、下ってことはねぇよな?
“ラム”: はんっ どうやらバルスは、自分の立場がわかっていないようね
“ラム”: どうしてラムが、大切なロズワール様を残して 屋敷を空けなくてはならないと思っているの?
“ラム”: ひとりで竜車に乗れないだなんて、恥を知りなさい
“スバル”: うっ…… す、すまねぇ……
“ロズワール”: スバルくん ラムはスバルくんの教育係だからね ときには厳しいことも言うが、それは君のためなんだーぁよ
“スバル”: “ときには”って表現はひっかかるけど、今はそう納得しておく 俺の不甲斐なさが原因なわけだし……
“ロズワール”: それで、いつ出発するつもりだい?
“スバル”: 明日のあさイチで出たい 完全に一日遅れだ 少しでも早くイバダに到着しねぇと
“ロズワール”: それじゃ、ラム、用が済んだら、まっすぐ帰ってくるんだよ くれぐれも道草は食わないように
“ラム”: もちろんです、ロズワール様
“ロズワール”: フェネくんも色々頼む
“フェネ”: ラム女史の件、ありがとうございました
“フェネ”: イバダ界隈の『禁書』は必ず回収してみせます
“ロズワール”: 二言はないだろうね
“フェネ”: あとは背中で語らせていただく所存です
“ロズワール”: そうかい それは期待させてもらおうじゃーあないか
“ロズワール”: ただでさえ、王選の開始は遅れてしまっているからね 新たな騒動で、さらなる遅れが発生するのは避けたい
“ロズワール”: 頼んだよ スバルくん、フェネくん

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_07

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_07_気の合う二人 更新日:2021/02/15

ナレーター: ──翌朝
“スバル”: ラム、もう少し急げねぇか?
“ラム”: 静かにしなさい、地竜の機嫌が悪くなるわ
“スバル”: うぐ、それは失礼
“フェネ”: スバル氏、ラム女史の機嫌はスバル氏にかかっています 言葉の選択には気を付けてください
“スバル”: けど、急がねぇと 一刻も早くイバダに着きたい
“ラム”: バルス、ラムが急いでいないとでも?
“スバル”: いや、もうちょっと速度出せるんじゃねぇかな? ただでさえ、遠いんだろ?
“ラム”: はんっ だからこそよ バルスの弱い頭では、理解できないでしょうけど
“スバル”: まぁ、確かにペース配分ってのは大事かもしれねぇけど それにしたって──
“フェネ”: ラム女史、スバル氏の口を縫っておきしょうか?
“ラム”: あら、それは名案ね ああ言えばこう言う口なら、縫ってしまった方がいいわ
“スバル”: ちょっと急いでほしいって言っただけでそこまで!? なんだかとんでもないタッグが誕生しちまった予感……
“ラム”: タッグというのはよくわからないけれど フェネとは気が合わないことはなさそうだわ
“フェネ”: 同感です、ラム女史
“スバル”: 同感って…… キャラがかぶってる認識はあるのな
“ラム”: 何を言っているのかわからないけれど そこはかとなく不快だわ
“フェネ”: スバル氏、ラム女史に謝罪を ラム女史は唯一無二 キャラかぶりなどありえません
“スバル”: 完全にフェネはラム派なんだな! イバダまでぼっち確定じゃねぇか!
“フェネ”: スバル氏 イバダに早く到着したいのは、 ラム女史も同じだと思います もちろんフェネもです
“フェネ”: ここは黙ってラム女史に任せるべきかと
“スバル”: くっ…… 確かにそうだな わりぃ、少し焦りすぎてた
“スバル”: アナスタシアさんとの会談までに イバダに到着したいって気持ちが強すぎたよ
“スバル”: どうせ同席できねぇんだから、 俺がいたって意味ねぇってのに
“フェネ”: どのような会談で どんな要求を突きつけられるかわからない状況
“フェネ”: 間に合うにこしたことはないでしょうが、今は我慢です

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_08

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_08_第三都市イバダ 更新日:2021/02/15

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車は休息を最小限で進み 通常よりも早くカララギの第三都市イバダに到着した
“スバル”: ふぅー、遠かった…… やっと到着か 体中痛てぇし、寝不足だ
“ラム”: あら、乗っていただけのバルスには いくらでも眠る時間はあったと思うのだけれど
“スバル”: そうもいかねぇだろ!? いつ『異形』や『変異体』に襲われるかわからねぇんだし
“ラム”: 『異形』や『変異体』を感知するのはフェネのはずよ バルスは感知でも戦闘でも役立たず 何か反論はあるかしら?
“フェネ”: 確かにスバル氏が無理をして起きていたことに、 あまり意味はなさそうです
“フェネ”: そもそもスバル氏は何をしにいらしたのでしょう……?
“スバル”: こ、根本的な疑問!? そして、核心を突いてるからやけに胸がいてぇ
“スバル”: 俺がきたのは『禁書』の調査だよ あと、 アナスタシアさんとの会談に臨むエミリアたんの力になりたい
“スバル”: 役に立つのか?立たねぇのか?って問題はあるけど、 少しでも役立てるよう俺なりに頑張るつもりだ
“スバル”: それで、どうなんだ? フェネ、『禁書』の反応はあったりしねぇか?
“フェネ”: ……スバル氏、微弱ながら感じられます
“スバル”: そうか…… となれば──
“ラム”: 待ちなさい、バルス 『禁書』をどうにかしようと思っているなら、あまりにも早計よ
“スバル”: はあ? なんで? そのために俺たちは──
“ラム”: 相手の力も数もわかっていない状況よ ここはまず、一刻も早くエミリア様やレムと合流するべきだわ
“フェネ”: そうです、スバル氏 戦力は多いにこしたことはありません
“スバル”: 確かにイバダを調査するにしたって、人手は多い方がいい
“スバル”: にしても、このイバダってのはかなりの大都市だな……
“フェネ”: ここはカララギ方面でも有名な交易都市と知らされています 多くの流行はイバダから発信されるとの謂れがあるほどです
“スバル”: そりゃすげぇ
“スバル”: 『禁書』の影響で人々が狂暴化するってのは王都で確認済みだ ここではあんなことは起きないようにしねぇと
“スバル”: ただでさえ王選の開始が遅れちまってるみたいだし、 さらなる遅れは避けねぇとな
“スバル”: ということで、まずはエミリアたんとレムにコンタクトだ!
“スバル”: ラム、二人が泊ってる宿まで案内してくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_09

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_09_イバダの『禁書』を探せ 更新日:2021/02/15

ナレーター: ラムの案内でエミリアたちが滞在しているはずの 宿へと向かったスバルたちだったが
ナレーター: 二人はすでにアナスタシアからの使者に呼び出され 会談へと向かった後だった
“スバル”: ちくしょう…… エミリアたんたちとは合流できず、 しかもアナスタシアさんとの会談は始まっちまったみたいだ
“スバル”: なんともついてねぇな……
“ラム”: バルス、落ち込んだところで事態は何も改善しないわ
“スバル”: そりゃ、そうだけども
“スバル”: 出発早々『禁書』の反応でエミリアたんとは離れ離れになるわ
“スバル”: 一日遅れでようやく出発できたと思ったら 道中ラムとフェネにいびられるわ
“スバル”: ほとんど不眠不休でとばしたってのに、 到着してみりゃ時すでに遅しだ
“スバル”: そりゃ、落ち込みたくもなるぜ、まったく
“ラム”: バルスの不眠不休にはあまり意味などなかったけれどね
“スバル”: がっ! 人の傷に塩を塗らないでくれる!?
“ラム”: けれど、あまりいい流れとは言えないわ これで 対峙する『禁書』のページが強敵だったら目も当てられないわ
“スバル”: 待て待て そうやって変なフラグを立てるんじゃねぇよ、姉様
“スバル”: ここには頼りになるラインハルトやクルシュさんもいねぇんだ 強敵だけは勘弁してほしいぜ
“フェネ”: とはいえスバル氏、現時点でやるべきことは一つだけかと
“スバル”: ああ、わかってる 『禁書』の反応がある以上、放ってはおけねぇ
“スバル”: エミリアたんと合流できなかったのはいてぇが、 『禁書』探しに取りかかるとしよう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_10

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_10_『鉄の牙』 更新日:2021/02/15

ナレーター: イバダ到着後に『禁書』の反応を感知したフェネ
ナレーター: 戦力アップのためエミリアやレムとの合流を図ろうと 二人が滞在している宿へ向かったスバルたちだったが
ナレーター: 二人はすでにアナスタシアとの会談へと出発し不在だった
ナレーター: 既存戦力のラムとフェネとともに 『禁書』のページを探すことを決断したスバル
ナレーター: スバルたちはフェネのナビゲートで とある袋小路にたどり着いていた
“フェネ”: いました、『異形』です
“スバル”: チッ 手遅れだったか…… しかも、ひい、ふう、みい……って、複数いやがるじゃねぇか!
“ラム”: つべこべ言ってる暇はないわ
“フェネ”: ラム女史、支援します
“ラム”: いくわよ、はあっ!!
“ 異形”: ぐぎゃぁぁぁあああ!!!
“スバル”: ラム、まだだ! 追撃くるぞ!
“ラム”: 言われるまでもないわ!
“ 異形”: あぎぁぁぁあああ!!!
“フェネ”: ラム女史、素晴らしいです
“スバル”: いいぞ、さすが姉様!
“ラム”: 支援してくれているフェネはまだしも、 何もしないバルスの声は不快以外の何ものでもないわ
“ラム”: 永遠に……いえ少し黙っていてちょうだい もちろん永遠にでも構わないけれど
“スバル”: いやいや永遠には勘弁だ!
“スバル”: けど、邪魔ってんなら少し黙るよ すげぇ不本意だけどな!
“ 異形”: ──ぐぐぐぅぅぅぐっ!!
“ラム”: 消え去りなさい! ──エル・フーラ!
“ 異形”: ──ぎゃあぁぁーーっ!!
“ラム”: はあ、はあ……!
“ 異形”: しゃぁぁぁあああ!
“魔獣”: ぎゃぉぉおおおお!!
“ラム”: しつこいわね……
“スバル”: ラム!
“スバル”: クソっ! さすがに数が多い! フェネ、なんとかならねぇのか!
“フェネ”: フェネは支援型故、前衛はラム女史に頼らざるを得ない状況です
“フェネ”: しかも、フェネの支援も有限…… 長期戦では押し負ける可能性があります
“スバル”: 解説には感謝だが、要はジリ貧ってことじゃねぇか……!
“ラム”: きゃあ!
“スバル”: ラム──!
ナレーター: 反射的にスバルは、ラムの方へ駆け出してしまう
“ 異形”: ぐぅぅぅううう!
“ラム”: バルス、あぶな──!!
“スバル”: ──っ!!
“スバル”: ……あれ?
???: よう、兄ちゃん、間一髪やったな
“ミミ”: ミミたちがきたから大丈夫! おにーさんたちナンジャク! あとはミミとダンチョーに任せてー!
“スバル”: ……あ、あんたらは?
“リカード”: ワイはリカードっちゅうねん まあ、詳しい話は後にしようや
“ミミ”: そうそう! まずはあいつらをやっつけるー!
“ラム”: リカード様、ミミ様、ありがとうございました
“リカード”: おう嬢ちゃん、別にええで そんなことより──
ナレーター: リカードとミミの視線は、『禁書』を開き、 弾けたマナを吸収させているフェネに注がれている
“ミミ”: すごーい! 本がキューシュー!
“リカード”: あれはいったいなんや?
“スバル”: おいフェネ! リカードたちの前でなにやってんだよ!
“フェネ”: 状況的に、会話が長くなることが予想されたので マナが霧散してしまわないうちに対応いたしました
“スバル”: 長くってな…… お前のせいでさらに長くなりそうだよ
“リカード”: あんなもん見せられれば、長くならざるを得んやろうな
“リカード”: どうしてあれと戦ってたん? そもそもどうして、あれがここにおるってわかったんや?
“リカード”: 聞きたいことは山積みやけど、 まずは自己紹介といこうやないか
ナレーター: 獣のような大柄の亜人と小柄な亜人は アナスタシアの私兵団『鉄の牙』のメンバーだった
ナレーター: 大柄でリカードと名乗った亜人が団長で、 小柄なミミが副団長だ
ナレーター: スバルたちもリカードたちに素性を明かす
“リカード”: ──どうやら、お嬢が王都で会ったって言うとったんは、 兄ちゃんたちで間違いなさそうやな
“スバル”: そうだ 俺とフェネはアナスタシアさんに王都で会ってる ユリウスっていうキザな騎士様にもな
“リカード”: そんでもって、さっき見たアレが お嬢が見た不思議な現象ってわけやな
“スバル”: ああ アナスタシアさんには、不本意ながら 王都で『異形』を封印するまでの一部始終を見られちまった
“スバル”: ユリウスには伏せておいてくれたんだが、 あんたらにはすでに共有済みらしいな
“リカード”: まあ、お嬢とワイらは家族みたいなもんや、 悪く思わんといてな
“スバル”: 家族ったって、秘密にすることは秘密にすんだろ
“スバル”: まぁ、誰にも喋らないでいてくれるとは、 まったく思ってなかったけど……
“リカード”: で、兄ちゃん、『異形』ってのはなんや?
“スバル”: さっき見たアレだよ “アレ”だと色々不都合がでてきたんで 『異形』って名付けさせてもらった
“リカード”: もう少し詳しく頼むわ 『異形』ってもんがなんなんか、結局わからんで、それじゃ
“スバル”: 正直、どこまで話していいのか、俺じゃ判断できかねるな
“ラム”: バルス、よく言ったわ まったくその通りよ バルスごときに判断する権限はないわ
“ラム”: リカード様 この者は無駄に態度は大きいですが、 一介の使用人にすぎません
“ラム”: 本当に無駄に態度だけは大きいのですが
“リカード”: はははっ ずいぶんな言われようやな、兄ちゃん
“スバル”: ああ 毎度毎度、こき下ろされて 精神的につれぇ思いをさせられてるよ
“スバル”: 今だって“無駄に態度だけ大きい”って繰り返す必要あったか? そもそもそのワードがなくったって、十分伝わる内容だったよね!
“ラム”: なにを言っているのバルス ラムが伝えた内容の中で一番大切な情報よ
“スバル”: 俺の態度が無駄にデカいってのが!?
“リカード”: そうやな、かなり有益な情報やったで
“ミミ”: ミミにもー! おにーさん、無駄に態度デカイ! 知ってるのと知らないのは大違いー!
“スバル”: うぐっ…… お、お前らな……
“スバル”: ちくしょ! んじゃ、こっちからもお返しに質問だ!
“スバル”: どうしてアナスタシアさんは、エミリアたんを呼び出したんだ? 会談でどんな話をするつもりなんだよ?
“リカード”: おっと! それはなかなかの反撃やな…… お嬢の許可なしに、話すのは難しいで……
“ミミ”: 勝手に言っちゃダメ! お嬢に怒られるー!
“スバル”: ははは! まいったか! 俺たちは仲良く権限がないもの同士だな!
“ラム”: フェネ、言ってやりなさい
“フェネ”: かしこまりました、ラム女史
“フェネ”: スバル氏はかなり歪んだ方だと思っていましたが、 想像通りのゲス野郎ですね
“フェネ”: 返答がわかっている質問をあえてして、 お二人を貶めるとは、ある意味感服いたしました
“スバル”: 結局俺だけが下げられるこのシステム どうにかならねぇのかな!?
“ラム”: 自業自得よ、バルス いい加減に気が付きなさい
“スバル”: 確かに器のちっささが露呈しちまったけど、それにしたって……
“フェネ”: 落ち込んでいるスバル氏はさておき、 どうやらここでこれ以上お話をしていても仕方がないようです
“リカード”: せやな ワイらだけやと話すに話せん状況みたいや
“フェネ”: エミリア女史とアナスタシア女史のところに お連れいただけないでしょうか?
“フェネ”: そろそろお二人の会談も終わりを迎えた頃かと
“リカード”: ま、ええやろ ワイらも色々と手を焼いて 埒が明かんと頭を悩ませてたところや
“スバル”: ……手を焼いて? リカード、お前らも『異形』や『変異体』とやり合ってんのか?
“リカード”: ……『変異体』? またまた知らん単語の登場やな
“リカード”: せやけど、詳しいことはワイらには話せんのやろ?
“スバル”: ああ 現時点じゃお互いの関係性も見えねぇ 詳しい話はなしだ
“リカード”: わかったで、兄ちゃん それじゃいこっか お嬢のところまで案内したる

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_11

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_11_スバルの口はよく滑る 更新日:2021/02/15

“リカード”: お嬢、例の兄ちゃんを連れてきたで!
“ミミ”: きたでー!
“アナスタシア”: おやおや、これはこれは
“スバル”: どうも、アナスタシアさん、王都で会って以来だな
“アナスタシア”: せやね ナツキくん元気にしとった?
“スバル”: ぼちぼちってとこかな アナスタシアさんは?
“アナスタシア”: ウチもぼちぼちやな
“スバル”: で、エミリアたん! 会いたかったよ!
“エミリア”: す、スバル! どうしてスバルがここに?
“スバル”: あの後、なんとか一日遅れで出発して、今日イバダに到着した んで、到着早々色々と大活躍したってわけだよ、エミリアたん
“ラム”: エミリア様 大活躍したのはバルスではありません バルスはただその場にいただけです
“スバル”: いやいや 少しでも早くエミリアたんたちに追いつくために 竜車を飛ばして──
“フェネ”: エミリア女史 ほとんど不眠不休で竜車を走らせたのはラム女史です
“スバル”: イバダに着くや否や『禁書』の反応を感知して現場に──
“ラム”: 無論ですがエミリア様、反応を感知したのはフェネです
“スバル”: 迫りくる『異形』をバッサバッサと──
“リカード”: 頑張ってたのはそこの嬢ちゃんやな それとワイらや
“ミミ”: ミミも頑張ったー! たっくさんやっつけたよー!
“エミリア”: ええっと…… 今のところスバルの出番がないみたいだけど……
“エミリア”: でも、偉いわね、スバル 約束通り、無茶はしなかったみたいだもの
“スバル”: うぐっ…… その褒め方はとっても複雑かな 俺としては目立つ成果を出す気満々だったからね!
“スバル”: にしても、俺ってマジで必要ない感じ? 屋敷に残って使用人業に精を出してた方がよかったのか?
“アナスタシア”: そんなことはないんと違う? ウチはナツキくんを評価しとるで
“アナスタシア”: ナツキくんが欠けただけで、 今言っとったことのすべてがなかったわけやし
“アナスタシア”: それに、エミリアさんとウチの話し合いの結果も まったく別のものになってたかもしれんしねえ
“スバル”: ……話し合いの結果が? それってどういう意味だ
“アナスタシア”: そのまんまの意味やよ
“アナスタシア”: ウチはエミリアさんと二人で話すことで 筋を通したつもりやったんやけど
“アナスタシア”: ナツキくんも招待しておくべきやったわ
“アナスタシア”: ウチが知りたいことは、 エミリアさんよりもナツキくんの方が詳しそうやし
“スバル”: 知りたいこと? 『禁書』の件か?
“アナスタシア”: ふーん、『禁書』っていうんや? あのけったいな本は
“リカード”: お嬢、『異形』や『変異体』って単語も出たで
“アナスタシア”: 『異形』? 『変異体』? あのナツキくんたちが倒しとった魔獣のことやろうか?
“スバル”: ま、待ってくれ、アナスタシアさん なんだか一方的にこっちから情報を提供してる気がするんだが?
“アナスタシア”: そういう意味でも、ナツキくんがきてくれて助かったわ エミリアさんはなんも教えてくれんかったし
“スバル”: ……エミリアたん?
“エミリア”: 私、余計なことは言わないように気を付けたの
“スバル”: そ、そうなんだ……
“ラム”: はんっ どうやらバルスは、屋敷に残っておくべきだったみたいね
“スバル”: いやいや、それを言うんだったら、 フェネだってリカードたちの前で……
“フェネ”: スバル氏 それは違います アナスタシア女史には、すでにすべてを見られています
“スバル”: けど、あのときはまだ、リカードたちが アナスタシアさんの関係者だってことはわかってなかったはずだ
“ラム”: だからどうしたのかしら、バルス?
“スバル”: くっ 結果的にではあるが、リカードたちがアナスタシアさんの 関係者である以上、隠しても意味はなかったよ
“スバル”: じゃあ、アナスタシアさんが俺を評価してるってのは 自分にとって都合がいい奴だからってことか?
“スバル”: 一瞬褒められたと思ったのは、俺の勘違いかよ?
“アナスタシア”: そんなことはないんやけど、 ナツキくんは少し、発言には気を付けた方がええかもしれんねえ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_12

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_12_『禁書』の価値 更新日:2021/02/15

“アナスタシア”: ──実はな、ナツキくん
ナレーター: アナスタシアがそう切り出し、周囲には緊張が走る
“アナスタシア”: 王都からカララギに戻る途中で、 ウチらもアレに何度か遭遇したんよ
“アナスタシア”: “アレ”つまり、 ナツキくんがいう『異形』や『変異体』ってヤツやな
“アナスタシア”: 王選の開始は少なくても一ヶ月は延期になるって話やし、 あのまま王都におっても意味ないやろ?
“スバル”: それで、カララギに戻る途中で化け物退治をさせられたわけだ
“アナスタシア”: せやね、ウチの子らが頑張って退治してくれたわ
“アナスタシア”: それでや、化け物退治のついでになんやけど、 ウチは気色悪い絵が描かれた妙な紙を拾ってもうてな
“スバル”: ……妙な紙? 気色悪い絵?
“アナスタシア”: あれはなんなんやろ?
“アナスタシア”: 同じような紙を拾ったって人らがおって、 最近では高値で取引されるようになったらしいわ
“スバル”: た、高値で取引!? あれはそんなもんじゃ──
“アナスタシア”: やっぱりナツキくんは、色々知ってたみたいやねえ
“アナスタシア”: ウチは商売になるんやったら、 あの絵を集めて売りたいんやけど、ナツキくんはどう思うん?
“スバル”: どうもこうも…… って、待て待て! アナスタシアさんは、『禁書』のページを持ってるのか?
“アナスタシア”: 『禁書』のページ…… やっぱりあれはその『禁書』とかいう本と関係があるんやね?
“スバル”: ああ、おおアリだ そもそも今回の騒動の元凶って言ってもいい
“スバル”: 俺たちはその『禁書』のページを集めて回ってるんだ この厄介事を終わらせるためにな
“アナスタシア”: ……集めて回ってるん? どうしてナツキくんたちがそないなことせなあかんのやろ?
“アナスタシア”: この件ではルグニカの騎士団も動いてるみたいやし、 あちらさんに任せてもええんと違う?
“スバル”: そ、それは……
“ラム”: ──バルス!
“フェネ”: スバル氏は学習能力がないのですか? そちらのアナスタシア女史 からも発言には気を付けるよう言われたばかりのはずです
“スバル”: くっ…… けど…… アナスタシアさんには何か隠し玉がある気がする
“スバル”: わざわざエミリアたんを呼び出して、色々聞き出そうとしてたんだ
“スバル”: 何か狙いがねぇと、絶対にそんなことはしない
“スバル”: んで、その隠し玉を披露させるためには、 きっと洗いざらい話さなきゃダメだ
“スバル”: そもそも交渉事じゃ、 アナスタシアさんの方が一枚も二枚も上手なんだよ
“スバル”: まともにやっても俺たちに勝ち目はねぇ
“スバル”: むしろここはアナスタシアさんを俺たちの味方に……
“エミリア”: ……味方? アナスタシアさんは、私たちと仲良くしてくれるの?
“アナスタシア”: “仲良く”っていうのは可愛い表現やねえ
“アナスタシア”: それにウチは、無駄なことはせえへん 案外ナツキくんは、侮れんのかもしれんねえ
“アナスタシア”: あ、これ、ホンマやから 他意はないから安心してな
“スバル”: 素直には喜べねぇかな! アナスタシアさんて、心にもないことが平気で言えそうだし!
“アナスタシア”: ふふふ それでどないするん? ウチを味方に引き入れるんやろ?
“アナスタシア”: お手並み拝見といかせてもらおうやない

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_13

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_13_交渉開始 更新日:2021/02/15

“アナスタシア”: さあ、ナツキくん 交渉開始や
“アナスタシア”: ナツキくんはどうやってウチを味方にするつもりなんやろ? 興味あるわぁ
“スバル”: そんなたいそうなもんじゃねぇよ さっきも言っただろ、交渉じゃ勝ち目がねぇって
“アナスタシア”: 交渉せえへんのなら、いったいどうするつもりなんやろ?
“アナスタシア”: ウチが一番嫌いな“お願い”なんてことに ならんかったらいいけど……
“アナスタシア”: ナツキくんは、一方的に相手の善意に甘えるなんて真似、 せえへんよね?
“スバル”: 当たり前だ エミリアたんならまだしも 相手がアナスタシアさんな時点で、その選択肢はねぇよ
“アナスタシア”: それはよかったわぁ それでどうなん? 続けてもらってええ?
“スバル”: まず、一番大事な事実を伝える
“スバル”: この『禁書』の件を解決できるのは俺たちだけだ
“リカード”: それはどういう意味や? ワイらは『異形』やら『変異体』には負けへんで
“ミミ”: ダンチョーの言う通り! ミミたち強いー! あいつらやっつけたー!
“スバル”: 確かにリカードやミミはすげぇ強いかもしれない けど、『異形』は倒してもその場しのぎにしかならねぇ
“スバル”: 『禁書』に封じない限り、あいつらはまた復活するんだよ
“スバル”: そして、それができるのは俺たちだけってわけだ つまり、『禁書』を持ってる俺たちにしか根本的な解決はできねぇ
“アナスタシア”: なるほど…… それは確かに大切な事実やね
“スバル”: だろ? んで、次に『禁書』のページのことだけど、 あれはさっきも言ったけど騒動の元凶だ
“スバル”: あそこに描かれてるのはただの絵じゃないんだ 条件が揃うと実体化しちまうんだよ
“アナスタシア”: それが『異形』と『変異体』なん?
“スバル”: いや、『異形』の方だ 『変異体』はまた別物だな
“スバル”: 『変異体』はページから出てくるんじゃなくて、『禁書』の ページが周囲に影響を与えて魔獣なんかを狂暴化させたもんだ
“スバル”: てな感じで『禁書』のページにはすげぇリスクがある あれで商売をしようだなんて考えるべきじゃねぇ
“スバル”: 一刻も早く『禁書』に封じちまうのが一番なんだよ
“アナスタシア”: ナツキくんが伝えたかった一番大切な事実も 『禁書』のページについてもわかったんやけど
“アナスタシア”: ウチを協力させるっていう 当初の目的はどこにいったんやろ?
“アナスタシア”: 今の話を聞いてもウチが協力する理由が見当たらんわ
“アナスタシア”: 確かにナツキくんらがこの件を解決してくれんと 王選は開始できんのかもしれんけど
“アナスタシア”: 王選が開始されなくて困るのはエミリアさんも一緒
“アナスタシア”: ウチが協力してもしなくても、結局ナツキくんらは この件を解決しないといけないんと違う?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_14

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_14_ロズワールの伝言 更新日:2021/02/15

“アナスタシア”: ナツキくん、ウチの協力がほしいんやったら それなりの見返りが必要やよ
“スバル”: 見返り……
“アナスタシア”: 洗いざらい話すなんてゆうといて 結局ナツキくんは、肝心なことを話してないんと違う?
“スバル”: それは……
“アナスタシア”: 自分らにとって都合が悪いことも話してもらわな
“アナスタシア”: ウチはいずれエミリアさんとは王選で競う身
“アナスタシア”: エミリアさんの弱味を知ることは ウチにとって大きな利になるんやから
“アナスタシア”: それにな、ナツキくん
“アナスタシア”: ウチは売りに出てたもんも買わせてもらって それなりの枚数の『禁書』のページを持ってる状態や
“スバル”: そ、それは危険だ! 早く『禁書』に封じねぇと!
“アナスタシア”: その慌てよう、演技には見えんけど、 ナツキくんがした『禁書』の話は本当なんやろうか?
“アナスタシア”: ウチから『禁書』のページを騙し取って 利を得ようとしていない証拠がどこにあるん?
“アナスタシア”: ウチに協力してほしい ウチが持ってる『禁書』のページもほしい
“アナスタシア”: ほしい、ほしいはわかったんやけど
“アナスタシア”: 重要なのは、その代わりに ナツキくんがウチに何を差し出すかやね
“スバル”: ……あれはすげぇ危険なものなんだ 複数枚持ってるなんて状態は一刻も早く解消した方がいい
“スバル”: ──本当に本当だっ! 俺は嘘なんて言ってねぇっ!
“スバル”: だからページを──
“ラム”: バルス 少し頭を冷やしなさい
“ラム”: アナスタシア様、申し訳ありません この者に少し頭を冷やすお時間をいただけないでしょうか?
“アナスタシア”: ウチは構わんけど、ナツキくんはどうなん?
“スバル”: ……すまない、アナスタシアさん 少し時間をくれ 頭に血がのぼっちまった
“エミリア”: だったらレムも呼んでいいかしら 一人で待たせてるのはなんだかかわいそう
“アナスタシア”: わかったわ レムさんなら別室に控えてるはずや ミミ、呼んできてもらってええ?
“ミミ”: わかったー! ミミ呼んでくるー!
“アナスタシア”: それじゃ、ウチらは席をはずさせてもらった方がええね ナツキくんの頭が冷えたら交渉再開やね
ナレーター: アナスタシアたちに代わり入室したレムに、 ラムから手短な情報共有が行われた
“レム”: ──ありがとうございます、姉様 状況はだいたい理解しました
“レム”: レムはスバルくんを信じています スバルくんならきっと、正しい判断を下してくれるはずです
“スバル”: レム……
“ラム”: ラムはロズワール様の言い付け通り バルスの判断を尊重させてもらうわ
“スバル”: ロズワールがそんなことを?
“ラム”: ええ バルスの判断を尊重するようにおっしゃっていたわ
“スバル”: でも…… ラムはそれでいいのか? なんか不服そうだったけど
“ラム”: ラムにとってロズワール様のお言葉は絶対 それは揺るがないわ
“フェネ”: それで、スバル氏はどうされるおつもりですか?
“スバル”: 正直に言えば、どうするも何も選択肢は一つしかねぇ気がしてる
“ラム”: 確かにそうね バルスがほとんど喋ってしまったのだし、 バルスが犯した失態について正直にお伝えするしかないでしょうね
“ラム”: バルス如きが犯した失態が、エミリア様の弱味になってしまう 現実には憤りを覚えずにはいられないけれど
“スバル”: す、すまねぇ……
“スバル”: 確かに俺の失態だ エミリアたんはこれっぽっちも悪くねぇ なのに俺なんかを雇ったせいで……
“スバル”: 本来だったらこの件を解決したら、 一気に名声を高められるはずだったのに
“スバル”: 解決して当たり前みたいな立場にさせちまった……
“ラム”: それだけではないわ 王選が始まった後のことを考えると本当に計り知れない痛手よ
“ラム”: アナスタシア様はこの件を最大限に活用されるでしょうね
“ラム”: 唯一の救いは、この件が片付くまでは 大人しくしていてくれるということぐらいね
“スバル”: アナスタシアさんとしても、この件が片付いて 王選が開始されなきゃ困るもんな
“スバル”: 俺たちを妨害しようとはしないだろう
“ラム”: ええ でも、それもこの件が片付くまでよ その後は一番の強敵になるかもしれないわね
“エミリア”: 私はね、スバルが正直に話したいなら、それでいいと思うの
“エミリア”: 王選が始まった後に大変なことになっちゃうかもしれないけど、 それは仕方ないもの
“エミリア”: 今、アナスタシアさんが『禁書』のページをたくさん持ってて そこから『異形』が出てきちゃったら大変でしょ?
“エミリア”: ロズワールとの約束だし、 余計なことを言わないようにすごーく頑張ったけど
“エミリア”: ロズワールはスバルの判断を尊重するって言ってたのよね?
“ラム”: はい 確かにそうおっしゃっていました
“エミリア”: だったら、それでいいと思う スバル、アナスタシアさんに正直に全部話して

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_15

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_15_スバルとアナスタシア 更新日:2021/02/15

“アナスタシア”: ナツキくん、頭は冷えたんかな?
“スバル”: ああ 入ってくれアナスタシアさん
“アナスタシア”: ふーん ずいぶんとスッキリした顔しとるやない 腹は決まったみたいやね
“スバル”: ああ、おかげさまでね
“アナスタシア”: それで?
“スバル”: 正直に全部話す そう決めたよ
“アナスタシア”: ふーん それはホンマなんやろうか? ウチに正直に話して、後でどうなっても知らんよ
“スバル”: 少なくとも、アナスタシアさんは 今すぐ俺たちの障害にはならないはずだ
“アナスタシア”: それはそうかもしれんねえ ウチやって王選が始まってくれんと困るわぁ
“スバル”: 今の俺たちにとっては、それで十分だ
“スバル”: だから、持ってる分の『禁書』のページを全部渡してほしい
“スバル”: もちろん、買い取りにかかった費用は支払わせてもらう レム、それで大丈夫だよな?
“レム”: はい ロズワール様からそれなりの額を預かっています そちらで買い取らせていただければと
“アナスタシア”: エミリアさんの弱味を教えてくれて、買い取りまでしてくれるん? そこまでする利点が、そちらにはあるんやろか?
“スバル”: この街で起こる惨劇を見なくて済む それが俺たちの得る見返りだよ
“アナスタシア”: つまり、この件を見事鎮めて、 王選での実績にしようって腹積もりってことでええ?
“スバル”: いやいや、それは違うんだ
“スバル”: この件を治めてもエミリアたんの実績にはならない すげぇ、残念だけど
“スバル”: なぜなら……
“アナスタシア”: なぜなら?
“スバル”: そ、それは……
“フェネ”: ──すべてスバル氏が悪いからです
“スバル”: そうそう全部俺が……って、 どうしてお前が途中で入ってくんだよ!
“フェネ”: 情けないことに、 スバル氏がなかなかふんぎりがつかないようでしたので
“ラム”: よくやったわ、フェネ
“ラム”: 言いにくいことを代わり言ってもらえたのだから、 バルスはフェネに謝意を伝えるべきね
“スバル”: いやいや、あとちょっと待ってくれたら ちゃんと自分の口で言ってたわ!
“スバル”: こういうのって苦悩の末に自分の口で言うから 意味あるんじゃねぇの?
“スバル”: 相手に誠意がちゃんと伝わるつーか そういうの大事だと思うぜ、俺は
“アナスタシア”: 誠意なんてもんに、ウチは興味ないわ そんなもん見せられても得するわけやないし
“スバル”: あ、アナスタシアさんまで……
“スバル”: ま、とにかく、全部俺のせいだ 俺が屋敷の禁書庫から 『禁書』なんてもんを出しちまったからこんなことに……
“リカード”: 要は自分でまいた種を自分で拾ってるだけやな そないこと、さすがのお嬢でも実績にはせんやろうな
“アナスタシア”: リカード どうしてそこでウチの名前が出るん? 後でじっくり、話を聞かせてもらってもええ?
“リカード”: お、お嬢!? ち、違うで! ワイはそんなつもりじゃ……
“ミミ”: わーい! ダンチョーお説教ー! ミミ見学するー!
“リカード”: 見学せんでええわ!
“フェネ”: フェネも見学させていただきます
“ラム”: 色々と参考になりそうだわ お許しいただけるのであればラムも
“スバル”: 待て待て! いったいなんの参考にするつもりだ、姉様? それにフェネもだ
“スバル”: お前らコンビにこれ以上パワーアップされても困るんだよ
“アナスタシア”: ふふ なるほど、使用人のナツキくんの犯した罪は、 すなわちエミリアさんの罪と同義ってことやね
“スバル”: 言っとくけど、俺はロズワールに雇われてる エミリアたんは正確には俺の雇い主じゃねぇよ
“アナスタシア”: それは苦しい言い訳やね
“スバル”: やっぱそうなる?
“アナスタシア”: せやね 苦しい言い訳や
“スバル”: とにかくだ、アナスタシアさん 俺は全部話した 約束通り『禁書』のページを──
“アナスタシア”: ……約束? どんな約束やろ? そない約束した覚えはないんやけど
“スバル”: そ、そんな……
“アナスタシア”: ウチは欲深でな
“アナスタシア”: 確かに危険なもんなんかもしれんけど、 ウチが買い取ったときより、今は大きく値を上げてるんよね
“アナスタシア”: メイザース辺境伯に買い取ってもらうにしても、 その辺も考慮してもらわんと
“フェネ”: スバル氏 残念ながらタイムオーバーです
“スバル”: ……タイムオーバー? それも俺の顔に…… って、待て待て、どういうことだ?
“フェネ”: 『禁書』の反応です
“スバル”: クソっ! もしかして、手遅れだったか?
“レム”: す、スバルくん!
“スバル”: どうした、レム!
“レム”: 外が……!
“スバル”: 外?
ナレーター: レムの言葉にスバルは窓へと駆け寄り 信じられない光景を目の当たりにする
“スバル”: な、なんだ、これ!?
ナレーター: イバダに馴染みがあるわけでもないが、ここが いつものイバダでないことはスバルにもすぐに理解できた
“エミリア”: 『禁書』は……ここまで環境を変えてしまうの……?
“アナスタシア”: なんやいったい…… これも『禁書』の影響……?
“スバル”: そう判断するのが妥当だ
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: 今度はなんだ、フェネ?
“フェネ”: 恐らく『変異体』かと
“スバル”: ──なっ! こんなときに……
“スバル”: けど、やるしかねぇ
“フェネ”: スバル氏 『変異体』の反応はこちらです フェネについてきてください!
“スバル”: ──よし、みんな! まずは『変異体』をぶっ倒すぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_16

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_16_変貌するイバダ 更新日:2021/02/15

ナレーター: 『変異体』を倒したスバルたちが会談が行われた部屋へ戻ると、 多くの『異形』が出現し、部屋は混乱の坩堝と化していた
“ミミ”: ダンチョー、大丈夫?
“リカード”: もちろんや! ミミこそどうなんや?
“ミミ”: ミミも大丈夫! たくさんぶっとばしたー!
“スバル”: リカードさん! ミミ!
“リカード”: おお、兄ちゃん、そっちは片付けてくれたようやな?
“スバル”: ああ、なんとかな
“スバル”: それにしてもすげぇ数を相手にしたみてぇだな あとはこっちで引き受けるから、少し休んでてくれて構わねぇぜ?
“リカード”: ほなお言葉に甘えて…… なわけないやろ! ワイらは『鉄の牙』や! 兄ちゃんたちこそ休んでてな!
“リカード”: はぁーーっ!
ナレーター: リカードは、飛びかかってきていた『異形』を一振りで斬り伏せる
“スバル”: にしても、『異形』の数が半端ねぇ……
“フェネ”: おそらくページが複数枚あるせいでしょう
“スバル”: 複数枚…… 確かに、アナスタシアさん、 『禁書』のページを買い取ったみたいなこと言ってたもんな……
“フェネ”: リカード氏、ページはどこに保管されているのですか!
“リカード”: そ、それは……
“ミミ”: お嬢しか知らないー!
“スバル”: ……あれ? そういえばアナスタシアさんはどこだ? いつの間にか姿が見えねぇんだが
“リカード”: ホンマや…… お嬢の姿が見当たらん……
“ミミ”: お嬢ー! お嬢ー!
“スバル”: クソっ! とにかくページを『禁書』に封じねぇと収拾がつかねぇ
“スバル”: そのためにも、まずはアナスタシアさんを探すぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_17

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_17_アナスタシアの『禁書』 更新日:2021/02/15

ナレーター: 隙を見て混乱の現場から抜け出したアナスタシアは、 『禁書』のページが保管してある部屋へと急いでいた
“スバル”: アナスタシアさん! こんなところにいたのか!
“スバル”: 『禁書』のページを渡してくれ! この事態をどうにかするためにも早く!
“スバル”: 元栓閉めないと、水は止まんねぇんだ! あいつらをいくら倒してもキリがねぇんだよ!
“スバル”: ここの建物に隠してあるのはもうわかってる そうだよな?
“フェネ”: 左様です 『禁書』のページの反応をとても近くに感じます この反応を追えば、ページのありかへはたどり着けるかと
“アナスタシア”: やっぱりフェネさんには、場所がわかってまうんやねえ
“スバル”: ああ だから俺たちは『禁書』のページを集められてるんだ
“スバル”: ページを封印するだけじゃなくて、 どの辺にページがあるかもだいたい感知できてる
“アナスタシア”: ページを渡したら、この事態を解決してくれるんやろうか?
“スバル”: もちろんだ 騒動を治めてイバダを元に戻すためにも、ページを渡してくれ
“アナスタシア”: 買い取ってくれる件はどうなんやろう? こんなことになってもうたし、ナシなんやろうか?
“スバル”: いや、ナシじゃねぇよ ちゃんと支払わせてもらう ロズワールにも責任を持って俺がとやかく言わせねぇ
“アナスタシア”: メイザース辺境伯はナツキくんの意見を尊重するみたいやし、 せやったら安心やね
“スバル”: このままだと、 もっとやべぇもんが出てきてもおかしくねぇ状況なんだ
“スバル”: だから、ページを頼む、アナスタシアさん
“アナスタシア”: ……わかったわ こっちやナツキくん、ウチについてきてな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_18

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_18_金庫の奥の絶望 更新日:2021/02/15

ナレーター: 『禁書』のページが保管された部屋へ向かう前に、 スバルは念のためにエミリアやリカードたちと合流した
ナレーター: そして、アナスタシアの案内でとある部屋に通される一同──
“スバル”: こりゃ、いかにもって部屋だな
“アナスタシア”: ページは向こうの金庫の中や
“スバル”: そして、いかにもって雰囲気の金庫…… とにかく、急ぎで頼む
“アナスタシア”: わかった、開けさせてもらうわ
“アナスタシア”: ……なんやこれ、どういうこと?
“フェネ”: スバル氏、急ぎページを!
“スバル”: アナスタシアさん! 早くページをこっちに!
“アナスタシア”: でもこれ……触ってもええの? なんかどっくんどっくん、脈打ってるんやけど……
“スバル”: くそっ!
ナレーター: スバルは金庫に駆け寄り、アナスタシアを押しのける
ナレーター: そこにあったのは、数枚の、胎動するページだった──
“スバル”: ヤベぇ、フェネ! こりゃ間に合わねぇ!!
ナレーター: スバルがページを手に取るより早く 脈打つそれは、一気に膨張した
“アナスタシア”: な、なんやの!?
“エミリア”: アナスタシアさん! 離れて! その状態は危険なの!
“フェネ”: もはや手遅れ……きます!  皆様、衝撃に備えてください! 吸い込まれます!!
“リカード”: はぁ!? 吸い込まれるってどういうこっちゃ! もうちょい詳しく──
ナレーター: 膨張したページはくろぐろと渦巻く大穴となり 部屋もろとも飲み込まんと膨れていく
“ミミ”: ななななななんだーーーー!!
“リカード”: くっ……お嬢! こっちや!
“アナスタシア”: リカード、ダメや! そっちまで届かん……
“スバル”: クソっ! リカード! アナスタシアさんは任せろ!
“スバル”: ラム! レム! エミリアを……ぐあぁ!
“エミリア”: スバル……私は大丈夫! アナスタシアさんを守ってあげて!
“レム”: スバルくん! 気を付けてください!
“ラム”: レム! バルスの心配もいいけど自衛なさい!
“フェネ”: 吸い込まれます!! 各自協力して身を守ってください!!
“スバル”: ぐあぁぁああーーーーーー!!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_19

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_19_リカードの咆哮 更新日:2021/02/15

???: ……くん
“レム”: スバルくん、大丈夫ですか!
“スバル”: ……あ、ああ、なんとかな そっちは?
“ラム”: 平気よ、バルス
“ミミ”: おにーさん、ミミたちもいるよ!
“スバル”: エミリアとアナスタシアさんは!?
ナレーター: 慌てて辺りを見回すスバル すぐに、アナスタシアを治癒するエミリアの姿を発見した
“アナスタシア”: こんなことが起きるんやね……
“アナスタシア”: せやけど、やけに落ち着いてるエミリアさんたちは、 ここから出る方法を知ってるってことでええ?
“スバル”: こんなとこ、二度ときたくねぇって思ってたのに、 残念ながらこれで三度目だ
“アナスタシア”: 『禁書』のページの腹の中なんやろうか? 長居してもいいことなさそやね 早いとこ出てまおう
“スバル”: そのためには、もう一つイベントをこなさねぇとな ま、今回は戦力は十分だし、すぐに決着つけられるだろ
“スバル”: な、リカード! って……ん?
“異形”: ぐがががぁあぁぁーーーっ!!!
ナレーター: 突如、スバルたちの耳をつんざく咆哮が響く
“リカード”: どうやら『異形』の登場やな?
“スバル”: ああ、そうみてぇだ
“ミミ”: あのデッカイのやっつけるの?
“スバル”: そうだ ミミを頼りにして大丈夫か?
“ミミ”: もちろん! ミミにまかせてー!
“フェネ”: フェネも後方から支援します
“レム”: では、スバルくんは下がってください
“ラム”: そうね 戦えないバルスは邪魔でしかないわ
“スバル”: うぐっ…… 自分の無力さに胸が痛むが ここは邪魔しねぇように下がってるのが一番……
ナレーター: そう言ってスバルが後方へ回ろうとしたそのとき──
“異形”: うがががぁあぁぁーーーっ!!!
ナレーター: 咆哮とともに『異形』が光線を放つ
ナレーター: その光線はまっすぐに エミリアと彼女の治療を受けるアナスタシアの元へ……
“スバル”: ──え、エミリア!
“ミミ”: ──お嬢ーー!
“スバル”: ──エミリアーーーっ!!!
“リカード”: お嬢、大丈夫か?
“アナスタシア”: …………リカード?
“エミリア”: た、大変! 今、治癒魔法を!
“リカード”: 大丈夫や あんな攻撃、ワイには効かへん
“スバル”: リカードがエミリアたんとアナスタシアさんを庇って…… 一時はどうなることかと思ったぜ……
“フェネ”: スバル氏 安心するのは早計です リカード氏の様子が──
“リカード”: ぐ…… ぐぅ……おぉぉぉおおお!!!
“ミミ”: ──ダンチョー!
“リカード”: ぐ、ああ……あぁぁあああ!!!
“スバル”: う、嘘だろ……
“フェネ”: 恐らく、精神を汚染する攻撃かと リカード氏は理性を失っています
“スバル”: 『異形』の奴はそんな攻撃まで…… って、理性を失ってるってことは?
“フェネ”: 敵も味方もわからぬ状態かと
“スバル”: クソっ! できればリカードとは戦いたくねぇぞ!
“エミリア”: 私の治癒魔法でなんとかなったりしない?
“フェネ”: わかりません! ですが、相手が大人しくしていられない状態で、 治癒に専念するのは難しいのでは?
“リカード”: ぐわぅぅぅううう!!
ナレーター: うろたえるスバルに、リカードが突進する──
“レム”: ──スバルくん!
“スバル”: レム! 助かった! けど……
“レム”: わかっています 傷つけないように引きつけますので、その間に作戦を!
“ラム”: レム、加勢するわ
“スバル”: わりぃ、リカードを頼んだ! ……フェネ、なんとか助ける方法をひねり出して──
“異形”: うがががぁあぁぁーーーっ!!!
ナレーター: 再び『異形』から放たれる光線──
“ミミ”: ミミには当たらないー!
“スバル”: ナイスだミミ! けど、早いとこリカードをどうにかしねぇと……!
“フェネ”: 遠距離から『異形』、近距離にリカード氏…… 明らかに分が悪いです、スバル氏
“アナスタシア”: 絶体絶命やね、ナツキくん
“スバル”: 悔しいが、打つ手が思い浮かばねぇ……
???: ──どうした、諦めるのか?
“スバル”: いやいや、そうは言ってねぇだろ? 難しい状況ではあるがなんとか……って、お前は!?
???: アナスタシア様、到着が遅れてしまい申し訳ありません

Scenario Tag: scenario_main_p01_c02_20

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_2章FIX_■2章_エピローグ_打算と誠意 更新日:2021/02/15

ナレーター: 窮地に陥ったスバルたちの前に現れたのは、 アナスタシアの一の騎士、ユリウスだった
“ユリウス”: ──ミミ、今だ!
“ミミ”: まかせてーーー!
“ミミ”: ぼわぁぁぁあああーーー!!!
“フェネ”: 複雑極まりない表情ですね、スバル氏 我々が優勢だというのに
“スバル”: そうやってお前が話しかけてきてる時点で こっちには余剰戦力があるってことだろ
“スバル”: ここはお前がとどめを刺してこいよ
“フェネ”: 手柄だけ横取りするなど、スバル氏ではあるまいし 善良なフェネにはできません
“フェネ”: それに──
“ユリウス”: これで終わりだ! ──はぁーーーっ!!
“異形”: ぐぎぁぁぁあああーーー!!!
“フェネ”: 見事な一撃で、すでに勝敗は決しました
“スバル”: 見事な一撃、ね……
“ユリウス”: 何か不服かな?
“スバル”: 言っとくけど、ウチのエミリアたんと、 ラムやレムが頑張った結果だかんな
“スバル”: あと、ミミもだ 決してお前だけの力で勝ったわけじゃねぇよ
“ユリウス”: 無論だ 皆が勇敢に戦った結果だ 私は助力したにすぎない
“ユリウス”: だが、君は何をしていたんだ? 他人のことを言う前に、自らの行いを顧みるべきだ
“スバル”: ──な、なんだとっ!
“フェネ”: スバル氏! 言い争いは後です! 間もなくページの外に!
“スバル”: そうだった! みんな衝撃に備えてくれ!!
“フェネ”: ──きます!!!
“スバル”: ……戻ってこれたみたいだな
“スバル”: ──って、みんなは!
“レム”: みなさん無事のようです 安心してください、スバルくん
“スバル”: そっか、ならよかった どうやら街の方も、元に戻ったみたいだな
“アナスタシア”: ホンマやね、ナツキくん 短い悪夢でよかったわぁ
“リカード”: ……いったい何があったんや? ワイはなぜか記憶が飛んでもうて……
“ミミ”: ダンチョーやばかった!
“スバル”: そうそう、こちとら命を取られるとこだったんだぞ! それを記憶が飛んじまったで片付けられてもな……
“スバル”: まぁ、リカードのせいじゃねぇけど
“アナスタシア”: せやね すべては『禁書』のせいや
“アナスタシア”: それじゃナツキくん、改めて『禁書』のページを…… と思ったんやけど、どうやらその必要はなさそうやね
“スバル”: ああ、手癖の悪い小狐がもういただいてるみたいだよ
ナレーター: スバルとアナスタシアが見つめる先で、 フェネはページを『禁書』に綴じ、飛び散ったマナを集めていた
“アナスタシア”: にしても、色々とありがとうな、ナツキくん
“スバル”: いやいや、こちらこそ おかげでいくつかのページが封じられたよ
“アナスタシア”: やったら、ナツキくんがウチに感謝するのはこれからやねえ
“スバル”: はあ? どういうことだよ?
“アナスタシア”: これからは市場にページが出回ることがあったら、 ウチが買い取ってナツキくんに渡すわぁ
“アナスタシア”: ウチがページに興味があって、高値で買い取るっちゅう話は、 きっと噂になって広まってるはずや
“アナスタシア”: 拾ったページを金に換えようと思えば──
“スバル”: まずはアナスタシアさんのとこに相談にいくかな すげぇ有名な商人みたいだし
“スバル”: ……って、それってすごくねぇ!?
“スバル”: 黙っててもページがアナスタシアさんのとこに集まる仕組みが、 もうできあがってるじゃん!
“アナスタシア”: ええ情報があったらそれも教えてあげる どうやろう?
“スバル”: す、すごいぜ、アナスタシアさん!?
“スバル”: けど、いったいどういう風の吹き回しだ? どうしてアナスタシアさんがそこまで……
“アナスタシア”: 何もタダでとは言っとらんやろ 辺境伯の買い取り額に期待や それにナツキくんらにしか、この件は治められんのやろ?
“スバル”: ああ、そうだな 根本的な解決は俺たちにしかできねぇ
“アナスタシア”: この件、『禁書異変』とでも呼んだらええんやろうか? とにかく、この異変はナツキくんらにしかどうにかできん
“アナスタシア”: せやったら、協力した方がええやない
“アナスタシア”: 王選がはじまらんかったら、ウチやって困るし
“アナスタシア”: こんなのにずっと振り回されてたら、 正直ウチも商売あがったりなんやわ
“アナスタシア”: ナツキくんには一刻も早くこの件を片付けてもらわんとな
“フェネ”: アナスタシア女史 本当に今後は集まった『禁書』のページを フェネたちにお譲りいただけるのでしょうか?
“アナスタシア”: ホンマやよ 口約束でも立派な契約やしね
“フェネ”: なるほど…… ですが、 その件に関しては、後ほど契約書を発行させていただきます
“スバル”: おぉ だったら、 ついでに俺との契約も書面ではっきりさせておかない?
“フェネ”: 雇用契約書ならスバル氏が発行するのが筋では
“スバル”: だからお前を雇用した覚えはねぇ!
“ユリウス”: ……アナスタシア様、よろしいでしょうか?
“スバル”: よろしくねぇよ 今、アナスタシアさんは俺と歓談中だ
“ユリウス”: いや、君はフェネ殿と……
“スバル”: フェネとの会話は早急に終わらせて、 アナスタシアさんとの会話に復帰するつもりだったんだよ
“ユリウス”: しかし……
“アナスタシア”: なんやの、ユリウス 大切な話なんやろ? ナツキくんも、ウチのユリウスをいじめんといてあげて
“スバル”: アナスタシアさんがそう言うなら、仕方ねぇ ユリウス、アナスタシアさんと話していいぞ
“ユリウス”: どうして君が許可を…… まあ、いい では、話させてもらおう
“ユリウス”: アナスタシア様 今回の騒ぎは王都であった騒ぎと似ています 彼らの仕業である可能性も……
“ユリウス”: 私は近衛騎士団の一員として、 場合によっては彼らの身柄を拘束しなければなりません
“スバル”: ──なっ!
ナレーター: ユリウスの言葉に、スバルは思わず身構える
“アナスタシア”: ユリウス、それは違うみたいやで ナツキくんやフェネくんは正義の味方
“アナスタシア”: 人心を惑わし、世界を乱す『禁書』を封印する旅人さんや この人らしか『禁書』を封印することはできん
“アナスタシア”: ユリウスは途中参加やったから、色々と見えてないんと違う? ホンマ、ウチもナツキくんらには世話になったんやから
“ユリウス”: なるほど…… あらぬ嫌疑をかけてしまったようだ 申し訳ない
“スバル”: あ、ああ、いや、いいんだ 誤解が解けたんなら、それでいい
“ユリウス”: しかしアナスタシア様 それならば、王城へ招き、我々と連動して一連の問題を……
“アナスタシア”: ユリウス、それなんやけど 王城には報告せんといてもらってええ?
“ユリウス”: それは、どういう……
“アナスタシア”: この件は王選候補者のウチやエミリアさんだけやなく、 クルシュさんまで動いてるって話や
“アナスタシア”: これ以上大事にしたくないんよ、ウチは
“アナスタシア”: それに王城なんて頭が固い人らの集まりやろ?
“アナスタシア”: 決まるもんも決まらんようになって、 進むもんも進まなくなってもうたら一大事や
“スバル”: 俺の故郷に船頭多くして船山に登るってことわざがある
“スバル”: 上の連中が多くなると、色々うまくまとまらないで、 本来の目的とは違う方向に物事が進んじまうって意味なんだけど
“スバル”: アナスタシアさんが言いたいのは、つまりそういうこと?
“アナスタシア”: 確かに船頭さんがぎょうさんおったら、 まともに船は進まんやろうな
“スバル”: 船なのに山を登っちゃうってのはさすがに極端だけど、 それぐらい物事がうまく進まなくなっちまうって例えだ
“アナスタシア”: ユリウスはどう思うん? 近衛騎士団のユリウスやなくて、ウチの騎士のユリウスは?
“ユリウス”: ……わかりました この件は内密にします
“ユリウス”: まずはこの騒動を治めるのが第一 王国の民にとっても、誰が治めるかは二の次かもしれません
“ユリウス”: それに、アナスタシア様にエミリア様、さらにはクルシュ様……
“ユリウス”: これに近衛騎士団まで加わわれば、 物事は思うように進まなくなってしまうでしょう
“ユリウス”: そうと決まれば、スバル殿 私は君への協力を惜しまない 気兼ねなく言ってくれ
“スバル”: お、おう けど、遠慮させてもらう
“ユリウス”: ふっ そうか だが、もしものときは遠慮する必要はない それだけは覚えておいてくれ
“スバル”: あんま自信ねぇな 俺、忘れっぽい方なんでね
“ユリウス”: …………
“アナスタシア”: ふふふ ユリウス、今の顔は傑作やねえ ことごとくナツキくんに断られて、ユリウスも立つ瀬なしや
“アナスタシア”: ずいぶんとナツキくんに嫌われてるみたいやけど、 ユリウスったらなんかしてもうたんやない?
“ユリウス”: そのような心当たりは……
“ユリウス”: エミリア様 スバル殿には断られてしまいましたが、 入用の際はなんなりと私をお頼りください
“エミリア”: ありがとう、ユリウス
“スバル”: あ! あ! ユリウス、俺のエミリアたんに! お前のそういうとこだぞ!
“エミリア”: こら、スバル ユリウスと仲良くしなさい
“エミリア”: ユリウス、ごめんなさい スバルが色々意地悪なこと言って……
“ユリウス”: いえ エミリア様が謝るようなことでは
“スバル”: あん? エミリアたんが謝ることじゃねぇってことは、 暗に俺が謝るべきだって言いてぇのか?
“ユリウス”: そのようなつもりは……
“アナスタシア”: ふふふ ホンマ、おかしいわ ナツキくんと一緒やと、ユリウスはこない面白いんやねえ
“スバル”: どうして俺が、お前の面白さを 引き出してやんなきゃなんねぇんだよ!
“ユリウス”: 完全に言いがかりだと思うのだが……
“ラム”: そうね まったく役に立っていないバルスが どうして『最優の騎士』様にあれやこれや言えるのかしら?
“スバル”: ら、ラム……
“フェネ”: 左様です あの戦いで一番何もしていなかったのはスバル氏です
“スバル”: フェネまで……
“エミリア”: ところでユリウス どうしてユリウスは私たちを助けにこられたの?
“エミリア”: あの場所って、普通は入れなさそう
“ユリウス”: 微精霊のおかげです
“スバル”: ……微精霊のおかげ? なんだそりゃ、わかるように説明してくれ
“ユリウス”: 私はエミリア様には及ばないが、少々微精霊たちと会話ができてね
“ユリウス”: 此度の異変の予兆を感知した微精霊の声を聞いて、 アナスタシア様の身に何かあってはと駆けつけたのだ
“スバル”: じゃあ、あの渦には自ら飛び込んだってのか? 何が起こるかもわからねぇのに
“ユリウス”: 無論だ そこにアナスタシア様がいる確信があったからね
“ユリウス”: アナスタシア様の騎士として、当然のことだ
“スバル”: 騎士として……当然、か……
“リカード”: おかげで助かったわ、ユリウス ワイはなんも覚えとらんけどな! グハハハ
“ミミ”: ミミも助かったー!
“エミリア”: 本当に助かったわ ありがとう、ユリウス
“レム”: レムもです ありがとうございました
“ラム”: さあバルス ラムの分も含めてお礼を言いなさい
“スバル”: ど、どうして俺が姉様の分まで!?
“スバル”: とにかく、今日はそろそろ日も暮れるし、 この辺でお開きにしようぜ
“スバル”: まぁ、今回はなんとかなったからいいけど、 被害はどんどん広がっていくな……
“フェネ”: スバル氏、なんとかしたのは皆様です
“ラム”: バルスは何もしてないわ
“フェネ”: いえ、余計なことをしてます 問題を増やすのがスバル氏の役目ですか?
“レム”: そんなことありません スバルくんは頑張っています
“エミリア”: そうね、うん、スバルは頑張ってるわ
“スバル”: 総合すると、頑張ってるけど なんの結果も残してねぇってことかよ……
“スバル”: マジ情けなくなってくるわ…… けど、だからって落ち込んでなんていられねぇけどな
“スバル”: でだ、フェネ いままでも『禁書』の影響で あたりの雰囲気が変わるってのはあったが……
“スバル”: 実際に形が変わり始めちまうってのは初めてだ あのまま進行したらと思うとゾッとするぜ……
“スバル”: しかもなんか、急展開って感じだったし…… ありゃ一体なんだったんだ?
“フェネ”: 今までは徐々にマナを吸収していって 段階を踏んでいっていると思っていたのですが
“フェネ”: 確かに今回は急激に発達した、という感じですね
“スバル”: なるほど…… 何かそうさせる引き金があったってことか
“フェネ”: そう考えるのが自然でしょう 理由はわかりかねますが……
“フェネ”: ただ、街の形が変わってしまったことについては、 魔獣が『変異体』になるのと同じ原理かと
“スバル”: 『変異体』と同じ原理、ね
“スバル”: わかるようでわかんねぇけど、『変異体』のスケールが でっかくなった版が、イバダの街で起こったって解釈でいいのか?
“フェネ”: 左様です
“スバル”: んで、今回は数ページを回収したわけだけど、 俺らを吸い込んだのってどんな話だったんだ?
ナレーター: おもむろに『禁書』を開くフェネ 隣にいたラムがそれを覗き込む
“ラム”: こそどろゴッソ
“ラム”: ちょっとくらいはばれやしない あいつはあんなにもっている
“ラム”: すこしくらいはいいだろう あいつもしこたまためこんで
“ラム”: そんなにあってもいらないだろう だからおれにもわけてくれ
“ラム”: ちょっとだけちょっとだけ どうせだれもきづきやしない
“スバル”: ……そのページが、富豪のアナスタシアの手元で こっそりマナを吸ってたってわけか
“フェネ”: なんとも示唆的ですね
“スバル”: ああ、なんつーか薄気味悪いな
“スバル”: ……まだ、俺らが気付いてないことがありそうだな 『禁書』のページにはよ
ナレーター: 徐々に広がっていく『禁書』の異変 巻き込まれていく王選候補
ナレーター: しかしページは、まだ数えるほどしか集まっていない──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_00

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_プロローグ 王選のための戦略 更新日:2021/03/30

ナレーター: イバダでの『禁書異変』を収め、カララギを後にしたスバル一行は
ナレーター: ようやく王都にあるロズワール馴染みの宿に到着した
“スバル”: 今日はここで一泊して、明日はいよいよ屋敷に到着だな
“レム”: スバルくん、お疲れ様でした
“スバル”: “お疲れ様”はまだ早いかな 明日無事に屋敷に着いたらようやく“お疲れ様”だ
“スバル”: まだ、何が起こるかわかんねぇし
“フェネ”: 左様です なんせ厄介事を引き寄せるスバル氏がいるのですから
“ラム”: ええ、そうね バルスが一緒にいる以上、 衛兵に守られた王都といえ安心はできないわ
“スバル”: うっ…… せっかくまともなこと言ったのに、これだよ
“スバル”: そもそもそこで俺のことディスる必要ある? “屋敷まで気を引き締めて行動しよう”って言えば済む話だろ
???: それだけ君が人気者ってことだぁーあよ
“スバル”: うわっ!? びっくりした!
“ロズワール”: やあ、スバルくん それに皆も
“エミリア”: ロズワール 王都にきていたのね
“ロズワール”: ええ 実は王選の延期が正式に決まりまして、 それで王都に呼び出されていたというわけです
“ロズワール”: 前回王都を襲った異変 そして、再びイバダでも……
“ロズワール”: 賢人会は王選の無期限延期を決定しました
“スバル”: 無期限延期…… そうなるだろうとは思ってたけど、 いざ正式にそのワードを突き付けられると胸がいてぇよ
“スバル”: 全部俺のせいなわけだし……
“スバル”: 改めて、申し訳ない
“エミリア”: スバル……
“ロズワール”: スバルくん、起こってしまったことは仕方がない
“ロズワール”: それに、必ずしも王選の延期は、 エミリア様にとって悪いこととは限らないよ
“ロズワール”: スバルくんは情勢を正確には知らないかもしれないが、 現時点でエミリア様は圧倒的に不利な状態でねーぇ
“ロズワール”: 形勢を逆転するための時間を稼げたと 前向きに捉えることもできるんだーぁよ
“スバル”: そういや、最初に王選が延期になるかもってなったとき、 エミリアたんもそんな風に言ってくれたな……
“スバル”: 準備する時間ができてよかったって感じで
“ロズワール”: 私もエミリア様も、スバルくんを気遣って そう言ってるわけではないんだ
“ロズワール”: 事実だからそう言っているだけだーぁよ
“ロズワール”: 現時点でエミリア様は大変厳しい状況だ 君には詳しく教えていなかったけどねーぇ
“エミリア”: ごめんなさい、スバル……
“スバル”: 待て待て、エミリアたん謝らないで
“スバル”: なんとなくその理由には心当たりがあるけど、 それってエミリアたんが謝ることじゃないだろ
“スバル”: つまりエミリアたんが──
ナレーター: スバルはそこで言葉を飲み込む
ナレーター: 嫉妬の魔女…… かつてこの世界を恐怖に陥れたその魔女と エミリアの外見が似ていることが原因なのは明らかだ
“ラム”: はんっ 本当にくだらない理由よ
“レム”: はい、とてもくだらないです
“スバル”: 王選じゃクルシュさんが頭一つ抜けてるってのは肌で感じたけど、 エミリアたんはその逆ってわけか……
“ロズワール”: だが、奇しくも時間ができた その時間を有効に使わないとねーぇ
ナレーター: それからロズワールは、王選での地固めのために
ナレーター: エミリアを連れてルグニカの北東にありメイザース領に属する 鉱山都市ガナクスへ向かうつもりだと伝える
“スバル”: 確かに領内の有力者から支持を得るのは大切だと思う
“スバル”: 地元からの支持も得られないようじゃ、 王様になんてなれねぇような気もするし
“スバル”: けど、それって今じゃなきゃダメなのか?
“スバル”: イバダで色々あって、 しかも帰りの道中だってまともに休めてない
“スバル”: 今日は久々にベッドで眠れるけど…… 屋敷に戻って、しばらくゆっくりした後でいいんじゃねぇかな?
“ロズワール”: 我々はね、スバルくん エミリア様をルグニカを治める王にしようとしているんだよ
“ロズワール”: 相手は、すでに盤石な支持を集めているクルシュ様や 大商人のアナスタシア様──
“ロズワール”: エミリア様が勝つためには、 少しの時間も無駄にできないんだあーぁよ
“スバル”: だけど……
“エミリア”: ううん、私は大丈夫
“ラム”: エミリア様が大丈夫と言うのであれば、 バルスの出る幕ではないわ
“スバル”: だけど… だけどさ……
“エミリア”: スバル、本当に大丈夫なの 私、竜車でたくさん眠ったもの
“ロズワール”: それではエミリア様 明日の早朝の出発となります よろしいですね?
“エミリア”: ええ、私は大丈夫よ
“ロズワール”: それとレム ガナクス行きにはレムにも同行してもらう
“レム”: かしこまりました、ロズワール様
“ラム”: レム、ロズワール様のことを頼んだわね できればラムがご一緒したかったのだけれど……
“レム”: 姉様……
“ロズワール”: すまない、ラム 今は平時ではない もしもの場合エミリア様をお守りすることを考えるとレムが適任だ
“ラム”: はい、承知しております ロズワール様、どうかお気を付けください
“スバル”: ええっと、ロズワール 俺はどうすりゃいい?
“スバル”: もちろんエミリアたんと一緒に、 ガナクスとかいう都市にいくつもりなんだけど……?
“ロズワール”: スバルくんには他にやるべきことがあるんじゃないかーぁな
“スバル”: ……他にやるべきこと?
“フェネ”: 正気ですかスバル氏? 『禁書』のページの回収、それがスバル氏が最もやるべきことです
“スバル”: うぐっ…… た、確かに……
“ロズワール”: それじゃ、ラム 私たちが留守の間、屋敷とスバルくんを頼む
“ラム”: ロズワール様 屋敷もバルスの調教もラムにお任せください
“スバル”: 待て待て、そこ“調教”じゃなくてせめて“指導”だよね!
“ラム”: はんっ バルスに“指導”はまだ早いわ
“スバル”: にしても“調教”って…… 完全に動物扱いじゃねぇか
“ラム”: 動物の方がまだ可愛げがあるわ バルスには動物扱いももったいないぐらいよ
“フェネ”: 左様です
“フェネ”: むしろ動物と同程度の扱いをしてくださるラム女史の優しさに スバル氏は感謝するべきかと
“スバル”: “優しさ”ってどういう意味か知ってる!
“スバル”: お、俺、こいつらと一緒に残されるのかよ…… マジ、前途多難だ……
ナレーター: 早朝、ロズワールはエミリアとレムを連れてガナクスへ出発した
“スバル”: ──というわけで俺たちは残されたわけだが
“フェネ”: スバル氏 “残された”という表現は適切ではありません
“フェネ”: 『禁書』のページの回収 その目的を最優先したにすぎません
“スバル”: …………
“フェネ”: 何か言いたげですね、スバル氏 それともフェネの整った顔に、何か付いているとでも?
“スバル”: “整った顔”ってなんだよ 自己評価高すぎだろ
“スバル”: にしても、最近なんだかこの組み合わせだよな
“フェネ”: 確かにイバダへ向かう際も 結果的にスバル氏はラム女史とフェネと一緒でした
“スバル”: 俺はできればエミリアたんと一緒に……
“フェネ”: スバル氏 言っていいことと悪いことがあります
“スバル”: それ、お前が言う!? お前ってどっちかっていうと 言っちゃいけないことのオンパレードだよね!
“フェネ”: それはスバル氏に対してのみです フェネはしっかりと人を選んでいます
“スバル”: その断言って必要かよ? 例えそうでも、わざわざ言わなくていいだろ!
“フェネ”: はぁ…… ピーチクパーチクと先ほどから何なのです? スバル氏、うるさいですよ ラム女史の睡眠の妨げになります
“スバル”: いやいや、さすがに隣の部屋までは聞こえねぇだろ
“スバル”: それに、お前から注意されるのは心外だ どう考えてもお前の余計な一言が原因だよね?
“フェネ”: “心外”というのであれば、フェネこそ心外です
“フェネ”: 最たる当事者であるはずのスバル氏が、 『禁書』のページ探しに身が入らないとは……
“スバル”: その言われようは俺こそ心外だ
“スバル”: 俺の身が入ってねぇって? なんの冗談だよ、そりゃ
“フェネ”: いえ、冗談ではありません 事実、スバル氏はエミリア女史のことで頭がいっぱいに見えます
“スバル”: そりゃ、エミリアは俺にとって特別で……
“スバル”: けど、身が入ってないなってことはねぇよ! 俺はいつも『禁書』のページの回収のことを考えてる!
“スバル”: 第一、俺がどれだけ──
???: いいかげんになさい、バルス
“ラム”: うるさくて眠っていられないわ
“ラム”: 今朝早くにロズワール様をお見送りして、ラムは寝不足なの もう少し寝かせてちょうだい
“フェネ”: 申し訳ありません、ラム女史 フェネはスバル氏にその旨忠告をしたのですが
“スバル”: 待てよ、フェネ! まるで俺が悪いみてぇじゃねぇか!
“フェネ”: 違うのですか? だとしたら失望しました
“スバル”: “失望”ってなんだよ? 元から俺のことなんかなんとも思ってねぇくせしやがって!
“フェネ”: スバル氏……
“ラム”: バルス、フェネに謝りなさい
“スバル”: はあ? どうして俺が?
“フェネ”: いいのです、ラム女史 このクソ上司に何を言っても無駄でしょう
“ラム”: バルス、準備はできたかしら? そろそろ出発よ
“スバル”: ああ、俺の準備は大丈夫だ けど、フェネの奴が見当たらなくて……
“ラム”: フェネならもう出発したわ
“スバル”: はあ?
“ラム”: クソ上司の面を見たら拳が出てしまいそうなので、 早退して自宅で謹慎するそうよ
“スバル”: 早退して自宅謹慎、ね ……やっぱ俺、謝っといた方がよかったかな?
“ラム”: ラムはそう言ったはずよ
“スバル”: けど、あれは……
“スバル”: って、ま、ラムに言っても仕方ねぇか
“ラム”: 賢明な判断ね ラムにとってはいい迷惑だわ
“ラム”: バルス、支度が終わっているなら、とっとと竜車に乗りなさい
“スバル”: へいへい そうさせてもらうよ
???: おやおや、スバルさん 何をされてるんです?
“スバル”: いや、これから竜車に乗って…… って、お前、あんときのガキじゃねぇか!
“コリーナ”: ガキ…… さては名前を忘れていますね?
“スバル”: いや…それは……
“コリーナ”: コリーナです、スバルさん
“スバル”: そうだ! コリーナだ!
“スバル”: けど悪い、今日は急いでるからお前とは遊んでやれねぇんだ
“コリーナ”: 勘違いされているみたいですが、 コリーナは子どもではありませんよ?
“コリーナ”: 世界を股にかける! 冒険者コリーナ! 以後お見知りおきを
“スバル”: なるほど、そういう設定か…… けど、マジでわりぃ、今日は遊んでやれねぇ
“コリーナ”: そういうごっこではありません!
“スバル”: お前が冒険者ってどう見ても無理があんだろ
“コリーナ”: 人を見かけで判断するのはよくないですよ
“コリーナ”: それに、スバルさんと遊んであげたいのは山々ですが、 コリーナはこれから冒険に出発しなければなりません
“スバル”: 立場が逆転してる!? いつ俺がお前と遊びたいって──
???: コリーナさーん! 竜車の準備ができましたよ……
???: って、こちらの方はどなたでしょう?
“コリーナ”: この方はスバルさんです 目つきのわりにはいい人ですよ
“スバル”: そこ、“目つきのわりには”ってワードいる?
“スバル”: とにかく俺はナツキ・スバルだ で、おたくは?
“オットー”: はじめまして、ナツキさん 僕はオットー・スーウェンです しがない行商人をしています
“スバル”: へー、行商人ね…… けど、そのしがない行商人がどうしてコリーナと?
“オットー”: コリーナさんは僕のお客さんでして、 ガナクスまでお連れすることになったんです
“スバル”: ……ガナクス?
“オットー”: はい 運賃はたっぷりいただきましたし、僕もガナクスへ 向かう予定だったので、とてもありがたいお話でした
“スバル”: 運賃をたっぷり、ね とてもそんな感じには見えねぇけど、本当に大丈夫か?
“スバル”: 単なる見間違いで、銀貨だと思って受け取ったもんが、 ただの石っころだったりしてねぇよな?
“スバル”: なんだかオットーっておっちょこちょいっぽいし
“オットー”: おっちょこちょいとは失礼な! 心当たりがないわけじゃないですけど!
“オットー”: それに、お代はちゃんと確認しました いくらおっちょこちょいな僕でも石と銀貨を見間違えたりしません
“スバル”: おっちょこちょいはおっちょこちょいなんだな、やっぱ
“オットー”: 悔しいですが、否定はできません……
“スバル”: ははは なんかいいな、お前 気に入ったぜ、オットー
“オットー”: 今、気に入られるような要素ありました!?
“スバル”: 俺にはありまくりだったぜ、オットー お前とはうまくやってけそうだ
“オットー”: 僕にはナツキさんとの関係に不安しか感じないのですが……
“スバル”: とにかくよろしくな、オットー
“オットー”: は、はい……
“スバル”: それで、お前らの行き先がガナクスってのは本当か?
“コリーナ”: はい、本当です スバルさんもガナクスにご用事が?
“スバル”: 実は──
???: とっとと竜車に乗るように言いつけたはずなのに
“ラム”: バルスは何をしているの この無能
“スバル”: いや、俺は……
“ラム”: “とっとと”というのは“すぐに”という意味よ バルスには難しすぎたようだけれど
“スバル”: それぐらい知ってるわ! すぐに乗るよ、乗りゃいいんだろ
“スバル”: ──てなわけで、じゃあな、オットー あと、コリーナも
“コリーナ”: はい、スバルさん、ではまた
“スバル”: ……“ではまた”?
“ラム”: バルス
“スバル”: へいへい
“スバル”: 乗り込んだぜ、ラム
“ラム”: では、出発するわ
ナレーター: こうしてスバルを乗せた竜車は、フェネが先に帰ったという ロズワールの屋敷に向けて出発するのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_01

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_01話 フリューゲルの大樹 更新日:2021/03/30

ナレーター: 屋敷を目指すスバルたちの竜車は、 リーファウス平原を疾走していた
“スバル”: …………
“ラム”: 謝罪の言葉は思いついたのかしら
“スバル”: まだだよ だいたいどうして俺が……
“ラム”: バルス、またその話を蒸し返すつもり?
“ラム”: やはりフェネに一度拳でわからせてもらった方がいいみたいね
“スバル”: いやいや、暴力反対! それは勘弁だ!
“スバル”: それに、あいつを失望させちまった理由はなんとなくわかってる
“スバル”: 俺は一番大切な目的を軽く扱ってたよ
“スバル”: そんなつもりはなかったんだが、 でもやっぱ、結果的にはそうなっちまってた
“スバル”: 頭ではわかってるんだけど、 気持ちの部分では色々言いたいことがあるって感じだ
“ラム”: はんっ 頭でわかってるのなら、頭を優先なさい
“ラム”: 少しは、まったく興味がない相手から 面白くもない話を聞かされるラムの身になってほしいものね
“スバル”: い、今、“まったく興味がない”って言った?
“スバル”: 少しは俺に興味持とう! 一応同僚なわけだし!
“ラム”: それはバルス次第ね ラムの問題ではないわ
“スバル”: 俺次第って……
“ラム”: このままフェネが協力してくれなければ、 いったいどうなるのかしら?
“スバル”: それは……
“ラム”: バルスの話は聞くだけ無駄よ 時間の浪費でしかないわ
“スバル”: でも、それだと完全にあいつを利用するために 頭を下げるってことになりはしねぇか?
“スバル”: 俺は気持ちも大切にしたいんだよ
“ラム”: ラムの気持ちはどうなるの? 聞きたくもない話を聞かされるラムの気持ちは
“スバル”: ラム……
“スバル”: なるほど…… “聞きたくない”って明言されて、 すげぇショックではあるが
“スバル”: 確かにラムにも気持ちがあるな
“スバル”: それに、聞いてて面白い話ってわけじゃないことも確かだ
“スバル”: 俺が言いたいのは結局フェネへの愚痴や弱音なわけだし
“スバル”: 今回のことも俺があいつの気持ちを ちゃんと考えなかったことが原因……
“スバル”: “俺の気持ち”ってのが、 今は一番どうでもいいことなのかもしれねぇ
“スバル”: “頭でわかってるなら、頭を優先しろ”、か…… 今さらだけど、その言葉が身に染みてきたよ
“ラム”: はんっ バルスはせいぜいフェネへの謝罪の言葉でも考えてなさい
“スバル”: へいへい そうさせてもらうよ
“スバル”: ……にしても、あの木、めちゃくちゃデカいな
“ラム”: フリューゲルの大樹よ
“スバル”: ……フリューゲル? 偉人の名かなんかか?
“ラム”: ええ 『賢者』フリューゲル あの大樹を植えた人物の名よ
“スバル”: ……『賢者』? フリューゲルってどんな人だったんだよ?
“ラム”: 詳しいことはラムにもわからないわ それに──
“ラム”: バルスには今やるべきことがあるはずよ
“ラム”: 余計なことは考えずに、フェネへの謝罪に集中なさい

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_02

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_02話 ペトラの思い 更新日:2021/03/30

ナレーター: 屋敷まであと少しというところで突如止まる竜車
“スバル”: どうしたラム? まだ屋敷じゃねぇぞ
“ラム”: 降りなさい、バルス
“スバル”: はあ?
“ラム”: “降りろ”と言ったのよ そんな言葉も理解できないのかしら
“スバル”: いやいや、理解はしてるよ けど、ここで降りろってのはどういうことだ?
“スバル”: ちょうどア―ラム村の付近だし、 買い出しでもして帰ろうって感じか?
“ラム”: そうね、買い出しをしたければすればいいわ でも、ラムがバルスを降ろすのはそういう理由ではないわ
“スバル”: 頼むラム、説明してくれ 何がなんだか俺にはさっぱりわからねぇよ
“ラム”: 確かにバルスは謝罪の言葉は考えたかもしれない
“ラム”: けれどバルスは、それをどんな顔で伝えればいいのか、 わかっていないように見えるわ
“ラム”: このままお屋敷に到着してもバルスにはうまくやれない ラムはそう判断させてもらったのよ
“スバル”: なるほど……
“ラム”: ここからロズワール様のお屋敷へは歩ける距離よ
“ラム”: ラムは先に戻っているから、 バルスはフェネに謝罪できる状態になったらお屋敷まできなさい
“スバル”: すまねぇ、ラム なんか気を遣わせちまって……
“ラム”: はんっ
“スバル”: うーん、どんな顔して、ね……
“スバル”: そもそも目つきが悪い時点で結構マイナスだよな!
“スバル”: 俺の目つきがもっと穏やかだったら…… なんて考えても仕方ねぇか
???: あ! スバルだ!
“ペトラ”: どうしたの、スバル? なんか元気ない
“スバル”: 俺、元気ねぇかな?
“ペトラ”: うん、いつものスバルじゃない気がする 何か悩んでるなら、わたしが聞いてあげるよ?
“スバル”: いやいや心配無用だ あとちょっとで解決しそうだしな
“ペトラ”: スバル、本当?
“スバル”: ああ本当だ だから俺は大丈夫!
“ペトラ”: それならいいんだけど……
“ペトラ”: でも、もし困ってるなら、わたしに相談して
“ペトラ”: わたしはスバルに助けてもらった だから今度はわたしがスバルの力になる番なの
“ペトラ”: だから、ね、スバル

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_03

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_03話 必要な仲直り 更新日:2021/03/30

“ペトラ”: ねえ、スバル わたしはスバルの力になりたい
“スバル”: ペトラ……
ナレーター: 自分のことをまっすぐと見つめる少女にスバルは言葉を失う
ナレーター: 魔獣ウルガルムの群れがア―ラム村を襲った騒動の際に
ナレーター: スバルが村の子どもたちを助けたことがあり、 ペトラはそのことを今でも感謝してくれているみたいだ
ナレーター: だが、あの件は『禁書』のせいで、 一歩間違えば取り返しがつかないことになっていたかもしれない
ナレーター: そして、『禁書』の影響で巨大化したウルガルムから スバルを救ってくれたのがフェネだったのだ
“スバル”: ペトラ、マジで俺の心配は不要だ
“スバル”: それに俺は、お前からの感謝に値しねぇ奴なんだよ そもそもあの件を解決したのは俺じゃねぇしな
“スバル”: けど、ペトラのおかげで大切なことを思い出せたよ
“ペトラ”: ……スバル?
“スバル”: このまんまだとまた村が危険にさらされちまうかもしれない そんなのペトラだってごめんだよな?
“ペトラ”: え? ……うん、もうあんな思いはしたくないよ
“スバル”: 決して忘れてたわけじゃないんだけど、 気の緩みみたいなもんはあったよな、やっぱ
“スバル”: そういうのが出ちまってて、だからあいつは……
“スバル”: それにあの一言は確かに余計だった
“スバル”: あいつは俺のことをどうでもいいなんて思っちゃいねぇ
“スバル”: 事実、俺はあいつにたくさん助けられて──
“ペトラ”: スバル、なんか変 さっきからひとりごとばっかり
“スバル”: ははは わりぃわりぃ ペトラがいるのに確かにひとりごと多めだったな
“ペトラ”: うん ひとりごと多めだよ、スバル
“ペトラ”: でも、なんだかスバル、いい顔になったね
“スバル”: お、わかっちゃう感じ?
“ペトラ”: うん! いい顔になったよ、スバル
“ペトラ”: さっき見たときは心配になっちゃう感じだったけど、 今のスバルは大丈夫そう
“スバル”: ははは なかなか鋭いなペトラは
“スバル”: んで、ペトラが言った通りだ
“スバル”: さっき言った“大丈夫”は、 子どものお前を心配させないための強がりだった
“スバル”: けど、今度のヤツは本当だ
“スバル”: ペトラ、心配かけてすまなかった でも、俺はもう大丈夫だよ
“ペトラ”: うん なら、よかったー
“ペトラ”: でも、スバルに子ども扱いされて、 わたしとしてはちょっと複雑だけどね……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_04

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_04話 フェネの結論 更新日:2021/03/30

ナレーター: ペトラと別れたスバルは屋敷へ急いでいた
“スバル”: 謝罪の言葉も考えたし、気持ちも整った 今なら誠心誠意謝れる気がするぜ
“スバル”: 待ってろよ、フェネ! 俺の心からの謝罪をお前に見せつけてやる!
ナレーター: スバルが屋敷の前に到着すると、 ちょうどラムが屋敷を出るところだった
“ラム”: 遅かったわね、バルス
“スバル”: わりぃ けど、もう大丈夫だ お前のおかげで、フェネに誠心誠意謝れそうだよ
“スバル”: にしても、俺の気持ちなんてどうでもいいって感じだったのに、 お前は俺の気持ちも大切にしてくれてたんだな
“ラム”: 謝罪には態度も重要よ
“ラム”: どんな謝罪の言葉も、態度次第で相手に届かなくなるわ
“ラム”: 気持ちが入っていないと 不器用なバルスは態度に表れてしまうと思ったまでよ
“ラム”: でも、その判断は誤りだったわ 残念ながら、もう手遅れよ、バルス
“スバル”: ……手遅れ? それはどういうことだ?
“ラム”: フェネが見当たらないわ
“スバル”: ……はあ?
“ラム”: これからお屋敷の外も探そうと思ったのだけれど、 バルスはフェネを見かけなかったのよね?
“スバル”: ああ、見てねぇ ア―ラム村からの道中、人っ子一人見かけてねぇよ
“スバル”: けど、あいつがいないって……
“スバル”: 相手がいないんじゃ、謝りようがないじゃねぇか
“ラム”: ええ だから“手遅れ”と言ったのよ やはりあのとき、ちゃんと謝っておくべきだったわね
“ラム”: 所詮バルスはバルスよ そのことを思い知りなさい
“スバル”: くっ……
“スバル”: とにかく、フェネを探そう
“ラム”: はんっ 無論よ、バルスに言われるまでもないわ
ナレーター: それからスバルは、ラムと手分けをしてフェネを探し始める
ナレーター: だが……
“スバル”: ──フェネ!
“スバル”: ──フェネ!
“スバル”: ──フェネ!
“スバル”: フェネーーっ!
ナレーター: フェネの姿はどこにも見当たらない
ナレーター: そして──
“スバル”: ん? あれは……
ナレーター: フェネの発見を諦めかけ、自室に戻ったスバルは、 机の引き出しが僅かに開いてることに気付く
“スバル”: まさかあんなとこに書置きが残されてるなんてこと……
“スバル”: あるのかよ!
ナレーター: 『クソじょうしのスバルしへ
ナレーター: れいせいにかんがえ、ゆうしゅうなフェネだけで たいしょしたほうがこうりつてきだというけつろんにいたりました
ナレーター: これからフェネはガナクスへむかいます
ナレーター: やっかいごとをひきおこすスバルしがいないので、きっとフェネは じゅんちょうにことをすすめることができるでしょう』
ナレーター: 引き出しに残された書置きには、スバルでも読めるようイ文字で、 そう書かれているのだった……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_05

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_05話 神出鬼没な来訪者 更新日:2021/03/30

“スバル”: ええっと、ラム?
“ラム”: …………
“スバル”: ラムさん?
“ラム”: …………
“スバル”: ラム様?
“ラム”: 何かしら、バルス
“スバル”: うお!? 反応した!? ……なんて驚いてる場合じゃねぇ
“スバル”: これから俺たちで──
“ラム”: 却下よ
“スバル”: はあ? 俺はまだなんにも……
“ラム”: 聞くだけ無駄よ
“ラム”: あの書置きを読んで、 バルスが思い付きそうなことなど一つしかないわ
“スバル”: ああ、そうだ あれを読んでやるべきことは一つだけだ フェネを追って俺たちもガナクスへ向かおう
“スバル”: それに──
“ラム”: “それに”なにかしら?
“スバル”: いや……やっぱやめとく
“ラム”: バルス、言いなさい “それに”なに?
“スバル”: くっ…… 少しエミリアたんのことが頭をよぎった エミリアたんの行き先はガナクスだから、それで……
“ラム”: やれやれね、バルス 愚かしいにもほどがあるわ
“スバル”: 返す言葉もねぇよ
“スバル”: けど、俺にはフェネと仲直りする必要がある あいつを失望させたままってわけにはいかねぇんだよ
“ラム”: それはバルスの問題で、ラムには関係がないわ
“スバル”: 関係ないって…… 『禁書』のページの反応があって それであいつはガナクスへ向かったかもしれねぇんだぞ?
“ラム”: だとしたら、書置きにもあった通り バルスなどいない方が順調に事が運ぶかもしれないわね
“スバル”: ラム! お前な!
“ラム”: ラムはロズワール様からお屋敷を任されたわ
“ラム”: ラムのするべきことが、 ガナクスへ向かうことではないことだけは確かよ
“ラム”: 少しはマシになったと思ったのだけれど、 それはラムの思い違いだったようね
“スバル”: どういう意味だよ、それ
“ラム”: いいえ、なんでもないわ
“ラム”: とにかく、『禁書』のページ探しができない以上、 バルスには明日からお屋敷の大掃除をしてもらうわ
“ラム”: いいわね、バルス
“スバル”: ──クソっ! どうして俺が屋敷の大掃除をしなきゃなんねぇんだ?
“オットー”: いやいや、ナツキさん 結局ナツキさんは大掃除なんてしてないですよね?
“スバル”: 当たり前だ、オットー 俺がやるべきことはガナクスへ向かうことなんだよ
“スバル”: なのにラムのわからず屋め
“オットー”: でも、本当に黙って出てきてしまってよかったんですか? 僕としては不安でしかないのですが……
“スバル”: いいんだよ 屋敷を任されたのはラムだ 大掃除がしたきゃ、自分でやりやがれ
“スバル”: 俺はエミリアたんに会いにガナクスへ向かうんだよ!
“オットー”: いやいや、フェネさんとかいう方に謝りにいくんですよね?
“オットー”: ナツキさんがそんなことを言っているから、 色々こじれたみたいなことをさっき言ってませんでしたっけ?
“スバル”: なんだよ、オットーまでそんなこと言い出すのか?
“スバル”: 確かにそうだけども、色々あってストレスが溜まった俺には、 エミリアたんに会ってエネルギーの補給が必要なんだ
“スバル”: それによく考えたら、ひどくねぇか?
“スバル”: フェネの野郎、書置きをわざわざ人目のつかない 引き出しの中に隠してたんだぜ
“スバル”: おかげであっちこっち探し回って、 ホントすげぇ大変だったんだよ
“スバル”: 書置きなんだから、もっと目立つところに置きやがれ!
“スバル”: あー、ムカムカする
“スバル”: ということで、オットー 俺が抱えたこのイライラを解消してもらっていいか?
“オットー”: ど、どうして僕がナツキさんのイライラを!?
“オットー”: こうやってガナクスへお連れしてるだけでも 十分僕はナツキさんに貢献してますよね?
“スバル”: わりぃ、わりぃ そういやそうだな お前が訪ねてきてくれてすげぇ助かったよ
“オットー”: こっちはコリーナさんに無理言って、 わざわざ訪ねたことを後悔してしまいそうです……
“オットー”: 本当にナツキさんは、 メイザース辺境伯が一目置く超重要人物なんですよね?
“スバル”: それは間違いねぇよ 俺はロズワールに頼られるスーパー使用人だ
“オットー”: し、使用人!?
“スバル”: あれ、言ってなかった?
“オットー”: 言ってないですよ! “辺境伯が一目置く超重要人物”としか聞いてません!
“スバル”: 使用人って聞いて不安になる気持ちもわかるけども、 超重要人物ってのは本当だ
“スバル”: そもそもあの広い屋敷で暮らしてるのは、 ロズワールも含めて五人……いや、ベア子もいるから六人だけで
“スバル”: 使用人的な立場ではあるけど、 わりとロズワールとはコミュニケーションとれてんだよ
“スバル”: 俺がお前との取引を強く推せば、 あいつは無碍になんてしやしねぇよ
“オットー”: その言葉、本当なんでしょうね?
“スバル”: ああ、本当だ だから大船に乗った気でいて大丈夫だぜ
“オットー”: こうやってナツキさんを連れ出してしまった僕としては、 大船であることを願うのみです……
“コリーナ”: そろそろ御者を代わってください、オットーさん コリーナも色々スバルさんとお話がしたいです
“オットー”: あ、すみません、コリーナさん お客さんに御者をしてもらって
“コリーナ”: いえ、冒険者のコリーナは、竜車の操縦は苦ではありません この地竜さんもとても頭がいいですし
“コリーナ”: ですが、なんだかスバルさんとオットーさんが、 とても楽しそうにお話をされているので
“オットー”: た、楽しそうでしたか!?
“オットー”: むしろ御者台で地竜を操ってる方が疲れなかったような……
“スバル”: あん? オットー、なんか言ったか? 俺と色々話せて、すげぇ楽しかったよな?
“オットー”: あ! はい! それはもう!
“オットー”: 今すぐコリーナさんに代わって御者台にいきたいぐらい とても楽しかったですよ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_06

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_06話 工業都市ガナクス 更新日:2021/03/30

ナレーター: ガナクスへとコリーナを運ぶオットーの竜車に同乗した スバルの旅は、そろそろ終わりを迎えようとしていた
“コリーナ”: スバルさん、まもなくガナクスへ到着しそうです
“コリーナ”: スバルさんのおかげで、ガナクスまでの道中が 退屈しないですみました ありがとうございます
“スバル”: いやいや、こちらこそ“ありがとう”だ こうやって竜車に同乗させてもらえて、すげぇ助かったよ
“オットー”: ナツキさん、ガナクスに到着後、 本当にメイザース辺境伯をご紹介いただけるんですよね?
“スバル”: オットー、お前は竜車の操作に集中しろ
“オットー”: いやいや、これぐらいの会話は大丈夫です!
“オットー”: それに、僕にとってはとても重要なことなので、 答えてください、ナツキさん!
“スバル”: ったく、お前は心配性だな そんなに俺が信用できねぇのか?
“オットー”: ここまで旅をご一緒して、 信用できる要素が見当たらなかったのですが!
“オットー”: 僕はあなたじゃなくて、 ラムさんという方に取り入っておくべきだったかもしれません
“オットー”: 僕としては、辺境伯との取引が成立すればいいだけですから
“スバル”: ははは 今さらだけど、その通りだぜ、オットー! 俺なんかよりもあいつの方が発言力あるしな!
“オットー”: ひ、開き直りやがったよ、この人!
“コリーナ”: コリーナはスバルさんが一緒で本当に楽しかったです こうやってオットーさんとスバルさんの楽しい会話も聞けますし
“スバル”: お前の雇い主はこう言ってるぜ?
“オットー”: た、楽しい会話……?
“オットー”: 本人にまったくその自覚がないのですが!
“スバル”: 俺はお前との会話をすげぇ楽しめたよ からかいがいあるもんな、オットーって
“オットー”: はぁ…… なんだかどっと疲れが……
“スバル”: おいおい、もうすぐ到着なんだし、元気出せよ、オットー お前がどんよりしてどうすんだ?
“オットー”: あなたのせいですよ! あなたの!
“スバル”: ──ということでガナクスに到着っと
“スバル”: いやー、それにしても節々がいてぇ
“スバル”: 客として一言言わせてもらうけど、 オットー、もうちょい乗り心地も大事にしろ
“オットー”: ぼ、僕のお客さんはあくまでコリーナさんです! ホント、あなたという人は……
“コリーナ”: 冒険者のコリーナとしては、十分な乗り心地でした あまり快適だと冒険の感じが出ません
“コリーナ”: それに、スバルさん 一番節々にきているのは、長い間御者台にいたオットーさんですよ
“スバル”: おっと、確かに! お勤めご苦労だったぞ、オットー
“オットー”: どういう立場での発言ですか!? ナツキさんが一番謙虚でいるべきですよね!
“スバル”: それは、まぁ、これから次第だろ?
“スバル”: もしかしたらロズワールと すげぇいい取引ができるようになるかもしれねぇんだし
“オットー”: それはそうですけど、それについては期待薄な感が否めません
“オットー”: 僕は完全に取り入る相手を間違えた気が……
ナレーター: オットーがそうため息を漏らしたそのとき──
謎のうめき声: ウウウゥゥ……っ!
ナレーター: 不気味なうめき声が周囲に響く
“コリーナ”: ──っ!
“スバル”: ──オットー! お前の地竜、なんだか様子が変だぞ!
“オットー”: あ!? フルフー! 落ち着いて!
フルフー: ウウ ウウウウゥゥ──!
“オットー”: か、勝手に!? ──ダメだ! 戻ってこい、フルフー!
“オットー”: フルフーーーっ!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_07

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_07話 フェネのいう通り 更新日:2021/03/30

ナレーター: オットーの地竜、フルフーの暴走
ナレーター: その暴走に『禁書』が影響している可能性が高いと スバルは考えていた
ナレーター: 王都では人々が『禁書』の影響を受け、 多くの喧嘩や言い争いが発生して大きな騒動に発展したのだ
ナレーター: 『禁書』は魔獣だけでなく、動物や人間も狂暴化させる
ナレーター: そして、フェネがガナクスへ向かったという事実も、 スバルの考えが正しいことを裏付けているように思えた
“スバル”: オットー、お前はすぐにでもガナクスを離れた方がいい
“スバル”: 幸いお前の地竜は今は落ち着いた状態だ そいつが落ち着いた状態のうちに早く
“オットー”: し、しかし、僕はまだメイザース辺境伯を……
“スバル”: お前を必ずロズワールに紹介してやる お前と取引するように強く推薦もさせてもらう
“スバル”: だから、な わかってくれ、オットー ここにいちゃ危険なんだ
“スバル”: それに俺は、お前の地竜は自分を正気に戻すために、 あんな風に壁に激突したような気がするんだよ
“スバル”: けど、また影響を受けたら、 こんな風に正気に戻れるとは限らねぇ
“オットー”: ……影響を受けたら?
“オットー”: な、ナツキさんはいったい何を言ってるんです? フルフーの暴走に何か心当たりがあるんですか?
“スバル”: いや、ほら、王都でも不可解な騒動があったこと、 お前も知ってるだろ?
“スバル”: あんな風なことがここでも起きたら嫌だなって思ってさ 実際、お前の地竜は原因不明の暴走をしたわけだし
“オットー”: 確かに…… フルフーが暴走するなんて、 余程の事情があったとしか考えられません
“スバル”: とにかく、お前らはガナクスを離れろ わかったな、オットー あと、コリーナもだ
“コリーナ”: …………
ナレーター: スバルの説得に応じオットーは急ぎガナクスを出発した
“スバル”: ふー これで一安心だな
“コリーナ”: はい、一安心です
“スバル”: ……って、おい! お前、オットーと一緒に出発したはずじゃ?
“コリーナ”: どうしてコリーナが?
“コリーナ”: 冒険者のコリーナは、 これから起こることのすべてを見届けるつもりです
“スバル”: いやいやいや お前だって王都であった騒動を経験したはずだ あんなことがここでも起きるかもしれねぇんだよ だから……
“コリーナ”: わくわく
“スバル”: すげぇわくわくしてる!? いやいや、マジだから! マジで危険なんだよ、ここは!
“コリーナ”: だとしたらなおさらですよ、スバルさん 危険は冒険者のコリーナにはご褒美ですから
“スバル”: いやいや、“危険がご褒美”なんて考えは改めよう! お前はまだ若いんだし、今からでも変われるよ、きっと!
“スバル”: それに、エミリアたんが心配だ 俺にはお前に構ってる余裕が──
“コリーナ”: スバルさん、コリーナはスバルさんをあてになんてしていません 何かあれば自分の身は自分で守れます
“コリーナ”: スバルさんこそ大丈夫ですか?
“コリーナ”: 危険が迫っているのであれば、 スバルさんこそ避難した方がいいのではないでしょうか
“スバル”: 馬鹿野郎! 舐めんな! エミリアを置いて俺だけ逃げられるか!
“コリーナ”: 冒険者のコリーナも、これから起こることを見届けずに 逃げるわけにはいきません
“スバル”: クソっ! コリーナのわからず屋!
“スバル”: けど、いつまでもお前の説得に時間をかけてるわけにもいかねぇ
“スバル”: 悪いがコリーナ、俺はエミリア探しを優先させてもらう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_08

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_08話 どちらを探す? 更新日:2021/03/30

男: ──なんだ、テメー!
男: あん? やんのか?
ナレーター: 明らかにスバルの周囲では空気が荒れ始めている
“スバル”: 影響が出始めてる感じだな…… 早くエミリアたんたちを見つけねぇと
“スバル”: って、その前にフェネと合流するって手もあるな
“スバル”: 取り返しがつかなくなる前に、フェネとページを探して 『禁書』に封じる方が優先かもしれねぇ
“コリーナ”: スバルさん、探している人はなかなか見つかりませんね
“スバル”: ああ だから別の選択肢もただいま検討中だ
“コリーナ”: ですが、スバルさんとしては、 まずはエミリアさんという方にお会いしたいのでは?
“スバル”: そりゃ、まあ…… 俺にとっちゃエミリアがすべてだと言っても過言じゃない
“スバル”: けど、フェネって奴と合流できても、 エミリアを助けることにつながるんだよ
“スバル”: 結果的に俺は、エミリアのためになればそれでいいんだ
“スバル”: お前みたいな子どもが、 騒動に巻き込まれるかもしれねぇってのに……
“スバル”: 本当だったら、真剣にお前を説得して
“スバル”: それでもお前が言うことをきかなかったら、 殴ってでも逃がさなきゃならねぇってのに……
“スバル”: 俺にはその時間が惜しい
“スバル”: 何があっても、“危険はご褒美だ”なんて言ってる お前の自業自得だって自分に言い訳しながら
“スバル”: 俺はエミリア探しを優先しちまってるんだよ
“コリーナ”: ですから、コリーナは子どもではないですし 自分の身は自分で守れます
“コリーナ”: むしろ自分の身さえ守れない可能性が高いスバルさんが、 冒険者であるコリーナの心配をしている方がおかしな状況です
“コリーナ”: やはりスバルさんは、とんでもないお人好しですね……
“コリーナ”: ですが、そのお人好しさに免じて、 コリーナも真剣にエミリアさん探しに協力しましょう
“スバル”: ……真剣に協力?
“コリーナ”: はい!
“スバル”: いやいやいや! なんだか嫌な記憶が蘇るぞ、それ!
“スバル”: お前、王都で色々と俺を弄んでくれたよな?
“スバル”: さんざん王都内を連れ回されたうえに、 収穫ゼロだったあの日のことを俺は忘れてねぇよ
“コリーナ”: なんのことでしょう? 記憶にありません
“スバル”: それ、本気で言ってる!? しかもそれ、どこかの国の悪い政治家の常套句だから!
“スバル”: 都合が悪いこと言われると、 大概そう言って切り抜けようとしやがんだ、あいつらは
“コリーナ”: なるほど…… ですが、コリーナはそのような方々とは違います
“スバル”: 当の本人が否定しても、俺の不安は拭えねぇよ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_09

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_09話 コリーナは優秀 更新日:2021/03/30

ナレーター: コリーナとともにエミリアたちを探し始めるスバル
ナレーター: だが、王都での苦い経験から、 スバルはどうしてもコリーナの言動を信じることができない
ナレーター: 王都で『禁書』のページ探しをしていたスバルは
ナレーター: コリーナと行動をともにして、 一日のほとんどを無駄にしてしまったのだ
ナレーター: コリーナが怪しいと連れていった場所は、 『禁書』のページとは関係がないところばかりだった
“コリーナ”: ふむふむ、なるほど
女性: 私の情報、お役に立ちそうですか?
“コリーナ”: はい! ありがとうございました!
“コリーナ”: スバルさん、お待たせしました!
“コリーナ”: コリーナの聞き込みの結果、探す場所が絞られました さあ、あちらに向かいましょう
“スバル”: …………
“コリーナ”: スバルさん?
“スバル”: あ、いや…… よく考えたら、 エミリアたんは王選の地固めにきてるわけだし
“スバル”: 地元の有力者の家を片っ端から当たれば、 詳しい情報が手に入るんじゃねぇかなって思って
“スバル”: うまくいけばエミリアたんたちが訪問している最中で、 本人にも会えるかもしれねぇだろ?
“コリーナ”: その通りです!
“コリーナ”: ですので、コリーナはそういう方の関係者だと 思われる方々を見繕い、声をかけさせていただきました
“コリーナ”: 闇雲に聞き込みをしていたわけではありません
“スバル”: え? そうなの?
“コリーナ”: はい!
“コリーナ”: そして、スバルさんがお探しの三名が、 滞在していると思われる宿がわかったのです
“スバル”: おっと、それはすげぇ! もうほとんど会えたようなもんじゃねぇか!
“スバル”: ……って、待て待て 喜ぶのはまだはえぇぞ、俺
“スバル”: こいつはあのコリーナだ どうせまた、全然関係ねぇ場所に連れていかれるに決まってる
“コリーナ”: そんなことはありません
“スバル”: どうしてそう言い切れる?
“コリーナ”: では、いかないのですか?
“スバル”: うーん……
“コリーナ”: それでは、スバルさんには他にどこかあてがあるのでしょうか?
“スバル”: それを聞かれるとつれぇ…… なんせ初めての町だ 現時点じゃあてなんてねぇよ
“スバル”: あー、わかった! とりあえず、エミリアたんたちが、 泊まってると思しき宿に向かうとしよう
“スバル”: けど、そこが空振りだったら、 今度は俺が主導権を取らせてもらうかんな!
“コリーナ”: スバルさん、あの宿です
“スバル”: おお、んじゃ、さっそく宿に入って──
“スバル”: って、エミリアたん!
“スバル”: レムも!
“スバル”: まぁ、こいつはいてもいなくてもいいけど、 とりあえずロズワールも発見だ、コリーナ
“スバル”: ……って、コリーナ? どこいきやがった?
ナレーター: スバルは周囲を見渡してコリーナを探すが、 彼女の姿はどこにも見当たらなかった
“スバル”: ったく、相変わらず神出鬼没な奴だな
“スバル”: 礼の一つでも言ってやりたかったんだが、 まぁ、いねぇなら仕方ないか……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_10

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_10話 ガナクスを守れ 更新日:2021/03/30

“エミリア”: ──す、スバル!?
“エミリア”: どうしてスバルがここに……
ナレーター: 突然現れたスバルに、エミリアは驚きを隠せない様子だ
“レム”: スバルくんは確か姉様と……
ナレーター: レムも明らかに戸惑っている
ナレーター: だが──
“ロズワール”: やあ、スバルくん
ナレーター: ロズワールには驚きの色は見えない
“スバル”: 驚かせてごめん、エミリアたん、レム あと、ロズワールはもうちょっと驚いてくれる?
“ロズワール”: これは失礼
“ロズワール”: 君のことだから、まあ、こんなこともあるだろうと 思っていたものだからねーぇ
“エミリア”: もう、ロズワール スバルがくるかもしれないなら、そう言ってくれればいいのに
“エミリア”: 私、すごーくびっくりしちゃった
“ロズワール”: エミリア様、申し訳ありません だが──
“ロズワール”: 君がここにいるということは、 つまりそういうことだと思っていいのかーぁな?
“スバル”: ああ、お察しの通りだ、ロズワール 『禁書』のページが恐らくここにはある
“ロズワール”: なるほど…… ところでフェネくんの姿が見えないようだあーぁね
“レム”: 確かに…… フェネさんが見当たりません
“スバル”: いや… それは……
“エミリア”: 『禁書』のページがあるにしても、色々腑に落ちません
“エミリア”: スバル、どうやってここまできたの? お屋敷からすごーく遠いはずでしょ
“エミリア”: それに、フェネの姿が見えないのもなんだか変
“エミリア”: 色々詳しく教えて、スバル 私、怒ったりしないから
“スバル”: 怒ったりしないって…… もはや俺が怒られるようなことをしている前提のような……
“エミリア”: スバル、違うの?
“スバル”: ええっと、どうだろう……
“スバル”: けど、怒らないって言ってくれて、話しやすくなったのは確かだよ
“スバル”: んじゃ、ここまでの経緯を話すけど、 エミリアたん、約束通り絶対に怒らないでね!
ナレーター: それからスバルは、自分がガナクスに至るまでの 経緯を三人に話して聞かせる
“スバル”: ──とまぁ、こんな感じだ
“スバル”: ロズワール、オットーっていう行商人に世話になった 贔屓にしてくれると助かる
“スバル”: なんか放っておけない奴で、あいつとは今後もいい関係でいたい
“ロズワール”: わかったよ、スバルくん 彼とはなんらかの取引をさせてもらうと約束しよう
“スバル”: サンキューだ、ロズワール オットーの奴も泣いて喜ぶぜ
“エミリア”: …………
“スバル”: エミリアたん、どったの? 表情が優れないけど
“スバル”: せっかくの可愛い顔がもったいないぜ
“エミリア”: そんなこと言っても誤魔化されません
“エミリア”: スバル、フェネのこと全然話してないもの
“エミリア”: そのオットーって人の竜車でここまできたのはわかったけど、 フェネはどうしたの?
“エミリア”: ここに『禁書』のページがあるならなおさらでしょ?
“エミリア”: 王都とかイバダのときみたいになったら大変 早くフェネと一緒にページを探さないと
“レム”: フェネさんは、姉様と一緒にお屋敷でお留守番でしょうか?
“スバル”: いや、フェネは……
“スバル”: ええっと… その… 今は別行動してるっつーか……
“スバル”: ほら、さっきも言ったけど、オットーの地竜が、 暴走したりなんかして、ここにページがあるのは確実だからさ
“スバル”: フェネの奴は一足先にページ探しを開始したんだ
“スバル”: んで、俺はエミリアたんたちと合流するために、 フェネとは別れてここにきたってわけ
“ロズワール”: スバルくんはよく我々がいる宿がわかったねーぇ
“スバル”: 王選の地固めでここにきたってのは知ってたからな この辺の有力者をあたれば何かわかるかなって思ったんだよ
“スバル”: そしたらみんなが泊ってる宿の情報が手に入った
“レム”: さすがスバルくんです レムは感服しました
“スバル”: まぁ、実際に情報をゲットしたのは、コリーナって子なんだけど
“エミリア”: そうそう、そのコリーナって子はどこ? ちゃんとお礼を言わなくっちゃ
“スバル”: それが、どこかにいっちまったんだ 俺もあいつには礼が言いたかったんだけど……
“ロズワール”: その子の姿が見えなくなったのはいつだい?
“スバル”: ちょうどエミリアたんたちを見かけたときだよ
“スバル”: 怪しいおっさんがいたから、 関わり合いたくねぇって逃げ出したのかもな
“ロズワール”: “怪しいおっさん”とは、私のことかーぁな?
“レム”: スバルくんも素敵ですが、ロズワール様も素敵ですよ、スバルくん
“レム”: それに ここに姉様がいたら冗談では済まなかった可能性が……
“スバル”: おっと、確かに! ここにラムがいなくて助かったぜ って、ちょっと待て……
“スバル”: 確かに冗談のつもりだったんだが…… でも……
ナレーター: スバルはコリーナが姿を消した場面を思い返す
“スバル”: 確か宿からエミリアたんが出てきて、その後にレム…… 最後に出てきたのがロズワールだったよな……
“スバル”: 俺がエミリアたんを見かけたとき、 あいつは確かにまだいたんだ
“スバル”: レムが出てきたときもまだいた気がする
“スバル”: けど……
“ロズワール”: やはり私のせいみたいだあーぁね
“スバル”: ああ、可能性はあるな
“スバル”: そのメイク、やっぱやめた方がいいんじゃねぇのか? 一応、ルグニカでもそれなりの地位にいるわけだし
“ロズワール”: 一応、ねぇ?
“スバル”: ごめん、失言だったよ!
“スバル”: ここにラムがいたらって想像すると冷や汗が止まらないから、 そういう揚げ足を取るの、やめてもらっていい!
“スバル”: ただでさえラムには……
“エミリア”: ん? スバル、ラムがどうしたの?
“スバル”: いやいや、別にどうもしないよ いやだなー、エミリアたん
“スバル”: そんなことより、『禁書』のページだよ、エミリアたん
“スバル”: 早いとこなんとかしねぇと すでに『禁書』のページの影響は出始めてる
“レム”: はい、スバルくん! 急ぎましょう
“ロズワール”: 確かに急いだ方がよさそうだあーぁね
“スバル”: (はぁ…… なんとかこの場は切り抜けたけど、 早いとこフェネを見つけて口裏を合わせてもらわねぇとな……)

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_11

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_11話 救世主エミリア 更新日:2021/03/30

男: おい! やんのか、テメー!
男: ああ、やってやるよ! ぶっ殺してやる!
ナレーター: エミリアたちと合流し、 フェネの捜索を本格的に開始したスバルだったが
ナレーター: 荒れた空気はガナクス全体に広がりつつあった
ナレーター: そして──
変異体: ウガガガガァァーーーッ!
ナレーター: この世のものとは思えない叫びが、スバルの耳をつんざく
“スバル”: ──っ!!
“エミリア”: スバル!
“レム”: スバルくん!
“ロズワール”: どうやらおでましのようだあーぁね
“スバル”: 招かざる客がきちまったみたいだ 『異形』…… いや、『変異体』か
“レム”: 『変異体』であればレムたちでなんとかできます ですが、『異形』の場合はやはりフェネさんがいないと……
“エミリア”: スバル、フェネはどこなの?
“スバル”: いや… ここいらにいるのは確かだと思うんだけど、 正確な場所まではちょっと……
“スバル”: それに──
変異体: ウガガガガァァーーーッ!
市民: うわぁー!
“スバル”: どうやらフェネを探してる余裕はなさそうだ まずはあいつをなんとかしねぇと
???: どうやらボクの出番みたいだね、リア
“エミリア”: パック! うん、お願い! いいわよね、ロズワール?
“ロズワール”: もちろんです、エミリア様
“スバル”: おいおい、ちょっと待て エミリアたんが危険な目にあったらどうすんだ?
“レム”: エミリア様の手を煩わす必要はありません ここはレムが──
“ロズワール”: いや、せっかくだ ここはエミリア様に思う存分力を発揮していただこう
“スバル”: はあ?
“スバル”: 普段のお前だったら“エミリア様のお手を煩わすわけには” って言いそうな場面に思えるんだが
“パック”: スバル、心配はいらないよ リアにはボクがついてるからね
“スバル”: けど……
“ロズワール”: スバルくん、ここはエミリア様にお任せしよう レムもいいね?
“レム”: はい ロズワール様がそうおっしゃるのでしたら エミリア様、お願いします
“エミリア”: うん、任せて 『変異体』なんてやっつけてやるんだから

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_12

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_12話 『禁書』と地固め 更新日:2021/03/30

“エミリア”: ──えいっ!
変異体: うぎゃぁーーッ!
“エミリア”: ──やあっ!
変異体: うががぁーーッ!
ナレーター: エミリアは襲いくる『変異体』を次々と倒していく
市民: あの方が我々を……
市民: あの方のおかげで私たちの命が守られたんだわ
“スバル”: 数が多い! さすがにエミリアたん一人に任せるのは…… って、ロズワール?
“ロズワール”: ふふふ……
“スバル”: おい! ロズワール!
“ロズワール”: いや、ここはエミリア様お一人にお任せしよう 大丈夫、エミリア様はお強い 君が思っているよりずっとね
“スバル”: いやいや、けど……
“ロズワール”: さーぁあ、皆様! 王選の候補者であられるエミリア様が、 皆様をお守りしてくださいます!
“ロズワール”: 安心して避難を開始してください!
市民: あの方がエミリア様!
市民: 危険を顧みず私たちを助けてくださるなんて……
“ロズワール”: さーぁあ、皆様は避難を! エミリア様が食い止めてくださっているうちに早く!
“ロズワール”: スバルくん、私は善良な市民の皆様を安全な場所へお連れする ここは君に任せよう しっかりやりたまえ
“スバル”: ロズワール! お前、これを狙って……
“ロズワール”: なんのことかーぁな
“スバル”: とぼけんじゃねぇ! エミリアばっか戦わせやがって!
“ロズワール”: では、どうするんだい、スバルくん? 私やレムが解決しても意味はない
“ロズワール”: ここはエミリア様に花を持たせるのが得策だと思わないかい?
“スバル”: そ、それは…… いやいや、やっぱダメだ
“スバル”: 元をただせば、『禁書』の件は俺が原因だ
“スバル”: 結局、そのことがばれれば、 ここでいい格好したって意味なんてねぇよ
“スバル”: そもそも、あのアナスタシアさんがそのことを知ってるんだぞ
“スバル”: この件を解決してエミリアがガナクスで支持を集めたって知れば、 アナスタシアさんは黙ってないんじゃねぇかな?
“ロズワール”: なるほど だが、そのときはそのときだあーぁよ
“スバル”: はあ?
“ロズワール”: だから、そのときはそのときだよ、スバルくん
“ロズワール”: それに私は、君が想像しているような結果には、 ならないと考えている
“スバル”: そりゃ、楽観視しすぎだろ それともその楽観視には何か根拠があるとか?
“ロズワール”: さて、どうだろうねーぇ
“スバル”: んだよ、肝心なとこではぐらかしやがって──
変異体: ウガガガガァァーーーッ!
“ロズワール”: 話は終わりだ、スバルくん 私は皆様を安全な場所へとお連れしなければならない
“スバル”: くっ…… 確かに、込み入った話をしてる場合じゃなさそうだ
“ロズワール”: では、任せたよ、スバルくん エミリア様やレムを頼む
“スバル”: “頼む”って言われてもな…… 三人の中で俺が一番弱いんだけど……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_13

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_13話 代役はパック 更新日:2021/03/30

“エミリア”: ふぅー 『変異体』はみんなやっつけたみたい
“レム”: エミリア様、お疲れ様でした 大精霊様もとても活躍されていました
“パック”: 数が多かったからね ボクもちょっと本気を出しちゃったよ
“スバル”: エミリアたん、お疲れ! にしても、あれで“ちょっと”ってパックの本気が恐ろしいよ
“パック”: まあ、ボクが本気を出したら、 この世界を凍らせることだってできちゃうからね
“スバル”: おいおい! 冗談でもそういうこと言うのやめよう! せっかくの可愛いモフモフが台無しになるから!
“パック”: そこは見た目との落差にぐっとくるところなんじゃない?
“スバル”: いやいやいや、ギャップ萌えのレベルじゃないから、それ!
“スバル”: わりかしギャップにはやられがちな俺だが、 そこまで許容できるほど上級者にはなれてねぇよ
“スバル”: とにかく、なんとか現れた『変異体』は倒すことができた ということで……
“エミリア”: スバル、ページを探さないと
“スバル”: やっぱそうなるよな
“スバル”: フェネと合流できない場合も考えて、 ページのありかは掴んでおきたいところだ
“レム”: スバルくん レムには『禁書』に封じることはできませんが、 現れた『異形』を倒すことはできます
“スバル”: そうすりゃ、被害は最小限…… うまくやればゼロに抑えられるかもしれねぇってことか
“スバル”: 結局、またページにマナが溜まれば、 『異形』が具現化しちまうんだが……
“スバル”: それまでにフェネを見つけて、 『禁書』に封じてもらえばいいだけの話だな
“スバル”: よし、フェネと並行して『禁書』のページも探そう
“スバル”: もし発見したときは、レムに負担をかけちまうことに なるかもしれねぇけど、そんときは頼んだぞ、レム
“レム”: はい! スバルくんのお役に立てるなら、気にしないでください
“パック”: ──え? 本気かい、スバル?
“スバル”: パック頼む! この通りだ!
“パック”: ページのありかなんて、ボクにはわからないよ
“スバル”: 見た感じはフェネと似てるし、 試しにちょっとやってみてくれねぇかな?
“パック”: 試しに、ね じゃ、ちょっとやってみるけど…………
“パック”: うん、やっぱりわからないね
“スバル”: いやいやいや、もうちょっとまじめにやってくれよ
“パック”: そんなこと言われても、試しにやってみてあげただけでも、 感謝してほしいぐらいだよ、ボクは
“スバル”: クソ やっぱパックじゃ無理か……
“エミリア”: もう、スバル パックにすごーく失礼
“パック”: ありがとう、リア おかげで、スバルに失礼なこと言われて、 傷ついたボクの心が癒されたよ
“スバル”: パック、お前! 世界を凍らせるなんて言う奴の心が、 これぐらいで傷つくわけねぇだろ!
“パック”: そんなことないよ ボクの心はとっても繊細だからね
“スバル”: またまた そんなこと言って、 エミリアたんに優しくされたいって魂胆が見え見えなんだよ
“パック”: それはずいぶん穿った見方だね まあ、否定はしないけどさ
“スバル”: 否定しないのかよ!?
“スバル”: って、否定しないんだったら、俺のことチクリと刺す必要あった? “穿った見方”とか言われて、俺の心は傷ついたぞ
“レム”: スバルくん、傷ついてしまったんですね でしたら、レムがスバルくんのことを……
“スバル”: エミリアたんへのキラーパスが、なぜかレムの元に!
“レム”: さあ、スバルくん、傷ついた心を癒してあげます
“スバル”: あ、ありがとう、レム でも、心の傷は浅かったみたいだ もう大丈夫かな
“スバル”: それに、今は一刻の猶予もない状況だ 早くページやフェネを見つけねぇと
“エミリア”: ええとね、スバル 私も微精霊とお話ができるの
“スバル”: ……え?
“エミリア”: ほら、ユリウスが微精霊とお話して……
“スバル”: あ! イバダでのヤツね!
“スバル”: 確かあいつは、微精霊との会話でイバダでの危機を知ったんだよな
“エミリア”: うん、そう だから──
“エミリア”: 微精霊に聞けば、フェネの居場所とか ページのこととかわかるかもしれないって思ったの
“スバル”: おぉ! それは名案だね、エミリアたん!
“スバル”: んじゃ、頼む 微精霊に色々聞いてみてくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_14

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_14話 フェネの不在 更新日:2021/03/30

“エミリア”: ごめんなさい、スバル あまり役に立つ情報が聞けなくて……
“スバル”: いやいや、エミリアたんは悪くないよ 気にしないで
“エミリア”: でも……
“レム”: あの、スバルくん
“スバル”: ん? どうしたレム
“レム”: その…フェネさんと落ち合う場所など スバルくんは決めていなかったのでしょうか?
“レム”: スバルくんなら、はぐれた場合なども想定して、 予め落ち合う場所を決めていてもおかしくないかなと
“スバル”: うぐっ…… レムの過大評価が胸にいてぇけど、 そういうのは決めてねぇんだ
“スバル”: あいつとはそういうのを決める前に 別れざるを得なかったつーか……
“スバル”: とにかく、現時点じゃページを探すのと同じぐらい あいつと合流するのは難しい状態なんだよ
“スバル”: マジですまねぇ……
“レム”: そんな… レムの方こそすみません スバルくんを落ち込ませてしまって……
“レム”: ですが、フェネさんのことです ご自分で解決され、ページを封じられるかもしれません
“エミリア”: 私もフェネはすごーく頼りになると思う
“エミリア”: 色々あったけど、たくさんページを封じられたのは、 フェネのおかげでしょ?
“エミリア”: 今回だって……
“スバル”: いや、今回はこれまでと違うかもしれねぇんだ
“エミリア”: どうしたの、スバル? やっぱりなんだか変 フェネと何かあった?
“スバル”: …………
“スバル”: 悪い エミリアたんもレムも俺に気を遣ってくれてんだよな?
“スバル”: フェネと合流できないのは、俺の責任だ
“スバル”: もっと言えば、そもそも『禁書』の件が起こっちまったのも、 俺の凡ミスが原因……
“スバル”: それなのにみんなは、俺を責めるどころか、 気を遣って励ましてくれてる
“パック”: “みんな”というのは美化しすぎな気がするけどね
“スバル”: 確かに“みんな”じゃないけども! ことあるごとにチクチク言うピンク髪のメイドもいるしな!
“スバル”: けど、ここにいるエミリアたんやレムは、 俺のことを責めたりしないでくれてる
“スバル”: 今だって、フェネが解決してくれるかもって、 希望が持てるようなことを言ってくれて
“スバル”: 俺の罪悪感を少しでも減らそうとしてくれてるんだ
“パック”: 残念だけど、スバル ボクは桃髪の子と同じ立場かな
“スバル”: おっと! ここに敵が!
“パック”: リアの足を引っ張るようなことをして、 しかもリアに気まで遣わせるなら
“パック”: ボクとしてはスバルに味方する理由が見当たらないよ
“スバル”: なるほど…… 確かに“みんな”ってのは都合よく考えすぎだったよ
“スバル”: 結局、俺のそういう甘さが、 色々と問題を引き起こしちまうのかもしれねぇ……
“スバル”: あんがとな、パック 肝に銘じとくよ
“パック”: 味方じゃないって言ってるのに、 お礼を言われるのはなんだか複雑な気持ちだね
“パック”: でも、リアにもしものことがあったら、ボクは君を許さないよ それだけは忘れないでね
“スバル”: ああ そんなことになっちまったら、 俺のことは好きにしてくれて構わないぜ、パック
“スバル”: ──とにかく、今はこの状況をどうにかしねぇとだ
“スバル”: 確かに、これまでなんとかページを回収してこれたのは、 フェネのおかげだ
“スバル”: そして──
“スバル”: これからもそうであるために、俺は最善を尽くさねぇとな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_15

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_15話 信頼を胸に 更新日:2021/03/30

ナレーター: 微精霊からの情報収集を試みたエミリアだったが、 『禁書』のページやフェネの情報を得ることはできなかった
ナレーター: 注意深く辺りを調べながら歩き回っても、 ページやフェネの姿はおろか手掛かりさえ掴むことができない
“スバル”: ここまで進展がねぇと、ちょっと心が揺らいじまうな
“レム”: スバルくん……
“スバル”: 悪い、ちょっと弱音が出ちまったけど、俺は大丈夫だ 心は折れちゃいねぇよ
“スバル”: とにかく探すしかない この街のどこかにページはあるし、フェネもいるはずだ
“スバル”: それに、あっさりフェネの奴が解決してくれるかもしれないしな
“エミリア”: ………!
“エミリア”: スバル、あれ!
“スバル”: ん? って、あれは!
“パック”: さすが、リア あれはきっと目当てのものだよ
“レム”: スバルくん、急ぎましょう! 早くしないと──
ナレーター: レムが駆け出そうとしたそのとき、それは光り始めた
“スバル”: ──くっ! ヤバい!
“エミリア”: スバル! 逃げて!
“スバル”: バカ! 俺のことなんかより──
ナレーター: 辺り一面を白い光が包んだ直後、 エミリアとレムは膨張したページに飲み込まれていた
ナレーター: エミリアにより庇われたスバルだけが、 ページに吸い込まれることなく現実世界に留まっている
“スバル”: ──エミリアっ! レムっ! パックっ!
“スバル”: ちくしょう…… 俺だけ助かっても意味ねぇだろ……
“スバル”: 俺が…フェネに失望されてなきゃ……
“スバル”: 結局、全部俺のせいだ……
“スバル”: 『禁書異変』が起きちまったのも、 フェネが一緒にいてくれねぇのも
“スバル”: 全部が全部、俺のせいなんだよ!
“スバル”: このままでいいのか……? このままでホントに……
ナレーター: スバルはエミリアたちを飲み込んだ 大きく膨張しているページを見つめる
“スバル”: ユリウスの奴は、こいつに飛び込んで無事だったよな……
“スバル”: まぁ、『最優の騎士』って呼ばれるあいつと俺じゃ、 雲泥の差ではあるが──
“スバル”: やってみるしかねぇ
ナレーター: スバルはゆっくりとページへと近づく
ナレーター: そして──
ナレーター: スバルは自らページの中へと身を投じるのだった
“スバル”: ままよ!
“スバル”: …………
“スバル”: なんとか無事みたいだな……
“スバル”: 手は動くし、足も動く 意識もはっきりしていて記憶の混濁もない
“スバル”: とはいうものの……
“スバル”: きて早々、いきなり詰んでるよね、俺!?
“スバル”: バカ! バカ! 俺のバカ! どうしてロズワールに声をかけなかったんだ?
“スバル”: フェネを見つけるのは無理にしても、 ロズワールとなら合流ができたはずだ
“スバル”: にもかかわらず、戦闘力ゼロの俺が、 ぼっちでこんなとこにきてどうすんだよ!
“スバル”: 俺一人じゃ、『異形』どころか なんらかの敵が現れただけで終わりじゃねぇか……
“スバル”: クソっ! あの野郎、マジ許せねぇ!
“スバル”: あいつがページに飛び込むなんて無茶をしてなきゃ、 俺だってもうちょっと慎重に考えられたんだ!
“スバル”: あいつは『最優の騎士』 俺はただの引きこもり 確かに嫌な予感はあったけども
“スバル”: まさかこんな凡ミスを犯しちまうなんて……
“スバル”: ちくしょー! 全部お前のせいだぞ、ユリウス!
???: ずいぶん、荒れてますね、スバルさん
“コリーナ”: でも、人のせいにするのはどうかと思いますよ
“スバル”: こ、コリーナ……?
“コリーナ”: はい、コリーナです さっきぶりですね、スバルさん
“スバル”: あ、ああ…… って、待て待て待て! どうしてコリーナがここに?
“コリーナ”: 街を歩いていたら白い光に包まれて、 気が付いたらここにいました
“コリーナ”: 世界的な冒険者であるコリーナは──
“コリーナ”: きっと冒険者としての力を買われ、 ここに召喚されたのだと思います
“スバル”: なるほど 歩いてる最中にページに吸い込まれたんだな
“コリーナ”: いえ、冒険者として召喚されたのです
“スバル”: わりぃ、コリーナ そう思いたい気持ちはわかるけど、 これは事故にあったみたいなもんなんだ
“スバル”: お前が歩いてた近くで、たまたまページが膨張したんだよ んで、吸い込まれた
“スバル”: って、エミリアを見なかったか? レムやパックは?
“コリーナ”: あいにくコリーナは“ユリウスのせいだ、ちくしょー!”と叫ぶ スバルさんしか見ていません
“コリーナ”: あとスバルさんは“バカ! バカ! 俺のバカ!” とも喚き散らしていました
“スバル”: なるほど、俺の醜態は一部始終見られてたわけだ
“スバル”: ──ときに、コリーナ
“コリーナ”: なんでしょう、スバルさん
“スバル”: お前って、冒険者と自称するからには、 もしかしてすげぇ強かったりしねぇ?
“スバル”: とある格闘技を極めてるとか、超強力な魔法が使えるとか、 有名な剣士の娘で幼いころから剣の修行をしてたとかさ
“スバル”: もちろん、すげぇご都合主義だとは思う
“スバル”: けど俺は、このタイミングでのお前との邂逅に、 救世主の登場を予感せずにはいられないぜ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_16

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_16話 異世界に強い男 更新日:2021/03/30

ナレーター: 実はコリーナには強い戦闘力が備わっているのではないか
ナレーター: そう期待したスバルだったが、儚くもその期待は打ち砕かれた
“スバル”: ええっと、もう一度確認するけど、お前って全然強くねぇの?
“コリーナ”: はい スバルさんよりは強いと思いますが
“スバル”: いやいや、俺より強いぐらいじゃ、むしろ弱い部類だろ
“スバル”: ラインハルトにユリウス クルシュさんに『鉄の牙』 ウチのレムだって俺とはダンチな強さだしな
“スバル”: あの可憐なエミリアたんでさえ、俺よりは全然つえぇよ 言ってて悲しくなるけど
“コリーナ”: 冒険者のコリーナは、 どんな困難も知恵と勇気で乗り切ってきました
“スバル”: 得体の知れねぇ『異形』とやり合うのは、 知恵と勇気だけだと心もとないかな!
“コリーナ”: それは冒険者冥利に尽きますね 危険な状況はコリーナにとってご褒美です
“スバル”: …………
“スバル”: もしかして俺、救世主じゃなくて死神に出会っちゃった? こいつと一緒だと、命がいくつあっても足りなさそうなんだけど!
“スバル”: とにかく時間を戻すことはできねぇんだし、 ああだこうだ嘆いてたって仕方ねぇ
“スバル”: なんとかエミリアたんやレムと合流するために前へ進もう
ナレーター: スバルは戦闘要員としては期待薄なコリーナを連れて、 ページ内の亜空間を移動し始める
ナレーター: だが──
“スバル”: まるでロープレのダンジョンだな! すぐに行き止まりに突き当たって先に進めなくなっちまう
“スバル”: これで何度目の行き止まりだ?
“コリーナ”: 十三回目ですね
“スバル”: 正確なカウントサンキュー…… って、そんなに!?
“スバル”: これじゃ『異形』とかにやられる前に餓死しちまいそうだよ
“コリーナ”: その心配は無用です もしもの場合に備えて冒険家のコリーナは食料を携帯しています
“スバル”: なるほど、戦闘は期待薄だが、 冒険者としての経験やスキルは生きるってわけだ
“スバル”: んじゃ、俺もちっとは役に立たねぇとな 今のところまったくいいところなしだし
“コリーナ”: なんだかスバルさんは、自信ありげな顔をしています
“スバル”: まぁ、色んなゲームをやり込んだしな
“スバル”: ロープレみたいなダンジョンとなりゃ、 それなりに攻略方法を存じてるつもりだよ
“スバル”: 恐らく、ここはどこをどう進んでも行き止まりにたどり着く、 そんな仕様なんだと思う
“スバル”: つまり、“行き止まりだと思いきや実は隠し通路が!” 的なのがパターンなんだよ
“スバル”: 行き止まりには隠し通路なんかがあるって前提で調べれば、 恐らく突破口が見つかるはずだ
“スバル”: 手始めにこの行き止まりで……
“スバル”: って、よく見りゃこんなところにボタンがあるじゃねぇか
“スバル”: ──ということで、ポチっとな
ナレーター: スバルの読み通り、 行き止まりだったはずの場所に輝く渦が姿を現す
“スバル”: な? きっとこの渦は次のエリアにつながってるはずだ
“コリーナ”: これはこれは勉強になります
“スバル”: おうおう 大いに学び、成長しろ
“スバル”: ということで、ダンジョンの攻略は俺に任せてくれ なんとなくコツが掴めたよ
ナレーター: 渦を抜けた先には大きな広間があり、 その中央に大きな石板が置かれていた
ナレーター: その石板に書かれた謎の文章をスバルは解読し、 見事そのエリアも突破して見せる
“スバル”: さてさて次はどんな謎解きが……って 完全に今のところ知恵と勇気で乗り切ってんな
“コリーナ”: 冒険の基本は知恵と勇気です
“スバル”: うーん、冒険じゃなくて、 『異形』狩りをしなくちゃならねぇんだけど……
“スバル”: とはいえ、非戦闘員の俺たちには無理ゲーだし
“スバル”: こんな風に知恵と勇気で乗り切れるなら、 それに越したことはねぇな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_17

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_17話 神引き 更新日:2021/03/30

“スバル”: さてさて、間もなく目的地だ きっとそこにエミリアたんがいる
“コリーナ”: どうしてそのようなことがわかるのでしょう?
“スバル”: まぁ、長年の勘って感じかな このエリアをクリアすればゴールって匂いがぷんぷんしてるんだよ
“コリーナ”: それではもう冒険は終わりなのですね……
“コリーナ”: スバルさん、引き返しましょう!
“スバル”: 待て待て! そんな余裕はねぇよ!
“スバル”: それに、これは遊びじゃねぇんだ
“スバル”: ゲームだったら、失敗したらセーブポイントからやり直せるけど、 現実じゃそうもいかねぇだろ
“スバル”: このまま最後まで突き進むのがベストだ
“スバル”: それに……
“コリーナ”: “それに”なんでしょう?
“スバル”: いや、やっぱやめとくわ 言葉には力があるっていうし、あんま口にしない方がよさそうだ
“コリーナ”: なるほど ここまで順調すぎる だからこの先には大きな危険が待ち受けているに違いない
“コリーナ”: スバルさんはそう言いたいのですね?
“スバル”: ああ、そうだよ! でも、俺がわざわざ飲み込んだ台詞、 そうやって言わないでくれる?
“スバル”: それに俺は“違いない”なんて断定するつもりはなかったよ “かもしれない”ぐらいのニュアンスで言うつもりだったんだ
“コリーナ”: スバルさん
“スバル”: なんだよ?
“コリーナ”: 危険は最高のご褒美です
“スバル”: 違うわ! そんなご褒美、俺は遠慮してぇよ!
“コリーナ”: ですが──
ナレーター: 突然辺りを白い光が包み込み
“異形”: ウガガガガァァーーーッ!
ナレーター: この世のものとは思えない咆哮が周囲の空気を震わす
“コリーナ”: 待ちに待った危険のおでましです
“スバル”: クソっ! とっととここを抜けてりゃこんなことには……
“コリーナ”: 過ぎた時間は戻らない 先程スバルさんはそう言っていました
“スバル”: ああ、言ったよ でも、お前にそう言われるとちょっとカチンとくるかな
“スバル”: そもそもお前が引き返そうなんて言い出したせいで、 時間を浪費しちまったんだし
“コリーナ”: この期に及んで他人のせいにするなんて、 みっともないですよ、スバルさん
“スバル”: そ、そうかな!? 俺、正論を言ってるだけだよね?
“スバル”: とにかく、あいつをかいくぐって向こうへ抜けねぇと……
ナレーター: スバルたちの行く手を阻む『異形』 その『異形』の向こう側に次のエリアにつながる例の渦が見える
“異形”: ウガガガガァァーーーッ!
“スバル”: 俺たちに『異形』が倒せるのか……?
“スバル”: いやいや、俺もコリーナも非戦闘員 力でどうにかするのは無理だ
“スバル”: それじゃ、どうする?
“スバル”: 考えろ、考えるんだ……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_18

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_18話 慢心が招く危機 更新日:2021/03/30

ナレーター: 膨張した『禁書』のページに吸い込まれた エミリアやレムを追って
ナレーター: ページに飛び込んだスバルは、そこでコリーナと再会した
ナレーター: その後、ページ内の亜空間をコリーナとともに進んだスバルは、 突如出現した『異形』に行く手を阻まれ、窮地に立たされてしまう
“異形”: ウグググ……っ
“コリーナ”: スバルさん
“スバル”: どうする…… どうすりゃいい……
“コリーナ”: スバルさん
“スバル”: 確かに…… いや…でも…………
“コリーナ”: あ! あんなところに可愛い猫ちゃんが! モフモフしたら気持ちよさそうですよ!
“スバル”: マジかよ!? どこどこ!?
“スバル”: って、おい! んなわけねぇだろ!
“スバル”: 思わず反応しちまった俺も俺だが、 つくならもうちょいまともな嘘をつけよ、コリーナ
“コリーナ”: コリーナはこの場を和ませたかっただけです スバルさんがとても怖い顔をしていましたので
“コリーナ”: ですが、効果はありませんでした…… スバルさんは未だに怖い顔を……
“スバル”: いやいや、俺の目つきのせいだから!
“スバル”: 心がウキウキ踊ってるときでも、 よく“怒ってるの?”って聞かれちまうんだよ、俺は!
“スバル”: にしても、いい度胸してんな、お前 この状況で場を和ませようとするなんてよ
“コリーナ”: 深刻な雰囲気は性に合いませんので
“コリーナ”: それに、コリーナは名案を思いつきました
“スバル”: ほうほう んで、その“名案”ってのは? コリーナ、聞かせてくれ
“コリーナ”: はい コリーナは囮になろうと思います
“スバル”: はあ?
“コリーナ”: あの『異形』とかいう化け物をコリーナが引き付けますので、 その隙にスバルさんは向こうの渦へ飛び込んで先を急いでください
“スバル”: いやいや、待て待て 女の子にそんな危険なマネさせられるわけねぇだろ
“スバル”: 囮になるなら俺の方だ
“コリーナ”: スバルさんは、 いち早くエミリアさんのところに辿り着きたいのでは?
“スバル”: そりゃ、そうだけども けど、コリーナが犠牲になるのはナシだ
“コリーナ”: コリーナは犠牲になどなりません コリーナが超冒険者だということをお忘れですか?
“スバル”: どうして突然“超”が付いた? そもそも“超”冒険者なんてこと、俺は初耳だ!
“コリーナ”: ということで、コリーナは大丈夫です 安心してください
“スバル”: 全然説明になってねぇ! しかも安心する要素が一個も見当たらねぇんだけど!
“コリーナ”: ……では!
“スバル”: あ! コリーナ! お前──
ナレーター: 突如『異形』に向かって駆け出すコリーナ
“異形”: ウガガガァーーッ!
ナレーター: 『異形』もコリーナの動きに呼応するように、 彼女をめがけて突進を開始するのだった
ナレーター: そして──
“コリーナ”: ついてきてください!
ナレーター: コリーナは反転すると、 先程スバルたちが出てきた方の渦に向かって走り始める
“異形”: ウガガガガガァァーーーッ!
ナレーター: 脇目も振らずコリーナを追う『異形』
“コリーナ”: スバルさんは先を急いでください! コリーナの勇気ある行動を無駄にしてはダメです
“スバル”: おい! バカ! コリーナ!
ナレーター: コリーナは渦に飛び込み、 彼女の目論見通り『異形』もそれに続いた
ナレーター: ……そして、訪れる静寂
“スバル”: 嘘だろ…… コリーナお前……
ナレーター: 水を打ったような静けさの中で、スバルの声だけが響く
“スバル”: 嘘だよな、こんなの…… こんなのって…… なぁ、コリーナ……
“スバル”: ──コリーナーーーッ!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_19

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_19話 相棒 更新日:2021/03/30

ナレーター: コリーナの行動を無駄にしないためにも、 スバルは先を進むことを決断した
“エミリア”: …………
“スバル”: ──エミリアっ!
ナレーター: スバルがたどり着いた先には、意識を失ったエミリアがいた
ナレーター: レムやパックの姿は見えない そして──
“異形”: ウグググ……っ
ナレーター: エミリアのすぐ傍で『異形』が彼女を狙っている
“スバル”: ヤバい…… なんとかエミリアを助けねぇと……
ナレーター: 一歩
ナレーター: 一歩と
ナレーター: エミリアとの距離を詰めるスバル
ナレーター: だが──
“異形”: ウガガガガァァーーーーッ!
ナレーター: 無常にも『異形』がエミリアに喰らいつこうとする
“スバル”: ──エミリアーーーッ!!
ナレーター: 気が付くとスバルは、危険を顧みず駆け出していた
ナレーター: エミリアと『異形』の間に飛び込み、 エミリアを庇うようにスバルは『異形』の前に立ちはだかる
ナレーター: 死を覚悟したスバルには、 すべてのことがスローモーションのように見えた
“スバル”: (くそ…… 思わず体が動いちまったけど、 俺にできることはこうやって命を張るぐらいだ……)
“スバル”: フェネ…… お前がここにいてくれたら……
“スバル”: 俺が余計な一言を言わなきゃ……
“スバル”: もっと真剣に『禁書』のページのことを考えてりゃ、 こんなことにはならなかったのに……
“異形”: ウガガガァーッ!
ナレーター: 『異形』の攻撃がスバルに迫り
ナレーター: スバルは目を閉じて最後の瞬間を待つ
“スバル”: フェネ…… できればちゃんとお前には謝りたかったよ……
“異形”: うぎゃぁーーっ!!
“フェネ”: やれやれですね、スバル氏 最後の言葉がフェネに向けられたものとは
“フェネ”: 後から、やはりエミリア女史にするべきだったと 後悔しても知りませんよ
“スバル”: フェネ! お前! 倒したのか?
“異形”: ──ウグググッ!
“スバル”: って、倒せてねぇ!?
“フェネ”: 当たり前です フェネは攻撃特化型ではありません 怯ませて僅かに時間を稼いだにすぎません
“フェネ”: ですが──
“スバル”: 反撃開始だぜ、相棒!
“フェネ”: スバル氏、フェネが援護します
“スバル”: ああ! あのウルガルム戦みたいな感じで、 やってやりゃいいんだよな?
“フェネ”: 左様です
“フェネ”: では、スバル氏──
“スバル”: くたばれ、このやろーーーっ!!
“異形”: うぎゃぎゃぎゃーーーーっ!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c03_20

Scene Name: メインシナリオ_3章_FIX ■3章_エピローグ いちばん大切な存在 更新日:2021/03/30

ナレーター: フェネの登場でなんとか『異形』を倒したスバルは、 ページ内から脱出することができた
ナレーター: 気を失ってはいるもののエミリアも無事に生還し、 ページ内で行方がわからなくなっていたレムとも再会を果たす
ナレーター: だが、コリーナの姿だけはどこにも見当たらなかった
“エミリア”: …………
“スバル”: レム、エミリアたんは眠ってるだけなんだよな?
“レム”: はい 間もなくお目覚めになるはずです
“スバル”: そうか、よかった……
“フェネ”: では、スバル氏 フェネはこれから仕上げを──
“スバル”: ちょっと待ってくれ、フェネ
“フェネ”: ……待てとは? ページを封じねば『異形』の脅威は去りません
“スバル”: それはわかってる わかってるけども、 ページの中にはまだコリーナがいるかもしれねぇんだ
“フェネ”: それは考えられません 主たる『異形』を倒した時点で吐き出されたはず
“フェネ”: コリーナ女史もすでにページを出ていると推測します
“スバル”: けど、どこにも見当たらねぇぜ?
“フェネ”: ただ単に立ち去っただけなのでは?
“スバル”: 確かにあいつはなかなかの素早さだったけど、 挨拶もなしで立ち去ったりするかな?
“スバル”: って、あいつの場合はいつもそうか……
“スバル”: けど… いや… でも……
ナレーター: ひとりぶつぶつと呟くスバルをよそに、 フェネは淡々と仕上げの作業を進めてしまう
“スバル”: やっぱコリーナが心配だ もう一度ページの中に──
“レム”: スバルくん すでにページはフェネさんが……
“スバル”: ホントだ!? まだコリーナが中にいたらどうすんだよ!
“レム”: レムもそのコリーナさんという方はページを出ていると思います
“レム”: その確信がなければ、 フェネさんはページを封じたりしないはずです
“スバル”: 確かに……
“エミリア”: ス…バル……
“スバル”: おわ! エミリアたん!
“エミリア”: 私……
“スバル”: ページに吸い込まれて、気を失ってたんだよ
“スバル”: でも、目覚めてくれてよかった エミリアたんにもしものことがあったら俺……
“エミリア”: 私…ページに入って…それで…… 確か…声が聞こえて…… ええっと……
“スバル”: いいよ、エミリアたん、無理に思い出さなくても
“スバル”: とにかくエミリアたんが無事なら、それで十分だ
“レム”: エミリア様、申し訳ありませんでした
“レム”: ロズワール様からエミリア様をお守りするよう言われていたのに、 レムは……
“エミリア”: ううん レム、私は大丈夫 だから、ね
“レム”: ですが……
“エミリア”: レム、本当に気にしないで 私、なんともないから
“エミリア”: ……でも、私が気を失っていた間に起こったことは色々聞きたいわ スバル、レム、話してもらえる?
“スバル”: ああ、もちろんだ
“スバル”: けど、日が暮れてちょっと冷えてきたし、 詳しい話は宿に戻ってからすることにしていいかな?
“レム”: レムもスバルくんの意見に賛成です
“レム”: ロズワール様とも、 はぐれた場合は宿で落ち合うことになっていますし
“レム”: いったん宿に戻りましょう
“スバル”: ──と宿にきてみたもののロズワールの姿は見当たらねぇな
“レム”: ロズワール様は色々とお忙しくされているのでしょう
“スバル”: ああ、そうだな マジで“色々と”忙しくしてそうだぜ
“スバル”: どんなことで忙しくしてるかはだいたい察しはつくし、 ひとまず詳しい情報共有を始めてもいいかな?
“エミリア”: ええ、お願い 私はほとんど聞く側になっちゃうと思うけど……
“スバル”: それでオーケーだ、エミリアたん
“スバル”: エミリアたんが話を聞いてくれるだけで、 俺にとってはパラダイスなんだから
“エミリア”: ごめん、スバル ちょっとなに言ってるかわからない
“スバル”: ええっと、“パラダイス”ってのは……って、まぁ、いいよ
“スバル”: それに、エミリアたんが申し訳なさそうにしてると──
“レム”: エミリア様、本当にすみませんでした……
“スバル”: レムがこうなっちまうんだよ
“スバル”: だから、な エミリアたんは気にせず俺たちの話を聞いてくれ
“エミリア”: わかった そうさせてもらうわね
“エミリア”: それでね、スバル まずはスバルとフェネのことが聞きたいの スバル、なんだか様子が変だったもの
“スバル”: う、うぐっ!? いきなり俺のハートを打ち抜くとは、 さ、さすがエミリアたんだぜ……
“スバル”: け、けど、その話は後回しにしよう むしろしなくてもいいぐらいかな あは…はは……
“フェネ”: スバル氏、どうやら都合が悪いことは、 何一つお話しされていないようですね さすがクソ上司
“フェネ”: ですが、ここはいったんその話はおいておくことにしましょう
“スバル”: マジでいいのか?
“フェネ”: スバル氏が心から反省していることは先程確認できましたので、 現時点では何も言わないでおきます
“スバル”: “現時点”ではってなに!? それっていつか言う気だよね!
“フェネ”: それはスバル氏次第です 
“スバル”: お前って確か、記憶喪失のくせに、やけに記憶力はよかったよな?
“フェネ”: 左様です フェネが忘れるなどということは期待できません あしからず
“スバル”: わかったよ 色々と改めさせてもらう それでいいだろ?
“フェネ”: ええ スバル氏にその他の選択肢はありません
“フェネ”: ということでスバル氏 さっそくですが──
“フェネ”: スバル氏は、エミリア女史のこととなると 後先見えなくなってしまうあの症状を改善してください
“フェネ”: 先程もフェネが間に合わなければ、 スバル氏は確実に死んでいました
“レム”: ──!
“エミリア”: ……スバル、本当?
“スバル”: フェネ、お前! ここでわざわざ言わなくてもいいだろ!
“フェネ”: いえ、エミリア女史もレム女史もいる場だから、 言う意味があるのです
“フェネ”: そもそも、情報を共有するこの場で言わないでどうするのです?
“エミリア”: フェネの言う通りよ 教えてくれてありがとう、フェネ
“フェネ”: フェネは当然のことをしたまでです
“フェネ”: エミリア女史もレム女史も、 スバル氏のことが気になっていると思いましたので
“レム”: はい、レムもとても気になっていました やはりスバルくんは危険な目に……
“レム”: スバルくん、すみません レムがもっとしっかりしていれば……
“スバル”: いやいや、レムは悪くないから
“スバル”: けど、あのときはああするしかなかったんだ 『異形』が気を失ってるエミリアたんを……
“エミリア”: だとしても、スバルが危険な目にあっても いいということにはなりません
“スバル”: けど、俺の勇気ある行動があったから、 今、エミリアたんは無事なわけで……
“フェネ”: それは違います すべてフェネのおかげです
“フェネ”: スバル氏は後先考えずに、危うく犬死しかけただけです
“フェネ”: にもかかわらず“勇気ある行動”とは、 呆れてフェネには言葉がありません
“フェネ”: 重要なことなので繰り返させていただきますが、 エミリア女史が助かったのはフェネのおかげです
“フェネ”: 手柄の横取りはやめてください クソ上司
“スバル”: “言葉がない”ってわりによく喋るな!?
“スバル”: でも、確かにそうだ フェネのおかげだよ 俺はフェネへの感謝で胸がいっぱいだ
“スバル”: これでいいか?
“フェネ”: あと、無謀な行動に対する反省と 今後についての誓いも必要でしょう
“スバル”: 後先考えず、飛び出したことは反省してる 今後はこのようなことがないよう努める所存だ
“エミリア”: スバル、今後は気を付けてね いい?
“スバル”: ああ、気を付けるよ
“スバル”: けど……
“フェネ”: この期に及んで“けど”とは、 本当にスバル氏は救いようがありませんね
“スバル”: 俺にとって一番大切なのはエミリアたんなんだ やっぱりそこは変わらねぇよ
“エミリア”: ロズワール おかえりなさい
“レム”: おかえりなさいませ ロズワール様
“ロズワール”: やあ、皆無事で何よりだ フェネくんも合流できたようだあーぁね
ナレーター: その後ロズワールは簡単な報告を受けると またすぐに宿をあとにしてしまった
“スバル”: 戻ったと思ったらもういっちまいやがった……
“スバル”: そもそもあいつ、何しに戻ってきたんだ? 俺の話の腰を折っただけじゃねぇか
“フェネ”: むしろフェネには、 スバル氏を救った救世主のように見えましたが
“フェネ”: あのようなことを言われて、エミリア女史が喜ぶとでも?
“スバル”: そ、それは……
“スバル”: けど、俺にはエミリアがすべてだ そこはどうしたって変えられねぇよ
“スバル”: 俺の真ん中にはエミリアがいて、 俺はエミリアのためならなんだってやる
“スバル”: 例え危険なことでも俺は……って、フェネ?
“フェネ”: …………
“スバル”: おい、フェネ、どうした?
“フェネ”: ……いえ、なんでもありません
“スバル”: そんな風には見えなかったけど…… まぁ、深くは聞かないでおいてやるよ
“スバル”: でも、お前も黄昏たりすんだな
“スバル”: もしかして、俺のエミリアたんへの揺るがぬ思いに ぐっときちゃってたりして?
“フェネ”: …………
“スバル”: って、マジかよ!?
“フェネ”: 違います、スバル氏 その逆です 呆れて今度こそ言葉がなかっただけです
“フェネ”: だいたいスバル氏は大きなチャンスを前に、 いったい何をしていたのです?
“フェネ”: エミリア女史は気を失い、『異形』の脅威に晒されていました
“フェネ”: 華麗に解決をしていれば、エミリア女史の スバル氏に対する評価は大きく見直されていたでしょう
“フェネ”: にもかかわらず、スバル氏は最悪の選択をしました
“スバル”: お前がどうしてチャンスって言葉を?ってのはさておき、 確かに、何個か選択を間違えたな
“スバル”: もしやり直せるのであれば、 俺の行動のいくつかは変更したいところだ
“フェネ”: ちなみに、もしやり直せるのであれば、 スバル氏はどの行動を変更するのでしょう?
“スバル”: まず、あのときにお前に謝るかな あと、余計な一言も言わないように気を付けると思う
“スバル”: なんだかんだ、お前のおかげだ、色々と ホント、お前と別れてからそのことを痛感させられたよ
“フェネ”: なるほど それで、他には?
“スバル”: あとは、オットーとコリーナをガナクスの手前で引き返させた
“スバル”: 足がないから、どうしてもあいつらには 同乗させてもらわなきゃなんねぇけど
“スバル”: 必要最小限に留めたと思う
“スバル”: オットーの地竜にはなんだか悪いことしちまったし、 コリーナも巻き込んじまった
“スバル”: お前がガナクスに向かった時点で、 そういう可能性が濃厚だってのに、ちょっと迂闊だったよ
“スバル”: それに、もしページに飛び込む直前からのやり直しだとしたら、 俺はロズワールを探したよ
“スバル”: 俺一人で飛び込んでも、ユリウスみたいにはいかねぇ 戦える誰かと一緒じゃねぇと
“スバル”: もし、あの場にロズワールがいたら、 俺は命を張る必要もなかっただろうよ
“フェネ”: “命を張る”という表現は美化しすぎです スバル氏は犬死をしようとしていただけですので
“スバル”: うぐっ…… あ、明日から剣の稽古でも始めようかな……
“スバル”: ……って、ちょっと待て
“スバル”: エミリアとレムは一緒にページに吸い込まれたはずだ
“スバル”: なのに、レムとエミリアは離れ離れになってた……
“フェネ”: つまり、これまでは同時に吸い込まれた皆様は、 同じ場所に転移していましたが
“フェネ”: それはたまたまだったということでしょう
“スバル”: ──なっ!?
“フェネ”: ページからすると、吸い込んだ相手を 同じ場所に転移しなければならない理由がありません
“スバル”: 同時に吸い込んでもバラバラに転移させることが、 ページには可能ってわけか?
“フェネ”: 現実はそうでした その現実を受け入れるべきです
“スバル”: あのときロズワールと一緒に飛び込んでも、 俺たちはバラバラにされてたかもしれねぇってことか
“フェネ”: 左様です
“スバル”: だとしたら、エミリアたんの評価を 大幅に改めさせるなんてこと不可能だろ
“スバル”: って、フェネ、一個聞いてもいいか?
“フェネ”: なんでしょう、スバル氏
“スバル”: どうしてあのとき、あんな都合よくお前は現れたんだ?
“フェネ”: 都合よく現れたわけではありません フェネはスバル氏のすぐ近くにおりましたので
“フェネ”: スバル氏はフェネの目的をお忘れですか?
“フェネ”: フェネにはページを集め、 『禁書』に封じるという崇高な任務があります
“フェネ”: その目的を遂行するために、あの状況で目指す場所は一つ あの場所にフェネがいてもなんら不思議ではありません
“スバル”: だったら声かけてくれよ!
“スバル”: 確かに俺もエミリアたんに気を取られて、 あんま周囲が見えてなかったけど!
“スバル”: なるほど、一番ライトな変更は、 あの場で注意深く周囲に目を配ればよかったわけだ
“スバル”: だからお前は、あんな質問をしたんだな?
“エミリア”: さっきから、スバルもフェネも二人で何を話してるの?
“レム”: そうです、スバルくん 二人でひそひそ話すのであれば、ぜひレムと一緒に……
“スバル”: いやいや、分かれてた間の情報共有をちょっとしてただけだ
“エミリア”: だったら、なおさら私たちも一緒に聞かないと
“スバル”: 確かにそうなんだけども、 軽く話すつもりが、意図せず込み入った話になっちゃったんだよ
“スバル”: だから、焼きもちを焼く必要はないよ、エミリアたん
“エミリア”: ええっと、どうしてスバルとフェネが二人で話してると、 私が焼きもちを焼くの?
“スバル”: うぐっ……
“レム”: スバルくん、大丈夫ですか? なんだか顔色が悪いです
“スバル”: 予想した返しではあったんだけど、思いのほかダメージが……
“スバル”: 少しぐらい焼きもちを焼いてくれるんじゃって期待が、 俺の心にはあったみたいだよ
“レム”: スバルくん、レムは焼いていますよ フェネさんも女性なので
“スバル”: フェネが女性……
“スバル”: って、さらっと今とんでもワードが飛び出さなかった?
“レム”: “とんでもわーど”というものはわかりませんが、 レムが言った“フェネさんが女性”を指しての言葉であれば
“レム”: フェネさんは女性です
“レム”: スバルくんも知ってて“焼きもちを焼く”という表現を 使ったのだと思ったのですが……
“スバル”: いやいや あれは軽い冗談だ フェネが女の子だなんてちっとも知らなかったよ
“フェネ”: スバル氏 本気でそう言っているのですか?
“スバル”: ああ ってか、みんなは知ってたのか?
“エミリア”: ええ 見ればわかるじゃない
“スバル”: わからないかな!? 俺、一目で精霊の性別がわかるほど、 まだこの世界に馴染んでないし!
“フェネ”: スバル氏 いいえ、クソ上司
“スバル”: どったの、フェネ? 顔が怖いよ?
“フェネ”: フェネの性別を知ってその驚きよう つまりスバル氏はフェネの性別を誤って認識していたのですね?
“スバル”: いや…それは……
“フェネ”: あってはならないことです、スバル氏 よりにもよってフェネを女性と認識していなかったとは──
“フェネ”: フェネはえらく傷つきました もう、実家に帰らせていただきます
“スバル”: いやいや、“実家”ってそもそもお前は記憶喪失だろ? どうやって──
“フェネ”: 最悪です、スバル氏
“フェネ”: フェネを引き留めるチャンスだったにもかかわらず、 よりにもよって揚げ足を取ることを選ぶなんて……
“スバル”: ごめん! 俺が悪かった! 数々の無礼、頼むから許してくれ!
“スバル”: もう、お前と別れるのはこりごりだよ!
“スバル”: だから、な、フェネ! お願いだから、俺を置いていかないでくれ!
ナレーター: 遥々ガナクスへやってきたものの スバルたちが回収できたページは一枚……
ナレーター: この世界にはまだまだ『禁書』のページが残されている──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_00

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_プロローグ_00_姫様の御守(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: 鉱山都市ガナクスでの『禁書異変』を解決したスバルは、 その数週間後エミリアとともにクルシュの元を訪れていた
“クルシュ”: しばらくだったな、エミリア、ナツキ・スバル
“エミリア”: こんにちは、クルシュさん ごめんなさい、色々あってなかなか報告にこられなかったの
“クルシュ”: ほう…… 色々と、か
“スバル”: ああ 一言で言うとエミリアたんが言ったみたいに “色々と”ってことになる
“スバル”: けど、協力関係にあるクルシュさんには、 もちろんその内容を詳しく共有させてもらうよ
“スバル”: 少し長くなるけど、構わないか?
“スバル”: 今日はちょっとってなら、日を改めるぜ しばらく俺たちは王都にいるつもりなんでね
“クルシュ”: いや、長くなっても構わない
“クルシュ”: 卿らの訪問は事前にわかっていたことだ 十分な時間を確保してある
“スバル”: そうか それじゃ、俺から──
“エミリア”: スバル、大丈夫? ちゃんとクルシュさんにお話しできる?
“エミリア”: レムもフェネもいないでしょ スバルが不安なら、私から話してもいいわよ
“スバル”: 大丈夫だよ、エミリアたん ここは俺に任せてくれ
ナレーター: それからスバルは、順を追って丁寧に これまでに起こったことをクルシュに話して聞かせる
ナレーター: 中でもクルシュが興味を持ったのは、 ガナクスでの一件についてだった
“クルシュ”: 報告感謝する、ナツキ・スバル
“クルシュ”: だが、ルグニカの最北といえるガナクスにまで…… これは由々しき事態だな
“クルシュ”: やはり、ページは想像以上に 広範囲に四散していると考えるべきだろう
“スバル”: 確かにな……
“スバル”: お隣のカララギでも実際に発見されてるわけだし、 同じルグニカとはいえ、ガナクスもかなり離れた場所だった
“スバル”: ガナクスでは一枚しか発見できなかったんだけど、 一枚でもありゃ一大事だ
“スバル”: 捜索の網をかなり広げねぇとならないかもな
“クルシュ”: ナツキ・スバル フェネはなんと言っているのだ?
“スバル”: 特には何も言ってなかったかな……
“スバル”: って、すまねぇ 本当だったらフェネも一緒にくるはずだったんだけど
“スバル”: あいつ見当たらなくて 王都まで一緒にきて、宿も一緒に入ったんだけど
“スバル”: 気付いたらいなくなってやがったんだ
“クルシュ”: いや、構わない フェネにはフェネの事情があるのだろう
“スバル”: 王都滞在の準備があるレムならわかっけど、 あいつにどんな事情があるんだか
“スバル”: あいつの記憶力は確かだから、クルシュさんとの約束の時間を 忘れてたとは考えられねぇし マジ、意味不明だ
“スバル”: だいたいあいつは──
“エミリア”: スバル クルシュさんの前よ
“スバル”: おっと、そうだった! フェネの愚痴を聞かせても仕方ねぇな
“クルシュ”: ああ その手の話は、聞いていてあまり心地良いものではないな
“スバル”: だな 以後気を付けます!
“クルシュ”: それで、卿らはしばらく王都に滞在するのだな?
“エミリア”: ええ そのつもりよ
“エミリア”: クルシュさんへの報告もそうだけど、 しばらくちゃんと王都にはこられてなかったから
“スバル”: それに、ロズワールの屋敷だと色々不便なんだよ どこいくにも遠くてさ
“スバル”: ちゃんと調査しようと思ったら、やっぱ拠点は王都の方がいい
“スバル”: 屋敷からだと、クルシュさんに会いにくるのも 往復でほとんど一日かかっちまうしな
“クルシュ”: そうか 卿らが留まってくれるのであれば心強い
“クルシュ”: だが、ページが広範囲に四散しているのであれば、 そう長くは留まっておれんだろうがな
“スバル”: ああ、確かにな カララギについては、 アナスタシアさんがいるから少しは安心できるけど
“スバル”: それ以外の国についてはまったく手が付けられてねぇ
“クルシュ”: 北のグステコ聖王国に南の神聖ヴォラキア帝国か……
“クルシュ”: 彼の国々にもアナスタシア・ホーシンのような 協力者がいると心強くはあるが
“クルシュ”: 卿らの事情を考えると、あまり多くの者に知らせるべきではないな
“スバル”: うぐっ…… そ、そうなんだよ……
“スバル”: 事情を知る人間が増えれば、 それだけエミリアたんのリスクも増えちまう
“クルシュ”: とはいえ、いつまで秘密裏に動けるか、 現状ではなんとも言えん状況だ
“クルシュ”: 『禁書』のページだが、徐々に存在を知られ始めている 道楽で蒐集を試みる者さえ現れたと聞く
“スバル”: ああ アナスタシアさんからもそんなことを言われたよ 結構いい値で買い取ってくれるらしい
“スバル”: リスクしかねぇってのに、 まったく金持ちの考えることは一般人の俺にはわからねぇよ
“スバル”: アナスタシアさんが手を打ってくれてるから、 ページを売ろうと思ったら
“スバル”: まずはホーシン商会にってことになるらしいけど、 予断を許さない状態であることは確かだ
“スバル”: んで、とりあえず、これまでにあったことは 大方伝えられたと思う
“スバル”: 現状手を付けられていない グステコやヴォラキアって国についても
“スバル”: 調査の手を伸ばす必要があるってことは了解した
“クルシュ”: では、これ以上話すことはなさそうだな
“スバル”: ああ また何かあれば報告にくるよ
“スバル”: クルシュさんもクルシュさんで、 何か新しいことがわかったら報告してくれ
“スバル”: しばらく王都にいるんで これまで以上にまめに連絡を取り合えるはずだ
“フェネ”: スバル氏 クルシュ女史への報告はうまくできましたか?
“スバル”: フェネ! お前、どこいってやがった?
“スバル”: なんとか報告は済ませたけど、 お前がいた方がかなり効率的に話せた気がするぜ
“スバル”: クルシュさんも、お前と話がしたそうだったしな
“フェネ”: スバル氏 フェネはフェネなりに気を遣ったのです
“フェネ”: そのおかげでスバル氏は、 エミリア女史と二人きりの時間を過ごせたのでは?
“スバル”: 確かにそうだけども、 なにもクルシュさんへの報告でそうすることねぇだろ
“スバル”: ただでさえ久々の報告で、 話さなきゃならないことが山積みだったってのに
“フェネ”: であればなおさらです
“フェネ”: その状況でスバル氏が華麗な情報共有を見せれば、 エミリア女史のスバル氏への評価も大きく上がるでしょう
“スバル”: いや… それが……
“フェネ”: その様子だと、あまりうまくできなかったようですね
“フェネ”: せっかくの部下の気遣いを無駄にするとは、 ダメでクソな上司そのものですね
“スバル”: そ、そこまで言う!? それに、お前を部下にした覚えはねぇって!
“スバル”: とにかく、余計な気を遣ったんだとしたら、 それは逆効果だったよ
“スバル”: クルシュさんには、伝えるべきことは伝えられたと思うけど、 お前がいればあの場でもう一歩議論を進められたはずだ
“フェネ”: なるほど…… では、次回はフェネも同行することにします
“フェネ”: ところでスバル氏 エミリア女史の姿が見当たらないようですが?
“スバル”: エミリアたんなら、レムの買い出しを手伝いにいったよ
“フェネ”: 使用人であるスバル氏が宿に戻り、 この国の王になられるかもしれないお方が買い出しに出ていると
“フェネ”: スバル氏はそう言っているのですね?
“スバル”: その確認必要!? そうやって詳らかにされるとなんだか傷つくんだけど!
“フェネ”: 正しく状況を理解するために今の状態を明文化しただけです スバル氏を傷つける意図はありません
“スバル”: 言わせてもらうが、俺が宿に戻ったのは、 お前が戻ってるかもしれねぇからだ
“スバル”: フェネさえ行方不明になってなきゃ
“スバル”: 宿に戻ったのはエミリアたんで レムの買い出しを手伝ってたのは俺の方だったんだよ
“フェネ”: スバル氏はそんなにフェネが恋しかったと? さすがは遥々ガナクスまで会いにきただけのことはあります
“フェネ”: ですが、ストーキングは犯罪です 気を付けてください
“スバル”: ストーキングとは人聞き悪い!
“スバル”: いやいや、その前に、こっちの世界のお前が そのワードを発したことを指摘するべきだったか?
“スバル”: いずれにしてもツッコミどころ満載で、 もはや何にツッコめばいいかわからねぇよ
“スバル”: ……けど、まぁ、会えてよかったぜ、フェネ
“スバル”: またどっかいっちまったんじゃねぇかって マジで心配しちまってたしな
“フェネ”: ざまあないですね、クソ上司
“スバル”: お、お前な!
“スバル”: って、やめやめ! 言い争ってる場合じゃねぇ
“スバル”: とにかく、クルシュさんと話した内容を共有すっから、 聞いてもらっていいかな?
“フェネ”: ──なるほど 確かにページはかなり広範囲に 四散したと推測できます
“フェネ”: 他国 グステコ聖王国や神聖ヴォラキア帝国にも 存在していると考えて間違いないでしょう
“フェネ”: カララギ都市国家についても 王国にほど近いイバダを調査したのみ
“フェネ”: さらに西方にページがないとは言い切れません
“スバル”: 時に、フェネ 『禁書』のページっていったい何枚あるんだ?
“フェネ”: なるほど 当然の質問ではありますが、 現時点では知る必要はないと思われます
“フェネ”: 回収したページに比べ、失われているページは圧倒的に多い それが今の状態です
“スバル”: くっ…… あれだけ苦労してまだそんな状態かよ……
“フェネ”: 左様です 精神衛生的にも、 残りの枚数については、知らない方がよいでしょう
“スバル”: わかった とにかく一枚ずつ集めていくしかねぇ
“スバル”: となれば、じっとしてる場合じゃねぇな
“スバル”: まだまだこの王都にもページが眠ってるかも しれねぇわけだし
“フェネ”: 左様です ページのマナ吸収速度には、個体差があると思われます
“フェネ”: かつては発見できなかったページも、 ある程度マナを吸えば感知できる状態になります
“スバル”: つまり、一度調べた場所でも 足繁く通う必要があるってことだな
“スバル”: ということで、調べに出るぞ、フェネ
“スバル”: 少しでも早くページの回収を終わらせるためにも、 時間は有効に使おう
ナレーター: スバルたちは宿の主人にエミリアたちへの伝言を頼み 王都の調査に出発した
ナレーター: だが、スバルの焦る気持ちに反して 一向にページが見つかる気配はない
ナレーター: 気が付くと日は西に傾いていた
“スバル”: ──クソ! これだけ探して収穫なしかよ!
“フェネ”: スバル氏、落ち着いてください 苛立ちは何も解決しません
“スバル”: わかってる わかってるけども、 どんだけ歩き回ったと思ってるんだ?
“スバル”: さすがにイラっとくるだろ
???: ──んだよ、歩き回っていやがったのか? 道理で見つからねぇわけだ
“スバル”: ──っ!
ナレーター: 背後から聞こえた声に、スバルは思わず身を凍らせる
ナレーター: ここは路地裏 しかも夕暮れ時 決して安全とはいえない
“スバル”: ちっ…… しくった…… ページ探しに夢中で 考えなしにこんな場所にきちまってたぜ……
“スバル”: けど、今はフェネと一緒…… チンピラなんか怖くねぇはずだ
???: おいおい、チンピラってオレのことか? こんな上品なおじ様を捕まえて、そりゃねぇだろ、兄弟
“スバル”: ……兄弟?
ナレーター: スバルが振り返ると、 そこには見覚えがある鉄仮面の男が佇んでいる
“スバル”: ……誰が上品なおじ様だって?
“アル”: おいおい、兄弟の目は節穴か? そんなもんオレに決まってんだろ
“スバル”: 節穴はお前の目だ!
“スバル”: ウチのロズワールも中々だけど、お前の奇抜さも負けてねぇよ! ってか、怪しさだけでいったら完全にお前の勝ちだぜ、アル
“スバル”: この王都において、お前のことを上品だなんて 思ってる奴はいねぇ 俺がそう断言してやるよ
“フェネ”: アル氏への批判と見せかけた、ロズワール氏への巧な陰口 当然のことながら、ラム女史にご報告させていただきます
“スバル”: 待て待て、お前の雇い主って俺なんだよね? どうして雇い主が不利になるようなことすんだよ!
“フェネ”: 愛故にです
“スバル”: それ、愛情表現間違えてるから! わかりやすいストレートなヤツで頼むよ!
“フェネ”: 申し訳ありませんが、スバル氏 フェネは普通の愛ではもはや満足できないのです
“フェネ”: 諦めて受け入れてください
“スバル”: お、お前に何があったの!?
“スバル”: とにかく、その愛を受け入れるのは、俺には荷が重いかな
“スバル”: なんせ、普通の愛でさえ、未経験なんでね!
“アル”: おいおい、ねじ曲がった愛、いいじゃねぇか 四の五の言わずに受け入れてやれよ、兄弟
“スバル”: 他人事だと思って、いい加減なこと言ってるんじゃねぇ!
“スバル”: そもそも、俺には心に決めた女の子がいるんだ ねじ曲がった愛なんて受け入れてる場合じゃねぇって
“アル”: ったく、兄弟はわかってねぇぜ
“アル”: 色々おっさんが語ってやっから、一杯付き合ってもらっていいか? ぼちぼち酒場も開く頃だろ
“スバル”: 全力で断らせてもらう!
“スバル”: ダンディーなおじ様ならまだしも、怪しさ全開のおっさんが なに語ったって入ってくるわけねぇしな!
“アル”: ……オレ、ずいぶんな言われようじゃね?
“アル”: よく考えたら、しょっぱなから、 オレに対する失礼な発言のオンパレードじゃねぇか
“スバル”: その原因が自分にあるって、 そろそろちゃんと自覚した方がいいぜ
“スバル”: おっさん、いい年なんだろ?
“アル”: そこ、真面目に受けてどうすんだよ? 明らかに“愛故に”のチャンスだったじゃねぇか
“アル”: 兄弟が“愛故にだ”って言や、 綺麗にオチがついて優勝間違いなしだったのによ
“スバル”: “優勝”ってなんの話!?
“フェネ”: 左様です、アル氏 フェネのフリが完全に殺されてしまいました
“フェネ”: 審査員のため息が聞こえてきそうです
“スバル”: うぐ…… 完全に俺は置いてけぼりだ…… ただでさえ疲れてるのに、さらに疲れが溜まっちまったよ……
“スバル”: で、アル、お前は俺を探してたんだよな?
“アル”: お! そうだったそうだった ウチの姫さんが──
“スバル”: 断る!
“アル”: おいおい、人の話は最後まで聞くもんだぜ それぐらい、学校で習っただろ
“アル”: といわけで、ウチの姫さんが──
“スバル”: さらっと話を続けようとしてんじゃねぇ!
“スバル”: お前はもちろんだけど、 お前の姫様の方にはもっと関わりたくねぇんだ
“スバル”: って、ちょっと待て……
“スバル”: お前、俺を探してたんだよな? どうして俺が王都にいるってわかったんだ?
“スバル”: 色々あって、割と久々の王都だぜ、俺は
“アル”: そんなことが気になっちゃうようじゃ、 ウチの姫さんとはうまくやってけないぜ
“アル”: こちとら兄弟が王都にいることは、 折り込み済みだったんでな
“アル”: こうやって会えることもわかっちゃいたんだが
“アル”: 兄弟が歩き回ってたせいで、 思いのほか苦労させられちまったよ
“スバル”: ……お前、大丈夫か? 外見だけじゃなくて頭の中も……
“スバル”: って、実際、アルは俺に会えてるんだよな……
ナレーター: 思わずスバルは考え込む
ナレーター: 今日こうして王都でこの男と巡り合う可能性は、 限りなくゼロに近いことは確かだ
“アル”: まぁ、小せぇことは気にするなよ、兄弟
“スバル”: 小さくないわ! これがどんだけ奇跡的な状況かわかってんのか?
“スバル”: どうしてそんなことが……
“アル”: 愛故にだ、兄弟
“フェネ”: お見事です、アル氏
“アル”: あったりめぇよ オレが“愛故に”のチャンスを逃すわけねぇだろ
“アル”: っと、綺麗にオチたところで、いくぜ、兄弟 なんせ、ウチの姫さんが兄弟を待ってるんでな
“アル”: それに──
“アル”: 姫さんが持ってる妙な紙切れに、兄弟は興味あんだろ?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_01

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_01_『禁書』の芸術性(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: わざわざ竜車で移動か? 姫様の屋敷ってのはそんなに遠いのかよ?
“アル”: いや、十分歩ける距離だ けど、おっさん疲れちまってよ
“アル”: 兄弟だって、疲れてるんじゃねぇのか? 色々と王都を歩き回ってたみたいだしよ
“スバル”: まぁ、確かに疲れてるな 楽に移動できるのはすげぇ助かるよ
“スバル”: ただ…… できればもうちょいシンプルな竜車がよかったけどな
“スバル”: 車内にいても、外からの冷たい視線を感じるぜ
“スバル”: こんな悪趣味な竜車が通りゃ、 俺だってきっと冷たい視線を向けちまうよ
“アル”: まぁ、気にしねぇことだ いちいち周囲の目を気にしてちゃなんもできなくなっちまう
“スバル”: いやいや、お前やお前の姫様はもうちょい気にしろ! お前らはゴーイングマイウェイ感が半端なさすぎるんだよ!
“スバル”: 俺の心の広さでなんとかコミュニケーション取れてっけど、 普通なら相手にしてもらえねぇかんな
“フェネ”: スバル氏の心が広いとはなんの冗談でしょう?
“フェネ”: スバル氏の心の広さは、 三畳一間に風呂トイレなしほどとフェネは推測します
“スバル”: 誰の心が三畳一間で風呂トイレなしだ! いったいどこの安アパートだよ、そりゃ
“スバル”: って、またまたこっちの世界じゃ出そうもねぇ表現だな それも俺の顔に?
“フェネ”: はい スバル氏の顔に書いてありました
“アル”: あー、確かに書かれてるな しかもかなり滞納してるみてぇだ
“アル”: そんな安アパートでも、 ちゃんと家賃を払わねぇと追い出されちまうぜ、兄弟
“スバル”: もはやなんの話だよ!?
“スバル”: アルも、フェネの発言にいちいち悪乗りしてんじゃねぇ!
“アル”: おいおい、おっさんは、兄弟の心の広さを わざわざ測ってやったんじゃねぇか
“アル”: 結果は残念だったけどな
“フェネ”: やはり、フェネの推測は正しかったと?
“アル”: ああ お前さんの推測通りだったよ ありゃ、確かに三畳一間程度だな
“スバル”: お、お前らな……
“スバル”: にしても、アル お前も俺の顔に 書いてあることが読めたりするのか?
“スバル”: こっちの奴らには通じねぇようなワードを お前はわかってる感じがすっけど?
“アル”: ああ、ちょっとな
“アル”: 今は秘密のベールに包んどくが、 いつかそのときがきたら話してやるよ
“アル”: それまで、乞うご期待だ、兄弟
“スバル”: 別に期待なんかしねぇよ おっさんになんて興味ねぇしな
“スバル”: なんていう軽口はさておき、さっきの話、本当なんだろうな?
“アル”: ああ、本当だ 兄弟の心はかなりせめぇよ
“スバル”: そっちの話じゃねぇ!
“スバル”: プリシラの奴が、 俺が興味を持ちそうな紙切れを持ってるって方だ
“スバル”: 俺が嫌々ながらもお前に付き合って竜車に乗ったのは、 その紙切れに興味があったからだ
“スバル”: もしその話が嘘ってんなら、今すぐにでも竜車を降りさせてもらう
“アル”: 待て待て、本当だから安心しろよ、兄弟
“アル”: しかもその紙切れには相当な価値があるらしい
“アル”: 偶然姫さんが手に入れた紙切れなんだが その紙切れほしさに、数日通い詰める奴まで出た始末だ
“アル”: そいつは結構な金額を提示したんだけどよ、 ウチの姫さん、金じゃ動かねぇからな
“アル”: 今もちゃんと姫さんの手元に残ってるぜ
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: ああ、高値で取引されるってのはやっぱホントみてぇだ……
“スバル”: とにかく、プリシラから回収する方法をなんとか考えねぇとな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_02

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_02_邂逅の理由(仮) 更新日:2021/06/30

“プリシラ”: ──おい、凡愚 貴様何しにきた? 胴と首が繋がっている間にとっとと失せよ
“スバル”: はぁぁぁーーっ!?
“プリシラ”: 聞こえぬか、凡愚 妾は失せろと言ったのだ いつまでそこにおるつもりじゃ?
“スバル”: いやいやいや、待て待て!
“スバル”: ほとんど強引につれてこられたと思ったら、これか? 納得できねぇどころの話じゃねぇぞ!
“スバル”: お前、俺に会いたかったんだよな?
“アル”: わりぃ、兄弟 姫さん、完全に興味なくしてるみたいだわ
“アル”: “鉄は熱いうちに打て”って言うだろ? 兄弟を見つけるのに、ちと時間がかかっちまったからな……
“アル”: まぁ、しゃあねぇよ 土下座でもなんでもして、姫さんの気分を変えてくれ
“スバル”: ど、どうして俺が!?
“スバル”: だいたい、おっさんが俺を連れてきたんだろ? どうにかするのは俺じゃなくて──
“フェネ”: プリシラ女史 ご無礼をお許しください
“フェネ”: この者は後できつく叱っておきますので、 どうか我々にお時間をいただけないでしょうか?
“プリシラ”: ほう…… 貴様は心得ているようじゃな
“プリシラ”: では、あの凡骨の命と引き換えに、貴様には妾の時間をやろう
“フェネ”: ありがたき幸せ とういことでスバル氏、ここは潔く──
“スバル”: 待て待て! この前もそうだったけど、 俺の命が軽く扱われすぎじゃねぇ?
“プリシラ”: 安心せい 妾も骨ぐらいは拾ってやる
“スバル”: そういう心配はしてないかな!?
“スバル”: てか、もしそんなことになったら、 むしろお前にだけは拾ってほしくねぇよ!
“プリシラ”: ほう…… 骨さえも残らぬ、完全な消滅を所望か
“スバル”: 違うわ! そんなオーダー出してねぇだろ!
“スバル”: 話せば話すほど認識のずれが大きくなるって、 どんだけコミュ障なんだよ、お前!
“プリシラ”: アル “こみゅしょう”とはなんじゃ? 説明せい 貴様も知っているのであろう
“アル”: おっと、そうなっちゃう? まぁ、知ってるは知ってるんだけどよ……
“アル”: ったく、兄弟のせいでとんだとばっちりだぜ 難解ワードぶっこむ前に、ちっとは考えろよ
“スバル”: とばっちりは、完全に俺の方だよね!
“スバル”: 会いたいって呼び出された相手から、 今や跡形もなく消滅しろって言われてんだぞ!
“スバル”: だから、関わり合いたくねぇって言ったんだ……
“スバル”: お前も大概だけど、あの姫様は、 俺が知るなかでもナンバーワンだよ
“プリシラ”: おい、凡愚 妾は“ナンバーワン”か?
“スバル”: ああ、ぶっちぎりでな
“プリシラ”: アル
“アル”: ああ、姫さん、“ナンバーワン”ってのは一番すげぇってことだ 兄弟は、姫さんがぶっちぎりで一番すげぇって言ってる
“アル”: ということで姫さん 兄弟に死んでもらうのは、もうちょい後にしてもらっていいか?
“アル”: 兄弟が言う通り、姫さんが呼び出したから 兄弟はここにきたんだ
“アル”: 客人はそれなりにもてなしてやるのが、礼儀ってもんだろ
“プリシラ”: 黙れ 道化の分際で図に乗るでない 貴様に意見など許した覚えはないわ
“プリシラ”: ……だが、気が変わった よかろう この凡愚の首は繋げておいてやる

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_03

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_03_『禁書』と遺作(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: プリシラと会った直後にひと悶着あったものの、 話はようやく本題に入ろうとしていた
“プリシラ”: ──して凡愚、妾に何用じゃ
“スバル”: 呼び出されたのは俺の方なんだよ! てなことを今さら言っても仕方ねぇ空気だな
“フェネ”: 左様です、スバル氏
“フェネ”: こうして命ある状態でプリシラ女史のお話が伺える 今はそのことに感謝するべきかと
“スバル”: お前って、マジであの姫様とうまくやれそうだよな
“スバル”: ラムといい、プリシラといい、俺の難敵が ことごとく得意キャラって、すげぇ神経の持ち主だぜ
“フェネ”: お褒めの言葉と受け取っておきます
“スバル”: いやいや、褒めてはねぇよ むしろ──
“フェネ”: スバル氏 今は無駄口をたたいている場合ではありません プリシラ女史のお気持ちはいつ変わるかわかりませんよ
“アル”: お! その通りだぜ、兄弟 姫さんの気が変わらねぇうちに、 ちゃちゃっと済ませてくれや
“アル”: 兄弟には、姫さんに聞きたいことがあるんだよな?
“スバル”: なぜか完全に立場が逆転しちまってはいるが、 今はそんなこと気にしてる場合じゃねぇ……
“スバル”: ということで、プリシラ お前が持ってるっていう妙な紙切れについて聞きたい
“スバル”: その紙切れは、今どこに保管してあるんだ?
“プリシラ”: ……紙切れ?
“アル”: ほら、なんでもすげぇ価値があるっていう『遺作』のことだよ
“アル”: そもそも、『遺作』のことが知りたくて、 姫さんは兄弟を呼び出したんじゃなかったか?
“スバル”: ……『遺作』、だと?
ナレーター: アルの口から出た聞き覚えがない単語に、 思わずスバルは声を出してしまう
“スバル”: 待ってくれ、アル その『遺作』ってのはなんだ?
“アル”: 兄弟が興味あるっていう妙な紙切れのことだ
“スバル”: 俺が『遺作』ってのに興味があるって? 残念だけど、俺は『遺作』なんてもんは知らねぇ
“アル”: そんなはずはねぇだろ
“アル”: 姫さんが兄弟に聞こうと思ったんだ だとしたら兄弟が知らねぇはずねぇ
“スバル”: どういう理屈だよ、それ!
“スバル”: にしても 危うく存在まで消滅させられかけたってのに、 とんだくたびれ儲けだったよ
“スバル”: 帰るぞ、フェネ 長居したい場所でもねぇし、 すっかり日も暮れちまった
“スバル”: エミリアたんもレムもきっと心配してるはずだ
“プリシラ”: 待て、凡愚 勝手は許さぬ ──アル
“アル”: へいへい というわけで、帰るのはナシだ兄弟
“スバル”: いやいや、きて早々に帰れって言ったのはあいつだよね?
“アル”: まぁ、そんなこともあったな けど、今の姫さんの意向はステイだ
“スバル”: まったく、ころころ意向が変わる姫様だぜ よくあんなのに付き合ってやってるよな、お前も
“アル”: 姫さんの良さは、お子様な兄弟にはまだわからねぇだろうな ああいう女が男を成長させてくれるんだよ
“スバル”: 成長させてもらった結果が、お前か? だったら俺はお子様のままで十分だよ!
“スバル”: とはいえ、強行突破しようにも、 肝心のフェネに、その意思がなさそうなんだよな……
“フェネ”: 当然です、スバル氏 プリシラ女史が“待て”と言えば待てです
“フェネ”: それに、『遺作』というものについて もっと情報を得るべきだとフェネは考えます
“フェネ”: 現時点で何かを判断するのは、早計ですよ、スバル氏

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_04

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_04_絵本の「噂」(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: ──けどな、俺としてはあんま気が進まないっつーか 日も暮れたし帰った方がいいっつーか
ナレーター: フェネからは『遺作』というものについて、 プリシラから詳しく聞くよう進言されたスバルだったが
ナレーター: 傍若無人なプリシラへの苦手意識もあり、 煮え切らない状態が続いていた
“スバル”: 正直言って、こいつらと関わっても、 ロクなことにならねぇ気がすんだよ
“プリシラ”: ならば、件の紙からは描かれた絵が飛び出すと言えばどうじゃ?
“スバル”: ──っ! 絵が……飛び出す?
“プリシラ”: そうじゃ 貴様には何か心当たりがあるのであろう?
“スバル”: い、いや… 俺には……
“アル”: なんだよ、明らかに反応が変わったじゃねぇか
“アル”: やっぱ、姫さんの読み通り、 兄弟はなんか知ってるんじゃねぇのか?
“アル”: って、知ってるの確定って感じでこっちは考えてっけど
“スバル”: 待て待て、“知ってるの確定”ってどういうことだよ? そんな摩訶不思議なアイテム、俺が知ってるわけねぇだろ
“アル”: だったら、兄弟はどうしてオレについてきたんだ? “妙な紙切れ”ってのに、ずいぶんと興味深々の様子だったぜ?
“スバル”: それはお前が無理やり……
“アル”: ちょっち無理があんだろ、その言い訳にはよ
“プリシラ”: 凡愚、申せ 貴様が知っていることを洗いざらい妾に聞かせよ
“スバル”: どうして俺がお前なんかに……
“スバル”: それに、マジで知らねぇんだ 絵が飛び出すなんて紙があんなら、 俺の方が詳しく知りてぇぐらいだよ
“プリシラ”: ──アル
“アル”: へいへい
ナレーター: プリシラの掛け声に頷いたアルが、何かをプリシラに手渡す
ナレーター: プリシラはアルから受け取った直後、それをスバルたちに示した
“プリシラ”: これを知らぬか、凡愚?
“スバル”: そ、それは……
“フェネ”: (スバル氏、あれは紛れもなく)
“スバル”: (ああ ありゃ、『禁書』のページそのものだな)
“プリシラ”: どのようにすれば、これから絵が飛び出すのじゃ?
“スバル”: し、知らねぇな
“プリシラ”: まだ白を切るか
“スバル”: 白を切るって、人聞きわりぃぜ 俺は知らねぇから知らねぇって言ってんだよ
“プリシラ”: ほう…… ならば、破り捨てても構わぬな?
“プリシラ”: 絵が飛び出さぬのであれば、これはただの紙切れ そのようなもの妾には不要じゃ
“アル”: あちゃー ありゃ本気で破り捨てるつもりだぜ、姫さん 売りゃ、高値で買い取ってもらえるってのにもったいねぇ
“プリシラ”: ふん 金になど興味ないわ──
ナレーター: アルの発言を一笑に付し、 勢いよくページを破り捨てようとするプリシラ
ナレーター: そんな彼女を制したのは、 意外にもスバルではなくフェネなのであった
“フェネ”: ──お待ちください、プリシラ女史! すべてお話しさせていただきます!
“フェネ”: ですので、何卒、気をお静めください!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_05

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_05(中編)_100年前の絵本作家(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: ──フェネ、お前勝手に……!
“フェネ”: ですが、スバル氏 あのまま破かれていれば収拾がつかない事態になっていました
“スバル”: そりゃ、そうかもしれねぇけど、 だからって、約束していいことと悪いことがあんだろ
“アル”: いや、兄弟 その狐さんの判断は正しいよ 姫さん、本気で破くつもりだったしな
“スバル”: 破くって正気かよ! どんだけ危険なもんだと思ってるんだ?
“スバル”: 中の絵が外に出るってのは、最悪のケースなんだよ
“スバル”: 絵は絵のまんま、ページの中に収まってくれてるのが一番なんだ それをわざわざ外に出そうなんて…… マジ正気の沙汰じゃねぇ
“スバル”: とにかく、その紙を渡してくれ、プリシラ
“スバル”: それは、“絵が飛び出して、あー楽しい!” なんて愉快なもんじゃねぇんだ
“スバル”: 『禁書』に封じちまうのが一番なんだよ
“プリシラ”: 愚か者 誰にものを言っておるのじゃ
“スバル”: はあ? 愚か者はお前だろ よりによって、絵を外に出そうなんてよ
“スバル”: んで、お前らが持ってるページはその一枚だけか? 他にも持ってんなら、全部渡してくれ
“プリシラ”: 凡愚、貴様は知っていることだけ話せばよい それ以上のことを妾は許しておらぬ
“スバル”: だ・か・ら、すげぇ危険なもんだって言ってるだろ! 今すぐに渡してくれ 『禁書』に封じてやるから
“プリシラ”: 『禁書』とはなんじゃ?
“スバル”: お前が持ってる紙切れが収まるべき場所だ
“スバル”: お前だって、王都やなんやでごたごたがあって 王選が延期になったってことは知ってるだろ?
“スバル”: そのごたごたの原因が、 お前が持ってるその紙切れなんだよ
“スバル”: そいつからは確かに絵は飛び出すんだけど、 出てくるのは『異形』っていう厄介な奴なんだ
“スバル”: とにかく持ってるページを今すぐ全部渡してくれ
“スバル”: もし、買い取る必要があるってんなら、 ちゃんと工面させてもらうからさ
“プリシラ”: たわけ 金になど興味ないわ
“プリシラ”: それに、これが危険とは笑わせる
“プリシラ”: この世界は全て、妾に都合のよいようにできておる これについても例外ではないわ
“スバル”: どんな理屈だよ、それ!
“スバル”: とにかく、それはお前が思ってるようなもんじゃねぇ 今すぐ渡さねぇと、きっと後悔することになるぜ?
“プリシラ”: ……後悔? この妾が、か?
“スバル”: ああ、そうだ 俺にはお前の後悔する姿が見えてんだよ
“プリシラ”: そこまで申すか、道化
“プリシラ”: ならば、妾を後悔させてみよ さすれば、妾が持つ『遺作』はすべて貴様に譲ろう
“スバル”: わかってねぇな! お前が後悔するようなことになりゃ、 時すでに遅しなんだよ!
“スバル”: 『異形』ってのが暴れまわって たくさんの犠牲者が出ちまうかもしれねぇんだ
“スバル”: 罪もない人たちが傷ついて、 下手すりゃ死人だって出るかもしれねぇ
“スバル”: それはそういう危険なもんなんだよ!
“スバル”: だから、な、頼むよ プリシラ、ページを渡してくれ
“プリシラ”: ──くどいわ!
“プリシラ”: 妾が後悔するようなことになれば、そのときはくれてやる 他の条件で貴様に譲ることなどない
“スバル”: だから──
“アル”: 言うだけ無駄だぜ、兄弟 姫さんが譲歩するはずねぇ
“アル”: それに、姫さんがああ言う以上、 姫さんが後悔するようなことにはならないだろうよ
“スバル”: アル、お前まで……
“フェネ”: (スバル氏 話の内容から察するに、 プリシラ女史は複数のページを所持している模様です)
“スバル”: (それは俺も感じたよ 一枚だって厄介だっていうのに……)
“フェネ”: (ものは考えようです、スバル氏)
“フェネ”: (プリシラ女史から複数ページを回収できるのであれば それはスバル氏流に言えばラッキーなのでは?)
“スバル”: (何事もなく回収できればな けど、あいつは厄介事が起こらねぇと渡すつもりはないらしい)
“プリシラ”: ──何をこそこそ話しておる? 妾の御前であることを忘れたか
“フェネ”: 申し訳ありません、プリシラ女史 この期に及んでなお、この者が四の五の言うものですから……
“スバル”: フェネ、お前! お前はどっちの味方なんだよ!
“フェネ”: 無論、プリシラ女史です 比べるまでもありません
“スバル”: ……え? そんなにきっぱり言われると さすがに俺も傷ついちゃうよ!
“アル”: まぁまぁ、兄弟、あの狐さんを見習えって 姫さんに乗って損することはねぇから
“スバル”: ちなみに、その根拠を聞いてもいいか?
“アル”: この世は姫さんの都合がいいようにできてるからな 他に何か必要か?
“スバル”: はぁ…… お前までそんなこと言い出すのかよ
“スバル”: けど、“姫さんに乗る”ってどういうことだ? 現時点では、あいつが後悔するかどうかの結果待ちだろ
“スバル”: あいつに乗るも何も……
“アル”: まぁ、オレぐらいになると、次の展開の察しがついてんだよ ということで──
“プリシラ”: では、凡愚、いくぞ
“アル”: お! やっぱそうなる!
“スバル”: ……い、いくってどこに? すでに夜だし、あんま遠い場所には──
“スバル”: ──アルてめぇーっ! 俺をどこに連れてくつもりだ!
“アル”: だから、バーリエル男爵領だって言ってんだろ
“スバル”: どうして俺がそんな場所にいく必要があるんだ?
“アル”: 姫さんがそう決めたからな 他に理由が必要か?
“スバル”: 必要に決まってんだろ! なんでもかんでもあいつが決めたことに従えるかよ!
“アル”: まぁ、残りの『遺作』…… 兄弟が言う『禁書』のページはそっちに保管してあんだよ
“アル”: これなら兄弟も少しは納得できっだろ
“スバル”: 少しは、な
“スバル”: けど、エミリアたんたちに何も言えてねぇ きっと心配してるはずだ
“アル”: それについちゃ、心配無用だ、兄弟 嬢ちゃんたちには言付けを頼んである
“スバル”: はあ?
“アル”: 嬢ちゃんたちは、 兄弟のとこのピエロさんがよく使う宿にいんだろ?
“アル”: おっさん、察しがいいからよ まぁ、こうなることは予想できたんだよ
“アル”: んで、兄弟を探すついでに、宿に寄って言付けしといたんだわ 兄弟が、ウチの姫さんとしばらく行動するってよ
“アル”: どうよ、おっさんのファインプレー 賞賛してくれて構わないぜ?
“スバル”: こうなるって知ってたんなら、予め言ってもらっていい?
“アル”: オレ的にはそれもファインプレーだな もし言ってたら、兄弟はついてきてねぇだろ?
“スバル”: 当たり前だ! 誘拐確定な状態でのこのこついてく馬鹿がいるかよ!
“アル”: おいおい、“誘拐”ってのは人聞き悪いぜ 兄弟はページってのに用があんだろ?
“スバル”: そりゃそうだけど、全然腑に落ちねぇ まぁ、強敵のプリシラと竜車が別ってのは救いだけどな
“アル”: お! オレと二人っきりの状態を喜んでくれるとは嬉しいね
“スバル”: 喜んでないわ! あいつと二人っきりよりはマシって程度だ!
“スバル”: それに、それも俺たちが逃げ出さないための算段なんだろ? フェネと俺がセットだと、色々リスクあるしな
“アル”: さー、それはどうだろうな
“アル”: まぁ、オレと兄弟、あの狐さんと姫さんって分かれた方が 姫さん的には都合がいいって判断だったんだろうよ
“アル”: 少なくともオレと兄弟は色々語り合えるだろ?
“スバル”: 語り合う、ね おっさんと何を語り合うんだか
“アル”: 『遺作』…… 『禁書』のページについてだ
“アル”: 兄弟は結局、あれについて大したことは言ってねぇ
“スバル”: それはお互い様だろ 『禁書』のページ…… 『遺作』についておっさんらもほとんど語ってくれてねぇよ
“アル”: んで、バーリエル領まではたっぷり時間がある 色々語り合おうぜ、兄弟
“アル”: 兄弟次第じゃ、目から鱗の情報も、教えてやるつもりだぜ、オレは

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_06

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_06_知っていたはずのこと(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: スバルとアルを乗せた竜車と、プリシラとフェネを乗せた竜車は 昼夜走り続け──
ナレーター: プリシラが治めるバーリエル男爵領に到着した
“アル”: ──んじゃ、しばらくこの宿に滞在してくれ、兄弟
ナレーター: そうスバルたちに言い残し、立ち去るアル
ナレーター: こうしてスバルとフェネは久々に二人っきりになるのだった
“スバル”: いててて…… ずっと竜車の中だったから、体中いてぇよ
“スバル”: んで、そっちはどうだったんだ? プリシラの奴から色々聞き出せたか?
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ、どうした? やっぱあいつと二人っきりじゃ、さすがのお前も辛かったか?
“フェネ”: いえ… そういうわけでは……
“フェネ”: スバル氏こそ、どうだったのです? アル氏から貴重な情報は得られましたか?
“スバル”: おお、バッチリだ あいつらがいう『遺作』について色々聞かせてもらったよ
“スバル”: 『禁書』のページと『遺作』はやっぱイコールっぽいな
“スバル”: つーか、俺たちがページを集めてる 『禁書』の別名が『遺作』って感じみてぇだ
“スバル”: とにかく、アルから聞いたことを これから話させてもらうぜ、フェネ
ナレーター: それからスバルは、道中にアルから聞いた内容を フェネに詳しく共有する
ナレーター: プリシラが『禁書』のページを手に入れてから 二週間ほどになるが、
ナレーター: 特に危惧するような異変は起こっていないらしい
ナレーター: その間に、プリシラの元にページがあると聞きつけた とある芸術家が訪れ、その紙切れの価値が明らかになったようだ
ナレーター: スバルたちがページを集めている『禁書』は 百年ほど前に活躍した絵本作家の遺作で
ナレーター: その作家の過去の作品をすべて集めた全集になっているらしい
ナレーター: 中でも晩年に描き下ろしたある作品の絵柄は 常軌を逸したおどろおどろしいもので
ナレーター: 絵本らしからぬその異様な絵柄が 意外にも作者の絵本作家としての評価を高める結果となった
ナレーター: その作家には現在も根強いファンがいて、 原画となれば相当な価値になるのだが
ナレーター: これまでにその作家の原画が世に出たことはなく、 すでに失われていると考えられていたのだが──
“スバル”: 最近になって幻の原画が出回るようになったって話だ
“スバル”: つまり、『禁書』に収められてたのが その作家が描いた絵本の原画ってことだな
“スバル”: それなら、原画が出回らなかったのも納得だ
“スバル”: いつからかは知らねぇけど、長らくロズワールのとこの 禁書庫にあったわけだし
“スバル”: んで、金持ち風情が高値でページをほしがるのも それに見合った価値があるからってわけだ
“スバル”: 俺の故郷でも、有名な漫画家が描いた原画なんかは、 すげぇ高値で取引されるらしい
“スバル”: しかも、その作家が描いた絵は、 “紙から飛び出す”って噂の代物だ
“スバル”: 高騰するのも納得だぜ
“スバル”: まぁ、“紙から飛び出す”って部分についちゃ、 誤解が多いような気はするけど
“スバル”: こっちもエミリアたんが不利になるような情報を あのおっさんに教えなきゃなんなかったけど
“スバル”: 代わりに聞き出せた情報も目から鱗だった…… って、フェネどうした?
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ?
“スバル”: 次々に明らかになる『禁書』の新事実に、 ノーリアクションってどういうことだよ?
“スバル”: もしかして、竜車の中で、今の話、プリシラから聞いてたのか?
“スバル”: いやいや…… あいつが親切に色々教えてくれるとはとても思えねぇ
“スバル”: だとすると……
“スバル”: ──記憶が戻ったのか、お前?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_07

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_07_穏やかなる男爵領(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: フェネ、お前、もしかして記憶が戻ったのか?
ナレーター: 先程スバルが語った『禁書』の真実
ナレーター: だが、フェネはすでにその事実を 知っていたようにスバルには思えたのだ
“フェネ”: 妙なことを言い出しますね、スバル氏
“スバル”: 妙なことってなんだよ? だってお前、 俺が話したことを明らかに知ってる雰囲気だったじゃん
“フェネ”: そのようなことはありません フェネは少々疲れているのです
“スバル”: 疲れてる? なんだよ、さっきは否定したくせに、 やっぱあいつと二人っきりで辛かったんだな
“フェネ”: いえ、フェネの疲れの原因はプリシラ女史ではありません 長旅によるものです
“スバル”: お前も強情だな けど、大人な俺はそういうことにしておいてやるよ
“スバル”: にしても、マジで俺の相手がアルの方でよかったぜ あの姫様と二人っきりじゃ、長旅を乗り切る自信がねぇ
“スバル”: ということで、フェネ、お前は宿でゆっくり休んでくれ 今日の調査は俺が頑張るからさ!
“スバル”: ──と、かっこつけて出てきたものの
“スバル”: どうして、お前がいるんだ? 宿でゆっくりしててくれって言ったよな?
“フェネ”: スバル氏 フェネに“ゆっくり休んでくれ”と言いたいのであれば それに見合った実力を付けてください
“フェネ”: 現状のスバル氏は明らかに力不足 そんなスバル氏を 一人でいかせても、不安でゆっくりなどできません
“フェネ”: つまりあの発言は、 一見フェネへの気遣いから出たように思えますが
“フェネ”: その実、いい格好がしたいだけの独りよがりです、クソ上司
“フェネ”: ガナクスでの異変の際に、しばらくフェネと離れ、フェネの 存在の大きさと己の無力さを痛感したはずだったのですが……
“フェネ”: とても残念です
“スバル”: うっ…… 確かに独りよがりな発言だったかもしれねぇけど、 そこまで言う?
“スバル”: だいたい、そんなこと言うんだったら、 世の中はそんな発言で溢れてる気がすっけど
“フェネ”: 左様です 人々が発する多くの言葉が、 そのような類のものだとフェネは考えています
“スバル”: フェネ…お前……
“フェネ”: スバル氏、無駄話はこれぐらいにして、調査に身を入れましょう
“フェネ”: プリシラ女史がページを複数保有しているのであれば、 何が起きても不思議ではありません
“スバル”: ああ、そうではあるんだけど…… お前って時々、妙に達観したようなこと言うよな
“スバル”: パックにもそういうとこがあっから まぁ、精霊ってのはそういうもんなのかもしれねぇけどさ
“フェネ”: 左様です 長い時を生きれば達観もするでしょう
“スバル”: なるほど…… ああ見えてパックもすげぇ年齢らしいし お前も例外じゃねぇってわけだ
“フェネ”: 残念ながら、記憶にはありませんが、 スバル氏よりも遥かに長い時を生きていることは確かです

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_08

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_08_静寂の理由(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: 『禁書』のページにまつわる異変が起きていないか、 調査を続けるスバルたちだったが
ナレーター: 残念ながらまったく成果を挙げることはできなかった
“スバル”: ──なんだよ! この辺は平和そのものだな!
“フェネ”: 口を謹んでください、クソ上司
“フェネ”: まるで平和であることを悪く言っているように聞こえ、 周囲からの視線が痛いです
“フェネ”: 仲間だと思われたくないので、 フェネから離れてください、スバル氏
“スバル”: おっと、確かに失言だったよ 平和はいいことだ そりゃ間違いない けど……
“スバル”: あのプリシラの領地がこうも平和ってのはどういうことだ?
“スバル”: 『禁書』のページに関係なく、あの暴君が君臨してるんだ もっと荒んだ感じになっててもおかしくないんじゃねぇかな?
“フェネ”: 結論から言えば、プリシラ女史は、 スバル氏が考えるような暴君ではないということでしょう
“スバル”: いやいや、何かにつけて俺の命を奪おうとするあいつが、 暴君じゃないわけねぇだろ
“フェネ”: では、この現状をどう説明するのですか?
“スバル”: それは……
???: 一度、かけてる色眼鏡をはずしてみたらどうだ、兄弟
“アル”: ここにある平和 それは紛れもない現実だぜ
“スバル”: 怪しさ全開のお前に言われてもな
“スバル”: で、どんなからくりがあるんだ? 俺は幻覚かなんかを見せられてるのか?
“アル”: おいおい、ずいぶんと穿っちまってるな 見たまんま、感じたまんまだぜ、兄弟
“アル”: まぁ、『禁書』のページを姫さんから頂戴したい兄弟にとっちゃ、 色々問題が起こってくれた方がありがてぇのかもしれねぇけど
“スバル”: それについちゃ、さっき反省したばっかりだよ 平和が一番だ それは間違いねぇ
“スバル”: たとえそれで『禁書』のページがゲットできなくなったとしてもな ……ってのは、ごめん、かっこうつけすぎた
“スバル”: マジ、どうしよう!? このままじゃページが回収できねぇよ!
“アル”: まぁ、兄弟の事情やなんだは聞かせてもらったが、 色々誤解や勘違いも混じってるんじゃねぇのか?
“アル”: そもそも、その『禁書』のページってのは、 本当に必ず『異形』ってのを出現させるのか?
“アル”: 姫さんがあの紙切れを手に入れてから約二週間、 マジで異変だなんだってのは起きてねぇよ
“アル”: それに、ウチの姫さんがそんなことねぇって言ってるしな
“アル”: てか、その狐さん、記憶を失ってるんだよな?
“スバル”: フェネ、アルの奴はああ言ってるぜ?
“フェネ”: ……もう一つ可能性があります
“スバル”: はあ? もう一つの可能性?
“フェネ”: 左様です プリシラ女史にはページの成長を抑える力が 備わっている そのような可能性です
“アル”: だとしたら、ムキになって、 姫さんからページを回収する必要はないんじゃねぇか?
“アル”: 姫さんの手元にある限り、ページは安全ってことになる
“フェネ”: あくまで可能性のお話しです そうであると断言はできません
“スバル”: 確かにしばらく安全だったからって、 この先ずっと安全とは限らねぇ
“スバル”: やっぱページは『禁書』に封じとくのが一番だ
“スバル”: ということで、アル もう一度プリシラと話がしたい
“スバル”: あいつが首を縦に振ってくれる可能性は低いが…… 俺にリベンジマッチを挑ませてくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_09

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_09_機か、否か(仮) 更新日:2021/06/30

“プリシラ”: ──くどいぞ、凡愚 今すぐ立ち去れ
“スバル”: いやいや、待ってくれ!
“スバル”: だいたい、無理やりこんなとこまで連れてきといて 立ち去れってのはないんじゃねぇのか?
“プリシラ”: ほう…… 妾が貴様を無理やりにか?
“スバル”: ああ、そうだよ ほとんど無理やりだったじゃねぇか
“プリシラ”: ならばなおさらじゃ 貴様になど用はない 今すぐ失せろ 貴様もそれが本望であろう
“スバル”: ああ、俺だってそうしてぇよ けど、そういうわけにはいかねぇ 『禁書』のページを放っておくわけにはいかないんでね
“スバル”: ってか、お前はいったいなんなんだよ?
“スバル”: 俺がいきたくねぇって言えば連れてくるし 帰る気がさらさらないタイミングで立ち去れとか言いやがる
“スバル”: 少しは俺の気持ちも考えてくれねぇかな?
“プリシラ”: 何故、妾が貴様の気持ちなど考慮せねばならぬ? 妾はしたいようにし、貴様はそれに従う ただそれだけであろう
“スバル”: そんなわけねぇだろ! 人間関係ってのは、譲り合う精神が大事なんだよ!
“プリシラ”: はは、何を言い出すかと思えば“譲り合う精神”じゃと?
“プリシラ”: ──ならば貴様に問おう 譲り合うことで貴様は何を得、妾にどのような利があるのじゃ?
“スバル”: 俺が得るもんは『禁書』のページだ んで、お前が得るもんは領地の安全だよ
“スバル”: 言っとくけどな、こっちは善意で言ってんだぞ あの紙切れは危険だ だから俺たちが封じてやる
“スバル”: しかも、それなりの金額を支払って買い取ってやってもいい どうだ? 悪い話じゃねぇだろ
“プリシラ”: 話にならんな、凡愚 貴様の手など借りずとも、妾の領地は安穏じゃ
“スバル”: だから、それはたまたまなんだって すぐに異変が起きて大変なことになっちまう
“プリシラ”: “すぐに”とはいつじゃ?
“スバル”: そ、それは……
“プリシラ”: 凡愚、妾の質問に答えよ “すぐに”とはいつのことじゃ
“アル”: なあ、兄弟 “リベンジマッチだ”なんて意気込むから
“アル”: ちっとは勝算あってのことだと思ったんだが、 どうやらそういうわけではないみてぇだな
“アル”: 現時点じゃ、特に異変が起きそうな気配はねぇよ
“フェネ”: 左様です プリシラ女史が“去れ”と言っているのです ここは大人しく従うべきかと
“スバル”: フェネ、お前まで!? ページを回収せずに、立ち去るなんてナシだろ!
“フェネ”: スバル氏 こちらにきて、『禁書』の影響を感じましたか?
“スバル”: それは…その… まったく感じてねぇけど……
“スバル”: けど、“今は”ってだけだ このまま放っておいたら、 いずれページが膨張して……
“スバル”: って、それはお前が一番わかってることだよな? ページは『禁書』に封じねぇと『異形』が出てきちまう
“フェネ”: 今まではそう思っていました ですが、現実とは真摯に向き合うべきです
“フェネ”: 現時点で異変は起きていませんし、起きる気配もありません
“フェネ”: 仮に異変が起こるまでに相当な時間がかかるのだとしたら ここに留まることより他になすべきことがあるはずです
“フェネ”: 今もどこかで、 ページによる被害が出ていないとも限りません
“スバル”: えっと、そりゃそうなんだけど…… 確かにおっしゃる通りだ けど……
“スバル”: なんか腑に落ちねぇぞ、俺は! フェネ、お前から言われると特にな!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_10

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_10_危険なる余興(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: …………
“プリシラ”: いつまで妾をこのような場所に留まらせるつもりじゃ 貴様が去らぬのであれば、妾が去らせてもらう
“フェネ”: ご無礼、お許しください 外は日差しもあります どうぞお屋敷にお戻りください
“スバル”: フェネ! お前!
“フェネ”: スバル氏、長居は無用とフェネは考えます ここは一旦切り上げるべきかと
“アル”: 悪いな、姫さん 午後のティータイムを邪魔しちまって
“アル”: これは完全に俺の落ち度だ 覚悟はできてっから、 きつめのご褒美……いや、仕置きを頼む
“アル”: マジ、きついヤツを──
“スバル”: 青少年の前で気色わりぃおねだりしてんじゃねぇよ、おっさん!
“スバル”: それに、やっぱ変だろ!
“スバル”: アルもフェネもどうかしてるぜ 一番どうかしてんのはプリシラ、お前だけどな
“スバル”: それとも何か? 変なのは俺か? お前らが正常で、俺が変なのかよ?
“フェネ”: 左様です、スバル氏
“プリシラ”: 無論じゃ
“アル”: まぁ、兄弟は言うまでもなく変だな
“エミリア”: ええ 私もスバルはすごーく変だと思う
“レム”: 確かにスバルくんは変わっていますが、それはいい意味でです
“スバル”: おいおい、全会一致じゃねぇか
“スバル”: って、エミリアたん!? それにレムも!
“アル”: お、なんかメンバーが増えてんな 嬢ちゃんたちはいま着いた感じか?
“エミリア”: ええ スバルがプリシラのところにお邪魔してるって聞いて、 心配になっちゃって……
“エミリア”: スバル、迷惑かけてない?
“スバル”: 俺はかけてないかな!? むしろかけられてる側だと自負してるよ!
“フェネ”: エミリア女史 残念ながらスバル氏は……
“フェネ”: プリシラ女史の寛大なお心遣いで極刑は免れていますが、 今もプリシラ女史にご迷惑をおかけしている真っ最中です
“スバル”: いやいやいや、なに言ってんだ、フェネ!
“エミリア”: ごめんなさい、プリシラ スバルが迷惑をかけてしまって
“スバル”: エミリアたんも謝らなくていいから! 俺はこの地域の安全のために、頑張ってるところなんだよ!
“プリシラ”: 貴様が安全のために? 道化だけあって笑わせおるわ
“スバル”: お前を笑わせるつもりはねぇよ 事実だからそう言ってるだけだ
“スバル”: そもそも『禁書』のページがあるってわかってて、 放置する意味がわからねぇぜ
“エミリア”: ページが……あるのね?
“スバル”: ああ、そうだ しかも何枚もあいつは持ってるらしい
“エミリア”: だったらすぐに『禁書』に──
“プリシラ”: そのようなことは不要じゃ
“スバル”: 万事あんな感じで、ずっと平行線なんだよ
“プリシラ”: 凡愚、まるで妾に非があるような物言いだな
“スバル”: 申し訳ねぇけど、そうとしか思えねぇな
“スバル”: そもそもお前が後悔する結果になったら、 ページを譲るってどういうことだ?
“スバル”: 何度も言ってるけど、そうなってからじゃ手遅れなんだよ そうなる前に対処しとかねぇと
“プリシラ”: 貴様こそ、何度も言わせるでない そのようなことは起こらぬ 妾が言うことに誤りなどないわ
“スバル”: んで、それが間違いだったらどうすんだ?
“プリシラ”: そうなれば、貴様の好きにすればよかろう ページなど貴様にくれてやるわ
“スバル”: だ・か・ら、それじゃ手遅れだって…… って、結局堂々巡りじゃねぇか!
“アル”: 兄弟、それがそうでもないんだわ
“スバル”: はあ? 突然どうしたんだ、おっさん
“アル”: つまり、状況は刻々と変化してるってことだよ
“アル”: 悪いが、ここにあったページとやらは、 粗方オレがそこいらにばら撒いちまったよ
“アル”: 姫さん、どうしてもあの紙切れから、 絵が飛び出すのを見たいんだと
“アル”: なのに、兄弟がその方法を教えてくれねぇから、 仕方なくって感じだ
“アル”: 色んな条件下にページを置いてみりゃ、 どれかから飛び出すかもしれねぇからな
“アル”: てなわけで、日向だとか、日陰だとか、 森の中とか、街の中とか、色々置いて回らせてもらった
“アル”: んで、オレが一仕事終えたタイミングで、 兄弟たちに出会ったってわけだ
“スバル”: ……色んな場所に置いて回った、だと?
“アル”: ああ 絵が飛び出す条件がわからねぇからな、 色んな場所に置いてみるしかねぇだろ
“アル”: 運良く、どれかから飛び出しゃいいんだが
“スバル”: “運良く”ってなんだよ! 絵が飛び出すのは最悪のケースなんだよ!
“スバル”: ──おい、アル! どこにページを置きやがった!
“アル”: 色んな場所だって言っただろ、兄弟
“レム”: スバルくん……!
“スバル”: ああ、こうしちゃいられねぇ とにかく回収して回んねぇと
“アル”: 兄弟、そう熱くなるなよ すぐにどうこうなるわけじゃねぇって
“スバル”: いやいや、お前こそもうちょい慌てろよ、アル
“スバル”: あれについては、こっちに向かう竜車の中で、 色々話して聞かせたよな?
“スバル”: なのにどうして、お前にはそんな真似ができたんだ?
“アル”: 姫さんからの命令だからな
“スバル”: プリシラから命じられりゃ、お前はなんだってするのか? そんなの間違ってるだろ!
“プリシラ”: ──間違ってなどおらぬ 凡愚、貴様も妾に従っておればよいのだ
“スバル”: クソっ! 話にならねぇな……
“スバル”: とにかく、エミリアたん、レム! ページを回収して回ろう 長旅終えたばっかでわりぃんだけど、二人にも手伝って欲しい
“エミリア”: ええ ページを放っておくなんてできないもの
“レム”: 喜んでレムもスバルくんをお手伝いします!
“スバル”: てな感じで、俺たちのページ探しが始まったわけだが……
“スバル”: おい、フェネ どうしてお前がいんだよ?
“フェネ”: どうして、とは?
“スバル”: 自分がいて当然みたいな顔してんじゃねぇ! お前、明らかにプリシラ側だったよな?
“フェネ”: スバル氏は、実にくだらぬことを気にするのですね 昨日の敵は今日の友というではありませんか
“スバル”: やっぱ敵だった自覚はあんのな!
“フェネ”: いえ、“敵”という表現には語弊がありました あの場ではあのように振舞うしかなかったとフェネは考えています
“フェネ”: それに、フェネは何か間違ったことを言いましたか?
“フェネ”: 自分の意にそぐわぬ言動だからといって、 内容を検証せずに断罪の対象にするとは、さすがはクソ上司です
“スバル”: “断罪”って、大げさな
“スバル”: ただ、俺も人間なんでね もろもろノーカンにして、 笑顔でお前と接するのには抵抗があるっつーか
“スバル”: まずはお前の方から、一言あってもいいんじゃねぇかな?
“スバル”: 手のひらを返したみたいに、“プリシラ女史の言う通りです” みたいなことを言ってたわけだし
“フェネ”: それについては、間違ったことは言っていない、 そう考えています
“フェネ”: 恐らく、プリシラ女史やアル氏が言ったように しばらくは何も起きないでしょう
“フェネ”: その証拠に、アル氏が置いて回ったという ページの反応をまったく感知できません
“スバル”: えぇ!? そうなの!? ページ探し、まさかのノーヒント?
“フェネ”: 左様です 自力で探し出すしかない状況です
“フェネ”: といいますか、フェネを邪険にしておいて、 まさかフェネの感知能力をあてにしていたのですか?
“スバル”: あっ……
“スバル”: えっと、そういや、エミリアたんとレムの姿が見当たらねぇな どこいっちまったんだろ、あの二人……
“フェネ”: スバル氏、話を誤魔化そうとしても無駄です
“スバル”: ごめん、悪かったよ! お前の能力はあてにしてたけども、 チクリと言ってやんなきゃ気が済まなかったんだ
“スバル”: 器が小さくてすまねぇ この通り謝るから、ページ探しに協力してくれ、フェネ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_11

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_11_屏風の虎(仮) 更新日:2021/06/30

“プリシラ”: ──して、凡愚 ページ探しとやらは順調か?
“スバル”: くっ……
“アル”: おい、兄弟、黙ってちゃわかんねぇだろ ページ探しの成果を姫さんに報告してやってくれ
“スバル”: どうして報告しなくちゃなんねぇんだよ?
“アル”: おいおい、元々は姫さんのもんなんだぜ? 教えてくれたっていいじゃねぇか
“アル”: 兄弟たちが拾ったもんについちゃ、返せとは言わねぇからよ
“アル”: とか言いつつ、その様子からして、 芳しくなさそうだってのはもろわかりだけどな
“スバル”: だったら聞かなくていいだろ! 趣味が悪いぜ、まったく
“プリシラ”: して、どうじゃ 貴様らの成果を妾に報告せい
“スバル”: あれ、今の話聞いてなかった!? それとも、どうしても俺の口から言わせたいってか?
“スバル”: とにかく、お察しの通り、芳しくねぇよ
“スバル”: この三日間、必死に探し回って、 『禁書』に封じられたのはたった一ページだ
“アル”: マジでか? 一ページって、ほとんど成果ゼロじゃねぇか
“アル”: しかも、兄弟たちが発見できなかったページも、 今んとこ異変を起こす気配はねぇし
“アル”: マジ、時間の無駄なんじゃねぇのか?
“スバル”: アル! お前がページを置いた場所を教えてくれりゃ サクっと解決すんだよ!
“スバル”: 悪いようにはしねぇから、 ページを置いた場所を俺たちに教えてくれ
“アル”: ハハハッ 姫さんじゃなくても、笑っちまうぜ、兄弟
“アル”: “悪いようにはしねぇ”ってのは傑作だな
“アル”: おっさんからアドバイスしてやっけど、 兄弟は自分の立場ってもんをわかった方がいい
“アル”: 売りゃ、結構な額になる代物を 拾った分についちゃくれてやるって言ってんだ
“アル”: それだけでも、感謝されて然るべきだと思うんだがな
“スバル”: くっ…… そりゃそうかもしれねぇけど……
“エミリア”: でも、ページはすごーく危険なものなの
“アル”: お、今度は嬢ちゃんが力説するつもりか?
“エミリア”: 本当にページは危険なの
“エミリア”: ページのせいで王都が大変なことになっちゃって、 イバダでもガナクスでもそうだったんだから
“エミリア”: だから、お願い、プリシラ アルにページを置いた場所を教えるように言って
“プリシラ”: ──妾を失望させるでない
“エミリア”: ……失望?
“プリシラ”: 妾の希望はページとやらから絵が出るのを見ることじゃ それが叶えばページなど興味はないわ
“プリシラ”: まずは妾の希望に沿い、褒美を求めるのはそれからであろう それとも、貴様も妾に乞うだけの存在か?
“スバル”: だから、『異形』が出現してからじゃ遅いって何度も──
“レム”: スバルくん、ここはエミリア様にお任せしましょう
“スバル”: ああ、そうだな…… 俺じゃ埒があかなかったし、エミリアたんに任せてみよう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_12

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_12_強襲する亜空間(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: プリシラが治めるバーリエル男爵領で、 ページ探しをしていたスバルたちは
ナレーター: 進捗の報告をするように言われ、プリシラの屋敷を訪れていた──
“プリシラ”: ページがほしくば、妾の望みを叶えよ それが筋であろう
“エミリア”: 望み…… ページから『異形』が出てくるところを見せればいいのね?
“プリシラ”: そうじゃ ──アル
“アル”: へいへい
ナレーター: プリシラの声に頷いたアルが、何かをエミリアに手渡す
“エミリア”: ……これ、『禁書』のページ?
“プリシラ”: そうじゃ 妾の前で、それから絵を出して見せよ
“エミリア”: ページをもらうんだし、 やっぱり、プリシラのお願いは叶えてあげないと
“スバル”: ストップだ、エミリアたん! 完全に『異形』を出現させる流れになっちゃってるよ!
“エミリア”: でも、そうしないと、ページがもらえないわ
“スバル”: それはそうだけども、 『異形』が出てきちゃったら、色々被害が……
“エミリア”: 『異形』が出てくるところが見られれば、 プリシラは満足だと思うの
“エミリア”: その後は、出てきた『異形』をやっつけて…… ほら、ここにはレムもフェネもいるでしょ?
“レム”: お任せください、エミリア様 レムが『異形』を倒してご覧に入れます
“スバル”: くっ…… あいつの思い通りになって癪だが、 もはやそうするしかねぇのか……
“スバル”: とはいうものの……
“エミリア”: ねえ、スバル ところでどうやってここから出すの?
“スバル”: やっぱそうなるよね!?
“スバル”: てか、そっから『異形』が出てくるってよりも、 俺にとっちゃ吸い込まれるってイメージの方が強いんだよな
ナレーター: スバルは無意識に、これまでのことを思い出していた
ナレーター: 確かに描かれた絵が具現化して、 現実の世界で暴れまわったりはするのだが
ナレーター: スバルに色濃く残っているのは、 ページに吸い込まれたという記憶だ
ナレーター: ページ内の亜空間には、強力な『異形』が待ち構えていて、 そいつを倒さない限り、外に出ることはできない
“プリシラ”: ──凡愚 吸い込まれるとはどういうことじゃ
“スバル”: だから、マナを吸ったページが膨張して……
“アル”: 兄弟、ページが膨張ってのは、あんな感じか?
“スバル”: ああ、そうそう あんな感じで──
“スバル”: なんて言ってる場合じゃねぇ!? ページが膨張し始めちゃってるよ!
“フェネ”: ──皆様きます! 至急準備を!
“プリシラ”: ほう…… 出てくるのではなく、妾が吸い込まれるだと? ふふふ これは愉快じゃ
“アル”: なんだなんだ マジでわくわくすんな
“スバル”: ──バカ! 子どもみたいに目輝かせてねぇで、 お前らも衝撃に備えろ!
“エミリア”: ──スバルっ! 気を付けて! きゃーっ!
“スバル”: ──エミリアーーっ!
“レム”: スバルくん! 離れ離れにならぬよう、レムの手を握ってください!
“スバル”: わかった、レム! よし! エミリアたんを追うぞ!
“レム”: はい! では──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_13

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_13_すべては余興なり(仮) 更新日:2021/06/30

“レム”: スバルくん、大丈夫ですか?
“スバル”: ああ、俺は大丈夫だ それに…… どうやら今回はみんな同じ場所に飛ばされたみたいだな
ナレーター: ガナクスでページに吸い込まれた際、 吸い込まれた皆が別々の場所に飛ばされるという状態が発生した
ナレーター: だが、今回は幸い、皆が同じ場所に転移させられたようだ
“スバル”: エミリアたんやフェネはもちろん、プリシラやアルもいやがる そして、あいつらも含めみんな無事みてぇだ
“エミリア”: スバル、レム、無事みたいでよかった
“スバル”: エミリアたんも無事で何よりだよ
“アル”: お? お?
“スバル”: なんだよ、おっさん、俺になんか用か?
“アル”: 連れねぇな、兄弟 おっさんの無事も喜んでくれていいんだぜ?
“スバル”: 嬉しくもねぇのに喜べるかよ!
“スバル”: お前らはお前らで喜び合ってりゃいいだろ わりぃけど、こっちの輪に入んないでくれる?
“アル”: おいおい、そんなこと言っちゃっていいのか? オレたちゃ運命共同体だろ
“アル”: 力を合わせて、この難局を 乗り切らなきゃならないんじゃねぇのか?
“フェネ”: 左様です、スバル氏 こうなってしまった以上、『異形』との対戦は避けられません
“フェネ”: しかもかなり強力な力を感じます ここに巣くう『異形』は一筋縄ではいかないかと
“フェネ”: アル氏の協力は必ずや必要になるでしょう
“スバル”: うっ…… 背に腹は代えられないってわけだ
“スバル”: そういうことだったら、仕方ねぇ おっさん、無事でよかったな
“スバル”: 最後の最後、『異形』の攻撃から俺たちを庇って くたばってくれたら、なお嬉しいぜ
“アル”: ったく、オレがいなくなったら寂しいくせしやがって、 心にもないこと言ってんじゃねぇよ
“スバル”: 心にもないのは、 どっちかってと“無事でよかったな”の方だよ!
“スバル”: ほとんど無理やり言わされたしな!
“スバル”: とにかく、最悪な事態になった 早いとこボス的な『異形』を退治しねぇと……
“プリシラ”: “最悪な事態”とは笑わせおる
“スバル”: やっぱお前、笑いのツボおかしいだろ! 笑わせる要素なんてどこにもなかったよね?
“プリシラ”: だが、これはどういうことじゃ? 妾は絵を出せと言ったはずじゃ
“スバル”: ワンランク上のおもてなしってヤツだよ
“スバル”: どう考えたって、絵が飛び出すより、 ページに吸い込まれる方がビビるじゃねぇか
“スバル”: これで、アルが置いて回ったページの場所は、 教えてもらえるってことでいいよな?
“プリシラ”: たわけ 話が違うではないか
“スバル”: いやいや、その割には、お前、すげぇ楽しそうだぞ?
“プリシラ”: ふむ 確かにこの状況、愉快極まりないな
“プリシラ”: ふっ よかろう ならば、条件を変えてやろう
“スバル”: 条件を変える?
“プリシラ”: 貴様らがいう『異形』とやらを倒せば、 ここから出られるのであろう?
“スバル”: ああそうだ 逆に、そいつを倒さねぇ限り出られねぇってことになるがな
“プリシラ”: ならば、『異形』とやらを貴様らが先に倒せ それが条件じゃ
“アル”: あちゃー 兄弟と“共闘”かと思ったら、“競争”になっちまったよ
“スバル”: それ、全然うまくねぇから! にしても、競争って……
“アル”: まぁ、『異形』ってのを倒せば、ここから出られるんだ どっちが先に倒してもいいじゃねぇか
“スバル”: そういうわけにもいかねぇだろ 俺らの方が先に倒さねぇと ページのありかを教えてもらえねぇんだし
“アル”: だったら、せいぜい頑張れよ
“プリシラ”: ──ゆくぞ、アル
“アル”: へいへい んじゃな、兄弟

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_14

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_14_共闘か、競争か(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: ページへと吸い込まれたスバルたちだったが、 早々にプリシラとアルはスバルたちの元を去ってしまう
“スバル”: ──ということで、おっさんの無事を喜んだことが、 完全に無駄になっちまったわけだが……
“フェネ”: なんです? フェネに何か言いたげですね、スバル氏
“スバル”: お前が余計なこと言わなきゃ、 あんな奴の無事を喜んでやる必要はなかっただろ
“スバル”: むしろ……
“フェネ”: “むしろ”なんです? まさか、人の不幸を望んでいるわけではありませんよね、クソ上司
“スバル”: うっ…… そうやって指摘されると、なんだか胸がいてぇ……
“エミリア”: スバル、私はプリシラたちと協力するべきだと思う 早く二人を追いかけましょう
“スバル”: けど……
“フェネ”: スバル氏、どうしたのですか? 急いで追えばまだ間に合います 早くお二人を追って、協力をお願いしましょう
“スバル”: いやいや、あの二人と共闘したら、 ページのありかが教えてもらえなくなるだろ
“スバル”: 仲良く『異形』を倒して、 “それじゃページのありかを教えましょう”ってなるか?
“スバル”: いや、あのプリシラがそんな風になるわけねぇ
“スバル”: “『異形』を倒したのは妾たちじゃ”とか言って、 結局ページのありかは教えてくれねぇんだよ
“フェネ”: スバル氏、今回の『異形』は強敵です 恐らく、これまでに経験がない程の強さかと
“フェネ”: プリシラ女史との共闘が不可欠だとフェネは推測します
“スバル”: んなことは、あいつに言ってくれる? 共闘のはずが競争になっちまったのって、あいつのせいだよね?
“フェネ”: 誰のせいとか、そういうくだらないことを 言っている場合ではありません
“スバル”: く、くだらねぇって……
“エミリア”: 私は、もう一度ちゃんとプリシラと話して、 協力してくれるようにお願いするべきだと思う
“スバル”: エミリアたんまで……
“スバル”: だいたい、とっととページを『禁書』に封じてりゃ こんなことにはならなかったんだ
“スバル”: それをあいつが無茶言って、 結局ページに吸い込まれちまったんじゃねぇか
“スバル”: こっちが向こうに折れる要素が見当たらねぇだろ なのにどうして俺たちの方が……
“フェネ”: だとしたら、元を正せばすべてスバル氏の責任なのでは? この災いを招いたのは、クソ上司のスバル氏です
“スバル”: そ、それを言われるとなんも言えねぇ! 言えねぇけど……
“レム”: スバルくん、あのお二人がページに吸い込まれるのは、 今回が初めてです
“レム”: 経験豊富なレムたちと一緒に戦った方が、 あのお二人にも利点が大きいはず
“レム”: ページのありかを教えてもらえないと、 探すのは大変になってしまいますが……
“レム”: それでも、一緒に戦った方がいいとレムも思います
“スバル”: レム……
“スバル”: ああ、わかった 俺が間違ってたよ あの二人を追おう そもそもここから出られねぇと話にならないしな
“レム”: ありがとうございます、スバルくん
“スバル”: いやいや、礼を言うのは俺の方だ サンキューな、レム おかげで目が覚めたよ
“レム”: すぐに非を認められるスバルくんを レムはとても素敵だと思います
“スバル”: レム…… そう言ってもらえると、俺……
“フェネ”: 言わせていただきますが、スバル氏 非を犯さないのが一番です その点、お忘れなきよう
“スバル”: うぐっ! そ、その指摘、今の場面で必要か?
“フェネ”: いえ、スバル氏は色々と棚に上げてしまう傾向があるので、 念のために指摘させていただきました
“スバル”: ああ、そうだよ! 色々と棚に上げてスルーした結果が、今の俺だ!
“スバル”: このままじゃダメだって思うし、 そんな自分を変える努力もしていくつもりだ
“スバル”: ということで、とにかくプリシラたちを追おう
“スバル”: すげぇ癪だけど、一緒に戦ってくれるよう、 プリシラの奴に頭を下げてみるよ、俺

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_15

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_15_プリシラの秘密(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: 急ぎ、プリシラたちの後を追ったスバルたちだったが、 なかなか彼らの背中を捉えることができなかった
ナレーター: そんな中、 スバルはガナクスでのコリーナとの行軍を思い出している
ナレーター: あのときは、コリーナもスバルも戦闘員としての能力が乏しく、 知恵と勇気で乗り切るしかなかったのだが
ナレーター: 今回、フェネはもちろん、エミリアやレムも一緒だ
ナレーター: いわゆる雑魚キャラ的な『異形』に襲われたとしても、 意に介する必要はない
“スバル”: ふふ……
“フェネ”: スバル氏、どうしたのです? 突然笑い出すなど、不謹慎です
“スバル”: いや、あんときに比べりゃ、すげぇ戦力だなって思ってさ
“スバル”: ガナクスでのときは、ほとんど戦えねぇ 俺と、コリーナの二人だったしな
“フェネ”: やっぱりプリシラ女史たちの助力は不要と、 先程の話を蒸し返すつもりではありませんよね?
“スバル”: ああ、それはねぇよ 戦力は多い方がいい けど……
“スバル”: そういや、そもそもあいつらって戦力になるのか?
“スバル”: アルの奴は何気に手練れの雰囲気はあっけど、それだって、 ラインハルトやユリウスに比べたら疑問符が付く感じだよな?
“スバル”: アナスタシアさんとこは、ユリウス以外にも、 リカードとかミミが所属する『鉄の牙』があるし
“スバル”: クルシュさんとこは、クルシュさん自体がすげぇ強いうえ、 剣の達人のヴィルヘルムさんもいる
“スバル”: エミリアたんはエミリアたんで、 ラムやレムに、ロズワールにパックだろ?
“スバル”: まぁ、エミリアたんについては“俺がいる”って、 胸を張れねぇところがかっこ悪くはあるが……
“スバル”: 戦力って意味じゃ、他の陣営にも引けを取らねぇ
“スバル”: けど、プリシラのところはどうだ?
“スバル”: うーん、どう考えても、あそこの戦力は、 他と比べて一枚も二枚も落ちる印象なんだよな……
“スバル”: ってことで、エミリアたん プリシラの陣営について、 なんか知ってたりする?
“エミリア”: ごめんなさい プリシラのことはよくわからなくて……
“レム”: レムもスバルくんのお役に立ちたいですが、 プリシラ様についてはほとんど何も知りません
“レム”: 今わかっている王選の候補者の中で、 プリシラ様の情報が一番少ないのではないでしょうか
“スバル”: やっぱそうなんだな……
“スバル”: 自信満々で『異形』を先に倒してやるって感じだったし、 あいつらは弱くはないんだろうけど
“スバル”: このまま俺たちが追いつく前に、 大ボスの『異形』と戦ってたりしたら、ちょっと心配だな
“エミリア”: 私は早く二人を追うように言いました
“スバル”: ごめん! 遅れを取ったのは、俺が煮え切らなかったせいだね!
“エミリア”: でも、ホントに心配 二人に何かあったら……
“フェネ”: いえ、その心配は必要ないかと
“フェネ”: 無論、初動の遅れを招いたスバル氏は大いに反省するべきですが、 エミリア女史が気に病む必要はありません
“スバル”: ちょくちょく俺に釘刺すなよ! ちゃんと反省してっからさ!
“フェネ”: 反省をしている? スバル氏がですか? 残念ながら、とてもそのような方の目には見えません
“スバル”: こんな目つきでもちゃんと反省してるんだよ!
“スバル”: 俺の故郷には“目は口ほどにものを言う”って言葉があるんだけど 俺、あの言葉嫌い!
“スバル”: その言葉のせいで、どんだけ俺が損してきたことか……
“スバル”: だいたい俺の目って“オラオラお前らぶっ殺すぞ” みたいなことしか言ってねぇし!
“レム”: 確かにスバルくんの目は怖いですが、 その奥にしっかりと優しさを秘めています
“スバル”: ありがとう、レム けど、“奥に”とか“秘めてる”ってのを 汲んでくれる人は少ねぇかな
“エミリア”: “目は口ほどにものを言う”…… スバル、いい言葉ね
“スバル”: おっと! エミリアたんにはその言葉響いちゃった?
“スバル”: けど、その言葉にも例外があるってこと、 エミリアたんは忘れないでね!
“スバル”: んで、盛大に話が脱線しているわけだけど、 話を戻していいか、フェネ?
“フェネ”: 無論です とっとと話を戻してください 時間の無駄です、クソ上司
“スバル”: 俺のせいじゃないよね!? お前が俺の目つきを……って、まぁ、いいよ
“スバル”: とにかく、プリシラたちについてだ
“スバル”: 自信満々にあいつらが『異形』討伐に向かったのが、 俺にはすげぇ気になってる
“スバル”: んで、それについて考えられる可能性は二つだ
“スバル”: 一つは、あいつらにとっちゃ、今回が初めての経験だ そもそも待ち構える『異形』の強さを見誤ってる可能性がある
“スバル”: もう一つは、俺たちの心配は余計な危惧で、 あいつらがめちゃんこつえぇって可能性だ
“スバル”: 後者だった場合は、強力な『異形』も倒せるだろうし、 特に心配はしなくてもいいんだが……
“スバル”: 問題は前者だった場合だな
“フェネ”: いえ、もう一つ可能性があります
“スバル”: はあ? どういうことだよ、フェネ
“フェネ”: この世界がプリシラ女史にとって都合よくできている可能性、 とでも言えばいいのでしょうか?
“スバル”: 確かにあいつはそんなこと言ってるけど、 それは現実的じゃねぇだろ
“フェネ”: ですが、であれば、 アル氏のプリシラ女史への絶対的な信頼も頷けます
“スバル”: アルの信頼、ね 確かにあのおっさんは、プリシラの奴にご執心だよな
“スバル”: けど、仮にそんなことがあるんだとしたら、 いったいどうなるんだよ?
“フェネ”: わかりません
“フェネ”: そもそもそんな大それた可能性があるのかさえ、 スバル氏ではないですが、疑わしくはあります
“スバル”: だったらやっぱ、 その可能性は排除しても構わないんじゃねぇかな?
“スバル”: かつては俺も患っていたんだが
“スバル”: あいつはいわゆる中二病ってヤツで そういうことを言いたいお年頃なんだよ
“フェネ”: スバル氏、よく考えてください
“フェネ”: 我々は当初、王都に拠点を移して、 腰を据えて『禁書』のページを調査するはずでした
“フェネ”: なんとかクルシュ女史への報告はこなせましたが、 結果はどうです?
“フェネ”: 王都に滞在するはずが、初日にアル氏と邂逅し、 今や王都から遥か遠いバーリエル男爵領にいます
“フェネ”: 百万人以上が暮らす王都で、アル氏と再会するなど、 天文学的に低い確率です
“フェネ”: そもそも我々が王都にいること自体が稀なのですから
“フェネ”: そして、ページから絵が出るところを見たいと言っていた プリシラ女史は、我々と一緒にページの中に……
“フェネ”: それもプリシラ女史にとっては、 都合がよい状況ではないでしょうか
“フェネ”: プリシラ女史は望んだように非日常を体験できますが、 スバル氏と交わした約束の条件は満たされていません
“スバル”: 確かに、ページから『異形』が出てくるパターンだったら
“スバル”: 俺たちは約束を守ったことになって、 すんなりページが譲ってもらえたよな……
“スバル”: しかも、ページに吸い込まれるってのは、 最悪ではあるが、非日常って意味じゃ最上級だ
“スバル”: 俺たちは完全にあいつに振り回されてっけど、 逆に言うとあいつの思うがままになってるって感じもするな
“スバル”: けど、この世界があいつに都合よくなんて、 あり得る話じゃねぇだろ
“スバル”: ただ単に、我が強いあいつに、 お人好しな俺たちが振り回されてるだけだよ
“フェネ”: でしたら、いいのですが……
“スバル”: なるほど、フェネは腑に落ちねぇってわけだ
“スバル”: それに…… 確かに俺も嫌な感じは拭えねぇな
“スバル”: とにかく、先を急ごう まずはあいつらと合流しねぇとだ
“スバル”: あいつらが『異形』の強さを見誤ってるんだとしたら、 俺たちの助太刀が必要だし
“スバル”: あいつらがすげぇ強い場合は、 その戦力をこの目に焼き付けておく必要がある
“スバル”: そして──
“スバル”: プリシラに都合がいい世界なんだとしたら、 あいつがどんな結末を望んでいるのか、ぜひとも見届けねぇとな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_16

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_16_高みの見物(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: プリシラとアルを追っていたスバルたちが、 ようやく彼らに追いつくと
ナレーター: アルが『異形』相手に剣を振るっているところだった
“異形”: ウグググ
“アル”: ──くっ あれだけ切ったのに、まだピンピンしてやがる……
“プリシラ”: アル、ぐずぐずするでない そのようなものを切るのに、いつまで時間をかけるつもりじゃ
“アル”: ああ、わかってる、こんな奴すぐに…… って言いたいところだけどよ
“アル”: ダメだ、姫さん こりゃ、なかなかの強敵だぜ すぐにってのは無理だ それに──
“アル”: どうやら兄弟たちが到着したみてぇだ
“エミリア”: スバル!
“スバル”: ああ、すでにおっぱじまってるな……
“エミリア”: アルが大変そう 急いで助けないと
“プリシラ”: ──待て 動くでない 貴様らはそこで黙って見ておれ
“スバル”: はあ? なに言ってんだ、お前! どう見ても劣勢じゃねぇか!
“エミリア”: お願い、プリシラ! 一緒に戦わせて!
“プリシラ”: 断る 貴様らの助太刀など不要じゃ
“スバル”: アル、お前のご主人様は、ああ言ってっけど、 実際のところどうなんだ?
“スバル”: 今だったら、特別キャンペーンで、 お得に助太刀してやってもいいぜ?
“アル”: “特別キャンペーン”、ね
“アル”: メイドの嬢ちゃんと狐さんの姿が見えねぇのも、 そのキャンペーンと関係がありそうだな
“スバル”: お客様、お目が高い!
“スバル”: あの二人の奇襲攻撃に加え、 今ならエミリアたんの魔法攻撃もお付けして
“スバル”: ただいまキャンペーン期間につき、 特別にお持ちの『禁書』のページとの交換が可能です!
“アル”: わりぃ、魅力的なキャンペーンではあるんだが、 その対価の支払いについて、オレには決定権がねぇよ
“スバル”: そんなことねぇだろ ページをあちこちに置いて回ったのは、お前だ
“スバル”: お前がその場所を教えてくれるんなら、商談成立だぜ、アル
ナレーター: スバルがアルとの交渉をさらに進めようとした、 そのとき──
“フェネ”: レム女史、援護します!
“レム”: お願いします、フェネさん!
“レム”: ──はぁーーーっ!
ナレーター: 『異形』の背後から飛び出したレムとフェネが、 連携して攻撃を仕掛ける
“異形”: ウガガガァァーーッ!!
“アル”: お、ラッキー どうやら無料トライアルも実施中みてぇだな
“スバル”: いやいや、そんなもん実施してねぇって 完全にこっちの手違いだよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_17

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_17_興醒めは終わりの合図(仮) 更新日:2021/06/30

“スバル”: 正面にはエミリアたんとアル
“スバル”: 背後にはフェネとレムが布陣──
“スバル”: 俺たちは完全に『異形』の挟み撃ちに成功している
“スバル”: このまま一気に片を付けちまおう
“プリシラ”: ならぬ
“スバル”: はあ? “ならぬ”ってのはどういうことだ?
“プリシラ”: 妾はこのようなこと、指示しておらぬ 貴様の勝手に、妾が付き合う道理はなかろう
“プリシラ”: アル、早いとこやってしまえ 貴様らは手出し無用じゃ、黙って見ておれ
“アル”: いやいや、姫さん そいつは無理ゲーだ ここは兄弟の意見に乗ってくれ
“アル”: そもそもページの中にご招待いただいたんだ 姫さんはすでにページになんて興味ねぇだろ?
“アル”: 兄弟たちが言ってた『異形』ってのにも会えたんだしよ
“プリシラ”: ふん 道化、貴様が妾の胸の内を測るなど、百年早いわ
“プリシラ”: ……じゃが、興が醒めた 好きにせい ページとやらもくれてやる
“スバル”: おお! 交渉成立だな!
“スバル”: ということで、お前の姫様からはOKが出た アル、戻ったら、ページを置いた場所を教えてくれよな?
“アル”: ああ、わかったぜ、兄弟 んじゃ、力を合わせて──
“エミリア”: 待って アル、怪我してるわ すごーく痛そう
“アル”: ああ、これか? 確かにいてぇけど、気にするほどの傷じゃねぇよ
“エミリア”: そういうわけにはいきません すぐに治してあげるから、いい子にしててね
“エミリア”: はい、これで大丈夫 もう痛くないはずよ
“アル”: ああ、サンキューな、嬢ちゃん お礼に、今度お茶でも──
“アル”: って、いてててててっ!
“スバル”: どさくさに紛れて、エミリアたんを口説いてるんじゃねぇ!
“アル”: そいつは誤解だぜ、兄弟 おっさん、別に口説いちゃいねぇよ お茶に誘って、その後あわよくばってだけじゃねぇか
“スバル”: “その後あわよくば”って時点で、下心満載だよね! 腹をつねったぐらいじゃ、俺の怒りは収まらねぇよ!
“スバル”: やっぱ、さっきの話はナシだ! お前ひとりで『異形』に特攻して、儚く散ってくれ!
“スバル”: エミリアたんも、次からはこんなおっさんの傷、 治してあげなくていいからね
“スバル”: ぺっぺって唾でも付けときゃ、どうせ治るんだから
“アル”: おいおい、おっさんだって、 たまには人のぬくもりってヤツに触れてぇんだよ
“アル”: それを唾つけときゃ治るだなんて…… いやいや、嬢ちゃんのだったら、それはそれでありか?
“スバル”: アホか! お前に付けんのは、俺のに決まってんだろ! マジでいっぺん死んでこい!
“フェネ”: スバル氏! アル氏! 言い争っている場合ではありません!
“アル”: だとよ、兄弟
“エミリア”: フェネの言う通りだと思う スバル、アルと仲良くして
“スバル”: くっ…… こいつと仲良くすんのは反吐が出っけど、 この状況じゃやむを得ねぇ
“スバル”: おっさんのこと、戦力としてあてにさせてもらって大丈夫だよな?
“アル”: ああ、もちろんだ けど、その前に──
“アル”: 嬢ちゃん、実は腕のここもいてぇんだよ さっきのヤツ頼むわ おっさん、いい子にしてるからよ
“エミリア”: わかったわ、アル 痛いとこ見せて……って、スバル!?
“スバル”: ぺっ、ぺっ、ぺっ!
“アル”: おいおい!? マジで唾飛ばしてんじゃねぇ!
“スバル”: どうだ、もう痛くねぇだろ? ということで、とっととバトルにしゃれ込もうぜ、おっさん
“アル”: やれやれ、毎回兄弟の唾が飛んでくるんじゃ、 おちおち怪我もしてられねぇな、ったく

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_18

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_18_『異形』の鳴き声(仮) 更新日:2021/06/30

“レム”: ──はぁーーーっ!!
“エミリア”: えーいっ!
“アル”: はっ! ほいっ! せやっ!
“異形”: ウガァーーッ!
“スバル”: ──っ! こっちが押してるのは間違いねぇ けど……
ナレーター: エミリア、レム、アルの攻撃は着実に『異形』を捉え、 ダメージを与えているのだが
ナレーター: 一向に『異形』には倒れる様子がない
“スバル”: すげぇ防御力の持ち主なのか、こいつ? それともHPがすげぇ高い感じ?
“スバル”: エミリアたんの魔法攻撃に、レムやアルからの物理攻撃……
“スバル”: どっちを喰らってびくともしねぇってことは、 後者の方が可能性が高そうだな……
“プリシラ”: 何をぶつくさ言っておるのだ 凡愚、貴様も戦え
“プリシラ”: 妾は飽きた 一刻も早くこのくだらぬ戦いを終わらせてこい
“スバル”: 緊迫したこの状況で、“飽きた”ってのはなんの冗談だよ!
“スバル”: ウチんとこのエミリアたんやレムはもちろんだけど、 お前んとこのアルだって頑張ってるじゃねぇか
“スバル”: 飽きてる暇があったら、しっかりみんなを応援してやれ
“プリシラ”: 凡愚、聞こえなかったか 妾は貴様に戦ってこいと言ったのだ
“スバル”: 聞こえてるわ! 聞こえたうえで、意見させてもらったんだよ!
“スバル”: それに、俺に戦闘を求められても困るぜ 俺は戦闘員としちゃ下の下なんでね
“スバル”: 代わりに頭を使って、色々分析してるところなんだよ ご所望通り、早く戦いを終わらせる方法を見つけるためにさ
“プリシラ”: ほう…… 試しに、貴様の分析結果を妾に教えてみよ
“スバル”: はあ? どうして俺がお前なんかに…… って、まぁ、いいよ 別にもったいぶるような話でもねぇしな
“スバル”: まず、あいつは相当高いHPの持ち主と見た だが、攻撃に関しちゃ緩慢だな
“スバル”: いや、むしろ本気でこっちを倒そうとしていないようにさえ見える
“スバル”: もしかしたらあいつは、こっちを疲れさせて、 生け捕りを狙ってるのかもしれねぇ
“プリシラ”: 妾たちを生け捕りにじゃと? 笑わせるでない
“スバル”: 毎度毎度笑わせるつもりはねぇんだが…… マジ、お前の笑いのツボがわからねぇよ
“スバル”: けど、“生け捕り”ってのは可能性の一つだ
“スバル”: とにかく、あいつには、 本気で俺たちを倒すつもりがないように見える
“スバル”: あんだけ攻撃を受けても、びくともしねぇ耐久力があるんだ
“スバル”: 戦い方としちゃ、ダメージを気にせず特攻して、 一人ずつ各個撃破ってのが効果的に思えるんだが
“スバル”: あいつにはそうする気配がねぇ それに──
“異形”: ウググググッ ウガガガガッ
“スバル”: さっきから続くあの妙な鳴き声も気になる まるで俺たちに何かを語りかけてるようだぜ……
ナレーター: スバルは『異形』を見据え、観察を続ける
ナレーター: 『異形』が発する声が、どうしてもスバルには、 自分たちに語りかけてきているように感じるのだ
ナレーター: 目の前の『異形』は、耐久力に特化しているものの
ナレーター: これまで出会った『異形』の中で、 かなり強い部類に分類されるのは間違いない
ナレーター: 『異形』がその耐久力を活かした戦闘スタイルをとれば、 スバルたちは一気に窮地に追い込まれるだろう
ナレーター: だが、『異形』はあえてそうせず、 エミリアやレムやアルからの攻撃を受け続けているように見える
“スバル”: あいつはこれまでの『異形』とは明らかに違う できればやり合いたくねぇ……
“スバル”: とはいえ、倒さないとページからは出れねぇんだよな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_19

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_19_まさかの脱出(仮) 更新日:2021/06/30

“異形”: ウガガガッ ウグググッ
“エミリア”: はぁ…はぁ… やっぱり、あの子の様子は変だと思うの
“レム”: はぁ…はぁ… 確かに反撃がほとんどありません レムたちが疲れるのを待っているようにも感じられます
“アル”: はぁ…はぁ… オレたちを疲れさせて、 いったい何をしやがるつもりなんだ?
“アル”: 嬢ちゃんたちは、アレに詳しいんだろ? 素人のおっさんにもわかるように、説明してくんねぇかな?
“レム”: 申し訳ありません、アル様
“レム”: これまでにこのような経験がなく、 ご説明したくてもできない状況です
“アル”: そりゃ残念だ けど、あんま長引くとウチの姫さんが──
“プリシラ”: 貴様ら、いつまで妾を待たせるつもりじゃ?
“アル”: あちゃー、やっぱ痺れを切らしちまったか……
“プリシラ”: もう、よい 妾が終わらせてやる 貴様らは下がれ
“スバル”: “下がれ”って正気か、プリシラ?
“スバル”: お前の参戦が本気だったとしても、 みんなと力を合わせて戦えばいいだけじゃねぇか
“プリシラ”: 妾がこの者たちと? 凡愚、それはなんの冗談じゃ
“スバル”: 今、冗談の要素あった!? 俺、かなりまっとうなことしか言ってないよね!
“スバル”: ……とはいうものの、三人を一旦下がらせるってのには、 やっぱ俺も賛成かもしれねぇ
“スバル”: あの『異形』は、これまでの奴とは明らかに違う 少し様子が見たい
“スバル”: こっちが攻撃の手を止めれば、 向こうも攻撃をやめるんじゃねぇかって気がするんだよ
“エミリア”: 私もそんな気がするわ この子、ホントは私たちと戦いたくないんじゃないかしら
“プリシラ”: ──貴様らの意見になど興味ないわ 妾はしたいようにする 邪魔立てする者は命ないものと知れ
“スバル”: プリシラ! お前な──
“フェネ”: (スバル氏、冷静になってください)
“スバル”: (フェネ、久しぶりだな お前、ちゃんと戦ってたのか?)
“フェネ”: (華々しく戦う方たちを陰ながら支える それが支援に特化したフェネの役割です)
“フェネ”: (直属の上司でありながら、 陰ながら努力する部下の姿に刮目していないとは──)
“フェネ”: (さすがクソ上司 ほとほと呆れ果てます)
“フェネ”: (本来上司とは、裏方の目立たぬ役目にこそ光を当て、 賞賛するものなのではないでしょうか?)
“スバル”: (ご高説どうも)
“スバル”: (けど、俺はお前の上司じゃねぇ そんな風に 理想の上司論を語られても、戸惑うぐらいしかできねぇよ)
“フェネ”: (この期に及んでスバル氏は……)
“フェネ”: (ですが、今は上司のあるべき姿について、 あれやこれや言っている場合ではありません)
“フェネ”: (簡潔にお尋ねします スバル氏は、 プリシラ女史にあの『異形』が倒せるとお思いですか?)
“スバル”: (そ、それは……)
“フェネ”: (確かにあの『異形』はこれまでとは異なります ですが、倒さなければ我々はここから出られないでしょう)
“スバル”: (そりゃ、様子を見るだけ無駄って意味かよ?)
“フェネ”: (いえ、そうとは言っていません)
“フェネ”: (“様子を見る”という意味では、プリシラ女史についても 当てはまるのではないかと進言しているのです)
“スバル”: (なるほど…… つまりお前は、プリシラの戦闘力を測る、 いい機会だって言いたいんだな?)
“フェネ”: (左様です ここはプリシラ女史にお任せしてみるのも一興かと)
“スバル”: (倒せたら倒せたで、プリシラの戦闘力が推し量れる)
“スバル”: (んで、倒せなかったら倒せなかったで、 そんときは一旦引いて『異形』の様子を見ればいいってわけだ)
“スバル”: (しかも、プリシラの奴は、 俺たちの意見に耳を貸す気がねぇときちゃ)
“スバル”: (そうする以外に方法はなさそうだな)
“スバル”: オーケー、プリシラ、わかったよ ということで、エミリアたんとレムは一旦引いてくれ
ナレーター: フェネの進言により、 スバルがエミリアとレムを下がらせようとしたそのとき──
“異形”: ウガガガァァァーーーッ!!!
ナレーター: 突如『異形』の様子が一変する
“スバル”: どうした突然!?
ナレーター: 瞠目するスバル
ナレーター: そんなスバルをかつてない程の強烈な風が襲った
“スバル”: うっ! だ、ダメ…… うわぁーっ!
“レム”: ──スバルくん! うっ!
“エミリア”: ──スバル! きゃーっ!
“アル”: おいおい、今度は…… って、おわっ!
ナレーター: 強烈な風に次々と吹き飛ばされていく面々……
ナレーター: やがてプリシラやフェネも吹き飛ばされ
ナレーター: その場には、誰もいなくなっているのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c04_20

Scene Name: メインシナリオ_4章_FIX ■4章_20_エピローグ_飛散する驚異(仮) 更新日:2021/06/30

ナレーター: 突如吹き荒れた強風により吹き飛ばされたスバルたちは──
“スバル”: こ、ここは…… 元の世界……
ナレーター: 気が付くとページに吸い込まれたプリシラの屋敷で倒れていた
“スバル”: みんなも無事に──
“レム”: スバルくん! ページが!
“スバル”: え!
ナレーター: レムの視線を追い、空を見上げるスバルが目にしたのは──
ナレーター: 遥か上空で虚空へと消え去ろうとするページなのであった
“スバル”: ぺ、ページが……
“スバル”: いやいや、その前にどうして俺たちはページを出られたんだ? 俺たちは『異形』を倒してないはず……
“スバル”: それに、あれをそのまま逃がすわけにはいかねぇ エミリアたん! レム! 魔法でどうにか!
“エミリア”: ごめんなさい、スバル 私の魔法はあそこまでは届かないわ
“レム”: 同じく、レムにもどうすることもできません……
“フェネ”: 恐らく、我々を吐き出すために、 あのページは大量のマナを消費したと推測されます
“フェネ”: 当面の間、あのページが悪さをすることはないでしょう
“スバル”: そりゃ、そうなのかもしれねぇけど、 あのまま逃がしちまっていいのか?
“フェネ”: 対処する方法がない以上、他の選択肢はないかと 論じるだけ時間の無駄です
“フェネ”: それにスバル氏は、 あの『異形』が気になっているのではありませんか?
“フェネ”: 取り逃がしたことは残念ですが、 倒さずに済んだと前向きに捉えることも可能です
“スバル”: なるほど、確かにな あいつはこれまでの『異形』とは明らかに違っていた
“スバル”: しかも、俺たちをページから排出までしやがったんだ 嫌でも興味を持っちまうよ
“スバル”: にしても、どうしてこんなことが……
“フェネ”: あの『異形』が対になっている可能性があります
“スバル”: どういうことだ? フェネ、もうちょい説明してくれ
“フェネ”: つまり、あのページの物語には続きがあり
“フェネ”: その物語を統べる『異形』と 合流を図ろうとしているのでは?ということです
“スバル”: 待て待て! だとしたら大変じゃねぇか!
“スバル”: そういう場合、もし合流に成功しちまったら、 大幅にパワーアップしちまうもんなんだよ!
“プリシラ”: 凡愚、貴様は妾をどこまでも楽しませる道化よの
“スバル”: 俺にはお前を楽しませようなんて気持ちはねぇよ 勝手にツボに入れて、お前が一方的に楽しんでるだけだろ
“スバル”: なんて、お前の相手をしてる場合じゃねぇ
“スバル”: 急いであのページを追おう! 重大なことになっちまう前に早く!
“フェネ”: ……追う? どのようにしてですか?
“スバル”: “どのように”って、そういうのお前の専門なんじゃねぇのか? そんなこと、俺に聞かれたってわかるわけねぇだろ
“フェネ”: フェネにもわかりませんよ 他のページと同じく、地道に探すしかないと思われます
“スバル”: そんな……
“アル”: おいおい、落ち込むなよ、兄弟 おっさんが慰めてやるからよ
“スバル”: お前の慰めなんているかよ! お前に慰められるぐらいなら、このまま落ち込んでた方がマシだ!
“アル”: 兄弟は、オレからページを置いた場所、聞かなくていいのか?
“アル”: 一枚は飛んでいっちまって、 一枚は兄弟たちが見つけて『禁書』に封じたみてぇだが
“アル”: あと十枚近くは残ってるぜ
“スバル”: マジかよ! それはすげぇ助かる!
“スバル”: ガナクスじゃ、さんざん苦労して、 封印できたのはたった一ページだったしな
“スバル”: それが十ページもってなりゃ、 さすがの俺もテンション爆上がりだぜ!
“アル”: お、なんか急に元気になりやがった 現金な奴だぜ、まったく
“アル”: んで、上げといてわりぃんだけど、 まぁ、ページ集めは急ぐこったな
“アル”: 行きの竜車の中で話したけど、 お前らと同じように、『禁書』のページを集めてる奴がいる
“スバル”: ああ 高額で『遺作』……つまり『禁書』のページを 買い取りてぇって申し出た例の芸術家のことだろ?
“アル”: そうだ あいつはマジで本気だった
“アル”: ウチの姫さんはびくともしなかったが、 そういうケースはどう考えたって稀だ
“アル”: もしもオレが姫さんの立場だったら、 即行であいつに売っちまってたよ
“スバル”: お前みたいな奴が持ち主じゃなくてよかったよ
“スバル”: まぁ、お前の姫様はあれだが、 お前はもうちょい信念みたいなもんを持った方がいいぜ
“スバル”: 金じゃどうにもならねぇもんの方が、 価値があったりするんだからさ
“プリシラ”: なるほど、道理よの
“スバル”: な、なんだよ、突然?
“スバル”: お前が話に割って入ってくると、 嫌な予感しかしねぇんだけど……
“プリシラ”: 妾にとってページとやらは無価値じゃ
“スバル”: ああ、そうみてぇだな
“スバル”: ページの中を堪能できて、お前は満足できたんだろ? ありがたくちょうだいさせてもらうよ
“プリシラ”: して、凡愚、いくら支払うのじゃ?
“スバル”: はあ? タダじゃねぇのかよ?
“プリシラ”: 無論じゃ 無償で譲る必要はなかろう
“スバル”: いやいや、お前、“くれてやる”って言ったよね? それってつまり“タダ”ってことだろ!
“アル”: あー、兄弟 そういう意味じゃ、グレーな気がすんな 結局あの『異形』とやらは倒せなかったからよ
“スバル”: けど、あんときのプリシラのオーダーは、 早くページから出ることだったじゃねぇかよ
“スバル”: あの『異形』を倒す倒さないに関係なく、 こうしてページからは出られたんだ 条件は満たしてる
“アル”: だから“グレー”って言ったんだ
“アル”: 確かに外には出れたが、“早いとこ『異形』を倒して、 ページを出る”ってのが正確なオーダーだったんじゃねぇか?
“アル”: 少なくともオレはそう受け取ったし、兄弟だってそうだよな?
“スバル”: そ、それは……
“アル”: 柄にもなく兄弟が“価値あるもんは金じゃ買えねぇ”なんて いいこと言うから、姫さん、気が変わっちまったみてぇだぜ
“スバル”: いいこと言って、マイナスに作用するって、 いったいどんなシステムだよ!
“エミリア”: ねえ、スバル やっぱりタダでもらうのは、申し訳ない気がするの だって、すごーく高いものなんでしょ?
“スバル”: え、エミリアたん……
“レム”: スバルくん このような場合に備えて、 ロズワール様からはそれなりの金額を託されています
“スバル”: 教えてくれて、ありがとな、レム
“スバル”: ということで、わかったよ 支払えばいいんだろ、支払えば
“スバル”: ロズワールの奴に借りを作っちまうのは癪だが、 きっちり代金は支払わせてもらうよ!
“スバル”: ふぅ…… とりあえず、ここでのページ集めは完了だな、フェネ
“フェネ”: はい ですが、どこかにページが眠っていないとも限りません 時間を置いて訪れればあるいは……
“スバル”: ああ、心得てるよ アルが置いた以外にも、ページが眠ってる可能性は否定できねぇ
“スバル”: けど、まぁ、まずはひと段落だ
“スバル”: しかも十枚近くページを集められたし、 思惑と違うこと満載だったけど
“スバル”: 王都から遥々出張った甲斐はあったぜ
“スバル”: とはいうものの、どうしてこれまでみてぇに、 ページに変化がなかったかは謎のままだ
“スバル”: プリシラにページの成長を抑える力があるってのも
“スバル”: あのページが最終系まで進化したことを考えると、 ないんじゃないかって気がする
“フェネ”: それについては、ページが吸収するマナの許容量の問題かと
“スバル”: 許容量? つまり、たくさんマナを吸えるページもあれば、 ちょっとしか吸えないページもあるってことであってる?
“フェネ”: その通りです、スバル氏
“フェネ”: フェネはページにはマナの吸収速度が速いものと 遅いものがあるのだと考えていました
“フェネ”: ですが、今回のことで、マナの吸収速度ではなく、 蓄えられる最大量に差があるのだと考えるようになりました
“スバル”: つまり、蓄えられる容量が少ないページは、 すぐに成長してフェネのレーダーに反応するようになるけど
“スバル”: 容量がでかいページは、成長が遅いから、 レーダーに反応するまで、結構な時間がかかっちまうってことか
“スバル”: けど、どうしてそう考えるようになったんだ? 吸収速度の違いで、今のことは十分説明できるぜ?
“フェネ”: 『異形』の耐久力です あの『異形』の耐久力はこれまでの『異形』とは桁違いでした
“フェネ”: そして、蓄えられるマナの量に個体差があるのであれば、 そのことも説明できます
“フェネ”: ここバーリエル男爵領にあるページが 異変を起こさなかった理由についても
“スバル”: つまり、容量が大きくて、全然マナで満たせてねぇから、 ここのページは悪さをしなかったってわけか
“スバル”: 放っておいたら、いつかマナで満たされて、 プリシラの予想に反して悪さをしてたってことだな
“スバル”: しかも大容量タイプだから、被害もこれまでよりでかくなった
“フェネ”: 左様です たまたま許容量が大きいページだったため、 異変が起きなかったと考えるべきでしょう
“スバル”: たまたま、か…… まぁ、そんなことだろうとは思ってたよ
“スバル”: けど、どうしてあのページだけ、急に成長したんだ?
“スバル”: あのページだって、 満たされるのに、かなりのマナが必要だったはずじゃねぇか
“フェネ”: それについては、さらに考察する必要があります
“フェネ”: あのページに限らず、フェネたちを吸い込む特別なページは、 突如爆発的な成長を遂げます
“スバル”: 確かに、あのページに限ったことじゃねぇか、それは……
“スバル”: けど、フェネ ページの成長に個体差があるのが、 許容量の差だって判断は早計なんじゃねぇかな?
“スバル”: 確かにそれもあるかもしれない けど……
“フェネ”: マナの吸収速度にもやはり差があるのではないか? スバル氏はそう言いたいのですね
“スバル”: ああ マナの許容量に差があるのは間違いないと思う
“スバル”: でも、吸収するスピードにだって、差があってもおかしくねぇだろ
“スバル”: 許容量がでかくて、吸収速度も速いなんてページがあったら、 ぞっとしねぇけどさ
“フェネ”: そういうページが存在する可能性は十分にあります
“スバル”: やっぱそうだよな…… マジ、ぞっとしねぇな
“スバル”: って、よく考えたら、これからどんどん 強い『異形』と戦わなきゃいけないってことにならねぇか?
“スバル”: つまり、今後頭角を現すページって、 これまでに倒してきた奴よりも許容量がでかいってことだろ?
“スバル”: もちろん、マナの吸収速度が遅い、 どんくさいページも混ざってるかもしれねぇけど
“フェネ”: 左様です マナの許容量が大きいページの『異形』…… つまりより強力な『異形』ということになります
“スバル”: くっ…… 前途多難だな、マジで……
“スバル”: 飛び去ったページの『異形』が、 続編と合体してより狂暴になる可能性まであるってのに
“スバル”: あんときは、倒すには惜しいって感じたけど、 今となっては逃したことが悔やまれるぜ……
“スバル”: それに、ページを集めて回ってるっていう、 謎の芸術家って奴の存在も気になるしな
“スバル”: 相当な財力がありそうだし、 すでにページを何枚か手に入れちまってるかもしれねぇ
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ? どうした?
“フェネ”: 何がですか、スバル氏?
“スバル”: いや、今、すげぇ難しい表情してたじゃん
“フェネ”: なるほど フェネのニヒルな表情に、 思わずスバル氏は見惚れてしまっていたのですね
“スバル”: 見惚れてねぇよ! ってか、“ニヒル”ってのも、 こっちじゃ使いそうもねぇ表現だな!
“スバル”: 俺にもプライバシーってもんがあるんだから、 あんま勝手に俺の顔を読まないでくれる?
“スバル”: 今後は俺の顔を読む前に、ちゃんと許可取ってくれよな
“フェネ”: 確かに、今はコンプライアンスの厳守が求められる時代 持ち帰って慎重に検討させていただきます
“スバル”: 言ってる傍から“コンプライアンス”って!
“スバル”: しかも“持ち帰って検討”って、 あんま厳守するつもりねぇじゃん!
“フェネ”: ところでスバル氏、今はなんの話をしているところでしょう? スバル氏の話は脱線の連続のため、本題を見失ってしまいました
“スバル”: 確かに脱線しがちなのは認めるが、 それは俺だけが原因じゃないよね?
“スバル”: フェネ、お前だって……
“フェネ”: スバル氏 再び脱線の兆候です
“スバル”: くっ…… なんか一方的に俺が悪いみたいになって、 腑に落ちなくはあるが、ここは本題に戻そう
“スバル”: 今の本題は、これから前途多難だってことだ
“スバル”: 強くなる『異形』 逃げ去った『異形』のこともある それにページを集めてるっていう謎の芸術家の存在
“スバル”: マジ、前途多難にもほどがある感じだ
“フェネ”: ですが、スバル氏が撒いた種です 責任感を持ってしっかりと対処してください
“スバル”: ああ、わかってる どんな困難が待ってたとしても、 俺にはやる以外の選択肢はねぇよ
“スバル”: 『禁書』のページをかき集めて、この『禁書異変』を終わらせる
“スバル”: じゃないと、王選ってヤツも開始できねぇし、 エミリアたんの王様になるって夢も叶わねぇしな
“スバル”: って、そういや、エミリアたんは?
“フェネ”: 先程、レム女史とともにプリシラ女史のところへ赴きました ページの代金を支払うためだと思われます
“スバル”: あ…… だ、代金をね……
“スバル”: けど、俺を置いてくなんて酷くねぇか? 俺にも一声かけてくれてよさそうなもんだろ
“フェネ”: それはレム女史なりの配慮でしょう
“フェネ”: スバル氏のやらかしにより、余計な出費が発生したのです しかも、高額な
“フェネ”: その支払いに立ち会うことで、 スバル氏の小さな良心が痛む可能性があります
“フェネ”: そんなレム女史の気遣いにも気付かぬとは…… さすがクソ上司
“フェネ”: プリシラ女史ではないですが、 胴と首が繋がっていることに、スバル氏は感謝するべきです
“スバル”: ずいぶんな言われよう! 今の数ワードで、いったい俺は何回ディスられたんだ!
“スバル”: それに、お前、あの場にいたよな?
“スバル”: どう考えたって、俺のやらかしってよりは、 プリシラの奴がまともじゃないだけだったじゃねぇかよ!
“フェネ”: 反省するどころか、逆ギレですか? ほとほと呆れます
“スバル”: “反省”ってな、反省の仕方がわからねぇよ
“スバル”: それに“反省”するべき点があるとすれば、 あいつらに関わっちまったってことだ
“スバル”: マジでやることなすこと、あいつとは嚙み合わねぇ プリシラは姉様以上に、俺にとっちゃ強敵だぜ
“フェネ”: なるほど ラム女史のことをスバル氏はそのように…… これは一刻も早くラム女史にご報告せねば
“スバル”: いやいや、待ってくれ、フェネ! 今のはナシだ! ノーカンで頼む!
“スバル”: ついつい、心にもない言葉が出ちまったんだよ
“フェネ”: なるほど、心にもない言葉が、ですか?
“スバル”: ああ、そうだ 心にもない言葉だ
“フェネ”: では、それについてもラム女史にご報告して、 判断を仰ぐことにします
“スバル”: どうして、ラムの判断!? ここは上司である俺の判断に……
“フェネ”: どうしてフェネが、クソ上司であるスバル氏の判断に 従う必要があるのでしょう?
“スバル”: いやいや、上司と部下の関係って、 そういうもんじゃなかったっけ!
“フェネ”: そういえば、スバル氏のやらかしにより、 高額な支払いが発生した件についても
“フェネ”: 余すことなくラム女史にお伝えしなければ
“スバル”: 待て待て、その報告が一番いらねぇだろ!
“スバル”: むしろこの短期間で、一気に十枚近いページを回収したこととか、 成果の方をちゃんと報告してくれ!
ナレーター: バーリエル男爵領にて、 飛び去った一枚を除く九枚のページを回収したスバル
ナレーター: だが、残されたページはあまりにも多い
ナレーター: スバルのページ探しの旅は、まだまだ続くのであった──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_00

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■プロローグ タイトル:次なる目的地 更新日:2021/08/20

ナレーター: バーリエル男爵領でのページの回収を終えたスバル一行は、 一度屋敷に戻りロズワールへの報告を行った後
ナレーター: 本格的な『禁書』のページ回収を再開すべく、 再び王都に拠点を移すのだった
“スバル”: ──ということで、ようやくここを拠点に 活動を行うことになるわけだな
“スバル”: 前回は到着早々、その日の夜にはプリシラたちに拉致られて、 俺は王都を出ちまってたし
“スバル”: 王都での印象がまるでねぇ
“スバル”: 今回こそは、王都でいい思い出を一緒に作ろうね、エミリアたん
“エミリア”: ええとね、スバル 私たちは遊びにきたわけじゃないの わかってるとは思うんだけど……
“スバル”: もちろんわかってるよ けど、最近離れ離れになるケースが多かったからさ
“スバル”: ほら、ガナクスのときもそうだったし、 プリシラの一件でもそうだったじゃん
“スバル”: 俺としては、常にエミリアたんと行動を共にしたいんだけど、 運命の女神様がなかなかその願いを聞いてくれねぇ
“スバル”: ってことで、いわゆる決意表明みたいなもんだよ “いい思い出を作ろう”ってのは、ちょっと冗談がすぎたけども
“フェネ”: 冗談ということで安心いたしました スバル氏には前科がある故、フェネは心配してしまいました
“スバル”: わりぃ、フェネ、“いい思い出を作ろう”ってのは冗談だ だから、俺に失望していなくなったりしないでくれ
“スバル”: とにかく、前回はプリシラたちのせいで、 なんだかあやふやになっちまったけど
“スバル”: ここから仕切り直しだ
“スバル”: 明日はクルシュさんのとこに もろもろ報告にいく予定になってるけど
“スバル”: それまで何もしないなんて選択肢はないと思う
“スバル”: というわけで、さっそく調査に出かけようぜ!
“レム”: スバルくんはやる気に満ちていますね
“レム”: そんなスバルくんを見習って、 レムも精一杯調査を頑張りたいと思います
“スバル”: おお 頼んだぜ、レム すげぇあてにさせてもらう
“レム”: はい! レムにお任せください!
ナレーター: 王都に着いて早々、調査を開始したスバルたち
ナレーター: そして自然と、エミリア、レム、 それにスバルとフェネという三手に分かれて行動してしまっている
“フェネ”: スバル氏 この辺りに『禁書』のページの気配は感じません 他の場所の調査に向かいましょう
“スバル”: ああ、わかった…… って、どうしてフェネが俺と一緒にいるんだ?
“スバル”: 俺はエミリアたんと一緒に行動するつもりだったはずだ
“フェネ”: そのようなこと、フェネに聞かれても困りますね 自然と我々はこのように分かれていました
“フェネ”: スバル氏も何も言わなかったので、 特に異論はないものと思っていたのですが、違うのですか?
“スバル”: クソっ 体に染みついた習慣ってのは怖いな 無意識に俺はお前についてきちまってたよ
“スバル”: 次こそは絶対エミリアたんと行動を共にしてみせるからな!
“フェネ”: スバル氏は部下のやる気を削ぐ天才ですね デリカシーのない発言、フェネはとても不快です
“スバル”: わりぃ、フェネ! 確かにデリカシーがなかったな
“スバル”: って、“デリカシー”ってのも俺の顔に?
“フェネ”: 左様です はっきりと書かれています
“スバル”: ったく、マジで俺の顔って、お前にどう見えてんだ?
“スバル”: アルの野郎にも読める感じだったし、 目つき以外にもそんな欠点があったなんて、マジ凹んじまうよ
“フェネ”: ……“欠点”というのは違うのではないでしょうか
“フェネ”: 事実、フェネはスバル氏の顔に書いてあるものが読めて、 とても重宝しています
“スバル”: お前はそうだろうな!
“スバル”: けど、頭の中を勝手に覗かれたような気分になるし、 お年頃の男の子としてはすげぇ複雑なんだよ
“スバル”: できれば、そんな仕様は遠慮してぇってのが本音だ
???: ……ナツキさん?
“スバル”: おぉ! オットーじゃねぇか 元気してたか?
“オットー”: はい、おかげ様で元気にさせてもらっています
“オットー”: メイザース辺境伯ともお取引させていただけることになりましたし 色々ありましたが、“今は”ナツキさんに感謝してるんです
“オットー”: ナツキさんが不在のときに一度お屋敷にお伺いしたのですが
“オットー”: その際、ナツキさんの口添えがあったということで、 すぐに辺境伯は僕との取引を了承してくれました
“スバル”: そうか ロズワールの奴、ちゃんと覚えててくれたんだな
“スバル”: 俺も色々あって屋敷にいないことが多かったけど、 お前のことは気にしてたんだよ
“スバル”: ロズワールを紹介するって約束したのに、 結局あの後会う機会がなかったから
“スバル”: けど、どうやら約束を果たせてたみたいで何よりだよ
“スバル”: お前とはいい関係をキープしたいから、贔屓にしてやってくれって ロズワールに推薦しておいて、マジよかったぜ
“オットー”: それについては感謝しかありませんよ ありがとうございました
“オットー”: ですが、本当にナツキさんは、 辺境伯にとって重要な方だったんですね
“オットー”: 正直、ダメで元々のつもりで訪問したのですが、 話がすんなり進んで驚きました
“スバル”: おいおい、オットー、ちょっと俺に失礼なんじゃねぇか?
“スバル”: さっきだってわざわざ“今は”って部分を強調してたし
“オットー”: それはそうですよ
“オットー”: ナツキさんにはさんざん酷い扱いを受けましたし、 色々無茶苦茶だったじゃないですか
“スバル”: 待て待て、俺なんてかなりマシな方だろ
“スバル”: 言っとくけどこの世界は、 俺なんかよりもアクが強い連中で溢れてるんだぜ
“オットー”: な、ナツキさんよりもですか!
“オットー”: できればそういう方々とは、関わり合いたくないですね、僕は……
“スバル”: ふふふふ はははは
“オットー”: な、ナツキさん!? その薄気味悪い笑いはなんなんです?
“スバル”: 時すでに遅しだ、オットー というわけで、お前にフェネを紹介してやろう
“スバル”: こいつは可愛い外見をしているが、俺が出会った中でも相当だ 自信を持って俺よりも難敵だって断言できるぜ
“オットー”: え? この可愛らしい精霊様がナツキさんよりもですか?
“フェネ”: オットー氏は、完璧な容姿のフェネと違い、 ずいぶんと幸が薄そうな冴えない顔をしていますね
“フェネ”: スバル氏との会話から、商売をされている方と推測しますが、 とても商売人として成功されているとは思えません
“オットー”: しょ、初対面でそこまで言います!? 確かにその通りですが!
“フェネ”: 申し訳ありません フェネは正直者なので嘘が言えないのです
“オットー”: それ、謝ってないですよね! 傷口に塩を塗られた気分ですよ!
“スバル”: な? なかなかだろ
“オットー”: は、はい……
“スバル”: あと、プリシラって奴がいて、こいつもすげぇんだ
“スバル”: 早くお前をプリシラにも紹介してぇぜ
“スバル”: きっとお前も、会って早々“死んで詫びろ”とか 言われちゃうんじゃねぇかな
“オットー”: どうして僕が、死んで詫びる必要が!? そんな人、絶対に紹介しないでください!
“オットー”: なんだか長話をすることに危険を感じるので、 僕はそろそろいかせてもらいます
“スバル”: 待て待て、もう少しぐらいいいだろ? せっかく久しぶりに会ったんだしよ
“オットー”: いえ ナツキさんを見かけて、思わず声をかけてしまいましたが、 実は、少々急いでいまして
“スバル”: ……急いでる? そりゃ、またなんで
“オットー”: さっき、流れ星が落ちたって情報を聞いたんですよ それで、現場に向かう準備をしていたんです
“オットー”: もし、落ちた隕石を見つけられたら、 一攫千金は間違いなしですから
“オットー”: 急いで準備して向かわないと それでは──
“スバル”: おい! オットー、もうちっと詳しく! ……って、いっちまいやがった
“スバル”: …………
“フェネ”: スバル氏?
“スバル”: いや、ちょっと隕石が気になってさ
“スバル”: けど、俺たちには関係ねぇか……
“スバル”: エミリアたんもレムも頑張ってるんだし、 俺たちも調査を頑張らねぇとな
“フェネ”: 左様です 元を正せばスバル氏が皆様を巻き込んだのです 張本人であるスバル氏は、誰よりも尽力する必要があります
“スバル”: へいへい、わかってるよ ってことで、調査再開だ、フェネ
ナレーター: 昨日、王都に到着早々調査を開始したスバルたちだったが、 残念ながら『禁書』のページの発見には至らなかった
“スバル”: さて、今日の予定だけど、 午後にはクルシュさんのとこに色々と報告にいくことになってる
“スバル”: それまでは昨日に引き続き王都の調査ってことで──
“レム”: すみません、スバルくん 先程、宿屋のご主人からこちらの手紙を預かりました
ナレーター: 珍しくスバルの言葉を遮ったレムが、 一通の封筒をスバルに手渡すのだった
ナレーター: その封筒には、差出人としてアナスタシアの名が記されている
“スバル”: ……アナスタシアさんから?
“スバル”: 俺たちがここに滞在してるって知ってるとは、 さすが耳が早いアナスタシアさんだな
ナレーター: そんな独り言を言いながら、封を切り手紙を取り出すスバル
ナレーター: だが……
“スバル”: わりぃ 俺には読めねぇや テヘ
“フェネ”: 可愛い子ぶっても無駄ですよ、スバル氏 スバル氏の目つきの悪さは致命的です
“スバル”: わかってるよ!
“スバル”: けど、代表して封を切った手前、こうでもして 恥ずかしさを紛らわせねぇとやってられなかったんだ
“レム”: スバルくん、レムにはとても新鮮でしたよ できればもう一度はにかむスバルくんを見たいのですが……
“スバル”: もう一度は難しいかな! キャラじゃないのは自覚してるしね!
“エミリア”: それじゃスバル、その手紙、私が読むわね
“スバル”: ああ、頼むよ、エミリアたん 読んで、内容をみんなに共有してくれ
ナレーター: スバルから手紙を受け取ったエミリアは、 熱心にアナスタシアからの手紙に目を通す
ナレーター: それからスバルたちに、手紙の内容を共有するのだった
“スバル”: 手紙には、アストレア領ってとこで、 『禁書』のページが多数発見されてる、そう書かれてるんだね?
“エミリア”: ええ そう書かれてるわ あくまで噂みたいだけど……
“スバル”: けど、アナスタシアさんがわざわざ知らせてくれたんだ 噂だけど確度は高いってことだろ
“スバル”: となりゃ、そのアストレア領ってとこに向かわないとね
“スバル”: 王都にきたばっかりだってのに、 結局また王都を離れることになりそうだな、こりゃ
“クルシュ”: ──なるほど、バーリエル男爵領での一件については了解した
“クルシュ”: 気になるのはやはり、 アナスタシア・ホーシンからもたらされた情報だな
“スバル”: ああ、その通りだ 俺たちはアストレア領ってとこに向かうつもりだ
“クルシュ”: そうか…… だが、卿らの報告には気になることがもう一つある
“フェネ”: それは行方知れずとなったページのことだとフェネは推測します
“クルシュ”: その通りだ、フェネ
“クルシュ”: 件のページがどこへ消え去ったかはわからぬが、 可能な限り回収を急ぐべきだろうな
“スバル”: それについちゃ俺も異論はねぇよ けど、肝心の行き先がわからねぇ
“スバル”: 回収を急ぎたくても、現時点じゃお手上げの状態だ
“クルシュ”: 一つ、ここで私の推論を話そう
“クルシュ”: 卿らには耳障りの良い話ではないだろうが、 ページとは意思を持って移動するものではないだろうか
“クルシュ”: 卿らもすでに耳にしているかもしれないが
“クルシュ”: 先日フェリスから、 王都の遥か南東に巨大な隕石が飛来したという報告を受けた
“クルシュ”: 王都の遥か南東…… 彼のアストレア領も王都の遥か南東に位置している
“スバル”: ──なっ!
“フェネ”: スバル氏 オットー氏が言っていた隕石というのは……
“スバル”: ああ、恐らくそれのことだろうな
“スバル”: 正直、ちょっと嫌な予感がしたんだよ 無関係じゃないかもしれねぇってな
“クルシュ”: 実は、小規模なものだが、 最近彼の地では隕石の飛来が相次いでいるらしい
“クルシュ”: にもかかわらず、 肝心の隕石は一つも発見されていないそうだ
“スバル”: 代わりに、ページが続々と発見されてるわけか……
“エミリア”: つまり、隕石だってみんなが思っていたものが、 実は『禁書』のページだったってこと?
“スバル”: その可能性が高そうだね
“スバル”: んでもって、先日落ちた巨大な隕石は、 すげぇ強力な『異形』を宿したページって可能性が高い
“レム”: 強力な『異形』…… バーリエル男爵領で取り逃がした『異形』はかなり強力でした
“スバル”: ああ 色々つながってんな、マジで
“スバル”: 実際、俺たちは飛び去るページを目撃したわけだし、 自由気ままにページは移動するって考えて間違いなさそうだな
“スバル”: クソっ! ただでさえ、ある程度マナが溜まんねぇと、 発見できねぇってのに
“スバル”: 色々動き回ってるんじゃ、そりゃ集めるのが大変なわけだぜ
“スバル”: しかも、早いとこ『禁書』に封じねぇと、 『異形』が出てきて大変なことになっちまう
“クルシュ”: ナツキ・スバル そう悲観する必要はない
“クルシュ”: 事態を重く見た騎士団が、 ラインハルト・ヴァン・アストレアを調査に向かわせたと聞く
“クルシュ”: 事が起こっているのが彼の地であれば、当然の人選ではあるがな
“スバル”: ……ラインハルト・ヴァン・アストレア?
“レム”: スバルくん アストレア領を治められているのは、 あのラインハルト様です
“スバル”: なるほど、道理で……
“スバル”: けど、あいつが向かったとなりゃ、確かに安心だ 『異形』が暴れ出してもあいつなら倒せるだろうし
“フェネ”: ですが、『禁書』に綴じなければ、その場凌ぎにすぎません
“フェネ”: ラインハルト氏がいかに強靭でも、 根本的な解決は図れないでしょう
“スバル”: そりゃそうだ 俺たちがアストレア領に向かわないなんて選択肢はねぇよ
“スバル”: ってことで、 明日にはアストレア領に向けて出発したいと思うんだが……
“クルシュ”: ああ 卿らは急ぎ彼の地に向かってくれ 王都については、引き続き私の方で監視の目を光らせておく
“スバル”: 助かるぜ、クルシュさん これで俺たちも安心して王都を発てるよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_01

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■1話 タイトル:フェリスからのエール 更新日:2021/08/20

ナレーター: これまでの報告と今後の話し合いを終え、スバルたちが クルシュと別れる頃には、すでに日は傾いているのだった
???: あっ! スバルきゅんじゃにゃい!
“スバル”: お! フェリス、それにヴィルヘルムさんも
“フェリス”: そうそう、今日はスバルきゅんたちが報告にくる日だったね
“スバル”: ああ 今さっきまでクルシュさんと話してたところだ
“スバル”: 詳しいことはクルシュさんから共有されると思うから、 今は言わねぇけど
“ヴィルヘルム”: 申し訳ありません 可能であれば、同席したいと思っていたのですが……
“スバル”: いえいえ、気にしないでください
“スバル”: その様子から察するに、同席できなかったのは、 ヴィルヘルムさんのせいじゃなさそうだし
“フェリス”: スバルきゅん、ご名答! ヴィル爺には、フェリちゃんの買い物に付き合ってもらってたの
“フェリス”: ほら、誰かさんのせいで、色々と物騒でしょ?
“スバル”: うぐっ…… 誰かさんのせいで、ね……
“スバル”: けど、お前って一応騎士なんじゃねぇのか?
“スバル”: 現時点じゃ王都は比較的安全なんだし、 わざわざヴィルヘルムさんを護衛に連れ出さなくていいだろ
“フェリス”: あれ~ もしかしてスバルきゅんってば、妬いてるとか? ヴィル爺とはそういう関係じゃないから、安心して大丈夫だよ!
“スバル”: 誰が妬くか、誰が! お前の性別を把握してるからなおさらだ!
“スバル”: とにかく、明日の朝は早いから、 俺らはこの辺で失礼させてもらうよ
“フェリス”: へー、 もしかして、アストレア領に向かうのかにゃ?
“スバル”: お、おお その通りだ
“フェリス”: やっぱり、あの隕石は『禁書』に関係があったんだネ
“スバル”: どうやらそうみてぇだな
“スバル”: アナスタシアさんからの報告も考慮すると、 アストレア領にページが集まってるっぽいぜ
“ヴィルヘルム”: アストレア領にですか……
“エミリア”: ええ だから、私たちも向かうことになったの ページをちゃんと『禁書』に封じないと
“フェリス”: ラインハルトが向かったみたいだけど、 確かにページを封じにゃいと意味ないよね
“フェリス”: 色々大変そうだけど、フェネちゃん、頑張ってネ
“フェネ”: ありがとうございます 全力でフェネは、 フェリス女史のご期待にお応えすることをお約束します
“スバル”: 何が“フェリス女史”だ こいつは男なんだぜ?
“スバル”: しかもどうしてフェネだけにエールを? 俺たちみんな頑張る所存だっつーの
“フェリス”: 妬かない妬かない ということで、スバルきゅんも頑張って
“スバル”: 妬いてねぇし、ついでな感じを隠せてねぇ!
“スバル”: とにかく、明日は早いんだ 詳しいことはクルシュさんに聞いてくれ
“スバル”: それじゃ、エミリアたん、レム、フェネ
“レム”: はい、スバルくん
“レム”: それでは、フェリックス様、ヴィルヘルム様、失礼いたします
“フェリス”: うん、レムちゃんも頑張ってネ これ、ついでじゃないよ
“スバル”: ってことは、やっぱ俺のはついでだったんじゃねぇか!
“フェリス”: あはは 顔を真っ赤にしちゃって、 スバルきゅんってばおもしろーい
“スバル”: 面白くないわ! お前マジで──
“エミリア”: スバル、早く帰るんじゃないの? もうすぐ夜になっちゃうわよ
“スバル”: ああ、そうだったね、エミリアたん
“スバル”: 長居しても俺が傷つくだけの結果になりそうだし、 早いとこいくとしよう
“スバル”: それじゃ、フェリス、ヴィルヘルムさん、俺たちはこれで
“フェリス”: まぁ、それなりの大怪我でも、 フェリちゃんがなんとかしてあげるから
“フェリス”: 死なないようにだけ気を付けてね 死んじゃったらさすがのフェリちゃんも打つ手なしだからさ
“スバル”: できれば大怪我もしないように、気を付けたいとこだよ
“スバル”: けど、もしものときは、頼むな、フェリス

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_02

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■2話 タイトル:ロム爺との再会 更新日:2021/08/20

ナレーター: ──情報共有のためスバルがクルシュの屋敷を訪れた翌朝
ナレーター: 思わぬ来訪者がスバルの元を訪れるのだった
“クルシュ”: 早朝にすまない、ナツキ・スバル
“スバル”: いや、別に構わないけど…… 昨日会ったばっかりだし、特にあれから進展はねぇよ?
“クルシュ”: それについては問題ない 進捗の確認にきたわけではないのでな
“スバル”: なるほど…… それじゃ、いったい俺になんの用事だ? 出発の準備もあるし、できれば手短に済ませてもらえると助かる
“クルシュ”: 無論だ 私とて長話をするつもりはない ただ卿に一点確認したいことがあってな
“スバル”: 俺に……確認したいこと?
“クルシュ”: ああ ラインハルト・ヴァン・アストレアが、 ある少女を保護しているという噂を耳にした
“クルシュ”: 彼の者と親しい卿ならば、 何か知っているのではないかと思ってな
“スバル”: ラインハルトが少女…… ああ、フェルトのことか
“スバル”: クルシュさん、それについては間違いねぇよ 確かにあいつはフェルトって女の子を保護してる
“スバル”: 詳しい事情はわからねぇけど、 慈善活動の一環なんじゃねぇかって俺は思ってる
“クルシュ”: そうか、やはり噂は本当だったか だが、詳しい事情について、卿は聞かされていないのだな?
“スバル”: すまない 深くは聞いてねぇよ あんま突っ込んだ話ができるような状況じゃなかったんでね
“クルシュ”: こちらこそ朝早くからすまなかった
“クルシュ”: だが、ナツキ・スバル ラインハルト・ヴァン・アストレアは、 アストレア領に赴く際、その少女も同行させたらしい
“スバル”: ラインハルトがフェルトをか?
“スバル”: そりゃまた、フェルトの奴、 ラインハルトから随分と大切に扱われてるみてぇだな
“クルシュ”: どうやらそのようだ そして恐らく、そうするだけの理由があるはずだ
“スバル”: 確かに、慈善事業の一環ってなら、 自分の出張にまで同行させたりはしねぇか……
“スバル”: あいつの傍が一番安全とはいえ さすがにそれはいきすぎな気がする
“スバル”: わかったぜ、クルシュさん
“スバル”: どうしてそこまでラインハルトがフェルトに肩入れするのか、 それについても調べてくるよ
ナレーター: クルシュの訪問のすぐ後、 スバルは長旅の買い出しのため、カドモンの店を訪れていた
“カドモン”: ──よう、坊主 随分と久しぶりだな
“スバル”: わりぃ、オッチャン 色々立て込んでて、 王都にきても慌ただしく時間が過ぎちまうんだよ
“スバル”: こようこようとは思ってるんだけど、 なかなかこられないのが現状だ
“スバル”: 事実、今日もこの後すぐに王都を発たないとならねぇ
“カドモン”: へえ、そりゃ大変だな
“カドモン”: ……そんな坊主に頼むのは気が引けるんだけどよ ちっと、頼まれてくれねえかな?
“カドモン”: 今日のお代はかなり勉強させてもらう だから、な?
“スバル”: オッチャンが俺に頼み事?
“スバル”: 急いじゃいるが、ちょっとぐらいなら大丈夫だ オッチャンの頼み事もすげぇ気になるしな
“カドモン”: そうか! 頼まれてくれるか!
“カドモン”: 実は坊主に会いたいって奴がいるんだよ ちょっくらそいつに会ってやってくれ
“スバル”: ──と、安請け合いしたはいいが、 ずいぶんとしけたとこで待ち合わせだな
“スバル”: こんなことだったら、 レムかフェネに同行してもらえばよかったぜ
“スバル”: 人通りが多い道しか通らねぇって約束で、 一人で買い出しに出してもらったってのに……
???: 呼び立てして悪かったの
“スバル”: ろ、ロム爺! ご健在みたいで安心したぜ!
“ロム爺”: おかげ様でな お前さんも無事なようで何よりだわい
“スバル”: ああ なんとか俺も無事だ
“スバル”: あんときは、意識不明の危険な状態だったけど、 今は後遺症もなくぴんぴんしてるよ
“スバル”: って、もしかして、オッチャンが言ってた、 俺に会いたがってる奴ってのはロム爺のことか?
“ロム爺”: そうじゃ カドモンの奴がお前さんと馴染みのようなんでな お前さんと会う機会を作るよう頼んでおいたんじゃ
“スバル”: へぇー、俺と会える機会を、ね
“スバル”: で、いったい俺になんの用だ?
“スバル”: 悪いけど、ちょっと急いでるんだよ 前置きなしで本題を頼む
“ロム爺”: 儂の用事といったら、一つしかないわ フェルトのことじゃよ
“ロム爺”: フェルトの奴があれ以来戻っておらんのじゃ お前さん、何か知ってることはないか?
“スバル”: フェルトだったら、ラインハルトの奴が…… って、ロム爺は知らなかったんだな?
“スバル”: とか言いつつ、俺も意識がなかったし、 エミリアたんから聞いて知ったんだけどね
“スバル”: とにかく、詳しい事情はわからねぇけど、 フェルトだったら今、ラインハルトのとこで保護されてるよ
“ロム爺”: ラインハルト……『剣聖』、か?
“スバル”: ああ、その『剣聖』様のとこだ
“スバル”: 実際俺はラインハルトとフェルトが一緒にいるところに 出くわしてるし、間違いねぇよ
“ロム爺”: そうか…… やはりあの噂は本当だったようじゃな……
“スバル”: んで、最新の情報だと、ラインハルトはフェルトを連れて、 自分の領地に戻ってるらしい
“ロム爺”: 己の領地…… つまりフェルトは今、ハクチュリにおるわけじゃな?
“スバル”: ……ハクチュリ?
“ロム爺”: アストレアの本邸がある街の名じゃ 領地に向かったということは、恐らく滞在するのは本邸じゃろう
“スバル”: なるほど…… 確かにそうだな フェルトは今、そのハクチュリって街にいるはずだ
“ロム爺”: じゃが……、何故『剣聖』が己の領地に?
“スバル”: 隕石騒ぎだよ、ロム爺 その騒ぎの調査を騎士団から命じられたらしいぜ
“スバル”: フェルトを連れていく必要性はあんま感じねぇけど、 それだけ大切に扱ってるってことなんだろうな
“スバル”: 最近は物騒だし、ラインハルトの傍にいりゃ安心だろ
“ロム爺”: …………
“スバル”: ロム爺?
“ロム爺”: ……よりにもよってあの『剣聖』がな それに隕石騒ぎときたか
“スバル”: ああ、フェルトはラインハルトのとこで、 アストレア領は現在隕石騒ぎの真っ最中だ
“スバル”: でもって、巷の噂じゃ隕石ってことになってるけど、 実際そこに落ちてるのは隕石じゃねぇときやがる
“ロム爺”: ほう…… して小僧、隕石でなければ、 いったい何が落ちておるというのじゃ?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_03

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■3話 タイトル:とてもとても 更新日:2021/08/20

ナレーター: ロム爺と久々に再会したスバルは、思いのほか話し込んでしまい、 拠点の宿屋へと急いでいた
“スバル”: ヤバい 思いのほか遅くなっちまった みんなを心配させないためにも、急がねぇと──
???: スバルさん
“スバル”: コリーナ! お前、無事だったんだな!
“コリーナ”: 冒険者であるコリーナの心配など不要です スバルさんこそ無事で何よりでした
“スバル”: ああ、俺は無事だ お前のおかげで色々うまくいったよ
“スバル”: というわけで、 今後はあんま危険なことに首を突っ込むんじゃねぇぞ!
“スバル”: それじゃな!
ナレーター: コリーナと再会を果たしたスバルだったが、 先を急ぐため、早々に別れを告げて立ち去ろうとする
ナレーター: だが……
“コリーナ”: 待ってください、スバルさん 重要な話があります
“スバル”: ……重要な話?
“コリーナ”: そうです とてもとても重要で長い話です
“スバル”: “とてもとても”ってのは“重要”の方だけだよね? “長い”の方にもかかってるとちょっと……
“スバル”: てか、“とてもとても”が付かなくても、 今は長い話は遠慮してぇってのが本音だ
“コリーナ”: そうですか……
“スバル”: くっ…… あからさまに落ち込まれると胸がいてぇ……
“スバル”: その長くて重要な話ってのは、歩きながらでも大丈夫か?
“コリーナ”: とてもとても長くて重要な話です
“スバル”: やっぱとてもとても長いのね!
“スバル”: けど……マジでお前には世話になった…… とはいえ……みんなが俺の帰りを……
“コリーナ”: ふふふ やはりスバルさんは、かなりのお人好しですね
“スバル”: ……はあ?
“コリーナ”: 冗談です スバルさんがとても急いでいる様子だったので、 コリーナはからかいたくなってしまったのです
“スバル”: お、お前な! そういうのは時と場合を選んでくれ!
“スバル”: けど、マジですげぇ重要な話ってなら、歩きながらだけど、 話は聞かせてもらう 遠慮はいらねぇから、話してみろよ
“コリーナ”: いえ、大丈夫です コリーナの目的は十分に果たせましたので
“スバル”: ……コリーナの目的?
“コリーナ”: それについてはお話すると、とてもとても長くなりますが、 よろしいですか?
“スバル”: 全然よろしくねぇ!
“スバル”: って、こうしている間にも、刻一刻と時間が……
“スバル”: とにかく、今はすげぇ急いでる
“スバル”: でも、お前とはちゃんと話がしたいし、 この前の礼だってちゃんとしたい
“スバル”: これからアストレア領ってとこに出発するんだが、 色々片付いたらまた王都に戻る予定だ
“スバル”: そんとき、改めてお前とは会いたいんだけど、 住所とか教えてもらえねぇかな?
“コリーナ”: 大丈夫ですよ、スバルさん コリーナとはまた会えますから
“スバル”: はあ?
“コリーナ”: コリーナは、スバルさんに協力すると決めました だから、また会えます では──
“スバル”: あ! 待ってくれ、コリーナ! って、いっちまいやがった……
“スバル”: とはいうものの…… あいつを追ってる場合じゃねぇよな、今は……
???: ──スバル!
“スバル”: え、エミリアたん!?
“エミリア”: よかった…… もう、なかなか戻らないからすごーく心配したんだから

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_04

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■4話 タイトル:五人目の候補者は? 更新日:2021/08/20

ナレーター: 買い出しに出たまま、なかなか戻ることができなかったスバルを エミリアが迎えにきたことで
ナレーター: 図らずもスバルは、エミリアと二人きりになっているのだった
“スバル”: ふふふふ
“エミリア”: もう、スバル、笑ったりしてすごーく不謹慎 私、怒ってるんだから
“スバル”: おっと、ごめんごめん
“スバル”: エミリアたんと二人っきりっていうシチュエーションを ゲットできた幸運に思わず顔が緩んじまってた
“スバル”: って、エミリアたん、怒ってるの?
“エミリア”: 当たり前です みんな、スバルのことすごーく待ってたんだから
“スバル”: それについては申し訳ねぇ 様々な出会いが俺の行く手を阻んだんだよ
“スバル”: しかもどれも貴重な再会で、無碍にはできなかったっつーか
“スバル”: 頭では急いで戻らねぇとって思ってたんだけど、 マジでそうもいかねぇ状況だったんだ
“エミリア”: 言い訳は聞きたくありません 約束の時間に遅れたりするのは、いけない事でしょ?
“スバル”: ホントごめん やむを得なかったとはいえ、 みんなの時間を無駄にしちまった
“スバル”: 戻ったら、まずはレムやフェネにちゃんと謝らねぇとな
“エミリア”: うん ちゃんと謝ってね 二人ともスバルのこと、すごーく心配してたもの
“スバル”: レムについてはそうだろうけど、 フェネについてはちょっと怪しい気がするな
“スバル”: あいつの場合、心配ってより、俺への文句を並び立ててた気がする
“エミリア”: そんなことないわ 真っ先にスバルのことを探しに出たのはフェネよ
“スバル”: え? マジで? ってことは、宿にいるのはレムだけ?
“エミリア”: うん スバルが戻ったとき、誰もいないわけにもいかないから、 レムには宿に残ってもらったの
“スバル”: そうか…… フェネの奴が真っ先に、ね…… そりゃ、あいつにも誠心誠意謝らねぇとな
“スバル”: んで、手始めに、エミリアたんにちゃんと謝らないとだ
“スバル”: 心配かけてホントごめん
“スバル”: あと、エミリアたんが怒ってるのに、 へらへらしちまったことも合わせて謝罪させてもらう
“エミリア”: わかりました 許してあげます
“エミリア”: それじゃ、スバル、急いで戻りましょう レムが首をながーくして待ってるわ
“スバル”: “首を長くして”って、きょうび聞かねぇな……
“エミリア”: スバル?
“スバル”: いやいや、なんでもないよ エミリアたん、急いで戻ろう
ナレーター: それからスバルとエミリアは並んで歩き始める
ナレーター: すでに日はだいぶ高く昇っていた
“スバル”: エミリアたん、あの……
“エミリア”: ん? どうしたの、スバル?
“スバル”: そういやエミリアたんには、もう一個 ちゃんと謝らないといけないことがあったなって思ってさ
“エミリア”: ……そんなことあったかしら?
“スバル”: 俺のせいで王選が無期限の延期になっちゃっただろ ホント申し訳ねぇ
“エミリア”: それについては、何度も謝ってるわよ、スバル
“スバル”: いやいや、何度謝っても、足りねぇっつーか 謝ったぐらいじゃ償えねぇっつーか
“スバル”: ホント、マジで申し訳ない
“スバル”: もし延期にならなきゃ、もうすでに始まってた感じなんだよね?
“エミリア”: ええっと…… たぶん、そうかもしれないわね
“エミリア”: 王選は五人の候補者が揃わないと始められなくて、 最後の一人がなかなか見つからなかったみたいだけど
“エミリア”: その最後の一人が見つかったみたいなの
“スバル”: 五人の候補者……
“スバル”: エミリアたんにクルシュさん、アナスタシアさんにプリシラ 確かに今わかってる候補者は四人だけだね
“スバル”: んで、最後の一人が見つかったってことは、 まさに始まる寸前のタイミングだった感じか
“スバル”: そんなときに俺って奴は……っ
“スバル”: けど、その最後の一人ってのは、いったい誰なんだ? 俺が知ってる人なのかな?
“エミリア”: それは私にもわからないわ
“エミリア”: 見つかったらしいって噂があるって、 ロズワールから聞いただけだもの
“スバル”: なるほど…… その五人目が誰かってことまでは、 噂にはなってなかったってことか
“スバル”: まぁ、ロズワールの奴は知ってて、 あえてエミリアたんには教えなかった可能性もあるけど
“エミリア”: それはないと思う 知っていたらきっと、ロズワールなら教えてくれるはずよ
“スバル”: へー エミリアたんはロズワールのこと、すごく信頼してるんだね
“エミリア”: うん 全部ロズワールのおかげだもの
“エミリア”: ロズワールが私を迎えにきてくれなければ、 私が王選に参加するなんてことなかったわ、きっと
“スバル”: となると、俺がエミリアたんに出会うこともなかったわけか……
“スバル”: あんな感じだけど、ロズワールの奴って、すげぇ重要人物だな
“エミリア”: 当たり前です ロズワールはすごーく偉いんだから
“スバル”: それはそうだね なんせ、宮廷魔術師の筆頭だもんな んでもって、広大な土地を治める領主でもある
“スバル”: 奇抜な外見のせいで、その事実を忘れがちではあるけど
“エミリア”: それはスバルだけです 私はいつも忘れてません ラムやレムだって、とっても尊敬しているように見えるわ
“スバル”: うぐっ…… 言われてみれば確かに俺だけな気が……
“スバル”: あれでも一応俺の雇い主なわけだし、 もうちょい敬意を払うように気を付けてみるよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_05

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■5話(中編) タイトル:現状整理 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──本当に申し訳ありませんでした!
“フェネ”: ……スバル氏、今、何か言いましたか? フェネにはまったく聞こえませんでした
“スバル”: えぇ!? 今のってかなり大きな声だったよね!
“フェネ”: スバル氏は口答えできる立場ですか? スバル氏の身勝手な行動により、どれだけ出発が遅れたことか
“フェネ”: さあ、しっかりとフェネの耳に聞こえるまで、 謝罪の言葉を繰り返してください
“レム”: スバルくん、レムにはしっかりとスバルくんの声が聞こえましたよ
“レム”: それに、スバルくんが徒に時間を無駄にしたとは思えません きっと深い訳があったはずです
“スバル”: そうなんだよ、レム! 奇跡的な再会が続いて、やむにやまれずってのが正直なところだ
“スバル”: もちろん、みんなにはすげぇ申し訳ないとは思ってるけども
“フェネ”: わかりました レム女史に免じて、先程の謝罪を受け入れましょう
“フェネ”: 何度も大声で謝罪を繰り返されても迷惑なだけですし、 これ以上貴重な時間を無駄にはできません
“スバル”: お前、マジでいい性格してんな 何度も繰り返せって言い出した張本人のくせしやがって
“フェネ”: スバル氏、何か言いましたか? なぜかフェネには、スバル氏の声がよく聞こえないようです
“スバル”: どうやら性格だけじゃなくて、耳までいいみたいで何よりだよ
“フェネ”: ありがとうございます フェネはあらゆる面で完璧です いい部下を持つことができ、スバル氏は幸せ者ですね
“スバル”: お、お前な……って、まぁ、いいよ 確かに今の俺は、言い返せるような立場じゃねぇしな
“スバル”: とにかく、遅れを取り戻すためにも、 一刻も早く出発しよう
“レム”: スバルくんの荷物も竜車に積み込ませてもらいました いつでも出発できます
“スバル”: サンキュー、レム! んで、エミリアたんもフェネもすぐに発って大丈夫だよな?
“エミリア”: ええ、私は大丈夫 すぐに出発しましょう
“フェネ”: 無論、フェネもです
“スバル”: よし! それじゃ、アストレア領に向かって出発だ!
“スバル”: ──というわけで、アストレア領までの長旅が スタートしたわけだけども
“スバル”: この時間を使って、色々とこれまでのことを整理したいと思う 構わないか?
“フェネ”: 無論です、スバル氏
“フェネ”: 時間とは明らかに有限 悠久の時を生きるフェネと違い、 限りある皆様にとってはなおのことでしょう
“フェネ”: 可能な限り有効に使うべきかと
“エミリア”: 私も整理しておいた方がいいと思う 色々としっちゃかめっちゃかで、こんがらがっちゃってるもの
“スバル”: “しっちゃかめっちゃか”って、 きょうび聞かねぇよな……
“スバル”: てな話は置いといて、レムはどうかな?
“レム”: はい 御者台からになってしまいますが、 スバルくんたちの話を聞かせてもらいます
“スバル”: よし、それじゃ決まりだな ということで、さっそく始めさせてもらうとするぜ
“スバル”: まず、『禁書』のページについてなんだが、 推測も含めてだけど、わかってることの整理だ
“スバル”: ページがマナを吸収する速度には個体差があって、 蓄えられるマナの量にも個体差があると推測できる
“スバル”: 蓄えられるマナの量が少ないページの『異形』は弱っちくて、 たくさんマナを蓄えられるページの『異形』は強力
“スバル”: つまり、吸収速度が早く、 容量もでかいページの『異形』が最悪の『異形』ってわけだ
“スバル”: でもって、フェネが発見できるのは、 ある程度その容量をマナで満たされた奴だから
“スバル”: 成長しきる前に最悪な『異形』を封じるってのは、 現時点じゃ難しい状況だ
“フェネ”: スバル氏 “難しい”というのは適切な表現ではありません
“フェネ”: ある程度成長したページでないと、 フェネには感知できないという現実を受け入れ
“フェネ”: “不可能だ”と断言することを強く進言します
“スバル”: わりぃ 俺の故郷じゃ、断言することを嫌うんだよ
“スバル”: ついその癖が出ちまったけど、フェネの言う通りだ 成長前に都合よく封じるなんてことはできねぇ
“スバル”: そして俺たちは、 これからどんどん強い『異形』と対峙していくことになる
“スバル”: これも紛れもない現実だ
“スバル”: 実際、俺たちが戦う『異形』はどんどん強くなってるし、 バーリエル男爵領で遭遇した『異形』は倒すことができなかった
“スバル”: 中にはマナの吸収が遅いだけの雑魚も混じってるかもしれねぇけど 相手がそんな奴だったらラッキーってだけだ
“エミリア”: これから向かうアストレア領の『異形』も、すごーく強そう
“スバル”: そうだね、エミリアたん しかも一匹は確実にすげぇ『異形』が混じってるはずだ
“スバル”: アストレア領に落ちた巨大な隕石ってのは、 きっと相当な『異形』を宿したページだろうからな
“エミリア”: でも、どうしてアストレア領に、『異形』は集まってるのかしら?
“スバル”: 確かに、そこ、気になるところだよね
“スバル”: 『禁書』のページが、意思を持って移動するってのは、 実際に目撃もしたし、間違いないと思う
“スバル”: けど、どうしてアストレア領なんだ? それについちゃ皆目見当がつかねぇ
“スバル”: とはいうものの、わからないことの話は、 色々整理がついてからにしよう
“スバル”: まずはしっかりと状況を理解して、 その後にじっくり考察するって感じでどうかな?
“エミリア”: うん、その方が良さそう スバル、状況の整理を続けて
“スバル”: ありがとう、エミリアたん それじゃ、状況の整理の続きなんだが……
“スバル”: 実は、すげぇ気になってることがある
“フェネ”: スバル氏、それはどのようなことでしょう?
“スバル”: 『異形』の登場パターンって言えばいいのかな?
“スバル”: ページに吸い込まれる場合と、 吸い込まれずにページから『異形』が出てくる場合についてだ
“スバル”: これについちゃ、 ページから『異形』が出てくるパターンが王道っぽいけど
“スバル”: 俺たちはページに吸い込まれて、 向こうで『異形』と対決したりしてる
“スバル”: この違いはなんだ?
“スバル”: まぁ、吸い込まれた先にいる『異形』の方が、 明らかに強い印象はあるけど
“フェネ”: それについては、多くのマナを蓄えながらも、 顕現するには足りていない状態だと推測できます
“スバル”: 確かにフェネがそんな風に言ってた記憶はあるけど、 それって本当か?
“スバル”: もしそうだとすると、もっとページに吸い込まれる事例が、 発生しててもおかしくないはずだろ
“スバル”: にもかかわらず、俺たちが経験した以外で、 そういう事態が発生した形跡がねぇ
“スバル”: これまでに結構な数の『異形』が ページから顕現したっていうのにだ
“スバル”: それにもう一個、俺には気になってることがあるんだ
“フェネ”: まだあるのですか? 状況の整理というより、 スバル氏が疑問をぶちまける場になっている気がするのですが
“スバル”: いやいや、大丈夫だ ちゃんと状況の整理につながるはずだから、 ちょっと聞いてくれ
“スバル”: 俺が気になってるってのは、 絵本に書かれたテキストについてなんだよ
“エミリア”: ……てきすと?
“スバル”: 文章って言えばエミリアたんにもわかるかな?
“スバル”: ほら、実際に顕現する絵の方ばっかりに注目しがちだけど、 ページには物語も書かれてるだろ
“フェネ”: スバル氏はページに書かれた物語のようなことが、 実際に起きているのではないかと言いたいようですが
“フェネ”: それについては以前、 ページの捜索にはあまり意味がないとお伝えしたはずです
“フェネ”: 書かれていた内容をフェネは覚えていません ページを手にして初めて、その内容を知るというのが現状です
“スバル”: それについては、そうかもしれない
“スバル”: けど、あのときと違って、 今は実際にいくつもページを集めてるじゃねぇか
“スバル”: これまで集めたページに書かれていた物語の内容と、 実際に起こった出来事の関係性を検証できるんじゃねぇかな?
“スバル”: んでもって、そうすることで、 『禁書異変』の全容が見えてくるかもしれないだろ
“エミリア”: 『禁書異変』の全容…… もしそうなれば、これからのことが色々予測できそう
“スバル”: そうなんだよ、エミリアたん これまでは後追いで 対処するしかないってのが正直なところだったし
“スバル”: 色々と未然に防ごうと思ったら、 あてどなく歩き回ってページを探すしかなかったけど
“スバル”: 『禁書』のページの目的って言えばいいのかな? 全容を把握できれば、もっと効率的に動ける気がするんだよ
“スバル”: クルシュさんやアナスタシアさんが協力してくれてるとはいえ、 リソースは限られてるし、効率アップは絶対に必要だと思う
“エミリア”: ええっと、スバル “りそーす”って“人手”ってことでいいのかしら?
“スバル”: おっと、すまねぇ 確かに説明が必要な言葉だったね
“スバル”: リソースには“人手”ってのも含まれてるけど、 時間とか資金とかそういうの含まれてるんだよ
“スバル”: こうやって各地を転々とするのだって、 人手だけじゃなくて時間もお金もかかってるだろ?
“スバル”: そういうことも含んでくれてる便利な言葉が“リソース”だ
“スバル”: まぁ、ロズワールの場合、 資金について心配する必要はないのかもしれないけど
“エミリア”: ううん、そんなことないわ お金は大切だもの
“エミリア”: それに、ホントにそう すごーくお金も時間もかかってるわ もっと効率良くやらないと
“スバル”: 俺の故郷の物語だと、一話一話で完結しているように見えて、 実は裏側に全体を通した物語が潜んでるケースがある
“スバル”: 一話一話が独立しているようで、 実は大きな物語の一部だって言えばいいのかな?
“スバル”: 『禁書』はある絵本作家の『遺作』で、 その人の過去の作品を全集的にまとめたみたいだけど
“スバル”: そういう可能性もあるんじゃないかって気がしてるんだよ
“フェネ”: つまり、物語の一つ一つは独立していながらも、 それらは密接に関係しているということでしょうか?
“スバル”: そうだ 『禁書』にまとめる物語の選定には、 何かしら作者の意図がある気がしてならねぇ
“スバル”: それに、アストレア領ってとこにページが集まってる理由だって、 そう仮定すると説明できる気がする
“エミリア”: 何かしら関連した内容の物語たちが、 アストレア領には集まってるってこと?
“スバル”: うん 実際、バーリエル男爵領で取り逃がしたページには、 続編があって
“スバル”: その続編と合流するために飛び去ったって話だったよね
“フェネ”: それについては推測をお伝えしたにすぎませんが──
“フェネ”: 実際に『しょうじきなノボン』は前後編に分かれたお話です
“スバル”: ……『しょうじきなノボン』?
“スバル”: それがあの『異形』がいたページに書かれた お話のタイトルなのか?
“フェネ”: 左様です フェネは記憶を失っておりますが、 ノボンの物語については思い出しました
“エミリア”: ……お話の内容を思い出せたのね?
“フェネ”: 左様です 先程偶然にも
“フェネ”: 『禁書』に収められた物語がそれぞれ関係しているという可能性に スバル氏が言及したことが原因かもしれません
“スバル”: なるほど…… あくまで可能性の一つだけど、言ってみた甲斐があったよ
“スバル”: んで、その『しょうじきなノボン』ってのは、 いったいどんなお話なんだ?
“スバル”: お前が思い出した内容ってのを、俺たちにも教えてくれ
“フェネ”: わかりました 『しょうじきなノボン』を簡潔にお伝えすると、 ノボンが“こわいまもの”から町を救おうとするお話になります
“フェネ”: 心優しいノボンは“こわいまもの”がくると町に知らせにいきます
“フェネ”: ですが、ノボンの風貌は醜く、しかも巨大でした
“フェネ”: 人々はノボンを恐れ、ノボンの話に耳を傾けません それどころか……
“エミリア”: それどころか、どうしたの? お話の続きがすごーく気になるわ
“スバル”: 粗方、殺されちまったとか、そういう感じなんじゃないかな 少なくともノボンにとっての明るい未来は想像できねぇ
“エミリア”: そ、そんな…… せっかく知らせにきてくれたのに……
“エミリア”: それで、町はどうなったの? “こわいまもの”は町にきたのかしら?
“フェネ”: それについては後編で語られるのですが……、 フェネが思い出したのは町の人々がノボンに行った蛮行までです
“フェネ”: 無論、ノボンへの狼藉を愚かな人間どもが悔いる内容になることは 容易に想像可能ですが
“スバル”: 愚かな人間ども、ね そういう言い方されると、 お前との距離を感じちまうよ
“フェネ”: 残念ながら人間は時として非常に愚かです 本当に度し難い程に
“スバル”: くっ…… 否定できねぇ…… じゃねぇと、大きな戦争を何度も繰り返したりしねぇもんな……
“スバル”: けど、それはそれとして、だ  バーリエル男爵領で戦ったのがそのノボンだったとして
“スバル”: 本当の強敵は物語の後編で登場するはずの “こわいまもの”の方なんじゃねぇのか?
“スバル”: 確かにあの『異形』は、俺たちに何かを必死に訴えてた
“スバル”: んで、あいつが伝えたかった内容は、 “こわいまもの”がくるってことで間違いないと思う
“スバル”: そして俺たちは物語通り、 ノボンの話に耳を貸さずに戦っちまったわけだ
“スバル”: となれば、この先に待っているのは、 “こわいまもの”に後悔させられる結果ってことになる
“スバル”: ちくしょう! もっと早くフェネが話を思い出してりゃ、 別の結果になってたかもしれねぇのに……
“フェネ”: 呆れて言葉もありませんね、クソ上司
“フェネ”: “こわいまもの”に後悔させられる前に、スバル氏には鉄拳にて フェネへの失言を後悔してもらうことにしましょう
“スバル”: 待て待て! 謝る! 謝るから、鉄拳に訴えるのだけは勘弁してくれ!
“レム”: フェネさん スバルくんへの暴力は容認できません この場にレムがいることをお忘れなく
“フェネ”: ……承知しました
“フェネ”: レム女史に免じて、スバル氏への鉄拳制裁は、 レム女史がいない場でさせていただきます
“スバル”: それ、全然承知してねぇし、免じてもないよね!
“スバル”: 目が届かない場所ならオッケーみたいな意味で、 レムは言ってないと思うし!
“レム”: フェネさんからお守りするために、 レムは片時もスバルくんから離れられなくなってしまいました
“レム”: スバルくん、今後は常にレムの傍にいてください
“スバル”: あれ!? 言葉の解釈を間違えてたのは俺の方だった!
“スバル”: いつもレムが傍でガードしてくれるのは嬉しいけど、 それじゃ根本的な解決にならないし
“スバル”: できればフェネとの和解を成立させたいかな!
“スバル”: ということでフェネ、ホントすまねぇ! 頼むから許してくれ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_06

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■6話 タイトル:物語との関係性 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車はアストレア領を目指し、ひた走る
ナレーター: その車内では、 現状を正確に把握するための話し合いが続けられていた
“スバル”: バーリエル男爵領で遭遇したノボンのお話から察するに、 やっぱ物語の内容は発生する事象と無関係じゃない気がするな
“スバル”: それどころか、すげぇ関係してる気がしてならねぇ
“スバル”: ちなみに、俺たちが最初に王都に向け出発したとき
“スバル”: 森で遭遇した『異形』のページは、腹ぺこなフェンルーが出てくる 『もりのフェンルー』って話だったよな?
“フェネ”: 左様です 異常な食欲を持ったフェンルーが故郷を追われ、 逃げ延びた森で生き物を食い尽くしてしまう物語です
“スバル”: 実際に俺たちはフェンルーと森で遭遇して、 その森には生き物の気配は感じられなかった
“スバル”: 恐らく……、あの森の生き物たちは、 フェンルーに食い尽くされちまってたんだと思う
“スバル”: んで、次は王都でクルシュさんと倒した 俺たちを吸い込んだページの『異形』についてだけど
“スバル”: そういや、どんな物語だったか、ちゃんと聞いてなかった気がする
“エミリア”: 確かにそう
“エミリア”: 初めてページの中に吸い込まれて色々大変だったもの ページに書かれたお話については確認している余裕はなかったわ
“エミリア”: それにガナクスでも…… 私が気を失っちゃってたから……
“スバル”: 確かにガナクスでも回収したページの内容を検めてないね
“スバル”: イバダで回収したページのお話は、 『こそどろゴッソ』だった記憶はあるけど
“スバル”: 王都とガナクスで回収したページについては、 俺たちはその内容を知らない
“スバル”: ってなわけでフェネ、 どんなお話だったか教えてもらえねぇかな?
“フェネ”: わかりました まずは王都で『禁書』に綴じた 『はぐれものハイゴン』についてお話しましょう
“フェネ”: 人嫌いのハイゴンは多くの人々が暮らす町を出て、 一人きりでの生活を始めます
“フェネ”: ですが、一人での生活はあまりにも寂しく、 いつしか訪れるはずもない来訪者を待ちわびるようになるお話です
“スバル”: なるほど だから多くの人々が暮らす王都に出没したってわけか
“フェネ”: そう解釈することは可能でしょう 物語と発生する事象が関係しているのであればですが
“スバル”: イバダで回収した『こそどろゴッソ』だって
“スバル”: 大商人のアナスタシアさんの手元に くるべくしてきた感じのお話だったし
“スバル”: もはやそこは疑う必要はないんじゃねぇかな
“スバル”: ちなみに、ガナクスで回収したページには、 どんなお話が書かれてたんだ?
“スバル”: その内容次第じゃ、推論の見直しが必要になるかもしれねぇ
“フェネ”: それについては、むしろスバル氏の推論を後押しする内容かと
“フェネ”: 『よこどりチャック』は、 人の大切なものを奪わずにはいられないチャックの物語です
“スバル”: 人の大切なもの……
“スバル”: つまり、俺の一番大切なものを、 チャックの奴が奪おうとしたってわけか
“スバル”: 納得も納得だ まさに物語通りの事象が発生してるじゃねぇかよ
“スバル”: やっぱページに書かれてる内容がわかると
“スバル”: そのページがいそうな場所とか 起こり得る出来事とかが推測できそうだな
“スバル”: とはいうもののフェネには肝心の記憶がねぇときてる……
“フェネ”: フェネへの度重なる失言 やはりスバル氏には鉄拳の制裁が必要だとフェネは判断します
“スバル”: ごめん、ごめん! 今の失言だったよ! この通り謝るから、鉄拳制裁は勘弁してくれ!
“エミリア”: ふふふ
“スバル”: どうしたの、エミリアたん? 突然笑い出したりして
“エミリア”: そういえば、スバルったら朝からフェネに謝ってばっかりだな って思ったら面白くなっちゃったの
“エミリア”: もちろん、笑ったりしたらいけないんだけど、 ホント、スバルったら朝から謝ってばっかりだもの
“スバル”: 確かに、朝の大遅刻に始まって、 今日の俺はフェネに謝ってばっかりだね
“スバル”: 遅刻の方は色々事情があるんだけど…… 失言の方は明らかに俺の配慮不足だ
“スバル”: 反省して今後はより一層発言には気を付けるよ
“スバル”: と、色々話すのはこの辺にして、 そろそろ休憩もかねて夕食にしないか?
“スバル”: さすがに腹が減ったし、御者台のレムも休ませてあげたい
“レム”: スバルくん、レムへのお心遣いありがとうございます
“レム”: レムはまだまだ大丈夫ですが、 地竜にはそろそろ休憩が必要です
“エミリア”: わかったわ、レム それじゃ、ここで休憩にしましょう
“レム”: ありがとうございます、エミリア様 それでは、竜車を止めさせていただきます
ナレーター: 竜車を止め、その場でしばし休憩をとるスバルたち
ナレーター: そして、再び竜車が動き出す頃には、 すっかり夜も更けているのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_07

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■7話 タイトル:最初にするべきことは? 更新日:2021/08/20

ナレーター: 必要最低限の休息で先を急ぎ、 アストレア領を目指したスバルたちは
ナレーター: 昨夜遅くにアストレア家の本邸宅があるハクチュリに到着した
ナレーター: そして、宿屋に泊まり、ベッドで久々に休むことができるのだった
“スバル”: ふぁ~ よく寝た~
ナレーター: ベッドを出たスバルが窓から空を仰ぐと、 日はだいぶ高く昇っている
“スバル”: 久々のベッドとはいえ、こりゃさすがに寝すぎたか? 女性陣は今頃……
“フェネ”: ──これはこれはスバル氏、ずいぶんと遅いお目覚めですね
“フェネ”: 道中大した役割を担ったわけでもないのに、 このような時間まで眠っていられる精神を疑ってしまいます
“スバル”: くっ…… 返す言葉がねぇ……
“スバル”: その様子だと、今日の行動については、 色々と打ち合わせ済みみたいだな
“レム”: スバルくんすみません
“レム”: スバルくんを起こそうかとも思ったのですが、 とても気持ち良さそうに眠っていたので……
“スバル”: 確かに気持ち良く眠ってたけども、 起こしてくれて全然構わないよ
“スバル”: 今度からは、遠慮なく叩き起こしてくれ
“フェネ”: わかりました 次回からは遠慮なくフェネがこの拳で──
“スバル”: いやいや、待て待て! 今のはレムに言ったんだ! フェネの場合は身の危険を感じるから、ある程度遠慮してくれ!
“フェネ”: “ある程度”とはどの程度でしょう?
“フェネ”: 骨折はやりすぎだが、打撲程度なら許容範囲というような解釈で、 問題ないでしょうか?
“スバル”: 問題大有りだ! 俺が怪我するような起こし方はNGで頼むよ!
“スバル”: とにかく、寝坊しといて申し訳ねぇけど、 みんなで話し合った内容を俺にも共有してもらっていいかな?
“スバル”: ──なるほど まずは三手に分かれて聞き込みか
“エミリア”: うん 色々と情報を集めないといけないの フェネが感知できるページはまだないみたいだから
“フェネ”: 申し訳ありません、エミリア女史
“フェネ”: 十分にマナで満たされていないのか、 現在のところフェネに感知できるページはありません
“エミリア”: ううん 謝らないで 感知できないなら仕方ないわ
“エミリア”: それに、落っこちた隕石の目撃情報とかが集まれば、 きっとページは見つかると思うの
“レム”: レムもそう思います
“レム”: 住民の方々は隕石だと思っていますが、 それらが『禁書』のページであることは間違いありません
“レム”: 隕石の目撃情報を集めることが、ページ回収の近道になるはずです
“スバル”: エミリアたんやレムの意見はもっともだけど、 俺からはまずはラインハルトに会うことを提案させてもらう
“スバル”: 隕石の目撃情報だって、 きっと領主であるラインハルトのところに集まってるはずだ
“フェネ”: 正気ですか、スバル氏? 我々は可能な限り隠密に動くべきです
“フェネ”: 領主であり騎士団にも属するラインハルト氏に協力を願い出れば、 様々な事情を隠したままとはいかなくなるでしょう
“フェネ”: まずは我々で事態の解決に動き、 ラインハルト氏を頼るのは最終手段とするべきです
“スバル”: お前の言いたいことはわかるよ、フェネ
“スバル”: けど、そういった色んな事情を込んだとしても、 やっぱまずはラインハルトだと思う
“フェネ”: エミリア女史、レム女史、そしてフェネで、 議論に議論を重ね導き出した行動予定です
“フェネ”: 眠っており、打ち合わせにも参加しなかったスバル氏が、 声高に己の提案を推奨することに違和感を覚えます
“スバル”: それについては申し訳ねぇ けど、まずはラインハルトに会うべきなんだよ
“スバル”: 前回俺たちはノボンに歯が立たなかった その事実をちゃんと受け入れるべきだ
“スバル”: もしかしたらここでは、 例の“こわいまもの”に出くわすかもしれねぇんだから
“レム”: 確かにラインハルト様のお力をお借りできれば、 “こわいまもの”も恐れる必要はないかもしれません
“スバル”: だろ? それにラインハルトは、色々打ち明けても大丈夫な相手な気がする
“スバル”: あいつが事実を知ったとしても、 エミリアたんが不利になるようなことにはならねぇ
“スバル”: それどころか、きっと俺たちの力になってくれるはずだ
“エミリア”: ……わかったわ、スバル まずはラインハルトに会いにいきましょう
“スバル”: ありがとう、エミリアたん! レムもそれで問題ないよな?
“レム”: はい
“レム”: スバルくんからの提案で、エミリア様も賛同しています レムが異を唱えるはずがありません
“スバル”: よし、それじゃ決まりだな!
“フェネ”: …………
“エミリア”: フェネ、どうしたの?
“フェネ”: いえ なんでもありません
“フェネ”: エミリア女史が、ラインハルト氏にすべてを打ち明けることを 問題視しないのであれば
“フェネ”: 確かにラインハルト氏に協力を要請することが、 最良の手かもしれません
“フェネ”: ただ、ここにいる全員で ラインハルト氏の元へ出向く必要はないかと
“フェネ”: 少々気になることがあります故、 本日フェネは単独で聞き込みと調査を進めさせていただきます

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_08

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■8話 タイトル:皮肉な結果 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──と、意気揚々と会いにきたはいいが、 まさかラインハルトの奴が不在とはね
“エミリア”: 仕方ないわ、スバル ちゃんと約束していなかったもの
“スバル”: やっぱ領主様だけあって、ラインハルトはご多忙みてぇだな
“スバル”: エミリアたん、レム、すまなかった 完全に俺の提案が裏目に出ちまったよ
“レム”: いえ、ラインハルト様が不在だとわかっただけでも、 十分な成果だとレムは思います
“レム”: もしものときにラインハルト様を頼るのは難しいと わかっているのといないのとでは大違いですから
“スバル”: 確かにラインハルト込みで色々考えるのは、 やめた方がよさそうだな
“スバル”: あいつの力は借りられない前提で俺たちは動こう
“エミリア”: でも、フェルトちゃんのことはどうするの? お屋敷から逃げ出しちゃったんでしょ?
“スバル”: うぐっ……!
ナレーター: エミリアの問いに、スバルは頭を抱える
ナレーター: スバルの目論見がはずれ、ラインハルトが不在だっただけでなく
ナレーター: ラインハルトの不在を狙って、 フェルトが屋敷を抜け出してしまったのだ
ナレーター: ラインハルトの力を借りるつもりで訪れたはずの アストレア家の本邸だったが
ナレーター: 皮肉にも、困り果てた屋敷の使用人たちから、 脱走したフェルト探しの手伝いを頼まれるという
ナレーター: 当初の目論見とは真逆の結果になってしまっているのだった
“スバル”: ホント、マジすまねぇ
“スバル”: けど、あいつを放っておくわけにもいかないし、 探すしかない気がしてる
“エミリア”: そうね 『異形』とか『変異体』とかが現れたら大変だもの まずはフェルトちゃんを探さないと
“スバル”: くっ…… 結果的に、別行動したフェネが正解ってことになっちまったな
“スバル”: あいつの勝ち誇った顔が目に浮かぶよ
“レム”: スバルくん、そんなことありません
“レム”: スバルくんがラインハルト様に会うことを提案しなければ
“レム”: フェルト様が逃げ出しているという事実を レムたちは知ることができませんでした
“レム”: 『異形』や『変異体』の脅威がある状況で、 フェルト様をお一人にしているのは危険です
“レム”: スバルくんは決して、間違った提案をしたわけではありませんよ
“スバル”: レム…… 色々ありがとな けど、確かにその通りだ やっちまったことをあれこれ後悔しても仕方ねぇ
“スバル”: フェルトを一人にはしておけねぇし、 まずはフェルトを全力で探そう
“レム”: すみません…… 広範囲を探すために、 本来であれば竜車を出す場面かもしれませんが
“レム”: 道中かなり無理をさせてしまったので、 今日はゆっくり地竜を休ませる必要があります
“エミリア”: 私は森育ちだし、歩くのは全然平気よ
“スバル”: ああ、俺も平気だ
“スバル”: なんせ今朝はゆっくり休みすぎちまったし、体力は有り余ってるよ だからレム、気にしないでくれ
ナレーター: それからスバルたちは、徒歩でフェルトを探し始める
ナレーター: だが残念ながら、フェルトの姿はどこにも見当たらないのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_09

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■9話 タイトル:オットー再び 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──ダメだ フェルトの足取りがまったく掴めねぇ
“エミリア”: フェルトちゃん、大丈夫かしら? 今頃、寂しい思いをしてなきゃいいけど……
“スバル”: それについては、きっと大丈夫だよ
“スバル”: むしろ息苦しい屋敷から出られて、のびのびしてるんじゃないかな 寂しいだなんて思っちゃいないはずだ
“レム”: ですが、今は平時ではありません
“レム”: 解放感に満たされているフェルト様には申し訳ないですが、 一刻も早く発見して、お屋敷にお戻りいただかないと
“スバル”: ああ、そうだな それに、俺たちの目的はあくまで『禁書』のページ探しだ
“スバル”: やむを得ずフェルトを探すことになっちまったけど、 ページもちゃんと探さねぇと
“スバル”: 現時点じゃ、そっちの方は 完全にフェネに任せっきりになっちまってる
???: な、ナツキさん!?
“オットー”: ナツキさんがどうしてここに……?
“スバル”: いいところに現れたな、オットー! 実は人手がほしいって思ってたとこなんだよ!
“オットー”: ひ、人手がほしいって僕に何をさせるつもりですか!?
“オットー”: ようやく隕石が落ちたらしい場所がわかったんです 僕は急いでそちらに向かわせてもらいます
“スバル”: 待て待て! 友人が困ってるのに、放っておくつもりか? ここは率先して手伝うべきだろ!
“オットー”: そんなこと一方的に言われても困りますよ!
“オットー”: 僕は隕石を取りに遥々きたんです みすみすその機会を逃すわけにはいきません
“スバル”: …………
“オットー”: な、ナツキさん? そんな風に黙られると、なんだか不安になってしまうのですが……
“スバル”: オットー、お前、隕石が落ちた場所がわかったって言ったな?
“オットー”: は、はい ここハクチュリの南 フランダース方面だと聞きました
“スバル”: ……確かに今、フェルトは危険に晒されている
“スバル”: だがそれは、『禁書』のページのせいで 『異形』や『変異体』が出没するかもしれないからだ
“スバル”: 特に強力な『異形』を宿したページの存在はとてつもない脅威 一刻も早くなんとかしないとならねぇ……
“オットー”: 突然何を言い出すんです? 僕には何のことだかさっぱりわからないのですが
“スバル”: お前にはわからなくていいんだよ オットーは俺たちの足になってくれさえすればそれでいい
“オットー”: ホントに酷いですね!
“オットー”: さすがの僕だって、 なんの事情もわからずに、足になったりはしませんよ!
“オットー”: ど、どうして僕が……
“スバル”: ははは あそこで俺たちに会ったのが運の尽きだったな 詳しい事情は話せねぇんだけど、精一杯俺たちに協力してくれ
“オットー”: はぁ…… 詳しい事情も教えられないまま、 協力させられる身にもなってください
“エミリア”: ごめんなさい、オットーくん でも、竜車に乗せてもらえてすごーく助かったわ
“レム”: 感謝します、オットー様 この御恩は必ずお返しいたします
“スバル”: そうだぞ、オットー ちゃんとこの借りは返す だから、今は黙って俺たちに協力してくれ
“スバル”: お前の協力が、一人の女の子に降りかかる火の粉を 未然に防ぐ結果を導くはずだ
“スバル”: それに、俺たちの本来の目的にも直結してるんだよ
“オットー”: ですが、詳しい事情は話してもらえないんですよね?
“スバル”: それについては申し訳ねぇ
“スバル”: お前になら話してもいいような気もするんだが、 もう少し検討する時間をくれ
“スバル”: それに、知らない方が幸せってことだってあり得るだろ?
“オットー”: わかりました それについてはもう聞きません ナツキさんが話したくなったらで大丈夫です
“オットー”: それから、メイザース辺境伯に 僕との取引を拡大するようお願いしてください
“オットー”: ナツキさんのおかげで、 取引させていただけるようにはなりましたが
“オットー”: まだまだ規模は小さいんです
“オットー”: もう少し大きな取引をさせていただけると……
“スバル”: わかった 全然問題ねぇよ、そんなこと そうだよな、レム?
“レム”: はい レムからもロズワール様にお願いさせていただきます
“オットー”: ありがとうございます! 俄然やる気が出てきましたよ、僕は!
“スバル”: やれやれ、現金な奴だな
“スバル”: けど、この先には大きな危険が待ち構えてる可能性がたけぇ もしものときは遠慮なく逃げてくれよ、オットー
“スバル”: 俺たちと違って、お前には命を張る必要なんてねぇんだから
“オットー”: 命を……張る? その表現は大げさに言ってるだけですよね?
“スバル”: だといいんだけど、実際割と命懸けだ 結構な危険が待ち構えているのは間違いねぇ
“オットー”: ええっと…… 僕は隕石を拾いにいくだけのつもりだったのですが……?
“スバル”: 十中八九その隕石が危険の源だよ ただの隕石じゃねぇ可能性が高いんだ
“オットー”: なるほど……
“オットー”: そういう予感はありましたが、やはり一攫千金を狙うためには、 相応の危険が伴うということですね
“スバル”: まぁ、そういうことだ
“スバル”: けど、見事隕石を発見できりゃ、大きな取引だけじゃなくって 報奨金的なものもロズワールからもらえると思う
“スバル”: 危険に見合う成果は期待できるんだが……
“スバル”: 取引も報奨金も命あってこそだ もしものときは無茶しないでくれよ、オットー

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_10

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■10話(中編) タイトル:現場に到着 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちを乗せたオットーの竜車は、 ハクチュリを離れ南へと走り続けている
“スバル”: オットー、俺たちは今、 フランダースってとこに向かってるんだよな?
“オットー”: いえ、正確にはフランダースではありません
“オットー”: アストレア領の南にある有名な都市がフランダースだったので、 名前を出させてもらいました
“レム”: スバルくん、フランダースは地竜発祥の地として有名な場所です 地竜の都と呼ばれています
“スバル”: 地竜の都、ね できれば寄り道して色々見て回りたい気持ちはあるけど……
“エミリア”: スバル、私たちは遊びにきたわけじゃないわよ
“スバル”: エミリアたん、わかってるよ
“スバル”: もしそのフランダースを観光でもしようもんなら、 フェネの奴からなんて言われるかわからねぇ
“スバル”: 確実にあいつは鉄拳制裁とか言い出すだろうな
“エミリア”: ……でも、そういえば、フェネに内緒できちゃったけど、 よかったのかしら?
“エミリア”: ページを見つけてもフェネがいないと『禁書』に封じられないわ
“レム”: それについてはレムも気になっていました スバルくんなりの考えがあると思い黙っていましたが
“スバル”: フェネについては考えたさ、俺も
“スバル”: けど、俺たちの竜車がしばらく使えない以上、渡りに船な オットーの登場を無駄にするわけにはいかねぇって思ったんだ
“スバル”: それに、オットーが隕石が落ちた場所の情報をゲットできた ってことは、フェネだってその情報を得ているかもしれないだろ?
“スバル”: あのままハクチュリで探すより、 現場に向かった方がフェネに会える可能性は高い気がしてるんだよ
“スバル”: 実際ガナクスでもそうだったし
“レム”: なるほど、やはりスバルくんは、色々考えていたんですね 確かにフェネさんは、すでに現場へと向かっているかもしれません
ナレーター: やがてオットーの竜車は、 隕石が落ちたと思われる場所に到着した
“スバル”: これはこれは、いかにもって場所だな
“レム”: はい えぐられた大地が衝撃の強さを物語っています
“オットー”: どうやら、僕が仕入れた情報は間違っていなかったみたいですね
“オットー”: ……とはいうものの、 すでに隕石は誰かが持ち去ってしまった後のようです
“スバル”: まぁ、そう見えるわな 確かに隕石のいの字も見当たらねぇ
“スバル”: けど、それは俺らにとって想定通りなんだよ そもそもここに落ちたのは隕石じゃねぇしな
“オットー”: ナツキさん、それはどういうことでしょう?
“オットー”: みなさんの会話から、なんとなく『禁書』のページというものが、 ここに落ちたのではないかと推測はできますが
“オットー”: それがどういうものなのか、僕にはさっぱり……
“スバル”: おっ! 色々察しがいいな、オットー 確かにここに落ちたのは『禁書』のページだ
“スバル”: だが、お前は悲観する必要はねぇよ
“スバル”: 『禁書』のページには十分な価値があるし、 発見して一攫千金なのは隕石と一緒だ
“オットー”: それで僕は、その『禁書』のページとやらを 探せばいいんですか?
“スバル”: そうだ おどろおどろしい絵が描かれた紙切れを探してくれ
“スバル”: 元々は絵本の一ページなんだが、 とても子どもたちが好むとは思えねぇ絵柄なのが特徴だ
“エミリア”: でも、どうやらページもここにはなさそう…… 紙だし、風に飛ばされちゃったのかしら?
“スバル”: その可能性はあるだろうね
“スバル”: とにかく、ここに落ちたのは間違いねぇ 手分けしてこの辺を探してみよう
ナレーター: スバルがそう提案し、 それぞれにページ探しを開始しようとしたそのとき──
ナレーター: 森の中から一人の少女が姿を現すのだった
“スバル”: フェルト!
“フェルト”: よう、兄ちゃん まさかこんなとこで再会するとはな
“スバル”: お、お前がどうしてここに?
“フェルト”: なんかおもしれーもんが、ここに落っこちたんだろ? ちょっと見学にきてみたんだよ
“フェルト”: ラインハルトの奴が、屋敷を突然出ていったのも、 ここに落ちたもんが関係してるんじゃねーのか?
“スバル”: ラインハルトが……?
“スバル”: いや……けど……確かにそうかもしれねぇ あいつが屋敷にいなかったのも、だとしたら納得だ
“スバル”: すでにこの場所はラインハルトが調査済みで、 ページについてもあいつが回収しちまった可能性がたけぇ
“レム”: 詳細に調査したわけではないので確実なことは言えませんが、 確かにここにはページは落ちていないように見受けられます
“フェルト”: こっちにきてからずっと、あいつは色々と忙しくしてたよ おかげでアタシは逃げ出せて助かったんだけどな
“スバル”: 忙しく? 例えばどんなことでだ?
“フェルト”: 詳しくは知らねーよ けど、ここに落っこちたもんが、 隕石じゃねーってことぐらいはアタシにも察しがついたぜ
“フェルト”: この辺じゃ結構な数の流れ星が目撃されたみてーだけど、 肝心の隕石は一つも発見されてねーしな
“フェルト”: 代わりに妙な絵が描かれた紙切れが、 たくさん見つかってるらしいぜ
“オットー”: 妙な絵……? ナツキさんが言っていた例のページのことでしょうか?
“スバル”: ああ それで間違いねぇ
“スバル”: 実際俺たちがこっちにきたのも、 ある人がその情報を教えてくれたからだ
“オットー”: なるほど、だからナツキさんたちは、 アストレア領にきていたわけですか……
“フェルト”: なあ、兄ちゃん どうしてアタシはこんな竜車に乗せられてんだ?
“スバル”: いいじゃねぇか こんな竜車でも歩かなくて済むんだからさ
“オットー”: “こんな竜車”で悪かったですね! 嫌ならさっさと降りて歩いてください!
“スバル”: 待て待てオットー、子どもの戯言じゃねぇか 真に受けてイラついてんじゃねぇよ
“フェルト”: はぁ? 兄ちゃん、今なんて言った?
“フェルト”: その“子ども”ってのがアタシのことだとしたら、 アタシは兄ちゃんを許さねーぜ
“オットー”: 僕が怒りを覚えたのは、 どちらかというとナツキさんに対してです
“オットー”: さんざん人の竜車に乗っておきながら、 ナツキさん、“こんな竜車”って言いましたよね?
“スバル”: うぐっ…… 色々と立場が危うい感じだな、俺
“エミリア”: スバルの自業自得です “こんな竜車”なんてオットーくんにすごーく失礼
“エミリア”: それに、スバルにはフェルトちゃんのことを 子ども扱いできないと思うの
“エミリア”: スバルの方がよっぽど子どもっぽいところがあるもの
“レム”: そういう子どもっぽいところが、スバルくんの魅力でもあります
“スバル”: はは…… レムも“子どもっぽい”ってのは否定してくれないんだな
“スバル”: とにかく、フェルト、オットー、すまなかった
“スバル”: フェルトにはこのまま同行してほしいし、 オットーには竜車を降りろなんて言わないでほしい
“オットー”: いえ、僕の方こそすみません ちょっと言いすぎました
“オットー”: もちろんこのまま竜車に乗っていてください “こんな竜車”で申し訳ないですが
“スバル”: いやいや、だからあれは……
“スバル”: 心の中ではちゃんといい竜車だって思ってるよ 面と向かって褒めるのが照れくさいから言わないだけでさ
“フェルト”: わかったぜ、兄ちゃん このまま竜車に乗っててやるよ
“フェルト”: 足には自信があるし、 アタシとしちゃ、別に歩いても構わねーんだけどさ
“レム”: その……フェルト様…… お屋敷の方々がフェルト様のことを心配しております
“レム”: できましたらこのまま、 こちらの竜車でお屋敷までお戻りいただきたいのですが
“フェルト”: 勘弁してくれよ、姉ちゃん アタシはあの屋敷には戻らねーぜ
“フェルト”: 兄ちゃんが情けねーツラするから、 しばらく一緒にいてやるってだけだ
“レム”: ですが……
“スバル”: まぁ、しばらくはいいんじゃねぇかな こうして一緒にいれば、何かあっても対処できるだろ?
“スバル”: 無理強いして逃げ出された方が、厄介なことになっちまう
“スバル”: とにかく、フェルト 隕石の代わりに発見されてるっていう 例の紙切れは、すげぇ危険なものなんだ
“スバル”: 屋敷に戻ることを無理強いはしねぇけど、 俺たちが安全だって判断するまでは、勝手な行動は控えてくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_11

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■11話 タイトル:気休めはよしてくれ 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車がアストレア家本邸に到着する頃には、 すっかり日は沈んでしまっているのだった
“フェルト”: ──おいおい待て待て、兄ちゃん! アタシは戻らねーって言ったはずだぜ!
“フェルト”: どうしてこんな場所にアタシは連れてこられてるんだ?
“スバル”: 安心してくれ、フェルト 屋敷に戻れなんて言うつもりはねぇよ けど、お前が行方不明のままってわけにはいかねぇだろ?
“レム”: お屋敷の方々はとてもフェルト様のことを心配されていました
“レム”: お屋敷にお戻りになる、ならないというお話の前に、 フェルト様が無事であることはお伝えするべきだと思います
“エミリア”: 私もその方がいいと思うの
“エミリア”: フェルトちゃんが無事でいて、 私たちと一緒にいるってことはちゃんと伝えておかないと
“フェルト”: わかった けど、アタシの無事を伝えるだけだかんな アタシを騙して、ラインハルトの奴に引き渡すなんてナシだぞ
“スバル”: ああ、わかってる
“スバル”: お前がどう思ってるかは知らねぇけど、 俺としては、お前とは良好な関係を築きたいと思ってる
“スバル”: そのために信用は不可欠だ わざわざ大切な信用を失うような真似はしねぇよ
“フェルト”: アタシとしても、兄ちゃんとはよろしくやりてーよ なんか兄ちゃんのことは放っておけねーんだ
“スバル”: うぐっ…… なんかそれ、立場が逆な気がしてならないんだが 常識的に考えて、俺がお前を心配する側だよね?
“フェルト”: あはは 兄ちゃんがアタシを? そりゃ、いったいなんの冗談だよ
“スバル”: 冗談じゃねぇよ! こちとら大真面目だ!
???: スバル氏が他人の心配とは、 しばらく会わないうちにえらく出世したものですね、クソ上司
“スバル”: “しばらく会わない”ってのは大げさだろ お前と別行動してから一日も経ってねぇよ
“スバル”: って、しれっと会話に加わってるけど、 どうしてお前がここにいるんだ?
“フェネ”: 皆様を宿でお待ちしておりましたが、 なかなかお戻りにならないので、様子を見にきたのです
“エミリア”: ごめんなさい、フェネ 色々あって戻るのが遅れちゃったの
“フェネ”: いえ、エミリア女史が謝罪する必要はありません
“フェネ”: そのようなことになったのは、大方…… いえ、すべてスバル氏の責任だとフェネは推測します
“フェネ”: スバル氏が厄介事の数々を引き起こし、 結果皆様のお戻りが遅れてしまったのでしょう
“スバル”: 待て待て、そういう決めつけはやめてくれ そういうケースが多いのは認めるけど、今回はそうじゃねぇよ
“フェネ”: 本当にそうでしょうか?
“フェネ”: それならばなぜ、 皆様は冴えないオットー氏の竜車に乗っているのです?
“フェネ”: フェルト女史が一緒にいる点も、フェネには腑に落ちません
“オットー”: そこで“冴えない”って言う必要あります!? 確かにできる男の雰囲気がないことは自覚してますけど!
“オットー”: 僕は偶然、街でナツキさんたちに会って、 みなさんを乗せることになったんです
“オットー”: フェルトさんとは隕石が落ちたっていう南の森で会いました
“フェネ”: ……街で偶然? ……南の森?
“フェネ”: 皆様はスバル氏の提案で、 ラインハルト氏に会いに向かわれたという記憶が……
“フェネ”: それがどうしてそのようなことになってしまったのでしょう?
“フェネ”: ラインハルト氏との話し合いが長引いて、 この時間までかかったというのであれば
“フェネ”: 皆様がこの場所にいるのも納得なのですが、 何から何までフェネには理解不能です
“スバル”: フェネ、ややこしくてすまねぇ 今朝ここを訪れたときは、ラインハルトが不在だったんだよ
“スバル”: それどころか、フェルトの奴が逃げ出したってわかって、 俺たちはフェルトを探すことになったんだ
“スバル”: んで、無事に見つかったから、 とりあえずフェルトの無事を伝えにきたってわけだよ
“フェネ”: なるほど…… やはりスバル氏を中心に、色々と厄介な事があったわけですね
“スバル”: 俺を中心にってな、お前は何がなんでも俺のことを──
“レム”: スバルくん! あれを見てください!
ナレーター: 血相を変えたレムが、スバルの発言を制し夜空を指さす
ナレーター: 彼女が指さした方向を見ると、 何枚ものページが空高くに舞い上がっているところだった
“スバル”: あ、あれは『禁書』のページ! このままじゃどこかに飛び去っちまう!
“スバル”: エミリアたん! レム! ページをなんとか!
“エミリア”: ごめんなさい、スバル あの距離だとどうすることもできないわ
“レム”: スバルくん、申し訳ありません レムにもどうすることも……
“スバル”: フェネ! お前なら!
“フェネ”: 無論、フェネにもできかねます とても残念ではありますが、打つ手はありません
“スバル”: いやいや、諦めるのはまだだ! オットー、至急あのページを追いかけてくれ!
“オットー”: 無茶言わないでください! フルフーは 持久力には自信がありますが、足は決して早くないんです
“オットー”: 飛び去るアレを追うなんてとてもできませんよ
“スバル”: クソっ! やっぱこの辺に落ちたページは、 ラインハルトの屋敷に集められてたんだな!
“スバル”: あいつと会えてりゃ、 ああなる前に『禁書』に封じられたかもしれねぇってのに!
“レム”: スバルくん、ページは飛び去ってしまいましたが、 『異形』や『変異体』が暴れ回る事態は回避できました
“スバル”: 確かにそれはそうかもしれねぇけど、 そのリスクが他の場所に移動しただけだ
“スバル”: ここでは被害が出なくても、 他の場所で『異形』や『変異体』が暴れ回るかもしれねぇ
“フェネ”: あのページたちからは、反応を感じ取ることはできませんでした
“フェネ”: ですので、そのような事態が起こるのには、 まだ時間の猶予があると推測できます
“スバル”: 気休めはよしてくれ! だからって放っておくわけにはいかねぇだろ!
“フェネ”: 無論です 放置するという選択肢はありません
“フェネ”: ですが、フェネはフェネなりに気を遣ったのです スバル氏があまりにも取り乱していたので
“フェネ”: それを“気休めはよしてくれ”とは、いやはや……
“フェルト”: アタシには詳しい事情はわからねーけど、 なんか今の兄ちゃんはすげーかっこ悪かったぜ
“フェルト”: 青髪の姉ちゃんも、フェネって精霊も、 明らかに兄ちゃんを気遣ってくれてたじゃねーか
“スバル”: うぐっ…… フェルトに諭されるとか、俺もまだまだだな……
“スバル”: 確かに取り乱しても仕方ねぇ こういうときこそ冷静にだ
“レム”: そうです、スバルくん レムが知ってるスバルくんは、 どんなときでも冷静に光明を見出せる人です
“スバル”: かっこ悪く取り乱した後に、 そんな風に言われるとすげぇこそばゆいけど
“スバル”: レムを幻滅させないように、色々善処するつもりだ
“スバル”: あのページたちが悪さをする前に、 なんとしても『禁書』に封じねぇとな
“レム”: はい スバルくんにならきっとできると思います レムはそう信じています

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_12

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■12話 タイトル:飛び去ったページを追え 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちはアストレア家本邸の使用人に、 フェルトが無事だということだけを伝え
ナレーター: すぐにページたちが飛び去った南へと竜車を走らせるのだった
“フェネ”: よかったのですか? 結局ラインハルト氏には会っていませんが
“スバル”: イレギュラーなことが起きちまったんだ 仕方ねぇだろ 悠長にラインハルトの帰宅を待つわけにはいかねぇ状況だ
“フェネ”: ですが、今朝から不在ということは、 さすがにそろそろ戻られる頃なのでは?
“スバル”: だとしてもだ 今は一秒だって無駄にしたくねぇ
“スバル”: それに、悔しいけど、お前が今朝言った通りな気がする ページの回収は可能な限り秘密裏に行うべきだ
“スバル”: ページがあいつの屋敷に集められてた事実を考えると、 なおさらそうするべきだって気がしてるよ
“スバル”: むしろ今は、あいつの屋敷から飛び去ってくれて、 ラッキーだったとさえ思ってるぐらいだ
“スバル”: ラインハルトが近衛騎士団っていう公的な組織に属してる以上、 あいつの元に集まったページが
“スバル”: すんなりと俺たちの手には、 渡らねぇことだって十分にあり得るからな
“スバル”: ユリウスのときは、アナスタシアさんがうまくやってくれたけど、 ラインハルトの場合はそうもいかねぇ
“スバル”: あいつの立場的には、怪しげなページは王都に持ち帰って、 騎士団に提出するのが筋だろ
“フェネ”: それについても、まさにフェネは今朝指摘させていただきました
“スバル”: ああ、そうだな だから今朝お前が言った通りだって言ったんだ
“スバル”: けど、オットーにも会えたし、家出したフェルトも発見できたし、 結果的には俺の提案が間違ってたわけじゃねぇよ
“スバル”: 少なくともレムはそう言ってくれてる
“レム”: はい スバルくんを気遣っているわけではなく、 レムは心からそう思っています
“レム”: スバルくんの提案を受け入れたことに、 後悔する要素は一つもありません
“スバル”: “一つも”ってのは、ちょっとよく言いすぎな気はするけど、 今朝は二手に分かれて正解だった気がするぜ、俺も
“スバル”: こうやって便利な足も手に入ってるしな
“オットー”: 完全に僕は足扱いですか!?
“オットー”: 十分地竜も休めたと思いますし、 みなさんの竜車だってもう使えますよね!
“スバル”: それについてはそうかもしれねぇけど、 レムは俺らにとって貴重な戦力だ
“スバル”: 運転手兼戦闘員みたいな過重労働は、できれば回避したい
“レム”: スバルくん…… レムを気遣っていただき、ありがとうございます
“オットー”: レムさんへの気遣いの半分でいいですから、 僕のことも気遣ってほしいのですが!
“スバル”: おいおい、どうして俺が、 男のお前を気遣ってやんなきゃなんねぇんだよ?
“オットー”: あ、あなたって人は……
“エミリア”: こら、スバル オットーくんのことも気遣ってあげなきゃダメでしょ
“エミリア”: オットーくんが竜車に乗せてくれて、すごーく助かってるもの
“スバル”: それについては、ロズワールとの取引を拡大するってことで 話がついてた気が……
“スバル”: そうだよな、オットー?
“オットー”: はい、確かにそうでした
“オットー”: メイザース辺境伯との取引拡大に、 ページとやらを発見できた際の報奨金
“オットー”: 僕がみなさんに協力する理由は十分にありましたね
“オットー”: 少なからず関わってしまった以上、 収穫なしなんて結果は僕としても避けたいです
“オットー”: 責任を持って、 ページとやらが飛び去った先にみなさんをお連れしますよ
“スバル”: 頼んだぞ、オットー 口では色々言ってるけど、俺はお前に期待してるんだよ
“スバル”: 協力に見合うだけの報酬を約束するから、 その期待に応えてくれ
“オットー”: ナツキさん…… ナツキさんは僕に期待してくれてたんですね……
“オットー”: 報酬のためじゃないと言えば嘘になりますが、 男としてその期待を裏切るわけにはいきません
“オットー”: 幸いフルフーは長距離の移動に特化してますし、 寝る間を惜しんで竜車を走らせていただきます

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_13

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■13話 タイトル:微弱な反応 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車は、 オットーの頑張りもあって夜通し走り続けた
ナレーター: そして、朝を迎える頃には、地竜の都フランダースのさらに南、 ハイクララ高原へと差し掛かっていた
“フェネ”: ──スバル氏
“スバル”: フェネ、もしかして?
“フェネ”: はい、微弱ですが反応です 飛び去ったページたちは、ここからそう遠くない場所に存在します
“スバル”: そうか…… それは朗報ではあるんだけど、 同時にページがある程度マナを吸っちまった証でもあるんだよな
“フェネ”: 左様です すぐにどうこうなるわけではありませんが、 『異形』が顕現するまであまり猶予はありません
“スバル”: とにかく、一旦竜車を止めよう マジで夜通し走り続けてくれてたみたいだしな
“スバル”: というわけで、竜車を止めてくれ、オットー
ナレーター: オットーが竜車を止め、スバルたちは竜車を下りる
“スバル”: オットー、ご苦労様 お前は少しここで休んでてくれ
“オットー”: わかりました 僕とフルフーはしばらくここで休ませていただきます
“オットー”: それでみなさんは、これからページとやらを探すのでしょうか?
“スバル”: ああ、そうさせてもらう
“スバル”: フェネがページの反応を感知したんだ その反応を追えばページを見つけられるはずだ
“スバル”: 厄介な事になる前に、ページを封じねぇと
“エミリア”: フェネ、ページの反応はどの辺にあるのかしら?
“フェネ”: エミリア女史、 飛び去ったすべてのページを感知できているかはわかりませんが
“フェネ”: 多くのページの存在を感知しています ここは手分けして探すべきかと
“スバル”: いや、その意見には賛成できねぇ
“スバル”: いつ『異形』や『変異体』が姿を現してもおかしくねぇ状況だ 戦力の分散は避けたい
“スバル”: それにガナクスでは、ページの影響で、 フルフーが暴走するってことも起きたんだよ
“スバル”: 幸い正気に戻ってくれたからよかったけど、 休んでるオットーやフルフーを完全に放置するわけにはいかねぇ
“フェネ”: なるほど……
“フェネ”: 確かにすぐに『異形』を顕現させるページはなさそうですが、 ページの影響で『変異体』が出る可能性は否定できません
“フェネ”: スバル氏の提案通り、 あまり戦力は分散しない方が賢明かもしれません
“スバル”: とはいうものの、そうしたらそうしたで、 必然的にページを回収する効率は落ちちまうわけだ
“レム”: フェルト様もいます ここは安全を最優先に考えるべきだとレムは思います
“フェルト”: おいおい、なんだかアタシが足手まといみてーじゃねーか アタシは自分の身ぐらい自分で守るぜ、姉ちゃん
“スバル”: そこいらのチンピラを相手にするのとは、 訳が違うんだよ、フェルト
“スバル”: 今のお前の発言を聞いて、 安全を最優先にするべきだって俺は強く思わされたよ
“フェルト”: はあ? なんだよ、それ そんなにアタシが心配か?
“スバル”: ああ、心配だ お前は『異形』や『変異体』の恐ろしさをわかってねぇ
“フェルト”: そりゃ、そうだろ 詳しいことはなんも話してもらってねーんだ 恐ろしさもへったくれもあるかよ
“オットー”: それについては、僕もフェルトさんと同意見です
“オットー”: 断片的な情報でなんとか理解しようと頑張ってはいますが、 『禁書』とかいうもののページについてはもちろん
“オットー”: その恐ろしいという『異形』とか『変異体』について、 僕もほとんどわかっていません
“オットー”: ガナクスでフルフーが暴走したり、 血相を変えてナツキさんが僕に立ち去るように言ったのには
“オットー”: そういったことが関係していたようですが……
“エミリア”: スバル、話してあげてもいいんじゃないかしら?
“レム”: レムもお二人にはお話していいと思います
“スバル”: エミリアたん、レム……
“スバル”: ああ、わかった
“スバル”: 状況が状況だけに手短にってことにはなっちまうけど、 二人には色々と共有させてもらうよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_14

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■14話 タイトル:五人目の候補者 更新日:2021/08/20

ナレーター: エミリアやレムに背中を押され、 フェルトやオットーに『禁書』の件を話す決心をしたスバルは
ナレーター: 状況が状況なため、手短に要点だけを二人に話して聞かせた
“オットー”: なるほど…… そういうことがあったんですね……
“フェルト”: にしても、兄ちゃんのやらかしが原因とはね 兄ちゃんがアタシらに隠したかった理由も含めて納得だぜ
“フェルト”: そんな状況じゃ、言いたくても言えねーわな
“スバル”: ああ、そうだ 色々詳しく語れねぇのは、 この件がエミリアたんの王選に悪影響を及ぼすからだ
“スバル”: その影響が半端ないだけに、 話す相手はどうしても選ばなきゃならねぇ
“スバル”: フェルトもオットーも、エミリアたんを貶める相手じゃない ことぐらいはわかってるんだけど
“スバル”: なかなか話す踏ん切りが付かなかった
“スバル”: 結果的によくわからない状態のまま、 色々と協力させることになっちまってすまなかったな
“フェルト”: 協力ってな、この行商人の兄ちゃんと違って、 今のところアタシはなんも協力してねーよ
“スバル”: 確かにそうだった! そういやお前に詳しく話す必要あったか?
“フェルト”: 硬いこと言うなよ、兄ちゃん
“フェルト”: それに、『異形』とか『変異体』って奴らの怖さはわかったぜ 今後は舐めた行動はしねーから安心してくれ
“スバル”: そうか なら話した甲斐はあったよ
“フェルト”: けどよ、王選ってのに悪影響が出ることがそんなに問題か?
“フェルト”: アタシだったら全然構わねーけどな むしろその方が好都合なくらいだ
“フェルト”: めんどくせーラインハルトの奴だって、 色々と諦めてくれるかもしれねーしよ
“スバル”: ラインハルトが……諦める?
“スバル”: なあ、フェルト 俺は『禁書』について色々話させてもらった その代わりって言っちゃなんだが、一個聞いてもいいか?
“フェルト”: なんだよ兄ちゃん、改まって 遠慮なく聞いてくれて構わないぜ 話すかどうかはわからねーけど
“スバル”: 話すかどうかが重要なんだよ! 話してくれねぇこと聞いたって意味ねぇだろ!
“スバル”: って、まあいい 実はある人から頼まれてることでもあるし、 ここはダメ元で質問させてもらう
“スバル”: どうしてお前はラインハルトと一緒にいるんだよ?
“スバル”: 最初は慈善活動の一環かなんかだと思ってたんだけど、 今はそうじゃない気がしてならねぇんだ
“スバル”: 第一、アストレア領までお前を同行させる理由がわからねぇ
“スバル”: 保護した女の子にちゃんとした教育を受けさせたいってなら、 わざわざ出張に同行させたりしねぇはずだ
“スバル”: お前とはあんま込み入った話をするタイミングがなかったし、 踏み込んでいいのかどうかもわからなかったから
“スバル”: 今まではあんま気にしないようにしてたんだけど、 色々腑に落ちてねぇってのが正直なところなんだよ
“フェルト”: ははは なんだよ、そんなことか
“フェルト”: 改まった雰囲気出すから、どんなことかと思えば、 ずいぶんと今さらな質問じゃねーか
“スバル”: 今さらで悪かったな!
“スバル”: けど、実際マジで腑に落ちてねぇんだ フェルト、教えてくれ
“フェルト”: なんでもあいつは、アタシを王選ってのに参加させたいんだと 徽章とやらが光るから、アタシには参加する資格があるらしい
“フェルト”: 姉ちゃんから盗んだときに、 光ってやがったから不思議だったんだけど
“フェルト”: どうやら徽章が光るのは、 王選ってのに参加できる奴が持ったときだけみてーだな
“エミリア”: ──っ!?
“スバル”: ──なっ!?
“レム”: ま、まさか……
“オットー”: ええっと…その…あの……
“フェルト”: どうしたんだ? どいつもこいつも血相変えやがって
“スバル”: いやいや、あまりの発言に、頭が追いつかねぇんだ!
“スバル”: お前が王選候補? そりゃまたなんの冗談だよ
“レム”: ですが……、フェルト様が王選の候補者だったとしたら、 ラインハルト様が手厚く保護するのも納得です
“エミリア”: それに、徽章が光るんだったら、間違いないわ 私も光るから王選の候補者になれたんだもの
“スバル”: マジ……なのか? お前が五人目の王選候補者?
“フェルト”: そんなことは望んでねーし、 毎度ラインハルトには断ってるんだけどよ
“フェルト”: ラインハルトの奴は全然諦めてくれねーんだよ
“フェネ”: スバル氏、そのような高貴な方を誘拐してしまって、 本当に問題はないのでしょうか?
“スバル”: ゆ、誘拐!? 俺、誘拐なんてしてないよね?
“スバル”: それに、フェルトが候補者だなんて知らなかったんだ 知ってたらもっと対応が違ってたよ
“スバル”: 少なくとも、危険が伴うページの回収に付き合わせたりしてねぇ
“フェルト”: だとしたら、兄ちゃんが知らなくて幸いだったぜ ラインハルトのとこになんて戻りたくねーしな
“スバル”: 待て待てフェルト、考え直せ お前が戻ってくれねぇと、俺たちは色々困ったことになる
“スバル”: ただでさえ『禁書』の件で色々厄介なのに、 王選候補のお前を誘拐したなんてことになったら……
“フェネ”: やはりスバル氏は、厄介事を引き寄せる天才ですね 『剣聖』と称されるラインハルト氏を敵に回してしまうとは
“スバル”: いやいや、俺にそんなつもりは…… それに、あいつが敵になったって、まだ決まったわけじゃねぇだろ
“レム”: そうです お屋敷の使用人の方々には、 フェルト様と一緒にいる理由をちゃんと説明してあります
“フェネ”: でしたら、フェルト女史の口から 直接事情を説明してもらうべきでしたね
“フェネ”: 誘拐犯が事件の発覚を遅らせるために、 そのような工作をしたと捉えることも可能です
“レム”: そ、それは……
“スバル”: フェルト、どうしてそんな重要なことを、 今まで教えてくれなかったんだ?
“フェルト”: そりゃ、聞かれなかったからな 聞かれもしねーのに、話すことでもねーだろ
“フェルト”: それに、兄ちゃんたちが知らねーって、 アタシは知らなかったんだ
“フェルト”: ラインハルトの奴と親しいみてーだから、 てっきりあいつから聞いてると思ったぜ
“スバル”: くっ…… こっちも色々隠し事してたから、 あいつとは腹割って話せてなかったんだ
“スバル”: 全部を打ち明けようと思ったときには、 あいつが不在で会えなかったし……
“スバル”: んでもって、ページの回収どころじゃない気分なんだが、 そういうわけにはいかねぇときてる
“フェネ”: 左様です フェルト女史の問題は ページの回収とは切り離して考えるべきです
“フェネ”: すでに多くの時間を無駄にしました 急ぎページ探しに取り掛かるべきかと
“スバル”: そうだな、ここは気持ちを切り替えよう
“スバル”: とにかく、フェルトを危険な目に合わせないためにも、 急いでページを回収しよう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_15

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■15話(中編) タイトル:ロム爺再び 更新日:2021/08/20

ナレーター: スバルたちは、フェネの感知能力を頼りにページの捜索を始め、 すでに何枚ものページを回収し『禁書』に封じていた
“スバル”: オットー、すまねぇ 結局、お前のことを休ませてやれなかったな
“オットー”: いえいえ、気にしないでください
“オットー”: フェルトさんが王選の候補者だとわかった衝撃が大きすぎて、 眠気や疲れは吹っ飛んでしまいました
“オットー”: フェルトさんにもしものことがあったら、 僕の竜車に乗せている手前、他人事ではないですし
“オットー”: 『剣聖』様の怒りを買ったりでもしたらって考えると、 気が気じゃありません
“オットー”: むしろ手伝わせてもらって、感謝したいぐらいです
“スバル”: 手伝わされて感謝って、損な性格してるな、お前
“スバル”: フェルトにもしものことがあっても、 お前に非がないことは明らかだろ
“スバル”: ラインハルトがお前に危害を加えることはねぇよ
“オットー”: だとしたら、ナツキさんだってそうだと思いますよ
“オットー”: お屋敷に戻らないのは明らかにフェルトさんの意思ですし
“オットー”: ナツキさんが保護していなければ、 フェルトさんは本当の意味で行方不明になっていたと思います
“オットー”: 感謝されこそすれ、誘拐犯扱いされるいわれはないですよ
“スバル”: まぁ、そりゃそうかもしれねぇけど、 フェルトを危険な目に合わせたらラインハルトに顔向けできねぇよ
“スバル”: 『禁書』の件は完全に俺の落ち度だし
“スバル”: もし王選の候補者だって知ってたら、 屋敷の前で、もっと真剣に屋敷へ戻るよう説得したしな
“スバル”: 『異形』や『変異体』のことだって、 できれば話したくないって思いがあって
“スバル”: 話すのが遅れちまったけど、 もし知ってたら、説得材料の一つとしてあのとき使ってたはずだ
“スバル”: “感謝される”ってのは、さすがに採点甘すぎだぜ、オットー
“オットー”: ……なるほど ナツキさんも色々と損な性格をしているみたいですね
“オットー”: 『禁書』の件だって、特に悪意があってしたことではありませんし ナツキさんを責める気に僕はなりません
“オットー”: 本につまづいたことが、こんな事態に発展するなんて、 誰にも想像できないですから
“スバル”: 『禁書』につまづいたのは俺の前方不注意だし、 すぐに返さなかったのは俺の怠慢だよ
“フェネ”: 左様です 明らかにスバル氏の落ち度 万死に値する罪をスバル氏は犯したのです
“オットー”: そ、そこまで言います!? フェネさんはナツキさんに厳しすぎる気がするのですが
“フェネ”: オットー氏こそスバル氏に甘すぎるのでは?
“フェネ”: そのような甘さはスバル氏を堕落させるだけです 決して褒められたものではありません
“フェネ”: 自分が犯した罪の重さを思い知らせ 全力で償わせるのが本当の優しさだとフェネは断言します
“オットー”: だ、断言って、もはやフェネさんとは、 議論の余地がない感じですね
“スバル”: ありがとな、オットー お前の気持ちは嬉しいよ
“スバル”: けど、自分の気持ちには嘘はつけねぇ 俺自身がそう思っちまってるんだよ
“スバル”: これは俺の責任で、俺がどうにかしなきゃなんねぇってな
“フェネ”: 本当にスバル氏は笑わせますね
“スバル”: えっ!? 今、笑う要素あった!?
“フェネ”: “俺がどうにか”とはなんの冗談です?
“フェネ”: この件が始まってから、 一度だってスバル氏がどうにかしたことがあったでしょうか?
“スバル”: いやいや、一個ぐらいあるだろ! 俺なりに全力で頑張ってきたしな!
“フェネ”: 残念ながら皆無です むしろスバル氏は足手まといでしかありません
“フェネ”: そのことをしっかりと自覚してください
“スバル”: う、うう…… そこまで言われると、さすがに俺の目にも涙が……
“オットー”: ふぇ、フェネさん、言いすぎです! これ以上言うと本当にナツキさんが泣いちゃいますよ!
“フェネ”: はぁ…… 仕方ないですね 今回はこれぐらいで勘弁してあげましょう
“フェネ”: 本当に泣かれでもしたら、 レム女史の怒りを買ってしまいますし
“フェネ”: とにかく、スバル氏、向こうにページの反応です
“フェネ”: 皆様は先に向かわれました スバル氏もオットー氏も急いでください
ナレーター: フェネに促され、ページの反応があった場所へ向かったスバルは、 そこで思わぬ人物との再会を果たすのだった
“スバル”: ──ろ、ロム爺!
“ロム爺”: おお、小僧 フェルトが世話になったようじゃな
“スバル”: いやいや、世話ってほどじゃ…… むしろ危険なことに付き合わせて、申し訳ねぇって思ってるよ
“フェルト”: おいおい、どうして兄ちゃんがそんな風に思う必要があんだよ? 全部アタシの意思だ 兄ちゃんに付き合わされた覚えはねーよ
“フェルト”: むしろアタシは、兄ちゃんに感謝してるんだ こうやってロム爺に会えたのも兄ちゃんのおかげだしな
“エミリア”: ええっと、お久しぶりです
“ロム爺”: お前さんには世話になったな また会えて光栄じゃよ
“エミリア”: ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいわ
“エミリア”: でも、ラインハルトがきてくれなかったら、 ホントどうなっていたかわからないわ
“スバル”: いやいやエミリアたんは、 ちゃんと“光栄”に値する活躍だったから大丈夫だよ
“スバル”: エミリアたんの頑張りがあったから、 ラインハルトが間に合ったわけだし
“スバル”: ロム爺の命を繋いだのもエミリアたんだろ
“ロム爺”: その節は助かったわい 今こうして儂やフェルトの命があるのはお前さんのおかげじゃよ
“フェルト”: ああ、そうだぜ、姉ちゃん
“フェルト”: ラインハルトの場合は感謝も帳消しだけど、 姉ちゃんには感謝しかねーよ
“エミリア”: フェルトちゃんまで……
“スバル”: てな感じで感動の再会を果たしたわけだけど、 どうしてロム爺がこんな場所にいるんだ?
“スバル”: 偶然会うにしちゃ、 ここは王都から離れすぎてる気がするぜ……
“ロム爺”: お前さんから、フェルトがハクチュリにおると 教えてもらったんでな
“ロム爺”: 昔の馴染みに送ってもらってたんじゃが、 道すがら夜空を飛ぶ光を目にしてな
“スバル”: その光を追ってここまできたってわけか?
“ロム爺”: そうじゃ お前さんの話ぶりから、アレが巷で噂される 『遺作』に纏わるものだと察しは付いておったのでな
“ロム爺”: 何をするにも金は必要じゃ
“ロム爺”: 『剣聖』からフェルトを取り戻すのも、 この先フェルトが暮らしていくのにもな
“フェネ”: ──スバル氏
“スバル”: いやいや、俺は大した情報は教えてねぇよ
“スバル”: ロム爺と久々に再会して、 あんときはちょっと口が軽くなってたかもしれねぇけど
“ロム爺”: 儂にはあの程度の情報で十分じゃ 伊達に長く生きておらんわい
“スバル”: 最初から、アストレア領に向かいつつ、必要資金は 『禁書』のページでどうにかするつもりだったのかよ……
“スバル”: ってことは、すでに何枚か手に入れてたりして?
“ロム爺”: 無論じゃ その辺は抜かりないわ
“スバル”: ロム爺、それ渡してくんねぇかな? ページは危険なものだ 一刻も早く『禁書』に封じないとならねぇ
“スバル”: もちろん、それに見合う代金は払わせてもらう
“ロム爺”: ほう……
“レム”: ロム様、本当です ロズワール様からページ購入に見合う代金を預かっています
“フェルト”: ロム爺 兄ちゃんには世話になった 持ってるページとやらを兄ちゃんに渡してくれ
“フェルト”: 少なくとも今のアタシは自由だ
“フェルト”: ラインハルトの屋敷から、 アタシを連れ出すために金はかからねーだろ?
“フェルト”: それに、ロム爺に恵んでもらった金で、 暮らすつもりなんてアタシにはねーよ
“フェルト”: そんな金があんなら、むしろ自分のために使ってくれ
“ロム爺”: 『剣聖』から逃れるんじゃ 相応の費用が必要なのは明白じゃ
“ロム爺”: 王都へ戻るのは難しいじゃろう 潜伏先としてピックタットを考えておる
“オットー”: ぴ、ピックタット!
“オットー”: 確かにあの都市なら、 お金次第でどうとでもなるかもしれませんが……
“スバル”: どういうことだオットー?
“オットー”: ピックタットはルグニカ一の商業都市です
“オットー”: もちろん多くの商人はまっとうな商売をしていますが…… 金次第でなんでも引き受ける闇商人もいますから
“スバル”: へー、なんだかそのピックタットについて、 色々知ってるみてぇだな
“オットー”: 一応故郷なんで、人よりは知っているつもりです まあ、長いこと帰ってはいませんが……
“スバル”: ……でも、ちょっと待ってくれ
“スバル”: フェルトがそのピックタットって都市に逃げ込んだら、 王選はどうなるんだよ?
“ロム爺”: ……王選?
“フェルト”: ラインハルトの奴が、アタシを参加させようとしてやがるんだ あいつがアタシを手元に置いてるのもそれが理由だぜ
“ロム爺”: なるほど、色々合点がいったわい フェルトを王選に…… そういう事情じゃったか
“スバル”: エミリアたんの夢を叶えるためにも、王選が開かれないのはマズい
“スバル”: フェルトの参加が必須なんだとしたら、 フェルトには是が非でも参加してもらわねぇと
“スバル”: わりぃ、ロム爺…… フェルトをロム爺と一緒に ピックタットへ向かわせるわけにはいかねぇ
“フェルト”: おい、兄ちゃん、アタシは参加するつもりはねーぜ
“フェルト”: 王選とやらに参加しねーで済むなら、 ピックタットだろうがどこだろうがアタシはいくつもりだ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_16

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■16話 タイトル:フェルトとロム爺を追え 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──くそっ! フェルトとロム爺は見つかったか?
“レム”: 申し訳ありません、スバルくん お二人ともどこにも見当たりません
“エミリア”: こっちにも見当たらないわ ホントにどこいっちゃったのかしら……
“オットー”: やはり二人から目を離すべきではなかったんですよ
“オットー”: フェルトさんと二人っきりで話がしたいという ロムさんからの提案は明らかに拒否するべきでした
“スバル”: やいやい、オットーのくせに言ってくれるじゃねぇか!
“スバル”: お前がしっかり見張ってたらよかっただけの話だろ それをまるで俺が悪いみたいに言いやがって
“オットー”: いやいや、二人っきりで話すのを許可したのって、 ナツキさんですよね!
“オットー”: それに、どうして僕が見張ってなきゃならないんです? 僕が一番責任のない立場だと思うのですが!
“スバル”: “一番責任のない立場”ってなんだよ? フェルトを誘拐した張本人だろ、お前
“フェネ”: 確かに、オットー氏の竜車にフェルト女史が乗っていたところは、 多くの方に目撃されていると推測できます
“フェネ”: 今頃オットー氏の竜車は指名手配されているかもしれません
“オットー”: そ、そんな…… どうしてこんなことに……
“オットー”: とにかく、こうしてはいられません! 一刻も早くフェルトさんを見つけ出しましょう!
“スバル”: その意気だぞ、オットー 頑張ってフェルトとロム爺を見つけてくれ
“オットー”: どうしてナツキさんが他人事なんですか! あなたは一番の当事者ですよね!
“スバル”: わりぃ、わりぃ、確かにそうだったな
“スバル”: けど、ロム爺の口ぶりからして、 それなりの枚数のページを持ってる感じだったし
“スバル”: フェネの感知能力で、 二人の居場所を突き止めることはできねぇのか?
“フェネ”: 無論可能です 優秀なフェネはその可能性に気付き、 すでに南西へと遠ざかる複数のページを感知済みです
“オットー”: 南西…… 確かにピックタットの方向ですね、それ
“フェネ”: さらにフェネは、遠ざかるページの速度から、 お二人の移動手段が徒歩であることも割り出しています
“スバル”: でかしたぞ、フェネ! これで光明が見えてきたな!
“スバル”: けど、ロム爺には連れがいるみたいだったし、 そいつに合流されて、竜車でも使われたら厄介だ
“スバル”: てなわけで、フルフーの出発準備を急いでくれ、オットー!
“オットー”: わかりました、ナツキさん 急いでフルフーのところに戻って準備します
“スバル”: なる早で頼むぜ、オットー
“スバル”: ロム爺が持ってるのはただの紙切れじゃねぇ マナさえ溜まれば『異形』を顕現させる危険なページだ
“スバル”: 都合良く紙切れのままでいてくれればいいが…… そんな保証はどこにもねぇ
“スバル”: 一刻も早くあいつらに追いついて、 危険なページはとっとと封じねぇとな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_17

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■17話 タイトル:芳しくない状況 更新日:2021/08/20

ナレーター: オットーの竜車で、逃げたフェルトとロム爺を追うスバルたちは、 確実に二人との距離を詰めているのだった
“スバル”: フェネ、ページの反応はどうだ?
“フェネ”: はい、確実に縮まっています 遠からず追いつけるでしょう
“スバル”: そりゃ、よかった
ナレーター: そう安堵するスバルだったが、フェネの表情は厳しく 竜車内は異様な緊張感に包まれている
“スバル”: もうすぐ追いつくんだよな?
“フェネ”: 左様です
“スバル”: なら、どうしてそんなに厳しい表情なんだ?
“スバル”: お前がそんな表情だと、車内が暗い空気になっちまう もうちょい表情を崩してくれ
“フェネ”: 残念ながらスバル氏、状況は芳しくありません
“フェネ”: 先程回収したページの中に、 幸いにもノボンのページは含まれていました
“エミリア”: ホント? もうノボンとは戦わなくていいのね?
“フェネ”: はい それについてはご安心ください、エミリア女史
“レム”: にもかかわらず、フェネさんの表情が優れないということは、 もしかして……
“フェネ”: 左様です、レム女史 “こわいまもの”のページは回収できておりません
“フェネ”: そして、ロム氏が持つと思しきページからは、 非常に強い気配を感知しております
“スバル”: ──なっ!
“スバル”: それってつまり、 “こわいまもの”のページをロム爺が持ってるってことかよ?
“スバル”: んでもって、顕現のタイミングが近づいてるんだよな?
“フェネ”: 左様です 反応が強く、相応のマナが溜まった状態かと
“フェネ”: ですが、あくまで強力な『異形』を宿したページということで、 その『異形』が“こわいまもの”かどうかまではわかりかねます
“スバル”: ……わかりかねる?
“フェネ”: 左様です 残念ながら、そこまでは感知できません
“フェネ”: ただ、ノボンに苦戦した現実を考慮すると そのページから顕現する『異形』に勝てる見込みは僅かでしょう
“スバル”: その“僅か”って表現は正しいのか? つまり、俺たちには僅かとはいえ勝てる見込みがある?
“フェネ”: フェネとしたことが、失礼いたしました
“フェネ”: ページの気配から推測するに、皆様では勝てる見込みは皆無 顕現した場合、逃げる以外の選択肢はありません
“エミリア”: それは急がないと……
“レム”: はい 急ぐ以外にできることはなさそうです
“スバル”: ということだ、オットー 頼む急いでくれ
“オットー”: わかりました とにかく急がせていただきます
“スバル”: 頼む、間に合ってくれ……
“レム”: 日もだいぶ傾いてしまいました 日が暮れると厄介です
“エミリア”: 確かにそうね 夜だとパックの力は頼れないわ
“スバル”: くっ…… マジで芳しくねぇ……
“フェネ”: スバル氏、表情が厳しいですよ
“フェネ”: スバル氏がそのような表情では、車内の空気が重くなります 表情を崩し、場を和ませてください
“スバル”: いやいや、今はそういうのは難しいかな 軽口を叩けるような心境じゃねぇし
“フェネ”: はぁ…… スバル氏は、先程フェネに言った言葉を もう忘れてしまったのですか?
“フェネ”: さすがはクソ上司 記憶力もクソそのものですね
“スバル”: うぐっ…… 確かに俺、そんなこと言っちまってたな……
“フェネ”: 左様です スバル氏はフェネの気持ちも考えず、 ずけずけと配慮に欠ける発言を行いました
“フェネ”: その責任はしっかりと取っていただく必要があります
“フェネ”: さあ、スバル氏 この重苦しい空気を吹き飛ばしてください さあさあ
“スバル”: わ、わかった、んじゃ、小話でも…… これは俺が──
“フェネ”: スバル氏、もう結構です
“スバル”: はあ? 今、とびっきりの話を思い出したんだよ 爆笑間違いなしだから、黙って聞いてくれ
“フェネ”: 残念ながら、 スバル氏のくだらない話を聞いている場合ではなくなりました
“フェネ”: 反応が近いです フェルト女史とロム氏はすぐ近くにいると推測されます
“スバル”: “くだらない”ってな…… けど、確かに俺の話どころじゃなさそうだな
“フェネ”: 左様です ここからは竜車を降りた方がよろしいかと
“フェネ”: 恐らくお二人は、感知したページの気配により、 フェネたちが正確な位置を特定しているとは思っていないはずです
“フェネ”: 付け入る隙は十分にあるかと
“スバル”: なるほど…… そのアドバンテージを活かすためにも、 確かに竜車は降りた方がよさそうだな
“スバル”: 音やなんやで気付かれでもしたら、目も当てられねぇ
“スバル”: というわけで、オットー、竜車を止めてくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_18

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■18話 タイトル:思いもよらぬ展開 更新日:2021/08/20

“スバル”: ──よう、フェルト、ロム爺 俺たちを置いていくなんてひでぇじゃねぇか
“フェルト”: 兄ちゃん!
“ロム爺”: 小僧……
“スバル”: おかげですっかり日が暮れちまったよ ただでさえ時間がねぇってのに、とんだハプニングだったぜ
“スバル”: とにかく、お前らの退路はねぇ 大人しくページを渡してくれ
“エミリア”: お願い ページはとっても危険なものなの 早く封じないと大変なことになっちゃうわ
“レム”: フェルト様、ロム様、大人しく従ってください
“オットー”: かなりの寝不足ではありますが、 僕にだってお二人の行く手を阻むことぐらいはできます
“ロム爺”: ほう…… 小僧が言う通り、儂らは完全に囲まれているようじゃな
“フェネ”: 優秀なフェネの感知能力により、 お二人がいらっしゃる場所の特定は可能でした
“フェネ”: ならば当然、 このように抜かりなく包囲させていただくことになります
“フェルト”: くっ…… 相手が悪かったってことかよ……
“フェネ”: 左様です お二人の不運は追手にフェネがいたことです スバル氏だけでしたら、恐らくすんなりと逃げきれていたでしょう
“スバル”: おいおい、自画自賛もその辺にしとけ
“スバル”: “感知能力”っていったって、普段は大して役に立たねぇんだし
“スバル”: 今回はたまたま、ロム爺が持ったページが、 結構なマナを吸ってる状態だったから追えただけだろ
“フェネ”: 部下の活躍を素直に喜べないとは、さすがクソ上司ですね
“フェネ”: フェネのおかげでフェルト女史やロム氏に追いつけたのは、 紛れもない事実
“フェネ”: 失敗には目を向けず、成した成果に賛辞を贈る それができた上司というものではないでしょうか
“スバル”: お前の上司論には興味ねぇよ
“スバル”: それに、大切なのは失敗したときだって俺は思うぜ
“スバル”: 失敗したときこそ成長のチャンス 他人のアドバイスがすんなり入る絶好の機会なんだよ
“スバル”: “失敗は成功の母”って言ってな 失敗をうまく活用して成長させるのが、上司の本来あるべき姿だ
“フェネ”: “興味がない”と切り捨てておきながら、饒舌に語るとは…… フェネの的確な指摘が、スバル氏は余程悔しかったのですね
“スバル”: 違うわ! 褒めるだけの上司は三流だって、 ちゃんと教えたかっただけだよ!
“フェネ”: わかりました 失敗ばかりしているスバル氏の 負け惜しみだと解釈することにします
“スバル”: どうしてそうなるんだよ? 負け惜しみを言ってるのは、むしろお前の方だろ!
“フェネ”: フェネが負け惜しみを? それは甚だ心外です
“スバル”: 毎度毎度ディスられて、俺の方こそ心外だ!
“オットー”: ナツキさん! フェネさん! 今は言い争ってる場合じゃ──
ナレーター: 言い争いをするスバルとフェネに、オットーが声をかけたそのとき
ナレーター: ロム爺の懐からまばゆい光が溢れ、 膨張したページが夜空へと舞い上がるのだった
“フェルト”: ロム爺! ページが!
“ロム爺”: くっ…… 本当に絵が出てくるというのか……
“スバル”: いやいや、吸い込まれるパターンもあるぜ 今回がどっちになるかわからねぇけど
“ロム爺”: ……吸い込まれるじゃと? それは初耳じゃな
“スバル”: あのページについて流れてる噂は、確かに絵が飛び出すってもんだ
“スバル”: だけど、亜空間に吸い込まれる場合もあるんだよ
“スバル”: そっちの方は、なぜかまったく噂になっちゃいねぇが、 実際に俺たちは何度も経験してる
“異形”: ウガガガガーッ!
“スバル”: どうやら今回は、『異形』が出てくるパターンみてぇだな
“スバル”: けど…… それにしたって……
ナレーター: ページから現れた『異形』のあまりの大きさに、 思わずスバルは言葉を失ってしまう
ナレーター: そして──
“フェルト”: ──ロム爺逃げろ!
“ロム爺”: ──なっ!!
“異形”: ウググググ……
“スバル”: あ、あいつ…… ろ、ロム爺を食いやがった……
“フェネ”: ──スバル氏しっかりしてください!
“フェネ”: 茫然としてしまう気持ちはわかりますが、 突っ立ったままではスバル氏が次の餌食になります!
“スバル”: そんな…バカな…… さっきまで…ロム爺はそこで……
“レム”: ──スバルくん下がってください!
“スバル”: そんな…… ロム爺が…そんな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_19

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■19話 タイトル:現実離れ 更新日:2021/08/20

“スバル”: そんな…… ロム爺が…あいつに……
“フェルト”: ──兄ちゃんしっかりしろ!
“スバル”: ……フェルト?
“フェルト”: ロム爺はあんなんでくたばるタマじゃねーだろ!
“フェルト”: あいつをぶっ倒せば、きっと中から助け出せるはずだ!
“スバル”: 確かに、巨大な魚に飲み込まれて、 胃袋の中で生活するなんてお話を読んだことがあるけど……
“スバル”: そんなこと、現実じゃあり得ねぇだろ
“フェネ”: “現実ではあり得ない”とは、笑わせますね、スバル氏
“フェネ”: ページの件で、我々が経験したことの多くは、 現実離れしたものばかりだと記憶しています
“エミリア”: うん、確かにそう 本当にいつもいつも驚いてばっかりだもの
“レム”: はい レムも驚いてばかりです
“レム”: あのような巨大な『異形』が、一枚の紙の中から現れること自体、 とても現実離れしているとレムは思います
“オットー”: 本当にそうですね あんなに大きなものが、 どうやってあの紙切れの中に収まっていたのでしょう?
“スバル”: みんな……
“スバル”: けど、フェネがそう言うってことは、 あいつの腹の中でロム爺が生きてるってことで合ってる?
“フェネ”: 左様です ロム氏は『異形』に飲み込まれましたが、 死んでしまったわけではありません
“フェネ”: 少なくとも今は、そう考えて行動するべきです
“スバル”: 待て待て、急にモヤっとしたぞ ロム爺は生きてるんだよな?
“フェネ”: 申し訳ありません、スバル氏
“フェネ”: 迂闊にも先程、確証もないまま断言してしまいましたが、 あれはあくまで希望的観測になります
“フェネ”: ロム氏が確実に生きていると、断言することはできません
“フェネ”: ですが、フェネはその可能性が高いと感じています それに──
“スバル”: このまま茫然自失でいても、 ロム爺みたいにあいつに食われちまうってわけだ
“フェネ”: 左様です 行動あるのみです、スバル氏
“スバル”: くっ…… まさかお前に励まされるとはな……
“スバル”: けど、確かにフェネの言う通りだ ロム爺を助けるためにも、今は動かねぇと
“スバル”: 待ってろよ、ロム爺! すぐにそいつの中から助け出してやる!
ナレーター: 仲間たちのおかげで、 『異形』に立ち向かう気力を取り戻したスバル
ナレーター: だが……
ナレーター: この後スバルは、 厳しい現実を突き付けられることになってしまうのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c05_20

Scene Name: メインシナリオ_5章_FIX ■エピローグ タイトル:フェルトの決断 更新日:2021/08/20

“異形”: ──ウガガガガーーッ!!
“エミリア”: きゃっ!
“レム”: くっ……!
“フェルト”: くそ! 手も足も出ねー!
“オットー”: だいぶ追い詰められています! ナツキさん、何か策を!
“スバル”: 策って言ったって、力の差がでかすぎる…… しかもこっちは頼みのパックが勤務時間外だ……
“フェネ”: やはり皆様では力が足りません 引くことも検討するべきかと
“フェルト”: ざけんな! ロム爺を放って逃げられるかよ!
“フェルト”: けど、兄ちゃんたちまで巻き込むつもりはねーよ これはアタシの問題だ 逃げたきゃ逃げてくれ、兄ちゃん
“スバル”: そんなわけいくか! 俺だってお前を置いては逃げられねぇよ!
“オットー”: ですが、こちらの戦力では歯が立たないのは明らかです とにかく何か策を……
“スバル”: 勝てる見込みは皆無…… けど、ロム爺をあいつの腹の中から救出しなくちゃならねぇ……
“スバル”: こういう場合、あえてあいつの腹の中に入って、 中からぶっ倒すってのがセオリーな気がするんだが……
“スバル”: ロム爺を飲み込んで以降、 あんにゃろうは俺たちを食おうとする素振りも見せねぇ……
“スバル”: 考えたくはねぇけど、あいつがロム爺を飲み込んだのは、 俺たちを逃がさないようにするためだったり?
“スバル”: ロム爺を置いて俺たちは逃げられねぇ だからあいつは最初に、 ロム爺を腹の中にキープしたのかもしれねぇ
“レム”: それはつまり、 この状況はあの『異形』の思う壺ということでしょうか?
“スバル”: ああ ロム爺があいつの腹の中にいなきゃ、 俺たちはとっくに撤退していたはずだ
“スバル”: けど、現状は逃げたくても逃げられねぇ
“スバル”: あの『異形』は外見に似合わず、 知能レベルが相当に高いのかもしれない
“エミリア”: でも、どうして私たちが逃げちゃいけないの? 逃げてもらった方が戦わなくて済むのに
“スバル”: 俺たちがロム爺を助けたいみたいに
“スバル”: あいつが『禁書』に封じられたページを 助けたいって可能性はねぇかな?
“スバル”: 正確にはページじゃなくて、お仲間の『異形』をってことだけど
“スバル”: アストレア領に集まったページは、 あいつに関係した『異形』を宿したページで
“スバル”: 俺たちはそんなページを『禁書』に封じちまった
“スバル”: だからあいつとしては、 俺たちに逃げられるわけにはいかねぇのかもな
“オットー”: ここで僕たちを倒して、『禁書』からページを解放するのが あの『異形』の目的ということですか?
“スバル”: あくまで可能性の一つだけど、 そう考えると色々納得できる気がするんだよ
“スバル”: 『異形』に相当な知能があるってのは、認めたくねぇ事実だけども
“フェネ”: 知性とは人間だけのものではありません 『異形』に知性が備わっていてもなんら不思議ではないかと
“フェネ”: それを外見で侮り、 『異形』には知性がないものと断じていたのなら
“フェネ”: この状況は自業自得、ざまあないですね
“スバル”: ……え? 今なんて?
“フェネ”: 聞こえませんでしたか、スバル氏 “自業自得でざまあない”とフェネは言ったのです
“スバル”: 聞こえてるよ! 聞こえたうえで聞かずにはいられなかったんだ!
“スバル”: どうしてこの場面でそんな風に言う必要がある? 自業自得でざまあない状況だとしてもだ
“フェネ”: すみません、つい本音が漏れてしまいました 気にせず悪あがきを続けてください
“スバル”: “本音”ってな、お前は本心ではそう思ってるってことかよ しかも“悪あがき”って表現も気になっちゃうね
“スバル”: だいたい、お前は俺たちの仲間なんじゃないのか? その発言には、すげぇ距離を感じちまうよ
“フェネ”: 仲間……
“フェネ”: 一つお尋ねしたいのですが、 どうしてロム氏を置いて撤退しないのです?
“フェネ”: ロム氏はフェルト女史を大切に思っていると推測でき、 ロム氏は恐らく皆様のこのような対応を望んではいないでしょう
“フェネ”: フェネが撤退を進言するのも、 このままでは皆様が全滅してしまうからです
“フェネ”: このままここに残り全滅することが、 本当に仲間のための行動なのでしょうか?
“スバル”: そんなの……
“フェネ”: そんなの、なんです?
“スバル”: 気持ち良く明日を迎えるために決まってるだろ
“スバル”: このままロム爺を置いて逃げたら、 気持ち良く明日を迎えられねぇじゃねぇか
“フェネ”: ……それはつまり、己のためということでしょうか?
“フェネ”: ロム氏のためにこの場に残って戦うのではなく、 自らの利のために残り、そして戦うと
“フェルト”: 難しいことはわかんねーけど、アタシはロム爺を見捨てねー
“フェルト”: それがアタシの生き方だ 命が危ねーぐらいで、曲げるつもりはさらさらないね
“フェルト”: それに、“明日を気持ちよく迎えるため”っての、 アタシは好きだぜ、兄ちゃん
“フェルト”: 正義や倫理なんてもんを持ち出して語られるより、 よっぽど腑に落ちたよ
“レム”: レムもスバルくんらしいとてもいい考え方だと思います
“オットー”: いやいや、確かに明日を気持ち良く迎えるのは大切ですが、 このままじゃ僕たちに肝心の明日が訪れませんよ
“スバル”: それをなんとかするのが、お前の役目なんじゃねぇのか?
“スバル”: 目からすげぇ光線を出してあいつをずたずたにするとか
“スバル”: 巨大な隕石を召喚してあいつをぺしゃんこにするとか、 なんとかできねぇのかよ?
“オットー”: しがない行商人に何を言ってるんですか!
“オットー”: しかもずたずたとかぺしゃんこにしたら、 中にいるロムさんも無事じゃ済みませんよ!
“異形”: ──ウグググ!
ナレーター: 最後のときは近いとばかり、 巨大な『異形』がゆっくりと進みスバルたちに迫る
“エミリア”: ──みんな! 『異形』の攻撃に備えて!
“フェネ”: どうやら皆様が歓談をしてる間に、 撤退の機会は完全に失われたようです
“スバル”: 歓談してたつもりはねぇよ それに──
???: スバル! フェルト様!
“スバル”: 遅かったじゃねぇか、ラインハルト
“ラインハルト”: 待たせてすまない だが、僕がきたからにはもう大丈夫だ
“フェルト”: げぇ! ラインハルト!
“ラインハルト”: フェルト様、お迎えに参りました
“フェルト”: ざけんな! お前なんてお呼びじゃねーよ!
“フェネ”: なるほど…… どこかスバル氏に余裕があったのは、 ラインハルト氏の到着を予感していたからですか
“スバル”: まぁ、ロム爺がページの場所に現れた時点で、 ラインハルトの登場を期待してはいたかな
“スバル”: 屋敷には不在だったけど、ページが飛び去ったこととか、 移動した先の情報はラインハルトの耳にも入ってるはずだし
“スバル”: フェルトがいる手前、口には出さなかったけどな
“レム”: スバルくんのことですから、 何か策があるのではと思っていましたが
“レム”: まさかラインハルト様を…… レムは感服しました
“スバル”: いやいや、その感服は受け取れねぇよ
“スバル”: あくまでここにきたのはラインハルトの手柄で、 俺はただ期待してただけだからね
“スバル”: にしても、さすがラインハルトだ
“スバル”: まさにこれ以上ないっていうタイミングで登場しやがったよ 生まれ持ったスター性が半端ねぇぜ
“ラインハルト”: ……スター性?
“スバル”: わりぃ、なんでもねぇ 気にしないでくれ
“スバル”: んなことより、あいつの腹の中には、 フェルトにとって大切なロム爺がいるんだ
“スバル”: その辺を考慮して、あいつの料理を頼んだぜ、ラインハルト
“ラインハルト”: 了解した、スバル 情報感謝する では──
“ラインハルト”: はぁーーーっ!
“異形”: ウガガガガーッ!!
“異形”: ウガァァッ! ウガガガガー……っ
“スバル”: 悪い、ラインハルト ちょっと二人で話せねぇかな?
“ラインハルト”: もちろんだよ、スバル 少し二人で話をしよう
“スバル”: 助かったぜ、ラインハルト 盗品蔵と同じく、今回もお前には助けられちまったな
“ラインハルト”: 皆を守るのは騎士の務め、礼には及ばないさ
“スバル”: だとしてもだよ マジ助かった あいつは俺らではどうにもできなかったよ
“スバル”: けど、ずいぶんと遅い到着だったな? お前ならもうちょい早く駆け付けててもおかしくないと思うんだが
“ラインハルト”: それについては申し訳ない 思いのほか誤った情報が多くてね、 何度か無駄足を踏まされてしまったんだ
“スバル”: 誤った情報、ね
“スバル”: まぁ、大なり小なり人には思い込みってのがあるし、 証言を鵜呑みにするのは危険だよな
“スバル”: ベテラン刑事が新人に“証言を疑え”なんて指導するのも納得だわ
“スバル”: 犯人は女性だって目撃者が言っても、 実際は小柄で長髪なだけだったみたいな感じでさ
“スバル”: 小柄で長髪の男もいるから、女性だって決めつけると 肝心の初動捜査が間違った方向に進んじまう
“ラインハルト”: なるほど、“証言を疑え”か 肝に銘じておくよ
“ラインハルト”: 実際にそうしていたら、領地に戻ってからの無駄足は、 結構防げていただろうね
“スバル”: ……そんなに無駄足を踏まされたのか?
“ラインハルト”: ああ 恥ずかしながら、誤った情報に振り回されてしまった
“ラインハルト”: そもそも領地に落ちた隕石を調査しにきたはずが、 そこにあったのは隕石とはかけ離れたものだったしね
“スバル”: ずっと屋敷にいなかったのも、 そんな情報に振り回されちまってたからか?
“ラインハルト”: すまない 僕を訪ねてくれたらしいね 会うことができず、申し訳なかった
“スバル”: いやいや、仕事だから仕方ねぇよ こっちも約束してたわけじゃないしな
“ラインハルト”: だが、僕がいれば、 フェルト様を危険な目に遭わせることもなかった
“ラインハルト”: さっきスバルは僕にお礼を言ったけれど、 むしろお礼を言わないといけないのは僕の方だ
“ラインハルト”: スバル、ありがとう
“スバル”: …………
“ラインハルト”: どうしたんだいスバル? 僕は何か気に障ることでも言ってしまったのだろうか?
“スバル”: いやいや、お前のまっすぐな瞳が胸に痛かっただけだ お前から礼を言われるような男じゃないんでね、俺は……
“ラインハルト”: ……スバル?
“スバル”: 全部……全部俺のせいなんだ
“スバル”: フェルトが危険な目に遭っちまったのも、 お前の領地での隕石騒動もな
“ラインハルト”: 何か事情がありそうだね よかったら僕に話してくれないかな
“スバル”: 情けねぇことに、元々そのつもりだよ だからこうやって二人で話せねぇかって誘ったんだ
“スバル”: 色々話した結果、お前が協力してくれることを 俺は期待しちまってる
“ラインハルト”: もちろん力になるさ 僕にできることなら、喜んで協力させてもらう
“スバル”: おいおい、話を聞く前にそんなこと言っていいのか?
“スバル”: お前のそういうこと、俺は好きだけど
“スバル”: 間違った情報に振り回されたのだって、 大方お前のそういうところが原因なんだろ
“ラインハルト”: まあ、人を疑うのは性に合わないからね
“ラインハルト”: それに、君は僕の友人だ 友を救うことに、理由なんて必要ないんじゃないかな
ナレーター: それからスバルは、ラインハルトにすべてを話して聞かせた
ナレーター: ラインハルトは真剣にスバルの話に耳を傾け、 スバルを非難するようなことは決して言わなかった
“ラインハルト”: ──なるほど 君の事情は理解したよ、スバル
“スバル”: どうだ? 呆れて協力する気が失せちまったか?
“ラインハルト”: まさか むしろその逆だよ 微力を尽くさせてもらう
“ラインハルト”: クルシュ様やアナスタシア様まで この件に関わっていらっしゃるなら、なおさらだよ
“ラインハルト”: あの妙な紙切れについてもわかったし、 話してくれたことに感謝するよ、スバル
“ラインハルト”: ……それで、スバル 僕からも一つ君にお願いしたいことがあるんだ
“スバル”: ラインハルトが俺にお願い? もちろん力になる 遠慮なく言ってくれ
“ラインハルト”: ありがとうスバル それじゃ──
“フェネ”: ──二人での内緒話は終わりましたか?
“スバル”: ああ、待たせて悪かったな けど、ラインハルトとの話し合いはうまくいったよ
“エミリア”: それじゃラインハルトは……?
“ラインハルト”: エミリア様、微力を尽くさせていただきます スバルから聞いた話も他言しないことをお約束しましょう
“エミリア”: ありがとう、ラインハルト
“エミリア”: ……でもスバル、どうして二人だけで話したの? 私もちゃんとラインハルトにお願いしたかったわ
“スバル”: いや!? それは……
“フェネ”: 恐らくスバル氏は、情けなく頭を下げる姿を エミリア女史に見られたくなかったのでしょう
“フェネ”: スバル氏にはこれといった取柄もなく それに反してラインハルト氏は類まれなる才華をお持ちです
“フェネ”: 一方的に助力を乞う哀れな姿を、スバル氏がエミリア女史に 見せたくないであろうことは容易に推測が可能です
“スバル”: 待て待て、今回は“一方的に”ってわけじゃねぇよ もちろん才華の違いは認めるけども
“フェネ”: それは本当なのでしょうか?
“ラインハルト”: 本当だよ 僕からスバルに大切なお願いをさせてもらった
“レム”: ラインハルト様がスバルくんに? その内容がレムにはとても気になってしまいます
“レム”: スバルくんは無理ばかりするので、 そういった内容でなければいいのですが……
“スバル”: レム、心配無用だ ラインハルトからのお願いに、肉体の酷使は必要はねぇ
“スバル”: むしろ使うのは口だけ……
ナレーター: スバルはそう言って、無事に『異形』の腹から生還した ロム爺を支えるフェルトを見据えるのだった
“フェルト”: なんだよ兄ちゃん アタシになんか用か?
“フェルト”: 言っとくけど、王選ってのに出ろって話なら、 説得するだけ無駄だかんな
“スバル”: まぁ、そう頑なになるなよ、フェルト
“スバル”: 貧民街で暮らしてたお前が王様になるなんて、 とてつもないサクセスストーリーじゃねぇか
“フェルト”: はあ? そのさくせすなんとかってのはなんだよ?
“フェルト”: 訳わからねーこと言って、 アタシを煙に巻こうとしたって無駄だぜ、兄ちゃん
“スバル”: いやいや、そんなつもりはねぇよ
“スバル”: けど、マジで悪い話じゃない気がするのに、 どうしてお前はそんなに固辞すんだよ?
“スバル”: 今の暮らしだって、貧民街の頃に比べりゃ雲泥の差だろ?
“フェルト”: 確かにうまいもん食えて、温かいベッドで眠れてるよ 今の暮らしは貧民街の頃とは比較にならねー
“フェルト”: けどな、そんなことアタシにはどうだっていいんだよ
“フェルト”: アタシはやりたいようにやりてーのに、 ラインハルトのとこにいるとそれができねー
“フェルト”: そんな場所に長くいるわけにはいかねーんだよ
“スバル”: やりたいようにやりてぇんだったら、 王様になるのが一番それができそうだけどな
“スバル”: だって王様だぜ? やりたいようにやりてぇ奴にとっちゃ最高のポジションだろ
“スバル”: 俺がお前の立場だったら、 間違いなくラインハルトの話に乗っかるな
“フェルト”: アタシはアタシだ そんな仮定に意味なんてねーよ、兄ちゃん
“スバル”: そうは言うけどさ……
“スバル”: って、お前の説得の前に、まずはロム爺の治療だな なんとか立っちゃいるが、明らかに治療が必要そうだぜ
“スバル”: まぁ、あんな奴の腹ん中にいたんだから、 今立ててるだけでも奇跡なんだろうけど
“ロム爺”: はぁ……はぁ…… 少し疲れておるだけじゃ この程度、しばらく休めばなんてことないわい
“フェルト”: 強がるなよ、ロム爺 だいぶヤバいのは、見るからに分かるだろ
“レム”: スバルくん、レムがロム様に治癒魔法を
“スバル”: ああ、頼む、レム
“レム”: わかりました それではロム様──
“ロム爺”: 待つのじゃ お前さんたちに借りを作るわけにはいかん
“スバル”: 待て待て、借りとか気にしてる場合じゃねぇだろ
“スバル”: ロム爺にもしものことがあったら、俺も寝覚めがわりぃし、 そんなこと気にせずレムの治療を受けてくれ
“スバル”: マジで借りに感じる必要なんてねぇから
“フェルト”: そうだぜ、ロム爺 今は四の五の言ってる場合じゃねー
“フェルト”: 姉ちゃん、頼む ロム爺を治してやってくれ
“レム”: ──これでロム様はもう大丈夫です
“スバル”: そうか、良かった これで安心してフェルトの説得に時間が割けるよ
“スバル”: ってことで、試合再開だ、フェルト なんとか考えなおしてくれねぇかな?
“フェルト”: さっきと状況が大きく変わったってこと、 兄ちゃんは気付いてねーのか?
“スバル”: はあ? 状況が変わったってどういうこどだよ?
“フェルト”: ったく、まったく打算なしってわけか けど……
“ロム爺”: すまんな、フェルト 小僧は借りではないと言っとったが、そういうわけにもいかんか
“フェルト”: まあな 借りはきっちり返すのがアタシの流儀だ
“フェルト”: ロム爺を化け物の腹の中から助け出したのが、 ラインハルトのヤローで
“フェルト”: ロム爺を治療したのが青髪の姉ちゃんときやがる
“フェルト”: それに、やりてーことやるには、 王様になるのが一番っていう
“フェルト”: 兄ちゃんの意見にも一理ありやがるぜ
“スバル”: え? もしかして、フェルトお前……
“フェルト”: 考えてやってもいいってだけだ まだ王様になるって決めたわけじゃねーよ
“ラインハルト”: ありがとうございます、フェルト様 騎士ラインハルト、全力でフェルト様を支援させていただきます
“フェルト”: だから、決めたわけじゃねーって言ってんだろ あくまで考えてやるだけだ 勘違いすんじゃねー
“スバル”: 王選ってのは、五人揃わねぇと開始されねぇんだ 前向きな検討、マジで頼むぜ、フェルト
“スバル”: ってな感じが、今の精一杯だな すまねぇラインハルト、これ以上は無理っぽい
“ラインハルト”: いや、構わないよ、スバル
“ラインハルト”: 僕では検討さえしてもらえなかったからね 十分な進展だよ、ありがとう
“フェルト”: で、言い忘れてたけど、これからはロム爺も一緒だかんな それだけは譲れねー
“フェルト”: ロム爺に自由に会えねーなんてナシだ もしダメなら検討するって話はなかったことにさせてもらう
“ラインハルト”: フェルト様、承知しました ロム様、ぜひフェルト様のお傍でお過ごしください
“スバル”: よし! これで離れ離れになってたフェルトとロム爺も 一緒になれて、めでたしめでたしだな
“フェルト”: ……ところで兄ちゃん アタシが王選ってのに参加するしねーに関係なく
“フェルト”: 兄ちゃんには、片付けなきゃならねーことが、 色々とあるんじゃねーのか?
“スバル”: うぐっ…… 確かに……
“ラインハルト”: ひとまずスバルたちが『禁書』に封じたというページについては、 騎士団には報告しないでおくよ
“ラインハルト”: それから、ページについて新しい情報が入ったときは、 共有させてもらう
“スバル”: サンキュー、ラインハルト すげぇ助かるよ
“オットー”: あの『剣聖』様を味方に付けてしまうとは…… 僕はとてつもない人と知り合いになってしまった気が……
“スバル”: “知り合い”ってのはよそよそしい表現だな 俺たちは歴とした友達だろ
“スバル”: 足として世界各地に俺を運び、 もしものときは盾として守ってくれよな、オットー
“オットー”: 友達って意味わかってます!? そんなのただ都合良く使われてるだけですよね!
“フェネ”: オットー氏、それではまず 可及的速やかにフェネたちをハクチュリまで運んでください
“フェネ”: 『異形』との戦いでフェネたちはかなり疲労しています
“オットー”: いやいや、僕だって疲労困憊ですよ! みなさんと違って、ほとんど寝てませんし!
“フェネ”: 眠れるときにしっかりと睡眠をとっておかないと、 このように辛い思いをすることになります
“フェネ”: そういったことを身をもって学べば、 同じ失敗を繰り返すことはないでしょう
“フェネ”: つまり、これはフェネの優しさなのです 遠慮せずお受け取りください
“オットー”: や、優しさって……
“オットー”: もう、わかりましたよ! ハクチュリまでお送りします! 竜車を取ってくるので、みなさん少しお待ちください
ナレーター: ラインハルトのおかげで、 なんとか強力な『異形』を倒し帰路につくことができたスバル
ナレーター: だが世界には、まだまだ多くのページが存在している──
ナレーター: ……翌日
使用人: フェルト様! どちらにいらっしゃいますか お稽古のお時間です!
“フェルト”: 礼儀作法の稽古なんかかったりーし、 ちょっくら街に出ようぜ、ロム爺
“ロム爺”: よいのかフェルト?
“フェルト”: 当り前だろ アタシはまだ王様になるって決めたわけじゃねー
“フェルト”: それに、もし王様ってのになるんだったら、 アタシは色々ぶっ壊してやるつもりだ
“フェルト”: かったりー、礼儀や作法なんかも含めてな
“ロム爺”: ほう…… 色々と考えてるようじゃな
“フェルト”: まあな 約束は約束だ ちゃんと考えるつもりだよ
“フェルト”: そのためにも、街を見て回りてーって思ってる
“フェルト”: 遥々ラインハルトの地元まで出張ってきてるんだ こんな機会、無駄にできねーだろ
“ロム爺”: フェルト……
“ロム爺”: そうじゃな 実際に自分の目で見ることは大切じゃ
“ロム爺”: 特に弱い者の声は、屋敷の中にいては聞こえんでな
“ロム爺”: わかったわい 儂も付き合ってやろう
“フェルト”: よし! そうと決まればロム爺──
使用人: お、お待ちくださいフェルト様!
“フェルト”: わりーけど、ちょっと用があるんだ ロム爺も一緒だし、心配すんなってラインハルトには伝えてくれ
“フェルト”: じゃあな──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_00

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■プロローグ タイトル:ロズワールへの報告 更新日:2021/10/28

ナレーター: アストレア領での一件を解決したスバルたちは、 ロズワールへの報告もかねて、屋敷へと戻ってくるのだった
“ラム”: バルス、ロズワール様がお待ちよ
“スバル”: ああ、ラム なんか久しぶりだな 屋敷の仕事を押し付ける感じになっちまってすまねぇ
“ラム”: その話は後 今はロズワール様のところへ急いでちょうだい エミリア様もお願いいたします
“エミリア”: ええ ロズワールを待たせちゃ悪いもの スバル、急ぎましょう
“レム”: レムはしばらくお屋敷を空けていましたので、 使用人としてのお仕事に精を出したいと思います
“ラム”: いえ ロズワール様からは、レムも参加するように言われているわ
“ラム”: バルスと一緒にロズワール様の執務室に向かってちょうだい
“レム”: わかりました それでは、レムも執務室に向かいます
“フェネ”: ……
“エミリア”: フェネ?
“フェネ”: …………
“エミリア”: フェネ、大丈夫? なんだかすごーく体調が悪そう
“フェネ”: 申し訳ありません、エミリア女史 どうやら長旅の疲れが出てしまったようです
“フェネ”: 道中何も考えずに、ぼーっとできるスバル氏と違い、 フェネはページの感知に粉骨砕身で当たらなければならない故
“フェネ”: かなりの疲労がたまってしまっています
“スバル”: おいおい、誰がぼーっとしてたって?
“スバル”: 俺は俺なりに神経を研ぎ澄ませて、 迫りくる危険がないか注意を払ってたつもりだ
“スバル”: それに考えることは盛りだくさんだったし、 全然ぼーっとなんてできてねぇよ
“フェネ”: …………
“スバル”: んだよ、だんまりか? いつもだったら、 ああだこうだ言い返してきそうなやり取りだってのに
“フェネ”: 残念ながらスバル氏 現在のフェネにはスバル氏を気遣う余裕がありません
“スバル”: “気遣う”って、お前の憎まれ口って俺への気遣いだったの!?
“スバル”: って、マジで調子悪そうだな……
“スバル”: ロズワールへの報告は俺たちに任せて、 お前は一足先に部屋へいって休んでろよ
“エミリア”: うん、私もその方がいいと思う フェネ、無理しないで 部屋で休んでていいわよ
“フェネ”: エミリア女史の優しさに感謝します そのお言葉に甘え、そうさせていただきます
“スバル”: 確かにエミリアたんは優しいけども、 俺からの優しさがなかったことになってるのは気のせいか?
“ラム”: ハッ そんな恩着せがましい人間の優しさなど、 なかったことにされて当然ね
“ラム”: バルスは優しさを主張する前に、まずは恥を知るべきだわ
“スバル”: うぐっ…… この感じ久々に味わったけど、 やっぱ精神的ダメージがでけぇ……
“スバル”: ラムとフェネがセットだと、俺の立場は悪くなるし、 発言には気を付けねぇとな
“ラム”: 発言に気を付ける、いい心掛けね
“ラム”: ラムとフェネの前に限定せず、 バルスは常に発言には気を付けなさい
“スバル”: なんだか綺麗にまとまった感じになってすげぇ悔しい! 言い返してもドツボにはまるだけだから、言い返さねぇけど!
“ラム”: それで、フェネは一人で部屋までいけるのかしら? もし難しいようなら、レムを付き添わせるわ
“レム”: はい レムがフェネさんをお部屋までお連れします
“フェネ”: いえ、一人で問題ありません 皆様はロズワール氏のところへお急ぎください
“フェネ”: では──
“スバル”: フェネ、マジで大丈夫か……っていっちまいやがった
“ラム”: 本人が大丈夫というのであれば、ラムたちにできることはないわ
“ラム”: バルス、ロズワール様がお待ちよ 執務室に急いでちょうだい
“ロズワール”: ──よく戻ったねーぇ 無事で何よりだーぁよ
“ロズワール”: それで、私に色々と報告があるんじゃないかーぁな
“スバル”: ああ、たくさんある
“ロズワール”: フェネくんがここにいないことも、 そのうちの一つということでいいのかい?
“スバル”: いや、あいつは体調が悪くなって、 一足先に部屋へいって休んでるよ
“スバル”: ページの感知ってのはすげぇ疲れるらしい その反動が出ちまった感じだ
“ロズワール”: ほう……
“エミリア”: 本当なのロズワール フェネ、すごーく体調が悪そうだったもの
“ロズワール”: なるほど では、やむを得ないですね
“ロズワール”: でもスバルくん、フェネくんがいなくて本当に大丈夫かい? フェネくんの回復を待ってからでも私は構わないよーぉ
“スバル”: いや、大丈夫だ それに時間的余裕があるわけじゃねぇ 済ませられることは先に済ませておきたい
“ロズワール”: 時間的な余裕が……ない?
“スバル”: ああ 時間が大切なものだってのは知ってたけど、 最近は特に痛感させられてるよ
“スバル”: 時間が経てた経つほど、状況は悪化しちまう 色々急ぎてぇってのが本音だ
“ロズワール”: わかった それではスバルくん、始めてくれたまえ
ナレーター: それからスバルは、アストレア領での一件や
ナレーター: 本人は正式に参加を表明していないものの、 王選の五人目の候補者がフェルトになる可能性が高く
ナレーター: その後ろ盾をラインハルトが務めるであろうことなどを ロズワールに話して聞かせた
“ロズワール”: ──そうか ラインハルトくんがフェルト様を……
“スバル”: その様子からすると、五人目の候補者がフェルトに なりそうだって、ロズワールは知らなかったみたいだな
“ロズワール”: もちろんだーぁとも 無論、五人目が見つかり、 間もなく王選が開始されるという噂は耳にしていたけどねーぇ
“ロズワール”: それにしても、 ラインハルトくんが相手になるかもしれないとは……
“ロズワール”: フェルト様が参加されるのであれば、 楽に勝たせてはもらえないかもしれない
“エミリア”: ロズワール、誰が相手でも私はがんばるわ
“ロズワール”: その意気です、エミリア様 我々は一歩ずつ着実に進んでいきましょう
“ロズワール”: それに──
“スバル”: 『禁書』の件が片付かない限り、 王選が開始されることはねぇって言いたいんだろ?
“ロズワール”: その通りだよ、スバルくん この件が片付かない限り、王選は始められないからねーぇ
“ロズワール”: となると、気になるのは力を増す『異形』…… いつまで秘密裏に事を進められるか怪しくなってしまった
“ロズワール”: 幸い、現時点で我々の関与は公になっていないが、 強力化する『異形』を限られた戦力で相手をするのには限界がある
“パック”: その通りだね それに大切なリアが、 これ以上危険な目に遭うのを見過ごすわけにはいかないかな
“スバル”: おっと、パック! ずいぶん久々の登場だな!
“パック”: 日が暮れてからの戦いだと、ボクは出てこられないからね ボクの力を借りたいなら、戦う時間を考えてくれないと
“スバル”: いやいや、こっちは狙って 日が暮れてから戦ったわけじゃねぇって
“スバル”: 色んな事情が重なって、 たまたまクライマックスがあのタイミングになっちまったんだ
“スバル”: むしろ、日が暮れたら勤務時間外みたいな 公務員的な働き方を改善して、少しは残業してくれねぇかな?
“パック”: 酷いな、スバル その言い方だと、 まるでボクが悪いみたいになっちゃうよ?
“スバル”: その言い方だと、今度は俺が悪いみたいじゃねぇ? 俺、まっとうな指摘をしただけだよね
“ラム”: いいえ、バルス 悪いのはバルス 他の誰でもないわ
“パック”: スバル、桃髪の子はこう言ってるけど?
“スバル”: フェネがいないと安心してりゃ、 パックの登場でアウェイ感が半端ねぇ
“スバル”: とにかく、元を正せば、確かに俺のせいだ
“スバル”: けど、それについては重々承知してるから、 あんまりいじめないでくれ
“ラム”: ……重々承知している? ハッ その目を見ているととてもそうは思えないわね
“スバル”: こんな目つきでごめんね!
“スバル”: けど、マジで反省してるし、 みんなにも申し訳ねぇって思ってるよ
“スバル”: こればっかりは信じてもらうしかねぇけど……
“パック”: 信じてもらうしかない、ね そう言われると、逆に怪しく感じちゃうかな
“ラム”: 大精霊様の言う通りよ 信じることを懇願する者ほど信用に値しないわ
“スバル”: 目つきは論外! “信じてくれ”はNG! いったい俺はどうすりゃいいんだ?
“パック”: まあ、結果を出すことだろうね それまでは何を言われても我慢して黙々と努力だよ、スバル
“パック”: それにボクは、本当に今の状況を快く思っていないんだ スバルにもあの子狐にも不満があることは確かだね
“スバル”: フェネに……不満? どっちかってとあいつは俺の被害者で、 フェネに不満を持つのはお門違いなんじゃねぇか?
“パック”: ふーん スバルは子狐を庇うんだね?
“スバル”: いやいや、庇うってほどじゃ……
“スバル”: それにしても、 お前がフェネに不満を持ってるなんてちょっと意外だったよ
“スバル”: 確かにページの感知に関しちゃかなりポンコツだけど、 それだってやむを得ねぇっていえばやむを得ねぇことだしな
“ラム”: 大精霊様と違い、ラムが不満を持っているのはバルスだけよ 安心なさい
“スバル”: それはそれで心穏やかじゃないかな! とても安心できる情報じゃないしね!
“スバル”: とにかく、なんだか話が脱線してる気がするから、 元に戻させてもらう
“スバル”: ロズワールに話さなきゃいけないことが、まだ残ってるんでね
“ロズワール”: ほう…… それは何かな、スバルくん
“スバル”: いや…… “話さなきゃいけないこと”ってよりは、 ロズワールにお願いしたいことってのが正確な表現なんだけど……
“ロズワール”: 構わないよ、スバルくん 話してくれたまえ
“スバル”: サンキュー、ロズワール それじゃ言わせてもらうけど、 お願いしたいことってのはオットーとの取引拡大についてだ
“スバル”: 実はあいつには今回すげぇ世話になった
“レム”: それについては間違いありません
“レム”: レムたちが目的を果たし、こうして無事に戻ってこられたのも、 オットー様のお力添えがあったからに他なりません
“エミリア”: 確かにそう オットーくんがいなかったら、 フェルトちゃんだってどうなっていたかわからないわ
“スバル”: エミリアたん、レム……
“スバル”: この二人もこう言ってくれてる ぜひ、オットーとの取引拡大を前向きに検討してやってくれ
“スバル”: あいつにはホント世話になった あれだけやって見返りがないんじゃ、さすがにオットーが可哀想だ
“ロズワール”: わかったよ、スバルくん オットーくんの件については、良きに計らうと約束しよう
“スバル”: 助かるぜ、ロズワール マジ、オットーのこと、よろしく頼むな
“スバル”: ってなわけで、俺から話すことは以上だ 言うべきことは全部言えた気がする
“ロズワール”: ではスバルくん 私から質問をしてもいいかーぁな
“スバル”: ああ、もちろんだ なんなりと質問してくれ
“ロズワール”: それでは、遠慮なく質問させてもらうとしよう
“ロズワール”: ──スバルくん、君はこれからどうするつもりなんだい?
“ロズワール”: 今後『異形』はより強力になり、 ページの回収が完了する目途も立っていない
“ロズワール”: そもそも、残りのページがどこにあるかさえ、 現状ではわかっていないように思える
“ロズワール”: そんな状況をスバルくんは、 いったいどうやって打開するつもりなのかーぁな
“スバル”: いきなり核心を突いた質問だな……
“スバル”: 正直なところ、その質問に対する答えを 今の俺は持ち合わせちゃいねぇ
“スバル”: 次にどこへ向かうべきかも定かじゃねぇし、 強力化する『異形』に対する具体的な対策がないのも事実だ
“スバル”: ──けど、それは“今は”って話だ
“スバル”: 幸い、俺たちにはクルシュさんっていう心強い味方がいる
“スバル”: まずは王都に向かって、 クルシュさんに相談するべきだって思ってるぜ
“ロズワール”: ほう……
“スバル”: すまない、ロズワール 今の答えは、お前を失望させちまったかな?
“ロズワール”: いや、むしろその逆だよ、スバルくん
“スバル”: ……その逆? そりゃまたなんで?
“ラム”: バルス、くだらない質問をして、 ロズワール様にお手間を取らせるべきではないわ
“ラム”: それとも頭が悪いバルスには、本当にわからないのかしら?
“スバル”: うぐっ…… すまない、ラム 俺の頭が悪いのか、ロズワールからの思わぬ評価が理解できねぇ
“ラム”: ハッ やはりバルスはバルスということね
“ラム”: クルシュ様にご相談する、 それが今ある選択肢の中でもっとも有効
“ラム”: その答えを導き出したバルスを ロズワール様は評価されたということよ
“ラム”: 独断専行で物事を悪化させることしかできなかったバルスが
“ラム”: “まずはクルシュ様にご相談”という結論に至ったこと については、ラムもわずかながら評価しなくもないわ
“ラム”: クルシュ様であれば、ご相談する相手としては適任 あの方は、おいそれと誤った判断はされないでしょうから
“スバル”: つまり、俺の判断は信用できねぇけど、 クルシュさんの判断だったら信用できるってわけね
“スバル”: 褒められてるようで、 実はけなされてるっていういつものパターンじゃねぇか
“ラム”: いえ、そんなことはないわ
“ラム”: 力もないのに、 バルスには自分でなんとかしようとする傾向が強すぎたわ
“ラム”: そんなバルスがクルシュ様にご相談…… 悔しいけれど、まともな判断よ
“ラム”: 本当にバルスの独断専行は、事態を悪化しかさせないから
“スバル”: 褒めるなら、ちゃんと褒めてもらっていいかな! わざわざ俺を下げること言わなくていいだろ!
“スバル”: けど、確かに今までの俺は、 自分でなんとかしようとしすぎてたかもな
“スバル”: そのせいで事態を悪化させちまったことがあることも認める
“スバル”: とはいうものの、『禁書』の件は、 あまりにも事態が大きくなりすぎちまった
“スバル”: もはや俺の力だけじゃどうにかできねぇことは明白だ 頼れるものは頼らざるを得ねぇ
“ロズワール”: そう認められることが、大きな進歩だーぁよ
“ロズワール”: 今のスバルくんになら、安心して任せることができそうだねーぇ
“ロズワール”: というわけでスバルくん 『禁書異変』解決に向けて、引き続き尽力してくれたまえ
“スバル”: ──ってなわけなんだよ、ベア子
“ベアトリス”: お前がしばらく屋敷を留守にするのはわかったのよ とっととここから出ていくかしら
“スバル”: 『禁書異変』の解決が今は最優先
“スバル”: ロズワールはしばらく不在にすることを了承してくれたけど、 やっぱラムには少し申し訳ねぇ
“スバル”: 屋敷のこと、全部ラムに任せることになっちまう
“ベアトリス”: ベティーには興味ないのよ とにかくとっととここから出ていくかしら
“スバル”: “興味ない”ってなんだよ? お前が快適に暮らすためにも、結構重要な話じゃねぇか
“ベアトリス”: ベティーの快適な暮らしを一番邪魔しているのはお前なのよ! それに比べれば些細なことかしら!
“ベアトリス”: それに、姉妹の姉だけで対応が難しい場合は、 村から手伝いがくるのよ
“ベアトリス”: お前の心配など不要 時間の無駄でしかないかしら
“スバル”: とか言いつつ、こういう俺との会話を 実は楽しんでたりするんだよな?
“スバル”: 何かっつーと“出ていけ”とか言いつつ、 俺が禁書庫にきたことを喜んでくれるのがベア子だもんな
“ベアトリス”: な、何を言い出しやがるのよ! ベティーは楽しんでなどないし、嬉しくもないかしら!
“ベアトリス”: これ以上居座るなら──
“スバル”: 待て待て待て! 悪かった! ちょっと調子に乗りすぎたよ!
“スバル”: もう少しだけ、お前と話がしたいから、 強制的に追い出すのはナシにしてくれ!
“スバル”: お前がどうか知らねぇけど、 俺はこうしてお前と会えて嬉しく思ってるんだ
“スバル”: ここにくるのも久しぶりだし、もうちょい話をしようぜ、ベア子
“ベアトリス”: お前がそこまで言うのであれば、 このまま追い出すのは勘弁してやるのよ
“ベアトリス”: それで、お前はベティーにどんな話があるかしら
“スバル”: 具体的にこれだって話があるわけじゃねぇよ
“スバル”: 一番知りたいのは、 『禁書』のページがどこにあるかってことだけど……
“スバル”: さすがのベア子にもそれはわからねぇだろ?
“ベアトリス”: 当然なのよ ページのありかなどベティーは知らないかしら
“スバル”: やっぱそうか……
“スバル”: 話し合いで、まずはクルシュさんに相談するってことで、 俺たちの意見はまとまったんだ
“ベアトリス”: それについては、それをお前が提案したことも含めて、 さっき聞いたのよ
“スバル”: そう、言い出しっぺは俺だ けど、思わぬ高評価に正直戸惑ってる
“スバル”: あのラムまで、評価してくれてる感じだったし
“ベアトリス”: お前は、評価されたことが気にくわないのかしら
“スバル”: いやいや、そんなことはねぇよ でも……
“スバル”: すげぇ考えに考えたけど、 いい案が浮かばなかったってのが本音だ
“スバル”: 結局なんも思い付かなくて、 クルシュさんに相談してみようってなっただけで
“スバル”: 別に評価されるようなことじゃねぇんだ むしろ無能だって罵られても文句が言えない状態だったんだよ
“ベアトリス”: それでお前は何が希望なのよ
“ベアトリス”: ロズワールや姉妹の姉の代わりに、 ベティーに罵ってほしいのかしら
“スバル”: ──っ!
“スバル”: はは もしかしたら、そうなのかもしれねぇ……
“スバル”: 俺は問題をクルシュさんに丸投げしようとしてるだけで、 別に褒められるようなことはなんもしてねぇわけだし
“ベアトリス”: そんなことは、ロズワールも姉妹の姉もきっとわかっているのよ
“ベアトリス”: それでもお前の成長を感じ、評価した ただそれだけのことかしら
“スバル”: ……俺の成長?
“ベアトリス”: お前は優れた剣の使い手でもなければ、 強力な魔法が使えるわけでもないのよ
“ベアトリス”: 多少頭は回るようだけれど、 知性に溢れているとはとても言えないかしら
“スバル”: 待て待て、今、俺の成長の話だよね? ただ単にディスられてるだけな気がするんだけど!
“スバル”: 確かに罵ってほしいみたいな話にはなったけど、 この流れはなんか違う気がする
“ベアトリス”: 人の話は最後まで聞くのよ ベティーはお前を罵ってるわけではないかしら
“ベアトリス”: これまでのお前なら、明らかに自分の手に余る状態でも、 無謀に突っ走り、周囲に迷惑をかけていたのよ
“ベアトリス”: それに、相談しようと思える相手がいることが重要かしら
“ベアトリス”: 良い関係が築けているからこそ、 お前は相談しようと思えたのよ
“スバル”: なるほど…… そういう意味じゃ、確かにクルシュさんとはいい関係が築けてるよ
“スバル”: だからこそクルシュさんに相談してみようって思ったんだ
“スバル”: 誰だってよかったわけじゃねぇ クルシュさんだったから俺は……
“ベアトリス”: お前に信用できる相手ができた そういったことも含めてあの二人はお前を評価したかしら
“スバル”: そういう意味じゃ、クルシュさんだけじゃねぇ
“スバル”: アナスタシアさんともいい関係は築けてるし、 ラインハルトやフェルトとも絆は深まった気がする
“スバル”: 色々込みで考えると、『禁書』の件でやらかした当初から比べると 今は各段にパワーアップしてんな
“スバル”: オットーやコリーナだって、色々協力してくれてる
“スバル”: どんどん強力になる『異形』に戦々恐々としてたけども、 こっちだってどんどん戦力がアップしてるんじゃねぇか
“スバル”: そう考えると、悲観ばっかする必要はなさそうだ むしろ未来が明るく思えてくるよ
“スバル”: ありがとな、ベア子!
“スバル”: お前のおかげで色々腑に落ちたうえに、 なんだか明日への活力が湧いてきたよ!
“スバル”: と、場が温まってきたところで、次の話題といこうじゃねぇか
“スバル”: しばらく会えなくなりそうだし、今日はとことん付き合ってやるよ 朝まで語り合おうぜ、ベア子!
“ベアトリス”: な、な、何を言い出すのよ! お前とこれ以上語り合うつもりはないかしら!
“ベアトリス”: しかもベティーに付き合ってやるという、 上からの態度も気に入らないのよ!
“ベアトリス”: やはりお前にはこうするのが一番 とっとと出ていくかしら──
“スバル”: 待て待て、ベア子! 自分の足で出ていくから、魔法だけは──
“スバル”: ぐり・にっ・じ!?
“スバル”: てててて…… やれやれ、やっぱこうなるのね!

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Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■1話 タイトル:少し二人で 更新日:2021/10/28

“スバル”: ──すまない、クルシュさん すぐにでも報告にきたかったんだが、少し時間が空いちまった
“スバル”: フェネが体調を崩して、 その回復に思いの他時間がかかっちまったんだ
“クルシュ”: 事情はわかった であれば仕方がない フェネ、卿の体調はもう大丈夫か?
“フェネ”: お心遣いありがとうございます フェネの体調は回復済みです クルシュ女史のご心配には及びません
“クルシュ”: そうか、ならばいい
“クルシュ”: それでだ 卿らには申し訳ないのだが、 私からも一つ謝罪せねばならないことがある
“スバル”: クルシュさんが……俺たちに?
“ヴィルヘルム”: それについては、私からお話しましょう
“ヴィルヘルム”: 前回のご報告の席に同席できなかった故、 フェリスは本日の参加を強く希望していたのですが……
“ヴィルヘルム”: 騎士団から急な召集がかかってしまい、 ただいま不在となっております
“ヴィルヘルム”: フェリスが戻るまで、皆様には今しばらくお待ちいただきたく……
“スバル”: なんだ、そんなことか
“スバル”: 改まって“謝罪”とか言い出すから、 すげぇ深刻なことを想像しちまったけど
“スバル”: フェリスを待つぐらいどうってことないよ そうだよね、エミリアたん?
“エミリア”: うん、フェリスを待ちましょう 参加したいって言ってくれてるなら、なおさらだわ
“スバル”: レムやフェネも構わないよな?
“レム”: もちろんです レムは喜んでフェリックス様のお帰りをお待ちいたします
“フェネ”: 無論フェネもです
“フェネ”: フェリス女史が参加したいと言うのであれば、 そこには何か重要な意図があるはず
“フェネ”: お待ちする以外の選択肢はないかと
“クルシュ”: 卿らに感謝を ではヴィルヘルム、エミリアたちを部屋まで
“ヴィルヘルム”: かしこまりました
“ヴィルヘルム”: それでは、皆様を客間までご案内いたします フェリスが戻るまで、どうぞそちらでお寛ぎください
ナレーター: ヴィルヘルムに案内された客間で、 フェリスの帰りを待つことになったスバルたち
ナレーター: だが、ほどなくして、 クルシュが客間へとやってくるのだった
“クルシュ”: ──すまない、ナツキ・スバル 少し二人で話せないか?
“スバル”: クルシュさんが、俺と? 別に構わないけど……
“エミリア”: スバル、いってあげて 私たちはこの部屋で休んでるから
“スバル”: わかった、エミリアたん んじゃ、ちょっくらいってくるよ
“スバル”: ──というわけで、一緒に中庭に出たわけだけど、 二人で話したいことってのは何かな?
“スバル”: まぁ、なんとなく察しはついてるけども
“クルシュ”: そうか やはり卿には察しがついているのだな
“スバル”: ああ この前、クルシュさんは一人で宿を訪ねてきたもんな たぶん、そのことじゃないかって思ってるよ
“クルシュ”: ご名答だ ラインハルト・ヴァン・アストレアが 保護しているという少女について気になっている
“スバル”: やっぱりそうか
“スバル”: それについては約束通りちゃんと調べてきたし、 フェリスが戻ってからする報告でも話させてもらうつもりだよ
“スバル”: “保護してる”なんて表現とは、 かなりかけ離れた状態だったんでね
“クルシュ”: ……かけ離れている?
“スバル”: ああ 結論から言えば、フェルトは王選の候補者だ あいつが手にすると徽章とやらが光るらしい
“スバル”: 現時点では、“候補者の候補者”ってな感じではあるんだけど…… まぁ、たぶん、あいつの正式参加は時間の問題だと思う
“クルシュ”: ──っ! なるほど、そういうことか……
“クルシュ”: そして、その者は今、 ラインハルト・ヴァン・アストレアの元にいるのだな?
“スバル”: そうだ ラインハルトの奴はフェルトを王様にするつもりだ
“スバル”: つまり、エミリアたんにとってもクルシュさんにとっても、 強力な好敵手が出現しちまう可能性が高いってわけだよ
“クルシュ”: それについてはその通りだが
“クルシュ”: 王選へ参加する竜の巫女が五人揃わぬ限り、 そもそも王選は開始されない
“クルシュ”: ラインハルト・ヴァン・アストレアを相手にすることになっても、 フェルトという者には、ぜひ王選に参加してもらいたいものだ
“スバル”: ラインハルトに物怖じしないとは、さすがクルシュさんだな
“スバル”: それに、そもそもで言えば、 『禁書』の件を解決しない限り王選は始まらねぇ
“スバル”: まずは全力でページを集めねぇとだ
“クルシュ”: それについても異論はない
“クルシュ”: 『禁書異変』の解決が最優先 五人目の候補者が見つかったとて、そのことに変更はない
“スバル”: というわけで、今日はその件で色々相談させてもらおうと思ってる よろしく頼むぜ、クルシュさん

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Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■2話 タイトル:成長を思えばこそ? 更新日:2021/10/28

“フェリス”: ──待たせちゃってごめんね、スバルきゅん
“スバル”: おうおう、待った待った いきなり出鼻をくじかれる感じになっちまったよ
“フェリス”: そんなにフェリちゃんの不在が寂しかったの? スバルきゅんてば、意外と可愛いとこがあるじゃにゃい
“スバル”: 寂しくなんかないわ!
“スバル”: 今日は話すことが盛りだくさんなのに、結構な時間待たされたから 皮肉の一つでも言ってやりたくなったんだよ
“フェリス”: “皮肉の一つでも”なんて大人げにゃい フェリちゃんはお仕事でいなかったんだよ?
“フェリス”: そもそも今日の騎士団の集まりだって、 『禁書』のせいで色々騒ぎが起きてるのが原因にゃんだし
“スバル”: うぐっ…… だとすると申し訳ねぇ…… 俺はとやかく言えるような立場じゃねぇな……
“フェリス”: そうそう スバルきゅんには、フェリちゃんのことを 咎める資格なんてないから、そこのところ忘れないでネ
“フェリス”: それに、フェリちゃんが騎士団の集まりに参加したのは、 騎士団の最新の動向を把握するためだよ
“フェリス”: そういう情報が今回の話し合いには不可欠なのに、 スバルきゅんてば──
“クルシュ”: フェリス、その辺にしてやれ ナツキ・スバルも不用意な発言を反省しているはずだ
“フェリス”: スバルきゅん、本当?
“スバル”: ああ、本当だ マジで反省してるよ
“クルシュ”: ナツキ・スバル、悪く思わないでくれ フェリスが厳しく指摘したのは、卿の成長を思えばこそだ
“スバル”: ……俺の成長?
“フェリス”: スバルきゅんが成長してくれないと、 結果的にクルシュ様の足を引っ張ることになるからね
“フェリス”: フェリちゃんとしては、 ビシバシ教育して、スバルきゅんには成長してほしいってわけ
“フェリス”: 本当は憎まれ役なんてしたくにゃいんだけど、 スバルきゅんってば、甘やかすとダメになりそうだから
“スバル”: それについては、心配ないんじゃないかな 俺の周りにいるのは、甘やかさないタイプばっかりだし
“フェネ”: スバル氏の周囲にいる“甘やかさないタイプ”とは、 フェネのことだと推測しますが
“フェネ”: フェネとてスバル氏のことを思えばこそです
“フェネ”: ですので、フェリス女史の想いを引き継ぎ、今度はフェネが──
“スバル”: 待て待て! クルシュさんがその辺にしろって言ってただろ たとえ俺のためでも、別の機会に頼むよ
“スバル”: これ以上厳しめの指摘が続いたら、 さすがに俺の心がもたねぇから
“スバル”: それに、今日はマジで話さなきゃならないことが盛りだくさんだ 早いとこ本題に入ろうぜ
“エミリア”: そうよ、スバル
“エミリア”: フェルトちゃんのこととか、これからのこととか、 話さないといけないことがたくさんあるわ
“レム”: はい 急ぎ本題に入るべきだとレムも思います
“クルシュ”: 私にも異論はない さっそく本題に入るとしよう
“クルシュ”: ナツキ・スバル、一部私がすでに報告を受けた内容もあるが、 フェリスやヴィルヘルムへの共有もかねて一から話してくれ
“スバル”: わかったぜ、クルシュさん、一から話させてもらう
“ヴィルヘルム”: スバル殿、よろしくお願いします
“スバル”: 任せてください、ヴィルヘルムさん それじゃ──

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Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■3話 タイトル:王にふさわしい者 更新日:2021/10/28

ナレーター: 先程二人で話した際、 クルシュへは簡単な共有を行っていたスバルだったが
ナレーター: 話し合いにフェリスとヴィルヘルムが参加したこともあり、 改めてこれまでのことを詳しく話して聞かせるのだった
“スバル”: ──俺からの報告は以上だ
“スバル”: なんとか前回取り逃したノボンがいるページは 『禁書』に封じられたんだけど
“スバル”: “こわいまもの”を宿してると思う ノボンのお話の後編は見つけられていねぇ
“スバル”: あと、フェルトがラインハルトの後ろ盾で、 王選に参加することになるかもってのも話させてもらった通りだ
“フェリス”: ふーん、ラインハルトがね
“フェリス”: でも、それについては、 今日の騎士団の集まりでは特に触れられてなかったかな
“スバル”: そうか…… ラインハルトの奴、まだ言ってねぇのかもな 本人が正式に参加を表明したわけじゃないしさ
“フェリス”: 少なくともラインハルトから上の人たちに、 フェルト様が参加するかもって話はいってると思う
“フェリス”: フェルト様の騎士を務めるなら、 ラインハルトは騎士団を離れなきゃならなくなるわけだし
“フェリス”: それに、そろそろ王選が開始されそう って空気があったことは確かだもん
“フェリス”: そういう空気があったってことは、少なくとも 五人目になりそうな候補者の目星があるってことじゃにゃい
“フェリス”: なのに、近衛騎士団に属するフェリちゃんたちにさえ、 何も知らされていにゃい……
“フェリス”: フェルト様が正式に参加を表明していないこととは、 別の問題な気がしちゃうけどね
“フェリス”: そもそもそのフェルト様って、貧民街の出身なわけでしょ?
“スバル”: それってつまり、 貧民街出身者は王選の候補者として相応しくないってことか?
“スバル”: エントリーを受け付けない可能性があるから、 今はまだ公にしねぇって理解で合ってる?
“フェリス”: えんとりー?っていうのが、なんのことだかわからにゃいけど
“フェリス”: フェルト様の参加を快く思っていない人がいるのは確かだろうね
“フェリス”: もちろん、最終的には徽章が光るっていう事実が 優先されることになるとは思うんだけど
“クルシュ”: 無論だ 竜歴石の予言には『ルグニカの盟約途切れし時、 新たな竜の担い手が国を導く』とある
“クルシュ”: そしてその予言は『新たな国の導き手になり得る五人 その内より一人の巫女を選び、竜との盟約に臨むべし』と続く
“クルシュ”: 竜歴石は、王国の命運を左右する事態に際して文字を刻み、 王国の歴史を動かしてきた
“クルシュ”: 竜歴石の予言に従うのは当然のことだ
“スバル”: なるほど…… 本当にフェルトがその巫女の一人ってなら、 エントリーを受け付けないってことにはならなそうだな
“スバル”: けど、そもそも本当に徽章が光るのか?って確認も含めて、 正式な決定までにはまだまだ時間がかかるって感じか
“スバル”: そもそも肝心のフェルト自身が、 正式な参加表明には至っていねぇわけだし
“スバル”: とはいうものの、 ラインハルトがバックにいても、そんな感じなんだな?
“スバル”: あいつが推すんだったら、 出自やなんだは問題にはならなそうなのに
“レム”: いえ、それだけ出自が大切ということでしょう
“レム”: フェリックス様の推測通り、貧民街出身のフェルト様の参加を 快く思わない方は少なからずいると思います
“スバル”: 俺としては、貧民街出身ってのは、むしろ強力な武器になるかも って思ったんだが、どうやらそうじゃないらしい
“フェリス”: “貧民街出身が武器”って、面白いことを言うね、スバルきゅんは
“スバル”: いやいや、面白いこと言ってる自覚はねぇよ
“スバル”: 俺の故郷じゃ、そういう出自が逆に民衆の支持を集めて 大きな後押しになったりするんだよ
“スバル”: 金も学もねぇ田舎者が、 民衆から絶大な支持を集めて頂点まで上り詰めるみたいな感じでさ
“スバル”: 家柄もいい、学もある、人脈にも恵まれているみたいな人より、 そういう人の方が民衆は応援したくなるもんだろ
“ヴィルヘルム”: もちろん民衆からの支持は大切でしょう ですが、そのことで勝敗が決することはありません
“フェリス”: そうそう それにクルシュ様には、 民衆からの支持もちゃんとあるしネ
“フェリス”: 家柄も、学も、人脈も、民衆からの支持も全部あるクルシュ様が、 一番王様にふさわしいってわけ
“スバル”: いやいや、王様に一番ふさわしいのはエミリアたんだ!
“フェリス”: スバルきゅんってば、 フェリちゃんの前でよくそんなことが言えるね
“フェリス”: それだけはフェリちゃんだって譲れないよ!
“スバル”: 俺だって譲れねぇよ!
“スバル”: クルシュさんが色々含めてすげぇ人だってのは認めるけども、 王様になるのはエミリアたんなんだよ!
“フェリス”: むーーっ!
“スバル”: うぐぐぐっ!
“エミリア”: ──スバル、落ち着いて
“フェネ”: そうです、スバル氏 王選の話など時期尚早 『禁書異変』を解決しない限り開始されないのですから
“クルシュ”: その通りだ フェリスも言を慎め
“フェリス”: すみません、クルシュ様 フェリちゃんとしたことが、 スバルきゅん相手に熱くなってしまいました
“フェリス”: とにかくスバルきゅん、 この話は色々解決した後ってことでいいかにゃ?
“スバル”: ああ、そうだな 今は協力することが大切だ
“スバル”: それに、“家柄もいい、学もある、人脈にも恵まれてる”ってのは 別にクルシュさんに他意があっての発言じゃねぇよ
“スバル”: クルシュさんよりもフェルトの方が民衆からの支持を集める みたいな感じで聞こえちまってたなら謝らせてもらう
“スバル”: ヴィルヘルムさんが否定的な意見を言った時点で、 察しられたらよかったんだけど……
“フェリス”: ホントだよ、スバルきゅん ヴィル爺があんな風に口を挟むなんて珍しいんだからね
“ヴィルヘルム”: 申し訳ありません 恐らくスバル殿に他意はないとは思ったのですが……
“スバル”: いやいや、あの発言だと、 クルシュさんを狙い撃ちしてるって取られても仕方ないです
“スバル”: こちらこそすんませんでした

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Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■4話 タイトル:まずは同盟を 更新日:2021/10/28

“フェリス”: ──スバルきゅん、ページはラインハルトの屋敷から、 逃げ出したんだよね?
“スバル”: いや、逃げ出したかどうかはわからねぇけど、 ラインハルトが滞在してた屋敷から飛び去ったのは確かだよ
“レム”: はい ページたちは一斉に屋敷から飛び去りました スバルくん以外にもレムやエミリア様も目撃しています
“フェリス”: ふーん やっぱりページはラインハルトから逃げたんだね
“スバル”: 逃げた? そりゃまたどうして?
“フェリス”: ラインハルトが近くにいると、 マナの吸収には悪影響が出そうだもん
“フェリス”: ラインハルトって周囲のマナを吸収しちゃったりするから
“スバル”: ……マナを吸収?
“フェリス”: そう だから、兵士たちの治療現場には、 ラインハルトは立ち入り禁止だったりするの
“フェリス”: マナがないと治るものも治らないしね
“スバル”: なるほど…… マナを吸収して成長するページにとって、 あいつの屋敷はあんま居心地が良くなかったわけか
“スバル”: んで、ラインハルトが不在のタイミングを狙って、 まんまとページたちは逃げ出したんだな
“スバル”: あの大移動は謎だったりしたんだけど、そう考えると納得だ
“スバル”: にしても、絶大な戦闘力を誇る『剣聖』様にも、 そんな面があったなんてな……
“スバル”: 何もかも完璧なんて奴は、やっぱこの世にはいないのかもしれねぇ
“フェリス”: まあ、クルシュ様を除いて、そういう人はいにゃいだろうね
“スバル”: そりゃずるいだろ! だったら、ウチのエミリアたんだって完璧だ!
“エミリア”: スバル、私は完璧なんかじゃないわ もっとしっかりしなきゃって思うことばっかりだもの
“クルシュ”: 私もだ、フェリス 完璧であるために、まだまだ精進が必要だと自覚している
“クルシュ”: それに、ページがラインハルト・ヴァン・アストレアの本邸から、 移動した件については合点がいったが
“クルシュ”: 強力な『異形』を宿したと思しき“こわいまもの” のページが野放しになっているという現実は変わらない
“クルシュ”: 我々はいがみ合うのではなく、結束を深めるべきだ
“スバル”: そうだぞ、フェリス しかも、『異形』の奴らはどんどん強力になっていくんだ
“スバル”: 俺たちは心を一つにしなくちゃいけねぇんだから、 いちいち突っかかってくるんじゃねぇ
“フェリス”: いやいや、どう見たって突っかかってきてるのは、 スバルきゅんの方でしょ?
“ヴィルヘルム”: ──フェリス
“フェリス”: って、スバルきゅんには色々言いたいことがあるけど、 ヴィル爺が怖い顔してるからこの辺にしといてあげる
“エミリア”: ──スバル
“スバル”: こっちもエミリアたんからの視線が痛いから、 この辺にしといてやるぜ、フェリス
“スバル”: まずは色々飲み込んで『禁書異変』の解決だ それでいいな?
“フェリス”: うん お互い言い合うのはそれからだね、スバルきゅん
“スバル”: んで、いよいよ話が本題に入るわけだけど、 クルシュさんはどうするべきだと思う?
“スバル”: ぜひ、クルシュさんの意見を聞かせてほしい
“クルシュ”: ……まずアナスタシア・ホーシンとは正式な同盟を結ぶべきだな
“クルシュ”: さらに王選への参加を見越して
“クルシュ”: ラインハルト・ヴァン・アストレアを従える フェルトという者とも同盟を結ぶべきだろう
“クルシュ”: 無論、プリシラ・バーリエルとも同盟を結ぶことが望ましい
“スバル”: 確かに協力関係を明確にするために、アナスタシアさんのとことは 正式な同盟を結んだ方がいいかもしれねぇ
“スバル”: ラインハルトがいるフェルトのところも、 王選への参加は時間の問題なわけだし
“スバル”: 協力関係を明確化するために、同盟を結ぶってのはありだ
“スバル”: けど、プリシラのとこはどうだろう? 協力するのは難しいんじゃないかな
“クルシュ”: 卿はすでに彼の者と協力関係にあるように私には思えるのだが?
“フェネ”: 左様です プリシラ女史の協力により、 我々は何枚ものページを『禁書』に封じることができました
“スバル”: 確かにページは封じられたけど、 あれは“協力により”って感じじゃねぇだろ
“スバル”: プリシラと同盟なんて俺は反対だね
“フェネ”: フェネは、プリシラ女史から 様々な有益な情報を得られたと記憶しています
“スバル”: そういや『禁書』がある絵本作家の遺作で、 ページを集めてる妙な芸術家がいるって話は聞いたな
“スバル”: あいつがページをその芸術家に売らないでいてくれたから、 俺たちがゲットできたことも承知してるつもりだ
“スバル”: けど……
“エミリア”: 一緒にページに入って、『異形』とも戦ってくれたわ
“スバル”: それは善意的に解釈しすぎだよ、エミリアたん!
“スバル”: 確かに一緒にページの中でノボンと戦ったけど、 あれはあいつがページから『異形』を出せって強引に……
“エミリア”: でも、一緒に戦ってくれたのはホントでしょ?
“スバル”: まぁ、結果的にはそうだけども
“フェリス”: なんだか話を聞いてると、 明らかに協力してくれてる感じがするかにゃ
“スバル”: た、確かに…… 結果だけ見れば、そうなっちまってるな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_05

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■5話(中編) タイトル:後悔しない選択 更新日:2021/10/28

“スバル”: ──みんなと同盟を結ぶべきだってのはわかった けど、俺たちは『禁書』のページも回収して回らないといけねぇ
“フェネ”: 無論です ページは刻一刻とマナを蓄え、 『異形』を顕現させる恐れがあります
“レム”: 『異形』だけでなく、ページの影響で魔獣が『変異体』となり、 大きな被害が出てしまうかもしれません
“ヴィルヘルム”: どうやらページの回収はこれまで通り進めつつ、 各陣営と同盟の交渉をする必要がありそうですね
“フェリス”: そうなると、二手に分かれるって感じかにゃ?
“フェリス”: 同盟の交渉を進めるエミリア様の班と、 ページの回収を進めるフェネちゃんの班みたいに
“クルシュ”: 恐らくそうなるな
“クルシュ”: 同盟の交渉は王選候補者であるエミリアが直接行うのが筋 必然的にエミリアは同盟交渉の班に属することになる
“エミリア”: うん、同盟の交渉を他の誰かに任せるつもりはないわ ちゃんと私がやらないと
“フェネ”: ページの感知を行えるのはフェネのみ フェネはページの回収に専念するべきでしょう
“スバル”: 確かにエミリアたんとフェネで分かれるしかなさそうだ 問題は俺とレムをどう分けるかだけど……
“フェネ”: スバル氏とレム女史はフェネの班に属するべきです
“スバル”: いやいや、それだとエミリアたんが一人に……
“エミリア”: スバル、私もフェネの言う通りだと思う
“エミリア”: だって、『異形』はどんどん強くなってるでしょ? レムもページを集めるフェネと一緒の方がいいもの
“スバル”: “レムも”ってことは、 はなから俺がフェネ班所属ってことになってない?
“エミリア”: え? 違うの? スバル、いつもフェネと一緒にいるから……
“エミリア”: それに、戦力が必要なのは、 どう考えても『異形』と戦うフェネの方よ
“エミリア”: 二手に分かれるなら、同盟の交渉は私に任せて
“レム”: エミリア様がそうおっしゃるのであれば、 レムはエミリア様の指示に従います
“クルシュ”: どうやら話はまとまったようだな それでは──
“スバル”: いやいや、待て待て 俺はそのチーム分けには賛成できねぇ
“スバル”: そもそも戦力って意味じゃ、俺は戦闘力ゼロみたいなもんだし、 口にはそれなりに自信があるから、同盟交渉の方が役立てるはずだ
“フェネ”: いえ、戦闘力がないスバル氏でも、 優秀なフェネの支援があれば十分戦力になります
“フェネ”: そのことをスバル氏は身をもって経験しているはずです
“スバル”: くっ…… 確かにそうだけど……
“フェネ”: とはいうものの、エミリア女史という 貴重な戦力を失うことに変わりはありません
“スバル”: そうだよ! 二手に分かれるってことは、 どうしたって戦力の分散は避けられねぇ
“スバル”: “こわいまもの”と対峙する可能性があるのに、 それは避けた方がいいんじゃねぇかな?
“スバル”: 確かに効率はアップするかもしれねぇけど、 『異形』とまともに戦えないんじゃ本末転倒だろ
“クルシュ”: つまり、卿は二手に分かれることには反対だと言うのだな?
“スバル”: ああ、反対させてもらう 同盟交渉に向かうのも、ページの回収に向かうのもみんな一緒にだ
“フェネ”: スバル氏、それだけエミリア女史が大切ということでしょうか?
“スバル”: いや…… そういうわけじゃなくて……
“スバル”: 二手に分かれることには、 メリットだけじゃなくてデメリットもあるっつーか……
“フェネ”: スバル氏、ここは言葉を濁す場面ではありません
“フェネ”: 効率を求め二手に分かれる 安全を重視して戦力の分散を避ける どちらにも一長一短があります
“フェネ”: どちらを選んでも後悔をする結果が待っているかもしれません
“フェネ”: であるなら、より後悔が少ない選択を行うべきです
“フェネ”: スバル氏にとってエミリア女史が大切であるなら、 エミリア女史を一人にするべきではありません
“フェネ”: エミリア女史を失ってする後悔は──
“フェネ”: とてつもなく大きく、 取り返しがつかないものになってしまうでしょう
“スバル”: つまり、正解がわからない以上、 より後悔が少ない選択肢を選べってことか?
“フェネ”: 左様です どちらの選択が正解かはわかりかねますが、 どちらの選択の後悔が少ないかは明白です
“スバル”: フェネ、お前……
“クルシュ”: 待て、本当にそうだろうか? フェネの意見はナツキ・スバルのみに該当するように思える
“クルシュ”: どちらにも一長一短があることは確かだろう
“クルシュ”: だがしかし、ナツキ・スバルがするであろう後悔を基準に、 この件を決定することに私は疑問を感じる
“クルシュ”: どちらの案についても、もっと議論を尽くすべきだ
“フェリス”: フェリちゃんもクルシュ様の言う通りだと思う
“フェリス”: それに、フェネちゃんがそんなこと言うにゃんてちょっと意外 明らかにスバルきゅんのための発言だよね、それ
“フェネ”: クソ上司のモチベーション管理もフェネの役目 上司を思う部下の姿に、ぐっとこない上司はいません
“フェネ”: 皆様であれば的確な指摘をしてくださるだろうと、 少し偏った発言をさせていただきました
“スバル”: え? そうなの? 俺はてっきり……
“スバル”: いやいや、今の発言の方が本心じゃないってパターンもあるか…… フェネって案外ツンデレだしな
“スバル”: とはいうものの……
“スバル”: なんだかんだで、すでに日が暮れ始めちまった
“クルシュ”: 確かに、議論を尽くすにも、日を改めた方が良さそうだな まずは双方持ち帰り、明日の朝決めるというのはどうだろう?
“スバル”: 賛成だ、クルシュさん 急いではいるが、明日の朝なら今決めるのと大差ない気がするよ
“スバル”: それに、今の議論には大切なことが抜けちまってるしな
“クルシュ”: ほう…… “大切なこと”とは?
“スバル”: そもそもページのありかがわからねぇってことだ
“スバル”: ページの回収を優先したくても、 次にどこへ向かうべきかがわからねぇ
“エミリア”: それはそうね…… ページの場所がわからないし、 まずはみんなで同盟のお話を頑張った方がいいかも
“クルシュ”: なるほど…… 協力関係が強固なものになれば、それだけ 各陣営からもたらされる情報の信頼度や量は増すことになる
“クルシュ”: 闇雲にページを探すことを考えると、 まずは同盟交渉を優先した方がいいかもしれんな……
“スバル”: どうぞ
“フェネ”: 失礼します、スバル氏 少しよろしいでしょうか?
“スバル”: ああ 俺もお前と話したいって思ってたとこだよ
“フェネ”: スバル氏がフェネと? 気持ち悪いですよ、クソ上司 セクハラ認定させていただきます
“スバル”: どうしてそうなるんだよ!
“スバル”: だいたい、お前は俺と話がしたくて、 俺の部屋にきたんじゃねぇのか?
“フェネ”: 左様です フェネはスバル氏にお話があります
“フェネ”: ですが、スバル氏とは違いとてもまじめなお話です
“スバル”: それについては俺もだよ! まじめな話だから安心してくれ!
“スバル”: クルシュさんのとこでした、お前の発言が気になってる
“スバル”: 正解はわからねぇが、後悔する選択は明確ってヤツだ
“スバル”: フェリスも言ってたけど、 あれはお前らしくない発言だった気がする
“スバル”: 明らかに俺のためにしてくれた発言だしな
“フェネ”: 部下が上司のことを思うのに、何か問題でも?
“スバル”: そういうわけじゃねぇけど、やっぱすげぇ意外な発言だったよ お前って冷徹な考え方をするイメージだったから
“フェネ”: スバル氏 エミリア女史のことが大切なら、 どんなことがあっても離さないようにするべきです
“フェネ”: 失ってからでは遅いのですよ
“スバル”: そ、それは……
“フェネ”: スバル氏にとって、一番大切なことはなんなのですか?
“フェネ”: 『禁書異変』の解決は無論大切でしょう ですが、それはエミリア女史があってこそなのでは?
“スバル”: 当り前だ 肝心のエミリアがいなくなっちまうんじゃ、 『禁書異変』を解決しても意味なんてねぇよ
“スバル”: って、お前は何がなんでも『禁書』のページを集めろって 立場じゃなかったっけ?
“フェネ”: 左様です 『禁書』のページ集めは最も優先されるべき事項です
“スバル”: お前の情緒は大丈夫か!? 完全に矛盾したこと言ってるよね!
“フェネ”: いえ、立場の違いです
“フェネ”: フェネが最も優先するべきこと、 それは『禁書』のページの回収です
“フェネ”: ですが、スバル氏にとっても、同じなのでしょうか?
“スバル”: ──いや、一緒じゃねぇ
“スバル”: 俺が『禁書異変』を解決してぇのは、完全にエミリアたんのためだ
“スバル”: エミリアたんがいなかったら、 好き好んでいばらの道に足を踏み入れるわけねぇだろ
“スバル”: そもそも俺って人間は……
“フェネ”: スバル氏?
“スバル”: いや、なんでもねぇ
“スバル”: 色々ネガティブ発言をぶちまけそうになっちまったけど、 ここはぐっと我慢だ
“スバル”: 言ったところで、気分が沈むだけで、特にいいことなんてないしな
“スバル”: とにかく、サンキューな、フェネ おかげで大切なことを思い出せたよ
“スバル”: お前からすると“エミリアたんのため”って理由は、 不純で気に入らないかもしれねぇけど
“フェネ”: いえ 大切な目的をそっちのけで、 エミリア女史にうつつを抜かすことを許す気はありませんが
“フェネ”: スバル氏の行動の根底にあるものは理解しているつもりです
“フェネ”: そしてそれは、フェネがとやかく言うことではありません
“フェネ”: フェネとしては、 結果的に『禁書』のページを回収できればいいわけですから
“スバル”: 俺のモチベーションの源は、別になんだっていいってわけか
“スバル”: その源を失って、 俺が廃人になることを危惧してるんだな、お前は
“フェネ”: 左様です エミリア女史を失うことは、 スバル氏の活動停止を意味します
“フェネ”: つまり、フェネの発言は矛盾していませんし、 スバル氏を気遣っているわけでもありません
“スバル”: やっぱりさっきの“サンキュー”はナシな! お前はそういう奴だったよ!
“スバル”: それで、お前の話ってのは? なんか話があって、お前はここにきたんだよな?
“フェネ”: いえ、すでに話すべきことは話せました スバル氏には結論が出たようですので
“スバル”: ああ、確かに俺の結論は出たな エミリアたんやレムの結論はわからねぇけど
“フェネ”: エミリア女史もレム女史も、スバル氏の判断を尊重するはずです
“フェネ”: もっと言えば、クルシュ女史でさえ、恐らくそうするでしょう
“スバル”: クルシュさんが? それはさすがに俺を高く評価しすぎなんじゃ?
“フェネ”: 実際に動くのはフェネたちです クルシュ女史であれば実際に動く我々の意見を尊重されるでしょう
“スバル”: 確かにクルシュさんは王都を離れられねぇ
“スバル”: 王都のどこかにページが眠ってて、 『異形』やら『変異体』が暴れ出す可能性はゼロじゃねぇしな
“スバル”: ってか、クルシュさんが王都を守ってくれるから、 俺たちが安心して動けるんだけど
“スバル”: んで、仲間が増えれば、 そういったことも色々融通が利くようになる
“スバル”: やっぱ、まずやるべきことは──
レムの声: スバルくん、失礼します
“レム”: スバルくん、スバルくんに手紙が届いています
“スバル”: え? 俺に手紙?
“レム”: はい コリーナさんから、スバルくん宛ての手紙が届きました

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_06

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■6話 タイトル:結論はそれから 更新日:2021/10/28

登場キャラと服装

ナレーター: コリーナからの手紙に目を通したスバルは、 皆を自分の部屋に集めるのだった
“スバル”: フェネとも話し合って、結論は出たつもりだったんだけど……
“スバル”: コリーナからの手紙で状況は一変した
“エミリア”: それってどういうこと?
“スバル”: 回収すべきページのありかがわかったんだよ、エミリアたん
“レム”: つまり、次に向かうべき場所がわからないという状況では なくなったということでしょうか?
“スバル”: ああ、その通りだ、レム
“スバル”: 手紙には“スバルさんの探し物はグステコにあります アルビスの氷河亭という酒場でお待ちしています”って書かれてる
“スバル”: つまり、俺たちが向かうべきは、アルビスにある氷河亭ってわけだ
“レム”: アルビス…… グステコ聖王国の氷河都市ですね 向かうのであれば相応の準備が必要です
“スバル”: “氷河都市”ってことはすげぇ寒いってこと? だから準備が必要なのか?
“レム”: そうです グステコ聖王国は極寒の地です
“フェネ”: 確かアルビスはシバレル大氷河に面した都市だったはず それが“氷河都市”と称される由縁だったかと
“フェネ”: ですが、本当に我々は 氷河都市アルビスに向かうべきなのでしょうか?
“フェネ”: そのコリーナ女史という方を信用してよいのかもわかりかねます
“フェネ”: そもそもコリーナ女史は、 『禁書』のページのことを知っているのですか?
“フェネ”: 手紙に書かれたスバル氏の探し物が、 『禁書』のページである保証はどこにもありません
“スバル”: ページについては、詳しく話したわけじゃねぇが、 恐らく知ってると思う
“フェネ”: “恐らく”などという不確かな状態で、 遥々グステコ聖王国の都市に向かうつもりですか?
“スバル”: そうだ あいつにはガナクスでの借りがあるし、 一度振り回された経験はあるが、今は信じてもいいと思ってる
“スバル”: それに、ページのありかについちゃ、 現時点じゃなんも情報がねぇ状態だ
“スバル”: 少しでも可能性があるなら、 アルビスってとこに向かうべきなんじゃねぇかな?
“フェネ”: スバル氏、冷静になってください
“フェネ”: スバル氏は、 まずは皆で同盟締結を急ぐべきだという結論に至ったはず
“フェネ”: その判断は理にかなっています
“スバル”: そうは言うけど、もし本当にページがあったら、どうすんだよ? 『異形』とか『変異体』の被害が出ちまうんだぞ
“エミリア”: 確かにそうだけど、 フェネが言う通り冷静に考えた方がいいわ
“エミリア”: 明日、クルシュさんたちともう一度話すんだし、 結論を出すのは、それからでも遅くないでしょ?
“スバル”: エミリアたん……
“スバル”: わりぃ、確かにその通りだね 俺、ちょっと焦っちまってたよ
“スバル”: ページのありかがわからねぇっていう状況に、 光明が差した気がしたから……
“スバル”: エミリアたんが言う通り、まずはクルシュさんに共有して、 ちゃんとクルシュさんの意見も聞くべきだな
“レム”: レムもその方がいいと思います クルシュ様であれば真剣に考え、的確なご意見をくださるでしょう
“スバル”: ああ、そうだな、レム 明日の朝クルシュさんと話して、結論を出すのはそれからだ
“レム”: すぐに考えを改められる柔軟さ さすがスバルくんです
“スバル”: いやいや、俺の考えが短絡的だっただけだから、 その“さすが”は受け取れないかな
“スバル”: それに“さすが”なのはエミリアたんやレムの方だぜ おかげで早まった判断をしなくて済んだよ
“フェネ”: スバル氏には、直前の記憶がないのでしょうか? 真っ先に指摘したのはフェネだったはず
“スバル”: そうだな、フェネ お前にも感謝してるよ ありがとな
“フェネ”: ……それはそれで調子が狂いますね スバル氏には憎まれ口がお似合いです
“スバル”: それ、お前が言う!? “憎まれ口”って俺よりもお前のイメージだろ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_07

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■7話 タイトル:コリーナは何者? 更新日:2021/10/28

ナレーター: 翌朝 朝食を済ませたスバルたちの元にヴィルヘルムが訪れるのだった
“ヴィルヘルム”: 皆様、おはようございます
“スバル”: ヴィルヘルムさん!? どうしてここに?
“ヴィルヘルム”: お迎えにあがらせていただきました 皆様、外の竜車にお乗りください
“スバル”: 竜車でお迎えとは、 クルシュさんも粋な計らいをしてくれるもんだ
“スバル”: まぁ、それだけ時間を無駄にできないって、 思ってるってことかもしれねぇけど
“レム”: そうですね コリーナさんからの手紙の件もあります 少しでも早く話し合いを始めるに越したことはありません
“エミリア”: うん、ホントにそう みんな、急いで竜車に乗りましょう
“クルシュ”: ──それでは、さっそく昨日の話し合いの続きを始めるとしよう
“クルシュ”: まずは卿らの結論を聞かせてくれ
“スバル”: すまない、クルシュさん それについてなんだけど、昨日とは事情が変わっちまった
“クルシュ”: 事情が……変わった?
“エミリア”: そうなの ページがグステコにあるっていう情報が届いたわ
“クルシュ”: ページがグステコ聖王国にある、だと?
“スバル”: ああ、そうらしい だから、今は次に向かう場所が定かじゃないって状態じゃねぇんだ
“フェネ”: それについては、正確にお伝えする必要があります
“フェネ”: まず、グステコ聖王国にあるものが、 『禁書』のページと断定できているわけではありません
“フェネ”: また、届いた情報の信憑性自体が、とても乏しい状態です
“スバル”: なんだよ、フェネ! コリーナのことが信用できねぇのか!
“フェネ”: 申し訳ありません、スバル氏
“フェネ”: コリーナ女史が信用に足る人物かどうか、 フェネには判断できかねます
“フェリス”: そのコリーナちゃんっていったい何者にゃの? そこからちゃんと話してくれにゃいかな
“フェリス”: そうじゃないと、フェリちゃんたちにはなんにもわからないよ
“フェリス”: どうしてフェネちゃんは“信憑性が乏しい”なんて言って、 それに対してスバルきゅんはそんなにムキになってるわけ?
“スバル”: わりぃわりぃ、確かにまずはコリーナの説明だな
“スバル”: ええっと、コリーナってのは……
“スバル”: すまないフェリス、うまく説明できねぇ けど、信用できる奴なんだよ
“フェリス”: ちゃんと説明できないのに“信用できる奴”なんて言われてもね
“フェリス”: どうやらフェネちゃんが言う通りみたいだね
“フェリス”: 『禁書』のページがグステコにあるって情報をもたらしたのは、 そのコリーナちゃんなんでしょ?
“フェリス”: だとしたら、その情報を信じるのはどうかと思うにゃ
“フェリス”: そもそもエミリア様やレムちゃんは、 そのコリーナちゃんのことを知ってるのかな?
“エミリア”: ううん スバルから聞いただけで、直接は会ったことはないわ
“レム”: レムもです コリーナさんには会ったことがありません
“フェネ”: 無論、フェネもです そもそもスバル氏の妄想の可能性さえあるぐらいです
“スバル”: さすがにそれはないわ! 少なくともオットーは会ったことあるしな
“スバル”: オットーの竜車に乗って、 俺とコリーナはガナクスまで旅したんだよ
“スバル”: ガナクスでの一件を解決できたのは、 マジでコリーナのおかげなんだ
“スバル”: あいつは命を張って『異形』の囮になってくれて、 だから俺はエミリアたんのところに……
“クルシュ”: ナツキ・スバル 卿がそのコリーナを信頼していることは、 紛れもない事実だろう
“クルシュ”: 鉱山都市ガナクスでコリーナが命を賭して卿に協力したこともな
“クルシュ”: しかし、そのコリーナという者が、 卿以外の者にとって得体の知れぬ人物であることもまた事実
“クルシュ”: 信用に足る相手とはとても言い難い
“スバル”: なんでもコリーナは有名な冒険家らしい “超冒険者”って言われてピンときたりしないかな?
“ヴィルヘルム”: 冒険を生業(なりわい)とする者はいるでしょうが、 残念ながらコリーナという名に心当たりはありません
“ヴィルヘルム”: 無論、その“超冒険者”という二つ名にも、 私は聞き覚えはありませんな
“クルシュ”: 同じく私もだ コリーナという名に心当たりはない
“スバル”: やっぱりそうか そんな気はしてたけど……
“エミリア”: でも、私が助かったのはその子のおかげなのよね?
“スバル”: そうだよ、エミリアたん 神出鬼没で怪しさ満載ではあるんだけど
“スバル”: コリーナは俺たちに協力してくれるって言ったし、 実際に命を張って協力してくれたんだ
“スバル”: んで、そいつが今、グステコのアルビスで俺のことを待ってる
“スバル”: 俺としては会いにいきたいって思う
“スバル”: そこに『禁書』のページがあるかもしれないってなら、 なおさらそう思うよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_08

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■8話 タイトル:できれば会ってちゃんとお礼を 更新日:2021/10/28

ナレーター: 昨日の話し合いの続きをするために、 クルシュの元を訪れたスバルたち
ナレーター: スバルとしては、コリーナが待っていると手紙で伝えてきた グステコ聖王国の氷河都市アルビスへ向かいたいところなのだが
ナレーター: 情報源のコリーナが信用できる人物なのかという そもそもの話になってしまい
ナレーター: スバルのアルビスいきには暗雲が立ち込めていた
“エミリア”: ──私はアルビスに向かってもいいと思う
“エミリア”: ほら、アルビスにいったら、 そのコリーナって子にも会えるでしょ?
“エミリア”: 私、ちゃんとお礼を言わなくっちゃ
“エミリア”: それに、『禁書』のページがどこにあるのか、 なんにも情報がない状態よ
“エミリア”: スバルが言う通り、少しでも可能性があるなら、 アルビスに向かってもいいんじゃないかしら
“スバル”: エミリアたん……
“レム”: レムは、スバルくんがコリーナさんのことを 信用できると言うのであれば
“レム”: 全面的にその言葉を信じたいと思います
“レム”: なので、次にレムたちが向かう場所が、 コリーナさんが待つ氷河都市アルビスになっても
“レム”: 特に異論はありません
“スバル”: レム……
“フェリス”: フェリちゃんはどうかと思うにゃ スバルきゅんってば、コロっと騙されちゃいそうだし
“フェリス”: 相手が可愛い女の子なんてことになれば、 なおさらスバルきゅんの目は信じられないかにゃ
“フェネ”: スバル氏 コリーナ女史の容姿はいかがなのでしょう?
“スバル”: えっと……その…… まぁ、可愛いかな……
“スバル”: だって、ここは美少女率が半端ねぇ異世界だぞ!
“スバル”: エミリアたんやレムはもちろんだけど
“スバル”: 男のはずの猫耳だってこのクオリティなんだから、 コリーナだって可愛いに決まってるだろ!
“エミリア”: す、スバル、突然大声出してどうしたの?
“スバル”: ごめん、ごめん 思わず声を張り上げちゃったけど、 これといった意味はないから気にしないで、エミリアたん
“スバル”: とにかく、確かにコリーナは可愛いが
“スバル”: 俺の周囲にいるのは容姿端麗な女の子ばっかだから、 そんなことに惑わされたりしねぇよ
“スバル”: それに、こちらの結論は、今の話の通りだ
“スバル”: アルビスに向かってコリーナに会うべきだと思ってる
“クルシュ”: ナツキ・スバル 卿らの意向は理解した 戦力分散を避ける結論に至ったことも含めてな
“クルシュ”: 私としても、氷河都市アルビスに向かうというのは、 悪くない選択肢のような気がしている
“クルシュ”: 氷河都市アルビスは、アナスタシア・ホーシンが拠点としている カララギ都市国家とグステコ聖王国との国境に位置している
“クルシュ”: つまり、氷河都市アルビスへの訪問が無駄足になったとしても、 すぐにカララギ都市国家に入ることができるだろう
“スバル”: なるほど アナスタシアさんとの同盟交渉に向かう経路を アルビス経由にするって考えれば
“スバル”: コリーナの情報が有益なものじゃなくても、 被害は最小限で済むってわけか
“スバル”: 必然的に同盟交渉の最初の相手が、 アナスタシアさんってことにはなっちまうけど
“ヴィルヘルム”: それについては問題ないでしょう むしろ最初の交渉相手はあの方を置いて他にはいらっしゃらない
“フェリス”: 確かにそうだね
“フェリス”: ラインハルトも候補になるとは思うけど、最近忙しそうなんだよね あんまり王都にはいにゃいみたいだし
“スバル”: 自分の領地で色々あったからな まぁ、ラインハルトが忙しい身なのは納得だ
“スバル”: んで、俺たちの次の行き先はアルビスってこと、 クルシュさんたちも了承したって解釈していいかな?
“クルシュ”: ああ 実際に行動をするのは卿らだ 卿らが出した結論を尊重させてもらう
“フェリス”: フェリちゃんもクルシュ様がいいなら、問題ないよ
“フェリス”: でも、コリーナちゃんに会ってみて、 『禁書』のページとは関係なさそうな感じだったら
“フェリス”: すぐにカララギに向かってアナスタシア様と会ってね 時間ってすごく貴重なものだし
“スバル”: ああ、もちろんだ コリーナに会ってみて、 『禁書』の件と関係ない話になるようだったら
“スバル”: すぐにカララギに向かわせてもらう
“クルシュ”: アナスタシア・ホーシンには、 卿らが面会に向かう旨、私から一報を入れておこう
“スバル”: そりゃ、助かるぜ、クルシュさん!
“クルシュ”: また、グステコ聖王国は極寒の地 防寒着など必要なものは我がカルステン家から貸し出させてもらう
“クルシュ”: 卿らは準備に費やす時間も惜しいだろうからな
“エミリア”: ありがとう、クルシュさん、とっても助かるわ
“エミリア”: 私は寒さなんてへっちゃらだけど、 スバルはそうもいかないでしょ?
“スバル”: “へっちゃら”ってきょうび聞かねぇな…… なんて話は置いといて
“スバル”: 確かに現代っ子の俺は、 極端な暑さや寒さは遠慮したいってのが本音だよ
“スバル”: 長らくエアコンの効いた快適な部屋に引きこもってた身なんでね
“エミリア”: ごめん、スバル ちょっと何言ってるのかわかんない
“エミリア”: でも、クルシュさんから防寒着が借りられるなら安心 よかったわね、スバル
“スバル”: ああ、安心だ さすがに長旅になりそうだから、 こっちでなんも準備しなくていいとはならないかもしれないけど
“スバル”: 明日には出発できそうな気がするよ
“レム”: はい、スバルくん 恐らく明日の朝には出発できると思います
“スバル”: ってな感じで色々決まったけど、 フェネ、お前もそれでいいよな?
“フェネ”: 無論です
“フェネ”: 空気が読めないスバル氏と違い、フェネには空気が読めます故 一連の流れに水を差すようなことはいたしません
“スバル”: 空気が読めなくて悪かったな!
“スバル”: にしても、お前はコリーナに会いにいくことを反対してたのに、 案外あっさりOKを出すんだな
“スバル”: もっと揉めるかと思ったぜ
“フェネ”: フェネは単に懸念される事柄を指摘したまでです 反対をしていたわけではありません
“フェネ”: スバル氏の顔にも、 “物事にはメリットとデメリットがある”と書かれています
“フェネ”: メリットとデメリットを考慮したうえで、 出された結論であるなら、フェネに反対する理由はありません

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_09

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■9話 タイトル:国境封鎖の可能性 更新日:2021/10/28

ナレーター: クルシュたちとの話し合いを終え宿に戻ったスバルたちは、 氷河都市アルビスへの出発準備に追われていた
“スバル”: どうぞ
“レム”: 失礼します
“レム”: スバルくん、準備の方は大丈夫ですか? もしまだ終わっていないようでしたら、レムがお手伝いを──
“スバル”: いやいや、俺の準備はだいたい終わったから大丈夫だよ
“スバル”: むしろ、手伝うことはないか、レム? 俺にできることであれば、なんだってやらせてもらう
“スバル”: 防寒着なんかはクルシュさんが貸してくれたけど、 長旅に向けた買い出しなんかも必要だよな?
“レム”: はい 食料品などの買い出しが必要です もしよければ、スバルくんもレムと一緒に……
“スバル”: ああ、もちろん同行させてもらう
“スバル”: ちょうど、立ち寄りたい店もあるし、 俺のことは荷物持ちとして活用してくれ
“スバル”: ──ってなわけで、きてやったぜ、オッチャン
“カドモン”: おう、坊主 これまたずいぶん久しぶりだな 相変わらず忙しくやってるのか?
“スバル”: まあな、ご多忙の真っ最中だよ 明日にはグステコのアルビスに向けて出発しねぇとって感じだ
“カドモン”: グステコのアルビス、だと? そりゃまた大変だな
“スバル”: そうなんだよ、オッチャン んで、しばらく会えなくなるから、 こうやってきてやったってわけだ
“スバル”: オッチャン、しばらく会わねぇと、俺のこと忘れちまうだろ?
“カドモン”: なんだよ、まだ根に持ってるのか?
“カドモン”: あんときは忘れちまってたけど、もう大丈夫だよ 二度と忘れねえから、安心してくれ
“カドモン”: って、まさか、本当にそんなことのために、 きたわけじゃねえよな?
“レム”: こちらの果物はとてもおいしいということなので、 長旅に持参するためお寄りさせていただきました
“カドモン”: おうおう、味は保証するぜ 長旅ってことは、日持ちしそうなもんを見繕った方がいいよな?
“レム”: はい ぜひお願いします
“カドモン”: 任せてくれ、嬢ちゃん ウチのは新鮮だからな、日持ちにも自信ありだ
“カドモン”: これと、あれと、あとそれなんかもおすすめだな──
“スバル”: 商売っ気出してるとこわりぃんだけど、オッチャン ちょっと話せねぇかな?
“カドモン”: なんだよ坊主、買い物にきただけじゃねえのか?
“スバル”: まぁ、そういうことだ といっても、厄介事に巻き込むような話じゃないから安心してくれ
“スバル”: 話したいことってのはロム爺のことだからさ
“スバル”: ロム爺はラインハルトのとこで世話になってる オッチャンには伝えとこうと思ってな
“カドモン”: ラインハルト……『剣聖』様か?
“スバル”: ああ、その『剣聖』様だ
“スバル”: いずれ本人から話があるかもしれねぇけど、 姿を見せなくても、行方不明とかじゃねぇから安心してくれ
“カドモン”: わかった、伝えてくれてありがとな 詳しいことは本人が訪ねてきたときにでも聞かせてもらうよ
“スバル”: ああ、そうしてくれ んで、そんときは 俺が長旅に出てることも伝えてもらえると助かる
“スバル”: ロム爺たちとは、仲良くやっていきたいと思ってるんでね よろしく頼むわ、オッチャン
ナレーター: ──そして、翌朝
“スバル”: いよいよグステコのアルビスに向かって出発って感じだな! ってことで、さっそく竜車に乗り込もうぜ!
“スバル”: しばらくこの景色が見られなくなると思うと寂しくはあるが…… 今は立ち止まってる場合じゃねぇ
“フェリス”: うんうん、そうだね、スバルきゅん!
“フェリス”: グステコがルグニカとの国境を封鎖するって噂があるから、 できるだけ急いだ方がよさそうだよ
“スバル”: うわぁ!? ビックリした!
“スバル”: どうして呼んでもねぇお前がここにいんだよ! そして、不吉な情報をさらっとぶっこむんじゃねぇ!
“フェリス”: スバルきゅんってばヒドい!
“フェリス”: 騎士団にグステコが国境を封鎖するかもって情報が入ったから、 教えにきてあげたんじゃにゃい
“フェリス”: それをそんな風に言うなんてどういうこと?
“スバル”: いやいや、だってすげぇ突然だったし、 “国境封鎖”なんて不吉なこと言い出すから……
“スバル”: って、マジなのか? 国境が封鎖されちまうんだな?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_10

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■10話(中編) タイトル:新たな同行者 更新日:2021/10/28

タイトル:新たな同行者

ナレーター: グステコ聖王国の氷河都市アルビスへ向けて 出発しようとしていたスバルは
ナレーター: フェリスの突然の訪問に驚いたが
ナレーター: フェリスは、グステコがルグニカとの国境を 封鎖しようとしているという情報を持ってきてくれたのだった
“スバル”: って、マジなのか? 国境が封鎖されちまうんだな?
“フェリス”: あくまで噂ではあるんだけど、封鎖されちゃう可能性が高そうだね
“フェリス”: 王選の開始が近いのは周知の事実だから、 それに関係した動きなんじゃにゃいかな
“スバル”: つまり、他国の厄介事に巻き込まれたくないから
“スバル”: 王様が決まって落ち着くまで、 ルグニカとは距離を置こうって感じか?
“スバル”: 五人の候補者で玉座を争うなんてことになったら、 確かに厄介なことは色々起きそうだけど
“スバル”: お隣の国にしちゃ、態度が冷たすぎだろ
“スバル”: 王様不在のごたごたに乗じて、 攻め込んでくるよりかは遥かにマシではあるけど
“フェリス”: あの国は特殊だからね 国境が封鎖されても特に驚きはないかにゃ
“フェリス”: でも、スバルきゅんたちは、 そういうわけにもいかないでしょ?
“エミリア”: ええ、国境が封鎖されたりしたら、 とっても困ったことになるわ
“フェネ”: 左様です グステコ聖王国にページがあった場合、 回収が困難になることは明白
“フェネ”: 由々しき事態であることは間違いありません
“レム”: フェリックス様がおっしゃる通り、 これは急いだ方がよさそうですね
“スバル”: だな 可能な限り急いでグステコに入ろう 国境が封鎖されちまったら目も当てられねぇ
“スバル”: ……とはいうものの、やっぱアルビスを目指すって判断は、 正しかったみたいだな
“スバル”: あいつにはそんな意図はなかったかもしれねぇけど、 コリーナに会ったら、礼の一つでも言ってやるとしよう
“スバル”: ……それでなんだが、フェリス
“フェリス”: 何かにゃ、スバルきゅん?
謎の地竜: ────
“スバル”: あの地竜がずっとこっちを見てるような気がするんだけど、 お前、何か知ってる?
“フェリス”: もちろんだよ、スバルきゅん
“フェリス”: それに“気がする”んじゃにゃくて、 明らかにあの子はスバルきゅんを見てるネ
“フェリス”: あの子、スバルきゅんのこと、気に入ったのかも 良かったネ、スバルきゅん♪
“スバル”: 良かったね、って何がだ! 頼むからもうちょい詳しく──
“スバル”: って、うわぁ!? あの地竜が俺の方にやってくるぞ!
謎の地竜: ────
“スバル”: なんだ? なんだ? 顔ちけぇから!?
“エミリア”: スバル、その子、スバルに挨拶してるみたい
“フェネ”: スバル氏 挨拶をしている相手にその態度は、さすがに失礼ですよ スバル氏もちゃんと挨拶を返してください
“スバル”: そう言われたって、俺、 地竜への挨拶の仕方なんて知らねぇんだけど!
“スバル”: ……とはいうものの、 気に入ってくれた相手に、確かにこの態度は失礼だな
“スバル”: 良く見たら綺麗な目をしてるし……怖くない、怖くないぞ、俺!
“スバル”: ってことで、俺の名前はナツキ・スバルだ! これからもよろしく頼むぜ、相棒!
“スバル”: ってな感じで合ってる? 地竜への挨拶
“フェリス”: きゃははは スバルきゅんってば、ホントおもしろーい いきなり“相棒”だなんて、初対面で距離詰めすぎでしょ~
“スバル”: いやいや、先に距離詰めてきたのってこいつだよね! さっきからずっと顔ちけぇし!
“フェリス”: けど、“これからもよろしく頼む”は合ってるかにゃ その子、スバルきゅんたちの旅に同行させるつもりだから
“スバル”: ……はあ?
“エミリア”: フェリス、どういうこと?
“フェリス”: エミリア様たちはこれから長旅に出発されます 恐らく、クルシュ様への報告もしばらくできなくなるでしょう
“エミリア”: うん、それはそうね
“フェリス”: でも、それでは困りますよね?
“エミリア”: あっ! だからこの子が?
“フェリス”: はい、そういうことです
“レム”: なるほど……
“フェネ”: 事情は理解しました では、急ぎ出発を──
“スバル”: 待て待て! なんだか話がまとまったみたいだけど、 俺には話がまったく見えてないんだけど!
“フェネ”: スバル氏、本当に話が見えませんか?
“スバル”: ああ 長旅に出るから、しばらくクルシュさんに 報告できねぇってのは、その通りだけど
“スバル”: どうしてこの地竜が俺たちと一緒にくることになるんだ?
“スバル”: それじゃまるで、この地竜が一緒にきたら、 クルシュさんと色々連絡が取れるみてぇじゃねぇか
“レム”: さすがスバルくん スバルくんはもう答えを言っていますよ
“スバル”: え? マジで? こいつがクルシュさんのとことの橋渡しをしてくれるってこと?
“スバル”: つまり……伝令的な役割を担ってくれるって理解で合ってる?
“フェネ”: 左様です それ以外フェネには思いつきません
“フェリス”: その子ってすごく優秀にゃの
“フェリス”: だから、スバルくんたちに進捗があったら、 クルシュ様のところへ報告の手紙を運んでくれるってわけ
“フェリス”: それで、こっちからも進捗を書いた手紙を持たせれば、 スバルきゅんたちにもこちらの状況が伝わるでしょ?
“フェリス”: その子は足だって速いし、普通に手紙を送るよりも何倍も早く 情報の共有ができちゃうんだにゃ
“スバル”: おおっ! それはすげぇ!
“フェリス”: アナスタシア様との面会の調整は、クルシュ様の方でするから、 その情報をスバルきゅんたちに連絡しないといけにゃいしね
“スバル”: アルビスに到着して一区切りついたら
“スバル”: こっちの近況やなんやを書いた手紙を持たせて、 クルシュさんのとこへ向かわせればいいんだな?
“フェリス”: そうそう、そうゆうことだネ
“スバル”: にしても……そんなことができちゃう優秀な地竜を 俺たちの専属にしちゃっていいのか?
“フェリス”: それについては問題にゃいかな その子、 優秀だけど扱いが難しくて決まった乗り手がいにゃいんだよね
“フェリス”: だからむしろ、活躍の場を与えてあげられて、 こっちとしても嬉しいかにゃ
“スバル”: へぇー 扱いが難しい、ね すげぇ人懐っこいし、そんな感じには見えねぇけどな
優秀な地竜: ────ッ!
“スバル”: ほ、ほら! こんなに──
“スバル”: うーん、モフモフとは違う感触……! でも、これはこれでありかもしんねぇ!
“スバル”: 最初、怖がったりしてごめんな! 今の俺には、お前がすげぇ可愛く見えるよ!
“フェリス”: スバルきゅんてば、ホント不思議 その子、本当に扱いは難しいんだよ?
“フェリス”: そんな風に人に懐くなんて、これまでなかったんだけどにゃ
“スバル”: ──さてさて、思わぬ同行者ができたわけだけど、 フェリスとも別れて竜車に乗り込んだし
“スバル”: いよいよ出発って感じで大丈夫だよな?
“レム”: はい、スバルくん、いつでも出発できます
“スバル”: エミリアたんやフェネもオッケー?
“エミリア”: 大丈夫よ、スバル
“フェネ”: 無論フェネもです
“スバル”: ええっと……パトラッシュも大丈夫だよな?
“パトラッシュ”: ────ッ!!
“エミリア”: す、スバル? パトラッシュって誰?
“スバル”: えっと、外の子
“スバル”: これから一緒に旅立つんだし、名前を付けてあげようって思ったら ビビビってきちゃったんだよね
“スバル”: パトラッシュ…… うん、あの子の名前はそれ以外には考えられねぇ!
“フェネ”: スバル氏 あれはクルシュ女史所有の地竜です 勝手に名付けるのはいかがなものかと
“スバル”: けど、本人は気に入ってるみたいだぜ?
“パトラッシュ”: ────ッ!
“スバル”: ほらな
“エミリア”: ホント すごーく嬉しそう
“レム”: はい スバルくんに名付けてもらって、 あの子はとっても嬉しそうです
“フェネ”: なるほど…… 確かにそれは否定できませんね
“スバル”: ってことで、あの子の名前はパトラッシュで決まりだ!
“スバル”: そして、国境が封鎖される可能性がある今、 時間は一秒だって無駄にはできねぇ
“スバル”: レム、アルビスに向けて出発してくれ!
“レム”: はい、スバルくん! それでは──
“パトラッシュ”: ────ッ!
ナレーター: こうして新たな同行者が加わったスバルたちは、 急ぎ、グステコのアルビスに向けて出発するのだった

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_11

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■11話 タイトル:氷河都市アルビス 更新日:2021/10/28

ナレーター: フェリスから国境封鎖の可能性があることを 知らされたスバルたちと一匹は
ナレーター: 休憩もそこそこに、日夜竜車を走らせ、 四日ほどでグステコ聖王国の氷河都市アルビスに到着していた
“スバル”: ──ということで、アルビスに到着したわけだけど、 やっぱさみぃな!
“スバル”: クルシュさんに防寒着を借りてたから、 なんとか生存できてっけど
“スバル”: そうじゃなかったら、 竜車を降りた途端に凍え死んでた自信があるよ
“エミリア”: スバルったらおおげさよ いくらなんでもそこまでの寒さじゃないわ
“レム”: アルビスはグステコでは比較的温かい都市だと聞きます 珍しく凍っていない河もありますから
“スバル”: たとえそうだとしても“温かい”って表現はなんか違うかな! それに河が凍ってないのって普通だよね!
“スバル”: それが珍しいって、どんだけ寒いんだよ、グステコはさ!
“スバル”: とはいえ、到着まで結構かかっちまったな……
“フェネ”: 竜車を引きながらの雪道では仕方ないでしょう……
“フェネ”: パトラッシュ女史はさすがの走行でしたが……
“フェネ”: ロズワール氏所有の優秀な地竜とはいえ……、 今回の速度が限界だったと思われます……
“レム”: はい あの子たちはよく頑張ってくれたと思います
“スバル”: それを言うんだったら、レムもすげぇ頑張ってくれたよな?
“レム”: 国境が封鎖されてしまうかもしれませんでしたし、 スバルくんも乗っていましたから、レムは最善を尽くしました
“スバル”: すごく助かったぜ、レム ありがとな
“レム”: はい! スバルくんにそう言ってもらえて、 レムの疲れはどこかに吹き飛んでしまいました!
“スバル”: そ、そうか? そう言ってもらえると嬉しいけど、 なんかこそばゆいな
“スバル”: とにかく、ちょっと時間はかかっちまったけど、 無事にアルビスに到着できたことを喜ぶことにするよ
“スバル”: これでフェネが『禁書』のページの反応を キャッチでもしてくれたら、幸先いいんだけど?
“フェネ”: …………
“エミリア”: フェネ、大丈夫? なんだか体調が悪そうに見えるわ
“スバル”: おっと、確かに…… さっき話してたときも、 声小さかったし、元気がない感じだったな
“スバル”: また、疲労で体調を崩しちまったか、フェネ?
“フェネ”: 疲労…… それもあるかもしれませんが、今回はこの寒さ故です フェネにこの寒さは堪えます
“スバル”: ……寒さ? そんだけモフモフしてても、やっぱさみぃもんはさみぃんだな
“スバル”: 俺たちはクルシュさんに防寒着を用意してもらったけど、 フェネの分も用意してもらえばよかったぜ
“フェネ”: 過ぎたことを言っても仕方ありません…… できれば、早めに宿に……
“スバル”: ああ、そうだな それには俺も賛成だ
“エミリア”: うん、そうしましょう レム、頼める?
“レム”: はい、もちろんです
“エミリア”: それじゃ、私は向こうを探すから、 レムはあっちを探してもらっていい?
“エミリア”: スバルはフェネと一緒に、竜車の中で待ってて
“スバル”: 俺もエミリアたんと一緒に、宿を探したいとこだが……
“フェネ”: …………
“スバル”: 辛そうなフェネを一人にはできねぇよな
“スバル”: よし、竜車に戻るぞ、フェネ エミリアたんとレムは、急いで泊まれそうな宿を探してくれ
“スバル”: ──エミリアたん、どんな感じ?
“エミリア”: 今は眠っているわ でも、フェネ、すごく辛そう なんだか心配ね
“レム”: はい…… とても心配です……
“スバル”: アストレア領ってとこから戻ったときも、 あいつ、体調を崩してたよな……
“スバル”: ページの感知ってかなりのマナが必要みたいだし、 あの小さな体にはすげぇ負担になってるのかもしれねぇ
“スバル”: そもそもなんか重たい病気を患ってて、 実は余命が幾ばくかって可能性もあるけど……
“スバル”: 俺たちを心配させたくないから、フェネが言ってないだけでさ
“エミリア”: そ、そんな……
“スバル”: いやいや、あくまで最悪の場合の話だよ だから、そんな顔しないで、エミリアたん
“スバル”: 温かくして眠ったら、きっと元気になるって
“レム”: だといいのですが……
“スバル”: レムまでどうしたんだ? さっき疲れが吹っ飛んで元気になったって言ってただろ
“レム”: 確かにあのときはそうだったのですが…… やはりフェネさんが心配です……
“スバル”: ごめん…… すべては俺が余計なことを言ったせいだ……
“スバル”: 普段は憎まれ口ばっか叩いてるけど、 あいつってムードメーカーだよな
“スバル”: もしフェネがこの場にいたら、 俺から華麗なツッコミを引き出して、場を和ませてくれるもんな
???: ──やれやれ スバル氏、暗いですよ
“フェネ”: 極悪非道のクソ上司、スバル氏のことですから
“フェネ”: フェネが寝込んだのをいいことに、 好き放題言っていると思ったのですが
“フェネ”: あまりのギャップにフェネは困惑を隠せません
“スバル”: 誰が極悪非道だ! 誰が!
“スバル”: それに“ギャップ”ってな…… それも俺の顔に書いてあったのか?
“フェネ”: 左様です 極悪非道なクソ上司、スバル氏の顔に書いてありました
“スバル”: “クソ上司”だけでもお腹一杯だから、 “極悪非道”まで付けるのはやめてくれ!
“スバル”: 俺の目つきと相まって、その表現は洒落にならねぇんだよ 俺の内面を知らない人が聞いたら、本気で信じちまう
“スバル”: 事実──
子ども: お母さん、あの人、極悪非道なんだって
母親: こら、見るんじゃありません あの目つき…… 目が合っただけで殺されてしまうわ……
“スバル”: どうしてくれるんだよ、この空気? せっかく見つけた宿からも追い出されかねねぇだろ
“レム”: スバルくんを誹謗中傷するなど、このレムが許しませんっ
“スバル”: れ、レムさん!? 許してあげて! このままじゃ本気で宿から叩き出されちゃうよ!
“レム”: スバルくんがそう言うのであれば…… でも、スバルくんのその目、レムはとても素敵だと思います
“エミリア”: ねえ、スバル、フェネのおかげで場が和んだみたい 良かったわね
“スバル”: いやいやいや! これ、“和んだ”ってのとは違くない!? 暗くてどんよりした空気は、どこかに吹っ飛んだけどさ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_12

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■12話 タイトル:スバルの杞憂 更新日:2021/10/28

“フェネ”: わざわざ送っていただかなくても、 部屋へ戻るぐらいフェネ一人でできます
“スバル”: いやいや、なんだかロビーが変な空気になっちゃってたから、 あのままあそこに居続けるのは難しかったかな
“スバル”: 部屋で仕切り直しって感じだ お前も体調が戻ったみたいだしな
“フェネ”: スバル氏、残念ながらフェネの体調は戻っていません
“スバル”: え? そうなの?
“フェネ”: 左様です できればすぐに横になり眠りたいところですね
“スバル”: そうか……
“エミリア”: スバル、いきましょう フェネを眠らせてあげないと それに、コリーナちゃんにも会わないといけないでしょ?
“スバル”: それはそうだけど…… でも……
“レム”: スバルくんは優しいから、 フェネさんを放っておけないという気持ちになるのはわかります
“レム”: でも、今は温かくして 一人でお休みになった方がいいとレムも思います
“フェネ”: 左様です むしろスバル氏がやることを行わないことの方が、 フェネには大きな心の負担です
“フェネ”: フェネのことを思うのであれば、 しっかり働いてください、クソ上司
“スバル”: やれやれ、俺はダメな上司だな 部下にこんなこと言われちまうなんて
“フェネ”: ようやく気付きましたか 今さらですよ
“スバル”: うるせぇー、ほっとけ!
“スバル”: とにかくわかった コリーナに会う、それが最優先だ
“スバル”: けど、フェネ、二つだけ聞かせてくれ それさえ聞ければ、すぐ出ていくからさ
“フェネ”: わかりました それで、その二つというのは?
“スバル”: 一つは、ページの反応についてだ この近くに『禁書』のページの反応はないってことで大丈夫か?
“フェネ”: 今のフェネの体調では、正確なことは言えませんが…… 現時点でフェネは反応を感知していません
“スバル”: そうか 少なくともすぐにどうこうなることはなさそうだな
“フェネ”: それではスバル氏 二つ目の質問をお願いします
“スバル”: 二つ目は……ええっと……その……
“フェネ”: スバル氏?
“スバル”: いやいや……、その……、あの……、お前…… もしかして重たい病気とかじゃねぇよな?
“スバル”: 最近体調を崩しがちだから、なんか心配で……
“フェネ”: 心配無用です、スバル氏 フェネの体調不良は、心労と寒さによるものと断言できます
“フェネ”: 特に心労の方は……詳しい説明が必要ですか、心労元のスバル氏?
“スバル”: “心労元”ってはっきり言われてる時点で、 詳しい説明は遠慮させてもらうよ
“スバル”: 今度は俺の方が、体調を崩して寝込むことになっちまいそうだ
“スバル”: とにかく、俺の杞憂ならそれでいいんだ
“スバル”: ってなわけで、フェネから聞きたいことは聞けた エミリアたん、レム、コリーナ探しに出発しよう!
ナレーター: フェネを部屋に残して宿を出たスバルたちは
ナレーター: コリーナが手紙で待ち合わせ場所として指定していた 氷河亭という酒場を探し始めるのだった
ナレーター: そして──
“レム”: スバルくん、エミリア様、 氷河亭という酒場の場所がわかりました!
ナレーター: レムからもたらされる吉報
“エミリア”: ありがとう、レム すごーく助かったわ
“スバル”: でかしたぞ、レム! それじゃ、さっそく案内してくれ!
“レム”: はい、こちらです スバルくん、エミリア様、レムについてきてください

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_13

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■13話 タイトル:約束の酒場で 更新日:2021/10/28

“スバル”: ここが氷河亭か……
“エミリア”: コリーナちゃん、どこかしら? それらしい子は見当たらないわね
“レム”: そうですね ここは酒場なので、 それらしい方がいればすぐにわかると思うのですが……
“スバル”: コリーナも一日中この酒場に張り付いてる ってわけじゃねぇだろうし
“スバル”: 待ってればそのうち現れるんじゃねぇかな
“スバル”: ひとまず、伝言とか預かってるかもしれねぇから、 酒場のマスターに話を聞いてみようぜ
“エミリア”: ……ますたー?
“スバル”: えっと、“店主さん”って感じかな こういう店の長のことを俺の故郷じゃそう呼ぶんだよ
“スバル”: “ヘイ、店主!”って呼ぶより、 “ヘイ、マスター!”って呼んだ方がかっこいいだろ?
“エミリア”: ごめん、ちょっと何言ってるのかわかんない
“レム”: なるほど とっても勉強になります
“コリーナ”: ふむふむ まったく違った反応ですね スバルさん、これはどちらの反応が正しいのでしょう?
“スバル”: どっちも極端だから……中間ぐらいの反応が正しいんじゃないか
“スバル”: エミリアたんには、 もうちょい興味を持って話題を膨らませてほしいし
“スバル”: レムの反応だとさすがに恐れ入る
“コリーナ”: では、この勝負は引き分けですね 勝敗は次の勝負で──
“スバル”: 待て待て! いきなりの登場でただでさえ絶句もんなのに、 さらに場を荒らそうとすんじゃねぇ!
“スバル”: お前の神出鬼没ぶりに俺は慣れてるけど、 この二人は初めてなんだぜ!
“エミリア”: …………
“スバル”: ほら見ろ、エミリアたんなんて、 完全に言葉を失っちまってるじゃねぇか
“エミリア”: ええっと……その格好で寒くないの? ほら、アルビスってすごーく寒いでしょ?
“スバル”: 絶句の原因って、それ!? 言われてみれば確かにそうだけども!
“レム”: スバルくん、この方が探していたコリーナさんですか?
“スバル”: ああ、そうだ、レム こいつがコリーナだよ
“コリーナ”: はじめまして、エミリアさん、レムさん 冒険家のコリーナです
“エミリア”: コリーナちゃん、いつもスバルがお世話になっています あと、ガナクスでは私もお世話になりました
“エミリア”: スバルから、コリーナちゃんのおかげで、 私は助かったって聞いてるわ
“レム”: コリーナさん、レムからもお礼を言わせてください お力添え、感謝いたします
“コリーナ”: いえいえ、あんなに泣きながらお願いされたら、 断ることなんてできません
“コリーナ”: お礼なら、スバルさんに言ってあげてください
“エミリア”: スバルがそんなにめそめそしながら……
“スバル”: し、してないよ、エミリアたん!?
“レム”: スバルくんが泣きながら……
“レム”: スバルくん、次に涙を流すときは、レムの腕の中でお願いします
“スバル”: そのお願いに応えるのは難しいかな! 泣いてる姿なんて、できれば誰にも見せたくないしね!
“スバル”: って、完全に俺が泣きながら 懇願したことになってるじゃねぇか……
“スバル”: しかも、なんだかすでに コリーナはエミリアたんやレムと馴染んでる気がする
“コリーナ”: それで、皆さんが遥々アルビスまでいらっしゃったのは……
“コリーナ”: 何故コリーナが、 このような格好でも寒くないかを知るためですね?
“エミリア”: うん、すごーく気になる 私も寒さには強いと思うんだけど、 コリーナちゃんほどじゃないもの
“スバル”: え、エミリアたん そこが気になっちゃうエミリアたんは、 とってもプリティだけど
“スバル”: まずは『禁書』のページについて聞いとかないと
“スバル”: コリーナは、登場も唐突だけど、去り際も突然なんだよ
“スバル”: 寒さに強い理由を話した途端にお役御免になって、 いなくなっちまわないとも限らねぇ
“スバル”: ってことで、俺たちが遥々こんな寒い場所まできたのは、 お前の手紙に俺の探し物がグステコにあるって書いてあったからだ
ナレーター: それからスバルは、 『禁書』のページに関する簡単な情報共有をコリーナに行い
ナレーター: コリーナが手紙に書いた“スバルさんの探しもの”が、 そのページであるかを確認する
“コリーナ”: ──間違いありません
“コリーナ”: コリーナもガナクスでその紙切れを目にして、 不思議に思っていました
“コリーナ”: そして、スバルさんがあの紙切れを集めていることも、 なんとなく察しています
“スバル”: やっぱそうか……
“スバル”: なんとなくそんな気がしてたよ お前って、何気に優秀な冒険家としての片鱗を覗かせるしな
“コリーナ”: ほうほう スバルさん、 そこのところ、もう少し詳しくお願いします
“コリーナ”: 優秀な冒険家としての片鱗、コリーナはとても気になります
“スバル”: 少なくとも俺は、お前がパニクってるところを見たことがねぇ
“スバル”: どんなことにも動じず、 いつも心のどこかに余裕があるように感じるよ
“スバル”: 冷静に周囲を見てるし、 決断力も行動力もここぞというときの度胸も備わってる
“スバル”: 冒険家って職業についちゃ胡散臭さが拭えねぇけど…… お前がただ者じゃないってことは、間違いないと思ってるぜ、俺は

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_14

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■14話 タイトル:ページを集める芸術家 更新日:2021/10/28

“スバル”: ──それでコリーナ、本題なんだが、 ページがグステコにあるってどうしてわかったんだ?
“コリーナ”: ある酒場で偶然耳にしました
“コリーナ”: ページと思われるものを追って、グステコのアルビスに向かう、 そうおっしゃっていた方がいたのです
“スバル”: ……ページらしきものを追って? そいつはどんな奴だったんだ?
“コリーナ”: 芸術家風……と言えばいいのでしょうか? 少し奇抜な格好をしていました
“コリーナ”: それに、スバルさんたちが探しているページというものに対する、 執念のようなものを感じましたね
“コリーナ”: コリーナが直接お話したわけではないのですが……
“コリーナ”: 少し離れた席からでも、 その方の熱を帯びた声は聞き取ることができましたから
“スバル”: 芸術家……
“レム”: スバルくん
“スバル”: ああ、恐らくプリシラんとこにページを買いにきた、 例の奴で間違いねぇと思う
“スバル”: どういう情報網を持ってるのか知らねぇけど、 あんにゃろ、ページの匂いには敏感そうだしな
“エミリア”: その人もアルビスにきているのかしら?
“コリーナ”: 恐らくは 急ぎアルビスへ向かうというようなことを言っていたので
“スバル”: 国境が封鎖されるかもしれねぇんだし
“スバル”: ページがあるかもしれねぇんだったら、 そりゃ真っ先にここに向かうだろうな
“スバル”: だから、この町のどこかにいる可能性が、俺は高いと思う
“スバル”: ってなわけで、 芸術家風の変な野郎に会うのが一番って状況なんだけど……
“スバル”: コリーナ、そいつがいそうな場所に、心当たりはねぇのか?
“スバル”: 体調不良でフェネは寝込んでるし、まずはやっぱその芸術家に……
“スバル”: って、あれ!? コリーナは!?
“エミリア”: コリーナちゃん、どこかへいっちゃったみたい
“レム”: はい 残念ながら、コリーナさんの姿は見当たりません
“スバル”: おいおい、またかよ! 肝心なところで姿をくらましやがって……!
“スバル”: とはいえ、例の芸術家がこの町にいる可能性が高い
“レム”: コリーナさんが言うことを信じるのであれば、その通りですね
“エミリア”: やっぱりアルビスにきて正解だったわ
“エミリア”: その芸術家みたいな人がページを集めてるんだったら、 たくさんページを持ってるかもしれないでしょ?
“スバル”: その可能性はあるけど、だとするとぞっとしないね
“スバル”: フェネがページを感知してないから、 すぐにページがどうこうなることはないのかもしれないけど
“スバル”: ページを持っていること自体がリスクだ
“スバル”: しかもページ集めに執念を燃やしてるみたいだし
“スバル”: ページを渡すようにお願いしても、 大人しく渡してはくれねぇ気がする
“スバル”: ひと悶着あることを覚悟しておいた方がよさそうだね
“スバル”: とはいえ……その芸術家って奴の情報が少なすぎる
“スバル”: こりゃ、見つけ出すまでに、ちょっと時間がかかりそうだな
“スバル”: ──パトラッシュ、頼む もろもろ進展があったんで、クルシュさんにこの手紙を届けてくれ
“パトラッシュ”: ──っ!
“エミリア”: 偉いわね この子、届けてくれるみたい
“レム”: はい、とても助かります
“レム”: 無事にアルビスに到着したこと、 フェネさんが寝込んでしまったこと
“レム”: コリーナさんとは会え、これから芸術家の方を探すことなど、 現時点で書ける内容はしたためさせていただきました
“スバル”: 本当は“ページ発見”って連絡ができればよかったんだけど…… ルグニカまでの距離を考えると
“スバル”: このタイミングでパトラッシュには、 クルシュさんのとこに向かってもらった方がよさそうだ
“スバル”: 王都の方でも色々進展があるかもしれないし、 アナスタシアさんとの面会の件も気になってる
“エミリア”: 私もそれでいいと思う クルシュさん、 私たちが無事にアルビスに到着できたか心配してると思うもの
“レム”: フェネさんの体調回復や芸術家という方の発見には、 数日かかるかもしれません
“レム”: うまくすれば、 それまでにクルシュ様からのご返事を受け取れるでしょう
“スバル”: しばらくお前に会えなくなるのは寂しくなるが…… 頼んだぞ、パトラッシュ!
“パトラッシュ”: ──っ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_15

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■15話(中編) タイトル:美の頂点 更新日:2021/10/28

ナレーター: スバルたちが氷河都市アルビスに到着した翌日──
“スバル”: エミリアたん、フェネの様子はどうだった?
“エミリア”: ううん まだ調子が悪いみたい…… 今日も寝ていたいって……
“レム”: 今はフェネさんの力を頼るわけにはいきませんね……
“スバル”: だな ってことで、今日こそページを集める芸術家って奴を見つけ出そう
“スバル”: そしたら、ページの件は色々と解決するかもしれねぇ
“レム”: そうですね そのためにレムは全力で芸術家の方を探します
“エミリア”: 私も頑張るわ、スバル
“スバル”: もちろん俺も頑張るぜ! って言いたいところだけども……
“エミリア”: スバルは一人だと心配 レム、スバルのこと、お願いできる?
“レム”: はい、エミリア様! スバルくんのことはレムにお任せください!
“スバル”: ここで“是が非でもエミリアたんと一緒にいきたい”なんて言えば レムをものすごく傷つけることになる……
“スバル”: そもそもエミリアたんが言い出したことだし……
“スバル”: エミリアたんと一緒にいきたいって言っても、 きっと却下されるんだろうな……
“エミリア”: スバル、何か言った?
“レム”: スバルくん、何か言いましたか?
“スバル”: いやいや、こっちの話だよ エミリアたんもレムも気にしないでくれ
“スバル”: とにかくわかったよ、エミリアたん レムと一緒に芸術家探しを頑張らせてもらう
“スバル”: ってことで、よろしくな、レム
“レム”: はい エミリア様ではなく、レムがお相手で申し訳ないですが…… スバルくん、よろしくお願いします!
“スバル”: うぐ…… レムにはしっかり聞こえてたのね……
ナレーター: 昨日に引き続き、『禁書』のページを集めているらしい 芸術家を探すスバルたちだったが
ナレーター: 目当ての人物にはなかなか巡り合うことができなかった
“スバル”: ──あ! エミリアたん!
“エミリア”: スバル、レム! 芸術家の人は見つかった?
“レム”: いえ…… 残念ながら……
“スバル”: その様子だと、エミリアたんの方も……?
“エミリア”: うん、見つからないわ
“スバル”: ……あのさ、エミリアたん、レム ちょっとコリーナと会った酒場にいってみないか?
“スバル”: コリーナがその芸術家を見かけたのって、酒場だったし、 氷河亭にいけば、何かわかるんじゃねぇかな?
“スバル”: もちろん、コリーナが芸術家を見かけたのは、 アルビスにある氷河亭じゃないんだけど……
“スバル”: 芸術家の奴が、 どこの街でも酒場に入り浸ってる可能性はあるだろ?
“レム”: 確かに、闇雲に探し回るより、 その方が立ち寄りそうな場所で待ってみた方がいいかもしれません
“エミリア”: うん、わかったわ、スバル 氷河亭にいってみましょう
“スバル”: ──というわけで、あの角を曲がれば氷河亭だね
“レム”: はい あの角の先にコリーナさんと会った酒場、氷河亭があります
“エミリア”: そこに芸術家の人がいればいいんだけど……
???: おお、なんとお美しい!
“エミリア”: ……え?
“レム”: ……え?
???: 今の表情もとても素敵です 是非ともこの出会いを祝し、わたくしと一杯──
“スバル”: 待て待て! いきなり出てきて エミリアたんをナンパとはいい度胸じゃねぇか!
“スバル”: エミリアたんには、俺という心に決めた人が──
“エミリア”: ごめんなさい、スバル ちょっと何言ってるかわかんない
???: 麗しの姫君はこうおっしゃっておいでですが?
“スバル”: うるせぇー! こう返されると思ったけど、 どさくさに紛れて言ってみたかったんだ!
“スバル”: こう返されるとは思ってたけども!
???: それはそれはお気の毒に……
“スバル”: その憐れむような目はやめてくれ!
“スバル”: それに、確かに俺は玉砕したけども、 だからってお前のナンパが成功したわけじゃねぇだろ!
“スバル”: エミリアたんが、お前なんかの誘いに乗るわけねぇ! もちろんレムもな!
“エミリア”: ええっとね、スバル……
“レム”: あの…… スバルくん……
“スバル”: え? え? う、嘘だろ、二人とも!?
???: どうやら美しいお二人は、わたくしとご一緒したいご様子ですな
???: 貴殿も同席したいのであれば、それに相応しい美しさを……
???: いえ、失敬 残念ながらその目つき、もはや手の施しようがありません
“スバル”: 初対面でなーに言っちゃってくれてんだよ!
“スバル”: マジ、向こういってくんない? 早くしねぇと、俺、手が出ちゃいそうだよ!
???: わたくしが向こうへ? 本当にそれでよろしいのでしょうか? 皆様はわたくしを探しているご様子でしたが
“スバル”: ──えぇ!? ってことはまさか……?
“エミリア”: うん、たぶんそうだと思う
“レム”: はい レムもそう思います
“スバル”: な、なるほどね だからエミリアたんとレムは……
“スバル”: ふぅ…… 二人がこんな野郎のナンパに ひっかかったわけじゃなくて良かったぜ
“スバル”: んで、お前は気に入らねぇだろうが、 俺もぜってぇ同席させてもらう! これだけは譲れねぇかんな!
???: ──それでは、我々の美しい出会いに、乾杯いたしましょう
???: 一部美しくない出会いもありましたが、 それについては目をつぶることにいたします
???: わたくしの美学には反してしまいますが、 エミリア嬢とレム嬢からの頼みであれば致し方ありません
???: ですが、向こうの席が空いているようですな 貴殿はあちらに座られては?
“スバル”: アホか! どうして俺が、 あんな遠くの席に座んなきゃなんねぇんだよ!
“スバル”: って、その前に、ちゃんとした自己紹介も済んでねぇのに、 俺のエミリアたんの名前を気安く呼ぶんじゃねぇ!
“スバル”: もちろんレムのもな!
“エミリア”: ええっとね、スバル さっきも言ったけど──
“スバル”: おっとそうだったね! あわよくばって思っただけだから、気にしないで!
???: スバル殿、貴殿には学習能力というものがないのですか?
“スバル”: うるせぇー! 学習能力のなさを痛感させられてるとこだよ! って、俺の名前まで気安く呼びやがったな!
“スバル”: そろそろ、お前も名乗ってもらっていい? いつまでも無名のままってわけにはいかねぇだろ!
???: これは失敬 確かにわたくしは皆様に名乗っておりませんでしたな
“ガーディー”: わたくしの名はガーディー 美を知る芸術家でございます
“ガーディー”: 美とは、すべてに優先される判断基準 美とは、この世でもっとも尊き存在──
“ガーディー”: その最たるものが、 絵本作家エドガー殿が残した『遺作』なのです!
“スバル”: 絵本作家エドガー……? 『遺作』……?
“レム”: スバルくん
“スバル”: ああ…… やっぱ、このガーディーって奴が、 例の芸術家ってことで間違いなさそうだ
“スバル”: んでもって、『禁書』の作者はエドガーって名前みたいだな
“スバル”: あのおどろおどろしい絵本が、 美の頂点って意見には賛同しかねるけども
“ガーディー”: ……賛同しかねる、ですと?
“スバル”: ああ、しかねるね あんな気色悪いもんが、美の最たるもののわけねぇだろ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_16

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■16話 タイトル:ガーディーからの交換条件 更新日:2021/10/28

ナレーター: グステコ聖王国の氷河都市アルビスにて
ナレーター: ついにスバルたちは『禁書』のページを収集している芸術家、 ガーディーとの邂逅を果たすのだった
“ガーディー”: ──スバル殿は、あの素晴らしい絵本の価値が、 おわかりになっていないようですな
“スバル”: いやいや、あの紙切れの価値がわかってねぇのは、 お前の方だぜ、ガーディー
“スバル”: あれはマジで危険なもんなんだ
“スバル”: あんなもんは『禁書』に封じて、ベア子が見張ってる禁書庫に 永遠に閉じ込めておくべきなんだよ
“ガーディー”: な、何を言い出すかと思えば…… スバル殿が正気だとはとても思えませんな
“エミリア”: ううん スバルが言う通りよ 『禁書』のページはとっても危険なものなの
“エミリア”: 今までページのせいで、色々大変なことが起こっちゃったし、 早く『禁書』に封じて、禁書庫に戻さないと
“ガーディー”: エミリア嬢までそのようなことを……
“ガーディー”: 美とは何より優先される事項 危険などというものとは比較になりませんな
“スバル”: 待て待て、お前こそどうかしてるぜ、ガーディー
“スバル”: 俺の故郷には“美人は三日で飽きる”って有名な言葉があってな お前が言ってるようなことは愚の骨頂的扱いなんだよ
“スバル”: 美が何よりも優先? はんっ、馬鹿馬鹿しい!
“ガーディー”: 己を偽るべきではありません、スバル殿 貴殿はわたくしと同じはずだ
“ガーディー”: たとえばエミリア嬢の美貌、貴殿は三日で飽きましたかな?
“スバル”: ぬぐぐ…… 出会って三日は余裕ですぎてるけど、 今んとこ飽きる気配がねぇ……
“スバル”: エミリアたんの美貌は、何十年経っても飽きない自信があるよ……
“ガーディー”: スバル殿、目を覚ますのです ──貴殿はこちら側の人間のはずだ
“スバル”: うぐぐ…… お、俺は……
“レム”: スバルくん、しっかりしてください!
“レム”: エミリア様は確かにお美しいですが、 それはエミリア様の内面あってのこと
“レム”: エミリア様がただ美しいだけであれば、 恐らくスバルくんの故郷に伝わる言葉通りになるはずです
“スバル”: ……その通りだな、レム
“スバル”: エミリアたんがエミリアたんだから、 俺はエミリアたんの美貌に飽きたりしねぇんだよ
“スバル”: それに、愛しのエミリアたんと、 あの気色わりぃ『禁書』のページをイコールで語ってるんじゃねぇ
“スバル”: とにかく、見た目の美しさなんてもんは、 三日で飽きる程度の優先度なんだよ
“スバル”: 事実、今のエミリアたんは美しいけども、 仮にそうでなくなったとしても、俺の気持ちは変わったりしねぇ
“スバル”: お前みたいな奴と同類にされるのは、マジ迷惑だぜ、ガーディー
“ガーディー”: ほう…… エミリア嬢が美貌を失っても、変わらずに…… スバル殿はどうかしておいでですな
“スバル”: どうかしてるのは、お前の方だ、ガーディー! それをちゃんと自覚した方がいいぞ!
“スバル”: ってな感じでエミリアたん 恥ずかしいことを色々言っちゃったけど、俺は君が──
酒場店主: そろそろご注文はお決まりになりましたか……?
“エミリア”: うーん、うーん たくさんあって、迷っちゃうわ 店主さんのおすすめを聞いてもいいかしら?
“スバル”: メニュー選びに夢中で、全然聞いてなかったのね! そんなことだろうとは思ってたけど!
“エミリア”: ん? スバル、どうかした?
“スバル”: ううん、なんでもないよ、エミリアたん 聞いてたとしても困っただけだろうし、むしろそれでオーケーだ
“スバル”: とにかく、ガーディー、あのページは、たとえ美しい って思っても、手元に置いとくようなもんじゃねぇんだ
“スバル”: もし所有してるもんがあるなら、 悪いことは言わねぇ 俺たちに渡してくれ
“ガーディー”: ……残念ながら、わたくしは所有しておりません
“ガーディー”: プリシラ嬢に買い取りを申し出ましたが、お断りされてしまい
“ガーディー”: 出回っているという噂は耳にするものの、ホーシン商会が 動いているらしく、わたくしの元には巡ってきておりませんので
“ガーディー”: シバレル大氷河にて一枚発見してはいるのですが…… そちらも回収には至っていない状態です
“スバル”: ……シバレル大氷河で、一枚発見してるんだな?
“ガーディー”: はい あれぞ希代の天才絵本作家エドガーの傑作! 一目でわたくしは心を奪われてしましました!
“スバル”: エドガーとかいう絵本作家に陶酔してるとこ、マジ悪いんだが
“スバル”: そのページのありかを教えてくれって言ったら、 お前は教えてくれたりするのか?
“ガーディー”: わたくしからの条件をお呑みいただけるのであれば、喜んで
“スバル”: ……条件? それはどんなんだ?
“ガーディー”: 貴殿らは多くの『遺作』を収集しているご様子 一目でいいので、見せていただくわけにはいきませんかな?
“ガーディー”: 無論、買い取らせていただけるのであれば、 それに越したことはありませんが……
“ガーディー”: 貴殿らが『遺作』を手放すとは思えません
“ガーディー”: ですので、一目だけでも! 是非ともわたくしに!
“ガーディー”: この通りです、スバル殿! 是非是非是非! 天才絵本作家エドガー殿の傑作の数々を拝見させてください!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_17

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■17話 タイトル:いざ、シバレル大氷河へ 更新日:2021/10/28

“レム”: スバルくん
“スバル”: おお、レムか 入ってくれ
“スバル”: レム、フェネの様子はどうだ?
“レム”: エミリア様が看病されていますが…… 体調が回復したとは言えない状態です
“スバル”: そうか…… やっぱガーディーを頼るしかねぇ感じか……
“レム”: レムはガーディー様を信用するべきではないと思います
“スバル”: そうだな あいつはなんだか危険な感じがする
“スバル”: とはいうものの……背に腹は代えられねぇ
“スバル”: ページのありかをあいつが知ってる以上、 そうも言ってられねぇだろ
“レム”: それは……そうですね……
“スバル”: にしても、あいつ、マジでヤバい奴だったな……
“スバル”: あいつからページの買い取りを提案されて、 却下できたプリシラはやっぱすげぇよ
“スバル”: あいつって言ってることは無茶苦茶なんだけど、 こっちを飲み込む雰囲気を持ってるつーか
“スバル”: レムが正気に戻してくれなかったら、 俺は完全にあいつのペースに嵌まってたよ
“スバル”: ページを見せる件だって、保留にするのが精一杯だった あれ以上あの場にいたら、俺、首を縦に振ってたかもしれねぇ
“レム”: スバルくんはうまくできたと思います
“レム”: 少なくとも、ガーディー様にページをお見せするのは、 すべてが片付いた後になるはずですから
ナレーター: アルビス近くの氷河、シバレル大氷河にあるというページ
ナレーター: そのありかを教える代わりに、スバルたちが集めた『禁書』の ページを見せろというのがガーディーが出した条件だった
ナレーター: だがスバルは、それはガーディーからの情報が本当で、無事に シバレル大氷河にあるページを回収できてからだと突っぱねたのだ
ナレーター: そして、ガーディーもそのことを了承した
ナレーター: さらにスバルは、フェネが回復したことにより、 自力でページ探しが行える可能性も考慮して
ナレーター: その場で判断することを避け、結論を翌日まで保留したのだった
ナレーター: もしガーディーの手を借りる場合は、 明日の正午までに氷河亭を訪ねることになっている
“レム”: それこそ、レムやエミリア様にはできない交渉でした さすがスバルくんです
“スバル”: それについては、俺もちょっとそう思うかな
“スバル”: もちろんレムやエミリアたんがいてくれたからだけど、 あの状況でベストは尽くしたと思う
“スバル”: 明日、フェネが回復してくれてたら、 ガーディーの力を借りなくてもどうにかできるかもしれねぇ
“スバル”: 少なくとも、ページがシバレル大氷河ってとこにあるのは、 確かだと思うし
“スバル”: とはいうものの、フェネの回復の可能性は低そうだな…… 癪だが、あいつの手を借りることになりそうだよ
“スバル”: ──フェネ、お前、体調は大丈夫なのか?
“フェネ”: 残念ですが、スバル氏 フェネの体調は完璧ではありません
“フェネ”: ページの感知を行うことはできないと思われますが、 ページを『禁書』に封じることは可能です
“スバル”: ページを封じる…… 確かに感知だけじゃなくて、それもお前の大切な役目だったな
“フェネ”: 左様です 『禁書』に封じない限り、ページの危機は去りません
“スバル”: けど、感知はできねぇか……
“スバル”: つまり、ガーディーに、ページのありかを聞く必要があるわけだ?
“エミリア”: スバル、フェネはページをガーディーさんに見せても、 いいって言ってるわ
“フェネ”: ページの危機を放置するわけにはいきません
“フェネ”: やむを得ませんが、 ガーディー氏にページをお見せすることに同意します
“フェネ”: さらに言えば、早急にページを回収し、 この極寒の地を離れたいとフェネは考えています
“レム”: フェネさんの体調の回復には、 グステコを離れるのが一番だとレムも思います
“スバル”: フェネの体調不良の原因がこの寒さなら、 確かにそうするのが一番だな
“スバル”: よし、わかった ガーディーに会いに、氷河亭へ向かうとしよう
“スバル”: ──ってわけで、無事にページが回収できた暁には、 俺たちが集めた『遺作』をお前に見せてやる
“スバル”: だから、約束通りページのありかを教えてくれ
“ガーディー”: 『遺作』の場所を口頭でお伝えするのは難しいですな わたくしも皆様に同行いたします
“スバル”: 待て待て! すげぇ危険なんだよ! マジで命の危険があるかもしれねぇ
“エミリア”: ホントにそう
“エミリア”: ページから『異形』が出てきたり、 ページに吸い込まれちゃうことだってあるんだから
“レム”: はい、スバルくんやエミリア様の言う通りです ガーディー様にはアルビスでお待ちいただくのが良いかと
“ガーディー”: はぁ……はぁ…… 『遺作』から出現する特別な魔物! 『遺作』の中への誘(いざな)い!
“ガーディー”: な、なんと美しい! わたくしの命の危険など比べるまでもありません!
“スバル”: ダメだ…… こいつは完全にどうかしてやがる……
“フェネ”: スバル氏、致し方ないでしょう それにガーディー氏のおっしゃることも一理あります
“フェネ”: 氷河都市アルビスを一歩出れば、そこに広がるのは白銀の世界 正確な場所を伝えるのは困難かと
“スバル”: つまり……こんな奴でも同行させるしかねぇってわけだ?
“フェネ”: 左様です いち早くページを回収するためにもやむを得ません
“スバル”: わかった、ガーディー…… 一緒にいこう 急ぎ、外の竜車に乗ってくれ
ナレーター: こうしてガーディーと共に、『禁書』のページがあるという シバレル大氷河に向けて出発したスバルたち
ナレーター: そんなスバルたちを乗せた竜車の外には、 どこまでも続く白い世界が広がっているのだった──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_18

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■18話 タイトル:徒歩移動、そして…… 更新日:2021/10/28

“レム”: 申し訳ありません、スバルくん これ以上は竜車で進むことは難しそうです
“スバル”: マジかよ!? 寒空の下、ここからは徒歩で移動?
“レム”: 本当に申し訳ありません……
“レム”: この子たちも雪道を頑張ってくれましたが、 これ以上は進めそうもありません……
“スバル”: ごめん、ごめん 別にレムを責めてるわけじゃねぇんだ
“スバル”: 思わず愚痴っぽいこと言っちゃったけど、 それは俺の心が弱いからだから、気にしないでくれ
“スバル”: そもそもは俺が撒いちまった種だ 俺に文句を言う資格なんてねぇしな
“ガーディー”: ほうほう スバル殿が撒いた種というのは、 どういうことなのでしょう?
“ガーディー”: よろしければ、わたくしにも教えていただけませんか?
“スバル”: よろしくねぇから、向こういってくんねぇ? そもそもお前、美しくねぇ俺になんて興味ないはずだろ!
“ガーディー”: なるほど スバル殿は外見だけでなく、 心まで美しくないようですな
“スバル”: うるせぇー! 人の内面になんて興味ねぇくせしやがって、 知ったような口叩くんじゃねぇ!
“ガーディー”: それは違いますな、スバル殿
“ガーディー”: 内に美しさを秘めているのであれば、 それは自然と外へと溢れ出るもの
“ガーディー”: 内に秘められたまま、外へ出ることがないものであれば、 わたくしには価値を見出すことはできませんが
“スバル”: って、やっぱりお前は内面になんて興味ないじゃねぇか!
“スバル”: マジでお前は一度俺の故郷に連れ帰って、 日本の美意識ってものを教え込みてぇよ
“スバル”: 見えないところにこそ重きを置く美学
“スバル”: 外に溢れ出ちゃったりすると、 むしろ恥だと感じちまうぐらいなんだよ
“スバル”: そもそも、あんな気持ち悪い絵を“美しい”なんて評するお前が、 美について語ったところで説得力がねぇけどな!
“ガーディー”: あの美しさがおわかりにならないとは、いやはや悲しいものです
“ガーディー”: なぜそのような方が、 あのような貴重な品をお持ちになっているのでしょう?
“ガーディー”: 芸術とは、それを理解する者が手にしてこそ、輝きを放つもの
“ガーディー”: 今すぐわたくしにお譲りいただきたく ええ、もちろん金額には糸目を付けませんので──
“スバル”: どさくさに紛れて、買い取り話を持ち掛けてんじゃねぇ!
“スバル”: そもそもあんなもんに輝きなんて放ってほしくねぇし、 金額どうこうの話じゃねぇんだ
“スバル”: それについては交渉するだけ無駄だぜ わりぃけど諦めてくれ
“スバル”: そんなことより、早く竜車を降りて…… って、レム、俺のことじっと見つめてどうしたの?
“レム”: スバルくんの故郷 レムはとても興味があります
“エミリア”: 私も興味あるわ、スバルの故郷
“エミリア”: でも、へんちくりんな言葉が多そうだから、 向こうの人のお話、私に理解できるかしら?
“スバル”: へんちくりんって、きょうび聞かねぇな……じゃなくて!
“スバル”: エミリアたんやレムが俺の故郷に興味を持ってくれるのは、 すげぇ嬉しいんだけど、現時点だとすげぇ難しいかな!
“スバル”: そもそもそんなことができるんだったら、 俺、ロズワールのところで使用人として働いてなかったしね!
“スバル”: とにかく、今はシバレル大氷河にあるページの回収が最優先だ! さっそくページの場所に向かって歩き出そう!
“スバル”: フェネ、お前も大丈夫だよな?
“フェネ”: 体調は悪いですが、手は打ってあります
“フェネ”: ここまできた以上、 優秀なフェネが醜態を晒すことなどあり得ません
“フェネ”: 恩に着ます、エミリア女史
“エミリア”: ううん、気にしないで こうしていれば温かいし移動も楽ちんよね
“フェネ”: はい いささかスバル氏からの視線が痛い気がしますが、 気にしないことにします
“スバル”: やいやい! 自信満々に言い放った“手は打ってあります”の結果がそれか!
“スバル”: エミリアたんに抱っこしてもらってるだけじゃねぇか!
“スバル”: それのどこが“醜態を晒すことなどあり得ません”なんだよ! 思いっ切り晒してるよね!
“フェネ”: 醜いスバル氏であれば、文字通り醜態となるのでしょうが
“フェネ”: 可愛いフェネと美しいエミリア女史の組み合わせは、 絵になること間違いなし もはや芸術と呼べるかもしれません
“スバル”: げ、芸術って…… お前、絶対ガーディーの影響を受けてるよね!?
ナレーター: 竜車を降りて歩き始めたスバルたちは、 何時間も歩き続け──
ナレーター: ようやくガーディーが『禁書』のページを目撃したという場所に 到着しようとしていた
“スバル”: ぜぇ……ぜぇ…… あ、足が重い…… つ、疲れた…… 腹もすげぇ減っちまったぜ……
“フェネ”: 情けないですよ、クソ上司
“フェネ”: ガーディー氏によれば、ページの場所は間もなくとのこと 弱音を吐く暇があったら、足を前へと動かしてください
“スバル”: お前だけには言われたくねぇ! お前、エミリアたんに抱っこしてもらってるだけだろ!
“レム”: スバルくん、歩くのが辛いのであれば、 レムが喜んで抱っこさせていただきます!
“スバル”: 気持ちは嬉しいんだけど、 女の子に抱っこされるシチュエーションはできれば避けたいかな!
“スバル”: 男としてのメンツもあるし、マジ、気持ちだけ受け取っておくよ
“フェネ”: 本当にそれで大丈夫ですか、スバル氏 スバル氏の顔にも“行ったら帰るの法則”と書かれています
“フェネ”: ここまできたということは、 必然的にスバル氏は同距離を歩いて竜車に戻ることになります
“スバル”: それ、できるだけ考えないようにしてたことだから、 言わないでもらっていい!
“スバル”: とにかく、俺は大丈夫だ 根性、見せてやるよ
“スバル”: 弱音を吐いたりして悪かった さあ、ページに向かって突き進もう──
???: ウガガガガーーッ!!
“エミリア”: ──っ!
“レム”: ──っ!
“スバル”: ──なっ!? 『異形』か?
“フェネ”: こ、これはページの反応……
“フェネ”: ですが、『異形』を顕現させるまでには今しばらくの猶予が! 『変異体』と推測されます!
“スバル”: どっちにしろ、緊急事態じゃねぇか……
“スバル”: もうちょい早く感知してくれてりゃ助かったんだが、 体調が悪いフェネにそんなこと言っても仕方ねぇか……
変異体: グググググッ!
“ガーディー”: う、美しい……!
“スバル”: ──ま、待て! 近づくな、ガーディー!
“エミリア”: す、スバル、向こうに!
変異体: ウガガガガガ……
“レム”: スバルくん、向こうにも!
変異体: グググググ……
“スバル”: ──チクショウ! あっちにもだ!
変異体: グガガガガガ……
変異体: ウガガガガガ……
“ガーディー”: おぉー! な、なんと美しい!
“スバル”: ちっ! 一人テンションがおかしな奴がいるが、 これは明らかな大ピンチ……
“スバル”: しかも、刻一刻と『異形』顕現の時間まで迫ってやがる……
“スバル”: いったいどうすりゃいい……?
“スバル”: 考えろ、考えるんだ、ナツキ・スバル なんとしてもこのピンチを切り抜けるぞ……!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_19

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■19話 タイトル:大ピンチを打開せよ 更新日:2021/10/28

ナレーター: 夕暮れのシバレル大氷河
ナレーター: スバルたちは突如出現した『変異体』たちに襲われ、 窮地に陥っていた──
変異体: グガガガガガ……
“スバル”: 現時点で『変異体』が四体……
“スバル”: 新たな『変異体』が出現しないとも限らねぇし、 ページから『異形』が顕現しちまうかもしれねぇ……
“スバル”: だがきっと、打開策はある……!
“スバル”: エミリアたん、レム、『変異体』の相手を頼めるか?
“エミリア”: もちろんよ、スバル! もうパックは呼べない時間だけど、私だけでも十分戦えるわ!
“レム”: お任せください、スバルくん! 『変異体』なんかにレムは負けません!
“スバル”: すまない、二人とも 負担をかけちまうけど、なんとかあいつらを食い止めてくれ!
“エミリア”: わかったわ、スバル! ──私が相手よ! えーーいっ!
“レム”: スバルくん、レムが絶対に食い止めます! はぁーーーっ!!
“スバル”: なんとかあの二人が持ち堪えてる間に、 俺は事態を打開するための糸口を掴まねぇと……
“スバル”: ってことで、フェネ お前に確認したいことがある
“フェネ”: なんでしょう、スバル氏
“スバル”: この事態を根本的に解決する方法ってのは、 ページを『禁書』に封じるってことで合ってる?
“スバル”: つまり、ページさえ封じちまえば、 『異形』は出現できねぇし、『変異体』も弱体化するんだよな?
“フェネ”: 左様です 『変異体』も含め、ページがすべての元凶……
“フェネ”: 元を断つという発想は、フェネのアシストがあったとはいえ、 見事です、スバル氏
“スバル”: アシストなんてしてもらってねぇだろ!
“スバル”: そもそもお前、ぬくぬくとエミリアたんに抱っこされながら、 ここまで運んでもらっただけだよね!
“スバル”: だいたいお前がどうして“アシスト”ってワードを…… って、まぁ、いい 今はそれどころじゃねぇしな
“スバル”: とにかく、これでやるべきことは決まった──
“スバル”: ガーディー、至急ページの場所まで案内してくれ! エミリアたんとレムが食い止めてくれてる内に早く!
“ガーディー”: おぉ…… う、美しい…… あれがエドガー殿が描かれた特別な魔獣……
“スバル”: 感動してるとこわりぃんだけど、あれは『変異体』っていって エドガーって絵本作家が描いたもんじゃねぇよ
“ガーディー”: そんなはずは……! あれは間違いなくエドガー殿の作風そのもの……!
“フェネ”: スバル氏 能力についてはもちろんですが、 『禁書』の影響はその姿にも及んでいると思われます
“スバル”: 確かにそうだな
“スバル”: 巨大化してるだけじゃなくて、ただでさえ恐ろしい魔獣の姿が、 よりいっそうグロテスクになってやがる
“スバル”: “美しい”なんてとても思えねぇけど、 あの姿にはエドガーって絵本作家の作風が投影されてるわけだ
“フェネ”: 左様です ガーディー氏の反応からも、その理解で間違いないでしょう
“スバル”: それがわかったところで、俺らにはあんま関係ねぇけど…… 『変異体』の見てくれについては了解した
“スバル”: んで、肝心のページのありかなんだが……
“ガーディー”: やはりあれはエドガー殿の作品! 飽きることなくいつまで見ていられる……まさに眼福ですな!
“スバル”: ──ガーディー! マジ、一大事だ!
“スバル”: 後で俺たちが集めたエドガーの絵を好きなだけ見せてやるから、 『変異体』の鑑賞タイムは終わりにしてくれ!
“ガーディー”: ……スバル殿 その言葉に二言はありませんな?
“スバル”: ああ 二言はねぇよ だから、至急、ページの元まで頼む! フェネもついてこられるよな?
“フェネ”: エミリア女史のおかげで体力を温存できました故、 体調が悪い状態ではありますが、フェネも同行可能です
“フェネ”: さあ、ガーディー氏 フェネたちをページの元まで、急ぎご案内ください
“ガーディー”: わかりました では、こちらへ──
変異体: ウガガガガーーッ!!
“エミリア”: はぁ…… はぁ…… 負けないわよ……! えーーいっ!
変異体: ウガッ! ウググググ…………
“レム”: はぁ…… はぁ…… ここから先へはいかせません! はぁーーっ!
変異体: グガッ! ウガガガガ…………
変異体: グググググ……
“レム”: くっ! 新たな『変異体』が……!
“レム”: ですが、スバルくんが必ずどうにかしてくれるはずです!
変異体: ガガガガガ……
“エミリア”: こっちにも新しい子が……!
“エミリア”: でも、きっと大丈夫 スバルがどうにかしてくれるわ それまで私たちは──
“レム”: はい、エミリア様! なんとしても『変異体』を食い止めましょう!
“スバル”: はぁ……! はぁ……! 息が切れる! 体が死ぬほど重てぇ! けど、今は前へ前へだ!
“ガーディー”: はぁ…… はぁ…… わ、わたくしはもう……
“スバル”: 頑張れガーディー! ページを回収するまでの辛抱だ…… って、ガーディーの姿が見当たらねぇぞ!?
“フェネ”: ガーディー氏ならあちらで倒れておいでです
“スバル”: えぇ!? 肝心なときになに伸びてんだ、あんにゃろ!
“フェネ”: ガーディー氏は歩き詰めだった故、 このような状態になるのもやむを得ないでしょう
“フェネ”: さあ、スバル氏の出番です おんぶなり抱っこなりしてあげてください
“スバル”: 俺だって歩き詰めだ! 自分のことで精一杯で、 あんなおっさん、運んでやる体力はねぇよ!
“フェネ”: では、致し方ありません ガーディー氏は置き去りにしましょう
“スバル”: 置き去りって…… すでに辺りは暗い あいつがいねぇとページが……
“スバル”: って、あっ! お前、もしかしてページの場所わかってる?
“フェネ”: 左様です フェネはページを感知しています ですので、ガーディー氏の同行は不要 むしろ足手まといです
“スバル”: だったら早く言おう!? お前もガーディーに案内を促してたよね!
“フェネ”: 何が起こるかわからない状況だったので、 あのときはそのように対応いたしました
“フェネ”: 今回はガーディー氏が脱落しましたが、 フェネが脱落する可能性も十分にありました故
“スバル”: なるほど…… 体調不良だし、フェネが脱落する可能性もあったか……
“スバル”: けど……この寒さだ ガーディーを放置して、本当に大丈夫か?
“フェネ”: ページはこの近くです、スバル氏 ページを封じてすぐに戻れば、ガーディー氏は問題ないでしょう
“スバル”: わかった、フェネ! ガーディーのためにも、とにかく先を急ごう!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c06_20

Scene Name: メインシナリオ_6章_FIX ■エピローグ タイトル:スバルの嫌な予感 更新日:2021/10/28

“スバル”: はぁ……! はぁ……! はぁ……!
ナレーター: 日が暮れたシバレル大氷河を、スバルはフェネと共にひた走る
ナレーター: 目指すはページ
ナレーター: タイムアップは目前に迫っている
ナレーター: 事実──
ナレーター: スバルたちが目指す先で、 輝きを放つ何かが空へと舞い上がろうとしていた
“フェネ”: ──スバル氏! もう手遅れです! きます!
“スバル”: ぜってぇ諦めねぇーーっ!!
ナレーター: 大声でそう叫んだスバルは、 フェネを掴むと大きく振りかぶるのだった
“スバル”: これでどうだーーっ!! ──どりゃあぁぁぁぁーーーっ!!
“スバル”: フェネっ!! ──いけえぇぇぇぇーーーーーっ!!!
ナレーター: スバルから放たれたフェネは、今まさに『異形』を 顕現させんとするページに向い、勢いよく飛んでいく
ナレーター: そして──
“フェネ”: なんとか間に合いましたね では、封じさせていただきます
“スバル”: ぜぇ……
“フェネ”: ──スバル氏、四散したマナも『禁書』に吸わせ、 一通りのことが完了しました
“フェネ”: さあ、急ぎエミリア女史とレム女史の元へ向かいましょう
“スバル”: ぜぇ…… ぜぇ…… 待て待て 俺、まだ一歩も歩けねぇよ できればお前におんぶしてほしいぐらいだ
“フェネ”: フェネがスバル氏をですか? 死んでも嫌です 固くお断りいたします
“スバル”: そ、そこまで固辞!?
“スバル”: 軽い冗談のつもりだったんだけど、 すげぇ傷つく結果になっちまったよ……
“フェネ”: フェネにはスバル氏をおんぶすることはできませんが、 エミリア女史の元へと全力で吹き飛ばすことは可能です
“フェネ”: 無論、その場合、命の保証はできかねますが
“スバル”: 命懸けのダイブは遠慮したいかな!? もうすぐ歩けるようになりそうだし!
“スバル”: って、もしかして、さっきのこと、根に持ってたりする? お前のこと、全力で投げちまった
“スバル”: ……にしても、あれ、すごかったな
“スバル”: フェネ投げ選手権なってもんがあったら、 俺、余裕で優勝できそうだよ
“フェネ”: フェネへの謝罪かと思いきや、よりにもよって自画自賛 最低です 軽蔑します
“フェネ”: それに、あれはスバル氏の力ではありません フェネの意志により高速で飛ばせていただきました
“スバル”: えぇ!? そうなの?
“フェネ”: 左様です 人の力などたかが知れています フェネをあの速度であそこまで飛ばすことは不可能かと
“フェネ”: フェネはスバル氏の移動速度に合わせていましたが、 スバル氏を置き去りにする前提であれば
“フェネ”: たとえ体調が万全でなくとも、あのような危機が訪れる前に、 ページを封じることができていたでしょう
“スバル”: だったら早く言おう!? 俺の苦労、完全に無駄だったよね!
“フェネ”: ……いいえ、“完全に無駄”というわけではありません
“フェネ”: スバル氏は最後まで諦めませんでした
“フェネ”: 何時間にも及ぶ徒歩移動 さらに何体もの『変異体』の出現
“フェネ”: 日が暮れ、足元も悪いなか、諦めずに走り続け、 ついにはページへとたどり着きました
“フェネ”: その姿をフェネは近くでしかと見届けています
“フェネ”: 無論、フェネがページの場所を感知した時点で、フェネのみで 行動した方が、効率的かつ安全だったことは確実ですが
“フェネ”: 宣言通り、スバル氏は根性を見せたのではないでしょうか
“スバル”: 誉め言葉として受け取るには、なんかトゲがある気もするけど、 お前に根性を見せられたんなら良かったよ
“スバル”: それに、確かに達成感はあるな 疲れ果ててくたくただけど、やってやったって感じてる
“スバル”: 今味わってる感覚は、きっと全力で頑張んねぇと 味わえないものだし、この経験は今後に必ず活きるはずだ
“スバル”: そういう意味じゃ、“完全に無駄”なんてことはねぇな
“スバル”: むしろ、ひとりで解決できたかもしれないのに、 俺を付き合わせてくれてありがとな、フェネ
“スバル”: おかげで成長できたよ
“フェネ”: それではスバル氏、準備はよろしいですか? これからフェネが全力でスバル氏をエミリア女史の元へと──
“フェネ”: 無論、命の保証はしかねますが
“スバル”: どうしてそうなるんだよ! ってか、お前、俺が投げたこと、絶対根に持ってるよね!
“エミリア”: えーーーいっ!!
変異体: ウガッ! ウググググ…………
“レム”: はぁーーーっ!!
変異体: グガッ! ウガガガガ…………
“レム”: エミリア様
“エミリア”: うん、出てきた『変異体』はみんな倒せたみたい
“レム”: はい! きっとスバルくんが……
“スバル”: エミリアたーんっ! レムーっ! 大丈夫かーっ?
“エミリア”: ふふふ 噂をすれば
“レム”: はい スバルくんの登場ですね
“レム”: スバルくん、レムたちは大丈夫です 出現した『変異体』もすべて倒しました
“スバル”: おぉ! それはすげぇ! こっちも片付いたよ ページは『禁書』に封じ済みだ
“エミリア”: お疲れ様 フェネ、ありがとう あと、スバルも
“スバル”: ど、どうして真っ先にフェネを!? それだと俺がついでな感じになっちゃうよ!
“エミリア”: でも、ページを封じたのってフェネでしょ? だから、ね?
“フェネ”: エミリア女史が正しいかと フェネの活躍に比べ、スバル氏のそれは微々たるもの
“フェネ”: スバル氏はエミリア女史の口から、 自分の名が出ただけでも感謝するべきです
“スバル”: クソっ! 言い返せねぇ……
“スバル”: けど、次こそは君から真っ先に名前を言ってもらえるよう、 頑張るよ、エミリアたん
“スバル”: ってことで、ナツキ・スバル! ナツキ・スバル! あなたとわたしのナツキ・スバルをどうぞよろしくお願いします!
“フェネ”: 名前を刷り込んで呼ばれようとは姑息 正々堂々活躍して、名前を呼ばれるよう努めてください、クソ上司
“スバル”: もちろんそのつもりだよ! 名前の刷り込みはあくまで保険だから安心しろ!
“フェネ”: そのような保険を打っている時点で、 安心できるような状態ではない気がしますが……
“フェネ”: スバル氏が頑張り抜いたことは事実 今回は大目に見ることにしましょう
ナレーター: 無事に危機を脱し合流を果たしたスバルたちは、 竜車を目指して歩き始めていた
“スバル”: ここから竜車まではまだまだあるな……
“スバル”: それに、俺たちは大切な何かを忘れてやしねぇか?
“エミリア”: ええっと、ページは『禁書』に封じたのよね?
“フェネ”: 左様です フェネが責任を持って封じさせていただきました でなければ、我々は危機を脱しられなかったでしょう
“エミリア”: うん、確かにそうね
“レム”: だとすると……ガーディー様の姿が見当たりませんが? スバルくんが言う“大切な何か”とはもしや?
“スバル”: あぁぁぁーっ!? それだ、それ! ガーディーの奴を置いてきちまってるよ!
“エミリア”: あっ、ホント!
“レム”: 急ぎ、戻りましょう スバルくん、ガーディー様とは、どこで別れたのですか?
“スバル”: くっ…… 正確な場所はちょっと……
“レム”: そうですか…… ですが、一面の銀世界です さらにこの暗闇 場所が定かでないのは仕方ないと思います
“レム”: とにかく、手分けしてガーディー様を──
“フェネ”: レム女史 どうやらその必要はなさそうです あちらからくる人影、あれは紛れもなくガーディー氏
“ガーディー”: 皆様ーっ! お待ちくださいーっ!
“スバル”: よう! 会えて何よりだぜ、ガーディー
“スバル”: この寒さで頭が冷えて、お前の美的センスが まともになってくれてたら、なお嬉しいけど
“ガーディー”: わたくしの美に対する意識は確固たるもの どのような状況でも揺らぐことなどありません
“スバル”: 偉そうに胸張って宣言してっけど
“スバル”: お前の美に対する意識は異常だから、 ガンガン揺らいで、変わった方がいいと思うぞ!
“スバル”: とにかく、これで全員集合だな?
“レム”: はい もう誰一人欠けていません
“スバル”: よし、じゃあ、竜車に向けて出発だ
“スバル”: クルシュさんが貸してくれた防寒着はさすがの性能だけど、 さすがに寒さが身に染みる
“スバル”: 早いとこ竜車に戻って、アルビスの宿に帰ろう
“スバル”: ──というわけで、無事に竜車に乗り込んで、 アルビスへ向けて出発っと
“スバル”: ふぅー マジ、疲れた だいぶ夜も更けちまったし、 アルビスまでひと眠りしたいってのが本音だ
“ガーディー”: スバル殿 ひと眠りの前にわたくしに『遺作』を 約束は果たしてください
“スバル”: わかってるよ 約束はちゃんと守らせてもらう
“スバル”: けど、まずは一休みして、アルビスに戻ってからゆっくり拝む ってのでもいいと思うんだが?
“スバル”: 俺たちはパトラッシュの帰りを待つことになるし、 あと一日二日はアルビスに滞在するつもりだぜ
“ガーディー”: 目の前にエドガー殿の『遺作』があるのです! この状況で我慢などできるはずありません!
“ガーディー”: さあさあ! 今すぐわたくしに、『遺作』を!
“スバル”: 顔、ちけぇよ! わかったから、少し離れてくれ!
“スバル”: あと、見せる前に一つ確認させてほしい どうしても腑に落ちねぇことがあるんだ
“ガーディー”: ……腑に落ちないこと、とはなんですかな?
“スバル”: どうしてお前が、ページを回収しなかったか、だ
“スバル”: お前は、シバレル大氷河であのページを発見したんだよな? にも拘わらず、持ち帰らずにあの場所に放置した
“スバル”: 納得できねぇだろ、そんなの お前の『遺作』への執着ぶりを見れば、なおさらな
“エミリア”: スバル ページはすぐに手に取れる場所にあったの?
“スバル”: そうだよ、エミリアたん
“スバル”: 何らかの障害があって、 目にはできるけど、手には取れないなんてことはなかった
“スバル”: あの場所でページを見かけたなら、 普通なら回収して持ち帰るはずだ
“スバル”: なのにガーディーはそうしなかったんだよ こんなにページに執着してるっていうのに
“ガーディー”: それについては、実に単純な理由です
“ガーディー”: わたくしとしては是非とも持ち帰りたかったのですが、 賊に襲われてしまい、そうもいかなかったのです
“ガーディー”: 『遺作』を目の前にしながら、 命からがら逃げ帰ることになってしまいました
“スバル”: ……賊に? あんな場所で?
“ガーディー”: はい でなければ、わたくしが『遺作』を放置するなどあり得ません
“スバル”: いやいや、あんな寒くて人がいない場所に、 賊なんて出るわけねぇだろ
“スバル”: いや、その前に どうしてお前はあんな場所にページがあるってわかったんだ?
“スバル”: よく考えたら、それだってすげぇ不思議な話だよな
“スバル”: プリシラの奴がページを持ってるって情報をゲットするより、 断然難しいだろ
“スバル”: あんなところにページがあるなんて情報を得るのはさ
“ガーディー”: スバル殿がどう思われようが、 わたくしはあの場所で賊に襲われ、泣く泣く『遺作』を諦めました
“スバル”: 泣く泣くって…… そもそもお前、 ページのためなら命も惜しくねぇって言ってなかった?
“ガーディー”: それについては間違いありませんが、 状況からいったん退くべきだと判断しました
“ガーディー”: 賊の狙いがわかりませんでしたので 変に『遺作』へ注目を集めるべきではないと考えたわけです
“ガーディー”: 確かにあのような場所に賊が出没するのは、 不自然ではありますが、世の中には様々な人がおります
“ガーディー”: あのような場所を好む賊がいても、 わたくしとしてはなんら不思議ではありませんな
“スバル”: いやいや、不思議だっつーの! さみぃし、誰もこねぇじゃん!
“フェネ”: それについては、 氷河下りがこの地の名物だと聞いた記憶があります
“フェネ”: 観光客を狙う賊がいても不思議ではありません
“スバル”: そ、そうなの?わざわざこんなさみぃところを 観光する物好きがいるなんて驚きだな
“フェネ”: その氷河下りは死人が出るほど危険なものらしく、 命懸けの氷河下りとして知られていた記憶もあります
“スバル”: もはや言葉もねぇよ 命を懸けてまで下らなきゃいけねぇ氷河なんてねぇだろ
“スバル”: って、そういや、俺の故郷でも、 南極だの北極だのをめぐるツアーがあったな
“スバル”: しかもすげぇ高額でさ、 そんなツアーに誰が参加するんだよって思ってたんだけど
“スバル”: そんなツアーがある時点で、ニーズはあるってことだよな 俺にはまったく理解できないけども
“スバル”: とにかく、観光客がきたりするなら、 賊が出てもおかしくねぇか……
“スバル”: ちなみに、その賊ってのはどんな奴だったんだ?
“ガーディー”: 仮面を着けた怪しい男でした
“スバル”: ……仮面の怪しい男? それってプリシラんとこの──
“ガーディー”: いえ、プリシラ嬢の元にいらっしゃった、 アル殿にはわたくしもお会いしたことがありますが
“ガーディー”: あの方ではありません
“スバル”: そりゃそうか…… あのおっさん、寒さには弱そうだしな
“スバル”: けど、どうしてそんな大切なこと、予め教えてくれなかったんだ? 言う機会だったらいくらでもあったろう
“スバル”: 俺たちは『変異体』以外にも、 お前を襲った賊からも狙われたかもしれねぇんだし
“ガーディー”: それについては、貴殿らが賊を恐れ、 『遺作』の回収を断念することを危惧してのことです
“スバル”: 凶暴な『変異体』や『異形』にさえ勇敢に立ち向かう俺たちだ その辺の賊になんてビビるわけねぇだろ
“ガーディー”: 皆様の勇猛果敢な姿を拝見した今であれば、 無論、そのようなことが杞憂だとわかります
“ガーディー”: ですが、わたくしとて、初対面である皆様を どこまで信用してよいかわからなかったのです
“スバル”: だから色々言ってねぇことがあったってか?
“スバル”: それについちゃ、 俺たちもお前のことをとやかく言う資格はねぇんだが
“スバル”: 賊に襲われたってことぐらいは教えてほしかったぜ
“スバル”: って、後先考えねぇ破天荒キャラかと思ったら、 お前も色々と考えてんだな
“スバル”: なんか意外だぜ、マジで
“スバル”: ……とはいえ、仮面を着けた怪しい男、ね そいつがただの賊じゃない可能性を感じずにはいられねぇよ
“スバル”: そもそも、そいつの狙いが 『禁書』のページだった可能性は否定できねぇ
“エミリア”: でも、ページはそこに置いたまんまだったのよね?
“フェネ”: 左様です、エミリア女史 ページが狙いであれば、その者が持ち去っているでしょう
“スバル”: それこそ、今回みたいに『変異体』が出てきたらどうだ?
“スバル”: 普通の奴に『変異体』なんて倒せねぇし、 ページを諦めて逃げ出したって不思議はねぇだろ
“フェネ”: 最悪の事態を想定する それはとても大切なことです
“フェネ”: どうやらフェネのおかげで、 クソ上司だったスバル氏も成長できているみたいですね
“スバル”: お前のおかげがないわけじゃねぇけど、 部下の上司に対する発言とはとても思えねぇな!?
“スバル”: お前の中で上下関係の概念はどうなってんだよ!
“スバル”: とにかく、なんか嫌な予感がする
“スバル”: 仮面の怪しい奴の狙いが、 『禁書』のページだって線は消さない方がいい気がしてるよ
“ガーディー”: あの賊の狙いが『遺作』…… 確かにあれだけの代物 その可能性は十分にありそうですな
“ガーディー”: そもそも元を正せば、スバル殿も『遺作』を狙い、 わたくしに近づいた御仁
“ガーディー”: あの者が『遺作』を掠め取るため、わたくしを尾行し、 頃合いを見計らって姿を現した可能性は否定できませんな
“スバル”: やっぱそうか…… その方が筋は通る
“エミリア”: それで、『変異体』が出てきちゃって、 すたこらさっさって逃げちゃったのね?
“スバル”: すたこらさっさって、きょうび聞かねぇな…… って話は置いといて、その線が一番濃厚かもね
“スバル”: だったら、あそこに結構な数の『変異体』がいたことも、 説明がつくと思う
“スバル”: だいぶ前からページの影響で『変異体』が出始めてて、 その数が徐々に増えてった感じでさ
“スバル”: けど、まだ一つ疑問が残ってるぜ、ガーディー
“スバル”: なんだか質問がスルーされた感じになってるけど、お前は どうしてあそこにページ……『遺作』があるって知ってたんだ?
“スバル”: 俺たちが持ってる『遺作』を見せてほしけりゃ、 そこんとこ納得がいく説明が必要だぜ
“ガーディー”: ──なっ!? わ、わたくしは約束通り『遺作』の場所を……!
“スバル”: いや、お前は途中でぶっ倒れて、 結局ページの場所を見つけたのはフェネだ
“スバル”: 厳密には、お前は約束を守っちゃいねぇ
“フェネ”: さすが悪の権化、スバル氏 血も涙もありませんね
“スバル”: うるせぇー! 俺たちにとって、それは必要な情報だ! これから先も、ページを集めるなら、なおさらな!
“スバル”: 頼む、ガーディー! ページのありかを知るための方法があるなら、ぜひ教えてくれ!
“エミリア”: 私からもお願い 私たちはページを集めないといけないの だから、ね?
“ガーディー”: エミリア嬢まで……
“ガーディー”: ですが、それについては、 地道な努力としか言いようがありませんな
“ガーディー”: シバレル大氷河に隕石が落ちたという情報を得ましたので、 もしやと思い、地道に大氷河を捜索いたしました
“スバル”: 隕石…… そういやアストレア領でのページ回収も隕石騒ぎが発端だったな…
“スバル”: ってことは、マジで種も仕掛けもねぇってこと?
“スバル”: あの広いシバレル大氷河で小さなページを発見できたのは、 地道な努力の賜物なのか?
“ガーディー”: そうなりますな
“ガーディー”: 無論、わたくしのエドガー殿の作品に対する愛が、 発見に寄与したことは言うまでもありませんが
“スバル”: それ、真顔で言うと、怖いよ!
“スバル”: せっかく変わりかけてたお前への印象が、 逆戻りしちまったじゃねぇか!
“フェネ”: スバル氏 そろそろガーディー氏に、 『禁書』を見せてさしあげてもいいのでは?
“エミリア”: うん 約束だもん 約束はちゃんと守らないと
“スバル”: わかったよ! わかったけども! いつまでフェネは、エミリアたんに抱っこしてもらってんだよ!
“スバル”: 気にしないように頑張ったし、 見て見ぬふりをしてきたけど、もう限界だぞ!
“レム”: ふふふ スバルくん、元気そうで何よりです……
ナレーター: レムが駆る竜車はスバルたちを乗せてひた走る
ナレーター: そして、明け方アルビスへと到着したスバルたちは、 その日を休養にあてるのだった
ナレーター: 翌日──
“パトラッシュ”: ──ッ!!
ナレーター: 英気を養ったスバルたちの元へ、 クルシュからの手紙を携えたパトラッシュが戻ってくる
ナレーター: パトラッシュが持ち帰ったクルシュからの手紙には
ナレーター: アナスタシアの計らいで、彼女との面会場所が グステコからほど近い第七都市テンミツになったことと
ナレーター: フェルトが正式に王選への参加を表明したことなどが、 記されているのだった──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_00

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■プロローグ タイトル:クルシュからの手紙 更新日:2022/01/19

ナレーター: シバレル大氷河でページを回収し、『禁書』に封じたスバルたちは
ナレーター: グステコ聖王国の氷河都市アルビスにある 宿屋に滞在しているのだった──
“パトラッシュ”: ──っ!
“スバル”: おお、パトラッシュ、戻ったか!
“パトラッシュ”: ──!
“スバル”: あはは 俺も会えて嬉しいぜ、パトラッシュ! さあ、クルシュさんからの手紙を渡してくれ
“レム”: ──クルシュ様からの手紙に書かれていた内容は以上となります
“エミリア”: ありがとう、レム でも、ついにフェルトちゃんが……
“スバル”: ああ そうなるとは思ってたけど、 フェルトも晴れて王選候補の仲間入りだな
“レム”: はい クルシュ様の手紙には、 徽章も光り、賢人会からも候補者と正式に認められたとあります
“スバル”: 今は『禁書』の件があるから、王選は延期されてるけど、 それが解決したらライバルってわけだ
“スバル”: 貧民街出身ってのはすげぇマイナス要素らしいが、 ラインハルトがついてる時点で、強敵になることは間違いねぇ
“スバル”: あいつ、力が半端ないだけじゃなくて、 市民からの人気もありそうだもんな
“レム”: その通りです、スバルくん
“レム”: 『剣聖』様は知名度が高いだけでなく、 市民のみなさんからの人気も絶大です
“レム”: もちろん、『最優の騎士』ユリウス様も、 それに引けを取らない人気を誇っていますが
“スバル”: うぐっ…… 今、ユリウスの奴の情報は、 別に知りたくなかったかな!
“スバル”: あいつがエミリアたんをアナスタシアさんのついでみたいな 扱いをしたこと、俺は忘れてねぇし
“スバル”: キザなイケメンって、仲良くなるのに、 すげぇハードルを感じちまうんだよ、俺は
“フェネ”: やれやれ、それは完全に僻みによるものですね
“スバル”: うるせぇー! 見た目が可愛いフェネには、 一生俺の気持ちはわからねぇよ!
“スバル”: ただでさえ、この目つきのせいで、 人より重い十字架を背負わされてんだ
“スバル”: 好き好んでイケメンとお近づきになんて、 なりたくねぇに決まってるだろ
“スバル”: 引き立て役にされるのは、ごめんだからな
“フェネ”: つまり、スバル氏はユリウス氏の容姿が羨ましい そういうことですね?
“スバル”: その確認って必要!?
“スバル”: 体調を崩してたくせしやがって、 なんだか今日はやけに元気がいいな!
“フェネ”: この極寒の地をもうじき離れられるのです 元気になるのは当然なのでは?
“スバル”: いやいや、現実的にはまだ離れてねぇし、 変わらず極寒の地にいるんだから、その元気はフライングだろ!
“スバル”: 確かに精神的な効果はあるかもしれないけどさ!
“エミリア”: ふふふ スバルとフェネは今日もとっても仲良しね
“レム”: はい スバルくんとの会話を弾ませられるフェネさんが、 レムにはとても羨ましく思えます
“スバル”: いやいや、エミリアたん、レム 俺たちは仲良くねぇし、会話も弾んじゃいねぇよ
“スバル”: 図式としては、俺の部下だとか言いながら
“スバル”: 事あるごとにフェネの奴が、 上司であるはずの俺をディスってる感じだ
“スバル”: しばらく寒さで大人しかったんだけど……
“スバル”: グステコを離れて温かくなったら、フェネからのいびりが 常態化するかと思うと憂鬱になっちまうよ
“エミリア”: ホントにそう? スバル、フェネと話してるとき、とっても楽しそうよ
“レム”: はい レムにもとても楽しそうに見えます
“レム”: アルビスにきて、フェネさんが体調を崩すと、 スバルくんも同じように元気をなくしていました
“フェネ”: そうですよ、スバル氏 可愛いフェネとの会話は、確実にスバル氏を癒しているはず
“フェネ”: 素直に“フェネとの会話が楽しい”と言えばいいのです
“フェネ”: 無論、“非常に”や“とても”を付けて “楽しい”を強調していただいて構いません
“スバル”: 癒されてねぇし、“楽しい”を強調する以前の問題だよ!
“スバル”: とにかく、色々話が脱線してる気がするから、 話をクルシュさんの手紙に戻そう
“スバル”: アナスタシアさんは、カララギのテンミツって町で、 俺たちのことを待ってるんだよな?
“レム”: はい クルシュ様からの手紙にはそう書かれていました
“レム”: アナスタシア様は、エミリア様との面会場所を カララギの第七都市テンミツに指定されたとのことです
“フェネ”: カララギ都市国家の第七都市テンミツは、 グステコ聖王国との国境近くだという記憶があります
“フェネ”: 我々が氷河都市アルビスにいることを考えると、 最適な面会場所ではないでしょうか
“スバル”: つまり、ここから一番近い、カララギの主要都市ってわけだ
“スバル”: アナスタシアさんなりに、 俺たちに気を遣ってくれたのかもしれねぇな
“レム”: はい クルシュ様も手紙の中でそのように推測されていました
“スバル”: アナスタシアさんの俺たちへの気遣い…… 同盟締結に向けて、そりゃ光明だな
“スバル”: って、言おう言おうと思ってなかなか言い出せなかったんだけど
“スバル”: フェネ、お前って結構物知りだよな? 記憶喪失だっていうのに
“フェネ”: どうでもいいことは思い出すのに、肝心なことは思い出さないと、 スバル氏はフェネを責めているのですね?
“スバル”: 別に責めてるわけじゃねぇし、そんな風に 受け取られるかもしれないから、なかなか言い出せなかったんだ
“スバル”: でも、実際にそうだろ? すげぇ物知りっつーか 色々知ってるじゃねぇかよ
“フェネ”: お忘れかもしれないので、改めて言わせていただきますが、 フェネはとても優秀です
“フェネ”: そしておそらく、記憶を失う前のフェネは、 知の宝庫と呼べるような存在だったと推測できます
“フェネ”: それこそ、世界のあらゆる事柄に 精通していたのではないでしょうか
“フェネ”: そして、きっかけさえあれば、 失われた記憶の中から、それらの知識が溢れ出てくるのです
“スバル”: きっかけさえあれば、ね……
“スバル”: 『禁書』について色々思い出せてねぇのは、 きっかけが足りねぇってわけだ?
“フェネ”: 恐らくは…… きっかけさえあれば、フェネはきっと……
“スバル”: ちなみに、シバレル大氷河で封じたページは、 どんなお話だったんだ?
“スバル”: ガーディーとかいう邪魔者がうざくて、 確認するのを忘れちまってたよ
“スバル”: 帰りの竜車で、あんにゃろ、 ほとんど『禁書』を独占してやがったしな
“レム”: お話の内容……レムも気になります
“エミリア”: うん、私もすごーく気になるわ フェネ、どんなお話だったか教えてもらっていい?
“ガーディー”: ──それについては、エミリア嬢、レム嬢 わたくしからお話ししましょう
“スバル”: うぁ!? ビックリした! 突然現れて、しれっと会話に加わるんじゃねぇ!
“スバル”: まずは挨拶して、会話に加わっていいか確認してもらっていい? 丁重にお断りするからさ!
“ガーディー”: シバレル大氷河で回収した『遺作』の内容ですが──
“スバル”: 待て待て、俺の発言を華麗にスルーしてんじゃねぇ!
“スバル”: そもそもエミリアたんはフェネに聞いたんだ お前の出る幕じゃねぇだろ
“フェネ”: では、ガーディー氏、フェネに代わってお願いします
“スバル”: って、フェネの奴がガーディーにふりやがった!
“エミリア”: ガーディー、お願い
“スバル”: エミリアたんもすんなり受け入れちゃってるよ!
“スバル”: けど、俺としては、こいつとは距離を置きたいってのが本音だ 見るからに怪しいし、何を考えてるのか、全然わからねぇしさ
“ガーディー”: それは酷いですな、スバル殿
“ガーディー”: わたくしとしては、美しいエミリア嬢やレム嬢、 そして可愛らしいフェネ嬢とは懇意にしたいと思っております
“スバル”: それ、明らかに俺が含まれてないよね! お前こそ酷すぎだろ!
“ガーディー”: では、改めまして、エミリア嬢、レム嬢
“ガーディー”: シバレル大氷河で回収した 『遺作』に記されていた物語についてお話ししましょう
“スバル”: クソっ! また無視された!
“スバル”: けど、これ以上ごねても意味なさそうだし、 話の内容も気になるから、俺は黙ってることにするよ
“フェネ”: スバル氏、賢明な判断です
“フェネ”: それでは、ガーディー氏、 皆様に『さかなかいウーオ』についてお話しください
ナレーター: それからガーディーは、シバレル大氷河で回収した 『禁書』のページに書かれていた
ナレーター: 『さかなかいウーオ』という物語について話し始めるのだった
ナレーター: 氷季には川が凍ってしまう極寒の村に住んでいたウーオ
ナレーター: 村人たちは長い氷季の食糧難に苦しんでいた
ナレーター: ウーオは安定的に魚を確保するため、池を作り魚の養殖を始めた
ナレーター: また、氷季の食糧難を解決するため、 養殖方法を工夫して魚たちのサイズアップを図る
ナレーター: ウーオのおかげで氷季の食糧難が緩和し、 始めは感謝する村人たち
ナレーター: だが、村人たちはさらなる魚の巨大化を望む
ナレーター: 村人たちの要望に応えようと試行錯誤を繰り返すウーオ
ナレーター: そこに怪しい魔術師が現れて、ウーオの願いを叶えてくれたのだが
ナレーター: 大きくなった魚たちは凶暴化していて、 村は大きな被害を受けてしまうのだった
“スバル”: ……えっと、その後、ウーオはどうなっちまったんだ?
“ガーディー”: 村に災いをもたらした元凶として、村から追放されてしまいます
“エミリア”: ひどい…… ウーオは村のみんなのために……
“レム”: 本当にそうです さらに大きな魚と 村人たちが欲張らなければ、そのようなことには……
“フェネ”: 人とは卑しき存在 その欲望は際限を知りません
“スバル”: 俺の故郷にも似たような寓話があるよ
“スバル”: 毎日金の卵を産んでくれるありがたい鳥がいたのに
“スバル”: 欲望にかられて腹を裂いてみたら、そこには金塊なんてなくて、 金の卵を産んでくれるありがたい鳥を失っちまう話だ
“フェネ”: それはまさに人の愚かさを如実に表した寓話ですね
“フェネ”: さらに言えば、己の欲望のために尊い鳥の命を奪ったその者に、 それに見合った罰が下ることをフェネは望みます
“スバル”: まさに『さかなかいウーオ』みたいにか?
“スバル”: 巨大化した魚たちの被害に遭った村人たちを、 同族ながら俺は、少し“ざまみろ”って思っちまったよ
“スバル”: 一見、魚を巨大化した魔術師は、悪者に思えるかもしれねぇけど、 実際はそうじゃねぇ気がする
“スバル”: 村を追放されたウーオの未来が
“スバル”: “あんな村から出られてよかった”って 思えるものだったことを願わせてもらう
“フェネ”: スバル氏……
“スバル”: ん? どうしたフェネ?
“フェネ”: いえ、なんでもありません ただ── いや、やはり……
“スバル”: いやいや、なんでもなくないよね! “ただ”なんだよ? 言いたいことがあるなら言ってくれ
“ガーディー”: 女性に発言を強要するのは、よくありませんな 言うか言わないかはフェネ嬢の判断に任せるべきです
“スバル”: けど、さすがに今のは気になるだろ 発言を強要したくはねぇけどさ
“スバル”: とはいうものの、お前がフェネを“女性”って言ったせいで、 気になる度合いがだいぶ薄らいじまったよ
“スバル”: フェネを女性って自然に言えちゃうお前の頭の中の方が、 今の俺には気になっちまってる
“ガーディー”: わたくしの頭を開いても、中には金塊など入っておりませんが?
“スバル”: そんなこと知ってるわ!
“スバル”: ってか、お前の考え方だったり、発想だったりが羨ましくて、 お前の頭の中に興味を持ったわけじゃねぇよ!
“スバル”: むしろ、怖いもの見たさっつーか、 “マジ大丈夫か?”って意味だからな!
“スバル”: お前の頭が産んでるのは、金の卵じゃなくて、 どす黒い卵だってこと、ちゃんと自覚してくれ!
“ガーディー”: 黒とは至極の色 最高の誉め言葉ですな
“スバル”: 褒めてなんかねぇ! そして、何を言っても、 お前には誉め言葉に聞こえちゃいそうだから、もういいよ!
“フェネ”: いえ、スバル氏、よくありません
“スバル”: ……え?
“フェネ”: フェネは紛れもなく女性 それをスバル氏は……!
“スバル”: いやいや、違うんだ、フェネ!?
“フェネ”: ──“違う”とは何が違うのです?
“スバル”: ごめん、フェネ! 配慮がない発言、すまなかった! とにかく話を戻させてくれ!
“スバル”: きっかけがあれば、お前が『禁書』のことを思い出すかもって件だ
“スバル”: 『さかなかいウーオ』の話を読んで、 お前は何か思い出さなかったのか?
“スバル”: ほんの些細なことでもいい 今後のページ集めのヒントになる何かをさ
“フェネ”: それについては、残念ながら……
“スバル”: そうか……
“スバル”: けど、クルシュさんの手紙には、 アナスタシアさんが何枚か手に入れてくれたってあったよな?
“レム”: はい、スバルくん 面会の際にお渡しいただけるということです
“スバル”: そいつを読めば、あるいは……?
“フェネ”: あくまで可能性の話ではありますが、 思い出すきっかけを掴めるかもしれません
“フェネ”: それにページは、一枚残らず『禁書』へと封じなければなりません
“フェネ”: フェネが記憶を取り戻す、戻さないに拘わらず、 アナスタシア女史には感謝する必要があります
“ガーディー”: ほうほう…… 何やら興味深いお話が聞こえてきましたな
“ガーディー”: 貴殿らが向かわれる先に、 エドガー殿の傑作、『遺作』の匂いがいたします
“ガーディー”: これはわたくしも、同行しないわけにはいきませんな
“スバル”: いやいや、こなくていいよ、マジで! ってか、お前はそろそろ帰ってくれ!
“フェネ”: ──スバル氏、少しいいですか?
“スバル”: おお、フェネ、入ってくれ
“フェネ”: 失礼します、スバル氏
“スバル”: どうしたフェネ? 修学旅行で男子部屋にくる女子のノリみたいな感じか?
“フェネ”: 申し訳ありませんが、フェネには理解不能な例えです
“スバル”: 修学旅行のときは、きっちり女子の部屋と男子の部屋が 分かれてるんだけど
“スバル”: 積極的な女子が先生の目を盗んできてくれたりするんだよ
“スバル”: んで、女子がきてくれた部屋の男たちは、 きてくれなかった部屋の男どもに優越感を抱けるんだ
“スバル”: まぁ、女子がきてくれるのは、 その部屋にイケてる男子がいるからで
“スバル”: ほとんどそいつのおかげではあるんだけどさ
“フェネ”: 長々と説明していただきましたが、 やはりスバル氏の話の意図が見えません
“スバル”: だから、俺たちも、男子部屋と女子部屋に分かれてるだろ? それで、そんな話をしたくなったんだよ
“スバル”: 自慢じゃねぇけど、意図や意味は特にねぇ パッと頭に閃いたことを言っただけだから、気にしないでくれ
“フェネ”: なるほど まるで意味不明でしたが、 そもそもまじめに受け合うだけ無駄でしたか
“フェネ”: 貴重な時間を無駄にしてしまいました それでは──
“スバル”: って、待て待て! お前、俺に話があるんじゃなかったのか?
“スバル”: 下らないことを口走ったのは悪かったけど、 このまま部屋を出たら、マジで時間を無駄にしただけになるぞ
“スバル”: 話があるならちゃんと聞くから、話してくれよ、フェネ
“フェネ”: 再び時間が無駄になる危険性をフェネは感じています
“スバル”: 大丈夫だ もうふざけたりしねぇからさ
“フェネ”: でしたら最初から……と言うだけスバル氏には無駄ですね
“フェネ”: わかりました フェネには一つ、スバル氏に質問があります
“フェネ”: 先程スバル氏は、ウーオ氏があのような村から出られて、よかった と思える未来がくることを願っている、と言っていましたが
“フェネ”: そのような未来がやってきたと思いますか?
“スバル”: なるほどね お前にはやっぱ、あの発言が気になってたんだな
“スバル”: ……とはいうものの、そんな未来がきたかどうかなんて、 俺にはさっぱりわからねぇよ
“スバル”: きてほしいとは思うけれど、世の中、そんなに甘くはねぇからさ
“スバル”: けど、俺の故郷に“ピンチは最大のチャンス”って言葉があるんだ
“スバル”: 村を追放されたことは、ウーオにとって、 すげぇピンチだったかもしれねぇけど
“スバル”: あんな連中がいる村を出られるっていう、 チャンスでもあったはずだ
“スバル”: 確かに人間の欲望は際限ないのかもしれねぇ でも、それは全員に当てはまることじゃないだろ?
“スバル”: エミリアたんみたいな純粋無垢な天使が、 現実に存在してるのが、その証拠だ
“スバル”: あの村にいたんじゃ、そういう人には、 出会えなかったかもしれねぇけど
“スバル”: 村を出たことで、ウーオにはそういうチャンスが生まれた それだけは確かだ
“フェネ”: ウーオ氏の明るい未来とは、 良い出会いがあるかどうかにかかっているのですね?
“スバル”: 当り前だろ ひとりぼっちじゃ、明るいも何もあったもんじゃねぇ
“スバル”: 明るい未来には、絶対にいい出会いが必要なんだよ
“スバル”: って、どうしてお前は、 あのときその質問を俺にできなかったんだ?
“スバル”: 別に憚(はばか)るような質問じゃねぇだろ
“フェネ”: フェネはお年頃故、皆様の前では聞くに聞けなかったのです
“スバル”: お年頃って、お前な……
“スバル”: かなり歳がいってるって知ってるから、 冗談にしても笑えねぇよ、それは!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_01

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■1話 タイトル:ガーディーの助手 更新日:2022/01/19

ナレーター: パトラッシュがクルシュからの手紙を持ち帰った翌日──
“スバル”: さてさて、今日でこの寒いアルビスともお別れだな
“フェネ”: 一刻も早く出発しましょう フェネにはこの寒さがとてもこたえます
“レム”: すでに準備は終わっていますので、 スバルくん、フェネさん、竜車に乗ってください
“レム”: エミリア様も、急ぎ竜車へ 外は冷えますから
“エミリア”: ありがとう、レム それじゃ──
“ガーディー”: お待ちください、エミリア嬢、レム嬢、それにフェネ嬢
“スバル”: げぇ! ガーディー!
“ガーディー”: おっと、スバル殿もいらしたのですな
“スバル”: いやいや、俺もいるに決まってるだろ! しかもここは、明らかにお前から見える位置だよね!
“スバル”: それに、エミリアたんがいるところに、 この俺、ナツキ・スバルありだ そこんとこ忘れないでくれ
“ガーディー”: スバル殿、今、何かおっしゃいましたか? どうも最近、物忘れが酷いようでして
“スバル”: 言ってる傍から忘れやがったよ、こいつ!
“スバル”: とにかく、俺はここにいるし、 エミリアたんに気軽に話しかけるのも禁止だ
“スバル”: エミリアたんに話があるときは、まずは俺に確認してくれ 丁重にお断りさせてもらうからさ
“ガーディー”: わかりました ……ということで、エミリア嬢──
“スバル”: おーい! まずは俺に確認してからって言ったよな?
“ガーディー”: はて?
“スバル”: はて?じゃねぇよ! 昨日は華麗なスルーだったけども、 今日は忘れっぽいキャラで通すつもりだな、お前
“スバル”: エミリアたんの魅力に首ったけになる気持ちは、 俺としてはわからなくねぇが
“スバル”: マジ、勝手にエミリアたんに話しかけるのは、 やめてくれねぇかな?
“スバル”: エミリアたんはとっても優しくていい子だから、 例えお前みたいな奴でも、無碍にはできねぇんだよ
“エミリア”: 当り前です ガーディーは『禁書』のページの場所を 教えてくれた恩人です
“エミリア”: スバルはもっとガーディーを大切にするべきだわ
“スバル”: だったら同じこと、 ガーディーの奴にも言ってほしいよ、エミリアたん
“スバル”: こいつ、俺のこと無視したり、 言ったことすぐに忘れたりしやがるんだよ
“スバル”: 明らかに俺は、ガーディーから雑な扱いを受けてるし、 そういうのって酷くない?
“エミリア”: ガーディーもスバルと仲良くしてあげて スバルは本当は頑張り屋さんでいい子なのよ
“レム”: はい、スバルくんはとても頑張り屋で、とてもいい子です
“ガーディー”: わかりました エミリア嬢やレム嬢がそう言うのであれば、 スバル殿の扱いを見直しましょう
“スバル”: ああ、そうしてくれ 俺もお前に対して寛大になれるよう、努めさせてもらうからさ
“スバル”: んで、今日はなんの用だ?
“スバル”: アナスタシアさんのところに一緒にいきたいってのは、 昨日却下した通りだ
“スバル”: いくらお前に対して寛大になったとはいえ、 そこは変わらねぇぜ
“ガーディー”: 残念ながら、わたくしは急用が入ってしまい、 貴殿らとご一緒できなくなってしまいました
“スバル”: マジで? だったらいいんだけど…… それじゃ、俺たちにどんな用があるんだよ?
“ガーディー”: わたくしは急用により同行できませんが、 助手のリドアでしたら貴殿らとご一緒することが可能です
“スバル”: え? 助手?
“ガーディー”: そうです わたくしの助手のリドアです ──リドア、ご挨拶を
“リドア”: はじめまして、リドアと申します リドとお呼びください
“リドア”: 師匠に代わり皆様のお供をさせていただきます

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_02

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■2話 タイトル:お試し期間 更新日:2022/01/19

“リドア”: ──はじめまして、リドアと申します リドとお呼びください
“リドア”: 師匠に代わり皆様のお供をさせていただきます
“スバル”: ええっと……
“リドア”: リドのことはリドとお呼びください、スバルさん
“スバル”: そんじゃ、リド 今、なんて言ったんだ?
“スバル”: 師匠に代わり、俺たちについてくるみたいなことを 言ってた気がするんだけど……それって気のせいだよな?
“リドア”: いえ、気のせいではありません リドは皆様に同行させていただきます
“リドア”: もちろん、お役に立ってみせます
“リドア”: 師匠からも、皆様のお役に立つよう、 きつく申し付かっておりますので
“ガーディー”: リドアがお役立ちすることは、わたくしが保証いたしましょう
“スバル”: いやいや、お前から保証されてもな……
“フェネ”: ガーディー氏 本当にガーディー氏が同行しなくてもよろしいのですか?
“ガーディー”: はい わたくしは同行いたしません
“ガーディー”: 外せない急用が入ったことは事実ですが、 スバル殿がわたくしの同行に反対であることは明らかです
“スバル”: いやいや、俺だけじゃねぇよ マジ、すげぇ危ない目に遭うかもしれねぇんだ
“スバル”: お前だって『変異体』に出くわして酷い目に遭ったろ? あんなことのオンパレードになる可能性が高い
“エミリア”: ホントにそう すごーく危険な目に遭うかもしれないわ だから私も、スバルの意見に賛成よ
“レム”: レムもスバルくんの意見に賛成です 敵は強く、安全は保証できません
“ガーディー”: その点、リドアでしたら心配に及びません
“ガーディー”: 彼女はとても強い エミリア嬢やレム嬢にも引けを取らないでしょう
“スバル”: けど……
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: なんだよ、フェネ? お前はリドの同行に賛成なのか?
“フェネ”: 結論から言えば、そうなります
“フェネ”: 以前も指摘したと記憶していますが
“フェネ”: 『禁書』について知っているガーディー氏との関係は 維持するべきです
“フェネ”: このまま別れてしまっては、いつまたお会いできるかわかりません
“フェネ”: しかも、ガーディー氏本人の同行ではなく、 今回の提案はリドア女史の同行です
“フェネ”: リドア女史が十分な戦力になるのであれば、 その提案にのっても良いとフェネは考えます
“スバル”: 十分な戦力、ね そんなこと、口ではなんとでも言えるだろうよ
“フェネ”: でしたら、お試しということで、 テンミツまでご一緒するというのはいかがでしょう?
“フェネ”: 無論、口ではなんとでも言えますが、 ガーディー氏の発言が虚偽である証拠もありません
“フェネ”: もしその旅の間に、リドア女史の有用性が認められなければ、 そこでお別れすればいいのではないでしょうか
“スバル”: なるほどね 確かにガーディーが同行するってのに比べたら、 リドの同行はハードルが低いな
“スバル”: ガーディーが大した戦力にならねぇことは、 すでにシバレル大氷河で証明されてるしよ
“スバル”: それに、あんな奴でも、ガーディーは歴とした『禁書』の関係者だ 関係を断ち切るのは得策じゃない
“スバル”: お試し期間…… まぁ、その辺が落としどころとしては妥当かもしれねぇ
“ガーディー”: いいですね、お試し期間
“ガーディー”: ご一緒させていただけさえすれば、 リドアの有用性は必ず貴殿らに伝わるはずです
“ガーディー”: できますね、リドア?
“リドア”: はい、師匠
“リドア”: 師匠がそう言うのであれば、 必ずや皆様にリドの有用性を示してみせます

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_03

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■3話 タイトル:リドアは常識人 更新日:2022/01/19

ナレーター: 新たにリドアを加えたスバル一行は
ナレーター: クルシュとの伝令係を務めるパトラッシュとともに、 カララギのテンミツへ向けて竜車を走らせていた
“スバル”: ところでリド お前は俺を “スバルさん”って呼んでたけど、間違いなく初対面だよな?
“リドア”: はい リドは皆様とお会いするのは初めてです
“リドア”: ですが、師匠から皆様のことはお聞きしています その際、皆様のお名前も覚えさせていただきました
“エミリア”: それじゃ、私の名前も知ってるのね?
“リドア”: はい エミリアさんです
“リドア”: そして、竜車を駆るあの方はレムさんです
“フェネ”: それでは、この可愛らしいフェネの名もご存じということですね?
“リドア”: はい
“スバル”: そんじゃ、一緒についてきてる あの地竜がなんて名前か知ってるか?
“スバル”: 超難問だ もし正解したら、スーパースバルくん人形をやろう
“リドア”: あちらの地竜の名はわかりますが、 その変な人形は別にほしくありません
“スバル”: うぐっ…… リドにほしくないって言われた…… ほしいって言われても逆に困ったけどさ!
“リドア”: …………
“フェネ”: スバル氏 正常な感覚をお持ちのリドア女史は、 スバル氏の無意味な発言に困惑されています
“フェネ”: 部下として恥ずかしいので、 まともな発言を行うよう心掛けてください
“スバル”: 発言が無意味で悪かったな! リドが困惑しないよう、善処させてもらうよ!
“スバル”: けど、リドはパトラッシュの名前まで、 覚えてくれてたんだな?
“リドア”: はい 師匠からは皆様に失礼がないよう申し付かっています ですので、皆様のお名前は覚えさせていただきました
“スバル”: なるほど、リドはちゃんとしてるんだな あのガーディーの助手とはとても思えねぇ
“フェネ”: ガーディー氏があのようなお方なので、 リドア女史がしっかりしたとも考えられます
“フェネ”: クソ上司のスバル氏と違い、 フェネがしっかりしているのと同様に
“スバル”: 確かにそうとも考えられるか
“スバル”: ガーディーの助手をしようと思ったら、 しっかりせざるを得ねぇもんな
“スバル”: って、俺はガーディーの同類かよ! さすがにもっとまともな人間のはずだ!
“エミリア”: ええっとね、スバル スバルはとっても変わってるわよ?
“スバル”: え、エミリアたん……
“スバル”: マジで俺は一度、 しっかりと自分の言動を見つめ直した方がよさそうだな
“スバル”: 『禁書』の件が始まって以来、 ぶっとんだ連中との出会いが多くて
“スバル”: 知らず知らずのうちに、 常識ってヤツを隅っこに追いやっちまってたよ
“フェネ”: テンミツまではまだまだ時間がかかります 自分を見つめ直すいい機会ではないですか?
“スバル”: ああ、そうだな ガーディーと同類なんてマジ勘弁だ
“スバル”: しっかりと自分を見つめ直して、 あいつの同類っていうカテゴリーからはずれてみせるぜ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_04

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■4話 タイトル:不穏な気配、そして 更新日:2022/01/19

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車は日夜走り続け、 国境を越えカララギ都市国家に入っていた
ナレーター: 目的地の第七都市テンミツには、 あと数時間で到着できる見込みだ──
“スバル”: …………
“リドア”: …………
“フェネ”: …………
“エミリア”: …………
“スバル”: 常識的な発言をせねばと心掛けたせいで、 明らかに口数が減っちまった
“スバル”: 楽しい旅のはずが、長く続く沈黙…… なんとか話題を見つけて盛り上げねぇとな
“フェネ”: スバル氏、それは余計な気遣いなのでは? 事実、エミリア女史はとても楽しそうです
“スバル”: ……え? エミリアたん、楽しんでるの?
“エミリア”: うん とっても楽しいわ
“エミリア”: これからいくテンミツってどんな町なのかしら? それを考えてるだけで、すごーく楽しいもの
“スバル”: E・M・T……
“エミリア”: スバル?
“スバル”: いやいや、やっぱエミリアたんは素敵だって、 改めて思わされてたとこだよ
“スバル”: 確かに、テンミツがどんな町かを想像するだけで、 楽しい気持ちになれそうだね
“スバル”: 久々に会うアナスタシアさんたちが元気かな?って、 想像するのもいいかもしれない
“エミリア”: うん アナスタシアさんたち、元気かしら? 久々に会えるの楽しみね、スバル
“スバル”: ああ、すげぇ楽しみだ リカードやミミたちも元気にやってたらいいな
“エミリア”: うん ホント、みんな元気だといいわね
“スバル”: “元気”といえば、お前の体調はどうなんだ、フェネ?
“スバル”: 極寒だったグステコとおさらばして、 だいぶ温暖な気候になったと思うんだけど
“フェネ”: フェネの体調はすでに回復しています ページの感知に支障はありません
“スバル”: そりゃ、よかったよ
“スバル”: アルビスで初日から体調を崩したときは、 ホントどうなるかと思ったぜ
“スバル”: あんな思いをしなくて済むのは、マジ朗報だな
“スバル”: とはいえ……?
“フェネ”: 残念ながら、現時点でページの反応はありません
“スバル”: やっぱそうか……
“スバル”: けど、それは差し迫った危険がないってことだし、 ある意味よかったのかもな
“スバル”: このまま何事もなくテンミツまでいけそうだしよ
“フェネ”: ですが、スバル氏 それではリドア女史の有用性を確認できません
“スバル”: おっと、確かにリドはお試し期間中だったな
“スバル”: かなり戦力になるって話だったけども、 その事実確認がまだ済んでねぇ
“スバル”: 一緒に旅して悪い奴じゃねぇってのはわかったけど、 問題は『異形』や『変異体』との戦いになったときだ
“スバル”: あいつらはどんどん凶暴になってるし、 多少強い程度じゃ、一緒に旅するのは無理だろうよ
“リドア”: ──っ! 不穏な気配を感じます
“スバル”: ……え?
“フェネ”: まさか、そのようなことは…… ページの気配をフェネは感知していません
盗賊1: へへへへ あの竜車、やっちまおうぜ
盗賊2: ああ なかなかいい竜車だ 金持ちが乗ってるに違いねえ
“レム”: ──スバルくん、エミリア様! 盗賊と思しき一団がこちらに向かってきます!
“スバル”: 盗賊……? だからフェネは……!
“スバル”: けど、盗賊なんて敵じゃないはず! みんな、竜車を出て戦闘の準備だ!
“リドア”: それは不要です リドのみで片付けて御覧に入れましょう
“レム”: ですが、リドアさん こちらに向かってくる盗賊は一人や二人ではありません
“レム”: ここは力を合わせて──
“スバル”: リドア、待て!
ナレーター: スバルの制止を無視して竜車を飛び降りたリドアは、 ひとり盗賊の一団へと向かっていく
ナレーター: そして──
“リドア”: はっ!
盗賊1: うげっ!
“リドア”: ふんっ!
盗賊1: うがっ!
“リドア”: せいっ!
盗賊1: うごっ!
ナレーター: リドアが放つ一撃により、 次々と盗賊たちは地面に崩れ落ちていくのだった……
盗賊: こ、降参だ! 許してくれ!
“リドア”: ……許す? なぜ、盗賊風情を許す必要があるのでしょう?
盗賊: た、頼む……! 俺には女房も子どももいるんだ!
“リドア”: リドの知ったことでは──
“スバル”: ストップだ、リド! もう十分だよ!
“スバル”: そいつらはすでに戦意を喪失してる! それ以上痛めつける必要はねぇよ!
“リドア”: スバルさんがそう言うのでしたら、リドはこの辺にしておきます
“レム”: す、すごい…… 短時間でこんなにたくさんの盗賊を……
“エミリア”: ホントにすごいわ でも、ちょっとやりすぎね
“エミリア”: レム、怪我してる人たちを早く 私は向こうで倒れてる人を手当するわね
“レム”: はい、エミリア様 レムはあちらの方を手当してきます
“リドア”: ……手当?
“スバル”: エミリアたんとレムは治癒魔法が使えるんだよ
“リドア”: ……襲ってきた盗賊をお許しになるということでしょうか?
“スバル”: 許すわけじゃねぇよ
“スバル”: その辺の木に縛り付けて、テンミツに着いたら 衛兵かなんかに捕らえに向かってもらうつもりだ
“スバル”: このまま見逃して、また悪さでもされたらかなわねぇしな
“スバル”: とはいえ、重傷者をこのまま放置はできねぇだろ? 捕らえられる前に、死んじまうかもしれねぇしさ
“リドア”: ……だから、治癒魔法を?
“スバル”: ああ、そうだ
“スバル”: それに、ウチのエミリアたんは、心優しいからな
“スバル”: 怪我して苦しんでる人を放っておけないんだよ たとえ盗賊だとしてもさ
“リドア”: …………
“フェネ”: ──リドア女史
“リドア”: ……なんでしょう?
“フェネ”: リドア女史の戦闘能力、しかと確認させていただきました
“フェネ”: ですが、独断専行の今回の行いは感心できません
“フェネ”: 我々が対峙するのは、盗賊など比較にならぬ強敵 一人の勝手な行動が命取りになります
“フェネ”: 今後、このような単独行動は慎むと約束していただかないと、 ご一緒することは難しいかと
“スバル”: フェネ、お前、ちょっと顔が怖いぜ?
“フェネ”: スバル氏、ここは茶化す場面ではありません
“フェネ”: 今後、このような行いを控えてもらうためにも、 ここは厳しく言っておく必要があります
“スバル”: ごめん、フェネ 確かにそうだな
“スバル”: ってことで、リド 今フェネが言ったこと、約束できるか?
“スバル”: お前が強いってことはわかった けど、今後俺たちと一緒に行動したいなら、それだけじゃダメだ
“リドア”: ……そちらが条件であるのなら、もちろんお約束します
“リドア”: リドは師匠の言いつけを守り、 皆様のお役に立たなければなりませんので

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_05

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■5話(中編) タイトル:リドアの手柄はエミリアの手柄 更新日:2022/01/19

ナレーター: カララギ都市国家 第七都市テンミツ──
“スバル”: おおー ここがテンミツか!
“スバル”: この前いったイバダって町もそうだったけど、 やっぱ和テイストの街並みなんだな
“スバル”: 日本人の俺には、胸に染みるいい景色だぜ
“スバル”: 途中で盗賊に襲われるっていうアクシデントはあったが、 遥々きた甲斐があったってもんだ
“パトラッシュ”: ──!
“スバル”: おお、パトラッシュ! お前もお疲れ様だったな!
“スバル”: って、お前の場合は、 クルシュさんのところに手紙を運ぶって役目があるから
“スバル”: この後にもう一走りが控えてるのか…… ちょっと申し訳ねぇな
“パトラッシュ”: ──!
“レム”: どうやら、“気にしなくていい” って言ってくれているみたいですね
“レム”: スバルくんのお役に立てることが、嬉しいのかもしれません
“スバル”: パトラッシュ、お前…… マジ、お前が一緒にきてくれて助かったよ!
“パトラッシュ”: ──っ!
“スバル”: ははは パトラッシュ! 痛い! 痛い! でも、気持ちいい!
“スバル”: んでもって、レムもありがとうな
“スバル”: アルビスからテンミツまでずっと御者台で大変だったと思うけど、 おかげで予定より一日早くテンミツに到着できたよ
“レム”: スバルくん……
“レム”: スバルくんにそんな風に言ってもらえたら、 疲れなんて吹っ飛んでしまいます
“レム”: もう一往復しろと言われても、 きっと今のレムなら耐えられると思います
“スバル”: 特に忘れ物もしてきてないし、アルビスに戻る必要はないかな!? フェネほどじゃないけど、俺も寒いのが得意な方じゃないしね!
“エミリア”: 私は大丈夫よ 寒いの平気だもの
“スバル”: あの寒さに愚痴一つ漏らさなかった、 エミリアたんはさすがだったけども
“スバル”: アナスタシアさんとの約束もあるし、 アルビスにもう一回みたいな話はこの辺にしとこう
“スバル”: もちろん、『禁書』のページがあるっていうなら、話は別だけどさ
“フェネ”: 恐らく、現時点で戻っても新たなページは発見できないでしょう 今はアナスタシア女史との面会を優先するべきかと
“スバル”: だよね! よかった!
“スバル”: さっき、“リドアの有用性を試す機会が……” なんて話をしてたら、盗賊に襲われたし
“スバル”: 変なフラグが立ってやしねぇか、ちょっと心配だったんだよ
“スバル”: けど、アルビスに戻る必要がなくて、マジよかったぜ
“リドア”: スバルさん、リドは竜車を降りてもいいのでしょうか?
“スバル”: もちろんだ、リド 竜車を降りて、宿探しを手伝ってくれ
“リドア”: わかりました スバルさんがそう言うのであれば、 リドは宿探しをお手伝いします
“スバル”: んで、エミリアたんとレムは、 交番……もとい、衛兵がいる詰め所にいってもらっていい?
“スバル”: さっきの盗賊たちのことを報告して、 回収してきてもらわないといけないしね
“スバル”: 『異形』や『変異体』を倒しても、俺たちの実績にはできねぇけど
“スバル”: あの盗賊退治は、しっかりアピールして、 エミリアたんの実績にしてもいいと思うんだよ
“スバル”: 王選で少しでも有利になるようにさ
“エミリア”: ええっと、スバル やっつけたのはリドアちゃんよ?
“スバル”: おっと、そうだった!?
“スバル”: でも、今回のケースは、エミリアたんの実績にしちゃって 問題ないんじゃねぇかな?
“スバル”: リドだってメンバーの一員なわけだし
“リドア”: めんばあ?というのはわかりませんが、 リドがしたことがお役に立つのであれば、ぜひご活用ください
“スバル”: リドもこう言ってくれてるし、 ぜひ活用させてもらおう
“スバル”: んで、マジ天使なエミリアたんだけだと、 アピール力が心配だから、レムも一緒にいってくれ
“スバル”: エミリアたんは “当り前のことをしただけです”みたいなこと言って
“スバル”: 全然実績にしねぇ可能性があるから、 そこんとこ、しっかりフォローを頼むな
“レム”: わかりました、スバルくん! しっかりスバルくんの活躍をお伝えしてきますね!
“スバル”: 俺のじゃなくて、エミリアたんのを頼むよ!
“スバル”: エミリアたんやレムは、治療面でまだ出番があったけど、 俺は、マジで見てただけだしね!
“リドア”: ──このような宿で本当に大丈夫でしょうか?
“スバル”: ああ、申し分ねぇ いい感じだぜ、リド
“フェネ”: はい 申し分ありません 適切な宿を見つけていただき、ありがとうございます
“スバル”: ってことで、宿は確保できたし、エミリアたんとレムに合流しよう
“スバル”: アナスタシアさんとは早めに会っておきたい 話さなきゃいけないことがたくさんあるしね
“フェネ”: スバル氏の気持ちはわかりますが、 アナスタシア女史にはアナスタシア女史の都合があります
“フェネ”: 必ずしもスバル氏の思惑通りにはならない可能性があるので、 その点留意をお願いします
“フェネ”: 同盟締結に際し、こちら側に利があることは明白ですが、 先方についてはその限りではありません
“フェネ”: 無理な交渉は現在の協力関係すら壊しかねないので、 アナスタシア女史との面会の際は細心の注意を払ってください
“スバル”: ……向こうに利がない? 『禁書』の件を解決しなくちゃ、王選が始まらねぇだろ
“フェネ”: それについては、エミリア女史も同じ立場です
“フェネ”: アナスタシア女史の協力如何に拘わらず、 我々は『禁書異変』を解決しなければなりません
“フェネ”: 以前アナスタシア女史からも、そのような指摘を受け、 スバル氏はぐうの音も出なかった記憶があります
“スバル”: 俺も思い出したよ
“スバル”: 王選が始まらなくて困るのはエミリアたんも一緒 しかも俺の落ち度でこんなことになっちまったわけだし
“スバル”: 確かにエミリアたんは、アナスタシアさんの動向に関係なく、 この件を解決しなくちゃならねぇよな
“スバル”: ホント、改めて自分のやらかしの重みを思い知らされたよ
“スバル”: 使用人の責任は、雇い主のロズワール、 ひいてはエミリアたんの責任になっちまう
“フェネ”: その心得があれば、アナスタシア女史にお会いしても、 大きな問題は起こさないでしょう
“フェネ”: 急ぎエミリア女史やレム女史と合流して、 アナスタシア女史の元へ向かいましょう
“フェネ”: 日が暮れてからでは、さすがに失礼になってしまいます
“リドア”: あの……スバルさん リドはどうすればよろしいでしょう?
“スバル”: そうだな…… 今は宿に待機ってのがよさそうだ
“スバル”: アナスタシアさんとは話すことがたくさんあるし、 リドの紹介は別の機会にしたい
“フェネ”: フェネも賛成です
“フェネ”: 現時点では、そもそもアナスタシア女史への紹介が 必要かについても判断が難しい状態です
“フェネ”: クルシュ女史への報告もまだですので
“スバル”: なんせ突然の同行だったからな クルシュさんへの報告も済んでねぇ
“スバル”: 何かあったらまずはクルシュさんに報告ってのが、 これまでの流れだし
“スバル”: 確かにリドの紹介はこのタイミングじゃねぇな
“スバル”: ってことで、リドは宿に待機ってことで頼む
“スバル”: 盗賊退治やなんだで疲れたと思うし、 いい機会だから、ゆっくり休んでくれ
“スバル”: 宿を見つけたのもリドだし、盗賊を退治したのもリドだ お前には、ゆっくり休む権利があると思うぜ
“リドア”: わかりました スバルさんがそう言うのであれば、 リドはゆっくり休ませていただきます
“スバル”: ちょくちょく出る“スバルさんがそう言うのであれば” 的な表現が気にならないわけじゃねぇが……
“スバル”: 今はアナスタシアさんのところへいくのが優先だな
“スバル”: ってことで、フェネ 急いでエミリアたんたちと合流しよう
“フェネ”: わかりました、スバル氏 ですが……
“スバル”: ん? どうした、フェネ?
“フェネ”: スバル氏は、最低限、失礼がない服装に着替えるべきかと
“スバル”: 確かにジャージ姿じゃアナスタシアさんに失礼か……
“スバル”: わかった、フェネ すぐ着替えてくるから、ちょっと待っててくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_06

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■6話 タイトル:込み入った話は明日 更新日:2022/01/19

ナレーター: ジャージから失礼のない服装に着替えたスバルは
ナレーター: 詰め所に盗賊の件を報告に向かったエミリアたちと合流し、 テンミツにあるホーシン商会の拠点を訪れるのだった
ナレーター: そして、アナスタシアとの再会を果たす
“アナスタシア”: ──ずいぶんとお早いお着きやったんやね
“スバル”: ああ、レムが頑張ってくれて、 それで予定よりも早く到着できたんだよ
“スバル”: アナスタシアさんとは色々話さなきゃいけないことがあるから、 少しでも早く会わなきゃって感じでさ
“アナスタシア”: へー そうなんやね
“アナスタシア”: せやけど、残念 今日は込み入った話はなしや
“スバル”: やっぱ、突然の訪問だったし、都合悪かったりした?
“アナスタシア”: せやね 色々話すのは明日の方が都合がええね
“アナスタシア”: ページは早めに渡した方が安心やから、 すぐに渡させてもらうんやけど
“アナスタシア”: お話については、明日にしてもらってええ?
“スバル”: わかったよ、アナスタシアさん 今日はページを受け取って、大人しく帰らせてもらう
“アナスタシア”: ふふふ ちょっと意外やね、ナツキくん
“スバル”: ……へ? 俺、なんか意外なこと言った?
“アナスタシア”: ナツキくんのことやから、 “大切な話なんだ”って食い下がると思ったんやけど?
“スバル”: いやいや、くる前にちょっと、釘を刺されたんだよ
“スバル”: アナスタシアさんにはアナスタシアさんの都合があるから、 無理強いはよくないってさ
“アナスタシア”: なるほど、そういうことやったんやね ……ちなみに、その釘を刺したのってフェネさん?
“フェネ”: 左様です アナスタシア女史に失礼がないよう、 フェネが釘を刺させていただきました
“スバル”: マジ助かったぜ、フェネ おかげで無理に食い下がって、雰囲気を壊さずに済んだ
“アナスタシア”: ホンマやね ウチも助かったわ
“アナスタシア”: すぐに話を聞かんかったことを ナツキくんに逆恨みでもされたらかなわんし
“スバル”: いるよな、そういう奴! 勝手に押しかけといて、断られたら逆恨みしやがるんだよ!
“スバル”: お前を中心に世界は回ってねぇってのに
“スバル”: なんて、俺が言うのもなんなんだけども
“アナスタシア”: ホンマ、ナツキくんは変わった子やね 自分で言ってるんやから世話ないわ
“エミリア”: うん スバルってホント変な子 余計なことを言わないと気が済まないのかしら?
“スバル”: うぐっ……
“スバル”: 思わず余計なことを口走っちゃうのは自覚してたけど、 エミリアたんにもしっかりバレてたのね
“フェネ”: “バレてる”も何も、口を開けば、 スバル氏は余計なことばかり言っている印象です
“レム”: たとえ余計なことでも、 スバルくんが話す内容は、レムにはとても興味深いです
“スバル”: レムのフォローには感謝したいけど、 俺が余計なことを言ってるって認識は変わらねぇってことか
“スバル”: んで、そのせいで今も、 アナスタシアさんの貴重な時間が無駄になっちまってる
“アナスタシア”: 正解や、ナツキくん 今日はこの辺にしといてもらえると助かるわ
“アナスタシア”: 明日はしっかり時間をとらせてもらうだけやなくて、 色々おもてなしもさせてもらうつもりやから
“アナスタシア”: ナツキくん、楽しみにしててな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_07

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■7話 タイトル:大金の使い道は? 更新日:2022/01/19

ナレーター: アナスタシアから受けとった何枚かのページを 『禁書』へと封じたスバルたちは
ナレーター: リドアが待つ宿へと戻ってくるのだった
“スバル”: ──ページを集めといてくれたのは、マジ助かったんだけど さすがアナスタシアさん、しっかり費用を請求されちまったな
“レム”: はい ロズワール様からお預かりした金額で 足りたからよかったですが
“レム”: 手持ちのお金はだいぶ心もとなくなってしまいました
“エミリア”: でも、元々はページを買うために アナスタシアさんが払ったお金だし
“エミリア”: ちゃんと返せてよかったと思うの
“エミリア”: アナスタシアさんが協力してくれてるだけでも、 すごーく嬉しいことでしょ?
“スバル”: うん、そうだね、エミリアたん それに、アナスタシアさん相手に、ケチったらダメな気がする
“スバル”: 必要以上に払う必要はねぇけど、 あの人、これまでのところ、俺たちからぼったりしてないしね
“フェネ”: スバル氏の顔には“タダより高いものはない”と書かれています
“スバル”: ああ、その通りだ 費用を請求された方が安心できる
“スバル”: アナスタシアさんの場合、 ホント、“タダより高いものはない”って結果になりそうだし
“スバル”: 費用を請求されなかったときの方が、 警戒した方がいい気がしてるよ
“スバル”: けど……思ったより、集まってたページは少なかったな もちろん、あれ以上あっても、費用の問題が起きちまってたけど
“レム”: 全部で三枚……確かに少ないですね
“エミリア”: 最近、買い取りの相談自体が少ないって、 アナスタシアさんは言ってたわ
“スバル”: ああ…… なんだか、嫌な予感がしてる感じだったね、アナスタシアさん
“レム”: はい……レムもそう感じました
“レム”: ホーシン商会への持ち込みが減った理由に、 アナスタシア様は心当たりがあるようでした
“レム”: そして、その理由は、あまり良いものではないような気がします
“フェネ”: そもそも一枚の単価がとても高くなっています そのことが影響しているとフェネは推測します
“スバル”: 単価が跳ね上がる原因といや…… 需要と供給のバランスが壊れてるってケースが大半だ
“スバル”: つまり、ガーディーみたいに、 いくら出してでもページを手に入れたいって奴らがいて
“スバル”: アナスタシアさんのところへの持ち込みが減ってるのも、 そいつらが原因だったりする感じか?
“スバル”: ページを拾った奴からしたら、 少しでも高く買ってくれる奴に売りたいもんな
“フェネ”: 偶然手に入れたもので大金を得ようなど笑止千万 実に愚かですね
“フェネ”: そのような者たちが『異形』や『変異体』にどうされようが、 自業自得としか言いようがありません
“スバル”: いやいや、そんな風に切り捨てるわけにもいかねぇだろ フェネが言うこともわからなくねぇけど
“エミリア”: たくさんお金をもらって、 困ってる人のために使いたいんじゃないかしら?
“スバル”: そういう人もいるかもしれないけど…… まぁ、そうじゃない場合の方が多そうだね
“スバル”: エミリアたんが言うように、大金を得るのは 誰かの幸せのためだったりしたら、ホントいいんだけどさ……
“フェネ”: スバル氏はどうなのです? ページの売却で得た大金をどのように使いますか?
“スバル”: うーん……きっと、ロズワールに渡すんじゃないかな
“スバル”: 幸い、お金の心配が俺にはない だから、ロズワールに渡しちまう気がするよ
“スバル”: あいつにはすげぇ借りがあるし、 まずはあいつへの借りをちゃんと返してぇしさ
“フェネ”: ……なるほど つまらない答えですね
“スバル”: つまらなくてごめんね!
“スバル”: 俺としても、恵まれない環境のせいで 夢を諦めざるを得ない子どもたちを支援して
“スバル”: その子たちの夢を叶えてやるとか言いてぇよ
“スバル”: 誰もが知るスーパースターの誕生が、 実は俺のおかげだったとかなれば鼻高々だしな
“スバル”: けど、まじめに考えたら、 ロズワールに渡してる自分の姿が想像できたんだ
“エミリア”: ……すうぱあすたあ?
“スバル”: ごめん、エミリアたん! そこ、気にしないで! 適当に言っただけだからさ!
“スバル”: とにかく、面白い回答だったら色々思い付くけど、 どれも現実味がねぇ
“スバル”: 大金が手に入ったらきっと、俺はロズワールに渡しちまうんだよ
“スバル”: つまらない答えで、マジ申し訳ねぇけど
“フェネ”: “つまらない答え”ではありますが、謝罪までは必要ありません
“フェネ”: 拾ったページを高値で売るような連中に比べ、 スバル氏がかなりマシだとわかりました
“フェネ”: そして恐らく、その言葉通りの行動をスバル氏はするでしょう──
“リドア”: お話中、すみません 皆様、よろしいでしょうか?
“エミリア”: リドアちゃん、入っていいわよ
“リドア”: 失礼いたします 宿の店主から言付けがあります
“リドア”: 夕食の準備ができたので、 皆様には食堂にお越しいただきたいとのことです
“スバル”: おお、メシか! 腹も減ったしありがてぇ!
“スバル”: 今日はあんま話せなかったから、明日アナスタシアさんに ページの集まりが悪かった件について確認しよう
“レム”: そうですね 推測で話すより、そうするのが一番です
“エミリア”: うん 私もそれがいいと思う
“フェネ”: フェネも同意します 本当のところはアナスタシア女史しかわかりません
“スバル”: ってことで、メシだ、メシ! 食堂に向かうとしよう!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_08

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■8話 タイトル:歩いた方が健康的 更新日:2022/01/19

ナレーター: 翌日──
“リカード”: よう、兄ちゃん! お嬢に言われて迎えにきたで!
“スバル”: おお、リカード! 久しぶりだな!
“ミミ”: ミミもきたよー!
“スバル”: ミミも会えて嬉しいぜ! 元気してたか?
“ミミ”: ミミはいつも元気! シンパイムヨー! おにーさんこそ、元気だったー?
“スバル”: ああ、俺も元気だったぜ んで、モフモフなミミに会えて、さらに元気になった感じだ
“ミミ”: ミミのモフモフでおにーさん元気! ミミ、いいことしたー! お嬢にぐしぐししてもらうー!
“スバル”: ──ってことで、みんなで仲良くアナスタシアさんのところへ 向かうことになったけども
“エミリア”: スバル、リドアちゃんを置いてきちゃったけど、 よかったのかしら?
“エミリア”: 昨日もリドアちゃん、ひとりでお留守番だったでしょ?
“レム”: 確かにそうですね 少し気の毒な気が……
“スバル”: それについては、胸が痛まないわけじゃねぇけど、 リドの紹介は日を改めよう
“スバル”: 昨日はほとんどアナスタシアさんと話せてねぇし、 これまでの報告やなんやで話すことが盛りだくさんだ
“フェネ”: 左様です リドア女史のご紹介は、 改めて行うのがよいとフェネも思います
“フェネ”: 今回アナスタシア女史にお会いする最大の目的は同盟の締結
“フェネ”: その交渉時間が削られるような要因は、 予め排除しておくべきだとフェネは考えます
“レム”: アナスタシア様との同盟……一筋縄ではいかないかもしれませんね
“スバル”: ああ 同盟締結のメリットが、 アナスタシアさん側にはあんまないもんな
“エミリア”: 私はアナスタシアさんと仲良くしたいんだけど、 アナスタシアさんは、そうじゃないかもしれないのね……
“スバル”: アナスタシアさんだってきっと、 エミリアたんと仲良くしたいって思ってるはずだよ
“スバル”: けど、気持ちだけじゃ決められないんだ 王様の座を競い合う相手であればなおさらね
“リカード”: 兄ちゃんら、もうちょい早く歩けんか? あんま待たせるとお嬢の機嫌が悪くなってまう
“ミミ”: 時間はチョー貴重! 無駄にするとお嬢怒るー!
“スバル”: だったら竜車とかで迎えにきてくれたらよかっただろ? 迎えにきたって言うから、俺はてっきりそうだと思ったぜ
“リカード”: 歩いた方が健康的やないか すぐそこまでなんやし
“ミミ”: そーそー! 歩いた方がケンコウテキ! それに、もうすぐ到着ー!
“スバル”: ……もうすぐ? ホーシン商会の拠点にはまだ距離があるだろ?
“リカード”: すまん、兄ちゃん 言うの忘れとったで 今日は会食や この近くの店でお嬢が待っとる
“スバル”: そういや、おもてなしするみたいなこと、 アナスタシアさんは言ってたよな
“スバル”: それがその会食ってことか?
“リカード”: その通りや、兄ちゃん ホンマうまい店やから、期待しててな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_09

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■9話 タイトル:アナスタシアのおもてなし 更新日:2022/01/19

“ヘータロー”: ──お久しぶりです、ナツキさん
“ティビー”: お久しぶりですです
“スバル”: おお、久しぶりだな!
“スバル”: ヘータローもティビーも会えて嬉しいよ これでモフモフ三姉弟が勢揃いだな!
“ミミ”: そーそー! モフモフ三姉弟勢揃いー!
“ヘータロー”: お姉ちゃん、お迎えお疲れ様
“ティビー”: ですが、少し到着が遅かったです 寄り道をしていた可能性が……
“ミミ”: ちがーう! ミミ、まっすぐいってまっすぐ帰ってきたー!
“ミミ”: 遅かったのは、おにーさんのせい! 着替えおそー 歩くのおそー
“スバル”: ごめんごめん、着替えやなんだで出るのに時間かかったし、 確かに歩くのも遅かったな
“リカード”: せやな ミミのせいやない
“リカード”: ワイらはホンマ、寄り道もせんで まっすぐ兄ちゃんらの宿に向かって、戻ってきただけや
“リカード”: ワイらのせいで遅くなりでもしたら、お嬢の雷が怖いし、 寄り道なんてするはずないわ
“アナスタシア”: ちょっとリカード それはどういう意味なん? 後で詳しく聞かせてもらってええ?
“リカード”: お、お嬢!? ち、違うんや! こ、これはやな……
“スバル”: 一言多かったな、リカード ご愁傷様とだけ言わせてくれ
“リカード”: くっ…… 兄ちゃんらが遅かったせいで、ワイは……
“アナスタシア”: 他人のせいにするのは感心できへんね
“リカード”: あちゃー、またやってもうた! ワイはこれ以上喋らん方がよさそうやな!
“スバル”: だな 喋れば喋るほどドツボにはまりそうだし、 お口にチャックは無難な選択だよ
“スバル”: とにかく、到着が遅れたのは、リカードやミミのせいじゃねぇ 遅れて悪かったよ、アナスタシアさん
“エミリア”: 私からも謝らせて アナスタシアさん、ごめんなさい
“レム”: アナスタシア様 せっかくの会食に遅れてしまい、申し訳ありませんでした
“フェネ”: アナスタシア女史 お待たせしてしまい申し訳ありません
“アナスタシア”: ええよ 急なお誘いやったし、これぐらいの遅れは許容範囲や
“アナスタシア”: さあ、さあ、エミリアさんたちも座って ここの料理はホンマ絶品やから、さっそく食事を始めるとしようや
ナレーター: スバルたちが席につくと、 テンミツの名物料理だというダイスキヤキが運ばれてくるのだった
“スバル”: こ、これはまさに懐かしのヤツじゃねぇか! う、うめぇー!
“エミリア”: ホント、おいしいわね
“レム”: はい とても興味深い料理です
“アナスタシア”: ふふふ 気に入ってくれたなら何よりや ご招待した甲斐があったわ
“スバル”: いやいや、マジ感謝だぜ、アナスタシアさん!
“スバル”: こっちこそ、わざわざテンミツまで 足を運んだ甲斐があったっつーか
“スバル”: ホント、感動すら覚えてるよ
“スバル”: “期待しててくれ”みたいなこと言ってたけど、 その期待を大きく越えてきた感じだ!
“アナスタシア”: それは大げさやろ、ナツキくん
“アナスタシア”: 足を運んだ甲斐があったかどうかは、 この後の話し合いの結果次第なんと違う?
“フェネ”: アナスタシア女史の言う通りです 現時点で我々は目的を果たしていません
“スバル”: おっと、確かに!
“スバル”: って、アナスタシアさん、色々存じてる感じだな 俺たちが話したいこと、想像ついてるとか?
“アナスタシア”: せやね クルシュさんから手紙を読んで、 ある程度察しはついてるつもりや
“アナスタシア”: せやから、ちゃんと時間を取ろうと思って、 昨日は込み入った話を遠慮させてもらった感じやね
“アナスタシア”: 忙しかったっていうのもあるんやけど、 話し合いにあたり、ウチも色々準備しておきたかったし
“スバル”: 色々準備、ね ただでさえ交渉上手なアナスタシアさんが、 色々準備万端かと思うと、ちょっと気後れするな
“アナスタシア”: 交渉事で一番大切なのは、話し合いの前の準備や ナツキくんこそ、色々と準備が整ってるんと違う?
“スバル”: こっちはさっぱりだよ 想定外のことが多くて、色々追いついてないのが正直なところだ
“アナスタシア”: ふーん 想定外なことが起きてるんやね?
“スバル”: ああ、まあ
“アナスタシア”: 盗賊を退治したっていうんも、その中の一つなんやろうか?
“スバル”: ……耳が早いな さすがアナスタシアさんだぜ
“スバル”: 確かにあれも想定外ではあったな
“スバル”: けど、想定外は襲ってきた盗賊たちも同じだったろうよ 見事に返り討ちに遭って、御用になっちまったんだから
“アナスタシア”: なんや面白い子と、ナツキくんらはいるみたいやね
“スバル”: ──! そ、そこまで知ってるのか……?
“アナスタシア”: その子が盗賊の一味を一網打尽にしたって話やない
“スバル”: その情報はどこから? 表向きは、 エミリアたんやレムが大活躍したって話になってるはずなんだけど
“エミリア”: ごめんなさい、スバル 私、やっぱり嘘はよくないと思うの
“レム”: すみません、スバルくん
“レム”: レムがついておきながら、 正直にお話しすることになってしまいました……
“スバル”: なるほど エミリアたんたちが正直に話したんなら、 リドの件をアナスタシアさんが知っててもおかしくねぇか
“スバル”: けど、やっぱマジ天使なエミリアたんには、 他人の成果を横取りするのは無理だったか……
“スバル”: 俺が報告にいくべきだったって反省してるよ
“フェネ”: 恐らく、スバル氏がいっても信じてもらえなかったでしょう その目つき、詰め所に入ると同時に捕まっても文句は言えないかと
“スバル”: いやいや、文句ぐらいは言わせてくれ! それに、目つきが悪いから逮捕って、そんなの横暴すぎだ!
“スバル”: カララギには、目つきが悪いのは犯罪だって法律でもあんのか?
“アナスタシア”: ふふふ ホンマ、ナツキくんは面白いんやから そんな決まり事はないから、安心して大丈夫やよ
“スバル”: だよね! よかった!
“アナスタシア”: にしても、これは楽しめそうやね…… ナツキくんはナツキくんで、ウチの期待を裏切りそうにないわ
“スバル”: ……え? 俺がアナスタシアさんの期待を?
“アナスタシア”: まあ、そうやね そろそろ着く頃やと思うし、ちょっと楽しみやわ
“スバル”: えっと……“そろそろ着く”って、まだ誰かくるのか?
“アナスタシア”: せや 話し合いを今日にしてもらったんも、 そのことも関係してるんよ
“アナスタシア”: どうせやったら、同席してもらった方がええしな
“スバル”: この場に同席した方がいい人物、か…… ぱっとは思いつかねぇけど
“スバル”: アナスタシアさんは、あえて名前を伏せてる感じがするし、 かなりの大物が現れる感じだな
“アナスタシア”: もちろんや 間違いなく大物やね

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_10

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■10話(中編) タイトル:素直になれない相手 更新日:2022/01/19

“アナスタシア”: ──もちろんや 間違いなく大物やね
“スバル”: 間違いなく大物……? それは否応なしに期待が高まっちまうよ!
“スバル”: そんな大物を俺たちに紹介してくれちゃうんだな?
???: ──失礼します、アナスタシア様 お待たせしてしまい申し訳ありませんでした
“スバル”: って、もしかしてその大物って……?
“ユリウス”: エミリア様もお待たせしてしまい申し訳ありません
“エミリア”: ううん、全然待ってないわ きてくれてありがとう、ユリウス
“スバル”: やいやい、アナスタシアさんへの謝罪の前に、 まずはゲストであるエミリアたんへの謝罪だろうが
“スバル”: ユリウス、お前のそういうとこに、俺はすげぇ不満を感じてるぜ
“ユリウス”: 以前も言ったと思うが、私はアナスタシア様の騎士 アナスタシア様を第一に扱うのは当然ではないか?
“アナスタシア”: ええよ、ユリウス ナツキくんがおる席では、 エミリアさん優先で構わんわ
“アナスタシア”: ナツキくん、えらい不満みたいやし、 ナツキくんの気が済むようにしたって
“スバル”: それだと、なんだか俺が拗らせてるみたいじゃん!
“スバル”: “あいつめんどくさいから、とりあえず言われた通りにしとこう” みたいな感じになっちゃってるよ!
“フェネ”: 事実その通りです、スバル氏 今のスバル氏はとても面倒な存在です
“エミリア”: ユリウス、気にしないで スバルはユリウスの前だとちょっと変なの
“エミリア”: あっ、でも……そういえば、スバルはいっつも変だったわ
“フェネ”: 左様です スバル氏が変なのはユリウス氏の前に限ったことではありません
“レム”: 突拍子もないスバルくんの言動に、 レムはいつもドキドキさせられています
“リカード”: なんや、総合すると、 兄ちゃんはいっつも変わってるってことみたいやな
“ミミ”: そーそー! おにーさん、チョー変! きゃはは!
“フェネ”: そういえば、フェネにも訂正がありました
“フェネ”: フェネは、“今のスバル氏はとても面倒な存在”と 皆様にお伝えしましたが
“フェネ”: スバル氏が面倒なのは今に限ったことではありません スバル氏は常に面倒な存在です
“スバル”: 誰が年中無休で迷惑な存在だって? 俺だって聞き分けいいときぐらいあるわ!
“スバル”: とにかく、お前の登場で、 すげぇアウェイ感を味わわせられちまってる
“スバル”: マジ、どうしてくれるんだよ、ユリウス?
“ユリウス”: な、なぜ私に……? あうぇい感?というのもよくわからないのだが……
“スバル”: アウェイ感ってのは、 今の俺みたいに周囲がみんな敵みたいな状態のことだよ
“スバル”: フェネはいつものことだけど、 エミリアたんからも“変だ”って言われてるんだぞ?
“ユリウス”: それは自業自得なのでは?
“ユリウス”: 日頃の行いを改め、エミリア様からの印象を 変えるよう努めればいいだけではないか
“スバル”: 何が“だけではないか”だよ! それができねぇから、困ってるんだろ!
“スバル”: 日頃の行いを改めよう、改めようと思いながらも、 結局改められずに今日にいたってる感じだ
“スバル”: そして、明日も明後日も、きっとこんな感じなんだよ、俺は!
“ユリウス”: そのようなことを声高に宣言されても、 私としては、強い意志でその流れを断ち切れとしか言いようがない
“スバル”: お前という奴は、 まったく俺のことがわかってねぇな、ユリウス
“スバル”: そう言われたところで、堂々巡りになるだけだろ そういう精神論じゃ、どうにもならねぇんだからさ
“スバル”: だいたいお前は──
“アナスタシア”: ふふふ その辺にしたってや、ナツキくん
“アナスタシア”: それに、ナツキくんが言うことも一理あるで、ユリウス
“アナスタシア”: みんながみんなユリウスみたいに強い意志を持ってるわけやない
“アナスタシア”: “強い意志で流れを断ち切る”みたいなことは、 あんまりええ助言とは言えんかなぁ
“アナスタシア”: それができへん人の方が大半なんやし
“アナスタシア”: そういう人らは、今みたいなことを言われても、 追い込まれるだけなんと違う?
“スバル”: そうだそうだ! アナスタシアさんの言う通りだ!
“スバル”: お前みたいな超人基準で語られても、 俺みたいな一般人には響かねぇんだよ
“ユリウス”: それはすまなかった
“ユリウス”: 君はもっと高い意識を持った人間だと思っていたが、 どうやらそれは私の買い被りだったようだ
“ユリウス”: これからはそのつもりで接しさせてもらおう
“スバル”: うぐっ…… なんだか強烈なカウンターをもらった気分……
“アナスタシア”: ふふふ 言うやない、ユリウス これはユリウスの勝ちやね
“リカード”: それだけ、 ユリウスは兄ちゃんのことを評価してたってことやな
“リカード”: まあ、“さっきまでは”っちゅう注釈が付いてまうけど
“フェネ”: 自業自得です それに、クソ上司のスバル氏には、 ユリウス氏からの高い評価はもったいありません
“スバル”: クソっ! マジ、何やってんだ、俺!
“スバル”: すまない、ユリウス
“スバル”: 強くて、かっこよくて、人気者のお前の前だと、 なんだか素直になれねぇんだよ
“スバル”: お前から何を言われても嫌味に聞こえちまうっつーか 劣等感からくる僻みだってのはわかってるんだけど……
“ユリウス”: こちらこそ、すまない、スバル殿…… いや、“スバル”と呼んで構わないか?
“スバル”: ああ、俺も“ユリウス”って呼び捨てだし、 お前も俺のことは“スバル”って呼んでくれ
“スバル”: お前から“殿”を付けられるとなんだかむずがゆいしさ
“ユリウス”: では、スバル 私としては君に嫌味を言っているつもりはないんだ それだけはわかってほしい
“スバル”: ああ、お前に悪意がないことぐらい、俺にだってわかってるさ
“フェネ”: だったら始めから言い掛かりをつけなくてもよかったのでは?
“スバル”: うぐっ…… 痛い指摘を……
“スバル”: とにかくアナスタシアさん、ユリウスが加わって、 参加者は全員揃った感じで大丈夫か?
“アナスタシア”: せやね これで全員揃った感じや
“スバル”: ってことは、 昨日できなかった込み入った話を始めてもいいんだよな?
“アナスタシア”: まあ、そうなるやろうね ウチが首を縦に振るかは別問題やけど
“スバル”: 俺としては、 アナスタシアさんが首を縦に振ってくれることを期待しつつ……
“スバル”: 手始めにアナスタシアさんたちがどこまで把握してるか、 ここで確認させてもらいたい
“スバル”: 俺たちはフェルトが正式に王選に参加するって決まったって クルシュさんから教えてもらったんだけど
“スバル”: アナスタシアさんたちもそのことを知ってるんだよね?
“アナスタシア”: まあ、だいたいのとこは知っとったかな
“アナスタシア”: 詳しいことはナツキくんらとの会食の後に、 ユリウスから報告を受けるつもりやけど
“スバル”: なるほど…… それもあってユリウスはアナスタシアさんに会いにきたわけだ
“スバル”: けど、どうして俺たちとの会食の後?
“スバル”: 俺らだってアルビスにいったりしてて、 詳しいことまでは知らされてねぇんだ
“スバル”: できれば一緒に聞きたいってのが本音だぜ
“アナスタシア”: それについては、話し合いの結果次第なんと違う?
“アナスタシア”: ウチとエミリアさんは玉座を競い合う間柄なんやし、 おいそれと王選に関する情報を提供するわけにはいかんかな
“スバル”: 確かにな…… けど、そうやって予防線を張られるとちょっと話しづらい気が
“スバル”: そもそもアナスタシアさんには、 首を縦に振るつもりがないように思えちまう
“アナスタシア”: もちろんええ話やったら首は縦に振るつもりやよ ええ話やったらね
“スバル”: 出た予防線!?
“エミリア”: スバル、大丈夫?
“レム”: 確かに心配です…… アナスタシア様はあまり乗り気ではない可能性が……
“アナスタシア”: なんやの、エミリアさんたちまで ウチにはあまり利がない話なんやろうか?
“スバル”: こればっかは、話してみねぇとわからねぇけど
“スバル”: アナスタシアさんのメリットについては 準備不足だったかもしれねぇ
“フェネ”: 今さらそのようなことを言っても仕方ありません まずはご相談をしてみましょう
“スバル”: ああ、そうだな
“スバル”: とにかく、続いて情報の共有をさせてくれ
“スバル”: 一応、回収した『禁書』のページは これまでのところ順調に増えてる
“スバル”: ここにくる前に寄ったグステコのアルビスでも、 無事にページを回収することに成功した
“スバル”: ただ……
ナレーター: それからスバルは、“こわいまもの”を宿してると思しき ノボンのお話の後編についてや
ナレーター: シバレル大氷河でガーディーを襲ったという、 仮面の怪しい男についてアナスタシアに話して聞かせるのだった
“アナスタシア”: “こわいまもの”…… それは確かに気になる存在やね……
“アナスタシア”: それにページを集めてると思しき、仮面の怪しい男も不気味やわ
“アナスタシア”: それにしても“仮面”やなんて……偶然だとしたらできすぎやわ
“スバル”: ん? どういうことだ、アナスタシアさん?
“アナスタシア”: それについては後ほどや
“アナスタシア”: まずはナツキくんらの本題を済ませるとしようやない

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_11

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■11話 タイトル:交渉難航 更新日:2022/01/19

“スバル”: うーん……
“エミリア”: ……
“レム”: ……
“フェネ”: ……
ナレーター: アナスタシア陣営とエミリア陣営の会食は、 話が両陣営の同盟へと及ぶと重苦しい空気に包まれてしまった
“アナスタシア”: 同盟を締結したいっていうんはわかったんやけど、 そのことでどんな利がウチにはあるんやろうか?
“アナスタシア”: そのことをはっきりしてもらわんと、 ウチとしては首を縦に振るわけにはいかんね
“アナスタシア”: 『禁書』の件で、 ウチらは可能な範囲で協力はさせてもらってるやろ?
“アナスタシア”: それじゃあかんの?
“スバル”: 確かに協力してもらってるし、 ページを集めてくれてるのもすげぇ助かってる
“スバル”: けど、俺らとしては、 もっとアナスタシアさんとことの関係を強固なものにしたいんだ
“アナスタシア”: ウチとしては“可能な範囲で”ってところが重要やね
“アナスタシア”: 確かにナツキくんはウチらとの関係を強固なものに、 したいかもしれへんけど
“アナスタシア”: それだと、ウチらは責任ある立場になってまう 利もないのに責任だけ増えるのはごめんやわ
“アナスタシア”: それに、この話、元を正せばクルシュさんが出したんと違う?
“スバル”: そ、それは……
“アナスタシア”: なんや、図星やの?
“エミリア”: 確かにクルシュさんが言い出したことよ
“エミリア”: でも、アナスタシアさんと仲良くしたいっていう 私の気持ちは本物なの
“アナスタシア”: それやったら、 ウチかてエミリアさんと仲良くしたいって思っとるよ
“アナスタシア”: エミリアさんは裏切ったりせんやろうし
“レム”: でしたら、アナスタシア様、是非エミリア様と──
“アナスタシア”: ううん、それとこれとは話は別やね
“アナスタシア”: エミリアさんは正式な同盟を結ばんでも、 ウチらのことを裏切ったりできないんやない?
“リカード”: 確かに嬢ちゃんは、今の関係のままでも裏切ったりせんやろうな
“アナスタシア”: せやけど、同盟を結んでしまったら、 ウチらもそうせなあかんわけや
“スバル”: え!? アナスタシアさんは裏切る気満々ってこと?
“アナスタシア”: ウチの目的はルグニカの王様になることや
“アナスタシア”: そのためにエミリアさんを切り捨てないといけなくなれば、 そうすることもあるやろうね
“アナスタシア”: クルシュさんがウチとの同盟を勧めたのは、 そういったことも考慮してのことやと思う
“アナスタシア”: ウチとしては、これまでの関係が一番都合いい形やったのに、 ホンマ、余計な提案をしてくれたって思うわ
“スバル”: そんな話聞かされちまったら、 なおさらアナスタシアさんとは正式な同盟を結びたいぜ
“スバル”: 俺の頭だったらいくらでも下げる なんとか前向きに検討してくれねぇかな?
“アナスタシア”: 頭を下げられてもなんの得にもならんわ
“アナスタシア”: ウチは今のように適度に協力して、 適度に仲良くする関係でええと思っとる
“アナスタシア”: 色々ナツキくんらの話を聞かせてもらったけど、 その気持ちに変わりはないわ
“スバル”: ま、待ってくれ、アナスタシアさん!
“スバル”: 確かに今は俺たちの関係は良好だし
“スバル”: エミリアたんは正式な同盟なんて関係なく、 アナスタシアさんを裏切ったりしないと思う
“スバル”: けど、そんなエミリアたんが馬鹿を見るのはなんか違う気がする
“スバル”: 俺の故郷には“正直者が馬鹿を見る”って言葉があって
“スバル”: 誠実に生きていくべきだってことは子どもでも知ってるんだけど
“スバル”: 不誠実な人間が得することを ある意味容認しちまってるところがある
“スバル”: でも、俺はそういうのは違うって感じるんだよ エミリアたんみたいな人こそ、本当は得するべきなんだ
“ユリウス”: スバル、君は誤解をしている
“ユリウス”: アナスタシア様は口ではああおっしゃっているが、 エミリア様の誠実さに付け入ろうとしているわけではない
“ユリウス”: 私は断片的な事情しか知らないが
“ユリウス”: 今回の場合、明らかにそちら側の準備不足 そのことを指摘したまでだ
“アナスタシア”: ユリウス、わざわざそんなこと言わんでもええよ
“ユリウス”: 出過ぎた真似をして申し訳ありません
“ユリウス”: ですが、アナスタシア様の真意が伝わっていないようでしたので、 思わず口を挟んでしまいました
“スバル”: 俺らの準備不足……
“フェネ”: フェネはそれをとても感じていました 事実スバル氏には──
“スバル”: ああ、色々警告してくれてたよな
“スバル”: おかげで身だしなみとか話すタイミングとかは、 色々気を遣ったんだけど
“スバル”: やっぱり肝心のメリットの中身の方がなきゃダメだったか……
“アナスタシア”: ウチは何も今までの関係を反故にしようって言ってるわけやない
“アナスタシア”: よりウチに重い責任を求めるんやったら、 相応な見返りが必要やって言ってるだけなんやよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_12

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■12話 タイトル:闇オークション 更新日:2022/01/19

ナレーター: アナスタシアへ正式な同盟締結を申し出たスバルたちだったが、 準備不足もあって正式な同盟締結とは至らないのだった
“スバル”: ──アナスタシアさんへのメリット…… うーん……
“エミリア”: アナスタシアさんは何をしてあげたら喜ぶのかしら……?
“レム”: アナスタシア様は地位も財力もおありです とても難しい問題ですね……
“アナスタシア”: その話は今日はしまいにして、ウチから一つええ?
“スバル”: そういや、後回しにしてた話があったな
“アナスタシア”: そうや さっき後回しにした話についてや
“アナスタシア”: 実は、ナツキくんらに手伝ってもらいたいことがあるんよ
“スバル”: ……俺たちに手伝ってほしいこと?
“アナスタシア”: そうやね ナツキくんらにも関係あることやし、 ぜひとも手伝ってもらわな
“スバル”: 俺たちにも関係あるって……もしかして?
“アナスタシア”: そうや 『禁書』のページに関係したことや
“アナスタシア”: 実は、最近ページの集まりが悪いんよ そのこととも関係してるとウチは睨んどる
“スバル”: 確かにページの集まりが悪い感じだったな それについては、俺たちも確認しようと思ってたんだ
“スバル”: やっぱり、集まったページが少なかったのには、 理由があったんだな?
“アナスタシア”: そういうことやね
“アナスタシア”: 最近はページを拾ってもホーシン商会には持ち込まんと 裏で取引されてしまうみたいなんよ
“アナスタシア”: 仮にホーシン商会に持ち込まれても、 高値でしか買い取りに応じてくれない始末や
“スバル”: ああ あまりの高額に、俺らも驚いてたところだよ
“スバル”: アナスタシアさんがぼったりするわけねぇし、 やっぱ高額で買い取る必要があったんだな……
“スバル”: んで、その裏取引ってのは?
“アナスタシア”: 競売や もちろん非合法のな
“スバル”: 非合法な競売……つまり闇オークションか?
“アナスタシア”: やみおーくしょん……? なんやの、それ
“スバル”: 俺の故郷の言葉で、盗品だったり表立って取引できないものを扱う 非合法な競売のことだよ
“リカード”: それやったらお嬢が言った通りやないか わざわざ言い直す必要はないやろ
“スバル”: ごめんごめん、俺にとっては “闇オークション”って呼び方の方がしっくりくるんだよ
“スバル”: それで、ページが闇オークションにかけられてるってのは、 本当なのか、アナスタシアさん?
“アナスタシア”: それを確かめたい感じやね もちろん、ナツキくんは協力してくれるんよね?
“スバル”: ああ、もちろんだ ページは全部『禁書』に封じねぇと
“フェネ”: 左様です どのようなページも野放しにはできません すべて『禁書』に封じる必要があります
“フェネ”: むしろフェネたちは、 アナスタシア女史にご協力いただく立場かと
“エミリア”: うん、ホントにそう
“エミリア”: アナスタシアさん、教えてくれてありがとう 後は私たちに任せてくれて大丈夫よ
“アナスタシア”: ウチとしても、非合法な競売を野放しにはできないんよ
“アナスタシア”: そんなもんがまかり通ったら、 まっとうな商売ができんようになるわ
“スバル”: つまり……アナスタシアさんは、 その闇オークションを潰したいってわけか?
“アナスタシア”: まあ、そうなるかな
“アナスタシア”: もちろん、 『鉄の牙』を使って潰すこともできるかもしれんのやけど
“アナスタシア”: 誰がどう関わってるかわからんし、 ホーシン商会は表立って動かん方がいいかなって思ったんや
“スバル”: つまり、ホーシン商会の 大口の顧客なんかが参加してるかもしれねぇし
“スバル”: 闇オークションを潰すにも、裏方に徹したいってわけだ?
“アナスタシア”: ウチの取引先や大口のお客さんに、まさかはないとは思うんやけど 念には念を入れとかんとね
“スバル”: それで、俺たちの出番ってわけか……
“アナスタシア”: なんやのナツキくん えらく冴えてるやない
“スバル”: やめてくれ 盛大な準備不足をかましてる時点で、 冴えてるもなにもねぇよ
“スバル”: それで、その闇オークションはどこで開かれるんだ?
“スバル”: 色々考慮すると、 ここテンミツって可能性が高い気がしてるんだが?
“アナスタシア”: ご名答や やっぱり冴えてるよ、ナツキくんは
“アナスタシア”: 場所を転々としてながらの開催なんやけど、 次の開催はテンミツなんよ
“スバル”: 実は、アナスタシアさんに会う場所が、 テンミツに決まった時点でちょっと違和感があったんだよ
“スバル”: よく解釈すれば、グステコのアルビスからカララギに入る 俺たちに配慮してって思えるけど
“スバル”: アナスタシアさんって、 そういう気の遣い方をする人だったっけ?ってさ
“スバル”: あと、テンミツに入る直前で盗賊に襲われた件も、 これで腑に落ちたぜ
“スバル”: あいつら、闇オークション目当てで テンミツに金持ちが集まることを知ってたんだな
“スバル”: あの盗賊連中は、闇オークションを主催している連中とグルで
“スバル”: 不用心な金持ちは、オークションに参加する前に 身包みを剥がれちまうってわけだ
“レム”: ──! さすがスバルくんです あの盗賊がまさか…… レムは感服しました
“アナスタシア”: レムさん、ホンマやね ウチもナツキくんに感服や
“スバル”: レムはいつものことだけど、 アナスタシアさんまでどうしたんだ……?
“フェネ”: スバル氏は自覚がないかもしれませんが
“フェネ”: フェネたちを襲った盗賊と 闇オークションの首謀者を紐づけたのは、スバル氏が初めてです
“フェネ”: そして恐らく、スバル氏の読み通りかと
“リカード”: 盗賊連中まで手懐けてるとは、ホンマ許せんわ
“ユリウス”: ああ どうやら手加減の必要はなさそうだ
“アナスタシア”: リカード、ユリウス、ちょっと待ってな
“アナスタシア”: まずは調査や 潰すのはその後 根っこから引っこ抜かな意味ないやろ?
“スバル”: 確かに下っ端だけ捕らえても、 トカゲのしっぽ切りみたいになっちまう
“スバル”: まずは組織の全容を把握しないといけねぇな
“スバル”: それで、そのオークションに参加するには、どうしたらいいんだ?
“アナスタシア”: 開催日前日に招待状が届くことになってるんよ
“アナスタシア”: もちろん偽名でやけど、手筈は整えてあるから、 ウチの元にも届くはずや
“アナスタシア”: そんでな、素性を隠すために、 参加者は全員仮面をつけることになってるんや
“スバル”: あ! だから仮面の怪しい男に、 アナスタシアさんは反応してたんだな?
“アナスタシア”: そういうことやね
“スバル”: 仮面着用を義務付けられた闇オークションに、 怪しい仮面の男……
“スバル”: 確かに偶然にしてはできすぎだな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_13

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■13話 タイトル:利点がないにも拘わらず 更新日:2022/01/19

“アナスタシア”: ──ほな、ナツキくんらは、 例の競売組織の壊滅に協力してくれるってことでええ?
“スバル”: ああ、もちろんだ──
“フェネ”: 待ってください、スバル氏
“スバル”: ど、どうした、フェネ? なんか、顔が怖いぞ?
“フェネ”: フェネたちの目的はあくまで『禁書』のページの回収 そういった闇の組織の壊滅とは別にあります
“エミリア”: でも……悪い人たちみたいだし、 アナスタシアさんからもお願いされているわ
“エミリア”: ちゃんと協力してあげないと
“フェネ”: ですが、そのことでページ回収に支障をきたしてしまっては、 本末転倒です
“アナスタシア”: なんやの フェネさんは反対なん?
“フェネ”: もちろん、フェネとしても、 アナスタシア女史のお役には立ちたいとは思います
“フェネ”: ですが、ページの回収に支障をきたす恐れがあるのであれば、 おいそれと首を縦には振れません
“フェネ”: その非合法な競売に参加し、 ページを落札してしまうのが一番早い解決策です
“フェネ”: 幸い、ロズワール氏には財力があり、 ページを競り落とすことは可能でしょう
“フェネ”: その組織の壊滅については、 ページを回収した後にじっくり吟味するべきかと
“レム”: フェネさんが言うことも一理ありますね
“レム”: レムたちの目的はあくまでページの回収です
“レム”: 下手なことをして、競売に出品されたページを 回収できない事態にでもなったら目も当てられません
“スバル”: 確かにな…… けど、フェネ、お前は最初乗り気だったじゃねぇかよ
“フェネ”: アナスタシア女史が組織の壊滅まで考えているとは、 思いませんでした
“フェネ”: その組織が盗賊どもを自由に動かせることも考慮すると、 かなり大規模な組織と推測できます
“フェネ”: そのような組織とやり合うことが、 ページ回収にいい影響を与えるとは思えません
“フェネ”: それどころか……
“スバル”: ページの回収がおじゃんになる可能性を秘めてるってわけか
“スバル”: 幸い、その闇オークションには潜入できそうだし、 しれっと競り落としちまうのが、安全策ではあるな
“スバル”: 俺たちとしては、ページが回収できればいいんだからさ
“エミリア”: ううん、それじゃダメよ 悪い人はちゃんとこらしめないと
“スバル”: こらしめるってきょうび聞かねぇな……
“スバル”: って話は置いといて、 エミリアたんが聞いちゃうと、やっぱそうなっちゃうよね
“スバル”: でも、それでページが回収できなくなるのは、やっぱ違う気がする
“スバル”: ってことで、ちょっと話を整理させてくれ
“スバル”: 俺たちの目的はページの回収だ
“フェネ”: 左様です それが最重要事項です
“スバル”: んで、アナスタシアさんは、 闇オークションを開催している組織をぶっ潰したいけど
“スバル”: ホーシン商会の名前が出るのは困る
“アナスタシア”: せやね ホーシンの名前が表に出るのは勘弁や
“スバル”: そんでもって、現時点では、敵組織の全容がわからないから、 まずはアナスタシアさんはその組織の調査をしたい
“アナスタシア”: うん、それで合っとるよ、ナツキくん
“スバル”: その調査の手始めとして、ページが出品される オークションに潜入する手筈も整ってるんだよな?
“アナスタシア”: そうや 会場に入ることは可能やね
“スバル”: ってことはやっぱ、まずは調査に徹するってすれば、 俺たちは協力し合えるんじゃねぇかな?
“スバル”: ページを競り落とすのも調査の一環になるし
“スバル”: エミリアたん的には、ページが回収できたからって、 それ以上は手伝わないってわけじゃないんだろ?
“エミリア”: うん いけないことをしている人たちを このまま放ってなんておけないもの
“アナスタシア”: エミリアさんがそう言うんやったら、 ちゃんと協力はしてもらえそうやね
“アナスタシア”: フェネさんは不満かもしれんけど
“フェネ”: フェネとしてはページが回収できるのであれば、 エミリア女史のしたいようにしていいと思います
“フェネ”: とはいえ、いささか不思議な感覚ではあります
“フェネ”: 先程利点がないと同盟の締結を断った相手の申し出を 利点がないにも拘わらず積極的に受けようとしているのですから
“フェネ”: ページを回収する過程での協力ならわかります
“フェネ”: ですが、ページの回収が叶った後に、 その組織の壊滅にまで手を貸す必要があるのでしょうか?
“スバル”: まぁ、それがエミリアたんってことだよ、フェネ
“スバル”: 困ってる人は放っておけないし、悪い奴らは見過ごせねぇ 損とか得とかじゃねぇんだ
“レム”: はい それがエミリア様です
“フェネ”: ですが、アナスタシア女史が対峙しようとしている相手は、 相当な組織と推測できます
“フェネ”: 一筋縄ではいきませんよ?
“スバル”: それについては、俺だって色々言いてぇよ、そりゃ
“スバル”: けど、エミリアたんは、 それでもアナスタシアさんに協力すると思う
“エミリア”: うん 放ってはおけないもの
“フェネ”: それで、スバル氏はどうなのですか?
“フェネ”: エミリア女史についてはわかりましたが、 フェネとしては、スバル氏の本音が気になっています

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_14

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■14話 タイトル:情けは人のためならず 更新日:2022/01/19

ナレーター: スバルたちからの同盟の申し出を メリットが見出せないと断ったアナスタシア
ナレーター: だが、闇オークションを開催している組織の壊滅に 協力してほしいとアナスタシアから頼まれたエミリアは
ナレーター: 十分なメリットがないにも拘わらず、 協力を約束してしまうのだった
“フェネ”: ──それで、スバル氏はどうなのですか?
“フェネ”: エミリア女史についてはわかりましたが、 フェネとしては、スバル氏の本音が気になっています
“スバル”: 俺の本音、ね
“スバル”: 俺の故郷には“情けは人のためならず”って言葉がある
“スバル”: 人に優しくすると、巡り巡って 自分に返ってくるってことわざなんだけど
“スバル”: そうなればいいなとは思ってるよ
“スバル”: アナスタシアさんは損得勘定で動く人だけど、 お金じゃ買えねぇものの価値だってちゃんとわかってるはずだ
“スバル”: 俺たちがしっかり協力して、ちゃんと目的が果たせた暁には
“スバル”: “しめしめタダでこき使えてラッキーだった”とは、 ならないんじゃねぇかな
“リカード”: お嬢、言われてるで
“アナスタシア”: ナツキくん、なかなか抜け目ないやない ホンマ、自然と釘を刺されてもうたわ
“フェネ”: なるほど…… では、フェネからは特にありません
“アナスタシア”: ほな、改めてやけど、 ナツキくんらは協力してくれるってことでええ?
“スバル”: ああ 協力させてもらう
“エミリア”: うん、私たちも力になるわ、アナスタシアさん
“レム”: レムも微力を尽くさせていただきます
“フェネ”: 最優先はページの確保 それが保証されるのであれば、フェネにも異論はありません
“フェネ”: ──スバル氏?
“スバル”: おお、フェネか? 入ってくれ
“フェネ”: 失礼します
“スバル”: どうしたフェネ? 修学旅行で男子部屋にくる女子のノリみたいな感じか?
“フェネ”: 使い回しとは芸がないですね
“フェネ”: しかも、フェネに響いた例えであればまだしも、 それについてはフェネからの共感をまったく得られませんでした
“フェネ”: フェネの訪問が予想される状態で、 準備不足も甚だしいと言わざるを得ません
“フェネ”: そんなことだから、 アナスタシア女史から同盟の締結を断られてしまうのです
“スバル”: ちょっと使い回したぐらいでえらい言われよう!? 確かに、お前がくるんじゃねぇかとは思ってたけども!
“フェネ”: やはり、フェネがくることを予期していたのですね?
“スバル”: ああ、まあ アナスタシアさんに協力すること、 お前は納得してねぇみたいだったし
“スバル”: お前が文句を言いにくるとすれば、俺んとこだもんな
“スバル”: エミリアたんやレムの前だと、何気にいい子だからさ、お前って
“フェネ”: ……文句? なるほど、スバル氏はそのように思っているのですね
“フェネ”: それにスバル氏がエミリア女史やレム女史同様、 問題児でなければ、フェネもお二人と同様に接します
“フェネ”: とどのつまり、すべての原因はスバル氏にあるのです
“フェネ”: それをまるでフェネに非があるように言うとは……
“フェネ”: 一度、灰になってみますか、スバル氏?
“スバル”: なってみねぇよ!
“スバル”: 一度灰になったら最後だから、 “一回ぐらいならいいかな”とはならないしさ!
“スバル”: とにかく色々言い方がまずかったことは謝る だから、気を静めてくれ、フェネ
“フェネ”: わかりました ……ですが“文句”という表現はとても心外です
“フェネ”: フェネは決して文句を言いにきたわけではありません
“スバル”: 悪かった つい軽口を叩いちまっただけだ 本気でそう思ってるわけじゃねぇから、安心してくれ
“スバル”: それで、お前が話したいのは、 例の組織を壊滅させるって件だよな?
“フェネ”: 左様です フェネにはとても嫌な予感がします
“スバル”: ……嫌な予感?
“フェネ”: 恐らく、アナスタシア女史の思惑通りには、 事は運ばないのではないかと
“スバル”: 思惑も何も、まずはしっかり調べてからって話になったじゃねぇか
“スバル”: アナスタシアさんは無茶や無謀とは無縁な人だ 相手を把握するまでは、きっと動かねぇよ
“スバル”: そもそもそういう約束だし、 アナスタシアさんは約束を反故にするような人じゃない
“フェネ”: スバル氏、その根拠はなんなのです?
“スバル”: 俺はさ、同盟を断られたとき、すげぇショックだったんだ
“スバル”: 確かにこっちの準備不足は否めねぇけど
“スバル”: これまでのことを考えると、関係は良好だったし、 正式な同盟じゃないにしろ、かなり協力もしてもらってた
“スバル”: だから、同盟っていっても形式的なことで、 俺としては特にこれまでとあんま変わらねぇイメージだったんだよ
“フェネ”: ですが、アナスタシア女史はお断りになりました
“スバル”: ああ、そうだな
“スバル”: けど、それってアナスタシアさんが、 ちゃんと約束を守る人だからなんじゃねぇかな?
“スバル”: 今は、あれはあれで、 すげぇ誠実な対応だったんじゃねぇかって気がしてるよ
“スバル”: 約束を守る気がなけりゃ、同盟の締結なんて屁でもねぇからさ
“フェネ”: 性善説で考えるのはとても危険です、スバル氏 人とは、己可愛さで、いくらでも人を裏切れますから
“スバル”: はは 出たな人間不信
“スバル”: そういうケースもあるかもしれねぇけど、 そうじゃないケースも確かにあるんだ
“スバル”: 俺はそれを身をもって体験したし、 今の俺には自分より大切なものがある
“フェネ”: エミリア女史……ですか?
“スバル”: バカ、みなまで言わせるなよ なんか恥ずかしいだろ
“フェネ”: 何をいまさら スバル氏は先程から恥ずかしいことしか言っていません
“スバル”: おいおい、人がせっかくいいこと言ったのに、そりゃねぇだろ
“フェネ”: 確かに言葉自体はとてもいいものだったと思います
“フェネ”: ですが、それを言っているときの、スバル氏の “どうだ、いいこと言ってるだろ”感は見るに耐えません
“スバル”: しまった! ドヤ感を隠せてなかったか!
“スバル”: やっぱ慣れねぇことは言うもんじゃねぇな
“スバル”: 気持ち良くドヤ顔してた自分が、なんだかすげぇ恥ずかしいよ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_15

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■15話(中編) タイトル:思わぬ強敵 更新日:2022/01/19

ナレーター: カララギ都市国家 第七都市テンミツ
ナレーター: 『禁書』のページが出品されるという闇オークションが、 いよいよ始まろうとしていた
ナレーター: そして、そのオークション会場には、アナスタシア、 スバル、フェネに加え、護衛役のユリウスの姿がある
“アナスタシア”: ──ふむふむ、なるほどね
“スバル”: アナスタシアさん、あんまキョロキョロすると怪しまれちゃうよ
“スバル”: ただでさえ、 騎士団の服を着たユリウスがいて目立っちゃってるんだから
“アナスタシア”: ふふふ なんやの、ナツキくんは心配性やね
“アナスタシア”: こんな場所に、本物の近衛騎士団の騎士が 顔を出すわけないやない
“アナスタシア”: ユリウスのことは、 近衛騎士団の仮装をした誰かとしか思われてへんよ
“フェネ”: 左様です、スバル氏
“フェネ”: 事実、仮面もそうですが、 こちらの会場にいる多くの方が仮装をされています
“フェネ”: 恐らく、仮装を行うのも、身元を隠す手立ての一つなのでしょう
“スバル”: 確かにそうだけども、 あんまキョロキョロするのはどうかと思うぞ
“スバル”: 怪しまれて得することなんてねぇんだからさ
“アナスタシア”: せやけど、しっかり調査せな、 会場に潜入した意味がないやない
“スバル”: そりゃそうだけど、『禁書』のページを回収する前に 厄介事が起こるような事態は避けたい
“スバル”: まずは静観を決め込む感じで頼むよ、アナスタシアさん
“アナスタシア”: ナツキくんはああ言ってるんやけど、ユリウスはどう思うん?
“ユリウス”: 私も最初は静観するべきだと思います それに──
“ユリウス”: 競売前の会場の状態について すでにアナスタシア様は把握されておられるかと
“ユリウス”: あなたが無駄な動きをするはずありませんから
“アナスタシア”: なんや、ユリウスにはバレてたんやね
“スバル”: えぇ!? この短時間でマジかよ!
“フェネ”: スバル氏……! 目立つ行動を控えるように言った張本人が、 大声を出さないでください……!
“スバル”: わ、わりぃ…… けど……
“アナスタシア”: まあ、そういうことやね
“アナスタシア”: ある程度現状は把握できたから、しばらく静観してて大丈夫や 安心してな、ナツキくん
“スバル”: あ、ああ……
“スバル”: 将来的にエミリアたんとアナスタシアさんが、 玉座を競うのかと思うと別の意味で不安になっちまうけど
“スバル”: 今はそのことは考えないことにしよう……
“スバル”: それで、状況を把握したアナスタシアさんとしては、 どんな印象を持ったんだ?
“スバル”: そこんとこ、すげぇ気になっちまうよ
“アナスタシア”: そうやね やっぱり、かなりの組織やと思うわ
“アナスタシア”: 会場も立派やし、 ここで働く人らにもしっかりと教育が行き届いてる
“アナスタシア”: ここに集まってる人らも、仮面やら仮装で 身元を誤魔化してはいるんやけど
“アナスタシア”: 名の知れた金持ちなんは明らかやわ
“アナスタシア”: これだけの競売は、正規のものでも、 あまりお目にはかかれんやろうね
“スバル”: やっぱそうか……
“スバル”: こういう場に似つかわしくねぇ俺でも、 なんかすげぇってのは肌でビシビシ感じてたよ
“スバル”: ホント、表のオークションでも、 全然いけるんじゃねぇって感じがする
“スバル”: 実際は、盗賊なんかとも共謀してる、 真っ黒な組織が運営してるオークションなんだけどさ
“ユリウス”: 恐らく、この会場におられる方々は
“ユリウス”: テンミツの周辺で頻発している盗賊の被害と、 この競売が関係しているとは思っていないだろう
“ユリウス”: スバルが指摘しなければ、私も気付けなかったかもしれない
“スバル”: それについては、確固たる証拠があるわけじゃないし
“スバル”: 俺たちがこらしめた盗賊連中の聴取でも、 関係を裏付けるような証言はなかったみたいだ
“スバル”: けど、そこが逆に怪しかったりするけど
“アナスタシア”: せやね ウチもちょっと調べさせてもらったんやけど
“アナスタシア”: 前回開催されたフスミでも、 競売が開催された時期に盗賊の被害が頻発してたみたいなんよ
“アナスタシア”: もちろん、この競売を開催している組織との つながりを示すような証拠は見つかってないんやけど
“スバル”: マジかよ…… 決定的な証拠はないとはいえ、ほぼ確定じゃねぇか
“フェネ”: ──皆様、いよいよ始まるようです し、しかもあれは……!
ナレーター: フェネのただならぬ様子に、 スバルが慌ててせり台へと視線を移すと
ナレーター: 『禁書』のページが壇上へと運ばれてくるところだった──
“アナスタシア”: どうやら最初のせりは『禁書』のページになるみたいやね
“スバル”: クソ……! いきなりメインイベントかよ……!
“スバル”: もうちょいオークションの雰囲気を味わいたかったんだが、 そういうわけにもいかなそうだ……
せり人: ──お集まりの皆々様!
せり人: 今回最初の出品は、悲劇の鬼才絵本作家 エドガー氏が残した『遺作』のページになります!
せり人: エドガー氏の『遺作』は、 描かれた絵が具現化すると言われる大変貴重な品です
せり人: 今回は全部で六枚ご用意させていただきました
せり人: その中から最初にご紹介するのは──
謎の男: 聖金貨百枚
せり人: お、お客様……?
ナレーター: オークションが始まって早々、 ある男が発した声に、オークション会場が凍り付く
ナレーター: そしてそれは、 スバルの横にいるアナスタシアも例外ではないのだった
“アナスタシア”: 聖金貨百枚やって……?
“フェネ”: ま、まさか……そんな……
せり人: 聖金貨百枚……そちらで落札を希望されるということでしょうか?
謎の男: ああ、聖金貨百枚だ もちろん、ページ一枚につき聖金貨を百枚用意させてもらおう
ナレーター: ざわつく会場
ナレーター: 他の参加者からそれ以上の金額が提示されないまま、 時間だけが流れていく……
せり人: ──ページ一枚につき聖金貨百枚です! それ以上を提示されるお客様はいらっしゃいませんか?
“スバル”: あ、アナスタシアさん!
“アナスタシア”: む、無理や……
“アナスタシア”: たとえそれ以上を提示したとしても、 向こうがさらに上を提示してしまいや
“アナスタシア”: 第一声で聖金貨百枚…… つまり、あちらさんにとってそれが最低価格ってことやない
“フェネ”: ──アナスタシア女史! このままではページが!
“アナスタシア”: 最低でも全部のページを競り落とすには、 聖金貨六百枚以上が必要や
“アナスタシア”: そんな大金、持ち合わせてないわ
“スバル”: でも、それじゃマジでページが!
“フェネ”: 左様です! 是が非でも競り落としてください!
“アナスタシア”: ごめんなんやけど、ないものはないとしか言えんよ 十分な額を用意してきたつもりやったんやけど……
“スバル”: けど、実際に金を出すのはロズワールだ! いいから、あいつ以上の金額を提示してくれ!
“アナスタシア”: 確かにメイザース辺境伯やったら、いくらでも出せるもしれんね
“アナスタシア”: せやけど、この場にないのが問題なんや
“ユリウス”: スバル、これは非合法の競売だ 競り落とした場合、この場での支払いが要求される
“スバル”: つまり、手持ちの金がすべてってことか? 念書かなんか書いて、後から支払いにくるのはダメなんだな?
“ユリウス”: この場限りだ “後で”などということは許されない
“アナスタシア”: ユリウスの言う通りやね “後で”はないわ
“フェネ”: で、ですが……! 本当にこのままでは……!
せり人: ──ページ一枚につき聖金貨百枚! 百枚です! さあさあ、他にいらっしゃいませんか?
せり人: こちらのページはそれだけの品です! あのお方がそのことを証明されています!
謎の男: …………
“スバル”: アナスタシアさん!
“フェネ”: アナスタシア女史! 是が非でもどうにか──
“アナスタシア”: そんなこと言われても無理なもんは無理や 他の方法を考えな
“スバル”: ちくしょう……! 完全に油断してた……!
“スバル”: ロズワールにアナスタシアさん…… 競り負けることなんて端っから考えてなかったよ!
“フェネ”: ふ、不覚…… なんたる失態…… フェネがついていながら、まさかこのようなことになるとは……
“スバル”: けど、あの仮面野郎が、本当に支払えるか、わからねぇよな?
“スバル”: 単なる目立ちたがり屋で、会場にいるみんなを ビックリさせたかっただけみたいな感じでさ
“スバル”: アナスタシアさんでも持参してねぇような金額を あんにゃろうが持ってきてるとは思えねぇ
“ユリウス”: 確かにそういう可能性がないわけではないが……
“アナスタシア”: この競売に参加してる時点で、それは望み薄やろうね
“アナスタシア”: この競売を仕切るような連中が、 そんな輩に招待状を出すとは思えんわ
“スバル”: けど、『禁書』のページの確保は、俺らにとって最優先なわけで 手ぶらで帰るわけにはいかねぇだろ!
“スバル”: エミリアたちにどう説明すりゃいいんだ……?
“アナスタシア”: 言い繕っても仕方ないやろ ありのまま伝えるしかないんやない?
“アナスタシア”: それにこれはナツキくんらだけの責任やない ホンマ、ウチかて悔しいよ
“アナスタシア”: ウチがもっと用意してたら……
“ユリウス”: あの金額は想定外です アナスタシア様の責任ではありません
“アナスタシア”: せやけど、負けは負けや
“アナスタシア”: 競り落とせんかった以上、 ウチにも落ち度があった、そうとしか言えんわ
ナレーター: ──無常にも振り下ろされるせり人の小槌
ナレーター: カン、カン、カンというサウンドブロックを叩く小槌の音が、 会場に落札者が確定したことを告げるのだった
せり人: ページ一枚につき聖金貨百枚! こちらで確定とさせていただきます!
せり人: ご用意した『遺作』のページは全部で六枚!
せり人: それらはすべて、 聖金貨六百枚であちらのお客様のものとなります!
“スバル”: ち、ちくしょう……
“フェネ”: まさかこのようなことになるとは……
謎の男: ふふふ…………

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_16

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■16話 タイトル:いらぬ詮索 更新日:2022/01/19

ナレーター: 大商人のアナスタシア、貴族のロズワール
ナレーター: そんな二人の後ろ盾があることから、オークションで 競り負けることはないだろうと高を括っていたスバルだったが
ナレーター: 謎の男によるいきなりの高額提示により、 競り合うことなく落札をあきらめることになってしまうのだった
“スバル”: ──ちくしょう…… まさか競ることなくゲームオーバーなんてよ……
“フェネ”: 聖金貨六百枚……常軌を逸した落札価格です やむを得ないと言えばやむを得ませんが……
“スバル”: あのさ、アナスタシアさん ちなみになんだけど、 アナスタシアさんは何枚ぐらい金貨を用意してたんだよ?
“アナスタシア”: 会場に持ち込んでユリウスに持ってもらってるのが百枚 すぐにここに運べるように待機させてるのが五百枚
“アナスタシア”: 全部で六百枚やね
“スバル”: ──なっ!? そ、それって!
“フェネ”: はい、あの方の提示額とまったく同じです
“スバル”: いやいや、これって偶然か? アナスタシアさんが用意した額がバレてたりなんてことは……?
“アナスタシア”: それはないわ ウチが用意した枚数を知ってるのは、 極限られた信用できる者だけやし
“アナスタシア”: 外部に漏れるなんてことはないわ
“ユリウス”: それは私も保証しよう アナスタシア様の筋から外部に漏れるとは考えられない
“スバル”: けど、だったらどうしてあいつは──
“フェネ”: 偶然、そうとしか言えません これ以上いらぬ詮索をしても意味はないかと
“スバル”: “いらぬ詮索”って、事実、あいつが提示した額と アナスタシアさんが最大限出せる額が一致してるんだぞ?
“フェネ”: そのような偶然が起こる可能性とアナスタシア女史の 信用に足る方が外部に情報を漏らす可能性を比較した場合
“フェネ”: 圧倒的に後者が低いとフェネは推測します
“フェネ”: そしてそれは、フェネだけでなく アナスタシア女史やユリウス氏も同じ考えでしょう
“フェネ”: 今回の敗因が我々の過信にあることは明らか
“フェネ”: ロズワール氏の財力とアナスタシア女史の協力があれば、 競り負けるなどありえないと決めつけていました
“フェネ”: 偏(ひとえ)にその油断がもたらした敗北にすぎません
“フェネ”: スバル氏は責任転嫁可能な誰かをやり玉にあげたいようですが、 そうしたところで競り落とせなかったという事実は変わりません
“スバル”: 別にスケープゴートを用意して、 憂さ晴らしがしたいわけじゃねぇよ
“スバル”: アナスタシアさんが用意した額ときっかり一緒ってのが、 腑に落ちねぇだけだ
“スバル”: もし、情報が漏れてるんだとしたら、 今後こんなことがないようにちゃんと対処しねぇとだろ?
“アナスタシア”: フェネさんやユリウスも言ってくれたんやけど、 その可能性はないと断言してもええよ
“アナスタシア”: 誰かに盗み聞きされるようなヘマはしてへんつもりやけど、 あるとしたらそっちの可能性やね
“スバル”: 盗聴……そういう可能性はあるわけだな?
“アナスタシア”: 細心の注意を払ってのやり取りやし、その可能性も低いやろうね
“アナスタシア”: せやけど、“可能性”って話やったら、 ないこともないかもしれんわ
“スバル”: 盗聴器なんてもんがこっちの世界にあるかはわからねぇけど、 盗聴ってのは確かに常套手段ではあるな……
“スバル”: とにかく、今後はそういう可能性も考えて、色々注意しねぇとな
“アナスタシア”: そうやね ウチらも注意させてもらうわ
“アナスタシア”: それで、どないするん?
“アナスタシア”: 残念ながらページは競り落とせんかったけど、 ページを回収しないわけにはいかないんやろ?
“アナスタシア”: 今話題にすべきは、そっちの方なんやない?
“アナスタシア”: もっとも、ナツキくん以外のみんなは、 そのことに気が付いていそうやけどね
“フェネ”: 左様です フェネは一刻も早くそちらの話題が始まることを望みます
“フェネ”: なので先程も “いらぬ詮索”と切り捨てさせていただいたのですが……
“フェネ”: スバル氏の知能では理解できなかったようです
“スバル”: 色々察せられなくてごめんね!
“スバル”: けど、確かにその通りだ あの仮面野郎にみすみすページを渡すわけにはいかねぇ
“ユリウス”: そのために、スバルは何をするべきだと思う?
“スバル”: ページの危険性を説いて、わかってもらうしかねぇ気がするよ
“スバル”: んで、ページを買い取らせてもらうんだよ
“スバル”: 原価の金貨六百枚で買い取らせてもらえるのがベストだけど、 少しぐらいなら色を付けてやってもいいと思う
“フェネ”: 危険性を説くことが、買い取りの可能性を上げるとは限りません
“フェネ”: 現時点では、ページに描かれた絵が具現化するという話は、 噂の域を出ないものですが
“フェネ”: 事情を説明してしまえば、それが事実であると教えているのと同義 態度を硬化させ、より買い取りを困難にする可能性があります
“アナスタシア”: 描かれた絵が具現化するなんて、ホンマ希少な代物やもんね 手放したくない気持ちになっても不思議はないわ
“スバル”: けど、出てくる『異形』は凶暴で危険な存在だし、 絵が飛び出てラッキーとはならねぇだろ
“フェネ”: それは経験をしているスバル氏だから言える台詞です
“フェネ”: そうでない人間にとっては、 “描かれた絵が飛び出す不思議な紙切れ”なのです
“スバル”: だったら、どうすんだよ! あの仮面野郎から力ずくで奪い取るか?
“フェネ”: ……それはいいですね
“フェネ”: 優秀なフェネに敗北を味わわせたこの恨み 体中に刻み込んでやりましょう
“スバル”: さっきの高説はどこいった!?
“スバル”: 誰かをやり玉に憂さ晴らししたいのは、 むしろお前の方じゃねぇかよ!
“フェネ”: いえ、スバル氏、フェネなりの冗談です 無論、選択肢の一つではありますが、それは最後の手段かと
“スバル”: 待て待て、選択肢に含まれてる時点で、冗談になってねぇだろ
“スバル”: たとえ最後の手段だとしても、それはナシだ エミリアたんが許してくれるはずねぇ
“ユリウス”: もしそのような手段に出る場合、 私も黙って見ているわけにはいかない
“アナスタシア”: せやけど、それはあちらさんが、 まっとうな人間やったらなんやない?
“アナスタシア”: ページ六枚にぽんと聖金貨六百枚…… とてもまっとうな人間とは思えんわ
“ユリウス”: ……叩けば埃が出ると?
“アナスタシア”: それはぎょうさん出るやろうね
“アナスタシア”: とにかく、まずは正攻法といこうやない
“スバル”: “正攻法”ってことは、ページの危険性を伝えて、 譲ってもらえるように交渉してみる感じか?
“アナスタシア”: せやね それで譲ってくれたら解決や
“スバル”: もし譲ってくれなかったら……
“アナスタシア”: そのときはそのときや どんな手を使ってでも、ページを譲ってもらわなあかんね

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_17

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■17話 タイトル:落札者の男を追え 更新日:2022/01/19

せり人: ──これにて今回の競売は終了いたします!
“スバル”: よし、オークションが終了した まずは正攻法で譲ってもらえねぇか相談だな
“アナスタシア”: せやね 一筋縄ではいかんやろうけど、 相手の出方を見る意味でも、正攻法でええと思う
“ユリウス”: では、急ぎ向かいましょう 何やらお急ぎのご様子──
“フェネ”: ──っ! このままではいってしまいます!
“スバル”: アナスタシアさん、急いで追いかけよう! いくぞ、フェネ!
“フェネ”: はい!
“アナスタシア”: ウチらも急ぐで、ユリウス
“ユリウス”: はっ!
ナレーター: ページを競り落とした謎の男を追って 駆け出したスバルたちだったが……
“スバル”: なんつー足の早さだ! 完全に見失っちまった!
“アナスタシア”: せやね このまま会えんかったら、交渉もなにもないわ なんとしても見つけ出さな
“ユリウス”: では、手分けして探しましょう
“ユリウス”: 私とアナスタシア様はあちらを探す スバル、向こうを頼めるか?
“スバル”: ああ、もちろんだ
“スバル”: さすがに遠くへはいってないだろう 手分けして探せばきっと──
“フェネ”: ──くっ! ま、まさかそんな……!
“アナスタシア”: これはいったいどういうことやの……
“ユリウス”: アナスタシア様、私の後ろへ 何が起こるかわかりませんので
“スバル”: ──フェネ! ページの反応は?
“フェネ”: ざ、残念ながら……
“スバル”: け、けど、これってページにマナが溜まって 『異形』なんかが出てきちゃう状態だろ?
“フェネ”: 恐らくは……
“スバル”: ……お、恐らくは?
“フェネ”: 左様です 現時点でフェネには断言できかねます
“スバル”: おいおい、どうしちまったんだ、フェネ?
“スバル”: ──って、もしかしてお前、まだ体調が悪いのか?
“スバル”: アルビスで体調を崩したのも、寒さが原因じゃなかったりしてな
“スバル”: フェネ、もし隠してることがあるなら、正直に話してくれ
“フェネ”: ページを感知できないのは、体調が原因ではありません それに、フェネの体調は万全です
“スバル”: 体調が原因じゃねぇなら、どうしてページが感知できねぇんだよ!
“フェネ”: わかりかねます 感知できないものはできないのです 原因は不明です
“スバル”: わかりかねる……? 原因は不明……? そんな返答で納得できるわけねぇだろ!
“アナスタシア”: 落ち着いて、ナツキくん 言い争いは後や
“アナスタシア”: フェネさんがページを感知できんのやったら、 ウチらはまず何をすべきやと思う?
“スバル”: そ、それは……
“アナスタシア”: ユリウス?
“ユリウス”: まずは『鉄の牙』やエミリア様たちと合流するべきでしょう
“アナスタシア”: 正解 さすがやね、ユリウス
“スバル”: ゆ、ユリウス、てめぇ! あと三秒待ってくれたら、 俺だってちゃんとそう答えられたんだよ!
“スバル”: それにどうして『鉄の牙』がエミリアたんより前にくるんだ? 一にエミリアたん、二にも三にもエミリアたんだろ!
“スバル”: アナスタシアさんだって、そう言ってたじゃねぇか!
“アナスタシア”: ごめんやけど、ウチはそこまでは言ってへんかな
“フェネ”: 左様です、スバル氏
“フェネ”: 色々思い通りにならず、鬱憤が溜まっているのはわかりますが、 ユリウス氏に当たるのは筋違いです
“スバル”: 鬱憤の原因、一つはお前にあるって知ってる!? だいたいお前がページを──
“アナスタシア”: はいはい、そこまでや、ナツキくん
“アナスタシア”: そんなんやったら邪魔やし、 ここに置いていかせてもらうことになるで?
“スバル”: うぐっ…… それはマジ困るんで、 今は言いたいことを色々飲み込ませてもらうよ
“スバル”: とにかく、エミリアたんたちと一刻も早く合流しよう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_18

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■18話 タイトル:リドアの強さ再び 更新日:2022/01/19

ナレーター: 突如変貌したテンミツの街は、 混乱の坩堝(るつぼ)と化しているのだった──
“女の子”: えーん、おかあさーん!
“エミリア”: 大丈夫? お母さん、一緒に探してあげるわね
“女の子”: おねえちゃん、ホント?
“エミリア”: うん 本当よ
“レム”: レムも一緒にお探しします
“リカード”: おいおい、そんなことしてる場合やないやろ お嬢たちと早く合流せな
“レム”: レムもスバルくんと一刻も早く合流したいですが、 この子を放っておくわけにはいきません
“エミリア”: スバルのことは心配だけど、私もこの子は放っておけないわ
“ミミ”: 迷子の子を放っておくのはよくなーい! ダンチョー、そんなことしたら、きっとお嬢に怒られるぞー!
“リカード”: なんや、ミミまで……って、確かにお嬢やったら放っておかんか
“ヘータロー”: でも、早くお嬢と合流しないと お嬢の身に何かあったら……
“ティビー”: その通りです お嬢に何かあってからでは遅いですよ
“リカード”: お嬢にはユリウスがついとる もしもはなさそうやけど……
“ティビー”: もしもはない、そう断言できるですか?
“リカード”: ……状況がわからんこの状態で断言までは無理やな
“ヘータロー”: だったら、団長たちはお嬢のところへ急いで この子のお母さんはボクたちが探してあげるから
“ティビー”: それがいいです この一帯の市民の方々の避難も含めて僕たちが引き受けるです
“リカード”: ヘータロー、ティビー、頼めるか?
“ヘータロー”: うん!
“ティビー”: 任せるですです
“ミミ”: そんじゃ、任せたー! ヘータローとティビーなら、安心!
“リカード”: 嬢ちゃんらもこれならええやろ? 先を急ぐで!
“エミリア”: ええ、先を──
変異体1: ウググググ……ッ!
“エミリア”: ──っ! きちゃったみたいね……!
変異体2: ウガガガガ……ッ!
“レム”: はい……! 向こうからも……!
変異体3: ウグッウガガ……ッ!
“リカード”: あっちからもや……!
変異体4: ウゴゴゴゴ……ッ!
“ミミ”: ミミが相手だー! ぶっ倒すからカクゴー!
“リドア”: ──はっ!
変異体1: ──ウガッ! ウグググ……
“リドア”: ──えいっ!
変異体2: ──ウグッ!? ウガガガ……
“リドア”: ──せいっ!
変異体3: ──ウゴッ!? ウギギギ……
“リドア”: ──はーっ! やあっ!
変異体4: ──ウガッ!? ウゴゴゴ……
“リカード”: ──な、なんやあの嬢ちゃん!
“ミミ”: すごー! ミミの出番なーし!
“エミリア”: リドアちゃん!
“レム”: リドアさん!
“リカード”: なんや、あの嬢ちゃんは嬢ちゃんらの知り合いか?
“エミリア”: ええ リドアちゃんはすごーく強いのよ
“レム”: はい リドアさんはとてもお強いです 道中襲ってきた盗賊たちもリドアさん一人で倒してしまいました
“リカード”: なるほどやな あの嬢ちゃんやったら、 そこいらの盗賊が束になっても勝てるはずないわ
“リドア”: こちらの敵はリドに任せて、先をお急ぎください リドも片付け次第、皆様の後を追います
“エミリア”: お願いね、リドアちゃん!
“リドア”: はい お任せください、エミリアさん
“レム”: では、スバルくんたちのところへ急ぎましょう
“リカード”: そうやな ここは嬢ちゃんに任せて大丈夫そうや ヘータローもティビーもおるし、先を急ぐで!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_19

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■19話 タイトル:考えうる最悪の事態 更新日:2022/01/19

ナレーター: ページの影響だと思われる現象で、 景色が一変してしまったテンミツ
ナレーター: ページの落札のため闇オークションに参加していたスバルたちは、 エミリアたちや『鉄の牙』と合流するため走っていた──
“スバル”: はぁ…… はぁ…… エミリアたーん! レムー!
“スバル”: って、ちくしょう! この仮面、邪魔だな! もう、取っちまって構わないよね?
“アナスタシア”: せやね あの落札者と会うわけやないんやし、 ウチも仮面はいらんと思うわ
“ユリウス”: 確かにない方が動きやすいですね では、外してしまいましょう
“フェネ”: 男前なユリウス氏が仮面をはずすのはわかりますが
“フェネ”: 目つきが悪いスバル氏は、仮面をつけたままの方が 被害が少なかったように思います
“スバル”: 被害って何!?
“スバル”: しかも、“少ない”ってことは、俺は仮面をつけながらも 少なからず被害を出してたってことになるよね!
“フェネ”: 左様です スバル氏のその目は、 仮面如きでは被害を抑えきれません
“スバル”: フェネ! お前な──
“アナスタシア”: はいはい フェネさんとナツキくんが仲ええのはわかったから、 そういうのは後回しにしてもらってええ?
“アナスタシア”: この状況…… すでに『異形』なんかが出てきとってもおかしくないんやろ?
“フェネ”: 左様です すでに『異形』が顕現している……あるいは
“フェネ”: ページの影響を受けた『変異体』が、 こちらの町に侵入しているかもしれません
“スバル”: 最悪の場合はその両方ってことだな
“スバル”: 『異形』が顕現して、『変異体』がこの町を襲うパターンだ
“スバル”: 加えて、この町にいる人たちの中にも、 ページの影響を受ける人たちが出て
“スバル”: そういう人たちが暴れ出すってことまでありえる まぁ、そんな事態は想定したくねぇけど……
“スバル”: にしても、ここまでページがマナを吸った状態で、 本当にフェネにはページが感知できねぇのか?
“スバル”: いつもだったら“あちらにページの反応が”ってな感じで、 ページの場所を特定できるっていうのに
“フェネ”: 誠に残念ながら…… フェネには感知が行えません……
“スバル”: クソっ! 仕方ないとはいえ、マジ歯痒いぜ!
“ユリウス”: スバル、そういう発言は控えた方がいい 一番歯痒い思いをしているのは、フェネさんに他ならない
“アナスタシア”: そうやね ウチもそう思うわ
“アナスタシア”: それに、“想定したくない”ゆうとった最悪の事態やけど、 もっと上があるんやない?
“ユリウス”: 確かにそれは……! だが、だとすれば フェネさんが感知できないことも説明がつくかもしれない……!
“スバル”: おいおい、どうしたんだ、二人とも? さらに上の最悪な事態って、まさか……
“スバル”: この事態を引き起こしてるのが、 例の“こわいまもの”のページだとか言い出さないよね?
“アナスタシア”: ご名答や、ナツキくん
“ユリウス”: 最悪な事態を想定するのであれば、 当然その可能性を排除するべきではない
“スバル”: いやいやいや、けどけど……
“スバル”: ──って、クソっ! 確かに最悪の最悪はそのケースだ!
“スバル”: すげぇ『異形』のページだから、 フェネの感知能力をすり抜けるスキルを持ってると仮定すれば
“スバル”: フェネが感知できねぇことにも納得ができるな
“スバル”: でも、だったらどうするんだ? その最強最悪な事態に、俺たちに打つ手はあるのか?
“アナスタシア”: ──ホンマ、テンミツまでユリウスを呼んで正解やったわ
“ユリウス”: はっ、アナスタシア様! 私が全身全霊であなたをお守りいたします!
“リカード”: ──なんや、ユリウス ワイらがいること忘れてへんやろうな?
“ミミ”: ミミもいるよー!
“ミミ”: お嬢を守るのはミミの役目! そこんとこ忘れちゃダメ―!
“アナスタシア”: 頼りにしとるよ、ミミ あと、リカードもな
“リカード”: なんや! ワイはミミのついでかい!
“ミミ”: きゃはは! ダンチョーはついでー!
“エミリア”: スバル
“レム”: スバルくん
“スバル”: 二人とも、きてくれたんだな?
“エミリア”: うん 町が大変なことになっちゃったから……
“エミリア”: でも、なんだかスバルたちが話しかけづらい雰囲気で、それで……
“スバル”: ごめん、最上級に最悪なケースの可能性があったから、 ただでさえ怖い目つきがもっと怖くなっちまってたかもな
“レム”: はい、スバルくんのいつも以上に鋭い眼光に、 レムはドキドキしていました
“スバル”: レムのそのドキドキが恐怖心からくるもんじゃねぇことを祈るよ
“スバル”: にしても、エミリアたんに話かけるのを躊躇させるとは、 マジで罪な目つきだぜ
“スバル”: フェネに“被害”なんて言われて、カチンときちまったけど、 こりゃ、仮面を外さない方がよかったかもしれねぇ……
“フェネ”: ようやく気付きましたか、スバル氏
“フェネ”: ですが、そのような反省は、 後ほど大いにしていただくとして、今は──
“スバル”: ああ、この事態に対処しねぇとだ なんたって俺たちには、打つ手がちゃんとあるんだからな
“スバル”: ユリウスに
“スバル”: リカードとミミ
“スバル”: それに、エミリアたんとレムもいる
“フェネ”: 優秀なフェネのこともお忘れなく
“スバル”: ああ、お前も頼りにしてるぜ、フェネ
“エミリア”: 後でリドアちゃんもきてくれるって言ってたわ
“レム”: はい リドアさんは必ずきてくれると思います
“スバル”: さらにリドまで加わるのか……
“スバル”: マジですげぇ戦力だ
“スバル”: これだけの戦力があれば、 たとえ相手があの“こわいまもの”だって、きっと戦えるはずだ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c07_20

Scene Name: メインシナリオ_7章_FIX ■エピローグ タイトル:心変わりの理由 更新日:2022/01/19

ナレーター: 『禁書』のページの影響だと思われる異変が襲った カララギ都市国家の第七都市テンミツ
ナレーター: 明らかにページにマナが溜まった状態だと思われるものの フェネにはページの感知が行えず
ナレーター: スバルたちはテンミツを襲う 『変異体』の対処に追われることになる
ナレーター: その状況は、リドアが合流してからも変わらないのだった──
“フェネ”: 皆様、支援します!
“エミリア”: お願い、フェネ! えーいっ!
変異体: ウゴッ! ウガガガ……
“リドア”: せいっ! やあっ!
変異体: ウガッ! ウグググ……
“レム”: エル・ヒューマ!
変異体: ガッ! ググググ……
“ユリウス”: はっ!
変異体: ウギャッ! ウウウゥ……
“リカード”: 邪魔や! 雑魚はひっこんどきっ!
変異体: ウグッ! グガガガ……
“ミミ”: ミミが相手だー! いくよー!
変異体: オゴッ! ガガガガ……
“スバル”: 今んとこ『異形』は出てきてなさそうだけど、 『変異体』の数が多すぎる
“スバル”: これだけの戦力にフェネのアシストがあるとはいえ、 このままじゃジリ貧だ
“スバル”: 早くページを封じちまわねぇと……
“アナスタシア”: この町には少なくともページが六枚…… 『変異体』とやらが多いのはそのせいやろうね
“スバル”: ああ 俺もそんな気がしてる あの男が落札したページは、きっと全部やばい状態なんだろうよ
“スバル”: しかも、ページによっては大量の『異形』が描かれてたりするし マジ、早く封じねぇと
“スバル”: たとえ“こわいまもの”のページがあったとしても、 顕現する前に封じちまえばセーフだしな
“アナスタシア”: とはいうものの、それは望み薄やね フェネさんが感知できんのやったら、見つけようがないわ
“アナスタシア”: 地道に探し回れるような状況やないし
“スバル”: うぐっ…… 確かに…… 探し回ろうにも、これじゃ身動きがとれねぇ……
“スバル”: ──っ! 今、あの男が視界に入ったような……
“アナスタシア”: ……あの男やって?
“スバル”: ああ、そうだ、アナスタシアさん 例のページを落札した謎の男だよ
“スバル”: あいつが向こうを──
“仮面の男”: 私をお探しですかな? ……いや、貴方がたがお探しなのは『遺作』のページでしたね
“仮面の男”: ですが、ご安心 このように私が有効に活用させていただいております
“スバル”: ゆ、有効活用……? な、何を言い出してんだ、お前……?
“仮面の男”: このような町、あれを使えばあっという間に終わらせられます
“仮面の男”: そんな代物が一枚たったの聖金貨百枚とは…… いやはや、よい買い物ができました
“仮面の男”: ククククク…… グハハハハッ!
“仮面の男”: 実に愉快 本当に人間とは愚かな生き物です
“仮面の男”: 富も名声も命あってのものだというのに、 欲に目がくらんだ結果、ご覧のあり様です
“仮面の男”: ──間もなく準備が整います そうなれば、愚かな人間どもは消え、この町は浄化されるでしょう
“仮面の男”: ククククッ グハハハハッ もちろん、貴方がたも例外ではありませんよ
ナレーター: そう言うと仮面の男は、懐から光り輝くページを一枚取り出し
ナレーター: 楽しくて仕方がないといったように、破顔するのだった
“仮面の男”: クククク…… ハハハハ……
“スバル”: な、何がそんなに面白ぇんだよ……?
“仮面の男”: たった聖金貨百枚です そんなはした金のために、この町は滅びようとしている
“仮面の男”: しかも私が競り落としたページは六枚…… それだけあればどれほどの町が滅ぼせるでしょう
“仮面の男”: ククク……ッ ハハハ……ッ これを笑わずにいるのは、私には難しい
“アナスタシア”: あかん、どうかしてるわ そんなことしたら、あんたやって死んでまうやない
“スバル”: そうだぜ お前だってただで済むはずがねぇ
“スバル”: それはとっても危険な代物なんだよ 今ならまだ間に合う だから、こっちに渡してくれ
“スバル”: 他のページに全部、今すぐこっちに──
“仮面の男”: ページを渡す? ハッ、何故私がそのような愚行を──
“ユリウス”: アナスタシア様!
“アナスタシア”: ええところにきたやない、ユリウス!
“フェネ”: ──スバル氏!
“スバル”: お前もいいとこにきたぜ、フェネ!
“スバル”: 残念ながら、ページの落札者との交渉は決裂した! よって、すみやかにプランBへの移行が必要だ!
“ユリウス”: スバル、その“ぷらんびい”とは?
“フェネ”: ユリウス氏、相手にする必要はありません 空気が読めないスバル氏の冗談です
“ユリウス”: 冗談、だと? このように切迫した状態で何故……
“スバル”: わりぃ、ユリウス 漫画やアニメの影響で、 “プランBへ移行する”みたいなこと言ってみたかったんだよ
“スバル”: とにかく、そもそもあいつは 交渉が行えるような相手じゃなかったんだ
“スバル”: ページを悪用する気満々で、 事実、ただいまその真っ最中ってわけだ
“スバル”: 強硬手段に出ちまって構わねぇ! ページ悪用の現行犯で今すぐ取り押さえてくれ!
“アナスタシア”: ナツキくんが言ってることは本当や、ユリウス
“アナスタシア”: この悲惨な状態は、あちらさんが好き好んで招いた状態 遠慮は無用や ウチも強硬手段に出てええと思う
“ユリウス”: わかりました、アナスタシア様 では──
“仮面の男”: ハハハッ 今さら強硬手段とは笑わせる
“仮面の男”: 何もかも手遅れ! 貴方がたはとっくの昔に強硬な手に出るべきだったのです!
“仮面の男”: それを競売が終わるのを待ち、 その上ご丁寧に交渉で譲り受けようとするとは……
“仮面の男”: 貴方がたが手をこまねいている間に、 舞台の準備は進み、整ってしまいました
“仮面の男”: ──さあ、偉大なる浄化の幕開けです!
“仮面の男”: 幕開けにして終幕の可能性もありますが…… そこは貴方がたの活躍に期待しましょう
“仮面の男”: さすがにこれで終わりでは、 盛り上がりに欠けるつまらない見せ物になってしまいます
“仮面の男”: そのようなことになれば、 偉大な絵本作家、エドガー様に申し訳が立たない
“スバル”: な、なに訳わかんねぇことを……
“アナスタシア”: 偉大なる浄化、やって? ホンマ、性質(たち)が悪い冗談やわ
“フェネ”: いえ、アナスタシア女史…… 冗談ではない可能性が……
“スバル”: くっ…… 悪意を持ってページを使えば、 実際、そんなことまでできちまうってわけだ?
“フェネ”: 左様です……
“フェネ”: 『禁書』に封じられていないページはまだまだ多く、 それらを使えばあるいは……
“ユリウス”: ──なっ! そのようこと、私が絶対に許さない!
“アナスタシア”: ウチかて、許すわけにはいかんよ
“アナスタシア”: ホーシン商会をこれからも発展させるつもりやし、 浄化なんてホンマ迷惑やわ
“ユリウス”: 次は本気でいく! 覚悟! ──はーっ!
“仮面の男”: ハハハッ、もう遅いのですよ 貴方がたは最後の機会を逸しました すでに幕は上がっています
“仮面の男”: それでは、私はこれで どうかご武運を──
異形: ゲロッ! ゲロゲロゲロォォォォーーッ!
“スバル”: クソッ! 間に合わなかった! 『異形』の奴が顕現しちまったよ!
“スバル”: しかも……
変異体: ウガガガッ!
“エミリア”: はぁ…… はぁ…… えーいっ!
変異体: グガガガッ!
“レム”: はぁ…… はぁ…… レムが倒します! はーっ!
変異体: グギギギッ!
“リドア”: せいっ! やあっ! はっ!
変異体1: グゴゴゴッ!
変異体2: ググググッ!
“リカード”: 倒しても倒しても次から次に……! ミミ、そっちは任せて大丈夫か?
“ミミ”: ダンチョー、任せてー! こっちはミミがぶっ飛ばす―!
変異体: オゴッ! ガガガガ……
“スバル”: あっちはあっちで大変そうで、 こっちの『異形』にまで手が回る状態じゃねぇ
“ユリウス”: 心配無用だ、スバル 私はそれなりに腕には覚えがあるつもりだ
“アナスタシア”: 『最優の騎士』が謙遜せんでええよ ユリウスが“それなり”やったら他の騎士さんがかわいそうやわ
“フェネ”: 左様です、ユリウス氏!
“フェネ”: フェネも全力でユリウス氏を支援いたします! 一気に片付けてしまいましょう!
“スバル”: おお! いつになく燃えてるな、フェネ!
“フェネ”: あのような輩の好きにさせるわけにはいきません! 可及的速やかにこの場を収め、あの者を追わなければ……!
“スバル”: ああ、この町のためにも、そうするのが一番だ
“スバル”: 不思議な状態になってて、 建物やなんやには影響は出なさそうだけど
“スバル”: この町の住民たちはそういうわけにはいきそうもねぇ
“スバル”: 『異形』やら『変異体』にやられたら、怪我だってするだろうし、 最悪の場合は命も……
“スバル”: それだけはぜってぇ阻止しねぇとな!
ナレーター: それはまさに死闘と呼べるものだった……
ナレーター: 現れた『異形』は強く、『最優の騎士』ユリウスをもってしても そう簡単には仕留められなかった
ナレーター: エミリアやレムやリドア、それにリカードやミミも、 次から次に現れる『変異体』に手を焼いてしまっている
ナレーター: また、別の場所で、多くの『鉄の牙』の団員たちと力を合わせ
ナレーター: 住民を避難させつつ『変異体』と戦っていた ヘータローやティビーについてもそれは同じだった
ナレーター: 誰一人として、余力がある者はいない
ナレーター: だが、そんな戦いの中で、 徐々にだが光明が見え始めているのだった──
“リカード”: いったで、嬢ちゃん!
“エミリア”: わかったわ! 任せて!
“エミリア”: ──えーいっ!
変異体: ウガッ! ウグググ……
“スバル”: なんだかうまく連携して戦えるようになってきてるな
“アナスタシア”: せやね 一足す一が三にも四にもなってる感じがするわ
“スバル”: ああ、そうだな 即席チームだったから、 最初は全然連携できなかったけど
“スバル”: 今は息もぴったりで、 『変異体』を倒すスピードが格段にアップした気がするよ
“アナスタシア”: ホンマにそうやね
“アナスタシア”: エミリアさんもレムさんもあのリドアって子も 『鉄の牙』にほしいぐらいやわ
“スバル”: 待て待て 王様を目指してるエミリアたんが、 『鉄の牙』になんて入るわけねぇだろ
“スバル”: もちろん、レムもダメだぞ
“スバル”: 使用人メンバーからレムが抜けて、ラムと二人だけになったら、 俺がこなさなきゃならねぇ仕事量が、半端なくなっちまうからさ
“スバル”: んで、残るはリドだけど、あいつの場合は…… 『鉄の牙』に入った方が幸せかもしれねぇな
“スバル”: 今の環境がいいとはとても思えねぇし
“アナスタシア”: ふーん リドアさんは訳ありなんやね?
“スバル”: あんま詳しいことはわかんねぇけど、 なんとなくそんな気がしてる
“スバル”: 上にいる奴が上にいる奴だからさ
“スバル”: なんて話は置いといて、あっちから一人ユリウスの援護に入れれば 状況を一気に好転できそうだな
“スバル”: あの『異形』をぶっ倒せば、ページを『禁書』に封じられるはずだ
“スバル”: そうすりゃ、『変異体』も弱体化するから、 この戦いを終わらせられると思う
“アナスタシア”: やったらナツキくん 誰をユリウスの援護に向かわせるべきやと思う?
“アナスタシア”: そこ、重要やよ
“スバル”: ああ、重要だ んで、たった今俺は、 連携の大切さを思い知らされたところだよ
“スバル”: となりゃ、アナスタシアさん陣営の リカードってことになるだろうな
“スバル”: ミミも選択肢には入るけど、個人プレーに走りそうだし、 失敗が許されないこのケースは、リカードを向かわせるのが無難だ
“アナスタシア”: せやね ウチもそう思うわ
ナレーター: アナスタシアはそうスバルに頷いて見せると リカードに向かって大声で指示を出すのだった
“アナスタシア”: ──リカード! そこはミミやエミリアさんたちに任せてユリウスの援護や!
“アナスタシア”: ユリウスが戦ってる『異形』を倒せば、 この勝負、ウチらの勝ちやよ!
異形: ゲロゲロ…… ゲロゲロゲロ……
“ユリウス”: はぁ…… はぁ……
“リカード”: ホンマしぶといやっちゃな……
“フェネ”: ユリウス氏、リカード氏、マナを補給させていただきます
“ユリウス”: 助かります 力が湧いてきました
“リカード”: ホンマや! ワイも元気になったで!
“リカード”: これやったら、いけそうやな、ユリウス!
“ユリウス”: ああ そろそろ終わりにするとしよう
“リカード”: せやな そんじゃ、ワイからいかせてもらうで──
“リカード”: うおぉーーーっ!
“リカード”: どりゃっ!
異形: ゲロッ! ゲロゲロ……!
“リカード”: とどめは任せたで、ユリウス!
“ユリウス”: わかった! 私に任せてもらおう──
“ユリウス”: はーーーっ!
“エミリア”: ふぅ…… やっと終わったわね レムは大丈夫?
“レム”: ご心配には及びません、エミリア様 レムはご覧の通り無事です
“レム”: エミリア様こそ大丈夫ですか?
“エミリア”: うん、私は平気 私だってこの通りぴんぴんしてるわよ
“エミリア”: リドアちゃんも大丈夫よね? 怪我をしているようだったら、私が治癒魔法を……
“リドア”: リドは平気です 治癒魔法の必要はありません
“エミリア”: そう それならよかった でも……
“レム”: はい、町には怪我をしている方々がいると思われます なのでレムは、その方々に治癒魔法をおかけするつもりです
“エミリア”: うん、いきましょう、レム 早く治してあげないとかわいそうだわ
“エミリア”: 今回の場合、怪我をしちゃった人が多そうだから、 急がないと
“レム”: そうですね 今回は強力な『異形』も街中で暴れ回ったので、 負傷者の方は多いと思います
“レム”: 『鉄の牙』の方々が、 住民の方を避難させてくれていたみたいですが
“レム”: 多くの重傷者が出ているかもしれません 急ぎましょう、エミリア様
“スバル”: ──おーい、エミリアたん! レム! って、二人の姿が見当たらねぇ!?
“リドア”: エミリアさんとレムさんでしたら、 たった今、負傷者の方の治療に向かわれました
“リドア”: つまり、お二人には目立った外傷もなく、 他の方の治療に向かうことができる状態ということです
“スバル”: なんだかまどろっこしい言い方だったけども、 要するに二人は元気ってことで合ってる?
“リドア”: はい エミリアさんは“ぴんぴんしてる”と評していました
“スバル”: “ぴんぴんしてる”ってきょうび聞かねぇな…… って、その台詞、エミリアたんので間違いねぇ!
“スバル”: ってことは、ホントにエミリアたんは大丈夫みたいだ マジよかったよ
“スバル”: にしても、戦いが終わって早々治療に向かうとは、 エミリアたんやレムには頭が下がるぜ
“スバル”: 俺としては、直接二人の無事を確かめたかったけど…… まぁ、仕方ねぇか
“スバル”: テンミツの街並みは無事だけど、 町の人たちにはいっぱい怪我人が出てそうだしな
“アナスタシア”: ──ナツキくん、ちょっとええ? フェネさんと一緒にあっちにきてもらえるやろうか?
“スバル”: もちろんだよ、アナスタシアさん 俺も色々話したいことあるし、向こうで話そう
“アナスタシア”: ──ナツキくんも、ウチに話があるみたいやけど、 まずはウチからや
“アナスタシア”: 先日、ナツキくんらから申し出があった同盟のことなんやけど、 あの話ってまだ有効なんやろうか?
“アナスタシア”: もしそうやったら、正式に受けさせてもらうつもりや
“スバル”: 本当かよ、アナスタシアさん! 有効も有効だ! ぜひ正式な同盟締結をお願いしたい!
“フェネ”: フェネからも強くお願いいたします
“フェネ”: 今回、無事にページを『禁書』に封じられたのは、 皆様のご協力があったからこそ
“フェネ”: しかもあのような不届き者が現れたとあらばなおさらです あのような者をこのままのさばらせておくわけにはいきません
“アナスタシア”: ホンマ、その通りやね ウチが心変わりしたのも、それが理由の一つや
“アナスタシア”: 本来やったら、正式な同盟は遠慮したいところなんやけど、 そうも言ってられへんわ
“アナスタシア”: 今回の『異形』にも手を焼いたんやけど、 例の“こわいまもの”とは違う『異形』やったんやろ?
“フェネ”: 左様です 今回封じたのは別のページでした
“ユリウス”: なかなかの強敵だったが、あれ以上の『異形』がいるとは……
“リカード”: せやな ホンマ、骨が折れたで あれより強い『異形』なんて、考えただけでもぞっとしてまう
“ミミ”: ミミは逆に燃えてきたー! 強い『異形』はミミがぶっ飛ばすー!
“アナスタシア”: ふふ ミミは強い心を持ってるんやね
“アナスタシア”: せやけど、無理は禁物やで ウチを悲しませるようなこと、ミミはせんといてな
“ミミ”: お嬢、わかったー! ミミはお嬢を悲しませない!
“アナスタシア”: ホンマ、ミミは偉い子やね ミミがそう言ってくれて、ウチは安心したわ
“ミミ”: ミミ、偉い子! お嬢、ぐしぐししてー!
“アナスタシア”: はいはい よしよし ミミはホンマええ子や
“スバル”: なんかすげぇ和む…… 死闘の後って感じがまるでしねぇな……
“フェネ”: それだけ、アナスタシア女史たちには、 まだ余裕があるということでしょう
“フェネ”: あの方々の助力があれば、 例の“こわいまもの”とも互角にやり合えるかと
“スバル”: ……あんだけの面子がいて、まだ“互角”なんだな?
“フェネ”: 左様です 互角以上とは口が裂けても言えません
“スバル”: そうか…… そりゃ、気を引き締めてかからねぇとな……
“アナスタシア”: それで、ナツキくん ナツキくんもなんかウチに話があったんやない?
“スバル”: いやいや、正式に同盟が締結できるなら、それで解決だ
“スバル”: 俺が話したかったことってのは、 要約すると同盟を正式に結んでほしいってことだったしね
ナレーター: 死闘の末、謎の男が放った『異形』を倒し、 ページを『禁書』へと封じたスバルたち
ナレーター: 当初、大量にやってくる『変異体』は、 複数のページの影響だと思われたが
ナレーター: テンミツを大きな危機に陥れた今回の騒動は、 たった一枚のページが原因だった
ナレーター: だが、この災いが転じて、 スバルたちはアナスタシアと正式な同盟を締結することに成功する
ナレーター: こうして、クルシュたちの陣営に加え、 アナスタシアの陣営が正式に戦力として加わったわけだが……
ナレーター: “こわいまもの”のページも含め、 未だ回収できていないページは多く
ナレーター: 世界の浄化を目指す謎の男の出現が、 スバルたちの行く末に暗い影を落とすのだった──

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Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■プロローグ タイトル:ガーディーからの手紙 更新日:2022/03/02

ナレーター: カララギ都市国家 第七都市テンミツ
ナレーター: ページが出品されるという闇オークションに、 アナスタシアと共に参加したスバルだったが
ナレーター: 突如現れた謎の男により、 出品されていたページをすべて落札されてしまう
ナレーター: それだけでも寝耳に水の出来事だったが、さらにその男は、 ページを譲り渡すよう交渉したスバルたちを嘲笑うように
ナレーター: 落札したページから『異形』を顕現させ、 テンミツを混乱の坩堝(るつぼ)に陥れたのだ
ナレーター: ユリウスや『鉄の牙』、そしてグステコ聖王国の 氷河都市アルビスから同行することになったリドアの協力により
ナレーター: なんとか謎の男が顕現させた『異形』を討伐し、 テンミツの混乱を収めることに成功したスバル
ナレーター: そんなスバルにアナスタシアは、 提案時には難色を示していた同盟締結について
ナレーター: 正式に申し出を受け入れる旨を伝えるのだった
“スバル”: ──にしても、 アナスタシアさんが正式に同盟をOKしてくれるなんて
“スバル”: 色々踏んだり蹴ったりだったけども、 悪いことばっかりじゃなくてよかったぜ
“スバル”: あいつがあんな暴挙に出なきゃ、 同盟自体がご破算になってたかもしれねぇし
“アナスタシア”: ホンマは、ナツキくんのとこは明らかに準備不足やったし、 同盟の締結にはかなり後ろ向きやったんやけど
“アナスタシア”: そんなことを言ってもおれん状況や
“アナスタシア”: ホンマ、同盟は遠慮したかったんやけど
“スバル”: うぐっ…… 止むに止まれず感が強すぎて、素直に喜べねぇ 確かに色々甘ちゃんだったけどさ!
“スバル”: アナスタシアさんには同盟のメリットを用意できなかったし、 オークションは完全に落札できる前提だった
“スバル”: あんな男が登場するなんて、マジ予想すらしてなかったもんな
“アナスタシア”: それについては、ウチも反省せなあかんね
“アナスタシア”: ウチがいながら……ホンマに悔しいわ……
“フェネ”: ですが、この町は守ることができましたよ、アナスタシア女史
“フェネ”: アナスタシア女史やユリウス氏、 リカード氏やミミ女史の協力あってこそです
“フェネ”: クソ上司のスバル氏は、クソの役にも立ちませんでしたから
“スバル”: いやいや俺だって……って、ホントだ!? 俺、クソの役にも立った覚えがねぇ!
“ミミ”: きゃはは! おにーさん、役立たずー!
“リカード”: そういや、兄ちゃんもおったんやな?
“スバル”: いたわ! 始めっから最後まで全部この目で見てたよ!
“スバル”: ってか、お前みたいな反応が、一番傷つくんだよ! 存在感なかったのは自覚してるから、あえて指摘しないでくれ!
“リカード”: すまん、すまん それだけワイも余裕がなかったってことやな ホンマ、しんどかったで
“スバル”: “余裕なかった”って、そんな感じには見えねぇぜ、リカード
“スバル”: 確かにしんどそうではあったけど、 今のお前からは、余裕みたいなもんを感じるよ、俺は
“ユリウス”: それについては、スバル、私には君もそう見えるのだが? 明らかに悲観して絶望している人間の言動ではない
“スバル”: それについては、お前やみんなのおかげだよ、ユリウス
“スバル”: 俺一人だったら、目の前が真っ暗になって、 きっと立ってるのも難しい状態だったと思う
“スバル”: でも、俺にはみんながいる しかもアナスタシアさんが、 正式に同盟をOKしてくれたんだからなおさらだ
“スバル”: アナスタシアさんは、信頼できる人だからね
“アナスタシア”: ふーん ナツキくんは、ウチを信頼してくれるんやね?
“スバル”: 同盟を断られたとき、俺はホントにショックだったんだ
“スバル”: けど、あの対応は、アナスタシアさんが、 ちゃんと約束を守る人だからだって思えたんだよ
“スバル”: 約束をちゃんと守るつもりだから、 同盟についても真剣に考えて、それで断ったんだってさ
“スバル”: だから、アナスタシアさんが同盟をOKしてくれたのは、 ホントにデカいっつーか
“スバル”: あの意味不明な男の登場はかなりのマイナスだけど、 そのマイナスを埋めてくれるぐらい効果が、俺にはあるぜ
“アナスタシア”: 信頼は、ウチが大切にしているものの一つやね
“アナスタシア”: 何を言うか?っていうんも大事やけど、 ウチは誰が言うのか?が重要やと思う
“アナスタシア”: 信頼がない相手が何を言っても、相手の心にはあまり響かんやろ
“フェネ”: なるほど だからスバル氏の言葉は、 フェネの心に響かないのですね
“スバル”: お前はそろそろ俺のことを信頼しよう! 色々苦楽を共にしてきたよね!
“フェネ”: スバル氏には“楽”もあったのかもしれませんが、 フェネには“苦”しかなかった故、それは難しいかと
“スバル”: いやいや、目を閉じれば、 お前にだってきっと俺との楽しい思い出が……
“フェネ”: 目を閉じるだけ、時間の無駄です、スバル氏
“フェネ”: そんなことより、アナスタシア女史との同盟締結の朗報を 早くエミリア女史やレム女史にお伝えするべきです
“スバル”: おっと、そうだった! 勝手に盛り上がってたけども、 肝心のエミリアたんがご存じじゃなかったね!
“スバル”: 急いで、エミリアたんに知らせてこよう!
“ユリウス”: アナスタシア様 あの男の捜索はいかがいたしましょう?
“アナスタシア”: 放っておくわけにはいかんわ ユリウス、リカード、戦いの後やけど、お願いしてええ?
“アナスタシア”: ミミも、もうひと頑張りしてくれると嬉しいわぁ
“ミミ”: お嬢、任せてー! ミミ、もうひと頑張りー!
“ユリウス”: はっ! 急ぎ、あの男を捜索いたします
“リカード”: ワイも探すで、お嬢 “疲れた”なんて言ってる場合やないのは明らかや
“リカード”: ほな、いくで、ユリウス、ミミ
“ミミ”: あーい!
“ユリウス”: では、アナスタシア様──
“レム”: スバルくん、アナスタシア様が 正式に同盟を受け入れてくださったというのは本当ですか?
“スバル”: ああ、本当だ
“スバル”: エミリアたんとレムが、 怪我した人たちに治癒魔法をかけてくれてる間に
“スバル”: アナスタシアさんと話す機会があって、 そのときに同盟締結を了承してくれたんだよ
“フェネ”: フェネもその場にいました アナスタシア女史との同盟の話は間違いありません
“エミリア”: ホントによかったわ アナスタシアさんとはもっと仲良くなりたかったもの
“スバル”: マジ、テンミツでは色々あったけど、 最後にいいことがあってよかったぜ
“スバル”: 『異形』は暴れたけど、エミリアたんやレムのおかげもあって、 大怪我で大変なことになった人もいないし
“スバル”: アナスタシアさんとは同盟を締結できたし、 “終わりよければすべてよし”って感じだよな
“レム”: そうであればいいのですが、本当に“終わり”なのでしょうか?
“エミリア”: 私もそう思うわ ページから『異形』を出した人は、まだ見つかってないんでしょ?
“フェネ”: エミリア女史やレム女史の懸念はもっともです
“フェネ”: “終わり”などとは気が早い “本番はこれからだ”と言わざるを得ません
“フェネ”: 幸い、ページを一枚封じることはできましたが、 あの男には他にも手持ちのページがある状態です
“スバル”: うぐっ…… 確かに“終わり”には程遠いな まだまだ気を引き締めねぇと
“フェネ”: 左様です、スバル氏 気を緩めるなど時期尚早 そのことを肝に銘じてください
“スバル”: わかった、肝に銘じとくよ “終わり”とか“最後”なんて口走っちまって悪かったな
“スバル”: ……それで、今回封じたページなんだけど、 どんなお話が書かれてたんだ?
“スバル”: 参考までに教えてくれ
“エミリア”: うん、私も知りたいわ、フェネ
“フェネ”: わかりました お話ししましょう 今回封じたのは『かねもちワッドン』という物語です
“スバル”: ……金持ちワッドン?
“フェネ”: 左様です あらゆるものを金で買おうとした愚かな人間の話です
ナレーター: それからフェネが語ったのは、 世界中のものを買いあさるワッドンという男の物語だった
ナレーター: ワッドンは大金持ちで、 世界のあらゆるものを金で買えると思っていた
ナレーター: どんなものにも値段を付け、強引に買い取るワッドン
ナレーター: やがて世界のすべてをワッドンは買い取ったが、 “満足”だけは買うことができなかった
“スバル”: 世界中を買い取るってのは、 いかにもフィクションって感じの話ではあるが……
“スバル”: あの男が使ったページがその『かねもちワッドン』ってところに、 妙な因果を感じちまうよ
“スバル”: “世界の浄化”なんてことをあいつは口走ってたけど、 そんなことを実現して、あいつは満足を得られるのかね
“スバル”: そもそもこの世界は、浄化が必要なほど、酷い状態か?
“スバル”: 俺が知る限り、結構いい人ばっかな印象があるぜ
“スバル”: まぁ、約一名、“いい人”とはとても思えねぇ奴がいるけど
“スバル”: エミリアたんなんて特に、 あいつのマイナスを埋めて余りある存在だしね
“フェネ”: 人が皆、エミリア女史やレム女史のような方であれば、 恐らく浄化など必要ないかもしれません
“フェネ”: ですが、そうではありません 残念ながら、エミリア女史やレム女史のような方は稀な存在です
“フェネ”: この嘆かわしい状況を解決する策として、浄化を行い、 一からやり直すというのは効率的な選択肢かもしれません
“スバル”: ゲームをやってるわけじゃねぇんだ!
“スバル”: うまくいかなかったからって、 リセットボタンを押してやり直すわけにはいかねぇだろ!
“スバル”: そもそも俺は、マジでやり直す必要性を感じねぇぜ!
“スバル”: 確かにエミリアたんやレムみたいな人は、 稀な存在なのかもしれない
“スバル”: でも、確かに存在してるし、結構な数のそういう人を俺は知ってる
“スバル”: たとえ今が嘆かわしい状態だったとしても、 きっといい方向に向かうはずだ! 浄化なんてしなくてもね!
“フェネ”: スバル氏、近いです 少し離れてください
“フェネ”: それに、フェネはあの男の立場に立って、言っただけです 今のはフェネの意見ではありません
“スバル”: フェネの意見じゃねぇって、なんだか実感こもってたぜ?
“スバル”: 何かっていうと人間批判みたいなことしてくるし さっきのはお前の本音なんじゃねぇのか?
“スバル”: お前はもしかしたら、あの男と近い感覚の持ち主なのかもな
“フェネ”: ──っ!
“エミリア”: ──言いすぎよ、スバル! フェネに謝って!
“スバル”: え、エミリアたん……?
“エミリア”: ごめんなさい、フェネ スバルが失礼なことを言っちゃって
“エミリア”: あの人とフェネは全然似てないわ
“エミリア”: あの人とは仲良くなるのがすごーく大変そうだけど、 フェネとはすぐに仲良しになれたでしょ?
“フェネ”: ありがとうございます、エミリア女史 フェネとエミリア女史は“仲良し”なのですね?
“エミリア”: えぇ!? 違うの? 私はてっきり……
“フェネ”: いえいえ、すみません、エミリア女史 あまりの嬉しさに思わず確認してしまっただけです
“フェネ”: エミリア女史が仲良しだと思ってくださっているのであれば、 フェネとしても嬉しい限りです
“レム”: レムもフェネさんと仲良しだと思っています それにきっとスバルくんも
“レム”: フェネさんと一緒にいるときのスバルくんは、 本当に楽しそうですから
“フェネ”: と、レム女史はおっしゃっています フェネに謝罪する機会ができて、よかったですね、スバル氏
“スバル”: 謝る気満々でも、その気が失せそうなパスをありがとよ、フェネ
“スバル”: けど……あいつに似てる的な言い方は、 あんま相応しい表現じゃなかったかもしれねぇ
“スバル”: 気を悪くしたなら謝るよ、フェネ
“スバル”: でも、お前が人間に対してすげぇ批判的だってのは、事実だと思う
“スバル”: 昔、なんかあったか? 意地悪な人間にいじめられたとかさ
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ?
“フェネ”: スバル氏はお忘れかもしれませんが、 フェネは記憶を失っています
“フェネ”: そんなフェネに、昔のことを尋ねるだけ時間の無駄 愚問中の愚問ですよ、スバル氏
“スバル”: 確かにそうだけども! そうとしか考えられねぇだろ!
“スバル”: お前は人間に対して恨みを持ってるはずだ
“フェネ”: 優秀なフェネは、浅はかで愚かな行いが嫌いなだけです そして、往々にして人とは浅薄愚劣(せんぱくぐれつ)な存在
“フェネ”: 故にフェネの発言が厳しめになるのではないでしょうか
“スバル”: うーん、なんかはぐらされた感じが拭えねぇけど…… 確かに記憶喪失の奴にあれこれ聞いても仕方ねぇか
“リドア”: 皆様、夕食の準備ができたとのことです
“スバル”: おお、ありがてぇ! すげぇ腹が減ってんだ!
“フェネ”: 競売に参加するもページを落札できず、 いざ戦いとなった際は見ていただけ
“フェネ”: そのような方でも空腹を覚えたりするのですね?
“スバル”: うるせぇー! 部屋に引きこもってたときだって、不思議と腹は減ったもんだ
“スバル”: あの頃の俺に比べりゃ、色々アクティブだったし、 この空腹感は俺としては納得だよ
“スバル”: 確かに、空腹に見合うだけの成果はなかったかもしれないけどさ!
“スバル”: とにかく、俺のことはいい
“スバル”: 色々頑張ったエミリアたんやレムは、 すげぇ腹減ってると思うし、急いで食堂へ向かおう
“エミリア”: うん、私、お腹がぺこぺこよ
“スバル”: “ぺこぺこ”ってきょうび…… なんて話は置いといて、さあ、みんな、食堂にいこうぜ
“スバル”: ──ということで、色々あった昨日が終わり、 新しい朝がやってきたわけだけど
“スバル”: 俺たちは何をするべきだと思う?
“スバル”: 出発自体はクルシュさんところに報告へ向かってる パトラッシュが戻ってからになると思うけど
“スバル”: 次の目的地も可能なら決めておきたい
“レム”: 例の男の捜索、それが最優先だとレムは思います
“エミリア”: うん、私もそう思うわ ページはすごく危険なものだし、ちゃんと渡してもらわないと
“フェネ”: あの男がこの町にまだいるとは限りません
“フェネ”: それにテンミツでの捜索は、アナスタシア女史の指示で、 リカード氏やミミ女史、ユリウス氏が行っています
“フェネ”: 効率を考えると、 フェネたちはすぐに出発できるよう準備を進めるべきです
“スバル”: 確かにテンミツに着いて早々出発したパトラッシュは、 そろそろ戻ってきそうな頃合いだけど
“スバル”: 行き先も決まってねぇのに、出発の準備も何もねぇだろ
“スバル”: 次の行き先が定まるまでは、 テンミツで例の男を探してもいいんじゃねぇかな?
“フェネ”: 記憶力が悪いスバル氏はお忘れかもしれませんが
“フェネ”: アナスタシア女史は、前回の競売が 第四都市フスミで行われていたとおっしゃっていました
“スバル”: ああ、確かに言ってたな、そんなこと
“スバル”: フスミって都市の周辺でも
“スバル”: 闇オークションが開催されたタイミングで、 盗賊どもの被害が頻発したんだよな?
“フェネ”: 左様です そしてそれは、その都市で非合法な競売が行われていた証
“フェネ”: その非合法な競売でも、 ページが出品されていた可能性は低くありません
“スバル”: つまり……次の行き先はフスミだって言いてぇのか?
“フェネ”: 左様です その都市へ向かう理由は十分にあります
“スバル”: “十分に”ってほどか?
“スバル”: 闇オークションがフスミで行われたのは前回で、 結構時間も経っちまってる
“スバル”: あの闇オークションには色んなとこから金持ちが集まるみたいだし
“スバル”: 仮にページを競り落とした誰かがいても、 すでにフスミにはいないんじゃねぇかな?
“フェネ”: では、逆に質問なのですが、 他の候補地に目星はついているのですか、スバル氏?
“スバル”: そ、それは……まったくついちゃいねぇけどさ……
“フェネ”: であれば、現時点で一番の目的地候補は、 やはり第四都市フスミということになります
“フェネ”: 急ぎ、出発の準備を──
“スバル”: 待て待て、どうして出発前提の話になってるんだよ?
“スバル”: フスミに向かうってのも選択肢の一つではあるけど 俺にはテンミツに留まって例の男を探した方がいいように思える
“スバル”: お前は、あいつがこの町にはいない可能性が高いって 思ってるみたいだけど、その根拠はなんだ?
“スバル”: あいつがこの町を出たって確証は得られてねぇんだし、 もうちょいテンミツを探してみたっていいだろ
“エミリア”: リドアちゃん? 入っていいわよ
“リドア”: 失礼します
“レム”: すみません、リドアさん いつも席を外してもらって……
“リドア”: いえ、気にする必要はありません リドの目的はスバルさんのお役に立つこと
“リドア”: 同席することがご迷惑の場合、 リドは喜んで席を外させていただきます
“スバル”: “迷惑”ってわけじゃねぇんだけど……
“フェネ”: 参加が必要というわけではありません リドア女史は、フェネたちの決定に従う立場と認識しています
“リドア”: その認識で合っています リドは意見をする立場にありません
“スバル”: けど、それだと和気あいあい感が薄いっつーか “一緒に頑張ろうぜ”って感じじゃないよね?
“スバル”: 一緒に『変異体』や『異形』と戦った仲だし、 正式なメンバー扱いでいい気がするんだけど
“エミリア”: そうね リドアちゃん、すごーく頑張ってくれたもの
“フェネ”: リドア女史の希望はどうなのですか? 今の状態に、疎外感があり、孤独を味わっているのでしょうか?
“リドア”: 疎外感はありませんし、孤独でもありません リドは扱いの変更を求めません
“スバル”: 言い方!? “扱いの変更”って表現はなんか切ねぇぜ
“スバル”: まぁ、“ありがた迷惑”って言葉もあるし、無理強いはしねぇけど
“スバル”: 寂しいって思ったらいつでも言ってくれ 俺ら的にはウェルカムだからさ
“リドア”: ……うぇるかむ?
“スバル”: ごめん、なんでもねぇ つい出ちまった故郷の言葉だよ
“スバル”: それで、どうしたんだ、リド? 俺たちに用があるんだよな?
“リドア”: スバルさんの地竜がルグニカから戻りました
“スバル”: 噂をすればってヤツだな! お疲れ様なパトラッシュの労をねぎらってやらねぇと!
“リドア”: それから、リドに師匠から手紙が届きました
“スバル”: ガーディーからリドに手紙……?
“リドア”: はい その手紙の中で師匠は、 スバルさんたちにフスミへ向かうよう言っています
“スバル”: ──っ!
“エミリア”: スバル
“レム”: スバルくん
“スバル”: これまたタイムリーな展開だな……
“スバル”: なんでまたガーディーは、 俺らにフスミへ向かうよう言ってるんだ?
“スバル”: そこんとこ、わかるようなら教えてくれ
“リドア”: 師匠は、スバルさんたちが探す『遺作』が、 フスミにあると言っています
“スバル”: ホント、タイムリーすぎて鳥肌もんだが、 次の目的地はフスミで決まりって感じだな
“レム”: はい、スバルくん 『禁書』のページがあるのであれば、 フスミ以外の行き先は考えられません

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_01

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■1話 タイトル:今一番大切なこと 更新日:2022/03/02

ナレーター: ──突如届いたガーディーからの手紙
ナレーター: その手紙でガーディーは、スバルたちに カララギ都市国家の第四都市フスミへ向かうよう伝えていた
ナレーター: また、フスミはフェネが強く向かうよう主張した都市でもあった
ナレーター: その理由は、前回闇オークションが開催されたのが、 そのフスミだったからだ
“アナスタシア”: ──ふーん ナツキくんらは、フスミに向かうつもりなんやね?
“スバル”: ああ 『禁書』のページがフスミにあるって情報が入った
“スバル”: 俺たちもテンミツで、 あの男を探したいって気持ちはあるんだけど
“スバル”: あんな奴が現れちまったわけだし、 一刻も早くページを回収しないといけねぇからさ
“アナスタシア”: せやけど、ページがあるっていう情報は、 信用できるものなんやろうか?
“スバル”: うぐっ…… それについてはなんとも言えねぇところがある…… 自信を持って“信用できる筋からの情報だ”とは言えねぇかな
“フェネ”: ですが、前回非合法な競売が開催されたのは、 第四都市フスミで間違いありません
“フェネ”: 確かにアナスタシア女史やクルシュ女史といった方々と違い 情報源に絶対的な信頼はおけませんが
“フェネ”: そのことも考慮すると、 やはり次に向かうべきはその都市になるかと
“アナスタシア”: なるほどや フェネさんがそう言うんやったら、 向かった方がええかもしれんね
“アナスタシア”: あの男に先にページを押さえられでもしたら一大事や それだけは絶対に防がなあかん
“エミリア”: うん、だから私たちもフスミに向かうことにしたの
“レム”: はい あの男にだけは先を越されるわけにはいきません
“スバル”: ……ところで、あの男の捜索はどんな感じだ? 何かしら手掛かりを掴めてるといいけど……
“アナスタシア”: それについてはさっぱりやね
“アナスタシア”: ウチの子らとユリウスが必死に探してくれてるんやけど、 手掛かりらしい手掛かりは見つかってないわ
“スバル”: すでにこの町を出ちまってる可能性が高そうなのか?
“アナスタシア”: それについてもなんとも言えんわ
“アナスタシア”: 手掛かりがないからってテンミツにいないって考えるのは、 あまりにも短絡的やと思う
“アナスタシア”: むしろウチは、まだあの男がこの町にいる気がしてならんわ
“スバル”: ……まだあの男がテンミツにいる? そう考える根拠はなんなんだよ、アナスタシアさん
“アナスタシア”: あの男はこの町を“浄化”するつもりやったわけやない
“スバル”: ああ 手始めにこの町からって感じだったな
“アナスタシア”: せやけど、結果はどうやった?
“スバル”: 見事に俺たちが阻止してやったぜ 大した怪我人も出てねぇし、“浄化”とは程遠い状態だ
“フェネ”: スバル氏が“俺たち”と表現することに、 大きな違和感が残りますが
“フェネ”: 確かにあの男は目的を果たせていません
“フェネ”: そしてそのことが、アナスタシア女史が あの男が留まっていると考える根拠というわけですね?
“アナスタシア”: まあ、そういうことやね
“スバル”: 確かにあれだけ大口叩いて、 この結果ってのは納得できかねるだろうな
“スバル”: あいつが顕現した『異形』は強敵で、 犠牲者が出ずに済んだのは運が良かった面もあるけど
“スバル”: 結果だけ見れば、 ホント、テンミツは被害なしって言ってもいい状態だ
“スバル”: あいつとしては、 ぎりぎり終幕を阻止する程度をイメージしてたんだろうけど
“スバル”: これだと世界の浄化の幕開けを感じるのは難しいもんな
“スバル”: このままテンミツを立ち去るのは、あまりにもかっこ悪すぎる
“スバル”: あいつがテンミツでもうひと騒動起こす可能性は、 俺も高そうな気がするよ
“エミリア”: つまり、どういうこと? あの人はまだテンミツにいるのかしら?
“スバル”: いる、って断言できると思う
“レム”: でしたらレムたちも、 この町に残り、あの男を探した方がいいかもしれません
“スバル”: 振り出しに戻っちまった感じだけど……
“スバル”: この町でもうひと騒動起きることが確定してるのに、 フスミへ出発するのは違う気がするな
“スバル”: もう少し様子を見てもいいかもしれない
“スバル”: フスミにあるかもしれないページは放っておけないけど、 今一番大切なのはあの男を取り押さえることだ
“スバル”: あいつは確実にあと五枚はページを持ってるわけだし
“フェネ”: 待ってください この町にはアナスタシア女史が率いる強力な戦力がいます
“フェネ”: ここはアナスタシア女史らに任せて、フェネたちは──
ナレーター: そのとき、フェネの言葉を遮るように、 ヘータローとティビーが駆け込んでくるのだった
“ティビー”: ──お嬢! 『異形』が出たです!
“ヘータロー”: 今、お姉ちゃんと団長とユリウスさんが戦ってるよ!
“スバル”: ──なっ!
“エミリア”: ──っ!
“レム”: ──っ!
“フェネ”: ──っ!
“アナスタシア”: それはホンマなん?
“ティビー”: 本当ですです!
“ヘータロー”: 団長からお嬢を守るように言われて、 ボクたちは急いで戻ってきたんだけど
“ヘータロー”: お姉ちゃんのこと、ちょっと心配だな……
“スバル”: ……フェネ、やっぱフスミいきは後回しだ それでいいよな?
“フェネ”: くっ…… やむを得ません……
“スバル”: 俺たちは急いでリカードたちの援護に向かおう!
“エミリア”: うん、向かいましょう、スバル!
“レム”: はい、スバルくん! 急いで向かいましょう!

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Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■2話 タイトル:完全なる筋違い 更新日:2022/03/02

“リカード”: ──いくで!
“異形”: ウガガガガッ!
“リカード”: ──嬢ちゃん、今や!
“エミリア”: 任せて! ──えーいっ!
“異形”: ウグッ!
“ミミ”: ミミもいくよー! それーっ!
“異形”: ウガッ!
“レム”: レムが相手です! ──はぁーーーっ!
“異形”: ウギギッ!
“レム”: ユリウス様 とどめはお任せします
“ユリウス”: 僭越ながら、その任、お受けいたします──
“ユリウス”: これで終わりだ!! ──はぁーーーーっ!!!
“スバル”: 見事な連携…… 前回の戦いの成果が出て、息もぴったりだったな
“フェネ”: はい、お見事でした 前回同様見ていただけのスバル氏とは大違いです
“スバル”: 今回も見てただけでごめんね!
“スバル”: けど、これであいつがこの町にまだ留まってるのは確定だな 手分けして探さねぇと……って、まずはページか?
“フェネ”: 左様です あの『異形』を顕現させたページがあるはず そちらを『禁書』に封じる必要があります
“スバル”: だな んで、そのページはいずこに?
“フェネ”: ……はて?
“スバル”: “はて?”じゃねぇよ! それ、お前の専門だよね?
“フェネ”: 申し訳ありません フェネにはページの場所はわかりかねます
“スバル”: え? ページの場所、わかんねぇの?
“フェネ”: 残念ながら……
“スバル”: 待て待て、それじゃどうやってページを回収すんだよ?
“フェネ”: 努力あるのみです
“フェネ”: ページがあるとすれば、ここからそう遠くない場所 皆様で手分けして探せば、あるいは……
“スバル”: 手分けして、しらみつぶしに探せってか? それはあまりにも非現実的すぎる
“スバル”: って、そういや『異形』が出たってのに、 お前はページを感知してなかったな?
“フェネ”: それについても残念ながら……
“スバル”: なあ、フェネ お前、本当に体調は大丈夫なのか?
“フェネ”: フェネの体調に問題はありません
“スバル”: そうか…… けど……
“フェネ”: スバル氏、今は行動するべきです あれこれ考えて立ち止まっている場合ではありません
“フェネ”: ここからそう遠くない場所にページがあることは確実 急いで探しましょう
“スバル”: いやいや、けど、それじゃあまりにもヒントが…… って言ってる場合じゃねぇな
“スバル”: 探さない限り、見つけられねぇ まずは探してみて、つべこべ言うのはそれからだ
“スバル”: よし、みんなで手分けしてページを探そう!
“スバル”: ──クソッ! ページのペの字もありゃしなかったじゃねぇか!
“スバル”: あんなに探したのに、どういうことだよ、フェネ!
“アナスタシア”: 落ち着くんや、ナツキくん イライラしたってなんも解決せんやない
“アナスタシア”: それに、フェネさんを責めるのも筋違いや
“スバル”: でも、事実フェネは──
“アナスタシア”: 確かにフェネさんはページを感知できんかった
“アナスタシア”: せやけど、ナツキくんはどうなん? ページを感知できたん?
“スバル”: いやいや、どうして俺の話になるんだよ、アナスタシアさん 俺にページが感知できるわけねぇだろ
“アナスタシア”: やったら“ページを感知できない”って点で、 ナツキくんもフェネさんも一緒やない
“アナスタシア”: せやのに、どうして、 フェネさんだけが悪者になってまうんやろう?
“アナスタシア”: そこのところ、納得がいく説明をしてもらってええ?
“スバル”: うぐっ…… そ、それは……
“フェネ”: アナスタシア女史、ありがとうございます
“フェネ”: ぐうの音も出ないスバル氏を見ることができ、 フェネはすっきりいたしました 本当にざまあないです
“アナスタシア”: それはそれでどうかと思うんやけど……
“アナスタシア”: ここにいるみんな、ナツキくん以外、 フェネさんを責める人はおらんから安心してな
“エミリア”: うん、フェネは悪くないわ
“リカード”: せやな お嬢が言う通り、感知できんかったのはワイらも一緒や
“ユリウス”: はい、フェネさんは悪くありません
“ユリウス”: そもそも、『異形』が強力化したことが、 フェネさんの感知能力に影響を与えているのかもしれない
“ユリウス”: だとしたら、フェネさんを責めるのは完全に筋違いだ
“フェネ”: 皆様……
“レム”: あの……スバルくん……その……
“スバル”: 言いたいこと言っていいぜ、レム 俺が間違ってた それは間違いねぇ
“スバル”: 感知してくれたら感謝しなくちゃいけなかったのに、 感知できないと責める感覚になっちまってたよ
“スバル”: 毎度毎度フェネが感知してくれてたから、 それが当たり前だって俺は……
“レム”: そうやって自分の間違いに気付けるスバルくんは、 本当に素敵だと思います
“レム”: 間違いは誰にだってあります 大切なのはその間違いに気付き、改めることができるかです
“スバル”: 気が付くことはできたけど、“改める”には至ってねぇ
“スバル”: だから、“素敵”なんて言葉は、俺にはもったいねぇよ 改めることができるまで、その言葉はとっておいてくれ
“レム”: わかりました
“レム”: でも、スバルくんならきっと、 すぐにその言葉を言わせてくれるはずです
“レム”: レムはそう信じています

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_03

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■3話 タイトル:あまりない猶予 更新日:2022/03/02

“フェネ”: スバル氏
“スバル”: おお、フェネか? 入ってくれ
“フェネ”: スバル氏、少しよろしいでしょうか?
“スバル”: ああ、もちろんだ 色々至らない点があって、悪かったな、フェネ
“フェネ”: フェネに謝罪するのであれば、 スバル氏がフェネを訪ねるのが筋なのでは?
“フェネ”: このようにフェネに足を運ばせる点は、 改めてもらいたいものです
“スバル”: いやいや、いっていいのかよ、女子部屋?
“スバル”: 俺としては麗しのエミリアたんがいる女子部屋に、 足を運びたい気持ちはすげぇあるけど
“スバル”: 頑張って自重してるんだぜ?
“フェネ”: 本当にスバル氏はクソ上司ですね フェネに謝罪する気持ちがあるとはとても思えません
“フェネ”: ですが、やはりスバル氏が部屋にきては、 エミリア女史も迷惑だと思うので
“フェネ”: これまで通りフェネが足を運ぶことにします
“スバル”: チッ……
“フェネ”: 謝罪する分際で、今、舌打ちをしましたか、スバル氏?
“スバル”: いやいや、してないしてない! 女子部屋にいく口実がなくなって、がっかりはしたけども!
“フェネ”: はぁ……
“スバル”: ははは なんだか、お前が俺の部屋にきたときの こんなやり取りもすっかり恒例になった感じだな
“フェネ”: 確かにそうですね フェネはまったく望んではいませんが
“スバル”: まぁ、そう言うなって なかったらなかったで、 きっとお前も寂しく感じるはずだからさ
“スバル”: それで、フェネ、なんの用だ? 俺からの謝罪を聞きにきたってわけでもねぇんだろ?
“フェネ”: 左様です これからのことについて、 スバル氏ともう一度しっかりと話をしたいと思います
“スバル”: お前としては、フスミにすぐにでも出発したいって感じか?
“フェネ”: 左様です この町には信頼に足るアナスタシア女史がいます
“スバル”: それはそうかもしれねぇけど、俺としてはもう少し様子を見たい あいつがこの町にいるのは確定だしさ
“スバル”: それに、エミリアたんやレムだって、 もう少しここに留まるべきだって考えだったじゃねぇか
“フェネ”: 確かにそうですが、あのお二人を説得するのは、 スバル氏ほど骨は折れません
“スバル”: それで、まずは俺のところにきたわけか
“スバル”: でも、今んとこ、考えを変える決定打はねぇ感じだ あの男をどうにかするのが最優先な気がしてならねぇ
“スバル”: それに……
“フェネ”: それに、なんです? スバル氏、言いたいことがあるなら言ってください
“スバル”: いや…… その…… フェネが最近ページを感知できてねぇっていうか……
“スバル”: 仮にフスミにページがあったとして、 そいつを見つけて『禁書』に封じられねぇ可能性が……
“スバル”: もちろん、お前を責めてるってわけじゃねぇんだけど……
“フェネ”: なるほど いつもはうっとうしいぐらいに前のめりなスバル氏が、 今回はそうではない理由を理解しました
“フェネ”: ですが、それは余計な心配です フェネはページを感知してみせます
“スバル”: いやいや、事実最近はそういうケースが続いてるじゃねぇか
“スバル”: その理由が『異形』の力が強力になったからってなら、 フスミにあるページにだってあてはまる可能性がたけぇ
“フェネ”: では、フスミにあるページは放っておくのですか?
“スバル”: そうとは言ってねぇだろ 俺はまずはテンミツであの男を捕まえようって言ってるだけだ
“スバル”: その後でフスミへは向かえばいい
“スバル”: ページを回収して『禁書』に封じるって目的は変わってねぇし、 全部のページを『禁書』に封じるのが俺たちの最終目標だ
“スバル”: けど、落ち着いてその目標に向かうためにも、 あいつは排除しておくべきだろ
“フェネ”: スバル氏 フェネたちがテンミツに残れば、 あの男を捕らえられるのでしょうか?
“スバル”: どういう意味だよ、それ
“フェネ”: 言葉通りの意味です 事実我々は、あの男を取り逃がし、足取りすら掴めていません
“フェネ”: フェネの感知能力を疑いたくなる気持ちはわかりますが
“フェネ”: この町に残ればあの男を捕らえられるという考えは、 あまりにも短絡的です
“スバル”: くっ…… 確かに……
“スバル”: あいつは捕まえられねぇ フスミにあるページもあいつに先を越される
“スバル”: そういう最悪な未来もありえるわな
“フェネ”: 第四都市フスミにページがあるという情報は、 ガーディー氏でも知り得た情報です
“フェネ”: あの男が知らないはずがありません
“スバル”: けど、あいつはまだテンミツにいる それは俺たちが先にページを回収するチャンスかもしれねぇ
“スバル”: いや…… でも……
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: わりぃ、フェネ、もう少しだけ考えさせてくれ
“スバル”: お前の言いたいことはすげぇわかった でも、踏ん切りがつかねぇんだ
“フェネ”: わかりました……
“フェネ”: ですが、考えている時間はあまりありません スバル氏、それだけは確かです

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_04

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■4話 タイトル:昨日までは 更新日:2022/03/02

“フェネ”: ──スバル氏 結論は出ましたか?
“スバル”: えっと、それは……
“エミリア”: スバルはどうするのがいいと思う? 私はスバルの意見が聞きたいわ
“レム”: はい レムもとても聞きたいです こういうとき、スバルくんの意見はとても参考になりますから
“スバル”: エミリアたん、レム……
“リドア”: すみません
“スバル”: リド、入ってもらって大丈夫だ
“リドア”: では、失礼します
“リドア”: 皆様、アナスタシアさんの使いの方がいらっしゃいました
“スバル”: ……アナスタシアさんからの使い?
“リドア”: はい 急ぎきてほしいと スバルさんたちに伝えるよう頼まれました
“スバル”: もしかしてあの男を見つけたのか?
“リドア”: リドに聞かれてもわかりません 頼まれた伝言は“急ぎきてほしい”というものだけです
“スバル”: その伝言を伝えるときの様子はどうだったんだ? 明るい感じだったとか悲壮感が漂ってたとか、そういうのは
“リドア”: ……明るい感じ? ……悲壮感? それは重要なことなのでしょうか?
“スバル”: 雰囲気で、いい知らせなのか、悪い知らせなのか、 だいたい察しがつくだろ
“スバル”: そういうのがわかると、 色々心の準備もできるし、助かるんだよ
“リドア”: なるほど、そういうものなのですね 覚えておきます
“リドア”: ただ、“明るい感じ”や“悲壮感”というものについて、 具体例を挙げてご説明願えないでしょうか?
“リドア”: スバルさんのお役に立つために、 リドはしっかりと理解したいと思います
“スバル”: 根本的すぎて、何気に難しいお願いだよ、それは!
“スバル”: 急いできてほしいって頼まれてるときに、 それを叶えてあげるのは難しいかな!
“リドア”: そうですか……
“エミリア”: ごめんなさい、リドアちゃん
“エミリア”: 本当に急いで、 アナスタシアさんのところへいった方がよさそうなの
“レム”: はい レムもそう思います 急ぎ、アナスタシア様のところへ向かいましょう
“フェネ”: フェネも同意です スバル氏、急ぎましょう
“スバル”: ああ ジャージから着替えてぇ気持ちはあるが、 そんな時間はなさそうだ
“スバル”: みんな、すぐに出発しよう!
“スバル”: ──こんな格好で失礼するぜ、アナスタシアさん 非礼は承知だが、早さを優先させてもらった
“アナスタシア”: それでええよ、ナツキくん 時間は大切や それにホンマ急いだ方がよさそうやし
“エミリア”: それで、アナスタシアさん どうして私たちは呼ばれたのかしら?
“アナスタシア”: ウチらはまんまとやられてもうてるのかもしれん そう思ったんや
“スバル”: ……まんまとやられてる?
“アナスタシア”: そうや、ナツキくん
“アナスタシア”: ナツキくんらがまだテンミツにおるんが、何よりの証拠や
“アナスタシア”: フェネさんが言っとったけど、 ナツキくんらは一刻も早くフスミへ向かうべきやね
“スバル”: 待て待て、なんだって急にそんな話になる?
“スバル”: あの男がこの町にいるのは確実 まずはあいつをどうにかするべきだろ?
“アナスタシア”: “確実”やって? その根拠はなんなん?
“スバル”: 事実『異形』が出たじゃねぇか ありゃ、あいつの仕業としか考えられねぇ
“アナスタシア”: やったら、昨日まではおったんやろうね
“スバル”: ……昨日までは?
“アナスタシア”: あの『異形』の出現が、 ナツキくんらをテンミツに留めるためやとは考えられへん?
“ユリウス”: 昨日の『異形』は強敵だったが、 前回倒した『異形』には劣っていた
“スバル”: ……え? そうなの?
“レム”: はい、スバルくん レムもそう感じました
“スバル”: 俺はみんなの連携がスムーズになったから、 前回より楽に倒せたんだと思ってたよ
“レム”: 確かにそれもあります ですが、やはり昨日の『異形』からは、 前回の『異形』のような強さは感じませんでした
“スバル”: アナスタシアさんの言う通り、昨日の『異形』が、 俺たちをテンミツに留めるための捨て駒だったとしたら
“スバル”: 色々納得はできるな
“スバル”: あいつは“かっこ悪い”なんてことを 気にするような奴じゃなくて
“スバル”: テンミツがどうなるかなんて、 あいつにとってはどうでもいいってことになるけど
“フェネ”: あの男の目的は世界の浄化です この町などいつでも滅ぼせると思っているのかもしれません
“フェネ”: それに……
“スバル”: それに、なんだよ、フェネ?
“アナスタシア”: もしかしてフェネさんは、 あの男が単独で動いてるんやないって考えたんと違う?
“フェネ”: 左様です、アナスタシア女史
“フェネ”: フェネたちはあの男のみを意識していますが、 本当にそれでいいのでしょうか?
“フェネ”: 世界の浄化……単独で成すには、大きすぎる目標です

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_05

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■5話(中編) タイトル:ずっと仲良く 更新日:2022/03/02

“スバル”: ──あいつには仲間がいるのか?
“フェネ”: 可能性の話です
“アナスタシア”: せやけど、その可能性は折り込むべきやね
“スバル”: だとすると、昨日あいつがこの町にいたかだって、 定かじゃねぇな
“スバル”: いや、あいつがこの町にいたとしても、 別の仲間がすでにフスミに向かってるかもしれねぇ!
“アナスタシア”: その通りや、ナツキくん
“アナスタシア”: ナツキくんらはテンミツをウチらに任せて、 フスミに急いだ方がええと思う
“スバル”: クソっ! クソっ! クソっ! なんなんだよ、あいつはっ!
“スバル”: 言われてみれば確かにそうだけど、 そんなこと思いつかないぐらい、あいつの存在感は強烈すぎだ!
“スバル”: しかも、それ自体が、 あいつの狙い通りって可能性まであるじゃねぇか!
“スバル”: 闇オークションで手玉に取られて、 また同じ失敗をしちまったってのか?
“アナスタシア”: それについては、挽回可能やってウチは考えてるよ
“フェネ”: 左様です 恐らく、挽回はまだ可能でしょう
“スバル”: ……まだ挽回が可能?
“アナスタシア”: そうやね ──ユリウス
“ユリウス”: はっ、アナスタシア様
“ユリウス”: スバル フスミまで、私が同行させてもらおう
“ユリウス”: 私は一旦ルグニカに戻るが、 フスミであれば同行してもさして遠回りにはならない
“スバル”: そりゃ、確かに心強くはあるが…… って、だからお前が同席してたのか?
“スバル”: リカードやミミは見当たらねぇのに、 どうしてお前が同席してるのかって不思議だったんだ
“スバル”: けど、その謎が解けたぜ
“アナスタシア”: ウチの子らは町の警戒に当たらせてるわ いつ何が起こるかわからん状況やしね
“スバル”: でも、いいのか? アナスタシアさんにとって、ユリウスは貴重な戦力だろ
“アナスタシア”: ナツキくんは、もう忘れてもうたん? ウチとエミリアさんとこは同盟を結んだんやよ
“アナスタシア”: 最大限の協力をさせてもらうつもりやし、 ユリウスを貸すんはその証みたいなもんやね
“エミリア”: ありがとう、アナスタシアさん ユリウス、よろしくね
“ユリウス”: エミリア様、こちらこそよろしくお願いします お役に立てるよう尽力させていただきます
“レム”: よかったですね、スバルくん ユリウス様に同行していただけるのであれば、とても心強いです
“スバル”: 確かにそうだけど、少しエミリアたんから離れてもらっていい? エミリアたんの半径一メートル以内には入らないでくれ
“ユリウス”: それだと、エミリア様に何かあった際、 お助けすることが難しくなってしまう……
“アナスタシア”: ユリウス まともに受け合わんでええよ そもそもそんなこと言う権利、ナツキくんにはないんやから
“エミリア”: ホントにそう スバル、ユリウスを困らせることは言っちゃダメ いい?
“スバル”: ユリウス、てめぇ! お前のせいで、エミリアたんに怒られたじゃねぇか!
“ユリウス”: 今のを私のせいにするのは、さすがに無理がある
“ユリウス”: スバルが余計な一言を言わなければ、 そのようなことにはなっていないはずだ
“フェネ”: ユリウス氏 それがスバル氏です 旅をご一緒するのであれば、慣れておいた方がいいでしょう
“フェネ”: このようなことは日常茶飯事 スバル氏が発する言葉のほとんどが そのような内容だと肝に銘じてください
“アナスタシア”: ふふふ 確かにそうやね
“アナスタシア”: ユリウスは真面目すぎるところがあるし、 ナツキくんと旅をするのはええ経験になるかもしれんね
“アナスタシア”: それでな、旅で起こった面白いことを、 色々話してもらえると嬉しいわぁ
“アナスタシア”: ナツキくんとユリウスが一緒に旅するんやから、 面白いことが起きんわけないと思うし
“スバル”: おいおい、ユリウスを俺たちに貸してくれるのは、 あくまで同盟の証ってことでいいんだよな?
“スバル”: 珍道中エピソードの量産が目的じゃなくて
“アナスタシア”: えぴそうど?ってのはわからんけど、 それで間違ってないよ、ナツキくん
“アナスタシア”: それに、まだ正式に王選が始まったわけやないし、 いつまでもユリウスをウチらの元に置いてはおけんしね
“アナスタシア”: ついでにユリウスには、 クルシュさんのとこにも、顔を出してもらうつもりや
“スバル”: ……クルシュさんのとこにも?
“アナスタシア”: エミリアさんとことの同盟は、 もともとクルシュさんが言い出したことやない
“アナスタシア”: ウチとしては、そんなクルシュさんの思惑に、 乗ってあげたって側面もあるわけや
“スバル”: つまり、同盟の件を、クルシュさんへの貸しにするなりして、 何かしらうま味を引き出そうってわけか?
“アナスタシア”: 本来やったら、ナツキくんらが用意せなあかんのやけど、 ホンマ、手ぶらできたみたいなもんやったからね
“アナスタシア”: ウチとしては、 せめてクルシュさんのところからはって気持ちやね
“スバル”: うぐっ…… 俺の準備不足が、クルシュさんとこまで影響しちまうとは……
“スバル”: けど、ユリウスの同行は、 単純に“同盟の証”ってわけでもないじゃねぇか
“スバル”: 珍道中エピソードの収集に、 クルシュさんのとこからのうま味引き出し
“スバル”: そもそも帰り道の途中だから一緒にきてくれるわけだろ?
“フェネ”: それは違います、スバル氏 フェネはアナスタシア女史の誠意をとても感じています
“フェネ”: アナスタシア女史の最大の目的が、 フェネたちの戦力増強にあることは明らか
“フェネ”: その他のことは、どうせそうするならと 後から追加された要件に他なりません
“フェネ”: 確かにユリウス氏は王都に戻る必要はありますが、 今すぐでなくても構わないはず
“フェネ”: あの男の脅威を払拭できぬこの状況で
“フェネ”: ユリウス氏を戦力からはずすという決断には、 勇気が必要だったと推測できます
“フェネ”: そもそも何も言わずに勘違いさせておけばいいものを アナスタシア女史は自ら種を明かしたのです
“フェネ”: それが何よりの証拠だとフェネは考えます
“スバル”: お、おお…… 確かに言われてみればそうだな けど……
“フェネ”: “けど”なんです?
“スバル”: アナスタシアさんについて、お前が熱く語ったのが、 なんだか違和感っつーか
“スバル”: お前、他人のためにそんなに熱くなれる奴だったけ?
“フェネ”: なるほど 確かにそうですね フェネとしても少し意外です
“フェネ”: ですが、アナスタシア女史の誠意が、 スバル氏に誤解されている状況を看過できませんでした
“フェネ”: もしかしたら、ページを感知できなかったフェネを
“フェネ”: アナスタシア女史が、スバル氏のように責めなかったことが 影響しているのかもしれません
“フェネ”: それどころか、フェネを責めるスバル氏を アナスタシア女史はたしなめてくださいました
“フェネ”: 本当にあのときのスバル氏は……! 今思い出してもむかっ腹が立ちます
“フェネ”: 二、三発殴らせてもらっていいでしょうか?
“スバル”: 待て待て! 暴力には反対だ! あの態度には反省が必要だけどさ!
“アナスタシア”: なんや、ウチには心強い味方ができたみたいやね
“スバル”: ホント、そうみたいだよ 王選が始まりゃ、敵同士ってのに、まったく……
“アナスタシア”: フェネさんやったら大歓迎やし、 いつでも寝返ってくれて構わんよ、ウチは
“スバル”: 言い方! “寝返る”なんて縁起でもねぇこと言わないでくれ!
“エミリア”: フェネ、アナスタシアさんのところへいったとしても、 私とはずっと仲良くしてね
“スバル”: エミリアたんも、送り出す感じにならないでよ!
“スバル”: 一緒にフェネがアナスタシアさんのとこへいくのを阻止しよう! 原因を作った俺が言うのもなんなんだけど!
“レム”: レムも頑張って阻止します フェネさんがいない生活なんて考えられません
“フェネ”: 皆様……
“ユリウス”: 一つ、気になったのだが……
“スバル”: ユリウス、それは大事なことか?
“スバル”: 今、フェネを取られねぇように 頑張らないといけねぇとこなんだけど
“ユリウス”: ふと、『禁書』にすべてのページを封じた後、 フェネさんがどうするつもりなのか気になったのだ
“ユリウス”: 『禁書』の件が解決すれば、程なく王選は始まるだろう だが、そのときフェネさんは……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_06

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■6話 タイトル:フェネはそういう奴 更新日:2022/03/02

ナレーター: アナスタシアと会ったスバルたちは、 急ぎ準備を行い、その日のうちにフスミへ向けて出発するのだった
“スバル”: ──ユリウスがとんでも質問をぶっこんだせいで、 なんだかあやふやになっちまったんだけど
“スバル”: そういや“まだ挽回できる”って件について、 俺としては納得感が乏しいってのが本音だ
“スバル”: 確かにユリウスが加わったことで、 俺たちの戦力は上がったけどさ
“フェネ”: 本当にわからないのですか、スバル氏?
“スバル”: ああ、わからないね 俺たちは出遅れた可能性が高い どうやって挽回するんだよ?
“エミリア”: ページを見つけるのはすごーく大変なことでしょ? でも、フェネなら見つけることができるわ
“ユリウス”: 私も同じ考えです、エミリア様
“ユリウス”: フェネさんの感知能力はかなりの武器になる 多少の遅れであれば、すぐに挽回できるはずだ
“ユリウス”: アナスタシア様も恐らく同じ考えでしょう
“スバル”: いやいや、今はフェネの感知能力はあてにできねぇだろ
“スバル”: 『異形』が強力化したことが影響してるんじゃねぇかって、 お前も言ってたじゃねぇか
“ユリウス”: 確かにそうだ だが、今回はあてはまらない可能性が高い
“スバル”: ……あてはまらない可能性が高い? そりゃまたなんで?
“ユリウス”: 理由はフェネさんだ フェネさんからはページを感知できるという自信を感じられる
“ユリウス”: そして、その前提に立つと、 足りないものは不測の事態が発生した際の戦力だけ
“ユリウス”: こうして私が同行したことで、その問題も解決しているはずだ
“スバル”: “フェネの自信”って…… “今回は感知してみせる”ってフェネも言ってたけどさ……
“スバル”: とはいえ、そういう前提に立たなきゃやってられねぇか 後ろ向きな気持ちのままじゃ前進できねぇし
“フェネ”: スバル氏 皆様はそのような理由で フェネの力を信じたのではないと思います
“スバル”: え?
“フェネ”: 皆様は、その言葉通り、 フェネがページを感知できると信じてくれています
“エミリア”: うん いつもフェネはページを見つけてくれたし、 “できないこと”を“できる”とは言わないもの
“スバル”: うっ……
“スバル”: そういやそうだったな お前は“できないこと”を“できる”とは言わない奴だ
“スバル”: そもそも今の状況で、できないことをできるなんて言う意味がねぇ
“スバル”: そんなことをしてもただの気休めにしかならねぇし、 なんの解決にもならねぇ
“スバル”: そして、俺が知るフェネは、そういうことをもっとも嫌ってたよ
“フェネ”: 左様です、スバル氏 何故フェネは、 できないことをできると言う必要があるのでしょうか?
“フェネ”: そのようなことをしても、事態が悪化するだけだというのに
“スバル”: そう言われりゃ、ホントそうだ つまり、できるんだな?
“フェネ”: 無論です フスミでのページ感知にフェネは自信があります
“フェネ”: ただし、急ぐ必要があります
“フェネ”: フェネの感知能力がうまく発揮できなかったのには、 あの男が影響しているかもしれません
“スバル”: つまり、あいつが何かして、 その影響で感知できなかったってことか?
“フェネ”: そういう可能性がある 今はそうとしか言えません 正直なところ感知できなかった理由はわかりかねます
“フェネ”: ですが、『異形』が強力化したのは、 今に始まった話ではありません
“フェネ”: フェネなりに検討しましたが、 感知できていたときと感知できなかったときの違いは
“フェネ”: あの男が近くにいたかどうかです
“スバル”: 確かに、フェネが感知できなかったときは、あいつが近くにいたな
“スバル”: これまでも、精度が高いってわけじゃなかったけど
“スバル”: 『異形』が出現するような状態のページは、 必ず発見できてた気がするよ
“スバル”: あいつのせいで、フェネの感知能力が うまく機能しなかった可能性は高そうだ
“スバル”: なんだかあいつは、ページから自在に 『異形』を顕現させてた気もするし
“スバル”: 特別な力とかがあるのかもしれねぇな
“フェネ”: それについては、“特別な力”というわけではありません 魔法の心得がある程度あれば、可能だと推測します
“フェネ”: 例えばロズワール氏などには、 同じことができるのではないでしょうか
“スバル”: ロズワールに同じことが?
“フェネ”: 左様です ページにマナを供給することができれば、 『異形』を顕現させることは可能です
“スバル”: ラインハルトはマナの吸収を阻害するみたいなことを フェリスは言ってたけど、その逆ってことか
“スバル”: ページにマナを送り込むようなスキルがあれば、 あいつみたいにページから『異形』を出せるってわけだ
“フェネ”: 左様です ラインハルト氏のような方は、かなり稀だと思いますが
“フェネ”: ページにマナを送り込めそうな方は、 ロズワール氏以外にもいらっしゃるかと
“フェネ”: かくいうフェネにも可能です
“ユリウス”: 確かにフェネさんから私はマナの供給を受けた あの要領でページにマナを送るわけですね
“フェネ”: 左様です 誰でも可能というわけではありませんが
“フェネ”: エミリア女史やレム女史も、 訓練をすればできるようになるかもしれません
“スバル”: なるほど…… ページがかなりやべぇもんだって改めて思い知らされたよ
“スバル”: あいつに限らず、悪意ある誰かが、 ページから『異形』を顕現させちまうかもしれねぇ
“スバル”: そんな危険なもんは、とっとと回収しちまわねぇと
“フェネ”: 左様です、スバル氏 急ぐ必要があります
“フェネ”: そして、あの男がそこにいないのであれば、 フェネがページを感知できる可能性は格段に上がります
“スバル”: くっ…… 俺がフェネを信じて、もっと早く決断してたら……
“スバル”: 昨日あいつはテンミツにいたかもしれねぇけど、 すでにフスミに向かってるかもしれねぇ
“スバル”: だからお前はずっと、フスミに出発するよう俺に言ってたんだな
“フェネ”: 過ぎたことを言っても、意味はありません
“フェネ”: それに、まだ間に合うかと ギリギリではありますが、フェネはそう感じています

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_07

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■7話 タイトル:思わぬ嫌疑 更新日:2022/03/02

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車と
ナレーター: パトラッシュは一路 カララギ都市国家の第四都市フスミを目指していた
“ユリウス”: ──すまない、スバル 私は一つ確認したいことがある
“スバル”: ん? 確認したいことってのは何だよ、ユリウス
“ユリウス”: フスミにページがあることをスバルたちが知った経緯だ
“ユリウス”: 私はアナスタシア様から、 スバルたちが誰かから情報を得たらしいとしか知らされていない
“ユリウス”: そしてその者は、スバルが言うには
“ユリウス”: あまり信用できる人物ではないとも アナスタシア様は言っていたのだが、それは本当だろうか?
“スバル”: あっ、確かに、あんときユリウスはいなかったな
“フェネ”: はい あの場にはフェネたちとアナスタシア女史しかいませんでした
“スバル”: ってことは、色々知らねぇことがあるな、ユリウスには
“ユリウス”: ああ、その通りだ そして、私はスバルたちが得た情報の出所が気になっている
“ユリウス”: 無論、フスミは前回例の非合法な競売が開かれた地 向かうこと自体は問題ないと思っている
“ユリウス”: だが、できるだけ詳しく情報がほしい 万が一に備えるためにもだ
“エミリア”: リドアちゃんがもらった手紙に、 そう書いてあったのよ、ユリウス
“ユリウス”: ……リドアさんが受け取った手紙に?
“リドア”: はい 師匠から送られてきた手紙には、 スバルさんたちにフスミへ向かうよう書かれていました
“リドア”: フスミに『遺作』がある、と
“ユリウス”: 『遺作』……つまり『禁書』のページがあると、 その手紙には明記されていたわけですね?
“リドア”: はい
“ユリウス”: すみません、リドアさん そちらのお手紙を拝見させていただいてもよろしいでしょうか?
“リドア”: …………
“スバル”: 待て待て 手紙を見せろってのは、 ちょっとデリカシーに欠けるんじゃねぇか、ユリウス
“スバル”: そもそも他人が見ることを前提に書かれてない場合がほとんどだ プライバシー保護っつーか そういうのは色々問題があると思うぞ
“ユリウス”: すまない、スバル 君が言ったことがあまり理解できなかったのだが?
“スバル”: だから、他人の手紙を見るってのは、 すげぇ失礼にあたるって言ったんだ
“フェネ”: ですが、確かに何が書かれていたかは気になります
“フェネ”: 『禁書』のページについて、 それ以外の情報が書かれていた可能性があるかと
“フェネ”: それに……
“スバル”: それに、なんだよ? お前、リドが嘘言ってるとでも言いてぇのか?
“ユリウス”: その可能性は否定できない
“ユリウス”: 少なくともリドアさんしか手紙の内容を知らないのだ なんとでも言うことは可能だろう
“スバル”: フスミにページがあるなんて書いてなくて、 リドが俺たちをフスミへ向かわせるために嘘をついたってか?
“スバル”: そんなわけねぇだろ! そもそもそんなことをしなくちゃいけねぇ理由が見当たらねぇ!
“ユリウス”: スバル、君は情報源を信用できないと評していた そこにはそれなりの理由があったはずだ
“スバル”: いや……まぁ……確かにガーディーって奴は、 すげぇ胡散臭い奴ではあるけど……
“フェネ”: そのガーディー氏がフェネたちに託したのが、リドア女史です
“フェネ”: ユリウス氏の申し出はまっとうなものであり、 スバル氏の態度はとても矛盾しています
“フェネ”: ガーディー氏は信用ならないのに、 スバル氏はリドア女史のことは信じるのですか?
“スバル”: うぐっ…… そ、それは……
“ユリウス”: 私としても女性に無理強いするつもりはありません ですが、もし可能であるなら、お見せいただけないでしょうか?
“ユリウス”: 内容を確認させていただければ、あなたへの嫌疑も晴れます
“スバル”: ユリウス、てめぇ! “嫌疑”ってなんだよ! まるで容疑者扱いじゃねぇか!
“エミリア”: ユリウス リドアちゃんは悪い子じゃないわよ
“ユリウス”: エミリア様 テンミツでは共に戦った仲、私もそう思っています
“スバル”: ハッ! 笑わせんなよ、ユリウス! 俺にはそう思ってる奴の態度には見えねぇぜ!
“ユリウス”: ──それについては、君にも責任があるはずだ、スバル
“スバル”: ……え?
“ユリウス”: アナスタシア様も含めて、リドアさんに関する情報を 我々にはほとんど話してくれていない
“スバル”: それは……順番的にクルシュさんたちにちゃんと知らせて それからアナスタシアさんたちにもって思ってたんだ
“スバル”: それに、同盟交渉に余計な情報はない方がいいと思って……
“スバル”: 別に秘密にしようって思ってたわけじゃねぇ 時がきたらちゃんと話すつもりで……
“ユリウス”: だが、結果的に我々は知らされていない
“スバル”: くっ…… お前が俺たちに同行した理由には、 リドの調査ってのも含まれてたんだな
“スバル”: あんときアナスタシアさんはおくびにも出さなかったけど、 だからお前は俺たちに同行したんだ
“スバル”: まったく、抜け目ねぇアナスタシアさんらしいぜ……
“ユリウス”: あの場でその話題を出せば、私の同行に君は反対したかもしれない ……いや、きっとしただろう
“スバル”: 当り前だ! 仲間が疑われてんだぞ! 実際今、すげぇ気分わりぃし
“リドア”: ……リドは仲間ですか?
“スバル”: ああ、もう仲間みてぇなもんだろ リドには色々助けられた
“スバル”: お前と一緒に旅をしてないユリウスはわかっけど、 フェネまでユリウス側なのが悲しいぜ
“フェネ”: 悲しがるのは勝手ですが、 リドア女史から手紙を見せてもらえればすべて解決します
“スバル”: 確かに“嫌疑”とやらは晴れるだろうな
“スバル”: けど、嫌疑が晴れたとしても、 お前がリドを疑ったっていう事実は変わらねぇ
“スバル”: 全部をなかったことにして、ノーサイドってわけにはいかねぇよ
“ユリウス”: スバル、“のうさいど”とは?
“スバル”: すげぇ、崇高な考え方だよ
“スバル”: 試合が終われば、笑顔で握手して、 敵味方に分かれて戦ってたことをなしにするんだ
“スバル”: 試合中のいざこざなんかも、試合後には持ち越さねぇ
“ユリウス”: それはとても良い考え方だな のうさいど……覚えておこう
“スバル”: 俺も頭ではわかってるんだ でも、それを実践するのはかなり難しいな
“ユリウス”: スバル 君は本当にリドアさんを信じているのか?
“スバル”: はっ? どういう意味だよ、そりゃ
“フェネ”: リドア女史のことを信じているのであれば
“フェネ”: 手紙を見ることに反対する必要はないと、 ユリウス氏は言っているのです
“フェネ”: むしろ、事実を知ることが怖くて、手紙を見ることから スバル氏が逃げているようにフェネには感じられます
“スバル”: ──なっ!
“リドア”: スバルさんのお役に立てるのであれば、 リドは手紙を見せることに同意します
“スバル”: リド……お前……
“リドア”: スバルさん、リドは手紙をお見せするべきですか? スバルさんの判断にリドは従います

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_08

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■8話 タイトル:気持ちの裏返し 更新日:2022/03/02

“リドア”: スバルさん、リドは手紙をお見せするべきですか? スバルさんの判断にリドは従います
“スバル”: そ、それは……
“エミリア”: スバル……
“ユリウス”: スバル
“フェネ”: スバル氏
“スバル”: わかったよ、見せてくれ
“スバル”: けど、俺には読めない字が多そうだから、 ユリウスに渡してくれると助かる
“リドア”: わかりました スバルさんがそう言うのであれば、 ユリウスさんに師匠の手紙をお渡しします
ナレーター: そう言うとリドアは、手紙を取り出しユリウスに渡すのだった
ナレーター: 手紙を受け取ったユリウスは、 リドアに礼を述べたあと、真剣な眼差しで文面に目を通す
ナレーター: そして、手紙を読み終えたユリウスは視線を上げ、 スバルを見つめるのだった
“ユリウス”: ──確かに手紙の差出人は、 スバルたちにフスミへ向かうよう伝えている
“スバル”: ほら、見ろ! やっぱそうじゃねぇか! リドが俺らに嘘つくわけねぇ!
“ユリウス”: リドアさん、疑ってしまい、申し訳ありませんでした 不快な思いをさせたことをどうかお許しください
“フェネ”: フェネからも謝罪を また、手紙を見せていただき、ありがとうございました
“リドア”: いえ、お役に立てたなら、大丈夫です 不快な思いもリドはしていません
“スバル”: それで、なんか有益な情報は書かれてたのか? フスミにページがあること以外に
“ユリウス”: ああ 書かれていた
“スバル”: ユリウス、本当か?
“ユリウス”: ああ、本当だ だが、その話をする前に、いくつかリドアさんに確認をしたい
“スバル”: 確認って! 今さっき不快な思いをさせたって謝ったばっかりだろ!
“リドア”: リドは不快な思いはしていません リドに確認したいこととはなんですか?
“ユリウス”: ありがとうございます、リドアさん あなたが受け取った手紙は、これですべてですか?
“スバル”: どういう意味だ、そりゃ! ユリウス、まだリドのことを──
“フェネ”: スバル氏は少し黙ってください 念のための確認だと推測されます
“リドア”: 師匠からリドが受け取った手紙は、それですべてです
“ユリウス”: では、この手紙はどうしてリドアさんの元に届いたのでしょう? テンミツにはいくつも宿があるはずです
“ユリウス”: リドアさんがテンミツに向かったことを 手紙の送り主は知っていたかもしれませんが
“ユリウス”: それだけでこの手紙はリドアさんの元に届くものでしょうか?
“リドア”: テンミツに到着した際、リドは師匠に手紙を出しました なので、師匠はリドが滞在している宿を知っています
“ユリウス”: なるほど……
“スバル”: それなりの期間、俺らはテンミツに滞在してたからな
“スバル”: 実際、パトラッシュがクルシュさんのとこに向かって、 俺らの元に戻ってきたんだ
“スバル”: ガーディーはすぐにレスするような奴には見えなかったけど、 受け取ってすぐに返事を出せばテンミツに届いても不思議はねぇよ
“スバル”: ってことで、色々解決だな これ以上、リドを疑う必要はねぇだろ
“スバル”: そんなことより、手紙に書かれていた有益な情報を教えてくれ 俺としちゃ、そっちの方が大切なんでね
“ユリウス”: どうやら『禁書』はヴォラキア帝国で書かれたもののようだ
“スバル”: ヴォラキア……? 帝国……? どこだよ、それ
“ユリウス”: ヴォラキア帝国は現状最大の国土を誇る大帝国だ ルグニカやカララギの南に位置している
“ユリウス”: 温暖な気候に肥沃な大地 四大国の中でも最も豊かな国だと言えるだろう
“スバル”: その帝国で『禁書』は書かれたんだな?
“ユリウス”: ああ エドガーという作者はヴォラキア帝国の人間らしい
“ユリウス”: その情報を掴んだ手紙の差出人は、 調査のためにヴォラキア帝国へ向かうとリドアさんに伝えている
“スバル”: ガーディーが帝国に?
“スバル”: もしかしたら俺らも、フスミの後はそのヴォラキア帝国ってとこに 向かうことになるのかもしれねぇな
“スバル”: 『禁書』の作者がいた国…… そこへいけば『禁書』について色々わかりそうだ
“スバル”: って、どうしてユリウスは、 ガーディーのことを“手紙の差出人”って呼ぶんだ?
“スバル”: ガーディーについてはテンミツでした会食のときに話したし、 その後もちょくちょく名前は出ていたはずだ
“ユリウス”: 残念ながら、リドアさんの手紙は、差出人が不明だ
“ユリウス”: 通常であれば文末などに著名を入れるものだが、 拝見した手紙にはそれがなかった
“ユリウス”: 私がこれですべてかと確認した理由もそこにある
“スバル”: つまり手紙には続きがあって、 その最後に署名されてるはずだって思ったわけか
“スバル”: けど、ガーディーって奴は常識人とは程遠い 署名がなくても驚かねぇよ
“スバル”: って、ユリウスはまだ、リドを疑ってるのか?
“ユリウス”: 私はただ、この手紙を書いたのが ガーディーという方とは特定できないと思っているだけだ
“スバル”: それを“疑ってる”って言うんだよ!
“スバル”: まぁ、いい 端からお前とはわかり合える感じじゃなかったしな
“フェネ”: 今のは最高の褒め言葉です、ユリウス氏 スバル氏とわかり合えないことを誉れと思ってください
“スバル”: 待て待て 褒め言葉のつもりで言ってねぇし
“スバル”: ああは言ったけど、 ホントはわかり合いたいっていう気持ちの裏返しだよ
“スバル”: ホントはわかり合いたいのに、それがうまくできないから、 思わず皮肉を言っちまったんだ
“スバル”: なんて壮大な暴露をさせられて、 恥ずかしさで逃げ出したいけど!
“フェネ”: 確かに恥ずかしい暴露でしたね ユリウス氏、スバル氏は本当はわかり合いたいのだそうです
“フェネ”: なんだかんだユリウス氏につっかかりながらも、 心の中でスバル氏は──
“スバル”: もうやめてくれ、フェネ!
“スバル”: とにかく、ガーディーからの手紙の内容は把握したし、 変わらずユリウスがリドを疑ってるってこともわかった
“スバル”: 俺とユリウスがわかり合う件については置いといて、 他に話すことはないかな?
“エミリア”: スバル スバルとユリウスはきっとわかり合えるわ
“スバル”: あれ!? その件は置いておくって言ったよね!
“エミリア”: ユリウス スバルはいい子よ、わかってあげて
“ユリウス”: 承知しています、エミリア様
“ユリウス”: 私は彼から嫌われていると思っていたのですが、 どうやらそうではなかったらしい
“ユリウス”: お互い理解し合うことを 私の方から拒むことはしないと約束しましょう
“エミリア”: ありがとう、ユリウス よかったわね、スバル
“スバル”: 俺が本当にわかり合いたいのは、 ユリウスじゃなくてエミリアたん……
“スバル”: なんて言ってる雰囲気じゃなさそうだな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_09

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■9話 タイトル:これまで通り 更新日:2022/03/02

“スバル”: ──というわけで、何事もなくフスミに到着したな
“フェネ”: 何事もなく……アナスタシア女史には良い土産話ができましたが
“スバル”: お前! 俺が思わず口走ったこと、 もしかしてアナスタシアさんに報告するつもりでいる?
“フェネ”: 無論です アナスタシア女史の読み通り、 大変面白い出来事が起きましたから
“ユリウス”: 私としても同行した甲斐があった このような機会をくださったアナスタシア様に感謝したい
“スバル”: うるせぇー! お前がリドのことを疑ってること、 俺は快く思ってねぇからな!
“スバル”: 一緒に『異形』と戦った仲なのに、 ねちねちと根掘り葉掘り聞きやがって
“スバル”: マジ、お前の神経を疑っちまうよ!
“ユリウス”: 不思議と、スバルから何を言われても、私の胸は痛まない
“スバル”: そりゃ、そうだろうよ! なんせ、俺の本音を知ってるんだから!
“スバル”: ったく、マジやりにくいぜ……
“レム”: スバルくん、何か面白いことがあったのでしょうか?
“スバル”: そっか、レムはずっと御者台だったもんな 疲れただろ? 寝ずに竜車を走らせたわけだし
“レム”: いえ、レムは大丈夫です でも、竜車を引いていたあの子は 休ませてあげた方がいいと思います
“スバル”: いやいや、レムだって休んだ方がいいよ ってことで、急いで宿を探そう
“エミリア”: うん、そうね レムと地竜の子にはゆっくり休んでもらわないと
“レム”: エミリア様、お心遣いありがとうございます
“レム”: でも、その前に、竜車の中でのお話をレムも聞きたいです スバルくんに関係していることみたいですし
“スバル”: うまく誤魔化せたと思ったんだけど、ダメだったのね!
“エミリア”: スバル、本当はユリウスとお友達になりたかったみたいなの
“エミリア”: ユリウスに文句を言ったりするのも、 そういう気持ちの裏返しなんだって
“スバル”: くっ…… 改めてそう言われると、ホント恥ずい
“スバル”: とにかく、その話は終わりにして、宿を探そう リドも手伝ってくれるよな?
“リドア”: スバルさんのお役に立つのがリドの役目 喜んでお探しします
“スバル”: ──ほうほう やっぱフスミも和な感じの街並みだな
“スバル”: しかも、獣人の数が多い気がする すれ違った人の半分ぐらいは、獣人だったんじゃねぇかな?
“フェネ”: この都市は、獣人や半獣人が多く暮らすことで 有名だった記憶があります
“スバル”: やっぱそうか! 異世界感があってすごくいいぜ!
“スバル”: こんなこと言ったら怒られるかもしれねぇけど、 少し見て回りたかったりして……
“フェネ”: 宿探し、これがフェネとスバル氏がやるべきことです
“スバル”: 確かにそうだけども、リドやみんなも探してくれてるんだ 少しぐらいだったら大丈夫だろ?
“フェネ”: やはりスバル氏にはフェネが同行して正解でした レム女史でしたらスバル氏を咎められなかったかもしれません
“スバル”: つまり、ダメってことか? ほんのちょっとの時間でいいんだぜ?
“フェネ”: フェネたちには時間がありません その少しの時間が命取りです
“スバル”: うぐっ…… そりゃ、そうかもしれねぇけど……
“フェネ”: それに、宿探し以外のことに時間を使うのであれば、 観光ではなくフェネはスバル氏と話がしたいです
“スバル”: ……俺と話?
“フェネ”: 左様です フェネはスバル氏とリドア女史について話したいです
“スバル”: チッ そういやお前もユリウス派だったな
“スバル”: お前が俺に同行したのは、 リドについて話したいって狙いもあったわけだ
“フェネ”: 幸い、この場にリドア女史はいません その話をするのにはうってつけです
“スバル”: 本人がいないところで、こそこそ話すのは嫌だな 陰口を叩いてるみたいでさ
“フェネ”: フェネはリドア女史の悪口が言いたいわけではありません
“スバル”: そりゃ、わかってるけど……
“フェネ”: ──スバル氏はリドア女史の変化に気が付いていますか?
“スバル”: え? 変化?
“フェネ”: そうです リドア女史には明らかに変化が見られます
“スバル”: 一つ気になってることがあるとすれば……
“スバル”: “皆様のお役に”ってのが “スバルさんのお役に”に変わった気がするよ
“スバル”: 以前はお役に立つ対象がみんなだったのに、今は俺限定な気がする
“スバル”: ユリウスやお前がリドを疑って、 俺が庇ったからかもしれねぇけど
“フェネ”: スバル氏も気が付いていたのですね
“フェネ”: そして、それはスバル氏がリドア女史を庇ったからではありません それより以前からです
“スバル”: ……それより以前?
“フェネ”: 左様です フェネの記憶が正しければ、 ガーディー氏からの手紙を受け取った後からだと思われます
“スバル”: お前の記憶力は信頼に値するよ “記憶喪失のくせしやがって”って言いたくはなるけど
“スバル”: ……あの手紙、ユリウスの奴は疑ってたな?
“フェネ”: 左様です ユリウス氏はあの手紙に続きがあると思っているようでした
“スバル”: その部分にリドの変化を生む原因があったわけか?
“フェネ”: あくまで推測です リドア女史が言う通り、 ユリウス氏に渡したものがすべてかもしれません
“フェネ”: ですが、そうではない可能性もあります
“フェネ”: ユリウス氏ほどの方であれば、 おいそれと誰かを疑ったりはしないでしょう
“スバル”: それに、ユリウスの口ぶりだと、 アナスタシアさんもリドをマークしてる感じだったな
“スバル”: けど、俺にはリドに裏があるようには思えねぇよ
“スバル”: テンミツでの一件だって、 大事にならず解決できたのは、リドが頑張ってくれたからだ
“スバル”: 確かに“スバルさんのお役に”みたいに、 俺限定の言い方になったときは
“スバル”: なんか違和感を覚えたけど、 出会ったときからあいつの喋り方は変だったじゃねぇか
“スバル”: 自分のことなのに他人事っつーか 主体性に欠けてただろ
“フェネ”: 主体性に欠ける……ならばなおさら、 何かしらガーディー氏からの指示があり
“フェネ”: それにより変化した可能性が高くなります
“フェネ”: ガーディー氏から手紙が届いたのは、例の一件が片付いた後です
“フェネ”: 確かに『異形』との戦いなど、 リドア女史の活躍は目覚ましかったですが
“フェネ”: その当時と今とでは、違った目的で動いている可能性があります
“スバル”: リドアの同行に前向きだったのはお前だった記憶があるぜ?
“フェネ”: 『禁書』の件を知るガーディー氏との関係を 切るべきではないと判断したからです
“フェネ”: それについては、スバル氏も納得をしていたと記憶しています
“スバル”: それじゃ、今はリドの同行にお前は反対か?
“フェネ”: それについては明確に“いいえ”です
“スバル”: はっ? なんで? お前はリドのことを疑ってんだろ?
“フェネ”: 一つに、リドア女史は貴重な戦力です
“フェネ”: 現時点ではユリウス氏がいますが、 先々のことを考えると戦力としてのリドア女史は貴重な存在です
“スバル”: お前のそういう考え方、俺はあんまり好きじゃねぇよ リドを戦力としてしか考えてないじゃねぇか
“フェネ”: スバル氏からどう思われようが、 フェネの知ったことではありません
“フェネ”: フェネの目的はすべてのページを『禁書』に封じること
“フェネ”: その達成に必要なものであれば、 なんでも利用させていただきます
“スバル”: 可愛い外見に騙されて、 忘れちまいがちだけど、お前はそういう奴だったよ
“フェネ”: 左様です フェネは“そういう奴”です
“フェネ”: ですが、フェネがリドア女史を同行させたままにするのには、 もう一つ理由があります
“スバル”: もう一つの理由? そりゃ、なんだよ
“フェネ”: これまで通りを維持する方が賢明だと判断したからです
“フェネ”: あちらが尻尾を出すまで、 これまで通りの関係を続けるのが得策かと
“フェネ”: そうすれば戦力としてリドア女史を利用できますし
“フェネ”: そもそもこちら側の杞憂で、 出す尻尾など持っていないかもしれない
“フェネ”: フェネたちは、リドア女史の行動に注意を払うだけいい あえて同行を断って、事を荒立てる必要はありません
“スバル”: そっち側扱いされるのは、俺としてはすげぇ心外だけど
“スバル”: リドアは味方じゃないかもしれないって、 頭の片隅に入れておけばいいんだな?
“フェネ”: 左様です そうしておけば、 もしものときも最悪の事態は避けられるでしょう
“フェネ”: ですが、それ以外のことは、あくまでこれまで通りです
“フェネ”: ──くれぐれもスバル氏は、これまで通りの接し方で、 リドア女史と接するようにしてください

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_10

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■10話(中編) タイトル:望まぬ再会 更新日:2022/03/02

ナレーター: スバルたちが滞在する宿を決め落ち着いた頃には、 すでに日は落ち始めていた──
“パトラッシュ”: ──!
“スバル”: お前もフスミまでお疲れだったな、パトラッシュ
“スバル”: 普段だったらここでお前には、 クルシュさんのところへ報告に向かってもらうんだけど……
“スバル”: クルシュさんへの報告は、 お前に任せて大丈夫なんだよな、ユリウス?
“ユリウス”: ああ、問題ない
“ユリウス”: アナスタシア様からも、 クルシュ様のところへ顔を出すように言われている
“ユリウス”: その際に合わせて報告しておこう
“スバル”: ってことで、今回はゆっくり休んでくれ、パトラッシュ
“スバル”: アルビスからずっと、走りっぱなしだし、 お前に休みをあげられて、俺としても嬉しいぜ
“パトラッシュ”: ──!
“スバル”: あはは! 痛い! 痛い! 気持ちいい!
“スバル”: って、お前が感謝を伝えなくちゃいけないのは、 俺じゃなくてユリウスだぞ
“スバル”: ユリウスのおかげで、休めるんだからさ
“ユリウス”: いや、気にする必要はない
“ユリウス”: それにしても……ずいぶんとこの地竜は、 君のことが気に入っているようだ
“スバル”: ああ 嬉しいことにな
“スバル”: クルシュさんとこから借りてるんだけど、 できれば返したくないってのが本音だよ
“スバル”: こいつは俺にはなくてはならない存在だからな
“パトラッシュ”: ──!
“スバル”: お前も俺と離れたくねぇか?
“パトラッシュ”: ──!
“スバル”: そっか、そっか、俺と一緒にいたいか……
“スバル”: どこかでクルシュさんには、 パトラッシュを譲ってくれるよう、本気で頼まねぇとな
“スバル”: ──晩飯も終わり、何事もなく日が暮れたな
“ユリウス”: スバル 私はこの部屋に泊まってもいいのだろうか? まだ空いている部屋もあるようだし、迷惑であれば私は──
“スバル”: いいよ、この部屋で
“スバル”: 俺らの中じゃ、男子部屋と女子部屋に分かれるのが恒例で、 男子のお前はこの部屋なんだよ
“スバル”: すげぇいびきがうるさいとか、歯ぎしりが半端ねぇとか、 大声で寝言を言うとかじゃなきゃ、いてくれて問題ない
“ユリウス”: その点は大丈夫だ 言われたものに該当する項目はなかった
“スバル”: だろうな お行儀良く眠りそうだよ、お前は
“スバル”: けど、この部屋の宿泊費は割り勘だぞ
“スバル”: フスミでページを回収した後は、 帝国ってとこに向かうことになりそうだし
“スバル”: アナスタシアさんからのページの買い取りやなんだで、 経費もかさんでるから、色々節約できると助かる
“ユリウス”: ああ わかった 半分は私が出させてもらおう
“ユリウス”: ……それで、明日はどう動くつもりだ、スバル?
“スバル”: フェネの感知次第だよ、それは
“スバル”: 具体的な場所までは感知できなかったみたいだけど、 この町にページがあることは確実だってフェネは言ってただろ?
“ユリウス”: ああ 確かにそう言っていたな
“スバル”: ってことで、明日の朝、 フェネにはもう一度感知に集中してもらって
“スバル”: ページの反応があった場所をみんなで探そう
“スバル”: 具体的にここだって場所を感知できなかった場合は、 かなり広範囲を探すことになるけど
“ユリウス”: だとしてもフスミ中を探すことに比べればかなりマシだ フェネさんに感謝しなければ
“スバル”: そうだな
“スバル”: 立て続けに感知を失敗してたから心配してたけど、 どうやら大丈夫みてぇだ
“スバル”: 今はページに溜まったマナが少ないのか、 反応自体はすげぇ弱いみたいだけど
“スバル”: あいつがページを感知できてることが重要だ テンミツの二の舞にはならないで済みそうだよ
ナレーター: 翌日 早朝──
“フェネ”: スバル氏! ユリウス氏!
“フェネ”: 起きてください! ページの場所がわかりました!
“ユリウス”: 本当ですか、フェネさん?
“フェネ”: はい そして、フェネがページの場所を感知できたということは──
“スバル”: 『異形』が顕現するかもしれねぇってことか?
“フェネ”: 左様です 急ぐ必要があります
“スバル”: わかった! 急いで準備する!
ナレーター: フェネに起こされたスバルとユリウスが急ぎ宿を出ると、 そこにはすでにエミリアやレム、リドアの姿があるのだった
“スバル”: みんな、待たせて悪い!
“エミリア”: スバル、急ぎましょう
“レム”: はい 『異形』が顕現したら一大事です
“ユリウス”: それで、我々はどこに向かえばいいのですか、フェネさん?
“フェネ”: こちらです 皆様、フェネについてきてください
“スバル”: わかった お前についていくぜ、フェネ んで、リドも手伝ってくれるんだな?
“リドア”: はい リドもスバルさんをお手伝いします
“フェネ”: では、皆様急ぎましょう──
ナレーター: フェネの移動速度は早く、スバルたちは走らなければならなかった
“スバル”: はぁ…… はぁ…… くっ………
“レム”: スバルくん、大丈夫ですか?
“スバル”: はぁ…… はぁ…… ここは根性の見せどころ……! 足手まといにならねぇよう、精一杯走るよ……!
“フェネ”: レム女史 スバル氏を気遣っている場合ではありません
“フェネ”: 『異形』が顕現した場合、スバル氏に役立てることはありません
“フェネ”: つまり、スバル氏が遅れようが構わないということです スバル氏に構わず、フェネたちは先を急ぎましょう
“スバル”: 悔しいがフェネの言う通りだ……! 俺に構わず、レムたちは先を急いでくれ……!
“レム”: ですが、レムはスバルくんのことを放っておけません
“スバル”: レム……
“フェネ”: であれば、スバル氏は死ぬ気で走ってください ここからそう遠くない場所にページはあります
“スバル”: ああ、もうちょいで着くなら大丈夫だ! 俺の本気を見せてやるぜ! どりゃあぁぁぁー!
“レム”: す、スバルくん!
“フェネ”: フェネたちも急ぎましょう
“レム”: はい!
“スバル”: ぐがぁ…… し、死ぬ……
“スバル”: 何が“そう遠くない”だ……! あれからどんだけ走ったと思ってやがる……!
“フェネ”: “そう遠くない”という感覚は、人それぞれ スバル氏の感覚とフェネの感覚に相違があったのでしょう
“スバル”: いやいや、相違ありすぎだろ! 絶対俺のこと騙したよね!
“フェネ”: “騙した”とは人聞き悪い
“フェネ”: フェネの機転により間に合ったのです スバル氏はフェネに感謝してください
“スバル”: 確かにそうだけど、さすがに感謝する気にはなれねぇよ
“スバル”: 俺、しばらく一歩も動けそうもねぇ……
“フェネ”: 情けないですね、クソ上司 スバル氏以外のみなさんは平然としているというのに
“スバル”: みんながすごすぎるんだよ! 言っとくけど、俺が普通だかんな!
“スバル”: って、俺をいびってる暇があったら、 とっととページを封じてくれ
“スバル”: いつ『異形』を顕現させてもおかしくない感じに、 光り始めてるじゃねぇか
“エミリア”: うん、フェネお願い ページを『禁書』に封じて
“フェネ”: わかりました──
ナレーター: フェネがページに向かい歩を進めようとしたとき、 それは突然姿を表すのだった
“仮面の男”: ──これはこれは、わざわざお越しいただき恐縮ですが、 こちらのページを貴方がたにお渡しするわけにはいきません
“スバル”: ──なっ! お、お前……!
“ユリウス”: ──フェネさん、この男は我々で対処します! フェネさんはページを!
“エミリア”: うん、あの人のことは私たちに任せて!
“レム”: はい! フェネさんはページを封じてください!
“フェネ”: わかりました! それではフェネはページを──
“異形”: クガガガガーッ!
“仮面の男”: 残念ながら、貴方がたの好きにはさせません あのページのことは諦めてください
“スバル”: あいつ、また『異形』を顕現させやがった……!
“ユリウス”: しかもあの『異形』は……
“エミリア”: あの子は倒したはずよ
“レム”: はい テンミツで倒した『異形』と同じ『異形』のようです
“フェネ”: 残念ながら、ページを『禁書』に封じていません なのでマナさえ溜まれば何度でも顕現します
“スバル”: それにしても、マナが溜まるのが早すぎねぇか? あれから何日も経ってねぇだろ
“フェネ”: やはりあの男は、 ページへのマナの供給を自在に行えるのでしょう
“フェネ”: つまり、あの男は、 思うがままに『異形』を顕現させることができます
“スバル”: なんだよそれ…… よりにもよってそんな奴が敵だなんて……
“スバル”: それで、フェネ あの男と『異形』をエミリアたんたちに任せて、 ページを封じられそうか?
“フェネ”: いいえ、残念ながら…… 目の前の敵を全力で排除し、それから封じる方が得策でしょう
“スバル”: とはいえ、時間はなさそうだな
“フェネ”: 左様です 手こずるようであれば、 あのページからも『異形』が顕現します
“スバル”: ──リド
“リドア”: はい、スバルさん
“スバル”: 助太刀を頼む あいつらをぶっ飛ばすのを手伝ってくれ
“リドア”: スバルさんがそう言うのであれば、 リドは喜んでお手伝いします
“スバル”: よし とにかく速攻でケリをつけてくれ ──みんな、頼んだぞ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_11

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■11話 タイトル:お礼の忠告 更新日:2022/03/18

“エミリア”: ──えーいっ!
“異形”: ウガッ!
“レム”: ──アル・ヒューマ!
“異形”: ウゴッ!
“リドア”: ──せいっ! やあっ!
“異形”: ウギッ! ウグッ!
“ユリウス”: ──はーーーっ!
“異形”: ウガガガッ! ウグググゥゥゥ………
“スバル”: ──フェネ! 今だ! 早くページを!
“フェネ”: わかっています、スバル氏 今、ページを封じています──
“フェネ”: そして、封じ終わりました
“仮面の男”: これはこれは、実に見事な動き! さすが私が見込んだだけはある!
“スバル”: ハッ! 負け惜しみ言ってんじゃねぇ!
“スバル”: ってか、闇オークションでもねぇのに、 なーに、仮面つけてんだよ!
“スバル”: そんなもんとっとと取って、素顔をさらしやがれ!
“仮面の男”: 時がくればお見せしましょう だが、今はその時ではない
“スバル”: なんだよそれ! もったいぶるようなことじゃねぇだろ!
“スバル”: それに、もったいぶればぶるほどハードルが上がっちまうぞ? 仮面を外したとき、がっかりされても知らねぇからな!
“フェネ”: なんの忠告ですか、スバル氏 そのようなどうでもいい話は後にしてください
“エミリア”: そうよ、スバル 今はページを渡すようにあの人を説得するのが先でしょ?
“スバル”: うっ…… 確かに……
“ユリウス”: 説得に応じる輩ではなさそうですが、その場合は力ずくでも
“レム”: はい 乱暴なことはしたくはありませんが、そうも言っていられません
“仮面の男”: クククク…… ハハハハハ……
“仮面の男”: 力ずくでも……? どうやら貴方がたはご自分の立場がわかっていないようだ
“仮面の男”: 先程の忠告のお礼に、私からも忠告をさせていただきましょう
“仮面の男”: 切り札はすでに私の手の中にあります あまり私を怒らせるべきではない
“スバル”: 何言ってんだ、お前……
“ユリウス”: 切り札……とはなんだ?
“フェネ”: まさか…… そんな……
“仮面の男”: クククク……
“スバル”: ──っ! お前、もしかして例のページを持ってるのか……?
“エミリア”: “例の”って、もしかして……
“レム”: “こわいまもの”のページを レムたちはまだ見つけられていません……
“フェネ”: そ、そんなはずは……
“仮面の男”: では、本日はこの辺で いずれまたお会いしましょう──
ナレーター: スバルたちに広がった動揺によりできた隙を男は見逃さなかった
ナレーター: 男は一気に跳躍すると屋根に飛び乗り、そのまま逃げ去ってしまう
“スバル”: ──あっ! 待ちやがれっ! って、いっちまいやがった……
“レム”: レムが追いかけます!
“ユリウス”: レムさん、私も追おう!
“リドア”: スバルさん、リドはどうしますか?
“スバル”: お前も追ってくれ、リド!
“リドア”: わかりました
“フェネ”: …………
“エミリア”: フェネ、大丈夫……?
“フェネ”: まさか…… そんな……
“スバル”: ──フェネっ! しっかりしろっ!
“フェネ”: うっ…… うぅ……
“スバル”: あいつが言った言葉ははったりだ! 逃げ出したのがその証拠じゃねぇか!
“スバル”: あいつは“こわいまもの”のページなんて手にしちゃいねぇ!
“フェネ”: …………
“エミリア”: フェネ……?
“フェネ”: 申し訳ありません、エミリア女史、スバル氏…… フェネは疲れてしまいました……
“フェネ”: ページの感知にはとても精神力を使います故……
“スバル”: ああ、そうだったな 宿に戻って休んでくれ
“エミリア”: 一人で戻れる、フェネ?
“フェネ”: …………
“エミリア”: 私がフェネを宿につれていくわ 一人でいかせられないもの
“スバル”: 頼む、エミリアたん んで、俺も一緒にいかせてもらうよ
“スバル”: 悔しいが、俺一人じゃ何もできねぇ むしろ『異形』や『変異体』なんかが出現したら足手まといだ
“スバル”: 俺はフェネと一緒に宿でおとなしく、留守番させてもらうよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_12

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■12話 タイトル:ユリウスからの提案 更新日:2022/03/18

ナレーター: 姿を消した謎の男を追ったユリウスやレムやリドアだったが、 結局その男を捕らえることはできなかった
ナレーター: そして翌日──
“レム”: スバルくん、ユリウス様
“エミリア”: 入ってもいいかしら?
“スバル”: ああ、もちろんだ エミリアたん、レム、入ってくれ
“エミリア”: それじゃ、入るわね
“レム”: 失礼します、スバルくん、ユリウス様
“スバル”: それで、フェネの様子は?
“エミリア”: 今、リドアちゃんが見てくれてるけど、あんまりよくなさそう
“レム”: はい…… 言葉を発するのにも苦労しているご様子です
“ユリウス”: そうか……
“ユリウス”: フェネさんのおかげでページを発見し、 『禁書』に封じることができた
“ユリウス”: 次は我々の番だ フェネさんにはゆっくりご静養いただこう
“スバル”: そうだな フスミにあったページは、 なんとか封じられたし、あいつは役目を果たしたよな
“スバル”: ホント、次は俺らの番だ 仮面の男……あいつを捕らえねぇと
“ユリウス”: それについては、本当に申し訳ない 不覚にも見失ってしまった
“レム”: いえ、ユリウス様の責任ではありません レムがもっとしっかりしていれば……
“スバル”: 待て待て、どっちも悪くねぇだろ
“スバル”: ユリウスやレムが追ってダメだったなら、むしろ諦めがつくよ 誰が追っても、きっとあいつは捕まえられなかったはずだ
“エミリア”: 私もそう思うわ ユリウス、レム、一生懸命追いかけてくれて、本当にありがとう
“レム”: エミリア様……
“スバル”: エミリアたんもああ言ってくれてるし、 自分のせいってのはナシな
“ユリウス”: だが、必ず昨日の汚名は返上してみせる そのために、一つ私から提案をさせてもらえないだろうか?
“スバル”: もちろんだ、ユリウス ぜひ提案してくれ お前は歴とした俺たちの仲間だ 遠慮する必要はないぜ
“ユリウス”: ありがとう、スバル では──
ナレーター: それからユリウスが提案したのは、 フスミの役所に赴き、協力を仰ぐというものだった
“スバル”: ……役所の役人が俺らに協力してくれるかな?
“ユリウス”: それについては問題ない アナスタシア様からお預かりした手紙が役立つはずだ
“ユリウス”: アナスタシア様が懇意にされている やり手の役人の方がこの都市にはいて
“ユリウス”: もしものときはその方を頼るように申し付かっている
“レム”: ぜひ、頼らせてもらいましょう、スバルくん
“レム”: フスミの都市長はとても優秀な方で、 その都市長を支える役人の方々もかなり優秀だと聞きます
“レム”: この都市の繁栄に、役人の方々が大きく貢献しているのは、 間違いないですし
“レム”: その方にご協力いただければ、とても心強いです
“スバル”: 確かにそうだな
“スバル”: それに、現時点で俺らに打つ手があるわけじゃねぇ そのやり手の役人って人を頼ってみるとしよう
“エミリア”: うん、私もそれがいいと思う アナスタシアさんが仲良くしてる人なら、私も会ってみたいわ
“スバル”: そうと決まれば、役所に出発だ!
“スバル”: フェネのことは心配だけど、リドが見てくれてるなら大丈夫だろ レム、竜車の準備を頼む
“レム”: はい! すぐに準備します
“スバル”: 俺もジャージじゃ失礼だし、執事服に着替えさせてもらうよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_13

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■13話 タイトル:かっこいい理由 更新日:2022/03/18

ナレーター: ユリウスの提案で フスミの役所へと向かうことになったスバルたちは
ナレーター: アナスタシアが懇意にしているという 役人の執務室に通されるのだった
“役人”: ──なるほど、皆様のご要望は承知しました
“役人”: アナスタシア様と親しくされている方々と 『最優の騎士』として名高いユリウス様からのお願いです
“役人”: 私としてもお役に立ちたいとは思うのですが、 詳(つまび)らかにされない情報が多すぎる
“役人”: もう少し詳しくお知らせいただくことはできませんか?
“スバル”: うぐっ…… 痛いところを……
“ユリウス”: 申し訳ありません 事情があり、詳しいお話はできかねます
“ユリウス”: アナスタシア様からのお手紙にもありましたが
“ユリウス”: そういったところには目をつむり、 ご協力いただけないでしょうか?
“役人”: ……アナスタシア様からいただいたお手紙には、 “フスミが危険な状態だ”とありました
“役人”: つまり、その危険を回避するためだと?
“スバル”: その通りだ このままじゃフスミが危ねぇ だから、協力してほしいんだよ
“役人”: イバダ……テンミツ…… そして、ルグニカの各地でも、 騒動が起こっていることは耳にしています
“役人”: 彼の国では近々予定された王選が延期になったとか
“スバル”: こっちが色々語らなくても、ある程度把握している感じじゃねぇか
“役人”: 私の耳に入る情報の多くは噂話の域を出ません ルグニカに関するものは特にです
“スバル”: けど、少し前には、イバダで色々あって、 ついこの間はテンミツでも色々あった
“スバル”: カララギの都市で役人やってんなら、 それが事実だってことぐらいは知ってるだろ
“スバル”: どっちも大事には至らないで済んだが、それは運良くって感じで、 フスミで何かが起きても、同じように何事もなく済むとは限らねぇ
“スバル”: むしろ、そうならない可能性の方が高そうだって、 俺たちは感じてるんだよ
“役人”: なるほど……
“エミリア”: お願い、私たちに協力して
“レム”: レムからもお願いします ご協力いただけませんでしょうか?
“役人”: 一つ確認したいのですが、 皆様は善意で行動されているのでしょうか?
“スバル”: “そうだ”って断言できりゃ、かっこいいんだけど…… 残念ながらそうじゃねぇよ
“スバル”: そもそも言えないことが多い時点で、 善意で動いてないことぐらい明らかだしな
“スバル”: でも、このままじゃフスミが危ないことだけは確かなんだよ 俺たちはその危険を本気で回避したいと思ってる
“エミリア”: ええ、本当よ この町を危ない目には遭わせたくないわ
“役人”: ……それはなぜでしょう?
“スバル”: そんなの、寝覚めが悪いからに決まってるだろ
“スバル”: 毎朝気持ち良く目覚めるためには、 この町で犠牲者を出すわけにはいかねぇんだよ
“スバル”: あのとき、ああしておけば……なんて思いはしたくねぇ
“スバル”: 少なくとも、現時点じゃ問題は起きてねぇし、 うまくやればこのまま問題を起こさずに済むんだ
“役人”: そのために私の協力が必要だと?
“スバル”: その通りだ 俺らだけで回避できるかは微妙な状態なんでね
“役人”: ふふふ……
“スバル”: ん? どうして笑われてるんだよ、俺?
“役人”: いや、失礼 ですが、十分にかっこいい理由だと思いましたので
“役人”: “毎朝気持ち良く目覚めるため”というのは、 善意でやっているのとそう違わない
“レム”: はい、とてもかっこいい理由です レムはドキドキしてしまいました
“スバル”: いやいや、そうじゃなくて! ここにフェネがいたら、 “どのツラ下げて言ってんだ”ってきっとつっこまれるはずで
“スバル”: 確かに言った言葉に嘘はねぇんだけど、それだけじゃないっつーか 褒められると逆に胸が痛くなっちまう
“ユリウス”: スバル、君の一言でこの場の空気が変わったことは事実
“ユリウス”: 言った言葉に嘘がないのであれば、 わざわざ墓穴を掘る必要はないだろう
“ユリウス”: どうやら、この方にはご協力いただけそうだ
“スバル”: え? 俺たちに協力してくれるのか?
“役人”: はい ご協力を約束しましょう
“役人”: 皆様のフスミを救いたいというお気持ちは本物のようだ 事情については話せるときがきたらお話しください
“スバル”: マジ助かるよ!
“スバル”: でも、事情を知ったらきっと、 俺に“かっこいい”なんて言ったこと、後悔するんじゃないかな
“役人”: だとしても、フスミに何かあって後悔するよりは余程いい
“スバル”: 違いねぇ それは絶対にしちゃいけない後悔だからな
“役人”: はい、その通りです
“役人”: そうならないためにも、フスミは都市を挙げて、仮面を着けた 謎の男の捜索について、ご協力することをお約束しましょう
“エミリア”: ありがとう! ホントに嬉しいわ!
“レム”: もしもの場合、市民の方々を避難させる必要が生じます そちらの手筈もぜひお願いいたします
“役人”: わかりました そちらの準備も進めさせていただきます

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_14

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■14話 タイトル:馴染みある政治体制 更新日:2022/03/18

ナレーター: ユリウスの提案でフスミの役所を訪れ、 アナスタシアが懇意にしているという役人に会ったスバルたちは
ナレーター: 詳しい事情は話せなかったものの、 その役人から協力の約束を取りつけることに成功するのだった
“ユリウス”: ──目的は果たせた そろそろ我々はお暇しよう
“スバル”: いや……その…… もうちょい話をしたいっつーか…… 完全に興味本位な話で申し訳ねぇけど……
“役人”: 興味本位なお話ですか?
“スバル”: ああ なんか、この都市は すげぇ都市政がしっかりしてるって小耳に挟んだんだ
“スバル”: 色んな種族がいるのに、それってすげぇことだなって思って ほら、獣人とか半獣の人なんかも多いじゃん
“スバル”: そういう都市政について聞くのは、 エミリアたんの勉強にもなるかなって
“エミリア”: ホントにそうね 私、すごーく興味あるわ
“レム”: 確かにそうですね レムも聞いてみたいです
“役人”: この都市の政治に興味があるとは、なかなか面白い方々だ
“役人”: ただ、この都市の政治がうまく機能しているのは
“役人”: 家柄や種族や性別に関係なく、 人材が適材適所に登用されているからだと思います
“役人”: 特別な何かがあるわけではありません
“スバル”: 適材適所、ね
“スバル”: 当り前のことにように思えるんだが、 それが案外難しいことだったりするんだよな、きっと
“ユリウス”: ああ ルグニカでは、家柄は無視できない要素になってしまう
“ユリウス”: 障害なく適材適所に人材を登用できる状態は、 十分に“特別な何か”と呼べるだろう
“スバル”: 確かにルグニカには貴族みたい人たちもいるし、 色々しがらみがありそうだよな
“スバル”: 建前では“平等”ってことになってる俺の故郷でも
“スバル”: しがらみなく適材適所に人材を登用できてるとは、 とても言えない状態だ
“ユリウス”: このフスミでは狐人の方が都市長を務めていると聞く そのこともいい意味で影響を与えているのかもしれない
“スバル”: へー、狐人の都市長ね
“スバル”: 優秀な都市長だとは聞いてたけど、 まさか獣人の人が都市長だったとは驚きだよ
“役人”: この都市の経済は、 ここでしか作られていない民芸品や伝統工芸に支えられています
“役人”: それらを作っているのは、獣人や半獣の方々、 都市長に獣人が選出されても不思議ではありません
“スバル”: そうは言うけど、やっぱそこに驚きを感じちゃうんだよ、俺は
“スバル”: 建前じゃなく、本当にそういうことが実現できてるんだからさ
“スバル”: 明らかにフスミは、 俺の故郷の一歩先をいってる感じだな
“スバル”: こっちより色々進んでると思ってたんだけど、 その考えは改めた方がよさそうだぜ
“エミリア”: ──スバル、ちょっといいかしら?
“スバル”: おお、エミリアたん! いいに決まってるよ! さあ、入って、入って!
“ユリウス”: それでは、私は少し席を外させてもらおう
“スバル”: 悪いな、ユリウス
“ユリウス”: ちょうど外の風に当たりたいと思っていたところだ 気にする必要はない
“ユリウス”: それではエミリア様、ごゆっくりしていってください では──
“エミリア”: ユリウス、別に出ていかなくても……っていっちゃったわ
“スバル”: あいつなりに気を遣ってくれたんだよ
“スバル”: 一緒に旅をして親交を深めた甲斐があったぜ あいつに対する苦手意識もだいぶ薄らいだしさ
“エミリア”: ユリウスは元々いい人よ 苦手意識を持つような相手じゃないわ
“スバル”: けど、あいつはエミリアたんのことを……
“スバル”: って、確かにあいつに苦手意識を持ったのは、 俺の方に問題があったのかもな
“スバル”: アナスタシアさんの狙い通りな感じがして悔しくはあるが
“スバル”: そんな風に思えるようになったのも、 この旅であいつのことを色々知ることができたからだ
“スバル”: あいつの中身を見もしないで、色々決めつけちまってたよ、俺は
“スバル”: ……それで、エミリアたん、俺に何か用かな?
“エミリア”: 今日、フスミのお役人さんと色々話したでしょ? スバルが私の勉強になるかもって言ってくれて
“スバル”: ああ、確かにそうだね エミリアたんの勉強になってたら、嬉しいけど
“エミリア”: うん、すごーくなったわ 適材適所は大切よね
“スバル”: ああ、すごく大切だ 色んなしがらみがあって、実際にやるのは大変だけどさ
“エミリア”: それ以外にも色々勉強になったわ あの人がカララギのことをたくさん教えてくれたから
“スバル”: そうそう、俺にも目から鱗の話がたくさんだったよ
“スバル”: 特にカララギの議会とか選挙の話は、 王様を目指すエミリアたんが聞けてよかった気がするな
“スバル”: 王様が治めるルグニカとはかなり違う政治体制だけど、 取り入れられる部分もありそうだしね
“スバル”: っていうか、俺にとっては、 カララギのやり方の方が馴染みがあるんだけどさ
“エミリア”: そうみたいね あの人とスバル、すごくわかり合ってて驚いちゃったわ
“スバル”: まぁ、俺の故郷だと、 選挙で市民に選ばれた代表が政治をするっていうのが主流だから
“スバル”: 民主制に近いカララギの政治体制は理解しやすかったんだよ
“エミリア”: カララギだと一番偉い人も選挙で決まるのよね?
“スバル”: 七つの大都市の都市長が投票して決めるって言ってたね
“スバル”: 国民の投票で国家元首を選ぶ大統領制ってよりは、 国会議員の投票で内閣の首長が決まる議院内閣制に近い感じかな
“エミリア”: だいとうりょうせい……? ぎいんないかくせい……?
“スバル”: ごめんごめん ルグニカでいう王様とか、 カララギでいう『国家議長』とかを決める方法だよ
“スバル”: 俺が知ってる決め方の中だとその二つが代表例で、 王選で王様を決めるルグニカみたいなやり方は、すごく珍しいんだ
“スバル”: 実際、初めて聞いたやり方だしね
“エミリア”: だいとうりょうせい?みたいな決め方と ぎいんないかくせい?みたいな決め方だと、どっちがいいの?
“スバル”: それは難しい質問だね
“スバル”: 答えが出るまでにすごく時間がかかると思うし、 すごく時間をかけて考えても結局答えは出ないかもしれない
“エミリア”: 王選のやり方と比べたら?
“スバル”: それも難しいよ
“スバル”: エミリアたんみたいな人が候補者になってる時点で、 王選って仕組みも悪くないんじゃないかって気がするしさ
“スバル”: 少なくとも、大統領制や議院内閣制だったら
“スバル”: エミリアたんが大統領や総理大臣の 候補者になることはなかったんじゃないかな
“スバル”: もちろん、可能性がゼロってことはないけど、 なんかそんな気がするんだよ、俺は
“エミリア”: それじゃ、ルグニカに王選があってよかったわ、私
“スバル”: そうだね その王選の開始を遅らせる原因を作った 俺としては胸が痛いけども
“スバル”: って、エミリアたんは今みたいな話を俺としにきたの?
“スバル”: エミリアたんがきてくれた理由がなんだかぼやけてるっつーか
“スバル”: せっかくきてくれたのに、 エミリアたんの期待に応えられてるか不安っつーか
“スバル”: 的外れな会話になっちゃってたら、ごめん 俺、よく話を脱線させちまうみたいだからさ
“エミリア”: ううん、大丈夫よ、スバル
“エミリア”: 私、あのお役人さんの話が聞けて、すごーく勉強になって、 そのお礼をスバルに言わなきゃって思ったの
“エミリア”: そうしたら、スバルから色々な話が聞けて、 もっと勉強になっちゃったわ
“エミリア”: 本当にありがとう、スバル

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_15

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■15話(中編) タイトル:やっぱり最低なクソ上司 更新日:2022/03/18

ナレーター: スバルたちが役所を訪れ
ナレーター: アナスタシアが懇意にしているという役人から、 謎の男捜索の協力を取りつけた翌朝──
“リドア”: スバルさん、ユリウスさん、お客様です 急ぎいらしてください
“スバル”: 客? 誰だよ、こんな朝っぱらから……
“ユリウス”: それだけ急用ということだろう 急いで向かおう、スバル
“エミリア”: あ、スバル、ユリウス ありがとう、リドアちゃん
“スバル”: エミリアたん、レム、それにあんたは……
“役人”: 捜索の準備が整いましたので、お知らせに伺いました
“スバル”: ……え?
“ユリウス”: ご相談させていただいたのは昨日のはず もう準備が整ったのですか?
“役人”: カララギでは時間とお金は価値が一緒と言います 無駄にするわけにはいきません
“スバル”: それにしたってすげぇ早さだ こっちの準備が追いついてないかもしれねぇ
“レム”: それについては心配の必要はありません 捜索する場所は昨夜のうちにある程度目星をつけておきました
“ユリウス”: レムさんの言う通りだ 昨夜、レムさんとフスミを回り、捜索の候補地を絞ってある
“スバル”: 昨夜って……外の風に当たりにいったのはそのためか? なかなか帰ってこねぇから、不思議に思ってたんだよ
“ユリウス”: 逃げたあの男を追ったのはレムさんと私だからな
“ユリウス”: あのときの逃走経路を基点に、 奴が潜伏していそうな場所を絞らせてもらった
“スバル”: それはマジでファインプレーだよ ありがとな、レム、ユリウス
“レム”: スバルくんのお役に立てたなら、レムとしても嬉しいです 頑張った甲斐がありました
“役人”: どうやら、すぐに捜索を開始しても問題はなさそうですね
“スバル”: ああ 問題ねぇ 急いで取り掛かろう
“スバル”: できればフェネがいてくれた方が心強くはあるが、 贅沢も言ってられねぇよな……
ナレーター: こうして、フスミが都市を挙げて協力してくれる 謎の男の大捜索が開始されるのだった──
“亜人の男”: ユリウス様 残念ながら向こうにそれらしい男は見当たりませんでした
“ユリウス”: ご協力感謝します それでは、あちらの捜索をお願いします
“ユリウス”: ですが、くれぐれもご注意を
“ユリウス”: 多少腕に自信がある程度でかなう相手ではない 見かけても深追いなどせず、すぐに私に報告してください
“亜人の男”: わかりました では──
“男”: あかん、レムさん 向こうにも見当たらんわ
“レム”: ご報告ありがとうございます
“レム”: では、次は向こうの捜索をお願いします レムはあちらを探してみます
“男”: わかったで
“リドア”: スバルさん、向こうに該当する男はいません
“スバル”: そうか……
“スバル”: すまない、リド 今度は向こうを探してくれ
“リドア”: わかりました スバルさんのために、リドは精一杯探します
“役人”: なかなか見つかりませんね
“エミリア”: そうね…… どこにいるのかしら……
“スバル”: あいつはページを持ってるはずで、 ページを感知できたらあいつの居場所も……
“スバル”: わりぃ、俺、やっぱフェネの様子を見てくるよ もしかしたら、少しは回復してるかもしれないしさ
“エミリア”: でも、一人で宿に戻るのは危険よ 仮面の人が出てきちゃうかもしれないわ
“スバル”: 宿はすぐそこだし、この辺には捜索に協力してくれてる人が たくさんいるから、大丈夫だよ
“スバル”: それに、絶対に無理はしないって約束する
“スバル”: もしあいつに出くわしたら、 余計なことはせずに全速力で逃げてくるからさ
“エミリア”: でも……
“スバル”: 頼む、いかせてくれ このままだとまたフェネから役立たずの烙印を押されちまう
“スバル”: もし体調が回復してたら、 きっとフェネだって力になりたいって思うはずだ
“スバル”: せめて、フスミの人たちが協力してくれて、 あの男を捜索してるってことはフェネにも知らせておきたい
“スバル”: この大捜索のこと、あいつは知らないだろ?
“エミリア”: 確かにそれはそうね……
“スバル”: 大丈夫、俺も無理しないし、フェネにも無理はさせない だから、頼む、エミリアたん
“スバル”: フェネが協力できる状態じゃなかったら、 そんときはおとなしく帰ってくるからさ
“エミリア”: ……わかったわ、スバル
“エミリア”: でも、スバルも無理しちゃダメだし、 フェネにも無理をさせちゃダメ いいわね、スバル
“スバル”: ──入るぞ、フェネ
“フェネ”: スバル氏……
“スバル”: 休んでるとこ、すまねぇ けど、色々お前に話があって
“フェネ”: 話……ですか?
“スバル”: ああ 今、フスミの人たちが協力してくれて、 例の男を探してる最中なんだけど、残念ながら発見には至ってねぇ
“スバル”: 昨日の夜、レムやユリウスがあいつがいそうな場所に 目星をつけてくれたんだけど
“スバル”: 今んとこ、空振りな感じだな
“フェネ”: そうですか……
“スバル”: もし、体調が少しでも回復してるなら、 お前の力を借りたいっつーか……
“スバル”: 早くあいつを見つけねぇと、マジでヤバいことになりそうだし
“フェネ”: 色々ある話とは以上ですか……?
“スバル”: ええっと……“色々話がある”って感じじゃなかったな わりぃ、どっちかっていうとお前にお願いがあってきた感じだ
“スバル”: ページの気配とか感じねぇか? ある程度あの男の場所がわかれば、今なら見つけ出せそうなんだよ
“フェネ”: なるほど、であれば最初からそう言ってください 弱ったフェネをこき使うクソ上司のスバル氏
“スバル”: うぐっ…… そう言われるとつれぇ……
“スバル”: けど、結構な人たちが協力してくれてて
“スバル”: 今ならホント、ある程度場所が絞れれば、 あいつを発見できそうなんだよ
“スバル”: アナスタシアさんが紹介してくれた役人の人は、 マジで仕事ができる人で
“スバル”: 短時間で人を集めて、あの男の捜索に動員してくれたんだ
“フェネ”: それは大変嬉しいですし、 フェネとしても力になりたい気持ちでいっぱいです
“フェネ”: ですが、ご期待に沿えるかは別の話です
“フェネ”: やるだけやってみてもいいですが
“フェネ”: あの男が持ったページを 感知できない可能性の方が高そうだとフェネは感じます
“フェネ”: スバル氏、どうしますか?
“スバル”: …………
“フェネ”: スバル氏?
“スバル”: いや、やっぱりいいよ、フェネ
“スバル”: “やってもいい”ってお前は思ってくれた その気持ちだけで十分だ
“スバル”: ……にしても、俺はマジでクソ上司だな 知らず知らずのうちにお前を頼っちまってる
“スバル”: ユリウスはすでにフェネは役目を果たしてて、 次は俺たちが頑張る番だって言ってた
“スバル”: そんとき俺も“そうだそうだ”みたいなことを言ったんだけど、 結局こうやってお前のところに……
“スバル”: エミリアたんも、お前に頼ることには、 反対っぽかったっていうのによ
“スバル”: ……悪かった、フェネ ゆっくり休んでくれ
“フェネ”: ゆっくりと静養していたフェネの邪魔をしたのは、スバル氏です
“スバル”: ごめん、フェネ! マジで悪かったよ!
“スバル”: ……でも、一つ聞いていいか?
“フェネ”: なんでしょう、スバル氏
“スバル”: お前、もしかして“こわいまもの”が出てくる お話の内容を思い出したんじゃねぇか?
“スバル”: あの男が“こわいまもの”のページを持ってるかもってなって、 お前の体調は急変しちまったじゃねぇか
“スバル”: アルビスみたいにここは寒い場所じゃないし、 そうじゃないとお前の体調の急変は説明できない気がする
“フェネ”: それは──
ナレーター: フェネが何かを語ろうとしたその時、 リドアがスバルたちのいる部屋へと駆け込んでくるのだった
“リドア”: ──スバルさん、あの男が発見されました
“スバル”: 本当か、リド!
“リドア”: はい、本当です 今、皆様が対峙しています
“スバル”: わかった! 急いで向かおう! リド、案内してくれ!
“リドア”: こちらです、スバルさん リドについてきてください

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_16

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■16話 タイトル:これで終わったと思うなよ 更新日:2022/03/18

ナレーター: リドアに連れられてスバルがエミリアたちの元へ戻ると──
ナレーター: そこには仮面を着けた謎の男の姿があった
“スバル”: エミリアたん、みんな!
“エミリア”: スバル! フェネは?
“スバル”: やっぱ体調が悪そうだったよ だから宿に残してきた
“スバル”: それに、あいつが姿を現したんなら、 フェネに出張ってもらう必要もないしね
“レム”: はい フェネさんにはゆっくり休んでもらいましょう
“ユリウス”: ああ フェネさんのお手を煩わせるのは、 あの男を倒し、ページを手に入れてからだ
“仮面の男”: クククク…… ハハハハ…… 私を倒す? なかなか面白い冗談ですね
“ユリウス”: 冗談ではない そのことを貴様は身をもって知ることになるだろう
“仮面の男”: まったく、貴方がたは 本当にご自身の立場というものがわかっていない
“仮面の男”: 身をもって知る? この私が?
“仮面の男”: そのようなことはありえませんな なぜなら──
“スバル”: なんかヤバそうだ! あんたらは逃げてくれ!
“亜人の男”: す、すみません──
“男”: すまんな、兄ちゃん──
“スバル”: あんたも逃げてくれ
“役人”: いや、私は……
“スバル”: いいから早く! ホントにあいつはヤバい奴なんだよ!
“役人”: うっ…… わかりました…… では──
“エミリア”: スバルも早く逃げて!
“レム”: はい! スバルくん、危険です!
“スバル”: いやいや、俺はきたばっかで、 ここで逃げたら何のためにきたかわからねぇっつーか……
ナレーター: それは一瞬の出来事だった──
“ユリウス”: なんだと!
“レム”: こ、これは!
“エミリア”: きゃっ!
“スバル”: ──エミリア! レム! ユリウス!
“スバル”: あんにゃろ……! みんなをページの中に……!
“仮面の男”: 次は貴方の番です クククククッ ハハハハハッ
“スバル”: くっ……
“リドア”: …………
“仮面の男”: 貴方はこちらのページにご招待いたしましょう──
ナレーター: 仮面の男はそう言うと、光り輝くページを取り出し、 スバルへと投げつける
ナレーター: そして──
“スバル”: これで終わったと思うなよ、仮面野郎! まだフェネがいる! フェネがぜってぇ──
“リドア”: スバルさーーーんッ!!
“スバル”: ──クソっ! クソっ! クソっ!
“スバル”: とりあえず生きてはいるが…… 俺にはページを出られるような力はねぇ……
“スバル”: 俺一人で『異形』に勝てるか……?
“スバル”: いやいやいや! 勝てるわけねぇだろ、俺が!
“スバル”: ガナクスでも似たようなことはあったけど、 あんときはみんなが吸い込まれたページに飛び込んだわけで
“スバル”: 単独でページに吸い込まれたわけじゃねぇもんな……
“スバル”: どうする、ナツキ・スバル? どうする? どうする? どうする?
“スバル”: とりあえず、寝るか? “果報は寝て待て”って言うしな
“スバル”: ……いやいやいや! 寝ちゃダメだろ! そもそもこんな状況で眠れるほど、俺の神経は太くねぇ!
“異形”: ウググググ……ッ
“スバル”: ──なっ!
“異形”: ウグググッ
“スバル”: ま、待ってくれ……
“異形”: ウググッ
“スバル”: た、頼む! 見逃してくれ! って、言葉が通じるような相手じゃねぇか……
“異形”: ウガガッ
“スバル”: あのときは確か…… ワープポイントみたいなのがあって…… そこに飛び込んだら、別の場所に飛べて……
“スバル”: そうそうあんな感じで……!
“異形”: ウガガガガッ
“スバル”: クソっ! 迷ってる時間はねぇ!
“スバル”: ──ままよ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_17

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■17話 タイトル:今必要なのは 更新日:2022/03/18

“スバル”: なんとか逃げ切れたか……?
“スバル”: とはいえ、ボス的な『異形』を倒さねぇと、 ページから出ることはできねぇ
“スバル”: 逃げてるばっかじゃページから出れねぇし…… 完全に詰んでるじゃねぇか!
“スバル”: クソっ! よりにもよって俺を一人でページに入れやがって……!
“スバル”: 考えろ…… 考えるんだ…… 何か…… 何かいい方法が……
“スバル”: くっ…… 考えても何も思いつかねぇ…… マジ、絶望的な状況だ……
“スバル”: 役人の人とかに“逃げろ”なんて言った、 自分のことが笑えてくるよ
“スバル”: 俺だって逃げなきゃいけない立場だったっつーのに
???: ──スバルさん
“スバル”: ……え? 追い詰められて幻聴が聞こえてきたか……?
???: スバルさん、幻聴ではないです
“スバル”: そ、その声は──
“コリーナ”: はい、コリーナですよ、スバルさん! コリーナがいれば安心安全です! よかったですね、スバルさん!
“スバル”: いやいやいや、“安心安全”ってどの口が言ってんだよ!
“スバル”: 危険なことが大好きなくせに、 戦闘力は俺と大して変わらないじゃねぇか!
“コリーナ”: スバルさん、人の揚げ足をとるなんて、よくないですよ 素直にコリーナとの再会を喜んでください
“スバル”: もうちょい戦える奴がきてくれたら、 俺だって嬉しさ爆発なんだけども
“スバル”: 戦闘力なしの危険大好きっ子の登場じゃ、 こんな反応になるのも仕方ねぇだろ
“スバル”: ガナクスではこのコンビでなんとか切り抜けたけど、 あれは奇跡に近い感じだったしさ
“コリーナ”: いやー、この前のページの中は、 危険なことが盛りだくさんで本当に楽しかったですね!
“スバル”: 楽しくなんてなかったわ! 思い出しただけでも、変な汗が出てきちまうよ!
“スバル”: ……とはいえ、こんな奴でも俺一人って状況よりかはマシか? 事実、ガナクスではなんとかなったし
“スバル”: でも、あのときは最後にフェネが……
“コリーナ”: “こんな奴”なんて、コリーナに対して失礼ですよ 冒険家のコリーナは、戦闘以外ならとっても頼りになる存在です
“スバル”: 今必要なのは戦闘で頼りになる存在なんだよ! すげぇ強い『異形』を倒さなきゃなんねぇんだぞ!
“コリーナ”: そこは……スバルさんが頑張ってください
“スバル”: 戦闘力ゼロの俺に丸投げってどういうことだよ! そこはせめて“一緒に頑張りましょう”だろ!
“コリーナ”: スバルさんは、こんなにか弱い女の子に、 こわーい『異形』とかいう敵と戦えって言うんですか?
“コリーナ”: ヒドいですよ、そんなの
“スバル”: はぁ…… よりにもよって、ページ内にいるのが、 どうしてこいつなんだよ……
“コリーナ”: コリーナはページに吸い込まれるスバルさんを見かけて、 迷わず飛び込みました!
“コリーナ”: そこに、危険という名のご褒美が待ち受けていることは、 確実でしたからね!
“スバル”: だ・か・ら、危険はご褒美なんかじゃねぇよ! 少なくとも俺にとっては、まったくご褒美じゃねぇ
“スバル”: むしろ、そんな考え方の奴と 行動を共にしたくねぇってのが本音だ
“スバル”: 俺一人だった方がマシだった気さえしちまう
“コリーナ”: またまたー コリーナに会って、 スバルさんは元気になった気がします
“コリーナ”: スバルさん、“絶望的な状況だ”って落ち込んでたじゃないですか
“コリーナ”: そのときのスバルさんに比べて、今のスバルさんはだいぶマシです コリーナに会えて、よかったですね
“スバル”: お、お前な……!
“スバル”: って、怒るだけ体力の無駄だな そして、悔しいがコリーナの言う通りな部分もある
“スバル”: 元気なお前と話してるうちに、 不思議と悲壮感みたいなもんがなくなってたよ
“スバル”: とにかく、悲嘆してても仕方ねぇ ページから抜け出す方法を考えねぇと
“スバル”: ちなみになんだけど……お前に何か策はあるか? 一応冒険家なわけだし、脱出的なのって得意なんじゃねぇ?
“コリーナ”: “一応”って失礼ですよ、スバルさん コリーナは歴とした冒険家です
“コリーナ”: そして、冒険家のコリーナには 数々の苦難を乗り越えてきた実績があります!
“コリーナ”: 今回だって知恵と勇気で乗り切ってみせます!
“スバル”: おぉ、すげぇ自信! 俺の質問の答えにはなってねぇけど!
“スバル”: 俺が知りたいのは“知恵”についての具体的な中身だよ
“スバル”: ガナクスのときだって、 結局お前は“勇気”しか使ってなかったじゃねぇか
“スバル”: ここいらでビシッとご自慢の“知恵”とやらを披露してくれ
“コリーナ”: すみません、スバルさん、訂正させてください 正しくは度胸と勇気でした
“スバル”: あっさり“知恵”を撤回しやがったよ!? しかも“度胸”と“勇気”ってほとんど一緒の意味だよね!
“コリーナ”: でも、大丈夫です、スバルさん ここには知恵担当のスバルさんがいます
“スバル”: おいおい、知恵まで俺に丸投げする気か?
“スバル”: って、そういやガナクスでも、 実際にページを攻略したのって俺だったな
“コリーナ”: その通りです、スバルさん
“コリーナ”: 隠し通路の発見や色々な仕掛けの攻略など、 本当にスバルさんは大活躍でした
“コリーナ”: コリーナの勇気とスバルさんの知恵で、 前回は見事ページから脱出することができました!
“スバル”: いやいや、あれはフェネのおかげだよ あいつがきてくれたから、『異形』を倒せたんだ
“スバル”: じゃなかったら、俺らはページから出られてねぇ それどころか、エミリアたんの命だって危うかったと思う
“コリーナ”: そんなことはないと思いますよ、スバルさん
“コリーナ”: たとえフェネという方がきてくれなくても、 スバルさんならきっとどうにかできたはずです

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_18

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■18話 タイトル:あいつならきっと 更新日:2022/03/18

ナレーター: 仮面の謎の男が放ったページに吸い込まれてしまったスバルは、 ページの中でコリーナとの再会を果たす
ナレーター: 戦闘力がないコリーナとスバルのコンビは
ナレーター: かつてガナクスで行動を共にし、 ページ内から脱出した経験を持つが
ナレーター: あのときは、最後にフェネの助けがあった
ナレーター: だが、今回フェネは宿のベッドで寝た切りの状態
ナレーター: 頼みの綱である戦闘力が高い他の面々は、 スバルとは別のページに吸い込まれてしまっている
ナレーター: スバルには絶体絶命の状況に思えるのだが、 コリーナにはどこか心に余裕があるのだった
“コリーナ”: ──たとえフェネという方がきてくれなくても、 スバルさんならきっとどうにかできたはずです
“スバル”: ……俺ならどうにかできた?
“コリーナ”: はい スバルさんならどうにかできます
“スバル”: いやいや、過大評価もいいところだよ 俺の弱さをお前は知らねぇのか?
“コリーナ”: もちろん知ってますよ! 無駄に筋肉はついていますが、 スバルさんに戦闘力はほとんどありません!
“スバル”: 無駄で悪かったな! 割と筋トレしてるから、 我ながらいい体してるとは思ってるよ!
“スバル”: それを戦闘力の向上にはつなげられてねぇけど!
“スバル”: って、俺ならどうにかできるって話じゃなかったのか? 今のところ、俺ならできる感をまったく感じねぇぜ
“コリーナ”: でも、スバルさんならできるんです
“スバル”: はあ? どうしてそうなる?
“コリーナ”: コリーナは、スバルさんを信じています
“スバル”: バカ、答えになってねぇよ
“コリーナ”: スバルさんこそ、自分のことが信じられないのですか?
“スバル”: 俺が……自分を?
“コリーナ”: なんだかんだ、スバルさんはうまくやっていると思います ガナクスでも似たような状況をちゃんと切り抜けました
“スバル”: だから、あれはフェネが助けてくれたからだって言ってるだろ 俺一人だったら『異形』には勝ててねぇよ
“コリーナ”: フェネさんという方が助けてくれたことを含めて、 スバルさんだからできたことです
“スバル”: いやいや、あんときは後先考えずにページに飛び込んで そのせいで散々後悔させられたんだ
“スバル”: 俺がもっと冷静に考えて、 戦力になるロズワールなんかを連れていってりゃ
“スバル”: エミリアたんをギリギリセーフで 助けるなんてこともなかったんだよ
“スバル”: 間に合ったからよかったものの、 お前も含めて全員がアウトになっててもおかしくなかった
“スバル”: マジ、あれは“俺だからできた”ってよりは、 “俺じゃない方がうまくできた”ってものの典型だよ
“スバル”: あのときのことを思い出すと、今でも嫌な汗が出てきちまう ホント、思い出したくねぇ、最悪の思い出だぜ
“スバル”: お前にもかなり危険な思いをさせちまったしな
“コリーナ”: 危険はご褒美ですよ、スバルさん! 気にする必要はありません!
“コリーナ”: むしろ、コリーナからするとスバルさんに感謝です!
“コリーナ”: あのようなわくわくやドキドキは、 死ぬような思いをしないと味わえません!
“スバル”: お前のそういうとこ、マジどうかと思うぞ!
“スバル”: 危険な目に遭わせた俺としては、 そう言ってもらえると多少は罪悪感が薄れるけどさ!
“コリーナ”: いえいえ、罪悪感を持つ必要はありません 本当に気にしないでください
“コリーナ”: そんなことより、さっきの質問について、 スバルさんはちゃんと答えてくれてません
“コリーナ”: スバルさんは自分のことが信じられないのですか?
“スバル”: ……ああ、信じられないね
“スバル”: これといった成功体験があるわけでもねぇし、 誰にも負けねぇ何かを持ってるわけでもねぇ
“スバル”: 口は達者な方かもしれねぇけど、それだけだ
“スバル”: “言うは易し”ってな 言ってることとやってることのギャップに、愕然とする毎日だよ
“スバル”: そんな奴のことなんて、信じられるわけねぇだろ
“コリーナ”: スバルさん
“スバル”: ……なんだよ?
“コリーナ”: スバルさん
“スバル”: だから、なんだって?
“コリーナ”: 名前を呼んだだけです 深い意味はありません
“スバル”: 意味深な感じで俺の名前を呼ぶの、やめてくれる! なんかドキドキしちゃうからさ!
“コリーナ”: ドキドキさせちゃいましたか? スバルさんを弄ぶなんて、コリーナは悪女ですね
“スバル”: “悪女”って感じじゃなかったけど、 なんだか意味深な感じだったよ
“スバル”: 深い意味がないようには思えなかったっつーか……
“コリーナ”: 自分を信じてください、スバルさん
“コリーナ”: 少なくともコリーナは、スバルさんのことを信じています それは本当に本当のことです
“コリーナ”: 込めたのはそういう想いぐらいで、特に深い意味はありません
“スバル”: そういうのを“深い意味”って言うんだよ!
“スバル”: お前は“あなたのことを心から信じてます” みたいな想いを込めてたんだぞ!
“コリーナ”: あと、スバルさん自身にも 自分を信じてほしいという想いも込めました
“コリーナ”: ちなみに最初に呼び掛けた“スバルさん”が 自分のことを信じてほしいという想いで
“コリーナ”: 次の“スバルさん”が、 コリーナは本当にスバルさんのことを信じていますという想いです
“スバル”: まったく気付かなかったよ、マジで! 教えてくれて、ありがとな!
“スバル”: おかげで、少しは自分を信じてみようって気になれたよ
“スバル”: 少なくとも諦めがわりぃのが俺の長所だ 最後の最後まであがいてあがいてあがいてやる!
“スバル”: そうしたら、奇跡が……
“スバル”: あいつは宿屋のベッドの中…… でも、もしかすると……
“スバル”: いや……あいつならきっと……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_19

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■19話 タイトル:目を閉じてください 更新日:2022/03/18

“コリーナ”: ──ところで知恵担当のスバルさん
“スバル”: そういや、お前の“知恵と勇気”が“度胸と勇気”になって、 知恵がまんま俺のとこにきたんだったな
“コリーナ”: そうです、“知恵”についてはスバルさんにお譲りします 返品は受け付けませんので、悪しからず
“スバル”: 無理やり押しつけといて、返品できねぇって、 どんな悪徳商法だよ!
“コリーナ”: とにかく、この辺でちゃんと作戦を考えましょう 現時点で具体的な案は何一つ出ていません
“スバル”: それ、お前が“知恵”を壮大に放棄したからだよね! 俺は一ミリも悪くないからな!
“コリーナ”: まあまあ、過去の細かいことはいいじゃないですか 大切なのはこれからやってくる未来です!
“コリーナ”: さあ、未来のために、スバルさん、よろしくお願いします!
“スバル”: ったく、調子いい奴だな
“スバル”: んで、非力な俺らが『異形』に勝つための方法なんだけど、 落とし穴に落とすってのはどうだ?
“スバル”: すげぇデカい落とし穴を掘って、 そこに『異形』を落として埋めちゃうんだよ
“スバル”: 真っ向勝負を挑むよりかは、断然勝機があると思う
“コリーナ”: なるほど 冒険家のコリーナは、 穴掘りは得意ですし、穴を掘る道具も持ち歩いています
“コリーナ”: ですが、現実的ではありません
“コリーナ”: 『異形』を生き埋めにできるような穴を掘るのも大変ですし、 その穴を埋めるのも大変です
“コリーナ”: 穴を掘っている間や埋めている間に、 他の『異形』から襲われたらどうするんです?
“コリーナ”: そもそもここにそのような大きな穴を掘れるかは不明です
“スバル”: そりゃそうなんだけど、ここはブレスト方式でいこう 否定的な意見は言わず、質より量を大切にするんだ
“スバル”: まずは色々な案を出して、 そこから実際にやれるものを絞り込もうぜ
“コリーナ”: ……ぶれすとほうしき?
“コリーナ”: なんだかかっこいい響きですね! 賛成です! それでいきましょう!
“コリーナ”: で、“質より量”ってことは、 知恵の担当ではないコリーナも、案を出していいんですよね?
“スバル”: もちろんだ、コリーナ お前もガンガン案を出してくれ
“コリーナ”: では、すごく強力な武器で、やっつけるっていうのはどうですか?
“コリーナ”: あっ! 否定的な意見は言っちゃダメですよ!
“コリーナ”: 言うんだったら、 “こんな武器なら倒せそう”って意見をお願いします!
“スバル”: 大丈夫だ 俺から言い出したんだし、 ブレストで否定的な意見を言ったりはしねぇよ
“スバル”: んで、“これなら勝てる”って武器ね……
“スバル”: 確かにコリーナは色々道具を持ってそうだし、 何かしら武器は作れるかもしれねぇな
“スバル”: ってことで、弓なんてどうだ? シンプルな作りだし、ありもので作れる可能性が高い
“コリーナ”: えー、一発目で弓なんてつまらない案を出さないでください
“コリーナ”: せっかくなんでもいいんですから、 これぞスバルさんっていうすごい武器をお願いします!
“スバル”: 確かにそうだけど、明らかに用意できねぇ武器を言ってもな……
“コリーナ”: 今は言ってください その方がわくわくして楽しいです
“スバル”: 例えば……ミサイルランチャーとかか?
“コリーナ”: そうです、そうです、そういうのです! 他にはありますか?
“スバル”: そりゃ、あるにはあるよ
“スバル”: マジ、SFに登場するような武器から 伝説の武器までなんでもござれだ
“スバル”: 伊達に中二病を長く患ってたわけじゃねぇぜ
“コリーナ”: ではでは、えすえふ?に登場する武器とはなんですか? コリーナに教えてください
“スバル”: 未来なら実現するかもっていうすげぇ武器のことだよ
“スバル”: 代表的なもんだとレールガンっていうのがあるな
“スバル”: こっちの人にも通じるように言うと 電磁投射砲とか電磁加速砲って感じだ
“コリーナ”: スバルさんが通じると思っている方も、 コリーナにはまったくわかりませんが
“コリーナ”: その武器は、すごく強そうですね! 名前を聞いただけでわくわくしてしまいます!
“スバル”: そうだろ、そうだろ なんせ、言った俺もテンション爆上がりだからな!
“スバル”: レールガンってのは電磁力を使ったすげぇ武器で、 『異形』だってきっとイチコロだよ
“スバル”: あと、荷電粒子砲ってのもあるぜ
“スバル”: レールガンは電磁力で金属片なんかを飛ばすんだけど、 荷電粒子砲は荷電粒子を撃ち出すんだよ
“スバル”: こっちも威力は保証付きだ 間違いなく『異形』を倒せると思う
“スバル”: まぁ、どっちもすげぇ電力を使うし、 電気がねぇこっちだとあったとしても鉄屑だけどさ
“コリーナ”: なるほど…… ただの鉄屑では困りますね……
“コリーナ”: ですが、スバルさんがとっても武器に詳しいことがわかりました その調子で、伝説の武器についてもお願いします!
“スバル”: 言われなくてもそのつもりだよ!
“スバル”: 悪いが、こういう話だったら、 何時間でもできちゃう口なんだ、俺は
“スバル”: 俺にこの話題をふったことを、きっとお前は後悔することになるぜ
“コリーナ”: な、何時間も話されては困りますよ、スバルさん! できるだけ手短にお願いします!
“スバル”: でもでも、俺の頭の中には、数々の伝説の武器が!
“スバル”: 異世界もののファンタジー作品なんかじゃ定番だし、 こっちの世界にはそっちの武器の方が合ってるっつーか
“スバル”: 日本のものだったり、西洋のものだったり、色々あって、 手短に済ませるのは俺には難しい……
“コリーナ”: では、スバルさん 目を閉じてください
“スバル”: え?
“コリーナ”: いいから目を閉じてください
“スバル”: わかったよ──
“スバル”: これでいいか?
“コリーナ”: では、そのままスバルさんが知っている 伝説の武器について思い出してください
“コリーナ”: それで、一番最初に思い浮かんだものについて、 コリーナに教えてください
“コリーナ”: 一つだけでいいです これなら『異形』を倒せるってものを一つお願いします
“スバル”: 一つだけか…… 『異形』を倒せる強力な武器といえば…… 最初に思い浮かぶのは、やっぱエクスカリバーかな……
“スバル”: 数々のRPGでも出てくる有名な聖剣だ まさに伝説の武器の代表格だな
“スバル”: 強い魔力を宿したエクスカリバーなら、 俺みたいな奴でも『異形』を両断できるかもしれない
“コリーナ”: なるほど、それはすごい剣ですね! そんな剣があれば、『異形』に勝てそうです!
“スバル”: まぁ、あればな マジ、誰でも知ってる有名な武器だし、 すげぇ強力であることは間違いねぇよ
“スバル”: 最強の武器って位置づけのゲームなんかもあるぐらいだからさ
“スバル”: って、もう目を開けていい?
“スバル”: 熱く武器について語ったせいか、ちょっと疲れちゃったみたいで、 このまま目を閉じてると、俺、眠っちまうかもしれねぇ
“コリーナ”: 寝ている場合ではないので、スバルさん、目を開けてください
“スバル”: わりぃ、わりぃ、わかってはいるんだけど、 危うく寝落ちしちまうところだった
“スバル”: マジで最近色々大変だったし、 知らず知らずのうちに疲れがたまってたのかもな
“スバル”: とにかく今は寝てる場合じゃねぇ なんとか打開策を──
“コリーナ”: ……
“スバル”: コリーナ、俺の話、聞いてる?
“コリーナ”: …………
“スバル”: おい、コリーナ!
“コリーナ”: いや……でも……まさか……
“スバル”: マジ、どうしたんだよ、コリーナ? 人に寝るなとか言っといて、お前自身が心ここにあらずじゃねぇか
“コリーナ”: す、すみません、スバルさん でも、とにかく、向こうを見てください
“コリーナ”: あれってまさか…… スバルさんが言ってた伝説の剣じゃないですよね?
“スバル”: ……え?
ナレーター: ゆっくりとコリーナが指差した方へと視線を動かすスバル
ナレーター: そこでスバルが目にしたのは──
“スバル”: う、嘘だろ…… あれはまさしく俺がイメージした剣そのものだよ
“スバル”: 伝説の聖剣、エクスカリバーで間違いねぇ……
“スバル”: ど、どうしてエクスカリバーがここにあるんだ……?
“スバル”: そんなことあるはずねぇ…… 俺はやっぱ、あのまま眠っちまったのか……?
“コリーナ”: いえいえ、スバルさんは眠っていません! コリーナが保証します!
“スバル”: いやいや、夢の中のコリーナに保証されても、 なんの意味もねぇだろ
“コリーナ”: コリーナは、スバルさんの夢の中に出てきている コリーナではありません
“コリーナ”: 正真正銘、現実にいるコリーナですよ
“スバル”: そう言われても、にわかには信じられねぇ……
“スバル”: わりぃ、コリーナ 思いっ切り俺の顔を叩いてくれ
“コリーナ”: いいんですか、スバルさん?
“スバル”: ああ、頼む
“コリーナ”: ではでは、遠慮なくいかせてもらいます! どりゃーっ!
“スバル”: ──うごーーーーーっ!!
“スバル”: い、いてぇな、コリーナ! てめぇ、何しやがる!
“コリーナ”: スバルさんがやれって言ったんですよ コリーナは言われた通りにしただけです
“スバル”: だとしても、加減ってもんがあんだろ! 危うく死にかけたわ!
“スバル”: って、この痛さ…… やっぱ現実なんだな……?
“コリーナ”: だから、そう言ってるじゃないですか
“スバル”: けど…… どうしてそんなことが……
“コリーナ”: そもそもページの中に吸い込まれちゃうこと自体が、 現実離れしたことです
“コリーナ”: そんな現実離れした場所で、あれこれ考えたって仕方ないですよ
“コリーナ”: あそこに伝説の武器がある それは紛れもない事実です
“コリーナ”: そして、せっかくあるんだったら、 使わない手はないじゃないですか
“コリーナ”: あの剣を使えば、きっと『異形』にだって勝てます そしたら──
“スバル”: ページからも出られるわけだな
“コリーナ”: その通りです!
“コリーナ”: さあ、スバルさん、あの剣を手に取ってください! 遠慮の必要はありません!
“スバル”: “遠慮の必要はない”って、お前が言うと違和感が…… って、細かいことはまぁいっか
“スバル”: エクスカリバーがあそこにあるのは事実 確かに使わない手はねぇよな

Scenario Tag: scenario_main_p01_c08_20

Scene Name: メインシナリオ_8章_FIX ■エピローグ タイトル:似て非なる剣 更新日:2022/03/18

“スバル”: ──そりゃっ!
“異形”: ウガッ! ウググググッ……
“スバル”: さすがエクスカリバー すげぇ切れ味だぜ
“コリーナ”: すごいです、スバルさん! 『異形』を倒しちゃいましたよ!
“スバル”: フェネにサポートしてもらって、 何度か『異形』を倒したことはあるけど
“スバル”: フェネなしで倒したのはこれが初めてだよ
“スバル”: にしても、マジすげぇぜ、この剣! 今の俺は無敵状態! 負ける気がしねぇ!
“スバル”: このまま先に進んで、このページのボスを倒しちまおう
“コリーナ”: はい、スバルさん! 先を急ぎましょう!
ナレーター: ページ内に突如出現した スバルが知るエクスカリバーと酷似した謎の剣
ナレーター: その剣の威力はすさまじく
ナレーター: 戦闘力がないスバルとコリーナのコンビでも、 向かってくる『異形』を撃退することができた
ナレーター: スバルとコリーナはその剣で『異形』を倒しながら進み
ナレーター: ついには、このページ内で一番強いと思われる『異形』と 対決しようとしているのだった──
異形: ググググ……
“コリーナ”: スバルさん! スバルさん! あの『異形』、とっても強そうですね!
“スバル”: ああ…… これまでのザコどもとは明らかに違う…… ありゃ、このページのボス『異形』で間違いねぇ感じだ
“コリーナ”: わくわくドキドキ♪ その伝説の武器でも勝てなくて、 コリーナたちは窮地に追い込まれるかもしれません!
“スバル”: なんのわくわくとドキドキだよ、それ!
“スバル”: ってか、もうちょっと緊張感を持ってもらっていい? TPOを考えてくれ 俺たちはラスボスと対峙してるんだぞ
“コリーナ”: てぃぴいおう……? それっておいしい食べ物ですか?
“スバル”: 食べ物じゃねぇよ! どうしてこのタイミングで、 おいしい食べ物の話をしなくちゃなんねぇんだ?
“スバル”: それこそTPOをわきまえてねぇだろが
“スバル”: そのときの状況に合わせて、 相応しい言動をしようってのがTPOなんだからさ
“コリーナ”: でしたら、相応しい発言ですよ コリーナはとてもお腹が空いているんです
“コリーナ”: それに、あの『異形』、食べたらおいしそうじゃありませんか?
“スバル”: おいしそうじゃねぇし、 いくら腹が減ってても、『異形』を食べるのは勘弁かな!
“スバル”: そもそも『異形』ってマナの塊だから、 倒したら跡形もなく消えちゃうしね!
“スバル”: ってか、お前、そんなこと考えながら、 あの『異形』を見てたのか?
“コリーナ”: 当り前じゃないですか コリーナはとってもお腹が空いてるんです
“スバル”: お前ってホント、緊張感がない奴だな 腹の空き具合を感じてる余裕なんて、俺にはまったくねぇよ
“スバル”: 朝早くから動きっぱなしだったってのに、空腹感がまるでねぇ 本当なら、すげぇ腹が減ってるはずなのにさ
“コリーナ”: しっかり栄養をとらないと、動けなくなります 動けなくなると死んでしまうかもしれません
“コリーナ”: だから、栄養を摂取することはとても大切です
“コリーナ”: つまり、どんな状況でもお腹が空いたと感じられるコリーナは、 とっても偉大な冒険家なんです
“スバル”: 確かにそうだな ちゃんと腹が減るのは、冒険家に限らず大切なことだ
“スバル”: 常に平常心でいられることもな
“スバル”: 慌てふためいても事態を悪化させるだけで、 好転させるなんてことはねぇからさ
“スバル”: あの『異形』は強そうだけど、 お前のおかげでなんだか心が落ち着いたよ
“スバル”: 俺らには伝説の聖剣エクスカリバーがあるんだ 『異形』なんかに負けるわけがねぇ
異形: ──ググググッ!
“コリーナ”: ──スバルさん、きます!
“スバル”: ああ くるならきやがれ、クソ『異形』! 伝説の剣で返り討ちにしてやる!
異形: ウググググーーッ!!
“スバル”: コリーナ、離れてろ! ここは危ねぇ!
“コリーナ”: スバルさん! コリーナも一緒に──
“スバル”: バカ、お前はそこで俺の雄姿を見てろ!
異形: ウグググゥゥゥゥゥ!!
“スバル”: 頼むぞ、エクスカリバーッ!
“スバル”: ──あいつを真っ二つにしちまってくれーーーッ!!!
“スバル”: 勝った……のか?
“コリーナ”: すごいです、スバルさん!
“コリーナ”: あんなに強そうな『異形』を スバルさんは一人で倒してしまいました!
“スバル”: いやいや、こいつのおかげだよ この剣がなけりゃ、あんな『異形』は倒せてねぇ
“スバル”: ってか、俺は剣を握って立ってただけだ
“コリーナ”: コリーナの記憶が確かなら、 スバルさんは“俺の雄姿を見てろ”と言っていましたよ?
“スバル”: わりぃ 正確には、エクスカリバーの雄姿だったな 俺、マジで立ってただけだし
“スバル”: さすが伝説の聖剣 ホント、恐れ入るよ
“スバル”: けど、こいつがあれば、きっと“こわいまもの”だって……!
“スバル”: ど素人の俺が扱ってこの強さだ
“スバル”: 剣技に秀でたユリウスなんかが使えば、 その威力は想像を絶するはず
“スバル”: 俄然、俺らの勝利が見えてきたぜ!
“コリーナ”: そんなに都合よくいきますかね…… ページの外に持ち出せるとは思えませんが……
“スバル”: 俺はこいつを離さねぇ! 絶対ページの外に──
“スバル”: うわわわぁ! 強い風が!
“コリーナ”: スバルさん! どうやらページの外に吐き出されるみたいです──
“コリーナ”: うわわ!
“スバル”: お、俺はぜってぇ、エクスカリバーを──
“スバル”: うおーっ!
“スバル”: うわわわわーっ!
“スバル”: ──コリーナ、大丈夫か?
“スバル”: って、いねぇ……
“スバル”: 愛しのエクスカリバーちゃんも…… 跡形もなく消え去ってやがる……
“エミリア”: きゃーっ!
“エミリア”: こ、ここは……
“ユリウス”: フスミです、エミリア様 無事で安心いたしました
“レム”: はい 本当に無事でよかったです
“スバル”: ──エミリアたん! みんな!
“エミリア”: スバル! 私、ページに吸い込まれたけど、『異形』をやっつけたわ!
“レム”: レムも倒しました
“ユリウス”: 無論、私もだ
“スバル”: ああ やっぱすげぇよ、みんなは 一人で吸い込まれたのに、無事に出てきちゃうんだもん
“スバル”: 俺なんて……
“レム”: スバルくん? スバルくんも吸い込まれたのですか?
“スバル”: ああ、漏れなく俺も吸い込まれたよ
“レム”: ──っ! レムがお傍にいながら…… そのようなことになってしまい……
“スバル”: いやいや、気にするな、レム 俺もこうして無事だ
“ユリウス”: では、スバルも『異形』を?
“スバル”: まぁ、反則みたいなやり方だけどな この手で葬ったのは確かだよ ホント、反則みたいなやり方だったけど
“スバル”: それに、コリーナもいてくれたしな
“エミリア”: え? コリーナちゃんが?
“スバル”: ああ ガナクスのときみたいに、あいつには助けられた あいつがいなかったら、挫けちまってたと思う
“スバル”: ……って、そういやリドは? あいつの姿が見当たらねぇ
“レム”: 確かにリドアさんの姿が見当たりません もしかしたら、まだページの中に……
“エミリア”: だとしたら大変だわ! 早く助けにいってあげないと!
“ユリウス”: はい 急ぎページを…… いや、例の仮面の男を捕らえるのが先か?
“スバル”: そういや、あいつの姿も見当たらねぇ 再びページの中へなんて展開は、マジ勘弁だぜ……
“役人”: ──皆様! ご無事で何よりです!
“スバル”: ああ、俺たちは無事だ でも、リドが…… 肝心の仮面野郎の姿も見当たらねぇ
“役人”: ご一緒にいた女性でしたら、仮面の男を追っていかれました
“スバル”: そうか! リドはページには吸い込まれなかったんだな?
“役人”: はい あの方は吸い込まれていません 走り去る仮面の男を追っていかれたのです
“役人”: ですが……
“スバル”: ですが、なんだ? もったいぶらずに教えてくれ
“役人”: フスミにとっては朗報ではあるのですが…… あの男がフスミを出たという報告がありました
“役人”: 町の警戒にあたっていた信用できる者からの報告です 間違いないかと
“スバル”: くっ…… また、逃げられたか……
“ユリウス”: だが、我々はページを四枚回収することができた
“ユリウス”: それらを『禁書』に封じられることを考えると 悪い結果ではないだろう
“スバル”: エミリアたんが吸い込まれたページに、レムが吸い込まれたページ それに俺とお前が吸い込まれたページで合計四枚だ
“スバル”: ここにきての四枚ゲットはデカいな
“スバル”: あとはリドが無事に……
“リドア”: すみません、スバルさん リドは必死に追いましたが、逃してしまいました
“スバル”: リド! 無事でよかった!
“リドア”: ですが、あの男を……
“スバル”: まぁ、それは仕方ねぇよ 責任を感じる必要はねぇ
“スバル”: 俺らがページに吸い込まれるヘマなんてしなきゃ、 お前一人で追わなきゃいけないなんてこともなかったんだ
“ユリウス”: 胸が痛いな 不覚をとってしまった
“レム”: はい…… そのせいでスバルくんまで……
“エミリア”: ホントにそう…… 私がもっとしっかりしてたら……
“スバル”: いやいやいや、待ってくれ、みんな! みんなを責める意図は俺にはねぇよ!
“スバル”: リドの罪悪感を少しでも減らすために、 ああいう言い方をしただけだ
“スバル”: だから、ホント落ち込まないでくれ
“スバル”: とにかく、リドも無事で、ページも四枚ゲットできた
“スバル”: 早いとこ、ページをフェネのところに持っていって、 封じてもらおう
“スバル”: しばらくは大丈夫だと思うけど、何が起こるかわからねぇ ページを『禁書』に封じて、反省やなんだはそれからにしよう
“ユリウス”: そうだな まずはページを封じよう
“エミリア”: うん 早くフェネのところにいきましょう
“レム”: はい フェネさんのところへ急ぎましょう
“スバル”: ──ページも『禁書』に封じて、たくさんメシも食った ってことで、色々語らうとしますか
“エミリア”: フェネ、大丈夫? もし眠りたいなら、 私たちはスバルとユリウスの部屋にいくわよ?
“フェネ”: いえ、問題ありません それに、フェネとしても気になります ぜひ、お話に参加させてください
“スバル”: ああ、もし体調が大丈夫なら、ぜひ聞いてくれ なんせ、今回は俺、大活躍だったからさ
“フェネ”: ……スバル氏が大活躍? にわかには信じられません
“エミリア”: それが本当なの、フェネ
“エミリア”: だって、スバルったらページに吸い込まれたのに、 無事にちゃんと出てきたのよ
“レム”: そうです スバルくんは『異形』を倒したんです 本当にすごいです
“スバル”: いやいやいや、みんなだってページに吸い込まれたのに、 無事に出てきただろ
“スバル”: 俺だけ評価されるのは、逆に申し訳ねぇよ
“スバル”: しかも俺の場合は一人じゃなくてコリーナも一緒だったし、 エクスカリバーもあったからさ
“エミリア”: ……えくすかりばあ?
“ユリウス”: スバル、そのえくすかりばあ?とはなんだ?
“スバル”: そっか、そっか、みんなにはまだ話してなかったな
“レム”: はい 聞いていません
“レム”: コリーナさんが一緒だったということは聞きましたが、 えくすかりばあ?についてはレムも初耳です
“レム”: ぜひ、教えてください レムはスバルくんのことなら、なんでも知りたいですから
“スバル”: もちろん話すよ、レム これについては、絶対に共有しておいた方がいい内容だからな
“スバル”: ってことで、ホントびっくり、 なんとページの中に、あのエクスカリバーが落ちてたんだよ!
“フェネ”: さすがクソ上司 スバル氏は情報の共有が本当に下手クソですね
“ユリウス”: それについてはフェネさんに同意だ
“ユリウス”: 我々が知りたいのは、 その“えくすかりばあ”というものについてだ
“ユリウス”: 落ちていて大変驚くものだということはわかったが、 スバルの話には必要な情報がまったく含まれていない
“スバル”: なんだかんだ、気が合う感じだよな、ユリウスとフェネは
“スバル”: リドアのことを勘ぐってたのもそうだし、 俺への手厳しい指摘も一緒だ
“スバル”: 必要な情報が含まれてないのは、俺だって百も承知だよ
“スバル”: 簡単に発表するのがもったいないから、 ちょっと焦らしを入れただけじゃねぇか
“スバル”: ちゃんと教えるから大丈夫だ くれぐれも気持ちよく喋ってる俺の邪魔をしないでくれ
“ユリウス”: 百も承知、だと? わかっていてあえてあのような言い方をしたのか?
“スバル”: そうだよ、ユリウス マジですげぇ内容だから、ちょっともったいぶりたかったんだ
“フェネ”: それで、スバル氏、早くそのすごい内容とやらを教えてください 大切な時間が刻一刻と無駄になっています
“スバル”: ったく、なんか盛り上がりに欠ける催促だな まぁ、話すけどさ
ナレーター: それからスバルはフェネたちに、 ページ内で起こった出来事について話して聞かせるのだった
“エミリア”: ──会えなかったのは残念だけど、 コリーナちゃんも無事みたいでよかったわ
“エミリア”: それにしても、すごい剣ね ちょっと触った途端、強い『異形』が真っ二つになっちゃうなんて
“スバル”: まぁ、伝説の聖剣だからね そりゃもう、ホントすげぇ剣なんだよ
“レム”: そんな剣を使いこなせるなんて、本当にスバルくんは素敵です
“スバル”: うーん “使いこなした”って実感はないかな…… どっちかっつーと、俺は持って立ってただけだし
“フェネ”: フェネの記憶が正しければ、スバル氏は“大活躍”だったはずです
“スバル”: うぐっ…… 痛いところを……
“スバル”: けど、あれは紛れもなくエクスカリバーだったし
“スバル”: あの剣があそこにあったこと自体が、 俺のおかげだとは考えられねぇかな?
“スバル”: ページから生還したいっていう俺の強い想いが、 あの剣を誕生させたとかさ
“ユリウス”: それについてなんだが、確か今回封じたページに、 似たような物語が描かれていた記憶がある
“スバル”: ……似たような物語が?
“ユリウス”: ああ 念のため、 回収した際に一通り目を通させてもらったのだが
“ユリウス”: その中の一枚が、 強い力を持った剣が登場する物語だったはずだ
“ユリウス”: ──フェネさん、 『禁書』を見せていただいてもよろしいでしょうか?
“スバル”: ああ、ぜひ見てぇ
“エミリア”: 私も読んでみたいわ、そのお話
“レム”: レムも読んでみたいです フェネさん、お願いします
“フェネ”: わかりました では、ユリウス氏こちらを──
ナレーター: フェネは頷くと、『禁書』をユリウスへと渡すのだった
ナレーター: 『禁書』を受け取ったユリウスは、 強力な剣が登場するという話のページを開き一同に示す
“エミリア”: ──本当に強い剣が出てきてるわ
“レム”: はい 魔物に捕らえられていた女の子は、 その剣のおかげで逃げることができました
“フェネ”: 『とらわれのクレア』……
“フェネ”: 確かにクレア女史が魔物から逃げることができたのは、 その剣のおかげみたいですね……
“スバル”: つまり、あの剣は元からページの中にあったんだな 俺のおかげってわけじゃなくて
“ユリウス”: どうやらそのようだ
“ユリウス”: スバルが言っていた伝説の聖剣とは、 似て非なるものだと言わざるを得ない
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ?
“フェネ”: すみません フェネは疲れました そろそろ休ませていただきたく思います
“スバル”: ああ、そうだな
“スバル”: 逃げた仮面野郎のことは気になるが、 あいつを追うにしても明日からだ
“スバル”: 俺らも今日は朝早かったし、今日は早めに休むとしよう
“エミリア”: そうね 私もすごーく疲れたわ 今日は色々あったもの
“スバル”: ああ、ホント色々あったね、エミリアたん
“スバル”: 朝から仮面野郎を捜索して、 やっと見つけたと思ったらページに吸い込まれて
“スバル”: ページの中でたくさん歩いて、『異形』を倒して脱出して
“スバル”: そんなこんなで今に至るって感じだ 疲れてないわけねぇよ
“スバル”: ってことで、ユリウス、 ここいらで切り上げて、俺らは部屋へ戻ろう
“ユリウス”: ああ、そうだな
“レム”: では、スバルさんたちの部屋にいるリドアさんに、 こちらに戻るように伝えてください
“スバル”: わかった、レム、リドに伝えとくよ
“スバル”: それじゃ、エミリアたん、レムおやすみ フェネもゆっくり休んでくれ
“エミリア”: ええ、おやすみなさい、スバル ユリウスもおやすみなさい
“ユリウス”: おやすみなさいませ、エミリア様 どうかよい夢を
ナレーター: おやすみのあいさつを交わし、 ユリウスとともにエミリアたちが使う女子部屋をあとにしたスバル
ナレーター: そんな彼の未来には、 まだまだ多くの苦難が待ち受けている──

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Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■プロローグ タイトル:ユリウスとの別れ 更新日:2022/04/06

登場キャラと服装

“スバル”: ──おはよう、ユリウス 新しい朝がやってきたわけだけど……
“ユリウス”: おはよう、スバル
“ユリウス”: 君と旅ができてよかった 私は今日、王都へ発とうと思う
“スバル”: やっぱりそうなるのか……
“ユリウス”: ああ いつまでも近衛騎士団に所属する私が、 王都を留守にするわけにはいかないからね
“ユリウス”: それにクルシュ様への報告もある
“ユリウス”: アナスタシア様から頼まれていることはもちろん、 これまでの経緯をクルシュ様に共有しなければならない
“スバル”: けど……あの仮面野郎とは決着がついてねぇぜ?
“ユリウス”: それだけが心残りだ 私としてもここで別れるのは本望ではない
“ユリウス”: だが……
“スバル”: わりぃわりぃ、そりゃ、お前にはお前の事情があるよな
“スバル”: 俺としては、ヴォラキア帝国ってとこにも、 お前と一緒にいきたいけども
“スバル”: フスミまで一緒にきてくれて、 ぺージの回収を手伝ってくれただけでも
“スバル”: ホント感謝しなくちゃいけないことだって思う
“スバル”: マジ、ありがとな、ユリウス おかげでフスミではページを五枚も『禁書』に封じられたよ
“ユリウス”: すまない、スバル……
“スバル”: いやいや、マジ謝んないでくれ ホント、フスミまで一緒にきてくれただけで感謝だからさ
“ユリウス”: ……それで、やはりスバルたちは帝国へ向かうのだな?
“スバル”: 仮面のあいつは逃げちまったし、 現時点じゃ次の目的地の候補は帝国しかねぇ
“スバル”: 『禁書』の作者の出身地らしいし、 グステコにもカララギにもページはあったんだ
“スバル”: きっとヴォラキア帝国ってとこにも、 『禁書』のページはあるはずだからな
“スバル”: どうせページは全部回収しなくちゃなんねぇんだし、 一番豊かだっていう帝国で見学がてらページの回収をしてくるよ
“ユリウス”: そうか…… くれぐれも気を付けて行動してくれ
“スバル”: ああ、わかってる
“スバル”: お前という戦力を失うだけでも、かなりの痛手だ しかもフェネの体調も優れないときやがる
“スバル”: 無茶はしねぇ 慎重に気を付けて行動することを約束するぜ、ユリウス
“エミリア”: ──それでスバル 出発前にあのお役人さんにお別れを言いにいくのよね?
“スバル”: ああ あの人にはホント世話になった
“スバル”: 立つ鳥跡を濁さず、だ あの人にはちゃんとお礼とお別れを言って立ち去ろう
“エミリア”: ええっと…… その後はユリウスと……
“スバル”: ああ、ユリウスの同行はフスミまでだ だから、ユリウスともお別れになる
“ユリウス”: 旅をご一緒させていただき、ありがとうございました ご一緒させていただけたこと、心から感謝いたします
“エミリア”: ううん お礼を言わなくちゃいけないのは、私の方よ、ユリウス
“エミリア”: ホントにすごーくありがとう ユリウスが一緒にきてくれて、本当にとても助かったわ
“フェネ”: エミリア女史の言う通りです ユリウス氏がいなければ、本当にどうなっていたか……
“フェネ”: 約一名、クソの役にも立たない方がいらっしゃる故
“スバル”: 待て待て、その“クソの役にも立たない”ってのは俺のことか?
“スバル”: ビジバシ活躍して、 見事に『禁書』のページから生還して見せたんだぜ、俺は
“スバル”: 記憶力のいいお前が、そのことを忘れるわけねぇよな?
“フェネ”: 無論、覚えています 大活躍をしたのが、強力な剣であったことも含めて
“スバル”: うぐっ…… そういやそうだったな…… 俺はその剣を握って立ってただけだ……
“スバル”: って、今日は体調が良さそうじゃねぇか、フェネ
“スバル”: “クソクソ”言われる身としては、 嬉しくもあり、悲しくもありの複雑な気分だけどさ
“フェネ”: フェネは好きで“クソクソ”と言っているわけではありません
“スバル”: “好きで言ってない”ってホントかよ! 口を開けば“クソクソ”言ってる印象だぜ、俺は!
“フェネ”: それはスバル氏の問題です 事実、 フェネはスバル氏以外に“クソ”などという言葉は使いません
“エミリア”: うん、私は言われたことがないわ
“ユリウス”: 私もだ、スバル
“スバル”: チッ 確かに被害者は俺だけだな
“フェネ”: “被害者”はフェネの方ですよ、クソ上司 そんなことだからスバル氏は──
“スバル”: ストップだ、フェネ あんま熱くなると、体に堪えるかもしれねぇだろ
“スバル”: だいたい、ホントに平気なのか?
“スバル”: リドやパトラッシュと一緒に、 大人しくお留守番でもよかったと思うぜ、俺は
“スバル”: お前は、あの人には会ったことがないんだしさ
“フェネ”: だからです、スバル氏 ご協力いただいたその方に、 直接お礼の気持ちを伝えたいと思います
“スバル”: けど……
“フェネ”: 本当に大丈夫です、スバル氏 フェネは無理などしていません
“スバル”: ならいいんだけど 心配させないための空元気だけは勘弁してくれよな
“フェネ”: くどいですよ、スバル氏 同行可能な体調だから、フェネは一緒にきたのです
“スバル”: わかったよ くどくて悪かったな
“レム”: ──到着しました
“役人”: いってしまわれるのですね
“スバル”: ああ、まぁ あの仮面野郎が出ていったなら、 俺たちがここにいる理由もないしね
“エミリア”: 本当に色々と協力してくれてありがとう
“エミリア”: 仮面のあの人には逃げられちゃったけど、 フスミが大変なことにならなくてよかったわ
“レム”: はい、本当によかったです そしてそれは、皆さんが協力してくださったおかげです
“役人”: いえいえ、私どもは何も…… このような結果になったのは皆様のご活躍によるものです
“役人”: おかげで、イバダやテンミツのような混乱も起きず
“役人”: この都市に危険が迫っていたことなど 知らない市民がほとんどでしょう
“スバル”: それはそれで、ちょっと寂しい状態だな
“役人”: ……寂しい状態?
“スバル”: ああ、だってそうだろ?
“スバル”: あんたは間違いなく迫りくる危険を回避した立役者で
“スバル”: 発見されなかったら、 あいつはきっと色んな悪さをしたはずなんだ
“スバル”: 俺たちだけであの男を発見できた可能性は低いし、 それは間違いねぇと思う
“スバル”: でも、危険な出来事は実際には起こっていないわけで、 あんたの頑張りが明るみに出ることもねぇ
“スバル”: 危険が迫ってたことを知らない市民が多いってのは、 つまりそういうことだろ
“役人”: 確かにそうかもしれませんが、 厄介事の後には必ず様々な事務作業が発生します
“役人”: たとえ多くの市民が私の苦労を知らなくても、 そういう事務作業をせずに済むことは私にはありがたい
“役人”: それに、こうして皆様のような方々とつながりができ、 アナスタシア様のご期待にもお応えできました
“役人”: あの方であればきっと、何事もなく、 こうしてフスミが無事であることを評価してくださるはずです
“ユリウス”: おっしゃる通りです
“ユリウス”: そして私からも、アナスタシア様には、あなたのご協力について しっかりとご報告させていただくつもりです
“役人”: ありがとうございます、ユリウス様
“役人”: そして、その際は是非、我が都市の民芸品の仕入れ量を増やすよう アナスタシア様へのお口添えをお願いいたします
“ユリウス”: わかりました
“ユリウス”: 私の口添えにどれほどの効果があるかはわかりませんが、 そう進言するとお約束しましょう
“スバル”: なんだよ、やった分はしっかり回収する気満々じゃねぇか
“スバル”: カララギには珍しく無欲な人かと思ったけど、 やっぱあんたもカララギの人なんだな
“役人”: ははは 無欲の者にここの役人は務まりませんよ
“役人”: 様々なことをフスミの利益につなげることも、 私の大切な仕事の一つですから
“フェネ”: でしたら、スバル氏もお役に立てるのではありませんか? ロズワール氏はルグニカでも有名な貴族です
“役人”: ほう…… 皆様はメイザース辺境伯の関係者なのですね?
“レム”: はい レムはロズワール様の使用人です
“スバル”: 同じく俺もだ
“スバル”: んで、こちらにおわすのが、 そのロズワールが王様にしようとしてるエミリアたんだよ
“スバル”: そんな俺らがどうして仮面の男を追ってるかについては、 以前も言ったように、詳しくは話せねぇけど
“役人”: そちらについては、お話できる時がきたらで構いません
“役人”: ですが、是非、メイザース辺境伯ともお取引を──
“スバル”: ふぅー、やれやれ 色んな売り込みに合って、結構時間がかかっちまったな
“スバル”: それもこれも、フェネが余計な情報をぶっこんだせいだ
“フェネ”: あの方のご協力がなければ、 様々なことがうまくいかなかったと推測できます
“フェネ”: 恩をお返しする意味でも、 ロズワール氏をご紹介するのは当然かと
“フェネ”: それに、あの方ができる方であるなら
“フェネ”: 関係を維持することは、 エミリア女史にとっても有益なのではないでしょうか
“エミリア”: ええ 私はあのお役人さんと、これからも仲良くしたいわ
“スバル”: まぁ、王選が開始されたら、色々協力はしてくれるかもな
“スバル”: あの人の一番はアナスタシアさんで、 エミリアたんはあくまで次点って扱いだろうけど
“レム”: そうだとしても、協力を得られるのであれば、とても心強いです あの方の実力に疑う余地はありません
“スバル”: とはいえ、そうなると、今回伏せた事情を話す必要があるし
“スバル”: すべての事情を知ったうえで、 あの人から協力を得られるかは微妙な気がするな
“スバル”: 今の段階だと、 俺らはフスミの危機を事前に回避した恩人的な扱いだけど
“スバル”: そもそもその原因を作ったのが俺だってわかれば、 話は間違いなく変わってきちまう
“エミリア”: でも、あのお役人さんには、色々片付いたら、 ちゃんと事情を説明するって約束したわ
“エミリア”: だから、ちゃんと話さないと
“レム”: そうですね 約束はちゃんと守らないといけません
“スバル”: くっ…… マジ、俺のせいで……
“エミリア”: ううん、それは違うわよ、スバル
“エミリア”: スバルが『禁書』を持ち出さなかったら、 あのお役人さんとは会えてないもの
“エミリア”: それにフェネとも会えてないわ
“エミリア”: ううん、フェネやあのお役人さんだけじゃない
“エミリア”: クルシュさんやアナスタシアさんとも仲良くなれてないし、 ユリウスともこうやって旅を一緒にできなかったわ
“エミリア”: 確かに『禁書』のせいで、色々大変なことになっちゃったけど、 全部が全部ダメだったわけじゃなくて
“エミリア”: そのおかげでいいこともたくさんあって、 スバルには“ありがとう”って言いたい気持ちが私にはあるわ
“スバル”: いやいや、エミリアたん “ありがとう”はさすがに違うよ
“エミリア”: やっぱりそうよね……
“エミリア”: でも、なんでかしら……? 私に“ありがとう”って気持ちが本当にあるのよ
“スバル”: エミリアたん……
“スバル”: でも、やっぱり“ありがとう”は違うかな
“スバル”: 確かに『禁書異変』で色んな出会いがあって、 色んな人のことを深く知ることができたかもしれないけど
“スバル”: だからって俺の罪が帳消しになるわけじゃない
“ユリウス”: そうかもしれないが、 不思議と私はスバルを責める気持ちにはなれない
“レム”: レムもです、スバルくん レムにはスバルくんを責める気持ちはありません
“スバル”: レム、ユリウス……
“フェネ”: 皆様はお優しいですが、フェネにはしっかりと スバル氏を責める気持ちがあるので安心してください
“スバル”: “安心”って何が!?
“スバル”: 確かにみんなは優しすぎだけど、お前はお前で極端で、 俺にはその間ぐらいがちょうどいいかな!
“スバル”: まぁ、責められて当然だし、そうしないみんなには感謝するけどさ
“スバル”: ──いくのか、ユリウス?
“ユリウス”: ああ いつまでもここにいるわけにはいかないのでね
“エミリア”: ユリウス、色々ありがとう 気を付けてね
“ユリウス”: ありがとうございます、エミリア様 エミリア様もどうかご無事で
“ユリウス”: ……レムさん、エミリア様のことをどうか頼みます
“レム”: お任せください、ユリウス様 エミリア様のことはレムがこの身に代えてもお守りします
“レム”: もちろん、スバルくんのことも
“スバル”: 今朝言ったけど、俺は無茶せず、レムが “この身に代えて守る”なんてことにならないよう気を付けるよ
“スバル”: だから、安心してくれ
“ユリウス”: であれば、私から言うことは何もない その言葉を忘れないでいてくれたら十分だ
“スバル”: ああ、忘れねぇよ 約束する
“ユリウス”: それで……リドアさん
“リドア”: なんでしょう、ユリウスさん
“ユリウス”: あなたはこのまま、スバルたちといかれるのでしょうか?
“リドア”: もちろんです スバルさんのお役に立つため、リドは引き続き同行します
“ユリウス”: それはなぜでしょう、リドアさん?
“リドア”: スバルさんのお役に立つためです 師匠からそう申し付かっているので
“ユリウス”: では、あなたの師匠……ガーディーという方は、 何故あなたにそのような申し付けを?
“リドア”: それについては、リドにはわかりません 師匠に聞いてください
“ユリウス”: 残念ながら、私にはあなたに尋ねる以外に術がない ガーディーという方に真意を問うことはできないのでね
“ユリウス”: もし、そのような方法があるのでしたら、 ぜひご教示いただきたいものです
“リドア”: ……ユリウスさんは、リドが同行することに反対なのでしょうか?
“ユリウス”: あなたが真の味方であるなら、 実に頼もしい戦力であることは間違いありません
“ユリウス”: ですが、“スバルの役に立つため”としながらも、 あなたがガーディーという方の指示を優先することは明白
“ユリウス”: もし、ガーディー氏の指示がスバルに害を成すものだった場合、 あなたはどう行動されるのでしょう?
“リドア”: …………
“ユリウス”: リドアさん、今の質問には答えられませんか?
“リドア”: ユリウスさんからの質問に答える必要性をリドは感じません
“スバル”: ユリウス、ガーディーが俺らにリドを同行させるのは、 あいつが『禁書』のページを見たいからだ
“スバル”: だから、フスミで回収したページも、 いずれあいつに見せてやることになる
“スバル”: 最初は自分で集めるつもりだったみたいだけど
“スバル”: 『禁書』が自分の手に負える代物じゃないってことを あいつは身をもって経験したんだよ
“スバル”: だから、リドを俺らに同行させて、 ページ集めの手伝いをさせてるんだ
“スバル”: あいつに魔が差して、見るだけじゃ満足できず、 やっぱり『禁書』がほしいってことになるかもしれねぇけど
“スバル”: そうなるのはもっと先だ そういう心配は『禁書』のページを集め終わってからでいい
“スバル”: だから、現時点では、貴重な戦力として、 リドにはこれまで通り同行してもらって大丈夫だ
“スバル”: そういう感じで合ってるよな、フェネ?
“フェネ”: 左様です 現時点ではこのままでよいかと
“ユリウス”: わかりました フェネさんがそう言うのであれば、 これ以上口を挟むのはやめておきましょう
“ユリウス”: それでは、私はこれで
“エミリア”: 本当にありがとう、ユリウス ほんとにほんとに感謝の気持ちでいっぱいよ
“ユリウス”: そのお言葉だけで、ご一緒させていただいた甲斐がありました では、エミリア様、皆様、どうかご無事で──
“スバル”: いっちまいやがったな……
“スバル”: あいつとの別れを惜しむことになるなんて、 出会った頃は想像もできなかったぜ
“フェネ”: ……
“スバル”: フェネ、大丈夫か?
“フェネ”: …………
“エミリア”: フェネ?
“フェネ”: 申し訳ありません 少し体調の方が……
“スバル”: やっぱ俺らは出発を延期するか? 役人の人への挨拶やなんやで、ちょっと時間も食っちまったし
“フェネ”: その必要はありません…… 我々も急ぎ出発を……
“スバル”: けど、ゆっくり休むんだったら、 竜車より宿のベッドの方がいいだろ
“スバル”: 別に急ぐ旅でもないんだしさ
“フェネ”: いえ、急ぐに越したことはありません 一日の遅れがどのような結果を招くかまったく読めません故
“スバル”: そうは言うけどよ……
“フェネ”: 本当にフェネの体調は心配不要です……
“フェネ”: レムさんが御者を務めるのであれば、竜車内は快適です 十分疲れを癒すことができるでしょう……
“レム”: フェネさんがゆっくり休めるよう、レムは細心の注意を払います なので、レムもやはり出発した方がいいと思います
“レム”: レムには、逃げた仮面の男が…… ヴォラキア帝国へ向かった気がしてなりません
“スバル”: あいつが……帝国に?
“レム”: はい なんの所縁(ゆかり)もない、 グステコやカララギにもページは移動していました
“レム”: もし、ページが自分の意志で移動することができるのであれば、 作者であるエドガーさんの故郷を目指さないわけがないと思います
“スバル”: 確かにページは自分の意志で移動できるみたいだし
“スバル”: 作者の故郷はカララギやグステコなんかよりも、 ページにとっては気になる場所だろうな
“スバル”: 結構なページが移動しててもおかしくねぇ
“エミリア”: そうね…… フェネの体調は心配だけど、 竜車の中でも休むことはできるわ
“エミリア”: やっぱり予定通り出発しましょう、スバル 私もその方がいいと思うの
“スバル”: わかったよ、エミリアたん エミリアたんがそう言うんだったら、出発で決まりだ
“スバル”: ってことで、帝国へ向けて出発しよう!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_01

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■1話 タイトル:ギリギリ許容範囲内 更新日:2022/04/06

ナレーター: スバルたちを乗せた竜車はフスミを出発し
ナレーター: パトラッシュと共に一路ヴォラキア帝国を目指していた──
フェネ: …………
“エミリア”: フェネ、眠ってるわね
“スバル”: ああ、起こさないように注意しよう リドも頼むな
“リドア”: わかりました フェネさんを起こさないよう、注意します
“スバル”: にしても、竜車内がなんだか寂しく感じるのは、 ユリウスの奴がいないからだな
“エミリア”: ええ ユリウスとはしばらく一緒だったもの スバルとユリウスが仲良くなれて、本当によかったわ
“スバル”: そうだな なんだかんだ、仲良くなっちまったよ
“スバル”: 竜車の中だけじゃなくて、 あいつとは宿でも一緒の部屋だったからさ
“スバル”: ってことで、宿の男部屋は、また俺一人に逆戻りだな
“パック”: ──なんだ、スバル、一人だと寂しいのかい? だったら、ボクが一緒に男部屋にいてあげてもいいよ
“パック”: もちろん、“昼間限定”だけどね
“スバル”: おいおい、昼間は宿にほとんどいねぇし、 寂しいのは“夜限定”でだよ
“スバル”: って、パック、ずいぶんと久々な登場だな 元気してたか?
“パック”: まあ、あの子狐の子はボクがいない方が動きやすいと思うし、 色々気を遣ってあげてるからね
“パック”: あの子と一緒にいることが多いスバルは、 必然的にボクには会ってないことになるね
“パック”: もちろん、リアとはちゃんと会えてるけど
“スバル”: 俺としてはモフモフなパックとフェネで、 両手に花を経験したいけども
“スバル”: お前って、フェネに気を遣ってやってたんだな?
“スバル”: この前はフェネのことを快く思ってねぇ感じだったけど、 あれはもういいのか?
“パック”: ボクは優しいからね 我慢して様子を見てあげてる感じだよ
“パック”: リアに危害を加えるようなことをしたら許さないけど、 今のとこはギリギリ許容範囲内かな
“パック”: なんだかあの子には色々事情がありそうだし、 もうしばらく様子を見てあげるつもりだよ
“スバル”: けど、お前って、『禁書異変』がはじまってから、 なんか存在感が薄いよね?
“スバル”: 確かに日が暮れてからの戦いが多かったけど、 ページの中でも出てきてくれねぇじゃん
“パック”: なんかページの中ってマナが少ない状態で、 夜みたいな感じなんだよ
“スバル”: あっ、それは確かにそうかもしれねぇな ページがマナで満たされたら『異形』が顕現するわけだし
“スバル”: ページに吸い込まれるってことは、 そのページがまだマナで満たされてないってことだ
“スバル”: そりゃ、ページ内のマナは少ない状態だろうな
“スバル”: フェネもそんなことを前に言ってた記憶があるよ
“パック”: でも、リア、もしものときはオドを使ってボクを呼び出すんだよ
“パック”: 今のところなんとかなってるみたいだけど、 リアたちが『異形』って呼んでる存在はなかなかの強敵だからね
“エミリア”: わかったわ、パック もしものときはよろしくね
“エミリア”: でも、そういえば、ホントにパックとスバルって、 最近全然会ってなかったわよね
“スバル”: ああ、そうだね んで、俺とパックって限定するってことは、 レムは会ってるってこと?
“エミリア”: うん、スバルよりは会ってるわね 私とレムで一緒にいる時間って結構あったもの
“スバル”: うぐっ…… 確かに俺はフェネとセットが多くて
“スバル”: フェネがいないところで エミリアたんと一緒になることは少なかった気がする
“スバル”: フスミで、エミリアたんが部屋まで 会いにきてくれたことはあったけど、あれは夜だったし
“パック”: でも、スバルはあの子のモフモフで満たされてたから、 ボクに会えなくても大丈夫でしょ?
“スバル”: いやいや、意外にあいつはモフモフさせてくれないから、 モフモフ不足な毎日だよ
“スバル”: だから、このタイミングでぜひモフモフの補充を──
“パック”: って、残念、スバル 子狐の子が起きそうだから、ボクはもういくよ
“スバル”: え? マジで? 少しでいいからぜひモフモフを──
“スバル”: って、消えちまいやがった……
“フェネ”: うぅ……
“スバル”: フェネ、目が覚めたみたいだな?
“フェネ”: はい…… 眠ったので少し楽になりました……
“エミリア”: でも、まだ体調が悪そうよ、フェネ なんだか元気がないわ
“フェネ”: 申し訳ありません、エミリア女史……
“フェネ”: 必要最低限の力で活動し、体調の悪化を防ごうと思います…… “元気”という状態はお見せできませんが、ご容赦ください……
“スバル”: まぁ、完全に動けなくなっちまうのが最悪のケースだから、 省エネ活動で体力を温存するのは悪くねぇ選択だよ
“スバル”: とはいえ、お前の体調不良の原因はなんだ? アルビスでの寒さみたいに原因があるなら教えてくれ
“フェネ”: それについてはわかりかねます……
“フェネ”: もしかしたらフェネは……例の男に 呪いのようなものをかけられてしまったのかもしれません……
“スバル”: ……え?
“フェネ”: フェネなりに体調不良の理由を考えてはいるのですが…… 残念ながら心当たりがなく、その可能性が浮上しました……
“スバル”: 確かにフェネはページを感知できるから、 相手としてはどうにかしたい存在ではあるな
“スバル”: 実際、出遅れを挽回してフスミでページを回収できたのも、 お前の感知能力のおかげだったしな
“スバル”: それができなくなるのは、 俺らにとってはかなりのマイナスになっちまう
“リドア”: …………
“スバル”: ん? リド、どうかしたか?
“リドア”: いえ…… なんでもありません……
“スバル”: ホントにそうか? もし、フェネの体調不良に心当たりがあるなら 教えてくれると助かるよ
“リドア”: すみません、スバルさん “呪い”と言われてもリドにはあまり実感が持てません
“スバル”: 確かにあんま馴染みがあるもんじゃねぇか、呪いは
“スバル”: けど、俺自身は、 呪われて大変な目に遭ったことがあるからわかるんだけど
“スバル”: マナが抜かれて衰弱させるような呪いだと、 フェネみたいな症状になってもおかしくない気がする
“スバル”: ここにベア子がいてくれりゃ、そういうことが 特定できるんだけど、あいつがいなくてマジ残念だぜ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_02

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■2話 タイトル:かつては堅固な城塞都市 更新日:2022/04/06

ナレーター: 必要最低限の休憩で竜車を走らせたスバルたちは
ナレーター: 数日後、カララギの国境からほど近い ヴォラキア帝国の城塞都市ガークラに到着していた──
“スバル”: おいおい、帝国って豊かな国じゃなかったのか? なんだよこの町は、廃虚みたいな状態じゃねぇか
“レム”: これでは、今日泊る宿も見つけられそうにありません
“レム”: フェネさんには久々に宿で、 ゆっくり休んでもらおうと思ったのですが……
“スバル”: そうだな……
“スバル”: 竜車で待つエミリアたんやフェネには、 朗報を持ち帰りたかったけども
“スバル”: この様子じゃそうもいきそうにねぇ
“リドア”: ──スバルさん、誰かがこちらにやってきます
“男”: おい、お前らはそこで何してるんだ?
“スバル”: いや、俺らは物探しの旅をしてて……
“スバル”: 宿でゆっくりできればと立ち寄ったんだが、 あまりの光景に言葉を失ってたところだよ
“男”: 宿でゆっくり、だと?
“男”: そんなもん期待して立ち寄ったんなら、 お門違いもいいところだぜ、兄ちゃん
“男”: 以前はヴォラキアで最も堅固(けんご)な都市って 謳われるような城塞都市だったが
“男”: 今はご覧の有様だ 旅人がゆっくりできるような場所じゃねえよ
“スバル”: にしても、その帝国一だっていう城塞都市が どうしてこうなったんだ?
“スバル”: もしかして、ページから出てきた化け物が 暴れ回ったわけじゃねぇよな?
“男”: はあ? 何言ってんだ、兄ちゃん
“男”: こんなことできる奴なんて、 魔女教の大罪司教ぐらいしかいねえだろうが
“レム”: くっ…… 魔女教……
“スバル”: ん? どうした、レム?
“レム”: いえ、なんでもありません
“スバル”: いやいや、明らかに変な感じだぜ、レム 魔女教?ってのがどうかしたのか?
“レム”: スバルくん、本当になんでもありません
“レム”: そんなことより、この方が言うように、 この町にゆっくりできるような宿は期待できないでしょう
“レム”: 今は、急ぎ出発するべきです
“スバル”: 確かにそうかもしれないけど、 出発するにしても次の目的地が決まってねぇ
“スバル”: フェネだけじゃなくて、俺らにも休息が必要だ
“スバル”: ここにはないとしても、よさげな宿が ありそうな場所ぐらいはこの人に聞いとこうぜ
“スバル”: ってことで、申し訳ねぇんだけど、 この近くにいい宿がある町や村はねぇか?
“スバル”: 帝国にくるのは初めてで、正直、右も左もわからない状態なんだ
“男”: そりゃまた、 ずいぶんと行き当たりばったりな旅をしてやがるな、兄ちゃん
“男”: そんな旅に付き合わされる姉ちゃんたちには、同情しちまうよ
“レム”: その必要はありません レムは好きでスバルくんについてきています
“リドア”: リドの使命はスバルさんのお役に立つこと どのような旅であれ、その使命が果たせるのであれば気にしません
“男”: おいおい、姉ちゃんたちは好きで付き合ってやってんのかよ
“男”: そんなにいい男には見えねえが、 やけにモテやがるじゃねえか、兄ちゃん
“男”: どっちもべっぴんさんで、羨ましいぜ、まったく
“スバル”: 確かにどっちもべっぴんさんのうえに、 竜車で待つ女の子までべっぴんさんだけど
“スバル”: あんたが羨むような状態じゃねぇよ
“スバル”: そもそもこの旅自体が、俺のやらかしをどうにかするための旅で、 肩身が狭い立場だしね
“スバル”: しかも、仲間の一人は、体調不良で苦しんでる
“スバル”: できればそいつのことを宿でゆっくり休ませてやりてぇんだけど、 その当てさえない状態だよ
“男”: そいつの体調はだいぶよくねえのか?
“スバル”: ああ 体調が悪いうえに、ずっと竜車の中だったからな かなり悪そうだよ
“男”: そうか…… それじゃ、ガイラハル温帯近くの宿場町なんてどうだ?
“男”: この辺でよさげな宿がありそうな場所となりゃ、 そこぐらいしか思いつかねえ
“男”: 小さな宿場町だが、 ガイラハル温帯にある温泉を利用する連中で賑わってるし
“男”: ゆっくり休めるような宿もあったはずだ
“スバル”: ……温泉? この辺に温泉があるのか?
“男”: 多少距離はあるが、 ガークラの東には温泉が湧くガイラハル温帯があるぜ
“男”: まあ、ちと訳ありな場所ではあるんだが……
“男”: ガイラハル温帯には、温泉目当の客が、 帝国以外からもやってくるって話だ
フェネ: …………
“レム”: ──それでスバルくん、 次の目的地はガイラハル温帯ということでいいのでしょうか?
“スバル”: ああ 温泉といえば湯治だ 体調が悪いフェネをぜひ温泉に入れてやりたい
“スバル”: それに俺らも、温泉に浸かれば、きっと長旅の疲れがとれるはずだ
“スバル”: レムはずっと御者台でほとんど不眠不休だったし
“スバル”: エミリアたんやリドアも竜車の中で座りっぱなしで、 体中こってるはずだからさ
“エミリア”: 温泉、私もいってみたいわ だから、次の目的地はガイラハル温帯でいいと思う
“リドア”: リドはスバルさんの決定に従います
“レム”: レムのことは心配には及びませんが
“レム”: 確かに温泉に浸かれば、 フェネさんの体調は改善するかもしれません
“レム”: 近くに宿場町もあるということですし、 温泉の後は宿でゆっくり休むこともできますね
“スバル”: ってことで、俺らはガイラハル温帯を目指そう
“スバル”: まぁ、あの人が言ってた“ちと訳あり”ってのが、 気になることは気になるけど……
“フェネ”: ガイラハル温帯は四大精霊の一角、 大精霊ムスペルの住処(すみか)です……
“フェネ”: 居住は熱風の妨害により許されませんが、 温泉に浸かる程度であれば許されると聞きます……
“スバル”: おっと、俺らの話が聞こえてたみたいだな 起こしちまったなら、悪かったぜ、フェネ
“スバル”: んで、“ちと訳あり”ってのは、 そのムスペルとかいう大精霊のことなんだな?
“フェネ”: “ガイラハル温帯”という単語に触発され、 思い出した記憶によるとそうなります……
“フェネ”: 故に、宿場町についても、 ガイラハル温帯からは少し離れた場所にあったはずです……
“スバル”: なるほど…… 温泉に浸かるぐらいしか、 大精霊が許してくれないんじゃ、そうなるわな
“スバル”: 温泉に浸からせてくれるだけ、 その大精霊には感謝した方がいいのかもしれねぇけどさ
“スバル”: それで、フェネ的にはどうだ? 次の目的地はガイラハル温帯でオッケー?
“フェネ”: ガイラハル温帯近くの宿場町には、 多くの旅人が訪れているはずです……
“フェネ”: 情報収集には適していると推測できるので、 フェネもガイラハル温帯いきには賛成です……
“フェネ”: 温泉の効果でフェネの体調が回復する可能性は低いですが……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_03

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■3話 タイトル:ガイラハル温帯を目指して 更新日:2022/04/06

ナレーター: スバルたちが帝国入りして最初に訪れたのは、 城塞都市ガークラだった
ナレーター: だが、ガークラは魔女教の大罪司教に壊滅させられており、 とても滞在できる状態ではなかった
ナレーター: ガークラで出会った男から、ガークラの東に位置する ガイラハル温帯に温泉があるという情報を得たスバルたちは
ナレーター: 近くに宿場町もあるということから、 一路ガイラハル温帯を目指すことになるのだった──
フェネ: …………
“エミリア”: フェネ、よく眠ってるわ
“スバル”: さっきは起こしちまって、悪いことしたな 温泉に浸かって、少しは元気になってくれればいいけど……
“エミリア”: その可能性は低いって言ってたわね、フェネ
“スバル”: ああ でも、できることは試しておこう
“スバル”: 俺の故郷でも、温泉のおかげで体調が回復したってのは、 割とよく聞く話だからさ
“スバル”: それにしても……ガークラって都市は酷い状態だったな
“スバル”: かつて帝国で最も堅固(けんご)って謳われてた 城塞都市だったとはとても思えねぇ
“スバル”: あの状態自体は、『禁書』が招いた結果ではないみたいだけど
“スバル”: あの仮面野郎がやろうとしてることを考えると、 とても他人事とは思えねぇ
“スバル”: あんなひでぇ状態にした奴のことは気になるけど、 俺らはまず、『禁書』の件をなんとかしねぇと……
“スバル”: マジですげぇ、気になるけど…… レム、何か知ってそうだったし……
“エミリア”: スバル、まずは『禁書』の件なんじゃないの?
“スバル”: うん、その通りだよ、エミリアたん けど、レムが何か知ってるみたいで……
“スバル”: もちろん、まずは『禁書』の件だってことは、 頭ではわかってるけどさ
“エミリア”: でも、レムは教えてくれなかったのよね?
“スバル”: ああ “なんでもない”って言われて、 その話はそこで終わりだったよ
“エミリア”: だったらやっぱり、その話は終わりよ、スバル
“エミリア”: レムは意地悪をして教えてくれないわけじゃないわ きっと理由があるはずだもの
“エミリア”: それに、本当に“なんでもない”かもしれないでしょ?
“エミリア”: だから、その話はおしまいです 私たちは頑張って『禁書』のページを集めましょう
“スバル”: そうだね、エミリアたん
“スバル”: まずはページを全部『禁書』に封印して、 それ以外のことはその後だ
“スバル”: レムが“なんでもない”って言うのには、 きっと理由があるはずで
“スバル”: 今必要な情報だったら、きっと話してくれるはずだもんな
“スバル”: よし、エミリアたんのおかげで、今度こそ踏ん切りがついた ガークラをやった奴の件は後回しだ
“スバル”: ってことで、ガーディーの奴から、『禁書』について 何か新しい情報が届いたりしてねぇか、リド?
“スバル”: あいつの情報通り、フスミにページはあったわけだし、 新しい情報が届いてるなら、ぜひ教えてくれ
“リドア”: 申し訳ありません、スバルさん
“リドア”: スバルさんたちにお見せした手紙以降、 師匠からの連絡はありません
“リドア”: 一応師匠には、スバルさんたちがヴォラキア帝国へ向かうことを お知らせする手紙は出しましたが
“リドア”: その手紙が師匠の元へ届いたかも不明です
“リドア”: このようにリドも旅をしており、師匠は師匠で旅の最中(さなか)
“リドア”: 次にリドが師匠にお会いできるのは、 かなり先のことになってしまうかもしれません
“スバル”: 携帯電話でもありゃ、 こまめに連絡をとり合えるのかもしれねぇけど
“スバル”: お互いが旅をしてるんじゃ、確かに連絡のとりようがねぇな
“スバル”: せめてあいつが、次の行き先を具体的に教えてくれてりゃ、 やりようがあったかもしれねぇけど
“スバル”: ガーディーの奴、 “帝国に向かう”としか手紙には書いてなかったもんな
“スバル”: 帝国は広いみたいだし、そんな情報だけじゃ連絡のとりようがねぇ
“リドア”: すみません、スバルさん……
“スバル”: いやいや、リドが謝ることじゃねぇよ
“スバル”: 新情報が届いてたらラッキーぐらいのダメ元の質問だ 気にしないでくれ
“スバル”: それに案外、これからいく温泉にいるかもしれねぇしよ
“リドア”: ……師匠が、温泉に?
“スバル”: 帝国に入って、ガークラがあんな状態だったら
“スバル”: きっと帝国での最初の宿は、 ガイラハル温帯近くにある宿場町になるはずだ
“スバル”: んで、温泉が気に入って、しばらくその宿場町に 滞在するなんてこともない話じゃねぇだろ?
“リドア”: そうだったら嬉しいです リドは長らく、師匠に会えていませんので
“ガーディー”: ──これはこれは、お久しぶりですな
“ガーディー”: 再びお会いでき、とても光栄です
“スバル”: が、ガーディー!? まさか本当にいるとは驚きだよ、マジで!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_04

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■4話 タイトル:温泉の虜 更新日:2022/04/06

ナレーター: 帝国に入ってから最初に訪れたガークラから東へ進み、 ガイラハル温帯にある温泉へとやってきたスバルたちは
ナレーター: ガーディーとの再会を果たしていた──
“リドア”: 師匠、お久しぶりです
“ガーディー”: 久しぶりだね、リドア スバル殿のお役には立てているのか?
“リドア”: それについては……
“スバル”: ちゃんと役に立ってくれてるよ、リドは テンミツでもフスミでもホント世話になった
“スバル”: って、お前って“スバル殿のお役に”的なことを 言うキャラだっけ?
“スバル”: お前が懇意にしたいのは、麗しのエミリアたんやレム、 そして、可愛らしいフェネだった記憶があるよ
“スバル”: だから、お前の口から真っ先に俺の名前が出て、 正直びっくりしてる
“スバル”: さんざん俺を足蹴(あしげ)にしてきたお前が、 いったいどういう風の吹き回しだ?
“ガーディー”: ……確かに、わたくしはどうかしておりましたな
“ガーディー”: しばらく会わぬうちに、わたくしの中でスバル殿の存在が 美化されてしまっていたようです
“ガーディー”: ですが、よく見れば……いいえ、よく見なくても、 致命的とも言えるその目つき
“ガーディー”: エミリア嬢、レム嬢、フェネ嬢 純情可憐な皆様を差し置き、 スバル殿の名を出したこと、どうかお許しください
“スバル”: 待て待て、“どうかしてた”は、さすがに俺に失礼だろ!
“スバル”: それに、こんな目つきでも、致命的ってわけじゃねぇ! 俺はしっかりと胸を張って、これからも生きていくつもりだ!
“フェネ”: それはさすがに厚かましいですよ、スバル氏
“フェネ”: スバル氏が負った致命的なものは目つきだけではありません
“スバル”: ふぇ、フェネ?
“フェネ”: 短慮軽率(たんりょけいそつ)にして 軽佻浮薄(けいちょうふはく)
“フェネ”: まさに浅薄愚劣(せんぱくぐれつ)の極みです
“フェネ”: さらに有口無行(ゆうこうむこう)で志大才疎(しだいさいそ) スバル氏に“胸を張る”要素は見当たりません
“スバル”: 俺はどんだけ致命的なもんを抱えてるんだよ!? しかも、指摘されたこと全部に心当たりがありやがる!
“エミリア”: ……ええっと、スバル、ちょっと難しい言葉が多くて、 私にはわからなかったわ
“エミリア”: フェネが言ったこと、わかったなら教えて
“スバル”: つまりフェネは、後先考えずに行動して失敗する馬鹿な奴だって 俺のことを言ったんだ
“スバル”: あと、高い目標を掲げてるくせに、 口ばっかで実力が伴ってないとも言ってる
“エミリア”: へー、すごいわね、スバル あんなに難しい言葉がわかっちゃうなんて
“スバル”: あ、ありがとう、エミリアたん 確かに難しい言葉は人より知ってる自信があるよ
“スバル”: 昔、そういう言葉を使うのがかっこいいって思ってた 時期があって、そんときに必死に覚えたからね
“スバル”: まさか自分がそういう言葉を浴びせられて
“スバル”: その意味を自分を良く見せたいって思ってる相手に 説明することになるとは思わなかったけど
“レム”: 確かにスバルくんには、そういうところがあるかもしれませんが、 スバルくんがとても努力していることをレムは知っています
“レム”: それにレムは、そんなスバルくんのことをとても可愛く感じます
“スバル”: 気を遣ってくれて、ありがとな、レム
“スバル”: 努力してこの状態ってのは、すげぇ情けなくはあるが、 これからも諦めずに努力していくつもりだ
“スバル”: なんせ、諦めの悪さだけが、俺の唯一の取柄だからね
“スバル”: って、この感じ、なんだか懐かしいな……
“スバル”: けちょんけちょんに言われた俺としては、 複雑な思いがあるけど、この感じは悪くねぇ
“スバル”: やっぱりフェネはそうじゃなくっちゃ、 なんかしっくりこねぇぜ
“フェネ”: 恥ずかしげもなく“胸を張って生きる”などと宣言するスバル氏に いてもたってもいられなくなってしまいました
“フェネ”: その状態で胸を張って生きられたら、周囲が迷惑です そのことを肝に銘じてください
“スバル”: 相変わらず手厳しい!
“スバル”: けど、“胸を張る”にしても、『禁書異変』を解決してからだ 今の俺に胸を張る資格なんてなかったぜ
“スバル”: んで、そのためにも、ガーディーと会えたのはラッキーだ
“スバル”: お前がリドに手紙で知らせてくれた通り、 フスミにはページがあって、俺らはそれを封じることができた
“スバル”: 他にも何か情報を知ってるなら、ぜひ教えてくれ
“ガーディー”: 申し訳ありませんが、スバル殿 わたくしは貴殿の期待にお応えできない
“ガーディー”: 『遺作』についての情報を集めると決意し、 ヴォラキア帝国へは入ったものの
“ガーディー”: すっかり温泉の虜となってしまい、 こちらの温泉へと足繁く通う日々を過ごしております
“スバル”: えーっ!? 帝国にきてからずっと温泉三昧!?
“ガーディー”: スバル殿も一度(ひとたび)浸かれば、 きっと温泉の素晴らしさがわかるはずです
“スバル”: 自慢じゃねぇが、温泉の素晴らしさについちゃ、 故郷ですでに経験済みだよ
“スバル”: だから、お前が言ってることもわからなくはねぇが、 それにしたって壮大に目的を失いすぎだ!
“スバル”: いくら温泉が素晴らしいからって、 お前の『禁書』に対するモチベーションはどこいった?
“スバル”: 色々切迫してて、大変な状態だから、 そろそろお前は『禁書』の情報集めに復帰してくれ!
“ガーディー”: そう言われましても……
“スバル”: おいおい、マジでどうしたんだ?
“スバル”: そういや、フスミで新しいページをゲットしたって伝えたのに、 “見せろ”って言ってきやがらねぇな
“スバル”: これまでの反応とあまりにも違いすぎる
“ガーディー”: 今、わたくしの頭の中は、 “温泉に早く入りたい”という気持ちでいっぱいです
“ガーディー”: 立ち話もなんですから、さあ、貴殿も早く男湯の方へ
“ガーディー”: リドアは可憐な皆様を女湯へお連れしなさい
“リドア”: わかりました、師匠──
“スバル”: 待て待て 温泉の前にもうちょい話をしよう
“スバル”: 『禁書』の件はマジで待ったなしの状態だ 温泉にうつつを抜かしてる場合じゃねぇんだよ
“スバル”: フェネ、ちょっと『禁書』を貸してくれ
“フェネ”: わかりました、スバル氏
ナレーター: フェネから『禁書』を受け取ったスバルは、 フスミで手に入れた新しいページの数々をガーディーに示した
“スバル”: ──これも、これも、これも、フスミで封じた新しいページだ フスミでは色々あって、全部で五枚も封じることができたんだよ
“ガーディー”: こ、これは…… や、やはり……どれも素晴らしい……
“スバル”: “素晴らしい”って表現には疑問を感じるけど、 少しは『禁書』に対する興味を取り戻せたか?
“ガーディー”: わたくしとしたことが、なんたる不覚…… 『遺作』そっちのけで温泉に興じてしまうとは……
“ガーディー”: 感謝いたします、スバル殿 わたくしは目を覚ましました
“ガーディー”: まだ見ぬ『遺作』のページがこの世界のどこかにある そのような状態を看過するわけにはいきません
“ガーディー”: わたくしは急ぎ、帝都ルプガナへ発とうと思います
“ガーディー”: きっとその都市であれば、 『遺作』に関する貴重な情報が得られるはず
“ガーディー”: ですがその前に、リドアと少し話をさせてください
“スバル”: もちろんだ そもそもお前の助手だろ 好きにやってくれ
“ガーディー”: では、リドア
“リドア”: はい、師匠──
ナレーター: 新たに得た『禁書』のページを見たことで、 人が変わったようになったガーディーは
ナレーター: リドアとの会話を手短に済ませ、スバルたちを振り返った
“ガーディー”: わたくしのルプガナでの滞在場所などの情報は、 リドアに知らせてあります
“ガーディー”: 何かあれば連絡をとり合うことができますので、 ご安心ください
“スバル”: ああ、そりゃ助かるぜ
“スバル”: けど、最後に浸かっていかなくていいのか? ドはまりしてたんだろ、この温泉
“ガーディー”: いえ、浸かることで心変わりする可能性があります なので、わたくしはこのまま発たせていただきます
“ガーディー”: それでは、エミリア嬢、レム嬢、フェネ嬢、どうかご無事で リドア、皆様のことを頼む
“ガーディー”: では──
“スバル”: あ! おい! 俺への挨拶は? ……って、いっちまいやがった
“スバル”: 一瞬だけ、俺のポジションがあいつの中でアップしてたけど、 マジ一瞬だけだったな──
“フェネ”: うぅ……
“エミリア”: フェネ!
“レム”: フェネさん!
“リドア”: ……
“スバル”: ──フェネぇぇぇーーーーっ!!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_05

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■5話(中編) タイトル:再会はいつもこんな感じ 更新日:2022/04/06

ナレーター: ガイラハル温帯にある温泉にて、 ガーディーと再会を果たしたスバルたち
ナレーター: 温泉の魅力にとりつかれ、 『禁書』に関する調査を放棄した状態のガーディーだったが
ナレーター: スバルがフスミで新たに手に入れたページを見せたことで、 『禁書』に対するモチベーションを取り戻し
ナレーター: 調査のため帝都ルプガナへと出発するのだった
ナレーター: そして、ガーディーが立ち去った直後、 フェネは気を失い倒れてしまう……
“スバル”: ──フェネ、しっかりしろ!
“エミリア”: フェネ!
“レム”: フェネさん!
“フェネ”: うぅ…… すみません、皆様…… 少し無理をしたのがいけなかったようです……
“スバル”: さっきのはやっぱ、無理してたんだな?
“フェネ”: 左様です…… ガーディー氏の手前、少し無理をしてしまいました……
“スバル”: あんな奴のために、無理する必要なんてねぇだろ
“スバル”: 『禁書』のことを棚に上げて、 温泉三昧してやがったんだぜ、あいつ
“エミリア”: でも、そのおかげでガーディーに会えたわ
“リドア”: はい 久しぶりに師匠に会うことができ、 リドはとても嬉しかったです
“レム”: それにガーディー様とお会いしたことで、 今後は連絡をとり合うことが可能になりました
“レム”: それも、ガーディー様がこちらの温泉に 通ってくださっていたおかげです
“スバル”: 確かにそうだけど、それはよく解釈してあげすぎだよ ただ単に、あいつは温泉にドはまりしてただけなんだからさ
“スバル”: あんな奴に、気を遣う必要なんてねぇぜ、マジで しかも倒れるぐらい無理するなんて、俺には理解できねぇ
“スバル”: って、すぎたことをグチグチ言っても仕方ねぇな 大切なのはこれからだ
“スバル”: ってことで、俺らはこれからどうする? 温泉はやめにして、よさげな宿がある宿場町へ向かうか?
“レム”: そうですね…… 温泉に入れないのは残念ですが、 フェネさんの体調が心配です
“エミリア”: うん、私も温泉は今度でいいわ 今はゆっくりフェネを休ませてあげましょう
ナレーター: 到着早々温泉をあとにしたスバルたちとパトラッシュは、 ガイラハル温帯近くにあるという宿場町を目指していた──
“エミリア”: フェネ、大丈夫?
“フェネ”: 大丈夫です、エミリア女史…… せっかくの温泉を棒に振らせてしまい申し訳ありません……
“エミリア”: ううん、気にしないで
“エミリア”: 温泉はまた今度いけばいいし、 今はフェネが元気になることが大切よ
“スバル”: その通りだ、フェネ
“スバル”: 今のお前には、温泉に入ることより、 宿のベッドで眠ることの方が大切だ
“スバル”: 元々、お前の体調を回復させるための温泉だったんだから、 お前に無理させてまで入るのは本末転倒なんだよ
“スバル”: だから、マジ気にしないでくれ
“スバル”: にしても、宿場町が温泉から離れてるのが、ちょっと腹立たしいな すぐにでも宿に駆け込みてぇってのに
“フェネ”: 大精霊ムスペルの影響があるので、それは仕方ありません……
“フェネ”: それに、ここまでの長い移動を考えれば、 温泉から宿場町までなどあっという間です……
ナレーター: やがてスバルたちを乗せた竜車は──
ナレーター: ガイラハル温帯近くにある宿場町に到着するのだった
“スバル”: ──いい宿が見つかって、マジよかったぜ
“レム”: はい、スバルくん 値段もお手頃ですし、本当に助かりました
“レム”: この宿を見つけてくださったリドアさんに、 レムは感謝しています
“リドア”: リドに感謝する必要はありません スバルさんのために、当り前のことをしただけです
“スバル”: ……
“リドア”: スバルさん?
“スバル”: いや、ガーディーの奴は即行手のひらを返したのに、 リドの態度が変わってないのが意外で……
“リドア”: リドはスバルさんのお役に立つために同行しています その目的は変わっていません
“スバル”: 元々は俺個人じゃなくて、俺たち全体だった気がするけど、 結果的に同じようなもんだから、まぁいっか……
“スバル”: とにかく、フェネだけじゃなくて、俺らもゆっくり休むとしよう
“スバル”: 幸い、この町には色んなとこから旅人が集まってて、 情報収集には適した場所だ
“スバル”: 明日は朝から『禁書』の情報収集でいいよな?
“エミリア”: ええ、問題ないわ、スバル
“レム”: はい、レムも問題ありません
“フェネ”: 申し訳ありません…… フェネは明日もゆっくり休ませていただきます……
“スバル”: いやいや、申し訳ないとか感じる必要はねぇよ 今はゆっくり休むことが、お前の仕事みたいなもんだ
“スバル”: 呪いみたいなもんの影響だったら、 そう簡単には改善しないかもしれねぇけど
“スバル”: そうじゃない可能性だってゼロじゃねぇ
“スバル”: 落ち着ける場所でゆっくり休むことで、 お前の体調は回復するかもしれないんだからさ
“フェネ”: そうであればいいのですが……
“スバル”: そうじゃなかったら、そうじゃなかったで、 お前の体調を回復させる方法を探そう
“スバル”: 明日は『禁書』について聞き込みをしながら、 お前の体調を回復する方法についても調べてみるよ
“エミリア”: フェネ、私も調べてみるわね
“レム”: フェネさん、もちろんレムも調べます
“フェネ”: 皆様……
“フェネ”: ですが、最優先は『禁書』のページです…… そのことをお忘れなきようお願いします……
“スバル”: ──ってことで、『禁書』について聞き込みをはじめたのはいいが 単独行動するのって久々だから、ちょっと緊張するな
“スバル”: ……フスミでエミリアたんが賛成してくれなかったのに、 強引にフェネがいる宿に向かって以来か?
“スバル”: あの後ページに吸い込まれたときも一人だったけど……
“スバル”: あんときはすぐにコリーナと合流したから、 一人っきりって感じじゃなかったしな
“???”: なるほど、なるほど、そんなにスバルさんは、 コリーナに会いたいと思っているんですね
“スバル”: こ、コリーナ!? 相変わらず、唐突な登場だな!
“コリーナ”: コリーナに会いたいというスバルさんの強い想いが、 こうしてコリーナとスバルさんを引き合わせたのです
“スバル”: 待て待て、俺はお前に“強い想い”なんて持ってねぇよ
“スバル”: 確かに今ちょっとお前のことを思い出してたけど、 ほんのついでみたいな思い出し方だったしな
“コリーナ”: そんなはずはありません! だって、そうじゃないと、 この感動的な再会を説明できないじゃないですか!
“スバル”: 勝手に“感動的な再会”に格上げしないでくれ! 驚いたけども、感動なんてしてねぇよ、俺は!
“スバル”: だいたい、こんな風にお前と再会するのは、 俺にとってはいつものことだし、特別でもなんでもねぇ
“スバル”: まぁ、お前が無事みたいだから、 ちょっとばかり安心はしたけどな
“スバル”: フスミでページから出た後、お前の姿が見当たらなくて、 少し気になってたからさ
“コリーナ”: コリーナのことが気になり、 眠れない日々を過ごしていたのですか?
“コリーナ”: もはやそれは“恋”ですよ、スバルさん
“コリーナ”: ご期待にそうことができず、申し訳ありませんが、 この失恋を引きずることなく、スバルさんは強く生きてください
“スバル”: お前、俺の話聞いてた!?
“スバル”: 気になってたのはほんの少しだし、 俺には心に決めた人がいるから、お前に恋なんてしねぇよ!
“スバル”: にもかかわらず、勝手にフラれて、 どうして俺が凹まされなきゃなんねぇんだ!
“コリーナ”: フラれたことで凹んでいる時点で、 スバルさんはコリーナに気があるのだと思います
“スバル”: ないわ! マジ、世界中のあらゆる神に誓ってやる!
“コリーナ”: でしたら安心しました コリーナには心に決めた人がいますから
“スバル”: ……え? それは本当か、コリーナ? できればその話をもっと詳しく──
“コリーナ”: ──スバルさん、しつこいですよ いくら聞かれてもスバルさんの質問には答えません
“スバル”: いやいや、けどけど、あんなにはっきり宣言されたら、 すげぇ気になるだろ
“スバル”: お前の“心に決めた人”ってのはどんな奴なんだよ?
“スバル”: お前の恋を応援してやりたいって気持ちが、 俺にないわけじゃねぇし
“スバル”: 一応俺も男だ 俺の意見やなんかが、 お前の恋の成就に役立つかもしれないんだからさ
“コリーナ”: それはそうなんですけど、 そんな話をしている場合ではないと思います
“コリーナ”: コリーナと恋愛話に花を咲かせてたって知ったら、 きっと他の皆さんは怒りますよ
“コリーナ”: スバルさんには、他にやるべきことがあるんですよね?
“スバル”: 恋愛話にもっていったのはお前だよねって気持ちはあるが、 確かにその通りだ
“スバル”: 今の俺は色恋話に興じてる場合じゃねぇ 『禁書』について聞き込みをしねぇと
“スバル”: エミリアたんやレムは怒ったりしないかもしれねぇけど、 確かに怒りそうな奴はいるよ
“スバル”: そいつは体調不良で、 今は怒るような気力はないかもしれないけどさ
“コリーナ”: ということで、スバルさん コリーナの心に決めた人の話は、もう終わりでいいですね?
“スバル”: ああ すげぇ気になるけども、今はそれどころじゃねぇ
“スバル”: ってなわけで、俺はもういくわ 聞き込みしないとならねぇからさ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_06

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■6話 タイトル:本当に有益な情報 更新日:2022/04/06

ナレーター: 思わぬところでコリーナとの再会を果たしたスバルは
ナレーター: コリーナの心に決めた相手がいるという話に、 思わず本来の目的を忘れかけたが
ナレーター: コリーナの指摘でやるべきことを思い出し、 『禁書』についての聞き込みを始めようとしているのだった
“スバル”: ──さて、誰に尋ねるかな 結構人が多くて、誰に話し掛けるか迷っちまう
“コリーナ”: でしたらスバルさん、偉大な冒険家に聞いてみるのはどうですか? きっと有益な情報を知っていると思います
“スバル”: え? “偉大な冒険家”って、もしかしてお前のこと?
“コリーナ”: その通りです! 偉大な冒険家といえばコリーナしかいません!
“スバル”: 『禁書』についてなんか知ってるなら、 最初からそう言えばよかっただろ
“スバル”: お前が無駄に恋愛の方向に話を持っていくから、 すげぇ遠回りをした感じだ
“スバル”: それで、“有益な情報”ってのはなんだ? あんま期待はしてねぇけど、とりあえず教えてくれ
“コリーナ”: “期待してない”なんて言われたら、 話したい気持ちがだいぶ薄れてしまいます
“コリーナ”: 偉大な冒険家であるコリーナが、本気で調査して得た情報です そりゃもう、本当に有益な情報なんですから
“コリーナ”: コリーナがこの町にきたのも、 その情報をスバルさんに教えるためなんです
“スバル”: え? それは本当か?
“コリーナ”: はい コリーナはスバルさんたちの足取りを掴み、 こうしてやってきたわけです
“スバル”: だったら、マジで最初からそう言ってくれ!
“スバル”: 今回の再会が、俺のお前への想いのせいだとか、 わけわかんねぇこと言い出すから
“スバル”: お前の扱いが雑になっちまったんだよ
“スバル”: 最初からそう言ってくれてたら、興味津々で聞いてたぜ、俺は
“コリーナ”: では、スバルさんは、コリーナが得た情報を とっても聞きたいということでいいですか?
“スバル”: ああ、聞きたい
“スバル”: さっきはあんな風に言っちまったけど、マジ興味津々だ ぜひ教えてくれ、コリーナ
“コリーナ”: わかりました! では、お教えしましょう!
“コリーナ”: 実は、スバルさんたちが『禁書』と呼ぶ 絵本を描いたエドガーさんの過去の作品を
“コリーナ”: プリシラ・バーリエルさんという方が持っているらしいです
“スバル”: プリシラ・バーリエル……?
“スバル”: ──それってあいつじゃねぇか!
“コリーナ”: スバルさんは、そのプリシラさんを知っているんですね?
“スバル”: ああ、知ってる 決して会いたい相手じゃねぇが、知ってることは確かだよ
“スバル”: けど……“過去の作品”ってのはどういうことだ? 『禁書』はそのエドガーって絵本作家の全集だって話だぜ
“スバル”: 過去の作品も収められてるはずだろ
“コリーナ”: それが、本当に初期の作品で、作風も全然違ったみたいです
“コリーナ”: それらを入れると統一感がなくなるから、 『禁書』には収録されなかったのではないでしょうか
“コリーナ”: まあ、二百年も前の話なので、 本当の経緯は誰にもわからないと思いますが……
“スバル”: に、二百年!? 『禁書』はそんなに昔の作品なのか?
“コリーナ”: そうみたいですね
“コリーナ”: そして……『禁書』には収められなかった エドガーさんの初期の絵本にも
“コリーナ”: 絵が飛び出すという噂があったみたいです
“スバル”: 絵が飛び出す……?
“コリーナ”: エドガーさんは帝国では結構名が知れた絵本作家さんで
“コリーナ”: エドガーさんが有名になるきっかけは、 その絵が飛び出すという噂でした
“コリーナ”: そして、有名になったエドガーさんの絵本は、 いつしか作風が変わってしまっていたみたいです
“スバル”: エドガーって人の初期作品……ぜひ見てみてぇな……
“スバル”: なのに、その作品を持ってるのが、 よりにもよってあのプリシラとはな!
“コリーナ”: 元々プリシラさんは、帝国出身みたいですね だからエドガーさんの初期作品を持っているのかもしれません
“スバル”: へー、プリシラの奴、帝国出身だったんだな
“スバル”: あんま関わりを持ちたくなかったから、 あいつの個人情報はほとんど知らなかったぜ、俺
“スバル”: けど、あいつが持ってるとなりゃ、 なんとか見せてもらえるかもしれねぇ
“スバル”: マジ色々言われそうだし、憂鬱にはなるが、 アルからも頼んでもらったりすれば、たぶん……
“スバル”: いやいや、俺らがまずすべきは『禁書』のページ集めで、 エドガーって絵本作家の過去作にかまけてる場合じゃねぇ
“スバル”: こうしてる間にもマナを吸ったページが……
“スバル”: とにかく、マジ、有益な情報をサンキューな、コリーナ ホント“期待してない”なんて言って悪かったよ
“コリーナ”: コリーナの力を思い知りましたか?
“コリーナ”: フスミでページを脱出してからの短い期間で、 コリーナはここまでの情報を集め
“コリーナ”: しかもスバルさんの居場所まで特定したんです
“コリーナ”: それらはすべて、コリーナが偉大な冒険家だからできたことです
“スバル”: ああ、お前はすげぇ冒険家だよ
“スバル”: んで、そんな偉大な冒険家様を 俺らが泊まってる宿に招待したいんだけど、どうかな?
“スバル”: エミリアたんやレムもお前に会いたいと思うし、 お礼も兼ねてメシでもおごらせてくれ
“スバル”: なかなかいい宿で、メシもすげぇうまいんだよ
“コリーナ”: 女性を宿に誘うなんて、スバルさんも隅に置けませんね
“スバル”: バカ! そういうんじゃねぇよ、マジで!
“スバル”: その宿にお前に紹介したい奴がいて
“スバル”: そいつは律義なところがあるから、 直接お前に礼が言いたいんじゃねぇかなって思ったんだ
“スバル”: エミリアたんやレムはお前に会ったことあるけど、 フェネはまだコリーナに会ったことがなかったしさ
“スバル”: まぁ、今は体調が悪くて、 誰かに会いたいって気分じゃない可能性はあるけど
“コリーナ”: いえいえ、体調が悪い方にお会いするのは、 なんだか気が引けてしまいます
“コリーナ”: それに、おいしいごはんをおごってもらえるのは、 とても魅力的ではありますが
“コリーナ”: なんだか申し訳ないです 偉大な冒険家のコリーナは、本当にたくさん食べてしまいますから
“スバル”: 柄にもなく遠慮してるんじゃねぇ フェネはともかく エミリアたんやレムはぜってぇお前に会いたいはずだ
“スバル”: それに、たくさん食ってもらって構わねぇよ それぐらい、お前がもたらしてくれた情報は貴重だ
“スバル”: あと、フェネ以外にも、リドアって女の子も一緒にいて、 リドのこともできればお前に紹介したい
“コリーナ”: リドアさんについては、コリーナも少し知っています
“スバル”: え? お前はリドの知り合いか?
“コリーナ”: いえいえ、知り合いではないです
“コリーナ”: フスミにいるとき、エミリアさんでもレムさんでもない女の人と スバルさんが一緒にいるところを見かけて
“コリーナ”: たぶん、その人のことだろうなと思ったんです
“コリーナ”: そして、その人だったら、さっきコリーナは向こうで見かけました
“スバル”: リドを向こうで見かけた……? 確かあいつは今、宿でフェネを見ててくれてるはずだ
“コリーナ”: なるほど、そうなのですね…… でしたら、コリーナの勘違いかもしれません
“スバル”: 割と特徴ある感じだし、 他人の空似ってのはあんまなさそうだけど……
“スバル”: 勝手に出歩くような奴じゃねぇし、 きっとお前が見たってのは別人だよ
“コリーナ”: コリーナは、フスミでほんのちょっと見かけただけですし、 たぶんそうだと思います
“コリーナ”: 変なこと言って、すみませんでした
“スバル”: いやいや、別に謝る必要はねぇよ
“スバル”: けど、今後リドのことを見間違えたりしないためにも、 マジで俺たちの宿にこないか?
“スバル”: ホント、遠慮の必要なんてねぇからさ
“コリーナ”: ごめんなさい、スバルさん 多忙なコリーナは、もういかなければなりません
“コリーナ”: ではでは、スバルさん、どうぞお元気で──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_07

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■7話 タイトル:異なる結末 更新日:2022/04/06

ナレーター: 夕食の後、エミリアとレムは聞き込みで得た情報を共有するため、 スバルが宿泊している部屋を訪れていた──
“レム”: 『禁書』の作者、エドガーさんの初期の頃の作品ですか…… 確かに気になりますね……
“エミリア”: その絵本はプリシラが持ってるのね?
“スバル”: ああ コリーナはそう言ってたよ
“スバル”: プリシラの奴、帝国出身みたいでさ だからプリシラは、その絵本を持ってるんじゃないかって話だ
“スバル”: どうやってプリシラが手に入れたかはわからねぇけど、 すげぇ中身が気になるよな、エドガーって人の初期作品
“スバル”: 『禁書』とは作風が全然違うみたいだしさ
“スバル”: できれば、すぐにでもプリシラのところにいって、 見せてもらいたい気持ちはあるけど……
“スバル”: 残念ながら俺らは帝国にきちまってる
“スバル”: プリシラが持ってる初期作品は、ページがばらばらになった状態の 『禁書』と違って、悪さをするようなことはないと思うし
“スバル”: やっぱ予定通り、俺らは帝国でページ探しって感じかな?
“エミリア”: そうね…… 私も見てみたいけど、 悪いことをするページをまずは『禁書』に封じないと
“レム”: そうですね 幸いこの宿場町には多くの旅人がいて、 情報収集にはとても適しています
“レム”: 今日はページのありかにつながるような情報を 得ることはできませんでしたが
“レム”: しばらくこの町に滞在して聞き込みを続ければ、 きっと有益な情報を得られるでしょう
“スバル”: 確かにそうだな
“スバル”: それに、そうすれば、『禁書』の情報をゲットしながら、 フェネをゆっくり休ませてやることもできる
“スバル”: ページのありかについては、俺も情報は得られなかったが、 作者のエドガーって人の話は色々聞けたよ
“スバル”: エドガーって人は帝国じゃ結構な有名人で、 『禁書』に収められた絵本のお話を知ってる人たちも割といたな
“スバル”: 『禁書』自体は、 ロズワールの屋敷の禁書庫に保管されてたんだけど
“スバル”: 『禁書』に収められた物語は、親から子へ、子から孫へって感じで 帝国では語り継がれてるらしい
“スバル”: “こわいまもの”が出てくる物語を知ってる人はいなかったけど
“スバル”: 『かねもちワッドン』とか『もりのフェンルー』なんかは 割と有名だったよ
“レム”: はい レムも帝国の方の多くが 『禁書』にあるお話を知っていて驚きました
“レム”: ただ……
“エミリア”: ん? どうしたの、レム?
“レム”: いえ…… それが……
“レム”: フスミで回収した『とらわれのクレア』についてなのですが、 レムが知っているお話と結末が違っていたんです
“レム”: 確かに強力な剣は登場するのですが…… その剣でもクレアさんを助けることはできなかったという内容です
“エミリア”: そんなはずはないわ すごい剣で助けることができたはずよ
“スバル”: 俺たちが読んだお話は、確かにそういう内容だったね
“スバル”: 『禁書』に収められた絵本らしからぬハッピーエンドに、 ちょっと違和感を覚えたが
“スバル”: 実際にページに吸い込まれた俺の経験とも合ってるし、 すげぇ剣のおかげで、クレアが助かったのは間違いねぇ
“スバル”: 『禁書』は二百年ぐらい前の代物らしいし、 伝承の過程で内容が変わっちまったんだろうな
“スバル”: クレアを助けられないっていうバッドエンドの方が、 『禁書』っぽいお話ではあるからさ
“レム”: 二百年…… そんなに昔のものなんですね、『禁書』は
“スバル”: ああ コリーナが調査してわかったみたいだけど、 あいつはそう言ってたよ
“エミリア”: それで、コリーナちゃんは? 私、久しぶりにコリーナちゃんに会いたいわ
“スバル”: 俺もそうかなって思って、この宿に招待しようとしたんだけど、 逃げるように立ち去っちゃったんだよ
“スバル”: フェネにも紹介したかったんだけど、それも叶わずって感じだ
“スバル”: ほら、コリーナって、フェネには会ったことがなかっただろ?
“エミリア”: 確かにそうね 私やレムはアルビスで会ったけど、 あのときフェネはいなかったもの
“レム”: はい フェネさんはコリーナさんに会ったことはありません
“スバル”: だから、マジでフェネに紹介したかったんだけどね
“スバル”: フェネの奴は、会ったことないフスミの役人の人にも、 直接お礼がしたいって同行したぐらいだし
“スバル”: きっとコリーナにも、直接会って礼を言いたいはずだ
“エミリア”: コリーナちゃん、まだこの町にいるかしら?
“スバル”: あいつのことだから、いない可能性が高いと思う 冒険家って、宿に泊まるよりは、野宿するイメージだし
“スバル”: それに、すげぇ多忙みたいだからさ、あいつ
“エミリア”: そう……それは残念だわ
“スバル”: ……ところで、フェネの様子はどう? 体調はまだ悪そうかな?
“エミリア”: フェネはずっと寝てるわ 少しは元気になってくれてたらいいけど……
“スバル”: 『禁書』に関する情報は色々ゲットできたけど
“スバル”: フェネを元気にする方法については、 なんの手掛かりも得られなかったぜ、俺
“レム”: スバルくん、レムも同じです
“レム”: どんな病も治してしまうような薬でもあればいいと思ったのですが そのような薬について知っている方はいませんでした
“スバル”: どんな病も治す薬なんてあったらすごいけど、 現実にはきっと存在しないだろうね
“スバル”: フェネは呪いの可能性もあるって言ってたし
“スバル”: せめて、そういうのに詳しい人とかを 見つけられたらいいんだけど……
“レム”: 確かに“どんな病でも治す薬”よりは、 そういう方を見つける方が簡単ですね
“レム”: この町にそういう方がいなくても、 この近くにそういう方が住んでいる村や町があるかもしれません
“レム”: 明日の聞き込みでは、 そういう方についての情報も集めてみることにします
“エミリア”: 私も呪いとかに詳しい人がいないか、 『禁書』のページのことと一緒に聞いてみるわ
“スバル”: ああ そうしてくれると助かる
“スバル”: それと……
“エミリア”: ん? それと、何かしら、スバル?
“スバル”: いや……リドの様子について、ちょっと聞きたいなって思って……
“スバル”: 部屋が一緒のエミリアたんやレムの方が、 リドと過ごす時間は長いからさ
“エミリア”: リドアちゃんはこれまで通りよ 特にスバルに伝えるようなことはないと思うわ
“レム”: はい レムもそう思います
“レム”: ユリウス様が警戒されているようでしたので、 レムも念のため注意して見るようにはしているのですが
“レム”: スバルくんに報告するようなことは、特にありません
“レム”: 元々あまりお話をされる方ではないので、 リドアさんが何を考えているのか、わからなくはあるのですが
“レム”: かといって、怪しいところがあるわけではありません
“スバル”: でも……昼間、あいつがフェネをほったらかしにして、 外を出歩いてた可能性がある
“エミリア”: ……え? それは本当?
“スバル”: コリーナが言うには、リドを町で見かけたらしい
“スバル”: コリーナはリドをフスミでちょっと見ただけだから、 人違いである可能性は高いんだけど……
“レム”: ですが、本当にフェネさんを見ていたかはわからないですね フェネさんの元を離れた時間があったとしてもおかしくありません
“スバル”: 今も女子部屋でフェネを見ていてくれるはずだけど、 寝ているフェネを残して、どこかへいってるかもしれない……
“スバル”: って、さすがにそれはねぇか
“スバル”: 昼間は結構な時間宿を留守にしたけど
“スバル”: 今は長くても一時間ぐらいしか、 エミリアたんやレムは部屋を離れないもんな
“エミリア”: うん、そうね お話が終わったなら、そろそろ部屋へ戻るわ
“エミリア”: フェネのことが心配だもの
“レム”: はい レムとしてはもっとスバルくんと一緒にいたいですが、 共有すべき情報はもうなさそうです
“レム”: コリーナさんの目撃情報が本当の可能性もありますし
“レム”: フェネさんとリドアさんを二人っきりにするのは、 今後はやめた方がいいかもしれません
“スバル”: そうだな ユリウスもリドのことは警戒してたし、 フェネ自身もそうだった
“スバル”: それに、うまく言葉にできねぇんだけど、 なんだか変な感じがしてるんだよ
“スバル”: ホント疑いたくはねぇんだけど、 最近のリドにはなんだか違和感がある
“スバル”: フェネは、リドが味方ではない可能性を 常に頭の片隅に入れとけって言ってたし
“スバル”: やっぱフェネをリドと二人っきりにするのは、 避けた方がいいかもしれない
“スバル”: 明日はリドに聞き込みに出てもらって、 俺がフェネを見ることにするよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_08

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■8話 タイトル:気を遣わない相手 更新日:2022/04/06

“スバル”: ──さて、今日もこの町で色々聞き込みをするわけだけど
“スバル”: リド、今日はリドも聞き込みにいってくれ
“リドア”: わかりました スバルさんがそう言うのであれば、リドは聞き込みをします
“リドア”: 旅人などに『遺作』……『禁書』について 尋ねて回ればいいのですね?
“スバル”: ああ リドはあんま聞き込みには向かない感じだけど、 フェネの看病で宿にいっぱなしってのも申し訳ねぇ
“リドア”: リドに“申し訳ない”と感じる必要はありませんが、 今日はフェネさんのことをどなたが見るのでしょう?
“スバル”: 今日は俺が見るよ だから、フェネのことは気にしなくて大丈夫だ
“リドア”: わかりました
“スバル”: それじゃ、エミリアたん、レムもよろしく頼むな
“エミリア”: わかってるわ、スバル スバルこそ、フェネのことをよろしくね
“スバル”: ああ 任せてくれ
“レム”: それでは、スバルくん、レムたちは聞き込みに出ます
“スバル”: おう、頼んだぞ、レム
“レム”: はい スバルくんの期待に応えられるよう、 精一杯レムは頑張ります
ナレーター: 昨日コリーナから聞いたリドアの目撃情報
ナレーター: リドアについては、ユリウスやフェネも警戒していたことから
ナレーター: スバルはフェネとリドアを二人きりにすることを避け、 自分の代わりに聞き込みに出てもらうことにしたのだった
ナレーター: そして、そのことについて、 エミリアやレムにはすでに昨夜伝えていた──
“スバル”: ってことで、今日はフェネと二人きりだな……
フェネ: ……
“スバル”: そういや、フェネが女の子だってわかるまでは、 一緒の部屋に泊まって、フェネの寝顔を見る機会もあったけど
“スバル”: 今じゃ完全に男子部屋と女子部屋に別れて泊まるから、 こんな風にじっくりフェネの寝顔を見るのは久々だ
“スバル”: にしても、黙ってたらマジ可愛いな…… いつまでも眺めてられそうだよ
“フェネ”: スバル氏からの気持ち悪い視線で、 フェネはおちおち眠っていられません
“スバル”: “気持ち悪い”ってなんだよ!? 俺は穏やかな温かい気持ちで、お前の寝顔を見てただけだ!
“スバル”: って、起きて早々憎まれ口とは、 宿でゆっくり休んで、少しは回復した感じか?
“フェネ”: 左様です 今日はだいぶ体調がいいです
“スバル”: それ、ガーディーのときみたいに、空元気じゃないよな?
“フェネ”: 無論です スバル氏に気を遣う必要などありません故
“スバル”: そっか、そっか、少しは俺にも気を遣えって思いが ないわけじゃないが
“スバル”: お前の体調がホントにいいなら、マジよかったよ
“スバル”: とにかく、お前の体調がいいのは、 俺の献身的な看病のおかげだと
“スバル”: エミリアたんには報告することにしよう
“スバル”: そうすりゃ、きっとエミリアたんが俺のことを……
“フェネ”: 申し訳ありません、スバル氏
“フェネ”: フェネはエミリア女史もしくはレム女史への “スイッチ”を希望いたします
“スバル”: 残念だったな、フェネ 俺はそのその二人からはよろしく頼まれてんだよ
“スバル”: スイッチはなしだ 観念して俺の看病を受けやがれ
“スバル”: って、どうして“スイッチ”なんて言葉を知ってんだよ、お前?
“フェネ”: 今日は体調がいい故、 久々にスバル氏の頭を覗かせていただきました
“フェネ”: 相変わらず、見ない方がいい中身でしたが
“スバル”: 勝手に覗いて、失望とかしないでくれる!
“スバル”: そういや、お前って、俺の頭の中を覗けるんだったな 最近そういうのなかったから忘れてたよ
“スバル”: んで、そうやって、俺の頭の中を覗くってことは、 ホントに体調の方は良さそうだ
“スバル”: ゆっくり休んで回復したってことは
“スバル”: 体調不良の原因は、 呪いとかじゃなくて、単なる疲労だったってことか?
“フェネ”: 原因は一つではなく、様々な要因が重なった結果とも考えられます “単なる疲労”とは断定できません
“スバル”: まぁ、そりゃ、そっか
“スバル”: 単なる疲労にしちゃ、お前の衰弱は激しかったし、 確かに原因は一つじゃない可能性が高いな
“フェネ”: ですが、疲労も原因の一つだったと推測されます
“フェネ”: フェネの体調は完璧には程遠いですが、 スバル氏をいびるのに支障がないほどには回復しています
“スバル”: “いびる”ってはっきり言いやがったよ、こいつ! いびられてる自覚はあったけどさ!
“スバル”: けど……完璧には程遠いんだな?
“フェネ”: 残念ながら、現時点でフェネは完調からは程遠いです
“スバル”: 一応、呪いの線も消せないから
“スバル”: エミリアたんやレムには、 そういうのに詳しい人がいないかも調べてもらってる
“フェネ”: それにしても……今日は何故、 スバル氏がフェネを見ているのでしょう?
“フェネ”: エミリア女史やレム女史も、 フェネをスバル氏に託したということですが
“フェネ”: そのような役目はいつも、リドア女史が担っていたはずです
“スバル”: それについては、念のためだよ、フェネ
“スバル”: リドには言ってないけど、念のため、 フェネとリドを二人っきりにするのは避けることにしたんだ
“フェネ”: なるほど、そうでしたか それはフェネとしても助かります
“フェネ”: リドア女史よりもスバル氏の方が、 フェネは気兼ねなく休むことができますから
“スバル”: それはそうだろうよ なんせ、俺には気を遣わねぇみたいだからさ
“スバル”: そして、それは“いい意味で”って解釈させてもらうことにするよ
“スバル”: これまで一緒に『禁書異変』に挑んで、 俺たちの絆はすげぇ深まったはずだ
“スバル”: 今や結構な数のページを『禁書』に封じることができたし、 世界中を旅して、帝国まで一緒にきた
“スバル”: やっぱ、リドとは比較にならねぇぐらいの絆で 俺たちは結ばれてるもんな
“フェネ”: それについて言えば、エミリア女史やレム女史も同様です
“フェネ”: ですので、やはり可及的速やかに エミリア女史もしくはレム女史へスイッチを……
“スバル”: それ、まだ言う!?
“スバル”: あの二人は俺に任せるって言ってくれてんだよ だからスイッチはなしだ マジ諦めてくれ
“フェネ”: わかりました 残念ですが、致し方ありません
“フェネ”: それでは、スバル氏 体調がいいフェネに、情報の共有をお願いします
“フェネ”: 『禁書』について、何か情報を得ていませんか?
“スバル”: もちろん新情報満載だ ってことで、色々共有させてもらうぜ、フェネ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_09

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■9話 タイトル:むしろバッドエンド 更新日:2022/04/06

ナレーター: リドアに代わりフェネの看病を引き受けたスバル
ナレーター: 目を覚ましたフェネは、 ゆっくり宿で休めたせいか、とても体調が良く
ナレーター: スバルは色々と情報の共有を行うことができた──
“フェネ”: スバル氏、情報の共有ありがとうございました
“フェネ”: そして、コリーナ女史から得た情報は貴重です
“フェネ”: リドア女史に代わり、スバル氏がフェネを見るという判断は、 正しかったと推測されます
“スバル”: 貴重な情報って、そっち! エドガーって人の初期作品の方じゃなくて?
“フェネ”: そちらも貴重な情報であり、とても興味を惹かれますが、 現在最優先するべきは『禁書』のページ集め
“フェネ”: エドガー氏の初期作品については、 『禁書』の件がひと段落してからで問題ないかと
“フェネ”: また、レム女史が得た情報についても、とても興味深いです
“フェネ”: ヴォラキア帝国の人々が知る物語とは違う結末……
“フェネ”: 正直なところ『とらわれのクレア』について、 フェネは違和感を覚えていました
“スバル”: それについては俺もだよ なんか『禁書』らしからぬ終わり方だ
“スバル”: めでたしめでたし的な終わり方をするケースは、 もしかしたら初めてかもしれない
“スバル”: バッドエンドがデフォルトだもんな、『禁書』って
“フェネ”: いくらスバル氏の頭が覗けるとはいえ、 不明な単語の乱用はよくありません
“フェネ”: フェネにもわかるよう言い直してください
“スバル”: わりぃ、わりぃ、“バッドエンド”も“デフォルト”も、 こっちじゃ通じねぇか
“スバル”: “バッドエンド”ってのはよくない終わり方って意味で、 主人公が不幸になっちゃったりする終わり方のことだ
“スバル”: 逆に幸せになる終わり方は“ハッピーエンド”な これ、テストに出るからちゃんと覚えとけよ
“フェネ”: てすと?などという単語を使うあたり、さすがはクソ上司ですね スバル氏には不明な単語を説明している自覚はあるのですか?
“スバル”: ごめん、ごめん、こういう場合、 “テストに出るからな”は決まり文句なんだよ
“スバル”: とにかく、“デフォルト”ってのは基本設定的な意味で
“スバル”: 基本的に『禁書』は不幸な終わり方をするのに
“スバル”: 『とらわれのクレア』は幸せな終わり方で 違和感があるって言いたかったんだ
“スバル”: むしろ帝国の人たちが知ってる “クレアを助けられない”って終わり方の方がしっくりくる
“スバル”: とはいえ、実物を見てるし、 帝国の人たちが知ってる内容の方が誤りではあるんだけど
“フェネ”: …………
“スバル”: どうした、フェネ? 体調、悪くなっちまったか?
“フェネ”: いえ、大丈夫です
“スバル”: そっか、ならよかった
“スバル”: それにしても、ホント、こうやってお前と二人で話すの、 すげぇ久しぶりだよな
“スバル”: 悔しいけど、こうやって二人で話せるだけで、 なんかいい時間が過ごせてる気がするよ
“スバル”: お前からは散々酷いことを言われたりしたけど、 今はそういうのも含めて、いい思い出だ
“スバル”: エミリアたんから俺が『禁書』の件をやらかさなかったら、 フェネとも会えなかったって言われとき
“スバル”: 不謹慎ながら、そんなのはマジで嫌だと思った
“スバル”: お前と出会えない人生なんて、想像できねぇっつーか
“スバル”: 『禁書』の件では、ホント色々大変な思いをしてるけど、 お前と出会えたことで全部チャラどころかお釣りがくる感じだよ
“スバル”: 色んな人たちに迷惑をかけちまったことは、 ホント申し訳ねぇと思うけどさ
“フェネ”: スバル氏、言っていて恥ずかしくないのですか?
“スバル”: うるせぇー! そりゃ、恥ずかしいに決まってるだろ!
“スバル”: けど、ちゃんと言っておきたかったんだ お前が体調を崩して、お前の大切さを痛感させられたしな
“スバル”: 『禁書』のページを全部揃えることが最大の目標だし、 そうなるように頑張ってはいるけど
“スバル”: 正直、ページを一枚回収するたびに、 なんだか寂しさも覚えちまう今日この頃だよ
“スバル”: ページを全部回収した先にお前との別れが待ってるんだとしたら、 それはハッピーエンドとは言い難てぇ
“スバル”: むしろ、バッドエンドな気さえするぜ、俺は
“フェネ”: だとしても、ページはすべて『禁書』に封じる必要があります それは絶対です
“スバル”: ああ、わかってる あの仮面野郎が世界を浄化しちまうのが最大のバッドエンドだ
“フェネ”: そう認識しているのであればいいですが
“フェネ”: フェネへの片思いを募らせたスバル氏が、 土壇場で下手を働かないか心配です
“スバル”: か、片思いってマジ!?
“スバル”: エミリアたんだけじゃなくて、 俺の想いはお前に対しても一方通行かよ!
“フェネ”: …………
“スバル”: って、フェネ、マジで大丈夫か?
“スバル”: 少し調子に乗って話しすぎたかもしれねぇ 体調が悪いなら、俺、少し黙るぜ?
“フェネ”: スバル氏……フェネは大切な“何か”を思い出せそうなのです……
“フェネ”: その“何か”を思い出すために、 できればしばし一人にさせていただきたく……
“スバル”: つまり、俺がいると思い出せねぇのか?
“フェネ”: 左様です 邪魔にはなれど、助けにはなりません
“スバル”: うぐっ…… 肝心なときにそんな風に言われちまう俺って……
“スバル”: とはいえ、“邪魔にはなれど、助けにならない”ってのは、 すごく言い当ててる気がするよ
“スバル”: 俺ってば、大抵そんな感じだしな
“スバル”: ってことで、少し早いが、腹も減ったし、 俺は昼飯でも食ってくることにするよ
“スバル”: んで、戻ってきたときに、思い出した大切なことを教えてくれ
“フェネ”: 無論です、スバル氏
“フェネ”: その“何か”を思い出せれば、事態が進展することは確実 是が非でも思い出して見せます
ナレーター: 昼食を取るためにスバルがフェネの元を離れてから、 一時間ほどが経過していた──
“スバル”: そろそろフェネの奴、大切な“何か”を思い出した頃か……?
“スバル”: もうちょい時間を潰してもいいが…… 思い出してるなら一刻も早く聞きてぇ……
“スバル”: とにかく、一度、部屋に戻ってみるとしよう
“スバル”: フェネ、入るぞ?
“スバル”: 喜べフェネ お前の愛しのスバル氏が少し早めに──
“スバル”: こ、これは……!
ナレーター: スバルは自分の目を疑う
ナレーター: なぜなら、彼が入った部屋の中には、ほんの一時間前まで 語り合っていたフェネの変わり果てた姿があったからだ
ナレーター: 頭を砕かれピクリとも動かないそれは、 明らかにかつてはフェネだったものだ
“スバル”: フェネ! フェネ! フェネ!
ナレーター: 慌てて駆け寄り、フェネに呼びかけるスバル
ナレーター: だが、かつてフェネだったものからはなんの反応もない
“スバル”: 頼むから、目を開けてくれ、フェネ!
“スバル”: いつもみたいに憎まれ口を叩いてくれ!
“スバル”: 頼む、頼むよ、フェネ…… 頼む……
ナレーター: どんなにお願いされても、 それはもう目を開けることができなかった
ナレーター: どんなにお願いされても、憎まれ口の一つも叩けないのだ
ナレーター: それは一目でわかる事実だったが、 その現実をスバルは受け入れることができない
“スバル”: 違う! これは悪い夢だ!
“スバル”: フェネは俺に、思い出したことを 話してくれるって約束したじゃねぇか!
“スバル”: フェネは約束を破ったりしねぇ! だから……! だから……
“スバル”: フェネが死ぬはずねぇんだ……
ナレーター: 辛うじて見つけた脆く儚い希望……
ナレーター: そんな取るに足らない希望さえも、現実は残酷に奪い去ってしまう
“スバル”: ──っ! フェネが……消えてく……
ナレーター: 一つ、また一つとフェネの体から光りの粒子が舞い上がり、 それに合わせてフェネの存在がゆっくりと薄れていく
“スバル”: ま、待ってくれ、フェネ! まだいかないでくれ!
“スバル”: 頼む…… 俺を置いていかないでくれ……
ナレーター: スバルの脳裏には、フェネと過ごした日々が鮮やかに蘇っていた
ナレーター: 始まりはスバルが誤って禁書庫から『禁書』を蹴り出したことだ
ナレーター: 後で戻せばいいという軽い気持ちが災いして、 『禁書』のページを各地に四散させてしまった
ナレーター: ページ集めは困難の連続だったが、 どの困難もいつしかいい思い出に変わっていた
ナレーター: 幾度となくした言い争いも、浴びせられた罵声や叱咤も、 全部が全部、スバルにはかけがえのない思い出だった
“スバル”: まだ、旅の途中じゃねぇか…… ページ集め、これからどうすんだよ……
“スバル”: ページを全部、『禁書』に封じるんじゃなかったのか……?
“スバル”: それ、最優先事項だったろ…… そんな大切な任務をお前は途中で放棄するつもりか……?
“スバル”: なぁ…… フェネ……
“スバル”: もう一度だけでいい…… 頼む、声を聞かせてくれ……
ナレーター: いつしか、かつてフェネだったもののすべてが光に変わっていた
ナレーター: スバルが見つめる先には、もう何も残っていない
“スバル”: ちくしょう…… ちくしょう…… ちくしょう……
“スバル”: 誰が……! 誰がこんなひでぇことを……! ──誰がっ!
ナレーター: スバルはそこで、ある事実に気付く
“スバル”: フェネが消えずに残ってたってことは……
ナレーター: フェネの遺体は消えずに残っていたという事実 それはつまり、殺されてから間もないことを意味していた
“スバル”: フェネをやった奴はまだこの部屋に……
ナレーター: 部屋にくる途中、スバルは誰ともすれ違わなかった
ナレーター: 部屋の窓は閉じており、何者かが窓から去った形跡はない
ナレーター: 入室した際、扉は確かに閉めたはずだ
“スバル”: ──っ!
ナレーター: スバルは気配を感じた方を素早く見ようとする
ナレーター: だが──
“スバル”: うがっ!
ナレーター: 強烈な一撃がスバルの頭部を襲い、 彼の意識はそこでぷっつりと途切れた

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_10

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■10話(中編) タイトル:未来を変えるために 更新日:2022/04/06

“スバル”: ──がっ! ががががっ……
“レム”: ──スバルくん?
“スバル”: あ、ああ……ああぁ……
ナレーター: 心配そうにレムがスバルを見つめるが、 彼にはまともな言葉を発することができない
“エミリア”: スバル、どうしたの?
“スバル”: うっ…… ううぅぅぅ……
“ユリウス”: スバル、しっかりしろ!
“スバル”: お、俺は……
ナレーター: スバルの頭の中はごちゃごちゃだった
ナレーター: 目の前にあったフェネの亡骸が消え去り、 犯人を見ようと視線を動かした直後に頭部を強い衝撃が襲った
ナレーター: そのとき、彼の頭蓋骨は粉々に砕かれたのだ
“スバル”: ──うっ! ぐぐぐぐっ……
“スバル”: あ、頭が……っ! お、俺の脳みそが……っ!
“スバル”: うっ、うううぅぅ……
“フェネ”: ──スバル氏!
“エミリア”: ──スバル!
“レム”: ──スバルくん!
“ユリウス”: ──スバル!
“リドア”: ……
“スバル”: う、ううぅぅぅ……
“スバル”: な、何が…… 何があった……?
“スバル”: お、俺は…… 俺は……
ナレーター: 強烈に痛む頭
ナレーター: その痛みに耐え、スバルは必死に状況を理解しようとする
“スバル”: 目は……見えてる……
“スバル”: 手は……動くみてぇだ……
“スバル”: 頭は痛くてやけにおめぇ……
“スバル”: あのとき……俺は……
“スバル”: はぁっ はぁっ はぁっ
“スバル”: 頭をかち割られて……
“スバル”: うぅっ うぅっ うぅっ
“スバル”: でも……今は……
“スバル”: ここは確か……
“スバル”: 『死に戻り』……したってことか……?
“スバル”: ──そ、そういえば、フェネは!
“フェネ”: フェネがどうしましたか、スバル氏?
“スバル”: フェネ……なのか……?
“フェネ”: 左様です フェネはフェネ以外の何者でもありません
“エミリア”: スバル、大丈夫?
“レム”: スバルくん、大丈夫ですか? 顔色が悪く、レムはとても心配です
“スバル”: エミリアたん…… レム……
“ユリウス”: スバル、体調が優れないようであれば、 私が宿の部屋まで運ぶが、どうする?
“スバル”: ユリウス…… ユリウス…… お前がいてくれたら……
“ユリウス”: スバル、本当にどうしたのだ?
“スバル”: フェネが……誰かに…… 俺も……多分そいつに……
“スバル”: 俺が……そいつのことを一目でも見てりゃよかったんだけど…… そいつ、すげぇ動きが早くて……
“スバル”: 俺は…… 俺は…… うっ ううぅぅ……
“スバル”: 俺、全然ダメで…… フェネだってきっとそのせいで……
“スバル”: 一人になりたいって言われたときに、 俺が席を外したりしたから……
“フェネ”: 何やらフェネについて話しているようですが、 フェネにはまったく心当たりがありません
“スバル”: フェネ……マジごめんな…… お前に会えて、ホントよかった……
“エミリア”: どうして泣いてるの、スバル? どこか痛いところある?
“エミリア”: 痛いところがあるなら、教えて 私が魔法で治してあげるわ
“レム”: レムもスバルくんの痛みをとってあげたいです どこか痛いのであれば、遠慮なく言ってください
“スバル”: 頭が……すげぇ痛い……
“スバル”: でも、これはきっと思い込みで痛みを感じてるだけで…… 実際に炎症とかが起こってるわけじゃないと思う……
“スバル”: だから……魔法とかじゃ治せない…… たぶん、少し時間が経てば大丈夫だ……
“スバル”: そんなことより……今の状況が知りたい……
“スバル”: ここはフスミで間違いないか……?
“エミリア”: ええ、そうよ、スバル
“エミリア”: さっきお役人さんにお礼とお別れを言いにいって、 今度はユリウスにお別れを言うところよ
“フェネ”: スバル氏の記憶力は大丈夫ですか? 本当につい先程のことです
“スバル”: ははは…… うるせぇ…… 記憶喪失のお前に、言われたくねぇよ……
“レム”: スバルくんが笑いました フェネさんのおかげです 少し安心しました
“エミリア”: うん、ホント 顔色も少しよくなったみたい
“ユリウス”: そうみたいだな
“ユリウス”: リドアさん、水を一杯もらってきてください
“ユリウス”: 今のスバルには、 治癒魔法よりも、そちらの方が効果がありそうだ
“スバル”: それはそうかもな…… リド、頼むわ、水……
“リドア”: わかりました
ナレーター: リドアが持ってきてくれた水を飲み干し、 一息ついたスバルの状態は、ある程度回復しているのだった
ナレーター: そして、この先の未来を知ったスバルは行動を開始する
ナレーター: まずスバルはユリウスに深々と頭を下げ、 ルグニカの王都行きを延期するよう頼み込んだ
“ユリウス”: ──王都へ戻るな、スバルはそう言っているのか?
“スバル”: “戻るな”とは言ってねぇよ、ユリウス けど、もう少し俺たちと一緒に行動してくれ
“スバル”: クルシュさんへの報告なら、パトラッシュを向かわせればいい
“スバル”: 騎士団の一員としてあんまり長く留守にはできねぇってのは、 わかるんだけど
“スバル”: それだって、もう少しぐらいなら大丈夫なはずだ
“ユリウス”: 帝国へ、私も一緒に……? いや、だが、それではさすがに……
“スバル”: 違う 俺らは帝国へは向かわねぇ
“レム”: スバルくん、 レムたちの次の目的地はヴォラキア帝国だったはずです
“エミリア”: うん、確かにそう ユリウスとお別れした後、すぐに向かうのよね?
“スバル”: 事情が変わったんだよ、エミリアたん、レム 俺らが向かうのはプリシラがいるバーリエル男爵領だ
“エミリア”: え? プリシラ? ホントにどういうことなの? わかるように説明して、スバル
“スバル”: 俺らはユリウスと一緒にプリシラのとこに向かう
“スバル”: あと、パトラッシュをクルシュさんのとこに走らせて、 色々報告がてら、援軍を頼むつもりだ
“ユリウス”: 待ってくれ、スバル クルシュ様に援軍だと?
“スバル”: ああ 戦力はあるに越したことがねぇ
“レム”: スバルくん もしかして“こわいまもの”について、 何か情報を掴んだのですか?
“スバル”: “こわいまもの”…… あれはそいつの仕業か……?
“スバル”: いやいや、そいつは暗殺なんてちんけなマネはしねぇはずだ…… もしフェネをやるなら、あの町ごと滅ぼすだろうな、きっと……
“フェネ”: 常々スバル氏は独り言をよく言っていますが、 今日はあまりにも多いです
“フェネ”: ここにいる皆様にわかるよう、ちゃんと説明してください
“スバル”: そう言われても、言ったところで信じちゃもらえねぇし、 そもそも発言に制約があって、わかるよう話すのは難しい状態だ
“スバル”: 色々急すぎるっつーなら、せめてもう一日、フスミに滞在しよう
“スバル”: お前はなんてことないって顔してるけど、 結構体的にはつれぇんじゃねぇか?
“スバル”: いつ倒れてもおかしくない状態だって、俺は推測するぜ
“フェネ”: そんなことはありません…… フェネは大丈夫です……
“スバル”: 嘘つくなよ、フェネ みんなの目は誤魔化せても、俺の目は誤魔化せねぇよ
“フェネ”: たとえそうだとしても…… 一刻も早く…… うぅ……
“エミリア”: フェネ!
“レム”: フェネさん!
“ユリウス”: こ、これは…… なぜスバルがフェネさんの状態を……
“フェネ”: 不覚にも意識が…… ですが、フェネは大丈夫です……
“エミリア”: でも…… やっぱり今日は……
“レム”: はい スバルくんの体調はだいぶ回復したみたいですが、 いつまたあのように頭が痛み出すかわかりません
“レム”: 今日の出発は延期をした方が、レムもいいと思います
“ユリウス”: なるほど…… 確かに王都へは戻る必要があるが、 今日でなければいけないわけではない
“ユリウス”: それに、確かにフェネさんやスバルの体調も心配だ 我々はフスミにもう一日滞在するべきだろうな
“スバル”: “我々”ってことは、お前もいてくれるんだな、ユリウス?
“ユリウス”: ひとまずは、だ
“ユリウス”: だが、スバルの説明にはまったく納得していない いや、スバルがしたものは“説明”と呼べるものではなかった
“ユリウス”: 帝国ではなくバーリエル男爵領に向かう 私は王都へ向かわず、スバルたちに同行する
“ユリウス”: さらに、クルシュ様には援軍を要請…… いやはや、短時間で話が変わりすぎだ
“ユリウス”: ひとまず今日の王都行きは延期するが、 バーリエル男爵領へ同行すると決めたわけではない
“フェネ”: それでいえばユリウス氏…… バーリエル男爵領へ向かうことも決定ではありません……
“フェネ”: スバル氏が勝手に言っているだけです……
“スバル”: “勝手に”って言うけど、そうするべきなんだよ
“スバル”: とにかく、もうちょいマシな説明ができるように、 頭の中を色々整理するから
“スバル”: 後で話を聞いてもらっていいか?
“スバル”: 出発が一日ずれただけでも、俺にとっては大きな前進だけど、 根本的な解決には至っていねぇ
“スバル”: 行き先は帝国からバーリエル男爵領に変更するべきだし、 ユリウスと別れるわけにはいかねぇんだよ
“ユリウス”: ……わかった 後で構わない
“ユリウス”: いずれにしても、もう少しマシな説明が必要だ 後で話を聞かせてくれ、スバル
“ユリウス”: その内容次第で、私が今後どう動くかを決めたいと思う

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_11

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■11話 タイトル:違和感の正体 更新日:2022/04/21

ナレーター: 『死に戻り』したスバルは、 当初の予定通り王都へ発とうとしたユリウスを引き留め
ナレーター: これからの行き先をヴォラキア帝国から、 プリシラが治めるバーリエル男爵領へと変更しようとしたが
ナレーター: 他のメンバーからの理解が得られず、 詳しい説明を求められているのだった
“ユリウス”: ──フェネさんやスバルの体調の問題もある 私としては、フスミにもう一泊することについては異論はない
“ユリウス”: だが、王都行きを延期する件については、 正直なところ決めかねている
“ユリウス”: そもそもスバルはその件について了承していたはずだ どうして急に考えが変わったのだ?
“エミリア”: プリシラのところへいくっていうのもそうよ 私たちは帝国に向かうはずだったでしょ?
“スバル”: それじゃ、まず、エミリアたんの質問から答えさせてくれ
“スバル”: 行き先が帝国からプリシラのところに変わった理由は明確だ 新しい情報を手に入れたからだよ
“レム”: 新しい情報……ですか?
“スバル”: ああ、そうだ どうやらプリシラは、 『禁書』の作者、エドガーって人の初期作品を所持してるらしい
“スバル”: プリシラはエドガーって人と同じヴォラキア帝国の出身で、 その関係もあってあいつはその作品を持ってるらしいんだけど
“スバル”: その作品は、『禁書』とはまったく違う作風みたいなんだよ
“スバル”: エドガーって人のことや、『禁書』について知るためにも、 ぜひともその初期作品は拝んでおくべきだと思う
“ユリウス”: 確かにプリシラ様は帝国の出身ではあるが、 『禁書』の作者の初期作品とはどういうことだ?
“ユリウス”: そもそも『禁書』とは全集だったはず その作者のすべての作品が収められているのではなかったのか?
“スバル”: 『禁書』と同じで、そっちにも 描かれた絵が飛び出すっていう噂はあったみたいだが
“スバル”: あまりにも作風が違ってたせいで 若い頃に描いた初期の作品は『禁書』へは集録されなかったらしい
“スバル”: まぁ、二百年も前の話だから、それについて詳しい経緯を 知ってる人はいないんじゃねぇかって話だけどさ
“エミリア”: 二百年も前の話……? それってどういうこと?
“スバル”: エドガーって人はどうやら二百年ぐらい前の人らしいんだ つまり、『禁書』も二百年ぐらい前にできたってことになる
“フェネ”: 二百年……
“フェネ”: 記憶力が良いフェネには、以前スバル氏から 百年ほど前のものだと聞かされた記憶があります
“フェネ”: それがどうして二百年になったのでしょう……?
“スバル”: 俺なりに『禁書』について調べてた結果だ
“スバル”: そういや、プリシラやアルは、『禁書』のページを譲ってくれって ガーディーが訪ねてきたときに
“スバル”: あいつからそう聞かされたみたいだな
“スバル”: 拉致られてアルと一緒の竜車に乗ってるときに、 あいつからそう聞いたのを思い出したよ
“スバル”: んで、そのままフェネには伝えたんだった
“フェネ”: はい バーリエル男爵領内の宿屋で、 フェネは確かにスバル氏からそう聞かされました
“スバル”: とはいうものの、それは『禁書』の価値を下げて、 プリシラにページを手放させるための嘘だった可能性がたけぇ
“スバル”: プリシラの奴は、てこでも譲ってくれない感じだったみたいだし
“スバル”: ページを手に入れるためだったら、 あいつはそれぐらいの嘘は平気でつきそうだろ
“フェネ”: 正しくは二百年…… 確かにそれは……
“スバル”: わりぃ、みんなにはもっと早く話してればよかったんだけど、 色々バタバタしてたから忘れちまってて
“スバル”: 思い出すのが、あのタイミングになっちまったんだよ
“ユリウス”: つまり、スバルの考えが急に変わったのは、 その情報を思い出したことが原因か?
“スバル”: 行き先の変更については、その通りだ
“スバル”: 帝国にページがある可能性は高いが、 すぐに見つけるのは難しいかもしれない
“スバル”: だったら、まずはプリシラのところへ向かって、 エドガーって人の初期作品を拝むべきだ
ナレーター: 前回の周回で帝国へ向かい、ページを一枚も発見できなかった スバルとしては、それは当然の判断だった
ナレーター: それに帝国には、 フェネを死なせてしまったという苦い思い出もある
“ユリウス”: ……フェネさん、 本当に『禁書』は二百年も前の作品なのでしょうか?
“ユリウス”: 百年前のものという情報の方が正しい可能性もあります
“フェネ”: それについては、“正しい”と断言できます “二百年”と聞き、はっきりと思い出しました
“フェネ”: スバル氏から百年前と聞いた際に覚えた違和感の正体が、 ようやくフェネにはわかりました
“スバル”: 確かに、あんときのフェネは、明らかになんか変だったよな
“スバル”: “もしかして記憶を思い出したか?”って思ったんだけど、 お前はそこに引っかかってたんだな
“フェネ”: 左様です あの際“何か”を思い出しかけたのですが、 情報が正しくなかったため、思い出すには至りませんでした
“フェネ”: そんなスバル氏が何故今回は正しい情報を……? その点について疑問は残りますが
“フェネ”: 今回スバル氏がもたらした情報には、 信じる価値があることだけは確かです
“スバル”: ああ、信じるに値する情報だ 少なくとも頭ごなしに否定されるような情報じゃねぇ
“スバル”: プリシラは難しい奴だから、見せてくれるかは別問題だけど、 きっとあいつはエドガーって人の初期作品を持ってる
“レム”: なるほど…… レムとしては、行き先の変更については納得しました
“レム”: エドガーさんの初期作品…… 『禁書』のページ探しに役立ちそうです
“エミリア”: そうね 私も納得したわ、スバル
“ユリウス”: 行き先変更の事情については、私も理解をした だが……
“スバル”: お前を引き留める理由についてだよな?
“ユリウス”: そうだ あまつさえスバルは、クルシュ様に援軍まで頼もうとしている
“スバル”: そっちについても、理由はすげぇシンプルだよ 危険が迫ってるからに他ならねぇ
“ユリウス”: ──なっ! それは本当か?
“スバル”: 本当も本当だ だから、貴重な戦力であるお前を失うわけにはいかない
“ユリウス”: つまり……あの仮面の男がまだ近くにいるということか?
“スバル”: すまない、ユリウス 俺が言ってる“危険”が、 あの仮面野郎に関係しているかはわからねぇ
“スバル”: むしろ、別口の可能性が高い気がしてる
“ユリウス”: 別口……だと?
“スバル”: ああ そんで、そう考える理由はフェネの体調不良だ
“フェネ”: フェネの体調不良…… 原因がスバル氏にはわかったのですか?
“スバル”: 原因を“わかった”と断言できるわけじゃねぇし、 そもそもその体調不良の原因は一つじゃない気がしてる
“スバル”: だから、これから俺が言うのは、 あくまで原因の一つと考えられるものについてだ
“フェネ”: ……! 確かに、フェネも原因は一つではないと感じています
“フェネ”: それで、スバル氏 その原因の一つと考えられるものはなんでしょう?
“スバル”: ずばり、“呪い”だ フェネだって、口にしてねぇけど、その可能性を疑ってるんだろ?
“フェネ”: そ、それは……! し、しかし、何故スバル氏が……
“スバル”: 図星って顔だな?
“フェネ”: 誠に遺憾ながら なぜだか、今のスバル氏はとても冴えています
“スバル”: “遺憾”って言われることが俺には“遺憾”ではあるが、 “冴えてる”って言われるとちょっと後ろめたいな
“スバル”: テストでカンニングしたみたいな感じだし、 俺が本当に冴えてたら、あんなことにはならなかったからさ
“レム”: いくつかレムにはわからない言葉がありましたが、 “あんなこと”というのはなんのことでしょう?
“レム”: 恐らく、スバルくんがユリウス様を引き留めることに 関係している気がします
“スバル”: もちろん関係してる……
ナレーター: スバルはそこで言葉を止め、苦悶の表情を浮かべた
“スバル”: はぁ……っ はぁ……っ はぁ……っ
ナレーター: 蘇る記憶
ナレーター: フェネの亡骸 スバルが見つめる先で、その亡骸は光りに変わり消滅した
ナレーター: あの悲劇だけは二度と繰り返してはならない
“エミリア”: ──スバル?
“レム”: スバルくん?
“スバル”: わりぃ、エミリアたん、レム ちょっと嫌なことを思い出して、それで……
“スバル”: とにかく、フェネの体調不良には、呪いが関係してる可能性がある
“スバル”: その呪い自体、あの仮面野郎の仕業かもしれねぇけど、 他の奴がフェネのことを狙ってるかもしれねぇだろ?
“ユリウス”: つまり、『禁書』の件とは別口で、 フェネさんを狙う輩がいるということか?
“スバル”: 『禁書』と無関係なのかどうかはわからねぇ けど、フェネを狙ってる奴がいるのは確かだよ
“スバル”: んで、ユリウス お前の主人、アナスタシアさんとエミリアたんは同盟関係にある
“スバル”: 『禁書』の件で協力し合うってのは、もちろんだけど
“スバル”: エミリアたんの関係者である、フェネを危険から守ることも、 同盟相手としては当然の義務なんじゃねぇのか?
“ユリウス”: つまり、私にフェネさんの警護をしろと?
“スバル”: そうだ フェネのことを守ってほしい
“スバル”: お前だって、仮面野郎を取り逃がしたこの状態で、 王都へ戻るのは本意じゃないはずだ
“スバル”: 王都に戻らなきゃならないっていうお前の事情もわかるけど、 せめてクルシュさんたちがくるまでは一緒にいてくれ
“ユリウス”: それでスバルはクルシュ様に……?
“スバル”: 俺がクルシュさんに援軍を要請するのは、 そういう理由もあるぜ、ユリウス
“スバル”: この状況でお前という戦力を失うわけにはいかねぇけど、 クルシュさんたちがきてくれたら話は別だ
“スバル”: もしヤバいことになってなかったら、 お前はクルシュさんたちと入れ替わりで王都へ戻ればいい
“ユリウス”: なるほど…… あまりにも急な変更ではあるが、 よくよく話を聞けば筋は通っている……
“ユリウス”: わかった、スバル 私もバーリエル男爵領まで同行しよう
“ユリウス”: クルシュ様一行の到着まで、フェネさんの警護に当たらせてもらう

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_12

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■12話 タイトル:ギブアンドテイクで 更新日:2022/04/21

ナレーター: ユリウスとともにプリシラがいるバーリエル男爵領を目指して フスミを出発したスバルたちは
ナレーター: 必要最低限の休息で竜車を走らせ、 まもなくプリシラの屋敷に到着しようとしていた
“スバル”: (なんとかユリウスを説得して同行させ、  行き先をプリシラのところに変更できた)
“スバル”: (しかもユリウスの任務はフェネの警護)
“スバル”: (あいつが常にフェネと一緒にいてくれたら、  あんな事態にはならないはずだ)
“スバル”: (とはいえ、根本的な解決には至ってねぇ……)
“スバル”: (いったい誰がフェネを……?)
“スバル”: (仮面野郎の可能性はあるが、  あいつはあの宿場町にはいなかったはずだ)
“スバル”: (それに、あいつが俺を殺したのは、  きっと自分の姿を見られるわけにはいかなかったからだ)
“スバル”: (姿を見られたくない理由、それは……)
“スバル”: (俺らに敵だと認識されたくなかった  ってこと以外には考えられねぇ)
“スバル”: (すでに敵だと認識されてる仮面野郎に、  そんな必要があるか……?)
“スバル”: (いや、必要がないことは明らかだ  つまり……)
“スバル”: (現時点では敵だと認識されてない誰かが、  フェネのことを狙ったってことになる……)
“リドア”: ……? スバルさん、リドに何か用事ですか?
“スバル”: いやいや、特に用事ってわけじゃ……
“リドア”: ですが、スバルさんはリドのことを見ていました
“スバル”: ごめん、ごめん、ちょっと考え事をしてて…… 特に深い意味はねぇから気にしないでくれ
“リドア”: わかりました スバルさんがそう言うのであれば、リドは気にしません
“スバル”: ああ、そうしてくれると助かるよ
“スバル”: (まさかリドが……?)
“スバル”: (いや、まさかそんなはずは……)
ナレーター: やがてスバルたちを乗せた竜車は、 バーリエル男爵領にあるプリシラの屋敷に到着した
ナレーター: そして、プリシラとの面会が叶うのだった
“プリシラ”: ──ほう 妾との同盟が希望か?
“スバル”: ああ 理由はさっき説明させてもらった通りだ
“スバル”: 仮面を着けた怪しい男が“こわいまもの”っていう すげぇ『異形』を宿したページを持ってるかもしれねぇ
“スバル”: 俺たちは一丸となって、 世界の浄化だとか宣(のたま)うあいつに、対抗する必要がある
“スバル”: すでにクルシュさんとアナスタシアさんのとことは 同盟を締結済みだ
“スバル”: まだ正式に同盟を締結したわけじゃねぇけど
“スバル”: 新しく王選候補に名を連ねた、フェルトのとことも、 この件ではすでに協力関係にある
“スバル”: ぜひ、お前も俺たちに協力してくれ
“プリシラ”: ハッ 他の者がどうしようが妾の知ったことではないわ
“プリシラ”: 妾は妾のしたいようにする そして、貴様の提案に対する妾の回答は“否”じゃ
“スバル”: ──なっ!
“ユリウス”: お待ちください、プリシラ様 どうかご再考をお願いいたします
“プリシラ”: 何度考えようが、妾の結論は変わらぬ 『最優の騎士』たる貴様からの頼みでもな
“エミリア”: お願い、プリシラ 私たちに協力して
“レム”: プリシラ様、レムからもお願いいたします どうかご協力を──
“プリシラ”: ええいっ、くどいわ!
“プリシラ”: アル、目障りじゃ この者どもを妾の前から失せさせろ
“アル”: 待て待て、聞けばグステコやらカララギを巡って、 遥々きたって話じゃねぇか
“アル”: 兄弟のためにも、もうちょい付き合ってやってくれ
“アル”: 同盟やなんだって話以外にも、 兄弟には大切な話がありそうだしよ
“プリシラ”: 妾に意見するとは、 貴様には躾(しつけ)が必要なようじゃな、アル
“アル”: おぉ、マジでか、姫さん?
“アル”: そんなご褒美がいただけるとは、 思い切って意見した甲斐があったぜ
“スバル”: 素直に“ありがとう”とは言いづらいやり取り!?
“スバル”: 俺たちのために意見してくれたアルには、 感謝したい気持ちはあるけども
“スバル”: 俺らの感謝より、 アルには姫様からの躾(しつけ)の方が嬉しいらしい
“アル”: まぁ、大人になればわかるぜ、兄弟 躾(しつけ)がいかに素晴らしいかがよ
“スバル”: そんなもんわかりたくねぇし、 きっとそれを“素晴らしい”って感じるのは大人でも極一部だよ!
“スバル”: とはいえ、お前の言う通りだ、アル
“スバル”: 俺たちが本当にしたかった話はこれからだ 同盟のお願いは本題じゃねぇ
“スバル”: ってことで、本題に入ってもいいか、プリシラ?
“プリシラ”: ほう…… これからが本題、とな?
“スバル”: ああ、その通りだ 同盟の話はあくまでジャブで、本題に入るための肩慣らしだ
“スバル”: いきなり本題に入って、撃沈するわけにはいかなかったんでね
“プリシラ”: わかった、凡愚 貴様にもう少しだけ時間をやろう
“プリシラ”: じゃが、その“本題”とやらが下らぬ内容じゃった場合、 その命、ないものと思え いいな
“スバル”: 毎度毎度命懸けかよ!? まぁ、そう言うだろうとは思ってたけどさ!
ナレーター: それからスバルは、プリシラに向かい 『禁書』の作者、エドガーの初期作品の話をした
ナレーター: それらが『禁書』に収められた作品とは違った作風で、 二百年以上も前に描かれたものだと伝える
ナレーター: そして、その初期作品をプリシラが所持しているという 情報を得たことについても、合わせて伝えるのだった──
“プリシラ”: ほう…… 命拾いしたな、凡愚
“スバル”: それはそれで朗報だけど、 俺が期待してるのは“見せてやる”って答えだ
“スバル”: 俺らが遥々お前に会いにきたのは、 エドガーって人の初期作品を見せてもらうためだからさ
“フェネ”: スバル氏 まずはしっかりと プリシラ女史に命を救っていただいた感謝を伝えてください
“フェネ”: プリシラ女史には貴重なお時間をお割きいただいたうえに、 今後も生きることを許されたのです
“フェネ”: その感謝をお伝えしないのは、明らかに失礼に当たります
“スバル”: 待て待て、そもそも“下らない内容だったら 命を差し出せ”ってのが無理な注文だろ
“スバル”: どうしてそんな発言を真に受けて、 感謝を伝えなきゃなんねぇんだよ
“フェネ”: はぁ…… これだからスバル氏は…… このままでは同盟交渉と同じ末路を辿ってしまうでしょう
“スバル”: うっ…… それは困る……
“プリシラ”: どうした、凡愚 貴様には妾に言うべきことがあるのではないか?
“プリシラ”: この子狐に免じて、貴様には一度だけ機会をやろう じゃが、一度だけじゃ 二度目はない
“スバル”: くっ…… どうして俺が……
“スバル”: だから嫌だったんだよ…… マジ、初期作品を持ってるのがどうしてこいつなんだ……
“アル”: おいおい兄弟、心の声がだだ洩れてんぞ
“アル”: せっかくあの狐さんが繕ってくれたってのに、 そんなんじゃ、礼も何もねぇだろ
“アル”: 悪いが、日を改めた方がいいかもしれねぇ 頭を冷やして、出直してくれや、兄弟
“スバル”: ま、待ってくれ 心にもねぇことを言うのは俺には難しいが、 まだとっておきの情報がある
“スバル”: それは、マジとっておきの情報だ プリシラ、お前が帝国出身ってなら、なおさらな
“プリシラ”: ほう…… 許す、申してみよ
“スバル”: 帝国じゃ、 『禁書』に載ってる絵本のお話が結構有名らしいじゃねぇか
“スバル”: んで、その中に『とらわれのクレア』って話があるんだけど、 帝国に広く知られているその話は、実は誤った内容なんだよ
“プリシラ”: ……誤った内容、じゃと?
“スバル”: そうだ 実はこの『とらわれのクレア』ってのは、 『禁書』の中でも異質な存在で
“スバル”: 誤った内容が帝国に広まったのも、納得っちゃ納得なんだが、 本当はどんな話だったか、知りたくないか?
“スバル”: マジ、その話は異質で特別だ
“スバル”: 堕落して温泉三昧だったある男が、 心を入れ替えて真面目に働き出すぐらいによ
“プリシラ”: 凡愚 貴様はなんの話しておるのじゃ?
“スバル”: いや、明らかに態度が変わりすぎだろって奴がいて、 イマイチ腑に落ちてなかったんだけど
“スバル”: 今、お前に向かって喋りながら、腑に落ちた感じだよ
“スバル”: あいつの急変は、その話が関係してたに違いねぇ
“スバル”: じゃねぇと、 やっぱりあいつがあんな風になったことに説明がつかねぇ
“スバル”: 頭の中が温泉でいっぱいの奴が、 急に働き者になるのには、それなりの理由が必要だしな
“エミリア”: ええっとね、スバル 私もスバルが何を言っているのか、全然わからないわ
“ユリウス”: 右に同じくだ なぜ急に“温泉”の話になる?
“レム”: 申し訳ありません、スバルくん レムにもよくわかりません……
“フェネ”: 『とらわれのクレア』…… あの物語は確かに……
“スバル”: フェネ、お前ならわかるはずだ どれだけあの話が特別かがさ
“フェネ”: それについて異論はありません 確かにあの物語は異質であり特別です
“アル”: つまり兄弟は、その特別なお話を姫さんに見せる代わりに、 エドガーって作者の初期作品を見せろって言ってんのか?
“スバル”: その通りだ ギブアンドテイクってヤツだよ、アル
“スバル”: その超貴重で特別なページをお前に見せてやる
“スバル”: だから、エドガーって人の初期作品を 俺らに見せてくれよ、プリシラ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_13

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■13話 タイトル:他言無用のお願い 更新日:2022/04/21

ナレーター: 絵本作家エドガーの初期作品を見せてもらえるよう、 プリシラと交渉を行ったスバル
ナレーター: 『禁書』に収録されている物語の中で唯一ハッピーエンドを迎える 『とらわれのクレア』のページを見せる代わりに
ナレーター: エドガーの初期作品を見せてもらう許可を 見事スバルはプリシラから取りつけるのだった
ナレーター: ただし、プリシラの屋敷にあるはずの目当ての絵本を 日没までに自分たちで発見することができればという条件付きだ
ナレーター: つまり、スバルが得たのは、 正確には屋敷内で目当ての絵本を探す権利ということになる
“スバル”: ──屋敷にもし目当ての絵本がなけりゃ、 俺たちは完全にページの見せ損だな
“アル”: そうかもしれねぇけど、兄弟はうまくやったと思うぜ かなりヤバい状態だったしよ
“アル”: マジ、兄弟の心の声がだだ洩れしたときは、もうダメかと思ったぜ
“アル”: その状況から頭と胴がつながった状態なうえに
“アル”: 屋敷内でエドガーって奴の初期作品を見つければ、 見てもいいって許可までもらったんだ
“アル”: ホント、できすぎだぜ、兄弟
“スバル”: 頭と胴がって……うまくやってなかったら、 俺はいったいどうなってたんだよ?
“アル”: きっと、頭と胴は切り離されてただろうな
“スバル”: それ、冗談だよね!? 命は何よりも大切だって学校で習ったぞ、俺!
“アル”: 学校で、ね……
“アル”: まぁ、ウチの姫さんにはそういうの通用しねぇから、 発言にはマジで気を付けることだな
“アル”: とにかく、無駄口を叩いてる暇があったら、 目当ての絵本を探したらどうだ?
“アル”: 日が沈むまでに見つけられなきゃ、 もう拝むチャンスはねぇだろうしよ
“エミリア”: スバル、頑張って探しましょう
“レム”: はい、スバルくん レムも頑張ってエドガーさんの初期作品を探します
“スバル”: んで、一つ確認なんだが、 マジでこの屋敷にないってことはねぇよな?
“スバル”: 必死に探して、でも結局この屋敷には 目当ての絵本はありませんでしたってんじゃ、さすがに報われねぇ
“アル”: オレは見たことがねぇけど、 姫さんが兄弟との交換条件に乗ったんだ きっとあるだろうよ
“アル”: それに、もしこの屋敷にないんだったら、 それは姫さんが悪いわけじゃねぇ
“アル”: 兄弟は自分の運のなさを呪うことだな
“スバル”: どういう理屈だ、それ! 屋敷にねぇのに交換条件を受け入れるのは、詐欺ってもんだろ!
“アル”: まぁまぁ、熱くなるなよ、兄弟
“アル”: かなりの確率でこの屋敷にあるから安心しろ 兄弟が見つけられるかどうかは別にしてな
“アル”: なんせ、屋敷は広いうえに結構な本がある そんな中で目当ての絵本を見つけるのは、マジ至難の業だろうよ
“アル”: しかも、あの狐さんと『最優の騎士』様が抜けた状態だ
“アル”: オレは監視役で手伝うことは姫さんから禁止されてるし、 兄弟と嬢ちゃんら二人で見つけなくちゃならねぇ
“スバル”: まぁ、フェネは体調が悪いからな プリシラとの交渉の場にいてくれただけで十分だ
“スバル”: 竜車でゆっくり休んでもらって問題ねぇ
“スバル”: んで、ユリウスの任務はフェネの警護だ 必然的にあいつもフェネと一緒に竜車でお留守番ってことになる
“スバル”: でもな──
“リドア”: フェネさんとユリウスさんから、 スバルさんを手伝うように言われました
“リドア”: スバルさん、リドは何をすればいいのでしょうか?
“スバル”: おう、待ってたぜ、リド
“アル”: ……? この嬢ちゃん、初めて見る顔だな
“スバル”: 紹介するぜ、アル アルビスから仲間に加わったリドアだ
“スバル”: 確かにフェネとユリウスは抜けたけども、 代わりにリドが目当ての絵本探しを手伝ってくれる
“エミリア”: よろしくね、リドアちゃん
“レム”: リドアさん、 一緒に頑張ってエドガーさんの初期作品を探しましょう
“リドア”: ……エドガー様の初期作品?
“スバル”: そういや、お前には言ってなかったな
“スバル”: この屋敷のどこかに、 エドガーって絵本作家の若い頃の作品があるはずなんだよ
“スバル”: それは全然違う作風のせいで、 『禁書』には集録されなかったらしいが
“スバル”: 『禁書』のページ探しに役立てばと、 持ち主のプリシラから見てもいいって許可をもらったんだ
“スバル”: けど、あいつからは、 日没までに自分たちで見つけ出せたらって条件を出されてて
“スバル”: 俺らは、この広い屋敷中を探して、日没までに エドガーって人の初期作品を見つけ出さなきゃならねぇ
“リドア”: なるほど…… ですが、そのような作品があるのであれば、 ぜひ師匠にも教えてさしあげたいです
“アル”: ……師匠に教える? 待て待て、この件は他言無用で頼むぜ、嬢ちゃん
“アル”: 『遺作』……『禁書』絡みで、 まためんどくせぇ奴がきたりするのは勘弁だ
“アル”: ホント、あいつマジで面倒な奴だったしよ 毎日毎日押しかけられて、ホント迷惑だったぜ
“スバル”: ってことで、師匠への報告はナシだ、リド
“スバル”: このおっさんが言ってる“めんどくせぇ奴”ってのは、 完全にお前の師匠、ガーディーのことだからな
“リドア”: わかりました スバルさんがそう言うのであれば、師匠へは報告しません
“アル”: なんだよ、この嬢ちゃんは、 あのめんどくせぇ芸術家の関係者か?
“スバル”: ああ 世界はせめぇって感じるかもしれねぇけど、 お前が言ってる芸術家、ガーディーの助手をしてる
“スバル”: 色々あって、ガーディーは今、俺らに協力してくれてるんだ
“アル”: へぇー 確かに世界はせめぇな まさかあの芸術家が、兄弟たちに協力してるとはね……
“アル”: とにかく、あいつが押しかけてくるようなことだけは、マジ勘弁だ
“アル”: それが約束できねぇなら、 そのエドガーって作者の初期作品は諦めてもらうしかねぇ
“スバル”: リドも言わないって約束してくれたし、 それについては大丈夫だ、アル
“スバル”: 俺らはガーディーには言わねぇし、 あいつが日々押しかけてくるなんてことにはならねぇ
“アル”: マジ頼んだぜ、兄弟
“アル”: んで、それが保証されるなら、俺からはなんもねぇよ 好きなだけ絵本を探してくれや、兄弟

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_14

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■14話 タイトル:一生のお願い 更新日:2022/04/21

ナレーター: プリシラから、屋敷にあるはずの エドガーが若い頃に描いた絵本を探すことを許されたスバルたちは
ナレーター: 必死に屋敷内を探し回るのだった
ナレーター: そして、時間切れが目前に迫った日没間近に、 ようやくスバルがそれらしい絵本を発見する
“スバル”: あ、あった! きっとこの絵本で間違いねぇ!
“レム”: さすがスバルくんです! 確かにその絵本で間違いなさそうです!
“エミリア”: ホント、偉いわ、スバル これで絵本を見せてもらえるわね
“リドア”: すみません、スバルさん…… 必死に探しましたが、 リドには見つけることができませんでした……
“スバル”: いやいや、探してくれただけで、サンキューだ、リド
“スバル”: それに、こうやって俺が見つけられたのも、 みんなが手伝ってくれたおかげだよ
“スバル”: たまたま俺が担当したエリアにあったってだけ この絵本を見つけられたのは、マジみんなのおかげだ
“アル”: けど、危なかったな、兄弟 日が沈んでたら、間違いなく姫さんに追い出されちまってたぜ
“アル”: おっさんとしても、兄弟たちの努力が実を結んで、ホント一安心だ
“スバル”: マジ、俺らの苦労が水泡に帰さずに済んでよかったよ ギリギリになっちまったけど、運は俺に味方してくれたみてぇだ
“スバル”: とにかく、この朗報をフェネとユリウスに伝えて、 二人にもここにきてもらおう
“スバル”: きっとあの二人だって、この絵本を見たいはずだしな
“レム”: わかりました、スバルくん レムがフェネさんとユリウス様を呼んできます
“スバル”: ──これで全員揃ったな ってことで、さっそくこの絵本を……
ナレーター: スバルは集まったメンバーの中心に、 エドガーの初期作品だと思われる絵本を置き、表紙を開いた
“ユリウス”: ──こ、これは
“エミリア”: ホントに『禁書』の中のお話とは全然違うわ……
“レム”: はい…… 絵もそうですが、書かれている物語もまったく違う気がします
“アル”: だな これ、マジで同じ作者の作品か?
“フェネ”: これが……エドガー氏の……
“リドア”: ……
“スバル”: とにかく、最後まで目を通してみよう
ナレーター: 固唾(かたず)を飲んで、絵本を読み進めるスバルたち
ナレーター: そこに描かれた絵は、 『禁書』に描かれたもののようにおどろおどろしいものではなく
ナレーター: 明るくてとても可愛らしいものだった
ナレーター: そして、そこに書かれた物語も、 いかにも子ども向けの絵本という感じで
ナレーター: 『禁書』のように誰かが不幸になることもなければ、 後味が悪い終わり方をするわけでもないのだった
“スバル”: もし、この絵本から『禁書』みたいに、 『異形』が出てきたとしても
“スバル”: きっと大変なことにはならないだろうな
“スバル”: むしろ、ここに描かれた絵がページから出てきたら、 子どもたちはきっと喜ぶはずだ
“エミリア”: ホントにそうね 私、絵本の中の子たちに出てきてほしいって思っちゃったわ
“ユリウス”: だがそれにしても、『禁書』と同じ作者の作品とはとても思えない 何があれば、こんなにも作風が変わってしまうのだろう?
“スバル”: それについては、確かに疑問だが、俺らに知る由はねぇ なんせ、すげぇ昔の人だからな、エドガーって作者はさ
“アル”: とはいえ、好きだった女に騙されて、 全財産を取られたとしても、ここまで変わったりはしねぇだろうよ
“アル”: 相当な“何か”があったんだと思うぜ、オレは
“アル”: ってその前に、この絵本の作者と『禁書』の作者が まったく別人って可能性があるがな
“アル”: “エドガー”って名の別人だ
“アル”: 絵本作家に“エドガー”って名の奴が、 何人かいたって不思議じゃねぇ
“アル”: むしろ、この絵本の作者と『禁書』の作者が、 同一人物だって言われる方がオレには信じられねぇ
“レム”: ですが、それでは“絵が飛び出す”という噂が説明できません
“レム”: 確かに“エドガー”という名の絵本作家の方は、 他に何人もおられるでしょう
“レム”: でも、“絵が飛び出す”と噂される方は、 『禁書』の作者であるエドガーさんだけです
“スバル”: だな そうそう絵が飛び出す絵本を描けるような奴はいないはずだ
“スバル”: だから、この絵本の作者と『禁書』の作者は、 同一人物だって納得するしかねぇ
“スバル”: そしてきっと、ここまで作風が変わるだけの 相当な“何か”があったんだよ
“ユリウス”: だが…… その“何か”とは、 喜びを感じるようなものではなかったはずだ
“ユリウス”: むしろ……
“スバル”: フェネ、お前は何か知らねぇのか? 作者のエドガーって人の作風がここまで変わっちまった理由をさ
“フェネ”: いえ…… 誠に残念ながら……
“スバル”: そっか……
“スバル”: とはいえ、色々苦労して発見したけども、 『禁書』とはあまりにも別物で
“スバル”: 『禁書』のページ探しに役立てることはできそうもねぇな
“スバル”: ここまで作風が変わった理由がわかれば、 そっちはページ探しに活用できるかもしれねぇけどさ
“エミリア”: 確かにすごーく大変だったけど、 私はこの絵本が見られただけで満足よ
“エミリア”: 本当にこの絵本は、すごーくいいお話だったもの
“スバル”: ああ いいお話であることは間違いねぇ
“スバル”: 夢と希望に満ち満ちてて、 ぜひとも多くの子どもたちに読ませてあげたい感じだ
“スバル”: 少なくとも、こんな屋敷に眠らせとくのはもったいねぇ
“アル”: おいおい“こんな屋敷”とはずいぶんだな、兄弟
“アル”: こんな時間から宿を探すのも大変だろうし
“アル”: なんとか兄弟たちがここに泊まれるよう、 調整してやろうと思ったのによ
“スバル”: うぐっ…… そ、それは……
“フェネ”: 先程の言葉はスバル氏個人の発言であり……
“フェネ”: フェネを含めスバル氏以外の方々は、 決してそのようなことは思っておりません……
“エミリア”: うん 私、とっても素敵なお屋敷だと思うわ
“ユリウス”: 確かに、素敵な屋敷だ フェネさんの体調を考えても、ここに泊めていただけると助かる
“スバル”: その…… ええっと…… すまねぇけど、不適切な発言を取り消せたりする?
“スバル”: 確かに今からの宿探しは難しいし、 フェネのことをベッドでゆっくり休ませてやりたい
“スバル”: それに色々経費もかさんでて、 宿泊費を節約できたりすると、すげぇ助かるんだよ
“スバル”: 同盟の交渉は決裂したけども、俺と“兄弟”との仲じゃねぇか
“スバル”: 頼むよ、アル 俺らがここに泊まれるよう、プリシラを説得してくれ
“アル”: ったく、気持ちいいぐらいの手のひら返しだな、兄弟
“アル”: そもそもオレはそのつもりだったのに、 兄弟が失礼な発言をぶちかましやがったんだろ
“スバル”: それについては、マジすまなかった 撤回して謝罪させてもらう
“スバル”: マジ、いい屋敷だよ、ここは “こんな屋敷”とか言ってすまなかった
“アル”: ──ってことで、ちと狭くて簡素ではあるが、 兄弟たちに部屋を用意させてもらった
“アル”: 狐さんと『最優の騎士』様の部屋──
“アル”: 三人の嬢ちゃんたちの部屋──
“アル”: んで、兄弟用のこの部屋だ
“アル”: お目当ての絵本が見れたうえに、寝床までゲットできたんだ マジ、おっさんに感謝してくれよな、兄弟
“スバル”: ああ、ホント、お前には感謝だよ、アル
“スバル”: んで、感謝ついでに、お前にもう一個お願いがあるんだけど、 頼まれてくれるよな、“兄弟”?
“アル”: おいおい、都合のいいときだけオレを“兄弟”って呼ぶんじゃねぇ 人のこと散々コケにしやがったくせによ
“スバル”: 確かに色々と失礼な発言をした覚えはあるが、 マジ、お前にしか頼めないお願いなんだ
“スバル”: 俺らのために三部屋用意してくれて、 部屋割りだって希望を叶えてくれた
“スバル”: 宇宙人みたく話が通じねぇプリシラを説得して、 この結果を導き出すのに
“スバル”: お前がすげぇ苦労しただろうってのは、痛い程わかってるつもりだ
“スバル”: けど、あと一つだけ、頼む “一生のお願い”を使ってもいいからさ
“アル”: 一生のお願い、ね
“アル”: 聞くだけ聞いてやるぜ、兄弟 その“オレにしか頼めないお願い”ってのはなんだ?
“スバル”: バーリエル男爵領内に入った怪しい奴の情報を集めてほしい
“スバル”: フスミで取り逃がした仮面を着けた怪しい男は、 現在も消息を掴めてねぇ
“スバル”: でも俺は、そいつがバーリエル男爵領に 入ってるんじゃないかって思ってるんだ
“スバル”: あいつが集めてるのは『禁書』のページだが、 作者が同じのあの絵本に興味がないわけがねぇと思う
“スバル”: その情報を俺が得られたってことは、 あいつだって得ることができるってことだ
“スバル”: お前は面倒なことは勘弁かもしれねぇけど、 “人の口に戸は立てられぬ”だよ、アル
“スバル”: 俺らがそのことを口外することはねぇけど、 そういう噂があることは事実なんだ
“アル”: その噂、兄弟はどこで耳にしたんだ?
“スバル”: 帝国だ、アル プリシラが帝国出身だって情報も合わせてゲットした
“アル”: なるほど…… にしても、帝国へも足を運んだのか、兄弟?
“スバル”: えっ!? いや!? 俺はいったことはないけども、 帝国にいったことがある、ある冒険家から聞いた情報だ
“スバル”: 誤解するような言い方して悪かったぜ、アル
“スバル”: とにかく、そういう噂があるのは事実だし、 だとすると、あの仮面野郎がここにくる可能性は高い
“スバル”: それに……
“アル”: あん? “それに”なんだよ、兄弟?
“スバル”: いや……仮面野郎以外にも、 怪しい奴の情報が得られればいいなと思ったんだ
“スバル”: フェネの命を狙ってる奴がいるなら、そいつも恐らく……
“アル”: なんだよ、あの狐さん、やっぱ命を狙われてるのか?
“スバル”: ……やっぱ?
“アル”: あの狐さんを『最優の騎士』様が警護してるって話だったし、 そうなりゃ、命ぐらいは狙われてるだろうって思ったよ
“アル”: 部屋割りも、狐さんと『最優の騎士』様は同部屋だったしな
“アル”: 二十四時間つきっきりで警護が必要な状態といや、 暗殺の危険があるってこと以外には考えられねぇ
“スバル”: おぉ、意外に鋭いな、アル
“アル”: まぁ、それなりに人生経験は積んでるからな、 色々わかっちまうんだよ
“アル”: 兄弟が何かを隠してるってことも、わかってるぜ、おっさん 帝国のくだりは明らかに怪しかったしな
“スバル”: うぐっ…… 恐るべし人生経験……
“スバル”: とにかく、ちょっとばかし諸事情により話せねぇことはあるが、 俺がお前を頼りにしてるのは本当だ
“スバル”: 頼む、アル 領民たちから、領内に入った怪しい人物の情報を集めてくれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_15

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■15話 タイトル:他言無用のはずが…… 更新日:2022/04/21

ナレーター: スバルたちがプリシラの屋敷で エドガーが若い頃に描いた絵本を見てから一夜が明けた
ナレーター: そして、アルの計らいによりスバルたちには部屋が割り当てられ、 しばらく屋敷に滞在することが許されている
“スバル”: ──とはいうものの、プリシラの心変わりが怖いから、 しばらく部屋で大人しくしてろ、だもんな
“スバル”: アルが色々領民から、 情報収集してくれてることを願うしかねぇ……
“レム”: スバルくん
“スバル”: おお、レムか、入ってくれ
“レム”: 失礼します、スバルくん 少し、よろしいでしょうか?
“スバル”: もちろんだ、レム 遠慮はいらねぇから、何でも話してくれ
“スバル”: こうやって俺が単独で部屋を借りたのもそれが理由だ
“スバル”: ここは俺が寝泊まりする部屋ではあるけど、 同時に色々話し合うためのミーティングルームでもあるんだからさ
“レム”: みいてぃんぐるうむ?というのは、 レムにはちょっとわかりませんが……
“レム”: スバルくんが色々考えて動いていることはわかりました
“レム”: それで、スバルくん…… 恐らく考えがあってのことだと思うのですが
“レム”: レムたちがプリシラ様のお屋敷に、 しばらく滞在するのはなぜでしょう?
“レム”: 昨日、エドガーさんが若い頃にお描きになった、 絵本を見ることができました
“レム”: レムたちがバーリエル男爵領へきた理由は、 すでに達成されていると思います
“レム”: 幸いバーリエル男爵領はヴォラキア帝国にも近く、 当初目指していた帝国にはすぐに入ることができます
“スバル”: ええっと、レム ここにしばらく残る理由の一つは、 クルシュさんたちの到着を待つためだ
“スバル”: フスミからパトラッシュをクルシュさんの元に走らせて、 援軍を頼んだのはレムも知ってるだろ?
“レム”: はい クルシュ様と合流次第、 ユリウス様が王都にお戻りになる予定です
“スバル”: まぁ、それは何事もなければだけど、 何事もなければ、確かにそうなる予定だな
“レム”: 何事もなければ…… つまりスバルくんは、“何事かある”、そう思っているのですね?
“スバル”: 結論から言えばそうだ このまますんなりいくわけねぇ……!
ナレーター: スバルの脳裏に蘇る苦い記憶……
ナレーター: ルグニカの南に位置するバーリエル男爵領は
ナレーター: 地理的には、 当初目指していたヴォラキア帝国との国境に位置しているが
ナレーター: スバルが帝国いきを決断できないのには、 その苦い記憶が関係しているのだった
“レム”: ──スバルくん、大丈夫ですか? 顔色がなんだか悪いみたいです
“スバル”: ああ、大丈夫だ、レム ちょっと、嫌なことを思い出しちまった……
“スバル”: でも、ホント、大丈夫 安心してくれ
“レム”: スバルくん……
“スバル”: マジ、そんな顔するなよ、レム 俺は大丈夫だからさ
“スバル”: んで、プリシラのところに留まる、もう一つの理由なんだけど、 それはフェネの疲労を取るためだよ
“スバル”: フェネの体調不良の原因は、色々あるっぽいし、 “呪い”ってのもその可能性の一つではあるけど
“スバル”: “疲労”ってのも、原因の一つなんだよ
“スバル”: だから、ゆっくり休んで疲労を取り除ければ、 フェネの奴は少しは元気になるはずだ
“レム”: なるほど…… クルシュ様の到着を待つことと、 フェネさんの疲労を取るためだったんですね
“スバル”: ああ パトラッシュに託した手紙を読んで、 クルシュさんがすぐに出発してくれれば
“スバル”: 遠からずここに着くはずだし、フェネの疲労も 何日かベッドでゆっくり休めればきっと取れるはずだ
“スバル”: 俺らが行動を開始するのは、それからってことになる
“スバル”: それに、今はアルが動いてくれてる
“スバル”: これから俺らがどう動くかを決めるのは、 あいつの調査結果を聞いてからにしたい
“スバル”: その結果次第じゃ、 “帝国にはいかない”ってことも十分にありえるしさ
“レム”: ……帝国にはいかない? ヴォラキア帝国にあるページは回収しないのですか?
“スバル”: ごめん、“すぐには”って意味だ 帝国にあるページの回収は後回しにする感じだな
“スバル”: まずはフェネを襲う脅威を取り除かねぇと……
“スバル”: 俺としちゃ、『禁書』のページ集めより、 そっちの方が重要なんでね
“レム”: フェネさんを襲う脅威……
“レム”: スバルくんがこの前言っていた、 あの仮面の男とは別口の“敵”のことですよね?
“スバル”: ああ…… あれは仮面野郎の仕業じゃない気がする……
“スバル”: ちくしょう…… マジ下手こいちまった……
“スバル”: 俺がチラっとでもあいつの顔を見てりゃ、 状況はまったく違ってたってのに……
“スバル”: 俺はそれどころじゃなくて…… あいつが部屋にまだいるって気付くのが遅れちまった……
“レム”: スバルくん……?
“スバル”: わりぃ、レム レムには何がなんだかわからねぇな
“スバル”: とにかく、実は結構いい状況を築きつつあるんだよ、レム
“スバル”: 数日中にクルシュさんたちがここに駆け付けてくれて、 ユリウスもキープできてる状態だ
“スバル”: プリシラの奴はあんま当てにはできねぇけど、 アルはなんだかんだ協力してくれてるしな
“スバル”: それに、フェネのことをゆっくり休ませることもできてる
“スバル”: あと、クルシュさんには、ダメ元で ラインハルトを従えるフェルトにも声を掛けるよう頼んでおいた
“スバル”: リカードやミミたちまでは呼べねぇけど
“スバル”: 俺にできる手は打ったし、 かなりヤバい状態になっても、きっとカバーできるはずだ
ナレーター: その日の夕方、スバルの部屋にアルが駆け込んでくるのだった──
“アル”: おい、兄弟! いったいどういうことだ?
“スバル”: なんだよ、アル 部屋に入る前に、せめてノックぐらいしてくれ
“アル”: 悪いが、状況が状況だ オレの質問に答えてくれ、兄弟
“スバル”: “状況が状況”って言われても、 何のことだか、こっちはさっぱりなんだが?
“スバル”: そもそも質問になってねぇだろ “どういうことだ?”ってだけじゃ、答えようがねぇ
“アル”: オレは兄弟に頼まれて、 今日、領民たちから色々怪しい奴の情報を集めて回った
“スバル”: それについては、マジで感謝だ んで、“怪しい奴”の目撃情報はあったのか?
“アル”: ああ、あったよ だから“どういうことだ?”って兄弟に聞いたんじゃねぇか
“アル”: よりにもよって、目撃された“怪しい奴”ってのが、 あの芸術家だったんだからよ
“スバル”: 芸術家……もしかしてガーディーのことか?
“アル”: おい、さすがに話が違いすぎだぜ、兄弟 オレは、“他言無用”だって、はっきり伝えたよな?
“アル”: しかも、あいつだけは勘弁だって、そう言っておいたはずだ
“アル”: それがどうしてこんなことになってやがる?
“スバル”: いやいや、待て待て! さすがにそれはありえねぇ!
“スバル”: あいつは今頃、ガイラハル温帯で温泉三昧のはずだ バーリエル男爵領に姿を現わすわけがねぇんだ
“アル”: はぁっ? 温泉三昧、だと? 何言ってやがる、兄弟
“スバル”: とにかく、あいつがここにくるはずねぇぜ、アル
“スバル”: あいつは帝国へ向かったはずで
“スバル”: 仮にエドガーって人の初期作品の情報を 俺らの誰かがあいつに教えたとしても
“スバル”: 昨日の今日でバーリエル男爵領に姿を現わせるわけがねぇんだ
“スバル”: ここから帝国は目と鼻の先だって話だけど、 それにしたって明らかに到着が早すぎる
“スバル”: 俺らがあの絵本の存在を確認したのは、 昨日は昨日でも、日暮れ間近だったんだからよ
“アル”: けど、あの男はウチの領内に現れたんだ 信用できる情報だし、それは間違いねぇ
“アル”: マジ、どういうことか、説明してくれや、兄弟
“スバル”: 言っとくけど、俺はガーディーに教えてねぇし、 エミリアやレムだってきっとそうだ
“スバル”: ユリウスやフェネだって教えてねぇし、たぶんリドだって……
“アル”: おいおい、リドアって嬢ちゃんのときだけ、 やけに自信なさげだったな、兄弟
“アル”: そもそもあの嬢ちゃんは芸術家野郎の関係者だ “師匠に教えてあげたい”みたいなこと言ってたしよ
“スバル”: けど、リドは“言わない”って約束してくれたじゃねぇか お前だって聞いてただろ?
“アル”: 確かにそう言ってはいたが、 平気で嘘をつける人間なんて、この世にゴマンといるんだぜ、兄弟
ナレーター: 約束……
ナレーター: リドアと約束をしたあの時の光景が、 スバルの脳裏には蘇っていた
ナレーター: 彼女は間違いなくスバルに約束したのだ ガーディーにはプリシラの屋敷にある絵本の情報は伝えないと
“スバル”: ──けど、やっぱタイミングが合わねぇ
“スバル”: リドがあの絵本の情報を知ってからだと、どう考えたって、 ガーディーの奴がくるのは、もっと先になるはずなんだよ
“アル”: あの絵本の情報を、もっと前にあの嬢ちゃんが知ってたらどうだ?
“アル”: 確かに嬢ちゃんは“今知りました”って感じではあったが、 芸術家野郎には言わないなんて平気で嘘をつける奴だ
“アル”: 本当はもっと前から知ってたのに、 そうじゃないって演技をしてただけかもしれねぇだろ
“アル”: そもそも、兄弟たちの中で、あの絵本の存在を知らないのが、 あの嬢ちゃんだけって状態が疑問だぜ、オレは
“アル”: 兄弟はあんま、隠し事が得意なように見えねぇしよ
“スバル”: けど、そもそもリドには、 ガーディーへの連絡手段がなかったはずだ
“アル”: おいおい、それはどこからの情報だ? まさか本人が言ったことを鵜呑みにしたわけじゃねぇよな?
“スバル”: うぐっ…… 本人からの情報だよ…… そもそもリドが嘘つきなら、これも嘘の可能性が高い……
“アル”: なぁ、兄弟 兄弟は薄々、 あの嬢ちゃんが信用できねぇって思ってたんじゃねぇのか?
“アル”: だからあの嬢ちゃんにだけ、 姫さんが持ってる絵本の情報を教えてなかった 違うか?
“スバル”: なんか、ユリウスもフェネも リドのことあんま信用してないみたいで
“スバル”: リド自身もあんまみんなとの話し合いに 参加したいって感じじゃなかったから
“スバル”: みんなで大切な話をするときは、 リドには席を外してもらってたんだ
“スバル”: だから、リドに話してないのは、 俺らからすると普通の状態なんだよ
“アル”: んだよ、兄弟 すでに答えは出てるじゃねぇか
“アル”: あの狐さんも『最優の騎士』様も、 あの嬢ちゃんを信用してなかった それが“答え”だ
“アル”: つまり、とっくの昔に姫さんが持ってる絵本のことを知ってて、 ガーディーとかいう芸術家に教えやがったんだよ
“アル”: だからこのタイミングで、 あの芸術家はウチの領内に現れることができた
“アル”: リドアって嬢ちゃんからすれば、 俺が“他言無用だ”って言ったのは計算外だったかもしれねぇな
“アル”: しかもガーディーっていう芸術家を ピンポイントで指定してやったんだからよ
“アル”: もちろん、連絡手段がねぇってのも嘘だから、 他言無用の件も芸術家野郎には共有されてて
“アル”: それであいつは、領内に入りながら、 この屋敷に姿を現さないんじゃねぇか?
“スバル”: そう考えると、確かに筋は通るけども……
“スバル”: とはいえ、現時点じゃ、あくまで推論にすぎねぇ 確固たる証拠は、何一つねぇんだからさ
“アル”: まぁ、証拠は必要だな “疑わしきは罰せず”って言うしよ
“スバル”: ああ、確固たる証拠が必要だ “疑わしきは罰せず”の精神を、俺は大切にしたい
“スバル”: リドが俺らに協力してくれて、 『異形』やなんだと戦ってくれたことは事実だ
“スバル”: あいつのことを俺は仲間だと思ってたし、 そうであったらいいと今も願ってる
“スバル”: だからちゃんと確かめたいんだ あいつが本当はどんな奴なのかをさ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_16

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■16話 タイトル:偽りの従順 更新日:2022/04/21

ナレーター: アルが立ち去った部屋で、スバルは一人考えに耽っていた──
“スバル”: ちくしょう…… まさかリドが……
“スバル”: いや…… 絶対そんなことは……
ナレーター: リドアについては、ユリウスはもちろん、 彼を従えるアナスタシアも疑念を持っているようだった
ナレーター: さらにフェネも、彼女に注意するようスバルに警告を発していた
“スバル”: それに加えアルまでも……
ナレーター: リドアはガーディーの助手を務め、 ガーディーのことを“師匠”と慕い尊敬している
ナレーター: そして、リドアに対して疑いの目を向けたくないスバルも、 ガーディーについては信用できないという矛盾を抱えていた
“スバル”: ガーディーの奴が信用ならねぇんだ……
“スバル”: フェネにも言われたけど、にも拘わらず、 リドのことを信用するのは、すげぇ矛盾してるよな……
“スバル”: でも……
ナレーター: 仲間に加わってから、リドが目覚ましく活躍をしたことは確かだ
ナレーター: テンミツ到着前には一人で多くの盗賊を討伐し
ナレーター: テンミツに到着してからも、 迫りくる『変異体』や『異形』と積極的に戦い、町を救ってくれた
“スバル”: あれも演技だっていうのか……? 命懸けで『変異体』や『異形』と戦う姿も全部……
“スバル”: いやいや、そんなはずは…… そもそもなんのために……?
ナレーター: 現時点でリドアにかけられている嫌疑は、 他言無用を約束したにも拘わらず
ナレーター: ガーディーにプリシラの屋敷にあった エドガーの初期作品の情報を流したことだ
ナレーター: アルは、はっきりと “ガーディーにだけは伝えるな”という趣旨の発言をしており
ナレーター: にも拘らずガーディーに情報を漏らしたのだとしたら、 その神経を疑わざるを得ないが
ナレーター: この件について言えば、明らかにリドアには動機が存在している
“スバル”: けど……アルにはわりぃが、この件は俺にとっちゃ些細なことだ
“スバル”: 俺が本当に突き止めなくちゃならねぇのは…… フェネを殺した犯人……
“スバル”: そいつに俺も殺(や)られちまった……
ナレーター: スバル以外は誰も知らない事実
ナレーター: 前の周回でフェネは何者かによって暗殺され、 犯人の姿を見ようとしたスバルも同じ運命を辿った
ナレーター: だが、この件については、リドアには動機が見当たらない
“スバル”: 俺らが殺された件と、ガーディーにあの絵本の情報が 伝わったのは、別口ってことか……?
“スバル”: いやいや、だとしたら、リドが嘘をついた理由はなんだ……?
ナレーター: 前の周回、リドアはガイラハル温帯を目指す竜車の中で、 ガーディーとの連絡手段がないとスバルに伝えたのだ
ナレーター: そしてそれは、嘘だったということになる
“スバル”: どうしてあいつは…… マジわかんねぇ……
ナレーター: スバルは考え込み、やがてフェネの言葉を思い出す
ナレーター: フェネはスバルに、リドアの様子が変わったのは、 ガーディーからの手紙を受け取ってからだと言い
ナレーター: それについてスバルも同意した記憶がある
ナレーター: そしてその手紙について、 ユリウスはリドアがすべてを見せていないと疑っていた
“スバル”: 確か、あの手紙の後から、 あいつは“スバルさんのために”って言い出したんだ……
“スバル”: でも……じゃあどうして、俺は殺されたんだ……? あの発言が本心なら、そんなことになるはずは……
ナレーター: そう呟いてから、スバルは思わず笑い出す
“スバル”: ふふふ…… ははは…… 嘘をついてんなら、本心も何もねぇだろ……
“スバル”: おい、ナツキ・スバル お前の頭の中は、本当にニュートラルか?
“スバル”: 知らず知らずのうちに、 リドを庇う方向にバイアスをかけたりしてねぇよな?
“リドア”: スバルさんがそう言うのでしたら、リドはこの辺にしておきます
“リドア”: わかりました スバルさんがそう言うのであれば、 リドは宿探しをお手伝いします
“リドア”: スバルさんがそう言うのであれば、 リドは喜んでお手伝いします
“リドア”: スバルさんがそう言うのであれば、リドは気にしません
“リドア”: わかりました スバルさんがそう言うのであれば、師匠へは報告しません
“スバル”: 確かに“皆様のため”ってのが “スバルさんのため”に変わったのは
“スバル”: あの手紙を受け取った後かもしれねぇけど
“スバル”: 出会った頃から一貫して、あいつは俺に従順だった……
“スバル”: そういうのも全部、 俺の考えにバイアスをかけるためだったっていうのか……?
“スバル”: 全部が全部嘘っぱちで、心にもない台詞を並べてた……?
“スバル”: あいつは…… リドは……ずっと……
“リドア”: ……ユリウスさんは、リドが同行することに反対なのでしょうか?
“ユリウス”: あなたが真の味方であるなら、 実に頼もしい戦力であることは間違いありません
“ユリウス”: ですが、“スバルの役に立つため”としながらも、 あなたがガーディーという方の指示を優先することは明白
“ユリウス”: もし、ガーディー氏の指示がスバルに害を成すものだった場合、 あなたはどう行動されるのでしょう?
“リドア”: …………
“ユリウス”: リドアさん、今の質問には答えられませんか?
“リドア”: ユリウスさんからの質問に答える必要性をリドは感じません
ナレーター: 前の周回での一幕
ナレーター: あの時リドアは明言を避けたけれど、 それ自体が明確な“答え”だったのかもしれない
ナレーター: スバルへの従順はあくまでポーズに過ぎず、 本当にリドアが従順な相手はガーディー……
ナレーター: だとすれば、リドア自身に動機があるかないかは関係ない
ナレーター: 目を向けるべき相手はガーディーということになる
ナレーター: ガーディーに動機があれば、自らの考えや気持ちに関係なく、 恐らくリドアは実行に移すだろう
“スバル”: ずっと引っ掛かってたんだ、俺……
“スバル”: あの時、危険を顧みずにページに飛び込んできたのは、 リドじゃなくてコリーナだった……
“スバル”: イバダでページに吸い込まれたとき…… ユリウスはアナスタシアさんのためにページに飛び込んできた
“スバル”: すげぇ弱い俺でさえ、 エミリアたんのためにページに飛び込んだ経験がある
“スバル”: なのにあいつは…… 目の前で俺が吸い込まれたってのに……
ナレーター: フスミでページにスバルが吸い込まれた際、 リドアはスバルを追ってページに飛び込まず
ナレーター: 逃走する仮面の男を追うという選択をした
ナレーター: その判断自体は、責められるものではないかもしれないが、 彼女のこれまでの発言とは矛盾している
ナレーター: これまでの発言が心からのものであれば、 リドアは迷わずスバルを追ってページへ飛び込んでいただろう
“スバル”: もっと早く気付くチャンスはあったわけだ…… あんとき気付いてりゃ、もしかしたらあんなことには……
“スバル”: いや…… でも……
“スバル”: リドが平気で嘘つける奴で、 俺への従順な姿勢が偽りだったとしても
“スバル”: 結局、プリシラが持ってたあの絵本の情報を ガーディーに教えたってこと以外の証明にはならねぇ
“スバル”: その件については、ほぼ間違いなく、あいつの仕業だと思う……
“スバル”: けど、フェネの殺害については飛躍しすぎだし、 ガーディーの奴の指示だとしても腑に落ちねぇ……
“スバル”: 結局……どうしてフェネは殺されたんだ……?
“スバル”: そして、本当にあれはリドの仕業だったのか……?
“スバル”: 結論を出すためには、 やっぱ色々確かめる必要があるな……

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_17

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■17話 タイトル:根拠がない断言 更新日:2022/04/21

ナレーター: ──翌日
ナレーター: スバルは朝起きるとすぐに、 フェネとユリウスがいる部屋を訪れるのだった
“スバル”: ──おいおい、マジかよ、この部屋!? 俺が割り当てられた部屋と大違いじゃねぇか!
“フェネ”: いきなり入ってきてなんなのですか、スバル氏?
“フェネ”: 品位あるこの部屋に似つかわしくないので、 大声を出すのはやめてください
“フェネ”: しかも、現在はまだ朝の早い時間 そのような大声は本当に迷惑ですよ、クソ上司
“スバル”: うぐっ…… 入室早々に辛口コメントとは、 だいぶ調子は良さそうだな、フェネ
“フェネ”: 左様です 気持ちの良い朝をスバル氏がぶち壊さなければ、 さらに体調の回復が見込めていたでしょう
“スバル”: 気持ちがいい朝をぶち壊してごめんね! あまりにも俺が割り当てられた部屋と違ってたからさ!
“スバル”: もちろん、泊めてもらえるだけ、 感謝しなきゃならねぇ立場だってことは、わかってるけど!
“フェネ”: その通りです、スバル氏 泊めていただけるだけ、 プリシラ女史とアル氏には感謝しなければなりません
“フェネ”: そのような立場で、部屋の良し悪しを口にできる スバル氏の神経をフェネは疑ってしまいます
“スバル”: だったら、俺の部屋と代わってくれよ、フェネ
“スバル”: 俺だって、こんな立派な部屋に泊まらせてもらってたら、 良し悪しなんて口にしなくて済んだからさ
“ユリウス”: スバルはプリシラ様のお屋敷に滞在させていただく意味を 見失っていないか?
“ユリウス”: 体調を崩されたフェネさんに ゆっくりお休みいただくのもその理由の一つ
“ユリウス”: フェネさんに割り当てられたこの部屋は確かに快適だが、 それは喜ぶべきことであり、僻みの対象にするべきではない
“スバル”: うぅ…… あまりの正論にぐうの音も出ねぇ……
“ユリウス”: 無論、私にこの快適な部屋は不要だ もし、スバルが望むのであれば、私が君と部屋を代わろう
“ユリウス”: その場合、フェネさんの看病と警護は、 スバル、君が担うことになる
“スバル”: 待て待て、“看病”についちゃ、 まぁ、俺でもこなせるかもしれねぇけど
“スバル”: “警護”については俺じゃ頼りなさすぎるだろ
“スバル”: 大丈夫だ、ユリウス 俺がどうかしてたってもう理解してる
“スバル”: タダで泊まらせてもらってるだけ、マジ感謝だ 部屋の良し悪しに関わらずさ
“スバル”: ホント、この場にプリシラがいなくてよかったぜ あいつがいたら、間違いなく叩き出されてただろうな、俺は
“フェネ”: プリシラ女史に叩き出されるスバル氏を見ることができず、 フェネはとても残念です
“スバル”: おいおい、あいつの場合、叩き出されるだけじゃ済まなそうだから 冗談でもそういうことは言わないでくれ
“スバル”: ホント、叩き出されるぐらいで済んだら、 ラッキーの部類に入る感じだからさ
“スバル”: とにかく、フェネ、お前が元気そうでよかったよ 昨日は丸一日お前の休養に当てられてよかった
“フェネ”: なるほど…… 故にスバル氏は、昨日は姿を現さなかったのですね?
“スバル”: まぁ、俺のせいで 休息がままらなねぇって事態は避けたかったんでね
“フェネ”: それでは、本日姿を現したのは何故ですか? フェネに話があると推測します
“スバル”: いや…… そろそろ“何か”を思い出す頃合いかもなって思って……
“スバル”: フェネ、大切な“何か”を思い出しそうな感じはねぇか?
ナレーター: 前回の周回 フェネはスバルに“大切な何かを思い出せそうだ”と伝えた
ナレーター: だが、その“何か”について聞くことなく、 前回の周回は終わりを迎えてしまったのだ
“フェネ”: ……大切な“何か”をフェネが?
“スバル”: ああ お前がその“何か”を そろそろ思い出すんじゃねぇかって気がしてる
“スバル”: んで、今度こそ、その“何か”を聞き逃すわけにはいかねぇんだよ
“スバル”: だから、気持ちがいい朝をぶち壊す結果になっちまったけど、 こうしてお前に会いにきたんだ、俺は
“フェネ”: なるほど…… 確かにフェネは、大切な“何か”を忘れてしまっている気がします
“フェネ”: そして、その“何か”を思い出せそうだと感じているところでした
“スバル”: やっぱそうか! それで?
“フェネ”: 近いですよ、スバル氏 そんな風にされては、 思い出せそうなものもどこかへ吹き飛んでしまいます
“スバル”: わ、わりぃ、フェネ とはいえ、まだ思い出すには至ってねぇ感じだな
“フェネ”: 左様です、スバル氏 “思い出せそう”ではありますが、思い出すには至っていません
“スバル”: そっか、それについてはもうちょいかかりそうか……
“スバル”: とはいえ、思い出したら、すぐに教えてくれ 今度こそ、聞き逃したくねぇんだ
“フェネ”: ……わかりました スバル氏には何やら事情がありそうですし、 思い出し次第お知らせするとお約束します
“スバル”: ホント頼むな、フェネ それから──
“フェネ”: ……それから? スバル氏、まだ何かあるのですか?
“スバル”: ああ、ぜひともお前やユリウスに共有したい情報がある
“スバル”: お前やユリウスの読み通りだったっつーか…… とにかく、聞いてくれ、フェネ、ユリウス
ナレーター: それからスバルは、昨日の夕方にアルから受けた報告や、 その後考えた内容などをフェネとユリウスに共有するのだった
“ユリウス”: ──なるほど、アル殿に口止めされたというのに、 ガーディーという方がバーリエル男爵領に……
“スバル”: ああ アルの奴は“ガーディーにだけは言うな”って感じで、 リドも“言わない”って約束したんだ
“スバル”: けど、ガーディーはきやがったんだよ 帝国へ向かったはずなのにさ
“フェネ”: 念のための確認なのですが、ガーディー氏の気が変わり、 ヴォラキア帝国から行き先を変更したということはありませんか?
“フェネ”: リドア女史が情報を漏らしたのではなく、 偶然ガーディー氏が姿を現わした可能性です
“スバル”: それについては“ない”って断言できる
“スバル”: 諸事情により、何故そう断言できるかは、 ちょっと割愛させてもらうけどさ
“フェネ”: ……ガーディー氏自らがその情報を得た可能性はどうです?
“フェネ”: あの絵本の情報は、スバル氏でも得られた情報です ガーディー氏が得ていてもおかしくありません
“スバル”: それも“ない”ぜ、フェネ
“スバル”: ガーディーがあの絵本の情報を知ってるとしたら、 リドから教えられたとしか考えられないんだよ
“スバル”: って、お前はリドのこと疑ってた側だろ どうしてわざわざそんな確認をする?
“フェネ”: 誤った判断をしないためです 現時点で証拠は何一つありません
“フェネ”: それにフェネとしては、 スバル氏が“ない”と断言できる点にも大きな疑問を感じます
“フェネ”: その断言には何の根拠もなく、判断材料からは除外するべきです
“スバル”: “除外”ってな…… マジだから言ってんだ、俺は
“スバル”: それに、アルにはわりぃが
“スバル”: 正直、あの絵本の情報がガーディーに漏れたってのは、 俺にとっては些細な問題で
“スバル”: 本当に俺らが解明しなくちゃならねぇのは、別の問題なんだよ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_18

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■18話 タイトル:あんな芸当をできる奴は 更新日:2022/04/21

“スバル”: クソっ…… なかなか思い通りに進まねぇな……
ナレーター: スバルは先程フェネの元を訪れたが、 結局思い通りに話を進めることはできなった
ナレーター: フェネはまだ大切な“何か”を思い出しておらず
ナレーター: 命を狙われているというのに、 あまり危機感を持ち合わせていない様子だ
“スバル”: けど…… 間違いなくあいつの命は狙われてる……
“スバル”: 一番怪しいのは、 ガーディーの指示でリドが殺害したっていうのだけど……
“スバル”: だとしたら、その理由はなんだ……?
ナレーター: 一つあるとすれば、あの時フェネが思い出した大切な“何か”が、 フェネ殺しの引き金を引いたということだ
ナレーター: フェネの思い出した記憶が、 ガーディーにとって不都合なものだった場合
ナレーター: 確かにそういった可能性は浮上するものの
ナレーター: どうしてもスバルには、 その可能性は低いように思えてしまうのだった
“スバル”: 仮面の男だったらわかる…… けど、ガーディーにはフェネを殺す動機が見当たらねぇ……
“スバル”: 例えば、仮面のあいつとガーディーが 同一人物ってことはありえるのか……?
ナレーター: スバルは目を閉じ、仮面の男とガーディーの姿を思い出した
ナレーター: 体格は確かに似ているかもしれない
ナレーター: だが、仮面の男から仮面を外したとしても、 ガーディーにはならないように思えた
“スバル”: 身長は同じぐらいだよな…… 体格も同じ感じがする……
“スバル”: けど、髪の色は違うし、眉の感じも違う
“スバル”: ヅラをかぶって、メイクしてって線はあるけど、 やっぱ別人の可能性がたけぇ……
“スバル”: それに、シバレル大氷河で、ガーディーは、 仮面を着けた賊に襲われたって言ってたよな……
“スバル”: その賊ってのは、きっとあの仮面野郎だ……
“スバル”: あの話が本当だとすると、ガーディーと仮面の男が同一人物だ って線は消えるけども
“スバル”: だとしたら、どうしてあそこにページがあった……?
“スバル”: あんときは、『変異体』に恐れをなして 逃げ出したんじゃねぇかって話で落ち着いたけど
“スバル”: あの仮面野郎は強いし、逃げる必要なんてなさそうに思える……
“スバル”: なのに、どうして…… あいつはページを持ち去らなかった……?
“スバル”: クソっ、わかんねぇ…… 謎が多すぎるぜ……
“スバル”: とはいえ、フェネの命がかかってるんだ 匙(さじ)を投げるわけにはいかねぇ……
“スバル”: とにかく、 ちょっとフェネが殺されたときのことを思い出してみよう……
“スバル”: 辛い記憶だから、思い出すこと自体を避けてきたけど、 解決のヒントが何か隠れてるかもしれねぇ
ナレーター: 前回の周回 ヴォラキア帝国へ入ったスバルたちは、 ガイラハル温帯の温泉でガーディーとの再会を果たした
ナレーター: その際、ガーディーは帝都ルプガナへ向かうと告げ、 スバルたちの元から立ち去っている
ナレーター: 少なくとも前回の周回では、ガーディーが バーリエル男爵領に姿を現わすことはなかったはずだ
ナレーター: そんなガーディーの行動に変化をもたらしたのも
ナレーター: それは間違いなく、 プリシラが所持していたエドガーの初期作品の存在だろう
ナレーター: リドアがその情報をガーディーに伝え、 彼の行動に変化が生じたのだ
“スバル”: あいつは今回もガイラハル温帯にいたのか……? そこでリドアから例の絵本の報告を受けた……?
“スバル”: それとも今回は、帝国には向かっていない……?
“スバル”: 俺らの行き先がバーリエル男爵領になったことを知って、 あいつは帝国行きをやめたのかもしれない……
“スバル”: そもそも、俺らが帝国へ向かおうってなったのは
“スバル”: あいつの手紙に、 エドガーって人の出身地が帝国だって書いてあったからだ
“スバル”: その情報自体が、俺らを帝国へ向かわせるために 書かれたものって可能性がある……
“スバル”: けど、あいつの思惑から外れ、 俺たちは行き先をプリシラのところに変更した
“スバル”: そのズレた軌道を修正するために、あいつは 俺らを追ってバーリエル男爵領に入ったのかもしれねぇ……
“スバル”: 仮に前回同様、ガーディーの奴がガイラハル温帯の温泉に、 ドはまりしてたとしても
“スバル”: エドガーって人の初期作品はかなり魅力的だ
“スバル”: あいつが温泉を切り上げて、 バーリエル男爵領にくるってことには、十分説明がつく……
ナレーター: それからスバルは、 ガイラハル温帯近くにあった宿場町での出来事を振り返った
ナレーター: その宿場町でスバルは、コリーナと再会し、 プリシラがエドガーの初期作品を持っていることを知った
ナレーター: さらにコリーナは、 リドアらしき人物を街で見かけたとスバルに教えたのだ
ナレーター: その当時、体調を崩したフェネの看病は、リドアが行っており
ナレーター: コリーナの言っていることが正しければ、 リドアは眠っているフェネをしばらく放置していたことになる
“スバル”: 恐らく、コリーナが見たリドと思しき人物は、 本物のリドだった可能性がたけぇ……
“スバル”: そして、あいつが出歩いてた理由は…… 恐らく俺たちに内緒でガーディーと連絡を取るためだ
“スバル”: それとも、何かを探してたのか……? 例えばページとか……?
“スバル”: フェネはとてもページを感知できるような状態じゃなかったし
“スバル”: あの辺にページがあったとしても、 きっと感知はできなかったはずだ……
“スバル”: それに、ガーディーの奴が、 本当に帝都ルプガナってとこに向かったかも怪しい……
“スバル”: ガイラハル温帯でガーディーと会ったとき、 ガーディーの奴はリドと内緒話をしてたよな……
“スバル”: あれは、いったい何の話をしてたんだ……?
“スバル”: 今後連絡を取り合うための調整みたいな感じだったけど、 そもそも連絡手段が確保されてんなら、そんな話はしなくていい
“スバル”: 話をするふりして、何かをそっと手渡したとか……?
“スバル”: クソっ…… あんとき、俺がもうちょい注意して見てたら……
“スバル”: 今にして思うと、“温泉三昧”だって怪しいじゃねぇか……
“スバル”: あいつは温泉にドはまりしてるふりをして、 俺らがくるのを待っていた可能性がある……
“スバル”: あれは偶然にしてはできすぎな再会だったし、 裏でリドとガーディーが示し合わせてたとは考えられねぇか……?
“スバル”: リドとガーディーにはあのタイミングで会っておく必要があって、 だからあいつは温泉にドはまりしてるふりをしたんだ
“スバル”: その場合、俺がプリシラに話したことは、 俺の勘違いってことになるけど……
“スバル”: それについては、まぁ、交換条件で エドガーって人が若い頃に描いた絵本を見れたわけだし
“スバル”: 結果オーライってことにしておくけども
ナレーター: スバルの回想はさらに進み、 フェネの亡骸を発見する問題のシーンに近づいていた
ナレーター: あの日、スバルは役割の変更を行った
ナレーター: きっかけはコリーナから聞いたリドアの目撃情報だった
ナレーター: スバルは前夜にエミリアやレムと行った情報共有の最後に
ナレーター: リドアには注意が必要なので、 代わりに自分がフェネを見ると伝えた
ナレーター: そのことを翌日フェネに話すと、 珍しくフェネはスバルの判断を正しいと評価してくれたのだ
ナレーター: そして、あの日のフェネが、 かなり体調が良さそうだったことをスバルは思い出す
ナレーター: あの時のフェネは、スバルに辛口なコメントを連発していた
“スバル”: そういや、あの時もだけど、 今日のフェネも体調が良さそうだったな……
“スバル”: いい部屋でゆっくり休んだってのもあるけど、 何かフェネの体調がいいときに共通点はねぇか……?
“スバル”: あいつがあんな風になっちまったのは
“スバル”: あの仮面野郎が、 “こわいまもの”のページを持ってるかもって臭わせてからだ
“スバル”: そこから一貫して、体調が悪い感じではあったけど
“スバル”: 時々あいつらしさが光る、 体調がそこそこ良さげなタイミングがあった……
“スバル”: まず思い当たるのは、 フスミであいつがいる部屋を訪ねたときだ……
“スバル”: あの時は、フェネにページの感知を頼みにいって、 見事に撃沈されちまったよな……
ナレーター: あれはフスミで仮面の男の大捜索をしたときだった
ナレーター: スバルは寝込んでいるフェネの元を訪れ、 無理を承知でページの感知をお願いしたのだ
ナレーター: その際フェネは、ページを感知できるほどの体調では なかったももの、辛辣なコメントは健在だった
ナレーター: そして、その日の夜、仮面の男がスバルたちを閉じ込めたページを 『禁書』に封じてもらったときも
ナレーター: 比較的フェネの体調はいい状態だった
ナレーター: その翌日、仮面の男探しを手伝ってくれた フスミの役人のところへ別れの挨拶に赴いた際も
ナレーター: フェネの体調は悪くなかったように思えた
ナレーター: 次にフェネがスバルへの辛口コメントを連発したのは、 ガイラハル温帯でガーディーに再会したときになるが
ナレーター: あれはフェネ本人も認めている通り、空元気だった可能性が高い
ナレーター: 事実、ガーディーの姿が見えなくなると、 無理が祟ったフェネは気を失っている
ナレーター: 信用ならないガーディーに対して、 弱みを見せないための無理だと推測され
ナレーター: フェネの体調がいい状態に、 ガーディーとの再会時は含めるべきではないように思える
“スバル”: ──んで、俺がリドとフェネの看病を代わった、 あの日も調子は良さそうだった……
“スバル”: それから、今回の周回についてだけど……
“スバル”: プリシラに、エドガーって人の初期作品を見せてくれって 頼んだときは、体調が悪いようには見えなかった
“スバル”: あと、さっきも明らかに体調は良さげだったな……
“スバル”: そんな風に、あいつの調子がいい時に、存在する共通点…… それは……
“スバル”: リド…… どの場面にもリドがいねぇ……
“スバル”: エドガーって人の初期の絵本を見たときは、 みんな一緒だったけど……
“スバル”: あの時のフェネは元気ってほどじゃなかった気がする……
ナレーター: そして、いよいよ、スバルは フェネの亡骸を発見したときのことを思い返す
ナレーター: あの時フェネの亡骸は消えずに残っており、 フェネは殺された直後だった
ナレーター: スバルは横たわるフェネの亡骸に気を取られていたが、 あの部屋の中には間違いなくフェネを殺害した犯人がいたのだ
ナレーター: その者の姿を見ることはできなかったスバルだが
ナレーター: 彼の記憶の中に、犯人を特定するためのヒントが、 必ず隠れているはずだ
“スバル”: ──まず、あの時あいつは、突然体調が悪くなった感じがした……
“スバル”: その後、俺は“一人にさせてくれ”って言われて、 ちょうど昼時だったってのもあって部屋を出たんだ……
“スバル”: けど、あの急な体調の悪化が、 俺とのお喋りのせいじゃなかったとしたら……?
“スバル”: 俺は…… あの時、フェネの亡骸を発見して……
“スバル”: あまりのショックで周囲を見てる余裕がなくて……
“スバル”: フェネは…… フェネは…… 誰かに頭を割られてて……
“スバル”: お、俺も……そいつに……あ、頭を……
“スバル”: はぁ……っ はぁ……っ はぁ……っ
ナレーター: 早くなる鼓動
ナレーター: スバルを目眩が襲い、思わず胃の中のものを戻しそうになる
“スバル”: しっかりしろ……っ 思い出すんだ……っ
“スバル”: なんとしても……フェネを殺した奴を……っ
ナレーター: 頭を抱え叫びたくなる衝動を堪え、 スバルは自分が殺された瞬間のことを必死に思い出す
“スバル”: 俺の頭を襲った衝撃は相当のものだ…… しかも一瞬で間合いを詰めたスピード……
“スバル”: あんな芸当ができる奴は、俺が知る限り一人しかいねぇ……
“スバル”: やっぱり、リド…… お前なのか……? だとしたらすべてが……
“スバル”: いや…… けど…… やっぱ動機が……
“エミリア”: ──スバル? 入ってもいいかしら?
“スバル”: え、エミリアたん!? もちろんいいけども、どうしたの、突然!
“エミリア”: 失礼します
“エミリア”: ええっと、スバルのことが心配だから、 レムが様子を見にいってほしいって
“エミリア”: 昨日はレムがいったから、今日は私の番みたい
“スバル”: ああ、なるほど、それでか……
“エミリア”: でも、なんだか中からスバルの声が聞こえて、 入っていいか悩んでたんだけど……
“エミリア”: スバルが苦しそうな感じになって…… それで、心配で……
“スバル”: 俺の声、漏れてたんだね…… まぁ、色々ひとりごとを言ってる自覚はあったけども
“スバル”: それで、結構外で待った感じ? 俺、結構な時間、ひとりごと言ってたと思うし
“エミリア”: そうね、ちょっと待ったわ 邪魔しない方がよさそうだったし
“スバル”: ありがとう、エミリアたん おかげで、色々考えがまとまったよ
“スバル”: ……んで、レムはエミリアたんたちの部屋にいる感じかな?
“エミリア”: ええ リドアちゃんを一人にするのは可哀想だから、 レムはリドアちゃんと一緒に部屋にいるわよ
“スバル”: そっか、そっか そりゃナイスプレーだ だったら安心して話ができる
“エミリア”: ……ないすぷれい? スバル、どういうこと?
“スバル”: ごめん、こっちの話だから、エミリアたんは気にしないで!
“スバル”: とにかく、エミリアたんやレムが、 リドを一人にさせたりしない心優しい子でよかったよ
“スバル”: ってことで、エミリアたん ちょっと大切な話があるんだけど、聞いてもらっていいかな?

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Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■19話 タイトル:嘘を暴く方法 更新日:2022/04/21

ナレーター: ──その日最後にスバルの元を訪れたのは、レムなのであった
“レム”: スバルくん ユリウス様に言われてきたのですが…… 大切な話とはどんな話でしょう?
“レム”: 突然、フェネさんの看病を行うのが、ユリウス様から エミリア様へと変更になったことも気になっています
“レム”: フェネさんの看病をエミリア様にお任せするのは申し訳なく、 できればレムが代わって差し上げたいのですが……
“スバル”: いやいや、エミリアたんは色々態度や顔に出ちまうから、 フェネの看病はエミリアたんが適任なんだよ
“スバル”: もちろん、フェネに迫る危険のせいで、 エミリアたんを危ない目には遭わせられないから
“スバル”: その辺はアルと調整済みだ
“スバル”: エミリアたんとフェネがいる部屋に、 怪しい奴が入らないよう、見張ってもらうことになってる
“スバル”: 俺の読み通りなら、そんなことにはならないはずだけど、 念のために、アルも巻き込んでおいたんだ
“スバル”: 加えてユリウスも、準精霊たちに、 フェネやエミリアたんを守るように言ってくれてるから安心だ
“レム”: なるほど…… やはりスバルくんには、何か考えがあるのですね?
“スバル”: ああ、きてもらったのは、そういうことを色々共有するためだよ
“スバル”: 今夜はユリウスがレムたちの部屋に居座ることになるけど、 その辺の事情も含めて説明させてくれ
ナレーター: ──翌朝
ナレーター: ユリウスの呼びかけで、 スバルたちはフェネがいる部屋に集められるのだった
ナレーター: そこにはプリシラの姿はなかったものの、 眠そうに目を擦るアルの姿もあった
“アル”: ──『最優の騎士』様からの呼び出しだから仕方ねぇけど、 マジ、朝っぱらからこういうのは勘弁してほしいぜ
“ユリウス”: 申し訳ありません、アル殿 ですが、アル殿にも関係があるお話だと思います
“ユリウス”: なぜなら、ガーディーという方に、あの絵本の情報を知らせたのは こちらにいるリドアさんに他ならないからです
“リドア”: …………
“アル”: そいつは本当か?
“アル”: 確かにあの芸術家野郎の目撃情報が届いちゃいるが、 この嬢ちゃんは他言無用を約束してくれたはずだ
“アル”: しかもあの芸術家を名指しして、 あいつにだけは言わないでくれって念押しまでしてある
“アル”: にも拘わらず、あの約束を反故にするなんて、 にわかには信じられねぇぜ、俺は
“ユリウス”: 約束……? 平気で約束を破る者など、この世にはごまんといるでしょう
“スバル”: 待て待て、ユリウス いったい何がどうなって、こんな話になってるんだ?
“レム”: はい、レムにも話が見えません ユリウス様、突然どうされたのですか?
“ユリウス”: 私は、ガーディーという方の目撃情報があった旨、 アル殿から知らされたのです
“ユリウス”: そして、私なりに考え、結論を出させていただきました
“スバル”: その結論が、“リドが知らせた”ってことなのかよ、ユリウス?
“ユリウス”: その通りだ、スバル
“スバル”: けど、リドにはガーディーとの連絡手段がないように思える どうやって知らせるんだ?
“ユリウス”: 例えば、ミーティアには離れた者との会話を可能にする “対話鏡”というものがある
“ユリウス”: リドアさんとガーディーという方に、 “連絡手段がない”と断じることはできない
“スバル”: ……対話鏡?
“エミリア”: えっと……対になっている鏡同士で、 離れた人ともお話できるミーティアよ
“エミリア”: 対話鏡を使えば、離れている人とも連絡を取り合うことができるわ
“スバル”: なるほど…… 何かしら、リドとガーディーには 連絡を取り合う手段があったかもしれねぇってことか
“ユリウス”: そういうことだ、スバル 対話鏡でないにしても、連絡を取り合う手段は他にも存在する
“ユリウス”: 私はずっと疑問に思っていたのだ
“ユリウス”: フスミでスバルがページに吸い込まれた際
“ユリウス”: スバルを追ってページに飛び込んだのは、 コリーナさんという方で、リドアさんではなかった
“ユリウス”: 目の前でスバルがページに吸い込まれたというのに……
“ユリウス”: 真にスバルの役に立ちたいのであれば、 迷わずページに飛び込んだはずだ
“ユリウス”: 事実、主であるアナスタシア様をお守りするため、 私にはページへと飛び込んだ経験がある
“スバル”: それについては、俺にも経験があるよ
“スバル”: ガナクスでエミリアたんがページに吸い込まれたときに、 弱いくせして、気付いたらページに飛び込んでた
“リドア”: ……リドは、あの仮面の男を追う方が、 スバルさんのためになると判断しました
“ユリウス”: ……スバルのためになる?
“ユリウス”: スバルの身に何かあれば、“ためになる”以前の問題だ 下手をすれば死んでいたかもしれない
“リドア”: そう言われても、あの時のリドは、そう判断したのです
“リドア”: スバルさんはあの男を捕らえるために尽力していました その努力を無駄にするべきではないと思ったのです
“リドア”: それにスバルさんなら、 きっと“自分を助けるより、あの男を追え”と言ったはずです
“リドア”: あの仮面の男は、世界を滅ぼすかもしれない、 とても危険な存在なのですから
“ユリウス”: なるほど、筋は通っているように思える
“ユリウス”: スバルであれば、自分の安全を犠牲にしても、 あの仮面の男を捕らえることを優先するだろう
“ユリウス”: だが、私はあなたを疑っています、リドアさん ご存じの通り、出会ったときからずっと
“ユリウス”: さらに言えば、あなたがガーディーさんのことを “師匠”と慕うことも、偽りに思えてならない
“ユリウス”: あなたが本当に慕う相手 それは──
“ユリウス”: あの仮面の男なのではないですか?
“スバル”: ──なっ! そ、それは、さすがに飛躍しすぎだ、ユリウス!
“ユリウス”: リドアさんのスバルへの忠義が偽りだった場合、 ガーディーという方への忠誠にも同様の可能性が出てくる
“ユリウス”: それに、仮面の男とリドアさんに繋がりがあると考えると、 様々なことが説明可能になるのだ
“ユリウス”: フスミでリドアさんは、唯一ページに吸い込まれなかった
“ユリウス”: 仮面の男を追ったと言うが、 実際にはまんまとあの男には逃げられている
“スバル”: ページに吸い込まれなかったのは、 適当なページを使い切った後だったんじゃねぇか?
“スバル”: ユリウス、エミリアたん、レムに俺 全部で四枚もページを使った後だったんだからさ
“ユリウス”: であれば、戦闘力からいって、 スバルよりもリドアさんを優先するべきではないか?
“スバル”: そ、それは確かに……
“ユリウス”: だが、あの男はそうしなかったのだ 恐らくそこには、明確な意図が存在する
“スバル”: け、けど、あの仮面の男とリドに繋がりがあるってのは、 さすがに……
“ユリウス”: スバル、君はテンミツで私と共に競売に参加したはずだ
“スバル”: ああ あんときはフェネとアナスタシアさんも一緒だったな
“スバル”: んで、あの男にページを全部落札されちまったんだよ
“ユリウス”: その通りだ
“ユリウス”: アナスタシア様は、落札に必要な十分な額を ご用意されていたというのに、我々の落札は叶わなかった
“ユリウス”: あの方が落札金額を読み違えるなど、本来であれば考えられない
“ユリウス”: だが、こちらの情報が漏れていたと考えれば、 そのことにも説明がつく
“スバル”: つまり……リドが漏らしてたって言うのか?
“ユリウス”: あくまで“可能性の話”ではあるが、その可能性は否定できない
“スバル”: でも、あの時アナスタシアさんが、金貨を何枚用意してたかなんて 俺らは誰も知らなかったぞ?
“スバル”: アナスタシアさんも、 信用できる極一部の人間しか知らないって言ってたし
“スバル”: リドが知ってたってするのは、さすがに無理があるだろ
“ユリウス”: もしかしたらリドアさんは、 隠密行動に特化した、特別な訓練を受けているのかもしれない
“ユリウス”: あるいは、気配を消せる類の加護をお持ちだとも考えられる
“ユリウス”: リドアさんには、一人で動く時間が十分にあり、アナスタシア様が ご用意する金貨の枚数を知ることは不可能ではなかった
“スバル”: 不可能ではなかった、って かなり無理くりだろ、それは しかも“かもしれない”“考えられる”っていう仮定が前提だ
“ユリウス”: だが、そういった仮定が前提ではあるが、 フェネさんの体調不良についても説明することが可能だ
“ユリウス”: ここしばらくフェネさんの看病をしていた私には
“ユリウス”: フェネさんの体調の変化が、 あることに関係しているとしか考えられないのだ
“スバル”: ……“あること”ってのは、なんだよ、ユリウス?
“ユリウス”: リドアさんだ、スバル
“ユリウス”: リドアさんが近くにいない場合、 フェネさんの体調は比較的良好だった
“ユリウス”: そして、リドアさんがこの部屋にいる今、 フェネさんの様子は、とても体調が良いようには見えない
“フェネ”: それについては…… ユリウス氏の言う通りです……
“フェネ”: こちらの部屋でユリウス氏やエミリア女史に看病されていた間…… フェネの体調は今ほど悪くありませんでした……
“スバル”: くっ…… リド…… ユリウスに対する反論があるなら、頼む……
“リドア”: スバルさんがそう言うのであれば、言わせていただきますが、 証拠と呼べるようなものが何一つありません
“リドア”: すべてはユリウスさんの想像であり、 反論の必要さえ、リドには感じられないぐらいです
“ユリウス”: ふふふ……
“リドア”: ユリウスさん、何が可笑しいのですか?
“ユリウス”: 確かに今はそうだが、それは“今”だけだ 早ければ本日中にもクルシュ様がこちらに到着される
“ユリウス”: 残念ながら、あの方に嘘は通用しない
“ユリウス”: クルシュ様の前で問い質(ただ)せば、 すべてがはっきりするだろう
“スバル”: 確かに! クルシュさんには特別な加護があって、 嘘を見破れるって話だったな!
“スバル”: けど、リドが言ってることに嘘がないってわかったら、 お前は相当まずい立場になる それでも大丈夫か?
“ユリウス”: 覚悟のうえだ 問題ない
“ユリウス”: この段階ですべてを白状すれば、寛大な対応も考えたが、 そうはならなかった
“ユリウス”: リドアさん、ご覚悟を 遠からず、あなたの嘘はすべて暴かれるでしょう
“フェネ”: うぅ……
“レム”: ──フェネさん、大丈夫ですか? 体調がかなり悪そうです
“フェネ”: 確かに体調は悪いですが…… フェネは……大切な“何か”を思い出せそうなのです……
“フェネ”: それはとても大切なことだと思われる故、 可能であればしばらくフェネを一人に……
“ユリウス”: いや、しかし……すべてがはっきりするまで、 フェネさんをお一人にするわけにはいきません
“フェネ”: お願いします、ユリウス氏…… この機会を逃すと、あるいは思い出せない可能性も……
“アル”: ここまで“お前のことを疑ってんぞ”って あの嬢ちゃんに伝えたんだ
“アル”: あの狐さんに何かがあれば、 真っ先に疑われるのはあの嬢ちゃんだし
“アル”: 下手な動きはしないんじゃねぇか?
“スバル”: 俺もそう思うぜ、ユリウス
“スバル”: それに、大切な“何か”をフェネが思い出せないって事態だけは、 絶対に回避しなくちゃならねぇ
“ユリウス”: であれば、私の準精霊たちにフェネさんを守らせる
“ユリウス”: 準精霊たちであれば、フェネさんの邪魔にはならないはずだ
“ユリウス”: フェネさんをお一人にするのであれば、 この条件だけは、絶対に譲ることはできない

Scenario Tag: scenario_main_p01_c09_20

Scene Name: メインシナリオ_9章_FIX ■エピローグ タイトル:読み通りではあったものの 更新日:2022/04/21

“アル”: ──なぁ、兄弟 あの嬢ちゃんは食いつくと思うか?
“スバル”: あいつが犯人なら、きっと食いつくだろうよ
“スバル”: クルシュさんが到着したら、そこで終わりだ そして今、フェネは部屋で一人……
“スバル”: 命を狙うなら今しかねぇ
“スバル”: しかも、とっておきの仕上げが用意されてるしな ってことで、アル、仕上げを頼んだぞ
“アル”: 『最優の騎士』様たちをウチの姫さんが呼んでるって、 呼び出せばいいんだろ?
“アル”: んで、あの嬢ちゃんの見張りをオレが代わる感じだよな?
“スバル”: お前が眠そうだったことは、リドも確認済みだ お前がうっかり寝ちまっても、特に違和感は覚えねぇはずだ
“アル”: いやいや、大切な任務の最中に、寝るような奴じゃねぇぜ、オレは そこんとこ、誤解しないでくれ、兄弟
“スバル”: だったら、寝たふり作戦を変更するか? その場合、リドが実力行使に出る可能性があるけど
“スバル”: エミリアたんにレムにユリウス あの面子相手に実力行使は難しいけど
“スバル”: お前一人だったら、倒せるって判断をリドはするかもしれない あいつ、すげぇ強いし
“アル”: そんなに強いのか、あの嬢ちゃん?
“スバル”: ああ、『変異体』も『異形』もボコボコにできる実力者だ あいつが実力行使に出た場合、お前の命は保証できかねるぜ
“アル”: どうしてオレが、そんな危ねぇ役回りなんだよ?
“アル”: オレ的には、嘘が見抜けるっていう 公爵の到着を待ってほしいぜ、兄弟
“アル”: 公爵が到着したら、全部明らかになるわけだし、 オレが危険な目に遭うリスクもねぇだろ
“スバル”: クルシュさんがいつくるか、俺らにはわからねぇよ
“スバル”: パトラッシュが到着してすぐに出発してくれてれば、 そろそろ着きそうなもんだけど
“スバル”: クルシュさんにはクルシュさんの予定があるだろうし、 すぐには王都を発てない事情があるかもしれない
“スバル”: だから、クルシュさんを待ってたら、 手遅れになっちまう可能性がたけぇ
“スバル”: 実際、フェネが大切な“何か”を思い出すタイミングが、 一番危険なんでね
“アル”: にしても、あの流れはアドリブか? 台本にはなかっただろ
“スバル”: “アドリブ”やら“リスク”って単語がぽんぽん出るお前が、 かなり不思議ではあるが
“スバル”: 確かにラストのは台本にない展開だな
“スバル”: “クルシュさんが到着するまで”っていう タイムリミットをあいつに明示して
“スバル”: “そろそろフェネが思い出しそうだ” って空気が出せればよかったわけだし
“スバル”: そうしたら、追い詰められたリドが、動き出すはずだったんだよ
“スバル”: それが、本当に思い出しそうになるとは……
“スバル”: これで、リドが動くことは間違いねぇ 見張りのお前が寝落ちしたら、確実にな
“スバル”: ってことで、リドにとってもそうだけど、 あいつが敵だって確定するタイミングも
“スバル”: 今しかない感じになっちまってる
“スバル”: 俺としてもクルシュさんの到着を待ちたい気持ちはあるが、 もう、そういうわけにはいかねぇんだ
“アル”: その辺は兄弟のミスなんじゃねぇのか? 狐さんに、事情を説明しておけばよかっただろ
“アル”: あの狐さん、兄弟が描いた筋書きを知らねぇんだろ?
“スバル”: ああ、フェネには知らせてない
“スバル”: あいつには大切な“何か”を思い出してもらう必要があって、 そっちを優先した
“スバル”: 茶番に巻き込んで、思い出せるもんも思い出せない なんて事態は避けたかったんでね
“アル”: “茶番”ってな こっちはその“茶番”のせいで命の危険まで抱えてんだぜ、兄弟
“アル”: その危険を回避するために、柄にもなく 見張りの分際で寝ちまうようなダメ人間を演じなくちゃなんねぇ
“スバル”: いやいや、ダメ人間を演じたら、 お前の右に出る奴はいねぇよ、アル
“スバル”: マジ適役だ キャスティング賞を狙えるぐらいのな
“アル”: ったく、兄弟の中のオレの評価は、いったいどうなってんだよ?
“アル”: 次は、ダンディズム全開の色気ある大人の役で オファーしてくれよな
“アル”: 今回協力してやるのは、それが条件だ
“スバル”: 次があればな……って、お前、結構楽しんでるだろ? じゃなきゃ、次のオファーなんて言い出さねぇしよ
“アル”: まぁ、自分の役についちゃ、色々物申したくはあるが、 台本自体は、結構面白かったからな
“アル”: “嘘を見抜ける特別なスキル”ってのが重要な役割で、 それについちゃ、ご都合主義な感じを拭えねぇけどよ
“スバル”: 実際、クルシュさんにそういう加護があるんだから、仕方ねぇだろ 『風見の加護』って加護で、嘘が見抜けるらしい
“スバル”: 俺も見抜かれたことがあるし、本当のことなんだよ
“アル”: “事実は小説より奇なり”って感じだな、マジで
“アル”: んで、実際には台本通りの展開にはならなかったが、 兄弟の台本だと
“アル”: あの狐さんが思い出しそうな大切な“何か”ってのは、 “こわいまもの”に関することだったな?
“スバル”: ああ 俺は“こわいまもの”が出てくる 物語の内容なんじゃないかって思ってる
“スバル”: その内容を知ることができたら、 俺たちにはかなりのアドバンテージになるし
“スバル”: 向こうとしても最終兵器のネタバレは避けたいだろ
“スバル”: 恐らくその物語には、 “こわいまもの”を倒すためのヒントが書かれてるはずで
“スバル”: そのことを臭わせれば、 向こうは動かざるを得なかったはずだ
“スバル”: まぁ、実際には本当にフェネが思い出す感じになって、 その必要はなくなったんだけどさ
“スバル”: って感じで、ちと予定と違う展開はあったが、 ここからまた台本に戻る感じだ
“スバル”: アル、お前のダメっぷりを、リドに見せつけてくれ
“リドア”: ──!
“リドア”: この手応え……いったい……!
“スバル”: ──そいつはただの枕だ
“スバル”: ってことで、もはや言い逃れはできねぇぜ、リド
“ユリウス”: フェネさんを襲うリドアさんをしかと見させていただきました
“レム”: レムも見ました…… まさかリドアさんが……
“エミリア”: 本当に信じられないわ…… リドアちゃんがフェネを……
“リドア”: これは……どういうことです……?
“スバル”: すまないが、フェネなら俺の部屋だよ 向こうの方が集中できるんでね
“スバル”: お前との距離も、あっちの部屋の方が離れてるしさ
“ユリウス”: 無論、先程伝えた通り、 フェネさんは私の準精霊たちに守らせてある
“ユリウス”: 例えフェネさんの居場所を知っていたとしても、 リドアさんの思い通りにはならなかったでしょう
“リドア”: いいえ…… 準精霊であれば難なく倒せたはずです……
“スバル”: それで、姿をくらますつもりだったか? フェネを殺して『禁書』を奪ってよ
“リドア”: くっ……
“エミリア”: それにしても、ホントにスバルが言った通りになったわ どうしてスバルにはわかったのかしら?
“スバル”: 多少のズルはあったんだけど、まぁ、考えに考え抜いた結果かな アルが動いてくれたおかげで、俺には考える時間ができたからさ
“レム”: では、アル様には感謝をしないといけないですね
“レム”: フェネさんが休めただけでなく、 スバルくんも考える時間を確保できました
“スバル”: その言葉を聞いたら、きっとあいつは喜ぶんだろうけど…… 肝心の本人の姿が見当たらねぇ
“スバル”: まさかリドに──
“アル”: す、すまねぇ、兄弟! オレ、マジで寝落ちしちまってた!
“アル”: 昨夜は狐さんの部屋の監視で、マジ寝てなかったから、 目を閉じたら本気で睡魔に襲われちまったんだよ!
“アル”: おっさんぐらいの歳になると、徹夜はマジで堪えるっつーか、 もうちょい若けりゃ、こんなことには……
“アル”: って、もう始まってる感じか?
“スバル”: いいや、ギリセーフだぜ、アル
“スバル”: まぁ、お前が聞きたかったであろう台詞は、 すでに出ちまった後だけどよ
“アル”: おぉ、そいつはマジ残念だぜ、兄弟 主役が登場したところで、もうワンテイク頼めねぇか?
“スバル”: 頼めねぇし、お前なんかが主役なわけねぇ!
“スバル”: あと、せっかくのクライマックスがおちゃらけた感じになるから、 少し黙っててくれ
“スバル”: 今、マジでいいところなんでね
“アル”: へいへい、んじゃ、少し黙るぜ、兄弟 その代わり、ビシッと決めてくれよな
“スバル”: ああ、任せてくれ
“スバル”: 戦いじゃいいところなしの俺だ こういうときぐらいは、かっこよく決めねぇとな
“スバル”: エミリアたんも見てるし、この見せ場をミスるわけにはいかねぇ
“スバル”: 嫌な役回りを引き受けてくれた、ユリウスに申し訳ねぇしよ
“リドア”: ……なるほど、スバルさんが首謀者でしたか 皆様はスバルさんに言われた通り動いてたというわけですね
“リドア”: スバルさんはリドの掌の上で踊っていると思っていましたが、 騙されていたのはどうやらリドだったようです
“スバル”: いやいや、俺はだいぶお前の掌の上で踊ってたよ 立場が逆転してから、二日も経っちゃいねぇ
“スバル”: アルからガーディーの目撃情報を聞いて、 フスミでの一件を再検証してなかったら
“スバル”: 未だに俺は、お前の掌の上で踊ってただろうよ
“リドア”: 正直なところ、ユリウスさんがフェネさんの警護に当たったのは、 こちらとしては計算外でした
“リドア”: あれは偶然だったのでしょうか?
“スバル”: それについては、さっき言った“多少のズル”に含まれるな 偶然ではないが、お前を疑ってのことじゃねぇ
“スバル”: “フェネが狙われてる”ってことはわかってたんだが、 正直、誰が狙ってるかまではわかってなかったからな
“スバル”: ホント、決定打は俺がページに吸い込まれたときのお前の行動だ
“スバル”: おかげで、お前が平気で嘘をつける人間だって前提に立って、 仮面野郎との繋がりを疑えたからな
“スバル”: んで、ご覧のような結果になってる
“スバル”: とはいえ、さっきユリウスが言ったことの 答え合わせはしたいところだ
“スバル”: いい線はいってると思うけど、全問正解ってわけじゃないだろうし
“スバル”: ってことで、教えてくれ、リド フェネの体調不良の原因は、お前で間違いねぇか?
“リドア”: 答える義務はありません
“スバル”: ガーディーについてはどうだ? お前はガーディーのことも騙してたのか?
“リドア”: そちらについても、答える義務はありません
“アル”: まぁ、そういう尋問は、公爵がきてからでいいだろ どうせ嘘はつけねぇんだからよ
“ユリウス”: 私もアル殿に同意する
“ユリウス”: 確固たる証拠は押さえた リドアさんを拘束し、クルシュ様の到着を待つとしよう
“ユリウス”: あの方が到着すれば、 自ずと真実は詳(つまび)らかになる
“レム”: 悲しいことですが、レムもリドアさんには拘束が必要だと思います 可能であれば、牢屋のようなところに入れ、監視も付けるべきです
“スバル”: アル、リドを閉じ込められるような部屋はあるか? 牢屋とまでいかなくても、それに近い感じの
“アル”: そんな都合よく、牢屋みてぇな部屋があるわけねぇだろ 鎖かなんかでグルグル巻きにして、動きを封じるしかねぇよ
“アル”: 監視はオレも手伝ってやるから、それで勘弁してくれ
“スバル”: とにかく、お前のことは拘束させてもらう 悪く思うなよ、リド
“リドア”: 残念ですが、リドは皆様に捕らえられるわけにはいきません
“スバル”: 頼む、大人しく捕まってくれ 俺は、お前とやり合いたくはねぇ
“エミリア”: リドアちゃん、お願い 私もリドアちゃんとは戦いたくないわ
“リドア”: そう言われても、できないものはできません リドにはまだ役目が──
“スバル”: ユリウス、レム、リドをいかせるな!
“ユリウス”: 心得た!
“レム”: はい、スバルくん!
“ユリウス”: 申し訳ないが、逃がすわけにはいきません
“レム”: リドアさん、観念してください
“リドア”: ふふふ……
ナレーター: ユリウスとレムに挟まれたリドアは、なぜか不敵な笑みを浮かべる
ナレーター: そして──
“リドア”: ──はっ!
ナレーター: 握った拳を近くの壁に叩き込んで、リドは壁に大穴をあける
ナレーター: その穴から隣の部屋へ素早く移動すると、 窓を突き破り、リドアは屋敷の外へと飛び出すのだった
“ユリウス”: 待て! 逃がしはしない! レムさん──
“レム”: はい! リドアさんを追いましょう!
“スバル”: ──エミリアたん! 俺たちはフェネのところへ! もしかしたらリドはフェネのところに向かったかもしれねぇ!
“エミリア”: わかったわ、スバル! フェネがいる部屋に向かいましょう!
“スバル”: ──アル! お前はユリウスやレムと一緒に、リドを追ってくれ!
“アル”: 待て待て、壁に大穴ぶちあけられて、 こちとら、それどころじゃねぇよ
“アル”: 姫さんへの言い訳を考えなきゃなんねぇし、 マジ、テンションダダ下がりだ
“スバル”: お前の姫様への謝罪には俺も付き合うし、 もちろん、この部屋の修理代も支払わせてもらう
“スバル”: ユリウスにもレムにもこの辺の土地勘がねぇ 今度こそ“一生のお願い”のマジのヤツだ
“スバル”: ──頼む、アル! あの二人を助けてやってくれ!
“スバル”: ──フェネ、無事か!
“エミリア”: フェネ、痛いことされてない!
“フェネ”: スバル氏、エミリア女史……? そんなに慌てて、何かあったのでしょうか?
“スバル”: よかった…… お前は無事みたいだな……
“スバル”: にしても、マジ、俺は詰めが甘いぜ 調子に乗ってお前の居場所をリドに教えたのも大失敗だ
“スバル”: よく考えたら、ご丁寧に本当の居場所を あいつに教える必要なんてなかったしよ……
“スバル”: そもそも犯人がリドに確定した時点で、 取り押さておくべきだったんだ……
“スバル”: それを鬼の首を取ったみたいに、自信満々に語っちまって、 挙句逃げられてるんじゃ、世話ねぇぜ……
“スバル”: 遠慮無用で拘束して、色々語るのはそれからだった……
“フェネ”: 申し訳ありません、スバル氏 フェネにもわかるように状況の説明をお願いします
“フェネ”: 例によって例の如く、スバル氏がやらかしたことで、 リドア女史に逃げられてしまったと推測しますが
“フェネ”: スバル氏がどのようなヘマを働いたのか、詳しくお知らせください
“スバル”: そっちについての報告は、マジで勘弁してくれ! アルじゃねぇけど、俺もテンションダダ下がり中なんでね!
“エミリア”: スバル、あれはスバルのせいじゃないわ
“エミリア”: 私、“お話の前にちゃんと捕まえなくていいの?”って思ったのに 言い出せなくて……
“エミリア”: ごめんなさい、スバル リドアちゃんが逃げちゃったのは、きっと私のせいよ
“スバル”: いやいや、言い出せないような空気を作っちまったのは俺だし、 エミリアたんは全然悪くないよ
“スバル”: 全部、俺がいい気になって調子に乗った結果だ
“フェネ”: なるほど、その場にいた皆様は、 語るにしてもリドア女史をしっかりと拘束してからだと思いつつも
“フェネ”: 自分に酔いながら気持ち良く語るスバル氏を気遣い、 言い出すことができなかったということですね
“スバル”: 見てもねぇのに、的確な理解!? その通りだから、もう説明の必要はないよね!
“スバル”: って、どうやら調子はいいみたいだな、フェネ
“フェネ”: はい 不思議と 先程からさらに良くなったように思います
“スバル”: ってことは、リドとの距離がそれだけ離れたってことだ ひとまず、お前は大丈夫だな
“スバル”: それで、フェネ、例の件なんだけど…… 大切な“何か”については思い出せたか?
“スバル”: 一時間以上は思い出す時間を確保できたと思うし、 もし思い出したんなら、一刻も早く聞きたい
“スバル”: それはきっと“こわいまもの”と戦ううえで超貴重な情報で
“スバル”: リドを取り逃がしちまった今は、 是が非でも聞いとかなくちゃならねぇ
“スバル”: なんせ、リドとあの仮面野郎がグルだってことが、 確定しちまったんだからよ
“スバル”: ってことで、頼む、フェネ 思い出したんなら、教えてくれ 大切な“何か”についてよ
“フェネ”: わかりましたスバル氏、お話しします
“フェネ”: スバル氏の読み通り、フェネが思い出したのは、 “こわいまもの”の物語です
“フェネ”: そして、世界を滅ぼすことができる“こわいまもの”には、 弱点が存在することがわかりました
“フェネ”: “こわいまもの”は人類への復讐を誓った ある魔法使いによって生み出されたのですが
“フェネ”: その魔法使いは、僅かに残った良心から
“フェネ”: “こわいまもの”に存在していた弱点を 一つだけ消さずに残してしまったのです
“スバル”: つまり、人類に希望的なものが残されたわけだな その弱点さえわかれば、人類は滅びずに済む
“フェネ”: 左様です ですが……
“フェネ”: その魔法使いはそうしてしまったことをとても後悔します そして、己の心の弱さを呪いながら死んでいきます
“スバル”: 相変わらず、『禁書』チックな話だな
“スバル”: “こわいまもの”に弱点を残したのは、 “心の弱さ”とは違う気がするのに
“スバル”: むしろ、僅かとはいえ、良心が残っていたことを誇るべきだろ
“スバル”: 最後の最後で、復讐って名の悪魔に 魂を売ることを踏みとどまったんだからさ
“スバル”: ──それで、その“弱点”ってのはなんだ? そこが一番重要だぜ、フェネ
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ?
“フェネ”: 残念ながら、フェネが思い出せたのはそこまでです “弱点”の内容までは思い出せていません
“フェネ”: もしかしたら、フェネの記憶には、 人為的に鍵がかけられているのかもしれません
“フェネ”: そして、その“弱点”については、 とても頑丈な鍵がかけられている可能性があります
“スバル”: ……記憶に鍵? お前の記憶喪失は、誰かに仕組まれてるっていうのか?
“フェネ”: 左様です そうでないと色々説明がつかないのです
ナレーター: スバルの読み通り、フェネが思い出した記憶は、 “こわいまもの”との戦いを有利にする可能性を秘めていたが
ナレーター: 肝心の“弱点”についての情報が抜け落ちた、 不完全なものであった
ナレーター: だが、そんな中で、“こわいまもの”との対決の時は、 刻一刻と近づいている
ナレーター: そのことをスバルは、肌で感じているのだった──

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_00

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■プロローグ タイトル:もう一つの手 更新日:2022/05/12

ナレーター: ──バーリエル男爵領、プリシラの屋敷
ナレーター: そこにあった エドガーが若い頃に描いた初期作品を見たスバルたちは
ナレーター: バーリエル男爵領に入った目的を達成していたが、 当初予定していたヴォラキア帝国へは向かわず
ナレーター: アルの計らいもあって、 しばらくプリシラの屋敷に滞在することになるのだった
ナレーター: そうなったことには、スバルの思惑も大きく関係している
ナレーター: 帝国入りをした前回の周回で、 スバルはフェネの死を目の当たりにし
ナレーター: 自身も命を落とす結果になってしまった
ナレーター: 同じ失敗を繰り返さないためにも、 スバルはフェネと自分を殺した犯人を特定し、排除してから
ナレーター: 『禁書』のページ集めを再開することにしたのだ
ナレーター: そのためにスバルは、 本来はフスミで別れるはずだったユリウスを引き留め
ナレーター: バーリエル男爵領まで同行させている
ナレーター: そして、パトラッシュをルグニカの王都へ走らせ、 クルシュに対してもバーリエル男爵領へくるよう依頼していた
ナレーター: 合わせて、まだ正式に同盟関係を結んではいないものの、 すでに協力関係にある
ナレーター: ラインハルトを擁(よう)するフェルトにも、 クルシュを通して援軍を頼んでいるのだった
“スバル”: ──クルシュさんたちが到着してくれたら、 色々一気に片付くんだけど……
“スバル”: とにかく、リドを逃がすわけにはいかねぇ
“スバル”: あいつの強さは折り紙付きだ あいつと仮面野郎が合流したら、きっと厄介なことになる
“スバル”: しかも、向こうには、 “こわいまもの”っていう切札が存在してるかもしれねぇ
“エミリア”: レムとユリウス、それにアルも追ってくれてるわ きっと捕まえられるはずよ
“スバル”: ああ、そうだね マジ、そうなってくれることを願うよ
“フェネ”: 足手まといのスバル氏が入っていないのです 恐らくリドア女史を追った皆様なら目的を達成されるでしょう
“スバル”: “足手まとい”で悪かったな! だから、俺はリドを追うメンバーには入らなかったんだよ!
“スバル”: とはいえ、寝不足なおっさんが混じってるのが、 ちょっと不安ではあるな
“スバル”: あいつ、マジで寝落ちしやがったし!
“エミリア”: でも、アルに追うように言ったのはスバルよ?
“スバル”: あのときは、この辺の地理に詳しいアルがいた方が、 何かと都合がいいんじゃないかって思ったんだよ
“スバル”: 追手から逃げる人間が、身を隠しそうな場所とかにも、 心当たりとかありそうだしさ──
ナレーター: スバルがそう言い終えた直後、 スバルたちがいる部屋に、勢いよくレムが駆け込んでくるのだった
“レム”: スバルくん! エミリア様! リドアさんを発見しました! 今、ユリウス様とアル様が交戦中です!
“スバル”: おお! でかしたぞ、レム!
“レム”: いえ、レムは何も…… リドアさんを発見できたのは、アル様のおかげです
“レム”: レムとユリウス様は、アル様に言われた通りに進み、 森へ逃げ込もうとしていたリドアさんを発見しました
“スバル”: ってことは、アルに協力を仰いだ俺の判断は、 正しかったってことだな!
“スバル”: あいつなら、きっとやってくれるはずだって思ってたんだよ
“フェネ”: 舌の根の乾かぬ内に 抜け抜けとよくそのようなことが言えますね、スバル氏
“フェネ”: スバル氏はたった今、アル氏への不安を口にしたばかりです
“スバル”: うぐっ…… 確かにそうだったな……
“スバル”: けど、アルに協力をお願いしたのは間違いなく俺だし、 少しぐらい自画自賛したっていいだろ
“スバル”: リドを追うメンバーに俺を入れないって判断も、 正しかったんだからさ
“フェネ”: それについては、“正しい判断”と胸を張る前に、 足手まといにしかなれない自分の無力さを嘆くべきです
“フェネ”: そんなことだからスバル氏は──
“スバル”: ストップだ、フェネ お前の体調がいいのはわかったから、その辺で勘弁してくれ
“スバル”: とにかく、急いでユリウスとアルの元へ向かおう
“スバル”: 俺は完全に戦力外だけど、 エミリアたんやレムの助けはきっと必要なはずだ
“スバル”: いくらユリウスが『最優の騎士』っていっても、 リドの強さは半端ねぇからさ
“エミリア”: ええ、向かいましょう
“エミリア”: リドアちゃんとは戦いたくないけど…… でも、そうも言ってられないもの
“レム”: はい スバルくんたちにお伝えしたら、 レムもすぐに戻るつもりでした
“フェネ”: フェネもお供します 体調もだいぶ回復しましたし、お力になれるはずです
“スバル”: 待て待て、それはリドとの距離が離れたからで、 あいつの近くにいったら、また体調が悪くなっちまう
“フェネ”: たとえそうだとしても、スバル氏よりは役立てるはずです
“フェネ”: ここが正念場だとフェネは推測します 今ある戦力をすべてリドア女史にぶつけるべきです
“スバル”: 体調不良のフェネより役立てない俺って…… けど、今が正念場なのは間違いねぇ
“スバル”: わかったぜ、フェネ だけど、無理だけはするなよ
“フェネ”: 無論です 手は打ってあるのでご安心を
“スバル”: ──はぁ……っ はぁ……っ ま、待ってくれみんな…… 俺を置いてかないで……
“フェネ”: 情けないですよ、スバル氏
“フェネ”: フェネには、 スバル氏がフェネの身を案じていた記憶があるのですが
“フェネ”: どのツラ下げて、そのような真似をしていたのでしょう?
“スバル”: うるせぇー! エミリアたんに抱っこしてもらってる、 お前にだけは言われたくないわ!
“スバル”: “手は打ってある”ってそんなことだったのかよ!
“フェネ”: こちらの“手”はシバレル大氷河でも効果を発揮した 実績ある有効な手です
“フェネ”: “そんなこと”などと評されるのは誠に遺憾です
“フェネ”: それに、鈍感なスバル氏はお気付きではないかもしれませんが、 もう一つ手を打たせていただいているのです
“フェネ”: ということで、スバル氏 速やかに、フェネへの謝罪をお願いします
“スバル”: 待て待て、“もう一つの手”ってのはなんだ?
“スバル”: 俺には、お前がエミリアたんに抱っこされてるだけに見えるし、 謝るにしてもその手に納得してからだ
“レム”: リドアさんとの距離がだいぶ近づいたはずなのに、 フェネさんは体調を維持している気がします
“エミリア”: ええ、そうね フェネがいつものフェネよ
“フェネ”: さすがです、エミリア女史、レム女史
“フェネ”: 体調の悪化が抑えられているのは、 フェネが打ったもう一つの手によるものです
“フェネ”: 現在『禁書』には豊富なマナが蓄えられており、 そちらを一時的に拝借させていただいています
“スバル”: 確かにお前は、『禁書』からマナを引き出して、 誰かに供給することで、疲労を回復してやることができたな
“スバル”: つまり、それを自分自身にしてるってことか?
“フェネ”: 左様です 一時しのぎではありますが、 正念場となるため、そうさせていただきました
“スバル”: だったら、自分自身で移動できるだろ! エミリアたんが抱っこしなくてもさ!
“フェネ”: 『禁書』から拝借するマナは必要最低限に抑える必要があります 故にエミリア女史の抱っこは不可欠です
“フェネ”: ということで、スバル氏、フェネに謝罪を フェネからの説明は明瞭かつ納得感あるものだったはずです
“スバル”: クソっ! 確かにそうだったよ!
“スバル”: すまない、フェネ これでいいよな?
“フェネ”: 微塵も誠意を感じることができず、 そのような謝罪では、とても“いい”とは言えません
“スバル”: いやいや、今の精神状態じゃ、これが精一杯だ!
“スバル”: それに、そんな反則技があるなら、俺にもマナを供給してくれ そしたら、俺だって元気に走れるはずだからさ
“フェネ”: 先程も言いましたが、『禁書』からのマナの供給は、 最低限に抑える必要があります 無駄遣いはできません
“エミリア”: ええっとね、スバル フェネと話して、なんだかスバルは元気になったように見えるわ
“エミリア”: 『禁書』からマナをもらわなくても、走れるんじゃないかしら?
“レム”: はい スバルくんはフェネさんとの会話で力をもらい、 元気になったようにレムも感じます
“スバル”: “フェネとの会話で力をもらった”ってのは、 俺として承服しかねる表現だけど
“スバル”: 確かにフェネへのイライラやムカムカで、 力が湧いてきたことは確かだよ
“スバル”: 負のパワーではあるが、リドのところまで頑張れそうだ
“スバル”: ってことで──
“スバル”: クソっ! クソっ! フェネの奴、マジでムカつく! うおぉぉぉーっ!
“エミリア”: あっ スバル、待って…… っていっちゃったわ
“レム”: エミリア様、レムたちも急ぎましょう
“エミリア”: ええ、急ぎましょう ユリウスとアルが心配だわ
“リドア”: …………
“アル”: 悪いな、嬢ちゃん
“アル”: 屋敷の壁をぶっ壊されちまって、 こちとら手ぶらでは帰れねぇ状態だ
“アル”: 観念して、大人しく投降してくれや
“アル”: じゃねぇと、おっさん、マジでヤバいんだよ 人助けだと思って、なぁ、頼むよ
“ユリウス”: 私も、これ以上の抵抗はおすすめしない
“ユリウス”: 間もなく、スバルたちの元へと報告に向かった レムさんも戻ってくるでしょう
“ユリウス”: さらに、報告を聞いたエミリア様が、 レムさんと一緒にこちらにこられるかもしれない
“ユリウス”: そうなれば、あなたにとって状況はさらに悪化してしまう
“アル”: オレらに発見された時点で、嬢ちゃんは詰んでるんだよ
“アル”: 『最優の騎士』様まではいかねぇが、 オレだって時間稼ぎぐらいはできっからな
“アル”: 刻一刻と状況が悪化する嬢ちゃんと、 時間を稼げばいいだけのオレたち
“アル”: どっちが有利かは一目瞭然だろ
“アル”: 事実──
“スバル”: ぜぇ……っ ぜぇ……っ 待たせたな、アル はぁ……っ はぁ……っ
“アル”: こうして援軍が……って、どうして兄弟だよ! ただでさえ弱いくせに、息まで上がってるじゃねぇか!
“スバル”: ぜぇ…… ぜぇ…… そりゃ、屋敷からここまで走りっぱなしだったんだ
“スバル”: はぁ…… はぁ…… 息だって上がっちまうよ
“スバル”: 弱い件については……アル、俺の分も頑張ってくれ
“アル”: 待て待て、マジで何しにきやがった兄弟?
“アル”: 頑張るにしたっておっさんのオレには限度があるぜ なんせ、マジの徹夜明けだからな
“アル”: ホント、オレには時間稼ぎが関の山だ
“アル”: しかも、腕力に訴えるってよりは、 軽快なトークで場を繋ぐ感じのな
“レム”: ──お待たせしました、アル様
“エミリア”: アル、ユリウス、助けにきたわ
“フェネ”: フェネもご一緒させていただきます
“アル”: おお 使えねぇ兄弟だけかと思ったら、 ちゃんとした援軍もきてるじゃねぇか
“アル”: しかも、狐さんまでとは心づえぇ
“アル”: ……って、狐さん、体の方は大丈夫か?
“アル”: 兄弟みたいに足枷にしかなれねぇなら、 遠慮なく退場してくれた方が助かるぜ
“ユリウス”: 無理は禁物です、フェネさん 体調が悪いようであれば、戦う必要はありません
“フェネ”: いえ、ご心配には及びません すでに対策済みです 皆様のお役に立つとお約束しましょう
“スバル”: フェネの言葉は本当だ リドの前で種明かしは避けるが、心配の必要はねぇよ
“エミリア”: うん、フェネなら大丈夫 今は元気よ
“レム”: はい フェネさんはリドアさんとの戦いの助けになってくれます
“レム”: できれば、一緒に旅をしたリドアさんとは、 傷つけ合いたくはありませんが……
“エミリア”: ええ、私もそう思うわ 戦わずに済む方法はないの、スバル?
“スバル”: ってエミリアたんが聞いてるぞ、アル
“アル”: おいおい、嬢ちゃんが聞いたのは兄弟だろ どうしてオレに話をふるんだ?
“スバル”: お前、ついさっき“軽快なトークで場を繋いだ”って言ってただろ その“軽快なトーク”で、リドを諦めさせてやってくれ
“スバル”: 『最優の騎士』のユリウスに、エミリアたんにレム さらに体調が戻ったフェネにおまけのアルもいるんだ
“スバル”: しかも完全に包囲されてる もう逃げられねぇし、戦っても勝ち目はねぇ
“スバル”: お前のトーク力がありゃ、リドを説得できるんじゃねぇのか?
“アル”: 誰が“おまけ”だよ、誰が おまけにも入れねぇ、兄弟には言われたくねぇぜ
“アル”: それに、その役は兄弟に譲らせてもらう
“アル”: 確かにオレの抜群のトーク力で、 あの嬢ちゃんを説得することは可能かもしれねぇ
“アル”: けど、それじゃ、マジで兄弟が何しにきたかわからねぇ
“アル”: 戦力的には“おまけ”にも入れねぇ兄弟だが、 トークなら、オレの次ぐらいにはやれる気がしてるからよ
“アル”: ってことで、頑張ってくれや、兄弟
“スバル”: なんだよ、逃げるのか、アル お前、リドを説得する自信がねぇんだろ?
“アル”: おいおい、さすがに言っていいことと悪いことがあるぜ、兄弟 心優しいおっさんだって、キレることがあるのを忘れるな
“スバル”: あん? “言っていいことと悪いこと”だ?
“スバル”: お前だって、さっきから俺のことを散々言ってくれてるよな!
“スバル”: “ただでさえ弱いくせに”とか“足枷にしかなれねぇ”とか、 黙って聞いてりゃ、好き勝手言いやがって!
“スバル”: さすがの俺も腹に据えかねるんだよ!
“アル”: おいおい、笑わせるなよ、兄弟
“アル”: “事実”なんだから仕方ねぇだろ “腹に据えかねる”も何もねぇぜ
“アル”: あんま生意気言ってると、 マジ、おっさん怒っちまうけど、いいのか?
“アル”: まずは兄弟をぶちのめして、 あの嬢ちゃんをやるのはそれからだ
“スバル”: ハハハ なんだよ、やっぱリドから逃げてんじゃねぇか リドが怖いから、そんなこと言い出したんだよな?
“スバル”: そんな回りくどい言い方しねぇで、 最初から“怖くてビビってる”って言いやがれ!
“アル”: なんだと! てめぇ、言うに事欠いて── マジでやってやんぞ、兄弟!
“エミリア”: ──スバル! アル! 今は喧嘩してる場合じゃないわ!
“ユリウス”: エミリア様の言う通りだ 仲間内で揉めている場合ではない 我々は一丸となってリドアさんと対峙するべきだ
“レム”: スバルくんに手出しするのであれば、 レムは黙って見ているわけには──
“リドア”: ふふふふ……
“スバル”: お? どうした、リド、突然笑い出して
“リドア”: 先程は茶番にまんまと騙されてしまいましたが、 同じ手は通用しません
“リドア”: スバルさんとアルさんは、クルシュさんという方の 到着を待つために少しでも時間を稼ぎたいようですが
“リドア”: さすがにこれ以上戦力が増えるのは厄介です
“アル”: どうやらバレてるぜ、兄弟
“スバル”: ああ、そうみたいだな
“スバル”: 俺らの演技はなかなかだったと思うが、 さすがにさっきの今じゃ仕方ねぇか
“エミリア”: え? え? スバルとアルは喧嘩してたわけじゃないの?
“ユリウス”: どうやらそのようです すっかり騙されてしまいました
“レム”: ですが、残念ながら、現在の戦力では、 リドアさんは意に介さないようです
“レム”: 説得は難しいかと……
“リドア”: その通りです、レムさん リドの説得は諦めてください
“リドア”: しかも、標的が目の前にいる状態です リドはこの機を逃しません
“スバル”: 標的……フェネのことか?
“スバル”: けど、だったらどうして逃げたんだ?
“スバル”: あのときだってフェネは遠くない場所にいたし、 戦力的には今と変わらなかったはずだ
“スバル”: わざわざ逃げて、決戦を先延ばしする必要はねぇ
“リドア”: 状況は刻一刻と変化しています リドの行動は理にかなっているのでご安心ください
“リドア”: それに、クルシュさんという方は、 いったいいついらっしゃるのです?
“リドア”: スバルさんが必死に時間を稼ごうとする様子から、 到着にはまだまだ時間がかかると推測します
“リドア”: ですので、以後、リドは質問を受け付けません
“リドア”: スバルさんたちが尋ねるのは勝手ですが、 リドは答えませんので、あしからず
“アル”: チッ ここいらが限界らしいぜ、兄弟
“アル”: いよいよあの嬢ちゃんとの戦いは本番だ 弱い兄弟は下がっててくれ
“スバル”: ああ……って、お前が俺より後ろにいるのは気のせいか?
“アル”: オレはアレだ 最後の切り札だからよ、一旦後方に待機だ 何かの際は、兄弟のことを守らなきゃいけねぇしよ
“ユリウス”: クルシュ様が到着するまで持ち堪えるという 時間を稼ぐことに重きを置いた戦い方をするのが
“ユリウス”: 今の我々に合った戦術かもしれない
“ユリウス”: そう考えると、一人が後方に下がり、体力を回復しつつ、 スバルを守るというやり方は理にかなっている
“スバル”: なるほど 休む人と戦う人っていうローテーションを組むわけだ
“スバル”: それだと確かに数の利を活かせるし、 常にフレッシュな状態でリドアと戦えるな
“スバル”: アルの休憩が終わったら、次に休憩する人が後方に下がって、 リフレッシュしたアルが最前線に出てリドと戦う感じでさ
“アル”: ったく、そんなつもりじゃなかったんだが……
“アル”: そういうことにしておいた方が、 オレの株は上がりそうだし、そういうことでいいぜ、兄弟
“アル”: とにかく、兄弟が前線にいるのは邪魔だ 一旦下がるぞ
“スバル”: ああ、わかった
“フェネ”: フェネも下がり、アル氏の体力回復に協力させていただきます その方が早くアル様が前線に復帰できます故
“アル”: いやいや、だから、オレはずっと後方でも──
“スバル”: あはは 率先してサボろうとしたのに、 裏目に出て残念だったな、アル
“アル”: うるせぇ ずっと後方待機の兄弟にだけは言われたくねぇぜ、マジで

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_01

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■1話 タイトル:そろそろ本気で 更新日:2022/05/12

“レム”: ──はーっ!
“ユリウス”: はっ!
“エミリア”: えーいっ!
“リドア”: ──そのような攻撃、リドには止まって見えます
“エミリア”: はぁ…… はぁ…… また……避けられちゃったわ……
“レム”: はぁ…… はぁ…… はい…… リドアさんの回避能力には目を見張るものがあります……
“ユリウス”: くっ…… だが、次こそは……
“スバル”: やっぱ、すげぇぜ、リドの奴……
“アル”: かなり押されてるな…… あの嬢ちゃん、マジでつえぇぜ……
“フェネ”: アル氏にマナを供給しました すでに体力も回復し、前線に出られるかと
“アル”: ああ、サンキューだ、狐さん なんか力がみなぎってるぜ
“アル”: ってことで、ちょっくらいってくるよ
“スバル”: ああ、頼んだぞ、アル
“スバル”: 色々言っちまったけど、今回、お前はマジで大活躍だよ
“スバル”: 今にして思うと、マジ寝もナイスプレーだったかもしれねぇ 寝たふりじゃ、リドを騙せなかったかもしれねぇしな
“アル”: その調子でオレのことをどんどん見直してくれよ、兄弟
“アル”: 徹夜までさせられて、必死に走って、 命まで懸けなきゃいけねぇ状態だ
“アル”: そのうえ屋敷の部屋の壁に穴まであけられて
“アル”: あの嬢ちゃんとの戦いに勝っても、 姫さんに平謝りしなきゃならねぇ
“アル”: ……って、オレ、どうしてそこまで 兄弟のためにしてやらなきゃならねぇんだ?
“スバル”: 今さらだけどまっとうな疑問!?
“スバル”: とにかく、俺はお前にすげぇ感謝してる
“スバル”: 俺の感謝にどれぐらいの価値があるかは知らねぇけど、 ホントにすげぇ感謝してるんだよ
“スバル”: この借りは必ず返させてもらう だから、頼んだぜ、アル
“アル”: 借りは必ず返す、ね へいへい、精一杯やってみるよ──
ナレーター: フェネからマナの供給を受け、 疲労を回復したアルが戦線に加わるのであった
ナレーター: 代わりに戦い詰めだったユリウスが後方へと下がり、 フェネからマナの供給を受ける
ナレーター: 次にエミリアがフェネからマナの供給を受け、 その次にレムという具合に
ナレーター: スバルたちはローテーションを組んでリドアと戦う
ナレーター: クルシュたちの到着を待つスバルたちにとって、 それは正攻法と呼べる戦い方だったが
ナレーター: 休みなく一人で戦うリドアは疲れを見せることなく、 スバルたちを迎え撃ち続けていた
ナレーター: それどころかリドアは、 徐々にスバルたちを押し始めているのだった
“リドア”: ──リドは、そろそろ本気を出そうと思います
“エミリア”: はぁ…… はぁ…… リドアちゃん、本当に強いわ……
“ユリウス”: はぁ…… はぁ…… これで本気ではないのか……?
“アル”: はぁ…… はぁ…… マジで化け物かよ、あの嬢ちゃん……? あんだけ戦って、息の一つも上がっちゃいねぇ……
“スバル”: くっ…… 一人温存するみたいな戦い方じゃ、 リドは止められねぇ……
“レム”: そうみたいですね…… レムたちは全力で立ち向かう必要があります
“フェネ”: レム女史 マナの供給が終わりました 力を発揮できる状態になったはずです
“レム”: はい ありがとうございます、フェネさん 急ぎ、レムは戦いに復帰します
“スバル”: 頼んだぞ、レム
“スバル”: ──あと、悪いがアル、交代はなしだ! お前は引き続きリドと戦ってくれ!
“アル”: おいおい、待て待て! そりゃ、あんまりだろ、兄弟!
“アル”: 次はオレの番だと思って、 ついさっき全力で嬢ちゃんに攻撃を仕掛けたばっかりだ
“アル”: 頼む、今回まではローテーションを守ってくれ!
“アル”: それに、嬢ちゃんも本気を出すの、もうちょい待ってくんねぇ?
“アル”: おっさん、ちょっくら休憩してくっから、それからだと助かる
“リドア”: そうやって、時間を稼ごうとしても無駄です──
“リドア”: はぁーーーっ!
“アル”: あ、危ねぇじゃねぇか! 当たってたら、マジやばかったぜ!
“リドア”: チッ…… あれを避けるとは、やりますね……!
“レム”: ──レムが相手です! はぁーーっ!
“リドア”: ──っ!
“ユリウス”: ──私の渾身の一撃、受けてみろ!
“ユリウス”: はーっ!
“リドア”: ──ふんっ!
“ユリウス”: な、なんだと……!
“エミリア”: ──お願い、当たってーっ! えーいっ!
“リドア”: 無駄です──
“エミリア”: そ、そんな……
“スバル”: エミリアたん、レム、ユリウス、アル…… 四人がかりでもリドに勝つのは難しいのか……?
“スバル”: マジで何者なんだ、あいつ……
“フェネ”: くっ…… このままでは皆様が……
“スバル”: 頼む……クルシュさん…… 早く…… 早くきてくれ……
“スバル”: 頼む…… 頼むよ、クルシュさん……!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_02

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■2話 タイトル:あまりに違う結果 更新日:2022/05/12

ナレーター: 多勢という有利に加え、 フェネによる体力回復というアドバンテージまであったものの
ナレーター: エミリア、レム、ユリウス、アルの四人はリドアに押され、 じわじわと後退させられてしまっていた
ナレーター: すでに非戦闘員のスバルや、リドアの標的であるフェネも 安全ではない状態になりつつある
“スバル”: ──アル! お前もリドに攻撃を仕掛けてくれ!
“スバル”: さっき、あいつの攻撃を見切って、かわしたじゃねぇか! お前ならできるはずだ!
“アル”: バカヤロー! さっきのは、右か左っていう 二分の一の確率がたまたま当たっただけだ!
“アル”: 見切ったわけでもなんでもねぇ 一か八かの賭けに勝っただけなんだよ
“アル”: もう一度なんて御免蒙(ごめんこうむ)るぜ、兄弟
“スバル”: なんだと…… けど、このままじゃ……
“ユリウス”: くっ……
“レム”: はぁ…… はぁ…… 強い…… 回復もできていないはずだというのに……
“エミリア”: はぁ…… はぁ…… でも…… スバルとフェネを守らなくっちゃ……
“レム”: はい、エミリア様…… スバルくんには、指一本触れさせません……!
“リドア”: ……スバルさんに指一本触れさせない? そんなこと、レムさんにできるのですか?
“レム”: くっ……! レムの命に代えても……!
“リドア”: 無理です レムさんにはリドは倒せません
“スバル”: クソっ! また、リドアに殺されるのか……! また、俺は……!
“スバル”: エミリアやレムに加えてユリウスやアルまでいたんだ……
“スバル”: やられるわけねぇって過信があったよ…… ホント、心のどこかで油断しちまってた……
“スバル”: クルシュさんがくるまで、動いちゃダメだったんだ…… それなのに俺は……!
“アル”: 今さら反省しても、遅いぜ、兄弟 この状況を切り抜ける策をなんとか考えてくれ
“フェネ”: 左様です 現時点でクルシュ女史はいません 現実を受け入れ、なんとか打開策を──
“スバル”: クソっ! “現実”ってなんだよ!
“スバル”: あのとんでもねぇ強さが、“現実”って言うのか? あの底なしのスタミナが、“現実”って言うのかよ!
“スバル”: あんなの、ありえねぇだろ! 受け入れられるわけねぇ!
“スバル”: こっちは『最優の騎士』のユリウスをはじめ、 マジで相当な戦力だ!
“スバル”: 楽勝したっておかしくねぇぐらいのな!
“スバル”: それがどうだ?
“スバル”: 真逆の結果に、目の前が真っ暗になって、 俺には何も見えなくなっちまってる……
“フェネ”: 受け入れられない現実でも、 あまりに違う結果に目の前が見えなくなっても
“フェネ”: スバル氏は立ち止まらず考え続けてください
“フェネ”: 目の前にいる皆様を巻き込んだのは、スバル氏なのです その責任から目を背けるべきではありません
“フェネ”: このままでは皆様がリドア女史に倒されてしまいます さらにはあの仮面の男が“こわいまもの”で……
“スバル”: くっ…… くくっ……
“スバル”: そういや、“こわいまもの”までいやがったな…… 世界を浄化するのがあの仮面野郎の目的だ……
“スバル”: なんの罪もねぇ…… ホント、微塵も罪がねぇ 赤ん坊やら子どもたちまで殺されちまうかもしれねぇ……
“スバル”: “世界を浄化する”ってのは、つまりそういうことだ……
“スバル”: 俺が…… 俺が『禁書』なんかを持ち出さなきゃ…… あのとき俺が……
“スバル”: ──ちくしょう! 黙って諦めるわけにはいかねぇ!
“スバル”: ぜってぇこのピンチを乗り切って見せる! 何がなんでも、絶対にだ!
“アル”: おぉ、いいね、兄弟、その意気だ んで、具体的な策はなんか思い付いたか?
“スバル”: 待て待て、さっきの今で答えなんて出ねぇよ けど、俺らの基本戦略はやっぱ間違ってねぇと思う
“スバル”: この戦力じゃ、悔しいがリドには勝てねぇ 時間を稼ぐための“何か”があれば……
“スバル”: そもそもフェネが命を狙われたのって……
“スバル”: ──おい! リド! どうやらお前は勘違いしてるみてぇだから、一個教えてやる!
“スバル”: もはやフェネだけを殺しても意味ねぇぜ!
“スバル”: 俺たちはフェネから “こわいまもの”のページについて聞かされてる!
“リドア”: ──なっ! そんなはずは……
“エミリア”: ううん、本当よ、リドアちゃん
“エミリア”: フェネがページに書かれてたお話を思い出して、 さっき教えてくれたもの
“エミリア”: “こわいまもの”に弱点があるだなんて、私、驚いちゃった
“スバル”: ──ナイス、エミリアたん!
“スバル”: どうだ? 俺の言葉は信じられねぇお前でも、 エミリアたんの言葉に嘘がないことぐらいはわかるよな?
“スバル”: つまり、もう手遅れなんだよ もはやフェネを殺したところで意味がねぇ
“スバル”: はんっ 残念だったな!
“リドア”: なるほど、それは確かに予定外です
“リドア”: ですが、そうであるなら、 こちらにいる皆様を葬ればいいだけのこと
“リドア”: その情報を知ってる者を生かしてはおけませんので
“スバル”: “皆様を葬る”なんて簡単に言ってくれちゃってるが、 そう思い通りにいくわけねぇだろ
“スバル”: こっちは誰か一人でも生き残りゃいいんだ だいぶハードルが下がったぜ、実際
“スバル”: 誰か一人を戦線離脱させて
“スバル”: まだ聞いてないプリシラとか、こっちに向かってるクルシュさんに 伝えにいくこともできるしな
“リドア”: 残念ですが、リドは誰も逃しませんし、 この場にいる皆様を一人残らず葬って御覧に入れます
“リドア”: なので、その情報が誰かに伝わることなど、あり得ないのです

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_03

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■3話 タイトル:見覚えがある竜車 更新日:2022/05/12

ナレーター: エミリア、レム、ユリウス、アルは一旦下がり、 スバルとフェネを囲むように布陣するのだった
“アル”: (おい、どうなってんだ、兄弟  狐さんから何か聞き出せたのか?)
“スバル”: (ああ、そうだよ、アル  だから、話を合わせてくれ)
“スバル”: (それに、リドは恐らく耳がいい  かなりの小声でも、聞かれる恐れがあるから、注意してくれ)
“アル”: (わかったぜ、兄弟  けど、向こうのラスボスに弱点があったのは朗報だな)
“アル”: (マジ、光明が見えてきたぜ)
“リドア”: ──そろそろ終わりにしましょう 不覚にもリドは、再び皆様に時間を与えてしまいました
“リドア”: これ以上の遅れは、計画に支障をきたす恐れがあります リドは全力で──
ナレーター: リドアが最後の攻撃を仕掛けるべく、身構えたそのときだった──
ナレーター: 見覚えがある一台の竜車が、 スバルたちに向かって全速力で近づいてくる
“リドア”: チッ……!
“スバル”: ──きた! クルシュさんたちが…… って、あの竜車は確か?
“レム”: はい アストレア領ではお世話になりました 間違いありません
“エミリア”: ええ、あれは確かに──
“オットー”: ──みなさーん! どうやら無事みたいですねー! 僕たちがきたからには、もう大丈夫ですよー!
“アル”: おいおい、あの冴えねぇヤローは誰だ? とても“もう大丈夫”なんて感じには見えねぇぜ
“ユリウス”: 見るに、剣すらも携えていない 本当に彼は助けになるのか、スバル?
“スバル”: ユリウスやアルの不安はもっともだし、 俺が知る限り、オットーの戦力は俺よりマシかもって程度だ
“スバル”: とはいえ“僕たち”ってあいつは言ってる ここは“たち”の方に期待させてもらうとしよう
“フェルト”: ラインハルト、どうやら間に合ったみてーだな
“ラインハルト”: はい オットーに急いでもらった甲斐がありました
“リドア”: ──っ!
“リドア”: 圧倒的な力を感じます……
“アル”: おい、兄弟、何やら向こうの嬢ちゃんの様子がおかしい
“ユリウス”: ああ、明らかにリドアさんは動揺している それにこの気配は……
“スバル”: ──ら、ラインハルト、きてくれたんだな?
“ラインハルト”: 急ぎバーリエル男爵領に向かいスバルを助けるよう クルシュ様からご連絡をいただいたからね
“ラインハルト”: オットーに協力してもらい、先を急がせてもらったんだ
“スバル”: マジ、でかしたぞ、オットー! ホント、ピンチだったから、お前への感謝が半端ねぇ
“スバル”: けど、どうしてお前がラインハルトたちを……?
“オットー”: カルステン公爵の使者の方がいらしたのが、 ちょうど『剣聖』様と商談しているときだったんです
“フェルト”: んで、アタシがこの兄ちゃんに、 バーリエル男爵領ってとこまでアタシらを運ぶように言ったんだ
“フェルト”: この兄ちゃんの地竜は、なかなか根性あるし、 多少足が遅くても、結果的に早く着けそうだったからよ
“オットー”: おかげで僕も休みなしです…… 王都からここまで走り詰めでした……
“フェルト”: おいおい、兄ちゃんは走ってねーだろ 兄ちゃんは御者台に座ってただけだ
“オットー”: 座ってただけって!?
“オットー”: 確かに一番大変だったのはフルフーですが、 僕だって相当大変だったんですよ!
“オットー”: それを“座ってただけ”なんて、あんまりです……
“フェネ”: ──スバル氏、リドア女史に注意してください 何やら動きがありそうです
“リドア”: くっ…… やむを得ません……
“レム”: ──リドアさん!
“エミリア”: スバル、リドアちゃんが逃げたわ! どうするの?
“アル”: 『剣聖』様の到着に恐れをなしたか? オレとしてはマジ助かったよ
“ユリウス”: だが、このまま逃がすわけには……
“ラインハルト”: スバル、あの子は僕が追おう どうやら逃がしていい相手ではないらしい
“スバル”: 頼めるか、ラインハルト? あいつをあのまま逃がすと、きっと厄介なことになる
“ラインハルト”: では、決まりだね オットー、もうひと踏ん張り君に頼みたい
“オットー”: えっ!? ぼ、僕にですか?
“スバル”: ラインハルトのご指名だ もうひと踏ん張りもふた踏ん張りもしてくれよ、オットー
“オットー”: いやいや、だいぶ無茶してここまできたんです さすがにこれ以上は……
“スバル”: おいおい、そんなはずねぇだろ? お前んとこの地竜の持久力なら、まだまだいけるはずだ
“オットー”: 確かにフルフーはまだいけると思いますが、肝心の僕の体力が……
“スバル”: 何言ってんだよ、オットー お前は座ってただけじゃねぇか いいからいってくれ
“オットー”: ヒドいですよ、あなた!? 僕にすごく感謝してるみたいなこと言ってたのに!
“スバル”: おいおい、いつまで過去の栄光に縋(すが)ってんだ? あれから時は流れて、とっくに状況は変わってるんだよ
“オットー”: “過去の栄光”って!? ついさっきの出来事ですよね!
“フェネ”: オットー氏 こちらのバーリエル男爵領を治めるプリシラ女史は、 とてもお金持ちでいらっしゃいます
“フェネ”: さらに、エミリア女史やフェルト女史と同じく、 この国の王になられるかもしれないお方なのです
“フェネ”: あちらにいらっしゃるアル氏は、 そのプリシラ女史の忠実な僕(しもべ)
“フェネ”: 活躍をお見せすれば、 新たな上客獲得に繋がることは間違いないでしょう
“オットー”: それは、確かにもうひと踏ん張りする価値があるかもしれません
“スバル”: 現金なやつだな!
“スバル”: でも、事実は事実だよ あのおっさんが僕(しもべ)ってのも含めてな
“アル”: おいおい、あんま褒めんなよ、兄弟 僕(しもべ)なんて呼ばれ方、マジ最高だぜ
“スバル”: ポジティブシンキングも大概にしやがれ!
“スバル”: 僕(しもべ)なんて呼ばれて、 喜ぶような奴を褒めるわけねぇだろ!
“オットー”: だ、大丈夫なんですか…… この人……
“アル”: もち、大丈夫だ オレが保証してやる
“オットー”: あなたの保証に何の価値が!? 僕の不安の原因は、間違いなくあなたですよ!
“アル”: おぉ、ナイスツッコミ いいキャラしてやがるぜ、この兄ちゃん
“スバル”: それについちゃ同意だ マジ、どこに出しても恥ずかしくねぇいじられキャラだよ
“スバル”: オットーがプリシラの奴に あたふたさせられる姿を想像すると、なんだかわくわくしちまうぜ
“オットー”: わくわく、って…… 僕には嫌な予感が……
“オットー”: そういえば、以前ナツキさんが、プリシラ様について
“オットー”: 会って早々“死んで詫びろ”とか言い出す人だって、 言っていたのを思い出しましたよ
“オットー”: もしかしたら、あんまり関わらない方が……
“スバル”: 待て待て、それは俺とプリシラの相性の問題だ
“スバル”: 事実、フェネの奴はあいつととてもうまくやってるし、 お前もそっち側になれるかもしれねぇ
“アル”: 確かに狐さんは、ウチの姫さんとうまくやってるな 兄弟とは雲泥の差だぜ
“フェネ”: プリシラ女史のご発言を尊重し、無礼な言動を控えれば、 スバル氏のような扱いは受けないものと推測します
“フェネ”: 問題はプリシラ女史とスバル氏の“相性”ではなく
“フェネ”: プリシラ女史に対してスバル氏が行った 数々の無礼にあるとフェネは考えます
“スバル”: それについちゃ、色々言いたいことはあるけども、 これ以上オットーにまごつかれるのは避けてぇ
“スバル”: 反論については、オットーがいってからさせてもらう
“オットー”: いやいや、僕がいるところでお願いします! ぜひとも聞いておきたいので!
“フェネ”: 往生際が悪いですよ、オットー氏 いつまでこの場に留まるつもりですか?
“フェネ”: プリシラ女史については、置いておくにしても
“フェネ”: スバル氏はオットー氏のために、 取引を拡大するようロズワール氏を説得していました
“フェネ”: さらにラインハルト氏とのお取引も実現しているご様子
“フェネ”: 十分な見返りを すでにオットー氏は受けているのではありませんか?
“ラインハルト”: 君とは気が合いそうだ これからも色々と取引させてもらうつもりだよ、オットー
“ラインハルト”: 君がスバルの友人であるなら、なおさらね
“オットー”: 『剣聖』様……
“オットー”: 確かに、僕は十分な見返りを得ていましたね もうひと踏ん張りすることをお約束しましょう
“スバル”: おぉ、頼めるか、オットー?
“オットー”: 色々かなり大変ではありましたが……
“オットー”: よくよく考えると、 ナツキさんに協力したことで、僕の商売が好転したことは確かです
“オットー”: 急いで追わなければならないのに、 なかなか踏ん切りがつかず、申し訳ありませんでした
“オットー”: でも、もう僕は大丈夫です 『剣聖』様と一緒に、あの人を追わせていただきます

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_04

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■4話 タイトル:過去は過去 更新日:2022/05/12

ナレーター: 逃走したリドアを追いラインハルトとオットーが出発した後、 スバルたちを安堵の雰囲気が包んでいた
“スバル”: ──とりあえず、 リドのことはラインハルトに任せとけば大丈夫だな
“ユリウス”: ああ 彼なら間違いない
“ユリウス”: むしろ、ラインハルトに追われることになってしまった リドアさんに同情したいぐらいだ
“アル”: マジでよかったぜ
“アル”: 兄弟がきてから、ホント散々だったからな おっさんの体はボロボロだ
“アル”: ってことで、狐さん、例のヤツ頼むわ ちゃちゃっと回復しちゃってくれ
“フェネ”: 申し訳ありませんが、アル氏 お断りします
“アル”: なんでだよ、狐さん ケチケチしねぇで頼むぜ
“エミリア”: フェネは、あんまり『禁書』のマナを使いたくないみたい
“フェネ”: 左様です
“フェネ”: 体調が万全ではなかったため、皆様に供給させていただいたマナは すべて『禁書』から拝借したものになります
“フェネ”: リドア女史の脅威が去った今、 そのような行為はできるだけ避けるべきだと考えます
“スバル”: まぁ、少しゆっくりする時間ができたんだ しばらく休めば、体力だってきっと回復するだろうよ
“フェルト”: なんだよ、兄ちゃんたちはずいぶんとお疲れみてーだな
“フェルト”: ラインハルトが置いてった食いもんがあるんだけど、食うか?
“フェルト”: アタシは“いらねー”って言ったのに、 あいつ、“きっと役立つ”って無理やり置いていきやがったんだ
“スバル”: 食うよ、食う! 実はかなりの空きっ腹だ!
“レム”: お恥ずかしながら、レムもいただけると助かります
“エミリア”: ええ 私もお腹がペコペコよ フェルトちゃん、ありがたくいただくわ
“ユリウス”: ありがとうございます、フェルト様 私もいただきます
“アル”: もちろんオレもな
“アル”: ちなみにオレが一番の年長者だ その辺を考慮して分配してくれると助かるぜ
“フェルト”: 年齢は関係ねーだろ、オッサン こういう場合、成果に応じてなんじゃねーのか?
“フェネ”: フェルト女史 それだと、約一名、分配されない者が出てしまいます
“アル”: おっ、確かにな “食うべからず”な奴がいやがるぜ 真っ先に反応したってのに、可哀想なこった
“スバル”: 俺がもらえないみたいな空気出すのやめてくれる!?
“スバル”: ここは年齢、成果に関係なく、平等にいこう! 俺たちは仲間なんだからさ!
ナレーター: フェルトから配られた食料で簡単な食事を済ませ、 スバルたちはほっと一息をついた
“スバル”: ──おい、アル 少しはおっさんのボロボロの体も回復したか?
“アル”: まぁ、なんとかな
“アル”: 昨日の夜から、まともなもん口にしてなかったからよ 嬢ちゃんが食い物くれて、マジ助かったぜ ありがとな
“フェルト”: 礼ならラインハルトに言ってくれ オッサンたちに食いもんを残していったのはあいつだからよ
“フェルト”: アタシは他人の手柄を横取りするほど、落ちぶれちゃいねー 身に覚えがねーことで、礼なんて言われても迷惑なだけだぜ
“フェネ”: 聞きましたか、スバル氏? フェルト女史は、とても良い事をおっしゃいました
“スバル”: 聞こえてたし、胸を痛めてる最中だよ
“スバル”: 俺は自分を良く見せるために、 他人の手柄を横取りしたことがあるし
“スバル”: 本来は自分が受けるべきじゃなかった称賛に、 気を良くした経験も一度や二度じゃねぇ
“スバル”: それをあっさり “ラインハルトの手柄だ”って言い切れるフェルトには感服だ
“スバル”: やっぱこいつも 歴とした王選の候補者なんだなって改めて思い知らされたよ
“フェルト”: おいおい兄ちゃん、気持ちわりーこと言い出してんじゃねー アタシは何も“感服”されるようなことは言ってねーよ
“フェルト”: それに、手柄は取ったりしねーけど、 人から盗ることを生業にしてきた身だ
“フェルト”: “感服”なんてもんとは反対側にいる人間だし、 そんな風に言われても嫌味にしか聞こえねーぜ
“スバル”: そういやそうだったな
“スバル”: そんでもって、お前がエミリアたんの徽章を盗んだことが、 すべての始まりだったぜ
“スバル”: けど、過去は過去だ
“スバル”: そういう過去があったとしても、 今のお前が変われてるんなら、卑下する必要はねぇよ
“スバル”: お前のそういう過去は、 むしろ財産なんじゃねぇかって俺には思えるぐらいだ
“スバル”: お前みたいな奴が王様になったら、 きっといい意味でルグニカは変わるだろうし
“スバル”: って、エミリアたんを王様に推す俺としては、 複雑な気持ちではあるけど
“フェルト”: おいおい、持ち上げんなら、最後まで持ち上げろよ、兄ちゃん 最後の一言は明らかに余計だったぜ
“フェルト”: けど、兄ちゃんがアタシを評価してくれてるってのは、 なんとなく伝わったよ
“フェルト”: 大した成果も出せず、温情で食いもんを分けてもらった 兄ちゃんからの評価に、どんだけ価値があるかはわからねーけど
“スバル”: 待て待て、一般人の俺が、 こいつら相手に成果を出せるわけねぇだろ
“スバル”: こうして怪我もせず、生き残ったことを評価してほしいぐらいだ
“レム”: はい スバルくんは怪我せず生き残るという偉業を成し遂げました
“レム”: そのことをレムは、とても評価しています
“エミリア”: うん、そうね 今回は無茶して危ないこととかしなかったもの
“エミリア”: 私もスバルは偉かったと思うわ
“フェルト”: おいおい、姉ちゃんたちは兄ちゃんに甘すぎだろ 兄ちゃんがこんな風なのも納得だぜ
“フェルト”: 兄ちゃんはもうちょい、 厳しい環境に身を置いた方がいいんじゃねーのか?
“スバル”: それについちゃ、心配無用だ、フェルト 十分俺が置かれた環境は厳しい 事実──
“フェネ”: エミリア女史、レム女史には申し訳ありませんが、 フェネはお二人の意見に異を唱えさせていただきます
“フェネ”: スバル氏が怪我なく無事だったのは、皆様の努力の賜物
“フェネ”: そのことで皆様が評価されることはあっても、 スバル氏の評価には一切繋がりません
“フェネ”: スバル氏という足枷がなければ、 皆様はリドア女史ともっといい戦いができたはずです
“フェネ”: やはりスバル氏に食料を分け与える必要などなかったのです
“フェネ”: さあ、スバル氏 今すぐ不当に摂取した食料を吐き出してください ご自分で難しい場合は、フェネがお手伝いさせていただきます
“アル”: 待て待て狐さん、今さら吐き出されたって、 とても食えたもんじゃねぇし、そこまでは勘弁してやってくれ
“ユリウス”: そうです、フェネさん そのようなことは私も望んでいません
“ユリウス”: 確かにスバルはリドアさんとの戦いで、 成果を上げたわけではありませんが
“ユリウス”: 我々は“平等に分ける”という内容で合意したはず 今さら蒸し返すのは酷というものです
“スバル”: どうだ、フェルト これでも俺の置かれた環境が厳しくないって言うつもりか?
“スバル”: ここにはいねぇけど、もう一人ラムって超絶厳しい先輩がいて、 そいつにも散々こき使われる毎日だよ
“フェルト”: 悪かったぜ、兄ちゃん アタシの勘違いだった
“フェルト”: まあ、とにかく、強く生きろよ、兄ちゃん

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_05

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■5話 タイトル:我こそが正義 更新日:2022/05/12

ナレーター: リドアとの戦いは困難を極めたものの
ナレーター: ラインハルトの到着によって形勢は一気に逆転し、 スバルたちを追い詰めていたはずのリドアは逃走を図った
ナレーター: 戦いによる消耗が激しかったスバルたちには、 逃げるリドアを追うことはできなかったが
ナレーター: ラインハルトは、自分やフェルトをバーリエル男爵領まで運んだ オットーとともにリドアを追うことを申し出てくれ
ナレーター: スバルは、そんなラインハルトの申し出を受け入れる
ナレーター: また、ラインハルトは消耗したスバルたちのために、 食料を残していってくれ
ナレーター: その食料を食べたスバルたちは、 体力を回復させることができたのだった
“アル”: ──それで、これからどうするよ、兄弟?
“アル”: あのリドアとかいう嬢ちゃんのことは、 『剣聖』様に任せりゃよさそうだが
“アル”: あの嬢ちゃんが部屋の壁にあけちまった大穴の問題がある
“アル”: 姫さんへの謝罪をいつまでも先送りにするわけにはいかねぇ
“アル”: ってことで、姫さんの謝罪について、 責任を持って対応してくれよな、兄弟
“スバル”: いやいや、待て待て、“謝罪に付き合う”とは言ったが、 俺が主体でなんて言ってねぇだろ!
“スバル”: 修理代についちゃ、ロズワールを説得して、支払わせてもらうから プリシラとサシでの謝罪だけは勘弁してくれ
“スバル”: マジ、無事に謝罪を終わらせる自信がねぇ
“アル”: ったく、兄弟はマジ手が掛かるぜ オレがいねぇとなんもできねぇんだな
“スバル”: お前がいなくたって、できることばっかりではあるんだが、 ことプリシラに関することだけは、そういうわけにはいかねぇ
“スバル”: マジで俺とあいつは相性が最悪だ 会って数秒で“死んで詫びろ”って言われる自信があるよ
“アル”: ったく、なんの自信だよ、そりゃ
“アル”: 少しは狐さんを見習って、いちいち反論しねぇで、 姫さんが言ったことをそのまま受け入れてみろよ
“アル”: 姫さんとうまくやるには、そうするのが一番だ
“スバル”: 第一声で“死ね”って言われたらどうすんだ? “反論しねぇで死ね”とでも言うつもりか?
“アル”: いやいや、さすがに姫さんでも…… って、兄弟の場合は十分にあり得るな
“スバル”: 俺の場合、会って早々“立ち去れ”ってのもありやがるぜ スタートラインにすら立たせてもらえねぇ可能性がな
“スバル”: だから、アル マジで頼む──
???: クククク……
???: ご歓談の時間は、 そろそろ終わりにしていただいてよろしいですかな?
ナレーター: 突如、森の中から響いた声に、その場にいた全員が凍り付いた
“フェネ”: ──っ!
“ユリウス”: こ、この声は……!
“エミリア”: ええ、仮面の人の声で間違いないわ
“レム”: はい あの男で間違いありません
“アル”: 面識があるわけじゃねぇが、いけ好かねぇ声の持ち主だぜ
“フェルト”: ああ、違いねー
“フェルト”: できれば関わり合いを持ちたくねーぜ こんな不気味な声の持ち主とはよ
“スバル”: ちくしょう…… リドに気を取られて、まったく油断しちまってたぜ……
“スバル”: そういやこいつがいやがったよ 悪の元凶のこいつがな
“仮面の男”: ……悪の元凶? この私が?
“仮面の男”: 正義と悪で分けるのであれば、悪を駆逐せんとする私こそが正義
“仮面の男”: 私からすれば、 それを阻止しようとされる貴方がたこそ悪の元凶に他なりません
“スバル”: ふ、ふざけるな! 人類を皆殺しにしようとしてる奴が、正義なわけねぇだろ!
“スバル”: 正義は俺らの方で、お前の方が悪だ! そうに決まってる!
“仮面の男”: ……決まっている? 本当におかしなことを言う方だ、貴方は
“仮面の男”: せっかくこの世に顕現した『異形』を 貴方がたはどうされましたか?
“仮面の男”: 貴方がたが『変異体』と呼ぶ存在を いったいどうされたのでしょう?
“仮面の男”: 貴方がたと同じことを 私は愚かな人間に対し行おうとしているだけです
“仮面の男”: 人間など百害あって一利なし 滅んで然るべきなのです
“仮面の男”: その手始めとして、貴方がたには、 ここで死んでいただくことにいたしましょう
“フェルト”: お、おい、兄ちゃん…… あの野郎は何を言ってやがる……?
“アル”: まったくだぜ、兄弟……
“アル”: しかもマジで言ってるっぽいし、 もはや救いようがねぇように見えるぜ
“アル”: 同じ仮面仲間として、なんとかしてやりてぇ気持ちはあるが、 ありゃ、完全にお手上げだな
“スバル”: 今さら紹介の必要はないかもしれねぇけど、 あいつが例の仮面の男だよ
“スバル”: 出会ったときから、世界の浄化だの宣(のたま)ってた奴だ
“スバル”: しかも、性質(たち)わりぃことに
“スバル”: 『禁書』の中でも、最強最悪と目される “こわいまもの”のページを持ってやがるかもしれねぇ
“アル”: “かもしれねぇ”ってことは、持ってねぇ可能性もあるのか?
“スバル”: あるには、ある 実際に見せてもらったわけじゃねぇからな
“スバル”: 一つだけはっきりしてるのは、必死に探したにも拘わらず、 俺らにはそのページが見つけられなかったってことだ
“スバル”: もし、あいつが持ってるんだとしたら、 俺らが見つけられないのは当然ってことになるけど……
“スバル”: 果たしてどうだろうな
“ユリウス”: ここは“持っている”という前提で対処するべきだ、スバル “持っていない”という前提に立つのは、あまりにも危険すぎる
“アル”: けど、あいつが持ってたって別に構いやしねぇだろ “こわいまもの”とやらの弱点がわかってんだからよ
“スバル”: まぁ…… そりゃ、そうなんだが……
“アル”: あん? 何か問題でもあんのか、兄弟?
“スバル”: それについてはノーコメントだ あいつの前で手の内を晒すことは控えたい
“仮面の男”: ククククッ……
“フェルト”: 笑い出しやがったぜ、あいつ 何が可笑しいのか、まったくわからねーけど
“仮面の男”: ハハハハッ…… 笑う理由が、本当にわかりませんか?
“フェルト”: 当たりめーだ 笑う要素なんて、どこにもねーだろ
“仮面の男”: いやはや、貴方がたは、自分たちが置かれた状況を まったく理解していないようだ
“スバル”: それはこっちの台詞だぜ、仮面野郎!
“スバル”: いったいいつからお前があの森に潜んでたのかは知らねぇが、 こっちはリドとの戦いの疲れも取れ、バッチリ戦える状態だ
“スバル”: しかも、心強い味方まで、間もなく到着する可能性がたけぇ
“エミリア”: フェルトちゃんやラインハルトも、きてくれたんだもの クルシュさんだってきっときてくれるわ
“フェルト”: そりゃそーだろ アタシらに向かうように言った 当の本人がこねーなんてありえねーぜ
“スバル”: ってことで、少し前だったら、お前にも勝機があったが、 今や完全にゼロの状態だ
“スバル”: マジ、残念だったな
“仮面の男”: 何を言い出すかと思えば、本当に貴方がたは面白い
“仮面の男”: 勝機を逸してしまったのは、むしろ貴方がただというのに
“仮面の男”: ……心強い味方? クククク…… ハハハハ……
“仮面の男”: ──『剣聖』より心強い味方など、 この世のどこを探しても存在しない
“スバル”: ──なっ! それはどういう意味だ?
“仮面の男”: 言葉通りの意味ですよ 『剣聖』にあの娘を追わせたのは、明らかに誤りでしたな
“スバル”: お前、やっぱりリドと…… って、リドと俺らの戦いをお前は見てやがったのか?
“仮面の男”: ……俺ら?
“仮面の男”: ククククッ ハハハハッ 一番の愚か者は、どうやら貴方のようだ
“仮面の男”: 私には、貴方が戦いに参加しているようには、 とても見えませんでした
“仮面の男”: それを“俺ら”とは…… クククッ ハハハッ 貴方は恥を知るべきです
“スバル”: くっ…… それを知ってるってことは、 一部始終見てやがったな……
“スバル”: なのに、お前は見てるだけで、戦いには加わらなかった……
“スバル”: それはつまり、俺らからラインハルトを 引き離すためだったっていうのか?
“仮面の男”: ククッ グハハハハッ 無論、その通りです
“仮面の男”: あの娘の最大の任務 それは『剣聖』を貴方がたから引き離すことだったのです

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_06

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■6話 タイトル:信じるに値しない話 更新日:2022/05/12

“仮面の男”: ──あの娘の最大の任務 それは『剣聖』を貴方がたから引き離すことだったのです
“スバル”: な、なんだと……! お前が森の中で、俺らの休憩を見守ってたのもそのためか?
“仮面の男”: そうなりますな 『剣聖』には貴方がたから十分に離れてもらう必要があります
“仮面の男”: 『剣聖』がこちらに向かっていると判明した時点で、 計画を変更させていただきました
“仮面の男”: 貴方がたは何やら勘違いをされているようですが、 『剣聖』が立ち去ったこれからが本番──
“仮面の男”: 貴方がたと合わせて、その子狐も葬らせていただきます
“エミリア”: つまり、どういうこと……? リドアちゃんはフェネの命を狙ってたわけじゃないの?
“フェネ”: どうやらそのようです
“フェネ”: スバル氏は形勢を逆転し、 掌の上でリドア女史を躍らせているつもりでいたと思われますが
“フェネ”: その実、まったく逆だったということでしょう
“フェネ”: 相変わらずスバル氏は、リドア女史の掌の上で踊り続けており、 主導権は完全にリドア女史が握っていたのです
“スバル”: うっ…… 完全にやられちまった……
“スバル”: あいつの狙いはラインハルトを俺らから引き離すことで、 そのためなら嘘もつくし演技もするってわけだ
“スバル”: なのに俺は…… あいつを罠にはめたと思って……
“レム”: ですが…… レムにはとても、 リドアさんが演技をしているようには見えませんでした……
“ユリウス”: そこがリドアさんの恐ろしいところなのかもしれない…… 彼女を疑っていた私でさえ、見抜くことができなかった
“アル”: つまり、オレと兄弟の時間稼ぎに付き合ったのも、 『剣聖』様の到着を待つためだったっていうのか?
“アル”: オレ、結構頑張って時間を稼いだっていうのに
“アル”: あの嬢ちゃんは元より、『剣聖』様が現れるまで、 適当にオレらの相手をしながら時間を潰すつもりだったわけだ
“スバル”: だが……、おかげでリドは戦線を離脱した状態だし、 俺たちも体力を回復する時間を持てた
“スバル”: 確かにこっちもラインハルトを戦力に入れられねぇけど、 その交換条件は、本当に価値が見合ってるのか?
“スバル”: 時間が経てば経つほど、 クルシュさんが到着する可能性もアップするわけだし
“仮面の男”: ククククッ ハハハハッ 見合ってるも何も、 『剣聖』さえいなければ、貴方がたなどどうとでもできます
“仮面の男”: こちらにある切札の存在を よもや忘れたわけではありますまい
“フェルト”: “切札”ってのは、“こわいまもの”のページのことか?
“仮面の男”: 無論、そうなりますな
“フェルト”: ちなみに、そのページから『異形』が顕現したら、 いったいどうなるんだ?
“仮面の男”: 愚かな人間どもは駆逐され、 理想の世界が実現することになるでしょう
“フェルト”: はぁ? 何言ってやがる? そんなことしたら、アンタはどうなんだよ?
“フェルト”: アンタだって、歴とした人間だろ
“スバル”: そいつにその論法は通用しねぇ 崇高な目的のためなら、自分の死など意に介さないらしい
“フェルト”: 自分の死を意に介さねーだと? ホント、どうかしてやがるぜ
“フェルト”: 死にたきゃ一人で勝手に死にやがれ! アタシらを巻き込むんじゃねーよ!
“仮面の男”: “巻き込む”も何も、 貴方がたが勝手に巻き込まれにきたのではないですか
“仮面の男”: そうでなければ、もう少し生きることが許されたというのに、 本当に物好きな方々だ
“スバル”: “もう少し”ってな 俺らがほしいのはそんなちょっとの猶予じゃねぇ
“スバル”: 人類が滅びなくていい未来なんだよ
“スバル”: そのために、お前の計画はことごとく邪魔してやるし、 切札の“こわいまもの”だって倒してやる
“スバル”: 確かにラインハルトはいねぇが、 あいつがいなくたって、やれるってところを見せてやるよ
“スバル”: マジ、覚悟しやがれ、仮面野郎!
“アル”: 兄弟は、マジで言うことだけは立派だよな ホント、感心するぜ
“フェルト”: ああ、まったくだ
“フェルト”: まるで兄ちゃんがやってやるって感じだけど、 兄ちゃんは見てるだけなんだろ?
“フェネ”: 左様です スバル氏は見ている専門であり、 何もせずにそうしてくれているのが一番です
“エミリア”: そうね スバルはすぐに無茶しちゃうから、 見ていてくれるだけの方が助かるわ
“ユリウス”: だが、スバルの言葉で、 私は“やってやろう”という気持ちになれた
“ユリウス”: スバルには口だけではない何かがあると私は感じている
“レム”: はい スバルくんは口だけではありません
“レム”: スバルくんが見ていてくれるだけで、 レムはいつもより断然力が発揮できますから
“仮面の男”: なるほど…… やはり貴方は面白い “愚か者”という評価は誤りだったのかもしれません
“スバル”: いやいや、俺は愚か者だよ
“スバル”: 元を正せば、俺のやらかしが原因だ
“スバル”: 俺が『禁書』のページをバラ撒かなきゃ、 お前だって変な気を起こさずに済んだんだしさ
“仮面の男”: クククク…… ハハハハ…… やはり貴方はただの愚か者だったようです
“スバル”: だからそう言ってんだろ!
“スバル”: いきなり愚か者じゃねぇみたいなこと言ったと思ったら、 返す刀で前言を撤回しやがって、マジ意味わかんねぇ!
“スバル”: こんな風になっちまった原因を作ったのは俺で、 ある意味お前も被害者みたいなもんなんだよ
“スバル”: 俺が『禁書』のページをバラ撒かなきゃ、 こんなことにはなってなかったんだからさ
“仮面の男”: もし、そのようなことを本気で言っているのだとしたら、 貴方は正真正銘の馬鹿者ですな
“仮面の男”: 私が貴方の被害者? クククッ ハハハッ 面白すぎて怒りさえ覚えてしまいます
“スバル”: ……どうしてそうなる? 予想外の反応に、俺はちょっとばかり戸惑ってるぜ
“アル”: オレもそうだぜ、兄弟 あいつが怒りを覚える必要なんてねぇはずだからな
“仮面の男”: 貴方がたはそろそろ理解するべきだ この物語の主人公が、この私であることを
“仮面の男”: 確かに貴方は『遺作』のページをバラ撒いたかもしれないが、 それは決して偶然ではない
“仮面の男”: 貴方は初めから、私の掌の上で踊らされていたのですよ
“スバル”: 初めから……お前の掌の上で、だと?
“仮面の男”: ククククッ グハハハハッ そうです その通りです すべては私の計画通りに事が運んでいる
“スバル”: そんなわけあるか!
“スバル”: 禁書庫から『禁書』を蹴り出した俺は、 後で返せばいいかって、軽い気持ちで持っていっちまったんだよ!
“スバル”: そしたら、魔獣と戦うことになって、 そんときに落としたうえに踏んじまって
“スバル”: その衝撃でページがバラバラになって飛び去っちまったんだ!
“スバル”: あの一連の出来事に、 “必然”なんて入り込む余地はなかったって断言できる!
“スバル”: 全部が全部“偶然”だったに決まってるだろ!
“スバル”: それに、だったらどうして、 お前は『禁書』のページを集めて回ってるんだ?
“スバル”: 裏でお前が糸を引いてるんだとしたら、 そんなしちめんどくせぇ工程を入れる意味がわからねぇ
“スバル”: わざわざ闇オークションに参加して、 ページを競り落とす必要があったのはなんでだ?
“スバル”: どうしてお前じゃなく、 俺たちがこんなにたくさんページを集められてる?
“スバル”: 腑に落ちねぇことばっかりで、 お前の話は、信じるに値しねぇんだよ!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_07

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■7話 タイトル:仮面かぶり 更新日:2022/05/12

ナレーター: 突如、森の中から姿を現した仮面の男
ナレーター: 仮面の男とリドアの狙いが、 スバルたちの援護に向かっていたラインハルトを
ナレーター: スバルたちからできるだけ遠ざけることだったと判明する
ナレーター: さらに仮面の男は、『禁書異変』そのものが、 自分が企てたことだと伝えたが
ナレーター: スバルは、にわかには信じられないのだった
“スバル”: ──腑に落ちねぇことばっかりで、 お前の話は、信じるに値しねぇんだよ!
“仮面の男”: 信じる信じないは貴方の勝手です ご自由にしてください
“仮面の男”: それに、私としたことが、思わず誇張してしまいました “すべてが私の計画通り”という言い方は正しくない
“仮面の男”: 本来であれば、この物語の終演は帝国で迎えたはず 貴方のせいで予定の変更を余儀なくされてしまったのです
“仮面の男”: 無論、こちらから帝国は目と鼻の先 大きな変更ではありませんがね
“スバル”: ……帝国で終演?
ナレーター: 前回の周回、確かにスバルたちは帝国へ向かっていた
ナレーター: もしあのまま進んでいたとしたら、仮面の男が言う通り、 この男との決着は帝国でついていた可能性が高い
“スバル”: なるほど…… 確かにな……
“スバル”: けど、残念だったな 未来を変えるために、予定を大幅に変更させてもらった
“スバル”: 場所だけじゃなく、出演者も大きく変わってるはずだ
“仮面の男”: くっ…… そちらについては、かなり憤りを覚えています
“仮面の男”: 本来であれば、『剣聖』の出番などなかったはず
“仮面の男”: 『最優の騎士』も登場しており、 カルステン公の参加も私の筋書きとは違っています
“仮面の男”: さらに、子狐や貴方がたの命を奪うはずだった あの娘の役割も変更せざるを得ませんでした
“アル”: おいおい、かなりの変更を強いられてるじゃねぇか “計画通り”とは言いがてぇ
“アル”: まぁ、それだけ、兄弟がうまくやったわけだ
“アル”: 馬鹿者だの愚か者だの評した相手に、 ずいぶんやり込められて、かっこわりぃったらありゃしねぇ
“アル”: あまりの恥ずかしさで、素顔も明かせねぇお前さんに、 オレは同情を禁じ得ねぇよ
“仮面の男”: これはこれは、ずいぶんと言ってくださいますね
“仮面の男”: 貴方も私の計画に変更をもたらした立役者の一人 ただでは死なせませんので、どうかご安心を
“アル”: いやいや、それは逆恨みだ オレに対しては、どうかお手柔らかに頼むよ
“アル”: ホント、兄弟がきてから、いいことがまるでねぇ
“アル”: そのうえ、あんたから恨みを買うんじゃ、マジでオレが可哀想だ あんたの恨みの原因は、全部兄弟にあるってことにしてくれ
“スバル”: おい、アル! 仲間を売るようなマネしてんじゃねぇ!
“スバル”: あいつはお前にも恨みがあるって言ってんだ 俺に転嫁したりしねぇで、きっちり受け止めろよ
“アル”: 待て待て、マジで謂われのねぇ恨みなんだよ
“アル”: あちらさんとオレは正真正銘の初対面で、 計画の変更を余儀なくさせた記憶もねぇ
“アル”: だからきっと、兄弟にやられたことを オレにされたって勘違いしてるんだよ
“アル”: こんな善良な市民を捕まえて、マジ迷惑な話だぜ
“スバル”: いやいや、仮面かぶりしてるだけで、 あいつにとっちゃ、お前はずいぶん邪魔な存在なんだよ
“スバル”: 登場人物に何人も仮面野郎は必要ねぇしな
“スバル”: それに、お前もそう思ったから、 暗に“仮面を取れ”みたいな挑発をしたんだろ?
“アル”: なんだよ、バレてやがったか
“スバル”: 当り前だ わざわざ素顔を晒す方向に話を持っていってたじゃねぇか
“スバル”: あの時点で、 “こいつ仮面かぶりを気にしてやがるな”って気付いてたぜ、俺は
“アル”: まぁ、仮面といえばオレみたいなイメージは、大切にしてぇからよ
“アル”: にも拘わらず、 今や仮面といえばあちらさんみたいになっちまってる
“アル”: 正直、オレにとっては面白くねぇ状態だ
“スバル”: つまり、あいつもお前と同じってわけだ 仮面野郎の座を脅かすお前が、すげぇ邪魔なんだよ
“仮面の男”: 的外れの会話をいつまで続けるおつもりですか? そのようなこと、私は一切気にしていません
“アル”: それはそれで、オレの器がちっちゃいみたいになるから、 少しぐらいは気にしてくれて構わねぇぜ
“仮面の男”: そう言われましても、私には仮面などどうでもいい
“仮面の男”: 取ること自体はやぶさかではないのですが、 それについては後ほどとさせていただきましょう
“仮面の男”: せっかくの場面を公爵ご一行がご覧になれないのは気の毒です
“スバル”: クルシュさんは、お前が仮面を外すとこを見られなくても、 別にがっかりしたりはしねぇよ
“スバル”: そもそも、そうやってもったいぶってる時点で、 “どうでもよくない”証拠じゃねぇか
“仮面の男”: 申し訳ありませんが、仮面を外す場面は物語に織り込み済みです 変更するつもりはありません
“スバル”: そんなことまで織り込んでるのかよ!
“スバル”: とはいえ、変更箇所満載で、 予定との乖離(かいり)がすげぇことになってる状態だろ
“スバル”: 今さらって気がするけどな、俺は
“レム”: はい、レムもそう思います 今さらこだわっても、あまり意味はないかと
“仮面の男”: クククク…… ハハハハ…… 貴方がたは本当にわかっていない
“仮面の男”: 変更が生じた時点から、物語を新たに書き直させていただきました
“仮面の男”: そして、再び物語の書き直しが発生しないよう、 こうして私自らが足を運んだのですよ
“仮面の男”: 今度こそ、予定通りに運ばせていただきます 変更などこの私が決して許さない
“仮面の男”: つきましては、公爵ご一行の到着まで、 まずはこちらのページで貴方がたのお相手をいたしましょう──
ナレーター: そう言うが早いか、仮面の男はページを取り出すと、 スバルたちに投げるのだった
ナレーター: そのページにマナを送り込み、 仮面の男は『異形』を顕現させる
“異形”: ウグググッ……
“フェネ”: ──『異形』です! 皆様気を付けてください!
“ユリウス”: スバル、フェルト様を!
“スバル”: ああ、俺らは下がった方がよさそうだ フェルト、下がるぞ
“フェルト”: 悔しいが、足手まといにはなりたくねー わかったぜ、兄ちゃん アタシらは下がろう
“エミリア”: フェネも下がっていいわよ 体調が心配だもの
“フェネ”: くっ…… 皆様を支援したいのは山々ですが、 今は『禁書』のマナをこれ以上消費するべきではありません……
“フェネ”: この後に行われる、“こわいまもの”との戦いも考慮して、 フェネはエミリア女史のお言葉に甘え、下がらせていただきます
“アル”: オレも下がりてぇ気持ちは強いんだが、 仮面といやオレってメンツを懸けた戦いだ 引くわけにはいかねぇ
“ユリウス”: そのようなものを懸けた戦いではないと思うが…… アル殿が一緒に戦ってくださるのは心強い
“エミリア”: ええ、一緒に頑張りましょう、アル レムもお願いね
“レム”: はい、エミリア様 レムも精一杯戦わせていただきます

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_08

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■8話 タイトル:愚か者は確定 更新日:2022/05/12

“ユリウス”: ──はっ!
“エミリア”: えーいっ!
“レム”: はぁーっ!
“アル”: あらよっと、これでとどめだ!
“仮面の男”: ククククッ ハハハハッ ──では、続いてこちらの『異形』にお相手させましょう
ナレーター: エミリア、レム、ユリウス、アルの四人が『異形』を倒すと、 仮面の男が新たな『異形』を顕現させる
ナレーター: そんなことが幾度となく繰り返されているのだった
“異形”: ウガガガガァ……
“アル”: おいおい、また出てきやがったよ…… こんなこと、いったいいつまで続けるつもりだ?
“スバル”: けど、順調に倒した『異形』のページは、 フェネが『禁書』に封じてくれてる!
“スバル”: 『禁書』のページは無限にあるわけじゃねぇ! いつかあいつの手持ちは底をつくはずだ!
“仮面の男”: ククククッ グハハハハッ 貴方はやはり、愚か者であり馬鹿者のようだ
“仮面の男”: 私が手加減をしているのが、わからないのですか?
“スバル”: 手加減、だと……? どういうことだ……?
“フェネ”: スバル氏 ページから顕現する『異形』は、 一枚につき一体とは限りません……!
“エミリア”: そうよ、スバル 私たちは『異形』がたくさん出てくるページと戦ったことがあるわ
“レム”: はい…… 多くの『異形』が描かれたページが、実際に存在していました……
“ユリウス”: だとすると、“ページが底をつく”などという期待は、 するべきではない
“ユリウス”: あの男はいくらでも『異形』を──
“仮面の男”: いやはや、仕方ないですね ご自分でした発言の責任は、しっかりお取りいただきましょう──
ナレーター: そう言うと仮面の男は一枚のページを取り出し、 不敵な笑みを浮かべながらマナを注入する
ナレーター: そして──
“異形”: ググググッ……
“異形”: ウガガガグッ……
“異形”: ガガッ ウグググッ……
“異形”: ウガッ グガガガッ……
ナレーター: そのページからは、次から次へと『異形』が姿を現すのだった
“フェルト”: ──おい、兄ちゃん! うじゃうじゃ『異形』が出てきやがったぞ!
“スバル”: ぬぐぐぐっ…… お、俺のせいで…… こ、こんなことに……
“アル”: おいおい、マジで兄弟は余計なことしかしやがらねぇな 無駄に戦況を悪化させてどうすんだよ
“フェネ”: スバル氏を庇うわけではありませんが、 アル氏、それは誤解であると推測します
“フェネ”: 元より、この展開自体があの男の筋書き通り
“フェネ”: 無思慮な者であれば、 順調にページが回収できている状況を前向きに捉え
“フェネ”: スバル氏がしたような発言を行うことは容易に想像が可能です
“フェネ”: そして、その発言に合わせ、愚か者の希望を打ち砕くべく、 大量の『異形』を顕現させるページを投入すれば
“フェネ”: 物語を効果的に盛り上げることができます
“フェネ”: 事実、まるで世界が終わったかのような スバル氏の表情は傑作でした
“フェネ”: あの表情こそ、あの男が引き出したかったものだと推測します
“アル”: なるほどな 手加減してたのは、物語を盛り上げるためで
“アル”: そろそろ本気を出そうってタイミングで、 兄弟がおバカな発言をするよう仕組まれてたんだな
“アル”: んで、まんまとその通りになったわけだ
“アル”: だとすると、今回の戦況の悪化は、 元々予定されてた流れってことになる
“アル”: 兄弟が悪いわけじゃねぇ
“アル”: にも拘らず、兄弟がわりぃみたいなこと言っちまって、 マジすまなかったな
“スバル”: そんな風に謝られても、マジ微妙だ! 愚か者の俺がおバカな発言したことに変わりはねぇんだからさ!
“フェルト”: けど……あいつの物語に対する執着は、 利用できるんじゃねーか?
“フェルト”: あいつは自分が描いた筋書きが変更されることを 異様に嫌ってやがる
“フェルト”: 何か一つでも覆すことができれば、 そこに付け入る隙が生まれるかもしれねー
“アル”: ああ、それはそうかもな
“アル”: “この物語の主人公は私だ” みたいなイタい台詞を平気で言えちまう奴だ
“アル”: ちょっとの変更も許容できずに、 それが仇になるなんてことは、十分にあり得る話だぜ
“仮面の男”: ククククッ ハハハハッ
“仮面の男”: 貴方がたには雑談を楽しむ暇などありません そのことをお忘れなく
“異形”: ウググググッ……
“ユリウス”: 残念ながら、あの男の言う通りだ 無数に『異形』を顕現させるページをどうにかする必要がある
“エミリア”: ええ 戦いに集中しないと
“レム”: はい 戦いに集中しましょう、エミリア様
“アル”: ってことで、うじゃうじゃ湧く『異形』退治に オレらは奔走しなくちゃならねぇが
“アル”: そのメンバーに兄弟は入っちゃいねぇ
“アル”: 兄弟が単なる愚か者じゃねぇってことを証明するチャンスだ そっちの方は任せたぜ、兄弟
“スバル”: ……“単なる愚か者じゃねぇ”って、 愚か者であること自体は確定してる表現じゃねぇか
“フェルト”: そりゃそーだろ 兄ちゃんは、どこからどう見たって愚か者だよ
“フェルト”: けど、アタシも単なる愚か者じゃねー気がしてる 兄ちゃんなら、あの仮面野郎に一泡吹かせられるはずだ
“スバル”: んでもって、その小さな一泡が、 俺らが逆転するための大きな一歩に繋がるわけだ
“スバル”: 責任重大なうえに、 “愚か者”を過大評価しすぎだろって思いは拭えねぇが……
“スバル”: つべこべ言わずにやるしかねぇ
“スバル”: 考えろ…… 考えるんだ、ナツキ・スバル……
“スバル”: そして、なんとしても、あいつに一泡吹かせてやれ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_09

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■9話 タイトル:明かされる正体 更新日:2022/05/12

ナレーター: 次から次に顕現する『異形』
ナレーター: だが、エミリア、レム、ユリウス、アルの四人は、 うまく連携して確実に『異形』たちを片付けていく
ナレーター: そんな中スバルは、 ずっと仮面の男に一泡吹かせる方法を考え続けていた
“スバル”: ──フェルト
“フェルト”: なんだよ、兄ちゃん?
“スバル”: (フェルト、お前は戦線を離脱してくれ)
“フェルト”: (はっ? 何言ってやがる  兄ちゃんよりもアタシの方がよっぽど戦力になるぜ)
“フェルト”: (逃げるなら、兄ちゃんが逃げろよ)
“スバル”: (違う 逃げるわけじゃねぇ  それに、俺よりもずっとお前の方が足が早い)
“スバル”: (あの仮面野郎に悟られることなく、  この場を離れることだって、お前ならできるかもしれねぇ)
“フェルト”: (あん? どういうことだよ、兄ちゃん  アタシにもわかるようにちゃんと説明してくれ)
“異形”: ウグググッ……
“異形”: ガガガガッ……
“異形”: ウグッ ウグググッ……
“異形”: グガッ ウガガガッ……
“アル”: ちくしょう……! 倒しても倒しても次から次に出てきやがる……!
“エミリア”: ええ たくさん倒したのに、まだこんなにいるわ
“ユリウス”: なんとか『異形』を発生させているページを フェネさんに封じてもらいたいが……
“レム”: 大量に現れる『異形』の相手が精一杯で、 ページを探す余裕がありません
“スバル”: 決して強い相手じゃなさそうだけど、まさに“数は力なり”だな
“フェネ”: 左様です このままではやがて皆様は……
“スバル”: とにかく、今は耐えるときだ ここを持ち堪えれば、きっとクルシュさんたちがここに──
ナレーター: スバルがそう希望的観測を口にしたときだった
ナレーター: 一台の竜車がスバルたちへ向かって近づいてくる
“フェネ”: ──スバル氏!
“スバル”: ああ、間違いねぇ!
“スバル”: あの御者台に座って、 地竜の手綱を取ってるのはヴィルヘルムさんだ!
“スバル”: なんとか持ち堪えたな!
“フェネ”: そのようです 無論、それもすべてあの男の筋書き通りなのかもしれませんが……
“仮面の男”: おやおや、ようやくご到着ですか
“仮面の男”: カルステン公ともあろうお方が、 ずいぶんと時間がかかったものです
“レム”: エミリア様! クルシュ様がいらっしゃいました!
“エミリア”: うん! これで反撃できるわ!
“ユリウス”: はい クルシュ様の到着をなんとしても形勢逆転に繋げましょう
“スバル”: ──ってことで、お前は後方待機班に新加入ってわけだ
“フェリス”: そうだネ フェリちゃん弱いし、 戦闘はクルシュ様とヴィル爺にお任せだよ
“フェリス”: まあ、弱いだけのスバルきゅんと違って、 怪我人が出たときは大活躍だけどネ
“スバル”: “弱いだけ”で悪かったな!
“スバル”: けど、弱いなりに俺だって必死こいて頑張ってきたんだ
“スバル”: その辺、定期的に送ったクルシュさんへの報告の手紙に、 レムが色々書いてくれてたんじゃねぇのか?
“フェリス”: まあ、書いてはあったんだけど、 ほら、レムちゃんったら、スバルきゅんに甘々じゃない
“フェリス”: 信じていいものなのかにゃって、半信半疑だったわけ
“フェリス”: その様子だと、書かれてたことは本当みたいだけど…… 念のため、フェネちゃんに確認してもいいかにゃ?
“スバル”: うぐっ…… レムは俺に甘々ではあるが、フェネは俺に超絶辛口……
“スバル”: フェネに確認されると、レムの甘々評価が覆される可能性がたけぇ
“フェリス”: きゃはは スバルきゅんってば、 “甘々評価”って自分で言っちゃってるじゃない
“フェリス”: やっぱり、スバルきゅんの評価は、 レムちゃんの手紙の話半分ぐらいがちょうどよさそうだネ
“フェネ”: 残念ながらフェリス女史 スバル氏は“評価”と呼べるような結果は残していません
“フェネ”: フェネから言わせると、“話半分”でも過大な評価だと考えます
“フェリス”: それじゃ、半分の半分ぐらいにしておこっかなー あんまり褒めると、スバルきゅんってば調子に乗っちゃうしネ
“スバル”: “あんまり褒めると”って、俺には褒められてた実感がねぇよ! むしろ、けなされてた印象だ!
“スバル”: 再会して早々“弱いだけ”とか言われてたしね!
“アル”: おいおい、後方組はなんだかすげぇ楽しそうだな 決戦の最中だっつーのに、緊張感の欠片もねぇ
“レム”: スバルくんが楽しそうでよかったです これもクルシュ様たちが駆け付けてくださったおかげですね
“クルシュ”: 待たせてしまい、悪かった だが、間に合ったようで何よりだ
“ユリウス”: ええ、お越しいただき、大変助かりました
“ユリウス”: 恥ずかしながら、 あの男が放つ大量の『異形』に苦戦していたところです
“クルシュ”: 恥じることなどないぞ、ユリウス・ユークリウス
“クルシュ”: 『最優の騎士』たる卿が苦戦しているのだ あやつがそれだけの相手ということだろう
“クルシュ”: 私も気を引き締めて戦わせてもらう
“エミリア”: ええ、あの人は強敵よ ページから自由自在に『異形』を呼び出せるわ
“ヴィルヘルム”: 自由自在に『異形』を…… 確かに厄介な相手ですな
“ヴィルヘルム”: ですが、世界を浄化しようとしている輩を 野放しにしておくわけにはいきません
“クルシュ”: その通りだ、ヴィルヘルム あの者の悪行は我々がここで終わらせる
“仮面の男”: クククククッ グハハハハッ カルステン公、あなたは私が思っていた通りの方だ
“仮面の男”: これで役者は揃いました 私が全力でお相手させていただきます
“仮面の男”: ですが、その前に、一つ約束を果たさせていただきましょう
“スバル”: ……約束? それってもしかして素顔を晒すって件か?
“スバル”: クルシュさんたちがきたら、 仮面を外してもいいってお前は言ってたもんな
“アル”: そういやそうだったぜ
“アル”: あんたは仮面にこだわりなんか持ってなくて、 外すこと自体はやぶさかじゃねぇって態度だった
“アル”: んで、外す条件だった公爵は到着したんだ とっとと仮面を外してもらわねぇとな
“クルシュ”: 到着したばかりで話を完全に理解したわけではないが
“クルシュ”: そのような約束をしているのであれば、 卿には約束を果たしていただこう
“クルシュ”: これから葬る相手の顔は、 私もしっかりと確認しておきたいのでな
“仮面の男”: ククク…… 無論、そのつもりですよ 私もスバル殿が驚く顔を一刻も早く拝見したい
“スバル”: ……スバル殿?
ナレーター: スバルは男が発した“スバル殿”という呼び方に違和感を覚える
ナレーター: これまで仮面の男はスバルを“貴方”と呼び、 名前で呼んだことは一度もなかったのだ
“スバル”: お前…… 俺のことを初めて名前で…… それにその呼び方は……
“スバル”: お前があいつだとすると…… 確かに色々辻褄が合う…… 物語をぶっ壊した立役者にアルの名を挙げるのも納得だ……
“スバル”: でも…… まさか、そんなはずは……
“仮面の男”: いい…… 実にいい…… 本当に望み通りの表情です 正体の明かし甲斐があります──
ナレーター: 一堂の視線を一身に集め、仮面の男は満足げに頷く
ナレーター: そして、仮面を外すと同時に、 男は髪色や眉だけでなく服装まで一変するのだった──
“ガーディー”: どうも、スバル殿 この姿でお目にかかるのはお久しぶりですな
“スバル”: ──が、ガーディー、お前!
“スバル”: お前が全部裏で糸を引いてたのか! 味方のふりして、俺たちをずっと騙してやがったんだな!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_10

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■10話 タイトル:勝利宣言はまだ早い 更新日:2022/05/12

ナレーター: 世界の浄化を試みる仮面を着けた謎の男
ナレーター: その男が仮面を取り素顔を晒したことで、 ガーディーが宿敵仮面の男であることが判明するのだった
“アル”: ──お前はあんときの芸術家!
“アル”: 二度とその面を拝みたくなかったんだが、 よもやあの仮面野郎がお前だったとはな!
“ガーディー”: これはこれはアル殿 貴殿にそこまでわたくしが嫌われていたとは……
“ガーディー”: おかげで、わたくしの完璧な計画に変更が生じてしまいました
“アル”: ハッ 変更が生じてる時点で、 お前の計画が完璧じゃなかったってことだろ
“アル”: そもそもお前のそういうところがオレはいけ好かねぇんだよ
“アル”: よくもいけしゃあしゃあと “完璧な計画”なんて宣(のたま)えるぜ
“アル”: 謙虚さってもんが、備わってねぇのか? ……なんて、お前に聞くだけ無駄だったな
“アル”: そもそも、お前がオレに嫌われてないわけねぇのに、 そんなこともわかんねぇんだからよ
“ガーディー”: はて? わたくしはアル殿が気分を害されるようなことを 何かしてしまったのでしょうか?
“アル”: したわ! むしろオレが気分を害することしかしてねぇだろ!
“アル”: 毎日毎日押し掛けてきては、 俺をないがしろにする発言ばっかしやがって
“アル”: 俺を蔑(さげす)んでいいのは、美女だけなんだよ そのことを忘れるな
“フェリス”: ありゃりゃ、あのアルっていう鉄仮面の人もなかなかだね
“フェリス”: ガーディーって人のことをとやかく言える 人格者には見えないんだけど、気のせいかにゃ?
“スバル”: 気のせいじゃねぇよ、フェリス “五十歩百歩”とはまさにこのことって感じだ
“スバル”: とはいえ、俺もガーディーからは散々酷い扱いをされた身 腹に据えかねるもんがあるのはアルと一緒だ
“スバル”: ガーディーは美がすべてって感じで、 美しくないもんには容赦しねぇからさ
“スバル”: まぁ、そのおかげで、リドが敵だってわかったんだけどよ
“スバル”: アルがガーディーを嫌ってなかったら、 リドが敵だってわかるのには、もっと時間が必要だったはずだ
“フェネ”: 確かにそうですが、雑談はこれぐらいにしておきましょう
“フェネ”: クルシュ女史たちが到着され、こちらは戦力が整いました 反撃に出るときです
“スバル”: ああ、そうだな
“スバル”: これまでは防戦一方だったが、クルシュさんやヴィルヘルムさんが 加わった戦力なら、十分攻めに転じられる
“スバル”: 次から次に『異形』を吐き出し続けてるページだって、 きっとどうにかできるはずだ
“フェネ”: 左様です
“フェネ”: あのページは、ガーディー氏からのマナの供給が止まれば、 『異形』を顕現させなくなるでしょう
“フェネ”: そして、その状態で『禁書』に封じることで、 完全に脅威を取り除くことができます
“スバル”: なるほど ガーディーを攻撃して、マナの供給どころじゃない状態にしつつ
“スバル”: 押し寄せる『異形』の波を切り抜けて フェネをページのところまで運べばいいんだな?
“スバル”: んでもって、フェネがページを『禁書』に封じれば、 この『異形』がうじゃうじゃいる状態を終わらせることができる
“フェネ”: 左様です
“フェネ”: 無論、 似たようなページをガーディー氏が使用する可能性はありますが
“フェネ”: 今の戦力があれば、 ガーディー氏にページを使う隙を与えないことも可能です
“スバル”: ──エミリアたん、レム、ユリウス、一旦下がってくれ!
“スバル”: クルシュさんとヴィルヘルムさんとアルには
“スバル”: エミリアたんたちに作戦を説明してる間、 戦線の維持をお願いしたい!
“エミリア”: わかったわ、スバル! 今、いくわね!
“レム”: はい、スバルくん! すぐに向かいます!
“ユリウス”: では、エミリア様、レムさん──
“エミリア”: ええ
“レム”: はい
“異形”: ウガガガガーーッ!
“クルシュ”: ──卿らの相手は、この私だ! この先には一歩もいかせん!
“ヴィルヘルム”: 私もお相手させていただきます
“アル”: 兄弟からのご指名だ しゃあねぇ、オレも相手になるぜ
“クルシュ”: はっ!
“異形”: ウゴッ! ウガガガ…………
“ヴィルヘルム”: ふんっ!
“異形”: グガッ! ウグググ…………
“アル”: あらよっと!
“異形”: ウギャッ! グガググ…………
“ユリウス”: ──なるほど、 我々はフェネさんをページのところまでお連れすればいいのだな?
“スバル”: ああ クルシュさんたちには、 ガーディーに向かって突っ込んでもらう
“スバル”: んで、ユリウスたちはフェネを連れてページまで走ってくれ
“レム”: ですが、そのページとはどこにあるのでしょう? 一見したところ、どこにも見当たりません
“スバル”: 確かに俺らが見つけるのは、かなりの難易度だけど、 こっちにはフェネがいる
“スバル”: 恐らくフェネには、ページの場所がわかってるはずだ
“フェネ”: 左様です フェネの指示通りに進んでいただければ、 ページには辿り着けますので、どうかご安心を
“レム”: なるほど、安心しました
“エミリア”: ええ、私も安心したわ ページの場所まで、案内よろしくね、フェネ
“スバル”: ってことで、他に質問がなけりゃ、 さっそく作戦開始ってことになるけど、大丈夫か?
“ユリウス”: ああ、問題ない
“レム”: はい、問題ありません
“エミリア”: 私も大丈夫よ、スバル
“スバル”: それじゃ、エミリアたんたちは、 急ぎフェネをページのところまで連れてってくれ
“スバル”: ──んで、クルシュさんたちはガーディーに突撃だ!
“スバル”: 『異形』どもを蹴散らして、 なんとしてもその刃をガーディーに届かせてくれ!
“クルシュ”: よかろう、その任、引き受けたぞ、ナツキ・スバル
“アル”: おいおい、そんなに簡単に引き受けて大丈夫か? 『異形』の野郎がうじゃうじゃいやがるってのに
“ヴィルヘルム”: アル殿、心配無用です クルシュ様には、容易(たやす)いことかと
“アル”: へー、容易(たやす)い、ね そんじゃ、公爵様のお手並みを拝見させていただきますか
“クルシュ”: ああ、そこで見ていてくれ 私の百人一太刀の威力をな──
“クルシュ”: はぁーーーっ!!
“スバル”: す、すげぇ!? クルシュさんの一撃で、一気に道が開かれたぞ!
“スバル”: あれなら、確実にガーディーまで辿り着けるはずだ!
“フェリス”: クルシュ様の百人一太刀の威力はすさまじいからね ヴィル爺も言ってたけど、あれぐらい容易(たやす)いことだよ
“フェリス”: “なんとか刃を届かせてくれ”みたいな謙虚なお願いじゃなくて
“フェリス”: あのガーディーって人を倒してくれって 頼んじゃってもよかったんじゃにゃい?
“フェリス”: クルシュ様だけじゃなくて、ヴィル爺までいるんだしさ
“スバル”: 知らなかったんだから、仕方ねぇだろ! 強いのは知ってたけど、まさかあそこまでだったとは驚きだよ!
“スバル”: とはいえ、あんまり欲をかく場面じゃねぇ気がする
“スバル”: 狙い通り、がんがん『異形』を顕現させてるページを封じられたら ここはオッケーってことにしておこう
“スバル”: ガーディーの奴は、 あえてクルシュさんたちの到着を待ってやがった
“スバル”: 色んな情報を掴んでるガーディーが
“スバル”: クルシュさんやヴィルヘルムさんの 強さを知らないわけないと思うし
“スバル”: クルシュさんたちが到着してから俺らがとる行動も、 あいつには想像できるはずだ
“フェリス”: へー、スバルきゅんってば、意外に慎重ー
“フェリス”: でも、フェリちゃんは あのガーディーって人についてあんまり知らにゃいし
“フェリス”: スバルきゅんがそう思うなら、それでいいと思うよ
“フェリス”: 足元をすくわれるのって、 大抵調子に乗って欲張ったりしたときだもんね
“スバル”: ああ、その通りだ
“スバル”: 性懲りもなく、何度も何度もそうやって 足元をすくわれてきた俺が言うんだから間違いねぇ
“スバル”: ここは慎重にいって正解だよ
“エミリア”: えーいっ!
“異形”: ウギッ! グガガガ…………
“ユリウス”: はっ!
“異形”: グガッ! ググググ…………
“レム”: はぁーーっ!
“異形”: ウグッ! ガグググ…………
“フェネ”: ──皆様、間もなくページです もうひと踏ん張りお願いいたします
“クルシュ”: はぁーっ!
“異形”: ウゲッ! グガガガ…………
“ヴィルヘルム”: はっ! はっ!
“異形”: グガッ! ググググ…………
“アル”: ほらよっと!
“異形”: ウグッ! ググガガ…………
“クルシュ”: ──高みの見物はもう終わりだ! お手合わせいただくぞ、カーディー!
“アル”: 待ってくれ、公爵 そいつの相手はオレがしたい
“アル”: 兄弟がオレをこっちの班に入れたのは、 きっとオレにそいつをぶちのめす機会を与えるためだ
“クルシュ”: わかった、卿に任せよう ヴィルヘルムもそれでいいな?
“ヴィルヘルム”: はっ アル殿、お任せいたします ですか、どうかお気を付けて 油断は禁物ですぞ
“アル”: ああ、わかってる 色んな意味で、こいつはただ者じゃなさそうだしな
ナレーター: ──アルとガーディーの決闘が開始された頃
ナレーター: フェネを連れたエミリアたちは、 ページの元に到着しているのだった
“フェネ”: ページへのマナの供給が止まりました 急ぎ、『禁書』へ封じます
“エミリア”: ええ、頼んだわ、フェネ
“レム”: はい フェネさん、お願いします
“スバル”: ──よっしゃ! フェネがページの封印に成功したぞ!
“フェリス”: 鉄仮面の人はちょっと苦戦してるけど、 マナの供給を止めるのには成功したみたいだネ
“フェリス”: あとはあの鉄仮面の人が……って、 ちょっと押されはじめてにゃい?
“スバル”: まぁ、あいつは徹夜明けのうえに、ずっと戦い詰めだったからな
“スバル”: しかもおっさんだし、とっくに体力の限界を迎えてるはずだ
“フェリス”: スバルきゅんってばヒドい 老人に無理させたらダメじゃない
“スバル”: 老人扱いするお前の方がヒドいだろ! アルは歴としたおっさんだが、“老人”じゃねぇよ!
“スバル”: それに、あいつには恨みを晴らすチャンスをあげたかったんだ ガーディーに対して、色々思うところがありそうだったからさ
“スバル”: ……とはいえ、アルの奴、一対一の決闘はもう諦めたみたいだな クルシュさんとヴィルヘルムさんが戦いに参加してる
“スバル”: さらに、ページ封じ班のエミリアたんたちも向かってるし、 もうガーディーの奴はおしまいだ
“スバル”: ここからの逆転はもはや不可能! 俺たちは勝ったんだよ!
“スバル”: ひとっ走りしてもらったフェルトにはわりぃが、 これにて終幕だな!
“フェリス”: 『異形』をたくさん呼び出してたページは封印できたけど、 勝利宣言はまだ早い気がするにゃ、フェリちゃん
“スバル”: やった…… やってやった…… ついに……! ついに俺は……!
“フェリス”: やれやれ、完全に自分の世界に浸っちゃってるね
“フェリス”: 散々足元をすくわれてきたって言ってたのに、 やっぱりスバルきゅんはスバルきゅんみたい
“フェリス”: フェリちゃんには嫌な予感しかしにゃいんだけど…… ホントに終わったのかにゃ……?

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_11

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■11話 タイトル:すべては筋書き通り 更新日:2022/05/24

ナレーター: スバルたちはプリシラが統治するバーリエル男爵領内で、 世界の浄化を謳(うた)うガーディーとの最終決戦を迎えていた
ナレーター: テンミツで開かれた闇オークション
ナレーター: そこに現れ、出品された『禁書』のページをすべて落札し、 ことあるごとにスバルたちを妨害していた仮面を着けた謎の男
ナレーター: その男の正体がアルビスで出会った 絵本作家エドガーを慕う芸術家のガーディーであることが判明し
ナレーター: リドアの行動も含め、様々なことが、 腑に落ちる状態になりつつあるのだった
“ユリウス”: ──ガーディー殿、無駄な抵抗はやめていただこう
“エミリア”: 『異形』をたくさん出してたページは『禁書』に封じたし、 出てきてた『異形』もみんな倒したわ
“エミリア”: ガーディー、もうおしまいにしましょう
“レム”: ガーディー様、 確かにここにはラインハルト様はいらっしゃいません
“レム”: ですが、これだけの戦力を相手に ガーディー様が勝てるとはとても思えません
“レム”: お持ちのページを大人しく渡し、 投降されることをお勧めいたします
“アル”: だな お前さんが案外やることは認めてやるけど、 さすがに多勢に無勢だ
“アル”: しかもここに集まってるのはただの“多勢”じゃねぇ お前に勝ち目はねぇよ
“ガーディー”: アル殿 わたくしとの勝負はどうなったのです? わたくしとアル殿は一対一の勝負をしていたはず
“ガーディー”: それが何故、 “多勢に無勢”などという状態になってしまっているのでしょう?
“アル”: おいおい、痛いとこ突いてんじゃねぇよ そんなの、お前がオレよりも強かったからに決まってんだろ
“アル”: 軟弱な芸術家野郎かと思ったら、マジ強くて驚いたぜ
“クルシュ”: アル、私は卿の判断を評価している 無謀と勇敢は違うからな
“クルシュ”: それに挑むときと同様、引くときにも多くの勇気がいる
“クルシュ”: ……いや、“引くとき”の方が、 より多くの勇気を必要とするかもしれない
“アル”: いやいや、公爵みたく立派な人間だったら、 そうなのかもしれねぇけど
“アル”: 生憎オレはメンツだの誇りだのとは無縁な人間なんでね 引くことに勇気なんて必要としねぇ
“アル”: 逃げることには、なんの抵抗もねぇぜ
“クルシュ”: ふっ そうか ならば、そういうことにしておこう
“アル”: ああ、そうしておいてくれ ダメキャラの方がオレには合ってるんでね
ナレーター: そう言ってアルが肩をすくめた直後──
“ガーディー”: ……っ
ナレーター: ガーディーは懐に手を忍ばせ、何かを取り出そうとする
ナレーター: だが──
“ヴィルヘルム”: はっ!
ナレーター: すかさずヴィルヘルムがガーディーを牽制し、 ガーディーの動きを止めるのだった
“ヴィルヘルム”: 次に動いたら、容赦はしません “降伏の意思なし”と判断させていただきます
“フェリス”: フェネちゃん、おかえり 見てただけのスバルきゅんと違って、大活躍だったネ
“フェネ”: お褒めいただき、ありがとうございます
“フェネ”: そして、フェリス女史のおっしゃる通り、 見ていただけのスバル氏と違い、フェネは大活躍でした
“スバル”: どうして俺を引き合いに出す必要があんだよ! 確かに見てただけだけどさ!
“スバル”: とにかく、あいつとの戦いにケリがついてよかったぜ この状況からの逆転は、さすがに不可能だもんな
“フェネ”: ……ケリがついた? それはなんの冗談です、スバル氏
“フェネ”: ──あの男を葬らない限り、この戦いは終わりません
“スバル”: えっ……
“スバル”: ほ、葬るって、お前こそなんの冗談だよ! 大人しく投降するなら、命まで奪う必要はねぇだろ!
“フェネ”: 残念ながらスバル氏 仮に大人しくあの男が投降したとしても、 その態度を信用することはできません
“フェネ”: 必ずや、あの男は世界の浄化に向け再び動き出すでしょう
“フェリス”: でも、フェリちゃんは、あのガーディーって人が投降するにゃら、 法に則って裁くべきだと思うな
“フェリス”: ここで殺しちゃうのは、違うと思う
“スバル”: そうだぜ、フェネ 殺しちまうのはやりすぎだ
“フェネ”: フェリス女史、スバル氏、あの男に容赦は不要です その甘さに付け入られ、必ずや後悔することになります
“フェネ”: ──ヴィルヘルム氏! その男に投降の意思はありません! 容赦は不要! 今すぐとどめをおさしください!
“ヴィルヘルム”: ──っ! ……クルシュ様?
“クルシュ”: 待て、ヴィルヘルム
“クルシュ”: ──フェネ、卿が“投降の意思なし”と断じる根拠はなんだ?
“クルシュ”: この男にはこの男の言い分があり、 悪行に至る過程には、情状酌量の余地があるやもしれぬ
“クルシュ”: たとえ悪人であったとしても、簡単に命を奪うべきではない
“ガーディー”: クククク…… ハハハハ…… このわたくしが“悪人”ですと? 勘違いも甚だしい
“ガーディー”: それにフェネ嬢がおっしゃる通り、 わたくしに投降の意思はありません
“ガーディー”: なぜなら、投降の必要などないからです──
ナレーター: 突如出現した強烈な光がスバルたちの視界を奪う
ナレーター: そして──
ナレーター: ゆっくりと戻る視界の中に、“それ”は佇んでいた
“スバル”: ……“こわいまもの”?
“フェリス”: あれが……そうなんだね……
“フェネ”: くっ…… 予めあの場所にページを仕込んでいたようです……
“スバル”: 全部、あいつの筋書き通りってわけか…… このタイミングで顕現するよう、仕組んでやがったんだな……
“スバル”: ページが自然に吸収する分を考慮してマナを満たしておせば、 時限爆弾的な使い方が可能だ
“スバル”: 一時間後に顕現させたきゃ、あと一時間でいっぱいになるって ところまでマナを入れて、放置すりゃいいんだもんな
“スバル”: そして、そうしておけば、 自分がマナを供給できない状態になっても
“スバル”: マナを自然吸収したページが、勝手に『異形』を顕現してくれる
“ガーディー”: ふっ……
“クルシュ”: ──くっ! あれが……! それにあの男も……!
“ヴィルヘルム”: 申し訳ありません、クルシュ様…… 不覚にも一瞬の隙を突かれ、逃げられてしまいました
“ガーディー”: 残念ながら、すべてがわたくしの筋書き通りです 貴殿らにわたくしは倒せない
“エミリア”: でも、私たちは負けるわけにはいかないわ
“レム”: はい 世界の浄化など、レムが絶対にさせません
“ユリウス”: 無論、私もだ ガーディー殿、あなたの企(たくら)みは阻止させてもらう
“ヴィルヘルム”: 私も不覚を取ったままでは終われませんな 次はお命を頂戴するかもしれませんが、どうかご容赦を
“アル”: しゃあねぇな こういうのは柄じゃねぇんだが、オレも精一杯戦うぜ
“クルシュ”: ご覧の通りだ、ガーディー “こわいまもの”が顕現しようと、我々は臆したりしない
“クルシュ”: 全身全霊で戦い、“こわいまもの”ともども 卿の企(くわだ)てを打ち砕かせてもらう

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Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■12話 タイトル:向こうの正義、こっちの正義 更新日:2022/05/24

“こわいまもの”: …………
“スバル”: ちくしょう…… ついに“こわいまもの”が出やがった……
“スバル”: あれがすげぇ『異形』であることは一目瞭然だ
“スバル”: これまでに何体も『異形』を見てきたけど、 別格な感じが半端ねぇ……
“フェネ”: くっ…… やはりあの『異形』との対決は避けられませんでしたか……
“フェリス”: 確かに強そうだけど、こっちにはクルシュ様にヴィル爺、 ユリウスにエミリア様にレムちゃん
“フェリス”: それに、アルっていう鉄仮面の人までいるんだから、きっと大丈夫
“フェリス”: みんないい顔してて、負けるつもりなんて全然にゃさそうだし
“クルシュ”: ──アル、卿にはガーディーを頼みたい 再びページを使い、『異形』を出されては厄介だ
“アル”: わかったぜ、公爵
“アル”: あいつとは決着を付けなくちゃならねぇ なんとかやってみるよ
“アル”: まぁ、倒すまでは無理かもしれねぇけど、 ページを使わせねぇぐらいはできるはずだ
“ユリウス”: アル殿 もし不安があるようであれば、 私の準精霊たちを護衛におつけしますが、いかがいたしますか?
“ユリウス”: 今はフェネさんの護衛に当たらせていますが、 あなたにこそ準精霊たちの力は必要なのかもしれない
“アル”: そいつはありがてぇ
“アル”: タイマン勝負をあっさり放棄した時点で、 オレには恥も外聞もねぇよ
“アル”: 遠慮なく援護をつけさせてもらう オレだけの力じゃ危ういのは確かだからな
“クルシュ”: なるほど…… ユリウス・ユークリウス 卿が本領を発揮できなかった理由はそれか
“クルシュ”: 準精霊たちをフェネの護衛に当たらせていたのであれば、 卿の苦戦も頷ける
“ユリウス”: フェネさんを守ると、スバルとは約束しましたので
“ユリウス”: それに…… リドアさんを相手にした際は、 不覚にも、すべてを出し切ることに迷いがあったかもしれません
“アル”: えっとよ 準精霊さんたちをオレが借りちまっていいのか?
“アル”: あのリドアって嬢ちゃんの場合は、 曲がりなりにも一緒に旅した仲だ
“アル”: 手心を加えたくなっちまう気持ちはわからなくねぇが、 今回は何の所縁(ゆかり)もねぇ“こわいまもの”ってのが相手だ
“アル”: すべてを出してぶっ倒すことに、迷いなんてねぇだろ
“ユリウス”: ガーディー殿に余計な真似をさせないことも大切です 遠慮の必要はありません
“ユリウス”: ですが、もしもの場合は、準精霊たちの守りは外させていただく それでいかがでしょう?
“アル”: ああ、問題ねぇよ “こわいまもの”をぶっ倒すのが、 最優先に達成しなきゃならねぇミッションだからな
“クルシュ”: では、アル、ガーディーは卿に任せた
“アル”: おお、任されたぜ、公爵
“クルシュ”: 残りの者は私とともに“こわいまもの”と戦ってくれ
“ヴィルヘルム”: はっ! 喜んでお供させていただきます
“エミリア”: クルシュさん、私も頑張るわ
“レム”: レムも全力で“こわいまもの”と戦います
“ユリウス”: クルシュ様、無論、私もです
“クルシュ”: ──フェリス! 我々に負傷者が出た際は頼んだぞ!
“フェリス”: もちろんです、クルシュ様! フェリちゃんにお任せください!
“フェリス”: 誰かが怪我をしちゃった場合は、 フェリちゃんがちゃちゃっと治しちゃいますネ!
“ガーディー”: ──クククククッ! ハハハハハッ! いいですね! とてもいい!
“ガーディー”: クルシュ嬢やヴィルヘルム殿の到着を待った甲斐がありました!
“ガーディー”: 貴殿らは自信に満ちたとてもいい表情をしている!
“ガーディー”: その顔が絶望に歪むかと思うと、 わたくしはゾクゾクしてしまいます!
“スバル”: 絶望に歪む顔を想像してゾクゾクするとか、 完全に悪者の台詞じゃねぇか
“スバル”: とても正義の味方を自称する奴の言葉とは思えねぇ しかも物語の主人公だっていうならなおさらな
“フェネ”: ですが、“正義”とは立場によって変わるもの スバル氏の正義が絶対ではありません
“スバル”: 向こうには向こうの正義があって、 それはこっち側の正義に劣るわけじゃねぇってことか?
“スバル”: たとえ人類を滅ぼそうとしてる相手であってもさ
“フェネ”: 左様です
“フェネ”: 人は殺してはいけないが、 『異形』や『変異体』であれば殺しても良い
“フェネ”: というものがスバル氏たちの“正義”なのだとしたら、 フェネとしては冷笑を禁じ得ません
“フェリス”: 可愛い顔に似合わず、なかなか厳しいことを言うね、フェネちゃん
“フェリス”: フェネちゃんの今の言葉は、フェリちゃんには
“フェリス”: 向こうの正義も酷いけど、 こっち側の正義も同じぐらい酷いっていう風に聞こえるかにゃ
“フェリス”: “正義”ってすごく崇高なものに思われがちだけど、 フェネちゃんは全然そうは思ってない感じでさ
“フェネ”: フェネは“正義”にはあまり興味がありません
“フェネ”: 正直なところ、あの男が人間を滅ぼそうが、 フェネにはどうでもいいのです
“フェネ”: フェネとしては、四散したページを 『禁書』に封じることができれば、それでいい
“フェネ”: そうすることで、世界を浄化するという あの男の目的を阻止することになるのかもしれませんが
“フェネ”: それはあくまで結果的にそうなるというだけです
“フェネ”: 仮に、『禁書』にページを封じることが、 人々の破滅に繋がるのだとしても
“フェネ”: フェネは変わらずページ集めに勤(いそ)しんでいたでしょう
“スバル”: くっ…… そういえば、お前はそういう奴だったよ…… お前は人が嫌いだもんな
“フェリス”: こらこら、スバルきゅんってばいじけないの
“フェリス”: 正義について興味がないっていうのは、その通りだと思うけど、 人のことが嫌いじゃにゃいでしょ、フェネちゃんは
“フェリス”: だってフェネちゃん、スバルきゅんのことが大好きじゃにゃい
“スバル”: ──なっ!?
“フェネ”: …………
“スバル”: いやいやいや、ないないない!
“スバル”: 俺のことを嫌ってることはあっても、 好きだなんてあり得ねぇだろ!
“フェリス”: いやいや、スバルきゅんこそ何言ってるの?
“フェリス”: フェネちゃんは嫌いな人となんて、 行動をともにしたりしにゃいでしょ
“フェリス”: いつも一緒にいてくれる それが答えだとフェリちゃんは思うにゃ
“フェリス”: って、ごめん、フェネちゃん これ、もしかして秘密だった?
“フェネ”: スバル氏は甚だしい勘違いをするため、 言わないでおいていただけると助かりました
“フェネ”: それに、フェネはスバル氏のことが“大好き”なのではありません
“フェネ”: スバル氏とともに行動をするのは、 スバル氏のことが放っておけないからです
“フェネ”: スバル氏には力がなく、一人では何もできません
“フェネ”: 口を開けば余計なことしか言わず
“フェネ”: たまに役に立ったかと思えば、 すぐに調子に乗り、結局事態を悪化させてしまいます
“フェネ”: 完璧であるフェネとの違いに、いつも驚かされてばかりです
“フェリス”: あはは 本当にスバルきゅんには、 驚かされてばっかりだよね
“フェリス”: でも、いい意味での驚きも、きっとあるんじゃにゃいかな?
“フェリス”: じゃないと、 こんなにスバルきゅんの周りに、人が集まるわけないもの
“フェリス”: まあ、みんなスバルきゅんのことが好きで 集まってるわけじゃにゃくて
“フェリス”: フェネちゃんが言うように、 スバルきゅんのことが放っておけないだけかもしれにゃいけど
“スバル”: 待て待て、結局“フェネが俺を大好き”って話は、 どこいったんだ?
“スバル”: “いい意味での驚き”って部分も、 “放っておけないだけ”って結論で消えちまったし
“フェリス”: まあまあ、これだけの人が、スバルきゅんのことを 放っておけないって思ってくれてるんだからいいじゃにゃい
“フェリス”: スバルきゅんは、すごく幸せ者だよ
“フェリス”: それに、“大好き”って表現は間違ってたけど
“フェリス”: フェネちゃんだって スバルきゅんのことを嫌いなわけじゃにゃいんだからさ
“スバル”: “大好き”からずいぶんな格下げ!? まぁ、嫌われてないだけよかったけど!
“スバル”: それに、フェネは口ではああ言ってるけど、 人のことが嫌いってわけじゃない気がするよ
“スバル”: むしろ──
“フェネ”: スバル氏 今は余計なお喋りをしている場合ではありません そのことをお忘れなく
“フェネ”: 緊張感を持ち“こわいまもの”の攻撃に備えてください もしくは、尻尾を巻いて逃げることをお勧めします
“スバル”: ハッ 馬鹿言え ここまできて逃げられるかよ あいつが描いた物語の結末をしっかり見届けさせてもらう
“フェリス”: だったら、気を引き締めてね、スバルきゅん
“フェリス”: 死んじゃったら、 いくらフェリちゃんでもどうすることもできにゃいから
“スバル”: ああ 役立てなくてわりぃが、 攻撃に巻き込まれないよう、精一杯頑張らせてもらうぜ、フェリス

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Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■13話 タイトル:本当の強さ 更新日:2022/05/24

ナレーター: はじまってしまった“こわいまもの”との戦い
ナレーター: クルシュ、ヴィルヘルム、ユリウスに加え、 エミリアやレムといった精鋭が揃っているものの
ナレーター: “こわいまもの”の防御力は高く、 剣はもちろん、魔法ですらダメージを与えることはできなかった
“クルシュ”: くっ…… 生半可な攻撃は、どうやら通用しないようだ
“エミリア”: ええ 魔法も全然きいてないわ……
“ユリウス”: 奴が身に着けた鎧…… あれがすべての攻撃を防いでいる
“レム”: はい…… あの鎧は打撃も魔法もどちらも防ぐようです……
“ヴィルヘルム”: さらに、攻撃もかなりの威力です まともにくらえば、ただでは済まないでしょう
“こわいまもの”: ……!
“レム”: ──エミリア様!
“エミリア”: きゃっ!
“クルシュ”: ──エミリア、大丈夫か?
“エミリア”: ええ レムのおかげで大丈夫よ!
“レム”: はい、なんとかお救いすることができました
“こわいまもの”: ……!
“ユリウス”: ──当たりはせん!
“こわいまもの”: ……!
“ヴィルヘルム”: ──老いぼれも、まだまだ動けることを証明しましょう! はっ
“クルシュ”: どうやら出し惜しみしている場合ではなさそうだ ──ユリウス・ユークリウス!
“ユリウス”: はっ! お任せください!
“ユリウス”: ──アル殿! 少々準精霊たちをお借りいたします!
“アル”: そもそもオレが借りてる側だ、遠慮はいらねぇ! 『最優の騎士』様の本領を発揮しちまってくれ!
“ユリウス”: では、イア、クア、イク、アロ、イン、ネス! 皆、私に力を──
“スバル”: な、なんだ!? ユリウスの剣が光りはじめたぞ!
“フェリス”: ユリウスは『クラウゼリア』を放つつもりだよ、スバルきゅん
“スバル”: クラウ……ゼリア……? なんだよ、それ?
“フェリス”: 準精霊たちの力を借りた、とっても強い技だよ
“フェリス”: 見たことがないんだったら、 スバルきゅんはユリウスの本当の強さを知らにゃいことになるね
“スバル”: 準精霊はフェネの守りに当たってたみたいだからな
“スバル”: リドとの戦いで、 ユリウスは準精霊の力を借りられなかったんだと思う
“スバル”: それでもすげぇ強さだったのに、 そんな隠し玉があったなんて驚きだよ
“フェリス”: 曲がりなりにもユリウスは、 『剣聖』のラインハルトと並び称される騎士だからね
“フェリス”: そうなるのには、 それなりの理由があるってことだよ、スバルきゅん
“スバル”: そいつは頼もしいぜ! 『クラウゼリア』、マジ期待大だ!
“クルシュ”: ──いくぞ、ユリウス・ユークリウス! エミリア、レム! 卿らも魔法を叩きこんでくれ!
“エミリア”: わかったわ、クルシュさん!
“レム”: クルシュ様、承知しました!
“クルシュ”: ──はぁーーっ、百人一太刀!!
“ユリウス”: ──クラウゼリア!!
“エミリア”: ──えーーいっ!!
“レム”: ──アル・ヒューマ!!
“スバル”: やったのか……?
“フェネ”: とても強力な一斉攻撃…… あの威力であればあるいは……
“ガーディー”: クククク…… ハハハハ……
“アル”: おぉ、どうした? あまりにもすげぇ攻撃に、 ビビッて正気を保てなくなったか?
“クルシュ”: 手応えは……あった
“ユリウス”: あの攻撃を受ければ、いくら“こわいまもの”といえど……
“エミリア”: 倒せた……かしら?
“レム”: あの攻撃を受けて、さすがに無傷ということは……
“こわいまもの”: …………
“ヴィルヘルム”: ──ぬぐぐっ、奴め! あの攻撃を受け無傷とは信じがたい!
“クルシュ”: くっ……
“ユリウス”: まさか……っ そんな……っ
“エミリア”: 確かに当たったはずなのに……
“レム”: レムの全力の魔法が……
“ガーディー”: ククククッ! グハハハッ! いい! 実にいい表情です!
“ガーディー”: きっとエドガー様もお喜びになるでしょう!
“ガーディー”: 貴殿らはここで死に、続いて憎き帝国が滅びるのです!
“ガーディー”: ルグニカもカララギもグステコも、 人間が築いたものはすべて、この世から消え去るでしょう!
“スバル”: くっ…… くくっ…… あの攻撃でノーダメージとか、マジでどうかしてやがる……
“スバル”: それに、“憎き帝国”ってどういうことだ……? 気になって、聞き流せねぇ……
“アル”: なぁ、勝利の予感に心振るわせてるとこ、わりぃんだが、 一個聞いてもいいか?
“ガーディー”: “予感”などというあやふやなものではありません わたくしは勝利を確信しております
“ガーディー”: そして、貴殿らがあの言葉を聞き流せないことも織り込み済みです
“ガーディー”: 貴殿がわたくしに聞きたいこと、それは──
“ガーディー”: わたくしが憎きヴォラキア帝国に抱く、 憎悪の原因についてですね?
“アル”: ああ 実はお前が……正確にはお前が扮した仮面野郎がだけど
“アル”: “物語の終演は帝国で”みたいなことを言ったときから、 気にはなってたんだよ どうして帝国?ってよ
“アル”: そこんとこ、なんか訳ありなんだろ?
“ガーディー”: 偉大な絵本作家エドガー様の不遇な生涯 あの方があのような生涯をお送りになったのは
“ガーディー”: 偏(ひとえ)に帝国、 そして人間が愚かであったからに他なりません
“ガーディー”: あれから二百年…… ついに…… ついに……
“ガーディー”: ──エドガー様の望みは叶えられ、物語は終焉を迎えるのです!

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Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■14話 タイトル:異能を持った絵本作家 更新日:2022/05/24

“ガーディー”: ──あれから二百年…… ついに…… ついに……
“ガーディー”: ──エドガー様の望みは叶えられ、物語は終焉を迎えるのです!
ナレーター: そう言うと感極まった表情で天を仰ぐガーディー
ナレーター: それからガーディーは、不遇の絵本作家エドガーについて、 語り始めるのだった
ナレーター: エドガーは絵本作家としての才能に恵まれ、 彼の作品の評価は徐々に高まっていった
ナレーター: だが、彼の絵本作家としての地位を確固たるものにしたのは、 その優れた絵本のデキではなく
ナレーター: 絵本から絵が飛び出すという奇妙な噂なのであった
ナレーター: その噂の広がりに合わせて、彼の名は帝国全土に知れ渡っていき、 エドガーの絵本の発行部数も伸びていった
ナレーター: 自分の絵本が多くの子どもたちに 読まれていることに幸せを感じていたエドガー
ナレーター: だが、エドガーにとって幸せなときは、そう長くは続かなかった
ナレーター: 描いたものを顕現させる異能
ナレーター: エドガーが持ったその能力に目を付けた帝国は、 エドガーを捕らえ、顕現する絵を戦争に利用する研究を始めたのだ
ナレーター: 子どもたちに夢や希望を与えるはずだった絵本……
ナレーター: だが、帝国がエドガーに与えたのは、 彼の理想とは程遠い役割だった
ナレーター: いつしか彼が描く絵本からは、かつての輝きが失われていた
ナレーター: それどころか、彼の作品には
ナレーター: 自分を不幸へと陥れた愚かな人間たちへの 恨みが込められるようになってしまっていたのだ
ナレーター: しかし、怨嗟を込めたエドガーの絵本は、 子ども向けらしからぬおどろおどろしい絵柄がウケ
ナレーター: さらに、描いた絵が顕現するという噂も相まって、 二百年前の帝国に一大ブームを巻き起こす
ナレーター: 『禁書』に収められた物語の数々は、 その強烈なインパクトから後世に語り継がれ
ナレーター: 若かりしエドガーが理想に燃えながら描き上げた絵本の存在は、 いつしか人々の記憶から忘れ去られているのだった
“スバル”: ──くっ 帝国はエドガーさんの能力を 軍事利用しようとしたわけだ
“スバル”: 描いた絵が出てきて敵と戦ってくれるなら、すげぇ戦力になる
“スバル”: なんせ、大した金もかけずに、 無尽蔵に戦力を生み出せるわけだからな
“フェリス”: フェネちゃん あのガーディーって人が話した話は本当?
“フェリス”: そんな貴重な能力を持った人なら、 丁重に扱ってもらえそうなものじゃにゃい
“フェリス”: にゃのに、エドガーって絵本作家の人は、 牢獄に監禁されて、失意の内に亡くなったんでしょ?
“フェネ”: そのことについて、フェネは記憶を取り戻しました そして、ガーディー氏の言った通りです
“フェネ”: エドガー氏はヴォラキア帝国に協力的だったとはとても言えず
“フェネ”: エドガー氏の扱いが酷いものだったのは、 そのことが影響していると推測されます
“スバル”: つまり……力ずくで言うことを聞かせようとしたわけだ
“スバル”: よりにもよって、子どもたちに夢や希望を提供する 絵本作家のエドガーさんに対して
“スバル”: 軍事利用の話を持ち掛けるなんて、 そりゃ、エドガーさんが非協力的なのも納得だよ
“スバル”: 自分の理想とは、真逆の要求だもんな
“フェネ”: 左様です、スバル氏 ヴォラキア帝国の要求は、 エドガー氏には受け入れがたいものでした
“フェネ”: また、ヴォラキア帝国がエドガー氏を冷遇したのは
“フェネ”: エドガー氏が亡くなるのであれば、それはそれで別に構わない という考えがあったからだと推測されます
“フェネ”: 描いたものを顕現できるという能力は脅威 いつ自国に仇をなす存在になるかわかりません
“スバル”: ──っ!
“スバル”: エドガーさんが帝国に反旗を翻(ひるがえ)した場合、 確かにすげぇ厄介だ
“スバル”: なんせ、紙とペンさえあれば、無尽蔵に兵力を生み出せるからな
“スバル”: しかも、そんなエドガーさんの力を他国が利用するかもしれない
“スバル”: エドガーさんが帝国に協力するかどうかは置いといても、 野放しにしておくわけにはいかないな
“スバル”: 捕らえて監禁するのは、 帝国からすると妥当な判断だったのかもしれない
“フェネ”: ……妥当な判断? スバル氏は今、“妥当な判断”と言いましたか?
“スバル”: あくまで帝国からしたらって話だ もちろん、人道的にはいい判断とはとても言えねぇ
“フェネ”: ですが、スバル氏は、 ヴォラキア帝国の行いに理解を示すのですね?
“スバル”: 違う! 理解を示したわけじゃねぇ! 理屈として腑に落ちたってだけだ!
“スバル”: 帝国がやったことは正しくないし、 エドガーさんにはすげぇ同情する
“スバル”: けど、権力を守るために、誰かを踏みつけても、 なんとも思わない奴がいるのは事実だよ
“スバル”: それはすげぇ悲しいことだけど、人の歴史がそれを証明してる
“アル”: なるほど、エドガーって作者が、人間を恨んでる理由はわかった
“アル”: 最初に滅ぼしたいのが帝国だってことについてもな
“アル”: けど、どうして牢獄に入れられてるような奴の作品が、 世に出回ったりしたんだ?
“アル”: 帝国がエドガーって作者の力を軍事利用しようとしたり、 そのまま牢獄でのたれ死んでくれって思ってたんだとしたら
“アル”: エドガーって作者の絵本を外に出す必要はねぇだろ
“アル”: もちろん、出回ったのは原本じゃなくて、 複写したものだとは思うけどよ
“クルシュ”: 確かにアルの言う通りだ
“クルシュ”: エドガーには恐らく、 『顕現の加護』のような特別な加護があったと推測できる
“クルシュ”: そして、その特別な力により、 不幸な人生を送ることになった点にも同情しよう
“クルシュ”: だが、そのような者の作品は、恐らく世には出ないはずだ 牢獄で描かれたものであるなら、なおさらな
“ガーディー”: クククク…… ハハハハ…… すべては復讐のためですよ
“ユリウス”: ……復讐のため、だと?
“ガーディー”: ええ、そうです 復讐のためです
“ガーディー”: 復讐を実現するために、自らの死後、 『遺作』を処分されるわけにはいかなかったのです
“ガーディー”: 貴殿らはすでにお気付きだと思いますが、 ページから顕現する“あれ”を制御することはできません
“ガーディー”: 無論、ページの影響で凶暴化する魔獣たちもです
“ガーディー”: それは致命的な欠点でした そのようなものを戦に投入するわけにはいかない
“ガーディー”: その欠点を克服するため、様々な実験が行われました
“ガーディー”: ですが結局、彼らは『異形』や『変異体』と呼ぶ存在を 意のままに操ることはできませんでした
“スバル”: つまり、『禁書』は役立たずの烙印を押されて、 処分されちまう可能性が高かったわけだ
“スバル”: 制御できないんじゃ、自国の戦力とは呼べねぇもんな
“スバル”: なのに、実際は処分されずに、 現在もこうして『禁書』は存在してる
“スバル”: そのことが、『禁書』の物語が 帝国内で広く知られるようになったことと関係してるんだな?
“ガーディー”: 帝国は憎き存在ではありますが、 一つだけ褒めるに値する点があります
“ガーディー”: それは、芸術に対して理解があるということです
“ヴィルヘルム”: 確かに、帝国の民は芸術に対する理解があり
“ヴィルヘルム”: 彼の国から名だたる芸術家が多く輩出されているのは、 それが理由だと聞いたことがあります
“レム”: はい、レムもそう聞いたことがあります
“レム”: 事実、詩吟や音楽はもちろん、絵画や物語などの傑作の多くは、 帝国で誕生しました
“アル”: つまり、『禁書』には芸術的な価値がすげぇあるってことを示して 廃棄処分を免れようとしたわけか?
“アル”: 芸術的に価値が高いもんなら、たとえ軍事利用できなくても、 処分しないって判断もあり得る
“アル”: んで、復讐のために描かれたもんだっていうのに、 まんまと処分されずに現在まで残ったんだな?
“ガーディー”: 実に愉快ではありませんか!
“ガーディー”: 愚民どもは、自らが滅ぼされるとも知らず、 『遺作』が存在し続けることを許したのです!
“ガーディー”: さすがエドガー様! 本当にエドガー様の物語は秀逸です!
“ユリウス”: だが、やはり腑に落ちない
“ユリウス”: 牢獄で描かれたエドガー殿の絵本は、 たとえ複写だったとしても、外部に出るはずがない
“ユリウス”: 実験に関わった者の誰かが、そのことに関係していない限りはな
“フェリス”: つまり、関係してたってことでしょ 関係者の誰かが複写して持ち出したんだよ
“フェリス”: じゃないと、ユリウスが言うように、 エドガーって人の作品が外に出るわけにゃいもの
“フェリス”: それで、狙い通りにエドガーって人の絵本は評価されて、 処分するのは惜しいってことになったんだと思う
“ガーディー”: ふふふふ…… 実験の関係者の中には、 エドガー様の異能ではなく、才能に惚れ込んでいる者もいました
“ガーディー”: 子どもの頃にエドガー様の絵本に触れ、 エドガー様の作品の素晴らしさを知っている者が
“スバル”: その人を利用して、外部に流出させたわけか?
“スバル”: よかれと思ってした行いが、 将来人類を滅ぼすことになるかもしれねぇのに
“スバル”: 何も知らずに、その人は復讐に巻き込まれたんだな?
“スバル”: エドガーって作者のことを尊敬してて、 純粋にその才能を評価してくれてたっていうのに
“ガーディー”: その者が死に、もうずいぶん経ちます 十分に義理は果たされました
“スバル”: その人が生きてる間は、 何もしなかったからオッケーってことにはならねぇだろ
“スバル”: その人はきっと、こんなことになって、 あの世ですげぇ悲しんでるはずだ
“ガーディー”: クククク…… その者に悲しむ資格などありませんよ
“ガーディー”: 確かに他の者たちより、彼はいくぶんマシだったかもしれない
“ガーディー”: ですが、 エドガー様が失意の内に牢獄で亡くなったことは変わらない
“ガーディー”: その者が本気でエドガー様を救おうとしていれば、 違った結果が訪れたはずだ
“スバル”: それは間違いなく強者の意見だよ 権力に楯突くのはそんなに簡単なことじゃねぇ
“スバル”: 絵本を複写して、外部に持ち出すのだって、 相当な勇気が必要だったはずだ
“スバル”: その人にとっては、それが精一杯だったんだよ
“ガーディー”: ──だから、なんなのですかな?
“ガーディー”: エドガー様が不遇な最後を迎えられたという事実は、 なんら変わらない
“ガーディー”: それを、その者が弱者だからという理由で、 水に流せとでも言うつもりですか?
“スバル”: いや…… それは…… けど……
“スバル”: ホント、エドガーさんには同情するけど、 “水に流してくれ”としか俺らには言いようがねぇ
“スバル”: 復讐なんて間違ってるし、 ましてや世界の浄化なんて話が飛躍しすぎだ
“スバル”: 頼む、ガーディー、考え直してくれ
“ガーディー”: ククククッ ハハハハッ 無論、お断りさせていただきます
“ガーディー”: そして、十分に時間を稼がせていただきました
“ガーディー”: 先程貴殿らがした攻撃の影響は、 すでに“こわいまもの”から失われています
“エミリア”: ……さっきの攻撃の影響?
“エミリア”: つまり、さっきみんなでした攻撃は、 ちゃんと“こわいまもの”に効いてたってこと?
“クルシュ”: どうやらそのようだ
“クルシュ”: 鎧には傷一つ見当たらなかったが、 中身についてはその限りではなかったのだろう
“ユリウス”: であれば、その中身が朽ちるまで、攻撃を続けるのみ
“ヴィルヘルム”: 老体に鞭打って、私も剣を振り続けさせていただきます
“アル”: お前は“こわいまもの”を回復させる時間を稼げて、 ラッキーって思ってるかもしれねぇけど
“アル”: 回復が必要ってことは、ちゃんと攻撃が効いてるってことだ
“アル”: そのことを教えてくれてありがとな おかげで、ウチの連中が前向きになったよ
“ガーディー”: ふふふ…… 絶望の際、最高の表情をしていただくためにも、 適度な希望は必要です
“ガーディー”: わたくしはそれを提供したにすぎない 礼には及びませんよ
“アル”: ハッ ずいぶん余裕でやがるな よく口が回りやがる
“アル”: 出会ったときから思ってたんだけど、 お前のそういうとこ、オレはマジで大っ嫌いだぜ

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Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■15話 タイトル:二度目の侮辱 更新日:2022/05/24

“クルシュ”: ──ヴィルヘルム! 卿に仕上げを頼みたい!
“ヴィルヘルム”: 承知しました、クルシュ様 皆様の攻撃の後、私が一撃を加えさせていただきます
“クルシュ”: ──では、もう一度いくぞ! ユリウス、エミリア、レム! 準備はいいか!
“ユリウス”: 問題ありません!
“エミリア”: いつでも大丈夫よ!
“レム”: レムも大丈夫です!
“クルシュ”: ──はぁーーっ、百人一太刀!!
“ユリウス”: ──クラウゼリア!!
“エミリア”: ──えーーいっ!!
“レム”: ──アル・ヒューマ!!
“ヴィルヘルム”: ──これで終わりにいたします! はぁーーっ!!
“スバル”: 今度こそやったか……?
“フェリス”: まだ足りないようなら、また総攻撃を仕掛けるだけだよ 効かないわけじゃにゃいって、もうわかってるんだし
“スバル”: ああ、そうだな
“スバル”: それに、あの攻撃をまともにくらったら、しばらく動けないはずだ 今回はヴィルヘルムさんの一撃も追加されてるし、なおさらな
“フェネ”: 確かに先程はそうでしたが…… そう思い通りには……
ナレーター: そうフェネが不安を吐露したときだった──
ナレーター: 土煙の向こうからいくつもの閃光が現れ、エミリアたちを襲う
“クルシュ”: ──退避! いったん奴から距離を取れ!
“レム”: エミリア様、危険です、下がりましょう!
“エミリア”: ええ、わかったわ、レム──
“ユリウス”: くっ……! やむを得ん──
“ヴィルヘルム”: くっ…… 仕留め損なったか……
“ヴィルヘルム”: わかりました、クルシュ様 いったん下がらせていただきます──
“こわいまもの”: …………
“アル”: 今度は効いてねぇだと? まさか、そんなはずは……
“ガーディー”: クククク…… あの子は学習能力にも長けておりまして、 あのような攻撃は、二度も通用しないのですよ
“スバル”: つまり、戦いながらどんどんレベルアップしていくわけか? 一度通じた攻撃も二度目は通じなくなる感じで……
“フェリス”: だとすると、かなり厄介だね……
“クルシュ”: くっ…… こちら側の攻撃を学習するだと……
“ユリウス”: 確かに、前回と違い、 今回は手応えのようなものを感じなかった……
“エミリア”: くっ…… このままじゃ……
“ヴィルヘルム”: 同じ攻撃を繰り返しても意味がありません…… 何か手を考えなければ……
“レム”: でも、いったいどうすれば……
“ガーディー”: ククククッ! ハハハハッ! いい! 実にいい! 本当に貴殿らはいい表情をされますな!
“ガーディー”: すべては筋書き通り! わたくしの思い描いた通りに物事は進んでいます!
“プリシラ”: ──おい、凡骨 貴様は誰の許しを得て、そのようなことを申しておるのじゃ?
“プリシラ”: この世界は妾の都合の良いようにできておるのじゃ 貴様の行いもその例に漏れぬわ 分をわきまえよ、凡骨
“ガーディー”: 凡骨……? このわたくしが……!
“アル”: おぉ、ウチの姫さんの登場かよ
“アル”: クライマックスでしっかり登場するあたり、さすが姫さんだぜ
“フェルト”: 待たせて悪かったな、兄ちゃん この姉ちゃんなかなかでよ 連れ出すのホント苦労したぜ
“フェルト”: まあ、なんかあれば兄ちゃんの命を差し出すことになってるから、 そこは勘弁してくれ
“スバル”: 毎度毎度、どうして俺の命が危機に晒されるんだよ!
“スバル”: これまではなんとかなってきたけど、 そろそろ本気でヤバい気がする!
“プリシラ”: 安心せい、凡愚 なかなか面白いものが見れそうじゃ 命だけは見逃してやる
“スバル”: “命だけは”って何!? まだまだ結構なリスクをはらんでるから、安心には程遠いかな!
“フェリス”: へー、ここでプリシラ様の登場とかって、ちょっと意外
“フェリス”: 登場しただけで場の雰囲気を一変させちゃうあたり、 さすがはプリシラ様だけど
“フェリス”: スバルきゅん、わざわざプリシラ様にお越しいただいて、 いったいどうするつもりにゃの?
“フェリス”: スバルきゅんが、 フェルト様にプリシラ様を連れてきてもらったんだよね?
“スバル”: ああ 俺がフェルトに頼んで連れてきてもらった
“スバル”: そして、俺がプリシラに期待すること── それは一つだけだ
“スバル”: ガーディーが描いた物語をぶっ壊してもらいたい
“スバル”: プリシラが盤上に載った時点で、 あいつの筋書き通りに進むはずがねぇ
“スバル”: そして、小さな誤差が新たな誤差を生み、 きっと向こうに隙が生まれるはずだ
ナレーター: プリシラがきたことで、一時的に雰囲気は一変されたものの
ナレーター: “こわいまもの”はあまりにも強く、 クルシュやユリウスやヴィルヘルムといった精鋭が揃いながらも
ナレーター: 事態を好転させることはできないのだった──
“こわいまもの”: …………
“クルシュ”: くっ…… 完全に我々の攻撃が効かなくなってしまっている……
“エミリア”: はぁ…… はぁ…… たくさん魔法をぶつけたのに、全然効いてないわ……
“レム”: レムの魔法攻撃も、物理的な攻撃も、 “こわいまもの”には通用しません……
“ユリウス”: 『クラウゼリア』だけでなく『クラリスタ』までも効かぬとは……
“ヴィルヘルム”: ぬぐぐっ…… 何か策を……
“プリシラ”: いつまでこのような下らぬ見せ物を続けるつもりじゃ? 妾の時間を浪費する罪、万死に値すると知れ
“プリシラ”: ──アル、戻るぞ このような場所、長居は無用じゃ
“アル”: おいおい、姫さん! 引くってマジかよ? こいつの動きを封じておかなきゃ、マズい気が……
“アル”: って、言うだけ無駄だな、姫さんにはよ
“ガーディー”: この状況で戦線を離脱されるとは、正気ですか、アル殿?
“アル”: それが姫さんの意思なら、従うまでだ それとも、オレに引かれたら困ることでもあるのか?
“ガーディー”: いえ、わたくしにはありません むしろ困るのは貴殿らのはず……
“ガーディー”: この状況で引くという判断に、わたくしは大きな疑問を感じます
“アル”: お前さんが困らねぇなら、別にいいじゃねぇか
“アル”: 姫さんが“引け”と言えば“引け”だ オレは姫さんの指示に従うのみだよ
“スバル”: 待て待て待て待て! お前は逃げたいだけだろ! ここで引くなんて俺は許さねぇぞ!
“スバル”: お前も何言ってんだよ、プリシラ! 即刻アルへの指示を取り消してくれ!
“プリシラ”: 黙れ、凡愚 貴様こそいつまでこのような下らぬ戦いを続けるつもりじゃ?
“ガーディー”: ……下らぬ戦い? 先程の“下らぬ見せ物”に続き、二度までも侮辱するとは──
“ガーディー”: いやはや、いくら麗しのプリシラ嬢といえども、 これは見逃すわけにはいきませんな
“ガーディー”: 貴殿から死んでいただくことにいたしましょう
“プリシラ”: ほう…… 貴様如きが妾をか?
“プリシラ”: アル 気が変わった 面白いものが見られそうじゃ、今しばらく見物するとしよう
“スバル”: け、見物って!? お前が殺されるかもしれねぇのに、何悠長なこと言ってんだよ!
“スバル”: しかも“面白いもの”って!? どういう神経してたら、そんなことが言えるんだ、まったく!
“フェリス”: (落ち着いて、スバルきゅん  スバルきゅんが取り乱しても意味にゃんてないでしょ)
“フェルト”: (そうだぜ、兄ちゃん あの姉ちゃんは無茶苦茶だけど、  あのガーディーって奴の様子が明らかに変だ)
“フェルト”: (アタシは、苦労して連れ出した甲斐はあったって思ってる)
“フェルト”: (ガーディーって奴は妙にイライラしてるし、  あんな状態じゃ、冷静な判断はできねーはずだ)
“スバル”: (確かに、さっきのアルとの会話も、すげぇ変だったよな……)
“スバル”: (アルが引いてくれたら、その分有利になるのに、  あいつはアルを引き留めやがった)
“ガーディー”: プリシラ嬢……! 貴殿という方はまったく……!
“ガーディー”: 正直に申しますと、わたくしは出会ったときから貴殿が嫌いでした 無論、アル殿、貴殿もです
“ガーディー”: 今にして思えば、わたくしが描いた物語に 変更が生じたのは、貴殿らとの出会いがはじまり……
“ガーディー”: まだ物語も序盤でしたので、あの際は見逃しましたが、 あのときに躊躇なく始末しておくべきでした
“アル”: おぉ、気が合うな やっぱオレらは嫌い合ってたわけだ
“アル”: それに、姫さんのことをナメすぎだぜ 三流作家のお前ごときに、姫さんの動きが読めるわけねぇだろ
“ガーディー”: ……三流作家? エドガー様の遺志を継ぐこのわたくしが……!
“ガーディー”: クククク…… ハハハハ…… そんなに死にたいのであれば、 プリシラ嬢ともども、貴殿も今すぐ殺して差し上げましょう──

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Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■16話 タイトル:遅れてきた理由 更新日:2022/05/24

ナレーター: ──ガーディーは苛立っていた
ナレーター: 完璧だったはずの計画
ナレーター: だが、様々な変更を余儀なくされ、 ついには計画を練り直すところまで追い込まれてしまった
ナレーター: それは、エドガーの遺志を完璧に遂行しようとしていた ガーディーにとって、許し難い事態なのであった
ナレーター: 無論、そのほとんどは取るに足らない些細な変更だった
ナレーター: しかし、スバルという若者が
ナレーター: 行き先をヴォラキア帝国からバーリエル男爵領に 変更した辺りから、雲行きは完全に怪しくなった
ナレーター: 原因は敬愛する絵本作家エドガーが、 若かりし頃に描いた初期の作品だった
ナレーター: エドガーの『遺作』に執着する彼にとって
ナレーター: ありきたりの絵本であるそれは、 軽蔑すべきエドガーの汚点ともいえる作品だった
ナレーター: よりにもよって、そんな作品のために、 エドガーが『遺作』に託した遺志は邪魔をされてしまったのだ
ナレーター: プリシラと行った『遺作』のページの譲渡交渉
ナレーター: あの交渉が決裂したときに、計画を変更し、 プリシラやアルを葬っておけば……
ナレーター: 二人を殺害してページを奪い、 屋敷を焼き払っておけば、このような事態にはなっていない
ナレーター: しかし、それにしても、あの若者はどうして、 エドガーの初期作品の存在を知っていたのだろう?
ナレーター: そもそも行き先の変更は、 その絵本の存在を知ったことが原因なのか?
ナレーター: ガーディーには、行き先の変更ありきで
ナレーター: それを実現するための方便として、 その絵本が利用されたように思えてならない
ナレーター: さらにあの若者は、 ここぞとばかり、『剣聖』ラインハルトまで呼びつけたのだ
ナレーター: まるで、すべてを知っていたかのように……
“ガーディー”: ──スバル殿 本来であれば、真っ先に貴殿を始末するべきでした
“ガーディー”: わたくしの物語を大きく変更たらしめたのは、紛れもなく貴殿だ
“ガーディー”: いやはや、エドガー様も人が悪い 貴殿のような方をお選びになるとは
“ガーディー”: 貴殿には利用価値があり、 真っ先に始末したくとも、そういうわけにはいかないのでね
“スバル”: ……俺に利用価値? どういう意味だ、そりゃ
“スバル”: エドガーって人が俺を選んだってのも、 身に覚えがなさすぎて、なんだか気持ちわりぃよ
“スバル”: フェネ お前にはわかるか? あいつが言った言葉の意味がさ
“フェネ”: …………
“スバル”: フェネ?
“フェネ”: 誠に残念ながら…… 思い出せそうではあるのですが、現時点ではわかりかねます
“プリシラ”: おい、凡骨 妾を葬るのではなかったのか? 遠慮はいらぬ、とっととやって見せい
“アル”: 待て待て姫さん
“アル”: せっかく矛先が兄弟に向いたんだ わざわざ掘り返さなくていいだろ
“アル”: って、もう手遅れな感じだけどよ
“ガーディー”: クククク…… ハハハハ…… その通りですな 貴殿が死ぬ順番に変更はありません
“ガーディー”: 先程も申しましたが、スバル殿には利用価値があります
“ガーディー”: 利用するかどうかは置いておくにしても、 彼を殺すのは貴殿やプリシラ殿の後になるでしょう
“プリシラ”: ──アル 言い残したことはないか? 聞いてやる あるなら申してみよ
“アル”: おいおい、一番手はオレで確定じゃねぇか まぁ、あいつとの距離を考えたら、そうなるのが妥当だけどよ
“ガーディー”: くっ…… この期に及んで勝手な真似を……!
“ガーディー”: ですが、いいでしょう アル殿、許可します
“アル”: んじゃ、一つだけ
“アル”: ──おい、兄弟! あの“こわいまもの”に 弱点があるって話は、いったいどこいきやがった?
“アル”: オレはずっと待ってたんだが、 兄弟がうんともすんとも言わねぇから、さすがに限界だ
“アル”: あるんだろ、弱点? 兄弟がそこんとこ教えてくれりゃ、万事解決じゃねぇか
“クルシュ”: それは本当か、ナツキ・スバル?
“ヴィルヘルム”: スバル殿 そのような情報があるのでしたら、 是非ともお知らせください
“スバル”: ──くっ! そ、それは……!
“プリシラ”: どうした凡愚 さっさと申せ
“スバル”: い、いや…… あるにはあるんだが…… その弱点を特定できてねぇっつーか……
“スバル”: 弱点を特定してたら、とっくにみんなに知らせてたっつーか……
“フェルト”: つまりどういうことだよ、兄ちゃん? ゴニョゴニョ囁いてねーで、はっきり言いやがれ
“スバル”: 弱点があることは確かだ! けど、“その弱点が何?”ってぇのはわかってねぇ!
“フェリス”: つまり、その弱点を突くっていうのは、 現時点じゃできないってことだね
“フェリス”: まずは弱点を特定しなきゃ
“エミリア”: そうなの 弱点はあるのは確かだけど、 フェネにも具体的なことはわからないみたい
“ユリウス”: なるほど…… 私の見立てでは、特定の属性に弱いというわけではなさそうだが
“ユリウス”: 情報が少なすぎる 弱点の特定には、かなりの時間が必要となるだろう
“クルシュ”: 六つの属性の準精霊たちを使役する卿が言うのだ 属性による有利不利がないことだけは確かだろう
“クルシュ”: 可能性としては特定の部位ということになるが…… 今からその箇所を特定するのはかなり難儀だ
“ヴィルヘルム”: そうですな…… あの強固な鎧が、その難易度をさらに上げている気がいたします
“レム”: ですが、ユリウス様のおかげで、一歩前進したことは確かです スバルくんであれば、きっとその場所を──
“ガーディー”: クククク…… ハハハハ…… レム嬢、何を悠長なことを言っているのですか?
“ガーディー”: もう手遅れですよ アル殿とプリシラ嬢を葬った後、 時を待たずして、貴殿らも後を追わせて差し上げます
“スバル”: ──クソっ! 俺がもっと早く言ってたら、 なんとかなる可能性があったのか?
“スバル”: 少なくとも、みんなの戦い方は変わったかもしれねぇ……
“フェネ”: いえ、そうなっていたらそうなっていたで、 向こうは結末を早めていただけでしょう
“フェネ”: こちらが弱点の有無を把握していることは、 すでにガーディー氏はご存じだったのですから
“フェネ”: リドア女史からの情報提供がなかったとしても、 ガーディー氏はあの戦いを一部始終見ていたと推測されます
“スバル”: けど…… 俺には考える時間があった…… 悠長に休憩して、飯を食ってた自分が恨めしいよ
“スバル”: 無駄な時間を過ごさずに考え抜いていたら、 もしかしたらあのヤローの弱点を特定できたかもしれねぇのに……
“フェルト”: 諦めるなよ、兄ちゃん 過ぎたことは仕方ねーけど、これからのことはどうにでもなるだろ
“フェルト”: 下らねー後悔してる暇があったら、今からでも必死に考えてくれ
“スバル”: フェルト……
???: フェルト様の言う通りだーぁとも 最後まで諦めないのが、君の唯一の取柄じゃなーぁいか
“スバル”: “唯一”ってのはさすがに失礼だろ! 俺にだって、あと一個や二個はあるよ、取柄!
“スバル”: 例えば── って、その声と喋り方は、ロズワール!
“ロズワール”: やあ、スバルくん クルシュ様からお声掛けいただいてね きてみたんだ
“ロズワール”: クルシュ様、お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした
“ロズワール”: 私もそれなりの身分故、 領地を空けるのに際し、多少の調整が必要でしたもので
“クルシュ”: いや、きてもらえただけで、 感謝させてもらうぞ、メイザース辺境伯
“クルシュ”: 恥ずかしながら、戦況は芳しくなく、卿の加勢はとても心強い
“スバル”: ……クルシュさんがロズワールにお声掛け?
“スバル”: つまり、クルシュさんたちの到着が フェルトやラインハルトから遅れたのは
“スバル”: ロズワールと色々ネゴってたからってこと?
“フェリス”: あれ? 言ってなかったっけ?
“スバル”: 言ってねぇよ! 正真正銘初耳だ!
“フェリス”: まーまーいいじゃにゃい おかげで、あのガーディーって人も出し抜けたんだからさ
“ガーディー”: ぬぐぐっ……! 筆頭宮廷魔導士のお出ましだと……!
“ガーディー”: どこまでエドガー様の遺志を、 わたくしをコケにするつもりだ……!
“アル”: なんだよ あのピエロさんの登場は想定外か? せっかく書き直した筋書きが、またまた崩れて残念だったな
“ガーディー”: ──おのれ! おのれ! おのれ! おのれ!
“ガーディー”: もはや順番などどうでもいい!
“ガーディー”: 今すぐ貴殿らをこの世から抹殺して差し上げます!

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_17

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■17話 タイトル:致命的な弱点 更新日:2022/05/24

“ガーディー”: ──今すぐ貴殿らをこの世から抹殺して差し上げます!
“ロズワール”: “今すぐ”というのは困ります きたばかりの私の立場も考えていただきたい
“ロズワール”: ──それに、すぐにやられてしまうほど、 軟(やわ)ではないつもりでーぇして
“ロズワール”: スバルくんが“こわいまもの”とやらの 弱点を考える時間ぐらいは、稼がせていただくつもりです
“ガーディー”: ククククッ ハハハハッ その強がりがいつまでもつか見物(みもの)ですな
“ガーディー”: いやはやそれにしても、 死に急ぐ方の多さに、わたくしは驚きを禁じ得ません
“クルシュ”: それは違うぞ、ガーディー 我々は死に急いでなどいない
“エミリア”: うん、死ぬつもりなんてないわ
“ヴィルヘルム”: 私にはやり残したことがあります ここで死ぬわけにはまいりません
“ユリウス”: 私もアナスタシア様を王にするという、大切な任務の最中 この戦いも、そこに至る通過点の一つです
“レム”: はい レムにも死ぬつもりはありません
“レム”: それに、スバルくんならきっと、“こわいまもの”の 弱点を突きとめて、レムたちを勝利に導いてくれるはずです
“ガーディー”: ぬぐぐっ……
ナレーター: レムという女性が言った言葉に、 明確に提示できるような根拠は存在しない
ナレーター: にも拘わらず、 滑らかに回っていた口からは反論の言葉が出てこなかった
ナレーター: 不気味な存在……
ナレーター: スバルという若者の底知れなさが、ガーディーには不気味だった
ナレーター: 力がないはずの若者
ナレーター: だが彼は、 リドアの本性を見抜き、最高の戦力をこの場に集結させたのだ
ナレーター: ラインハルトについては、なんとか戦力から外すことに成功したが
ナレーター: ロズワールというルグニカでも屈指の魔術師が、 今はその戦力に加わっている
ナレーター: なぜこのようなことになってしまったのか? それについて、ガーディーには理解することができなかった
ナレーター: だが、それが偶然ではないことだけは、 ガーディーにもわかっている
ナレーター: 彼の物語が、 自分の想定とは違う結末に向かって進みはじめていることも──
ナレーター: 最初、ロズワールが加わったものの、 圧倒的な力を誇る“こわいまもの”の前に
ナレーター: スバルが集めたメンバーは押されていた
ナレーター: だが、フェネが後方支援を始め、体力を回復させたことで
ナレーター: 彼らは立ち直り、 “こわいまもの”の猛攻をなんとか耐えしのいだ
ナレーター: しかし、彼らは“こわいまもの”の攻撃をしのぐのに精一杯で、 反撃に出るような余力があるようには見えなかった
ナレーター: やがてフェネからのマナの供給が止まれば、 “こわいまもの”に押し切られ、全滅することは必至
ナレーター: ガーディーの勝利は目前に迫っていた
ナレーター: にも拘わらず、運命の女神は、寸でのところで、 またしてもガーディーから勝利を取り上げてしまう
“スバル”: ──みんな、聞いてくれ!
“アル”: ふっ ようやくわかりやがったか
“スバル”: ああ、待たせて悪かったな! けど、無敵野郎の弱点といや、やっぱあそこしかねぇ!
“スバル”: ──ガーディー! お前がしてくれたエドガーさんの話も、 弱点特定に役立ったぜ、ありがとな!
“ガーディー”: 何を言い出すかと思えば……! 本当に貴殿という方は……!
“ガーディー”: そう簡単に弱点を特定できるはずが──
“スバル”: いや、俺の故郷にいる誰もが、 もしかしたら同じ場所を弱点として挙げるかもしれねぇ
“スバル”: それぐらい、俺からするとそこしかない感じだ
“スバル”: 悪く思わないでくれ 相手が俺だったことが、お前には不運だったんだよ
“プリシラ”: 妾は下らぬ見せ物には飽き飽きじゃ 凡愚、早くしろ
“スバル”: いやいや、見せ場なんだから、 もうちょい付き合ってくれよ、プリシラ
“スバル”: マジ、わかってみたら、なるほどなって感じで、 俺、ちょっと感動してるんだからさ
“フェリス”: スバルきゅん、すごい自信だね
“フェリス”: それで違ってたら、 とっても恥ずかしいことににゃるけど、大丈夫?
“フェネ”: 左様です スバル氏が自信満々な時点で、 フェネには不安しかありません
“フェルト”: 同じくだ 兄ちゃん、本当に大丈夫かよ?
“スバル”: 待て待て、寄ってたかって変なフラグを立てようとすんな!
“スバル”: それに、自信満々なふりをしてるだけで、 心の中は不安満載だから安心してくれ
“スバル”: 心臓バクバクで、今にも飛び出しそうだからさ
“スバル”: って、せっかくかっこよく決めたかったのに、 どうしてこんな暴露をさせられてんだよ、俺!
“スバル”: とにかく、俺の指示通りに動いてみてほしい! たぶん、きっと、恐らく大丈夫だから!
“エミリア”: なんだか、スバル、自信がなさそう でも……私はスバルの言う通りにしてみたいわ
“クルシュ”: ああ、私もナツキ・スバルに懸けてみたい
“レム”: はい レムもスバルくんに懸けてみたいです
“ユリウス”: 私もです それ以外の選択肢が、私には思い付かない
“ヴィルヘルム”: 決まりですな
“ロズワール”: ええ、そのようです
“ロズワール”: ──スバルくん、言ってみたまえ 我々は君の言う通りにしよう
“スバル”: サンキュー、みんな! ってことで──
“スバル”: エミリアたん、レム、それにロズワールは、 全力で魔法攻撃をあいつにぶち込んでくれ!
“スバル”: ユリウス! お前も『クラウゼリア』だとか 『クラリスタ』ってヤツを頼む!
“スバル”: 圧倒的な火力をぶつけて、あいつの動きを止めたいんだ!
“エミリア”: わかったわ、スバル!
“レム”: はい、スバルくん! 全力で魔法を放ちます!
“ロズワール”: ご期待に応えようじゃーぁないか ユリウス殿も大丈夫ですね?
“ユリウス”: 無論です、メイザース辺境伯 必ずや、あやつの動きを止めてご覧に入れましょう
“クルシュ”: 残るは私とヴィルヘルムだな ──ナツキ・スバル、我々への指示を聞かせてくれ
“スバル”: ああ、二人にはとっておきのを用意してあるぜ、クルシュさん まさに二人にぴったりの役割がな
“スバル”: 色々考えたんだけど、やっぱあいつの弱点はあそこしかねぇと思う
“クルシュ”: ほう…… それはどこだ、ナツキ・スバル?
“スバル”: ──アキレス腱だ!
“スバル”: クルシュさんとヴィルヘルムさんには、 あいつが動きを止めた瞬間、アキレス腱を叩き切ってもらいたい!
“クルシュ”: ……すまない、ナツキ・スバル その“あきれすけん”というのはなんだ?
“ヴィルヘルム”: 私も長く生きておりますが、 そのような言葉に聞き覚えがありません
“アル”: あちゃー やっぱり兄弟には、ビシッと締めるのは難しいか 肝心なワードが通じないんじゃ、意味ねぇじゃねぇか
“アル”: ──公爵さんたち、アキレス腱ってのは、 踵骨腱(しょうこつけん)のことだ 足首の裏側だよ
“アル”: んで、確かにあいつみてぇな無敵野郎にとって、 致命的な弱点である可能性がたけぇ場所だ
“クルシュ”: ほう…… 踵骨腱(しょうこつけん)か、心得た ヴィルヘルム?
“ヴィルヘルム”: 私も問題ありません いつでもいけますぞ、クルシュ様
“クルシュ”: では、エミリア、レム、 それにメイザース辺境伯とユリウス・ユークリウス
“クルシュ”: ──奴の動きを封じてくれ!
ナレーター: それはあっけない最後だった
ナレーター: ロズワールたちに動きを封じられた“こわいまもの”の アキレス腱をクルシュとヴィルヘルムが渾身の一撃で切断する
ナレーター: 絶大なる防御力を誇っていた“こわいまもの”の動きが止まり、 “こわいまもの”は光の粒子に変わった
ナレーター: そして、跡形もなくその粒子が消え去ると、 そこには一枚のページが残されている
“スバル”: ──フェネ! ページを!
“フェネ”: 心得てます、スバル氏──
“フェネ”: ページは『禁書』に封じました これにて、“こわいまもの”との戦いは終了です
“ガーディー”: ──ぬぐぐぐっ! なぜだ! なぜだ! なぜだ! なぜ、スバル殿はことごとく……!
“アル”: 残念ながら、物語の主人公は、お前じゃなかったってことだよ 諦めて降参しろ
“フェネ”: いえ、そういうわけにはいきません この男を生かしておくわけにはいかないのです
“フェネ”: ──さあ、ヴィルヘルム氏! ガーディー氏にとどめを!
“ヴィルヘルム”: ……クルシュ様?
“クルシュ”: 降参の意思があるのであれば、 ガーディーの命を奪うことには反対だ
“エミリア”: 私も反対よ どうしてフェネがそんなことを言うのかわからないわ
“ロズワール”: フェネくん 誰もやらないのであれば、私がやろう
“フェネ”: ロズワール氏……
“スバル”: 待て待て、ロズワール! エミリアたんが反対してるんだぞ! 命まで奪う必要はねぇだろ!
“フェルト”: そうだぞ、変な格好のオッサン! アタシも殺すことには反対だ!
“プリシラ”: いや、宮廷道化師 妾が許す 好きにしろ
“スバル”: お前は黙ってろ、プリシラ! そんな権限、お前にはねぇだろ!
“フェリス”: えっと…… フェリちゃんとしては、 クルシュ様とまったく同じ意見ではあるんだけど
“フェリス”: メイザース辺境伯が、 どうしてあんなことを言い出したのかには興味あるにゃ
“フェリス”: 何か事情がありそうじゃにゃい
“ロズワール”: なーぁに、そろそろ呪縛から解放してあげるべきだと 思ったまでですよ
“ロズワール”: フェネくん、そういう理解でいいんだよねーぇ?
“フェネ”: なるほど…… やはりロズワール氏は……
“スバル”: ……呪縛から解放? それってガーディーをってことか?
“ロズワール”: 他に誰がいるんだね、スバルくん
“ロズワール”: 私には彼が人間だとは思えない
“ロズワール”: まあ、殺してみればわかることだーぁとも 恐らく彼はページに変わるはずだ

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_18

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■18話 タイトル:目的ではなく手段 更新日:2022/05/24

“ロズワール”: ──まあ、殺してみればわかることだーぁとも 恐らく彼はページに変わるはずだ
“スバル”: “殺してみれば”ってな…… もし違ってた場合、殺しちゃったら取り返しがつかねぇだろ
“スバル”: そもそも、ページから顕現した『異形』は、 魔物みたいな見た目の奴ばっかりで
“スバル”: 人間の姿をした『異形』となんて、会ったことないじゃねぇか
“フェリス”: 会ったことないから、いないっていうのは、 フェリちゃんは違うと思うにゃ
“フェリス”: それに、にゃんだかフェリちゃんも、 あのガーディーって人には、変な感じがしてるんだよね
“フェリス”: “人間じゃない”って言われて、 “あー、それでかー”って納得した感じだもの
“クルシュ”: ほう…… フェリスがそう言うのであれば、 ガーディーは人間ではないのかもしれんな
“レム”: リドアさんのこともあります
“レム”: もし、リドアさんが人ではないのだとしたら、 あの強さにも納得です
“ユリウス”: 確かに、ガーディー殿が『異形』だとすると、 リドアさんも『異形』だということになる
“ユリウス”: 気付くことができなかっただけで、 我々は人型の『異形』に出会っていたのかもしれない
“エミリア”: そんな…… リドアちゃんが『異形』だったなんて……
“スバル”: 色々言い合ったり、旅まで一緒にしたってのに、 リドやガーディーが『異形』ってのはなんの冗談だよ
“スバル”: ……けど、筋は通る リドの強さや無尽蔵の体力も、『異形』だったら納得だ
“アル”: おいおい、このままだと、お前さん、殺されちまうぞ だんまり決めてねぇで、反論があるなら言ったらどうだ?
“ガーディー”: ぬぐぐぐっ……
“ロズワール”: どうやら反論はないようだーぁね
“ロズワール”: 『異形』であるなら、彼をページに戻して、 『禁書』に封じてしまわないと
“ロズワール”: とはいえ、人の姿をした『異形』を殺すことには、 罪悪感が伴ってしまうかもしれない
“ロズワール”: ここは私が、汚れ役を引き受けるとしよう──
ナレーター: ロズワールが放った魔法により、炎に包まれるガーディー
ナレーター: 炎が消えた後、彼がいたはずの場所に亡骸はなく、 代わりに何枚ものページが落ちているのだった
ナレーター: そのページたちをフェネが『禁書』へと封じ、 ガーディーとの戦いには、完全に終止符が打たれるのだった
“スバル”: ──いやはや、ようやく終わったな マジ、すげぇ長い一日だったぜ
“ユリウス”: いや、まだ終わったわけではない
“ユリウス”: ラインハルトのことだ 万が一ということはないと思うが、 リドアさんの行方は未だ掴めていない
“フェルト”: 確かにあいつは、行ったっきり戻ってきてねー
“フェルト”: 肝心なときにいやがらねーなんて、 『剣聖』とか大層な名があるくせに使えねーぜ
“フェリス”: きゃはは ラインハルトのことを“使えない”だなんて、 フェルト様もなかなかだネ
“フェリス”: まあ、ラインハルトがいてくれたら、 “こわいまもの”にも楽勝だったとは思うけどさ
“フェルト”: あの『異形』にラインハルトが楽勝? あいつ、そんなにつえーのかよ?
“アル”: 『剣聖』って時点で最強だろ 『剣聖』様に勝てるような奴はいないはずだ
“ユリウス”: ああ 私も腕に覚えはあるが、 強さという面においては、彼には到底及ばない
“フェルト”: けど、いないんじゃ仕方ねーだろ いくら強くたって意味ねーし、使えなかったことに変わりはねー
“スバル”: まぁまぁ、そう言うなよ、フェルト
“スバル”: あいつがリドを引き受けてくれたおかげで、 俺らは“こわいまもの”とだけ戦えばよかったんだ
“スバル”: 十分役に立ってくれてるし、 そもそもそれはガーディーが企てた結果だ
“スバル”: ガーディーの奴が、ラインハルトとだけはやり合いたくなくて、 あいつを俺らから遠ざけたんだからさ
“スバル”: それに、“終わり”って言うのには、まだ早かったな
“スバル”: ガーディーやリドの正体や、 絵本作家のエドガーさんのことがわかって
“スバル”: 色々腑に落ちたことも多いんだけど、 未だにわからないことも結構ありやがる
“スバル”: そもそもガーディーが言ってた 俺に利用価値があるってのは、どういうことだ?
“スバル”: あいつは、俺がエドガーさんから “選ばれた”みたいなことも言ってやがったぞ
“レム”: レムにもそれが気になっていました
“レム”: 『禁書異変』自体をガーディー様が引き起こしたというのも、 レムにはとても信じられません
“エミリア”: ええ 私も何かがおかしいって思うわ 全然すっきりしてないもの
“エミリア”: そもそも、『禁書』のページは、これで全部集まったのかしら? もしまだ集まってないなら、ページを探して『禁書』に封じないと
“ロズワール”: その辺、どうなんだい、フェネくん
“フェネ”: ふふふ……
“スバル”: フェネ? なんか変だぞ、お前
“フェネ”: ……あの魔法使いが消滅し、フェネは完全に記憶を取り戻しました
“フェネ”: さすが優秀なフェネです フェネの優秀さは、完全にあの魔法使いを凌駕していました
“フェネ”: あの魔法使いの企みが道半ばで潰えることも、 こうしてフェネが記憶を取り戻すことも
“フェネ”: すべてはフェネの目論見通り……
“フェネ”: ──まあ、記憶については、 完全に失っていたわけではありませんが
“クルシュ”: ──っ! 卿は……フェネなのか?
“フェリス”: うん、なんだかフェネちゃん、別人みたい
“アル”: 確かにいつもの狐さんじゃねぇな 発言自体もラスボスの登場を感じずにはいらねぇ感じだ
“プリシラ”: ほう…… ちょうど退屈していたところじゃ 妾が許す 子狐、話を続けよ
“フェネ”: ──まず、残念ながら 『禁書』のページをすべて封じたわけではありません
“フェネ”: ヴォラキア帝国へと足を運ばなかったことは、 誤算だったと言わざるを得ないでしょう
“フェネ”: ですが、必要最低限のページは集まっています これだけページが揃えば、もはや十分かと
“スバル”: ……はあ? “もはや十分”ってどういうことだよ? ページは全部封じないといけないはずだ
“ロズワール”: その前提自体が、正しくなかったってことだねーぇ ある程度集めることができれば、目的の達成には支障がない
“ロズワール”: そして、それだけの量はすでに集まっている そういうことだーぁよ、スバルくん
“スバル”: 待て待て、それじゃ、“目的”ってなんだよ? ページを『禁書』に封じるのが、目的じゃねぇのか?
“ヴィルヘルム”: そうではなかった、ということでしょう ページを集めていたのは、何かしらの“目的”を果たすためで
“ヴィルヘルム”: ページを集めること自体は“目的”ではなく、 それを実現するための“手段”でしかなかったことになります
“フェリス”: でも、元々ページは『禁書』に収まってて、 それをスバルきゅんがバラバラにしちゃったって話じゃにゃい
“フェリス”: ページがバラバラに散らばっちゃったのは、どうしてにゃの? あれ自体は偶然起った事故だったってこと?
“フェネ”: いえ、偶然の事故ではありませんし、 ページを四散させたのはスバル氏ではありません
“フェネ”: 『禁書』のページを四散させた張本人、 ──それは、フェネに他なりません
“スバル”: ──なっ!? ど、どうしてそんなことを……
“スバル”: お前は、自分でばら撒いたページを自分で回収して回ってたのか? 意味わかんねぇにもほどがあんだろ、そんなの
“フェネ”: マナが溜まっていないページには、利用価値がないからですよ
“フェネ”: 効率良くページにマナを吸わせるため、 フェネは各地にページをばら撒いたのです
“フェネ”: そして、マナで満たされたページから回収していきました
“レム”: 確かに……『禁書』に封じられたページの多くは、 マナで満たされています
“レム”: 『異形』が顕現するということは、 つまりそういうことですから……
“スバル”: つまり、お前はマナがあんま溜まってないページは、 場所がわかってても、あえてスルーしてたってことか?
“スバル”: 『異形』やら『変異体』の被害が出るかもしれねぇってのに
“フェネ”: 左様です ページの回収は、 マナで満たされることを待って行いました
“フェネ”: 当然、あまりマナが溜まっていないページは、そのまま放置し、 マナが溜まった状態になってから回収したことになります
“フェネ”: 無論、あの魔法使いが細工をしたいくつかのページは、 本当に感知することはできませんでしたが
“スバル”: おい、フェネ! さっきから出てる “あの魔法使い”ってのは、ガーディーのことか?
“スバル”: 『禁書』の物語の中に、ちょくちょく出てきてた あの魔法使いが、ガーディーなんだな?
“スバル”: あいつと初めて会ったとき、 回収したページの物語は、魔法使いが出てくるお話だった
“スバル”: “こわいまもの”を生み出したのも、とある魔法使いって話だし、 そう考えると色々辻褄が合う
“スバル”: 制御不能なはずの“こわいまもの”を ガーディーの奴はある程度操ってやがったしな
“アル”: 待て待て、オレはあいつと直接戦ってる あいつは魔法使いって感じじゃなかったぜ
“アル”: 魔法で攻撃された記憶がねぇ
“フェリス”: まあ、魔法使いも色々いるからね
“フェリス”: フェリちゃんは治癒魔法は超得意だけど、攻撃の魔法は全然だし
“フェリス”: メイザース辺境伯だったり、エミリア様は 攻撃の魔法が得意だったりさ
“スバル”: つまり、ガーディーの奴が得意なのは、 “変異魔法”とでも言えばいいのか?
“スバル”: 『さかなかいウーオ』では、魚を巨大化して凶暴にしたわけだし
“スバル”: “こわいまもの”については、何かしらベースになる魔物がいて
“スバル”: そいつを魔法で改造して、 弱点をなくしたり、力を強くしたりしたんだ
“スバル”: そう考えれば、『禁書』に出てくる魔法使いが、 同一人物だってなっても矛盾しねぇ
“スバル”: あいつが仮面の男に姿を変えてたことや、 正体を現したときの服装やら髪色やら眉毛の変化にも納得できる
“エミリア”: それはそうかもしれないけど…… 私、“変異魔法”なんて知らないわ
“ロズワール”: 架空の物語に登場する想像上の魔法使いです 現実と違っていても不思議はありませんよ、エミリア様
“エミリア”: あっ、そうね 確かにそうだわ
“フェネ”: 皆様、理解が早くて大変助かります
“フェネ”: 『禁書』に登場する魔法使いは同一人物 皆様がガーディーと呼ぶ者です
“フェネ”: そして、その魔法使いが使う“変異魔法”と呼ぶべき魔法は、 フェネの誕生にも大きく関わっています

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_19

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■19話 タイトル:フェネの目的 更新日:2022/05/24

“フェネ”: ──そして、その魔法使いが使う“変異魔法”と呼ぶべき魔法は、 フェネの誕生にも大きく関わっています
“スバル”: ……お前の誕生に関わってる? それってどういう意味だよ、フェネ
“フェネ”: 質問ばかりですね、スバル氏 たまにはフェネからも質問させてください、クソ上司
“スバル”: なんだか黒幕っぽい雰囲気を出してるお前に “クソ上司”だとか言われたくねぇんだけど
“スバル”: 質問させてやんなきゃ、俺の質問には答えてくれねぇ感じか?
“フェネ”: 左様です、スバル氏 スバル氏の顔にも“ギブ・アンド・テイク”と書いてあります
“スバル”: その“俺の顔に書いてある”っての、 やっぱ、なんかのヒントなんだよな?
“フェネ”: スバル氏は話の流れをもう忘れてしまったのですか?
“フェネ”: 今はスバル氏が質問する番ではありません フェネがスバル氏に尋ねる番です
“フェネ”: フェネには、スバル氏があの“こわいまもの”の弱点を 突きとめるという確信はありましたが
“フェネ”: その過程が不明です
“フェネ”: 何故弱点を突きとめられたのか、詳しくお知らせください 悔しいですが、フェネにはわかりかねます
“スバル”: これはこれは、優秀なフェネにも、わからないことがあるんだな
“フェリス”: そういう嫌味を言っちゃうあたり、 ホント、スバルきゅんってばお子様だよね
“フェリス”: いいからフェネちゃんに教えてあげなよ フェリちゃんも気になってることだからさ
“クルシュ”: 確かに、踵骨腱(しょうこつけん)という 解を導いた過程は気になるな
“クルシュ”: 人体の中でも比較的弱い部分ではあるが、 踵骨腱(しょうこつけん)は急所とまでは言えない
“フェルト”: しかも兄ちゃんは、あのガーディーって奴がした エドガーって絵本作家の話が参考になったって言ってたよな?
“フェルト”: 同じ話を聞いてた、アタシにはさっぱりだったっていうのによ
“スバル”: どうやら、フェネだけじゃなくて、みんなも知りたいみたいだな
“エミリア”: ええ、私も知りたいわ、スバル フェネが聞いてくれて、助かっちゃった
“レム”: はい、レムも知りたいです スバルくん、教えてください
“ロズワール”: それについては、私も知りたいと思っていてねーぇ スバルくん、教えてくれないかーぁな
“スバル”: ああ もちろん教えるぜ そうしなきゃ、フェネが俺の質問に答えてくれないしね
“スバル”: んで、俺の故郷にはアキレウスって英雄がでてくる 有名な物語があるんだ
“スバル”: そのアキレウスって人は、生まれてすぐに、 母親に浸かると不死身になれるって川に入れられて
“スバル”: 不死身の肉体を手に入れるんだよ
“スバル”: それで、不死身の肉体のアキレウスは、 戦争ですげぇ活躍するんだけど
“スバル”: 母親がアキレウスを川に浸けるときに手で掴んでた場所だけが、 川にちゃんと浸かってなくて
“スバル”: そこを弓矢で射られたことが原因で、アキレウスは死んじゃうんだ 不死身の肉体を持ってたはずなのにさ
“ユリウス”: つまり、母親は踵骨腱(しょうこつけん)の辺りを持ち、 アキレウスを川に浸けたわけか?
“スバル”: ああ、その通りだ
“スバル”: んで、ガーディーがした、エドガーさんが帝国に 捕らえられて、投獄されてたって話を思い出して
“スバル”: もしかしてエドガーさんは、逃げないようにアキレス腱…… みんなにわかるように言えば踵骨腱(しょうこつけん)を
“スバル”: 切られた状態だったんじゃないかなって思ったんだよ
“スバル”: すげぇ酷い話ではあるんだけど、 捕らえた捕虜なんかの逃亡を防ぐために
“スバル”: そういう風に踵骨腱(しょうこつけん)を切るなんてことが、 実際に行われてたって、昔、本で読んだことがあったからさ
“スバル”: 戦争っていうのは、ホント、人をすげぇ残忍にするから
“ヴィルヘルム”: 逃亡を防ぐためとはいえ、それはあまりにも残酷なやり口ですな ですが……
“クルシュ”: 実際に“こわいまもの”の弱点が 踵骨腱(しょうこつけん)であった以上
“クルシュ”: エドガーという絵本作家に対して、 そのような行為が行われていたということだろう
“クルシュ”: その怒りたるや、相当なものであったことは、想像に難くない
“エミリア”: ヒドい…… 本当にヒドいわ……
“スバル”: ああ…… 本当にすげぇ酷い話だ
“スバル”: ガーディーが世界の浄化だとか言い出すのも、わからなくねぇ エドガーさんはきっと、心底人間を恨んでたんだよ
“スバル”: 子どもたちに夢や希望を与えるはずが、 自分が持った力を軍事利用されそうになって
“スバル”: それだけでもすげぇ不本意なのに、 さらに投獄されて自由まで奪われたんだからさ
“アル”: オレには、どうしてそんなひでぇことができるのか、理解できねぇ
“アル”: だが……エドガーっていう絵本作家が そうされちまったのは、事実だろうよ
“アル”: 人間はすげぇ残酷になれるからな
“ロズワール”: その通り 人間はとても残酷だ
“ロズワール”: どんなに獰猛な動物や魔獣より、人は残酷になれる
“フェネ”: なるほど、スバル氏が “こわいまもの”の弱点に辿り着いた過程は理解しました
“フェネ”: エドガー氏が、自らの実体験を 物語に反映させていると思ったわけですね
“スバル”: ああ ある意味“こわいまもの”はエドガーさんなんだよ
“スバル”: 紙とペンさえあれば世界を滅ぼせる力があるのに、 実際はアキレス腱を切られて自由に動けないまま生涯を終えた
“スバル”: エドガーさんの力があれば、 自分の置かれた状況をその力で解決できたかもしれないんだ
“スバル”: それこそ、たくさんの犠牲が出るかもしれないけど、 次から次に『異形』を呼び出せるんだからさ
“スバル”: でも、エドガーさんはそうしなかった 自分一人が犠牲になることを選んだんだ
“スバル”: そういう意味では、ガーディーも ある意味エドガーさんなのかもしれねぇな
“スバル”: “こわいまもの”の弱点を 一つだけ消さずに残してしまった魔法使い……
“スバル”: そのことをずっとその魔法使いは後悔するけど
“スバル”: エドガーさんもずっと、 力を行使しなかったことを後悔し続けていたのかもしれない
“スバル”: だから、『禁書』って爆弾を残したのかもな
“フェネ”: スバル氏がそこまで考えていたとは、正直驚きました
“フェネ”: ですが、何故スバル氏だったかについても、 フェネは理解することができました
“スバル”: ……何故俺だったかについても? それ、まるでガーディーみたいな言い方だな
“スバル”: 結局、『禁書』のページをばら撒いたのはフェネって話だし、 『禁書異変』を仕組んだのはガーディーだった
“スバル”: 俺は掌の上で踊らされてただけの、哀れなピエロにすぎねぇはずだ
“スバル”: なのに、どうしてお前もそんな言い方をするんだ? まるで俺を超が付く重要人物みたいにさ
“フェネ”: いいでしょう フェネの質問にお答えいただいたので、 まずはそちらの質問にお答えしましょう
ナレーター: それからフェネが語ったのは、 スバルが持った特別な力についてだった
ナレーター: その力を一言で言うと、“想像力”ということになる
ナレーター: 現代人の知識を持ったスバルの想像力は特別なもので
ナレーター: 『禁書』の作者であるエドガーの力に干渉して、 その内容を変更することができるという
“プリシラ”: ──ほう 凡愚にそのような力があったとはな
“スバル”: いやいや、まさかそんな…… 俺の想像力に、 『禁書』の内容を変える力なんてホントにあるのかよ?
“フェネ”: 無論、本当にあります 事実、スバル氏は何度かその力を使っています
“スバル”: ……何度か、だと?
“スバル”: フスミでページに吸い込まれたとき、 俺はエクスカリバーみたいな剣を呼び出して『異形』を倒した
“スバル”: それについては、俺の想像力が関係してそうな気がしなくもないが それ以外はてんで覚えがねぇぜ
“フェネ”: ガナクスでページに吸い込まれた際は、 どのように攻略されたのですか、スバル氏?
“スバル”: あれは俺のゲームの知識とかを活かして、 隠し通路だのを発見してだな……
“スバル”: って、あれも俺の想像力の影響か?
“スバル”: そもそも隠し通路なんてなかったのに、 俺がそういう想像をしたから、想像通りになった感じで
“フェネ”: 左様です
“フェネ”: そして、現在他の物語と一線を画している 『とらわれのクレア』ですが
“フェネ”: スバル氏の改変により、 本来の内容とは異なったものになっています
“スバル”: 本来は帝国で伝承されてた通り、 ハッピーエンドじゃなかったってことか
“スバル”: 物語に強い剣は出てくるけど、 結局その剣でもクレアを助けることはできなかったってわけだ
“スバル”: ……どうやら、俺にエドガーさんの物語を変える力があるってのは 紛れもねぇ事実みたいだな
“スバル”: だとすると、ガーディーが俺に利用価値を見出したのも納得だよ
“スバル”: あいつは“こわいまもの”に弱点を残したことを ずっと後悔してたんだからさ
“スバル”: きっと、俺の力で、その部分を改変したかったんだと思う
“スバル”: しかしそれにしても、俺の想像力にそんな力があったとはな こっちの人とは明らかに違うものであることは確かだけどさ
“フェネ”: すみません、スバル氏 迂闊にもフェネは、表現を誤ってしまいました
“フェネ”: “想像力”という表現よりも “妄想力”という表現の方が正しいかもしれません
“フェネ”: スバル氏のそれは、“想像”というよりは “妄想”と呼ぶべきもののような気がいたします故
“スバル”: いやいや、そこは“想像”のままでいいだろ!
“スバル”: “妄想”って中二病くさい感じがして、なんか嫌だよ! それに──
“アル”: おいおい、“妄想”とは若いな、兄弟 どんな妄想かは聞かないでおいてやるから、安心して大丈夫だぜ
“スバル”: ほら見ろ! 早くも誤解されてるじゃねぇか!
“フェリス”: あははは 相変わらずフェネちゃんとスバルきゅんは、 すごく仲良しだネ
“フェリス”: なんだかフェネちゃんは、 人が変わったみたいに黒幕感を出してたけど
“フェリス”: 本当のフェネちゃんは、やっぱりそっちなんじゃにゃいかな?
“フェリス”: 悪ぶったりしないで、何か達成したいことがあるにゃら、 素直に相談してみればいいのに
“フェリス”: きっとスバルきゅんたちは、協力してくれるはずだよ もちろんフェリちゃんもネ
“クルシュ”: 私も卿に協力したい 卿がガーディーのような 悪だくみをしているようには、とても思えないのでな
“ユリウス”: 私もそうです、フェネさん
“ユリウス”: 実はアナスタシア様は、フェネさんが何か問題を抱えている のではないかと心配されておられたのです
“ユリウス”: そして、もしもの際は、フェネさんの力になるよう、 私に言付けられました
“ユリウス”: なので、遠慮の必要はありません
“エミリア”: 私も協力するわよ、フェネ
“レム”: はい レムも協力します
“スバル”: もちろん俺もだ
“スバル”: 『禁書』のページ集めが、 “目的”じゃなくて何かを達成するための“手段”っていうなら
“スバル”: お前はいったい何がしたいんだよ?
“スバル”: なあ、話してくれ、フェネ
“スバル”: お前の目的達成のために、 俺たちにもできることがきっとあるはずだ
“フェネ”: 皆様……
“フェネ”: ですが……皆様のお力を借りるわけにはいきません
“フェネ”: フェネが成そうとしていること
“フェネ”: ──それは、あの魔法使いとそう変わらないのですから

Scenario Tag: scenario_main_p01_c10_20

Scene Name: メインシナリオ_10章_FIX ■エピローグ タイトル:それぞれのハッピーエンド 更新日:2022/05/24

“フェネ”: ──フェネが成そうとしていること
“フェネ”: ──それは、あの魔法使いとそう変わらないのですから
“スバル”: ……ガーディーと変わらない? お前も世界を浄化したいのかよ?
“フェネ”: いえ、結果的にそうなる可能性が高いということです
“フェネ”: フェネの目的──
“フェネ”: それはエドガー氏の復活なのですから
“スバル”: ──なっ! “復活”って二百年も前に死んだエドガーさんをか?
“フェネ”: 左様です そして、エドガー氏が復活することにより、 人々は大いなる危機に晒されるでしょう
“フェネ”: 確かに二百年前、 エドガー氏は自らが犠牲になることを受け入れました
“フェネ”: ですが、人々に大いなる恨みを抱くあの方が、 今回も同じような選択をされるとは限りません
“フェルト”: むしろ、そうじゃねー可能性がたけー気がする 今度こそ『異形』を使ってアタシたち人間を……
“スバル”: いやいや、待て待て
“スバル”: 二百年前は、帝国がエドガーさんを捕らえて、 その力を無理やり軍事利用しようとしたから、ああなったわけで
“スバル”: 仮にエドガーさんが復活しても、 そういう扱いをしなきゃいいだけだろ
“アル”: こっちがそのつもりでも、 向こうはそう受け取ってくれないんじゃねぇか?
“アル”: 人間は愚かな生き物だ いつまた、 エドガーって絵本作家の力を悪用しようって企むかわからねぇ
“アル”: そもそもエドガーって人は、 人間のことを信用してたりしないはずだ
“アル”: いくらこっちに悪意がなくても、 信用してもらえないんじゃ意味ねぇぜ
“フェリス”: 待って待って、その前に、死んじゃった人を 生き返らせるなんてこと、できるわけにゃいと思うな
“フェリス”: そんなこと、絶対にできるはずないよ
“クルシュ”: ああ 私もフェリスと同意見だ
“クルシュ”: もし、エドガーの遺体が なんらかの方法で保管されていたりすれば
“クルシュ”: 多少は可能性が出てくるのかもしれないが、 そのようなことはないはずだ
“クルシュ”: もしかしたら骨ぐらいは残っているかもしれないが、 そのような状態からの蘇生などあり得ない
“ロズワール”: “生き返らせる”という意味では、恐らく無理でしょう ですが、“復活”には色々な方法がある
“ロズワール”: たとえば、エドガー殿の記憶と精神を持った『異形』とかねーぇ
“ヴィルヘルム”: それについては、 確かに『禁書』があれば実現できるかもしれませんな
“レム”: でも、エドガーさんが復活したら、 どのような危機が訪れるかわかりません
“エミリア”: フェネの願いは叶えてあげたいわ でも……
“フェネ”: 気に病む必要はありません、エミリア女史
“フェネ”: 元より皆様にご協力していただこうとは、 思っていませんでしたので
“ユリウス”: フェネさん 申し訳ありませんが、もしエドガー殿を 『禁書』を使い顕現させようとしているのであれば
“ユリウス”: 私としては、それを阻止せざるを得ない
“プリシラ”: 二百年前の遺恨…… 面白い どのような結末を迎えるか楽しみじゃ
“プリシラ”: 妾は止めぬ 好きにしろ、子狐
“スバル”: 面白そうならなんでもありの、プリシラの意見は聞き流すとして
“スバル”: 本当に『禁書』を使って、 エドガーさんを顕現させることは可能なのか?
“スバル”: ガーディーやリドが顕現したのとは、訳が違う気がする
“フェネ”: 結論から言えば、可能です
“フェネ”: そして、先程、あの魔法使いが所持していたページの中に、 そのためのページを見つけ、『禁書』に封じました
“スバル”: そのためのページ……?
“スバル”: それってまさか、作者紹介ページみたいなもんか? 単行本なんかの巻末にあったりする感じの
“スバル”: だとすると確かに、 エドガーさんを顕現させることは可能かもしれねぇ……
“フェネ”: 二百年…… フェネは二百年、このときを待ちわびました
“フェネ”: 本当にこの二百年フェネは、エドガー氏に 再びお目にかかることだけを願って生き長らえてきたのです
“スバル”: ……再びお目にかかる? お前は、エドガーさんに会ったことがあるのか?
“フェネ”: 左様です エドガー氏の無念な最後を見届けたのは、フェネに他なりません
“フェネ”: そして、再びエドガー氏とお会いすることだけを夢見て、 フェネは時を重ねてきたのです
ナレーター: この二百年、フェネは実体化を解いた状態で、 常に『禁書』とともにあり
ナレーター: 『禁書』の封印を解く力を持った、 特別な想像力を持った者が現れることをずっと待ち続けていた
ナレーター: そして、明らかに普通とは違う想像力を持ったスバルが現れたのだ
ナレーター: フェネには、すぐにスバルが待ち望んでいた 特別な想像力を持った者だと判断することができた
ナレーター: 彼の思考からは、知識豊富なはずのフェネですら、 知らない言葉が漏れ伝わってくるのだった
“スバル”: やっぱり、お前には俺の頭の中が見られるんだな?
“フェネ”: 残念ながら、完全に見えているわけではありません むしろ、ほとんど見えていないと言ってもいい状態です
“フェネ”: フェネに聞き馴染みがない言葉だけが、 漏れ伝わってくると言った方が正しいでしょう
“スバル”: それは、エドガーさんがお前に与えた、特別な力なのか?
“スバル”: 『禁書』の封印を解いたり、 『禁書』の物語を書き換えたりできる人間を見極めるために
“フェネ”: 確かに、元を正せば作者であるエドガー氏なのかもしれませんが
“フェネ”: フェネからすると、あの魔法使いが、己の目的を達成するために、 フェネに与えた力となります
“フェネ”: すでにお察しかもしれませんが、 フェネは『異形』とは違う存在です
“フェネ”: フェネをこの世に顕現させたのは、 エドガー氏ではなくあの魔法使いなのです
“フェネ”: リドア女史も、恐らくフェネと同じだと推測します
“スバル”: …………? ごめん、フェネ、俺にはよくわからねぇ
???: ──やっぱりそうですよね、スバルさん
“スバル”: こ、コリーナ!? 相変わらずお前は神出鬼没だな! ……って、フェネの姿が見当たらねぇぞ!
“エミリア”: 本当ね…… コリーナちゃんが出てきたら、フェネがいなくなっちゃったわ
“レム”: はい…… レムには、一瞬にして、 フェネさんがコリーナさんに変わったように見えました
“ロズワール”: 私にもそう見えたかーぁな
“ロズワール”: フェネくんの姿形が変形して、 コリーナくんに変わったようにねーぇ
“コリーナ”: その通りです!
“コリーナ”: 皆さんには、コリーナから説明した方がいいと思ったので、 フェネさんにはお休みしてもらいました
“コリーナ”: それに、フェネさんに好きにされると コリーナとしても困ってしまいますので
“スバル”: いやいやいや! 待て待て待て!
“スバル”: ただでさえよくわからねぇ状態だったのに、 さらに混乱させられてるよ、俺は!
“スバル”: どうして、フェネがコリーナに変わるんだよ?
“スバル”: しかも、コリーナがフェネで、フェネがコリーナってなら、 まだわからなくねぇが、そうでもないみたいだしさ!
“コリーナ”: ある意味、コリーナはフェネさんで、フェネさんはコリーナです
“コリーナ”: そして、コリーナはコリーナであり、 フェネさんはフェネさんでもあるのです
“スバル”: お前、絶対わざと混乱させてるだろ? 頭の中がこんがらがって意味不明だ
“フェリス”: つまり、フェネちゃんとコリーナちゃんは、 それぞれ別の意識を持ってるけど、肉体は同じ感じかにゃ?
“スバル”: いやいや、“肉体が同じ”なわけねぇだろ 片や子狐の精霊で、片や人間なんだぞ
“スバル”: 同じ人間の中に二つの精神が存在するみたいなのは、 聞いたことあるけど コリーナとフェネの場合は当てはまらねぇ
“コリーナ”: 残念ながらスバルさんが不正解で、フェリスさんが正解です
“スバル”: どうしてだよ! 明らかにお前とフェネじゃ、 姿が違うにもほどがあるじゃねぇか!
“コリーナ”: スバルさんは、ガーディーさんの力を もう忘れてしまったのですか?
“コリーナ”: コリーナは、魔法使いのガーディーさんにお願いして、 可愛い子狐の姿に変えてもらったんです
“コリーナ”: だから、コリーナの姿とフェネさんの姿が 全然違ってても矛盾しないんですよ
ナレーター: それからコリーナは、『禁書』に収録されているという 『おともだち』という物語について話し始めるのだった
ナレーター: それは、エドガーと思しき若者と 世界中を旅して回る冒険家の友人との物語だった
ナレーター: そのような物語を書くに至った背景には、 自由がきかない牢獄での孤独な生活があった
ナレーター: エドガーは理想的な友達との物語を書き上げ、 その友人を顕現するつもりでいたのかもしれない
ナレーター: だが、実際のエドガー同様、物語の中の彼も、 日を追うごとに人間への不信感を募らせていってしまう
ナレーター: やがて、人間だからという理由で、 物語の中の彼は、大切な友さえも遠ざけてしまったのだ
ナレーター: だが、拒絶され、遠ざけられながらも、 その友人は彼のことを思い続ける
ナレーター: そしてついに、その友人は彼の傍にいるために、 人間の姿を捨てることを決意するのだった
“スバル”: ──それで、その冒険家の友達……つまりコリーナは、 ガーディーに姿を変えてもらったわけだ?
“コリーナ”: その通りです!
“コリーナ”: ですが、コリーナは、 明らかにお願いする相手を間違えてしまいました……
“コリーナ”: 本当にガーディーさんはヒドいです!
“コリーナ”: 姿さえ変えてくれればよかったのに、 他にも色々変えられてしまって
“スバル”: なるほど…… だからお前は冒険家だったわけか
“スバル”: 牢獄に閉じ込められてるエドガーさんに代わって、 世界中を旅して回ったんだな
“スバル”: それに、ガーディーの奴がフェネに色々細工できたことも納得だ
“スバル”: フェネの誕生にガーディーが関わってるっていうのは、 つまり、そういう意味だったんだな
“スバル”: コリーナがフェネで、フェネがコリーナであるにも拘わらず
“スバル”: コリーナがコリーナで、 フェネがフェネであることにも納得がいったよ
“スバル”: 正直、お前がいるとフェネがいなくて、 フェネがいるとお前がいないことに
“スバル”: 俺は違和感を覚えていたんだけど、 それもすっきり解決した感じだ
“スバル”: だから、俺がお前をフェネに紹介しようとしたとき、 お前はなんだかんだ理由を付けて断ったんだな
“コリーナ”: コリーナをフェネさんに紹介……? はて? そんなことありましたっけ?
“スバル”: あっ! いや! あれは前の…… わりぃ、その件は忘れてくれ
“スバル”: けど、あのときコリーナが言ってた、“心に決めた人”ってのは、 エドガーさんのことだったのか……
“スバル”: なるほどなるほど、それについても、 わかってすっきりしたぜ
“スバル”: まぁ、俺以外はまったく意味不明なひとり言で、 すげぇ申し訳ないとは思うけどさ
“コリーナ”: 本当ですよ どうしてスバルさんが、 そのような呟きをされるのか意味不明ではありますが
“コリーナ”: 何気に核心を突いて、正直怖いです
“コリーナ”: スバルさんは、コリーナを想うあまり、 コリーナの心の中が覗けるようになったのですか?
“スバル”: なってねぇし、お前のことも想ってねぇ! 意味不明なひとり言は、マジ申し訳なかったけども!
“スバル”: って、よくよく考えりゃ、 コリーナ、お前って『異形』なんだよな?
“フェルト”: いやいや、よくよく考えなくても、 話を聞いたまんま、その姉ちゃんは『異形』だろ
“フェルト”: 『禁書』の中に出てくる登場人物なんだからよ 死んだらきっと、ページに変わるはずだ
“スバル”: 死んだらページ? そんなはずねぇ! だって、あのときは……
“コリーナ”: スバルさんがどうして否定するのか、わかりませんが、 コリーナが死んだらページになりますよ
“コリーナ”: 自慢じゃないですが、 コリーナは、正真正銘の『異形』なんですから
“スバル”: それは確かに自慢じゃねぇが、コリーナとフェネが 同一人物だとすると、俺には納得できねぇな、それは
“スバル”: フェネが死んでも、ページにはならないわけだし
“コリーナ”: はい、その通りです フェネさんが死んでも、ページにはならないでしょう
“コリーナ”: 本体はあくまでコリーナですし
“コリーナ”: フェネさんは、エドガーさんというより、 ガーディーさんの影響を受けた存在ですから
“コリーナ”: 同じように、リドアさんが死んでもページにはならないはずです
“スバル”: なるほど……なのか?
“スバル”: 『禁書』の作者はエドガーさんで、 あくまでガーディーはその登場人物の一人だろ
“スバル”: ガーディーの行動は、全部エドガーさんが意図したもののはずで、 ページになったり、ならなかったりするのは腑に落ちねぇよ
“スバル”: コリーナを改造してフェネを生み出したのが、 ガーディーだとしても
“スバル”: それは物語の中でエドガーさんがさせたことだ
“スバル”: リドがページにならない件についても
“スバル”: ガーディーが生み出した“こわいまもの”は、 ページになったのに、どうしてリドはページにならないんだよ?
“スバル”: ガーディーが生み出したって意味じゃ、一緒じゃねぇか
“クルシュ”: ナツキ・スバル エドガーという絵本作家が意図していたものと そうではないものがあるということだろう
“クルシュ”: 私は以前、絵本作家ではないが、物語を書く者と話したことがある
“クルシュ”: これは物語を書く物書き特有の感覚かもしれないが、 登場人物が勝手に動き話したと感じることがあるそうだ
“クルシュ”: そのとき作者は、登場人物が自らした話や動きを 描写しているにすぎないと感じるらしい
“コリーナ”: ガーディーさんはエドガーさんの人に対する恨みを 体現したような存在です
“コリーナ”: それだけ、エドガーさんの恨みが、 強く大きかったということかもしれませんが
“コリーナ”: ガーディーさんは『禁書』の中でも特別な登場人物です
“コリーナ”: それに、ガーディーさんは自分の力を使って、 何かしら自分自身に変更を加えていたのかもしれません
“スバル”: エドガーさんの意思とは関係なく、ガーディーの意向を 『禁書』に反映することは可能だったってことか
“スバル”: それで、ガーディーの影響を色濃く受けた存在は、 『異形』とは別の扱いになるわけだな
“アル”: あの自称芸術家は、恥ずかしげもなく、 自分のことを物語の“主人公”だとか言ってやがったけど
“アル”: あいつがそう言いたくなるのもわからなくはねぇな
“プリシラ”: 所詮は妾と違い、まがい物だがな 結果、あやつの思い通りにはなっておらんわ
“スバル”: あいつの思い通りにならなかったのは、 俺らが全力で阻止したからだ
“スバル”: それに、多少の反則もある 少し同情するぜ、ガーディーにはよ
“スバル”: とはいえ、確かにガーディーは『禁書』の登場人物の中で、 特別な存在みたいだけど
“スバル”: やっぱ、エドガーさんの友達だったコリーナも特別だよな
“スバル”: ガーディーの影響を強く受けてるはずのフェネが、 操り人形みたいだったリドと違って
“スバル”: ちゃんと自分の意思を持って動けていたしさ
“スバル”: それって、元々フェネがコリーナだったからだろ?
“コリーナ”: そうですね コリーナの存在は、ガーディーさんが フェネさんを完全に支配することを阻止していたと思います
“エミリア”: 偉いわ、コリーナちゃん フェネのこと守ってくれて、ありがとう
“コリーナ”: いえいえ、コリーナは当然のことをしたまでですよ!
“コリーナ”: それに、世界が浄化されてしまったら、 フェネさんの本当の願いが叶えられなくなってしまいます
“コリーナ”: 二百年も寂しい思いをしたのに、 それではフェネさんがあまりにも可哀想です
“スバル”: ……フェネの本当の願い? エドガーさんを復活させたいんじゃねぇのか、あいつは?
“コリーナ”: 確かに最初は、それがフェネさんの望みでした
“コリーナ”: ある意味同一人物でもあり、本体でもあるコリーナには、 フェネさんの感じていることはなんとなくわかります
“コリーナ”: スバルさんたちに出会い、一緒に旅をしたことで、 フェネさんの願いは、変わっていったのです
“コリーナ”: 本人はそのことを認めたくないかもしれませんが、 それは間違いありません
“コリーナ”: だって、コリーナの心の中は、エドガーさんでいっぱいですが、 フェネさんの心の中は、別の人でいっぱいなんですから
“スバル”: ……別の人? いったい誰なんだよ、それ?
“フェリス”: どうやらスバルきゅんは、ぴんときてにゃいみたいだね
“フェリス”: まあ、そうなっちゃうのは、 フェネちゃんの態度にも原因があるけど
“ヴィルヘルム”: とはいえ、この老いぼれでもわかるのです スバル殿はやはり鈍感なようだ
“クルシュ”: ああ、確かにな
“ユリウス”: スバルには、妙に鋭いと驚かされることもあるが、 “どうしてそんなこともわからない?”と驚かされることも多い
“フェルト”: アタシは後者で驚かされてばっかりで、 前者の印象はあんまねーな
“フェルト”: 何をどうしたら兄ちゃんみたいな人間ができあがるのか、 ホント不思議だぜ
“スバル”: 何やら外野が盛り上がってるみたいだが、 完全に俺は置いてけぼりになってる
“スバル”: 誰か、俺にもわかるように説明してくれると助かるんだが?
“レム”: いいえ、スバルくんはわかる必要はありません
“レム”: それに、それは他人が伝えるのではなく、 フェネさんが直接言うべきことです
“ロズワール”: レムの言う通りだーぁね そのようなことに口出しするのは、野暮というものだーぁよ
“ロズワール”: とはいえ、フェネくんの願いを叶えるのは、 現状では恐らく難しいというのが私の見立てだ
“ロズワール”: フェネくんの言動から、エドガー殿を顕現するためには、 多くのマナを必要とすることが推測できるが
“ロズワール”: 『禁書』にはすでに、そこまでのマナは残っていないだろう
“スバル”: ──た、確かに! 結局なんだかんだで、 『禁書』に溜まってたマナを結構使っちまったよな
“スバル”: “こわいまもの”との戦いの前に、リドとの戦いもあったし
“スバル”: あいつは色々節約しようとはしてたけど、 結構な量のマナを消費しちまったのは間違いねぇ
“コリーナ”: フェネさんには本当に同情します ですが──
“コリーナ”: 最終的に勝ったのは、ガーディーさんでもフェネさんでもなく このコリーナでした!
“スバル”: おい、どうした、コリーナ? 突然黒幕感なんか出して
“コリーナ”: 色々な思惑を持ち、動いていたのは
“コリーナ”: フェネさんやガーディーさんだけでは なかったんですよ、スバルさん
“コリーナ”: 何を隠そうコリーナも、コリーナの目的を達成するために動き、 フェネさんのことも利用させてもらっていたのです!
“コリーナ”: すでにお察しかもしれませんが、 スバルさんのことも色々試させていただきました
“コリーナ”: おかげで、スバルさんの人となりもわかりましたし
“コリーナ”: スバルさんに、物語を書き換える力があることも 確認することができました
“コリーナ”: ということで、スバルさんに、 コリーナが下した判定結果をお伝えしたいと思います
“コリーナ”: スバルさん……“合格”です 目つき以外は申し分ありませんでした
“スバル”: “合格”って何が!?
“スバル”: しかも“目つき以外は”とか言われて、 合格したはずなのに、地味に心がいてぇ!
“クルシュ”: もしやとは思うが、コリーナ、卿が目指すもの、 それは人に仇なすものではないだろうな?
“クルシュ”: そうだとすると、我々は手をこまねいているわけにはいかない
“コリーナ”: それについては心配の必要はありません 現実世界に特に変更を及ぼすものではないので
“コリーナ”: そして、コリーナだけでなく、 フェネさんの本当の願いも叶えられるはずです
“コリーナ”: ということで、いったんフェネさんに、体を返そうと思います スバルさん、後程お会いしましょう──
“スバル”: うわっ!? コリーナがフェネになってる!?
“フェネ”: 何を今さら スバル氏はコリーナ女史から説明を受けたはずです
“スバル”: そりゃ、そうだけどさ! やっぱ、人間の女の子が、 狐に変身するのってギャップありすぎなんだよ!
“スバル”: 説明を聞いたからって、すぐに慣れるのは無理だ!
“スバル”: ……で、コリーナがお前に交代したのはなんでだ?
“スバル”: 『禁書』はマナ不足で、 どうやらすぐにエドガーさんを顕現させるのは無理っぽいし
“スバル”: このタイミングでお前が出てくる意味が、 俺にはわからねぇよ
“フェネ”: スバル氏をこちらのページに招待するためです
“フェネ”: ──スバル氏、フェネとともにページの中へと参りましょう
“スバル”: ……ページの中へ? お前、そんなことができるんだな?
“フェネ”: 左様です 多くの場合、 ページの中へ皆様をご招待していたのは、フェネに他なりません
“スバル”: ──なっ!? いや…… けど……
“フェネ”: 信じることができませんか、スバル氏?
“フェネ”: よく思い出してください ページに吸い込まれた状況を
“フェネ”: フェネの目的はあの魔法使いとは違っています 多くの犠牲を出すことは、フェネの本意ではありません
“スバル”: 今にして思うと、ページに吸い込まれるケースは、 街中が多かった気がするよ
“スバル”: 王都にガナクス…… バーリエル男爵領で吸い込まれたときも、街中っちゃ街中だったし
“スバル”: あの状況で顕現した強い『異形』と戦ってたら、 一般市民に犠牲者が出てもおかしくねぇ
“スバル”: それに、イバダやテンミツでは、 ページに吸い込まれたわけじゃねぇけど
“スバル”: 結界みたいなのが張られてて、街に被害が出ないようになってた
“スバル”: あれも、お前がしてたことなんだな?
“フェネ”: 左様です フェネの気遣いによるものです
“スバル”: “気遣い”ってな……
“スバル”: だったら、ページをばら撒いたりすんなよ 今さら言っても遅いけどさ
“フェネ”: スバル氏の悪い癖です すぎたことを あれこれ言っても意味はありません 過去は変わりません故
“スバル”: お、お前な……!
“スバル”: って、まぁいいよ 今は言い争ってる場合じゃねぇ
“スバル”: それで、お前が招待するのは、コリーナのページなんだな?
“フェネ”: 左様です コリーナ女史は自らページに変わりました そして、ページ内にてスバル氏をお待ちです
“スバル”: わかった…… それじゃ、コリーナに会いにいくとしよう
“スバル”: ──フェネ、ここが、コリーナのページの中か? なんか他のページと雰囲気が違う気が……
“コリーナ”: その通りです、スバルさん! そして、 お友達であるコリーナとのお話なので、雰囲気は違って当然です
“コリーナ”: まあ、エドガーさんの人間不信が強くなるにつれて、 『禁書』のお話っぽい感じにはなってしまうのですが
“コリーナ”: って、スバルさん、聞いてますか?
“スバル”: ……わりぃ、コリーナ 正直、コリーナがフェネになったり、 フェネがコリーナになったりするの、全然慣れねぇ
“スバル”: フェネと一緒にきたはずなんだけど、 お前がそこにいるのって、つまりそういうことなんだろ?
“コリーナ”: はい! スバルさんをページ内にお連れした時点で、 フェネさんはお役御免です
“コリーナ”: ここからは、コリーナとともに行動しましょう
“コリーナ”: コリーナは、スバルさんの力で、 コリーナの物語を変更してほしいと思っています
“コリーナ”: 悲しいことに、 コリーナはエドガーさんに遠ざけられてしまうのですが
“コリーナ”: そんなのは嫌なんです! コリーナは、 ずっとコリーナのままエドガーさんと一緒にいたいです!
“スバル”: もはや、“友達”って定義とは違う気がするけどな コリーナとエドガーさんは男女なわけだし
“コリーナ”: スバルさんは、男女の友情を信じないのですか?
“コリーナ”: まぁ、コリーナとしては、『おともだち』じゃなくて 『およめさん』って題名のお話になっても一向に構いませんけど
“コリーナ”: といいますか、スバルさんは、 そこまで大規模に物語を変えることができるんでしょうか?
“スバル”: 知らねぇよ! そもそも、そういう力があるって知ったばっかりだ
“スバル”: 妄想力……もとい、想像力には自信があるけど、 エドガーさんが書いた物語を、どこまで変えられるかは未知数だよ
“スバル”: しかも『とらわれのクレア』のときは、エクスカリバーを想像して その剣で『異形』を倒せばよかったけど
“スバル”: 今回は何をどうしたらいいのか皆目見当がつかねぇ
“スバル”: まぁ、ガーディーやフェネに比べたら
“スバル”: コリーナの願いは平和的だから、ぜひとも叶えてやりてぇけどさ
???: ……コリーナちゃん?
“コリーナ”: あっ、エドガーさん!
“スバル”: この人がエドガーさん……? ええっと、あの、俺は、その……
“エドガー”: その目つき……コリーナちゃんにヒドいことをしたら、許さないぞ
“スバル”: 違う! 違う! 俺はコリーナに酷いことなんかしない!
“コリーナ”: そうですよ、エドガーさん! 偉大な冒険家のコリーナが、 スバルさんなんかにやられるはずありません!
“スバル”: コリーナ、お前! 頼むから、エドガーさんの誤解を解く発言をしてくれ!
“スバル”: ただでさえややこしい状態なんだからさ!
“エドガー”: ──すみません、スバルさん スバルさんはコリーナちゃんのお友達だったんですね
“スバル”: 友達っつーか、なんっつーか、まぁ、コリーナとは腐れ縁だな
“スバル”: 出会ったときはあんまいい印象じゃなかったんだけど、 色々助けられたりして、今は出会えてよかったって思ってる
“スバル”: いざ会えなくなると思うと、正直、寂しい気持ちがあるよ 願いは叶えてやりてぇけど、マジちょっと複雑だ
“エドガー”: スバルさんは…… コリーナちゃんに会えなくなってしまうのですか?
“スバル”: ああ “結果的に”ってことではあるんだけど、 きっとそうなるだろうな
“スバル”: 代わりにって言うのも変だけど、 エドガーさんはずっとコリーナと一緒にいられるようになると思う
“スバル”: ええっとさ、“仮に”なんだけど……
“スバル”: たとえば俺が未来からきたって言ったら、 エドガーさんは信じてくれるのかな?
“エドガー”: ……未来から?
“スバル”: そうそう、二百年後の未来から
“スバル”: よくよく考えてみれば、マジすげぇ話だよな…… 二百年…… ホント、気が遠くなるぐらい長い時間だ
“スバル”: 離れ離れでいるには、あまりにも長すぎる
“スバル”: ちょっと距離が離れたぐらいで、 ダメになっちまう人間関係がほとんどだっていうのに
“スバル”: マジ、クラス替えで違うクラスになっただけで、 ほとんど他人になっちゃうなんてことも別に珍しくねぇ
“スバル”: それが二百年か…… ホントどうかしてやがるぜ
“スバル”: けど、だからこそ、胸を張って堂々と言えることもあるわけだ
“スバル”: もしかしたら、二百年前は、 そいつも自分の気持ちに半信半疑だったのかもしれねぇ
“スバル”: 極度の人間不信に陥っていたその人に
“スバル”: 自分のことは信じてもいいんだって、 そう言ってあげる自信が持てなかったんだな
“スバル”: だけど、今は違うはずだ
“スバル”: ──この物語を変えるのは、俺じゃねぇ お前だろ、コリーナ
“スバル”: そしてそれは、今のお前になら難なくできるはずだ
“スバル”: コリーナ! ──本当の意味で、エドガーさんを救ってやってくれ!
“エミリア”: すごいわ、スバル コリーナちゃんもエドガーさんもとってもいい表情ね
“レム”: はい お二人はとても幸せそうです
“スバル”: だな いい感じに内容が書き換わってよかったよ
“スバル”: まぁ、物語を変えたのは、俺じゃなくてコリーナだけどな
“スバル”: けど、題名を『およめさん』に変えるまでには、 どうやら至らなかったか
“フェリス”: なるほどなるほど、コリーナちゃんとしては、 そこまでいっちゃってもいい感じだったんだネ
“フェリス”: ということは、いつか題名が『およめさん』に 変わることがあるってこと?
“スバル”: それはどうだろうな……
“スバル”: なくはないのかもしれないけど、 そうなるのには、結構時間がかかるんじゃねぇか
“スバル”: 本当の友達になるのに、二百年もかかっちまった二人だからさ
“ロズワール”: “愛”だねーぇ
“スバル”: いやいや、コリーナの方はそうかもしれねぇけど、 エドガーさんのは“友情”だよ
“スバル”: 一生懸命コリーナはそっちの方向に話を持っていこうとしてたけど エドガーさんはポカーンとしてたし
“スバル”: ありゃ、そうとう鈍感だな コリーナの奴、きっと苦労するぜ
“フェネ”: スバル氏がそれを言いますか? フェネは大変腹立たしく思います
“スバル”: どうしてそうなんだよ!
“スバル”: ってか、しれっとここにいるけど、 確実にお前は俺に言うことがあるよな?
“スバル”: お前がここにいられるのは、明らかに俺のおかげなんだからさ!
“フェネ”: スバル氏こそ、フェネへの感謝の言葉はどうしたのです?
“フェネ”: 中身も容姿も完璧なフェネが、 こうして、これからもスバル氏と一緒にいてあげるのです
“フェネ”: 感謝の言葉があって然るべきかと
“フェリス”: きゃはは ホント、スバルきゅんとフェネちゃんって仲がいいよネ
“フェリス”: まあ、今のは完全にスバルくんに非があるから、 フェネちゃんに謝った方がいいと思うけど
“スバル”: どうして俺!? 明らかに俺は悪くねぇだろ!
“スバル”: フェネだけ都合よく顕現できるように物語を改変するの、 ホント大変だったんだぜ!
“アル”: おいおい、そんな大変なことを わざわざ兄弟はどうしてしたんだ?
“アル”: 嫌ならしなきゃよかっただろ、そんな苦労はよ
“フェルト”: まったくだぜ、兄ちゃん
“フェルト”: 兄ちゃんはそこまでしてでも、 その狐さんにいなくなってほしくなかったってことだろ
“フェルト”: 素直になれよ、まったく
“エミリア”: たくさん苦労してくれて、ありがとう、スバル おかげでフェネにまた会えたわ
“レム”: はい! さすがスバルくんです
“レム”: これからもずっとフェネさんと一緒にいられるのは、 スバルくんのおかげです
“スバル”: エミリアたん…… レム……
“ユリウス”: 私からも礼を言わせてくれ、スバル 私もフェネさんに再び会うことができ、とても嬉しく思う
“スバル”: ユリウス、お前…… やっぱ一緒に旅をした仲間は、優しいな チクチク言う奴らとは大違いだぜ
“フェネ”: それは違います、スバル氏 チクチク言ってもらえる内が華です そのことを忘れてはいけません
“スバル”: わかってるよ! いい歳して素直になれないだけだから、安心してくれ!
“スバル”: お前のために物語を変えるのも、 大変だったけど、別に“苦労”だとは思ってねぇし
“スバル”: これからもずっと一緒にいられることを 心からよかったって思ってる
“スバル”: もはや、お前がいない人生なんて、俺には考えられねぇよ
“プリシラ”: ──アル、戻るぞ このような茶番、見ておれんわ
“アル”: まぁ、そうだな ボチボチ潮時だ 帰るとしよう、姫さん
“アル”: 眠いわ、腹減ったわで、オレも限界だ
“アル”: 次に会うのは……王選ってことになるのか? まぁ、お手柔らかに頼むぜ、兄弟──
“ロズワール”: さて、我々も急ぎ出発しましょう、エミリア様
“ロズワール”: 『禁書異変』が片付いたとなると、いよいよ王選が始まります 残念ながら、無駄にできる時間はありません
“エミリア”: ええそうね
“レム”: それでは、レムは急ぎ竜車を取って参ります
“ロズワール”: よろしく頼むよ、レム
“レム”: はい、ロズワール様──
“クルシュ”: 我々もいくとしよう
“フェリス”: そうですね、クルシュ様
“ヴィルヘルム”: では、クルシュ様、フェリス、竜車へ
“スバル”: ──ありがとう、クルシュさん 本当に何から何まで世話になった
“スバル”: でも、王選では全力で挑ませてもらう 手ぇ抜いたりしねぇから、覚悟しといてくれ
“クルシュ”: ふっ その言葉が聞けて、安心したぞ、ナツキ・スバル 手心など加えられたら、逆に迷惑なのでな
“クルシュ”: では、メイザース辺境伯、エミリア、フェネ、我々はこれで──
“ユリウス”: お待ちください、クルシュ様 私も同行させてください
“ユリウス”: アナスタシア様から、 色々クルシュ様とお話しするよう申し付かっております
“フェリス”: いいんじゃないですか、クルシュ様 どうせ行き先は一緒ですし
“クルシュ”: ああ 私としても問題ない ともにいこう、ユリウス・ユークリウス
“ユリウス”: ありがとうございます、クルシュ様 では、スバル、皆様、私はこれで──
“フェルト”: ──兄ちゃん、アタシはどうしたらいい?
“フェルト”: 残念ながら、ラインハルトのヤローが オットーといったまんま、戻ってきてねー
“フェルト”: このままアタシは置き去りなんてことはねーよな?
“スバル”: おっと、確かに!?
“スバル”: 色々ありすぎて、 すっかりラインハルトとオットーのことを忘れてたよ!
“フェネ”: “忘れてた”とはどういうことですか、スバル氏?
“フェネ”: オットー氏はともかく、ラインハルト氏がきてくださらなければ、 我々に勝利はなかったでしょう
“フェネ”: “こわいまもの”に加え、リドア女史の相手まですることは、 明らかに不可能でした
“スバル”: いやいや、色々ありすぎた中の一つは、 確実にお前のことだからな!
“スバル”: その張本人から、そんなこと言われたくねぇっつーか
“スバル”: こっちはページの中に入って、物語の改変までしてきたんだし、 少しぐらい忘れちゃったことがあっても仕方ねぇだろ
“フェネ”: “少しぐらい”だとしても、記憶力が良いフェネからは、 信じられませんが
“フェネ”: オットー氏はともかく
“フェネ”: ラインハルト氏のことを“少しぐらい”と 言えてしまうスバル氏の神経をフェネは疑ってしまいます
“スバル”: オットーのことを“オットー氏はともかく” って何度も言っちゃう、お前の神経の方がどうかと思うぞ、俺は!
“スバル”: 一生懸命竜車を飛ばしてくれたオットーの貢献度だって、 かなりデカいと思うしな
“スバル”: って、そんなオットーのことを忘れてた俺が、 言うのもなんなんだけど!
“フェネ”: その通りです、スバル氏 スバル氏にはフェネを非難する資格はありません
“フェネ”: それに、ページの中に入り、物語を改変したことについて、 先程スバル氏は“苦労だとは思っていない”と言ったばかりです
“フェネ”: にも拘らず、そのことを言い訳に利用するのは違うと思います
“フェネ”: それともスバル氏は、先程言った言葉も忘れてしまったのですか?
“フェネ”: であれば、記憶力の良いフェネが、 思い出させて差し上げましょう
“フェネ”: スバル氏は“これからも一緒にいられることを 心からよかったと思う”と言い
“フェネ”: フェネを見つめ“お前がいない人生なんて”──
“スバル”: ストップ、フェネ! 恥ずかしすぎるからその辺で勘弁してくれ!
“フェルト”: あはは 確かになかなか恥ずかしい台詞だったな
“フェルト”: みんなの前で“お前がいない人生なんて俺には考えられねぇ”とか 言ってたんだぜ、兄ちゃん
“スバル”: うぐっ…… 確かにあれって、みんなの前だったな……
“スバル”: みんなの記憶力が、フェネほど良くないことを祈るばかりだよ
“スバル”: って、なんだか話がすげぇ脱線したけど、 元々はフェルトをどうするかって話だったよな?
“スバル”: もう夕暮れだし、フェルトを一人で置いていくわけには、 いかない気がするぜ、俺は
“エミリア”: うん、私もそう思うわ
“エミリア”: だから、フェルトちゃん 私たちと一緒にいきましょう いいわよね、ロズワール?
“ロズワール”: もちろんでーぇすとも
“ロズワール”: ラインハルトくんのことだ
“ロズワール”: もしもということはないかもしれないが、 彼が戻るまでには、もう少し時間が必要でしょう
“ロズワール”: せっかくなので、ご一緒しましょう
“ロズワール”: 私としても、新たに王選候補に名を連ねられた フェルト様には大変興味があります
“フェルト”: バカ! ちけーよ、変なオッサン! ちょっと向こうにいってくれ!
“スバル”: とりあえず、あの木に、 ラインハルトたち宛ての手紙を貼っておこう
“スバル”: あいつを心配させるのもわりぃし
“スバル”: ってことで、エミリアたん、頼めるかな? 俺の実力じゃ、手紙を書くのはまだ難しい
“エミリア”: わかったわ、スバル
“エミリア”: フェルトちゃんは私たちと一緒にいるって、 手紙に書いて貼っておくわね
ナレーター: やがて竜車に乗ったレムが戻ってくる
ナレーター: 近づいてくる竜車を見つめながら、 スバルはようやく『禁書異変』が終わったと実感していた
“レム”: お待たせしました みなさん、どうぞ竜車へ
ナレーター: レムに誘われ、竜車へと乗り込む一同
ナレーター: そして、スバルたちを乗せた竜車は走り始める 新しい未来に向かって──

Scenario Tag: scenario_main_p99_c00_01

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX チュートリアル(バトル前)

//mg ※スクリプトの修正を行った場合は、「scenario_main_p99_c00_04.txt」にも修正内容を反映させること!

ナレーター: それは、直前まで心に宿っていた勇気と勢いを 一瞬でかき消すほど絶望的な光景だった──
ナレーター: 異世界に召喚されさまざまな苦悩を経験した高校生…… スバルの脳は、走馬灯のように記憶を再生している
ナレーター: この一週間、幾度も死んでは、過去にさかのぼり、 その末に辿り着いた自らの死因にまつわる呪い
ナレーター: それを解呪したのも束の間、 同じ呪いの危機が迫る村を助けようと戦った昨日の夜
ナレーター: 子どもたちの無事と引き換えに、再び背負ったさらなる呪い
ナレーター: それを解くために、 たった一人不毛な戦いに身を投じた少女──
ナレーター: レムを連れ戻すため、スバルは彼女の姉ラムと 再びこの森にやってきたのだった
ナレーター: そしてつい先程、自ら囮になり その姉妹を逃したのだ
“スバル”: あれは……なんだ?
ナレーター: 勝算がある、とはいい難いが、切り札はあった
ナレーター: そのカードを切れば、なんとかなるかもしれない そう思えるくらいの希望は、先程まで確かにあったのだ
“スバル”: なにが……どうして、こう、なったんだ……?
ナレーター: だが、今のスバルには、軽口を叩く余裕も 危機を脱するための思案も、何もない
ナレーター: ただ、押し寄せる圧倒的な死の予感に、 今にも押しつぶされそうだった
“スバル”: あの子犬が……どうやったら、あんな化け物になるんだよ!
ナレーター: スバルたちを何度も苦しめた魔獣ウルガルムの子犬は、 またたく間に肥大化し──
ナレーター: とんでもない大きさの何かに変わった
ナレーター: そう、あまりにも形容し難い、 異形の何かへと変貌を遂げたのだ
“スバル”: は……はは……
ナレーター: その禍々しさと、待ち受ける死の気配に、 スバルの心は折れかけていた
ナレーター: 無様に後退りするスバルは、何かを踏んで転がった
“スバル”: おわっ! ……ってぇ
“スバル”: ……あれ、これは……
ナレーター: スバルが踏んだのは、一冊の古びた本 それはスバルがつい昨日、訳あって懐に忍ばせたもの
ナレーター: その本が、ひとりでに開く
ナレーター: ぺらり、ぺらり、ぺら、ぺらぺらぺら……
ナレーター: 風もないのにページがめくられていく スバルが、何故かその光景に目を奪われている、次の瞬間──
“スバル”: ……! まぶしっ……!!
ナレーター: 本のページから、爆発的な光が漏れ出し、辺りを一瞬で包む
ナレーター: 何かが、夜空を彩る流れ星のように飛散した
ナレーター: 徐々に薄れていく光の中に、ぼんやりと何者かの影が 浮かび上がっていた
???: やれやれ、ですね
???: 可及的速やかな救援及び加勢が必要な状況と判断しますが いかがなさいますか?
“スバル”: ……動、物?
ナレーター: スバルの知識に当てはめればそれは、 ペットとしても人気のフェネックという狐のように見える
ナレーター: だがそれは、愛しのあの少女の相棒のように スバルに呼びかけてきた
謎の動物: 迅速な判断が求められる状況です 即決即断こそが、英断であると進言します
“スバル”: 悪い! 助けてくれ!!
謎の動物: ……しかと、承りました
ナレーター: 愛らしい小動物は、その見た目に似つかわしくない覇気を 異形の化け物に向けた──

Scenario Tag: scenario_main_p99_c00_02

Scene Name: チュートリアル(ガチャ説明) 更新日:2021/03/17

このシナリオは、戦闘直前チュートリアルの後に挿入されます

謎の動物: 少々お待ちを……
謎の動物: 目前のウルガルムだけが敵とは、よもや思っていないでしょうね? あの程度の魔獣に遅れは取りませんが、ここは多勢に無勢
謎の動物: 雑魚とはいえ、親玉を守るために身を挺して 立ちはだかるのは難敵です
謎の動物: そこで我らも仲間に頼ろうと思います
謎の動物: この『禁書』にはもうページが残されていませんが まだ重要な力が残されているのですよ
謎の動物: ──具現化の権能
謎の動物: 人が生まれながらにして持つ『想像』の力を 『創造』に転化する、とでも言っておきましょうか
謎の動物: その権能は、過去現在未来で縁を結びし者たち 結ぶであろう者たちの像を描き出すことすら可能です
謎の動物: あなたの想像力次第、ではありますが
謎の動物: 今ここに友を、仲間を、想い人を……想念で喚起してください そして『禁書』に願うのです
謎の動物: ここに頼りになる皆を集めてくれ── 無力なる自分と一緒に戦ってほしいと……
謎の動物: さあ、今です!

Scenario Tag: scenario_main_p99_c00_03

Scene Name: //mg ここから scenario_main_p99_c00_03.txt

//mg ※スクリプトの修正を行った場合は、「scenario_main_p99_c00_04.txt」にも修正内容を反映させること!

ナレーター: 愛らしい小動物から放たれた光球で魔獣は燃え上がり、 戦いの終わりが告げられた
ナレーター: それを見届けた小動物は、ゆっくりとスバルの方を振り返る
謎の動物: 随分とひどい有様ですね
“スバル”: はは……初対面なのにずけずけ言いやがる…… ……でも助かったよ
“スバル”: 誰だかわかんねぇけど、ありがとう
謎の動物: 悪人面ですが、素直に感謝は述べられるのですね 人は見かけによらないものです
“スバル”: 命の恩人の暴言はぐっと飲み込むとして…… お前、本当に何者なんだ?
“スバル”: 『禁書』から、出てきたように見えたけど……?
“レム”: ──スバルくん!!!
“スバル”: おぅわ!?
ナレーター: その問いは、泣きながらスバルの名前を叫び、 飛びついてきたレムの抱擁にかき消された
ナレーター: そして、スバルに泣きすがるレムの声と共に、 スバルの意識も、消えていく──

Scenario Tag: scenario_main_p99_c00_04

Scene Name: リゼロ_メインシナリオ_序章FIX チュートリアル(バトル前+バトル後 図鑑用)

//mg ※「scenario_main_p99_c00_01.txt」「scenario_main_p99_c00_03.txt」のスクリプトに修正があった場合は、こちらにも修正内容を反映させること!

//mg レムのロードタイミング、赤フェードアウトなどの前半後半つなぎの部分は、当該スクリプト用に調整が必要( //mg ※図鑑用差分 と記載されている部分を参照)

ナレーター: それは、直前まで心に宿っていた勇気と勢いを 一瞬でかき消すほど絶望的な光景だった──
ナレーター: 異世界に召喚されさまざまな苦悩を経験した高校生…… スバルの脳は、走馬灯のように記憶を再生している
ナレーター: この一週間、幾度も死んでは、過去にさかのぼり、 その末に辿り着いた自らの死因にまつわる呪い
ナレーター: それを解呪したのも束の間、 同じ呪いの危機が迫る村を助けようと戦った昨日の夜
ナレーター: 子どもたちの無事と引き換えに、再び背負ったさらなる呪い
ナレーター: それを解くために、 たった一人不毛な戦いに身を投じた少女──
ナレーター: レムを連れ戻すため、スバルは彼女の姉ラムと 再びこの森にやってきたのだった
ナレーター: そしてつい先程、自ら囮になり その姉妹を逃したのだ
“スバル”: あれは……なんだ?
ナレーター: 勝算がある、とはいい難いが、切り札はあった
ナレーター: そのカードを切れば、なんとかなるかもしれない そう思えるくらいの希望は、先程まで確かにあったのだ
“スバル”: なにが……どうして、こう、なったんだ……?
ナレーター: だが、今のスバルには、軽口を叩く余裕も 危機を脱するための思案も、何もない
ナレーター: ただ、押し寄せる圧倒的な死の予感に、 今にも押しつぶされそうだった
“スバル”: あの子犬が……どうやったら、あんな化け物になるんだよ!
ナレーター: スバルたちを何度も苦しめた魔獣ウルガルムの子犬は、 またたく間に肥大化し──
ナレーター: とんでもない大きさの何かに変わった
ナレーター: そう、あまりにも形容し難い、 異形の何かへと変貌を遂げたのだ
“スバル”: は……はは……
ナレーター: その禍々しさと、待ち受ける死の気配に、 スバルの心は折れかけていた
ナレーター: 無様に後退りするスバルは、何かを踏んで転がった
“スバル”: おわっ! ……ってぇ
“スバル”: ……あれ、これは……
ナレーター: スバルが踏んだのは、一冊の古びた本 それはスバルがつい昨日、訳あって懐に忍ばせたもの
ナレーター: その本が、ひとりでに開く
ナレーター: ぺらり、ぺらり、ぺら、ぺらぺらぺら……
ナレーター: 風もないのにページがめくられていく スバルが、何故かその光景に目を奪われている、次の瞬間──
“スバル”: ……! まぶしっ……!!
ナレーター: 本のページから、爆発的な光が漏れ出し、辺りを一瞬で包む
ナレーター: 何かが、夜空を彩る流れ星のように飛散した
ナレーター: 徐々に薄れていく光の中に、ぼんやりと何者かの影が 浮かび上がっていた
???: やれやれ、ですね
???: 可及的速やかな救援及び加勢が必要な状況と判断しますが いかがなさいますか?
“スバル”: ……動、物?
ナレーター: スバルの知識に当てはめればそれは、 ペットとしても人気のフェネックという狐のように見える
ナレーター: だがそれは、愛しのあの少女の相棒のように スバルに呼びかけてきた
謎の動物: 迅速な判断が求められる状況です 即決即断こそが、英断であると進言します
“スバル”: 悪い! 助けてくれ!!
謎の動物: ……しかと、承りました
ナレーター: 愛らしい小動物は、その見た目に似つかわしくない覇気を 異形の化け物に向けた──
ナレーター: 愛らしい小動物から放たれた光球で魔獣は燃え上がり、 戦いの終わりが告げられた
ナレーター: それを見届けた小動物は、ゆっくりとスバルの方を振り返る
謎の動物: 随分とひどい有様ですね
“スバル”: はは……初対面なのにずけずけ言いやがる…… ……でも助かったよ
“スバル”: 誰だかわかんねぇけど、ありがとう
謎の動物: 悪人面ですが、素直に感謝は述べられるのですね 人は見かけによらないものです
“スバル”: 命の恩人の暴言はぐっと飲み込むとして…… お前、本当に何者なんだ?
“スバル”: 『禁書』から、出てきたように見えたけど……?
“レム”: ──スバルくん!!!
“スバル”: おぅわ!?
ナレーター: その問いは、泣きながらスバルの名前を叫び、 飛びついてきたレムの抱擁にかき消された
ナレーター: そして、スバルに泣きすがるレムの声と共に、 スバルの意識も、消えていく──